(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ガラス組成物
(51)【国際特許分類】
C03C 3/091 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
C03C3/091
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525769
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(85)【翻訳文提出日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 US2019057584
(87)【国際公開番号】W WO2020101849
(87)【国際公開日】2020-05-22
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ボウデン,ブラッドリー フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】クロール,マーク フランシス
(72)【発明者】
【氏名】メーロトラ,カラン
(72)【発明者】
【氏名】ロッシントン,キャサリン ローズ
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA01
4G062BB01
4G062DA06
4G062DB04
4G062DC03
4G062DD01
4G062DE01
4G062DF01
4G062EA01
4G062EB01
4G062EC01
4G062ED03
4G062EE03
4G062EF03
4G062EG02
4G062FA01
4G062FB01
4G062FC01
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4G062FE02
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
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4G062GD01
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4G062HH01
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4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH11
4G062HH13
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4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM02
4G062NN40
(57)【要約】
約61質量%~約62質量%のSiO2;約18質量%~約18.4質量%のAl2O3;約7.1質量%~約8.3質量%のB2O3;約1.9質量%~約2.2質量%のMgO;約6.5質量%~約6.9質量%のCaO;約2.5質量%~約3.6質量%のSrO;約0.6質量%~約1.0質量%のBaO;および約0.1質量%~約0.2質量%のSnO2、約589nmの光学波長における約1.515~約1.517の屈折率、約57~約67のVD、約200mmの構成部分の直径にわたって約5μm以下の総厚さの変動、約200mmの構成部分の直径にわたって約20μm以下の反り、および約0.1分以下のウェッジ、を有する、ガラス物品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス物品であって、
約61質量%~約62質量%のSiO
2;
約18質量%~約18.4質量%のAl
2O
3;
約7.1質量%~約8.3質量%のB
2O
3;
約1.9質量%~約2.2質量%のMgO;
約6.5質量%~約6.9質量%のCaO;
約2.5質量%~約3.6質量%のSrO;
約0.6質量%~約1.0質量%のBaO;および
約0.1質量%~約0.2質量%のSnO
2;
を含有する、ガラス物品。
【請求項2】
約589nmの光学波長において約1.515~約1.517の屈折率を有する、請求項1記載のガラス物品。
【請求項3】
約57~約67のアッベ数(V
D)を有する、請求項1記載のガラス物品。
【請求項4】
形成されたままの状態で、
(a)約200mmの構成部分の直径にわたって約5μm以下の総厚さの変動;
(b)約200mmの構成部分の直径にわたって約20μm以下の反り;および
(c)約0.1分以下のウェッジ;
の幾何学的特性を有する、請求項1記載のガラス物品。
【請求項5】
約589nmの光学波長において約1.515~約1.517の屈折率を有するポリマー系材料を有する表面を含む、請求項2記載のガラス物品。
【請求項6】
ガラス物品であって、前記ガラス物品は、
約55質量%~約68質量%のSiO
2;
約16質量%~約20質量%のAl
2O
3;
約6質量%~約9.5質量%のB
2O
3;
約1.0質量%~約3.0質量%のMgO;
約5.5質量%~約8.0質量%のCaO;
約1.5質量%~約4.5質量%のSrO;
約0.1質量%~約2.0質量%のBaO;および
約0.01質量%~約0.5質量%のSnO
2;
を含み、約589nmの光学波長で約1.515~約1.517の屈折率を有し、かつ約57~約67のV
Dを有し、
ガラスは、形成されたままの状態で(a)約200mmの構成部分の直径にわたって約5μm以下の総厚さの変動、(b)約200mmの構成部分の直径にわたって約20μm以下の反り、および(c)約0.1分以下のウェッジ、の幾何学的特性を有する、ガラス物品。
【請求項7】
ガラス物品であって、
約589nmの光学波長における約1.515~約1.517の屈折率;
約57~約67のV
D;ならびに
形成されたままの状態で(a)約200mmの構成部分の直径にわたって約5μm以下の総厚さの変動、(b)約200mmの構成部分の直径にわたって約20μm以下の反り、および(c)約0.1分以下のウェッジ、の幾何学的特性;
を有する、ガラス物品。
【請求項8】
約61質量%~約62質量%のSiO
2、約18質量%~約18.4質量%のAl
2O
3、約7.1質量%~約8.3質量%のB
2O
3、約1.9質量%~約2.2質量%のMgO、約6.5質量%~約6.9質量%のCaO、約2.5質量%~約3.6質量%のSrO、約0.6質量%~約1.0質量%のBaO、および約0.1質量%~約0.2質量%のSnO
2を含有する、請求項7記載のガラス物品。
【請求項9】
約55質量%~約68質量%のSiO
2、約16質量%~約20質量%のAl
2O
3、約6質量%~約9.5質量%のB
2O
3、約1.0質量%~約3.0質量%のMgO、約5.5質量%~約8.0質量%のCaO、約1.5質量%~約4.5質量%のSrO、約0.1質量%~約2.0質量%のBaO、約0.01質量%~約0.5質量%のSnO
2を含有する、請求項7記載のガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2018年11月13日に出願された米国仮特許出願第62/760567号明細書の優先権の利益を主張し、その内容が依拠され、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示の実施形態は、ガラスシートおよびガラス基材に関する。より具体的には、本開示の実施形態は、光学導光板に基づく拡張現実光学デバイス用の、およびモバイルデバイス向けの光学導光板に基づくバックライト用の、ガラスウェーハまたはガラスパネルに関する。
【背景技術】
【0003】
光学導光板に基づく拡張現実光学デバイスやモバイルデバイス向けの光学導光板に基づくバックライトなどの多数の新たな用途では、ガラス物品(例えばガラスウェーハまたはガラスパネル)であって、従来の光学ガラスと同様の屈折率特性を有しながらも薄い平面形状をも有するもの(例えば薄型ガラスウェーハまたは薄型ガラスパネル)が求められている。このような用途では、平面性および平滑性に関して厳格な幾何学的特性も求められ、また追加の光学機能を満たすための媒体として使用される適切な光学ポリマーにガラスの屈折率を一致させる必要もある(例えばレンズアレイ、表面レリーフ格子、ホログラム、ホログラフィック格子など)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、当該技術分野では、従来の光学ガラスと同様の屈折率特性を有しながらも、薄い平面形状と共に他の有利な特性および特徴をも有するガラス物品が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
約61質量%~約62質量%のSiO2;約18質量%~約18.4質量%のAl2O3;約7.1質量%~約8.3質量%のB2O3;約1.9質量%~約2.2質量%のMgO;約6.5質量%~約6.9質量%のCaO;約2.5質量%~約3.6質量%のSrO;約0.6質量%~約1.0質量%のBaO;および約0.1質量%~約0.2質量%のSnO2を含む、ガラス物品。
【0006】
約55質量%~約68質量%のSiO2;約16質量%~約20質量%のAl2O3;約6質量%~約9.5質量%のB2O3;約1.0質量%~約3.0質量%のMgO;約5.5質量%~約8.0質量%のCaO;約1.5質量%~約4.5質量%のSrO;約0.1質量%~約2.0質量%のBaOおよび;約0.01質量%~約0.5質量%のSnO2、を含み、約589nmの光学波長で約1.515~約1.517の屈折率を有し、かつ約57~約67のVDを有するガラス物品であって、ガラスが、形成されたままの状態で(a)約200mmの構成部分の直径にわたって約5μm以下の総厚さの変動、(b)約200mmの構成部分の直径にわたって約20μm以下の反り、および(c)約0.1分(arcmin)以下のウェッジ、の幾何学的特性を有する、ガラス物品。
【0007】
約589nmの光学波長における約1.515~約1.517の屈折率;約57~約67のVD;ならびに形成されたままの状態における(a)約200mmの構成部分の直径にわたって約5μm以下の総厚さの変動、(b)約200mmの構成部分の直径にわたって約20μm以下の反り、および(c)約0.1分以下のウェッジ、の幾何学的特性;を有する、ガラス物品。
【0008】
本開示のその他の実施形態および変形形態は、以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
上で簡潔にまとめられており、以下でより詳しく説明される本開示の実施形態は、添付の図面に示される本開示の例示的な実施形態を参照することによって理解することができる。添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示しており、本開示は他の同等な効果を有する実施形態を認めることができるため、範囲の限定とみなすべきではない。
【
図1】本開示のいくつかの実施形態によるガラス-ポリマー積層体の概略図である。
【
図2】本開示のいくつかの実施形態による光学構造体を有するガラス-ポリマー積層体の概略図である。
【
図3】本開示のいくつかの実施形態による光学構造体を有するガラス-ポリマー積層体の概略図である。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態による光学構造体を有するガラス-ポリマー-ガラス積層体の概略図である。
【
図5】フュージョンドロープロセスにおいて精密シートを製造するために使用される成形マンドレルの概略図である。
【
図6】位置6に沿った
図1の成形マンドレルの断面図である。
【0010】
理解し易くするために、可能な場合には同一の参照番号を使用して図に共通する同一の要素を示している。図面は縮尺通りには描かれておらず、明確にするために簡略化されている場合がある。本明細書に開示の任意の実施形態の任意の要素および特徴は、追加の言及なしで別の実施形態に有利に組み込むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本開示の実施形態を詳細に参照する。それらの例は添付の図面に示されている。可能な限り、同じまたは類似の部分について言及するために、図面全体を通して同じ参照番号が使用される。しかしながら、本開示は多数の異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈すべきではない。
【0012】
範囲は、本明細書では、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして表される場合がある。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態には、ある特定の値から、および/または別の特定の値までが含まれる。同様に、先行詞「約」を使用することにより値が近似値として表される場合には、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。各範囲の終点は、他の終点に関連して、および他の終点とは独立に意味を有することがさらに理解されるであろう。
【0013】
本明細書で使用される方向に関する用語(例えば上、下、右、左、前、後、上方、下方、垂直、水平)は、描かれている図面に関してのものにすぎず、絶対的な方向を意味することを意図するものではない。
【0014】
別段の明示的な記載がない限り、本明細書に記載のいずれの方法も、そのステップが特定の順序で行われる必要があるとして解釈されることを意図しておらず、またいずれの装置でも特定の向きが必要であることを意図していない。したがって、方法クレームにおいてそのステップが従うべき順序が実際に記述されていない場合、または任意の装置クレームにおいて個々の構成要素の順序または方向が実際に記述されていない場合、または請求項もしくは説明にステップが特定の順序に限定されるべきであることが別途具体的に記載されていない場合、または装置の構成要素の特定の順序または向きが記載されていない場合、順序または方向はいかなる点においても推定されることを意図するものではない。これは、ステップの配置、操作の流れ、構成要素の順序、または構成要素の方向に関する論理的事項;文法的な構成または句読点から生じる明白な意味;および明細書に記載されている実施形態の数またはタイプ;などの解釈のための可能な非明示的な根拠のために適用される。
【0015】
本明細書で使用される単数形「a」、「an」、および「the」には、文脈から明らかにそうでないとの指示がない限り、複数形が含まれる。したがって、例えば「a」構成要素への言及は、文脈から明らかにそうでないとの指示がない限り、2つ以上のそのような構成要素を有する態様を含む。
【0016】
本明細書で使用される全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数値を明示的に含み、範囲内の特定の数値の選択は、具体的な用途に応じて考慮される。
【0017】
図1は、本開示のいくつかの実施形態によるガラス-ポリマー積層体100の概略図を示している。ガラス-ポリマー積層体100は、ガラス物品102と、ガラス物品の表面上のポリマー系材料104とを含む。いくつかの実施形態では、ガラス物品102はガラスシートとすることができる。いくつかの実施形態では、ガラスシートは、本明細書に記載のガラス製造装置を使用して形成されたフュージョンガラスシートであってよい。ガラス物品102は、第1の主面110と、第1の主面110に対向する第2の主面112と、第1の主面110と第2の主面112との間に延在するエッジ面114とを含む。特定の例示的な実施形態では、ガラス物品102は、約1mm未満の厚さ(すなわち第1の主面110と第2の主面112との間の距離)を有する。いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、約0.1mm~約1mm、または約0.2mm~約1mm、または約0.3mm~約1mm、または約0.4mm~約1mm、または約0.5mm~約1mm、または約0.6mm~約1mm、または約0.7mm~約1mm、または約0.8mm~約1mm、または約0.9mm~約1mmの厚さを有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、約0.1mm~約0.9mm、または約0.1mm~約0.8mm、または約0.1mm~約0.7mm、または約0.1mm~約0.6mm、または約0.1mm~約0.5mm、または約0.1mm~約0.4mm、または約0.1mm~約0.3mm、または約0.1mm~約0.2mmの厚さを有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、約61質量%~約62質量%のSiO2、約18質量%~約18.4質量%のAl2O3、約7.1質量%~約8.3質量%のB2O3、約1.9質量%~約2.2質量%のMgO、約6.5質量%~約6.9質量%のCaO、約2.5質量%~約3.6質量%のSrO、約0.6質量%~約1.0質量%のBaO、および約0.1質量%~約0.2質量%のSnO2を含有する(またはこれらからなる、または実質的にこれらからなる)。
【0020】
いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、約67.8モル%~約68.2モル%のSiO2、約11.6モル%~約11.9モル%のAl2O3、約6.7モル%~約7.8モル%のB2O3、約3.1モル%~約3.6モル%のMgO、約7.0モル%~約7.6モル%のCaO、約1.6モル%~約2.3モル%のSrO、約0.3モル%~約0.4モル%のBaO、および約0.05モル%~約0.2モル%のSnO2を含有する(またはこれらからなる、または実質的にこれらからなる)。
【0021】
本明細書に記載のガラス組成物において、SiO2は、基本的なガラス形成剤として機能する。いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、約55質量%~約68質量%、または好ましくは約61質量%~約62質量%のSiO2を含有する。
【0022】
Al2O3は、本明細書に記載のガラスを製造するために使用される別のガラス形成剤である。いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、約16質量%~約20質量%のAl2O3を含有する。
【0023】
B2O3は、ガラス形成剤であると共に、溶融を助け溶融温度を下げる融剤でもある。これは、液相温度と粘度の両方に影響を与える。用いるB2O3を増加させることで、ガラスの液相粘度を上げることができる。いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、約6質量%~約9.5質量%、または好ましくは約7.1質量%~約8.3質量%のB2O3を含有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、3つのアルカリ土類酸化物、MgO、CaO、SrO、およびBaOを含有する。アルカリ土類酸化物は、溶融、清澄化、成形、および最終用途に重要な様々な特性をガラスに付与する。
【0025】
いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、約1質量%~約3質量%、または好ましくは約1.9質量%~約2.2質量%のMgOを含有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、約5.5質量%~約8質量%、または好ましくは約6.5質量%~約6.9質量%のCaOを含有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、約1.5質量%~約4.5質量%、または好ましくは約2.5質量%~約3.6質量%のSrOを含有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、約0.1質量%~約2質量%、または好ましくは約0.6質量%~約1.0質量%のBaOを含有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、約0.01質量%~約0.5質量%、または好ましくは約0.1質量%~約0.2質量%のSnO2を含有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、約589nmの光学波長で約1.515~約1.517の屈折率を有する。屈折率はn=c/vとして定義され、式中のcは真空中の光の速度であり、vは対象媒体中での光の位相速度である。いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、約589nmの光学波長で約1.516~約1.517の屈折率を有する。いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、約589nmの光学波長で約1.5155~約1.5175の屈折率を有する。
【0031】
いくつかの実施形態では、ガラス物品102は約57~約67のアッベ数(VD)を有する。いくつかの実施形態では、ガラス物品102は約60~約64のアッベ数(VD)を有する。本明細書において使用されるアッベ数(VD)は、V数または透明材料のコンストリンジェンス(constringence)としても知られており、材料の分散(波長に対する屈折率の変化)の尺度である。物質のアッベ数は以下の通りに定義される:
【0032】
【0033】
式中、nD、nF、nCは、フラウンホーファーのD-、F-、C-スペクトル線の波長(それぞれ589.3nm、486.1nm、および656.3nm)における材料の屈折率である。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラス物品は、平面度および粗さについて評価する際のいくつかの測定基準によって特徴付けられる。そのような測定基準としては、限定するものではないが、総厚さの変動(TTV)、反り、およびウェッジを挙げることができる。
【0035】
本明細書で使用される総厚さの変動(TTV)は、規定された間隔ν、典型的にはガラスシートの幅全体にわたるガラスシートの最大厚さと最小厚さとの間の差を意味する。いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、形成されたままの状態で、約200mmの構成部分の直径にわたって約5μm以下の総厚さの変動の幾何学的特性を有する。いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、形成されたままの状態で、約300mmの構成部分の直径にわたって約5μm以下の総厚さの変動の幾何学的特性を有する。
【0036】
本明細書において、反りは、ガラス物品102の118(
図1)で示される負の面外最大値と、ガラス物品102の116で示される正の面外最大値との差として定義される。いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、形成されたままの状態で、約200mmの構成部分の直径にわたって約20μm以下の反りの幾何学的特性を有する。いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、形成されたままの状態で、約300mmの構成部分の直径にわたって約20μm以下の反りの幾何学的特性を有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、構成部分とは、ガラス物品102を形成するための、規定されたサイズ(例えば直径200mmまたは300mm)のガラスシート(またはその一部)を指す。いくつかの実施形態では、構成部分は、より大きい直径のガラスシート(例えば直径200mmまたは300mm)から切り出されたガラス物品102を指す。
【0038】
いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、形成されたままの状態で、約0.1分以下のウェッジの幾何学的特性を有する。本明細書において、ウェッジとは、ガラス物品の外縁によって規定されるガラス物品の「機械軸」と光学面によって規定される光軸との間の非対称性を指す。
【0039】
いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、円形、長方形、正方形、三角形、または自由形態(例えば円形、長方形、正方形、三角形以外の任意の形状)の形状のうちの1つを含む。平面状ガラス構成部分の形状は、平面状ガラス構成部分の製造に使用されるガラス成形/切断技術によってのみ制限される。
【0040】
いくつかの実施形態では、
図1に示されているように、ポリマー系材料104は、ガラス物品102の第1の主面110の上に(すなわち直接接触して)配置される。いくつかの実施形態では、ポリマー系材料104は、ガラス物品102と同様の屈折率特性を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー系材料104は、約589nmの光学波長で約1.515~約1.517の屈折率を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー系材料104は、約589nmの光学波長で約1.516~約1.517の屈折率を有する。いくつかの実施形態では、ガラス物品102は、約589nmの光学波長で約1.5155~約1.5175の屈折率を有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、ポリマー系材料は、少なくとも1つの光学構造体を含む。
図2~3は、本開示のいくつかの実施形態による少なくとも1つの光学構造体106を有するガラス-ポリマー積層体100の概略図を示している。いくつかの実施形態では、光学構造体106は、ナノ複製手法およびホログラフィック手法などの手法を使用して形成することができる。
図2は、表面レリーフ光学構造体を有するガラス-ポリマー積層体100を示している。いくつかの実施形態では、表面レリーフ光学構造体は格子である。いくつかの実施形態では、光学構造体106は、光学ホログラフィック構造体である。
図3は、ポリマーの体積内に格子および光学ホログラフィック構造体(またはホログラム)などの複数の光学構造体を有するガラス-ポリマー積層体100を示している。いくつかの実施形態では、ガラス-ポリマー積層体100のポリマー系材料104層に複数のホログラムを記録することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、ガラス-ポリマー積層体は、
図1~3に示されているような単一のガラス物品102層および単一の光学材料104層に限定されない。いくつかの実施形態では、ガラス-ポリマー積層体は、複数のガラス物品102層および/または複数の光学材料層104を含むことができる。いくつかの実施形態では、複数のホログラフィックにより規定された光学構造体を積層体の別個の異なる物理的な層に製造できるように、複数のガラス-ポリマー層を積層することもできる(例えばガラス-ポリマー-ガラス、またはガラス-ポリマー-ガラス-ポリマー)。例えば、
図4に本開示のいくつかの実施形態による光学構造体を有するガラス-ポリマー-ガラス積層体の概略図が示されている。
【0043】
本明細書に記載の本開示の実施形態は、本明細書に記載の組成および特性を有するガラス物品を有利に提供する。任意の形状のガラス物品を製造する能力と組み合わされたこれらの特性は、光学導光板に基づく拡張現実光学デバイスや、モバイルデバイス向けの光学導光板に基づくバックライトなどの用途にとって明らかな利点である。ガラスの光学特性を、形成されたままの状態の有利なガラス物品の幾何学的特性と組み合わせる能力のため、積層体を出る光線が全てそれらの相対的な配列を維持するようにガラス板の内部の光線角度を保持する導光の解決策への最小費用経路が可能になる。
【0044】
一実施形態では、例示的なガラスは、フュージョンプロセスによってシートへと製造される。フュージョンドロープロセスにより、高解像度TFTバックプレーンおよびカラーフィルターへの表面誘起歪みが低減された、きれいなガラスの火造り面を得ることができる。
図5は、非限定的なフュージョンドロープロセスにおける成形マンドレルまたはアイソパイプの概略図である。
図6は、
図5の位置506付近のアイソパイプの概略断面図である。ガラスは入口501から導入され、堰壁509によって形成されたトラフ504の底に沿って圧縮端502へと流れる。ガラスは、アイソパイプの両側の面(
図6を参照)で堰壁509から溢れ、2つのガラスの流れは底部510で合流または融合する。アイソパイプの両端にあるエッジディレクター503は、ガラスを冷却し、端部でビードと呼ばれるより厚いストリップを形成するために機能する。ロールを引っ張ることによってビードが引き下ろされるため、高粘度でシートを形成することができる。シートがアイソパイプから引き離される速度を調節することによって、固定された溶融速度で非常に広範囲な厚さを得るためにフュージョンドロープロセスを使用することが可能である。
【0045】
本明細書では、ダウンドローシートドロープロセス、および特に米国特許第3,338,696号明細書および同第3,682,609号明細書(共にDockerty、これらは参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているフュージョンプロセスを使用することができる。何らかの特定の作用理論に拘束されるものではないが、フュージョンプロセスは研磨を必要としないガラス基材を製造できると考えられる。現在のガラス基材の研磨は、原子間力顕微鏡法で測定される約0.5nm(Ra)を超える平均表面粗さを有するガラス基材を製造することができる。フュージョンプロセスによって製造されたガラス基材は、原子間力顕微鏡法により測定される約0.5nm未満の平均表面粗さを有する。基材は、150psi(約1.03MPa)以下である光学リターデーションによって測定される平均内部応力も有する。本明細書に記載の実施形態は、限定するものでないがフロート成形プロセスなどの他の成形プロセスにも同様に適用可能であるため、本明細書に添付の特許請求の範囲は、当然フュージョンプロセスに限定されるべきではない。
【0046】
一実施形態では、例示的なガラスは、フュージョンプロセスを使用してシート形態へと製造される。例示的なガラスはフュージョンプロセスと適合性を有するが、異なる製造プロセスによってシートまたは他の物品に製造することもできる。そのようなプロセスとしては、スロットドロー、フロート、ローリング、および当業者に公知の他のシート形成プロセスが挙げられる。
【0047】
ガラスのシートを形成するためのこれらの代替方法と比較して、上で説明したフュージョンプロセスは、非常に薄く、非常に平坦な、非常に均一な、きれいな表面を有するシートを形成することができる。スロットドローもきれいな表面が得られるものの、時間の経過に伴うオリフィスの形状の変化、オリフィス-ガラス界面における揮発性デブリの蓄積、および真に平らなガラスを得るためのオリフィスの形成の難しさのため、スロットドローガラスの寸法均一性および表面品質は、一般的にはフュージョンドローガラスよりも劣っている。フロートプロセスは非常に大きく均一なシートを提供することができるものの、一方の面がフロートバスと接触し、他方の面がフロートバスからの凝縮生成物と接触することにより、表面が大きく損なわれる。これは、高性能ディスプレイ用途で使用するためにはフロートガラスを研磨しなければならないことを意味する。
【0048】
フュージョンプロセスは、高温からのガラスの急激な冷却を含む場合があり、その結果高い仮想温度Tfになる。仮想温度は、ガラスの構造状態とガラスが対象の温度で完全に緩和している場合に想定される状態との間の不一致を表すものと考えることができる。Tp<Tg≦Tfになるようにガラス転移温度Tgのガラスを加工温度Tpまで再加熱すると、ガラスの粘度の影響を受ける場合がある。Tp<Tfであることから、ガラスの構造状態はTpで平衡状態から外れ、ガラスはTpで平衡状態にある構造状態に向かって自然に緩和する。この緩和速度は、Tpにおけるガラスの有効粘度に反比例し、その結果粘度が高いと緩和速度が低くなり、粘度が低いと緩和速度が高くなる。有効粘度はガラスの仮想温度に反比例して変化し、その結果仮想温度が低いと粘度が高くなり、仮想温度が高いと粘度が比較的低くなる。したがって、Tpにおける緩和速度は、ガラスの仮想温度に正比例する。高い仮想温度を導入するプロセスでは、ガラスをTpで再加熱する際に比較的高い緩和速度になる。
【0049】
Tpにおける緩和速度を低下させる1つの手段は、その温度におけるガラスの粘度を上げることである。ガラスの徐冷点は、ガラスの粘度が1013.2ポアズ(約1012.2パスカル)になる温度を表す。温度が徐冷点を下回ると、過冷却溶融物の粘度が増加する。Tg未満の固定温度では、高い徐冷点を有するガラスは、低い徐冷点を有するガラスよりも高い粘度を有する。したがって、徐冷点を高くすると、Tpにおける基材ガラスの粘度を上げることができる。一般に、徐冷点を上げるために必要な組成の変更は、他の全ての温度における粘度も増加させる。非限定的な実施形態では、フュージョンプロセスによって製造されるガラスの仮想温度は、約1011~1012ポアズ(約1010~1011パスカル)の粘度に相当するため、フュージョンに適合するガラスの徐冷点の上昇は、通常その仮想温度も上昇させる。成形プロセスに関係なく、所定のガラスについて、仮想温度が高いほどTg未満の温度で粘度が低くなり、その結果、仮想温度を高くすると、徐冷点を高くすることにより得られる粘度増加と反対に作用する。Tpにおける緩和速度を大きく変更するためには、一般的には徐冷点を比較的大きく変更する必要がある。例示的なガラスの一態様は、約790℃、795℃、800℃、または805℃以上の徐冷点を有するものである。何らかの特定の作用理論に拘束されるものではないが、このような高い徐冷点は、低温TFT処理中、例えば典型的な低温ポリシリコンのラピッドサーマルアニールサイクル中の熱緩和速度を許容可能に低くすると考えられる。
【0050】
仮想温度への影響に加えて、徐冷点の上昇は、溶融および成形システム全体の温度、特にアイソパイプ上の温度も上昇させる。例えば、Eagle XG(登録商標)ガラスとLotus(商標)ガラス(Corning Incorporated, Corning, NY)は、約50℃異なる徐冷点を有し、アイソパイプに供給される温度も約50℃異なる。約1310℃より高い温度で長期間保持される場合、アイソパイプを形成しているジルコン耐火物は熱クリープを示す。これは、アイソパイプ自体の重さに加えてアイソパイプ上のガラスの重さによって加速する可能性がある。例示的なガラスの第2の態様は、その供給温度が約1350℃以下、または1345℃以下、または1340℃以下、または1335℃以下、または1330℃以下、または1325℃以下、または1320℃以下、または1315℃以下、または1310℃以下であることである。このような供給温度により、アイソパイプを交換する必要なしに製造活動を延長することができ、あるいはアイソパイプ交換の間隔を延ばすことができる。
【0051】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0052】
実施形態1
ガラス物品であって、
約61質量%~約62質量%のSiO2;
約18質量%~約18.4質量%のAl2O3;
約7.1質量%~約8.3質量%のB2O3;
約1.9質量%~約2.2質量%のMgO;
約6.5質量%~約6.9質量%のCaO;
約2.5質量%~約3.6質量%のSrO;
約0.6質量%~約1.0質量%のBaO;および
約0.1質量%~約0.2質量%のSnO2;
を含有する、ガラス物品。
【0053】
実施形態2
約589nmの光学波長において約1.515~約1.517の屈折率を有する、実施形態1記載のガラス物品。
【0054】
実施形態3
約589nmの光学波長において約1.516~約1.517の屈折率を有する、実施形態1記載のガラス物品。
【0055】
実施形態4
約589nmの光学波長において約1.5155~約1.5175の屈折率を有する、実施形態1記載のガラス物品。
【0056】
実施形態5
約57~約67のアッベ数(VD)を有する、実施形態1から4までのいずれか1つ記載のガラス物品。
【0057】
実施形態6
約60~約64のVDを有する、実施形態1から4までのいずれか1つ記載のガラス物品。
【0058】
実施形態7
形成されたままの状態で、
(a)約200mmの構成部分の直径にわたって約5μm以下の総厚さの変動;
(b)約200mmの構成部分の直径にわたって約20μm以下の反り;および
(c)約0.1分以下のウェッジ;
の幾何学的特性を有する、実施形態1から4までのいずれか1つ記載のガラス物品。
【0059】
実施形態8
約0.1mm~約1mmの厚さを有する、実施形態1から7までのいずれか1つ記載のガラス物品。
【0060】
実施形態9
約589nmの光学波長において約1.515~約1.517の屈折率を有するポリマー系材料を有する表面を含む、実施形態2記載のガラス物品。
【0061】
実施形態10
ガラス物品であって、前記ガラス物品は、
約55質量%~約68質量%のSiO2;
約16質量%~約20質量%のAl2O3;
約6質量%~約9.5質量%のB2O3;
約1.0質量%~約3.0質量%のMgO;
約5.5質量%~約8.0質量%のCaO;
約1.5質量%~約4.5質量%のSrO;
約0.1質量%~約2.0質量%のBaO;および
約0.01質量%~約0.5質量%のSnO2;
を含み、約589nmの光学波長で約1.515~約1.517の屈折率を有し、かつ約57~約67のVDを有し、
ガラスは、形成されたままの状態で(a)約200mmの構成部分の直径にわたって約5μm以下の総厚さの変動、(b)約200mmの構成部分の直径にわたって約20μm以下の反り、および(c)約0.1分以下のウェッジ、の幾何学的特性を有する、ガラス物品。
【0062】
実施形態11
約0.1mm~約1mmの厚さを有する、実施形態10記載のガラス物品。
【0063】
実施形態12
約589nmの光学波長において約1.515~約1.517の屈折率を有するポリマー系材料を有する表面を含む、実施形態10または11記載のガラス物品。
【0064】
実施形態13
ガラス物品であって、
約589nmの光学波長における約1.515~約1.517の屈折率;
約57~約67のVD;ならびに
形成されたままの状態で(a)約200mmの構成部分の直径にわたって約5μm以下の総厚さの変動、(b)約200mmの構成部分の直径にわたって約20μm以下の反り、および(c)約0.1分以下のウェッジ、の幾何学的特性;
を有する、ガラス物品。
【0065】
実施形態14
約0.1mm~約1mmの厚さを有する、実施形態13記載のガラス物品。
【0066】
実施形態15
約589nmの光学波長において約1.516~約1.517の屈折率を有するポリマー系材料を有する表面を含む、実施形態13記載のガラス物品。
【0067】
実施形態16
前記ポリマー系材料が少なくとも1つの光学構造体を含む、実施形態13から16までのいずれか1つ記載のガラス物品。
【0068】
実施形態17
前記光学構造体が表面レリーフ構造体を含む、実施形態16記載のガラス物品。
【0069】
実施形態18
前記表面レリーフ構造体が格子を含む、実施形態16記載のガラス物品。
【0070】
実施形態19
前記光学構造体が光学ホログラフィック構造体を含む、実施形態16記載のガラス物品。
【0071】
実施形態20
前記光学構造体が格子およびホログラムを含む、実施形態16記載のガラス物品。
【0072】
実施形態21
約61質量%~約62質量%のSiO2、約18質量%~約18.4質量%のAl2O3、約7.1質量%~約8.3質量%のB2O3、約1.9質量%~約2.2質量%のMgO、約6.5質量%~約6.9質量%のCaO、約2.5質量%~約3.6質量%のSrO、約0.6質量%~約1.0質量%のBaO、および約0.1質量%~約0.2質量%のSnO2を含有する、実施形態13から20までのいずれか1つ記載のガラス物品。
【0073】
実施形態22
約55質量%~約68質量%のSiO2、約16質量%~約20質量%のAl2O3、約6質量%~約9.5質量%のB2O3、約1.0質量%~約3.0質量%のMgO、約5.5質量%~約8.0質量%のCaO、約1.5質量%~約4.5質量%のSrO、約0.1質量%~約2.0質量%のBaO、約0.01質量%~約0.5質量%のSnO2を含有する、実施形態13から20までのいずれか1つ記載のガラス物品。
【0074】
実施形態23
複数の交互のガラス物品層とポリマー系材料層とを含む、実施形態13記載のガラス物品。
【0075】
実施形態24
前記ガラス-ポリマー積層体の最終層がガラス物品層である、実施形態23記載のガラス物品。
【0076】
実施形態25
前記ガラス-ポリマー積層体の最終層がポリマー系材料層である、実施形態23記載のガラス物品積層体。
【国際調査報告】