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特表2022-511712ハロゲンフリー難燃性水性ポリウレタン分散物の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ハロゲンフリー難燃性水性ポリウレタン分散物の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/38 20060101AFI20220125BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20220125BHJP
   C08G 18/12 20060101ALI20220125BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20220125BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20220125BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20220125BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20220125BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20220125BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20220125BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20220125BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20220125BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
C08G18/38 078
C08G18/00 C
C08G18/12
C08G18/72
C08G18/40
C08G18/08 019
C08G18/28 015
C08G18/48 033
C08G18/65
C09K21/12
C09D175/04
C09D5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525779
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 NL2019050866
(87)【国際公開番号】W WO2020130831
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】2022275
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501236847
【氏名又は名称】シュタール インタナショナル ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドリース・ヨハンネス・デルクセン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・デッケルス
【テーマコード(参考)】
4H028
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4H028AA46
4J034BA06
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA05
4J034CA13
4J034CA15
4J034CA16
4J034CA17
4J034CA32
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB07
4J034CB08
4J034CC03
4J034CC12
4J034CC23
4J034CC26
4J034CC34
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC61
4J034CC65
4J034CC67
4J034CD05
4J034CD07
4J034CD09
4J034CD13
4J034CE01
4J034CE03
4J034DA01
4J034DB01
4J034DB04
4J034DB05
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4J034DP12
4J034DR01
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4J034HA07
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC53
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA30
4J034JA42
4J034QA02
4J034QA05
4J034QB10
4J034QB14
4J034QB17
4J034QC05
4J034QC08
4J034RA07
4J038DG101
4J038DG112
4J038DG121
4J038DG132
4J038DG231
4J038GA14
4J038KA03
4J038MA10
4J038NA15
(57)【要約】
難燃特性を付与し、且つハロゲンフリーであって、ホスフィンオキシドポリオールをポリウレタンに組み込むことによって得られ、可撓性のシート状基材のコーティングの一部として有用である、水性ポリウレタン分散物の調製方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ポリウレタン分散物の調製方法であって、
i)イソシアネート、ポリオール(親水性基を有するポリオール、または塩を形成し得る追加の官能基を有するポリオールを含んでよい)、及びホスフィンオキシドポリオール、好ましくはホスフィンオキシドジオールまたはホスフィンオキシドトリオールから、ポリウレタンプレポリマーを合成する工程;及び
ii)得られたプレポリマーを、任意に他の添加剤を含む水相中に分散させる工程;及び
iii)前記プレポリマーを水に分散させるのと同時、またはその前もしくは後に、1つ以上の中和剤を添加する工程;及び
iv)前記分散と同時またはその後に、1つ以上の延長剤と反応させることによってポリウレタンを形成し、その後任意に別の添加剤を加えてよい工程
を含む、方法。
【請求項2】
ホスフィンオキシドポリオールが、少なくとも2つのヒドロキシアルキル基を含み、且つ式(HO-R’-)2P(=O)Rを有し、ここで、R’基は、例えば炭素原子が2から5の、好ましくは炭素原子が3のアルキル基であり、これは直鎖状であっても、分枝状であっても、またはさらに置換されていてもよく、Rは、例えば炭素原子が2から8のアルキル、シクロアルキル、またはアリール基であって、ヒドロキシルまたは別のホスフィンオキシドのような追加の官能基をさらに含んでよい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ホスフィンオキシドポリオールが、イソ-ブチル-(ビス-n-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシドである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
プレポリマー中のポリオール成分及びイソシアネート成分の合計質量に対して、ホスフィンオキシドポリオールを、1質量%から20質量%まで、好ましくは2質量%から15質量%まで、最も好ましくは3質量%から12質量%まで使用する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ホスフィンオキシドポリオールが、プレポリマー中の他の全ての反応性成分と同時に反応するか、あるいは、イソシアネート成分と他のイソシアネート反応性成分との反応の後に、イソシアネート成分と最後に反応する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
イソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、または芳香族ジイソシアネートと脂肪族ジイソシアネートの混合物、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、及びこれらの混合物、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,6-ヘキシルジイソシアネート、1,5-ペンチルジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン(2,2,4-異性体、2,4,4-異性体、またはこれらの混合物)、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、ノルボニルジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び/または1,5-ナフチレンジイソシアネートである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ポリオールが、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリオレフィンポリオール、またはポリシロキサンポリオール、あるいはこれらの混合物の群より選択され、任意に、分子量が500以下のジオールまたはトリオールである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
親水性基を有するポリオール、または塩を形成し得る追加の官能基を有するポリオールが、ポリエトキシジオール、ポリ(エトキシ/プロポキシ)ジオール、ペンダントエトキシまたは(エトキシ/プロポキシ)鎖を含むジオール、カルボン酸を含むジオール、スルホン酸基を含むジオール、リン酸基を含むジオール、ポリエトキシモノオール、ポリ(エトキシ/プロポキシ)モノオール、ペンダントエトキシまたは(エトキシ/プロポキシ)鎖を含むモノオール、カルボン酸またはスルホン酸もしくは塩を含むモノオール、あるいはこれらの混合物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
拡張剤が、ポリオール、水、アミノアルコール、アンモニア、第一級または第二級の脂肪族、脂環式、芳香族、アリール含有脂肪族、または複素環式のアミン、特にジアミン、ヒドラジン、または置換ヒドラジン、あるいはこれらの混合物であり、その中でも水溶性延長剤が好ましい、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
中和剤が、第3級アミン、例えば、トリプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエチルアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、及びN-エチルモルフォリン、または、アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、または、不揮発性第三級アミン、例えば、N-ブチルジエタノールアミンまたはN,N-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-N’,N’-ジメチルプロパン-1,3-ジアミン、あるいはこれらの混合物である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
プレポリマーが、0%から35質量%、好ましくは20質量%未満の共溶媒を含んでいてよい、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
水性ポリウレタン分散物の固形分が、少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも35質量%である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって得られる分散物。
【請求項14】
請求項13に定義される分散物から、好ましくは可撓性のシート状基材上に得られる、コーティングまたはフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃特性を付与し、且つハロゲンフリーである、水性ポリウレタン分散物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンの水性分散物は、コーティング組成物の製造の基礎として周知である。これらは、保護または装飾用のコーティングに、任意に着色剤、顔料、艶消し剤などの添加剤と組み合わせて使用してよい。ポリウレタンは、多くの望ましい特性、例えば、優れた耐薬品性、耐水性、耐溶剤性、強靭性、耐摩耗性、耐久性を呈し得る。
【0003】
当技術分野で周知の通り、水性ポリウレタン分散物は、イオン性分散基を担持するイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを水性媒質中に分散させ、次いで、水性媒質中に分散させた状態で前記プレポリマーを活性水素含有鎖延長剤と反応させることによって、特に有利に調製される。例えば、米国特許第4046729号及び米国特許第4066591号を参照のこと。
【0004】
水性ポリウレタン分散物において難燃性を実現するためには、いくつかのアプローチがある。これは、水性ポリウレタン分散物に、難燃添加剤、例えば、固形添加剤、例えばメラミン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、またはポリリン酸アンモニウム、またはハロゲン含有アルキルホスフェート、例えばトリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロイソプロピル)ホスフェート、及びトリス(2,3-ジクロロイソプロピル)ホスフェート、または別のハロゲン含有添加剤、例えばデカブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモシクロドデカン、及び1,2-エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)を添加することによって行うことができる。しかしながら、添加剤の使用には、乾燥したコーティングから添加剤が洗い流される危険性が常に存在する。従って、反応性難燃剤をポリマー自体に組み込むことが有利である。ポリウレタンの場合は、こうした反応性難燃成分は、従来はしばしばハロゲン含有物、例えば、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルアルコール、及びテトラブロモビスフェノールAビスエトキシレートであった。しかしながら、こうしたハロゲン含有難燃剤の使用は、エンドユーザーからますます批判されており、最終製品のハロゲン含有量が、第三者認証マーク(製品ラベル)によって制限されている場合がある。そのため、ハロゲンフリー難燃剤の使用には多大な動機づけがある。こうした非ハロゲン系難燃剤には、リンベースのものがある。添加剤として使用されるリン系難燃剤には、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ポリリン酸アンモニウムなどがあり、また、リン系反応性難燃剤がある。これらのリン系反応性難燃剤には、ホスフェート及びホスフィネート、例えば、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファペナントレン-10-オキシド(DOPO)、ホスフェートポリオール、ポリメチルフェニルホスフィネート(PMP)、リン酸エステル、ホスフェートエステル、及びホスフィネートポリオールが含まれる。
【0005】
米国特許出願公開第2009/0156704号には、アルキル基またはアリール基を有するホスフェートエステル添加剤を含む難燃性ポリウレタンフォーム組成物が記載されている。
米国特許出願公開第2017/0190827号には、アルキル置換アリールホスフェート及びグラファイトを含む反応性配合物から得られる、難燃性可撓性ポリウレタンフォームが記載されている。
米国特許出願公開第2017/0306122号には、リン酸エステルを難燃剤として使用する、難燃特性を有するハロゲンフリーポリウレタンフォームを得る方法が記載されている。
【0006】
欧州特許第1785439号には、難燃剤として、2-ヒドロキシアルカンホスホネート及び/または3-ヒドロキシアルカンホスホネートを含む難燃性ポリウレタンフォームが記載されている。
欧州特許第510743号及び米国特許第4343914号には、ポリウレタンフォームの調製におけるホスフィンオキシドジオールの使用が記載されている。
【0007】
米国特許第7160974号には、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの調製におけるホスフィンオキシドジオールの使用が記載されている。
米国特許出願公開第2015/0282468号は、ヒドロキシル末端ホスホネートオリゴマーがポリウレタンに組み込まれた、難燃性水性ポリウレタンを記載している。
中国特許出願公開第106496486号は、ヒドロキシル末端ホスホネートモノマーがポリウレタンに組み込まれた、ハロゲンフリー水性ポリウレタン分散物を記載している。
【0008】
水性ポリウレタン分散液にリン系反応性難燃剤を配合することにより、この水性ポリウレタン分散物を乾燥させたフィルムに難燃特性が付与される。これらの水性ポリウレタン分散物には多量の水が含まれているため、リン系反応性難燃剤部分が加水分解条件下で安定であることは必須である。しかるに、ホスフェートポリオール、リン酸エステル、ホスフェートエステル、及びホスフィネートポリオールの使用は、そのリン系反応性難燃剤部分が、リン原子に二重結合した酸素原子のみならず、ポリマー鎖の一部となるリン‐酸素結合も含んでおり、その切断または加水分解によってポリマー鎖が切断されることになるため、危険性を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4046729号明細書
【特許文献2】米国特許第4066591号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0156704号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2017/0190827号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2017/0306122号明細書
【特許文献6】欧州特許第1785439号明細書
【特許文献7】欧州特許第510743号明細書
【特許文献8】米国特許第4343914号明細書
【特許文献9】米国特許第7160974号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2015/0282468号明細書
【特許文献11】中国特許出願公開第106496486号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ポリウレタン鎖に組み込まれ、且つ加水分解条件下で安定な、ハロゲンフリー難燃剤に基づく難燃性を有する、水性ポリウレタン分散物を提供することである。
【0011】
ホスフィンオキシドポリオールを、リン系反応性難燃剤として水性ポリウレタン分散物のポリウレタンに組み込むことにより、こうした水性ポリウレタン分散物の乾燥フィルムに難燃特性が付与され、一方では、リン系反応性難燃剤部分はリン原子に二重結合した酸素原子を含むことが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、難燃特性を有し、且つハロゲンフリーである、水性ポリウレタン分散物の調製方法であって、
i)イソシアネート、ポリオールであって、親水性基を有するポリオール、または塩を形成し得る追加の官能基を有するポリオールを含んでよいポリオール、及びホスフィンオキシドポリオールから、ポリウレタンプレポリマーを合成する工程、
ii)得られたプレポリマーを、任意に他の添加剤を含む水相中に分散させる工程、
iii)前記プレポリマーを水に分散させるのと同時、またはその前もしくは後に、1つ以上の中和剤を添加する工程、
iv)前記分散と同時またはその後に、1つ以上の延長剤と反応させることによってポリウレタンを形成し、その後任意に別の添加剤を加えてよい工程
を含む方法を提供する。
【0013】
本発明の文脈においては、「難燃特性」とは、製品が、炎の伝播を防ぐか、または炎の伝播を低減させることを意味する。 これは、測定のタイプに応じて、センチメートル単位または秒単位で測定可能である。
【0014】
本発明の文脈においては、「ハロゲンフリー」とは、ハロゲン系難燃剤または一般に他のハロゲン含有添加剤が存在しないことを意味する。 一般的に、ハロゲンフリーとは、存在するハロゲンの量が100ppm以下であることを意味する。
【0015】
ポリウレタン分散物は、一般に、ポリウレタンプレポリマーを水中に分散させることによって製造される。適切なプレポリマーは、イソシアネート成分を用いて製造しうる。これらのイソシアネートは、ポリオールと反応させる。好ましいプレポリマーは、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、または芳香族と脂肪族のジイソシアネートの混合物、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、及びこれらの混合物、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,6-ヘキシルジイソシアネート、1,5-ペンチルジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン(2,2,4-異性体、2,4,4-異性体、またはこれらの混合物)、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、ノルボニルジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び/または1,5-ナフチレンジイソシアネートを用いて製造してよい。ポリイソシアネートの混合物が使用でき、また、ウレタン、アロファネート、尿素、ビウレット、カルボジイミド、ウレトンイミン、またはイソシアヌレート残基の導入により変性されたポリイソシアネートもまた使用できる。特に好ましいポリイソシアネートには、脂肪族ポリイソシアネート、例えば、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートが含まれる。
【0016】
プレポリマーの調製に使用してよい、500から6000の範囲の分子量を有するポリマーポリオールには、特に、ジオール及びトリオール及びこれらの混合物が含まれるが、より官能性の高いポリオールもまた、例えば、ジオールと混合される微量成分として使用してよい。前記ポリオールは、ポリウレタン配合物に使用されているかまたは使用が提案されているポリマーポリオールのいずれの化学種のメンバーであってもよい。好ましいポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリオレフィンポリオール、またはポリシロキサンポリオール、あるいはこれらの混合物の群より選択される。好ましいポリオールの分子量は700から4000である。プレポリマーの調製に任意に使用してよい500以下の分子量を有するポリオールには、特に、ジオール及びトリオール、及びこれらの混合物が含まれるが、より官能性の高いポリオールを使用してもよい。こうした低分子量ポリオールの例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、フランジメタノール、グリセロール、及びこうしたポリオールとプロピレンオキシド及び/またはエチレンオキシドとの、分子量499までの反応生成物が含まれる。
【0017】
本発明による使用のためのホスフィンオキシドポリオール、好ましくはジオールまたはトリオールは、一般的に、少なくとも2つのヒドロキシアルキル基、好ましくは3-ヒドロキシプロピル基を含み、且つ式(HO-R’-)2P(=O)Rを有し、ここで、R’基は、例えば炭素原子が2から5の、好ましくは炭素原子が3のアルキル基であり、これは直鎖状であっても、またはさらに置換されていてもよく、Rは、炭素原子が2から8のアルキル、シクロアルキル、またはアリール基であって、ヒドロキシルまたは別のホスフィンオキシドのような追加の官能基をさらに含んでよい。本発明による使用に適したホスフィンオキシドポリオールの例には、メチル-(ビス-n-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド、エチル-(ビス-n-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド、n-ブチル-(ビス-n-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド、イソブチル-(ビス-n-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド、ヘキシル-(ビス-n-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド、フェニル-(ビス-n-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド、4,4’-(メチルホスフィニリデン)ビス-2-ブタノール、1-[(3-ヒドロキシブチル)メチルホスフィニル]-1,3-プロパンジオール、3,3’,3”-ホスフィニリジネトリス[2-メチル-1-プロパノール、3,3’-[(1-メチルプロピル)ホスフィニリデン]ビス-1-プロパノール、3-[ビス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィニル]-2-メチル-1-プロパノール、4,4’,4”-ホスフィニリジネトリス-2-ブタノール、シクロヘキシル(ビス-n-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド、3,3’-(シクロヘキシルホスフィニリデン)ジ-シクロヘキサノール、(トリス-n-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド、n-ヒドロキシエチル(ビス-n-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド、3,3’,3”,3’’’-(1,2-エタンジイルジホスフィニリジン)テトラキス-1-プロパノール、3,3’-(シクロオクチル-ホスフィニリデン)ビス-1-プロパノール、4,4’-(メチルホスフィニリデン)ジ-1-ブタノール、4,4’,4”-ホスフィニリジネトリス-1-ブタノール、4,4’-(ペンチルホスフィニリデン)ビス-1-ブタノール、2,2’-(メチルホスフィニリデン)ビス-エタノール、2,2’-(エチルホスフィニリデン)ビス-エタノール、2,2’-(プロピルホスフィニリデン)ビスエタノール、2,2’-(ブチルホスフィニリデン)ビスエタノール、2,2’-(ドデシルホスフィニリデン)ビスエタノール、2,2’-(フェニルホスフィニリデン)ビスエタノールが含まれる。本発明による使用に特に好ましいホスフィンオキシドポリオールは、イソブチル-(ビス-n-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシドである。
【0018】
本発明によれば、水性ポリウレタン分散液を調製するために、特定のホスフィンオキシドポリオールを1つのみ使用し、あるいはまた、2つ以上の異なるホスフィンオキシドポリオールを使用することができる。本発明の文脈においては、ホスフィンオキシドポリオールの総量は、プレポリマー中のポリオール及びイソシアネート成分の合計質量に対して、一般に1質量%から20質量%、好ましくは2質量%から15質量%、最も好ましくは3質量%から12質量%の間である。難燃特性はポリウレタン中に存在するリンの量に由来し、しかるにホスフィンオキシドポリオールの量に由来することから、ホスフィンオキシドポリオールは量の多いことが望ましい。しかしながら、比較的短いポリオール、例えば本発明のホスフィンオキシドポリオールを組み込むと、ホスフィンオキシドポリオールを含む水性ポリウレタン分散物から得られるコーティングまたは乾燥フィルムはより硬くなるが、これは、可撓性の基材をコーティングする場合には望ましくないため、ホスフィンオキシドポリオールの量も多過ぎてはならない。
【0019】
本発明の文脈では、ホスフィンオキシドポリオールは、プレポリマー中の他の全ての反応性成分と同時に反応させるか、またはイソシアネート成分と他のイソシアネート反応性成分との反応に続いて、イソシアネート成分と最後に反応させる。
【0020】
ポリウレタンの水中での分散性は、プレポリマーに親水性基を組み込むことで達成できる。このため、プレポリマーの形成時に別のポリオール、例えば、ポリエトキシジオール、ポリ(エトキシ/プロポキシ)ジオール、ペンダントエトキシまたは(エトキシ/プロポキシ)鎖を含むジオール、カルボン酸を含むジオール、スルホン基を含むジオール、ホスフェート基を含むジオール、ポリエトキシモノオール、ポリ(エトキシ/プロポキシ)モノオール、ペンダントエトキシまたは(エトキシ/プロポキシ)鎖を含むモノオール、カルボン酸またはスルホン酸もしくは塩を含むモノオール、あるいはこれらの混合物が存在していてもよい。カルボン酸を含むジオールには、カルボキシル基含有ジオール及びトリオール、例えば、式R-C-(CH2-OH)2-COOHのジヒドロキシアルカン酸が含まれる。こうしたカルボキシル含有ジオールの例は、2,2-ジメチロールプロピオン酸及び2,2-ジメチロールブタン酸である。別の有用な酸基含有化合物には、アミノカルボン酸、例えば、リジン、システイン、及び3,5-ジアミノ安息香酸、及びスルホン酸、例えば4,6-ジアミノベンゼン-1,3-ジスルホン酸が含まれる。
【0021】
カルボン酸官能は、一般的に、ポリウレタンプレポリマーの水中への分散中またはその前に、揮発性第三級アミン中和剤で中和されるが、別の既知の中和剤、例えば、アルカリ金属水酸化物も使用することができる。ポリウレタンと、第三級アミン官能性ウレタンポリマーまたはオリゴマー、あるいはこれらの分散物とのいずれもが、水分散性の改善のため、塗布時の基材への接着性の改善のため、性能上の理由のため、あるいは架橋のための潜在的部位として、追加の官能基を含んでいてもよい。適切な官能基は、高い割合でエトキシ官能基を有するポリアルコキシ官能基、第三級アミンまたは第四級アミン官能基、ペルフルオロ官能基、組込みケイ素官能基、ヒドラジド官能基、またはヒドラゾン官能基、ケトン、アセトアセテート、またはアルデヒド官能基、あるいはこれらの混合物である。
【0022】
プレポリマー中に存在する任意の酸基のアニオン性基への変換は、前記酸性基を、水性分散物の形成前、形成後、または形成と同時に中和することによって実施してよい。適切な中和剤には、第三級アミン、例えば、トリプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエチルアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、及びN-エチルモルフォリンが含まれ、また、アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、あるいは、不揮発性第三級アミン、例えば、N-ブチルジエタノールアミン、N,N-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-N’,N’-ジメチルプロパン-1,3-ジアミン、あるいはこれらの混合物が含まれる。
【0023】
プレポリマーは、(比較的)低粘度を達成するために、0%から35質量%の共溶媒を含んでよいが、好ましくは、プレポリマーは、20質量%以下の共溶媒を含む。使用される場合、適切な共溶媒は、N-エチルピロリジン、アセトン、2-ブタノン、2,2’-エチレンジオキシジエチルビス(2-エチルヘキサノエート)、及びジプロピレングリコールジメチルエーテルである。これらの共溶媒は、プレポリマーの粘度を低下させるために使用されるのみならず、これらによれば、分散工程における取り扱いがより簡便になる。
【0024】
本発明の実施において有用なポリウレタンプレポリマーは、従来の方法で、化学量論的に過剰な有機ポリイソシアネートを、500から6000の範囲の分子量を有するポリマーポリオール及び別の必要なイソシアネート反応性化合物と、実質的に無水の条件下にて約30℃から約130℃の間の温度で、イソシアネート基とヒドロキシル基との間の反応が実質的に完了するまで反応させることにより、調製することができる。ポリイソシアネートと活性水素含有成分は、イソシアネート基の数とヒドロキシル基の数との比が約1.1:1から約6:1の範囲内、好ましくは1.5:1から3:1の範囲内となるような割合で反応させるのが好適である。所望により、触媒、例えば、カルボン酸ビスマス、カルボン酸亜鉛、ジラウリン酸ジブチルチン、キレートアルミニウム、キレートジルコニウム、第一スズオクトアート、またはトリエチレンジアミンを使用して、プレポリマーの形成を促進してもよい。
【0025】
本発明の実施に有用なプレポリマーは、分散工程の条件下で実質的に液体であるべきであり、これは、これらのプレポリマーが、ブルックフィールドLVF粘度計を使用して測定して、90℃の温度にて100,000mPa.s以下の粘度を有するべきであることを意味する。
【0026】
本発明は、一般に延長剤を含むが、これは、前記拡張剤をポリウレタンプレポリマーのイソシアネート官能性と反応させることにより、ポリウレタンプレポリマーの分子量を構築するために使用される。プレポリマーと反応させる活性水素含有延長剤は、好適にはポリオール、アミノアルコール、アンモニア、第一級または第二級の脂肪族、脂環式、芳香族、アリール含有脂肪族、または複素環式のアミン、特にジアミン、ヒドラジン、または置換ヒドラジンである。水溶性の延長剤が好ましく、水そのものが有効でありうる。本発明において有用である、適切な延長剤の例には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、フェニレンジアミン、ビス(3-アミノプロピルアミン)、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホン酸ナトリウム、トリレンジアミン、キシレンジアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、3,3’-ジニトロベンジジン、4,4’メチレンビス(2-クロロアニリン)、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニルジアミン、2,6-ジアミノピリジン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、メンタンジアミン、m-キシレンジアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサンメチル-アミン、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホン酸ナトリウム(例えば、Evonik社製Vestamin A95)、リジン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロパン-1-スルホン酸、3-(2-アミノエチルアミノ)プロパン-1-スルホン酸のポリマー(Raschig社製ポリEPS)、N-(2-アミノエチル)-β-アラニネートナトリウム(BASF社製PUD塩)、アミン末端ポリエーテル、例えば、Huntsman Chemical Company社製Jeffamine D-230、及びジエチレントリアミンとアクリレートまたはその加水分解生成物との付加物が含まれる。また、ヒドラジン、アジン、例えばアセトンアジン、置換ヒドラジン、例えばジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレン-ビス-ヒドラジン、カルボジヒドラジン、ジカルボン酸とスルホン酸とのヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、1,3-フェニレンジスルホン酸ジヒドラジド、オメガアミノカプロン酸ジヒドラジド、ラクトンをヒドラジンと反応させることにより製造されるヒドラジド、例えばガンマヒドロキシル酪酸ヒドラジド、ビス-セミ-カルバジド、グリコールのビスヒドラジド炭酸エステル、例えば上記任意のグリコールも好適である。使用される延長剤の量は、プレポリマー中の遊離のNCO基とほぼ同等であるべきであり、鎖延長剤中の活性水素とプレポリマー中のNCO基の比は、好ましくは0.7:1から2.0:1の範囲である。むろん、水を延長剤として使用する場合には、延長剤としても分散媒質としても機能する水が、遊離のNCO基に対して著しく過剰に存在するため、これらの比率は適用されない。
【0027】
ポリウレタンプレポリマーは、分散後の一定期間、いくらかのイソシアネート反応性を保持し得るが、本発明の目的のためには、ポリウレタンプレポリマー分散物は、完全に反応したポリウレタンポリマー分散物であると考えられる。また、本発明の目的のためには、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタンポリマーは、別のタイプの構造、例えば、尿素基を含むことができる。
【0028】
水性ポリウレタン分散物は、分散物の総質量に基づいて、少なくとも30wt%、好ましくは少なくとも35wt%のポリウレタンポリマー粒子を含む。当業者が従来行っている通り、質量パーセントは、どの成分が蒸発し、どの成分が蒸発しないかを考慮して、事前に計算される。固形分の割合は、後の段階で測定して確認するが、そのためには、少量を計量し、その後105℃のオーブンに1時間入れ、残りの量を測定する。このコントロール工程では、ゆっくりと蒸発する成分が存在する場合には、より高温またはより長時間の計画も選択可能である。
【0029】
所望により、乳化剤、消泡剤、難燃剤、増粘剤、安定剤、湿潤剤、殺生物剤、酸化防止剤、及び/または沈降防止剤の量が、プレポリマーまたは水相に含まれていてよく、あるいは、水性ポリウレタン分散物に添加されてもよい。
【0030】
かくして調製されたプレポリマーと水相を混合するとポリウレタン分散物が得られ、拡張剤が水と異なる場合には、拡張剤を、分散工程の前に水相に添加してもよく、または分散工程の間に添加してもよく、または分散工程の後に分散物に添加してもよい。任意に、中和剤、未希釈のまたは水で希釈した添加剤、例えば乳化剤、消泡剤、難燃剤、増粘剤、安定剤、酸化防止剤、及び/または沈降防止剤を、水相または分散物に添加することができる。
【0031】
本発明の水性ポリウレタン分散物の粘度は、ブルックフィールドLVF粘度計を用いて25℃で測定して、一般に1000mPa.sより低く、好ましくは750より低く、より好ましくは500より低く、最も好ましくは250mPa.sより低い。
【0032】
本発明はまた、非常に広い範囲の基材、好ましくは木、紙、織物、プラスチック、及び金属、特に織物のコーティングのための、この水性ポリウレタン分散物の使用に関する。本発明はまた、本発明に従って調製された水性ポリウレタン分散物でコーティングされた基材にも関する。本発明は、さらに、基材、特に織物のコーティングのためのコーティング方法であって、本発明による水性ポリウレタン分散物を基材に塗布することを特徴とする方法に関する。適切な塗布技術は、既知の方法、例えば、ドクターブレードによる塗布、スプレー、キャスティング、またはリバースロールコーターによるコーティングである。
【0033】
上述の具体的な実施態様は、全て本発明による実施態様である。様々な実施態様を相互に組み合わせてもよい。ある特定の実施態様について記載された特徴を取り上げて、物理学的法則がこうした組み合わせを禁じない限りにおいて、他の特定の実施態様に取り込んでも、あるいは他の特定の実施態様と組み合わせてもよい。
【0034】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに詳しく説明される。これらの実施例において言及される成分の重量部及びパーセンテージは、特記のない限り、本明細書及び特許請求の範囲の他の部分における記載と同様に、これらの成分が存在する組成物の全質量に対しての値である。
【実施例
【0035】
実施例1:ポリウレタン分散物の調製
窒素雰囲気下で、分子量2000のヘキサンジオール由来のポリカーボネートジオール425g、ジプロピレングリコールジメチルエーテル250g、トリメチロールプロパン5g、及びジメチロールプロパン酸40gの混合物を、撹拌しながら50℃に加熱した。240gの3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネートを、触媒としての0.05gのK-Kat 348(King Industries社製)と共に加え、混合物を85℃に加熱して1時間撹拌した。その後、35gのイソブチル-(ビス-n-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシドを85℃に保たれた前記混合物に加え、さらに1時間撹拌してポリウレタンプレポリマーを形成した。反応物を冷却し、残存するNCOの量を測定した。450gのプレポリマーと8gのトリエチルアミンとの混合物を作り、この混合物を、520gの水、7gのAerosol OT-75(Cytec Industries社製のジオクチルスルホコハク酸ナトリウムの75%溶液)、及び9gのヒドラジン水和物からなる水相に分散させた。この分散物をさらに15分間撹拌した。この分散物の固形分は35%であった。分散物の粘度は、Brookfield LVF粘度計を用いて25℃で測定して、140mPa.sであった。
【0036】
実施例2:ポリウレタン分散物の調製
窒素雰囲気下で、分子量2000のヘキサンジオール由来のポリカーボネートジオール435g、ジプロピレングリコールジメチルエーテル250g、イソブチル-(ビス-n-ヒドロキシ-プロピル)ホスフィンオキシド65g、及びジメチロールプロパン酸25gの混合物を、攪拌しながら50℃に加熱した。225gの3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシル-イソシアネートを、触媒としての0.05gのK-Kat 348(King Industries社製)と共に加え、混合物を90℃に加熱し、2時間撹拌してポリウレタンプレポリマーを形成した。反応物を冷却し、残存するNCOの量を測定した。450gのプレポリマーと8gのトリエチルアミンとの混合物を作り、この混合物を、520gの水、10gのProvichem 2588P(Proviron Functional Chemicals NV社製の、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムのジプロピレングリコールジメチルエーテル中の50%溶液)、及び7gのヒドラジン水和物からなる水相に分散させた。この分散物をさらに15分間撹拌した。この分散物の固形分は35%であった。分散物の粘度は、Brookfield LVF粘度計を用いて25℃で測定して、900mPa.sであった。
【0037】
実施例3:評価試験
難燃性試験を、水系ポリウレタン分散物と架橋剤との混合物を面ファスナー(hook and loop tape)に塗布し、90℃で2分間乾燥させ、次いで150℃で3分間硬化させた後に行った。面ファスナーに塗布された量は、面ファスナー1平方メートルあたり、50から60gの乾燥混合物であった。面ファスナーは、ナイロンとしても既知の6,6-ポリアミド製であった。テープ質量は、フック黒色テープ(hook black tape)では265g/平方メートルであり、フック赤色テープ(hook red tape)では275g/平方メートルであった。難燃性は、炎(アルコールブンゼンバーナーによる)を10秒間に亘って小形試料(約8×10cm)に当て、炎が完全に消えるまでの、炎が燃焼し続ける時間を測定することによって評価した。また、試料から滴が落ちるのが、燃焼中であるか、消えた際であるのかについても評価した。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例1及び実施例2の混合物で得られた燃焼時間は、ハロゲン成分を含む水性ポリウレタン分散物RU-13-027から作られた参照試料で得られた燃焼時間よりも短かった。これは、フック赤色PA6,6テープ及びフック黒色PA6,6テープのいずれのタイプの面ファスナーについてもそうであった。実施例1、実施例2、及び参照用RU-13-027では、架橋剤として変性メラミンが使用され、実施例1では、架橋剤として水性ポリカルボジイミド架橋剤も架橋剤として使用された。実施例1の混合物で得られた燃焼時間は、水性ポリカルボジイミド架橋剤を用いた場合の方が変性メラミンの場合よりもわずかに長かったが、参照用ハロゲン含有RU-13-027の、架橋剤としての変性メラミンとの混合物よりも依然として短かった。この結果は、ハロゲンフリーの実施例1及び2の混合物は、ハロゲンを含有する参照用RU-13-027の混合物と同様に、より短いかまたは同等の燃焼時間が得られることを示している。
【国際調査報告】