(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】端面発光半導体レーザ
(51)【国際特許分類】
H01S 5/343 20060101AFI20220125BHJP
H01S 5/02 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
H01S5/343 610
H01S5/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021527243
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2019081009
(87)【国際公開番号】W WO2020104251
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】102018129051.9
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヴァーグナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェアナー ベルクバウアー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ アイヒラー
(72)【発明者】
【氏名】アルフレート レル
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク ブリューダール
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ペーター
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AG13
5F173AG14
5F173AG17
5F173AH22
5F173AP82
5F173AR68
5F173AR99
(57)【要約】
ここに示されているのは、第1導波層(3A)と第2導波層(3B)との間に配置された活性層(4)を有する導波領域(3)を含む、窒化物系化合物半導体材料ベースの半導体積層体(10)を備えた端面発光半導体レーザ(100)であり、・半導体積層体(10)は、導波領域(3)の外部に配置されておりかつ導波領域(3)におけるファセット欠陥を低減するための層系(20)を有し、・層系(20)は、材料組成AlxInyGa1-x-yN、ただし0≦x≦1、0≦y<1かつx+y≦1、を有する1つまたは複数の層(21、22)を有し、・層系(20)の少なくとも1つの層(21、22)は、アルミニウムの割合x>0.05またはインジウムの割合y≧0.02を有し、・層系(20)における層応力は、少なくとも部分的に少なくとも2GPaである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導波層(3A)と第2導波層(3B)との間に配置された活性層(4)を有する導波領域(3)を含む、窒化物系化合物半導体材料ベースの半導体積層体(10)を備えた端面発光半導体レーザ(100)であって、
・前記半導体積層体(10)は、前記導波領域(3)の外部に配置されておりかつ前記導波領域(3)におけるファセット欠陥を低減するための層系(20)を有し、
・前記層系(20)は、材料組成Al
xIn
yGa
1-x-yN、ただし0≦x≦1、0≦y<1かつx+y≦1、を有する1つまたは複数の層(21、22)を有し、前記層系(20)の少なくとも1つの層(21、22)は、アルミニウムの割合x≧0.05、またはインジウムの割合y≧0.02を有し、
・層応力は、少なくとも部分的に少なくとも2GPaである、端面発光半導体レーザ(100)。
【請求項2】
前記層系(20)は、少なくとも10nmの厚さを有する1つまたは複数の層(21、22)を有するか、複数の前記層(21、22)から構成される、請求項1記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項3】
前記層系(20)と前記活性層(4)との間の間隔は、少なくとも500nmである、請求項1または2記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項4】
前記層系(20)と前記活性層(4)との間の間隔は、少なくとも1μmである、請求項1から3までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項5】
前記導波領域(3)に広がるレーザビームは、最大強度I
maxを有し、前記層系(20)における前記レーザビームの強度は、0.2×I
maxよりも大でない、請求項1から4までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項6】
前記導波領域(3)は、n型クラッド層(2)とp型クラッド層(6)との間に配置されており、前記層系(20)は、前記半導体レーザの基板(1)と前記n型クラッド層(2)との間に配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項7】
前記層系(20)は、インジウムの割合y≧0.03を有する少なくとも1つのAl
xIn
yGa
1-x-yN層(21)を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項8】
前記層系(20)は、アルミニウムの割合x≧0.1を有する少なくとも1つのAl
xIn
yGa
1-x-yN層(22)を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項9】
前記層系(20)は、前記インジウムの割合および/または前記アルミニウムの割合の勾配を有する少なくとも1つのAl
xIn
yGa
1-x-yN層(21、22)を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項10】
前記層系(20)は、圧縮応力を生成する少なくとも1つのIn
yGa
1-yN層(21)と、引張応力を生成する少なくとも1つのAl
xGa
1-xN層(22)とを有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項11】
前記In
yGa
1-yN層(21)および前記Al
xGa
1-xN層(22)は、互いに直接に隣接している、請求項10記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項12】
前記層系(20)における前記層応力は、少なくとも部分的に前記導波領域(3)よりも大きい、請求項1から11までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項13】
前記層系(20)は、前記層応力が2GPaよりも大きく変化する少なくとも1つの境界面(23)を有する、請求項1から12までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項14】
前記層系(20)は、前記層応力が、圧縮応力から引張応力に、または引張応力から圧縮応力に変化する少なくとも1つの境界面(23)を有する、請求項1から13までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項15】
前記層系(20)は、交互に重なる複数のInGaN層(21)およびAlGaN層(22)を有する、請求項1から14までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項16】
前記層系(20)は少なくとも3個かつ最大で100個の層(21、22)を有する、請求項1から15までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項17】
前記端面発光半導体レーザ(100)は、前記導波領域(3)にファセット欠陥を有しない第1レーザファセットおよび第2レーザファセットを有する、請求項1から16までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項18】
前記端面発光半導体レーザ(100)は、前記層系(20)の前記領域にファセット欠陥を有する第1レーザファセットおよび第2レーザファセットを有する、請求項1から17までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項19】
前記端面発光半導体レーザ(100)は、隣り合って配置された複数のエミッタを有するレーザバーである、請求項1から18までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項20】
前記層系(20)は、GaN層に隣接し、前記層系全体によって生じる曲げはゼロに等しい、請求項1から19までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端面発光半導体レーザに関する。
【0002】
本特許出願は、ドイツ国特許出願第102018129051.9号明細書の優先権を主張するものであり、その開示内容は、引用によってここに取り込まれるものとする。
【0003】
端面発光半導体レーザは、半導体積層体の層平面に対して平行に延在するレーザ共振器を有し、ここではレーザファセットが半導体積層体の側端によって形成される。レーザファセットの作製は、一般にスクライブおよびブレイクによって行われる。
【0004】
スクライブおよびブレイクによってレーザファセットを作製する際には、異なる応力を有する、エピタキシャル成長させられた半導体層の境界面においてファセット欠陥(Facettenstoerung)が発生してしまうリスクがある。特にレーザファセットを構成するブレイク端面において、いわゆるファセット転位(Querfacette)が生じてしまうことがある。これは、層平面に対して所望のように正確に垂直に延在しない、ブレイク端面の領域のことである。例えば、このようなファセット転位により、ブレイク端面に段が構成されてしまうことがある。特にファセット転位のようなファセット欠陥により、レーザファセットの品質が低下してしまう。これは、レーザファセットの温度の上昇と、端面発光半導体レーザの効率および安定性の低下とに結び付いてしまうことがある。さらに、ファセット欠陥により、半導体レーザの遠方場において不均一性が生じてしまうことがあり、この不均一性は、特にレーザベースのプロジェクション応用には不都合である。
【0005】
したがって、解決すべき課題は、レーザファセットの品質を改善する点において優れている端面発光半導体レーザを提供することである。
【0006】
この課題は、独立請求項1に記載された端面発光半導体レーザによって解決される。本発明の有利な実施形態および発展形態は、従属請求項の対象である。
【0007】
少なくとも1つの実施形態において、端面発光半導体レーザは、窒化物系化合物半導体材料ベースの半導体積層体を有する。本発明の関連において「窒化物系化合物半導体材料ベース」とは、半導体積層体またはその少なくとも1つの層が、III族窒化物・化合物半導体材料、好適にはAlxInyGa1-x-yN、ただし0≦x≦1、0≦y≦1かつx+y≦1、を有することを意味する。この材料は、必ずしも上記の式にしたがう数学的に正確な組成を有しなくもよい。むしろ1つまたは複数のドーピング材料および付加的な構成成分を有していてよい。しかしながらわかり易くするため、上記の式には、少量の別の材料によって部分的に置き換えられることがあるとしても、結晶格子の重要な構成成分(In、Al、Ga、N)だけ含まれている。窒化物系化合物半導体ベースのレーザダイオードは、材料組成に応じて、特に、紫外光、青色光または緑色光のスペクトル領域におけるビームの発光に適している。
【0008】
一実施形態によれば、端面発光半導体レーザには、第1導波層と第2導波層との間に配置された活性層を有する導波領域が含まれている。導波領域は、第1クラッド層と第2クラッド層との間に配置可能であり、これらのクラッド層は、導波層よりも屈折率が小さく、したがって活性層内で生成されるレーザビームの導波が導波領域において行われる。第1導波層および第2導波層は、例えばInGaNを有していてよい。導波層におけるインジウムの割合により、バンドギャップが減少しかつ屈折率が増大する。このことは、例えばAlGaNまたはGaNを有するクラッド層に対して大きな屈折率コントラストを達成するために有利である。
【0009】
活性層は、例えば、pn接合部として、ダブルヘテロ構造として、単一量子井戸構造もしくは多重量子井戸構造として構成されていてよい。量子井戸構造という用語には、荷電粒子が、閉じ込め(コンファインメント)により、そのエネルギ状態が量子化される任意の構造が含まれる。特に、量子井戸構造という語には、量子化の次元について記述は含まれない。したがって量子井戸構造には、特に、量子井戸、量子細線および量子ドットおよびこれらの構造の任意の組み合わせが含まれる。
【0010】
少なくとも1つの一実施形態によれば、半導体積層体は、導波領域の外部に配置されておりかつ導波領域におけるファセット欠陥を低減するための層系を有する。この層系は、材料組成AlxInyGa1-x-yN、ただし0≦x≦1、0≦y<1かつx+y≦1、を有する1つまたは複数の層、好適には少なくとも1つの層、ただし0<x≦0.3かつ/または0<y<0.1、を有する。材料系AlxInyGa1-x-yNでは、アルミニウムの割合xを増大させると、格子定数が減少し、これによりAlを含有するAlxInyGa1-x-yN層により、引張応力を生成可能である。さらに、材料系AlxInyGa1-x-yNでは、インジウムの割合yを増大させると、格子定数が増大し、これによりInを含有するAlxInyGa1-x-yN層により、圧縮応力を生成可能である。
【0011】
少なくとも1つの実施形態によれば、層系の少なくとも1つの層は、アルミニウムの割合x≧0.05またはインジウムの割合y≧0.02を有する。これにより、この層系では、引張応力または圧縮応力が生成される。
【0012】
少なくとも1つの実施形態によれば、層系における層応力は、少なくとも部分的に少なくとも2GPaである。層応力は、プラスまたはマイナスの符号を有することができ、すなわち圧縮応力または引張応力であってよい。ここで説明される端面発光半導体レーザは特に、導波領域よりも大きな層応力が存在するように材料組成が選択されている層系を導波領域の外部に配置するという着想を利用している。ここで判明したのは、スクライブおよびブレイクによってレーザファセットを作製する際、特にファセット転位のようなファセット欠陥が、大きな層応力が存在する境界面に生じ得ることである。特に、このようなファセット欠陥は、層応力が最大である、半導体積層体の境界面に生じる。本発明で提案される原理によれば、少なくとも2GPaでありかつ好適には導波領域における最大層応力よりも大きな層応力を、導波領域の外部に意図的に生成する。スクライブおよびブレイクの際に半導体積層体内にファセット欠陥が発生する場合、これは、極めて高い確率で、導波領域の外部に配置されている、層系の領域において生じる。これにより、有利には、レーザビームが端面発光半導体レーザから出射する領域においてレーザファセットの品質を低下させてしまうファセット欠陥が導波領域に生じてしまうリスクが低減される。むしろ、層系に生成される層応力は、導波領域の外部に配置されている領域に、このようなファセット欠陥のリスクを移動させる。
【0013】
さらに層系は、大きな層応力に起因して、この層系により、半導体積層体に広がる結晶欠陥、特にファセット欠陥が広がるのを阻止することできるという特性を有する。このようなファセット欠陥は、大きな層応力を有する境界面において、境界面に対して平行な方向に折れ曲がり、したがって垂直方向にはもはや広がらないことが可能である。これにより、このようなファセット欠陥が、導波領域まで広がってしまうリスクが低減され、特に、活性層の領域において水平方向に延在するファセット欠陥が回避される。
【0014】
少なくとも1つの実施形態によれば、層系は、それぞれ少なくとも10nm、好ましくは少なくとも20nm、特に好ましくは少なくとも30nmの厚さの1つまたは複数の層を有する。層系は好ましくは、それぞれ少なくとも10nm、好ましくは少なくとも20nm、特に好ましくは少なくとも30nmの厚さの1つまたは複数の層から構成される。これらの厚さは、所望の大きな層応力、特に少なくとも2GPaの層応力を達成するために有利である。というのは、層応力は層厚の増大に伴って増大するからである。層系の層は、例えば、それぞれ10nm~1μmの、好ましくは20nm~500nmの、特に好ましくは30nm~200nmの厚さを有する。
【0015】
少なくとも1つの実施形態によれば、層系と活性層との間の間隔は、少なくとも500nmである。特に好ましくは、層系と活性層との間の間隔は、少なくとも1μmである。層系と活性層との間の可能な限りに大きな間隔により、ファセット欠陥が、端面発光半導体レーザの光学的な活性領域に生じてしまうリスクが低減される。
【0016】
少なくとも1つの実施形態によれば、導波領域に広がるレーザビームは、最大強度Imaxを有し、層系におけるレーザビームの強度は、0.2×Imaxよりも大でない。好ましくは、層系におけるレーザビームの強度は、0.1×Imaxよりも大でなく、特に好ましくは0.05×Imaxよりも大でない。この場合に層系は、有利には、レーザビームの強度が、最大値の20%だけ、10%だけ、または5%だけになるように導波領域から離れている。したがって層系の領域にファセット欠陥が生じる場合、このファセット欠陥は、半導体レーザの効率には極めてわずかな影響しか及ぼさない。
【0017】
少なくとも1つの実施形態によれば、導波領域は、n型クラッド層とp型クラッド層との間に配置されている。特にn型クラッド層と、第1導波層と、活性層と、第2導波層と、p型クラッド層とは、ここに挙げた順序で半導体積層体内に配置されている。このことは、上記の層の間に1つまたは複数の別の層が配置されることを除外しない。クラッド層、導波層および活性層はそれぞれ、個別層によって形成されるか、または複数の部分層を有していてよい。好適にはn型クラッド層は、半導体レーザの基板側を向いている。半導体レーザの基板は好適にはGaN基板である。導波領域におけるファセット欠陥を低減する層系は好適には、基板とn型クラッド層との間に配置されている。層系をこの領域に、特にn型クラッド層の外部に配置する際には、層系におけるレーザビームの強度は特に小さく、これにより、場合によって起こり得るファセット欠陥は、半導体レーザの効率に極めてわずかな影響しか及ぼさない。
【0018】
少なくとも1つの実施形態によれば、層系には、インジウムの割合y≧0.03を有する少なくとも1つのAlxInyGa1-x-yN層が含まれている。好ましくはy≧0.05、特に好ましくはy≧0.07である。層におけるインジウムの割合が大きければ大きいほど、より大きな圧縮応力を生成可能である。しかしながら結晶格子にインジウムを組み入れることによって結晶品質が過度に損なわれないようにするために、インジウムの割合は大きすぎないようにすべきであり、したがって好適にはy≦0.1である。好適にはインジウムを含有する層においてx=0であり、すなわちこの層は、InyGa1-yN層である。
【0019】
少なくとも1つの実施形態によれば、層系には、アルミニウムの割合x≧0.1を有する少なくとも1つのAlxInyGa1-x-yN層が含まれている。好ましくはx≧0.15、特に好ましくはx≧0.2である。層におけるアルミニウムの割合が大きければ大きいほど、より大きな引張応力を生成可能である。好適にはアルミニウムを含有する層においてy=0であり、すなわちこの層は、AlxGa1-xN層である。
【0020】
少なくとも1つの実施形態によれば、層系は、インジウムの割合および/またはアルミニウムの割合の勾配を有する少なくとも1つのAlxInyGa1-x-yN層を有する。このような勾配により、層応力を連続して増大または減少させることが可能である。
【0021】
少なくとも1つの実施形態によれば、層系は、x>0を有する少なくとも1つのAlxGa1-xN層と、y>0を有するInyGa1-yN層とを有する。少なくとも1つのAlGaN層および少なくとも1つのInGaN層を組み合わせることにより、特に、反対の符号を有する応力を層系に生成可能である。好ましい一実施形態では、AlGaN層およびInGaN層は互いに、直接に隣接している。これにより、特に、層応力の急峻な変化を層系に生成可能である。層応力が急峻に変化する境界面では、ファセット欠陥が境界面に対して平行に誘発される確率が特に高い。
【0022】
少なくとも1つの実施形態によれば、層系は、層系における層応力が導波領域よりも大きくなるような材料組成を有する。これにより、導波領域におけるファセット欠陥のリスクが低減される。
【0023】
少なくとも1つの実施形態によれば、層系は、層応力が2GPaよりも大きく変化する少なくとも1つの境界面を有する。層応力が、少なくとも2GPaは変化するこのような境界面は、ファセット欠陥を誘発するのに特に良好に適している。
【0024】
少なくとも1つの実施形態によれば、層系は、層応力が、圧縮応力から引張応力に、または引張応力から圧縮応力に変化する少なくとも1つの境界面を有する。この境界面は、例えば、AlGaN層とInGaN層との間の境界面であってよい。
【0025】
少なくとも1つの実施形態によれば、層系は、交互に重なり合う複数のAlGaN層およびInGaN層を有する。層系は、特に、交互に重なり合うAlGaN層およびInGaN層から成る複数の層対を有する超格子を有していてよい。交互に重なり合うAlGaN層およびInGaN層から成るこのような層系では、応力状態が変化する複数の境界面が存在する。このような層系は、ファセット欠陥を誘発するのに特に良好に適している。
【0026】
少なくとも1つの実施形態によれば、層系は少なくとも3個かつ最大で100個の層を有する。大きな応力が生じる境界面の個数を増大させることにより、ファセット欠陥が誘発される確率を増大させることができる。
【0027】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、導波領域にファセット欠陥を有しない第1レーザファセットおよび第2レーザファセットを有する。半導体レーザが導波領域にファセット欠陥を有しないようにすることは、本発明で説明される端面発光半導体レーザにおいて、特に、導波領域におけるファセット欠陥を低減する上で説明した層系によって実現される。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1レーザファセットまたは第2レーザファセットは、層系の領域にファセット欠陥を有する。このファセット欠陥は、層系に生成される層応力によって引き起こされ得る。このファセット欠陥は、この場合、導波領域の外部に存在し、導波領域の領域におけるファセット欠陥を阻止するために容認される。
【0029】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、隣り合って配置された複数のエミッタを有するレーザバーである。レーザバーでは、導波領域の領域においてファセット欠陥を回避することが特に重要である。というのは、レーザバーでは、ただ1つのエミッタの故障が、レーザバー全体の故障に結び付き得るからである。
【0030】
少なくとも1つの実施形態によれば、層系は、GaN層に隣接する。GaN層は、特に成長方向に層系に直接に続いている。層系の材料は、好適には、層系全体によって生じる曲げがゼロに等しくなるように選択されている。
【0031】
以下では
図1~26に関連し、実施例に基づき、端面発光半導体レーザを詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】一実施例による端面発光半導体レーザの概略断面図である。
【
図2】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示する線図である。
【
図3】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示する別の線図である。
【
図4】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図5】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図6】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図7】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図8】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図9】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図10】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図11】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図12】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図13】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図14】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図15】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図16】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図17】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図18】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図19】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図20】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図21】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図22】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図23】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図24】端面発光半導体レーザの種々異なる実施例における層系の応力σの経過(それぞれ下側の曲線)および曲げBの経過(それぞれ上側の曲線)を略示するさらに別の線図である。
【
図25】端面発光半導体レーザの一実施例における半導体積層体のレーザビームの強度Iおよび屈折率nの経過を示す線図である。
【
図26】別の一実施例による端面発光半導体レーザの概略断面図である。
【0033】
同じ構成要素または同じ作用を有する構成要素には、複数の図面においてそれぞれ同じ参照符号が付されている。図示された構成要素および構成要素相互の大きさの比は、縮尺通りとみなしてはならない。
【0034】
図1には、端面発光半導体レーザ100の一実施例が断面図で示されている。端面発光半導体レーザ100は、基板1の成長方向zに成長させられた半導体積層体10を有する。半導体積層体10は、窒化物系化合物半導体ベースであり、すなわち半導体積層体10の半導体層は、特にAl
xIn
yGa
1-x-yN、ただし0≦x≦1、0≦y≦1かつx+y≦1、を有する。基板1は、窒化物系化合物半導体を成長させるのに適した基板、好適にはGaN基板である。
【0035】
レーザビームを生成するために、端面発光半導体レーザ100には、好適には単一井戸構造または多重井戸構造として構成されている活性層4が含まれている。活性層4は、複数の部分層、特に複数のバリア層および1つまたは複数の量子井戸層の列を有していてよく、これらの量子井戸層は、
図1では簡略化のために詳細には示されていない。端面発光半導体レーザ100は、成長方向zに対して垂直方向に、すなわち活性層4の層平面に対して平行にレーザビームを発光する。
【0036】
活性層4は、第1導波層3Aと第2導波層3Bとの間に配置されており、第1導波層3Aはn側が、また第2導波層3Bはp側が活性層4に隣接している。導波層3A、3Bはそれぞれ1つの個別層であってよいか、または複数の部分層を有してもよい。活性層4に直接に隣接する第1導波層3Aおよび第2導波層3Bは、それぞれGaNまたは好適にはInGaNを有する。導波層3A、3Bにおけるインジウムの割合により、バンドギャブが減少しかつ屈折率が増大する。第1導波層および第2導波層は、特にInyGa1-yN、ただし0.005≦y≦0.1、好ましくはInyGa1-yN、ただし0.02≦y≦0.07、特に好ましくは、InyGa1-yN、ただし0.03≦y≦0.05を有していてよい。
【0037】
活性層4および導波層3A、3Bは、導波領域3を構成する。導波領域3はn型クラッド層2とp型クラッド層6との間に配置されている。導波領域3においてレーザビームをガイドするためにn型クラッド層2およびp型クラッド層6は、導波層3A、3Bよりも小さな屈折率を有する。これは、例えば、クラッド層2、6が、少なくとも部分的に、導波層3A、3Bよりも大きなアルミニウムの割合を有しかつ/または小さなインジウムの割合を有し、このことから、結果的に電子的なバンドギャップがより大きくなりかつ屈折率がより小さくなることによって実現される。n型クラッド層2およびp型クラッド層6はそれぞれ、個別層であってよいかまたは複数の部分層を有していてよい。
【0038】
図1の実施例では第2導波層3Bとp型クラッド層6との間には選択的な電子バリア層5が配置されている。電子バリア層5は好適には、p型クラッド層6よりも大きなアルミニウムの割合を有し、さらにこれに対応して大きなバンドギャップを有する。電子バリア層5は特にAl
xGa
1-xNを有していてよく、アルミニウムの割合xは、0.05~0.4、好ましくは0.1~0.3、特に好ましくは0.15~0.25である。電子バリア層5は、隣接する第2導波層3Bよりも大きなバンドギャップE
gを有する。このことにより、電子が導波領域3を離れることが阻止される。さらに、大きなバンドギャップにより、有利には導波層3A、3Bに比べて小さな屈折率が結果的に得られる。これにより、導波領域3における導波が改善される。
【0039】
p型クラッド層6は、活性層4とは反対側を向いた面においてpコンタクト層7に続いている。pコンタクト層7は、特に、GaN層またはInGaN層であってよい。pコンタクト層7は、有利には高濃度にドーピングされているpドープ層である。pコンタクト層7におけるドーパント濃度は、有利には少なくとも5×1019cm-3、好ましくは少なくとも1×1020cm-3である。pコンタクト層7は、特にpコンタクト層7がより高いドーパント濃度を有することにより、p型クラッド層6と区別することができる。
【0040】
pコンタクト層7にはp接続層8が配置されている。さらに端面発光半導体レーザ100は、例えば基板1の背面におけるn接続層9を有する。p接続層8およびn接続層9は、例えば金属または金属合金を有していてよい。
【0041】
半導体積層体10は、導波領域3におけるファセット欠陥を低減するかまたは好適には完全に回避するように構成された層系20を有する。このために層系20は、導波領域3の外部に配置されている。
図1の実施例において、層系20は、例えばGaN基板である基板1とn型クラッド層2との間に配置されている。層系20では、場合によっては生じるファセット欠陥が半導体積層体10の隣接領域に広がることを阻止するのに適した応力が、材料組成の変化によって生成される。層系20は、ファセット欠陥が、大きな応力を有する境界面において発生するかまた広がるという知識を利用している。層系20では、材料組成を用いて、特に2GPaよりも大きな応力が生成される。
【0042】
したがって、特に、スクライブおよびブレイクによってレーザファセットを作製する際に生じ得る、半導体積層体10の機械的な負荷の際にファセット欠陥が生じる場合、このファセット欠陥は、高い確率で、層系20における大きな応力を有する境界面に生じ、かつ/または大きな応力を有するこのような境界面では、境界面に対して平行に誘発され得る。したがって層系20の導波領域3の外部に所期のように層応力を形成することにより、有利には導波領域3におけるファセット欠陥を回避可能である。
【0043】
図1の実施例において層系は、GaN基板1に続くIn
yGa
1-yN層21と、In
yGa
1-yN層21に配置されたAl
xGa
1-xN層22とを有する。In
yGa
1-yN層21およびAl
xGa
1-xN層22はそれぞれ、勾配層として実施されており、In
yGa
1-yN層21におけるインジウムの割合yは、成長方向zにy=0からら=0.05に上昇し、Al
xGa
1-xN層22におけるアルミニウムの割合xは、成長方向にx=0.18からx=0に下降する。
【0044】
層系20における材料組成によって生じる応力σおよびこのような応力から結果的に生じる曲げBは、
図2において、成長方向に延在する座標zに依存して示されている。
図2の線図および後続の線図において、線図の最初の100nmおよび最後の100nmはそれぞれ、層系20の外部の領域に関係している。すなわち
図2においてz=100nm~z=500nmの領域は、層系20の領域を表す。
【0045】
図2の層系20では、In
yGa
1-yN勾配層21は、約200nmの厚さを有し、成長方向に上昇するインジウムの割合より、増大する圧縮応力σおよび増大する曲げBが生じる。同様に厚さ約200nmのAl
xGa
1-xN層22との境界面23において、大きなアルミニウムの割合x=0.18により、引張応力への変化が行われる。この場合に成長方向における応力σおよび曲げBは、アルミニウムの割合の下降に伴って再び減少し、これにより、Al
xGa
1-xN層22を成長させた後には応力σ=0および曲げB=0になる。
【0046】
この層系では、隣接する層21、22間の境界面23の領域おいて半導体層21、22のドーピング、例えばSi、Ge、C、OまたはMgによるドーピングを行うことが可能である。ドーピングスパイク(Dotierspike)とも称される、境界面23における薄いドーピング領域により、境界面23において圧電場によって生じ得る電圧降下を回避可能である。
【0047】
一般に圧縮層応力を生成するためにインジウム含有層21を使用し、引張層応力を生成するためにアルミニウム含有層22を使用することが可能である。さらに、層応力を生成するかまたは強化するためにドーピングを使用することができ、例えばSiドーピングにより、引張層応力を生じさせることが可能である。
【0048】
図3には、層系の別の実施例における応力σおよび曲げBの経過が示されている。この層系は、GaN基板1に続く厚さ200nmのIn
yGa
1-yN勾配層21を有し、インジウムの割合は、成長方向にy=0からy=0.05に上昇している。In
yGa
1-yN勾配層21には、厚さ730nmのAl
xGa
1-xN勾配層22が配置されており、アルミニウムの割合は、成長方向にx=0.05からx=0に下降している。層21、22の境界面23では、応力が最大であり、全体応力はゼロに等しい。
【0049】
図4には、層系の別の実施例における応力σおよび曲げBの経過が示されている。この層系は、GaN基板1に続く厚さ200nmのIn
yGa
1-yN勾配層21を有し、インジウムの割合は、成長方向にy=0からy=0.05に上昇している。In
yGa
1-yN勾配層21には、厚さ72nmのAl
xGa
1-xN層22が配置されており、アルミニウムの割合x=0.25である。層21、22の境界面23では、応力が最大であり、全体応力はゼロに等しい。
【0050】
図5には、層系の別の実施例における応力σおよび曲げBの経過が示されている。この層系は、GaN基板1に続く厚さ200nmのIn
yGa
1-yN勾配層21を有し、インジウムの割合は、成長方向にy=0.05からy=0に下降している。In
yGa
1-yN勾配層21には、厚さ200nmのAl
xGa
1-xN勾配層22が配置されており、アルミニウムの割合は、成長方向にx=0からx=0.18に上昇している。層21、22間の境界面23では、層応力の符号が変化し、すなわち層応力が、圧縮応力から引張応力に変化している。全体応力はゼロに等しい。
【0051】
図6には、層系の別の実施例における応力σおよび曲げBの経過が示されている。この層系は、GaN基板1に続く厚さ200nmのAl
xGa
1-xN勾配層22を有し、アルミニウムの割合は、成長方向にx=0.18からx=0に下降している。基板1とAl
xGa
1-xN勾配層22との間の境界面23において応力が最大である。前の複数の実施例とは異なり、この層系の全体応力はゼロに等しくなく、むしろこの層系には全体として引張応力が加えられている。このような引張力の全体応力は、レーザファセットを背面からブレイクさせる場合に有利になり得る。
【0052】
図7には、層系の別の実施例における応力σおよび曲げBの経過が示されている。この層系は、GaN基板1に続く厚さ200nmのAl
xGa
1-xN勾配層22を有し、アルミニウムの割合は、成長方向にx=0からx=0.18に上昇している。基板とは反対側を向いた、Al
xGa
1-xN勾配層22の境界面23において応力が最大である。前の実施例の場合と同様にこの層系には全体として引張応力が加えられている。このような引張力の全体応力は、レーザファセットを背面からブレイクさせる場合に有利になり得る。
【0053】
図8には、層系の別の実施例における応力σおよび曲げBの経過が示されている。この層系は、GaN基板1に続く厚さ150nmのAl
xGa
1-xN勾配層22を有し、アルミニウムの割合は、成長方向にx=0からx=0.18に上昇している。Al
xGa
1-xN勾配層22には、厚さ50nmのIn
yGa
1-yN勾配層21が配置されており、インジウムの割合は成長方向にy=0.05からy=0に下降している。層21、22の境界面23では、応力が最大であり、この層系には、前の2つの実施例と同様に全体として引張応力が加えられている。
【0054】
図9には、層系の別の実施例における応力σおよび曲げBの経過が示されている。この層系は、GaN基板1に続く厚さく50nmのIn
yGa
1-yN勾配層21を有し、インジウムの割合は、成長方向にy=0からy=0.07に上昇している。In
yGa
1-yN勾配層21には、厚さ150nmのAl
xGa
1-xN勾配層22が配置されており、アルミニウムの割合は成長方向にx=0.2からx=0に下降している。層21、22の境界面23では応力が最大であり、この層系には、前の3つの実施例と同様に全体として引張応力が加えられている。
【0055】
図10には、層系の別の実施例における応力σおよび曲げBの経過が示されている。この層系は、GaN基板1に続く厚さ100nmのIn
yGa
1-yN勾配層21Aを有し、インジウムの割合は、成長方向にy=0からy=0.07に上昇している。In
yGa
1-yN勾配層21Aには、厚さ100nmの別のIn
yGa
1-yN勾配層21Bが配置されており、インジウムの割合は成長方向にy=0.07からy=0に下降している。前の複数の実施例とは異なり、この層系には全体として圧縮応力が加えられている。このような圧縮力の全体応力は、レーザファセットを前面からブレイクさせる場合に有利になり得る。
【0056】
図11には、層系の別の実施例における応力σおよび曲げBの経過が示されている。この層系は、GaN基板1に続く厚さ100nmのIn
yGa
1-yN勾配層21Aを有し、インジウムの割合は、成長方向にy=0からy=0.04に上昇している。これには、厚さ100nmの、一定のインジウムの割合y=0.04を有するIn
yGa
1-yN層21Bが続いている。In
yGa
1-yN層21Bには、厚さ100nmのIn
yGa
1-yN勾配層21Cが配置されており、インジウムの割合は成長方向にy=0.04からy=0に下降している。前の実施例の場合と同様にこの層系には全体として圧縮応力が加えられている。
【0057】
図12には、層系の別の実施例における応力σおよび曲げBの経過が示されている。この層系は、GaN基板1に続く厚さ200nmのIn
yGa
1-yN勾配層21を有し、インジウムの割合は、成長方向にy=0.05からy=0に下降している。基板1とIn
yGa
1-yN勾配層21との間の境界面23において応力が最大である。前の実施例の場合と同様にこの層系には全体として圧縮応力が加えられている。
【0058】
図13、
図14および
図15には、層系の別の実施例における応力σおよび曲げBの経過が示されており、これらの実施例はそれぞれ、交互に重なり合うIn
yGa
1-yN層21とAl
xGa
1-xN層22とから成る超格子構造を有する。
図13の実施例において、層系は、厚さ20nmおよびインジウムの割合y=0.05を有するIn
yGa
1-yN層21と、厚さ20nmおよびアルミニウムの割合x=0.15を有するAl
xGa
1-xN層22とが交互に重なり合う層系を有する。
図14の実施例において、層系は、厚さ25nmおよびy=0.08からy=0に下降するインジウムの割合を有するIn
yGa
1-yN勾配層21と、厚さ25nmおよびx=0からx=0.2に上昇するアルミニウムの割合を有するAl
xGa
1-xN勾配層22とが交互に重なり合う層系を有する。
図15の実施例において、層系は、厚さ25nmおよびy=0.04からy=0に下降するインジウムの割合を有するIn
yGa
1-yN勾配層21と、厚さ25nmおよびx=0からx=0.22に上昇するアルミニウムの割合を有するAl
xGa
1-xN勾配層22とが交互に重なり合う層系を有する。超格子構造は、これが、場合によって生じ得るファセット欠陥の広がりを阻止可能な多数の境界面を有するという利点を有する。
【0059】
次の
図16、
図17および
図18には、大きな応力を有するそれぞれ2つの境界面が接近して隣り合っており、これにより、ファセット欠陥の広がりが、可能な限りに小さく定められた領域において阻止される、層系の別の実施例における応力σおよび曲げBの経過が示されている。
【0060】
図16の実施例において、層系は、GaN基板1から出発して、成長方向にy=0からy=0.05に上昇するインジウムの割合を有する厚さ50nmのIn
yGa
1-yN勾配層21Aと、成長方向にy=0.05からy=0に下降するインジウムの割合を有する厚さ30nmのIn
yGa
1-yN勾配層21Bと、成長方向にx=0からx=0.22に上昇するアルミニウムの割合を有する、厚さ30nmのAl
xGa
1-xN勾配層22Aと、成長方向にx=0.22からx=0に下降するアルミニウムの割合を有する、厚さ30nmのAl
xGa
1-xN勾配層22Bと、成長方向にy=0からy=0.05に上昇するインジウムの割合を有する、厚さ30nmのIn
yGa
1-yN勾配層21Cと、成長方向にy=0.05からy=0に下降するインジウムの割合を有する、厚さ50nmのIn
yGa
1-yN勾配層21Dと、を有する。
【0061】
図17の実施例において、層系は、GaN基板1から出発して、成長方向にy=0からy=0.05に上昇するインジウムの割合を有する、厚さ50nmのIn
yGa
1-yN勾配層21Aと、x=0.25のアルミニウムの割合を有する、厚さ10nmのAl
xGa
1-xN層22と、成長方向にy=0.05からy=0に下降するインジウムの割合を有する、厚さ50nmのIn
yGa
1-yN勾配層21Bと、を有する。
【0062】
図18の実施例において、層系は、GaN基板1から出発して、成長方向にx=0からx=0.12に上昇するアルミニウムの割合を有する、厚さ100nmのAl
xGa
1-xN勾配層22Aと、y=0.05のインジウムの割合を有する、厚さ30nmのIn
yGa
1-yN層21と、成長方向にx=0.12からx=0に下降するアルミニウムの割合を有する、厚さ100nmのAl
xGa
1-xN勾配層22Bと、を有する。
【0063】
次の
図19、
図20および
図21には、それぞれ交代し合うAl
xGa
1-xN層22およびIn
yGa
1-yN層21を有する層系の別の実施例における応力σおよび曲げBの経過が示されている。
図19の実施例では、Al
xGa
1-xN層22のアルミニウムの割合が、1つの層から別の1つの層へと減少するのに対し、In
yGa
1-yN層21は、それぞれ同じインジウムの割合を有する。
図20の実施例では、Al
xGa
1-xN層22のアルミニウムの割合が、1つの層から別の1つの層へと減少し、In
yGa
1-yN層21のインジウムの割合は、1つの層から別の1つの層へと増大する。
図21の実施例では、Al
xGa
1-xN層22のアルミニウムの割合も、In
yGa
1-yN層21のインジウムの割合も共に1つの層から別の1つの層へと減少する。
【0064】
図22、
図23および
図24には、それぞれ交代し合うAl
xGa
1-xN層22およびIn
yGa
1-yN層21を有する層系の別の実施例における応力σおよび曲げBの経過が示されている。これらの実施例においてAl
xGa
1-xN層22はそれぞれ同じアルミニウムの割合を有し、In
yGa
1-yN層21はそれぞれ同じインジウムの割合を有する。しかしながらこれらの層系において、Al
xGa
1-xN層22およびIn
yGa
1-yN層21の厚さが変化する。
【0065】
図25には、端面発光半導体レーザの一実施例におけるレーザビームの強度Iおよび屈折率nの経過が(共に任意単位で)表面から測定した深さtに応じて略示されている。レーザビームは、活性層4の領域において最大強度を有する。層系20の位置において、強度は、最大強度の20%よりも小さく、好ましくは10%よりも小さく、特に好ましくは5%よりも小さい。これは、特に層系20と活性層4との間の十分に大きな間隔によって実現可能であり、この間隔は、少なくとも500nm、好ましくは少なくとも1μmである。
【0066】
図26には、端面発光半導体レーザ100の別の一実施例が断面図で略示されている。半導体積層体10の層の配置は、
図1の実施例に対応し、したがって再度詳しく説明しない。
図1の実施例との相違は、ここで示された端面発光半導体レーザ100が、隣り合って配置された複数のエミッタを有するレーザバーであることである。レーザバーの表面には、隣り合って配置された複数のリッジ導波体11が構成されており、リッジ導波体11にはそれぞれ1つのp接続層8が配置されている。p接続層8はそれぞれリッジ導波体11の上面に接触接続されており、それ以外ではパッシベーション層12によって半導体積層体10から電気的に絶縁されている。導波領域3におけるファセット欠陥を低減する層系20は、
図1の実施例の場合と同様に、例えば、基板1とn型クラッド層2との間に配置可能である。ファセット欠陥を低減する層系20は、レーザバーにおいて特に有利である。というのは、ただ1つのエミッタのファセット欠陥が、レーザバー全体の故障に結び付き得るからである。
【0067】
本発明は、実施例に基づく説明には限定されない。むしろ本発明には、あらゆる新たな特徴および特徴のあらゆる組み合わせが含まれるのであり、これには、特に特許請求の範囲における特徴のあらゆる組み合わせが含まれており、この特徴または組み合わせそれ自体が特許請求の範囲または実施例に明示的に示されていない場合であっても含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 基板
2 n型クラッド層
3A 第1導波層
3B 第2導波層
4 活性層
5 電子バリア層
6 p型クラッド層
7 pコンタクト層
8 p接続層
9 n接続層
10 半導体積層体
11 リッジ導波体
12 パッシベーション層
20 層系
21 InGaN層
21A InGaN層
21B InGaN層
21C InGaN層
21D InGaN層
22 AlGaN層
22A AlGaN層
22B AlGaN層
100 端面発光半導体レーザ
【手続補正書】
【提出日】2021-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導波層(3A)と第2導波層(3B)との間に配置された活性層(4)を有する導波領域(3)を含む、窒化物系化合物半導体材料ベースの半導体積層体(10)を備えた端面発光半導体レーザ(100)であって、
・前記半導体積層体(10)は、前記導波領域(3)の外部に配置されておりかつ前記導波領域(3)におけるファセット欠陥を低減するための層系(20)を有し、
・前記層系(20)は、材料組成Al
xIn
yGa
1-x-yN、ただし0≦x≦1、0≦y<1かつx+y≦1、を有する1つまたは複数の層(21、22)を有し、前記層系(20)の少なくとも1つの層(21、22)は、アルミニウムの割合x≧0.05、またはインジウムの割合y≧0.02を有し、
・層応力は、少なくとも部分的に少なくとも2GPaであ
り、
・前記層系(20)は、前記インジウムの割合および/または前記アルミニウムの割合の勾配を有する少なくとも1つのAl
x
In
y
Ga
1-x-y
N層(21、22)を有する、端面発光半導体レーザ(100)。
【請求項2】
前記層系(20)は、少なくとも10nmの厚さを有する1つまたは複数の層(21、22)を有するか、複数の前記層(21、22)から構成される、請求項1記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項3】
前記層系(20)と前記活性層(4)との間の間隔は、少なくとも500nmである、請求項1または2記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項4】
前記層系(20)と前記活性層(4)との間の間隔は、少なくとも1μmである、請求項1から3までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項5】
前記導波領域(3)に広がるレーザビームは、最大強度I
maxを有し、前記層系(20)における前記レーザビームの強度は、0.2×I
maxよりも大でない、請求項1から4までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項6】
前記導波領域(3)は、n型クラッド層(2)とp型クラッド層(6)との間に配置されており、前記層系(20)は、前記半導体レーザの基板(1)と前記n型クラッド層(2)との間に配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項7】
前記層系(20)は、インジウムの割合y≧0.03を有する少なくとも1つのAl
xIn
yGa
1-x-yN層(21)を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項8】
前記層系(20)は、アルミニウムの割合x≧0.1を有する少なくとも1つのAl
xIn
yGa
1-x-yN層(22)を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項9】
前記層系(20)は、圧縮応力を生成する少なくとも1つのIn
yGa
1-yN層(21)と、引張応力を生成する少なくとも1つのAl
xGa
1-xN層(22)とを有する、請求項1から
8までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項10】
前記In
yGa
1-yN層(21)および前記Al
xGa
1-xN層(22)は、互いに直接に隣接している、請求項
9記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項11】
前記層系(20)における前記層応力は、少なくとも部分的に前記導波領域(3)よりも大きい、請求項1から
10までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項12】
前記層系(20)は、前記層応力が2GPaよりも大きく変化する少なくとも1つの境界面(23)を有する、請求項1から
11までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項13】
前記層系(20)は、前記層応力が、圧縮応力から引張応力に、または引張応力から圧縮応力に変化する少なくとも1つの境界面(23)を有する、請求項1から
12までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項14】
前記層系(20)は、交互に重なる複数のInGaN層(21)およびAlGaN層(22)を有する、請求項1から
13までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項15】
前記層系(20)は少なくとも3個かつ最大で100個の層(21、22)を有する、請求項1から
14までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項16】
前記端面発光半導体レーザ(100)は、前記導波領域(3)にファセット欠陥を有しない第1レーザファセットおよび第2レーザファセットを有する、請求項1から
15までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項17】
前記端面発光半導体レーザ(100)は、前記層系(20)の前記領域にファセット欠陥を有する第1レーザファセットおよび第2レーザファセットを有する、請求項1から
16までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項18】
前記端面発光半導体レーザ(100)は、隣り合って配置された複数のエミッタを有するレーザバーである、請求項1から
17までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【請求項19】
前記層系(20)は、GaN層に隣接し、前記層系全体によって生じる曲げはゼロに等しい、請求項1から
18までのいずれか1項記載の端面発光半導体レーザ。
【国際調査報告】