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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】デュタステリドを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/56 20060101AFI20220125BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220125BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220125BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220125BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220125BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20220125BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220125BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
A61K31/56
A61P17/14
A61P13/08
A61P43/00 111
A61K47/22
A61K47/44
A61K47/14
A61K47/20
A61K47/10
A61K47/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529396
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(85)【翻訳文提出日】2021-05-25
(86)【国際出願番号】 KR2019017738
(87)【国際公開番号】W WO2020122681
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】10-2018-0162464
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514052597
【氏名又は名称】チョン クン ダン ファーマシューティカル コーポレーション
【住所又は居所原語表記】8, CHUNGJEONG-RO, SEODAEMUN-GU, SEOUL 03742, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,テヒョン
(72)【発明者】
【氏名】コ,キソン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ノ,サンミョン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ジョンレ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076BB16
4C076CC09
4C076CC17
4C076DD37E
4C076DD45E
4C076DD46M
4C076DD52E
4C076DD55E
4C076DD59M
4C076DD60E
4C076EE53M
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA08
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA66
4C086NA12
4C086ZA81
4C086ZA92
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明の組成物は、デュタステリドを含む組成物に関し、前記組成物は、人体内に投与時、デュタステリドが固形の形態で析出されず、デュタステリドの血中濃度を一定に維持しつつ長期間にかけて持続的に薬物を放出させることができ、投与部位に局所刺激性が現れず安全性に優れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュタステリド、その光学異性体またはその薬剤学的に許容可能な塩、脂質および有機溶媒を含む組成物。
【請求項2】
脂質は、トコフェロール(tocopherol)、トコフェロールアセテート(tocopherol acetate)、ヒマシ油(castor oil)、サフラワー油(safflower oil)、ゴマ油(sesame oil)、オリーブ油(olive oil)、アーモンドオイル(almond oil)、ツバキ油(camellia oil)、コーンオイル(corn oil)、綿実油(cottonseed oil)、大豆油(soybean oil)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT、medium chain triglyceride)、その薬剤学的に許容可能な塩およびその混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
脂質は、トコフェロール(tocopherol)、トコフェロールアセテート(tocopherol acetate)、その薬剤学的に許容可能な塩およびその混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
有機溶媒は、N-メチルピロリドン(n-methyl-2-pyrrolidone)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)、ベンジルベンゾエート(benzyl benzoate)、ベンジルアルコール(benzyl alcohol)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide)、エタノール(ethanol)およびその混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
有機溶媒は、N-メチルピロリドン(n-methyl-2-pyrrolidone)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)、ベンジルベンゾエート(benzyl benzoate)およびその混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、良性前立腺肥大症または男性ホルモン性脱毛の治療用である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は注射投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の投与経路は、皮下注射、皮内注射または筋肉注射である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
デュタステリド、その光学異性体またはその薬剤学的に許容可能な塩、脂質および有機溶媒を含む組成物を治療学的に有効な投与量で治療が必要な対象体に投与する良性前立腺肥大症または男性ホルモン性脱毛の予防または治療方法。
【請求項10】
良性前立腺肥大症または男性ホルモン性脱毛の予防または治療用の薬剤を製造するための、デュタステリド、その光学異性体またはその薬剤学的に許容可能な塩、脂質および有機溶媒を含む組成物の使用。
【請求項11】
良性前立腺肥大症または男性ホルモン性脱毛の予防または治療のための、デュタステリド、その光学異性体またはその薬剤学的に許容可能な塩、脂質および有機溶媒を含む組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬理学的活性物質としてデュタステリドを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
5α-還元酵素は、前立腺、毛包、皮脂腺などにおいて、男性ホルモンであるテストステロン(testosterone)をデヒドロテストステロン(dehydrotestosterone、DHT)に還元させる生体触媒である。前記デヒドロテストステロンは、脱毛および前立腺肥大症などに関与することが知られている。よって、組織中のデヒドロテストステロンの生成を阻害する5α-還元酵素阻害剤は、前立腺肥大症の治療剤として用いられており、脱毛の予防および治療にも用いることができる。
【0003】
前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia、BPH)は、代表的な老人性疾患であって、前立腺が肥大するにつれて膀胱下部の尿道が圧迫されて排尿障害を招く疾患をいう。前立腺肥大症の原因には、加齢と男性ホルモンの影響などがある。前立腺内で5α-還元酵素によりテストステロンから転換されたデヒドロテストステロンは、前立腺の発達と肥大に影響を及ぼして前立腺肥大症を誘発することが知られている。この疾患は、前立腺組織の切除手術により治療することができるが、患者の大半が老人であるために手術対象が制限され、手術後の副作用および再発などの問題により、簡便な薬物療法が好まれている。このような薬物療法として、5α-還元酵素阻害剤は、デヒドロテストステロンの生成を選択的に阻害することにより抗アンドロゲン活性効果を発現させ、肥大化した前立腺の大きさを縮小させて排尿障害を改善することができる。
【0004】
また、脱毛は、毛髪が脱落する数が平均より多くなる状態をいい、遺伝的要因、栄養欠乏、ストレスなどといった様々な原因から発生する。その中でも最もありふれた形態の男性型脱毛は、過度なデヒドロテストステロンによって誘発されることが知られている。具体的には、デヒドロテストステロンは、毛嚢周辺でエネルギー生成の低下とタンパク質合成の阻害を引き起こして毛嚢細胞の細胞増殖を阻害し、脱毛を引き起こすタンパク質を誘導して男性型脱毛を誘発することが知られている。また、脱毛がある部位の組織は、他の頭皮組織より5α-還元酵素の活性が高いことが知られている。よって、5α-還元酵素阻害剤は、デヒドロテストステロンの生成を阻害して男性型脱毛を効果的に予防し治療することができる。
【0005】
5α-還元酵素阻害剤の中でもデュタステリドは、タイプIおよびタイプIIの5α-還元酵素をいずれも阻害し、1日1回0.5mgの経口剤の服用を通じて前立腺肥大症と男性型脱毛の治療などに用いられる。デュタステリドは、男性ホルモン作用を示すテストステロンには影響がなく、デヒドロテストステロンの生成だけ選択的に阻害して、比較的に安全な治療剤として認識されるが、数ヶ月以上持続的に服用しなければ効果が発現しないという特徴がある。また、前立腺肥大症や男性型脱毛の場合、薬物を長期間あるいは一生持続的に投与しなければならないため、市販製品が1日1回の投与にもかかわらず患者の服薬順応度が低いという限界がある。
【0006】
そこで、本発明者らは、薬理学的活性物質としてデュタステリドを含む組成物を発明した。前記組成物は、人体に投与時、薬物の血中濃度が長期間持続して患者の服薬便宜性を改善することができ、薬効を持続的に維持することができる。
【0007】
以下では、本発明と関連した先行技術を検討してみた。
【0008】
国際公開特許WO2006/099121号は、2,000nm以下のナノ粒子組成物について開示している。適用可能な薬物としてフィナステリド、デュタステリド、タムスロシンを使用できることを説明しており、表面安定化剤としてリン脂質とポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを使用できることを説明している。しかし、前記特許の組成は、2,000nm以下の粒子に対する組成であるという点で、脂質を含む液状組成物である本発明とは異なる。
【0009】
国際公開特許WO2004/105694号は、活性成分、ビタミンEおよび界面活性剤を含む薬剤学的組成について開示しており、疎水性薬物の有無に応じてビタミンEの分散度が20%増加できることを説明している。しかし、前記特許は、注射用脂質組成物と関連がないだけでなく、組成に応じて水相において希釈する時に分散度を増加させるための目的を有するという点で、本発明とは異なる。
【0010】
大韓民国登録特許KR10-1745425号は、デュタステリドおよびタダラフィルを含む経口用複合製剤のエマルション組成物について開示しており、組成物に含まれる主成分、オイル、界面活性剤の詳しい用量について説明している。しかし、前記特許は、注射用脂質組成物と関連がないだけでなく、経口用複合製剤エマルション組成物であるという点で、本発明とは異なる。
【0011】
国際公開特許WO2017/196148号は、デュタステリドおよびタダラフィルを含む複合カプセル製剤組成物および製造方法について開示しており、グリセロール脂肪酸エステル誘導体またはプロピレングリコール脂肪酸エステル誘導体を含有する組成物について説明している。しかし、前記特許は、注射用脂質組成物と関連がないだけでなく、複合カプセル製剤であるという点で、本発明とは異なる。
【0012】
大韓民国登録特許KR10-1055412号は、デュタステリド、吸着剤および賦形剤を含む固形化製剤について開示しており、水溶性または水不溶性高分子の混合物を用いて、コーティング液を含む固形化製剤について説明している。しかし、前記特許は、注射用脂質組成物と関連がないだけでなく、固形化製剤であるという点で、本発明とは異なる。
【0013】
大韓民国登録特許KR10-1467568号は、ミノキシジルを含有する外用液製剤に対する組成物について開示しており、改善された皮膚貯留および発毛効果を有するミノキシジル含有組成物について説明している。しかし、前記特許は、注射用脂質組成物と関連がないだけでなく、外用製剤組成物であるという点で、本発明とは異なる。
【0014】
国際公開特許WO2010/015556号は、フィナステリドまたはビワ葉(Eriobotrya Japonica leaf)抽出物から選択される活性成分を用いた膜形成液体剤形について開示しており、毛髪および頭皮に対する薬物放出のための剤形の組成物について説明している。しかし、前記特許は、注射用脂質組成物と関連がないだけでなく、膜形成液体剤形であるという点で、本発明とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開特許公報WO2006/099121号
【特許文献2】国際公開特許公報WO2004/105694号
【特許文献3】大韓民国登録特許公報KR10-1745425号
【特許文献4】国際公開特許公報WO2017/196148号
【特許文献5】大韓民国登録特許公報KR10-1055412号
【特許文献6】大韓民国登録特許公報KR10-1467568号
【特許文献7】国際公開特許公報WO2010/015556号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、人体内に投与時、デュタステリドの血中濃度を長期間持続させることができるため、患者の服薬便宜性が向上した組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
具体的に説明すれば次の通りである。一方、本発明に開示された各々の説明および実施形態は、各々の他の説明および実施形態にも適用できる。つまり、本発明に開示された様々な要素の全ての組み合わせが本発明の範疇に属する。また、下記に記述された具体的な叙述によって本発明の範疇が制限されるものではない。
【0018】
本発明は、デュタステリド(dutasteride)、脂質および有機溶媒を含む組成物を提供する。
【0019】
本発明に係る前記組成物は、人体内に投与時、投与部位でデュタステリドの析出が発生せず、一定したデュタステリドの血中濃度を長期間維持できる徐放性に優れており、患者の服薬便宜性および薬効の持続時間を延長することができる。また、本発明に係る組成物は、投与部位に硬化、発赤、炎症などの局所部位の刺激症状が現れない優れた安全性を有する。
【0020】
具体的には、本発明において、前記組成物は、a)デュタステリド、その光学異性体またはその薬学的に許容可能な塩;b)脂質;およびc)有機溶媒を含む組成物であってもよい。
【0021】
本発明において、デュタステリドは、下記化学式1で表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容可能な塩を意味する。
【0022】
【化1】
【0023】
前記デュタステリドは、男性ホルモンであるアンドロゲンを阻害する薬物であって、良性前立腺肥大症と男性型脱毛症の治療に用いられる。前立腺内でテストステロンから転換されたデヒドロテストステロンは、前立腺の大きさを増加させ、毛嚢を縮小させて、良性前立腺肥大症と男性型脱毛を引き起こすホルモンであって、テストステロンが5α-還元
酵素によりデヒドロテストステロンに転換される。デュタステリドは、5α-還元酵素を阻害することによって、デヒドロテストステロンの生成を減少させる。このようなデヒドロテストステロンのホルモン遮断効果を通じて、デュタステリドは、前立腺肥大症、男性型脱毛症、根治的前立腺全摘除術後の治療補助剤または多毛症の治療に用いられたりもする。しかし、数ヶ月以上を長期服用してこそ薬効が発現する特徴を持つ薬物であって、現在のところ、1日1回に経口剤として服用しなければならない製品が市販中である。
【0024】
本発明の薬理学的活性物質であるデュタステリドは、5α-還元酵素阻害剤として同一な目的で用いられるフィナステリドと同じ系列の薬物であるが、デュタステリドは、5α-還元酵素の1型および2型をいずれも遮断するため、2型のみを遮断するフィナステリドに比べてデヒドロテストステロンの生成をさらに減少させることができる。
【0025】
本発明の組成物に含まれたデュタステリドの含量は、前記組成物の総重量に対して約1~50重量%で含まれ、具体的には約1~20重量%で含まれ、より具体的には1~15重量%で含まれ、さらに具体的には2~12重量%で含まれる。
【0026】
本発明において、脂質は、水に溶けず非極性溶媒に溶ける物質であって、デュタステリドと混合しうる疎水性物質をいう。前記脂質は、人体に投与時、デュタステリドと共に投与部位にとどまり、デュタステリドが投与部位で固形として析出されるのを防止する役割をする。また、前記脂質は時間の経過につれて徐々に生体内に吸収されてデュタステリドの放出と吸収に影響を及ぼし、脂質と共に人体内に投与されたデュタステリドは投与部位に均質にとどまって析出が防止され、それにより、一定に血中に放出される。本発明において、脂質は、トコフェロール(tocopherol)、トコフェロールアセテート(tocopherol acetate)、ヒマシ油(castor oil)、サフラワー油(safflower oil)、ゴマ油(sesame oil)、オリーブ油(olive oil)、アーモンドオイル(almond oil)、ツバキ油(camellia oil)、コーンオイル(corn oil)、綿実油(cottonseed oil)、大豆油(soybean oil)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(medium chain triglyceride、MCT)、その薬剤学的に許容可能な塩およびその混合物からなる群より選択することができ、具体的にはトコフェロール(tocopherol)、トコフェロールアセテート(tocopherol acetate)、その薬剤学的に許容可能な塩およびその混合物からなる群より選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
前記脂質の含量は、デュタステリドの析出を防止し徐放性を示すことができる範囲内で調節され、具体的には組成物の総重量に対して約8~90重量%、より具体的には約8~70重量%で含まれ、さらに具体的には13~70重量%で含まれる。
【0028】
本発明の具体的な実験例によれば、脂質を含む本願の組成物は、デュタステリドが固形粉の形態で析出されず、時間の経過につれて溶出率が徐々に増加してデュタステリドの一定した血中濃度が長期間維持されることを確認した(図2図4)。
【0029】
本発明において、有機溶媒は、デュタステリドの可溶化のために添加される補助溶媒であって、デュタステリドを含む組成物の製造を容易にし、組成物の粘度を減少させて投与時の便宜性を提供する。本発明において、有機溶媒は、N-メチルピロリドン(n-methyl-2-pyrrolidone)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)、ベンジルベンゾエート(benzyl benzoate)、ベンジルアルコール(benzyl alcohol)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide)、エタノール(ethanol)、その薬剤学的に許容可能な塩およびその混合物からなる群より選択することができ、具体的にはN-メチルピロ
リドン(n-methyl-2-pyrrolidone)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)またはベンジルベンゾエート(benzyl benzoate)であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0030】
前記有機溶媒の含量は、人体内投与が容易な組成物の粘度を示すことができる範囲内で調節され、具体的には組成物の総重量に対して約10~85重量%、より具体的には約10~82重量%で含まれ、さらに具体的には約23~82重量%で含まれる。
【0031】
本発明において、前記組成物における各成分の含量は、デュタステリドの析出を防止しつつ徐放性が確保され、人体内投与が容易な組成物の粘度を示すことができる範囲内で調節され、具体的には組成物の総重量に対して約1~20重量%のデュタステリド、その光学異性体またはその薬剤学的に許容可能な塩、13~70重量%の脂質および10~82重量%の有機溶媒を含むことができ、より具体的には1~15重量%のデュタステリド、その光学異性体またはその薬剤学的に許容可能な塩、13~70重量%の脂質および23~82重量%の有機溶媒を含むことができ、さらに具体的には2~12重量%のデュタステリド、13~70重量%の脂質および23~82重量%の有機溶媒を含むことができる。
【0032】
本発明の具体的な実験例によれば、本願の組成物は、有機溶媒を含むことによって粘度が減少して人体内投与が容易であることを確認した(図1)。
【0033】
本発明の組成物は、デュタステリドを脂質と有機溶媒に溶かして簡単に製造可能であり、人体内に容易に注射投与することができ、デュタステリドの析出現象が発生せず、且つ、デュタステリドの血中濃度が1週間以上、具体的には1ヶ月以上維持できるので、優れた徐放性を示す。
【0034】
本発明の組成物は、ソルビタン不飽和脂肪酸エステル(sorbitan unsaturated fatty acid ester)を含まず、ソルビタン不飽和脂肪酸エステルがなくても優れた徐放性を示すことができる。
【0035】
また、本発明の薬理学的活性物質であるデュタステリドは、長期間にわたった全身投与時にも安全性が概して良好な薬物として知られている。しかし、軟膏製剤または注射剤のように局所部位に投与時、特に注射投与時、投与部位にデュタステリドによる局所浮腫、発赤、硬化などの刺激性が現れるので適用が制限される。そこで、本発明においては、活性物質であるデュタステリドを長期間持続放出させると同時に、局所部位に投与時に発生しうる硬化、発赤、炎症などの局所部位の刺激症状が現れないため、安全性に優れた組成物を提供する。
【0036】
本発明の組成物は、前立腺肥大症、男性ホルモン性脱毛および多毛症からなる群より選択されるいずれか一つの疾患の治療用組成物であってもよい。また、本発明の組成物は、根治的前立腺全摘除術後の治療補助剤として利用できる。
【0037】
本発明の組成物は、非経口投与、例えば局所投与されてもよく、具体的には注射投与されてもよい。前記注射投与の経路としては、皮下注射、皮内注射、筋肉注射のどの投与形態であってもよく、投与形態は、組成物を投与する目的に応じて適切に選択できる。例えば、本発明の組成物が前立腺肥大症の治療に用いられる場合、前立腺付近に注射投与されてもよく、この場合、前記組成物は、皮下で活性成分であるデュタステリドを徐放出させることができる。または、本発明の組成物が脱毛症の治療に用いられる場合、発毛を必要とする頭の特定部位に注射投与されてもよく、この場合、前記組成物は、頭皮の皮下で活性成分であるデュタステリドを徐放出させることができる。
【0038】
本発明の組成物の投与量は、用いられた薬理学的活性物質の公知の投与量と同一であるが、患者の疾患の種類、症状の程度、年齢、性別などに応じて異なりうる。
【0039】
また、本発明は、前記組成物をヒトを含む哺乳類に投与することによって、薬理学的活性物質を徐放的に放出させてその薬理効果を持続させる方法および使用をさらに提供する。
【0040】
前記組成物の具体的な内容は上記で説明した通りである。
【発明の効果】
【0041】
本発明のデュタステリドと脂質および有機溶媒を含む組成物は、人体内に投与時、血中濃度を一定に維持することができ、投与部位で薬理学的活性物質が固形の形態で析出されず、安全性に優れた薬剤学的組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】比較例3、実施例21の粘度を示すものである。
図2】比較例1、実施例32のin vitro薬物放出挙動を示すものである。
図3】比較例2、実施例32のin vivo薬物放出挙動を示すものである。
図4】比較例2、実施例32のin vivo投与部位の薬物の残存量を示すものである。
図5】実施例21のin vivo組成物の安全性を確認したものである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下では、実施例および実験例を通じて本発明を具体的に説明する。但し、これらの実施例および実験例は本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲がこれらのみに限定されるものではない。
【0044】
本発明で用いられた添加剤は、薬典規格の賦形剤およびAldrich、Croda社から購入した試薬を用いた。
【0045】
[実施例1~38]本発明の薬剤学的組成物の製造
実施例1~38
下記表1~表3の成分および含量を用いて本発明の製剤を製造した。
具体的には、活性成分であるデュタステリドを有機溶媒と混合し、常温(25℃)で攪拌器(Stirrer)を用いて1,000~3,000rpmの条件下で0.5~1時間溶解させた後、製造された溶液に提示された脂質を添加した。その後、攪拌器において約1,000~3,000rpmの条件下で約5~30分間溶解させて、溶液状の薬剤学的組成物を製造した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
[比較例1~3]
比較例1~3
比較例1は、活性成分であるデュタステリド原料を用いた。
表4の比較例2~3は、活性成分であるデュタステリドを有機溶媒または脂質と混合し、常温(25℃)で攪拌器(Stirrer)を用いて1,000~3,000rpmの条件下で0.5~12時間溶解させて、溶液状の薬剤学的組成物を製造した。
【0050】
【表4】
【0051】
[実験例1]組成物の薬理学的活性物質の含量の確認
本発明の実施例を通じて製造された薬剤学的組成物内に薬理学的活性物質の含量を確認するために薬理学的活性物質として用いられたデュタステリドの含量を確認し、その結果を下記表5に示す。デュタステリドの含量はHPLCで定量し、分析条件は以下の通りである。
【0052】
<デュタステリドのHPLC分析条件>
カラム:4.6mm×250mm、5μm
カラム温度:35℃
検出器:紫外部吸光光度計(測定波長:220nm)
流速:1.0mL/分
注入体積:10μl
移動相:水、アセトニトリル(acetonitrile)およびトリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)(48:52:0.025)
【0053】
【表5】
【0054】
表5に示すように、比較例2、比較例3、実施例9、実施例19、実施例21および実
施例33の薬剤学的組成物は、いずれもデュタステリドの基準含量(100%)に対比して±3%以内として非常に理想的な測定値を示した。
【0055】
[実験例2]in vitroでの薬剤学的組成物の粘度の確認
次のような実験を通じてin vitro上での本発明の組成物の粘度を確認した。デュタステリド、脂質および有機溶媒を含む実施例21と有機溶媒が除外された比較例3とを粘度測定器を用いて粘度の比較を行った。粘度の測定条件は以下の通りである。
【0056】
<薬剤学的組成物の粘度の測定条件>
粘度計:レオメータ(RHEOSENSE Inc.)
分析温度:25±0.5℃
【0057】
粘度の測定は、サーモスタットが設けられたレオメータ(rheometer)を用いて分析し、その結果を図1に示す。図1の結果は、5回の粘度測定に対する平均値を示すものである。
【0058】
実施例21から有機溶媒が除外された比較例3の場合は、5回の粘度を測定した結果、各々2,553、2,565、2,557、2,547、2,543mPaと測定され、平均2,553mPaの粘度を有することが明らかになった。その反面、デュタステリド、脂質および有機溶媒が含まれた実施例21の場合は、5回の粘度を測定した結果、各々40.5、40.4、40.4、40.9、40.8mPaと測定され、平均40.6mPaの粘度を有することが明らかになった。それにより、本願発明の組成物は、有機溶媒を含むことによって組成物の粘度が減少して人体内投与が容易であることを確認した。
【0059】
[実験例3]in vitroでの薬剤学的組成物の溶出率の確認
次のような実験を通じてin vitro上での本発明の組成物の溶出率を確認した。実施例32はデュタステリドとして56mgに該当するように使い捨て注射器に充填した後に溶出液に注入し、比較例1はデュタステリド56mgを回転検体筒に直接投入した。大韓薬典第10改正の溶出試験法I法に従って行い、溶出条件は以下の通りである。
【0060】
<薬剤学的組成物の溶出条件>
溶出法:大韓薬典第I法(装置I-バスケット(ApparatusI-Basket)

溶出液:1%w/vドデシル硫酸ナトリウムを含む溶液900mL
溶出温度:37±0.5℃
回転速度:100rpm
試験時間:1、3、6、12および24時間
【0061】
溶出サンプルにおいてデュタステリドの濃度を実験例1の条件でHPLCを用いて24時間の溶出率を分析し、その結果は図2に示す。
【0062】
界面活性剤が含まれた溶出液に比較例1を直接投与する場合には、一部の薬物だけ溶出液に溶解し、1時間後からは時間の経過につれて溶出率がほぼ増加しなかった。しかし、脂質を含む実施例32を投与する場合には、デュタステリドが溶出液内で固形粉の形態で析出されず、時間の経過につれて溶出率が徐々に増加することを確認した。
【0063】
[実験例4]in vivoでの薬剤学的組成物のPKの確認
次のような実験を通じてin vivo上での本発明の組成物の薬物放出挙動を確認した。比較例2および実施例32の組成物を使い捨て注射器に充填し、デュタステリド27mg該当量を平均300gの9週齢SDラット(雄)6匹の股に筋肉注射した。
【0064】
SDラットの血漿サンプルにおいてデュタステリドの濃度をLC-MS/MS(液体クロマトグラフィ-質量分析器)を用いてPKプロファイル(pharmacokinetic profile)を分析し、その結果は図3に示す。
【0065】
デュタステリドを含む脂質組成物である実施例32の場合は、in vivoに投与時、一定した血中濃度が1ヶ月以上維持されることを確認した。その反面、脂質を含まない組成物である比較例2の場合は、実施例32に比べて血中デュタステリドの濃度が非常に低く、これは、投与部位でデュタステリドが粉の形態で析出されるのが原因であることを以下の実験例5で確認した。
【0066】
それにより、本願発明の組成物は、投与部位でデュタステリドが粉の形態で析出されず、且つ、一定した血中濃度が1ヶ月以上維持されて優れた徐放性を示すことを確認した。
【0067】
[実験例5]in vivoでの投与部位の薬物残存量の確認
次のような実験を通じてin vivoで組成物を投与して一定時間の経過後に投与部位の薬物の残存量を確認した。比較例2および実施例32の組成物を使い捨て注射器に充填し、デュタステリド27mg該当量を平均300gの9週齢SDラット(雄)6匹の股に筋肉注射した。
【0068】
30日が経過した後に剖検し、組成物を投与した部位の筋肉組織を回収した。回収した筋肉組織にエタノール20mLを添加した後、ホモジナイザを用いて約30分間粉砕した。その次に、粉砕した組織を遠心分離器(Centrifugal separator)を用いて3,000rpmで20分間遠心分離した後、上澄液を取って実験例1のデュタステリドの分析条件で定量し、その結果は図4に示す。
【0069】
実施例32は、投与して1ヶ月後、投与部位でのデュタステリドの残存量が約28%であって、投与した薬物の72%が体内(in vivo)に吸収されたのに対し、比較例2は、投与して1ヶ月が経過したのに約96%のデュタステリドが投与部位に残存していることを確認した。
【0070】
それにより、脂質を含む本願の組成物は、生体内に投与時、投与部位で持続的に吸収され、一定した血中薬物濃度を長期間維持できるのに対し、脂質を含まない組成物である比較例2は、生体内に投与する場合、投与した薬物の大半が投与部位にとどまって吸収されないことを確認した。これは、実験例3のin vivo PK試験結果の原因によって説明することができる。
【0071】
[実験例6]in vivoでの薬剤学的組成物の局所耐性の確認
次のような実験を通じてin vivo上での本発明に係る組成物の安全性を確認した。実施例21の組成物を使い捨て注射器に充填し、デュタステリド27mg該当量を平均300gの9週齢SDラット(雄)6匹の股に筋肉注射した。SDラットに投与して7、14、30および60日の後に、剖検を通じて、投与部位での浮腫、発赤、硬化、壊死、滲出物の有無を肉眼で確認し、その結果は図5に示す。
【0072】
図5に示すように、本願の組成物は、剖検した全ての時点で浮腫、発赤、硬化などの投与部位の刺激性が観察されていない安全な組成物であることを確認した。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュタステリド、その光学異性体またはその薬剤学的に許容可能な塩脂質および有機溶媒を含む組成物。
【請求項2】
前記脂質は、トコフェロール(tocopherol)、トコフェロールアセテート(tocopherol acetate)、ヒマシ油(castor oil)、サフラワー油(safflower oil)、ゴマ油(sesame oil)、オリーブ油(olive oil)、アーモンドオイル(almond oil)、ツバキ油(camellia oil)、コーンオイル(corn oil)、綿実油(cottonseed oil)、大豆油(soybean oil)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT、medium chain triglyceride)、その薬剤学的に許容可能な塩およびその混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記脂質は、トコフェロール(tocopherol)、トコフェロールアセテート(tocopherol acetate)、その薬剤学的に許容可能な塩およびその混合物からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記有機溶媒は、N-メチルピロリドン(n-methyl-2-pyrrolidone)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)、ベンジルベンゾエート(benzyl benzoate)、ベンジルアルコール(benzyl alcohol)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide)、エタノール(ethanol)およびその混合物からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記有機溶媒は、N-メチルピロリドン(n-methyl-2-pyrrolidone)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)、ベンジルベンゾエート(benzyl benzoate)およびその混合物からなる群より選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
性前立腺肥大症または男性ホルモン性脱毛の治療用である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記注射は、皮下注射、皮内注射または筋肉注射である、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
良性前立腺肥大症または男性ホルモン性脱毛の予防または治療用の薬剤を製造するための、デュタステリド、その光学異性体またはその薬剤学的に許容可能な塩脂質および有機溶媒を含む組成物の使用。
【国際調査報告】