(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】熱電調整システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20220125BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20220125BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20220125BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20220125BHJP
F24H 15/355 20220101ALI20220125BHJP
【FI】
B60H1/00 102V
B60H1/22 611D
F24F11/80
F24F11/74
F24H3/02 301C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531063
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(85)【翻訳文提出日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 US2019063445
(87)【国際公開番号】W WO2020112902
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511014862
【氏名又は名称】ジェンサーム インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Gentherm Incorporated
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パチッリ、チャド、ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】イナバ、マサヒコ
(72)【発明者】
【氏名】ウリベ パラフォックス、ロドルフォ、エルネスト
(72)【発明者】
【氏名】ゲーリタウルト、ダニエル、チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、ケネス
(72)【発明者】
【氏名】ピセ、エメイ
(72)【発明者】
【氏名】ウォラス、 スコット
【テーマコード(参考)】
3L028
3L211
3L260
【Fターム(参考)】
3L028BA03
3L211BA01
3L211BA08
3L211DA53
3L211DA62
3L211EA12
3L211EA13
3L211EA16
3L211EA29
3L211FB05
3L211GA06
3L211GA12
3L211GA62
3L260BA02
3L260BA19
3L260BA42
3L260CA12
3L260CA13
3L260EA07
3L260FA02
3L260FA04
(57)【要約】
流体を熱的に調整し、移動させるためのシステムは電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、それに印加される電流に応じて温度変化を生成するための熱電装置を含む。熱電装置は、メインサイド及び廃棄サイドを含むことができる。流体移送装置は熱電装置と熱的に連通している流体の流れを生成することができ、その結果、熱電装置によって生成された熱エネルギーが、流体の流れに移送されるか、又は流体の流れから移送される。流量制御弁は、主側流路及び/又は廃棄側流路に沿って流体流を選択的に導くことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を熱調整し、移動させるためのシステムであって、
電気エネルギーを熱エネルギーに変換して、電流に応じて温度変化を生成する、メインサイドと廃棄サイドとを有する熱電装置と、
前記熱電装置によって生成された前記熱エネルギーが流体の流れに、又は流体の流れから伝達されるように、前記熱電装置と熱的に連絡する前記流体の流れを生成する流体移送装置と、
メインサイド流路及び/又は廃棄サイド流路に沿って前記流体の流れを選択的に導く流量制御弁とを備えるシステム。
【請求項2】
前記流体移送装置及び前記流量制御弁と動作可能に接続され、前記流体移送装置及び前記流量制御弁を操作する制御ユニットをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
流体の流れの温度を示す信号を提供するように構成されたセンサをさらに備え、
前記制御ユニットが、前記信号に基づいて、前記流量制御弁を操作するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御ユニットが、前記流量制御弁を調整し、前記流体がほぼ等しい割合の流量で前記廃棄サイド流路及び前記メインサイド流路に導かれるように構成されている、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御ユニットが、所望のメインサイド温度に基づいて前記流量制御弁の位置を調整するように構成されている、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御ユニットが、前記メインサイド流路よりも廃棄サイド流路に流体の流量をより多く導くように流量制御弁を調整することによって、メインサイド温度を下げる、及び/又はメインサイドと廃棄サイドとの間の温度差を増加させるように構成されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記流量制御弁が、全開位置から全閉位置に向かって調整される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御ユニットが、前記熱電装置の前記メインサイドと前記廃棄サイドとの間の高い温度差を実現するために、前記メインサイド流路及び前記廃棄サイド流路上の前記流体の流れの総量の20%未満が、前記メインサイド流路に導かれるように前記流量制御弁を調整するように構成される、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御ユニットが、前記メインサイド流路に導かれる前記流体の割合を調整して、前記流体の流れにおける結露を防止するように構成される、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御ユニットが、前記流量制御弁の位置に基づいて、前記流体移送装置によって提供される前記流体の流量を調整するように構成される、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御ユニットが、前記流体の流量が前記メインサイド流路に対して比例するときに、前記流体の流量を増加させるように構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御ユニットが、前記流量制御弁上の背圧が増加しているときに、前記流量制御弁の位置が前記流体移送装置に印加される電圧を下げるようなことによって、前記流体移送装置の速度を下げて、前記流体の流量を維持するように構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御ユニットが、キャビン環境の湿潤度に基づいて、前記メインサイド流路に導かれる流体の流れの比率を調整するように構成される、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御ユニットが、前記メインサイド流路及びバイパス流路に沿った流体の流れの比率を調整し、前記メインサイド流路からのより冷たい空気を、前記バイパス流路からのより暖かい空気と混合して、中間温度の調整空気を生成するように構成される、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項15】
前記制御ユニットが、前記流体の流れの多くを前記廃棄サイド流路よりも前記メインサイド流路に導き、前記流体の流れの結露を防止して、前記熱電装置の前記メインサイドと前記廃棄サイドとの間の限られた温度差で前記システムの冷却能力を向上させるように構成される、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項16】
前記制御ユニットが、第1の期間、前記流体の流れの第1の割合を前記メインサイド流路に導き、第2の期間、前記流体の流れの第2の割合を前記メインサイド流路に導くように構成され、前記第1の期間は、前記流体の流れにおける許容可能な結露の量を形成するように設定される、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1の期間及び/又は前記第2の期間が、前記熱電装置の前記メインサイドと前記廃棄サイドとの間の予め設定された温度差を維持するように設定される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記制御ユニットが、実質的に全ての前記流体の流れを前記メインサイド流路に沿って導き、高い換気率を提供するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項19】
前記制御ユニットが、前記熱電装置をヒータとして動作させ、実質的に全て又は大部分の前記流体の流れを前記メインサイド流路に沿って導いて、加熱効率を増加させ、前記熱電装置の廃棄サイドでの熱除去及び空気の流れに関連する損失を回避するように構成される、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項20】
前記制御ユニットが、キャビン空気温度及び湿度に基づいて流量制御弁の位置を調整するように構成される、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項21】
調整システムの制御方法であって、
メインサイド及び廃棄サイドを有する前記熱調整システムのTEDに電力を供給することと、
流体の流れの第1の部分が第1の流量で廃棄サイドを通流し、前記流体の流れの第2の部分が、第2の流量でメインサイドを通流するように導かれように、前記流体の流れが前記熱調整システムを通流する第1の期間、前記熱調整システムが第1のモードで動作することと、
第1のモードと比較して第1の流量と第2の流量との間の比率が変更される第2の期間の間、前記熱調整システムが第2のモードで動作することとを含む、制御方法。
【請求項22】
前記第1のモードが、初期モードである、請求項21に記載の制御方法。
【請求項23】
検出温度センサを用いて前記流体の流れの目標温度を検出することと、前記目標温度を検出することに基づいて、前記第1のモードから前記第2のモードへ動作を変更することとをさらに含む、請求項21に記載の制御方法。
【請求項24】
前記目標温度が、前記メインサイドで検出されることを特徴とする請求項23に記載の制御方法。
【請求項25】
前記メインサイドと前記廃棄サイドとの間の温度差を測定することと、測定された前記温度差を検出することに基づいて、前記第1のモードから前記第2のモードへ動作を変更することとをさらに含む、請求項21に記載の制御方法。
【請求項26】
前記メインサイドの結露を検出することと、前記結露を検出することに基づいて、前記第1のモードから前記第2のモードへ動作を変更することとをさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の制御方法。
【請求項27】
前記第2のモードにおいて、前記廃棄サイドを通流する前記第1の流量と、前記メインサイドを通流する前記第2の流量との比率が、前記第1のモードと比較して低減される、請求項21に記載の制御方法。
【請求項28】
前記第2のモードにおいて、前記廃棄サイドを通流する前記第1の流量と、前記メインサイドを通流する前記第2の流量とが略同一である、請求項21に記載の制御方法。
【請求項29】
前記第2のモードにおいて、前記廃棄サイドを通流する前記第1の流量が、前記メインサイドを通流する前記第2の流量より少ない、請求項21に記載の制御方法。
【請求項30】
前記熱調整システムを通流する全流体の流れの少なくとも1つと、前記TEDへの電力とが、前記第2のモードと比較して低減される第3の期間、前記熱調整システムが第3のモードで動作することをさらに含む、請求項21に記載の制御方法。
【請求項31】
弁を用いてメインサイドと廃棄サイドとの間で流体の流れを導くことをさらに含む、請求項21に記載の制御方法。
【請求項32】
熱調整システムであって、
メインサイドと廃棄サイドを有するTEDと、
前記TEDの前記メインサイドに沿ったメインサイド流路と、
前記TEDの前記廃棄サイドに沿った廃棄サイド流路と、
前記熱調整システムが、第1の流体の流れが第1の流量で前記廃棄サイド流路に沿って通流し、第2の流体の流れが第2の流量でメインサイド流路に沿って通流する第1の期間、第1のモードで動作し、第1の流量と第2の流量との間の比率が変更される第2の期間、前記熱調整システムを第2のモードで動作するように構成されたコントローラとを備える、システム。
【請求項33】
前記メインサイド流路と前記廃棄サイド流路との間で前記第1の流体の流れ及び前記第2の流体の流れを導くために操作可能な弁をさらに備え、
前記コントローラが、前記第1のモードと前記第2のモードとを変更するために前記弁を操作するように構成される、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記第1のモードが、初期モードである、請求項32に記載のシステム。
【請求項35】
前記第2の流体の流れの温度を検出するように構成された温度センサをさらに備え、
前記コントローラが、前記温度センサからの信号を受信し、前記信号に基づいて前記第1のモードから前記第2のモードへ動作を変更するように構成される、請求項32に記載のシステム。
【請求項36】
前記第1の流体の流れと前記第2の流体の流れとの間の温度差を検出するように構成された温度センサをさらに備え、
前記コントローラが、前記温度センサからの信号を受信し、前記信号に基づいて前記第1のモードから前記第2のモードへ動作を変更するように構成される、請求項32に記載のシステム。
【請求項37】
前記第2の流体の流れの湿度を検出するように構成された湿度センサをさらに備え、
前記コントローラが、前記湿度センサからの信号を受信し、前記信号に基づいて前記第1のモードから前記第2のモードへ動作を変更するように構成される、請求項32に記載のシステム。
【請求項38】
前記第2のモードにおいて、前記第1の流量と第2の流量が略同一である、請求項32に記載のシステム。
【請求項39】
前記第2のモードにおいて、前記第2の流量が前記第1の流量よりも大きい、請求項32に記載のシステム。
【請求項40】
前記コントローラが、さらに、前記熱調整を通流する流体の流れのうちの少なくとも1つと、前記TEDへの電力とが、前記第2のモードと比較して低減される第3の期間、前記熱調整システムを第3のモードで動作する、請求項32に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は2018年11月30日に出願された米国仮出願第62/773,961号に基づく優先権を主張し、これは、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれ、本明細書の一部とみなされる。
【0002】
本開示は概して、気候制御に関し、より詳細には、気候制御システムに関する。
【背景技術】
【0003】
居住空間又は作業空間の環境制御のための温度変更された空気は、典型的には建物全体、選択されたオフィス、又は建物内の部屋の組等、比較的広範な領域に提供される。自動車のような車両の場合、車両全体は、通常、一つのユニットとして冷却又は加熱される。しかしながら、より選択的又は制限的な空気温度変更が望ましい多くの状況がある。例えば、実質的に瞬時の加熱又は冷却が達成できるように、乗員座席に対して個別に空調を提供することがしばしば望ましい。例えば、日陰のない場所に駐車されて、夏の天候に長時間さらされた自動車は、通常のエアコンでは、車に乗り込んでからしばらくの間、乗員にとって非常に高温であり、不快感を与える可能性がある。さらに、通常の空調であっても、暑い日には、着席している間、座席シートの背もたれや他の圧迫箇所が汗を帯びたままとなってしまう場合がある。冬季には乗員の快適さを容易にするために、特に通常の車両ヒータが車両の内部を迅速に暖める可能性が低い場合には、乗員の座席シートを迅速に暖める能力を有することが非常に望ましい。
【0004】
このような理由から、車両座席及び他の空調環境のための、様々なタイプの個別の空調システムが存在している。このようなシステムでは、熱調整システムが空気を熱的に調整し、調整空気を環境に送り込んで、空間を冷却又は加熱することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
熱調整及び流体の移動のためのシステムは、電気エネルギーを熱エネルギーに変換して、それに供給される電流に応じて温度変化を生成するための熱電装置を含む。熱電装置は、メインサイドと廃棄サイドとを有する。流体移送装置は、熱電装置によって生成された熱エネルギーが流体の流れに、又は流体の流れから伝達されるように、熱電装置と熱的に連絡する流体の流れを生成する。流量制御弁は、メインサイド流路及び/又は廃棄サイド流路に沿って流体の流れを選択的に導く。
【0006】
別の態様では、制御ユニットは、流体移送装置と流量制御弁とを動作可能に接続し、流体移送装置及び流量制御弁を操作する。
【0007】
別の態様では、センサが流体の流れの温度を示す信号を提供する。
【0008】
別の態様では、制御ユニットが信号に基づいて、流量制御弁を操作する。
【0009】
別の態様では、制御ユニットが流量制御弁を調整し、流体がほぼ等しい割合の流量で廃棄サイド流路及びメインサイド流路に導かれる。
【0010】
別の態様では、制御ユニットが所望のメインサイドの温度に基づいて流量制御弁の位置を調整する。
【0011】
別の態様では、制御ユニットが、メインサイド流路よりも廃棄サイド流路に流体の流量をより多く導くように流量制御弁を調整することによって、メインサイド温度を下げる、及び/又はメインサイドと廃棄サイドとの間の温度差を増加させる。
【0012】
別の態様では、流量制御弁が、全開位置から全閉位置に向かって調整される。
【0013】
別の態様では、制御ユニットが、熱電装置の前記メインサイドと廃棄サイドとの間の高い温度差を実現するために、メインサイド流路及び廃棄サイド流路上の流体の流れの総量の20%未満が、メインサイド流路に導かれるように流量制御弁を調整する。
【0014】
別の態様では、制御ユニットが、メインサイド流路に導かれる流体の割合を調整して、流体の流れにおける結露を防止する。
【0015】
別の態様では、制御ユニットが、流量制御弁の位置に基づいて、流体移送装置によって提供される流体の流量を調整する。
【0016】
別の態様では、制御ユニットが、流体の流量がメインサイド流路に対して比例するときに、流体の流量を増加させる。
【0017】
別の態様では、制御ユニットが、流体移送装置上の背圧が増加しているときに、流量制御弁の位置が流体移送装置に印加される電圧を下げるようなことによって、流体移送装置の速度を下げて、流体の流量を維持する。
【0018】
別の態様では、制御ユニットが、キャビン環境の湿潤度に基づいて、メインサイド流路に導かれる流体の流量の比率を調整する。
【0019】
別の態様では、制御ユニットが、メインサイド流路及びバイパス流路に沿った流体の流れの比率を調整して調整空気温度を調整し、メインサイド流路からのより冷たい空気を、バイパス流路からのより暖かい空気と混合して、中間温度に調整空気を生成する。
【0020】
別の態様では、制御ユニットが、流体の流れの多くを廃棄サイド流路よりもメインサイド流路に導き、流体の流れにおける結露を防止して、熱電装置のメインサイドと廃棄サイドとの間の限られた温度差でシステムの冷却能力を向上させる。
【0021】
別の態様では、制御ユニットが、第1の期間の間、流体の流れの第1の割合をメインサイド流路に導き、第2の期間の間、流体の流れの第2の割合をメインサイド流路に導き、第1の期間は、流体の流れにおける許容可能な結露の量を形成するように設定される。
【0022】
別の態様では、第1の期間及び/又は第2の期間が、熱電装置のメインサイドと廃棄サイドとの間の予め設定された温度差を維持するように設定される。
【0023】
別の態様では、制御ユニットが、実質的に全ての流体の流れをメインサイド流路に沿って導き、高い換気率を提供する。
【0024】
別の態様では、制御ユニットが、熱電装置をヒータとして動作させ、実質的に全て又は大部分の流体の流れをメインサイド流路に沿って導いて、加熱効率を増加させ、熱電装置の廃棄サイドの熱除去及び空気の流れに関連する損失を回避する。
【0025】
別の態様では、制御ユニットが、キャビン空気温度及び湿度に基づいて、流量制御弁の位置を調整する。
【0026】
熱調整システムのための制御方法クレームは、メインサイドと廃棄サイドとを有する熱調整システムのTEDに電力を供給するステップを含み、熱調整システムは、流体の流れが熱調整システムを通流する第1の期間、第1のモードで動作する。流体の流れの第1の部分が、第1の流量で廃棄サイドを通って導かれ、流体の流れの第2の部分が、第2の流量でメインサイドを通って導かれる。熱調整システムは、第1のモードと比較して第1の流量と第2の流量との間の比率が変更される第2の期間、第2のモードで動作する。
【0027】
別の態様では、第1のモードが、初期モードである。
【0028】
別の態様では、流体の流れの目標温度が温度センサを使用して検出され、目標温度の検出に基づいて、動作が第1のモードから第2のモードに変化する。
【0029】
別の態様では、目標温度が、メインサイドで検出される。
【0030】
別の態様では、メインサイドと廃棄サイドとの間の温度差が測定され、測定された温度差の検出に基づいて、動作が第1のモードから第2のモードに変化する。
【0031】
別の態様では、メインサイドの結露が検出され、結露の検出に基づいて、第1のモードから第2のモードへ動作を変更する。
【0032】
別の態様では、第2のモードにおいて、廃棄サイドを通流する第1の流量とメインサイドを通流する第2の流量との間の比率が、第1のモードと比較して低減される。
【0033】
別の態様では、第2のモードにおいて、廃棄サイドを通流する第1の流量とメインサイドを通流する第2の流量とが略同一である。
【0034】
別の態様では、第2のモードにおいて、廃棄サイドを通流する第1の流量が、メインサイドを通流する第2の流量より少ない。
【0035】
別の態様では、熱調整システムは、熱調整システムを通流する全流体の流れの少なくとも1つと、TEDへの電力とが、第2のモードと比較して低減される第3の期間、第3のモードで動作する。
【0036】
別の態様では、メインサイドと廃棄サイドとの間の流体の流れは、弁によって導かれる。
【0037】
熱調整システムは、メインサイドと廃棄サイドとを有するTEDと、TEDのメインサイドに沿ったメインサイド流路と、TEDの廃棄サイドに沿った廃棄サイド流路とを含む。コントローラは、熱調整システムを、第1の流体の流れが第1の流量で廃棄サイド流路に沿って通流し、第2の流体の流れが第2の流量でメインサイド流路に沿って通流する第1の期間、第1のモードで動作し、第1の流量と第2の流量との間の比率が変更される第2の期間、第2のモードで動作する。
【0038】
別の態様では、弁が第1の流体の流れと第2の流体の流れを、メインサイド流路と廃棄サイド流路との間で方向付ける。コントローラは、第1のモードと第2のモードとを変えるために弁を操作する。
【0039】
別の態様では、第1のモードは、初期モードである。
【0040】
別の態様では、温度センサが第2の流体の流れの温度を検出する。コントローラは、さらに、温度センサからの信号を受信し、当該信号に基づいて、動作が第1のモードから第2のモードに変化する。
【0041】
別の態様では、温度センサが第1の流体の流れと第2の流体の流れとの間の温度差を検出する。コントローラは、温度センサからの信号を受信し、当該信号に基づいて、第1のモードから第2のモードへ動作を変更する。
【0042】
別の態様では、湿度センサが第2の流体の流れの湿度を検出する。コントローラは、湿度センサからの信号を受信し、当該信号に基づいて、第1のモードから第2のモードへ動作を変更する。
【0043】
別の態様では、第2のモードにおいて、第1の流量と第2の流量が略同一である。
【0044】
別の態様では、第2のモードにおいて、第2の流量が第1の流量よりも大きい。
【0045】
別の態様では、コントローラが、熱調整を通流する流体の少なくとも1つが流れ、TEDへの電力が第2のモードと比較して低減される第3の期間、熱調整システムを第3のモードで操作する。
【0046】
様々な例が例示目的のために添付の図面に示されており、例の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。開示された異なる例の様々な特徴を組み合わせて、本開示の一部である追加の例を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】メインサイド流路及び廃棄サイド流路に沿って流体の流れを導くための流量制御弁を含む熱調整システムを示す図面である。
【0048】
【
図1A】流量制御弁が中立位置にある熱調整システムを通流する流体の流れを示す図面である。
【0049】
【
図1B】流量制御弁が廃棄サイド阻止位置にある熱調整システムを通流する流体の流れを示す図面である。
【0050】
【
図1C】流量制御弁がメインサイド阻止位置にある熱調整システムを通流する流体の流れを示す図面である。
【0051】
【
図2】メインサイド流路、廃棄サイド流路及びバイパス流路に沿って流体の流れを導くための流量制御弁を含む熱調整システムの別構成を示す図面である。
【0052】
【
図2A】流量制御弁がバイパス流路をブロックし、メインサイド流路を部分的にブロックする熱調整システムを通流する流体の流れを示す図面である。
【0053】
【
図2B】バイパス流路をブロックする流量制御弁を備えた熱調整システムを通流する流体の流れを示す図面である。
【0054】
【
図2C】流量制御弁が廃棄サイド流路をブロックする熱調整システムを通流する流体の流れを示す図である。
【0055】
【
図3A】メインサイド流路をブロックする全閉位置にある流量制御弁を含む模式的な熱調整システムを示す図面である。
【0056】
【
図3B】メインサイド流路と廃棄サイド流路との間の中立位置にある流量制御弁を示す図面である。
【0057】
【
図3C】流量制御弁の位置に対するメインサイド流路を通流する空気流を示すグラフである。
【0058】
【
図3D】流量制御弁の位置に対する熱調整システムの熱電装置のメインサイドと廃棄サイドにわたる最大温度差(デルタT)を示すグラフである。
【0059】
【
図4】メインサイド流路と廃棄サイド流路との間の中立位置にある流量制御弁を含む模式的な熱調整システムを示す図面である。
【0060】
【
図5】流量制御弁がメインサイド流路を部分的にブロックしている模式的な熱調整システムを示す図面である。
【0061】
【
図6】流量制御弁がメインサイド流路を完全にブロックしている模式的な熱調整システムを示す図面である。
【0062】
【
図7】流量制御弁が廃棄サイド流路を部分的にブロックしている模式的な熱調整システムを示す図面である。
【0063】
【
図8】流量制御弁が廃棄サイド流路を完全にブロックしている模式的な熱調整システムを示す図面である。
【0064】
【
図9】熱調整システムの熱電装置のメインサイド及び廃棄サイドにわたる最大温度差(デルタT)と、流量制御弁の位置に対するメインサイド及び廃棄サイドにわたる体積流量とを示すグラフである。
【0065】
【
図10】熱調整モジュールを動作させるためのフローチャートを示す図面である。
【0066】
【
図11】熱調整モジュールの別構成を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1は、熱調整システム100の実施を示す。熱調整システム100は、調整された(例えば、加熱、冷却、乾燥、及び/又は湿潤された)空気を、気候制御される装置又は環境に送るために使用することができる。構成例において、熱調整システム100は、車の座席内の1つ又は複数の、通路又はチャンネルを通して、車の座席内に調整空気を送ることができる。また、熱調整システム100は、密閉空間、ベッド、空間、及び/又はソファのような様々な他の空間又は構成要素に、調整空気を供給するために使用することができる。
【0068】
熱調整システム100は、流体移送装置(不図示)を含むことができ、又はそれと組み合わせて使用することができる。流体移送装置は、ファン、送風機、又は同様の装置とすることができる。流体移送装置は、1つ又は複数のブレードを駆動するためのモータを含むことができる。流体移送装置の速度は、モータへの電圧の印加及び/又はアンペア数の供給に基づいて制御することができる。流体移送装置は、熱調整システム100を通流する流体の流れを送ることができる。流体の流れ又はその一部は、熱調整システム100を通流することによって調整することができる。流体の流れは、流路110に沿って熱調整システム100を通流するように送ることができる。これは、図示された実施態様では、流体移送装置は、一般的に、熱調整システム100の調整要素の上流に配置することができる。しかしながら、他の実施態様では、流体移送装置は、上流の流体移送装置に加えて、又はそれに代えて、調整要素の下流に配置することができる。
【0069】
熱調整システム100は、熱電装置(TED)120を含むことができる。TED120は、ペルチェ素子とすることができる。TED120は、メインサイド122及び廃棄サイド124を含むことができる。TED120は、電圧の印加及び/又はアンペア数の供給に基づいて制御することができる。冷却装置として使用される場合、メインサイド122は、廃棄サイド124よりも低温にすることができる。加熱装置として使用される場合、メインサイド122は、廃棄サイド124よりも高温にすることができる。
【0070】
TED120は、メインサイド熱交換器126及び/又は廃棄サイド熱交換器128を含むことができる。特定の実施態様では、熱交換器が複数の薄い金属フィンを含むことができる。流路110は、メインサイド流路132と廃棄サイド流路134とに分流することができる。メインサイド流路132は、メインサイド熱交換器126を通流することができる。廃棄サイド流路134は、廃熱熱交換器128を通流することができる。メインサイド流路132は、気候制御された環境又は装置で終端することができる。廃棄サイド流路134は、排気口で終端することができる。
【0071】
熱調整システム100は、流量制御弁140を含むことができる。流量制御弁140は、TED120の上流に位置することができる。しかしながら、他の実施態様では、流量制御弁は、TED120の下流に配置することができ、及び/又は追加の弁を設け得ることが予想される。例えば、熱調整システムのメインサイド及び廃棄サイドのために、流路132、134のそれぞれに個々の弁を設けることができる。流量制御弁140は、ルーバ又はフラップ144を含むことができる。ルーバの位置は、メインサイド及び廃棄サイド流路132、134の間の流体移送装置によって提供される流体の流れを比例させることができる。任意で、ルーバは、流体の流れをバイパス流路(不図示)に比例させることができる。ルーバの位置は、モータ(例えば、サーボ、ステップ又は他のモータタイプ)又はアクチュエータによって制御することができる。図示された実施態様においては、流量制御弁140は、フラップ弁の形態であるが、ニードル弁、バレル弁又は回転弁及び/又はそのような弁の組み合わせ等、他のタイプの弁を使用することができる。
【0072】
図1Aは、流量制御弁140を中立位置にした、熱調整システム100を通流する流体の流れの圧力を示す。
図1Bは、流量制御弁140が廃棄サイド流路134をブロックする位置にある熱調整システム100を通流する流体の流れの圧力を示す。
図1Cは、メインサイド流路132をブロックする位置にある流量制御弁140を有する熱調整システム100を通流する流体の流れの圧力を示す。
【0073】
従来の気候制御システムは、気候制御のために流体移送装置とTEDを使用することができる。これらのシステムは、所望の調整空気温度及び熱調整能力を達成するために、流体移送装置によって提供される全空気流及びTEDに提供される電力を変化させることによって動作することができる。流量制御弁140の追加により、熱調整システム100は、従来のシステムと比較して、流体の流れの調整に対する追加の制御を行うことができる。例えば、熱調整システム100は、空気温度のより大きな変化を提供し、任意の所与の流体移送装置及びTEDの動作条件に対する調整空気温度の追加の制御を提供し、及び/又は以下により詳細に説明するように、追加の空調動作モード又はオプションを提供することができる。したがって、熱調整システム100は、有利なことに、TED120及び/又は流体移送装置の感知時間を短縮し、及び/又は効率を向上させることができる。
【0074】
図2は、熱調整システム200の別の実施態様を示す。熱調整システム200は、熱調整システム100と同様に動作し、及び/又は類似の構成要素を含むことができる。熱調整システムは、TED220を含むことができる。TED220は、メインサイド222及び廃棄サイド224を含むことができる。TED220は、メインサイド熱交換器226及び/又は廃棄サイド熱交換器228を含むことができる。
【0075】
熱調整システム200は、流体移送装置(不図示)からの流体の流れのための流路210を含むことができる。流路210は、流量制御弁240を通流することができる。図示された実施態様における流量制御弁240は、回転弁であってもよい。流量制御弁240は、メインサイド流路232、廃棄サイド流路234、及び/又はバイパス流路236を通流する流体の流れを導くことができる。
【0076】
図2Aは、流量制御弁240が、バイパス流路236をブロックし、メインサイド流路232を部分的にブロックする位置にある状態での、熱調整システム200を通流する流体の流れの圧力を示す。
図2Bは、バイパス流路236のみをブロックする位置にある状態での、流量制御弁240を有する熱調整システム200を通流する流体の流れの圧力を示す。
図2Cは、流量制御弁240が廃棄サイド流路234をブロックする位置にある状態での、熱調整システム200を通流する流体の流れの圧力を示す。
【0077】
図3Aは、流量制御弁340と、TED320と、メインサイド流路332と、廃棄サイド流路334とを含む熱調整システム300を図示している。流量制御弁340は、全閉位置(0%)で、TED320のメインサイドをブロックすることができる。
図3Bは、全開位置(100%)にある流量制御弁340が、TED320のメインサイド及び廃棄サイドの両方にわたって流体が流れることを可能にしている様子を図示している。
図3Cは、流量制御弁340の異なる開放位置に対するメインサイド流路332を通流する気流を示すグラフである。
図3Dは、流量制御弁340の異なる開位置についての、TED320のメインサイド及び廃棄サイドにわたる最大温度差(デルタT)を示すグラフである。
【0078】
上述のように、固定的に分割された従来の気候制御システムは、TEDのメインサイド及び廃棄サイドの上に空気の流れができる。特定の実施態様において、TED320のメインサイドと廃棄サイドとの間に固定的に分割された空気流を有する従来の気候制御システムは、メインサイド流路332の全開(100%)位置で
図3Dに示されるように、約7度(C)の最大温度差(デルタT)を達成することができる。メインサイド流路332に沿った流体の流れを閉鎖又は制限することは、デルタTを改善する(例えば、メインサイドで加熱又は冷却されている全容積又は空気を減少させることによる)。特定の実施態様では、流量制御弁340が17度(C)程度のデルタTsを可能にする。デルタTの改善は、気候制御された環境に送られるメインサイド流路332を形成する、調整空気のより低い温度を達成することができる。空調付きの座席ユニットのような特定の環境では、より低い温度が座席の乗員に増加した冷却感覚をもたらすために望ましいものとなり得る。
図3A及び
図3Bに関して図示され説明された構成及び動作は、
図1及び
図2に関して上述された熱調整システムの実施態様において使用することができる。
【0079】
図4は、熱調整システム100と同様の、熱調整システム400を模式的に示す。熱調整システム400は、流路410に沿って流体の流れを移動させるための流体移送装置450を含むことができる。流路410は、メインサイド流路432及び/又は廃棄サイド流路434に沿って進むことができる。熱調整システム400は、TED420を含むことができる。TED420は、メインサイド422及び廃棄サイド424を有することができる。TED420は、1つ以上の空気熱交換器(不図示)を含むことができる。流量制御弁440は、メインサイド流路432及び/又は廃棄サイド流路434に沿って空気を導くこと及び/又は比例させることができる。流量制御弁440は、モータ442及び/又はルーバ、又はロータ444を含むことができる。
【0080】
熱調整システム400は、コントローラ460を含むことができる。コントローラ460は、単数、又はいくつかの制御装置に分散されていてもよい。コントローラ460は、流量制御弁440を制御するためのモータ442と動作可能に連結することができる。コントローラ460は、TED420及び/又は流体移送装置450と動作可能に連結することができる。コントローラ460は、1つ又は複数の動作モードに従って熱調整システム400を動作させるように構成されたコンピュータ可読媒体上で、プログラミング命令を実行するためのプロセッサを含むことができる。
【0081】
熱調整システム400は、1つ又は複数のセンサ462を含むことができる。センサ462は温度及び/又は湿度センサを含み、流体の流れを測定するように構成され得る。センサ462は、流路410、流体移送装置450、メインサイド流路432及び/又は廃棄サイド流路434、及び/又は熱調整システム400内の他の場所に取り付けることができ、特定の実施態様では、センサ462がメインサイド熱交換器又は廃棄サイド熱交換器の上流、下流、及び/又は内部に配置することができる。センサ462は、コントローラ460と通信可能に結合され得る。コントローラ460は、センサ462からの信号に基づいて、少なくとも部分的に熱調整システム400を動作させることができる。
【0082】
図4~
図8は、以下に説明するように、様々な動作モードに応じて、流量制御弁440が開、閉、及び中間(部分的に開)位置にある熱調整システム400を示す。
【0083】
特定の実施態様において、コントローラ460は、
図4に模式的に示されている従来モードで熱調整システム400を動作させることができる。従来モードでは、流体移送装置450からの流体の流れは、メインサイド422及び廃棄サイド424(例えば、メインサイド流路432及び廃棄サイド流路434の間の体積流体流量)の上を、ほぼ等しく及び/又は静的な所定の比率で通流する。コントローラ460は(流量制御弁440の操作によって)、TED420に供給される電力(例えば、電圧及び/又はアンペア数)及び空気移送装置450からの総流体流量の一方又は両方を調整することによって(例えば、速度を上げるか、又は遅くすることによって)、調整空気温度を修正する。
【0084】
コントローラ460は、
図5及び6に模式的に示されている高デルタTモードで熱調整システム400を動作させることができる。高デルタTモードでは、流量制御弁440がメインサイド流路432を部分的に又は完全に閉じることができる。コントローラ460は、高温及び/又は低湿度のキャビン空気動作環境(例えば、周囲温度32~45度(C)、相対湿度20%未満)において、高デルタTモードで動作することができる。高デルタTモードでは、熱調整システム400を通流するキャビン空気を、従来モードよりも低い温度に冷却することができる。コントローラ460は、(流量制御弁440の動作により)メインサイド流路432上の高いデルタT及び低い空調空気温度(例えば、メインサイド流路432上の空調空気温度に対して、メインサイド流路432及び廃棄サイド流路434に沿った流体の流れが等しくなる)を達成するために、より多くの流体の流れを廃棄サイド流路434に比例させることができる。高デルタTモードでは、空調気流の調整よりも空調気温の調整を優先させることができる。高デルタTモードは、調整される空気目標温度を含むことができる。高デルタTモードでは、調整される空調温度目標は、25度(C)とすることができる。これは、乗員が感じ取るまでの時間を短縮するため、及び/又は快適さのために最適な空調温度を提供するためである。
【0085】
図9は、流量制御弁440の位置(10°刻みのP0~P10)に対するdT(メインサイド流路432及び廃棄サイド流路434間の温度差)及びメインサイド流路432及び廃棄サイド流路434間の総流量及び流量の比を示すチャートである。特定の実装形態では、高デルタTモードは、P0とP1~P2のいずれかとの間で
図9のチャートに表すことができる。高デルタTモードの特定の実施態様では、流量制御弁440は、約0%~20%、0%~10%、又は0%~5%の間で開くことができる。高デルタTモードの特定の実施態様では、メインサイド流路432及び廃棄サイド流路434に沿った流体の流れの比が約0~0.3、0.1~0.3、0.1~0.2の間とすることができる。高デルタTモードの特定の実施態様では、メインサイドを通流する流体の流量が約0~3CFM(立方フィート/分)、0~2CFM、及び0~1CFMとすることができる。高デルタTモードの特定の実施態様では、dT(メインサイド流路432及び廃棄サイド流路434間の温度差)は約25℃~12℃又は25℃~20°であり得る。
【0086】
コントローラ460は、
図7及び
図8に模式的に示されている高エアフローモードで熱調整システム400を動作させることができる。高エアフローモードでは、流量制御弁440が廃棄サイド流路434を部分的又は完全に閉じることができる。コントローラ460は、結露することなく、所望の(高)デルタTを達成することを湿度が制限する(例えば、周囲温度25~32度(C)、相対湿度60%未満の)キャビン空気環境において、高エアフローモードで動作することができる。コントローラ460は、制限されたデルタT(より高い調整空気温度であってもよい)で動作する熱システム400に対する冷却能力を高めるために、廃棄サイド流路434と比較して、メインサイド流路432に流体の流れのより多く又は全てを比例させることができる。高エアフローモードでは、結露を発生させることなく、熱システム400の冷却能力を増加させることができる。さらに、コントローラ460は、所望の調整空気温度及び/又は湿度を達成するために、TED420への電力を制御することができる。
【0087】
特定の実施態様では、高エアフローモードが、P1又はP2とP10との間の
図9のチャートに表すことができる。高エアフローモードの特定の実施態様においては、流量制御弁440は、約20%~100%、10%~100%、又は5%~100%の間で開くことができる。高エアフローモードの特定の実施態様においては、流量制御弁440は、約5%、10%、又は20%よりも大きく開くことができる。高エアフローモードの特定の実施態様では、メインサイド流路432及び廃棄サイド流路434に沿った流体の流れの比が約1.0、0.5~5.0、又はそれ以上とすることができる。高エアフローモードの特定の実施態様では、メインサイドを通流する流体の流量が約4~10CFM、又は約2、3、又は4CFMよりも大きくすることができる。高エアフローモードの特定の実施態様では、dT(メインサイド流路432と廃棄サイド流路434との間の温度差)は約13℃~1℃又は約13℃未満とすることができる。
【0088】
コントローラ460は、熱調整システム400をシーケンシャル高デルタT、高エアフローモードで動作させることができる。コントローラ460は、湿度制限のあるキャビン空気環境(例えば、周囲温度が25度(C)よりも高く、かつ、熱調整システム400内で結露を引き起こす相対湿度)において、シーケンシャル高デルタT、高エアフローモードで動作することができる。コントローラ460は、高デルタTモードの第1の期間の間、動作することができ、許容可能な量の結露が形成され得る。その後、コントローラ460は、第2の期間、結露を除去するために高エアフローモードでの動作に切り替えることができる。動作の期間は、デルタTの所望の範囲を維持するように設定されてもよい。デルタTの範囲は、例えば、乗員が調整空気温度範囲を認識しないように、及び/又は乗員の快適さを維持するように設定されてもよい。さらに、コントローラ460は、所望の調整空気温度及び/又は湿度を達成するために、TED420への電力を制御することができる。別の動作例では、コントローラ460が高デルタTモードを、凝縮点を過ぎて動作させ、次に、高エアフローモードで動作させて、熱調整システム400を乾燥させることができる。このプロセスは、ノイズが発生する可能性があり、事前調整モード(気候制御された環境に乗員がいない)として使用することができる。
【0089】
コントローラ460は、
図7及び
図8に模式的に示されている換気モードで熱調整システム400を動作させることができる。コントローラ460は、キャビン空気温度が乗員の快適さを達成するために十分であるキャビン空気環境において、換気モードで動作することができる。コントローラ460は、TED420の電源がオフの状態、及び/又はバイパス流路を通流する状態で、メインサイド流路432上の実質的に全ての流体の流れを比例させる。換気モードでは、熱調整システム400が回転式及びルーバ式の両方の流量制御弁に対して高い換気率を提供することができる。コントローラ460は、第1の期間の間、換気モードで動作することができ、第2の期間の間、従来モード、高デルタTモード、高エアフローモード、及び/又はシーケンシャル高デルタT、高エアフローモードのうちの1つ又は複数で動作することができる。
【0090】
コントローラ460は、熱調整システム400を修正加熱モードで動作させることができる。コントローラ460は、キャビン空気温度が低く、乗員の快適さのために暖房が望まれるキャビン空気環境において、修正加熱モードで動作することができる。TED420は、上記の冷却モードに対して逆の極性で動作させることができる。コントローラ460は、流量制御弁440を操作して、メインサイド422(加熱器として作用する)上の流体の流れの全て又は大部分を比例させて、加熱能力を増加させ、廃棄サイド424上の熱除去及び空気の流れに関連する損失を回避することができる。加熱された空気の感覚を得るまでの時間を短縮させるために、TED420は、流量制御弁440がメインサイド流路432上で部分的に又は完全に閉じている状態で、高デルタTモードと同様に動作させることができる。これは、修正加熱モードでの動作と比較して、熱調整システム400を通って流れるキャビン空気の温度を上昇させることができる。
【0091】
別のモードでは、熱調整システム400が冷気及び/又は湿ったキャビン空気環境で動作することができる。コントローラ460は、乗員の湿潤を低減させ、及び/又は乗員の乾燥を増進させるために、
図7及び
図8に模式的に示されるように(例えば、流体移送装置450の動作によって)熱調整システム400を通流する流体の流れを増加させることができる。コントローラ460は、TED420への流量制御弁440及び/又は電力を調整して、調整空気温度を上昇させて、乾燥に関連する乗員の蒸発冷却を弱めることができる。
【0092】
コントローラ460は、流量制御弁440の位置に基づいて、流体移送装置の速度を調整することができる。流量制御弁440の位置が背圧を増加させている所望の流体の流れを維持するためには、より高い背圧では流路410内の乱流が対応する空気流の増加なしに流体移送装置の速度を増加させる可能性があるため、流体移送装置の速度を減少させる必要がある場合がある。
【0093】
高デルタTモードでは、熱調整システム400がTED420のメインサイドを横切る十分な流体の流れを提供することによって、メインサイド422上での結露の発生を回避することができる。センサ462は、メインサイド流路432及び廃棄サイド流路434の両方に配置することができる。センサ462は、メインサイド流路432上の流体の流れと廃棄サイド流路434との間の温度差を検出又は測定するために使用することができる。あるいは、センサ462がメインサイド流路432上のTED420の上流及びTED420の下流であってもよい。コントローラ460は、温度差を示す信号をセンサ462から受信することができる。コントローラ460は、信号からの温度差を、流量制御弁440の所定の位置における、TED420のメインサイドと廃棄サイドとの間の予想される温度差と比較することができる。測定された温度差が予想される温度差よりも小さい場合(例えば、誤差の範囲内)、これは、メインサイド流路に結露があることを意味する場合がある。したがって、コントローラ460は、制御弁440及び/又は流体移送装置450の動作を変更して、メインサイド流路を横切る流体の流れを増加させて、結露/湿度を減少させることができる。別の実施態様では、熱調整システム400は、湿度又は結露を検出するために、メインサイド流路上に湿度センサを含むことができる。湿度センサからの信号に基づいて、コントローラ460は、制御弁440及び/又は流体移送装置450の動作を変更して、メインサイド流路を横切る流体の流れを増加させて、結露/湿度を低減することができる。
【0094】
図10は、上述したシステム100、200、300、400等の熱調整システムの制御方法の請求項の概略を示す。ステップ505では、この方法を開始することができる。開始は、車両又は熱調整システムが構成要素である他のシステム、又は熱調整システム自体に電力を供給することに基づくことができる。ステップ510では、熱調整システムが第1の期間、第1のモードで動作することができる。第1のモードは、上述したいずれの動作モードであってもよい。特定の実施態様では、第1のモードが高デルタTモードである。第1のモードでは、流体の流れは、主に廃棄サイド流路に沿って熱調整システムを通流する。第1のモードは、メインサイド及び廃棄サイドを有するTEDに電力を供給することを含むことができる。第1のモードは、初期モードとすることができる。特定の実施態様では、高デルタTモードが初期モードである。
【0095】
ステップ515では、熱調整システムを通流する流体の流れが、熱調整システムが第1のモードの間の流体の流れに対して変更される第2の期間、第2のモードで動作することができる。第2のモードの間の流体の流れは、第1のモードの間とは異なる比率でメインサイド流路と廃棄サイド流路とに方向付けられ得る。第2のモードでは、第1のモードのメインサイド流路に沿った流体の流れに対して、メインサイド流路に沿った流体の流れを増加させることができる。これは、メインサイド流路に沿った流体の流れの温度を上昇させ(例えば、TED420のメインサイドと廃棄サイドとの間の温度差を減少させ)、及び/又はその中の結露又は湿度を減少させることができる。第2のモードでは、メインサイド流路に沿った流体の流れを、廃棄サイド流路に沿った流体の流れと一致させるように増加させることができる。第2のモードでは、流体の流れが主にメインサイド流路に沿うことができる。特定の実施態様では、第2のモードが高エアフローモード又は換気モードとすることができる。
【0096】
メインサイド流路と廃棄サイド流路との間の移行は、メインサイド流路と廃棄サイド流路との間の流体の流れの方向を変更するために、弁を使用して達成することができる。第1のモードから第2のモードへの移行の動作は、いくつかの変数のいずれかに基づくことができる。第1の期間は、移行が自動的に行われるあらかじめ選択されている時間に基づいて行うことができる。遷移は、(例えば、メインサイド流路上の)温度センサを使用して流体の流れの目標温度を検出すること、及び/又はその温度を指定された期間にわたって保持することに基づいて行うことができる。遷移は、結露の検出に基づいて行うことができる。遷移は、メインサイド流路上の流体の流れと廃棄サイド流路との間の温度差の測定に基づいて行うことができる。温度差が低すぎると、メインサイド流路に結露や湿度があることを示すことがある。遷移は、メインサイド流路と廃棄サイド流路との間の予め設定された温度差を維持することに基づいて行うことができる。第1の時間及び第2の時間の周期は、熱電装置のメインサイドと廃棄サイドとの間の予め設定された温度差を維持するように設定することができる。
【0097】
制御方法は、任意に、熱調整システムを通流する流体の流れを第2のモードと比較して減少され得る第3の期間、第3のモードで熱調整システムを動作させることを含むことができる。第3のモードでは、TEDへの電力が第2のモードと比較して減少させることができる。第3のモードは、熱調整システムによる消費電力を低減するために使用することができる。例えば、第3のモードは、第1のモード及び第2のモードの動作によって快適なキャビン温度が達成されると、動作可能となる。
【0098】
図11は、ハウジング610を含む熱調整システム600の別の実施態様を示す。システム600は、TED620を含むことができる。TED620は、単一のユニットであってもよく、2つ以上の別個のTEDユニットで構成されていてもよい。システム600のハウジング610は、メインサイド流路632及び廃棄サイド流路634を含むことができる。システム600は、フラップ弁640を含むことができる。フラップ弁640は、ルーバ644を含むことができる。ルーバ644は、メインサイド流路632と廃棄サイド流路634との間に配置することができる。ルーバ644は、ステッピングモータ等のモータによって移動可能である。ルーバ644は、モータによって軸を中心に回転可能とすることができる。ルーバ644は、ハウジング610の中心壁646に取り付けることができる。中心壁646は、シャフト647を固定するための1つ又は複数のマウント648を含むことができる。この構成により、ルーバ644上の空気の流れを改善することができる。
【0099】
開示された実施態様の説明を助けるために、上向き、上方、下向き、下方、垂直、水平、上流、及び下流のような用語が、添付の図面を説明するために上で使用されている。しかしながら、図示された実施態様は、様々な所望の位置に配置され、配向され得ることが理解されるのであろう。
【0100】
なお、本明細書で使用される「結合する」、「結合している」、「結合される」、又は単語の他のバリエーションは、間接的な接続又は直接的な接続のいずれかを示して可能性があることに留意すべきである。例えば、第1の構成要素が第2の構成要素に「結合する」場合、第1の構成要素は、別の構成要素を介して第2の構成要素に間接的に接続されてもよく、第2の構成要素に直接接続されてもよい。
【0101】
本明細書に記載されているコントローラの機能は、プロセッサ可読媒体又はコンピュータ可読媒体に1つ又は複数の命令として格納されていてもよい。「コンピュータ可読媒体」とは、コンピュータ又はプロセッサによってアクセス可能な任意の利用可能な媒体を意味する。このような媒体は、以下に限定されるものではないが、例として、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリー・メモリ(ROM)、電気的消去可能プログラマブル・リード・オンリー・メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ、コンパクト・ディスク・リード・オンリー・メモリ(CD-ROM)、又は他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置、又は所望のプログラム・コードを命令又はデータ構造の形態で記憶するために使用することができ、コンピュータによってアクセスすることができる他の任意の媒体を含むことができる。コンピュータ可読媒体は、有形、かつ、非一時的であってもよいことに留意すべきである。本明細書では、「コード」という用語は、計算装置又はプロセッサによって実行可能なソフトウェア、命令、コード、又はデータを指す場合がある。
【0102】
本明細書ではいくつかの実施態様及び例が開示されているが、本出願は、具体的に開示された実施態様を超えて、本発明の他の代替的な実施態様及び/又は使用、ならびにその修正形態及び均等物に及ぶ。また、実施態様の特定の特徴及び態様の様々な組み合わせ又はサブコンビネーションを行うことができ、それでもなお本発明の範囲内に入ることも想定される。したがって、開示された実施態様の様々な特徴及び態様は開示された発明の様々なモードを形成するために、互いに組み合わせることができ、又は互いに置き換えることができることを理解されたい。したがって、本明細書に開示された本発明の範囲は、上述した特定の開示された実施によって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲を公正に読むことによってのみ決定されるべきであることが意図されている。
【0103】
好ましい実施態様の前述の説明は、特定の新規な特徴を示し、説明し、指摘したが、図示されたような装置の詳細の形態における様々な省略、置換、及び変更、ならびにそれらの使用が、本開示の精神から逸脱することなく当業者によってなされ得ることが理解されるのであろう。したがって、本発明の範囲は、例示することを意図した前述の議論によって限定されるべきではない。
【国際調査報告】