(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】金銀花水抽出物を含むヘリコバクター・ピロリ感染症の予防または治療用薬学組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/355 20060101AFI20220125BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220125BHJP
A61K 31/7004 20060101ALI20220125BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220125BHJP
【FI】
A61K36/355
A61P31/04
A61K31/7004
A23L33/105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532295
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(85)【翻訳文提出日】2021-06-07
(86)【国際出願番号】 KR2019016671
(87)【国際公開番号】W WO2020116862
(87)【国際公開日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】10-2018-0155638
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520210398
【氏名又は名称】グリーン・クロス・ウェルビーイング・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョム・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン・キュ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ジュン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ス・ファン・イム
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE05
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4B018MF01
4C086AA01
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4C088AB12
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4C088MA35
4C088MA37
4C088MA66
4C088NA14
4C088ZB35
(57)【要約】
本発明は、セコキシロガニンを有効成分で含む金銀花水抽出物のヘリコバクター・ピロリ感染症の予防または治療用組成物に関する。上記抽出物はセコキシロガニンを特定含量含むことによって、ヘリコバクター・ピロリ菌に処理する時抗菌効果に優れ、ヘリコバクター・ピロリに感染されたマウスに処理する時血中ヘリコバクター・ピロリIgG抗体の発現減少、組職病理学的病変の好転、サイトカイン発現の減少効果が優秀であつた。よって、本発明の金銀花水抽出物は、ヘリコバクター・ピロリ感染症の予防または治療用組成物で有用に使用されることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金銀花(Lonicerae Flos)水抽出物として、セコキシロガニン(Secoxyloganin)を有効成分で含むヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染症の予防または治療用薬学組成物。
【請求項2】
上記セコキシロガニンは、金銀花水抽出物に0.1ないし10重量%で含むことを特徴とする請求項1に記載のヘリコバクター・ピロリ感染症の予防または治療用薬学組成物。
【請求項3】
上記セコキシロガニンは、金銀花水抽出物に0.5ないし5重量%で含むことを特徴とする請求項1に記載のヘリコバクター・ピロリ感染症の予防または治療用薬学組成物。
【請求項4】
上記組成物は薬剤学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を追加して薬剤学的投与型に剤形化されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のヘリコバクター・ピロリ感染症の予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
金銀花(Lonicerae Flos)水抽出物としてセコキシロガニン(Secoxyloganin)を有効成分で含むヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染症の予防または改善用健康機能食品。
【請求項6】
上記セコキシロガニンは、金銀花水抽出物に0.1ないし10重量%で含むことを特徴とする請求項5に記載のヘリコバクター・ピロリ感染症の予防または改善用健康機能食品。
【請求項7】
上記セコキシロガニンは、金銀花水抽出物に0.5ないし5重量%で含むことを特徴とする請求項5に記載のヘリコバクター・ピロリ感染症の予防または改善用健康機能食品。
【請求項8】
上記健康機能食品の剤形は、錠剤、カプセル剤、丸剤または液剤からなる群から選択されることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか一項に記載のヘリコバクター・ピロリ感染症の予防または改善用健康機能食品。
【請求項9】
セコキシロガニン(Secoxyloganin)を有効成分で含むヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染症の予防または治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金銀花水抽出物を含むヘリコバクター・ピロリ感染症の予防または治療用薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori、H.pylori)は、1983年オーストラリアのマーシャル(Marshall)とウォーレン(Warren)によって最初発見された。4~6個の鞭毛を保有した螺旋形の微好気性、グラム陰性菌であって、全世界人口の半分以上が感染されていると報告され、韓国の場合、40歳以上の成人では70%以上の感染率が報告されている。ヘリコバクター・ピロリは主に上部消化器疾患と密接に係わって、慢性胃炎、胃腸及び十二指腸潰瘍、胃癌などを起こす原因菌として知られ、特に、1994年IARC(International Agency for Research on Cancer)及び世界保健機関はヘリコバクター・ピロリを発癌因子(Class I carcinogen)として定めた。胃癌の予防及び診断と係わって、ヘリコバクター・ピロリの感染可否は非常に重要な問題として受け入れられ、ヘリコバクター・ピロリの感染因子を糾明することは国民保健のために重要な問題として受け入れられている。
【0003】
ヘリコバクター・ピロリは、動物の尻尾に似ている鞭毛(Flagella)という運動器官を5~6個持っていて、これを利用して胃腸壁の真上には粘っこい粘液を通過して胃粘膜表面に安着する。尿素分解酵素(Urease)はヘリコバクター・ピロリの大概の菌株で発見される共通の特徴であって、個体間の遺伝学的によく保存されている。尿素分解酵素は細菌が生存できない低いpHの胃粘膜で生存するためにウレア(Urea)をアンモニア(NH3)と二酸化炭素(CO2)に分解して周辺のpHを高め、胃酸を中和させて生存する。このように生成されたアンモニアの影響によって、胃粘膜の細胞破壊及び変異が誘発され、胃酸防御作用を失うことになって、胃酸が胃粘膜を攻撃する悪循環が発生して胃組織変形及び炎症反応が起きるようになる。このようにヘリコバクター・ピロリが分泌する様々な細胞毒性因子によって発生した胃粘膜炎症は、リンパ球、大食細胞など多様な炎症細胞の活性化を誘導する。このような炎症細胞は、組織損傷、細胞毒性など生体内で悪影響を示し、炎症誘発媒介体を誘導して炎症を悪化させると報告された。
【0004】
ヘリコバクター・ピロリは胃膓疾患で非常に危ない微生物であるが、適切な抗菌物質などの開発が足りない実情である。現在、ヘリコバクター・ピロリの治療法では、ビスマス(Bismuth)製剤、メトロニダゾール(Metronidazole)とともにテトラサイクリン(Tetracycline)またはアモキシシリン(Amoxicillin)を併用処理する一般の3重療法と、ビスマス製剤、オメプラゾール(Omeprazole)、テトラサイクリン、メトロニダゾールを混合した4重療法などがあり、上記のような治療法はヘリコバクター・ピロリに対する治療効果に優れると報告されている。しかし、このような薬剤の反復使用は抗生剤への抵抗性増加及び様々な副作用を引き起こすと報告されていて、現在は多様な天産物素材を利用してヘリコバクター・ピロリを抑制することができる抽出物及び活性成分を見つけ出すための努力が続いている。
【0005】
金銀花(Lonicerae Flos)は、スイカズラ科(Caprifoliaceae)に属するスイカズラ(Lonicera japonica Thunb.)の花であって、漢方医学や民間では利尿、健胃、関節炎、化膿性皮膚炎、気管支炎に使われている。
【0006】
金銀花の成分では、タンニン(Tannin)、イノシトール(Inositol)、ステロール(Sterol)、クロロゲン酸(Chlorogenic acid)、イソクロロゲン酸(Isochlogenic acid)などが報告され、フラボノイド(Flavonoid)成分では、ルテオリン(Luteolin)、アピゲニン(Apigenin)、ルテオリン‐7‐ラムノグルコシド(Luteolin‐7‐O‐rhamnoglucoside)、クェルセチン(Quercetin)などが報告され、金銀花のフラボノイド成分は、抗炎症作用及び抗突然変異作用などがあると知られている。
【0007】
金銀花水抽出物を含むヘリコバクター・ピロリ感染症の予防または治療用組成物と係る従来の先行文献として、先行論文 [Ma、F.et al.、World J Gastroenterol.、16(44)、5629‐5634、2010]、[Xiao、Z.P.et al.、J Agric Food Chem.、60(42)、10572‐10577、2012] 及び [イ・ヒョナなど、Korean J Vet Res.、53(2)、117‐123、2013]には、金銀花抽出物を含んで多様な種類の天産物抽出物に対する抗ヘリコバクター・ピロリ効果が開示され、先行文献 [Oku、H.et al.、Biol.Pharm.Bull.、34(8)、1330‐1333、2011]には、セコキシロガニン(Secoxyloganin)を含む金銀花由来化合物及びこの抗アレルギー効果が開示され、先行文献 [Xiong、J.et al.、Food Chemistry、138、327‐333、2013]には、セコキシロガニンの大膓菌及び黄色ブドウ球菌に対する抗菌効果が開示されたことがある。
【0008】
本発明者らは金銀花水抽出物を研究する過程において、特に金銀花水抽出物の有効成分のうち、セコキシロガニンが同一条件で大膓菌及びブドウ球菌に比べてヘリコバクター・ピロリに対する抗菌効果が20倍以上で選択的に抗菌効果を示すことを確認し、セコキシロガニンを特定含量以上含む金銀花水抽出物がヘリコバクター・ピロリ菌に対する感染抑制及び治療効果に優れることを確認して本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、金銀花水抽出物を含むヘリコバクター・ピロリ感染症の予防または治療用薬学組成物または健康機能食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、金銀花(Lonicerae Flos)水抽出物であって、セコキシロガニン(Secoxyloganin)を有効成分で含むヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染症の予防または治療用薬学組成物に関する。
【0011】
上記金銀花水抽出物は、金銀花を金銀花100重量部に対して水1500~2500重量部を混合した後、90℃以上の温度条件で1時間以上抽出して得ることができるし、抽出用機器は通常の抽出機器、超音波粉砕抽出機または分画機を利用することができる。好ましくは90℃以上の温度条件で1ないし5時間抽出し、有効成分のセコキシロガニンを0.1ないし10重量%で含むようにする。
【0012】
上記金銀花水抽出物に有効成分として含まれるセコキシロガニンは、金銀花水抽出物に0.1ないし10重量%で含み、上記重量%を脱して0.1重量%未満であるか、または10重量%を超える場合、ヘリコバクター・ピロリ菌に対する感染を阻害させる効果が低くて好ましくないか、またはヘリコバクター・ピロリ菌に対する感染を阻害させる効果の上昇幅が大きくないため経済的ではないので好ましくない。最も好ましくはヘリコバクター・ピロリ感染症に対する効果的な治療のために、上記金銀花水抽出物に有効成分として含まれるセコキシロガニンを金銀花水抽出物に0.5ないし5重量%で含むようにする。
【0013】
上記ヘリコバクター・ピロリ感染症は、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染されて表れる疾患であって、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、非潰瘍消化不良症侯群、胃MALTリンパ腫、胃過形成ポリープ、胃癌、消化器癌、膵膓炎、炎症性腸疾患及び機能性消化障害(上腹部飽満感、上腹部痛み、おくび、腹部膨満感、初期飽満感、悪心、嘔吐、逆流、胃痛、食欲不振など)からなる群から選択されてもよく、本発明の金銀花水抽出物はヘリコバクター・ピロリ非感染性疾患に比べてヘリコバクター・ピロリ感染性疾患に特に選択的な治療効果を示す。
【0014】
本発明による薬学組成物は一般に使われる薬学的に許容可能な担体と共に適した形態で剤形化されてもよい。「薬学的に許容可能」とは、生理学的に許容されて人間に投与される時、通常胃腸障害、めまいなどのようなアレルギー反応またはこれと類似な反応を起こさない組成物をいう。また、上記組成物はそれぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾールなどの経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態で剤形化して使われてもよい。
【0015】
上記組成物に含まれてもよい担体、賦形剤及び希釈剤では、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アラビアガム、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、未結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油を含むことができるが、これに限定されるものではない。製剤化する場合は、普通使う充填剤、安定化剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使って調剤される。経口投与のための固形製剤には錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は本発明の抽出物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、未結晶セルロース、スクロースまたはラクトース、低置換度プロピルセルロース、ヒプロメルロースなどを交ぜて調剤される。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクのような活択剤も使われる。経口のための液状製剤では懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当されるが、よく使われる単純希釈剤である水、流動パラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与のための製剤には滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤では、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使われてもよい。坐剤の基剤ではウイテプゾール(witepsol)、マクロゴ-ル、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン油、グリセロール、ゼラチンなどが使われてもよい。非経口投与用剤形に製剤化するために、上記抽出物またはこの薬学的に許容される塩を滅菌され/されたり防腐剤、安定化剤、水和剤または乳化促進剤、浸透圧調節のための塩及び/または緩衝剤などの補助剤、及びその他治療的に有用な物質とともに水に混合して溶液または懸濁液で製造し、これをアンプルまたはバイアル単位投与型で製造することができる。
【0016】
本発明に開示された抽出物を有効成分で含む薬学組成物は、鼠、家畜、人間などの哺乳動物に様々な経路で投与されることができる。投与の全ての方式は予想されるが、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射によって投与されることができる。投与量は治療を受ける対象の年齢、性別、体重、治療する特定疾患または病理状態、疾患または病理状態の重度、投与時間、投与経路、薬物の吸収、分布及び排泄率、使われる他の薬物の種類及び処方者の判断などによって変わる。このような因子に基づく投与量決定は当業者の水準内にあり、一般に投与量は0.01mg/kg/日ないし約2000mg/kg/日の範囲である。より好ましい投与量は1mg/kg/日ないし500mg/kg/日である。投与は一日一回投与することもでき、数回に分けて投与することができる。上記投与量は本発明の範囲を限定するものではない。
【0017】
また、他の一面において、本発明は金銀花(Lonicerae Flos)水抽出物であって、セコキシロガニン(Secoxyloganin)を有効成分で含むヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染症の予防または改善用健康機能食品に関する。
【0018】
上記健康機能食品は、有用な機能を持つ原料や成分を使って製造または加工した食品を称するもので、例えば、健康補助食品、機能性食品、栄養剤、補助剤などをいずれも含む。
【0019】
上記抽出物は健康機能食品の総重量に対して、好ましくは0.001重量%ないし50重量%、より好ましくは0.001重量%ないし30重量%、最も好ましくは0.001重量%ないし10重量%にして添加されることができる。本発明の健康機能食品は、錠剤、カプセル剤、丸剤または液剤などの形態を含み、本発明の抽出物を添加できる食品では、例えば、各種食品類、飲み物、ガム、お茶、ビタミン複合剤などがある。
【0020】
本発明は、また、セコキシロガニン(Secoxyloganin)を有効成分で含むヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染症の予防または治療用薬学組成物に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、セコキシロガニンを有効成分で含む金銀花水抽出物のヘリコバクター・ピロリ感染症の予防または治療用組成物に関する。上記抽出物はセコキシロガニンを特定含量含むことによって、ヘリコバクター・ピロリ菌に処理する時抗菌効果に優れ、ヘリコバクター・ピロリに感染されたマウスに処理する時血中ヘリコバクター・ピロリIgG抗体の発現減少、組職病理学的病変の好転、サイトカイン発現の減少効果が優秀であった。よって、本発明の金銀花水抽出物はヘリコバクター・ピロリ感染症の予防または治療用組成物で有用に使われることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ヘリコバクター・ピロリに感染されたマウスの製造過程を図式化したものである。
【
図2】ヘリコバクター・ピロリに感染されたマウスにおいて、金銀花抽出物の投与による胃粘膜組職でのヘリコバクター・ピロリ有無をPCRで確認した結果である。
【
図3】ヘリコバクター・ピロリに感染されたマウスでの金銀花抽出物の投与による血中リコバクター・ピロリ IgG抗体の発現を確認した結果である。
【
図4】ヘリコバクター・ピロリに感染されたマウスでの金銀花抽出物の投与による胃組職内炎症細胞浸潤及び萎縮変形の点数化結果である。
【
図5】ヘリコバクター・ピロリに感染されたマウスでの金銀花抽出物の投与による迅速尿素分解酵素検査結果である。
【
図6】ヘリコバクター・ピロリに感染されたマウスでの金銀花抽出物の投与によるCLOスコア確認結果である。
【
図7】ヘリコバクター・ピロリに感染されたマウスでの金銀花抽出物の投与による胃粘膜組職内のTNF‐α及びIL‐1βの発現量を測定した結果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施例を詳しく説明する。しかし、本発明はここで説明する実施例に限定されず、他の形態で具体化されてもよい。返って、ここで紹介される内容が徹底的、かつ完全になり、当業者に本発明の思想を充分に伝えるために提供するものである。
【0024】
<実施例1.金銀花水抽出物の製造(1)>
金銀花100gに水2000mlを入れて90℃で3時間熱水抽出し、金銀花抽出液1400mlを得た。上記抽出液を5μmのろ過紙でろ過した後、50℃で3時間減圧濃縮した。以後、上記濃縮物を50℃で一晩中減圧乾燥し、本発明の実施例1の金銀花水抽出物25gを得た。
【0025】
<実施例2.金銀花水抽出物の製造(2)>
金銀花100gに水2000mlを入れて90℃で1時間熱水抽出し、金銀花抽出液1400mlを得た。上記抽出液を5μmのろ過紙でろ過した後、50℃で3時間減圧濃縮した。以後、上記濃縮物を50℃で一晩中減圧乾燥し、本発明の実施例2の金銀花水抽出物25gを得た。
【0026】
<実施例3.金銀花水抽出物の製造(3)>
金銀花100gに水2000mlを入れて90℃で5時間熱水抽出し、金銀花抽出液1400mlを得た。上記抽出液を5μmのろ過紙でろ過した後、50℃で3時間減圧濃縮した。以後、上記濃縮物を50℃で一晩中減圧乾燥し、本発明の実施例3の金銀花水抽出物25gを得た。
【0027】
<比較例1.比較対象金銀花エタノール抽出物の製造>
上記実施例1と同様に製造するが、抽出溶媒を水の代わりに70%エタノール水溶液を利用して比較例1の金銀花エタノール抽出物を製造した。
【0028】
<比較例2.比較対象金銀花水抽出物の製造(1)>
上記実施例1と同様に製造するが、90℃で3時間熱水抽出する代わりに60℃で3時間抽出して比較例2の金銀花水抽出物を製造した。
【0029】
<比較例3.比較対象金銀花水抽出物の製造(2)>
上記実施例1と同様に製造するが、90℃で3時間熱水抽出する代わりに30℃で3時間抽出して比較例3の金銀花水抽出物を製造した。
【0030】
<比較例4.比較対象金銀花水抽出物の製造(3)>
上記実施例1と同様に製造するが、90℃で3時間熱水抽出する代わりに90℃で30分間抽出して比較例4の金銀花水抽出物を製造した。
【0031】
<実験例1.金銀花抽出物に含有された指標成分の含量確認>
金銀花抽出物に含有された指標成分の含量を確認するために、先ず標準液を製造した。標準液はセコキシロガニン標準品約5mgを50mlフラスコに入れ、水を加えて超音波分解(Sonication)して完全に溶かした後、フラスコを冷やして標線を合わせた液を高濃度(0.1mg/ml)セコキシロガニン溶液で使用した。
【0032】
次に、実施例及び比較例をそれぞれ約200mgずつ取って50mlフラスコに入れ、水を加えて超音波分解で完全に溶かした後、フラスコを冷やして標線を合わせた後、孔径0.22μmのメンブレンフィルターでろ過した余液を検液(4mg/ml)で使用した。
【0033】
上記標準品、実施例及び比較例のHPLC遂行条件は下記表1のとおりであり、実施例及び比較例に含有された指標成分の中でセコキシロガニンの含量は下記表2のとおりである。
【0034】
【0035】
【0036】
上記表2を見ると、本発明の実施例の金銀花水抽出物は抽出温度が90℃以上の時、セコキシロガニンの含量が高いことが分かった。
【0037】
<実験例2.ヘリコバクター・ピロリに対する抗菌活性確認>
ヘリコバクター・ピロリ(ATCC43504)菌株を10%馬血清が含まれたブルセラ寒天(Brucella agar)培地に塗抹し、37℃及び10%CO2条件のインキュベーターで3日間培養した。以後、培養されたヘリコバクター・ピロリ菌体を集めて滅菌されたブルセラ液体培地に懸濁し、600nmで吸光度1.0の菌体懸濁液を製造した。
【0038】
ブルセラ培地14gを精製水450mlに溶解した後、寒天6gを入れて懸濁し、121℃で15分間滅菌した。約40℃で滅菌された培地に馬血清50mlを混合して直径90mmのプレートに25mlずつ分株して寒天培地を固めた後、上記ヘリコバクター・ピロリ菌体懸濁液0.2mlを塗抹した。
【0039】
上記実施例及び比較例を濃度別に水に溶解して0.2μm除菌ろ過した後、滅菌したペーパーディスク(Paper disc、6mmの直径)にそれぞれ20μlずつ処理し、菌株が塗抹されているプレートに載せた。37℃及び10%CO2条件のインキュベーターで72時間培養した後、生成された透明環(clear zone)の直径を測定し、穿孔直径を除いた純粋環の直径を表3に示す。
【0040】
【0041】
上記表3から分かるように、指標成分のセコキシロガニンが0.5重量%以上含有された実施例1ないし3の金銀花水抽出物をヘリコバクター・ピロリに処理する場合、10mm以上の透明環を示して抗菌活性が優秀に表れることを確認することができた。
【0042】
特に、本発明者らはセコキシロガニンの含量による金銀花水抽出物を利用してそれぞれ100mg/kg経口投与によるマウスでのヘリコバクター・ピロリ感染抑制効果を確認し、その結果、比較例1ないし4と違ってセコキシロガニンが0.5重量%以上含有された実施例1ないし3の金銀花水抽出物でのみヘリコバクター・ピロリ感染抑制効果が示されたことを確認することができた。ここで、以後動物実験では実施例1の組成物をヘリコバクター・ピロリに感染されたマウスに100mg/kg、200mg/kg、400mg/kg経口投与し、用量によるヘリコバクター・ピロリ感染抑制効果を確認した。
【0043】
<実験例3.ヘリコバクター・ピロリ感染抑制効果確認>
実験例3‐1.ヘリコバクター・ピロリ感染マウスの製造
先ず、ヘリコバクター・ピロリ菌株(H.pylori SS1、韓国ヘリコバクター銀行)を5%ヒツジ血液(sheep blood)が添加されたトリプチケースソイ(trypticase Soy)寒天培地に接種した後、10%CO2、37℃及び好気性(micro‐aerobic)条件で2~3日間培養した。
【0044】
ヘリコバクター・ピロリ感染率を高めるために、マウスにヘリコバクター・ピロリ感染2日前、及び感染当日に制酸剤を投与し、すべての群はマウス用ゾンデ(zonde)を利用して5%NaHCO3(sodium bicarbonate)をマウス1匹当たり0.2mlずつ1回、総3日間経口投与した。
【0045】
ヘリコバクター・ピロリ感染前のマウスは12時間節食させ、陰性対照群(G1)を除いたすべての群はヘリコバクター・ピロリ培養液を5.0×109/ml CFU(colony‐forming unit)の菌数で合わせてマウス用ゾンデで0.2mlずつ2日間隔で3回経口投与して感染させた。
【0046】
ヘリコバクター・ピロリ感染を誘発した後、感染維持を確認するために、ヘリコバクター・ピロリ感染1週後全てのマウスの顔面静脈(facial vein)から血液を採取して血漿を分離した。ヘリコバクター・ピロリ抗体測定は、Mouse H.pylori antibody(IgG)ELISA Kit(Cusabio Biotech Co.、USA)の感染によって抗体上昇が確認された個体のみ選抜して試験に使用した。
【0047】
全ての試験群は蒸溜水に懸濁し、マウス1kg当たり5mlずつ毎日同じ時間に経口投与し、1日1回ずつ28日間(陽性対照群1は1週目、3週目にそれぞれ1日1回、14日)投与した。
【0048】
【0049】
実験例3‐2.胃粘膜ヘリコバクター・ピロリPCR検査
無菌的に採取した胃粘膜組職からgenomic DNAを採取し、下記表5の条件でヘリコバクター・ピロリ PCR検査を行った。実験で使用したターゲット遺伝子はヘリコバクター・ピロリのみに特異的に存在する毒素型遺伝子であるCagAで、これは人間やマウスには存在しない遺伝子である。よって、ヘリコバクター・ピロリに感染されたマウスから、各試験群を処理することで生成された特異バンドを確認し、陽性個体を判定して
図2に示す。
【0050】
【0051】
図2は胃粘膜組職でヘリコバクター・ピロリ有無をPCRで測定し、これによる各試験群の治療率を算定した結果であって、本発明の実施例1の金銀花抽出物(G5~G7)は各濃度別に感染群(G2)に比べて40~60%の治療率を示した。よって、本発明の金銀花抽出物はヘリコバクター・ピロリの感染によって増加した胃粘膜内で特異遺伝子の発現を減少させる組成物であることが分かった。
【0052】
実験例3‐3.血中ヘリコバクター・ピロリ抗体IgGの力価比較
上記実験例3‐1において、ヘリコバクター・ピロリの感染誘発1週間後、マウスの顔面静脈から分離した血漿と実験終了時点で腹大静脈から採血した後で分離された血漿をMouse H.pylori antibody(IgG)ELISA Kitで各血漿内のヘリコバクター・ピロリの抗体力価を測定して
図3に示す。
【0053】
図3を見ると、剖検時血液でのヘリコバクター・ピロリ抗体を測定した結果、本発明の実施例1(G5~G7)は感染群(G2)に比べてヘリコバクター・ピロリ抗体が濃度依存的に減少することが分かった。
【0054】
これを通じて、セコキシロガニンを有効成分で含む本発明の金銀花水抽出物は、ヘリコバクター・ピロリによる感染を抑制する効果に優れる組成物であることが分かった。
【0055】
実験例3‐4.胃組職の肉眼病変観察及び組職病理学的分析比較
剖検当日摘出した胃組職は、食道(esophagus)から大わん(great curvature)に沿って十二指腸(duodenum)の方へ縦方向に切開して広げ、内側の粘膜の特異的病変を観察した。肉眼で病変を観察した後、広げた胃組職を10%中性ホルマリンに固定し、病理組職学的検査のための通常の方法を利用してパラフィン包埋した後、4μm厚さで切片してH&E(hematoxylin and eosin)染色した後、病理組職学的検査を行った。組職病理学的点数は、1個体あたりCorpusとAntrumの全般的部位で総合的に表れた炎症細胞(neutrophils & mononuclear cells)の浸潤度合い(黄色い矢印表記)と萎縮性変形を伴う胃炎(atrophic gastritis)の度合いを表6の基準に従って観察し、各組職の等級を点数に換算してこれを
図4に示す。
【0056】
【0057】
図4を見ると、組職病理結果、胃組職で観察された所見は、先行文献 [Lee、J.Y.et al.、J Cancer Prev.、19(2)、144‐151、2014]の基準に従って炎症細胞浸潤(inflammatory せll infiltration)、萎縮変形(atrophic change)に対して点数化し、感染群(G2)は正常群に比べてヘリコバクター・ピロリ感染によって胃組職内で炎症及び萎縮変形が増加したが、実施例1(G5~G7)は濃度依存的に胃組職内の炎症及び萎縮変形が減少した。
【0058】
これを通じて、本発明の金銀花抽出物はヘリコバクター・ピロリ感染の時、炎症細胞の浸潤及び萎縮変形による胃炎症状を減少させることが分かった。
【0059】
実験例3‐5.迅速尿素分解酵素検査(CLO検査)
胃粘膜にヘリコバクター・ピロリが存在する場合、検査試薬培地で菌が増殖しながら尿素分解酵素を分泌するようになり、検査試薬に存在する尿素を加水分解させてアンモニアを生成する。これによって、検査試薬の全pHが上昇するが、このようなpH指示薬の色相変化(赤色)から迅速尿素分解酵素検査を行い、検査結果を治療率とCLOスコアで示す。
【0060】
迅速尿素分解酵素検査は剖検当日摘出した胃粘膜組職を無菌的に採取し、検査試薬のCLO(campylobacter‐like organism、Asan Pharm Co.、Ltd.、韓国)を利用して試験した。培養器で37℃、2時間培養した後、試薬の色が黄色から赤色に変わった場合は陽性と判断した。陽性と判定された個体数を百分率で求めて陽性率を求めるし、試料処置によるヘリコバクター・ピロリ除菌に対する治療率は下記数式で求めてこれを
図5に示す。
[数式]
{(検体数‐陽性検体数)/検体数} ×100
【0061】
また、CLO検査後、培地の色に変化がない場合を0点、少し赤色を表す場合1点、淡い紫色を表す場合2点、濃い紫色を表す場合3点で測定し、各群の平均及び標準偏差を求めて群間値の差を比べたCLOスコアを
図6に示す。
【0062】
図5及び6の迅速尿素分解酵素検査による治療率及びCLOスコア結果を見ると、本発明の実施例1の金銀花抽出物(G5~G7)は感染群(G2)に比べて40~60%の治療率を示し、また60~90%のCLOスコア減少効果を示した。
【0063】
これによって、本発明の金銀花抽出物は、ヘリコバクター・ピロリ感染によって増加された胃粘膜内の迅速尿素分解酵素の発現を減少させる組成物であることが分かった。
【0064】
実験例3‐6.胃粘膜組職内のサイトカイン分析
胃粘膜組職内の炎症誘発性サイトカイン(pro-inflammatory cytokine)を測定するために、無菌的に採取した胃組職を液化窒素(liquid nitrogen)に細かく破砕し、細胞溶解緩衝液(sell lysis buffer)を用いてタンパク質を抽出して分析に使用した。分離したタンパク質はELISA kit(R&D system、Minneapolis、MN、USA)を利用してTNF‐α(tumor necrosis factor‐α)及びIL‐1β(Interleukin‐1β)を分析し、その結果は
図7に示す。
【0065】
図7を見ると、本発明の実施例1の金銀花抽出物は、ヘリコバクター・ピロリ感染によって増加された胃粘膜組職内のTNF‐α及びIL‐1βの発現を濃度依存的に減少させた。
【0066】
<製剤例1.錠剤の製造>
本発明の実施例1の金銀花抽出物20gをラクトース175.9g、ジャガイモ澱粉180g及びコロイド性ケイ酸32gと混合した。この混合物に10%ゼラチン溶液を添加した後、粉砕して14メッシュの篩を通過させた。これを乾燥させ、これにジャガイモ澱粉160g、滑石50g及びステアリン酸マグネシウム5gを添加して得た混合物を錠剤に作った。
【0067】
<製剤例2.カプセル剤の製造>
本発明の実施例1の金銀花抽出物100mg、とうもろこし澱粉100mg、乳糖100mg及びステアリン酸マグネシウム2mgを混合した後、通常のカプセル剤の製造方法にしたがって上記成分を混合し、ゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0068】
<製剤例3.注射剤の製造>
本発明の実施例1の金銀花抽出物1g、塩化ナトリウム0.6g及びアスコルビン酸0.1gを蒸溜水に溶解させて100mlを作った。この溶液を瓶に入れて20℃で30分間加熱して滅菌させた。
【0069】
<製剤例4.健康機能食品の製造>
本発明の実施例1の金銀花抽出物20g、ビタミン混合物を適量、ビタミンAアセテート70μg、ビタミンE 1.0mg、ビタミンB1 0.13mg、ビタミンB2 0.15mg、ビタミンB6 0.5mg、ビタミンB12 0.2μg、ビタミンC 10mg、ビオチン10μg、ニコチン酸アミド1.7mg、葉酸50μg、パントテン酸カルシウム0.5mg、無機質混合物を適量、硫酸第1鉄1.75mg、酸化亜鉛0.82mg、炭酸マグネシウム25.3mg、第1リン酸カリウム15mg、第2リン酸カルシウム55mg、クエン酸カリウム90mg、炭酸カルシウム100mg、塩化マグネシウム24.8mgを交ぜて顆粒に製造したが、用途によって多様な剤形に変形して製造することができる。また、上記ビタミン及びミネラル混合物の組成比を任意に変形して実施しても構わないし、通常の健康機能食品の製造方法にしたがって上記成分を混合して製造することができる。
【0070】
<製剤例5.健康機能性飲料の製造>
本発明の実施例1の金銀花抽出物1g、クエン酸0.1g、フラクトオリゴ糖100g、精製水900gを交ぜて通常の飲料製造方法にしたがって撹拌、加熱、ろ過、殺菌、冷蔵して飲料を製造した。
【国際調査報告】