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特表2022-511919嫌気性浄化のための方法及びデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】嫌気性浄化のための方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/28 20060101AFI20220125BHJP
   C02F 1/24 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
C02F3/28 A
C02F1/24 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532923
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2019086595
(87)【国際公開番号】W WO2020127918
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】18215493.0
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513005305
【氏名又は名称】パクス アイ.ピー. ビー.ヴィ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】フリテルス, コルネリア テレシア マリア ヨハンナ
(72)【発明者】
【氏名】デ ブルーイン, セバスティアン レオナルド
【テーマコード(参考)】
4D037
4D040
【Fターム(参考)】
4D037AA12
4D037BA01
4D037BA06
4D037BB01
4D037BB07
4D037CA07
4D040AA01
4D040AA26
4D040AA42
4D040AA53
4D040AA54
4D040AA55
4D040AA61
4D040AA62
4D040AA63
(57)【要約】
本発明は、廃水の嫌気性浄化におけるバイオマスの分離のための方法と、廃水の嫌気性浄化におけるバイオマスの分離のためのシステムと、に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水の嫌気性浄化に続いて処理済みの廃水からバイオマスを分離するための方法であって、
a.バイオマスを備える反応器へ有機成分を含む廃水の流れを供給するステップであり、前記バイオマスが嫌気性微生物を含む、ステップと、
b.前記廃水及びバイオマスを混合して、バイオガスと、処理済みの廃水及びバイオマスを含む反応器内容物と、を提供するステップと、
c.少なくとも一部の前記反応器内容物及びガス、好ましくは、バイオガスを、第1のタンクに供給するステップであり、前記バイオガスが、前記第1のタンクに圧力下で注入されて前記タンク内容物を加圧し、前記ガスが前記タンク内容物に溶解される、ステップと、
d.前記加圧されたタンク内容物を第2のタンクに供給するステップであり、前記第2のタンクの圧力を前記第1のタンクよりも低くして、浮遊するバイオマス層及び処理済みの廃水層を提供する、ステップと、
e.前記処理済みの廃水を前記第2のタンクから取り出して、前記バイオマス層を前記第2のタンクからステップa)の前記反応器に再循環させるステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記廃水が、1.5~80g/Lの範囲の化学的酸素要求量(COD)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バイオマスが、フロキュレントバイオマスである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記処理済みの廃水が、10,000mg/L以下、好ましくは、1000mg/L以下、好ましくは、500mg/L以下、の化学的酸素要求量(COD)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップb)の前記混合が、ステップb)で生成されたバイオガスの追加によって、機械的手段によって、ステップe)からの処理済みの廃水を注入することによって、又は、前記反応器内容物を流通させるための圧送手段によって、実施される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップc)のガス、好ましくは、バイオガスが、少なくとも1.5bar(a)、好ましくは、少なくとも2bar(a)、更により好ましくは、少なくとも3bar(a)、の圧力で注入される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のタンクの圧力が、1.5~8bar(a)、好ましくは、2~7bar(a)の範囲、最も好ましくは、3~6bar(a)の範囲にある、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
液圧保持時間が、0.5~10日の範囲内であり、前記バイオマス(スラッジ)保持時間が、好ましくは、少なくとも20日、より好ましくは、少なくとも30日、である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
バイオマスを分離するためのシステムであって、
流入物入口(21)及びバイオガス出口(23)を備えた反応器(22)であって、動作中、前記反応器(22)が供給ライン(24)を介して第1のタンク(26)と連通する、反応器(22)と、
反応器(22)から反応器内容物を受容するための入口、及び、反応器(22)からのバイオガス(25)及び/又はガス(27)を受容するための入口を備えた第1のタンク(26)であって、第1のタンク(26)が、前記第1のタンク(26)の圧力を制御するための圧力制御手段を備え、前記第1のタンクがフロテーションタンクではなく、動作中、前記第1のタンク(26)が、供給ライン(29)を介して第2のタンク(28)と連通する、第1のタンクと、
加圧された反応器内容物を提供するための入口(29)、処理済みの廃水を取り出すための出口(30)、反応器(22)にバイオマスを供給するための前記反応器と連通するバイオマス出口(31)、好ましくはバイオガス出口(32)、及び、好ましくは沈降固形物(33)のための出口、を備える第2のタンクと、を備える、システム。
【請求項10】
前記第1のタンク(26)及び前記第2のタンク(28)が、前記反応器(22)の内部又は外側、好ましくは、前記反応器の内部に配置される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記反応器(22)が、前記反応器内容物を混合するための手段を含み、
前記混合の手段が、バイオガス用の注入器、機械的混合手段、又は、前記反応器内容物を流通させるためのポンプであり、或いは、
前記混合手段が、前記第2のタンクから処理済みの廃水を注入するための注入手段を含む、請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記反応器(22)が、実質上閉じた反応器である、請求項9~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記第2のタンクが、開かれ又は閉じられ、
前記第2のタンクが、上部で開かれて、周縁によって境界決めされることが好ましく、
前記第2のタンクが、分配手段を備えることが好ましく、したがって、使用中に、前記分配手段が、前記バイオマスをバイオマス供給ライン(31)に進入させることがより好ましい、請求項9~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記供給ライン(29)が、注入手段で終わる、請求項9~13のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
[0001]本発明は、廃水の嫌気性浄化におけるバイオマスの分離のための方法と、廃水の嫌気性浄化におけるバイオマスの分離のためのシステムと、に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]懸濁有機物質を含有する副生成物や液状廃棄物の流れは、メタン含有ガスや他の所望の生成物を生成するために、これまで嫌気的に発酵させてきた。例えば、食品加工工場から流れ出る廃水は、一般に懸濁有機物質を含有し、高い酸素要求量を有し、湖沼や河川での処分のための環境法や規則の下では許容できない。そういった廃水の流れは、多くの場合、有機成分を除去して廃水を環境的に許容できるレベルまで浄化するために、嫌気性発酵及び/又は好気性生物学的変換において処理される。
【0003】
[0003]典型的な嫌気性発酵方法では、懸濁有機物質を含有する流入物液体は、嫌気性発酵反応器に導入され、それは、空気や酸素を排除し、懸濁有機物質を発酵生成物に変換するために嫌気性微生物を含有する。多量の懸濁固形物を含有する廃水の発酵は、比較的長い保持時間を必要とする。発酵生成物は、二酸化炭素及びメタンを含有するガスで構成され、それは分離されて、エネルギー又は熱源として利用される。嫌気性発酵反応は、スラッジ又は「バイオマス」と一般的に呼ばれる細菌細胞塊を生成し、それはフロックを形成して、反応器容器内に保持される。生成された流出物液体は、有機物質及び懸濁固形物を実質上含まない。反応した液体からのガス及びバイオマスの分離及び除去は、別々の脱ガス化ステップ及び固形物沈降ステップによって、これまで達成されてきた。即ち、懸濁バイオマスを含有する反応液体は、嫌気性発酵反応器から沈降タンクに輸送され、細菌細胞塊粒子は、タンクの底部に沈降することができる。沈降粒子は、タンクから取り出されて、反応器に再循環される。反応液体中に同伴されたガスは、懸濁細菌細胞塊粒子の沈降を困難にする。したがって、脱気装置は、一般に反応器容器及び沈降タンク間に採用される。
【0004】
[0004]代替として、或る種の条件下では、浮遊分離が使用される。そういった方法は、米国特許第4,948,509号から知られており、それが説明する方法は、
前記懸濁有機物質を、メタンを含有するガス及び細菌細胞塊粒子を含む発酵生成物に、変換するために、前記流入物液体を、嫌気性微生物を含有する嫌気性発酵ゾーンの中に、導入するステップと、
前記発酵ゾーン内の前記流入物液体を、所定の温度に、第1の圧力に、そして、前記ガスを形成するためと溶解ガス及び懸濁細菌細胞塊粒子を含有する液体を形成するためとに十分な時間の間、保持するステップと、
溶解ガス及び懸濁細菌細胞塊粒子を含有する前記液体を、前記発酵ゾーンから、取り出すステップと、
前記液体を浮遊ゾーンに導入するステップと、
前記浮遊ゾーン内の前記液体を、所定の温度に、第2の圧力に、そして、所定の時間の間、保持するステップであって、以って、前記液体に溶解した溶液ガスがその中で遊離して泡を形成して、泡が上昇して前記懸濁細菌細胞塊粒子を前記液体の表面に浮遊させる、ステップと、
前記細菌細胞塊粒子を、前記液体の表面から、そして、前記浮遊ゾーンから、取り出すステップと、
前記取り出された細菌細胞塊粒子を前記発酵ゾーンに再循環させるステップと、
残りの液体を、前記浮遊ゾーンから、更なる処理又は使用の地点に、導くステップと、を含む。
【0005】
[0005]WO02076893号は、有機成分を含有するスラリの嫌気性浄化のための方法を開示している。処理されるべきスラリは、混合物充填型の実質上閉じた反応器(2)に周期的又は連続的に供給され、他方、スラリは、反応器からの混合物(3)と強制的に混合される。反応器内の混合物は、それを貫く上向きの流れに、そして、加水分解処理に、晒される。混合物は、いわゆる白濁液(反応器から生じるバイオガスなどの圧力(典型的には、5bar(a))下で溶解した低酸素ガスを備えた流出物)の注入によって、浮遊に晒され、そのプロセスで形成される固形物の浮遊層は、反応器内の混合物に戻され、他方、そのプロセスで形成される低粒子液体は、流出物として排出される。この流出物のセットアップ部分は、白濁液の生成のために再循環される。
【0006】
[0006]廃水を含む有機成分の嫌気性浄化のための知られた方法は、幾つかのケースでは、反応器内容物からバイオマスの不十分な分離が得られて、不整合で信頼性のない処理がもたらされる、という欠点を有する。
【0007】
[0007]バイオマスの分離を改善した、廃水を含む有機成分の嫌気性浄化の必要性が存在する。
[発明の概要]
[0008]本発明によれば、バイオマスが、嫌気的に処理済みの廃水の流れから分離される、方法が提供される。
【0008】
[0009]本発明によれば、廃水の嫌気性浄化に続いて処理済みの廃水からバイオマスを分離するための方法であって、
a)バイオマスを備える反応器への有機成分を含む廃水の流れを供給するステップであり、バイオマスが嫌気性微生物を含む、ステップと、
b)廃水及びバイオマスを混合して、バイオガスと、処理済みの廃水及びバイオマスを含む反応器内容物と、を提供する、ステップと、
c)少なくとも一部の反応器内容物、及び、ガス、好ましくは、バイオガスを第1のタンクに供給するステップであり、バイオガスが、タンク内容物の中に圧力下で注入されて加圧されたタンク内容物を提供し、ガスがタンク内容物に溶解される、ステップと、
d)加圧されたタンク内容物を第2のタンクに供給するステップであり、第2のタンクの圧力を第1のタンクよりも低くして、浮遊するバイオマス層及び処理済みの廃水層を提供する、ステップと、
e)処理済みの廃水を第2のタンクから取り出して、バイオマス層を第2のタンクからステップa)の反応器に再循環させるステップと、を含む方法が提供される。
【0009】
[0010]本発明者らが驚くべきことに発見したことは、浮遊分離が起こる第2のタンクに反応器内容物を供給する前に、嫌気性反応器の反応器内容物を加圧下でガスと混合することが、効率的なバイオマス分離を提供する、ということである。本出願人は理論に縛られることを望まないが、信じられていることは、処理済みの廃水と溶解ガスを含むバイオマスとの混合物が圧力で縮小するとき、泡が固形物/水界面で好ましくは形成され、したがって、泡が、それの等量が溶解した流出物と単に混合するよりも、より効果的にバイオマスを同伴する、ということである。有利なことには、本発明の方法では、フロキュレントバイオマスから構成される浮遊バイオマス層は、バイオマスが第2のタンクの底部に沈没することなく、迅速に形成され、こうして、改善されたバイオマス分離が達成される。
【0010】
[0011]本発明は、添付した図面を参照して、下でより詳細に議論されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】先行技術の方法を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る方法を示す図である。
【0012】
[発明の概要]
[0014]「スラッジ」は、反応器やその流入物若しくは流出物の中に存在する任意の固形物や固形物のような材料を指しており、フィルタ、サイクロン、沈降器、膜及び同種のものなどの物理的手段によって、反応器(又は流入物若しくは流出物)の液体部分から分離できる。
【0013】
[0015]スラッジは、全ての生物学的材料並びに非溶解性又は非微細分散性の有機化合物を含む有機部分と、非溶解性又は非微細分散性の塩及び他の無機材料を含む無機部分と、を含むことができる。
【0014】
[0016]「バイオマス」は、全ての生物学的(有機)材料並びに非溶解性又は非微細分散性の有機化合物を指しており、反応器やその流入物若しくは流出物の中に存在する固形物や固形物のような材料であることがあり、フィルタ、サイクロン、沈降器、フロテーションユニット、膜及び同種のものなどの物理的手段によって、反応器(又は流入物若しくは流出物)の液体部分から分離できる。
【0015】
[0017]「フロック」又は「バイオマスフロック」は、本明細書で使用されるとき、フロキュレントバイオマスとして知られている反応器内で形成されるバイオマスの凝集を指す。
【0016】
[0018]「乾燥固形物」は、固形物材料を含んでおり、溶解性の無機材料(塩、灰)や水及び他の液体がそれから分離されているか又は製品レベルを計算するときに考慮されているものである。
【0017】
[0019]「化学的酸素要求量」(COD)は、小さめの分子に、最終的には、二酸化炭素及び水に、酸化され得る有機材料を指しており、この用語は、典型的には、1リットルの廃水中の有機材料を酸化させるために要するであろう酸素量を表す。
【0018】
[0020]「生分解性COD」は、バイオマス(微生物)によって変換され得る廃水中の有機材料を指す。
【0019】
[0021]「基質」は、微生物によって変換されて、それらの成長を可能にする、即ち、生分解性CODと同等の、有機材料を意味する。
【0020】
[0022]「易生分解性化学的酸素要求量(RBCOD)」は、下で更に例証されるように、微生物によって迅速に変換され得る比較的小さい有機分子を指す。
【0021】
[0023]「他の生分解性化学的酸素要求量(OBCOD)」は、RBCOD以外の生分解性COD、即ち、より複雑で利用しにくい有機化合物、例えば、複合多糖類、脂肪及びタンパク質、並びに、比較的少ない酸素含有基及び長鎖脂肪酸などの比較的大きい炭化水素基を有する有機化合物を指す。
【0022】
[0024]「廃水」は、再使用又は環境に排出され得る前に処理する必要があるCODを含む水性流れを指す。例えば、廃水は、下で更に例証されるように、バイオベース又は他の産業からの処理水、副生成物又は中間生成物の流れを含む。反応器に供給されるスラッジは、廃水を含む場合がある。
【0023】
[0025]本発明に係る方法では、ステップa)で、有機成分(有機物を含むスラッジとも呼ばれる)を含む廃水の流れは、バイオマスを含む反応器に供給され、バイオマスは、嫌気性微生物を十分に含む。廃水は、連続的に又はバッチ式で、好ましくは、連続的に反応器に供給できる。反応器内のバイオマスは、フロキュレントバイオマスであることが好ましい。反応器内の混合物は、そこには、したがって、処理されるべきスラッジが周期的に又は連続的に供給されるが、上向き及び/又は下向きの流れを有する反応器内で、生物学的処理(加水分解、酸性化、酢酸生成及びメタン生成を含む)によって、嫌気的に浄化される。処理されるべき廃水は、連続的に反応器に供給されることが好ましい。これは、とりわけ二酸化炭素及びメタンを含むバイオガスを放出に導く。反応器が実質上閉じられているという事実が意味することは、これらのバイオガスが、反応器の上部に、即ち、その中に位置する混合物の上に集まるであろうことである。
【0024】
[0026]比較的清浄な、即ち、比較的低粒子の流出物を得るために、反応器内容物は、第1のタンクに移されて、高圧、例えば、3~6bar(a)でガスが注入される。ガスは、低酸素ガス、好ましくは、無酸素ガスであることが好ましい。低酸素ガスは、バイオガスであることがより好ましい。本発明によれば、特に、バイオガスにとって可能であることは、嫌気性浄化中に放出されること、及び、このタイプの非常に適切な低酸素ガスとして使用される実質上閉じられた反応器の上部に集められることである。バイオガスは、ステップa)で反応器内で生成されることが好ましい。
【0025】
[0027]反応器内容物/ガス混合物は、次いで、タンク内で、典型的には、低めの圧力(典型的には、30mbar(g)、即ち、ゲージ圧)で、例えば、フロテーションセル内で、浮遊され、処理中において、固形物の浮遊層が形成され、それはタンク内に存在する流体の上部に浮遊するであろう。加えて、重めの粒子(少量)は、タンクの底部で集めることができるであろう。フロテーションタンク内の圧力は、0~100mbar(g)(ゲージ圧、即ち、正圧)であることが好ましく、タンクは、0~50mbar(g)の圧力であることがより好ましく、タンクは、10~35mbar(g)の圧力であることが最も好ましい。
【0026】
[0028]タンク内の流体の上部に形成される固形物の浮遊層は、前記混合物中で嫌気性浄化処理に再び晒す目的で、前記混合物に戻り供給される。その上、有機物を含む更なるスラッジが供給されると、これらの成分は、同様に再び混合処理に強制的に晒されるであろうし、処理で、最終的には、嫌気性バイオプロセスによって、とりわけメタンガスに変換され得る溶解した不純物に変換されるであろう。
【0027】
[0029]本発明に係る方法が特に著しく可能にすることは、嫌気性手段によって有機物を含む汚れたスラッジを清掃することであり、即ち、嫌気性浄化のための方法は、高いCOD(化学的酸素要求量)を有する混合物を用いて実施できる(この文脈では、用語「高い」は、1.5g/L~80g/L、好ましくは、5g/L~80g/L、好ましくは、25g/L~80g/L、の範囲のCODを意味するものとして理解される)。そういった高いCODの場合、本発明の方法で浮遊させることができる、細菌を含む多くのフロックが存在する。先行技術の方法と比較して、本発明は、本発明による方法で容易に断片化しないフロキュレントバイオマスを分離するという利点を有する。加えて、より少ない懸濁固形物が、処理済みの廃水において観測される。
【0028】
[0030]ステップb)の間、廃水及びバイオマスは、混合されて、バイオガスと、処理済みの廃水及びバイオマスを含む反応器内容物と、を提供する。処理されるべきスラッジは、混合物を上向き及び下向きの流れに晒すことによって、反応器内で混合される。適切な場合には、強制的な混合は、スラッジの供給中に、例えば、スラッジの供給時又はそれと共に上向き及び/又は下向きの流れを生成することによって、直接実行できる。これの結果は、スラッジ中の未溶解成分の少なくとも一部が、反応器内に存在する少なくとも混合物中に溶解させられることを可能にする、ということである。
【0029】
[0031]ステップb)の混合は、ステップb)で生成されたバイオガスの追加によって、機械的手段によって、ステップe)からの処理済みの廃水を注入することによって、又は、反応器内容物を流通させるための圧送手段によって、実施することが好ましい。
【0030】
[0032]ステップc)の間に、反応器内容物の少なくとも一部は、第1のタンクに供給され、ガスは、加圧された反応器内容物を提供するために、圧力下で注入される。第1のタンクは、圧力反応器などの容器や、反応器内容物がそれを通して第2のタンクに供給される導管、にすることができ、バイオガスは、導管の中に注入される。第1のタンクは、フロテーションタンクではない。
【0031】
[0033]ステップc)のバイオガスは、少なくとも1.5bar(a)、好ましくは、少なくとも2bar(a)、更により好ましくは、少なくとも3bar(a)、の圧力で注入されることが好ましい。
【0032】
[0034]ステップc)のガスは、供給されたガスがセットされた圧力で溶解するように、注入されることが好ましい。当業者の熟知していることは、ヘンリーの法則に従って、所与の温度で所定の質量の溶媒に溶解されたガスの質量が溶媒の上のガスの圧力に直接比例する、ということである。
【0033】
[0035]ステップd)では、加圧された反応器内容物は、第2のタンクに供給され、第2のタンクの圧力は、第1のタンクにおけるよりも低く(例えば、30mbar(g)ゲージ圧)、ガスの同時放出を備えた浮遊するバイオマス層と処理済みの廃水層とを提供する。第2のタンクは、フロテーションタンク又はフロテーションセルと称せられることがある。第2のタンクは、反応器の中又は外側、好ましくは、外側に配置される場合がある。別の実施形態では、第2のタンクは、反応器の内側である(図2は、反応器の両実施形態を概略カバーする)。後者のケースでは、それの上側縁は、反応器内に位置する混合物のレベルより大きいか又は等しい高さにある。これは、混合物が反応器を出て上側縁を介してフロテーションセルの中に流れることができないようにする。上側縁が反応器内に位置する混合物のレベルよりも高いレベルにある場合には、これは完全に除外される。浮遊層は、それで、比較的容易に上側縁で引っ繰り返されて反応器内の混合物中に戻される場合がある。
【0034】
[0036]ステップd)の間、処理済みの廃水は第2のタンクから取り出され、バイオマス層を第2のタンクからステップa)の反応器に再循環させる。処理済みの廃水は、第2のタンクから連続的に又はバッチ式で取り出すことができる。幾つかの好適な実施形態では、廃水は、ステップa)に連続的に供給され、ステップd)の処理済みの廃水は、バッチ式で取り出される。
【0035】
[0037]廃水は、1.5~80g/Lの化学的酸素要求量(COD)を有することが好ましい。
【0036】
[0038]処理済みの廃水は、好ましくは、1000mg/L以下、より好ましくは、500mg/L以下、の化学的酸素要求量(COD)を有することが好ましい。
【0037】
[0039]第1のタンク内の圧力は、好ましくは、1.5~8bar(a)の範囲内、より好ましくは、2~7bar(a)の範囲内、最も好ましくは、3~6bar(a)の範囲内、である。
【0038】
[0040]第2のタンクのヘッドスペース内の圧力は、30mbar(g)であることが好ましい。ヘッドスペースは、流体レベルとタンクの上部との間の第2のタンクのエリアを指しており、上部は、タンクの縁によって境界決めされる。
【0039】
[0041]液圧保持時間は、好ましくは、0.5~10日の範囲内であり、バイオマス(スラッジ)保持時間は、好ましくは、少なくとも20日、より好ましくは、少なくとも30日である。
【0040】
[0042]第2の態様では、本発明は、バイオマスを分離するためのシステムに関し、システムは、
流入物入口(21)及びバイオガス出口(23)を備えた反応器(22)であって、動作中、反応器(22)が供給ライン(24)を介して第1のタンク(26)と連通する、反応器(22)と、
反応器(22)から反応器内容物を受容するための入口、および、反応器(22)からのバイオガス(25)及び/又はガス(27)を受容するための入口を備えた第1のタンク(26)であって、第1のタンク(26)は、フロテーションタンクではなく、第1のタンク(26)の圧力を制御するための圧力制御手段を備え、動作中、第1のタンク(26)は、供給ライン(29)を介して第2のタンク(28)と連通する、第1のタンクと、
加圧された反応器内容物を提供するための入口(29)、処理済みの廃水を取り出すための出口(30)、反応器にバイオマスを供給するための反応器(22)と連通するバイオマス出口(31)、好ましくはバイオガス出口(32)、及び、好ましくは沈降固形物(33)のための出口と、を備える。沈降固形物は、反応器(22)と連通するライン(34)又はライン(31)を介して再循環できることが好ましい。
【0041】
[0043]反応器(22)は、反応器内容物を混合するための手段を含み、混合手段は、バイオガス用の注入器、機械的混合手段、又は、反応器内容物を流通させるためのポンプであることが好ましい。代替として、混合手段は、注入される処理済みの廃水のための注入手段を含むことができる。
【0042】
[0044]第2のタンクでは、スクレーパは、連続モードで適用される場合に、浮遊層を縁のちょうど向こう側に押すために使用できる。代替として、別のデバイスは、使用することができ、或いは、層は、液圧で輸送することができる。後者のケースでは、流出物からの余分な再循環流れ(図示せず)は、再循環して、液がオーバーフローするタンクの鋭利な縁の非常に近くで噴霧できる。そういった手段、即ち、スクレープ又は噴霧を介して、縁は、付着するようになって縁の上での不規則なオーバーフローを引き起こす固形物から清浄に保たれる。
【0043】
[0045]幾つかの実施形態では、システムは、バッチモードで動作し、以って、反応器から第1のタンクに対してのバイオマスは、吐出弁を開閉することによって、不連続な場合がある。別の実施形態では、システムは、バッチモードで動作し、以って、第2のタンクからバイオマスは、吐出弁を開閉することによって、第2のタンクから不連続に除去される場合がある。
【0044】
[0046]反応器は、実質上閉じた反応器であることが好ましい。適切な嫌気性反応器は、当業者に知られている。
【0045】
[0047]第1のタンクは、容器、導管、又は、ガスを反応器内容物と混合するための他のそういった容器にすることができる。
【0046】
[0048]第2のタンクは、閉じたタンクや開いたタンクであることが好ましい場合がある。第2のタンクが反応器の内部に置かれるとき、タンクは、上部で開かれて、周縁によって境界決めされることが好ましく、第2のタンクは、分配手段を備え、したがって、使用中に、分配手段は、バイオマスをバイオマス供給ラインに進入させることが好ましい。第2のタンクは、ガス分配システムに連結できるバイオガス出口を備え、例えば、バイオガス出口は、反応器ヘッドスペースに連結できる。
【0047】
[0049]バイオマス供給ラインは、加圧された反応器内容物を提供するために注入手段で終わることが好ましい。
【0048】
[図面の説明]
[0050]図1は、先行技術に係るシステムを概略示す。反応器(2)は、有機成分を含む廃水(1)を供給するための流入物入口を具備する。廃水は、連続的に又はバッチ式で供給できる。反応器は、温度、ペーハー等々のためのセンサを具備できる。反応器は、嫌気性処置の間に生成されるメタン(バイオガス)がそれを通して除去され得るバイオガス出口(3)を具備する。
【0049】
[0051]反応器は、供給(流出物)ライン(4)を有し、該ラインを介して反応器(2)の反応器内容物が第1のタンク(6)に供給される。
【0050】
[0052]第1のタンク(6)は、流出物(11)を受容するための入口と、反応器(2)からのバイオガスを受容するための入口と、を具備する。第1のタンク(6)は、第1のタンク(6)内の圧力を制御するための圧力制御手段を含む。第1のタンク(6)は、供給ライン(7)を介して第2のタンク(8)と連通する。
【0051】
[0053]第2のタンクは、溶解ガスの供給ライン(7)と、反応器(2)からの供給ライン(4)と、処理済みの廃水を取り出すための流出物ライン(9)と、を具備する。動作中、圧力は、ライン(7)によって供給される液体から放出され、気泡は、惹起されて、小さい泡を形成するであろう。供給物7は、第2のタンク(8)に、或いは、第2のタンク(8)へのライン4の入口に非常に近い地点で供給ライン7に、注入できる。泡は、バイオマスフロックに付着し、バイオマスは、上昇するであろう。フロックは、このように、第2のタンク(8)内の反応器内容物の上部まで持ち上げられる。浮遊層は、第2のタンクの上部に形成される。処理済みの廃水(流出物9)は、浮遊層の下(底部又は高めからの場合がある)から圧送される。浮遊層は、縁の向こう側に動くか又は反応器容器(2)に戻り圧送される。第2のタンクでは、スクレーパは、浮遊層を縁のちょうど向こう側に押すために使用できる。代替として、別のデバイスは、使用することができ、或いは、流出物からの余分な再循環流れ(図示せず)は、再循環して、縁の非常に近くで噴霧できる。そういった手段、即ち、スクレープ又は噴霧を介して、縁は、付着するようになって縁の上での不規則なオーバーフローを(連続的又は不連続的に)引き起こす固形物から清浄に保たれる。取り出しの不連続モードでは、水は、流出物(9)として圧送でき、ユニット(8)の内容物の残りは、反応器(2)に戻り圧送できる。第2のタンクは、バイオガス出口(12)を具備しており、ガスライン(5)に又は直接反応器ヘッドスペースに連結できる。
【0052】
[0054]図2は、本発明の一実施形態に係るシステムを概略示す。反応器(22)は、有機成分を含む廃水を供給するための流入物入口(21)を具備する。廃水は、連続的に又はバッチ式で供給できる。反応器は、温度、ペーハー等々のためのセンサを具備できる。反応器は、嫌気性処置の間に生成されるメタン(バイオガス)がそれを通して除去され得るバイオガス出口(23)を具備する。
【0053】
[0055]第1のタンク(26)は、反応器内容物(24)を受容するための入口と、反応器からのバイオガス(25)及び/又はガス(27)を受容するための入口と、を具備する。第1のタンク(26)は、第1のタンク(26)内の圧力を制御するための圧力制御手段を含む。第1のタンク(26)は、供給ライン(29)を介して第2のタンク(28)と連通する。
【0054】
[0056]第2のタンクは、処理済みの廃水を取り出すための流出物ライン(30)を具備する。動作中、圧力は、反応器内容物から放出され、ガスは、漏れてバイオマスフロックに付着する小さな泡を形成し、上昇するであろう。一部のガスの発泡は惹起されるであろうし、非溶解フロック上でその直径が成長するであろう。フロックは、このように、第2のタンク(28)の上部まで持ち上げられる。処理済みの廃水(流出物30)は、浮遊層の下(底部又は高めからの場合がある)から圧送され又はタンクを退去する。水は、制御できる弁によってタンクから退去できる。浮遊層は、縁の向こう側に進み、例えば、ライン31を介して、反応器容器(22)に戻り圧送される。タンク(28)が反応器(22)に統合されるとき、浮遊層は、反応器の液体中に落下して、混合されることが好ましい。別の実施形態では、第2のタンク(28)は、不連続的に供給され、流出物は、取り出され、浮遊層を含有する内容物の残りは、反応器(22)に戻り圧送される(或いは、反応器(22)で反応器液体に統合された場合に放出される)ことが好ましい。第2のタンクは、例えば、反応器のヘッドスペースにガスを供給するための、好ましくは、ガスラインに連結されたバイオガス出口(32)を具備することもできる。加えて、第2のタンクは、タンクに沈降する任意の懸濁固形物を除去するための沈降固形物出口(33)を具備できる。沈降固形物は、反応器(22)と連通するライン(34)又はライン(31)を介して再循環できることが好ましい。
【0055】
[0057]本発明は、ここに以下の非限定の例によって例示されるであろう。
【0056】
[0058]バイオマスを処理済みの廃水から分離するための2つの方法は、比較されている。
例Aは、比較例であり、例1は、本発明に係るものである。
【0057】
比較例A
[0059]アイスクリーム廃水(30x希釈アイスクリーム)は、160lの嫌気性パイロット反応器で処理された。1ヶ月間運転している嫌気性パイロット反応器から誘導された固形物-CODを12.5g/l含有する液体250mlは、ビーカに移された。反応器に統合されたフロテーションタンクの流出物ラインからの固形物を含まない流出物は、容器に移された。バイオガスは、4バール(g)の圧力に達するまで、容器の中に注入された。容器の振動後に、バイオガスは、大部分が溶解した。容器内容物の250mlは、ノズルを通してビーカ(2)の液体(固形物を含有)の中に放出された。放出された内容物は、いわゆる白濁液として表示される場合がある。より一般的な用語では、「白濁液」は、放出圧力よりも高い圧力でバイオガス(このケースでは、75%のメタン、25%の二酸化炭素)で飽和された後の圧力降下によって泡が放出される流出物である。この白濁液の追加後のビーカ内の浮遊層の形成は、30分間監視された。
【0058】
例1
[0060]アイスクリーム廃水(希釈アイスクリームに似た組成物)は、160lの嫌気性パイロット反応器内で処理された。パイロット反応器から誘導された固形物-CODを12.5g/l含有する液体は、鋼製容器に供給されて、4バール(g)でバイオガスで飽和された。ステップ(2)で得られた飽和液体500mlは、ノズルを通してビーカの中に放出された。この試験では、白濁液は、追加されなかった。ビーカのシステムにおける浮遊層の形成は、30分間監視された。
【0059】
[0061]固形物の最終濃縮度は、次のように計算された。
【0060】
濃縮係数 = 浮遊層の体積/反応器液体の体積
【0061】
[0062]浮遊層の濃度=濃縮係数×初期固形物濃度(COD)
【0062】
【表1】
【0063】
例2及び比較例B
フロテーションユニットは、既存の嫌気性バイオ反応器の次のパイロットとして配置された。比較例Bでは、先行技術に係る方法が、実施され(図1参照)、例2では、本発明に係る方法が、実施され(図2参照)、方法は、連続モードで運転された。
【0064】
比較例Bでは、フロテーションユニット(図では第2のタンク)は、15m/hの反応器内容物が供給され、第2のタンクの流出物の15m/hは、バイオガスが注入された高圧容器(第1のタンク)に供給され、第2のタンクに供給され、フロテーションタンク(第2のタンク)に進入する直前に、圧力は、第2のタンクの圧力まで降下された(ヘッドスペース30mbar)。
【0065】
例2では、フロテーションユニット(図では第2のタンク)は、第1のタンク(バイオガスが注入された高圧容器)の流出物の15m/hが供給され、第2のタンクに供給され、フロテーションタンク(第2のタンク)に進入する直前に、圧力は、第2のタンクの圧力まで降下された(ヘッドスペース30mbar)。両ケースでは、高圧タンク(第1のタンク)に向けたバイオガスの供給量及び品質は、等しかった(二酸化炭素の30%及びメタンの70%)。パラメータ及び結果は、下の表に与えられる。
【0066】
【表2】
図1
図2
【国際調査報告】