(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】細胞および生体分子上へのオリゴヌクレオチドの直接合成
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20220125BHJP
C12Q 1/42 20060101ALI20220125BHJP
C12Q 1/48 20060101ALI20220125BHJP
C40B 40/06 20060101ALI20220125BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
C12Q1/02 ZNA
C12Q1/42
C12Q1/48 Z
C40B40/06
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533202
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(85)【翻訳文提出日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2019084347
(87)【国際公開番号】W WO2020120442
(87)【国際公開日】2020-06-18
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516304610
【氏名又は名称】ディーエヌエー スクリプト
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ゴドロン, シャビエル
(72)【発明者】
【氏名】ホルガン, アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ガリエル, シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ジェドロー, ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ニコル, ロベール
(72)【発明者】
【氏名】イベール, トマス
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA20
(57)【要約】
本発明は、生体分子または生細胞もしくは固定細胞上にオリゴヌクレオチドを直接(direction)合成する方法に関する。いくつかの実施形態では、テンプレートなしの酵素合成を、生物学的条件下で、(i)3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の酵素的付加、および(ii)組み込まれたヌクレオチドを酵素的に脱ブロックして遊離3’ヒドロキシルを再生するという連続サイクルを用いて実施する。本発明は、単一細胞cDNAライブラリーの構築および解析で適用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配列を有するオリゴヌクレオチドを生細胞において合成する方法であって、
a)前記細胞の細胞表面分子に結合されているか、前記細胞の細胞表面膜中に係留されている遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターを準備する工程;
b)生物学的条件下で、(i)遊離3’-O-ヒドロキシルを有する前記イニシエーターまたは延長断片を3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸およびテンプレート非依存性DNAポリメラーゼと接触させる工程であって、その結果、前記イニシエーターまたは延長断片が3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の組み込みによって延長されて、3’-Oブロック延長断片を形成する、接触させる工程、および(ii)前記延長断片を脱ブロックする工程であって、遊離3’-ヒドロキシルを有する延長断片を形成する、脱ブロックする工程、の複数のサイクルを繰り返す工程であって、それにより、所定の配列の前記オリゴヌクレオチドを合成する、繰り返す工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸が3’-リン酸-ヌクレオシド三リン酸であり、前記脱ブロックする工程が、前記3’-Oブロック延長断片を3’-ホスファターゼ活性で処理することによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記3’-ホスファターゼ活性が、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、組換えエビアルカリホスファターゼ、または仔牛腸アルカリホスファターゼによって提供される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸が3’-エステルブロックヌクレオシド三リン酸であり、前記脱ブロックする工程が、前記3’-O-エステルブロック延長断片をエステラーゼ活性で処理することによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記生物学的条件が、pH6.8~7.8のpH範囲および15℃~41℃の温度範囲の生理学的塩類緩衝液を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記生細胞が哺乳動物細胞である、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記イニシエーターが、5’末端に共有結合で付着した親油性アンカーを有するオリゴヌクレオチドを含み、前記親油性アンカーが前記生細胞の細胞表面膜中に安定に挿入する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
細胞特異的オリゴヌクレオチドバーコードを有するcDNAライブラリーを生成する方法であって、
(a)生物学的条件下で、固有のオリゴヌクレオチドバーコードを細胞集団中の各細胞の細胞表面膜上に合成して、バーコード付き細胞集団を形成する工程;
(b)リアクター中で各バーコード付き細胞を単離する工程;
(c)各リアクター中でバーコード付き細胞を溶解する工程;
(d)各リアクター中で逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を行って、細胞特異的オリゴヌクレオチドバーコードを有するcDNAライブラリーを産生する工程
を含む、方法。
【請求項9】
前記合成する工程は、(a)イニシエーターを前記集団の前記細胞の各々の前記細胞表面膜に結合させること、および(b)(i)生物学的条件下で、遊離3’-O-ヒドロキシルを有する前記イニシエーターまたは延長断片を、3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸およびテンプレート非依存性DNAポリメラーゼと接触させることであって、その結果、前記イニシエーターまたは延長断片が3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の組み込みによって延長されて、3’-Oブロック延長断片を形成する、接触させること、および(ii)前記延長断片を脱ブロックすることであって、遊離3’-ヒドロキシルを有する延長断片を形成する、脱ブロックすること、のサイクルを繰り返すことを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記サイクルの各々が、個別の反応混合物の間で前記細胞の前記集団を分割することをさらに含み、ここで、前記イニシエーターまたは延長断片が異なる種類のヌクレオシド三リン酸によって延長されて前記延長断片を形成し、その後に前記個別の反応混合物の前記細胞を合わせる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記リアクターが、油中水型乳濁液のミセルである、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ミセルがマイクロフルイディクスデバイスによって生成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記リアクター由来の前記cDNAを組み合わせ、ハイスループットDNA配列決定によって解析する、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
所定のヌクレオチド配列を有する1またはそれを超えるネイティブポリヌクレオチドを伸長させる方法であって、
TdT反応条件下で反応混合物中に1またはそれを超えるネイティブポリヌクレオチドを準備する工程であって、前記ネイティブポリヌクレオチドが遊離3’-ヒドロキシルを有する工程;および
(i)遊離3’-O-ヒドロキシルを有する前記ネイティブポリヌクレオチドまたは延長ネイティブポリヌクレオチドを3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸およびTdTバリアントと接触させる工程であって、その結果、前記ネイティブポリヌクレオチドまたは延長ネイティブポリヌクレオチドが3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の組み込みによって延長されて、3’-Oブロック延長ネイティブポリヌクレオチドを形成する、接触させる工程、および(ii)前記延長ネイティブポリヌクレオチドを脱ブロックする工程であって、遊離3’-ヒドロキシルを有する延長ネイティブポリヌクレオチドを形成する、脱ブロックする工程、のサイクルを繰り返すことによって、ヌクレオチドの所定の配列を有する1またはそれを超えるネイティブポリヌクレオチドを伸長させる工程であって、それにより、前記ネイティブポリヌクレオチド上に前記所定の配列のオリゴヌクレオチドを合成する、伸長させる工程
を含む、方法。
【請求項15】
前記所定のヌクレオチド配列が、少なくとも複数の異なる種類のヌクレオチドを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記所定のヌクレオチド配列が、各々のネイティブポリヌクレオチドについて固有のものである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記サイクルの各々が、個別の反応混合物の間で前記ネイティブポリヌクレオチドまたは延長ネイティブポリヌクレオチドを分割することをさらに含み、ここで、前記ネイティブポリヌクレオチドまたは延長ネイティブポリヌクレオチドが異なる種類のヌクレオシド三リン酸によって延長されて前記延長ネイティブポリヌクレオチドを形成し、その後に前記個別の反応混合物の前記延長ネイティブポリヌクレオチドを合わせる、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
各々がオリゴヌクレオチド標識を有するcDNAライブラリーを生成する方法であって、
(a)mRNAを1またはそれを超える固体支持体に結合した捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリッド形成することによって前記mRNAを捕捉する工程であって、前記捕捉オリゴヌクレオチドが前記mRNAのセグメントと相補的であり、前記捕捉オリゴヌクレオチドが、5末端によって前記1またはそれを超える固体支持体に結合し、かつ遊離3’-ヒドロキシルを有する3’末端を有する、捕捉する工程;
(b)逆転写酵素を用い、テンプレートとして前記捕捉されたmRNAを使用して前記捕捉オリゴヌクレオチドの3’末端を伸長させて、前記1またはそれを超える固体支持体上にcDNAライブラリーを形成させる、伸長させる工程;
(c)テンプレートなしの酵素合成によって前記1またはそれを超える固体支持体のcDNA上にオリゴヌクレオチド標識を合成する工程
を含む、方法。
【請求項19】
前記捕捉する工程が、ビーズ上の単一細胞のmRNAを捕捉して、細胞特異的cDNAライブラリーである前記cDNAライブラリーを形成することを含み、ここで、前記オリゴヌクレオチド標識が固有の細胞特異的オリゴヌクレオチドバーコードである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記固有の細胞特異的バーコードを前記合成する工程を、分割および混合合成法によって行う、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記1またはそれを超える固体支持体が、前記捕捉オリゴヌクレオチドが結合した固体表面であり、前記捕捉する工程が、前記固体表面上に配置された透過処理した組織スライスのmRNAを捕捉して、前記組織スライスのcDNAの空間分布を保存する空間的cDNAライブラリーアレイを形成することを含む、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記合成する工程が、前記空間的cDNAライブラリーアレイ上の複数の異なる所定の位置の各々に固有の位置タグを合成して、位置タグ-cDNAコンジュゲートを形成することを含む、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、前記位置タグ-cDNAコンジュゲートを放出および配列決定して、前記組織スライス中の前記mRNAの空間分布を決定する、放出および配列決定する工程をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記固体表面が、所定の非核酸リガンドを捕捉するための前記固体表面に結合した結合化合物を含む、請求項21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記結合化合物が、各々が前記所定の非核酸リガンドのうちの1つに対して所定の特異性を有する1またはそれを超える種類の抗体を含み、各々の異なる種類の抗体は、前記抗体を同定することができる放出可能なオリゴヌクレオチドバーコードが結合している、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
生物科学および医科学において、核酸タグ(すなわち、バーコード)を使用することによって生体分子または細胞の大規模解析を容易にすることができる例は多数ある(例えば、Brenner et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,97:1665-1670(2000);Brenner et al,米国特許第7537897号;Brenner et al,米国特許第8476018号;McCloskey et al,米国特許出願公開第2007/0020640号;Kinde et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,108:9530-9535(2011);Fu et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,108:9026-9031(2011);Nolan,米国特許出願公開第2016/0251697号;Zheng et al,Nature Comm.,8:14049(2017))。
典型的には、かかるオリゴヌクレオチド標識は、(1)生物または生体分子の固有の標識とのコンジュゲート集団を得るために、様々なオリゴヌクレオチド標識セットを予め合成し、これらを使用して標的生物または標的生体分子の遥かに小さな集団とのコンジュゲートを形成する「試料採取による標識付け」(「確率的標識付け」とも呼ばれる)(例えば、Brenner et al,米国特許第7,537,897号;またはFu et al,Proc.Natl.Acad.Sci.(上記で引用));または(2)全てが実質的に固有の標識を有する生物または生体分子の集団を得るための複数の予め合成したオリゴヌクレオチドサブユニットの「分割および混合」ハイブリッド形成(例えば、Nolan(上記で引用);またはSeelig et al,米国特許出願公開第2016/0138086号)のいずれかによって結合させる。オリゴヌクレオチド合成には主にホスホルアミダイト化学などの化学的方法が使用されているので、これらのプロセスにおいて予め合成したタグまたはタグサブユニットが使用されており、前記化学的方法には過酷な非水性条件を必要とし、生物有機体および生体分子には不適合である。
生物有機体または生体分子に追跡および選別のためのオリゴヌクレオチド標識(固有かつ耐久性のあるバーコードまたはタグなど)を提供するために生物有機体または生体分子上にオリゴヌクレオチドを直接合成することができることができれば、これは非常に望ましいことであろう。かかる標識は、特に次世代の配列決定技術と組み合わせる場合、多くの生物学的過程の細胞ベースの大規模解析のための有益なツールであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】米国特許第7537897号明細書
【特許文献2】米国特許第8476018号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0020640号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2016/0251697号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2016/0138086号明細書
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Brenner et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,97:1665-1670(2000)
【非特許文献2】Kinde et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,108:9530-9535(2011)
【非特許文献3】Fu et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,108:9026-9031(2011)
【非特許文献4】Zheng et al,Nature Comm.,8:14049(2017)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、生体分子および生体細胞上にオリゴヌクレオチドを直接合成する方法(単一細胞トランスクリプトーム解析などの単一細胞解析のためのかかる方法の適用が含まれる)に関する。
【0005】
いくつかの実施形態では、本発明は、オリゴヌクレオチドを生体細胞または生体分子上に合成する方法であって、(a)遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターを有する生体細胞または生体分子を準備する工程;(b)(i)延長条件下で、遊離3’-O-ヒドロキシルを有する前記イニシエーターまたは延長断片を3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸およびテンプレート非依存性DNAポリメラーゼと接触させる工程であって、その結果、前記イニシエーターまたは延長断片が3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の組み込みによって延長されて、3’-Oブロック延長断片を形成する、接触させる工程、および(ii)前記延長断片を脱ブロックする工程であって、遊離3’-ヒドロキシルを有する延長断片を形成する、脱ブロックする工程、の複数のサイクルを繰り返す工程であって、それにより、生体細胞または生体分子上に所定の配列のオリゴヌクレオチドを合成する、繰り返す工程を含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、かかる工程を、生体細胞、特に、哺乳動物細胞を生きている状態に維持する条件下で行う。いくつかの実施形態では、脱ブロックする工程を、生体細胞、特に、哺乳動物細胞を生きている状態に維持する条件下で酵素的に行う。
【0006】
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞特異的オリゴヌクレオチドバーコードを有する細胞特異的cDNAライブラリーを生成する方法であって、(a)固有のオリゴヌクレオチドバーコードを細胞集団中の各細胞の細胞表面膜上に合成して、バーコード付き細胞集団を形成する工程;(b)リアクター中で各バーコード付き細胞を単離する工程;(c)各リアクター中でバーコード付き細胞を溶解する工程;(d)各リアクター中で逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を行って、細胞特異的オリゴヌクレオチドバーコードを有するcDNAライブラリーを産生する工程を含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、合成する工程を、本発明のテンプレートなしの酵素合成法によって行う。いくつかの実施形態では、RT-PCR反応は、ポリメラーゼサイクリング増幅反応によってcDNAにバーコードを結合させることを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、本発明は、各々が細胞特異的オリゴヌクレオチドバーコードを有する細胞特異的cDNAライブラリーを生成する方法であって、(a)mRNAをビーズに結合した捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリッド形成することによって単一細胞の前記mRNAを捕捉する工程であって、前記捕捉オリゴヌクレオチドが前記mRNAのセグメントと相補的であり、前記捕捉オリゴヌクレオチドが、5末端によって前記ビーズに結合し、かつ遊離3’-ヒドロキシルを有する、捕捉する工程;(b)逆転写酵素を用い、テンプレートとして捕捉された前記mRNAを使用して前記捕捉オリゴヌクレオチドの3’末端を伸長させて、細胞特異的cDNAライブラリーを形成させる、伸長させる工程;(c)テンプレートなしの酵素合成によってビーズの各cDNA上に固有の細胞特異的オリゴヌクレオチドバーコードを合成する工程を含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、固有の細胞またはビーズ特異的バーコードは、ランダム配列オリゴヌクレオチドであり、かかるバーコードを合成する工程を、テンプレートなしの酵素合成を用いた「分割および混合」手順によって実施する。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、所定のヌクレオチド配列を有する1またはそれを超えるネイティブポリヌクレオチドを伸長させる方法であって、TdT反応条件下で反応混合物中に1またはそれを超えるネイティブポリヌクレオチドを準備する工程であって、前記ネイティブポリヌクレオチドが遊離3’-ヒドロキシルを有する、工程;および(i)遊離3’-O-ヒドロキシルを有する前記ネイティブポリヌクレオチドまたは延長ネイティブポリヌクレオチドを3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸およびTdTバリアントと接触させる工程であって、その結果、前記ネイティブポリヌクレオチドまたは延長ネイティブポリヌクレオチドが3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の組み込みによって延長されて、3’-Oブロック延長ネイティブポリヌクレオチド(3’-O-blocked elongated native polynucleotide)を形成する、接触させる工程、および(ii)前記延長ネイティブポリヌクレオチドを脱ブロックする工程であって、遊離3’-ヒドロキシルを有する延長ネイティブポリヌクレオチドを形成する、脱ブロックする工程、の複数のサイクルを繰り返すことによって、ヌクレオチドの所定の配列を有する前記1またはそれを超えるネイティブポリヌクレオチドを伸長させる工程であって、それにより、前記ネイティブポリヌクレオチド上に前記所定の配列のオリゴヌクレオチドを合成する、伸長させる工程を含む、方法に関する。
【0009】
本発明のこれらの上記で特徴づけられた態様および他の態様は、示した実施および適用のいくつかを例示しており、これらのうちのいくつかは、図面に示され、以下の特許請求の範囲の節で特徴づけられている。しかしながら、上記の概要は、本発明の示した実施形態またはあらゆる実施の各々を説明していることを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、TdTを使用したテンプレートなしの酵素的核酸合成法の工程を図示する。
【0011】
【
図1B】
図1B~1Cは、cDNA分子の3’末端上にオリゴヌクレオチドを直接合成するための本発明の1つの実施形態を示す。
【
図1C】
図1B~1Cは、cDNA分子の3’末端上にオリゴヌクレオチドを直接合成するための本発明の1つの実施形態を示す。
【0012】
【
図1D】
図1D~1Fは、
図1B~1Cに示した方法を適用することによる固体支持体(例えば、ビーズまたは平面アレイ)上のタグ化cDNAライブラリーの生成を示す。
【
図1E】
図1D~1Fは、
図1B~1Cに示した方法を適用することによる固体支持体(例えば、ビーズまたは平面アレイ)上のタグ化cDNAライブラリーの生成を示す。
【
図1F】
図1D~1Fは、
図1B~1Cに示した方法を適用することによる固体支持体(例えば、ビーズまたは平面アレイ)上のタグ化cDNAライブラリーの生成を示す。
【0013】
【
図1G】
図1Gは、オリゴヌクレオチド標識した抗体を使用してタンパク質の空間分布を同定するための実施形態を示す。
【0014】
【
図1H】
図1Hは、固定化オリゴヌクレオチドおよびDNA標識を有する抗体を使用して遺伝子発現およびタンパク質分布の両方を同定するための実施形態を示す。
【0015】
【
図1I】
図1Iは、複数のタグ化工程によって目的の特定の表面領域に注目した空間的配列決定解析のための実施形態を示す。
【0016】
【
図2A】
図2A~2Dは、生細胞または固定および透過処理した細胞上にオリゴヌクレオチドタグを直接合成するための本発明の実施形態を示す。
【
図2B】
図2A~2Dは、生細胞または固定および透過処理した細胞上にオリゴヌクレオチドタグを直接合成するための本発明の実施形態を示す。
【
図2C】
図2A~2Dは、生細胞または固定および透過処理した細胞上にオリゴヌクレオチドタグを直接合成するための本発明の実施形態を示す。
【
図2D】
図2A~2Dは、生細胞または固定および透過処理した細胞上にオリゴヌクレオチドタグを直接合成するための本発明の実施形態を示す。
【0017】
【
図3A】
図3Aは、親油性アンカーによる細胞表面膜上のイニシエーターオリゴヌクレオチドの結合を示す。
【0018】
【
図3B】
図3Bは、細胞の細胞表面膜中に係留されたイニシエーター上の固有の分子バーコードの「分割および混合」合成を示す。
【0019】
【
図3C】
図3Cは、各ライブラリーが細胞特異的バーコードを含む単一細胞特異的cDNAライブラリーを生成するためのバーコード付き細胞のマイクロフルイディクス処理を示す。
【0020】
【
図4A】
図4Aは、単一細胞からの特異的遺伝子の増幅手順を示す。
【0021】
【
図4B】
図4Bは、単一細胞からの全長cDNAライブラリーの増幅手順(テンプレートスイッチング)を示す。
【0022】
【
図4C】
図4Cは、ポリメラーゼサイクリング増幅(PCA)によって細胞特異的バーコードをcDNA配列に結合させるための手順を示す。
【0023】
【
図5】
図5は、バーコード付き単一細胞cDNAライブラリーを生成するための別の方法を示す。
【0024】
【
図6】
図6は、酵素的に/化学的に合成されたキメラプローブを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一般的原理は、特に例(図面に示し、詳述した例など)によって本明細書中でより詳細に開示している。しかしながら、本発明が記載の特定の実施形態に制限されないことを意図していると理解すべきである。本発明は、種々の修正形態および変更形態が可能であり、いくつかの実施形態についてその詳細を示している。本発明は、本発明の原理および範囲に含まれる全ての修正形態、均等物、および変更形態を対象とするものとする。
【0026】
本発明の実施にあたり、別段の指示が無い限り、当業者の範囲内の有機化学、分子生物学(組換え技術が含まれる)、細胞生物学、および生化学の従来技術および説明を使用し得る。かかる従来の技術には、合成ペプチド、合成ポリヌクレオチド、モノクローナル抗体、核酸のクローニング、増幅、配列決定および解析、ならびに関連技術の準備および使用が含まれ得るが、これらに限定されない。かかる従来技術のためのプロトコールを、製造者による製品についての印刷物および標準的な実験マニュアル(Genome Analysis:A Laboratory Manual Series(Vols.I-IV);PCR Primer:A Laboratory Manual;およびMolecular Cloning:A Laboratory Manual(全てCold Spring Harbor Laboratory Press);Lutz and Bornscheuer,Editors,Protein Engineering Handbook(Wiley-VCH,2009);Hermanson,Bioconjugate Techniques,Second Edition(Academic Press,2008);ならびに類似の参考文献など)に見出すことができる。
【0027】
本発明は、テンプレートなしの酵素的オリゴヌクレオチド合成技術を使用して細胞または生体分子上にオリゴヌクレオチドを直接合成する方法に関する。かかる技術を、天然環境から抽出した生体分子(例えば、DNAまたはRNA)、イニシエーターの結合によって改変された生体分子(例えば、タンパク質)、または合成によって産生された生体分子(例えば、核酸、ポリサッカリド、ポリペプチドなど)に直接適用することができる。かかる技術は、酵素反応の穏やかな条件が必要であるか有用である任意の環境で適用され得る。特に、テンプレートなしの酵素合成技術は、ハイブリッド化学酵素ポリヌクレオチド合成で使用することができ、この技術において、前駆体ポリヌクレオチドが化学合成され、次いで、過酷な化学合成条件で変更されるか、生存し得ない前駆体は、標識されたヌクレオチドなどの構成成分の酵素的付加によってさらに改変される。かかるハイブリッド合成法は、ヌクレオチドまたはそのアナログの化学的付加と酵素的付加との間にいくつかの変更点を含み得る。かかるハイブリッド合成技術は、酵素合成を種々の異なる化学合成アプローチ(ホスホルアミダイト、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、亜リン酸トリエステル、H-ホスホン酸化学が含まれるが、これらに限定されない)と組み合わせることができる(例えば、Narang,Editor,Synthesis and applications of DNA and RNA(Academic Press,Inc.,1987)。
【0028】
いくつかの実施形態では、テンプレートなしの酵素合成技術は、遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターオリゴヌクレオチド(cDNAのポリヌクレオチドの場合、生体分子の一部であり得る)が存在する必要があるか、前記イニシエーターオリゴヌクレオチドは、細胞膜タンパク質または抗体などの場合、種々の化学技術によって(例えば、容易に利用可能なクリック化学反応を使用して)容易に付加され得る。イニシエーターが利用できると、(i)3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の存在下でのテンプレートなしのポリメラーゼ(末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)など)を使用した単一のヌクレオチドによる遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーター(または事前に伸長された鎖)の伸長、および(ii)直近に組み込まれた3’-Oブロックヌクレオチドを脱ブロックして新規の伸長可能な3’-ヒドロキシルを再生するサイクルの繰り返しによって、酵素オリゴヌクレオチド合成が行われ得る。所望の配列を有するオリゴヌクレオチドが合成されるまで、サイクルを継続する。いくつかの実施形態では、固有のオリゴヌクレオチドバーコードは、「分割および混合」合成ストラテジーによって哺乳動物細胞などの生体細胞の集団上に直接合成され得る。いくつかの実施形態では、非伸長の遊離ヒドロキシルを、キャッピングされた鎖のいかなるさらなる伸長も防止する化合物と反応させるキャッピング工程が含まれ得る。いくつかの実施形態では、かかる化合物は、ジデオキシヌクレオシド三リン酸であり得る。他の実施形態では、遊離3’-ヒドロキシルを有する非伸長の鎖は、Jensen et al,Biochemistry,57:1821-1832(2018)に記載のように、3’-エキソヌクレアーゼ活性(例えば、ExoI)で処理することによって分解され得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、本発明は、オリゴヌクレオチドを生体細胞または生体分子上に合成する方法であって、(a)遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターを有する生体細胞または生体分子を準備する工程;(b)(i)延長条件下で、遊離3’-O-ヒドロキシルを有する前記イニシエーターまたは延長断片を3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸およびテンプレート非依存性DNAポリメラーゼと接触させる工程であって、その結果、前記イニシエーターまたは延長断片が3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の組み込みによって延長されて、3’-Oブロック延長断片を形成する、接触させる工程、および(ii)前記延長断片を脱ブロックする工程であって、遊離3’-ヒドロキシルを有する延長断片を形成する、脱ブロックする工程、の複数のサイクルを繰り返す工程であって、それにより、前記生体細胞または生体分子上に所定の配列のオリゴヌクレオチドを合成する、繰り返す工程を含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、生体細胞を提供し、脱ブロックを酵素的に行う。いくつかの実施形態では、3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸は3’-リン酸-ヌクレオシド三リン酸であり、脱ブロックする工程を前記3’-Oブロック延長断片を3’-ホスファターゼ活性で処理することによって行う。いくつかの実施形態では、3’-ホスファターゼ(phophatase)活性を、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、組換えエビアルカリホスファターゼ、または仔牛腸アルカリホスファターゼによって提供する。いくつかの実施形態では、前記3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸は3’-エステル-ヌクレオシド三リン酸であり、脱ブロックする工程を、前記3’-Oブロック延長断片をエステラーゼ活性で処理することによって行う。いくつかの実施形態では、エステラーゼ活性は、リパーゼ活性(プロテイナーゼなど)である。いくつかの実施形態では、前記3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸は3’-アセチル-ヌクレオシド三リン酸であり、脱ブロックする工程を、前記3’-Oブロック延長断片をアセチルエステラーゼ活性で処理することによって行う。いくつかの実施形態では、テンプレート非依存性DNAポリメラーゼは、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)バリアントであって、配列番号2~15のアミノ酸配列のうちのいずれか1つと少なくとも60パーセント同一のアミノ酸配列を有し、配列番号2の207位または配列番号3~15のアミノ酸配列中の機能的に等価な位置の第1のアルギニンおよび配列番号2の325位または配列番号3~15のアミノ酸配列中の機能的に等価な位置の第2のアルギニンが置換されており、ここで、前記バリアントTdTが、(i)テンプレートなしで核酸断片を合成することができ、(ii)3’-O-改変ヌクレオチドを核酸断片の遊離3’-ヒドロキシル上に組み込むことができる、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)バリアントである。
【0030】
いくつかの実施形態では、生細胞においてオリゴヌクレオチドを合成するための本発明の方法は、以下の工程を用いて行われ得る:(a)前記細胞の細胞表面分子に結合されているか、前記細胞の細胞表面膜中に係留されている遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターを準備する工程;(b)生物学的条件下で、(i)遊離3’-O-ヒドロキシルを有する前記イニシエーターまたは延長断片を3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸およびテンプレート非依存性DNAポリメラーゼと接触させる工程であって、その結果、前記イニシエーターまたは延長断片が3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の組み込みによって延長されて、3’-Oブロック延長断片を形成する、接触させる工程、および(ii)前記延長断片を酵素的に脱ブロックする工程であって、遊離3’-ヒドロキシルを有する延長断片を形成する、脱ブロックする工程、の複数のサイクルを繰り返す工程であって、それにより、所定の配列の前記オリゴヌクレオチドを合成する、繰り返す工程。
【0031】
上記のプロセスは、
図1B~1Cに示されており、前記図は、cDNAがその3’末端上に合成されたオリゴヌクレオチドを有する実施形態を示す。かかるcDNAは、例えば、反応チャンバー中で単離された単一細胞から得ることができる。細胞特異的(またはチャンバー特異的)オリゴヌクレオチドは、かかるcDNA上で合成され得る。その後、かかる反応チャンバーの内容物を組み合わせ、オリゴヌクレオチド-cDNAコンジュゲートを大規模配列解析によって解析して、例えば、細胞集団の単一細胞トランスクリプトーム解析、または同一条件に曝露された同一リアクター由来の細胞群のトランスクリプトーム解析を行うことができる。従来のプロトコールを用いて3’-polyT部分(104)を有するプライマー(102)を伝令RNA(mRNAs)(100)のpolyA領域にアニールし、逆転写酵素で伸長させて(108)、cDNA(113)(配列番号16)を形成させる。また、プライマー(102)は、得られた伸長産物(すなわち、cDNA)を固体支持体に結合させるための手段を提供する部分(106)を有する。多種多様のかかる結合手段が利用可能であり、前記結合手段には、固体支持体に結合した相補鎖へのアニールであり得る5’オリゴヌクレオチドテール、共有結合を形成するための固体支持体に結合した相補メンバーと反応し得るクリック化学反応対のメンバー、非共有結合を形成するための固相支持体に結合した相補メンバーと複合体を形成し得る非核酸結合対のメンバー(後者の例は、ビオチンおよびストレプトアビジンである)が含まれるが、これらに限定されない。
図1Bに戻って、上記の結合様式のうちの2つを、3’末端で結合した相補オリゴヌクレオチド(112)を有し、伸長したプライマー(102)の部分(106)とのハイブリッド形成によってcDNA(113)を捕捉する固体支持体(120a)、および結合した結合対のメンバー(114a)(ストレプトアビジンなど)を有し、前記メンバーの相補メンバー(ビオチンなど)を捕捉する別の支持体(120b)を用いて例示する。cDNAに結合した結合対のメンバーは、オリゴヌクレオチドテール(106)が存在する必要はない;しかし、いくつかの実施形態では、かかるオリゴヌクレオチド(106)は、固体支持体から最終産物を切断するために使用され得るヌクレオチドまたはヌクレオチド配列(例えば、USER処理による切断のためのウラシル、または制限エンドヌクレアーゼ(ニッカーゼなど)の認識配列の存在)を含み得る。
【0032】
cDNAを3’-ヒドロキシルが遊離状態のままで固体支持体に切断可能または放出可能に結合させた後、酵素合成を進行させて遊離3’末端上に所定の配列のオリゴヌクレオチドを生成することができ、これを
図1Cに図示する。鎖(123)(配列番号16)を固体支持体(例えば、結合対を介した120b)に結合させた後、鎖をテンプレートなしのポリメラーゼ(TdTなど)および3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸を含む反応混合物に、TdTがcDNAの3’-ヒドロキシルおよび生じる3’-Oブロックヌクレオチドの三リン酸由来のリン酸結合の形成を触媒することを可能にする条件下で曝露させ、それにより、所望のオリゴヌクレオチドの第1のヌクレオチドが組み込まれる。伸長反応の3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸を、図中で「3’-OブロックdYTP」として示す。得られた産物の3’-Oブロックヒドロキシルを適切な脱ブロック剤を用いて脱ブロックして(122)、遊離3’-ヒドロキシルを有する伸長したcDNA(125)を形成させる。以下でより十分に考察されるように、ブロック基およびその除去方法の選択は、実施形態によって大きく異なり得る。所望の合成速度、所望の合成収率、標識される標的生体分子または標的細胞の脆弱性、特に、生物学的に適合される酵素脱ブロックがより望ましいかどうか、またはより過酷な化学的脱ブロックが許容可能であるかどうかなどの要因を評価することによる特定の実施形態のかかる選択は、当業者の技術の範囲内にある。オリゴヌクレオチド合成が完了するまで、所望のオリゴヌクレオチドの連続ヌクレオチドを使用して、サイクルを反復する(126)。いくつかの実施形態では、1回またはそれを超える洗浄工程、または3’-OブロックdYTPを除去する工程などのさらなる工程が含まれる。合成完了後、さらなる解析または使用のために、オリゴヌクレオチド標識したcDNAは固体支持体から除去され得る。いくつかの実施形態では、さらなる解析または使用のために、cDNAは固体支持体上に保持され得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、生体分子にイニシエーター配列が結合している場合、
図1Cと類似の過程によって、オリゴヌクレオチドは他の生体分子(抗体など)上で合成され得る。
【0034】
図1D~1Eは、上記方法が固相cDNAライブラリーを構築するための市販のpolyTビーズ(例えば、Dynabeads(商標)オリゴ(dT)磁性ビーズ,Bosnes et al,ThermoFisher Application Note(2017))と併せて使用され得る方法を示す。polyTビーズ(150)を、polyA RNA(152)を含む細胞の抽出物またはライセートと、ビーズのpolyTセグメントとRNAのpolyAセグメントがハイブリッド形成可能な条件下で組み合わせ、その後に、ハイブリッド形成したpolyTセグメントを逆転写反応で伸長させる。RNAテンプレート(156)の除去後、固相cDNAライブラリー(158)が得られ、次いで、
図1Bおよび1Cの方法(160)にしたがってプロセシングしてバーコードまたはプライマー結合部位など(162)を合成することができ、cDNAをさらに解析することが可能である。かかるバーコードは、患者試料などの特定の試料を固有に指定することができるか、以下にさらに記載のように、かかるバーコードは、単一細胞を固有に指定することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明は、各々がオリゴヌクレオチド標識を有するcDNAライブラリーを生成する方法であって、(a)mRNAを1またはそれを超える固体支持体に結合した捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリッド形成することによって前記mRNAを捕捉する工程であって、前記捕捉オリゴヌクレオチドが前記mRNAのセグメントと相補的であり、前記捕捉オリゴヌクレオチドが、5末端によって前記1またはそれを超える固体支持体に結合しており、かつ遊離3’-ヒドロキシルを有する3’末端を有する、捕捉する工程;(b)逆転写酵素を用い、テンプレートとして捕捉された前記mRNAを使用して前記捕捉オリゴヌクレオチドの3’末端を伸長させて、前記1またはそれを超える固体支持体上にcDNAライブラリーを形成させる、伸長させる工程;および(c)テンプレートなしの酵素合成によって前記1またはそれを超える固体支持体上の各cDNA上にオリゴヌクレオチド標識を合成する工程を含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、合成する工程は、(i)延長条件下で、前記cDNAを、3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸およびテンプレート非依存性DNAポリメラーゼと接触させることであって、その結果、遊離3’-ヒドロキシルを有する前記cDNAまたは延長cDNAが3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の組み込みによって延長されて、3’-Oブロック延長cDNAを形成する、接触させること、および(ii)前記延長cDNAを脱ブロックすることであって、遊離3’-ヒドロキシルを有する延長cDNAを形成する、脱ブロックすること、のサイクルを繰り返すことを含む。いくつかの実施形態では、前記サイクルの各々が、個別の反応混合物の間で遊離3’-ヒドロキシルを有する前記cDNAまたは延長cDNAを分割することをさらに含み、ここで、遊離3’-ヒドロキシルを有する前記cDNAまたは延長cDNAが異なる種類のヌクレオシド三リン酸によって延長されて前記延長cDNAを形成し、その後に前記個別の反応混合物の延長cDNAを合わせる。いくつかの実施形態では、捕捉する工程は、ビーズ上の単一細胞のmRNAを捕捉して、細胞特異的cDNAライブラリーであるcDNAライブラリーを形成することを含み、ここで、オリゴヌクレオチド標識は固有の細胞特異的オリゴヌクレオチドバーコードである。いくつかの実施形態では、固有の細胞特異的バーコードを合成する工程を、分割および混合合成法によって行う。
【0036】
オリゴヌクレオチドのテンプレートなしの酵素合成
一般に、テンプレートなしの(または、等価には「テンプレート非依存性」)酵素DNA合成方法は、
図1Aなどに示すように、各サイクルで所定のヌクレオチドがイニシエーターにカップリングするか、その鎖を成長させる工程のサイクルの繰り返しを含む。テンプレートなしの酵素合成の一般的な要素は、以下の参考文献に記載されている:Ybert et al,国際特許公開WO/2015/159023号;Ybert et al,国際特許公開WO/2017/216472号;Hyman,米国特許第5436143号;Hiatt et al,米国特許第5763594号;Jensen et al,Biochemistry,57:1821-1832(2018);Mathews et al,Organic&Biomolecular Chemistry,DOI:0.1039/c6ob01371f(2016);Schmitz et al,Organic Lett.,1(11):1729-1731(1999)。
【0037】
例えば、固体支持体(1020)に結合した、遊離3’-ヒドロキシル基(1030)を有するイニシエーターポリヌクレオチド(1000)を提供する。イニシエーターポリヌクレオチド(1000)(または延長イニシエーターポリヌクレオチド)の3’末端上への3’-O保護dNTPの酵素的組み込みに有効な条件下(1040)で、イニシエーターポリヌクレオチド(1000)(またはその後のサイクルにおける延長イニシエーターポリヌクレオチド)に、3’-O保護dNTPおよびテンプレートなしのポリメラーゼ,(TdTまたはそのバリアントなど(例えば、Ybert et al,WO/2017/216472号;Champion et al,WO2019/135007号))を付加する。この反応により、3’-ヒドロキシルが保護された延長イニシエーターポリヌクレオチド(1060)が産生される。延長配列が完全でない場合、別の付加サイクルを実施する(1080)。延長イニシエーターポリヌクレオチドが完了した配列を含む場合、3’-O-保護基を除去(すなわち、脱保護)することができ、所望の配列を、元のイニシエーターポリヌクレオチドから切断することができる(1100)。かかる切断を、種々の一本鎖切断技術のいずれかを使用して(例えば、元のイニシエーターポリヌクレオチド内の所定の位置への切断可能なヌクレオチドの挿入によって)行うことができる。例示的な切断可能なヌクレオチドは、ウラシルDNAグルコシラーゼによって切断されるウラシルヌクレオチドであり得る。延長イニシエーターポリヌクレオチドが完了された配列を含まない場合、3’-O-保護基が除去されて遊離3’-ヒドロキシルが露出し(1030)、延長イニシエーターポリヌクレオチドがヌクレオチド付加および脱保護の別のサイクルに供される。
【0038】
本明細書中で使用される場合、「イニシエーター」(または「開始断片」、「イニシエーター核酸」、もしくは「イニシエーターオリゴヌクレオチド」などの等価な用語)は、通常、テンプレートなしのポリメラーゼ(TdTなど)によってさらに延長することができる、遊離3’末端を有する短いオリゴヌクレオチド配列を指す。1つの実施形態では、開始断片はDNA開始断片である。別の実施形態では、開始断片はRNA開始断片である。いくつかの実施形態では、開始断片は、3ヌクレオチドと100ヌクレオチドとの間、特に、3ヌクレオチドと20ヌクレオチドとの間を含む。いくつかの実施形態では、開始断片は一本鎖である。別の実施形態では、開始断片は二本鎖である。いくつかの実施形態では、イニシエーターは、TdTが3’-O保護dNTPをカップリングすることができる遊離ヒドロキシルを有する非核酸化合物を含み得る(例えば、Baiga,米国特許出願公開第2019/0078065号および同第2019/0078126号)。
【0039】
図1Aに戻って、いくつかの実施形態では、各合成工程において3’-O保護dNTPの存在下でテンプレートなしのポリメラーゼ(TdTなど)を用いて、整列したヌクレオチド配列をイニシエーター核酸にカップリングする。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドを合成する方法は、(a)遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターを準備する工程;(b)伸長条件下で、遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターまたは伸長中間体をテンプレートなしのポリメラーゼと、3’-O保護ヌクレオシド三リン酸の存在下にて反応させて3’-O保護伸長中間体を産生する工程;(c)伸長中間体を脱保護して遊離3’-ヒドロキシルを有する伸長中間体を産生する工程;および(d)ポリヌクレオチドが合成されるまで工程(b)および(c)を繰り返す工程を含む。(時折、用語「伸長中間体」および「延長断片」は、互換的に使用される)。いくつかの実施形態では、イニシエーターは、例えば、その5’末端が固体支持体に結合したオリゴヌクレオチドとして提供される。また、上記の方法は、反応(すなわち、伸長)工程後、および脱保護工程後に洗浄工程を含み得る。例えば、反応させる工程は、所定のインキュベーション期間(すなわち、反応時間)後に、例えば洗浄によって非組み込みヌクレオシド三リン酸を除去する下位工程を含み得る。かかる所定のインキュベーション期間または反応時間は、数秒間(例えば、30秒間)から数分間(例えば、30分間)であり得る。
【0040】
合成支持体上のポリヌクレオチドの配列が逆相補サブシーケンスを含む場合、分子内二次構造または分子交差二次構造を、逆相補領域間の水素結合の形成によって作出することができる。いくつかの実施形態では、環外アミンのための塩基保護部分を、保護された窒素の水素が水素結合に関与できず、それにより、かかる二次構造の形成が防止されるように選択する。すなわち、塩基保護部分を使用して、例えば、ヌクレオシドAとTとの間およびGとCとの間の通常の塩基対合において形成される水素結合の形成を防止することができる。合成終了時に、塩基保護部分を除去することができ、ポリヌクレオチド産物を、例えば、そのイニシエーターからの切断によって固体支持体から切断することによって固体支持体から切断することができる。
【0041】
塩基が保護されていない3’-OブロックdNTPを、販売者から購入するか、公開された技術(例えば、米国特許第7057026号;Guo et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,105(27):9145-9150(2008);Benner,米国特許第7544794号および同第8212020号;国際特許公開番号WO2004/005667号,WO91/06678号;Canard et al,Gene(本明細書中で引用);Metzker et al,Nucleic Acids Research,22:4259-4267(1994);Meng et al,J.Org.Chem.,14:3248-3252(3006);米国特許出願公開第2005/037991号)を使用して合成することができる。塩基が保護された3’-OブロックdNTPを、下記のように合成することができる。
【0042】
塩基保護されたdNTPを使用する場合、上記の
図1Aの方法は、(e)塩基保護部分を除去する工程であって、アシルまたはアミジン保護基の場合、(例えば)濃縮アンモニアでの処理を含み得る、除去する工程をさらに含み得る。
【0043】
また、上記の方法は、反応工程(すなわち、伸長工程)後および脱保護工程後のキャッピング工程(複数可)および洗浄工程を含み得る。上記のとおり、いくつかの実施形態では、非伸長遊離3’-ヒドロキシルを、キャッピングされた鎖のいかなるさらなる伸長も防止する化合物と反応させるキャッピング工程が含まれ得る。いくつかの実施形態では、かかる化合物は、ジデオキシヌクレオシド三リン酸であり得る。他の実施形態では、遊離3’-ヒドロキシルを有する非伸長鎖は、3’-エキソヌクレアーゼ活性(例えば、ExoI)での処理によって分解され得る。例えば、Hyman,米国特許第5436143号を参照のこと。同様に、いくつかの実施形態では、脱ブロックされない鎖は、鎖を除去するか、さらなる伸長に不活性になるように処理され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、伸長工程または延長工程のための反応条件は、以下を含み得る:2.0μM 精製TdT;125~600μM 3’-OブロックdNTP(例えば、3’-O-NH2ブロックdNTP);約10~約500mMカコジル酸カリウム緩衝液(pH6.5と7.5との間)、および約0.01~約10mMの二価カチオン(例えば、CoC12またはMnC12)、ここで、延長反応は、反応体積50μL、室温から45℃までの範囲内の温度で3分間行い得る。3’-OブロックdNTPが3’-O-NH2ブロックdNTPである実施形態では、脱ブロック工程のための反応条件は、以下を含み得る:700mM NaNO2;1M酢酸ナトリウム(酢酸を用いてpH4.8~6.5の範囲に調整)、ここで、脱ブロック反応は、体積50μL、室温から45℃までの範囲内の温度で30秒間から数分間行い得る。
【0045】
特定の適用に応じて、脱ブロックおよび/または切断工程は、種々の化学的または物理的条件(例えば、光、熱、pH、指定の化学結合を切断することができる酵素などの特異的試薬の存在)を含み得る。3’-O-ブロック基および対応する脱ブロック条件の選択における指針は、以下の参考文献(参考として援用される)に見出され得る:Benner,米国特許第7544794号および同第8212020号;米国特許第5808045号;米国特許第8808988号;国際特許公開WO91/06678号;および以下に引用した参考文献。いくつかの実施形態では、切断剤(時折、脱ブロック試薬または脱ブロック剤とも呼ばれる)は、化学的切断剤(例えば、ジチオスレイトール(DTT)など)である。別の実施形態では、切断剤は、3’リン酸ブロック基を切断し得る酵素切断剤(例えば、ホスファターゼなど)であり得る。脱ブロック剤の選択が使用した3’-ヌクレオチドブロック基のタイプ、1つまたは複数のブロック基が使用されるかどうか、イニシエーターが生きている細胞もしくは生物または固体支持体などに結合されるかどうか(穏やかな処理に必要)に依存することが当業者に理解される。例えば、ホスフィン(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)など)を使用して3’O-アジドメチル基を切断することができ、パラジウム錯体を使用して3’O-アリル基を切断することができ、あるいは、亜硝酸ナトリウムを使用して3’O-アミノ基を切断することができる。特定の実施形態では、切断反応は、TCEP、パラジウム錯体、または亜硝酸ナトリウムを含む。
【0046】
上述の通り、いくつかの実施形態では、直交性の脱ブロック条件を使用して除去され得る2またはそれを超えるブロック基を使用することが望ましい。以下の例示的なブロック基の対を、並行合成実施形態(表1)で使用してよい。他のブロック基の対または2種より多くを含む基が、本発明のこれらの実施形態で用いることができる場合があると理解される。
【表1】
【0047】
生細胞に対するオリゴヌクレオチドを合成するには、穏やかな脱ブロック条件または脱保護条件(細胞膜を破壊せず、タンパク質を変性させず、重要な細胞機能に干渉しない条件など)が必要である。いくつかの実施形態では、脱保護条件は、細胞生存に適合する生理学的条件の範囲内にある。かかる実施形態では、酵素的脱保護は、生理学的条件下で実施され得るので望ましい。いくつかの実施形態では、特異的な酵素的に除去可能なブロック基は、その除去に特異的な酵素に関連する。例えば、エステルまたはアシルベースのブロック基は、アセチルエステラーゼなどのエステラーゼまたは類似の酵素を用いて除去され得、リン酸ブロック基は、T4ポリヌクレオチドキナーゼなどの3’ホスファターゼを用いて除去され得る。例として、3’-O-リン酸は、100mM Tris-HCl(pH6.5)、10mM MgC12、5mM 2-メルカプトエタノール、および1単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼの溶液での処理によって除去され得る。反応は、37℃で1分間進行する。
【0048】
「3’-リン酸ブロック」または「3’-リン酸保護」ヌクレオチドは、3’位のヒドロキシル基がリン酸含有部分の存在によってブロックされているヌクレオチドを指す。本発明の3’-リン酸ブロックヌクレオチドの例は、ヌクレオチジル-3’-リン酸モノエステル/ヌクレオチジル-2’,3’-環状ホスファート、ヌクレオチジル(nuclcotidyl)-2’-リン酸モノエステルおよびヌクレオチジル-2’または3’-アルキルリン酸ジエステル、ならびにヌクレオチジル-2’または3’-ピロホスファートである。置換がホスファターゼによって遊離3’-OHを生じる脱リン酸化を阻止しない場合、チオホスファートまたはかかる化合物の他のアナログも使用することができる。
【0049】
3’-O-エステル保護dNTPまたは3’-O-リン酸保護dNTPの合成および酵素的脱保護のさらなる例は、以下の参考文献に記載されている:Canard et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,92:10859-10863(1995);Canard et al,Gene,148:1-6(1994);Cameron et al,Biochemistry,16(23):5120-5126(1977);Rasolonjatovo et al,Nucleosides&Nucleotides,18(4&5):1021-1022(1999);Ferrero et al,Monatshefte fur Chemie,131:585-616(2000);Taunton-Rigby et al,J.Org.Chem.,38(5):977-985(1973);Uemura et al,Tetrahedron Lett.,30(29):3819-3820(1989);Becker et al,J.Biol.Chem.,242(5):936-950(1967);Tsien,国際特許公開WO1991/006678号。
【0050】
いくつかの実施形態では、改変ヌクレオチドは、プリン塩基またはピリミジン塩基および3’炭素原子が構造:
-O-Z
の基に結合しているように、除去可能な3’-OHブロック基が共有結合で付着したリボース糖部分またはデオキシリボース糖部分を含む改変されたヌクレオチドまたはヌクレオシド分子を含み、ここで、-Zは、-C(R’)2-O-R’’、-C(R’)2-N(R’’)2、-C(R’)2-N(H)R’’、-C(R’)2-S-R’’、および-C(R’)2-Fのうちのいずれかであり、各R’’は、除去可能な保護基であるかまたはその一部であり;各R’は、独立して、水素原子、アルキル、置換アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素環式、アシル、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、もしくはアミド基、または連結基を介して結合した検出可能な標識であり;但し、いくつかの実施形態では、かかる置換基は、10個までの炭素原子および/または5個までの酸素もしくは窒素ヘテロ原子を有し;あるいは、(R’)2は、式=C(R’’’)2の基を示し、ここで、各R’’’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子およびハロゲン原子ならびにアルキル基を含む群から選択され、但し、いくつかの実施形態では、各R’’’のアルキルは、1~3個の炭素原子を有し;分子が反応して中間体を生成してよく、各R’’はHと交換されるか、Zは-(R’)2-Fであり、FはOH、SH、またはNH2、好ましくはOHと交換され、水性条件下で中間体が解離して遊離3’-OHを有する分子が得られ;但し、Zが-C(R’)2-S-R’’である場合、両方のR’基がHというわけではない。ある特定の実施形態では、改変されたヌクレオチドまたはヌクレオシドのR’は、アルキルまたは置換アルキルであり、但し、かかるアルキルまたは置換アルキルは、1~10個の炭素原子および0~4個の酸素または窒素ヘテロ原子を有する。ある特定の実施形態では、改変されたヌクレオチドまたはヌクレオシドの-Zは、式-C(R’)2-N3である。ある特定の実施形態では、Zはアジドメチル基である。
【0051】
いくつかの実施形態では、Zは、分子量が200またはそれ未満のヘテロ原子を有するか有さない切断可能な有機部分である。他の実施形態では、Zは、分子量が100またはそれ未満のヘテロ原子を有するか有さない切断可能な有機部分である。他の実施形態では、Zは、分子量が50またはそれ未満のヘテロ原子を有するか有さない切断可能な有機部分である。いくつかの実施形態では、Zは、分子量が200またはそれ未満のヘテロ原子を有するか有さない酵素的に切断可能な有機部分である。他の実施形態では、Zは、分子量が100またはそれ未満のヘテロ原子を有するか有さない酵素的に切断可能な有機部分である。他の実施形態では、Zは、分子量が50またはそれ未満のヘテロ原子を有するか有さない酵素的に切断可能な有機部分である。他の実施形態では、Zは、分子量が200またはそれ未満の酵素的に切断可能なエステル基である。他の実施形態では、Zは、3’-ホスファターゼによって除去可能なリン酸基である。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える以下の3’-ホスファターゼを、製造者の推奨するプロトコールを用いて使用することができる:T4ポリヌクレオチドキナーゼ、仔牛腸アルカリホスファターゼ、組換えエビアルカリホスファターゼ(例えば、New England Biolabs,Beverly,MAから入手可能)。
【0052】
さらなる実施形態では、3’ブロックされたヌクレオチド三リン酸は、3’-O-アジドメチル基、3’-O-NH2基、または3’-O-アリル基のいずれかによってブロックされる。
【0053】
さらに他の実施形態では、本発明の3’-O-ブロック基には、3’-O-メチル、3’-O-(2-ニトロベンジル)、3’-O-アリル、3’-O-アミン、3’-O-アジドメチル、3’-O-tert-ブトキシエトキシ、3’-O-(2-シアノエチル)、および3’-O-プロパルギルが含まれる。
【0054】
いくつかの実施形態では、3’-O-保護基は、電気化学的に不安定な基である。すなわち、保護基の脱保護または切断を、切断されるように保護基付近の電気化学的状態を変化させることによって行う。物理量(補助種を活性化するための電圧差または光など)を変化させるか印加し、それにより、保護基の部位の電気化学的状態を変化させる(pHの上昇または低下など)ことによってかかる電気化学的状態の変化が生じ得る。いくつかの実施形態では、電気化学的に不安定な基には、例えば、pHが所定の値に変化したときはいつでも切断されるpH感受性保護基が含まれる。他の実施形態では、電気化学的に不安定な基には、例えば、保護基の部位の電圧差の増加または減少によって還元条件または酸化条件が変化したときはいつでも直接切断される保護基が含まれる。
【0055】
いくつかの実施形態では、酵素合成法は、3’-O-改変ヌクレオシド三リン酸に関する組み込み活性が増加するTdTバリアントを使用する。例えば、かかるTdTバリアントは、Champion et al,米国特許第10435676号(本明細書中で参考として援用される)に記載の技術を使用して産生され得る。いくつかの実施形態では、TdTバリアントであって、配列番号2と少なくとも60パーセント同一のアミノ酸配列を有し、207位の第1のアルギニンおよび325位の第2のアルギニン、またはその機能的に等価な残基が置換されているTdTバリアントを使用する。いくつかの実施形態では、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)バリアントであって、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60パーセント同一のアミノ酸配列を有し、配列番号2、3、4、6、7、9、12、および13に関する207位、配列番号5に関する206位、配列番号8および10に関する208位、配列番号11に関する205位、配列番号14に関する216位、および配列番号15に関する210位のアルギニン(「第1のアルギニン」);ならびに配列番号2、9、および13に関する325位、配列番号3および4に関する324位、配列番号320に関する320位、配列番号6および8に関する331位、配列番号11に関する323位、配列番号12および15に関する328位、ならびに配列番号14に関する338位のアルギニン(「第2のアルギニン」);またはその機能的に等価な残基が置換されており;ここで、前記TdTバリアントが、(i)テンプレートなしで核酸断片を合成することができ、(ii)3’-O-改変ヌクレオチドを核酸断片の遊離3’-ヒドロキシル上に組み込むことができる、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)バリアントを使用する。いくつかの実施形態では、上記同一性パーセント値は、示した配列番号と少なくとも80パーセント同一であり;いくつかの実施形態では、上記同一性パーセント値は、示した配列番号と少なくとも90パーセント同一であり;いくつかの実施形態では、上記同一性パーセント値は、示した配列番号と少なくとも95パーセント同一であり;いくつかの実施形態では、上記同一性パーセント値は、少なくとも97パーセント同一であり;いくつかの実施形態では、上記同一性パーセント値は、少なくとも98パーセント同一であり;いくつかの実施形態では、上記同一性パーセント値は、少なくとも99パーセント同一である。本明細書中で使用される場合、参照配列をバリアント配列と比較するために使用される同一性パーセント値は、バリアント配列の置換を含む明確に指定されたアミノ酸の位置を含まない;すなわち、同一性パーセントの関係は、参照タンパク質の配列と、バリアント中の置換を含む明確に指定された位置を除外したバリアントタンパク質の配列との間にある。したがって、例えば、参照配列およびバリアント配列の各々が100個のアミノ酸を含み、かつバリアント配列が25位および81位に変異を有する場合、相同率は、1~24位、26~80位、および82~100位の配列に関する。
【0056】
(ii)に関して、かかる3’-O-改変ヌクレオチドは、3’-O-NH2-ヌクレオシド三リン酸、3’-O-アジドメチル-ヌクレオシド三リン酸、3’-O-アリル-ヌクレオシド三リン酸、3’O-(2-ニトロベンジル)-ヌクレオシド三リン酸、または3’-O-プロパルギル-ヌクレオシド三リン酸を含み得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、上記のTdTバリアントは、表2に示すように、第1および第2のアルギニンに置換を有する。
【表2】
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明の方法と共に使用するためのさらなるTdTバリアントは、表1に示すように、メチオニン、システイン、またはグルタミン酸のさらなる置換のうちの1つまたは複数を含む。
【0059】
本発明の方法で使用され得るさらに特異的なTdTバリアントを、表3に示す。表2のTdTバリアントDS1001からDS1018の各々は、配列番号2と少なくとも60パーセント同一のアミノ酸配列を含み、示した位置に置換を含む。いくつかの実施形態では、DS1001からDS1018のTdTバリアントは、配列番号2と少なくとも80パーセント同一のアミノ酸配列を含み、示した位置に置換を含み;いくつかの実施形態では、DS1001からDS1018のTdTバリアントは、配列番号2と少なくとも90パーセント同一のアミノ酸配列を含み、示した位置に置換を含み;いくつかの実施形態では、DS1001からDS1018のTdTバリアントは、配列番号2と少なくとも95パーセント同一のアミノ酸配列を含み、示した位置に置換を含み;いくつかの実施形態では、DS1001からDS1018のTdTバリアントは、配列番号2と少なくとも97パーセント同一のアミノ酸配列を含み、示した位置に置換を含み;いくつかの実施形態では、DS1001からDS1018のTdTバリアントは、配列番号2と少なくとも98パーセント同一のアミノ酸配列を含み、示した位置に置換を含み;いくつかの実施形態では、DS1001からDS1018のTdTバリアントは、配列番号2と少なくとも99パーセント同一のアミノ酸配列を含み、示した位置に置換を含む。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0060】
上記の本発明のTdTバリアントは、各々、指定の配列番号と、示した置換の存在に応じた配列同一性パーセントを有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、配列の数および型は、この様式で記載の本発明のTdTバリアントの間で異なり、指定の配列番号は、置換、欠失、および/または挿入に起因し得、欠失、置換、および/または挿入されたアミノ酸は、任意のアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、かかる置換、欠失、および/または挿入は、天然に存在するアミノ酸のみを含む。いくつかの実施形態では、置換は、Grantham,Science,185:862-864(1974)に記載のように、保存的な(すなわち、同義の)アミノ酸の変化のみを含む。すなわち、同義アミノ酸セットのメンバー間のみでアミノ酸を置換することができる。いくつかの実施形態では、使用され得る同義アミノ酸のセットを、表4Aに示す。
【表4A】
いくつかの実施形態では、使用され得る同義アミノ酸のセットを、表4Bに記載する。
【表4B】
【0061】
生体分子上のオリゴヌクレオチドの合成
本発明にしたがってオリゴヌクレオチドが合成され得る生体分子には、ポリヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、グリカン、およびポリサッカリドなどが含まれるが、これらに限定されない。イニシエーターを結合することができる実質的に任意の生体分子または他の材料は、本発明の方法によって前記生体分子または他の材料上に合成されたオリゴヌクレオチドを有することができる。上述の通り、cDNAまたはゲノム断片などのポリヌクレオチドについて、種々の異なるイニシエーター結合スキームを利用可能であり、前記スキームには、イニシエーターと生体分子または表面との間に共有結合が得られるスキームならびにイニシエーターと生体分子または表面との間に非共有結合が得られるスキーム(イニシエーターと表面もしくは生体分子に結合した別の相補オリゴヌクレオチドとの間の二重鎖の形成、または捕捉部分とその相補部分との間(ビオチンとストレプトアビジンとの間など)の複合体の形成など)が含まれる。
【0062】
オリゴヌクレオチドがそれに対して合成されているポリヌクレオチドは、種々の方法で固体支持体から引き離され得る。捕捉オリゴヌクレオチドとハイブリッド形成したイニシエーターは、簡単に融解され得るか、捕捉オリゴヌクレオチドから脱ハイブリッド形成され得るか、二重鎖は、制限エンドヌクレアーゼまたはニッカーゼの認識部位を含むようにデザインされ得る。イニシエーターが表面に共有結合で付着される実施形態では、一本鎖を切断するためのいくつかの技術(例えば、イニシエーター中の所定の位置へのウラシルの挿入、Delort et al,Nucleic Acids Research,13:319-335(1985))が利用可能である。
【0063】
オリゴヌクレオチドイニシエーターは、以下の参考文献に記載の技術などの周知の技術を使用して、抗体などのタンパク質に結合され得る:Hermanson(上記で引用);Baskin et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,104(43):16793-16797(2007);Gong et al,Bioconjugate Chemistry,27:217-225(2016);Horisawa,Frontiers in Physiology,5:1-6(2014);Jewett et al,Chem.Soc.Rev.,39(4):1272-1279(2010);および米国特許第5665539号など。
【0064】
イニシエーターが結合されたら、イニシエーターを伸長するための酵素合成が行われ得る。いくつかの実施形態では、タンパク質を、合成前に固体支持体に可逆的に結合させる。ポリヌクレオチドと同様に、かかる結合は、共有結合または非共有結合であり得る。タンパク質が組換えタンパク質である場合、ポリ-ヒスチジンタグなどのペプチドタグまたは類似の方法によって結合し得る。いくつかの実施形態では、タンパク質は、固体支持体に結合した抗体への捕捉および結合によって固体支持体上に固定され得る。
【0065】
生体細胞上のオリゴヌクレオチドの合成
単一細胞の測定の価値は、本来ならばアンサンブル測定から検出不可能であり、多数の細胞由来の細胞パラメーターの平均のみが提供される稀な亜集団の評価において長きにわたって十分に理解されてきた(例えば、Di Carlo et al,Methods in Molecular Biology,853:1-9(2012))。結果として、例えば、Shapiro et al,Nature Reviews Genetics,14:618-630(2013)で概説されているハイスループット単一細胞解析のための一連のテクノロジーが開発されている。これらのテクノロジーの多くに共通するアプローチは、分析のために集団の細胞を小さな反応体積へと確率的に分布させることによる単一細胞含有リアクターの形成を含んでいる。かかる確率的方法では「バルク」混合物中で細胞を取り扱うことが可能であるが、前記方法は、最終的に小体積なる細胞の数を限定的に制御することのみが可能であり(例えば、Koster et al,LabChip,8:1110-1115(2008))、その結果、典型的には、出発集団中の細胞の濃度が高いほど、2またはそれを超える細胞を含むに至る小体積の数が多くなる。単一細胞解析の成功は、各反応体積中に1個の細胞のみを有することに依存するため、細胞重複の発生が回避されるように出発集団の非常に低い細胞濃度が選択される。不運なことに、これは、かかる確率的単離工程の下流で行われる解析に重大な非効率性が生じる。この問題は、細胞を保有する液滴を、バーコード付きビーズ(これらも液滴中に確率的に分布する)を保有する液滴と合体させることによって細胞特異的バーコードが細胞に送達される場合に悪化する。したがって、細胞上に固有のバーコードを直接合成する技術が利用できると、単一のビーズを単一細胞に送達させる必要性がなくなるであろう。
【0066】
本発明の方法は、広範な生体細胞(哺乳動物細胞、酵母細胞、細菌細胞、原生動物細胞、真菌細胞、および植物細胞などが含まれるが、これらに限定されない)に適用され得る。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、哺乳動物細胞に適用される。かかる哺乳動物細胞は、組織を含まない場合があり(例えば、白血球)、あるいは、かかる細胞は、脱凝集されている組織結合細胞であり得る。生細胞上でのオリゴヌクレオチドの合成中に、反応条件は、細胞を生きている状態に維持するように選択される。かかる条件(時折、本明細書中で「生物学的条件」または「生存可能条件」または「細胞生存可能条件」と呼ばれる)は、細胞膜全体の浸透圧の平衡を保つことが可能な生理的塩類溶液を含み、pH6.8~7.8の範囲のpH、および15℃~41℃の範囲の温度の反応混合物中に細胞を配置し、維持することを含む。いくつかの実施形態では、25℃~38℃の範囲の温度を使用する。生理的塩類溶液は、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、および/またはカリウムイオンを、水性溶媒中に0.8~1.0パーセント(w/v)の範囲の濃度で含み得る。例えば、0.9パーセント(w/v)の塩化ナトリウムを含む蒸留水は、一般的な生理的塩類溶液である。かかる生理学的条件は平均であり、本発明の特定の実施において、例えば、脱保護工程において細胞または生体分子に大きな悪影響を及ぼさずにかかる条件から少し逸脱し得ると理解される。同様に、上記の条件の範囲外の条件で生存可能であり得る生体細胞(例えば、好熱性生物)もあると理解される。
【0067】
細胞へのイニシエーターの結合。固有の細胞標識を生成するための第1の工程は、標的集団の細胞にイニシエーターを結合させることである。種々の従来技術(1またはそれを超える細胞表面マーカーに特異的な抗体へのイニシエーターの結合、細胞表面マーカーに特異的なアプタマーへのイニシエーターの取り込み、細胞表面タンパク質にイニシエーターを直接結合させるためのクリック化学技術の使用、標的細胞の膜に挿入する5’親油性テールを有するイニシエーターの生成が含まれるが、これらに限定されない)を使用してこれを行う。かかる標識技術の例は、以下の参考文献に記載されている:Weber et al,Biomacromolecules,15:4621-4626(2014);Borisenko et al,Nucleic Acids Research,37(4):e28(2009);Sano et al,Science,258:120-122(1992);Kazane et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,109(10):3731-3736(2012);Nikic et al,Nature Protocols,10:780-791(2015);Baskin et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,104(43):16793-16797(2007);Jewitt et al,Chem.Soc.Rev.,39(4):1272-1279(2010);Li et al,Chem.Sci.,8:2107(2017)。
【0068】
細胞の「分割および混合」バーコード付け。いくつかの実施形態では、本発明は、細胞(生細胞、固定された細胞、または固定および透過処理した細胞のいずれか)を固有にバーコード付けするための方法を提供する。例えば、生物学的効果(遺伝子発現の変化など)についての化合物の試験またはスクリーニングにおいて、細胞集団は、異なる作用物質または化合物に曝露されている。かかる細胞の試料は、生存中に、例えば、細胞表面分子の遺伝子発現の変化について試験され得るか、かかる細胞を固定および透過処理し、細胞のタンパク質およびmRNAの両方の発現の変化について試験され得る。いくつかの実施形態では、タンパク質発現は、本発明の酵素合成法を使用して伸長され得る個別のイニシエーターに各々が連結された1またはそれを超えるタンパク質特異的抗体を使用してモニタリングされ得る。いくつかの実施形態では、mRNA発現は、
図1B~1Cに記載のように伸長され得るcDNAを生成するためのmRNA特異的プライマーを使用してモニタリングされ得る。バーコードの合成後(試験前または試験後にかかわらず)、バーコードは、例えば、抗体によって運ばれるバーコードについて
図2Bに示すように増幅、単離、および配列決定することによって採取および表示され得る。かかる測定は、例えば、Nolan,米国特許出願公開第2016/0251697号に記載のバーコードサブユニットのハイブリッド形成に基づくより手間がかかるバーコード付けスキームに類似している。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、大きな細胞集団のうちの単一細胞上の複数のエピトープの分布を測定するために使用され得る。
【0069】
上記のビーズの場合の固有の細胞タグの付加に類似して、本発明は、また、
図1Fに示すように、平面表面上に配置された組織スライスにおける遺伝子発現の空間パターンの場合に固有の位置タグを結合させるために使用され得る。オリゴヌクレオチドの平面アレイ上の組織スライスの配置、組織のフィーチャ(細胞の境界など)の同定および画像化、組織の細胞の透過処理、平面アレイに結合したcDNAライブラリーを産生するための逆転写酵素反応の実施のための手順は、Stahl et al,Science,353:78-82(2016);およびFrisen et al,米国特許第9593365号および同第10030261号;ならびに類似の参考文献(本明細書中で参考として援用される)に開示されている。簡潔に述べれば、
図1Fを参照すると、密度が制御された5’末端で結合するオリゴヌクレオチド(180)で均一にコーティングされた平面アレイ(164)を提供し、ここで、前記オリゴヌクレオチド(拡大図(165)中に示す)は、その後にcDNAを増幅および操作するためのセグメント(166)(プライマー結合部位など)、増幅後でさえもcDNA分子の定量を容易にする分子タグ(時折、「固有の分子識別子」またはUMIと呼ばれる)を含む必要に応じたセグメント(167)、ならびに細胞から放出されたmRNAを捕捉可能なセグメント(168)(polyTセグメントなど)を含む。UMI(167)は、ランダムヌクレオチドセグメントを含み得る。オリゴヌクレオチド(180)は、従来技術を使用して大量に作製され、単一工程で平面アレイ(164)の表面に適用され得る。異なる種類のオリゴヌクレオチド(例えば、異なる位置タグを有するオリゴヌクレオチド)は必要ない。また、セグメント(167)は、配列決定などによる解析のためのcDNAを放出させるための切断可能なリンカーまたは切断可能なヌクレオチドを含み得る。アレイ(164)上に組織のスライスまたは薄層(181)(例えば、厚さ100~1000μm)を配置し、次いで、(i)目的のフィーチャ(細胞または組織片(sub-tissue)など)を同定し、かかる情報を平面アレイ(164)上の位置に記録および/または相関させるため、および(ii)mRNAが放出され、オリゴヌクレオチド(180)に拡散されて、オリゴヌクレオチドによって捕捉されるように、組織中の細胞が透過処理されるように処理する(169)。画像情報は、アレイ(164)の中のcDNA上で共通の位置タグが合成される該アレイにおける領域を定義するために使用される。処置は、組織特異的または生体分子特異的な化合物または色素を用いた染色を含み得る。位置タグにより、cDNAを大量に採取および配列決定されるが、依然としてその位置タグによって特定の領域に関連付けることが可能である。上記工程(i)および(ii)の後に、空間的cDNAライブラリーアレイを産生するためのテンプレートとして捕捉されたmRNA(170)を使用してcDNA(171)を合成するために逆転写酵素反応のための試薬を適用する。次いで、組織スライス(181)を除去してその表面に異なるcDNAのパターンが結合したアレイ(164)を残す。異なる位置にある異なるcDNAは、タグについての合成試薬のインクジェット送達によって複数の場所由来のcDNAの試料に位置タグを結合させることによって同定および定量され得、これは、cDNAパターン(175)上に合成場所(182)を重ね合わせることによって
図1Eに示される。いくつかの実施形態では、かかる複数とは、少なくとも100個の位置、または少なくとも1000個の位置、または少なくとも10,000個の位置であり得る;他の実施形態では、かかる複数とは、10~50,000個の範囲の位置;または10~10,000個の範囲の位置;または10~1000個の範囲の位置であり得る。インクジェット送達系のデザインおよび制御について指針は当業者に周知であり、米国特許出願公開第US2003/0170698号および米国特許第6306599号;同第6323043号;同第7276336号;同第7534561号;ならびに類似の参考文献に見出され得る。あるいは、電極アレイを使用することができ、ここで、合成工程(電気化学的感受性保護基(例えば、3’-O-アジドメチル)の脱保護など)をアレイ内の電極の電位を変更することによって行うことができる(例えば、Montgomery,米国特許第6093302号,同第6444111号,および同第6280595号;Gindilis,米国特許第9339782号;Maurer et al,米国特許第9267213号;Maurer et al,PLosOne,December 2006,issue 1,e34;Fomina et al,LabChip,16:2236-2244(2016);Kavusi et al,米国特許第9075041号;Johnson et al,米国特許第9874538号および同第9910008号;Gordon et al,米国特許第6251595号;およびLevine et al,IEEE J.Solid State Circuits,43:1859-1871(2008)など)。
【0070】
位置タグ(173)は、各々の目的の場所または領域を固有に同定するために(例えば、十分な長さで)選択される。さらなるセグメント(174)は、cDNA(171)の操作および配列決定を容易にするために付加され得る。いくつかの実施形態では、本発明のこの適用は、以下の工程を用いて実施され得る:(a)各々が捕捉セグメントを含む捕捉プローブの均一なコーティングを含むアレイを準備する工程;(b)組織試料をアレイと接触させ、組織試料の核酸を、前記核酸が捕捉されるように捕捉プローブの捕捉ドメインと相互作用させる工程;(c)組織試料の異なる領域を同定するために組織試料を処理する工程;(d)捕捉ドメインと相互作用する核酸から核酸分子を生成する工程;(e)核酸分子上に位置タグを酵素的に合成する工程;(f)捕捉ドメインと相互作用する核酸に関連する領域を決定する工程;および(e)決定された領域をcDNAと相関させる工程。いくつかの実施形態では、組織試料由来の核酸分子は、RNAである。他の実施形態では、組織試料由来の核酸分子は、ゲノムDNAであり得る。他の実施形態では、組織試料由来の核酸分子は、mRNAであり得る。
【0071】
同様に、
図1Gに示すように、組織試料中のタンパク質の空間分布は、polyA領域および抗体同定領域を含む放出可能なオリゴヌクレオチドバーコードを有する抗体(すなわち、抗体が特異性を示すタンパク質を同定する抗体バーコード)を使用して同定され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、以下の2つのタグを保有し得る;上記の抗体バーコードならびに、組織の光学的解析およびその後に抗体の位置と組織の構造または目的のタンパク質の分布との相関を補助する蛍光標識。上記のように、5’末端で結合するオリゴヌクレオチド(1180)で均一にコーティングされた平面アレイ(1164)を提供し、ここで、前記オリゴヌクレオチド(拡大図(1165)中に示す)は、必要に応じて、その後に抗体バーコードを増幅および操作するためのセグメント(1166)(プライマー結合部位など)、増幅後でさえも抗体分子の定量を容易にする分子タグ(時折、「固有の分子識別子」またはUMIと呼ばれる)を含む必要に応じたセグメント(1167)、ならびに結合した抗体から放出された抗体バーコード(1183)(配列番号18)を捕捉可能なセグメント(1168)(polyTセグメントなど)を含む。リンカー内の抗体バーコードと抗体との間の化学的に不安定な結合(ジスルフィド部分など)によって放出され得る。UMI(1167)は、ランダムヌクレオチドセグメントを含み得る。オリゴヌクレオチドはその後に本発明の方法を使用して合成されるので、異なる種類のオリゴヌクレオチド(例えば、異なる位置タグを有するオリゴヌクレオチド)は必要ない。また、セグメント(1164)は、配列決定などによる解析のための抗体バーコードを放出させるための切断可能なリンカーまたは切断可能なヌクレオチドを含み得る。アレイ(1164)上に組織のスライスまたは薄層(1181)(例えば、厚さ100~1000μm)を配置し、次いで、(i)目的のフィーチャ(細胞または組織片など)を同定し、かかる情報を平面アレイ(1164)上の場所に記録および/または相関させるため、および(ii)抗体が標的タンパク質に接近することができ、放出された抗体バーコードがオリゴヌクレオチド(1180)に拡散し、該オリゴヌクレオチドによって捕捉され得るように、組織中の細胞が透過処理されるように(to permeablized cells in the tissue)処理する(1169)。画像情報は、アレイ(1164)の中の抗体バーコード上で共通の位置タグが合成された該アレイにおける領域を定義するために使用される。上記のように、位置タグにより、抗体バーコードが大量に採取および配列決定されるが、依然としてその位置タグによって特定の領域に関連付けることが可能である。上記工程(i)および(ii)の後に、テンプレートとして捕捉された抗体バーコード(1170)を使用して、上記のmRNAと全く同じように抗体バーコードの相補物(1171)を合成するために逆転写酵素反応のための試薬を適用する。次いで、組織スライス(1181)を除去してその表面に異なるcDNAのパターンが結合したアレイ(1164)を残す。異なる位置にある異なるcDNAは、位置タグのための合成試薬のインクジェット送達によって規則的な場所由来の抗体バーコードの試料に位置タグを結合させることによって同定および定量され得る。cDNAと同様に、抗体バーコード上の位置タグ(1173)は、各々の目的の場所または領域を固有に同定するために(例えば、十分な長さで)選択される。
【0072】
同様に、
図1Hに示すように、組織スライスにおける遺伝子発現の空間パターンおよびタンパク質の分布は、オリゴヌクレオチドおよびDNAが標識された抗体と識別子(すなわち、抗体が特異性を示すタンパク質を同定する抗体特異的DNA配列)との組み合わせを含む平面アレイを使用して同定され得る。簡潔に述べれば、
図1Hを参照すると、5’末端で結合するオリゴヌクレオチド(3180)で均一にコーティングされ、抗体(3191)の1またはそれを超えるアミノ酸に結合し得るDNA標識(3190)を含む抗体(3191)で均一にコーティングされた平面アレイ(3164)を提供する。平面アレイ(3164)上の各種類のオリゴヌクレオチド(3180)および抗体(3191)の密度は、オリゴヌクレオチドの密度が予め決定され、各種類の抗体(すなわち、異なる特異性を有する抗体)の密度が予め決定されるように制御される。上記のように、オリゴヌクレオチド(3180)(拡大図(3165)中に示す)は、その後にcDNAを増幅および操作するためのセグメント(3166)(プライマー結合部位など)、増幅後でさえもcDNA分子の定量を容易にする分子タグ(時折、「固有の分子識別子」またはUMIと呼ばれる)を含む必要に応じたセグメント(3167)、ならびに細胞から放出されたmRNAを捕捉可能なセグメント(3168)(polyTセグメントなど)を含む。UMI(3167)は、ランダムヌクレオチドセグメントを含み得る。抗体(3191)(拡大図(3165)中に示す)は、DNA標識(3190)(抗体の1またはそれを超えるアミノ酸に結合した)および抗体が特異性を示すタンパク質を同定する配列識別子を含むセグメント(3192)を含む。アレイ(3164)上に組織のスライスまたは薄層(3181)(例えば、厚さ100~1000μm)を配置し、次いで、(i)目的のフィーチャ(細胞または組織片など)を同定し、かかる情報を平面アレイ(3164)上の位置に記録および/または相関させるため、および(ii)mRNAおよびタンパク質が放出され、オリゴヌクレオチドおよび抗体(それぞれ、3180および3191)に拡散されて、これらによって捕捉されるように、組織中の細胞が透過処理されるように処理する(3169)。画像情報は、アレイ(3164)の中のcDNAまたは抗体DNA上で共通の位置タグが合成された該アレイにおける領域を定義するために使用され得る。処置は、組織特異的または生体分子特異的な化合物または色素を用いた染色を含み得る。位置タグにより、cDNAおよび抗体に結合したDNAが大量に採取および配列決定されるが、依然としてその位置タグによって組織の特定の領域に関連付けることが可能である。上記工程(i)および(ii)の後に、テンプレートとして捕捉されたmRNA(3170)を使用してcDNA(3171)を合成するために逆転写酵素反応のための試薬を適用する。捕捉サンドイッチ(サンドイッチELISAアッセイと同様)を形成するために、固定された抗体(3192)と同一の分子(3193)に結合する二次抗体(3197)をアレイに適用する。二次抗体(3197)は、1またはそれを超えるアミノ酸に結合したDNA標識(3194)、および抗体が特異性を示すタンパク質を同定する配列識別子を含むセグメント(3195)を含む。固定された抗体(3191)の識別子セグメント(3192)および二次抗体の識別子セグメント(3195)は、同一でも異なっていてもよいが、同一のタンパク質(3193)を認識する抗体対に会合して、これを認識する。さらに、ポリメラーゼ延長工程中にDNA抗体鎖(3196)を合成するために、固定された抗体のDNA標識(3190)および二次抗体のDNA標識(3194)の3’領域は相補的である。次いで、組織スライス(3181)を除去してその表面に異なるcDNAおよび抗体DNAのパターンが結合したアレイ(3164)を残す。異なる位置にある異なるcDNAおよび抗体DNAは、合成試薬のインクジェット送達によって規則的な場所由来のcDNAおよび抗体DNAの試料に位置タグ(3173)および操作セグメント(3174)を結合させることによって同定および定量され得る。
【0073】
図1Iは、特に関心のあるアレイ(164)の特定の表面領域(すなわち、小領域)に注目した解析のための実施形態を示す。
図1Fによって記載した手順にしたがった後に、初回の配列決定解析(4169)により、目的の特定の表面領域(4172)にはより高い空間的配列決定解像度が必要であることが明らかであり得る。同一のアレイを使用したが、オフセットピッチを有する合成試薬の2回目のインクジェット送達(4170)を使用して、最初の合成場所(4182)によってタグ化されないままの領域内にさらなる合成場所(4183)を生成する。このさらなるタグ化工程中に、最初の位置タグ(4173)と比較して、異なる位置タグ(4175)が合成される。DNAの操作および配列決定を容易にするために、さらなるセグメント(4174および4176)が付加され得る。興味深いことに、次の回の同一のアレイ上の合成試薬のインクジェット送達(4171)を、配列決定の空間的解像度を増大させることによって解析をさらに洗練させるために繰り返すことができる。さらに、この焦点解析法を、オリゴヌクレオチドアレイ(
図1F)またはオリゴヌクレオチドおよび抗体アレイ(
図1H)のいずれかまたは両方に十分に等しく適用することができる。
【0074】
図1F~1Iは固体表面に結合した捕捉オリゴヌクレオチドアレイを使用する必要があるが、本発明の方法は、目的の分析物(例えば、mRNAまたは抗体バーコード)を、アレイに結合した捕捉プローブに分散させて捕捉する必要がなく、組織上に直接合成することが可能である。いくつかの実施形態では、事前の透過処理を行うか行わずに、組織切片上に位置タグが直接合成され得る。例として、かかる実施形態は、以下の工程において実施され得る:(a)組織切片上に、結合条件下で、複数のタンパク質のうちの異なる1つに特異的に各々が結合することができる複数の抗体を配置する工程であって、各々の異なる抗体が放出可能に結合された抗体バーコードを有し、抗体バーコードが遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターを含む、配置する工程;(b)(i)遊離3’-O-ヒドロキシルを有する前記イニシエーターまたは延長断片を3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸およびテンプレート非依存性DNAポリメラーゼと接触させる工程であって、その結果、前記イニシエーターまたは延長断片が3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の組み込みによって延長されて、3’-Oブロック延長断片を形成する、接触させる工程、および(ii)前記延長断片を酵素的に脱ブロックする工程であって、遊離3’-ヒドロキシルを有する延長断片を形成する、脱ブロックする工程を、前記組織切片上の所定の位置で複数サイクル繰り返す工程であって、それにより、各異なる位置で放出可能に結合した抗体バーコード上に異なる位置タグを合成して、位置タグ-抗体バーコードコンジュゲートを形成する、繰り返す工程;(c)位置タグ-抗体バーコードコンジュゲートを放出させる工程;および(d)放出された位置タグ-抗体バーコードコンジュゲートを配列決定して、組織切片中の複数のタンパク質の空間分布を決定する、配列決定する工程。いくつかの実施形態では、細胞内タンパク質標識を露出させるか、細胞内mRNA上に位置タグを直接合成するために組織切片の細胞を透過処理する工程を含めてよい。
【0075】
図1F~1Iに記載の実施形態は、以下の工程によって実施され得る:(a)固体表面上に配置された組織スライスから生体分子を捕捉する工程であって、各生体分子が、捕捉された前記生体分子を同定し、かつ遊離3’-ヒドロキシルを有するオリゴヌクレオチドを含むか、含むように改変され得る、捕捉する工程;(b)テンプレートなしの酵素合成によって前記固体表面上の複数の異なる位置のオリゴヌクレオチドの遊離3’-ヒドロキシル上に位置タグを合成する工程;および(c)オリゴヌクレオチドを配列決定して、前記組織スライス中の生体分子の空間分布を決定する、配列決定する工程。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドを放出するさらなる工程を、例えば、上記で引用した参考文献に記載の従来の連結化学およびプロトコールを使用して実施する。いくつかの実施形態では、生体分子は、ポリヌクレオチド(mRNA、RNA、抗体バーコード、またはタンパク質など)である。生体分子は、固体表面に結合した相補オリゴヌクレオチドまたは固体表面に結合した抗体によって捕捉され得る。後者の場合、タンパク質生体分子の捕捉後に、抗体結合対(ELISAで使用されるものなど)が固体表面に適用され得る。いくつかの実施形態では、結合対の抗体のうちのいずれか1つまたは両方は、位置タグが合成され得るオリゴヌクレオチドバーコードを有し得る。
【0076】
図2A~2Dは、選択されたタンパク質(またはエピトープ)の発現が特異的な抗体結合化合物を使用して測定され、全ての遺伝子または選択された遺伝子のいずれかの発現が全てのmRNAまたは選択されたmRNAに特異的なプライマーを使用して測定される実施形態についての上記の概念を示す。両方のプローブのクラスにおいて、結合したオリゴヌクレオチド標識は、前記標識が特異的に結合する化合物を同定し、酵素合成のためのイニシエーターとしての機能も果たし得る。
図2Aは、「分割および混合」タグ合成の過程を実施するための実施形態を示す。生細胞の集団(200)を、抗体(したがって、さらにその標的タンパク質)を同定し、かつイニシエーターとしての機能も果たすオリゴヌクレオチド(202)で各々が標識された抗体セット(204)と組み合わせる。細胞(200)を、共通の容器(206)中で合わせ、次いで、マルチウェルアレイ(212)の4つのウェル210a~210dのうちの1つに分配し(通常は等量で)、このウェルにおいて1つの酵素延長サイクルを行う(例えば、210a中で1つのA伸長、210b中で1つのG伸長、210c中で1つのC伸長、および210d中で1つのT伸長)。付加したヌクレオチドの脱ブロック後、細胞(200)を採取し、共通の容器(206)中で再度合わせる。各ヌクレオチドの付加で伸長されたランダムヌクレオチドタグが生成され、その結果、n回の付加で4
n個のタグが生成される。操作および細胞へのダメージの可能性を最小にするために、集団(200)のサイズが既知の場合、サイクル数は、細胞が固有のタグを有する確率が高いことが保証されるが、細胞のダメージまたは喪失を最小にする数に制限され得る。例えば、集団(200)が10
6個の細胞からなる場合、10~11サイクルで1~4×10
6個の固有のタグが生成される。いくつかの実施形態では、各細胞が99パーセントまたはそれを超える確率で固有のオリゴヌクレオチドタグを保有することが保証されるようなサイクル数で実施する。いくつかの実施形態では、実質的に全ての細胞に固有のオリゴヌクレオチドタグが与えられるようなサイクル数を実施した時点で(218)、次いで、タグは、採取され、大規模配列決定によって解析され得る(さらに、例えば、各細胞中の各タンパク質および各遺伝子の発現を表示することができる)。
図2Bに示すように、抗体またはプライマーに結合した最初のオリゴヌクレオチドは、分子操作のための他のセグメントを含み得る。例えば、抗体(230)上のオリゴヌクレオチド(232)は、抗体(230)の特異性を同定するためのコードを含み得るセグメント(234)およびその後の操作(PCR増幅など)のためのさらなる配列を含み得る。また、オリゴヌクレオチド(232)は、最初のヌクレオチド付加サイクルのためのイニシエーターとしての機能を果たす遊離3’-ヒドロキシルを有するセグメント(236)を含む。結合したタグヌクレオチドに対する数回のサイクル後(238および239)、タグおよびタンパク質または遺伝子の同定配列を操作および解析できるように共通セグメント(235)(例えば、プライマー配列)を結合させるために、さらなるヌクレオチドが分割も混合も行わずに付加され得る。いくつかの実施形態では、結合したオリゴヌクレオチドを増幅してアンプリコン(233)を形成することによってこれを行うことができ、次いで、ハイスループットDNA配列決定によって解析され得る(231)。
【0077】
上記のとおり、細胞は、ヌクレオチドのランダム配列からなる代わりに、ホモポリマーセグメントのランダム配列からなる類似のランダムバーコードで標識され得、ここで、各ホモポリマーセグメントは、最近傍のホモポリマーセグメントのヌクレオチドと異なる種類のヌクレオチドを含む。かかるバーコード付けスキームの利点は、3’ブロックdNTPを使用する必要がなく;したがって、脱ブロック工程を必要とせず、それにより、合成過程がより簡潔になり、潜在的に細胞の生存度へのダメージが少なくなる。かかるバーコードで使用されるホモポリマーセグメントの長さは、大きく異なり得る。いくつかの実施形態では、反応時間を含む条件は、ホモポリマーセグメントの平均長が1~100ヌクレオチドの範囲となるように選択され;他の実施形態では、ホモポリマーセグメントの平均長は、1~25ヌクレオチドの範囲であり;さらに他の実施形態では、ホモポリマーセグメントの平均長は、1~10ヌクレオチドの範囲である。
【0078】
本発明と共に使用した結合化合物には、所定の細胞構成要素に特異的に結合し、同定オリゴヌクレオチドを生成するためにイニシエーターが結合され得る多種多様の組成物が含まれ得る。
図2Cおよび2Dは、生細胞(
図2C)および細胞内構成要素に接近するために固定および透過処理されている細胞(
図2D)と共に使用され得る異なるタイプの結合化合物の範囲を示す。通常は細胞外環境に露出した細胞抗原および/または構成要素のみが生細胞(240)中に接近可能である。したがって、いくつかの実施形態では、結合化合物は、上記のイニシエーターオリゴヌクレオチド(242)で標識された抗体結合化合物を含み、ここで、抗体は、所定の細胞表面タンパク質(例えば、243a、243b、243c)、または細胞表面膜(245)に挿入する膜特異的構成成分(248)(親油性部分など)およびイニシエーター(iinitiator)オリゴヌクレオチド(246)を含む膜プローブ(244)に特異的である。
図2Dに示すように、固定および透過処理された細胞(280)では、透過処理工程で作出された細孔(281)を介して、細胞内RNA(286)および細胞内タンパク質(284)に接近でき、これらに対するハイブリッド形成プローブを含む結合化合物(例えば、285)および抗体結合化合物(287)にそれぞれ標的にされ得る。いくつかの実施形態では、結合化合物は、ゲノムDNAのハイブリッド形成プローブを含み得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターオリゴヌクレオチドは、例えば、以下の参考文献に開示の従来技術を使用して親油性部分を有するイニシエーターオリゴヌクレオチドの5’末端を誘導することによって、標的細胞の細胞表面膜に安定に挿入される:Weber et al,Biomacromolecules,15:4621-4626(2014);Bunge et al,Langmuir,23(8):4455-4464(2007);Borjesson et al,J.Amer.Chem.Soc.,131(8):2831-2839(2009);Bunge et al,J.Phys.Chem.B,113(51):16425-16434(2009);および類似の参考文献。Weber(上記で引用)によって開示された技術が特に興味深く、この技術は、各々が親油性部分を有するように誘導されたオリゴヌクレオチドの相補対(そのオリゴヌクレオチド対の一方は5’末端上にあり(長い方のイニシエーターオリゴヌクレオチド)および他方はその3’末端上にある(短い方の支持体オリゴヌクレオチド))を必要とする。ハイブリッド形成された対は細胞膜内で非常に安定であり、合成中の喪失が最小になる。
【0080】
図3Aに示すように、いくつかの実施形態では、イニシエーターオリゴヌクレオチド(300)は、遊離3’ヒドロキシルおよび5’末端の親油性部分(304)を有するオリゴヌクレオチド(302)を含む。かかるイニシエーターは、伸長のために利用可能な遊離3’-ヒドロキシルを有する細胞表面膜の脂質二重層に安定に挿入することができる。イニシエーターオリゴヌクレオチド(300)は、イニシエーターオリゴヌクレオチド(300)が、その親油性部分によって細胞表面膜(312)に挿入すること(310)が可能な条件下(308)で、標的細胞(306)と組み合わせられ、その結果、前記オリゴヌクレオチドの遊離3’-ヒドロキシルが合成のために接近可能となる。次いで、細胞(314)は、本発明の方法によるイニシエーターの酵素伸長(310)に供され得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、
図3Bに示す「分割および混合」合成ストラテジーによって、イニシエーターの酵素伸長(310)を用いて、細胞(314)上に固有の細胞特異的バーコードを生成することができる。イニシエーターを有する細胞を容器(322)にプールし、その後にヌクレオチド付加の連続サイクルを実施する。容器(322)中の細胞は、4つの反応チャンバー(324a~324d)に分配され(323)、前記チャンバー中で、結合したイニシエーター(それぞれ、3’-OブロックdA、dG、dC、またはdT)の遊離3’-ヒドロキシルに付加され、その後にかかる付加したヌクレオチドを脱ブロックして次の付加サイクルの準備をする。いくつかの実施形態では、容器(322)の細胞は、反応チャンバー間で等しく分配される;しかしながら、別の実施形態では、容器(322)の細胞は、特定の位置でのヌクレオチドの出現を偏らせるために、反応容器(234a~324d)間で不均等に分配され得る。他の実施形態では、1回を超える付加サイクルを反応チャンバー(324a~324d)中で実施することができ、それにより、例えば、2またはそれを超えるヌクレオチドが付加され得る。固体構造(326)の反応チャンバー(324a~324d)も示すが、これらのチャンバーは個別の反応容器(個別の反応管など)を含み得る。いくつかの実施形態では、反応チャンバー(324a~324d)は、従来の24、48、96、384、または1536ウェルのマイクロウェルプレート中のウェルを含み得る。より大容量のマイクロウェルプレート(例えば、96ウェル)では、例えば、複数の試料のバーコード付けおよび解析を同時に行うために、複数の合成が並行して行われ得る。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドの付加および脱保護のサイクル後、チャンバー(324a~324d)中の細胞は、次のヌクレオチド付加工程で混合物の各細胞がA、C、G、またはTを等しい確率で付加されるように混合される(328)。かかる実施形態では、かかる「分割および混合」工程により、固有のランダム配列オリゴヌクレオチドが、細胞膜中に係留されたイニシエーター上に生成され得る。かかる「分割および混合」工程は、付加したランダム配列オリゴヌクレオチドが容器(322)中の集団の各細胞が固有の配列に会合されるのに十分な長さになるまで継続され得る(330)。いくつかの実施形態では、固有のバーコードが形成された後(332)、共通配列のさらなるヌクレオチドが分割および混合を行わずに合成され得る。かかる共通配列は、その後の解析のためにバーコードを操作または増幅させるためのプライマー結合部位などを含み得る。次いで、得られたバーコード付き細胞(336)は、
図3Cに示す単一細胞トランスクリプトーム解析などの用途で使用され得る。ビーズベースのバーコード付けを用いた大規模単一細胞トランスクリプトーム解析の指針は、以下の参考文献に開示されている:Kolodziejczyk et al,Molecular Cell,58:610-620(2015);Saliba et al,Nucleic Acids Research,42(14):8845-8860(2014);Church et al,米国特許出願公開第3013/0274117号;Macosko et al,Cell,161:1202-1214(2015);およびKlein et al,Cell,161:1187-1201(2015)など。一般に、前記技術は、(i)単一細胞を捕捉または単離する工程、(ii)単一細胞を溶解する工程、(iii)RNAを逆転写してcDNAを作製する工程、(iv)cDNAを増幅する工程、および(v)配列決定する工程を含む。かかる技術は、特に単一細胞および単一バーコードを保有するビーズを含む液滴を生成することによって、細胞特異的バーコードをcDNAに結合させる工程をさらに含み得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、固有のオリゴヌクレオチドタグは、ホモポリマーセグメントの配列を含むタグを結合させることによって生細胞において合成され得る。いくつかの実施形態では、本発明は、オリゴヌクレオチドバーコードを生細胞において合成する方法であって、(a)前記細胞の細胞表面分子に結合されているか、前記細胞の細胞表面膜中に係留されている遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターを準備する工程;(b)延長条件下で、遊離3’-O-ヒドロキシルを有する前記イニシエーターまたは延長断片をヌクレオシド三リン酸およびテンプレート非依存性DNAポリメラーゼと接触させる工程であって、その結果、前記イニシエーターまたは延長断片がホモポリマーセグメントによって延長されて、遊離3’-ヒドロキシルを有する延長断片を形成し、ここで、第1の工程後の各工程で付加したヌクレオシド三リン酸の種類が直前の工程における種類と異なる、接触させる工程の複数のサイクルを生物学的条件下で繰り返す工程を含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、各サイクルは、非組み込みヌクレオシド三リン酸を除去する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、延長条件は、平均長が1~100ヌクレオチドの範囲のホモポリマーセグメントを産生するための前記ヌクレオシド三リン酸の濃度、温度、および反応時間を含む。いくつかの実施形態では、ホモポリマーセグメントを含む固有のオリゴヌクレオチドタグは、分割および混合手順を使用して産生される。
【0083】
単一細胞の分析
本発明のいくつかの実施形態では、集団由来の細胞は、リアクター中に分配され、リアクターの各々は単一細胞を含む。当該分野で公知の種々の大規模単一細胞リアクタープラットフォームによってこれを行うことができる(例えば、Clarke et al,米国特許出願公開第2010/0255471号;Mathies et al,米国特許出願公開第2010/0285975号;Edd et al,米国特許出願公開第2010/0021984号;Colston et al,米国特許出願公開第2010/0173394号;Love et al,国際特許公開WO2009/145925号;Muraguchi et al,米国特許出願公開第2009/0181859号;Novak et al,Angew.Chem.Int.Ed.,50:390-395(2011);およびChen et al,Biomed Microdevices,11:1223-1231(2009)など(本明細書中で参考として援用される)。1つの態様では、PCA反応などの反応が起こるマイクロウェルアレイのウェル中に細胞を配置し;別の態様では、ミセルがリアクターとしての機能を果たす場合に、油中水型乳濁液のミセル中に細胞を配置する。マイクロフルイディクスデバイス(例えば、Mathies et al(上記で引用)またはEdd et al(上記で引用))によって生成されたミセルリアクターは、大量乳化過程よりも細胞に対して低い剪断および応力で均一なサイズのミセルが生成され得るので、特に興味深い。乳化(ミセル中でのPCRなどの増幅反応の実施が含まれる)のための組成物および技術は、以下の参考文献(参考として援用される)に見出される:Becher,“Emulsions:Theory and Practice,”(Oxford University Press,2001);Griffiths and Tawfik,米国特許第6,489,103号;Tawfik and Griffiths,Nature Biotechnology,16:652-656(1998);Nakano et al,J.Biotechnology,102:117-124(2003);Dressman et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,100:8817-8822(2003);Dressman et al,米国特許第8,048,627号;Berka et al,米国特許第7,842,457号および同第8,012,690号;Diehl et al,Nature Methods,3:551-559(2006);Williams et al,Nature Methods,3:545-550(2006);Zeng et al,Analytical Chemistry,82(8):3183-3190(2010);およびMicellula DNA Emulsion&Purification Kit instructions(EURx,Gdansk,Poland,2011)など。1つの実施形態では、均一な配列タグ(例えば、ビーズ)と反応混合物の混合物を、生体適合性油(例えば、軽鉱油、Sigma)の回転混合物中に滴下し、乳化させる。別の実施形態では、均一な配列タグおよび反応混合物を、生体適合性油の直交流に滴下する。使用した油は、1またはそれを超える生体適合性の乳濁液安定剤が補充され得る。これらの乳濁液安定剤には、Atlox4912、Span80、および他の認められた市販の適切な安定剤が含まれ得る。いくつかの実施形態では、乳濁液は、例えば、少なくとも94℃、少なくとも95℃、または少なくとも96℃まで熱安定性を示し、熱サイクリングが可能である。いくつかの実施形態では、サイズが約5ミクロンから約500ミクロンまでの範囲の液滴が形成される。いくつかの実施形態では、約10ミクロンから約350ミクロンまで、または約50から250ミクロンまで、または約100ミクロンから約200ミクロンまでの範囲の液滴が形成される。有利には、直交流の流体混合は、液滴形成の制御が可能であり、液滴のサイズを均一にすることが可能である。
【0084】
いくつかの実施形態では、かかるリアクター中で利用可能な試薬によって標的核酸および配列タグが同様に増幅されるように、体積分布が均一なミセルが産生される。すなわち、リアクターの体積(例えば、ミセル体積)にばらつきがあると、増幅に失敗し、そして/または増幅の程度が非常に変動し得る。かかる失敗および変動は、集団の個別の細胞中の標的核酸(例えば、遺伝子発現の相違)の定量的比較を妨げるか、その難度が上がる。1つの態様では、変動係数(CV)が30パーセントまたはそれ未満の体積分布のミセルが産生される。いくつかの実施形態では、ミセルの体積分布のCVは、20パーセントまたはそれ未満である。
【0085】
試料の細胞および均一な配列タグは、リアクターに配置する前に反応混合物中に懸濁され得る。1つの態様では、反応混合物はPCA反応混合物であり、少なくとも1対のインナー(または連結)プライマーおよび少なくとも1対のアウタープライマーを有するPCR反応混合物と実質的に同一である。反応混合物は、1またはそれを超える必要に応じた構成成分(熱安定性制限エンドヌクレアーゼ;1またはそれを超えるプロテイナーゼ阻害剤;単離された細胞の標的核酸の放出を用意にするための溶解剤(例えば、Brown et al,Interface,5:S131-S138(2008)など)が含まれるが、これらに限定されない)を含み得る。いくつかの実施形態では、細胞を溶解する工程は、増幅反応を実施する前に細胞を非イオン性界面活性剤(例えば、0.1%Tween(登録商標)X-100)の存在下にて95℃またはそれを超える温度で一定期間加熱することによって行われ得る。1つの実施形態では、かかる高温の期間は、10~20分間であり得る。あるいは、細胞を溶解する工程は、1回または複数回の加熱および冷却サイクル(例えば、非イオン性界面活性剤(例えば、0.1%TweenX-100)の存在下での96℃で15分間、その後の10℃で10分間)によって行われ得る。いくつかの実施形態では、以下により完全に記載するように、ミセルリアクターは、マイクロフルイディクスデバイス中で生成され、選別される。
【0086】
単一細胞のトランスクリプトーム解析
図3Cでは、いくつかの実施形態のために、バーコード付き細胞(340)は、液滴ベースのマイクロ流体デバイス(345)を使用してトランスクリプトーム解析のために調製され得、前記デバイスは、バーコード付き単一細胞を水性ミセルに封入し、細胞含有ミセルを、cDNAライブラリーを構築するための一連の試薬を含むミセルと合一する。あるいは、マイクロ流体法(Abate et al,国際特許公開WO2019/139650号に開示のものなど)を使用して、細胞含有ミセルを生成し、かかるミセルに試薬を送達させることができる。イニシエーター-バーコードコンジュゲート(344)が細胞表面膜に埋め込まれた細胞(340)は、pH、塩濃度、および細胞の完全性を維持するために必要な他の成分を有し得る水溶液(342)を含むチャンバー(343)に配置される。チャンバー(343)から、細胞(340)および水溶液(342)が通路(351)を通過してジャンクション(353)に至り、ここで油(350)が合流して水性ミセル(346)が形成され、そのいくつかは単一細胞を含む。かかる液滴ベースのマイクロフルイディクスデバイスは、周知の設計および技術を使用して構築され得る。例えば、以下の参考文献は、かかるマイクロ流体デバイスの設計および実施の指針を提供している:Zare et al,Ann.Rev.Biomed.Eng.,12:187-201(2010);Link,米国特許出願公開第2012/0309002号;Shapiro et al,Nature Reviews Genetics,14:618-630(2013);Kim et al,Anal.Chem.,90:1273-1279(2018);Abate et al,米国特許出願公開第2017/0009274号;Zagnoni et al,chapter 2,Methods in Cell Biology,102:25-48(2011);Zheng et al,Nature Comm.,8:14049(2016);およびLink et al,米国特許出願公開第2008/0014589号など。
【0087】
細胞含有ミセル(346)は、ジャンクション(352)で油流(354)中の試薬ミセル(348)と合一される。試薬ミセル(348)は、細胞表面膜を破壊して転写および増幅のためのmRNAを露出させるための溶解試薬を含む。かかる合一の結果としてミセル(356)が生じ、前記ミセルは通路(360)を流れる間にインキュベートされ、前記通路の長さは、ミセル(348)によって運搬される溶解試薬が、逆転写および増幅のために細胞を完全に溶解し、細胞ライセート(358)を産生するのに十分な通過時間を得られるように設計されている。溶解試薬は、以下の参考文献に記載されている:Tang et al,Nature Protocol,5(3):doi:10.1038/nprot.2009.236;Thronhill et al,Prenatal Diagnosis,21:490-497(2001);およびKim et al,Fertility and Sterility,92:814-818(2009)など。PCA反応と共に使用するための例示的な溶解条件は、以下の通りである:1)H2O中の細胞に対して96℃で15分間、その後に10℃で15分間;2)200mM KOH、50mMジチオスレイトール(dithiotheitol)、65℃まで10分間加熱;3)4μL プロテアーゼベースの溶解緩衝液について:1μLの17μM SDSを3μLの125μg/mLプロテイナーゼKと組み合わせ、その後に37℃で60分間、次いで、95℃で15分間(プロテイナーゼKを失活させるため)インキュベートする;4)10μLの界面活性剤ベースの溶解緩衝液について:2μL H2O、2μL 250ng/μL polyA、2μL 10mM EDTA、2μL 250mMジチオスレイトール、2μL 0.5%N-ラウリルサルコシン塩溶液。単一細胞解析プラットフォーム、インキュベーション時間、溶解緩衝液、ならびに/またはPCA反応の他の構成成分、その濃度、および反応体積などは、設計上、特定の適用において最適になるように当業者が選択する。1つの実施形態では、Kim et al,Anal.Chem.,90:1273-1279(2018)に開示のアルカリ溶解緩衝液が使用される。かかる緩衝液は、20mM NaOH、60%(v/v)PeG-200、および2%(v/v)TritonX-100を含み、RT-PCR試薬の緩衝能力によって中和され得る。
【0088】
溶解後、ミセル(358)中の細胞ライセートは、ジャンクション(368)で油流(364)由来の試薬ミセル(362)と合一される。試薬ミセルは、逆転写酵素およびPCR反応構成成分を含む。いくつかの実施形態では、かかる構成成分は、市販のRT-PCRキット(例えば、ThermoFisher Invitrogen SuperScript IV One-Step RT-PCRシステム)由来の成分を含み得る。いくつかの実施形態では、かかる構成成分は、テンプレート切り替え転写構成成分を含み得る(例えば、Trombetta et al,Curr.Protocol Mol.Biol.,107:4.22.1-4.22.17(2014))。合一後、逆転写酵素の変性ならびにその後のcDNAおよびバーコードのPCRが可能な温度制御デバイス(サーモサイクラーなど)中に液滴を回収する。逆転写反応の異なる実施形態を、
図4Aおよび4Bに示す。
図4Aでは、polyTプライマー(402)をmRNA(400)にアニールし、伸長させて(406)第1のDNA鎖(405)(配列番号17)を形成する。mRNAテンプレート(400)の除去後、遺伝子特異的プライマー(408)をアニールし、伸長させてcDNAを完成させる。プライマー(408)は、5’テール(410)を含むことができ、この5’テールは共通配列(その後の配列決定のための操作および調製のためのプライマー結合部位など)を含む。
図4Bでは、単一細胞cDNAライブラリーを産生するために使用され得るテンプレート切り替えスキームを示す(例えば、Zhu et al,Biotechniques,30(4):892-897(2001))。テンプレート(422)は、mRNA(420)にアニールされ、逆転写酵素(MMLVなど)を用いて伸長され(424)、それにより、RNAテンプレートの末端が到達した後に、選択されたヌクレオチド(426)が第1のcDNA鎖の3’末端にテンプレートなしで付加される。これにより、アダプター((428)がテンプレートなしの付加物にアニールされ、伸長されて(432)第2の鎖が産生され、cDNA(430)を完成させることが可能である。アダプター(428)の5’セグメントは、その後のハイスループット配列決定のための増幅および調製のための共通配列を含むように設計され得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、テンプレート切り替え逆転写後、ポリメラーゼサイクリングアセンブリ反応は、各ミセル内で行われる。ポリメラーゼサイクリングアセンブリ(PCA)反応は、1またはそれを超える回数のフラグメントアニーリングおよびポリメラーゼ伸長サイクルにおいて複数の核酸断片を共に融合して単一の融合産物を形成可能である(例えば、Xiong et al,FEBS Micro biol.Rev.,32:522-540(2008))。PCA反応には多くの形式がある。目的の1つの形式では、PCAは、共通の反応体積中で行われる複数のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に続き、ここで、PCRの各構成成分は、反応中に得られたアンプリコン由来の鎖を別のアンプリコン由来の鎖にアニールし、伸長して、融合産物または融合産物の前駆体を形成することが可能な少なくとも1つの連結プライマーを含む。種々の形式(および種々の別名の)のPCAは、断片のアセンブリおよび遺伝子合成のための周知の方法であり、そのうちのいくつかの形式が、以下の参考文献に開示されている:Yon et al,Nucleic Acids Research,17:4895(1989);Chen et al,J.Am.Chem.Soc.,116:8799-8800(1994);Stemmer et al,Gene,164:49-53(1995);Hoover et al,Nucleic Acids Research,30:c43(2002);Xiong et al,Biotechnology Advances,26:121-134(2008);およびXiong et al,FEBS Microbiol.Rev.,32:522-540(2008)など。
【0090】
図4Cは、各cDNAに同一の細胞特異的バーコードを結合させるためのPCAの使用を示す。「X」DNA(462)は、プライマー結合部位に挟まれた酵素合成されたバーコード配列であり得る。プライマー(470)および(471)は、バーコードおよびcDNA上の共通配列にそれぞれアニールし、これらのプライマーは、相補的5’テールを有する。
【0091】
複数の異なる標的核酸(cDNA(460)、g1、g2、...gnなど)は、同一のバーコード核酸であるX(462)に連結して(464)、複数の融合産物X-g1、X-g2、X-gK(566)を形成する。いくつかの実施形態では、かかる複数とは、2と10000との間であり;別の実施形態では、2と1000との間であり;別の実施形態では、2と100との間である。これらの実施形態のPCA反応では、多数のgiアンプリコン鎖とアニールするための適量のXアンプリコンが存在するように、インナープライマー(468)の濃度は、種々のgi核酸のインナープライマー(例えば、471)の濃度より高い場合がある。本発明の方法によれば、融合産物(466)は、合一したミセルの反応混合物から抽出され、配列決定され得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、細胞特異的バーコードを有するcDNAライブラリーを生成する方法は、(a)固有のオリゴヌクレオチドバーコードを集団の各細胞上に合成して、バーコード付き細胞集団を形成する、合成する工程;(b)各々がポリメラーゼサイクリングアセンブリ(PCA)反応混合物中に単一のバーコード付き細胞を含む複数のリアクター中にバーコード付き細胞を配置する工程であって、前記PCA反応混合物が、一対のアウタープライマーおよびバーコード付き細胞およびオリゴヌクレオチドバーコード中の複数の標的核酸に特異的な連結プライマーの1またはそれを超える対を含む、配置する工程;(c)リアクター中でPCA反応を行う工程であって、それによりリアクター中で標的核酸とオリゴヌクレオチドバーコードの融合産物が形成される、PCA反応を行う工程;および(d)リアクター由来の融合産物を配列決定して、集団中の各細胞の標的核酸を同定する、配列決定する工程を含み得る。
【0093】
単一細胞トランスクリプトーム解析の別の適用例を、
図5に示す。この実施形態では、細胞(バーコード無し)(502)は、polyTビーズ(これもバーコード無し)(504)と混合され、マイクロフルイディクスデバイス(508)のチャンバー(500)中の水性混合物に配置される。上記のとおり、マイクロフルイディクスデバイスに依存しないアプローチも適用され得る(例えば、Abate et al,国際特許公開WO2019/139650号)。水性混合物を、通路(506)を強制的に通過させて、ジャンクション(510)で油流(512)へと達し、その結果、水性液滴が形成され、水性液滴(516)のうちのいくつかは1個の細胞(517a)および1個のビーズ(517b)を含む。次いで、かかる液滴は、ジャンクション(520)で細胞溶解試薬を含む液滴(518)と合一して液滴(522)を形成し、前記液滴中で細胞が溶解されてpolyA RNAを放出し、このpolyA RNAがビーズ(517b)に結合したpolyTプライマーにアニールする。所望の細胞構成要素(mRNAなど)を放出するための適切なインキュベーション後、ライセート含有液滴は、ジャンクション(530)で、逆転写酵素試薬(逆転写酵素、適切な塩、および溶解反応によって課せられた状態(例えば、高pH)を中和するか変化させ得る緩衝液系など)を含む液滴(528)と合一される。得られた液滴(531)は回収され(532)、polyA RNAがビーズ(517b)上のpolyTプライマーにアニールし、polyTセグメントの逆転写酵素伸長のためのテンプレートとしての機能を果たすようにインキュベートして、ビーズ(517b)に共有結合で付着した単一細胞cDNAライブラリーが形成される。次いで、ビーズ(517b)は、液滴から回収され、合わせられ、「分割および混合」合成に供されて、固有のバーコードおよび上記のハイスループット配列決定のその後の操作(複製および調製など)のためのさらなる配列(プライマー結合部位など)が付加され得る。
【0094】
明らかに多数の他のマイクロフルイディクスデバイスの配置を使用して、単一細胞および所定の数の均一な配列タグ(例えば、1つの均一な配列タグ、2つの均一な配列タグ)を含むミセルを生成することができるか、ミセルの選択的合一またはエレクトロポレーションなどによってミセルに試薬を選択的に添加することができる(例えば、Zagoni et al,chapter 2,Methods of Cell Biology,102:25-48(2011);Brouzes,chapter 10,Methods of Cell Biology,102:105-139(2011);Wiklund et al,chapter 14,Methods of Cell Biology,102:177-196(2011);およびLe Gac et al,chapter 7,Methods of Molecular Biology,853:65-82(2012)など)。
【0095】
細胞または組織の固定および透過処理
いくつかの実施形態では、核酸ハイブリッド形成プローブを含む結合化合物および/またはタンパク質特異的結合化合物にカップリングしたイニシエーターは、細胞内標的(細胞内タンパク質、伝令RNA、および/またはゲノムDNAなど)を対象にし得る。いくつかの実施形態では、細胞は、かかる細胞内標的に特異的な結合化合物を適用するために、固定および透過処理される。細胞の固定および透過処理は、従来のプロトコール(フローサイトメトリーで使用されるプロトコールなど)によって実施され得る。典型的には、かかるプロコールは、細胞を固定剤で処理する工程、その後の細胞を透過処理剤で処理する工程を含む。固定工程は、典型的には、細胞構造および細胞下構造を保持し、抗体および/またはハイブリッド形成プローブの全ての細胞および細胞内区画への接近を妨害せずに細胞内細胞標的を固定する。広範な固定液が市販されており、試験される標的の性質ならびに使用される抗体および/またはハイブリッド形成プローブの性質に応じて、方法が正確に選択される。固定方法は、一般に、以下の2つのクラスに分類される:有機溶媒および架橋試薬。アルコールおよびアセトンなどの有機溶媒は、細胞の脂質を除去して脱水する一方で、細胞構造上にタンパク質が沈殿する。架橋試薬(パラホルムアルデヒドなど)は、通常は遊離アミノ基を介して分子間架橋を形成するため、連結された抗原のネットワークが作出される。架橋剤は、有機溶媒よりも細胞構造を保存するが、いくつかの細胞構成成分に対する抗原性を低下させる場合があり、抗体および/またはハイブリッド形成プローブを細胞内標的に接近させるための透過処理工程を追加する必要があり得る。例示的な固定および透過処理工程には、メタノール-アセトン固定(冷却メタノール中での-20℃で10分間の固定;冷却アセトンでの-20℃で1分間の透過処理);パラホルムアルデヒド-トリトン固定(3~4%パラホルムアルデヒド中での10~20分間の固定;リン酸緩衝食塩水(PBS)でのリンス;0.5%TritonX-100での2~10分間の透過処理);パラホルムアルデヒド-メタノール固定(3~4%パラホルムアルデヒド中での10~20分間の固定;PBSでのリンス;冷却メタノールでの-20℃で5~10分間の透過処理)が含まれるが、これらに限定されない。透過処理剤には、界面活性剤であるサポニン、TritonX-100、Tween-20、NP40が含まれるが、これらに限定されない。また、透過処理剤には、プロテイナーゼ(プロテイナーゼKなど)およびストレプトリシンOなどが含まれ得る。
【0096】
使用者指定の適用のための酵素的および化学的に合成されたキメラポリヌクレオチド
医学および生物学で使用される生成物は、あらゆる環境で使用され得る構成成分および特定の適用のために新たに提供されなければならない構成成分を含むことが多く、後者の構成成分は、時折、「使用者指定の」または「使用者が決定する」構成成分と呼ばれる。多数の核酸試薬は、この特徴を示す。特に、標識されたハイブリッド形成プローブの共通構成成分は、大量生産され、操作可能なアッセイを得るために特異的構成成分(例えば、目的の核酸標的にハイブリッド形成するプローブの標的特異的構成成分)を供給しなければならない使用者のためのキットとして提供され得る。上記の形式で提供される技術の例には、本発明の方法を使用した既存の化学合成オリゴヌクレオチドと酵素的に使用者指定のオリゴヌクレオチドとの組み合わせとして構築することができるTaqmanプローブ、CRISPRガイド配列、および各種PCRプローブなどが含まれるが、これらに限定されない。
図6は、taqmanプローブまたはtaqmanプローブの前駆体を含むかかるキメラ産物の簡潔な例である。5’末端が結合したイニシエーターオリゴヌクレオチド(604)を有する固体支持体(602)を含む産物(600)は、この構成成分があらゆる特異的プローブの設計で使用されるので、有機化学技術を使用して集中的に大量生産され得る。この実施形態では、イニシエーターオリゴヌクレオチドは、切断可能なヌクレオチド「X」(605)および「X」に対して遠位のヌクレオチド(標識(蛍光ドナーまたはクエンチャーなど)またはドナー標識もしくはアクセプター標識に結合するために使用され得る反応基(クリック化学対のメンバーなど)であり得る部分「R
1」(603)が含まれる)を含む。いくつかの実施形態では、R
1は、塩基(例えば、環外アミン)に結合する。産物(600)は、使用者が特に関心のある標的に特異的なtaqmanプローブを産生するための使用者用キットの構成成分であり得る。産物(600)のイニシエーターオリゴヌクレオチドの3’末端に、使用者は、配列特異的伸長物(608)を合成することができ、この伸長物は、R
1を用いて操作する相補的なドナーまたはクエンチャーであり得る部分「R
2」(607)を有するヌクレオチドを含み得るか、R
2は反応基(かかる標識の結合を容易にすることが可能なR
1のメンバーと直交性のクリック化学対のメンバーなど)であり得る。合成完了後、伸長されたオリゴヌクレオチドは、支持体(602)から切断されて(610)、taqmanプローブ(614)および破棄され得る使用済み支持体(612)を得ることができる。
【0097】
類似のキットは、以下のようにシングルガイドRNA(sgRNA)を準備するために調製され得る:i)イニシエーター配列が結合され、T7プロモーターが含まれるビーズ;ii)顧客はビーズ付きのキットを購入し、好ましい標的特異的配列+20~25ntの5’足場ドメインをイニシエーターの末端上に合成する;iii)合成が完了した時点で、(a)相補3’足場ドメインを、依然としてビーズに結合しているオリゴヌクレオチド上にアニールし、(b)プライマーを伸長させてdsDNAを生成し、(c)逆転写してsgRNA分子を生成する。
【0098】
キット
本発明は、本発明の方法を実施するためのキットを含む。いくつかの実施形態では、「キット」は、本発明の方法を実施するための材料または試薬を送達するための任意の送達系を指す。反応アッセイの文脈では、かかる送達系は、反応試薬(例えば、適切な容器中のプローブ、酵素など)および/または補助材料(例えば、緩衝液、アッセイ実施のための指示書など)のある場所から別の場所への貯蔵、輸送、または送達が可能な系を含む。例えば、キットは、関連する反応試薬および/または補助材料を含む1またはそれを超える包材(例えば、箱)を含む。かかる容器は、意図するレシピエントに一緒にまたは個別に送達され得る。例えば、第1の容器は、アッセイで用いる酵素を含み得る一方で、第2の容器はプローブを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、本発明のキットは、テンプレートなしのポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態では、テンプレートなしのポリメラーゼは、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)またはそのバリアントである。いくつかのかかるキットでは、テンプレートなしのポリメラーゼは、3’-Oブロックヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドまたはcDNAを伸長させるためのキット中のさらなる実施形態では、キットは、イニシエーターを有する固体支持体を含み得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、ランダムオリゴヌクレオチドバーコードを合成するための本発明のキットは、TdTまたはそのバリアント、3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸、バーコードの分割および混合合成のための伸長反応および脱ブロック反応を行うためのマイクロウェルのアレイを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、キットは、単一細胞をプロセシングし、この細胞に試薬を送達させるためのマイクロ流体デバイスを含み得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、キットは、cDNA上に固有のオリゴヌクレオチドバーコードを合成する方法を実施するためのオリゴヌクレオチドが結合した1またはそれを超える固体支持体を含み得る。いくつかの実施形態では、かかる1またはそれを超える固体支持体は、ビーズを含み;他の実施形態では、かかる1またはそれを超える固体支持体は、捕捉オリゴヌクレオチドで被覆された表面を有する平面支持体を含む。
【0103】
定義
本明細書中で別段の具体的な定義が無い限り、本明細書中で使用された核酸化学、生化学、遺伝学、および分子生物学の用語および記号は、当該分野の標準的な論文およびテキストに従う(例えば、Kornberg and Baker,DNA Replication,Second Edition(W.H.Freeman,New York,1992);Lehninger,Biochemistry,Second Edition(Worth Publishers,New York,1975);Strachan and Read,Human Molecular Genetics,Second Edition(Wiley-Liss,New York,1999))。
【0104】
「増幅する(amplify)」、「増幅する(amplifies)」、「増幅した(amplified)」、「増幅(amplification)」は、本明細書中で使用される場合、一般に、1またはそれを超えるコピーが標的ポリヌクレオチドまたはその一部から作製される任意の過程を指す。ポリヌクレオチド(例えば、DNAおよび/またはRNA)を増幅する種々の方法が利用可能であり、そのうちのいくつかの例を本明細中に記載している。増幅は、線形増幅、指数関数的増幅であり得るか、多相増幅過程において線形期および指数関数期の両方を含み得る。増幅方法は、温度変化(熱変性工程など)を含み得るか、熱変性を必要としない等温過程であり得る。「アンプリコン」は、ポリヌクレオチド増幅反応の産物;すなわち、一本鎖または二本鎖であり得、1またはそれを超える出発配列から複製されるポリヌクレオチドのクローン集団を意味する。「増幅(amplifying)」は、増幅反応の実施によるアンプリコンの産生を意味する。1またはそれを超える出発配列は、同一配列の1またはそれを超えるコピーであり得るか、異なる配列の混合物であり得る。好ましくは、アンプリコンは、単一の出発配列の増幅によって形成される。アンプリコンは、種々の増幅反応によって産生され得、前記反応の産物は1またはそれを超える出発核酸または標的核酸の複製物を含む。1つの態様では、アンプリコンを産生する増幅反応は、反応物の塩基対合において「テンプレート駆動」され、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのいずれかは、テンプレートポリヌクレオチド中に、反応産物の作出に必要な相補物を有する。1つの態様では、テンプレート駆動反応は、核酸ポリメラーゼを用いたプライマー伸長または核酸リガーゼを用いたオリゴヌクレオチドライゲーションである。かかる反応には、本明細書中で参考として援用される以下の参考文献に開示されたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リニアポリメラーゼ反応、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、およびローリングサークル増幅などが含まれるが、これらに限定されない:Mullis et al,米国特許第4,683,195号;同第4,965,188号;同第4,683,202号;同第4,800,159号(PCR);Gelfand et al,米国特許第5,210,015号(「taqman」プローブを用いたリアルタイムPCR);Wittwer et al,米国特許第6,174,670号;Kacian et al,米国特許第5,399,491号(「NASBA」);Lizardi,米国特許第5,854,033号;Aono et al,特開平4-262799(ローリングサークル増幅)など。1つの態様では、本発明のアンプリコンは、PCRによって生成される。増幅反応が進行するにつれ反応産物を測定可能な検出化学を利用可能な場合、増幅反応は「リアルタイム」増幅(例えば、下記の「リアルタイムPCR」またはLeone et al,Nucleic Acids Research,26:2150-2155(1998)および類似の参考文献に記載の「リアルタイムNASBA」)であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「増幅(amplifying)」は、増幅反応を行うことを意味する。「反応混合物」は、反応を実施するのに必要な全ての反応物(反応中にpHを選択したレベルに維持するための緩衝剤、塩類、補因子、および捕捉剤(scavenger)などが含まれ得るが、これらに限定されない)を含む溶液を意味する。
【0105】
「結合化合物」は、いくつかの実施形態では、非核酸リガンドに特異的に結合することができる、同定のためにオリゴヌクレオチドタグが結合され得る任意の分子を意味する。結合化合物には、抗体または抗体由来の化合物(例えば、Fab断片)が含まれるが、これらに限定されない。非核酸リガンドには、タンパク質が含まれるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、結合化合物は、固体支持体の表面に結合される(例えば、共有結合で付着する)。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドタグは、結合化合物に放出可能に結合される;すなわち、オリゴヌクレオチドタグは、所定の条件(例えば、光、高pH、低pH、特異的酸化還元条件、または特異的電位など)によって選択的に切断され得る結合を含む連結によって結合されている。
【0106】
2またはそれを超える異なるTdT中のアミノ酸の位置に関する「機能的に等価な」は、(i)それぞれの位置のアミノ酸がTdTの活性において機能的に同一の役割を果たすこと、および(ii)それぞれのTdTのアミノ酸配列中の相同なアミノ酸の位置にアミノ酸が存在することを意味する。配列アラインメントおよび/または分子モデリングに基づいて、2またはそれを超える異なるTdTのアミノ酸配列中の位置が等価であるか相同なアミノ酸残基を同定することが可能である。いくつかの実施形態では、機能的に等価なアミノ酸の位置は、進化的に関連する種(例えば、属または科など)のTdTのアミノ酸配列の間で保存された配列モチーフに属する。かかる保存された配列モチーフの例は、Motea et al,Biochim.Biophys.Acta.1804(5):1151-1166(2010);Delarue et al,EMBO J.,21:427-439(2002);および類似の参考文献に記載されている。
【0107】
本明細書中で互換的に使用される「マイクロフルイディクス」デバイスまたは「ナノフルイディクス」デバイスは、各々が、試料(ひいては、目的の細胞分析物または分子分析物を含有し得るか含み得る)、試薬、希釈剤(dilutant)、またはバッファーなどを含む少量の流体を捕捉、移動、混合、分注、または解析するための統合システムを意味する。一般に、「マイクロフルイディクス」および「ナノフルイディクス」という用語は、デバイスのサイズおよび取り扱われる流体の体積の規模が異なることを示す。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスのフィーチャは、断面寸法が数百平方マイクロメートル未満であり、細管寸法の(例えば、最大の断面寸法が約500μmから約0.1μmの)通路(すなわち、流路)を有する。いくつかの実施形態では、マイクロフルイディクスデバイスの容積容量は、1μLから数nL(例えば、10~100nL)の範囲である。ナノフルイディクスデバイスにおける対応するフィーチャ(すなわち、構造)の寸法は、典型的には、マイクロフルイディクスデバイスの寸法より1~3桁小さい。当業者は、特定の適用の環境から、どの次元が適切であるかを知るであろう。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスまたはナノ流体デバイスは、1またはそれを超えるチャンバー、ポート、および流路を有し、これらは相互接続および流体連通しており、1またはそれを超える分析反応または分析過程を、単独または支援機能を提供する器具または機器(試料の導入、流体および/または試薬の駆動手段(陽圧もしくは陰圧または音響エネルギーなど)、温度制御、検出システム、ならびにデータ収集および/または統合システムなど)と連携して行うように設計されている。いくつかの実施形態では、マイクロフルイディクスデバイスおよびナノフルイディクスデバイスは、弁、ポンプ、フィルター、および内壁上の特殊機能コーティング(例えば、試料の構成成分または反応物の吸着を防止し、電気浸透による試薬の移動を容易にするため)などをさらに含み得る。かかるデバイスは、ガラス、プラスチック、または他の固体ポリマー材料であり得、かつ特に光学的方法または電気化学的方法を介した試料および試薬の移動の検出およびモニタリングを容易にするための平面形式を有し得る固体基板中の統合デバイスとして作製され得る。いくつかの実施形態では、かかるデバイスは、使い捨て可能である。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスおよびナノ流体デバイスには、不混和流体(軽油など)中に浸漬した液滴(水性液滴など)を形成し、その移動、混合、分注、および解析を制御するデバイスが含まれる。マイクロフルイディクスデバイスおよびナノフルイディクスデバイスの作製および操作は、参考として援用される以下の参考文献によって例示されるように、当該分野で周知である:Ramsey,米国特許第6,001,229号;同第5,858,195号;同第6,010,607号;および同第6,033,546号;Soane et al,米国特許第5,126,022号および同第6,054,034号;Nelson et al,米国特許第6,613,525号;Maher et al,米国特許第6,399,952号;Ricco et al,国際特許公開WO02/24322号;Bjornson et al,国際特許公開WO99/19717号;Wilding et al,米国特許第5,587,128号;同第5,498,392号;Sia et al,Electrophoresis,24:3563-3576(2003);Unger et al,Science,288:113-116(2000);Enzelberger et al,米国特許第6,960,437号;Cao,“Nanostructures&Nanomaterials:Synthesis,Properties&Applications,”(Imperial College Press,London,2004);Haeberle et al,LabChip,7:1094-1110(2007);およびCheng et al,Biochip Technology(CRC Press,2001)など。
【0108】
互換的に使用される「変異体」または「バリアント」は、本明細書中に記載の天然または基準のTdTポリペプチドに由来し、かつ1またはそれを超える位置に改変または変更(すなわち、置換、挿入、および/または欠失)を含むポリペプチドを指す。バリアントを、当該分野で周知の種々の技術によって得ることができる。特に、野生型タンパク質をコードするDNA配列を変更するための技術の例には、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、配列者フリング、および合成オリゴヌクレオチド構築が含まれるが、これらに限定されない。変異誘発活性は、タンパク質の(本発明の場合、ポリメラーゼの)配列中の1つまたは数個のアミノ酸の欠失、挿入、または置換からなる。以下の用語法を用いて置換を命名する:L238Aは、基準(すなわち野生型)配列の238位のアミノ酸残基(ロイシン、L)がアラニン(A)に変更されていることを示す。A132V/I/Mは、親配列の132位のアミノ酸残基(アラニン、A)が以下のアミノ酸のうちの1つで置換されていることを示す:バリン(V)、イソロイシン(I)、またはメチオニン(M)。置換は、保存的置換または非保存的置換であり得る。保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、およびヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸、およびアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン、アスパラギン、およびトレオニン)、疎水性アミノ酸(メチオニン、ロイシン、イソロイシン、システイン、およびバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシン)、および小型のアミノ酸(グリシン、アラニン、およびセリン)のグループ内にある。
【0109】
「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、DNAの相補鎖の同時プライマー伸長による特異的DNA配列のin vitro増幅のための反応を意味する。換言すれば、PCRは、プライマー結合部位に挟まれた標的核酸の複数のコピーまたは複製物を作製するための反応であり、かかる反応は、以下の工程の1回またはそれを超える回数の反復を含む:(i)標的核酸を変性させる工程、(ii)プライマーをプライマー結合部位にアニーリングする工程、および(iii)ヌクレオシド三リン酸の存在下で核酸ポリメラーゼによってプライマーを伸長させる工程。通常は、反応は、サーマルサイクラー機器における各工程のために最適化された異なる温度でサイクルする。特定の温度、各工程の持続時間、および工程間の変化の速度は、例えば、以下の参考文献によって例示される当業者に周知の多数の要因に依存する:それぞれ、McPherson et al,editors,PCR:A Practical ApproachおよびPCR2:A Practical Approach(IRL Press,Oxford,1991 and 1995)。例えば、Taq DNAポリメラーゼを使用した従来のPCRでは、二本鎖標的核酸は、90℃を超える温度で変性され、プライマーは、50~75℃の範囲の温度でアニールされ、プライマーは、72~78℃の範囲の温度で伸長され得る。反応体積は、典型的には、数百ナノリットル(例えば、200nL)から数百μL(例えば、200μL)までの範囲である。
【0110】
「プライマー」は、ポリヌクレオチドテンプレートと二重鎖が形成されると、核酸合成の開始点として作用し、テンプレートに沿ってその3’末端から伸長し、その結果、伸長した二重鎖を形成することができる天然または合成のオリゴヌクレオチドを意味する。伸長過程中に付加されたヌクレオチド配列は、テンプレートポリヌクレオチドの配列によって決定される。通常は、プライマーは、DNAポリメラーゼによって伸長される。プライマーの長さは、通常は、14~36ヌクレオチドの範囲である。
【0111】
「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、互換的に使用され、各々は、ヌクレオチド単量体の線状ポリマーを意味する。ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドを作り上げる単量体は、規則的な単量体と単量体の相互作用パターン(ワトソン・クリックタイプの塩基対合など)によって天然のポリヌクレオチドに特異的に結合することができる。かかる単量体およびそのヌクレオシド間連結は、天然に存在し得るか、そのアナログ(例えば、天然に存在するアナログまたは天然に存在しないアナログ)であり得る。天然に存在しないアナログには、ホスホロチオアートヌクレオチド間連結、ロックド核酸、標識(フルオロフォアなど)を結合することが可能な連結基を含む塩基、またはハプテン、または他のオリゴヌクレオチドなどが含まれ得る。オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを使用するために酵素的プロセシング(ポリメラーゼによる伸長、またはリガーゼによるライゲーションなど)を必要とする場合はいつでも、当業者は、前記例では、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが任意の位置またはいくつかの位置にヌクレオチド間連結、糖部分(moities)、または塩基のある特定のアナログを含まないと理解するはずである。ポリヌクレオチドのサイズ範囲は、典型的には、数個の単量体単位(例えば、5~40個)(ポリヌクレオチドが、通常、「オリゴヌクレオチド」と呼ばれる場合)から、数千の単量体単位までである。ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが文字(大文字または小文字)の配列(「ATGCCTG」など)によって表される場合はいつでも、別段の指示が無い限り、または文脈から明白でない限り、ヌクレオチドが左から右に5’→3’の順序で並び、かつ「A」がデオキシアデノシンを示し、「C」がデオキシシチジンを示し、「G」がデオキシグアノシンを示し、「T」がチミジンを示し、「I」がデオキシイノシンを示し、「U」がウリジンを示すと理解される。他に断りのない限り、用語法および原子番号の慣習は、Strachan and Read,Human Molecular Genetics 2(Wiley-Liss,New York,1999)に開示のものに従う。通常、ポリヌクレオチドは、ホスホジエステル結合によって連結された4つの天然のヌクレオシド(例えば、DNAについては、デオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、またはRNAについてはこれらのリボース対応物)を含む;しかしながら、ポリヌクレオチドは、例えば、改変された塩基、糖、またはヌクレオチド間連結を含む非天然ヌクレオチドアナログも含み得る。当業者は、酵素が、活性のための特異的なオリゴヌクレオチド基質またはポリヌクレオチド基質の要件(例えば、一本鎖DNAまたはRNA/DNA二重鎖など)を有する場合を認識し、特に、Sambrook et al,Molecular Cloning,Second Edition(Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1989)などの専門書および同様の参考文献由来のガイダンスを用いて、適切な組成物を選択することができる。本明細書中で使用される場合、「ネイティブポリヌクレオチド」は、非天然のリン酸結合、糖、や塩基を持たないリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのポリマーを意味する。いくつかの実施形態では、ネイティブポリヌクレオチドは、保護基(環外アミン保護基など)、リンカー(標識を塩基に結合させる基が含まれる)、または標識、または捕捉部分などを有するポリヌクレオチドを除外する。いくつかの実施形態では、ネイティブポリヌクレオチドは、天然のポリヌクレオチド、保護基を持たない化学合成されたか酵素合成されたポリヌクレオチド、または支持体に結合しているか、標識、リンカー、または反応物が結合された前記ポリヌクレオチドのいずれかから抽出されたポリヌクレオチドであり得る。
【0112】
「配列同一性」は、2つの配列(2つのポリペプチド配列または2つのポリヌクレオチド配列など)の間の適合(例えば、同一のアミノ酸残基)の数(または分率、通常、百分率で表す)を指す。配列同一性は、配列ギャップを最小にしながら重複および同一性が最大になるようにアラインメントしたときの配列の比較によって決定される。特に、配列同一性は、2つの配列の長さに応じていくつかある数学的なグローバルまたは局所のアラインメントアルゴリズムのうちのいずれかを使用して決定され得る。類似の長さの配列は、全長にわたって配列を最適にアラインメントするグローバルアラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman and Wunschアルゴリズム;Needleman and Wunsch,1970)を使用してアラインメントすることが好ましく、一方で、実質的に異なる長さの配列は、局所アラインメントアルゴリズム(例えば、Smith and Watermanアルゴリズム(Smith and Waterman,1981)またはAltschulアルゴリズム(Altschul et al.,1997;Altschul et al.,2005))を使用してアラインメントすることが好ましい。アミノ酸配列の同一性パーセントを決定するためのアラインメントを、当該分野の技術の範囲内の種々の方法で(例えば、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/またはttp://www.ebi.ac.uk/Tools/emboss/などのインターネットウェブサイトで利用可能な公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して)行うことができる。当業者は、アラインメントを測定するのに適切なパラメーター(比較される配列の全長にわたって最大にアラインメントするために必要とされる任意のアルゴリズムが含まれる)を決定することができる。本明細書中の目的のために、アミノ酸配列の同一性パーセント値は、Needleman-Wunschアルゴリズムを使用して2つの配列の最適なグローバルアラインメントを作出するペアワイズ配列アラインメントプログラムEMBOSS Needleを使用して生成された値を指し、ここで全ての検索パラメーターは、デフォルト値(すなわち、スコアリング行列=BLOSUM62、ギャップオープン=10、ギャップ伸長=0.5、エンドキャップペナルティ=偽、エンドキャップオープン=10、およびエンドキャップ伸長=0.5)に設定されている。
【0113】
「配列タグ」(または「タグ」)または「バーコード」は、ポリヌクレオチドまたはテンプレート分子に結合され、反応または一連の反応においてポリヌクレオチドまたはテンプレートを同定および/または追跡するために使用されるオリゴヌクレオチドを意味する。配列タグは、ポリヌクレオチドまたはテンプレートの3’末端または5’末端に結合され得るか、かかるポリヌクレオチドまたはテンプレートの内部に挿入されて、線状コンジュゲート(時折、本明細書中で、「タグ化ポリヌクレオチド」、または「タグ化テンプレート」、または「タグ-ポリヌクレオチドコンジュゲート」、または「タグ-分子コンジュゲート」などと呼ばれる)を形成し得る。配列タグのサイズおよび組成は、大きく異なり得る;本明細書中で参考として援用される以下の参考文献は、特定の実施形態に適切な配列タグのセットを選択するための指針を提供している:Brenner,米国特許第5,635,400号;Brenner and Macevicz,米国特許第7,537,897号;Brenner et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,97:1665-1670(2000);Church et al,欧州特許第0303459号;Shoemaker et al,Nature Genetics,14:450-456(1996);Morris et al,欧州特許出願公開第0799897A1号;およびWallace,米国特許第5,981,179号など。配列タグの長さおよび組成を大きく変動させることができ、特定の長さおよび/または組成の選択は、いくつかの要因(例えば、ハイブリッド形成反応を介してまたは酵素反応(配列決定など)を介してリードアウトを生成するためのタグの使用方法;例えば、蛍光色素などで標識するかどうか;一連のポリヌクレオチドなどを明確に同定するために必要な識別可能オリゴヌクレオチドタグの数、および信頼できる同定(例えば、クロスハイブリッド形成または配列決定エラーに由来する誤認が存在しないこと)を確実にするためにセットのタグがどの程度異なる必要があるか、が含まれるが、これらに限定されない)に依存する。1つの態様では、各々の配列タグの長さは、それぞれ、2から36ヌクレオチドまで、または4から30ヌクレオチドまで、または8から20ヌクレオチドまで、または6から10ヌクレオチドまでの範囲内であり得る。1つの態様では、セットの各配列タグが、同一セットの他のあらゆるタグにおいて少なくとも2つの塩基が異なる固有のヌクレオチド配列を有する配列タグのセットが使用される;別の態様では、セットの各タグの配列が同一セットの他のあらゆるタグの配列と少なくとも3つの塩基が異なる配列タグのセットが使用される。
【0114】
「置換」は、あるアミノ酸残基が別のアミノ酸残基で置き換えられることを意味する。好ましくは、用語「置換」は、アミノ酸残基の、天然に存在する標準的な20種のアミノ酸残基、稀な天然に存在するアミノ酸残基(例えば、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、アロヒドロキシリジン、6-N-メチルリジン(6-N-methylysine)、N-エチルグリシン、N-メチルグリシン、N-エチルアスパラギン、アロ-イソロイシン、N-メチルイソロイシン、N-メチルバリン、ピログルタミン、アミノ酪酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン)、およびしばしば合成で作製される天然に存在しないアミノ酸残基(例えば、シクロヘキシル-アラニン)から選択される別のアミノ酸残基による置き換えを指す。好ましくは、用語「置換」は、あるアミノ酸残基の、天然に存在する標準的な20種のアミノ酸残基から選択される別のアミノ酸残基による置き換えを指す。記号「+」は、置換の組み合わせを示す。アミノ酸を、本明細書において以下の命名法に従ってその1文字表記または3文字表記によって示す:A:アラニン(Ala);C:システイン(Cys);D:アスパラギン酸(Asp);E:グルタミン酸(Glu);F:フェニルアラニン(Phe);G:グリシン(Gly);H:ヒスチジン(His);I:イソロイシン(Ile);K:リジン(Lys);L:ロイシン(Leu);M:メチオニン(Met);N:アスパラギン(Asn);P:プロリン(Pro);Q:グルタミン(Gln);R:アルギニン(Arg);S:セリン(Ser);T:トレオニン(Thr);V:バリン(Val);W:トリプトファン(Trp)、およびY:チロシン(Tyr)。本明細書では、以下の用語法を用いて置換を命名する:L238Aは、親配列の238位のアミノ酸残基(ロイシン、L)がアラニン(A)に変更されていることを示す。A132V/I/Mは、親配列の132位のアミノ酸残基(アラニン、A)が以下のアミノ酸のうちの1つによって置換されていることを示す:バリン(V)、イソロイシン(I)、またはメチオニン(M)。置換は、保存的置換または非保存的置換であり得る。保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、およびヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸、およびアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン、アスパラギン、およびトレオニン)、疎水性アミノ酸(メチオニン、ロイシン、イソロイシン、システイン、およびバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシン)、および小型のアミノ酸(グリシン、アラニン、およびセリン)のグループ内にある。
【0115】
「トランスクリプトーム」は、特定の細胞、細胞集合物、試料、または組織タイプで産生された全て(またはほぼ全て)の遺伝子転写物の集合物を意味する。いくつかの実施形態では、トランスクリプトーム(transcriptiome)は、細胞、細胞集合物、試料、または組織タイプの全てまたはほぼ全てのpolyA伝令RNA(mRNA)を含む。
【0116】
細胞、組織、または生物に関する「生存可能な」は、いくつかの実施形態では、細胞、組織、または生物が、成長、培養、またはさらに増殖することが可能であることを意味する。いくつかの実施形態では、生細胞は、生きており、有糸分裂または減数分裂することができ、結合したイニシエーターオリゴヌクレオチドの少なくとも1サイクルのテンプレートなしの酵素延長を受けた後にさらに成長することができる。用語「生細胞」は、生存可能な真核(eurkaryotic)細胞、原核細胞、またはウイルスが含まれ得る。いくつかの実施形態では、「生細胞」は、生存可能な真核細胞を意味する;他の実施形態では、「生細胞」は、生存可能な哺乳動物細胞を意味する。「生存可能条件」は、この用語が本明細書中で使用される場合、細胞の生存度に実質的な悪影響を及ぼさない生理化学反応条件(例えば、温度、塩濃度、および溶媒など)である。いくつかの実施形態では、さらなる反応混合物の構成成分(例えば、ビタミンまたはアミノ酸など)が特定の細胞型の生存に必要であると理解される;すなわち、本明細書中で使用される場合、「生存可能条件」は、細胞の生存に必要な条件を指すが、あらゆる細胞型の生存に十分な条件ではない。いくつかの実施形態では、生存可能条件は、0.8~1.0パーセント(w/v)の範囲の濃度の生理学的塩類(特に、ナトリウム、カルシウム、および/またはカリウム)を有する水性反応混合物、pH6.8~7.8の範囲のpH、および15~41℃の範囲の温度を含む。
【配列表】
【国際調査報告】