(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】アルカンの酸化的脱水素化および/またはアルケンの酸化
(51)【国際特許分類】
C07C 5/48 20060101AFI20220125BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20220125BHJP
C07C 53/08 20060101ALI20220125BHJP
C07C 51/215 20060101ALI20220125BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220125BHJP
【FI】
C07C5/48
C07C11/04
C07C53/08
C07C51/215
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021533207
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(85)【翻訳文提出日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019083960
(87)【国際公開番号】W WO2020074750
(87)【国際公開日】2020-04-16
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002105
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スコーネベーク,ロナルド・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ロッサム,フース
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC12
4H006AC46
4H006BA12
4H006BA14
4H006BA15
4H006BA30
4H006BC37
4H006BE30
4H006BS10
4H039CA21
4H039CA65
4H039CC10
4H039CC40
(57)【要約】
本発明は、2~6個の炭素原子を含有するアルカンの酸化的脱水素化のプロセス、および/または2~6個の炭素原子を含有するアルケンの酸化のプロセスであって、アルカンおよび/またはアルケンが、混合金属酸化物を含む触媒、ならびに二酸化炭素、一酸化炭素、および水蒸気からなる群から選択される1つ以上の希釈剤の存在下で酸素と接触し、アルカンおよび/またはアルケンの変換率が、少なくとも40%である、プロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2~6個の炭素原子を含有するアルカンの酸化的脱水素化のプロセス、および/または2~6個の炭素原子を含有するアルケンの酸化のプロセスであって、前記アルカンおよび/またはアルケンが、混合金属酸化物を含む触媒、ならびに二酸化炭素、一酸化炭素、および水蒸気からなる群から選択される1つ以上の希釈剤の存在下で酸素と接触し、前記アルカンおよび/またはアルケンの変換率が、少なくとも40%である、プロセス。
【請求項2】
前記アルカンおよび/またはアルケンの前記変換率が45%~70%である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記希釈剤が二酸化炭素を含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記希釈剤が、1~100体積%、好ましくは5~100体積%、より好ましくは40~100体積%、最も好ましくは60~100体積%の二酸化炭素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記アルカンがエタンまたはプロパンであり、前記アルケンがエチレンまたはプロピレンである、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記触媒が、モリブデン、バナジウム、ニオブ、および任意選択的にテルルを含有する混合金属酸化物触媒である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカンの酸化的脱水素化および/またはアルケンの酸化のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
2~6個の炭素原子を含有するアルカンなどのアルカンを酸化的に脱水素化すること、例えば、エタンまたはプロパンは、酸化的脱水素化(オキシ脱水素化、ODH)プロセスにおいて、それぞれ、エチレンおよびプロピレンをもたらすことが知られている。触媒および他のプロセス条件を含むアルカンのODHプロセスの例は、例えば、US7091377、WO2003/064035、US2004/0147393、WO2010/096909、およびUS2010/0256432に開示されている。金属としてモリブデン(Mo)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、および任意選択でテルル(Te)を含有する混合金属酸化物触媒を、そのようなオキシ脱水素化触媒として使用することができる。そのような触媒はまた、アルケンのカルボン酸への直接酸化、例えば、2~6個の炭素原子を含有するアルケン、例えば、それぞれ酢酸およびアクリル酸をもたらすエチレンまたはプロピレンの酸化にも使用され得る。
【0003】
US2016/0326070は、アルカンを、対応するアルケンにオキシ脱水素化するためのプロセスを開示し、プロセスは、少なくともアルカンおよび酸化剤としての酸素の供給物を反応器に提供することと、アルカンを、触媒の存在下で反応器内でのアルカンの酸素を用いるオキシ脱水素化による対応するアルケンを含む生成物流に変換することと、を含み、供給物は、酸化剤としてCO2を含む希釈剤をさらに含む。二酸化炭素(CO2)は、希釈剤であるだけでなく、以下の反応:CO2+エタン→CO+H2O+エチレンにおける反応物としても作用し得る。
【0004】
さらに、上記のUS2016/0326070は、リサイクルエタンと新鮮なエタンとの比が、1:1~4:1であるエタンリサイクルの操作を開示しており、「新鮮なエタン」とは、反応器への最初の注入時のエタンであり、「リサイクルエタン」とは、再注入される未変換エタンである。未変換エタンをリサイクルすることによって、全体的な変換率が改善される。これは、パスごとの変換率とは異なる。化合物「A」の「全体的な変換率」は、概して、(全体的に反応したAのモル)/(新鮮な供給物のモル)として定義され、「パスごとの変換率」は、(1回のパスで反応したAのモル)/(反応器に供給されたAのモル)として定義される。通常、特定の所望の選択性を保護するために、パスごとの変換率を低く保つには、リサイクル未変換反応物と新鮮な反応物の比較的高い比が必要である。
【0005】
アルカンの酸化的脱水素化および/またはアルケンの酸化のためのプロセスを提供し、反応器にリサイクルされる必要のある未変換アルカンおよび/またはアルケンが少なく、一方で好ましくは、同時に、比較的高いレベルで選択性を維持することを、本発明の目的とする。加えて、アルカンの酸化的脱水素化および/またはアルケンの酸化のためのプロセスを提供し、特定の変換率で比較的高い選択性が得られることを、本発明の目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7091377号明細書
【特許文献2】国際公開第2003/064035号
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0147393号明細書
【特許文献4】国際公開第2010/096909号
【特許文献5】米国特許出願公開第2010/0256432号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2016/0326070号明細書
【発明の概要】
【0007】
驚くべきことに、上記の目的のうちの1つ以上が、アルカンおよび/またはアルケンを、混合金属酸化物を含む触媒、ならびに二酸化炭素、一酸化炭素、および水蒸気からなる群から選択される1つ以上の希釈剤の存在下で酸素と接触させることによって達成され得、アルカンおよび/またはアルケンの変換率が、少なくとも40%であることが判明した。
【0008】
したがって、本発明は、2~6個の炭素原子を含有するアルカンの酸化的脱水素化のプロセス、および/または2~6個の炭素原子を含有するアルケンの酸化のプロセスであって、アルカンおよび/またはアルケンが、混合金属酸化物を含む触媒、ならびに二酸化炭素、一酸化炭素、および水蒸気からなる群から選択される1つ以上の希釈剤の存在下で酸素と接触し、アルカンおよび/またはアルケンの変換率が、少なくとも40%である、プロセスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のプロセス、および該プロセスにおいて使用される組成物または流れは、1つ以上の様々な記載された工程および成分を、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、または「含む(including)」という用語で記載されるが、それらはまた、該1つ以上の様々な記載された工程および成分「から本質的になる」または「からなる」こともできる。
【0010】
本発明の文脈において、組成物または流れが、2つ以上の成分を含む場合では、これらの成分は、100%を超えない全体量で選択されるべきである。
【0011】
本明細書内で、「実質的にない」とは、その成分の検出可能な量が組成物または流れ中に存在しないことを意味する。
【0012】
さらに、プロパティの上限と下限が引用される場合、上限のいずれかと下限のいずれかとの組み合わせによって定義される値の範囲も含まれる。
【0013】
さらに、本明細書内で、「新鮮なアルカン」とは、未変換アルカンを含まないアルカンを指す。本明細書の範囲内で、「未変換アルカン」とは、本発明のプロセスに初めて供されたが、変換されなかったアルカンを指す。「新鮮なアルケン」および「未変換アルケン」についても同様の定義が適用される。
【0014】
本アルカンの酸化的脱水素化および/またはアルケンの酸化のプロセスでは、2~6個の炭素原子を含有するアルカン(以下「アルカン」)および/または2~6個の炭素原子を含有するアルケン(以下「アルケン」)の酸化は、混合金属酸化物を含む触媒、ならびに二酸化炭素、一酸化炭素、および水蒸気からなる群から選択される1つ以上の希釈剤の存在下で酸素と接触する。
【0015】
さらに、本発明では、アルカンおよび/またはアルケンの変換率は、少なくとも40%である。該変換率とは、「パスごとの変換率」を指し、これは、(1回のパスで反応したアルカンおよび/またはアルケンのモル)/(反応器に供給されたアルカンおよび/またはアルケンのモル)として定義される。パスごとのそのような変換率は、1つ以上のパラメータを変更することによって制御され得る。そのようなパラメータとしては、温度、圧力、触媒の性質、触媒の量、および酸素の量が挙げられる。
【0016】
本発明では、アルカンおよび/またはアルケンのパスごとの変換率は、少なくとも40%になるように制御される。パスごとのそのような比較的高い変換率では、二酸化炭素、一酸化炭素、および水蒸気からなる群から選択される希釈剤の存在下で、所望の生成物(複数可)への選択性が依然として比較的高い可能性があるようである。したがって、有利なことには、そのような希釈剤が使用される本発明では、パスごとの変換率を増加させ得、それによって、リサイクルされる未反応アルカンおよび/またはアルケンの量を低減し、同時に、所望の生成物(複数可)に対して比較的高い選択性を達成し、それによって、少量の望ましくない生成物がもたらされ、したがって全体的なプロセスの効率が向上する。したがって、逆に、本発明では、特定の(すなわち同じ)変換率で比較的高い選択性を得ることができる。本発明では、エタンが新たに供給される反応物である場合、所望の生成物は、エチレンおよび酢酸を含み、一方、新たに供給される反応物としてエチレンである場合、所望の生成物は、酢酸を含む。
【0017】
好ましくは、本発明では、アルカンおよび/またはアルケンのパスごとの変換率は、少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、最も好ましくは少なくとも70%になるように制御される。さらに、好ましくは、該パスごとの変換率は、最大で99%、より好ましくは最大で95%、より好ましくは最大で90%、より好ましくは最大で85%、より好ましくは最大で80%、より好ましくは最大で75%、より好ましくは最大で70%、より好ましくは最大で65%、最も好ましくは最大で60%である。
【0018】
好ましくは、本発明では、2~6個の炭素原子を含有するアルカンは直鎖アルカンであり、その場合、該アルカンは、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、およびヘキサンからなる群から選択され得る。さらに、好ましくは、該アルカンは、2~4個の炭素原子を含有し、エタン、プロパン、およびブタンからなる群から選択される。より好ましくは、該アルカンは、エタンまたはプロパンである。最も好ましくは、該アルカンは、エタンである。アルカンが使用される場合、本発明は、アルカンの酸化的脱水素化プロセスと称される。
【0019】
さらに、好ましくは、本発明では、2~6個の炭素原子を含有するアルケンは、直鎖アルケンであり、その場合、該アルケンは、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、およびヘキセンからなる群から選択され得る。さらに、好ましくは、該アルケンは、2~4個の炭素原子を含有し、エチレン、プロピレン、およびブテンからなる群から選択される。より好ましくは、該アルケンは、エチレンまたはプロピレンである。アルケンが使用される場合、本発明は、アルケンの酸化プロセスと称される。
【0020】
該アルカンの酸化的脱水素化プロセスの生成物は、アルカンの脱水素化等価物、すなわち対応するアルケンを含み得る。例えば、エタンの場合、そのような生成物は、エチレンを含み得、プロパンの場合、そのような生成物は、プロピレンを含み得る、など。アルカンのそのような脱水素化等価物は、最初に、該アルカンの酸化的脱水素化プロセスにおいて形成される。しかしながら、該同じプロセスでは、該脱水素化等価物は、同じ条件下で1つ以上の不飽和二重炭素-炭素結合を含有し得るか、または含有し得ない対応するカルボン酸にさらに酸化され得る。上記の通り、2~6個の炭素原子を含有するアルカンは、エタンまたはプロパンであることが好ましい。エタンの場合、該アルカンの酸化的脱水素化プロセスの生成物は、エチレンおよび/または酢酸、好ましくはエチレンを含み得る。さらに、プロパンの場合、該アルカンの酸化的脱水素化プロセスの生成物は、プロピレンおよび/またはアクリル酸、好ましくはアクリル酸を含み得る。
【0021】
該アルケンの酸化プロセスの生成物は、アルケンの酸化等価物を含む。好ましくは、アルケンの該酸化等価物は、対応するカルボン酸である。該カルボン酸は、1つ以上の不飽和二重炭素-炭素結合を含有し得るか、または含有し得ない。上記の通り、2~6個の炭素原子を含有するアルケンは、エチレンまたはプロピレンであることが好ましい。エチレンの場合、該アルケンの酸化プロセスの生成物は、酢酸を含み得る。さらに、プロピレンの場合、該アルケンの酸化プロセスの生成物は、アクリル酸を含み得る。
【0022】
本発明では、アルカンおよび/またはアルケン、酸素(O2)、および1つ以上の希釈剤が、反応器に供給され得る。該成分は、共にまたは別々に反応器に供給され得る。すなわち、該成分のうちの1つ以上を含む、1つ以上の供給流、好適にはガス流が、反応器に供給され得る。例えば、酸素、アルカンおよび/またはアルケン、および希釈剤を含む1つの供給流が、反応器に供給され得る。あるいは、2つ以上の供給流、好適にはガス流が、反応器に供給され得、その供給流は、反応器内で組み合わされた流れを形成し得る。例えば、酸素を含む1つの供給流、アルカンおよび/またはアルケンを含む別の供給流、ならびに希釈剤を含むさらに別の供給流は、別々に反応器に供給され得る。本発明では、アルカンおよび/またはアルケン、酸素、および希釈剤は、気相において、反応器に好適に供給される。
【0023】
好ましくは、本発明では、すなわち、触媒の存在下でアルカンおよび/またはアルケンと酸素の接触中、温度は300~500℃である。より好ましくは、該温度は、310~450℃、より好ましくは、320~420℃、最も好ましくは、330~420℃である。
【0024】
その上さらに、本発明では、すなわち、触媒の存在下でアルカンおよび/またはアルケンと酸素の接触中、典型的な圧力は、0.1~30または0.1~20bara(すなわち、「絶対バール」)である。さらに、好ましくは、該圧力は、0.1~15bara、より好ましくは1~12bara、最も好ましくは2~12baraである。該圧力は、総圧力を指す。
【0025】
本発明では、希釈剤が使用される。希釈剤は、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、および水蒸気(H2O)からなる群から選択される1つ以上の希釈剤を含む。最も好ましくは、希釈剤は、二酸化炭素を含む。希釈剤は、二酸化炭素、および任意選択的に、メタン、窒素、一酸化炭素、および水蒸気、好ましくは水蒸気、および/または窒素からなる群から選択される1つ以上の希釈剤を含み得る。さらに、希釈剤は、一酸化炭素、および任意選択的に、二酸化炭素、メタン、窒素、および水蒸気、好ましくは水蒸気、および/または窒素からなる群から選択される1つ以上の希釈剤を含み得る。
【0026】
したがって、酸素、ならびにアルカンおよび/またはアルケンに加えて、希釈剤も、本プロセスに供給される。二酸化炭素が希釈剤として本プロセスに供給される場合、希ガス、窒素、水蒸気、およびメタン、好適には、窒素、およびメタンからなる群から選択される1つ以上の追加の希釈剤が、本プロセスに供給され得る。しかしながら、本プロセスにおいて、二酸化炭素がすでに本プロセスへの希釈剤として供給されている場合、追加の希釈剤を添加する必要はない。したがって、好適には、二酸化炭素が希釈剤として本プロセスに供給される場合、追加の希釈剤、特に水蒸気は本プロセスに供給されない。一部のメタンは、本プロセスへのC2-6アルカンの供給における不純物として本プロセスに供給され得る。さらに、一部の窒素は、本プロセスへの酸素の供給における不純物として本プロセスに供給され得る。リサイクル時に、これらのメタンおよび/または窒素不純物は、蓄積し得る。これらの場合、メタンおよび窒素は(追加の)希釈剤として機能する。好ましくは、二酸化炭素からなる希釈剤が本発明で使用される。
【0027】
概して、希釈剤に起因する本プロセスに対する全体的な供給流の割合は、5~90体積%、好ましくは25~75体積%の範囲内である。該割合は、少なくとも5体積%、または少なくとも10体積%、または少なくとも15体積%、または少なくとも20体積%、または少なくとも25体積%であり得、最大90体積%。または最大80体積%、または最大70体積%、または最大60体積%、または最大50体積%、または最大45体積%、または最大40体積%、または最大35体積%であり得る。
【0028】
好ましくは、等温操作反応器の場合、希釈剤に起因する本プロセスに対する全体的な供給流の割合は、5~90体積%、好ましくは25~75体積%、より好ましくは40~60体積%の範囲内である。さらに、好ましくは、断熱操作反応器の場合、希釈剤に起因する本プロセスに対する全体的な供給流の割合は、50~95体積%、好ましくは60~90体積%、より好ましくは70~85体積%の範囲内である。
【0029】
好ましくは、本プロセスに供給される希釈剤は、1~100体積%、より好ましくは5~100体積%、より好ましくは10~100体積%、より好ましくは20~100体積%、より好ましくは40~100体積%、より好ましくは60~100体積%、より好ましくは80~100体積%、より好ましくは90~100体積%、より好ましくは95~100体積%、最も好ましくは99~100体積%の二酸化炭素と、希ガス、窒素、水蒸気、およびメタンからなる群から選択される1つ以上の他の希釈剤からなる残余物とを含む。二酸化炭素以外の希釈剤は、互いに対して任意の所望の比で使用され得る。二酸化炭素以外の該追加の希釈剤のうちの1つ以上が、本プロセスに供給される場合、希釈剤中の二酸化炭素の割合の上限は、20体積%、好ましくは40体積%、より好ましくは60体積%、より好ましくは80体積%、より好ましくは90体積%、より好ましくは95体積%、最も好ましくは99体積%であり得る。
【0030】
本プロセスに供給される酸素は、酸化剤であり、それによって、アルカンの酸化的脱水素化(ODH)またはアルケンの酸化がもたらされる。該酸素は、例えば空気などの任意の供給源に由来し得る。酸素と、アルカンおよび/またはアルケンとのモル比の好適な範囲は、化学量論的モル比(エタンODH反応については0.5である)を下回る、化学量論的モル比で、化学量論的モル比を上回る比を包含し、好適には0.01~1.1、より好適には0.01~1、より好適には0.05~0.8、最も好適には0.05~0.7である。一実施形態では、酸素と、アルカンおよび/またはアルケンとのモル比は、0.05~0.5、より好適には0.05~0.47、最も好適には0.1~0.45である。さらに、別の実施形態では、酸素と、アルカンおよび/またはアルケンとのモル比は、0.5~1.1、より好適には0.53~1、最も好適には0.55~0.9である。酸素と、アルカンおよび/またはアルケンとの該比は、酸素、ならびにアルカンおよび/またはアルケンが触媒と接触する前の比である。言い換えれば、酸素と、アルカンおよび/またはアルケンとの該比は、供給される酸素と、供給されるアルカンおよび/またはアルケンとの比である。明らかに、触媒との接触後、酸素、ならびにアルカンおよび/またはアルケンの少なくとも一部は、消費される。さらに、酸素と、アルカンおよび/またはアルケンとの該比における、該「アルカンおよび/またはアルケン」は、新鮮なアルカンおよび/またはアルケン、ならびにリサイクル(未変換)アルカンおよび/またはアルケンの両方を含む。
【0031】
好ましくは、高純度または実質的に高純度の酸素(O2)が、本発明のプロセスにおいて酸化剤として使用される。本明細書内では、「高純度または実質的に高純度の酸素」とは、比較的少量の、例えば、窒素(N2)を含む、1つ以上の汚染物質を含有し得る酸素を指し、その後者の量は、最大1体積%、好適には最大7,000体積百万分率(ppmv)、より好適には最大5,000ppmv、より好適には最大3,000ppmv、より好適には最大1,000ppmv、より好適には最大500ppmv、より好適には最大300ppmv、より好適には最大200ppmv、より好適には最大100ppmv、より好適には最大50ppmv、より好適には最大30ppmv、最も好適には最大10ppmvであり得る。
【0032】
あるいは、しかしながら、本プロセスにおいて、酸化剤として空気または酸素富化空気を使用することも可能である。そのような空気または酸素富化空気は、窒素(N2)を、1体積%を超え、最大78体積%(空気)、好適には1~50体積%、より好適には1~30体積%、より好適には1~20体積%、より好適には1~10体積%、最も好適には1~5体積%の量で依然として含む。該窒素は(追加の)希釈剤として機能する。
【0033】
本プロセスでは、触媒は、混合金属酸化物を含む触媒である。好ましくは、触媒は、不均一触媒である。さらに、好ましくは、触媒は、金属として、モリブデン、バナジウム、ニオブ、および任意選択的にテルルを含有する混合金属酸化物触媒であり、この触媒は、以下の式を有し得る。
Mo1VaTebNbcOn
式中、
a、b、c、およびnは、モリブデン(Mo)のモル量に対する問題の元素のモル量の比率を表し、
a(Vに関する)は、0.01~1、好ましくは0.05~0.60、より好ましくは0.10~0.40、より好ましくは0.20~0.35、最も好ましくは0.25~0.30であり、
b(Teに関する)は、0または>0~1、好ましくは0.01~0.40、より好ましくは0.05~0.30、より好ましくは0.05~0.20、最も好ましくは0.09~0.15であり、
c(Nbに関する)は、>0~1、好ましくは0.01~0.40、より好ましくは0.05~0.30、より好ましくは0.10~0.25、最も好ましくは0.14~0.20であり、
n(Oに関する)は、酸素以外の元素の原子価および頻度によって決定される数である。
【0034】
本発明における触媒の量は、必須ではない。好ましくは、触媒的有効量の触媒、すなわち、反応を促進するのに十分な量が使用される。
【0035】
本プロセスで使用され得るODH反応器は、固定床および流動床反応器を含む任意の反応器であり得る。好適には、反応器は、固定床反応器である。
【0036】
触媒およびプロセス条件を含む、オキシ脱水素化プロセスの例は、例えば、上記のUS7091377、WO2003/064035、US2004/0147393、WO2010/096909、およびUS2010/0256432に開示されており、それらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
本プロセスから得られる生成物流の後処理は、任意の既知の方式で実施され得る。さらに、未変換アルカンおよび/またはアルケンは、本プロセスにリサイクルされ得る。好ましくは、希釈剤、特に二酸化炭素もリサイクルされる。そのような後処理およびリサイクルは、例えば、上記のUS2016/0326070に開示されている方法で実施され得、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、例えば、生成物流中のメタンおよび/または一酸化炭素の場合、そのようなメタンおよび/または一酸化炭素は、トップ流として脱メタン装置内で分離され得、次いで、希釈剤として使用するために本プロセスにリサイクルされ得る。
【0038】
本発明を、以下の実施例によってさらに例示する。
【実施例】
【0039】
(A)触媒の調製
モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、およびテルル(Te)を含有する混合金属酸化物触媒を、触媒の該4つの金属のモル比が、Mo1V0.29Nb0.17Te0.12として、以下の方式で調製した。
【0040】
2つの溶液を調製した。15.8重量部(pbw)のニオブ酸アンモニウムシュウ酸塩、および4pbwのシュウ酸二水和物を、160pbwの水に室温で溶解することによって、溶液1を得た。35.6pbwのヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物、6.9pbwのメタバナジン酸アンモニウム、および5.8pbwのテルル酸(Te(OH)6)を、200pbwの水に70℃で溶解することによって、溶液2を調製した。次いで、7pbwの濃硝酸を、溶液2に添加した。
【0041】
激しく撹拌しながら、溶液2を、溶液1に迅速に注ぐことによって、2つの溶液を組み合わせ、それによって、約45℃の温度を有するオレンジ色のゲル状の沈殿物(懸濁液)が得られた。次いで、この懸濁液を、約15分間熟成させた。次いで、懸濁液を、噴霧乾燥によって乾燥させて水を除去し、それによって、乾燥した微粉末(触媒前駆体)が得られた。
【0042】
沈殿および噴霧乾燥を、部分あたり1kgの乾燥材料を得る規模で部分的に実施した。該噴霧乾燥を、約180℃の空気温度を使用することによって実施し、約80℃の固体温度をもたらした。
【0043】
続いて、予備焼成を、乾燥触媒前駆体を空気と接触させた静的換気オーブン内で実施した。触媒前駆体の250g部分を、100℃/時の速度で室温から325℃まで加熱し、325℃で2時間維持し、次いで冷却した。
次いで、冷却された触媒前駆体を、オーブンから取り出し、レトルトオーブン内の窒素(N2)流でさらに焼成した。触媒前駆体を、100℃/時の速度で室温から600℃まで加熱し、600℃で2時間維持し、その後、触媒を室温に冷却した。この焼成工程における流れの流動は、150Nl/時であった。
【0044】
このようにして得られた80pbwの混合金属酸化物触媒を、17pwbの酸化セリウム(Alfa Aesar酸化セリウム(IV)、Reacton、99.9%、5ミクロン粉末)と乾式混合した。
【0045】
乾式混合後、0.6重量%のWalocel XCS47132、1重量%のSuperfloc A-1849RSの水中混合物、およびBindzil Cc301(30重量%のシラン化シリカ粒子の懸濁液)を、混合物が押し出し可能なペーストになるまでEirich混合器内で、固体混合物にゆっくりと添加した。添加されたBindzilの量は、乾燥焼成基準で、3重量%のSiO2含有量に対応する。
【0046】
混合および圧縮後、混合物を、三葉形の物体に押し出し、続いて、325℃の温度で2時間、静的空気中で最終焼成を行った。
【0047】
(B)エタンの接触酸化的脱水素化
このようにして調製された触媒を、19mmの内径を有する垂直に向けられた円筒状のステンレス鋼反応器を含むパイロットプラントユニット内でのエタンの酸化的脱水素化を伴う実験で使用した。1.96kgの触媒を、反応器に充填した。触媒床高さは、5.6mであった。
【0048】
実験では、エタン(C
2H
6)、酸素(O
2)、メタン(CH
4)、または二酸化炭素(CO
2)、および窒素(N
2)を含むガス流を、反応器の上部に5バールの圧力(上部で)で供給し、触媒床を通して反応器の下部に下向きに送った。該ガス流は、エタンの流動、酸素の流動、メタンまたは二酸化炭素の流動、および窒素の流動を含む組み合わされたガス流であった。該流動の流量を、以下の表1に示す。この組み合わされた入口ガス流中のO
2:エタンのモル比は、0.46:1であった。反応器のシェル空間に供給された溶融塩の入口温度を、反応器を通る供給ガスの流動と向流である流動パターンで変化させることによって、特定のエタン変換率に到達するように、反応器内の温度を変化させた。該塩入口温度(℃)は、以下の通りであった。実験1=329.4、実験2=337.1、実験3=341.3。
【表1】
【0049】
各実験において、1行目の流量は、Nl/時であり、「NI」は、標準の温度と圧力、すなわち、32°F(0℃)および1bara(100kPa)で測定される「通常のリットル」を表す。「総希釈剤」の流量は、CH4、CO2、およびN2の流量の合計である。
【0050】
1-各実験の2行目の流量の体積パーセントは、CH4、CO2、N2、C2H6、およびO2の全ての流量を含む全体的な供給流に基づく。
【0051】
2-各実験の3行目のCH4またはCO2の流量の体積パーセントは、「総希釈剤」の流量に基づく。
【0052】
エタンの変換率および生成物の組成を、熱伝導度検出器(TCD)を備えたガスクロマトグラフ(GC)、および水素炎イオン化検出器を備えた別のGCを用いて測定した。反応からの水および酢酸を、急冷ポットに閉じ込めた。以下の表2に、実験におけるエタンの変換率ならびにエチレンおよび酢酸への選択性を示す。
【表2】
【0053】
驚くべきことに、表2の結果から、実験2において、本発明によれば、二酸化炭素は、エタンの比較的高い高い変換率(すなわち、少なくとも40%)で希釈剤として使用され、有利なことには、エチレンに対する選択性は、(比較の)実施例1の選択性(84.5%)よりも実質的に高く(87.3%)、メタンが二酸化炭素の代わりに使用された場合、エタンの変換率は同様であった(実施1:51.9%、実験2:51.5%)。
【0054】
加えて、有利なことには、酢酸に対する選択性は、実験2において、(比較の)実験1の選択性(8.2%)よりも高かった(8.5%)。上で考察されたように、エタンが新たに供給される反応物である場合、所望の生成物は、エチレンおよび酢酸の両方を含む。エチレンおよび酢酸に対する総選択性は、実験2において、(比較の)実験1のわずか92.7%と比較して、有利なことに95.8%であった。
【0055】
また、実験3では、二酸化炭素も希釈剤として使用され、有利なことには、エタンの比較的高い変換率(55.2%)で、エチレンに対する選択性(86.2%)および酢酸に対する選択性(9.7%)の両方が比較的高かった。結果として、実験3では、エチレンおよび酢酸に対する総選択性も、比較的高かった(95.9%)。
【手続補正書】
【提出日】2020-03-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2~6個の炭素原子を含有するアルカンの酸化的脱水素化のプロセス、および/または2~6個の炭素原子を含有するアルケンの酸化のプロセスであって、前記アルカンおよび/またはアルケンが、混合金属酸化物を含む触媒、ならびに二酸化炭素、一酸化炭素、および水蒸気からなる群から選択される1つ以上の希釈剤
を含む希釈剤の存在下で酸素と接触し、前記アルカンおよび/またはアルケンの変換率が、少なくとも40%である、プロセス。
【請求項2】
前記アルカンおよび/またはアルケンの前記変換率が45%~70%である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記希釈剤が二酸化炭素を含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記希釈剤が、1~100体積%、好ましくは5~100体積%、より好ましくは40~100体積%、最も好ましくは60~100体積%の二酸化炭素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記アルカンがエタンまたはプロパンであり、前記アルケンがエチレンまたはプロピレンである、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記触媒が、モリブデン、バナジウム、ニオブ、および任意選択的にテルルを含有する混合金属酸化物触媒である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【国際調査報告】