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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】船舶の係留システム及び係留方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 21/00 20060101AFI20220125BHJP
   B66D 1/74 20060101ALI20220125BHJP
   B66D 1/50 20060101ALI20220125BHJP
   E02B 3/24 20060101ALI20220125BHJP
   B63B 21/04 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B63B21/00 E
B66D1/74 B
B66D1/50 D
E02B3/24
B63B21/04 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533220
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(85)【翻訳文提出日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 NL2019050823
(87)【国際公開番号】W WO2020122716
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】2022164
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519080919
【氏名又は名称】ショアテンション ホールディング ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン デア ブルク、ゲリット
(57)【要約】
係留ポストユニットには、係留ポストの上方にケーブル保持装置が設けられている。このケーブル保持装置は、第1のプーリホイールと、第2のプーリホイールと、ケーブルクランプとを有し、第1のプーリホイールの上方の船舶から第2のプーリホイールを介して前後に係留ケーブルをクランプに案内するように配置されている。流体圧フォースリミッタは、第2のプーリホイールと係留ポストとの間に連結されている。流体圧は、プーリホイールの軸により及ぼされる力の方向に膨張可能かつ圧縮可能である。流体圧リミッタは、力のピークが閾値を超えると、一時的に方法を与える。クランプは、一対のドラムを備え、その周囲に係留ケーブルが前後に進む。ドラムを同期して回転させることにより、係留ケーブルを引き入れ、応力を受けて繰り出しすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係留ポストと、前記係留ポストの上側にケーブル保持装置とを備える係留ポストユニットであって、前記ケーブル保持装置が、
係留ケーブルを、船舶から、第1のプーリホイールを超えて第2のプーリホイールを介して前後にクランプへ案内するように配置された、前記第1のプーリホイールと前記第2のプーリホイールとケーブルクランプと、
前記第2のプーリホイールと前記係留ポストとの間に接続された流体圧リミッタであって、前記流体圧リミッタに取り付けられた第2のプーリホイールの回転軸が、流体圧が膨張可能かつ圧縮可能な方向に横切り、張力が所定の閾値を超えた場合に、前記流体圧の膨張または圧縮中に、前記係留ケーブルにかかる張力の結果として、前記第2のプーリホイールにより及ぼされる力に応じて、前記流体圧リミッタからの反力を制限し始めるように構成されている前記流体圧リミッタと、を備える、係留ポストユニット。
【請求項2】
前記クランプが、ケーブルクランプ装置を備え、前記ケーブルクランプ装置が、
第1の回転軸を有する、回転可能な第1の摩擦ドラムと、
回転可能な第2の摩擦ドラムであって、回転可能な前記第1の摩擦ドラムから前記回転軸に対して横切るオフセット方向にオフセットし、回転可能な前記第2の摩擦ドラムは第2の回転軸を有し、前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸は前記オフセット方向の周りで互いに相対回転を有する、回転可能な前記第2の摩擦ドラムと、を備え、
回転可能な前記第1の摩擦ドラムおよび回転可能な前記第2の摩擦ドラムは、回転可能な前記第1の摩擦ドラムおよび回転可能な前記第2の摩擦ドラムの周りの連続する半円で交互に第1の摩擦ドラムおよび第2の摩擦ドラムの間を往復する係留ケーブル経路を画定し、
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸の前記相対回転の角度は、回転可能な前記第2の摩擦ドラムの両側で、前記オフセット方向に垂直な仮想平面と前記係留ケーブル経路との交点が、前記係留ケーブル経路のピッチにより前記第1の回転軸の方向に少なくともほぼオフセットするように設けられ、
前記第1の回転軸および前記第2の回転軸の周りをそれぞれ同期して、回転可能な前記第1の摩擦ドラムおよび前記第2の摩擦ドラムの回転を駆動するように、単一の、または複数のモータが配置された、請求項1に記載の係留ポストユニット。
【請求項3】
前記係留ケーブルの応力がスリップ力の閾値に達したときに、回転可能な前記第1の摩擦ドラムおよび前記第2の摩擦ドラムが回転して係留ケーブルを繰り出すことを可能にするか、または繰り出すように構成され、
前記スリップ力の閾値は、前記係留ケーブルの応力が前記流体圧リミッタに前記反力を制限し始めさせる圧縮力の閾値を超えるか、および/または、前記流体圧リミッタが少なくとも所定の長さにわたって移動したときである、請求項2に記載の係留ポストユニット。
【請求項4】
少なくとも前記第2の摩擦ドラムは、前記第2の摩擦ドラムの前記回転軸の周りに複数の円形状の溝を有し、前記円形状の溝は、前記第2の摩擦ドラムの前記係留ケーブル経路の連続する部分を画定し、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸の前記相対回転の角度は、回転可能な前記第2の摩擦ドラムの両側で、前記オフセット方向に垂直な仮想平面での各々の前記溝の断面が、回転可能な前記第1の摩擦ドラムの前記係留ケーブル経路のピッチにより前記第1の回転軸の方向に少なくともほぼオフセットするように設けられる、請求項2または請求項3に記載の係留ポストユニット。
【請求項5】
前記第1の摩擦ドラムは、前記第1の摩擦ドラムの前記回転軸の周りに複数の更なる円形状の溝を有し、前記更なる円形状の溝は、前記第1の摩擦ドラムの前記係留ケーブル経路の連続する部分を規定する、請求項2~4のいずれか一項に記載の係留ポストユニット。
【請求項6】
前記係留ポストにモータ駆動されるスプーリングドラムを備え、前記第1の摩擦ドラムから前記係留ケーブルを受け入れて供給するように構成される、請求項2~5のいずれか一項に記載の係留ポストユニット。
【請求項7】
係留ケーブルを含み、前記係留ケーブルは、前記第1の摩擦ドラムの前後の連続する前記溝を通して進む、請求項2~6のいずれか一項に記載の係留ポストユニット。
【請求項8】
前記溝は、少なくとも一部に円弧セグメントの形の断面を有し、前記係留ケーブルに応力がない場合には前記係留ケーブルの断面の半径よりも小さい半径を有し、前記係留ケーブルが応力を受けた場合には少なくとも前記係留ケーブルの断面の半径と同程度の大きさを有する、請求項7に記載の係留ケーブルクランプ装置。
【請求項9】
前記溝は、粗面を有する、請求項2~8のいずれか一項に記載の係留ケーブルクランプ装置。
【請求項10】
方向を示す指令信号の受信に応じて、前記モータを起動して前記第1の摩擦ドラム及び前記第2の摩擦ドラムを選択可能な方向に同期して回転させるように構成された制御回路を備える、請求項2~9のいずれか一項に記載の係留ケーブルクランプ装置。
【請求項11】
前記係留ケーブルがダイニーマから製造される、請求項2~10のいずれか一項に記載の係留ケーブルクランプ装置。
【請求項12】
前記係留ポストの上下方向として周回するように配置された回転可能な脚部を備え、前記第1のプーリホイールと、前記第2のプーリホイールと、前記ケーブルクランプと、前記流体圧リミッタとが前記脚部に取り付けられている、請求項1~11のいずれか一項に記載の係留ポストユニット。
【請求項13】
前記流体圧リミッタは、前記係留ポストに対して、それぞれ近位側および遠位側である、近位端および遠位端を有する流体圧縮力リミッタであり、前記第2のプーリホイールは前記遠位端に取り付けられ、前記第1のプーリホイールおよび前記ケーブルクランプは、前記近位端に隣接して取り付けられる、請求項1~12のいずれか一項に記載の係留ポストユニット。
【請求項14】
前記流体圧リミッタの膨張方向および圧縮方向が、係留ポストの上下方向である、請求項1~13のいずれか一項に記載の係留ポストユニット。
【請求項15】
前記流体圧リミッタは、流体圧シリンダと、前記流体圧シリンダ内のピストンと、前記ピストンに連結されるか、または前記ピストンと一体的な部材を形成するピストンロッドと、膨張リザーバと、前記膨張リザーバと前記流体圧シリンダとの間でそれぞれ流体を通過させるように連結される前記膨張リザーバおよび第1の一方向バルブおよび第2の一方向バルブとを備え、前記第1の一方向バルブは、前記第2の一方向バルブよりも高い開口圧力を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の係留ポストユニット。
【請求項16】
船舶を係留する方法であって、第1の摩擦ドラムおよび第2の摩擦ドラムの第1の回転軸および第2の回転軸に対して横切るオフセット方向に互いにオフセットして配置された回転可能な前記第1の摩擦ドラムおよび回転可能な前記第2の摩擦ドラムを備えるクランプ装置に前記船舶を接続すること、
回転可能な前記第1の摩擦ドラムおよび回転可能な前記第2の摩擦ドラムの周りの連続する半円で交互に前記第1の摩擦ドラムおよび前記第2の摩擦ドラムの間を往復する係留ケーブルを使用すること、を含み、
前記方法において、前記第1の摩擦ドラムおよび前記第2の摩擦ドラムは、それぞれ、前記船舶からの前記係留ケーブルの引き入れおよび/または繰り出しのために同期して回転される、方法。
【請求項17】
前記係留ケーブルは、流体圧リミッタを介して前記船舶と前記クランプ装置との間に接続されており、前記流体圧リミッタは、張力が所定の閾値を超えた場合に、前記係留ケーブルにかかる前記張力に応じて、前記流体圧リミッタからの反力を制限し始めるように構成されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の摩擦ドラム及び前記第2の摩擦ドラムは、前記係留ケーブルの応力がスリップ力の閾値を超えると、同期して回転させられるか、または同期して回転させられることを許容され、前記係留ケーブルの応力が降下した後に、前記係留ケーブルを引き戻すように同期して回転させるように前記第1の摩擦ドラム及び前記第2の摩擦ドラムを駆動することを含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
第1の回転軸を有する、回転可能な第1の摩擦ドラムと、
回転可能な第2の摩擦ドラムであって、回転可能な前記第1の摩擦ドラムから前記回転軸に対して横切るオフセット方向にオフセットし、回転可能な前記第2の摩擦ドラムは第2の回転軸を有し、前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸は前記オフセット方向の周りで互いに相対回転を有する、回転可能な前記第2の摩擦ドラムと、を備え、
回転可能な前記第1の摩擦ドラムおよび回転可能な前記第2の摩擦ドラムは、回転可能な前記第1の摩擦ドラムおよび回転可能な前記第2の摩擦ドラムの周りの連続する半円で交互に第1の摩擦ドラムおよび第2の摩擦ドラムの間を往復する係留ケーブル経路を画定し、
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸の前記相対回転の角度は、回転可能な前記第2の摩擦ドラムの両側で、前記オフセット方向に垂直な仮想平面と前記係留ケーブル経路との交点が、前記係留ケーブル経路のピッチにより前記第1の回転軸の方向に少なくともほぼオフセットするように設けられ、
前記第1の回転軸および前記第2の回転軸の周りをそれぞれ同期して、回転可能な前記第1の摩擦ドラムおよび前記第2の摩擦ドラムの回転を駆動するように、単一の、または複数のモータが配置された、ケーブルクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶を係留するための係留ポストに関し、同様に係留ケーブルクランプ装置及び係留の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願公開公報WO2010/110666号から、岸壁に沿って係留された船舶を保持するために使用できる流体圧ケーブル保持装置を使用することが知られている。本装置は、船舶による張力が閾値を超えた場合に係留ケーブルを繰り出し、力がなくなった時点で係留ケーブルを引き戻す。このケーブル保持装置は、動作中に外部電源を必要としないので、停電による故障に対して安全である。
【0003】
このような係留装置は、原則として、陸岸から離れた係留ポイントにおいても使用することができる。しかし、そのような場所では、通常、ほとんど空間が利用できず、ケーブル保持装置の調整を行うために水上を移動することを伴う。例えば、国際特許出願公開公報WO2010/110666号のケーブル保持装置では、流体圧を事前に設定する必要がある。手動による介入と電源の使用が必要になる場合がある。このような係留装置を、水中に隔離された状態で立つ係留ポストで使用することが望ましいが、このような係留ポストで利用可能な空間は最小限であり、アクセスが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
とりわけ、係留船舶の移動による力に対する制御可能な応答を与える係留ポストを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様によれば、請求項1に記載の係留ポストユニットが提供される。ここでは、流体圧リミッタを覆うように係留ケーブルを案内するためにプーリホイールが使用されている。流体圧リミッタは、流体圧リミッタにかかる力が閾値を超えると、作動を開始する。これにより係留ポストが与える限られた空間での係留船舶の移動による力に対する制御可能な応答を実現することができる。
【0006】
別の態様によれば、第1及び第2の摩擦ドラムの第1及び第2の回転軸に対して横切るオフセット方向に互いにオフセットして配置された第1及び第2の回転可能な摩擦ドラムを備え、第1及び第2の回転可能な摩擦ドラムの周囲に連続する半円で交互に第1及び第2の摩擦ドラムの間を往復する係留ケーブルを用いるクランプ装置を用いて、係留ケーブルは、船舶を係留ポストに接続する。この方法では、第1及び第2の摩擦ドラムは、それぞれ、船舶からの係留ケーブルを引き入れ及び/または繰り出しするために同期して回転される。このようなクランプ方法により、応力を受けて係留ケーブルを引き入れ、繰り出すことが可能となる。このようなクランプ装置及びクランプの方法及びその特徴の一部または全部は、係留ポスト以外の状況でも使用することができるが、その係留ポストでの使用は、使用される係留ケーブルの部分の長さを調整するのにほとんど空間を必要とせず、手動による介入も必要としないので、有利である。
【0007】
別の態様によれば、請求項8に記載の係留ケーブルクランプ装置が提供される。回転軸の異なる複数の摩擦ドラムに前後に巻き付けた係留ケーブルを用いることにより、摩耗の少ない応力で係留ケーブルを引き入れ、または繰り出すことができる。
【0008】
これにより、例えば炭素繊維の、ダイニーマのような繊維材料の係留ケーブルを使用することが可能になる。
【0009】
一実施形態によると、両方の摩擦ドラムの一方は、半円に沿って毎回係留ケーブルを通過させるための円形状の溝を有する。これにより、扱える力の量が増加する。一実施形態によると、前記溝は、少なくとも部分的に円弧セグメントを有する断面を有し、係留ケーブルに応力がない場合には、係留ケーブルの断面の半径より小さい円の半径を有する。少なくとも、係留ケーブルが応力を受けている場合には、係留ケーブルの断面の半径と同程度の大きさの半径を有する。これにより、処理できる力の量がさらに増加する。好ましくは、溝は、(例えば、摩擦ドラムの他の表面部分または摩擦ドラムの材料の自然粗さと比較して)粗面を有し、取り扱うことができる力を増加させる。
【0010】
ケーブルクランプ装置は、方向を示す指令信号の受信に応じて、選択可能な方向に第1および第2の摩擦ドラムを同期して回転させるようにモータを作動させるように構成された制御回路を有することが好ましい。制御回路は、プログラムされたコンピュータであってもよく、プログラムは、説明された動作を実行させる。制御回路は、通信装置、例えば、コマンドを受信する無線通信装置を備え、遠隔制御が可能となるようにしてもよい。係留ポストユニットにおいて、制御回路は、フォースリミッタの状態を検出し、係留ケーブルの引き入れを制御し、フォースリミッタの状態またはその状態の時間依存性の特徴に応じてクランプ装置によって繰り出すための単一の,または複数のセンサに連結されていてもよい。
【0011】
したがって、係留ポストユニットは、係留ポストの上方にケーブル保持装置を備えることができる。一実施形態によると、ケーブル保持装置は、第1のプーリホイールと、第2のプーリホイールと、ケーブルクランプとを有し、第1のプーリホイールを超えて第2のプーリホイールを介して前後に係留ケーブルを船舶からクランプに案内するように配置されている。流体圧フォースリミッタは、第2のプーリホイールと係留ポストとの間に連結されている。流体圧は、プーリホイールの軸により及ぼされる力の方向に膨張可能かつ圧縮可能である。流体圧リミッタは、力のピークが閾値を超えると、一時的に力を抜く。クランプは、一対のドラムを備え、その周囲に係留ケーブルが前後に進む。ドラムを同期して回転させることによって、係留ケーブルは、応力を受けて引き入れられるか繰り出される。
【0012】
一実施形態によると、係留ポストユニットは、係留ポストの垂直方向としての周りを回転するように配置された回転可能な脚部、第1のプーリホイール、第2のプーリホイール、ケーブルクランプ、および脚部に搭載された流体圧リミッタを備える。このようにして、ユニットは、係留ポストの周りの船舶の動きを処理することができる。
【0013】
一実施形態では、流体圧縮力リミッタは、係留ポストに対してそれぞれ近位端および遠位端を有し、遠位端に第2のプーリホイールが取り付けられ、第1のプーリホイールおよびケーブルクランプが近位端に隣接して取り付けられている。したがって、船舶からの力は、フォースリミッタの圧縮力に変換される。これにより、フォースリミッタに必要な内力が低減される。好ましくは、流体圧リミッタの膨張および圧縮の方向は、係留ポストの垂直方向である。これにより、係留ポストでの使用が容易になる。
【0014】
これらおよび他の物体および有利な態様は、以下の図を参照して、例示的な実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】係留ポストユニットを示す。
図2】流体回路を示す。
図3】クランプアセンブリを示す。
図4】(A)~(C)は、摩擦ドラム対ユニットの側面図を示す。
図5】摩擦ドラムの溝を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、上方にケーブル保持装置を含む係留ポスト10を備える係留ポストユニットを示す。係留ポスト10は、実質的に移動することなく、係留ケーブルから港湾または床へ力を伝達するための固定力の基部を提供する。係留ポスト10は、港の水中、港床に設置された水中、または、例えば海底上の開放水中に設置することができる。ケーブル保持装置は、脚部11と、可逆的な流体圧縮力リミッタである120、122と、頂部プーリホイール14と、底部プーリホイール16と、クランプ18とを備える。脚部11は、例えば係留ポスト10のフランジに接続され、係留ポスト10に取り付けられている。好ましくは、脚部11は、係留ポスト10に固定された部分と、固定された部分の上に回転可能な部分とを有し、垂直軸の周りに回転可能である。このことは、ケーブル保持装置に、船舶への係留ケーブルの接続方向に向かって底部プーリホイール16が位置合わせするように回転する(または回転させる)ことを可能にさせるという利点を有する。
【0017】
可逆的な流体圧縮力リミッタは、流体圧シリンダ120とピストンロッド122とを含む流体圧シリンダアセンブリを備える。流体圧シリンダ120、底部プーリホイール16及びクランプ18は、脚部11に取り付けられている。底部プーリホイール16及びクランプ18は、流体圧シリンダ120の底部の隣に配置されている。脚部11(該当する場合、脚部11の回転可能な部分)は、底部プーリホイール16のベアリングを形成する第1の平行なプレートセットを備える。好ましくは、図示のように、底部プーリホイール16及びクランプ18は、互いに流体圧シリンダ120の対向する側に配置されている。また、図示のように、流体圧シリンダ120は、係留ポスト10の中心軸の上方に位置することが好ましい。
【0018】
ピストンロッド122は、流体圧シリンダ120の中へ、および流体圧シリンダ120の頂部から伸びている。流体圧シリンダアセンブリは、流体圧シリンダ120内にピストン(図示せず)を含む。頂部プーリホイール14の回転軸はピストンロッド122の頂部に取り付けられており、ピストンロッド122の運動方向に対して横切る方向である。係留ケーブルの経路19は、破線で模式的に示されている。動作中、係留ケーブルは、船舶(図示せず)に接続され、船舶から船底およびプーリホイール16の一部の周りを進む。底部プーリホイール16から、係留ケーブルは、頂部プーリホイール14の一部にわたり延びる。頂部プーリ車輪14から、係留ケーブルは、クランプ18まで配索される。クランプ18は、船舶が係留ケーブルに引張力を加えたときに、係留ケーブルの一部がクランプ18の所定の位置にクランプされたままになることを確実にする。
【0019】
従って、係留ケーブルは、底部プーリ車輪16、頂部プーリ車輪14及びクランプ18に力を及ぼす。頂部プーリ車輪14及びクランプ18にかかる力は、実質的に垂直であり、底部プーリ車輪16により及ぼされる力は、係留ケーブルの一部によって船舶に加えられる横方向の力、及び係留ケーブルの一部から頂部プーリ車輪14にかけられる垂直方向の力を伝達するために垂直方向に傾いている。図1は、クランプ18を箱として象徴的に示している。以下では、クランプ18の有利な実施形態について説明するが、クランプ18は、原理的には、単に係留ケーブルの脚部11への接続であってもよい。
【0020】
流体圧シリンダアセンブリは、プーリホイール14により及ぼされる下向きの圧縮力に対応して、流体圧シリンダアセンブリからの反力を制限することによって、可逆的な流体圧縮力リミッタとして機能する。少なくとも、プーリホイール14によって及ぼされる下向きの力が閾値を超えるとき、流体圧シリンダアセンブリは更に圧縮に抵抗せず、下向きの力が閾値を下回ると、流体圧シリンダアセンブリは、少なくとも最大伸長に達するまで、頂部プーリホイール14を押し上げる。
【0021】
頂部プーリホイール14の下向きの動きは、少なくとも力が閾値に達すると、船舶へのより多くの係留ケーブル長が利用可能になるという効果を有する。係留ケーブルの場合、その力が係留ケーブルにかかる力は、風の荷重や、うねりによるもの等、係留船舶にかかる力によるものである。船舶への係留ケーブルの長さの増大に伴い、船舶は移動を許容され、係留ケーブルに働く力が降下するという効果がある。したがって、船は、係留ケーブルの力が閾値を超えることを避けるための必要に応じた量だけ動くことができる。係留船舶の力が降下すると、頂部プーリホイール14の上向きの動きは、係留ケーブルを引き戻す。
【0022】
図2は、流体圧シリンダアセンブリとしての120、122の一実施形態の流体回路を示す。ピストンロッド122は流体圧シリンダ120内に位置する。流体圧シリンダ120は、ピストン20と流体圧シリンダ120の底部との間を流体で満たされている。ピストン20およびピストンロッド122は、一体構造を形成してもよく、または、ピストン20およびピストンロッド122は、接合されて1つの構造として移動する別個の部材であってもよい。ピストン20およびピストンロッド122との両方が図に示されるような場合には、流体回路は、流体圧シリンダ120およびピストンロッド122とは別に、ガス(例えば、空気または窒素)が少なくとも部分的に充填された閉鎖されたリザーバ22を含む。実施形態(図示せず)では、閉鎖されたリザーバ22は、流体圧シリンダ120を取り囲み、閉鎖されたリザーバ22の内壁は、流体圧シリンダ120の外壁により形成され、閉鎖されたリザーバ22の外壁は、流体圧シリンダ120の外壁の周囲のさらなる円筒壁とにより形成される。
【0023】
流体は、ピストン20の下方の流体圧シリンダ120でリザーバ22の底部に存在する。さらに、流体回路は、リザーバ22と流体圧シリンダ120の底部との間の流体導管に、すなわちピストンロッド122が流体を圧縮するための流体圧シリンダ120の部分に、第1のバルブ24および第2の26を含む。
【0024】
第1のバルブ24は過圧バルブであり、流体圧シリンダ120の流体圧が第1の所定の閾値を超えてリザーバ22の圧力を超えると、流体圧シリンダ120からリザーバ22への流体圧液の流れを可能にするように構成されている。第2のバルブ24は一方向バルブであり、流体圧シリンダ120の流体圧力がリザーバ22の圧力よりも低下したとき(または、流体圧シリンダ120の流体圧力とリザーバ22の圧力との差が、第1の所定の閾値よりも低い第2の所定の閾値以下の差となったとき)に、リザーバ22から流体圧シリンダ120への流体の流れを可能にするように構成される。理解されるように、第1のバルブおよび第2のバルブは、流体圧シリンダの圧力が閾値の間の範囲にある場合にのみ閉じられる単一のバルブとして実施されてもよい。複数のバルブまたは単一のバルブは、流体圧シリンダの圧力を感知するための圧力センサ(図示せず)によって記録された圧力に基づいて、そのように制御されてもよい。電子制御または機械制御を使用することも可能である。センサおよび/または機械的制御装置は、バルブと一体化されてもよい。
【0025】
ピストンロッド122は、ピストン20を流体に押しつけるため、流体への圧力は、ピストンロッド122の厚さの影響を受けずに、流体圧シリンダの断面積で割ったピストンロッド122により及ぼされる力に等しい。流体の圧力が、第1の所定の閾値によって規定される圧力を超えると、流体回路は、ピストン20から圧力を与え、ピストンロッド122への力のさらなる増加なしに、ピストンロッド122を実質的に流体圧シリンダ内に下降させることを可能にするであろう。
【0026】
頂部プーリホイール14によって流体圧シリンダアッセンブリに作用する下向きの力は、係留ケーブルに作用する力の2倍である。船舶が係留ケーブルに及ぼす張力が閾値の半分を超えると、ピストン20は反力を増加させることなく流体圧シリンダ120内を下降し、その結果、ケーブル保持装置はケーブルを繰り出す。船からの引張力が落ちると、リザーバ22からの流体が流体圧シリンダ120に戻り、ピストン20を上方に押し上げ、ピストンがシリンダ内を上昇するときに係留ケーブルを引き戻す。
【0027】
図示された可逆的な流体圧縮力リミッタの実施例の代わりに、例えば、国際特許出願公開公報WO2018/048303号に記載されているものと同様の他の可逆的なフォースリミッタ構成を使用してもよいことに留意されたい。さらに、流体圧シリンダ120が上になり、ピストンロッド122が脚部11に連結され、頂部プーリホイール14が流体圧シリンダ120の頂部に位置するように、シリンダアセンブリを反転させることができることを理解すべきである。同様に、係留ケーブルの経路は、例えば、流体圧シリンダ120およびピストンロッド122が垂直である必要がないように、または複数の圧縮力リミッタを使用できるように、より複雑にされてもよい。
【0028】
別の実施形態では、例えば、ピストンロッドを押し込むのではなく、係留ケーブルに張力がかかってピストンロッド122を引き出すプーリ配置が使用される場合など、可逆的な張力リミッタが代わりに使用されてもよい。例えば、フレームの2つの追加プーリホイールを追加して、追加プーリホイールが頂部プーリホイール14の上方にあり、係留ケーブルが底部プーリホイール16から第1の追加プーリホイールへ、そこから頂部プーリホイール14へ、続いて頂部プーリホイール14から第2の追加プーリホイールへ、そしてそこからクランプ18へと上方に延びるようにしてもよい。その場合、係留ケーブルに張力がかかると、頂部プーリホイール14が引き上げられる。
【0029】
可逆的な張力リミッタの実施形態は、流体圧シリンダ120内のピストン20の頂部ピストンロッド側に、すなわちピストン20の他方側に、流体および流体圧シリンダ120からリザーバ22への接続が設けられてもよいことを除いて、記載された可逆的な圧縮力リミッタと同様である。流体圧シリンダ120の頂部にあるピストンロッド122の周囲にはシールが設けられている。頂部プーリホイールが流体圧シリンダ120の底部に移動された場合も同様である。同様に、追加プーリホイールを使用して、流体圧シリンダアセンブリの力を他の方向に向け直すことができ、その結果、流体圧シリンダ120を他の方向に向けることができる。しかし、図1に示す実施形態は、最もロバストな解決策である。
【0030】
図3は、ケーブルにより及ぼされた力を力ベースに伝達するクランプ18の実施形態を形成するクランプアセンブリを示す。クランプアセンブリは、係留ケーブルにかかる力を分散させ、係留ポストから船舶への係留ケーブルの長さの調整を可能とする。図示の実施形態では、クランプアセンブリは、余剰の係留ケーブル長を貯蔵するためのスプーリングドラム34と、係留ケーブルからの張力を力ベースに伝達することによってクランプを行うための、等しい直径の第1及び第2の摩擦ドラム30、32を備える摩擦ドラム対とを備える。第1及び第2の摩擦ドラム30、32は、それらの表面と係留ケーブルとの間の摩擦が、ドラムと係留ケーブルとの間で力を伝達する役割を果たすので、摩擦ドラムと呼ばれる。第1および第2の摩擦ドラム30、32は、力ベースに接続され、互いに対して固定された空間的関係に保たれる。例えば、第1および第2の摩擦ドラム30、32は、一対の取付プレート(図示せず)の間に両方取付けられてもよい。取付プレートは、力ベースとして使用されるケーブル保持装置(図示せず)の脚部に接続される。好ましくは、第1および第2の摩擦ドラム30、32は、それらの回転軸がほぼ水平で、ほぼ垂直に互いの上方に配置される。
【0031】
係留ケーブルの経路19は、頂部プーリホイール(図示せず)から第1の摩擦ドラム30(摩擦ドラム対の最下部)へ向かい、そこから第2及び第1の摩擦ドラム32、30の間を複数回往復し、最後にスプーリングドラム34へと延びる。
【0032】
図4(A)~(C)は、摩擦ドラム対ユニットの一実施形態の側面図を示す。摩擦ドラム対ユニットは、第1および第2の回転可能な摩擦ドラム30、32と、第1および第2の取付プレート34a、bと、モータ36a、bとを備える。これらの図では、座標軸が示されており、z軸は第1の摩擦ドラム30の回転軸の方向にあり、x軸は実質的に摩擦ドラム間のオフセット(それらの回転軸のオフセット)の方向、すなわち一方のドラムから他方のドラムに延びるケーブル部分の方向である。y 軸はx 軸とz 軸に直交する。論じられるように、摩擦ドラム30、32の回転軸は、好ましくは、平行なy-z平面に存在し、x軸はこれらの平面に対して垂直である。
【0033】
第1および第2の摩擦ドラム30、32は、第1の取付プレート34aの側面のうち一方に回転可能に、第2の取付プレート34a、bの対向する側面に取り付けられている。第1及び第2の摩擦ドラム30、32の各々の表面は、複数の円形状の溝40を備えている。すなわち螺旋状溝ではなく、別々の溝であり、各溝はドラムの回転軸に垂直な面に平行であり、溝は完全な円に沿って進んだ後にそれ自体に戻る。6つの溝が実用目的に十分であることが分かっている。しかしながら、別の数の溝を使用することができること、例えば、より多くの溝を使用することができ、あるクラスの船舶では、より少ない溝で十分であり得ることに留意されたい。また、係留ケーブルの個々のターンに溝を使用するのは、摩擦ドラムの一方のみで十分である場合がある。
【0034】
図4(B)、(C)は、第1および第2の摩擦ドラム30、32を、それぞれ、第1および第2の摩擦ドラム30、32の回転軸300、302とともに、z-y平面、すなわち摩擦ドラム30、32間のオフセットに垂直な平面における断面で示す。図4(B)では、第1の摩擦ドラム30の溝は図示されていないが、第1の摩擦ドラム30は図4(C)に破線で示されている。図4(B)、(C)に示すように、第1および第2の摩擦ドラム30、32の回転軸300、302は平行ではなく、ゼロではない角度で、x軸の周りで、すなわち摩擦ドラム間のオフセットの方向で、互いに対してわずかに回転される。両方の摩擦ドラムの回転軸は、取付プレートに対して非垂直であってもよく、または一方の摩擦ドラムの回転軸は、取付プレートに対して垂直であり、他方は非垂直であってもよい。好ましくは、回転軸300、302は、平行な平面(y-z平面)に存在する。角度は、第2の摩擦ドラム32の周りの溝の半円に沿ったケーブル経路の入口点及び出口点が、第1の摩擦ドラム30の連続する溝40間の距離にわたって、第1の摩擦ドラム30の軸方向(z-)方向に変位するように設定される。一例では、角度は8度である。
【0035】
数学的用語では、摩擦ドラム30、32が同じ外径「D」を有し、連続する溝間のピッチ(溝心臓-溝心臓30距離)が両方の摩擦ドラムで「d」(図4(A)参照)であるとき、摩擦ドラムの中心回転軸間の角度のsinはd/D(すなわち、sin(角度)=d/D)である。したがって、所与のピッチは、回転軸間の最適な角度を規定するか、または,逆に、角度は、最適なピッチ「d」を規定する。実際の角度は、この数学的関係式に正確に等しい必要はないことが強調されるべきであるし、(例えば、sin(角度)が(d-w)/Dと(d+w)/Dの間にある等式〔ここで、wはピッチdの半分以下の誤差余裕、例えば、ピッチの4分の1〕)近似的な等式で十分である。さらに、摩擦ドラムが同じ直径を有することは厳密には必要ではないことに留意されたい。第1および第2の摩擦ドラム30がそれぞれ直径D1、D2を有する場合、角度のsinは、d1/D2(sin(角度)=d1/D2)または少なくとも(d1-w)/D2と(d1+w)/D2との間であってもよいし、d1/D2=d2/D1であってもよい。
【0036】
図5は、摩擦ドラムの溝40の実施形態をより詳細に示している。好ましくは、第1及び第2の摩擦ドラム30、32の溝40の表面は粗面である。一例では、溝の表面は、ステンレス鋼粉末ブラストによって粗面化されてもよい。断面において、溝40の壁は、溝40の底部にU字形を有し、上方にV字形断面を有する。なお、U字状の溝40においては、少なくとも60度の角度での円弧セグメントを有する断面部52を有している。V字状部52は、断面が曲率を伴わずに発散するか、または少なくとも円弧セグメントを有する断面部52よりも大きい可変または一定の曲率半径を有する。
【0037】
ドラム対ユニットの溝幅は、所定の係留ケーブルタイプに適合するように設計することができる。円弧セグメントを有する断面部52において、後続が張力を受けていない場合、溝40は、係留ケーブル50の半径よりも小さい曲率半径を有するが、係留ケーブル50は、係留ケーブルの張力が増大して係留ケーブル径が小さくなると、係留ケーブルの大部分が溝の円弧セグメントを有する断面部52に収まろうとするため、溝40は大きくなる。幅は、係留ケーブルの直径及び種類によって異なることがある。
【0038】
一例では、幅は、張力がない状態で直径77ミリメートルのダイニーマ(ポリエチレン)の係留ケーブル用に設計されてもよい。張力の下では、このような係留ケーブルの直径は、約70~71ミリメートルに減少することがある。摩擦ドラム30、32は、例えば、かなり大きな直径を有する。500ミリメートル以上となると、屈曲による係留ケーブルの疲労が制限されることになる。
【0039】
動作中、係留ケーブルは、係留船に使用する前に、ドラム対ユニット30、32に巻かれてもよい。例えば、係留ケーブルは、まずスプーリングドラム34に巻かれ、スプーリングドラム34からのケーブルの端は、摩擦ドラム30、32に亘り複数回前後して巻かれてもよい。係留ケーブルは、モータ36a、bが第1及び第2の摩擦ドラム30、32を同期回転させながら、ドラム対ユニットから繰り出されてもよい。
【0040】
船舶が係留されるとき、係留ケーブルの端を船舶に持込んで船舶に固定するか、または船舶からのケーブルに接続する。続いて、第1及び第2の摩擦ドラム30、32は、上側のドラム等で半回転した後、そこから係留ケーブルが下側のドラムに巻き取られるような方向に、それらの軸の周りで同期して回転される。このようにして、係留ケーブルは船舶から引き込まれる。例えば、係留ケーブルは、流体回路の過圧バルブを開くことなく、係留ポストと船舶との間に張力がかかるまで引き入れることができる。好ましくは、係留ケーブルは、船舶のケーブル接続点の過度の動きが流体回路の過圧バルブを開放させるまで引き入れられる。
【0041】
モータ36a、bは、例えばスリップカップリングを介して、第1及び第2の摩擦ドラム30、32の回転を駆動するように接続されている。モータ36a、bは、トルクを増加させるために遊星ギアホイールアセンブリを備えることができる。各モータ36a、bは、更に、固定アーム(図示せず)に連結されて、モータの静止部分が回転しないように保持する反力を提供することができる。アームは、例えば、他方のモータのアーム及び/または取付プレート34aおよび/またはその両方に連結することができる。同期回転は、モータ36a、bと第1及び第2の摩擦ドラム30、32との間のスリップカップリングを使用することによって確保することができる。
【0042】
スリップカップリングは、流体圧シリンダアセンブリが最大限に圧縮されると、流体圧シリンダアセンブリにかかる下向きの力を制限するために使用することができるという更なる利点を有する。
【0043】
あるいは、単一のモータまたは複数のモータ36a、bは、制御されたスリップモードで使用することができ、単一のモータまたは複数のモータ36a、bは、例えば、制御回路の制御下で、第1および第2の摩擦ドラム30、32を同期して回転させ、係留ケーブルの応力が閾値を超えている間に係留ケーブルを繰り出す。
【0044】
スリップカップリングまたは制御されたスリップモードは、係留ケーブルが及ぼすスリップ力の閾値を規定し、このスリップ力の閾値では、係留ケーブルが及ぼす力がスリップカップリングを開始させるか、または制御されたスリップモードが作動する。同様に、流体圧シリンダアセンブリは、係留ケーブルが及ぼす力により流体圧シリンダアセンブリが圧縮を開始させる圧縮力の閾値を規定する。
【0045】
一実施形態では、係留ケーブルにより及ぼされるスリップ力の閾値は、係留ケーブルにより及ぼされる圧縮力の閾値よりも大きい。(本明細書で使用されるように、スリップ力の閾値および圧縮力の閾値は、カップリングがスリップし、流体圧シリンダアセンブリが圧縮を開始する係留ケーブルの応力レベルに関する。)
【0046】
その結果、係留ケーブルにかかる応力が増大し、圧縮力の閾値に達すると、流体圧シリンダアセンブリは、まず係留ケーブルを繰り出すことになる。流体圧シリンダアセンブリが最大に圧縮され、係留ケーブルの応力がさらに増大し、スリップ力の閾値に達すると、制御されたスリップモードで作動するスリップカップリングまたは摩擦ドラム30、32のスリップが係留ケーブルを繰り出す。同一のスリップカップリングが、摩擦ドラムを駆動し、繰り出しを可能にするモータへの両方のカップリングに使用されてもよいが、これらの目的のために別個のスリップカップリングを使用することができることを理解されたい。
【0047】
実施形態において、制御回路は、流体圧センサの代わりに、または流体圧センサに加えて、シリンダに対するピストンの位置を感知する1つまたは複数の位置センサを使用して、流体圧シリンダアセンブリがいつ最大に圧縮されるかを決定するように構成される。
【0048】
一実施形態によると、制御回路は、流体圧力リミッタが所定の距離にわたって所定の長さの係留ケーブルが繰り出されるようになっていることの検出に応じて、単一のモータまたは複数のモータ36a、bは、摩擦ドラムに係留ケーブルの繰り出しを開始させるように構成する。例えば、制御回路は、ピストンがその圧縮下での移動を制限する停止に到達したことの検出に応答して、そうするように構成されてもよい。他の実施形態では、測定されたピストン位置が流体圧シリンダアセンブリの圧縮距離が第1の閾値を超えていることを示す検出に応答して、制御回路がそうするように構成されてもよい。
【0049】
これらの実施形態では、制御回路は、流体圧シリンダアセンブリが停止位置から閾値以上の距離、または第1の閾値の圧縮から膨張したことを位置センサが示すまで、係留ケーブルの繰り出しを制御されたスリップモードで継続させ、この閾値の距離に到達したら、係留ケーブルの繰り出しを停止させるように構成される。これにより、係留船舶の移動に応答する位置に流体圧シリンダアセンブリが配置される。
【0050】
摩擦ドラムで係留ケーブルを繰り出すことにより、流体圧シリンダアセンブリに比べて、より広い範囲の係留ケーブルの長さを繰り出すことができるが、通常、より制限された最大速度で繰り出すことができる。流体圧シリンダアッセンブリで係留ケーブルを繰り出すことと、スリップカップリングまたは制御スリップカップリングを用いて摩擦ドラムで係留ケーブルを繰り出すことの別の相違点は、係留ケーブルにかかる応力が低下したときに、前者が本質的に逆転し、後者がそうではないことである。
【0051】
好ましくは、スリップカップリングのスリップまたは制御されたスリップモードでの作動により係留ケーブルの長さが繰り出された場合、係留ケーブルの応力による力が圧縮力の閾値以下に低下した後に、第1及び第2の摩擦ドラム30、32の回転を駆動するモータ36a、bが作動する。スプーリングドラムは、摩擦ドラム30、32と同時に作動させて、係留ケーブルの引き入れられた長さを受け入れることができる。
【0052】
例えば、摩擦ドラム30、32は、力がスリップ力の閾値に達したときに早めに繰り出されたものと同じ長さの係留ケーブルを引き入れるように作動されてもよく、あるいは、係留ケーブルにより及ぼされた力が圧縮力の閾値よりも低い所定閾値に達するまで引き入れを続けてもよい。係留ポストユニットは、例えば、引き入れの長さを選択するのに役立つセンサ、繰り出し及び引き入れ中に摩擦ドラム30、32の回転量を感知するように構成された回転センサ、または流体圧シリンダアセンブリのシリンダの流体圧流体の圧力を測定するように構成された圧力センサを備えることができる。係留ケーブルまたは係留船の映像を得るためにカメラを使用することができる。
【0053】
引き入れる操作は、単一の、または複数のセンサからの入力を用いて、及び/または画像に基づいて、オペレータ(陸上または船上)によって遠隔制御されてもよい。あるいは、自動引き入れ制御が、制御回路の制御の下で、そのような単一の、または複数のセンサに接続された入力と、摩擦ドラム30、32の回転を制御するための出力とを備えて使用されてもよい。
【0054】
一実施形態によると、モータ36a、bは、流体圧駆動モータまたは電気モータであり、流体を備えた共通の供給導管を介して駆動される。したがって、回転は、力が動的に釣り合うという意味において同期される。1つの摩擦ドラムが他のものより一時的に小さな抵抗力を示す場合、流体圧は、抵抗値の差が反転する効果で、係る摩擦ドラムに、他のドラムよりもわずかに回転する抵抗を示させる。係留ポストは、モータの流体回路に圧力を発生させるための電動ポンプを有していてもよい。別の実施形態では、モータ間のギアホイールカップリングを使用して、モータを同期させてもよい。電気モータが使用される場合、モータは、代替的に、電子的に同期されてもよい。
【0055】
2つのモータを備えるモータアセンブリが示されているが、代わりに、摩擦ドラム30、32の一方に単一のモータを備えるモータアセンブリと、そのドラムから他方への機械的トランスミッションと、単一のモータ及び両方のドラムからの機械的トランスミッションとを備えるモータアセンブリが使用されてもよいことが理解されるべきである。一実施形態では、単一のモータと第1及び第2の摩擦ドラム30、32との間にスリップカップリングを使用することによって同期回転が確保されてもよく、スリップカップリングは、モータの力が最も抵抗力を与える摩擦ドラム30、32に確実に伝達されるように、またはそれらが同じ抵抗力を与える場合には両方に伝達されるように構成される
【0056】
第1及び第2の摩擦ドラム30、32が回転されるとき、ドラム対ユニットから出てくるケーブル部分は、モータ36a、bよりも少ない電力を必要とする更なるモータ(図示せず)によって駆動され得るスプーリングドラム34に巻き取られることができる。同様に、スプーリングドラム34は、第1及び第2の摩擦ドラム30、32が両方の摩擦ドラムを逆にして作動されるとき、ケーブルを繰り出すことができる。
【0057】
係留中に係留ケーブルで引張った後、第1及び第2の摩擦ドラム30、32の回転は、取付プレートに対してロックされる。これにより、ケーブル保持装置はフェイルセーフ状態になり、モータ36a、bのような電源はその動作に必要とされない。係留ケーブルが応力を受けると、係留ケーブルは、第1及び第2の摩擦ドラム30、32の半円に半径方向の力を及ぼし、ここで、係留ケーブルは、第1及び第2の摩擦ドラム30、32の周囲で曲がる。これらの半径方向の力は、第1および第2の摩擦ドラム30、32へと係留ケーブルに引張力を徐々に伝達する溝で係留ケーブルに沿った円周方向のスティックスリップ力を引き起こす。それぞれの半円を経由後、係留ケーブルの応力は小さくなる。
【0058】
さらに、係留ケーブルへの張力の増加に伴い、係留ケーブル径が減少する。その結果、係留ケーブルは、より深く溝40に入り込み、その結果、第1および第2の摩擦ドラム30、32とのその接触面積が増大し、それにより、第1および第2の摩擦ドラム30、32に引張力を伝達するスティックスリップ力が増大する。
【0059】
理解されるように、係留ケーブルをクランプするために第1及び第2の摩擦ドラム30、32を使用すると、係留ケーブルを1点で固定することによって係留ケーブルをクランプする解決策と比較して、係留ケーブルにかかる最大力が低減される。同時に、それは、船舶への係留ケーブルの長さのモータ駆動による調整を可能にする。
【0060】
更に、第1及び第2の摩擦ドラム30、32を用いることにより、係留ケーブルに応力が加わっても、係留ケーブルでの繰り出しまたは引き入れが可能となる。これは、基本的に、係留について説明したように、第1および第2の摩擦ドラム30、32の同期回転を伴う。係留ケーブルは、係留中と同じ方向に第1及び第2の摩擦ドラム30、32を同期回転させることによって引き入れることができる。係留ケーブルは、第1及び第2の摩擦ドラム30、32をその方向と逆に同期回転させることによって繰り出すことができる。
【0061】
いずれの場合にも、2つのドラムを使用することは、螺旋状の溝が使用される場合とは対照的に、係留ケーブルがドラムの軸方向においてドラムを超えて応力を受けて滑る必要がなく、または溝を介して滑る必要がないという利点を有する。その代わり、係留ケーブルの各部を他のドラムに移動させ、他のドラムと共に各部をわずかに異なる角度で回転軸回りに回転させることにより、各ドラムに対する係留ケーブルの各部の軸方向変位を実現する。これにより、係留ケーブルの摩耗が軽減される。
【0062】
理解されるように、同様の利点は、2つより多い(N>2)、互いにわずかな角度での回転軸を有する少なくともいくつかの摩擦ドラムを用いることによって実現することができる。ここで、各摩擦ドラムの周囲の溝からのケーブル経路の出口点が、ケーブル経路の入口点としてドラムの共通ベースから次の摩擦ドラムの周囲の溝までの同じ距離になるように、角度を選択することができる。したがって、係留ケーブルは、N個の摩擦ドラムを連続的に通過し、次いで、連続した摩擦ドラムの最初に戻ることができる。
【0063】
摩擦ドラムが同じ直径を有する実施形態を説明したが、これは厳密に必要ではないことに留意されたい。各摩擦ドラムの周りの溝からのケーブル経路の出口点は、ケーブル経路の入口点から次の摩擦ドラムの周りの溝までのドラムの共通ベースから同じ距離にあり、全ての摩擦ドラムのケーブル経路と共通ベースとの間の距離の変化の総和は、溝のピッチにほぼ対応する。
【0064】
複数の摩擦ドラムを組み合わせて使用することにより、円形状の溝を使用することが可能となるので、円形状の溝を使用して、係留ケーブルの摩耗に対する最小の影響で、(スティック)スリップ力を増加させることができる。しかしながら、必要とされる力の大きさ、及びケーブルがドラムの周りを進む回数に依存して、ドラムは、図示の実施形態よりも浅い溝を有してもよく、または連続するケーブル部品が、別個の巻線のための摩擦ドラムの溝を用いずに、複数の摩擦ドラムの周りに巻かれ互いに隣り合って存在してもよい。
【0065】
第1及び第2の摩擦ドラム30、32またはそれ以上の摩擦ドラムを使用して、応力下で係留ケーブルを繰り出すかまたは引張ることができるので、単に船舶で通過する力のピークに起因する力ではない力を流体圧リミッタが制限することを検出されるときに、摩擦ドラム30、32またはそれ以上の摩擦ドラムを使用して係留ケーブルを繰り出すことが可能になる。同様に、係留ケーブルが及ぼす力が所定時間より長く閾値を下回ったままであることが検知された場合には、摩擦ドラム30、32を用いて係留ケーブルを引張ることができる。
【0066】
一実施形態によると、流体圧力リミッタに、例えば、ピストンの位置の指標を検出するための、またはピストンが上限閾値位置または下限閾値位置を通過したかどうかを検出するための、1つまたは複数の位置センサの形態において、このようなセンサを設けてもよい。他の実施形態では、シリンダの圧力を感知するように構成された単一の、または複数の流体圧センサ、および/またはレベルセンサが、リザーバの流体圧レベルを感知するように構成されてもよい。センサの結果は、制御室に送信され、そこから、モータが作動して摩擦ドラムを回転させてもよい。係留ポストは、センサ結果を送信し、この目的のためにモータ制御コマンドを受信するように構成された通信システムを備えることができる。通信システムは、例えば、無線データネットワーク受信機または送信機、または有線システムを使用することができ、即ち、海底下の係留ポストに延びる通信ケーブルを使用する無線システムであってもよい。
【0067】
一実施形態では、自動調整システムを使用してもよく、例えば、制御コンピュータまたは他の制御回路を用いてもよく、この制御回路は、複数のセンサのうちの一つのセンサが、係留ケーブルの力が上限閾値を上回るまたは下限閾値を下回ることを示すときにモータを作動させるように構成され、またはこれが所定時間を超えるようになっている。
【0068】
船舶が係留を解除されると、係留ケーブルは船舶から分離される。これが生じた場合、モータ36a、bは、第1及び第2の摩擦ドラム30、32を同期回転させて船舶から係留ケーブルを引張り、ケーブル係留ケーブルをスプーリングドラム34に巻き取るように始動することができる。
【0069】
また、記載されたタイプのクランプは、例えば岸壁に沿った係留ポスト以外の場所で船舶から係留ケーブルをクランプするためにも使用できることに留意されたい。摩擦ドラムの回転軸は、水平である必要はない。代わりに、例えば、それらは垂直であってもよい。クランプは、動的なボラードとして使用されてもよく、これにより、船が係留されたままのときに生じる応力の下で、係留ケーブルが留まっているときの負荷状態であっても、ボラードから船舶までのケーブルの長さの遠隔操作が可能になる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】