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特表2022-511943有機エレクトロルミネッセンス素子およびそれに用いる固体組成物
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  • 特表-有機エレクトロルミネッセンス素子およびそれに用いる固体組成物 図1
  • 特表-有機エレクトロルミネッセンス素子およびそれに用いる固体組成物 図2
  • 特表-有機エレクトロルミネッセンス素子およびそれに用いる固体組成物 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子およびそれに用いる固体組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20220125BHJP
   C07F 9/6512 20060101ALI20220125BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
H05B33/22 B
H05B33/14 A
C07F9/6512 CSP
C09K11/06 690
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533224
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(85)【翻訳文提出日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2019085281
(87)【国際公開番号】W WO2020120793
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】102018132280.1
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503180100
【氏名又は名称】ノヴァレッド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ,ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】センコヴスキ,ヴォロディミル
(72)【発明者】
【氏名】カルディナリ,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ザイデングランツ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】デンカー,ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ツォット,シュテファン
【テーマコード(参考)】
3K107
4H050
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC12
3K107CC21
3K107DD76
3K107DD78
3K107DD84
3K107FF00
3K107FF14
3K107FF19
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB78
4H050AB92
(57)【要約】
アノードと、カソードと、少なくとも1つの発光層と、有機半導体層とを含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機半導体層は、前記少なくとも1つの発光層と前記カソードとの間に配置され、
前記有機半導体層は
a)第1のC10~C42アレーン構造部分および/または第1のC~C42ヘテロアレーン構造部分を含む第1の有機化合物であって、
i)ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージにより計算された前記第1の有機化合物の双極子モーメントが、0~2.5デバイであり、かつ
ii)ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージにより計算された、真空エネルギー準位をゼロとした絶対スケールにおける前記第1の有機化合物のLUMOエネルギー準位が、-1.7eV~-2.1eVの範囲にある第1の有機化合物、ならびに
b)第2のC10~C42アレーン構造部分および/または第2のC~C42ヘテロアレーン構造部分と、さらに、ホスフィンオキシドおよびホスフィンスルフィドから選択される少なくとも1つの極性基とを含む第2の有機化合物であって、
iii)ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージにより計算された前記第2の有機化合物の双極子モーメントが、1.5~10デバイであり、かつ
iv)真空エネルギー準位をゼロとした絶対スケールにおける前記第2の有機化合物のLUMOエネルギー準位が、前記第1の有機化合物のLUMOエネルギー準位よりも0.25eV未満高いか、または低い第2の有機化合物を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物とが互いに異なることを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、カソードと、少なくとも1つの発光層と、有機半導体層とを含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機半導体層は、前記少なくとも1つの発光層と前記カソードとの間に配置されており、
前記有機半導体層は
a)第1のC10~C42アレーン構造部分および/または第1のC~C42ヘテロアレーン構造部分を含む第1の有機化合物であって、
i)ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージにより計算された前記第1の有機化合物の双極子モーメントが、0~2.5デバイであり、かつ
ii)ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージにより計算された、真空エネルギー準位をゼロとした絶対スケールにおける前記第1の有機化合物のLUMOエネルギー準位が、-1.7eV~-2.1eVの範囲にある第1の有機化合物、ならびに
b)第2のC10~C42アレーン構造部分および/または第2のC~C42ヘテロアレーン構造部分と、さらに、ホスフィンオキシドおよびホスフィンスルフィドから選択される少なくとも1つの極性基とを含む第2の有機化合物であって、
iii)ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージにより計算された前記第2の有機化合物の双極子モーメントが、1.5~10デバイであり、かつ
iv)真空エネルギー準位をゼロとした絶対スケールにおける前記第2の有機化合物のLUMOエネルギー準位が、前記第1の有機化合物のLUMOエネルギー準位よりも0.25eV未満高いか、または低い第2の有機化合物を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物とが互いに異なっている、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物は、C、H、B、Si、Ge、O、N、P、S、FおよびIからなる群から選択される原子のみを含む、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記有機半導体層が、電気的なn-ドーパントをさらに含む、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記n-ドーパントが、少なくとも1つの金属カチオンおよび少なくとも1つのアニオンを含む金属塩である、請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記金属塩の前記金属カチオンがアルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属からなる群から選択され、またはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、およびBaからなる群から選択され、またはLi、Mg、Ca、およびSrから選択される、請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記金属塩の前記アニオンが、キノリノラート、ホスフィンオキシドフェノラートおよびホウ酸塩からなる群から選択される、請求項4または5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記第1の有機化合物の、前記第2の有機化合物に対する重量比が、99:1~1:99、または19:1~1:19、または9:1~1:9、または4:1~1:4、または3:1~1:3、または2:1~1:2、最も好ましくは2:3~3:2である、請求項1~6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物のモル重量が、それぞれ、300~3000g/mol、または350~2500g/mol、または400~2000g/mol、または450~1500g/mol、または500~1000g/molである、請求項1~7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記第2の有機化合物において、
a)前記極性基はホスフィンオキシドであり、ならびに/または
b)前記C10~C42アレーン構造部分、および/もしくは前記C~C42ヘテロアレーン構造部分は、少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの融合した芳香環を含む、
請求項1~8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記第1の有機化合物に含まれる前記C10~C42アレーン構造部分および/または前記C~C42ヘテロアレーン構造部分は、少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの融合した芳香環を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
式E3を有する化合物。
【化1】
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は有機エレクトロルミネッセンス素子に関し、それに用いる固体組成物に関する。
【0002】
[背景技術]
自己発光素子である有機発光ダイオード(organic light-emitting diode:OLED)は、広い視野角、優れたコントラスト、迅速な応答性、高輝度、優れた駆動電圧特性、および色再現性を有している。典型的なOLEDは、アノード、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)、およびカソードを含む。アノード、HTL、EML、ETLおよびカソードは、基板上に順次積層されている。この場合、HTL、EML、およびETLは、基本的に有機化合物および/または有機金属化合物から形成された薄膜である。
【0003】
アノードおよびカソードに電圧を加えると、アノード電極から注入された正孔はHTLを介してEMLに移動し、カソード電極から注入された電子はETLを介してEMLに移動する。正孔と電子とは、EML内で再結合してエキシトンを生成する。エキシトンが励起状態から基底状態に落ちると、光が放出される。正孔および電子の、注入および流出の間のバランスをとる必要がある。当該バランスを取ることにより、前記構成を有するOLEDは、優れた効率を有する。
【0004】
2つ以上の揮発源を含む大量生産ツールの技術的複雑さに関する懸念、特に、大量生産において決定的であるが、そのような複雑なツールでは困難であり得る、プロセスのロバスト性および信頼性のあるプロセス制御に関する懸念のために、1成分マトリックスを含む有機電子輸送材料に強く焦点が当てられてきた。その結果、材料設計の焦点は、マトリックス材料に必要とされるすべての重要な機能性を、そのような化合物の揮発性および熱安定性によって制限される分子量を有する、1つの有機化合物に導入することにあった。
【0005】
しかしながら、エレクトロルミネッセンス素子の設計のより広い自由度を可能とする有機エレクトロルミネッセンス素子を調製するための、および/またはその電子特性を改善するための、新規な材料を提供する必要性が依然として存在する。
【0006】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服する、有機エレクトロルミネッセンス素子およびそれに用いるための材料を提供することである。特に、有機電子注入および/または電子輸送層を含むエレクトロルミネッセンス素子の設計のより広い自由度を可能とし得る、代替および/または改善された電子輸送マトリックス材料を提供することである。
【0007】
[発明の概要]
この目的は第一に、アノードと、カソードと、少なくとも1つの発光層と、有機半導体層とを含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機半導体層は、前記少なくとも1つの発光層と前記カソードとの間に配置され、
前記有機半導体層は
a)第1のC10~C42アレーン構造部分および/または第1のC~C42ヘテロアレーン構造部分を含む第1の有機化合物であって、
i)ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージにより計算された前記第1の有機化合物の双極子モーメントは、0~2.5デバイであり、かつ
ii)ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージにより計算された、真空エネルギー準位をゼロとした絶対スケールにおける前記第1の有機化合物のLUMOエネルギー準位は、-1.7eV~-2.1eVの範囲にある第1の有機化合物、ならびに
b)第2のC10~C42アレーン構造部分および/または第2のC~C42ヘテロアレーン構造部分と、さらに、ホスフィンオキシドおよびホスフィンスルフィドから選択される少なくとも1つの極性基とを含む第2の有機化合物であって、
iii)ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージにより計算された前記第2の有機化合物の双極子モーメントは、1.5~10デバイであり、かつ
iv)真空エネルギー準位をゼロとした絶対スケールにおける前記第2の有機化合物のLUMOエネルギー準位は、前記第1の有機化合物のLUMOエネルギー準位よりも0.25eV未満高いか、または低い第2の有機化合物を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物とが互いに異なることを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子によって達成される。
【0008】
本発明者らは驚くべきことに、最新の大量生産ツールにおける真空熱蒸着(VTE)による処理に適した範囲のモル重量およびそれぞれの揮発性をそれぞれ個々に有する2つ以上の化合物のいくつかの組み合わせが、単一マトリックス化合物の設計に基づく現在のアプローチでは容易に達成され得ない改善された特性を有する、電子輸送層などの多用途有機半導体層の設計を可能にすることを見出した。
【0009】
本発明に関して、2つの有機化合物は、それらの化学組成および/または構造が異なる場合、互いに異なる形態である。換言すれば、同じ構造を有し、含まれる元素の同位体比のみが異なる分子の混合物は、同じ化合物とみなされる。同様に、互変異性体、回転異性体などはそれらの組成および/または構造が互いに異なるものではなく、同一であるとみなされる。
【0010】
本発明の化合物の前記双極子モーメントおよび前記LUMOエネルギー準位の両方は、B3LYP機能およびG-31基底関数系を用い、TURBOMOLE量子化学パッケージによって計算することによって決定される。
【0011】
前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物はC、H、B、Si、Ge、O、N、P、S、FおよびIからなる群から選択される原子のみを含み得る。これにより、前記有機半導体層の特性をさらに向上させることができる。
【0012】
前記有機半導体層は、電気的なn-ドーパントをさらに含み得る。これにより、前記有機半導体層の特性をさらに向上させることができる。
【0013】
前記n-ドーパントは、少なくとも1つの金属カチオンおよび少なくとも1つのアニオンを含む金属塩であり得る。これにより、前記有機半導体層の特性をさらに向上させることができる。
【0014】
前記金属塩の前記金属カチオンは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属からなる群から選択されてもよく、またはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、およびBaからなる群から選択されてもよく、またはLi、Mg、Ca、およびSrから選択されてもよい。これにより、前記有機半導体層の特性をさらに向上させることができる。
【0015】
前記金属塩の前記アニオンは、キノリノラート、ホスフィンオキシドフェノラートおよびホウ酸塩からなる群から選択することができる。これにより、前記有機半導体層の特性をさらに向上させることができる。
【0016】
前記第1の有機化合物の、前記第2の有機化合物に対する重量比は、99:1~1:99、または19:1~1:19、または9:1~1:9、または4:1~1:4、または3:1~1:3、または2:1~1:2、最も好ましくは2:3~3:2であり得る。これにより、前記有機半導体層の特性をさらに向上させることができる。
【0017】
前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物のモル重量は、それぞれ、300~3000g/mol、または350~2500g/mol、または400~2000g/mol、または450~1500g/mol、または500~1000g/molであり得る。これにより、前記有機半導体層の特性をさらに向上させることができる。
【0018】
一実施形態において、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物は、互いに分子状に分散されていてもよい。「分子状に分散」は、前記第1の有機化合物を含む領域および/または前記第2の有機化合物のみを含む領域の大きさが1nmを超えないことを意味することを理解されたい。
【0019】
可能な実施形態の1つでは、半導体層は光学的に均質である。光学的に均質な層は、化学組成および/または物理化学的特性に関して互いに区別することができる空間領域を含まず、またはそのような領域はいずれの方向においても1マイクロメートルのサイズを超えないことを理解されたい。
【0020】
可能な実施形態の1つでは、前記半導体層は実質的に均質である。実質的に均質な層は、化学組成および/または物理化学的特性に関して互いに区別することができる空間領域を含まず、またはそのような領域はいずれの方向においても10ナノメートルのサイズを超えないことを理解されたい。好ましくは、このような領域がいずれの方向においても、7nmサイズ、より好ましくは5nmサイズ、さらにより好ましくは4nmサイズ、さらにより好ましくは3nmサイズ、最も好ましくは2nmサイズを超えない。
【0021】
別の可能な実施形態では、前記半導体層は化学的に等方性である。化学的に等方性の層において、層の任意の構成要素の濃度は、任意の選択された方向において系統的な変化を示さないことを理解されたい。
【0022】
別の可能な実施形態では、前記半導体層は実質的に等方性である。実質的に等方性の層において、層のいかなる構成要素の濃度も物理化学的特性も、任意の選択された方向において系統的な変化を示さないことを理解されたい。
【0023】
前記第1の有機化合物において
a)極性基はホスフィンオキシドであり得、ならびに/または
b)前記C10~C42アレーン構造部分および/もしくは前記C~C42ヘテロアレーン構造部分が少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの融合した芳香環を含むことができる。これにより、前記有機半導体層の特性をさらに向上させることができる。
【0024】
前記第2の有機化合物に含まれる前記C10~C42アレーン構造部分および/または前記C~C42ヘテロアレーン構造部分は、少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの融合した芳香環を含むことができる。これにより、前記有機半導体層の特性をさらに向上させることができる。
【0025】
前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは、0~2.0デバイ、または0~1.5デバイ、または0~1.0デバイ、または0~0.5デバイであり得る。これにより、前記有機半導体層の特性をさらに向上させることができる。
【0026】
前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントよりも低くてもよく、好ましくは前記第1の有機化合物のLUMOと前記第2の有機化合物のLUMOとの差の絶対値が少なくとも0.1デバイ、または少なくとも0.2デバイ、または少なくとも0.3デバイ、または少なくとも0.5デバイ、または少なくとも1.0デバイ、または少なくとも1.5デバイ、または少なくとも2.0デバイ、または少なくとも2.5デバイ、または少なくとも3.0デバイ、または少なくとも3.5デバイ、または少なくとも4.0デバイである。これにより、前記有機半導体層の特性をさらに向上させることができる。
【0027】
前記第1の有機化合物のLUMOと前記第2の有機化合物のLUMOとの差の絶対値は、0.23eV未満、または0.20eV未満、または0.17eV未満、または0.15eV未満、または0.12eV未満、または0.09eV未満であり得る。これにより、前記有機半導体層の特性をさらに向上させることができる。
【0028】
前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは0~2.0デバイであり得、前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントは2.0~10デバイであり得、または、前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは0~1.5デバイであり得、前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントは1.5~10デバイであり得、または、前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは0~2.5デバイであり得、前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントは2.5~10デバイであり得、または、前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは0~1.5デバイであり得、前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントは2.0~10デバイであり得、または、前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは0~1.0デバイであり得、前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントは1.5~10デバイであり得、または、前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは0~1.0デバイであり得、前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントは2.0~10デバイであり得、または、前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは0~1.5デバイであり得、前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントは2.5~10デバイであり得、または、前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは0~1.5デバイであり、前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントは3.0~10デバイであり得、または、前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは0~1.0デバイであり得、前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントは2.5~10デバイであり得、または、前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは0~1.0デバイであり得、前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントは3.0~10デバイであり得、または、前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは0~0.5デバイであり得、前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントは1.5~10デバイであり得、または、前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは0~0.5デバイであり得、前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントは2.0~10デバイであり得、または、前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは0~0.5デバイであり得、前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントは2.5~10デバイであり得、または、前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは0~0.5デバイであり得、前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントは3.0~10デバイであり得、または、前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは0~0.5デバイであり得、前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントは3.5~10デバイであり得、または、前記第1の有機化合物の前記双極子モーメントは0~0.5デバイであり得、前記第2の有機化合物の前記双極子モーメントは4.0~10デバイであり得る。これにより、前記有機半導体層の特性をさらに向上させることができる。
【0029】
本発明の例示的な有機半導体層は、化合物E1およびE2を含み得る。
【0030】
【化1】
【0031】
化合物E1は出願WO2018/215355に開示されており、ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5(供給元TURBOMOLE GmbH、Litzenhardtstrasse 19、76135 Karlsruhe、ドイツ)プログラムパッケージによって計算された、4.47デバイの気相双極子モーメントを有し、同じプログラムパッケージによって計算された、-1.90eVのLUMOエネルギー準位を有する。
【0032】
化合物E2は、以下の実験の部で詳細に開示され、ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージによって計算された、0.37デバイの気相双極子モーメント、同じプログラムパッケージによって計算された、-1.84eVのLUMOエネルギー準位を有する。
【0033】
本発明の有機半導体層の別の例は、化合物E3およびE4からなる層であり得る。
【0034】
【化2】
【0035】
化合物E3は、ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージによって計算された、2.59デバイの気相双極子モーメント、同じプログラムパッケージによって計算された、-1.86eVのLUMOエネルギー準位を有する。
【0036】
化合物E4は、ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージによって計算された、0.40デバイの気相双極子モーメント、同じプログラムパッケージによって計算された、-1.85eVのLUMOエネルギー準位を有する。
【0037】
第2および第1の化合物のさらに別の選択肢は、それぞれ化合物E5およびE6を表す。
【0038】
【化3】
【0039】
化合物E5はWO2018/215355に開示されており、ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージによって計算された、4.27デバイの気相双極子モーメント、同じプログラムパッケージによって計算された、-1.97eVのLUMOエネルギー準位を有する。
【0040】
化合物E6は、ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージによって計算された、1.61デバイの気相双極子モーメント、同じプログラムパッケージによって計算された、-1.86eVのLUMOエネルギー準位を有する。
【0041】
最後に、この目的は、化合物E3によってさらに達成される。
【0042】
〔さらなる層〕
本発明によれば、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、既に上述した層の他に、さらなる層を含んでもよい。以下、各層の実施形態について説明する。
【0043】
(基板)
基板は、有機発光ダイオードなどの電子素子の製造に一般的に使用される任意の基板であってよい。光が基板を通して放出される場合、基板は、透明または半透明材料、例えばガラス基板または透明プラスチック基板でなければならない。光が上面を通って放出される場合、基板は透明および不透明材料の両方、例えば、ガラス基板、プラスチック基板、金属基板またはシリコン基板であってもよい。
【0044】
(アノード電極)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子に含まれる第1の電極または第2の電極のいずれかは、アノード電極であってもよい。アノード電極は、アノード電極を形成するために使用される材料を蒸着またはスパッタリングすることによって形成されてもよい。アノード電極を形成するために使用される材料は、正孔注入を容易にするように、高仕事関数材料であってもよい。アノード材料はまた、低仕事関数材料(すなわち、アルミニウム)から選択されてもよい。アノード電極は、透明または反射性の電極であってもよい。アノード電極を形成するために、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、二酸化スズ(SnO)、酸化アルミニウム亜鉛(AlZO)および酸化亜鉛(ZnO)などの透明導電性酸化物を使用することができる。アノード電極は、金属、典型的には銀(Ag)、金(Au)、または金属合金を用いて形成することもできる。
【0045】
(正孔注入層)
正孔注入層(HIL)は、真空蒸着、スピンコーティング、プリンティング、キャスティング、スロット-ダイコーティング、Langmuir-Blodgett(LB)蒸着などによって前記アノード電極上に形成することができる。HILが真空蒸着を使用して形成される場合、蒸着条件は、HILを形成するために使用される化合物、ならびにHILの所望の構造および熱特性に従って変化し得る。しかしながら、一般に、真空蒸着のための条件は、100℃~500℃の蒸着温度、10-8~10-3Torr(1Torrは133.322Paに等しい)の圧力、および0.1~10nm/秒の蒸着速度を含み得る。
【0046】
HILがスピンコーティングまたはプリンティングを使用して形成される場合、コーティング条件は、HILを形成するために使用される化合物、ならびにHILの所望の構造および熱特性に従って変化し得る。例えば、コーティング条件は、約2000rpm~約5000rpmのコーティング速度、および約80℃~約200℃の熱処理温度を含み得る。熱処理は、コーティングが行われた後に溶媒を除去する。
【0047】
HILは、HILを形成するために一般的に使用される任意の化合物から形成され得る。HILを形成するために使用することができる化合物の例には、フタロシアニン化合物、例えば銅フタロシアニン(CuPc)、4,4’,4’’-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)、TDATA、2T-NATA、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(Pani/DBSA)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Pani/CSA)、およびポリアニリン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸(PANI/PSS)が含まれる。
【0048】
HILはp型ドーパントを含んでもよく、またはp型ドーパントから構成されてもよい。p型ドーパントは、テトラフルオロ-テトラシアノキノンジメタン(F4TCNQ)、2,2’-(パーフルオロナフタレン-2,6-ジイリデン)ジマロノニトリル、または2,2’,2’’-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(p-シアノテトラフルオロフェニル)アセトニトリル)から選択されてもよいが、これに限定されない。HILは、p型ドーパントをドープした正孔輸送マトリックス化合物から選択することができる。公知のドープされた正孔輸送材料の典型的な例は、LUMOレベルが約-5.2eVであるテトラフルオロ-テトラシアノキノンジメタン(F4TCNQ)でドープされた、HOMOレベルが約-5.2eVである銅フタロシアニン(CuPc)、;F4TCNQでドープされたフタロシアニン亜鉛(ZnPc)(HOMO=-5.2eV);F4TCNQでドープされたα-NPD(N,N’-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン);2,2’-(パーフルオロナフタレン-2,6-ジイリデン)ジマロノニトリルでドープしたα-NPDである。p型ドーパント濃度は、1~20重量%、より好ましくは3重量%~10重量%から選択することができる。
【0049】
HILの厚さは、約1nm~約100nm、例えば、約1nm~約25nmの範囲であり得る。HILの厚さがこの範囲内にある場合、HILは駆動電圧に実質的なペナルティを与えることなく、優れた正孔注入特性を有し得る。
【0050】
(正孔輸送層)
正孔輸送層(HTL)は、真空蒸着、スピンコーティング、スロット-ダイコーティング、プリンティング、キャスティング、Langmuir-Blodgett(LB)蒸着などによってHIL上に形成することができる。HTLが真空蒸着またはスピンコーティングによって形成される場合、蒸着およびコーティングのための条件は、HILの形成のための条件と同様であり得る。しかしながら、真空または溶液蒸着のための条件は、HTLを形成するために使用される化合物に応じて変化し得る。
【0051】
HTLは、HTLを形成するために一般に使用される任意の化合物から形成され得る。適当に使用され得る化合物は例えば、Yasuhiko Shirota and Hiroshi Kageyama, Chem. Rev. 2007, 107, 953-1010に開示され、参考として援用される。HTLを形成するために使用することができる化合物の例は、N-フェニルカルバゾールまたはポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体;N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TPD)、またはN,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(アルファ-NPD)などのベンジジン誘導体;および4,4’,4’’-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)などのトリフェニルアミンベースの化合物である。これらの化合物の中で、TCTAは、正孔を輸送し、エキシトンがEML中に拡散することを抑制することができる。
【0052】
HTLの厚さは、約5nm~約250nm、好ましくは約10nm~約200nm、さらに約20nm~約190nm、さらに約40nm~約180nm、さらに約60nm~約170nm、さらに約80nm~約160nm、さらに約100nm~約160nm、さらに約120nm~約140nmの範囲であり得る。
【0053】
HTLの厚さがこの範囲内にある場合、HTLは駆動電圧に実質的なペナルティを与えることなく、優れた正孔輸送特性を有し得る。
【0054】
(電子ブロッキング層)
電子ブロッキング層(EBL)の機能は、電子が発光層から正孔輸送層に移行することを防止し、それによって電子を発光層に閉じ込めることである。これにより、効率、動作電圧および/または寿命が改善される。典型的には、電子ブロッキング層はトリアリールアミン化合物を含む。トリアリールアミン化合物は、正孔輸送層のLUMO準位よりも真空準位に近いLUMO準位を有することができる。電子ブロッキング層は、正孔輸送層のHOMO準位と比較して、真空準位からさらに離れたHOMO準位を有し得る。電子ブロッキング層の厚さは、2~20nmの間で選択され得る。
【0055】
電子ブロッキング層が高い三重項準位を有する場合、三重項制御層と呼ぶこともできる。
【0056】
三重項制御層の機能は、燐光性緑色または青色発光層が使用される場合、三重項の消光を減少させることである。これにより、燐光発光層の発光効率を高めることができる。三重項制御層は、隣接する発光層における燐光エミッタの三重項準位より上の三重項準位を有する化合物から選択される。三重項制御層に好適な化合物、特にトリアリールアミン化合物は、EP2722908A1に記載されている。
【0057】
(発光層(EML))
EMLは、真空蒸着、スピンコーティング、スロット-ダイコーティング、プリンティング、キャスティング、LB蒸着などによって、HTL上に形成され得る。EMLが真空蒸着またはスピンコーティングを用いて形成される場合、蒸着およびコーティングのための条件は、HILの形成のための条件と同様であり得る。しかし、EMLを形成するために使用される化合物に応じて、蒸着およびコーティングの条件は変化し得る。
【0058】
EMLは、ホスト材料とエミッタドーパントとの組み合わせから形成され得る。EMLは、単一のホスト材料または複数のホスト材料を含み得る。EMLは、単一のエミッタドーパントまたは複数のエミッタドーパントを含み得る。ホスト材料の例は、Alq3、4,4’-N,N’-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)、ポリ(n-ビニルカルバゾール)(PVK)、9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン(ADN)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)-トリフェニルアミン(TCTA)、1,3,5-トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン(TPBI)、3-tert-ブチル-9,10-ジ-2-ナフチルアントラセン(TBADN)、ジスチリルアリーレン(DSA)およびビス(2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾ-チアゾレート)亜鉛(Zn(BTZ)2)である。
【0059】
EMLがホスト混合物を形成するために複数のホスト材料を含む場合、ホスト材料の混合物中の各ホスト材料の量は、0.01~99.99重量部の間で変化し得る。
【0060】
エミッタドーパントは、燐光または蛍光エミッタであり得る。燐光エミッタおよび熱活性化遅延蛍光(TADF)メカニズムを介して光を放出するエミッタは、それらのより高い効率のために好ましいことがある。エミッタは、小分子またはポリマーであってもよい。
【0061】
赤色エミッタドーパントの例は、PtOEP、Ir(piq)3、およびBtp2lr(acac)であるが、これらに限定されない。これらの化合物は燐光エミッタであるが、蛍光赤色エミッタドーパントを使用することもできる。
【0062】
燐光緑色エミッタドーパントの例は、Ir(ppy)3(ppy=フェニルピリジン)、Ir(ppy)2(acac)、Ir(mpyp)3である。
【0063】
燐光青色エミッタドーパントの例は、F2Irpic、(F2ppy)2Ir(tmd)およびIr(dfppz)3ならびにter-フルオレンである。蛍光青色エミッタドーパントの例として、4.4’-ビス(4-ジフェニルアミオスチリル)ビフェニル(DPAVBi)、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(TBPe)がある。
【0064】
エミッタドーパントの量は、ホストまたはホスト混合物の100重量部に基づいて、約0.01~約50重量部の範囲であり得る。または、発光層が発光ポリマーからなってもよい。EMLは約10nm~約100nm、例えば、約20nm~約60nmの厚さを有し得る。EMLの厚さがこの範囲内にあるとき、EMLは、駆動電圧に実質的なペナルティを与えることなく、優れた発光を有することができる。
【0065】
(正孔ブロッキング層(HBL))
正孔ブロッキング層(HBL)は、ETLへの正孔の拡散を防止するために、真空蒸着、スピンコーティング、スロット-ダイコーティング、プリンティング、キャスティング、LB蒸着などを使用することによって、EML上に形成され得る。EMLが燐光ドーパントを含む場合、HBLは三重項エキシトンブロッキング機能も有し得る。
【0066】
HBLは、式(I)の化合物を含む層(またはいくつかの層のうちの1つ)であり得る。
【0067】
HBLはまた、補助ETLまたはa-ETLとも呼ばれ得る。
【0068】
HBLが真空蒸着またはスピンコーティングを用いて形成される場合、蒸着およびコーティングのための条件は、HILの形成のための条件と同様であり得る。しかしながら、蒸着およびコーティングのための条件は、HBLを形成するために使用される化合物に応じて変化し得る。HBLを形成するために一般に使用される任意の化合物を使用することができる。HBLを形成する化合物としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、およびフェナントロリン誘導体が含まれる。
【0069】
HBLは約5nm~約100nm、例えば、約10nm~約30nmの厚さを有し得る。HBLの厚さがこの範囲内にある場合、HBLは、駆動電圧に実質的なペナルティを与えることなく、優れた正孔ブロッキング特性を有することができる。
【0070】
(電子輸送層(ETL))
本発明によるOLEDは、電子輸送層(ETL)を含み得る。本発明によれば、電子輸送層は、前記一般式(I)で表される本発明の化合物を含む本発明の有機半導体層であり得る。
【0071】
様々な実施形態によれば、前記OLEDは、電子輸送層、または少なくとも第1の電子輸送層および少なくとも第2の電子輸送層を含む電子輸送積層を含み得る。
【0072】
ETLの特定の層のエネルギーレベルを適切に調整することによって、電子の注入および輸送を制御することができ、正孔を効率的にブロックすることができる。したがって、OLEDは長い寿命を有することができる。
【0073】
有機エレクトロルミネッセンス素子の電子輸送層は、本明細書で定義される第1の有機化合物および第2の有機化合物を含む有機半導体層であってもよい。電子輸送層は、当技術分野で知られているさらなるETM材料を含み得る。同様に、電子輸送層は、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物のみを材料として含み得る。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子が2つ以上の電子輸送層を含む場合、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物は電子輸送層のうちの1つのみに、電子輸送層のうちの2つ以上に、または電子輸送層のすべてに含まれ得る。本発明によれば、電子輸送層は、前記のETM材料に加えて、本明細書で定義される少なくとも1つの添加物を含み得る。
【0074】
さらに、電子輸送層は、1つ以上のn型ドーパントを含み得る。添加物は、n型ドーパントであってもよい。添加物は、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、遷移金属、遷移金属化合物または希土類金属であり得る。別の実施形態では、前記金属がLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Sm、Eu、Tb、Dy、およびYbからなる群から選択される1つであり得る。別の実施形態では、前記n型ドーパントはCs、K、Rb、Mg、Na、Ca、Sr、Eu、およびYbからなる群から選択される1つであり得る。一実施形態では、前記アルカリ金属化合物は、8-ヒドロキシキノリノラート-リチウム(LiQ)、テトラ(1H-ピラゾール-1-イル)ホウ酸リチウムまたはリチウム2-(ジフェニルホスホリル)フェノラートであり得る。ETMに好適な(前記の第1の有機化合物と第2の有機化合物との本発明の組み合わせに加えて使用することができる)化合物は、特に限定されない。一実施形態では、前記電子輸送マトリックス化合物は共有結合した原子からなる。好ましくは、前記電子輸送マトリックス化合物は少なくとも6個、より好ましくは少なくとも10個の非局在化電子の共役系を含む。一実施形態では、前記非局在化電子の共役系が、例えば文書EP1,970,371A1またはWO2013/079217A1に開示されているように、芳香族構造部分またはヘテロ芳香族構造部分に含まれ得る。
【0075】
(電子注入層(EIL))
前記カソードからの電子の注入を容易にすることができる任意のEILを、前記ETL上に、好ましくは直接前記電子輸送層上に形成することができる。EILを形成するための材料の例としては、当技術分野で知られているリチウム8-ヒドロキシキノリノラート(LiQ)、LiF、NaCl、CsF、LiO、BaO、Ca、Ba、Yb、Mgが挙げられる。EILを形成するための蒸着およびコーティング条件はHILの形成のためのものと同様であるが、蒸着およびコーティング条件はEILを形成するために使用される材料に応じて変化し得る。EILは、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物を含む有機半導体層であってもよい。
【0076】
EILの厚さは、約0.1nm~約10nmの範囲、例えば、約0.5nm~約9nmの範囲とすることができる。EILの厚さがこの範囲内である場合、EILは駆動電圧において実質的なペナルティなしに、十分な電子注入特性を有することができる。
【0077】
(カソード電極)
カソード電極は、存在する場合、EIL上に形成される。カソード電極は、金属、合金、導電性化合物、またはそれらの混合物から形成され得る。カソード電極は、低仕事関数を有し得る。例えば、カソード電極は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム(Al)-リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、イッテルビウム(Yb)、マグネシウム(Mg)-インジウム(In)、マグネシウム(Mg)-銀(Ag)などで形成され得る。または、カソード電極はITOまたはIZOなどの透明導電性酸化物から形成され得る。
【0078】
カソード電極の厚さは、約5nm~約1000nmの範囲、例えば、約10nm~約100nmの範囲であり得る。カソード電極の厚さが約5nm~約50nmの範囲にあるとき、カソード電極は、金属または金属合金によって形成されていても透明または半透明であり得る。
【0079】
カソード電極は電子注入層または電子輸送層の一部ではないことを理解されたい。
【0080】
(電荷発生層)
電荷発生層(CGL)は、p型層およびn型層を含み得る。中間層が前記p型層と前記n型層との間に配置されてもよい。
【0081】
典型的には、電荷発生層はn型電荷発生層(電子発生層)と正孔発生層とを接合するpn接合である。pn接合のn側は電子を発生させ、アノードの方向に隣接する層に電子を注入する。同様に、p-n接合のp側は正孔を発生させ、カソードの方向に隣接する層に正孔を注入する。
【0082】
電荷発生層はタンデム装置において、例えば、2つの電極間に2つ以上の発光層を含むタンデムOLEDにおいて使用され得る。2つの発光層を含むタンデムOLEDにおいて、n型電荷発生層は、アノードの近くに配置された第1の発光層のために電子を提供し、一方、正孔発生層は、第1の発光層とカソードとの間に配置された第2の発光層に正孔を提供する。
【0083】
正孔発生層のための適切なマトリックス材料は、正孔注入および/または正孔輸送マトリックス材料として従来使用される材料であり得る。また、正孔発生層に使用されるp型ドーパントは、従来の材料を採用することができる。例えば、p型ドーパントは、テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)、テトラシアノキノジメタンの誘導体、ラジアレン誘導体、ヨウ素、FeCl、FeF、およびSbClからなる群から選択される1つであり得る。また、ホストは、N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N-ジフェニル-ベンジジン(NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD)およびN,N’,N’-テトラナフチル-ベンジジン(TNB)からなる群から選択される1つであり得る。p型電荷発生層は、CNHATからなり得る。
【0084】
n型電荷発生層は、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物を含む有機半導体層であり得る。n型電荷発生層は、何も混合されていない(neat)n型ドーパントの層、例えば、陽性金属であってもよく、またはn型ドーパントがドープされた有機マトリックス材料で構成されてもよい。一実施形態では、n型ドーパントは、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、遷移金属、遷移金属化合物、または希土類金属であり得る。別の実施形態では、前記金属はLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Sm、Eu、Tb、Dy、およびYbからなる群から選択される1つであり得る。より具体的には、n型ドーパントはCs、K、Rb、Mg、Na、Ca、Sr、EuおよびYbからなる群から選択される1つであり得る。電子発生層に好適なマトリックス材料は、電子注入層または電子輸送層のためのマトリックス材料として従来から使用されている材料であり得る。当該マトリックス材料は例えば、トリアジン化合物、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウムのようなヒドロキシキノリン誘導体、ベンザゾール(benzazole)誘導体、およびシロール誘導体からなる群から選択される1つであり得る。
【0085】
正孔発生層は、n型電荷発生層に直接接触して配置される。
【0086】
(有機発光ダイオード(OLED))
本発明の一態様によれば、基板、前記基板上に形成されたアノード電極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物を含むまたは前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物からなる有機半導体層、ならびにカソード電極を備える、有機発光ダイオード(=有機エレクトロルミネッセンス素子;OLED)が提供される。
【0087】
本発明の別の態様によれば、基板、前記基板上に形成されたアノード電極、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物を含む、または前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物からなる有機半導体層、ならびにカソード電極を備える、OLEDが提供される。
【0088】
本発明の別の態様によれば、基板、前記基板上に形成されたアノード電極、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物を含む、または前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物からなる有機半導体層、電子注入層、ならびにカソード電極を備える、OLEDが提供される。
【0089】
本発明の様々な実施形態によれば、上述の層の間、前記基板上、または上部電極上に配置されたOLED層を設けることができる。
【0090】
一態様によれば、前記OLEDは、アノード電極に隣接して配置された基板の層構造を含むことができ、前記アノード電極は第1の正孔注入層に隣接して配置され、前記第1の正孔注入層は第1の正孔輸送層に隣接して配置され、前記第1の正孔輸送層は第1の電子ブロッキング層に隣接して配置され、前記第1の電子ブロッキング層は第1の発光層に隣接して配置され、前記第1の発光層は第1の電子輸送層に隣接して配置され、前記第1の電子輸送層はn型電荷生成層に隣接して配置され、前記n型電荷生成層は正孔発生層に隣接して配置され、前記正孔発生層は第2の正孔輸送層に隣接して配置され、前記第2の正孔輸送層は第2の電子ブロッキング層に隣接して配置され、前記第2の電子ブロッキング層は第2の発光層に隣接して配置され、前記第2の発光層と前記カソード電極との間には任意の電子輸送層および/または任意の注入層が配置される。
【0091】
本発明による有機半導体層は、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、第1の電子輸送層、n型電荷発生層および/または第2の電子輸送層であり得る。
【0092】
例えば、図2に記載のOLED(10)は、基板(110)上に、アノード(120)、正孔注入層(130)、正孔輸送層(140)、電子ブロッキング層(145)、発光層(150)、正孔ブロッキング層(155)、電子輸送層(160)、電子注入層(180)、およびカソード電極(190)がこの順序で続けて形成されるプロセスによって形成されてもよい。
【0093】
〔有機電子素子〕
本発明による有機電子素子は、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物を含むか、または前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物からなる有機半導体層を含む。
【0094】
一実施形態による有機電子素子は、基板、アノード層、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物を含む、または前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物からなる有機半導体層を含み得る。
【0095】
一実施形態による有機電子素子は、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物をまたは前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物からなる、少なくとも1つの有機半導体層と、少なくとも1つのアノード層と、少なくとも1つのカソード層と、少なくとも1つの発光層とを含み、前記有機半導体層は、好ましくは発光層とカソード層との間に配置される。
【0096】
本発明による有機発光ダイオード(OLED)は、基板上に順次積層された、アノード、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物からなる電子輸送層(ETL)、およびカソードを含み得る。なお、前記HTL、前記EML、前記ETLは、有機化合物からなる薄膜である。
【0097】
本発明の別の態様によれば、有機電子素子の製造方法であって、
少なくとも1つの蒸着源、好ましくは2つの蒸着源、より好ましくは少なくとも3つの蒸着源を用いる方法が提供される。
【0098】
適切であり得る蒸着方法には、
真空熱蒸発による蒸着、
溶液処理による蒸着、好ましくは前記処理がスピンコーティング、プリンティング、キャスティングから選択される蒸着、および/または
スロット-ダイコーティングが含まれる。
【0099】
本発明の様々な実施形態によれば、前記方法は、前記アノード電極上に発光層を形成すること、ならびに前記アノード電極および前記第1の電子輸送層の間に、正孔注入層を形成すること、正孔輸送層を形成すること、または正孔ブロッキング層を形成することからなる群から選択される少なくとも1つの層をさらに含むことができる。
【0100】
本発明の様々な実施形態によれば、前記方法は有機発光ダイオード(OLED)を形成する工程をさらに含んでいてもよく、
基板上に第1のアノード電極が形成され、
前記第1のアノード電極上に発光層が形成され、
前記発光層上に電子輸送積層が形成され、任意に前記発光層上に正孔ブロッキング層が形成され、有機半導体層が形成され、
最終的に、カソード電極が形成され、
任意の正孔注入層、正孔輸送層、および正孔ブロッキング層がこの順番に、前記第1のアノード電極と前記発光層との間に形成され、
任意の電子注入層が、前記有機半導体層と前記カソード電極との間に形成される。
【0101】
本発明の様々な実施形態によれば、前記方法は、前記有機半導体層上に電子注入層を形成するステップをさらに含み得る。しかしながら、本発明のOLEDの様々な実施形態によれば、OLEDは電子注入層を含まなくてもよい。
【0102】
様々な実施形態によれば、OLEDは以下の層構造を有することができ、層は以下の順序を有する:
アノード、正孔注入層、第1の正孔輸送層、第2の正孔輸送層、発光層、任意の正孔ブロッキング層、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物をまたは前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物からなる有機半導体層、任意の電子注入層、ならびにカソード、または
アノード、正孔注入層、第1の正孔輸送層、第2の正孔輸送層、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物をまたは前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物からなる有機半導体層、任意の正孔ブロッキング層、第1の電子輸送層、任意の電子注入層、ならびにカソード、または
アノード、正孔注入層、第1の正孔輸送層、第2の正孔輸送層、発光層、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物をまたは前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物からなる有機半導体層、第1の電子輸送層、任意の電子注入層、ならびにカソード。
【0103】
本発明の別の態様によれば、本出願全体にわたって記載される任意の実施形態による少なくとも1つの有機発光素子を含む電子装置が提供され、好ましくは、前記電子装置は、本出願全体にわたって記載される実施形態のうちの1つにおける有機発光ダイオードを含む。より好ましくは、前記電子装置はディスプレイ装置である。
【0104】
一実施形態では、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物をまたは前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物からなる有機半導体層を含む、本発明による有機電子素子は、ラジアレン化合物および/またはキノジメタン化合物を含む層をさらに含み得る。
【0105】
一実施形態では、前記ラジアレン化合物および/または前記キノジメタン化合物が1つ以上のハロゲン原子および/または1つ以上の電子求引基によって置換されていてもよい。電子求引基は、ニトリル基、ハロゲン化アルキル基から、または過ハロゲン化アルキル基から、または過フッ素化アルキル基から選択することができる。電子求引基の他の例は、アシル基、スルホニル基またはホスホリル基であってもよい。
【0106】
または、アシル基、スルホニル基および/またはホスホリル基は、ハロゲン化および/または過ハロゲン化ヒドロカルビルを含んでいてもよい。一実施形態では、過ハロゲン化ヒドロカルビルは、過フッ素化ヒドロカルビルであってもよい。過フッ素化ヒドロカルビルの例としては、過フッ素メチル、過フッ素エチル、過フッ素プロピル、過フッ素イソプロピル、過フッ素ブチル、過フッ素フェニル、過フッ素トリルが挙げられる。ハロゲン化ヒドロカルビルを含むスルホニル基の例としては、トリフルオロメチルスルホニル、ペンタフルオロエチルスルホニル、ペンタフルオロフェニルスルホニル、ヘプタフルオロプロピルスルホニル、ノナフルオロブチルスルホニルなどが挙げられる。
【0107】
一実施形態では、前記ラジアレン化合物および/または前記キノジメタン化合物は、正孔注入層、正孔輸送層および/または正孔発生層に含まれ得る。
【0108】
一実施形態では、前記ラジアレン化合物が式(XX)を有し得、および/または前記キノジメタン化合物は式(XXIa)または(XXIb)を有し得る。
【0109】
【化4】
【0110】
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、R12、R15、R16、R20、R21は、独立して上述の電子求引基から選択され、かつR、R10、R13、R14、R17、R18、R19、R22、R23およびR24は、独立してH、ハロゲンおよび上述の電子求引基から選択される。
【0111】
以下、実施例を参照して実施形態をより詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。ここで、例示的な態様を詳細に参照する。
【0112】
〔本発明の詳細および定義〕
本発明において、有機化合物とは、当該技術分野において一般的に無機化合物と称されている炭酸塩、シアン化物、二酸化炭素などの炭素含有化合物を除く、炭素を含有する化合物である。
【0113】
本発明においてホスフィンオキシドという用語は、一般式P(=O)Rを有する基を指し、Rはアルキルまたはアリール、例えばC~C10アルキル、例えばメチルまたはC~C24アリール、例えばCアリールである。同様に、ホスフィンスルフィドという用語は、式P(=S)Rを有する基を指し、Rは、ホスフィンオキシドの場合と同様に定義される。
【0114】
本明細書において、別段定義が与えられない限り、「アルキル基」とは、脂肪族炭化水素基を指し得る。前記アルキル基は、二重結合または三重結合を有しない「飽和アルキル基」を指し得る。本明細書において「アルキル」とは、線形のみならず分岐および環状アルキルを包含するものとする。例えば、C-アルキルは、n-プロピルおよびイソプロピルから選択され得る。同様に、C-アルキルは、n-ブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルを包含する。同様に、C-アルキルは、n-ヘキシルおよびシクロヘキシルを包含する。
【0115】
中の下付き数nは、それぞれのアルキル基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基またはアリール基中の炭素原子の総数に関する。
【0116】
本明細書で使用する「アリール」、「アリーレン」または「アレーン」という用語は、フェニル(C-アリール)、縮合芳香族、例えばナフタレン、アントラセン、フェナントラセン、テトラセンなどを包含するものとする。さらに、ビフェニルおよびオリゴ、またはテルフェニルなどのポリフェニルも包含される。さらに、フルオレニルなどの任意のさらなる芳香族炭化水素置換基も包含されるものとする。「アリーレン」、個別には「ヘテロアリーレン」は、2つのさらなる部分が結合している基を指す。本明細書では「アリール基」または「アリーレン基」という用語は、少なくとも1つの炭化水素芳香族部分を含む基を指すことができ、炭化水素芳香族部分のすべての要素は、共役を形成するp軌道、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、フルオレニル基などを有し得る。アリールまたはアリーレン基は、単環または縮合環多環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)機能性基を含み得る。
【0117】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」または「ヘテロアレーン」という用語は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子、好ましくはN、O、S、BまたはSiから選択されるヘテロ原子で置換されているアリール基を指す。
【0118】
-ヘテロアリールにおける下付き数nは単に、ヘテロ原子の数を除く炭素原子の数を指す。この文脈において、Cヘテロアリーレン基は、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾールなどの、3個の炭素原子を含む芳香族化合物であることは明らかである。
【0119】
用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族複素環を指し得、炭化水素ヘテロ芳香族部分のすべての要素は、共役を形成するp軌道を有し得る。ヘテロ原子は、N、O、S、B、Si、P、Seから、好ましくはN、OおよびSから選択され得る。ヘテロアリーレン環は、少なくとも1~3個のヘテロ原子を含み得る。好ましくは、ヘテロアリーレン環はN、Sおよび/またはOから個々に選択される少なくとも1~3個のヘテロ原子を含み得る。
【0120】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、ピリジン、キノリン、キナゾリン、ピリジン、トリアジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾ[4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジン、カルバゾール、キサンテン、フェノキサジン、ベンゾアクリジン、ジベンゾアクリジンなどを包含するものとする。
【0121】
本明細書において、単結合とは、直接結合をいう。
【0122】
本明細書でいう「フッ素化」とは、炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された炭化水素基をいう。水素原子の全てがフッ素原子で置換されたフッ素化基は、過フッ素化基といい、特に「フッ素化(fluorinated)」と称される。
【0123】
本発明に関して、基は、この基に含まれる水素原子の1つが別の基によって置換されている場合、別の基(ここで、他の基は置換基である)で「置換されている(substituted with)」。
【0124】
本発明に関して、1つの層が2つの他の層の間にあることに関する「間(between)」という表現は、前記1つの層と前記2つの他の層の一方との間に配置され得るさらなる層の存在を排除するものではない。本発明に関して、互いに直接接触している2つの層に関する「直接接触して」という表現は、それらの2つの層の間にさらなる層が配置されないことを意味する。別の層上に蒸着された1つの層は、この層と直接接触していると見なされる。
【0125】
本発明の有機半導体層および本発明の化合物に関しては、実験の部で述べた化合物が最も好ましい。
【0126】
本発明の有機電子素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)有機光起電力素子(OPV)、照明素子、または有機電界効果トランジスタ(OFET)であり得る。照明装置は、照明、照射、シグナリング、またはプロジェクションに使用される素子のいずれであってもよい。それらは、対応して、照明、照射、シグナリング、およびプロジェクション素子として分類される。照明素子は通常、光放射源、放射束を所望の方向の空間に送信させる素子、ならびに部品を単一の装置に結合し、放射線源および光送信システムを損傷および周囲の影響から保護するハウジングから構成される。
【0127】
別の態様によれば、本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、2つ以上の発光層、好ましくは2つまたは3つの発光層を含み得る。2つ以上の発光層を含むOLEDは、タンデムOLEDまたは積層OLEDとしても記載される。
【0128】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)は、底部発光素子または上端発光素子であり得る。
【0129】
別の態様は、少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)を含む装置を対象とする。
【0130】
有機発光ダイオードを含む装置は例えば、ディスプレイまたは照明パネルである。
【0131】
本発明において、以下の定義された用語、これらの定義は、異なる定義が特許請求の範囲または本明細書の他の箇所に与えられない限り、適用されるものとする。
【0132】
本明細書の文脈において、マトリックス材料に関連した「異なる(different)」または「異なる(differs)」という用語は、マトリックス材料がその構造式において異なることを意味する。
【0133】
用語「OLED」および「有機発光ダイオード」は同時に使用され、同じ意味を有する。本明細書で使用される用語「有機エレクトロルミネッセンス素子」は、有機発光ダイオードならびに有機発光トランジスタ(OLET)の両方を含むことができる。
【0134】
本明細書で使用される場合、「重量パーセント(weight percent)」、「重量%(wt.-%)」、「重量パーセント(percent by weight)」、「重量%(% by weight)」、「重量部(parts by weight)」およびそれらの変形は、各電子輸送層の総重量で割られ、100倍された、各電子輸送層のその構成要素、物質、または剤の重量としての組成物、構成要素、物質または剤を指す。各電子輸送層および電子注入層のすべての構成要素、物質および剤の総重量パーセントは、100重量%を超えないように選択されることが理解されたい。
【0135】
本明細書中で使用される場合、「体積パーセント(volume percent)」、「体積%(vol.-%)」「体積パーセント(percent by volume)」、「体積%(% by volume)」およびそれらの変形は、各電子輸送層の総体積で割られ、100倍された、各電子輸送層のその構成要素、物質または剤の体積としての組成物、構成要素、物質または剤を指す。カソード層のすべての構成要素、物質および剤の総体積パーセントは、100体積%を超えないように選択されることを理解されたい。
【0136】
本明細書では、全ての数値が、明示的に示されているか否かにかかわらず、用語「約(about)」によって修飾されるとみなされる。本明細書で使用される場合、用語「約」は生じ得る数量のばらつきを指す。用語「約」によって修飾されるか否かにかかわらず、特許請求の範囲はその数量と同等のものを含む。
【0137】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、別段の明確な指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。
【0138】
「含まない(free of)」、「含まない(does not contain)」、「構成されない(does not comprise)」は不純物を除外しない。不純物は、本発明によって達成される目的に関して、技術的効果を有さない。
【0139】
本明細書の文脈において、「基本的に非発光性」または「非発光性」という用語は、素子からの可視発光スペクトルに対する化合物または層の寄与が、可視発光スペクトルに対して10%未満、好ましくは5%未満であることを意味する。可視発光スペクトルは、約≧380nmから約≦780nmの波長を有する発光スペクトルである。
【0140】
好ましくは、式Iの化合物を含む有機半導体層は、基本的に非発光性または非発光性である。
【0141】
動作電圧は、Uとも呼ばれ、10ミリアンペア/平方センチメートル(mA/cm)におけるボルト(V)で測定される。
【0142】
cd/A効率とも呼ばれるアンペアあたりのカンデラ効率は、10ミリアンペア/平方センチメートル(mA/cm)におけるアンペアあたりのカンデラで測定される。
【0143】
EQEとも呼ばれる外部量子効率は、パーセント(%)で測定される。
【0144】
色空間は、座標CIE-xおよびCIE-y(International Commission on Illumination 1931)によって記述される。青色発光については、CIE-yが特に重要である。より小さいCIE-yは、より深い青色を示す。
【0145】
HOMOとも呼ばれる最高被占分子軌道、およびLUMOとも呼ばれる最低空分子軌道のエネルギー準位は、従来ゼロとみなされる真空エネルギー準位に対する電子ボルト(eV)で測定される。
【0146】
用語「OLED」、「有機発光ダイオード(organic light emitting diode)」、「有機発光ダイオード(organic light-emitting diode)」、「有機発光素子(organic light emitting device)」および「有機光電子素子(organic optoelectronic device)」は、同時に用いられ、同じ意味を有する。
【0147】
「寿命(life-span)」および「寿命(有効期間、lifetime)」という語は同時に用いられ、同じ意味を有する。
【0148】
アノード電極およびカソード電極は、アノード電極/カソード電極またはアノード電極/カソード電極またはアノード電極層/カソード電極層として説明することができる。
【0149】
室温(周囲温度とも呼ばれる)は、23℃である。
【0150】
[図面の簡単な説明]
本発明のこれらおよび/または他の態様および利点は、添付の図面と併せて、例示的な実施形態の以下の説明から明らかになり、より容易に理解されるであろう。
【0151】
図1は、本発明の例示的な実施形態による有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である。
【0152】
図2は、本発明の例示的な実施形態によるOLEDの概略断面図である。
【0153】
図3は、本発明の例示的な実施形態による、電荷発生層を含むタンデムOLEDの概略断面図である。
【0154】
[詳細な説明]
ここで、本発明の例示的な実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示し、同様の参照番号は、全体を通して同様の要素を指す。以下に、本発明の態様を説明するために、図を参照して例示的な実施形態を説明する。
【0155】
ここで、第1の要素が第2の要素「上(on)」または「上(onto)」に形成されるか、または配置されると言及される場合、第1の要素は第2の要素上に直接配置され得、または1つ以上の他の要素がそれらの間に配置され得る。第1の要素が第2の要素「上に直接(directly on)」または「上に直接(directly onto)」形成されるか、または配置されると言及される場合、それらの間に他の要素は配置されない。
【0156】
図1は、本発明の例示的な実施形態による有機発光ダイオード(OLED)100の概略断面図である。OLED100は、基板110、アノード120、正孔注入層(HIL)130、正孔輸送層(HTL)140、発光層(EML)150、電子輸送層(ETL)160を含む。電子輸送層(ETL)160は、EML150上に形成される。電子輸送層(ETL)160上には、電子注入層(EIL)180が配置されている。カソード190は、電子注入層(EIL)180上に直接配置されている。
【0157】
単一の電子輸送層160の代わりに、任意で電子輸送積層(ETL)を使用することができる。
【0158】
図2は、本発明の別の例示的な実施形態によるOLED100の概略断面図である。図2は、図2のOLED100が電子ブロッキング層(EBL)145および正孔ブロッキング層(HBL)155を含む点で図1と異なる。
【0159】
図2を参照すると、OLED100は、基板110、アノード120、正孔注入層(HIL)130、正孔輸送層(HTL)140、電子ブロッキング層(EBL)145、発光層(EML)150、正孔ブロッキング層(HBL)155、電子輸送層(ETL)160、電子注入層(EIL)180、およびカソード電極190を含む。
【0160】
好ましくは、本発明による組成物を含む、または本発明による組成物からなる有機半導体層は、EML、HBLまたはETLであってもよい。
【0161】
図3は、本発明の別の例示的な実施形態によるタンデムOLED200の概略断面図である。図3は、図3のOLED100がさらに電荷発生層(CGL)および第2の発光層(151)を含む点で、図2と異なる。
【0162】
図3を参照すると、OLED200は、基板110、アノード120、第1の正孔注入層(HIL)130、第1の正孔輸送層(HTL)140、第1の電子ブロッキング層(EBL)145、第1の発光層(EML)150、第1の正孔ブロッキング層(HBL)155、第1の電子輸送層(ETL)160、n型電荷発生層(n型CGL)185、正孔発生層(p型電荷発生層;p型GCL)135、第2の正孔輸送層(HTL)141、第2の電子ブロッキング層(EBL)146、第2の発光層(EML)151、第2の正孔ブロッキング層(EBL)156、第2の電子輸送層(ETL)161、第2の電子注入層(EIL)181およびカソード190を含む。
【0163】
好ましくは、本発明による有機半導体層は、第1のEML、第1のHBL、第1のETL、n型CGLおよび/または第2のEML、第2のHBL、第2のETLであってもよい。
【0164】
図1図2および図3には示されていないが、OLED100および200を密封するために、カソード電極190上にシール層をさらに形成してもよい。また、他にも種々の改変が可能である。
【0165】
以下、本発明の1つ以上の実施形態を、以下の実施例を参照して詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は、本発明の1つ以上の例示的な実施形態の目的および範囲を限定することを意図するものではない。
【0166】
表1は、以下の実験の部に詳細に記載される素子例1から得られた結果に対する本発明の効果を示す。
【0167】
【表1】
【0168】
本発明は、寿命を許容範囲内に維持しながら、電圧/効率比を調整することを可能にした。
【0169】
[実験の部]
一般的な方法
〔双極子モーメント〕
N原子を含む分子の双極子モーメント
【0170】
【数1】
【0171】
は、
【0172】
【数2】
【0173】
【数3】
【0174】
によって与えられる:
ここで、
【0175】
【数4】
【0176】
および
【0177】
【数5】
【0178】
は、分子中の原子iの部分電荷および位置である。
【0179】
双極子モーメントは、半経験的分子軌道法によって決定される。
【0180】
分子構造の幾何学は、プログラムパッケージTURBOMOLE V6.5(TURBOMOLE GmbH、Litzenhardtstrasse19、76135 Karlsruhe、Germany)に実装されているように、気相中の6-31G基底関数系とともにハイブリッド機能B3LYPを用いて最適化される。2つ以上のコンフォメーションが実行可能である場合、最低の総エネルギーを有するコンフォメーションが、分子の結合長を決定するために選択される。
【0181】
〔HOMOおよびLUMOの計算値〕
HOMOおよびLUMOは、プログラムパッケージTURBOMOLE V6.5(TURBOMOLE GmbH、Litzenhardtstrasse19、76135 Karlsruhe、Germany)を用いて計算される。分子構造の最適化された幾何学ならびにHOMOおよびLUMOエネルギー準位は、気相中の6-31G基底関数系とともにハイブリッド機能B3LYPを適用することによって決定される。2つ以上のコンフォメーションが実行可能である場合、最低の総エネルギーを有するコンフォメーションが選択される。
【0182】
本発明はさらに、以下の実施例によって説明されるが、これらの実施例は単に説明のためのものであり、拘束するものではない。
【0183】
〔素子実験の支持材料〕
F1は
【0184】
【化5】
【0185】
N-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9-ジメチル-N-(4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン、CAS1242056-42-3;
F2は
【0186】
【化6】
【0187】
N-(4-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)フェニル)-N-(4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル)-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン、CAS1824678-59-2;
F3は
【0188】
【化7】
【0189】
2-(3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、CAS1955543-57-3;
F4は
【0190】
【化8】
【0191】
2,4-ジフェニル-6-(4’,5’,6’-トリフェニル-[1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’:3’’’,1’’’’-キンクエフェニル]-3’’’’-イル)-1,3,5-トリアジン、CAS2032364-64-8;
F5は
【0192】
【化9】
【0193】
2-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、CAS1801992-44-8;
F6は
【0194】
【化10】
【0195】
1,3-ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン-2-イル)ベンゼン、CAS721969-94-4;
B1は
【0196】
【化11】
【0197】
4’-(4-(4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル)ナフタレン-1-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-カルボニトリル、CAS2032421-37-5;
LiQはリチウム8-ヒドロキシキノリノラートであり、H09は市販の青色発光体ホストであり、BD200は市販の青色発光体であり、両方とも韓国のSFCによって供給されている;
PD2は
【0198】
【化12】
【0199】
4,4’,4’’-((1E,1’E,1’’E)-シクロプロパン-1,2,3-トリイリデントリス(シアノメタニルイリデン))トリス(2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリル)、CAS1224447-88-4。
【0200】
〔化合物E2の合成〕
<2-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)-4-フェニル-6-(3-(10-フェニルアントラセン-9-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン(E2)>
500mLの三口フラスコ中で、化合物A(CAS番号1689576-03-1、15g、43.6mmol、1当量)、ボロン酸B(CAS番号1023674-81-8、17.9g、49.0mmol、1.1当量)および炭酸カリウム(12.0g、55.9mmol、2当量)をTHF(350mL)および蒸留水(87mL)と一緒に入れた。黄色の懸濁液を、Nを60分間バブリングすることによって脱気した。次に、Pd(dppf)Cl(0.15g、0.21mmol)を窒素向流下で添加した。次いで、反応物を、窒素下、75℃(浴温度)で19時間加熱した。室温に冷却し、溶媒を蒸発させた後、残渣を4LのDCM/クロロホルムで抽出し、有機層をpHが中性になるまで合計7.5Lの水で部分洗浄した。フロリジル層上で濾過した後、有機層を蒸発させ、残渣を200mLのヘキサンで処理した。沈殿物を濾過し、120℃で2回、高真空下で乾燥させた。
【0201】
20.3g(73%理論値)MS[M+H]+638を得た。
【0202】
〔化合物E3の合成〕
<3-(10-(3-(2,6-ジフェニルピリミジン-4-イル)フェニル)アントラセン-9-イル)フェニル)ジメチルホスフィンオキシド(E3)>
3口丸底フラスコを窒素でフラッシュし、2,4-ジフェニル-6-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ピリミジン(26.26g、60.46mmol、1当量)、(3-(10-ブロモアントラセン-9-イル)フェニル)ジメチルホスフィンオキシド(25.98g、63.48mmol、1.05当量)、炭酸カリウム(16.71g、120.9mmol、2当量)、テトラヒドロフラン(240mL)および水(60mL)を充填した。反応混合物をNで30分間脱気し、触媒[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(0.22g、0.30mmol、0.005当量)を添加した。混合物を75℃で3日間撹拌した。
【0203】
反応混合物を室温に冷却させ、生成物を濾過によって収集した。固形物を中性になるまで水で洗浄し、3×150mLのメタノールで洗浄し、次いで真空下50℃で2時間乾燥させた。粗生成物をDCMに溶解し、シリカゲルで濾過し、溶媒を除去した。生成物をクロロベンゼンから再結晶し、ヘキサンで洗浄し、次いで真空下100℃で一晩乾燥させた。収率61%、ESI-MS637(M+H)。
【0204】
〔化合物E4の合成〕
<2-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)-4-フェニル-6-(3-(3,5,6-トリフェニルピラジン-2-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン(E4)>
3口丸底フラスコを窒素でフラッシュし、2,3,5-トリフェニル-6-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)ピラジン(38.2g、75mmol、1当量)、2-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)-4-クロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(25.79g、75mmol、1当量)、炭酸カリウム(20.73g、150mmol、2当量)、テトラヒドロフラン(300mL)および水(75mL)を入れた。反応混合物を真空下および還流下で脱気し、触媒テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.73g、1.5mmol、0.02当量)を添加した。混合物を65℃で19時間撹拌した。
【0205】
反応混合物を10℃に冷却し、生成物を濾過により回収した。固形物をテトラヒドロフランおよび水で洗浄し、次いで真空下50℃で3日間乾燥させた。粗生成物をクロロホルムに溶解し、シリカゲルで濾過し、溶媒を100mLに減らした。生成物を200mLのシクロヘキサンと共に撹拌することによって一晩沈殿させ、次いで濾過によって収集し、乾燥させた。固体を250mLのクロロホルムに溶解し、200mLのメチルtert-ブチルエーテルで一晩再沈殿させた。
【0206】
生成物を濾過により得、次いで真空下60℃で一晩乾燥させた。収率74%、ESI-MS692(M+H)。
【0207】
〔化合物E6の合成〕
<2-(3-(2,6-ジメチルピリジン-3-イル)フェニル)-4-(2’,6’-ジフェニル-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(E6)>
【0208】
【化13】
【0209】
A)2-(2’,6’-ジフェニル-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-4-イル)-4-フェニル-6-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン
フラスコを窒素でフラッシュし、2-(3-クロロフェニル)-4-(2’,6’-ジフェニル-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(24.4g、39.2mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(12.9g、51.0mmol)、KOAc(11.5g、117.6mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(934mg、2.0mmol)およびトリス(ジベンジリデナセトン)ジパラジウム(0)(897mg、1mmol)を充填した。無水ジオキサン(200mL)を添加し、反応混合物を窒素雰囲気下で100℃に一晩加熱した。室温まで冷却した後、得られた沈殿物を吸引濾過によって単離し、水(600mL)およびメタノール(200mL)で洗浄した。次に、粗生成物をジクロロメタンに溶解し、フロリジルのパッドを通して濾過した。追加のジクロロメタン(2.5L mL)ですすいだ後、濾液を減圧下で濃縮した。得られた沈殿物を吸引濾過により単離し、n-ヘキサン(100mL)で洗浄して、24.6g(86%)の中間体を得た。
【0210】
B)2-(3-(2,6-ジメチルピリジン-3-イル)フェニル)-4-(2’,6’-ジフェニル-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(E6)
次に、フラスコを窒素でフラッシュし、2-(2’,6’-ジフェニル-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-4-イル)-4-フェニル-6-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-1,3,5-トリアジン(12.2g、16.3mmol)、3-ブロモ-2,6-ジメチルピリジン(2.6mL、19.6mmol)、KPO(8.7g、40.8mmol)およびクロロ(クロチル)(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル)パラジウム(II)(198mg、0.33mmol)を充填した。脱気ジオキサンおよび水の混合物(4:1、100mL)を加え、反応混合物を窒素雰囲気下で一晩50℃に加熱した。室温まで冷却した後、得られた沈殿物を吸引濾過によって単離し、水(1.0L)およびメタノール(100mL)で洗浄した。粗生成物をジクロロメタンに溶解し、NADTCの水溶液(3%、150mL)、次いで水(2×200mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、シリカゲルのパッドを通して濾過した。追加のジクロロメタン(2.0L)およびジクロロメタン/メタノール(98/2、1.5L)ですすいだ後、濾液を減圧下で濃縮した。得られた沈殿物を吸引濾過により単離し、乾燥後に6.4gの化合物1を得た。昇華によって最終精製を遂げた。ESI-MS:m/z=719.2([M+H])。
【0211】
〔素子の調製〕
素子例で使用される全ての本発明の層は、前記第1の有機化合物が第1の揮発源から揮発され、前記第2の有機化合物が第2の揮発源から揮発され、ドーパントが存在する場合には第3の揮発源からドーパントが揮発され、化合物が固体支持体上に共蒸着される、従来の真空熱蒸着(VTE)手順によって調製された。
【0212】
〔素子例1〕
nドープ電子輸送層内に前記第1および第2の有機化合物を含む上面発光青色OLED
素子構造を表2に示す。
【0213】
【表2】
【0214】
〔素子例2〕
ドープされていない電子輸送層中に前記第1および第2の有機化合物を含む上面発光青色OLED
素子構造を表3に示す。
【0215】
【表3】
【0216】
表4は、この実験の結果を示す。
【0217】
【表4】
【0218】
実験は、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物のみからなる本発明による層が、当技術分野で知られているnドープ電子輸送層のような(最新技術のカソードからの)等しく良好な電子注入を可能にすることを示している。
【0219】
〔素子例3〕
ドープされていない電子輸送層中に前記第1および第2の有機化合物を含むタンデムOLED
前記第1および第2の有機化合物を含む本発明の層と、化合物F5およびLiQからなる重量比50:50の最新技術の層とのさらなる比較がモデルタンデムOLEDにおいて行われ、試験された電子輸送層は、化合物F6および金属リチウムからなる重量比98:2のnドープ電荷発生層に隣接して、かつそれと直接接触して配置された。表5は、この実験の結果を示す。
【0220】
【表5】
【0221】
結果は、同等の性能で、本発明の層が素子の安定性を著しく改善することを示す。
【0222】
前述の説明および従属請求項に開示された特徴は、別々に、およびそれらの任意の組合せの両方で、独立請求項においてなされた開示の態様を、その多様な形態で実現するための材料であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0223】
図1】本発明の例示的な実施形態による有機発光ダイオード(OLED)の概略断面図である。
図2】本発明の例示的な実施形態によるOLEDの概略断面図である。
図3】本発明の例示的な実施形態による、電荷発生層を含むタンデムOLEDの概略断面図である。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-08-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、カソードと、少なくとも1つの発光層と、有機半導体層とを含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機半導体層は、前記少なくとも1つの発光層と前記カソードとの間に配置され、
前記有機半導体層は
a)第1のC10~C42アレーン構造部分および/または第1のC~C42ヘテロアレーン構造部分を含む第1の有機化合物であって、
i)ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージにより計算された前記第1の有機化合物の双極子モーメントが、0~2.5デバイであり、かつ
ii)ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージにより計算された、真空エネルギー準位をゼロとした絶対スケールにおける前記第1の有機化合物のLUMOエネルギー準位が、-1.7eV~-2.1eVの範囲にある第1の有機化合物、ならびに
b)第2のC10~C42アレーン構造部分および/または第2のC~C42ヘテロアレーン構造部分と、さらに、ホスフィンオキシドおよびホスフィンスルフィドから選択される少なくとも1つの極性基とを含む第2の有機化合物であって、
iii)ハイブリッド機能B3LYPおよびGaussian6-31G基底関数系を用いてTURBOMOLE V6.5プログラムパッケージにより計算された前記第2の有機化合物の双極子モーメントが、1.5~10デバイであり、かつ
iv)真空エネルギー準位をゼロとした絶対スケールにおける前記第2の有機化合物のLUMOエネルギー準位が、前記第1の有機化合物のLUMOエネルギー準位よりも0.25eV未満高いか、または低い第2の有機化合物を含み、
前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物とが互いに異なっている、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物は、C、H、B、Si、Ge、O、N、P、S、FおよびIからなる群から選択される原子のみを含む、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記有機半導体層が、電気的なn-ドーパントをさらに含む、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記n-ドーパントが、少なくとも1つの金属カチオンおよび少なくとも1つのアニオンを含む金属塩である、請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記金属塩の前記金属カチオンがアルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属からなる群から選択される、請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記金属塩のアニオンが、キノリノラート、ホスフィンオキシドフェノラートおよびホウ酸塩からなる群から選択される、請求項4または5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記第1の有機化合物の、前記第2の有機化合物に対する重量比率が、99:1~1:99である、請求項1~6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物のモル重量が、それぞれ、300~3000g/molである、請求項1~7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記第2の有機化合物において、
a)極性基はホスフィンオキシドであり、ならびに/または
b)前記C10~C42アレーン構造部分、および/もしくはC~C42ヘテロアレーン構造部分は、少なくとも2つの融合した芳香環を含む、
請求項1~8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記第1の有機化合物に含まれるC10~C42アレーン構造部分および/またはC~C42ヘテロアレーン構造部分は、少なくとも2つの融合した芳香環を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
式E3を有する化合物。
【化1】
【国際調査報告】