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特表2022-511952カンナビゲロールキノン酸およびその塩
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】カンナビゲロールキノン酸およびその塩
(51)【国際特許分類】
   C07C 66/00 20060101AFI20220125BHJP
   C07C 51/373 20060101ALI20220125BHJP
   C07C 51/41 20060101ALI20220125BHJP
   C07C 211/63 20060101ALI20220125BHJP
   C07C 229/26 20060101ALI20220125BHJP
   C07C 279/14 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 5/48 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220125BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220125BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
C07C66/00 CSP
C07C51/373 ZNA
C07C51/41
C07C211/63
C07C229/26
C07C279/14
A61P43/00 111
A61P9/10
A61P1/04
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P1/16
A61P13/12
A61P17/06
A61P17/02
A61P5/48
A61P25/00
A61P9/12
A61P35/00
A61P3/04
A61P3/10
A61K31/122
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533246
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2019084764
(87)【国際公開番号】W WO2020120637
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】18382908.4
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521251268
【氏名又は名称】エメラルド ヘルス ファーマシュウティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムノス ブランコ,エドアルド
(72)【発明者】
【氏名】アペンディノ,ジオバニ
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206CB27
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA42
4C206ZA45
4C206ZA66
4C206ZA68
4C206ZA70
4C206ZA75
4C206ZA81
4C206ZA89
4C206ZA96
4C206ZB11
4C206ZB26
4C206ZC41
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB20
4H006AC44
4H006BR80
4H006BS30
4H006NB23
(57)【要約】
本出願は、式(I)の化合物、または式(II)のその薬学的塩、ならびに該化合物を得るためのプロセスおよび該塩を得るためのプロセスに関する。さらに開示されるのは、薬剤として、特にペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)アゴニストとして使用するための、式(I)の化合物、または式(II)のその該薬学的塩である。該化合物は、アテローム硬化症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、肝線維症、腎症、乾癬、皮膚創傷治癒、皮膚再生、膵炎、胃炎、神経変性障害、神経炎症性障害、強皮症、癌、高血圧、肥満、および2型糖尿病などのPPARγアゴニストに応答する疾患の治療または予防に適している。
【化1】
【化2】

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】
または式Iの前記化合物の式IIの薬学的塩であって、
【化2】
[式中、R n+が、
金属カチオン、
アミノ酸カチオン、
式IIIのアンモニウムカチオン
【化3】
(式中、R、R、RおよびRが各々、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択されるか、またはR、R、RおよびRの2つが、連結して複素環基を形成する)、ならびに
式(IV)のグアニジニウムカチオン
【化4】
(式中、R´、R´、R´、R´およびR´が各々、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択されるか、またはR´、R´、R´、R´およびR´の2つが、連結して複素環基を形成する)からなる群から選択され、
nが、1、2、3、および4からなる群から選択される数である]、化合物または薬学的塩。
【請求項2】
前記化合物が、式(I)の化合物である、請求項1に記載の化合物。
【化5】
【請求項3】
前記化合物が、式(II)の薬学的塩
【化6】
(式中、nが、1または2から選択される数である)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
n+が、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
n+が、式IIIのアンモニウムカチオンであり、R、R、RまたはRのうちの少なくとも1つが、アルキル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、アミノアルキル、シクロアルキル、アリールアキル、アルキルアリール、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
n+が、アミノ酸カチオンである、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
n+が、Na、K、Ca2+、またはトロメタミン、エチレンジアミン、L-アルギニン、L-リジン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、ジシクロヘキシルアミン、メグルミン、およびベンザチンのカチオンからなる群から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項8】
式Iの化合物を得るためのプロセスであって、
【化7】
前記プロセスが、
a.少なくとも11.5のpKaを有する塩基の存在下で、非プロトン性溶媒中の酸化剤でカンナビゲロール酸(CBGA)を酸化させるステップであって、前記pKaが25℃の水中で測定されて、式Iの化合物を得る、ステップ、
【化8】
および
b.式Iの前記化合物を単離するステップを含む、プロセス。
【請求項9】
ステップ(a)の前記非プロトン性溶媒が、エーテルまたはエステルである、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記酸化剤が、亜塩素酸塩、硝酸塩、過ヨウ素酸塩、タングステン酸塩、および空気からなる群から選択される、請求項8または9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記塩基が、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルコキシド、またはアルカリ金属アルキルシリルアミドである、請求項8~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
式IIの薬学的塩を得るためのプロセスであって、
【化9】
[式中、R n+が、
金属カチオン、
アミノ酸カチオン、
式IIIのアンモニウムカチオン
【化10】
(式中、R、R、RおよびRが各々、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択されるか、またはR、R、RおよびRの2つが、連結して複素環基を形成する)、ならびに
式(IV)のグアニジニウムカチオン
【化11】
(式中、R´、R´、R´、R´およびR´が各々、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択されるか、またはR´、R´、R´、R´およびR´の2つが、連結して複素環基を形成する)であり、
前記プロセスが、
i.R n+が、金属カチオンである場合、
i.a.式Iの化合物の溶液を前記金属カチオンと接触させること、
i.b.式Iの前記化合物の溶液を第1のカチオンと接触させて、式Iの前記化合物および前記第1のカチオンの塩を形成すること、ならびに式Iの前記化合物および前記第1のカチオンの前記塩を前記金属カチオンと接触させること、または
i.c.式Iの前記化合物の溶液を、前記金属カチオンが誘導される金属もしくは前記金属の無機化合物と接触させること、
ii.R n+が、アミノ酸カチオンである場合、
ii.a.式Iの前記化合物の溶液を前記アミノ酸カチオンと接触させること、
ii.b.式Iの前記化合物の溶液を第1のカチオンと接触させて、式Iの前記化合物および前記第1のカチオンの塩を形成すること、ならびに式Iの前記化合物および前記第1のカチオンの前記塩を前記アミノ酸カチオンと接触させること、または
ii.c.式Iの前記化合物の溶液を、前記アミノ酸カチオンがプロトン化によって誘導されるアミノ酸と接触させること、
iii.R n+が、式IIIのアンモニウムカチオンである場合、
iii.a.式Iの前記化合物の溶液を式IIIの前記アンモニウムカチオンと接触させること、
iii.b.式Iの前記化合物の溶液として第1のカチオンと接触させて、式Iの前記化合物および前記第1のカチオンの塩を形成すること、ならびに式Iの前記化合物および前記第1のカチオンの前記塩を式IIIの前記アンモニウムカチオンと接触させること、または
iii.c.Rが、Hである場合、式Iの前記化合物の溶液を式IIIの前記アンモニウムカチオンがプロトン化によって誘導される式Vのアミンと接触させること、
【化12】
iv.R n+が、式IVのグアニジン誘導体のグアニジニウムカチオンである場合、
iv.a.式Iの前記化合物を式IVの前記グアニジニウムカチオンと接触させること、
iv.b.式Iの前記化合物の溶液として第1のカチオンと接触させて、式Iの前記化合物および前記第1のカチオンの塩を形成すること、ならびに式Iの前記化合物および前記第1のカチオンの前記塩を式IVの前記グアニジニウムカチオンと接触させること、または
iv.c.式Iの前記化合物の溶液を式IVの前記グアニジウムカチオンがプロトン化によって誘導される式IVbの前記グアニジン誘導体と接触させること、を含み、
【化13】
nが、1、2、3、および4からなる群から選択される数である]、プロセス。
【請求項13】
薬剤として使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の式Iの化合物、または式IIのその薬学的塩。
【請求項14】
PPARγアゴニストに応答する疾患の治療または予防に使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の式Iの化合物、または式IIのその薬学的塩。
【請求項15】
PPARγアゴニストに応答する前記疾患が、アテローム硬化症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、肝線維症、腎症、乾癬、皮膚創傷治癒、皮膚再生、膵炎、胃炎、神経変性障害、神経炎症性障害、強皮症、癌、高血圧、肥満、および2型糖尿病からなる群から選択される、請求項14に記載の使用のための式Iの化合物、または式IIのその薬学的塩。
【請求項16】
請求項1に記載の、有効量の式Iの化合物、または式IIのその薬学的塩を患者に投与することを含む、PPARγアゴニストに応答する疾患を治療または予防するための、方法。
【請求項17】
PPARγアゴニストに応答する前記疾患が、アテローム硬化症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、肝線維症、腎症、乾癬、皮膚創傷治癒、皮膚再生、膵炎、胃炎、神経変性障害、神経炎症性障害、強皮症、癌、高血圧、肥満、および2型糖尿病からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンナビゲロールキノン酸およびその塩、ならびに該酸およびその塩の合成に関する。さらに、本発明は、該カンナビゲロールキノン酸およびその塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
核内受容体(NR)は、創薬の主要な標的である。NRは、リガンド依存性の転写因子であり、それらの標的遺伝子の転写活性を調節するDNAと直接相互作用する能力を有している。これらの受容体は、発達、細胞のホメオスタシス、および代謝に必要不可欠な役割を果たす。
【0003】
核内受容体に関する命名法では、核内サブファミリー1C(NR1C)のペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)グループは、哺乳動物のPPARの3つのサブタイプ:PPARα(NR1C1とも呼ばれる)、PPARβ/δ(NR1C2とも呼ばれる)、およびPPARγ(PPARγ、グリタゾン受容体、またはNR1C3とも呼ばれる)を含む。
【0004】
キノンは、急性の細胞毒性および免疫毒性を含む様々なインビボの危険な効果を引き起こし得る毒性学的な中間体のクラスを表す。キノンがこれらの効果を引き起こすメカニズムは非常に複雑になり得る。キノンはマイケルアクセプターであり、細胞の損傷は重要な細胞タンパク質および/またはDNAのアルキル化を通じて生じる可能性がある。あるいは、キノンは、高酸化還元活性の分子であり、セミキノンラジカルと酸化還元サイクルすることができ、脂質、タンパク質、およびDNAを含む酸化された細胞高分子の形成を通じて細胞内に重篤な酸化ストレスを引き起こす可能性がある活性酸素種(ROS)の形成をもたらす。治療用に使用されるキノン系化合物の多数の例があるが、非特異的な毒性および選択性の欠如が懸念されるため、マイケルアクセプターモチーフは、薬物リードにおける設計によって導入されることはめったにない。
【0005】
キノン系治療化合物の一例は、WO2011/117429に報告されており、カンナビゲロールヒドロキシキノン(前述の国際特許出願ではCBG-QまたはVCE-003とも呼ばれる)の合成は、PPARγ調節に応答する疾患および状態における使用と併せて記載されている。PPARγ調節に応答する疾患は、WO2011/117429に含まれるように、アテローム硬化症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、肝線維症、腎症、乾癬、皮膚創傷治癒、皮膚再生、膵炎、胃炎、神経変性障害、癌;高血圧、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、肥満および2型糖尿病である。カンナビゲロール分子にキノンモチーフを導入すると、PPARγへのその親和性が高まり、かつその転写活性が高まる。
【0006】
さらなる研究により、WO2011/117429に記載されているカンナビゲロールヒドロキシキノン(CBG-Q)が、酸化/親電子性ストレスの細胞センサーである転写因子Nrf2も活性化することが示されている。したがって、カンナビゲロールにキノンモチーフを導入することによって、PPARγアゴニストおよびNrf2アクチベーターとして発揮されるような2つの独立した活性が生じる。WO2015/128200は、位置2での特異的な修飾により、PPARγアゴニスト効果を示すが、親電子性(Nrf2活性化)および細胞毒性活性を欠くPPARγ関連疾患の治療に適した化合物を開示している。
【0007】
したがって、これまで合成することができなかった、PPARγアゴニスト効果を示すが、親電子性(Nrf2活性化)および細胞毒性活性を欠く化合物を提供する必要がある。該化合物は、必然的に、PPARγ調節に応答する疾患および状態の治療または予防における薬学的使用に適しているべきである。好ましくは、該化合物は、先行技術に記載されている、PPARγアゴニスト効果を示すが、親電子性(Nrf2活性化)および細胞毒性活性を欠く化合物よりも改善された薬力学的および薬物動態学的特性を示す。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、式Iの化合物
【化1】
または式Iの薬学的塩に関する。一実施形態では、式Iの薬学的塩は、式II
【化2】
[式中、R n+は、
金属カチオン、
アミノ酸カチオン、および
式IIIのアンモニウムカチオン
【化3】
(式中、R、R、RおよびRは各々、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択されるか、またはR、R、RおよびRの2つは、連結して複素環基を形成する)、ならびに
式(IV)のグアニジニウムカチオン
【化4】
(式中、R´、R´、R´、R´およびR´は各々、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択されるか、またはR´、R´、R´、R´およびR´の2つは、連結して複素環基を形成する)からなる群から選択され、
nは、1、2、3、および4からなる群から選択される数である]によって表される。
【0009】
本発明はまた、式IIの薬学的塩
【化5】
[式中、R n+は、
アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオン、
アミノ酸カチオン、および
式IIIのアンモニウムカチオン
【化6】
(式中、R、R、RおよびRは各々、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択されるか、またはR、R、RおよびRの2つは、連結して複素環基を形成する)からなる群から選択され、
nは、1または2から選択される数である]を指す。
【0010】
本発明はまた、式IIの薬学的塩
【化7】
[式中、式IIの薬学的塩は、式Iの化合物のアニオン
【化8】
ならびに
アルカリ金属塩基のカチオンと、
アルカリ土類金属塩基のカチオンと、
L-リジン、L-アルギニン、トリメチルアミン、プロピルアミン、メチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、2-(ジメチルアミン)エタノール、トロメタミン、メグルミン、シクロブチルアミン、シクロプロパンメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、1-ビシクロ[1.1.1]ペンチルアミン、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、アニリン、ピリジン、キノリン、フェニレンジアミン、およびベンザチンからなる群から選択される化合物から、プロトン化によって、誘導されたカチオンと、からなる群から選択されるカチオンを含む塩であり、
nは、1または2から選択される数である]に関する。
【0011】
加えて、本発明はまた、式Iの化合物を得るためのプロセスに関し、
【化9】
該プロセスは、
a.少なくとも11.5のpKaを有する塩基の存在下で、非プロトン性溶媒中の酸化剤でカンナビゲロール酸(CBGA)を酸化させるステップであって、該pKaが25℃の水中で測定されて、式Iの化合物を得る、ステップ、
【化10】
b.式Iの化合物を単離する、ステップを含む。
【0012】
本発明はまた、式Iの化合物を得るためのプロセスに関し、
【化11】
該プロセスは、
a.少なくとも11.5のpKaを有する塩基の存在下で、非プロトン性溶媒中の酸化剤でカンナビゲロール酸(CBGA)を酸化させるステップであって、該pKaが25℃の水中で測定されて、式Iの化合物を得る、ステップ、
【化12】
b.式Iの化合物を単離する、ステップを含み、
該酸化剤は、空気であり、該塩基は、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルコキシド、またはアルカリ金属アルキルシリルアミンから選択され、該非プロトン性溶媒は、トルエン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、2-メチルテトラヒドロフラン、および酢酸エチルからなる群から選択される。
【0013】
さらに、本発明はまた、式IIの薬学的塩
【化13】
[式中、R n+は、
金属カチオン、アミノ酸カチオン、または式IIIのアンモニウムカチオン
【化14】
(式中、R、R、RおよびRは各々、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択されるか、またはR、R、RおよびRの2つは、連結して複素環基を形成する)、ならびに
式(IV)のグアニジニウムカチオン
【化15】
(式中、R´、R´、R´、R´およびR´は各々、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択されるか、またはR´、R´、R´、R´およびR´の2つは、連結して複素環基を形成する)であり、
該プロセスは、
i.R n+が、金属カチオンである場合、
i.a.式Iの化合物の溶液を該金属カチオンと接触させること、または
i.b.式Iの化合物の溶液を第1のカチオンと接触させて、式Iの化合物および該第1のカチオンの塩を形成すること、ならびに式Iの化合物および該第1のカチオンの該塩を該金属カチオンと接触させること、または
i.c.式Iの化合物の溶液を、該金属カチオンが誘導される金属もしくは該金属の無機化合物と接触させること、
ii.R n+が、アミノ酸カチオンである場合、
ii.a.式Iの化合物の溶液を該アミノ酸カチオンと接触させること、
ii.b.式Iの化合物の溶液を第1のカチオンと接触させて、式Iの化合物および該第1のカチオンの塩を形成すること、ならびに式Iの化合物および該第1のカチオンの該塩を該アミノ酸カチオンと接触させること、または
ii.c.式Iの化合物の溶液を、該アミノ酸カチオンがプロトン化によって誘導されるアミノ酸と接触させること、
iii.R n+が、式IIIのアンモニウムカチオンである場合、
iii.a.式Iの化合物の溶液を式IIIの該アンモニウムカチオンと接触させること、または
iii.b.式Iの化合物の溶液として第1のカチオンと接触させて、式Iの化合物および該第1のカチオンの塩を形成すること、ならびに式Iの化合物および該第1のカチオンの該塩を式IIIの該アンモニウムカチオンと接触させること、または
iii.c.Rが、Hである場合、式Iの化合物の溶液を式IIIの該アンモニウムカチオンがプロトン化によって誘導される式Vのアミンと接触させること、
【化16】
iv.R n+が、式IVのグアニジニウムカチオンである場合、
iv.a.式Iの化合物を式IVの該グアニジニウムカチオンと接触させること、または
iv.b.式Iの化合物の溶液として第1のカチオンと接触させて、式Iの化合物および該第1のカチオンの塩を形成すること、ならびに式Iの化合物および該第1のカチオンの該塩を式IVの該グアニジニウムカチオンと接触させること、または
iv.c.式Iの化合物の溶液を式IVの該グアニジウムカチオンがプロトン化によって誘導される式IVbのグアニジン誘導体と接触させること、を含み、
【化17】
nは、1、2、3、および4からなる群から選択される数である]を得るためのプロセスに関する。
【0014】
さらに、本発明はまた、式IIの薬学的塩
【化18】
[式中、R n+は、
金属カチオン、
アミノ酸カチオン、または
式IIIのアンモニウムカチオン
【化19】
(式中、R、R、RおよびRは各々、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択されるか、またはR、R、RおよびRの2つは、連結して複素環基を形成する)、ならびに
式(IV)のグアニジニウムカチオン
【化20】
(式中、R´、R´、R´、R´およびR´は各々、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択されるか、またはR´、R´、R´、R´およびR´の2つは、連結して複素環基を形成する)であり、
該プロセスは、
i.a.R n+が、金属カチオンである場合、式Iの化合物式Iの化合物の溶液を金属カチオンと接触させること、
ii.c.R n+が、アミノ酸カチオンである場合、式Iの化合物の溶液を、該アミノ酸カチオンがプロトン化によって誘導されるアミノ酸と接触させること、
iii.R n+が、式IIIのアンモニウムカチオンである場合、
iii.a.式Iの化合物の溶液を式IIIの該アンモニウムカチオンと接触させること、または
iii.b.式Iの化合物の溶液として第1のカチオンと接触させて、式Iの化合物および該第1のカチオンの塩を形成すること、ならびに式Iの化合物および該第1のカチオンの該塩を式IIIの該アンモニウムカチオンと接触させること、または
iii.c.Rが、Hである場合、式Iの化合物の溶液を式IIIの該アンモニウムカチオンがプロトン化によって誘導される式Vのアミンと接触させること、
【化21】
iv.c.R n+が、式IVのグアニジニウムカチオンである場合、式Iの化合物の溶液を式IVの該グアニジウムカチオンがプロトン化によって誘導される式IVbのグアニジン誘導体と接触させること、を含み、
【化22】
好ましくは、
該金属カチオンは、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンであり、
該アミノ酸カチオンは、プロトン化によってL-リジンまたはL-アルギニンから誘導されたカチオンであり、
式IIIの該アンモニウムカチオンは、プロトン化によってトリメチルアミン、プロピルアミン、メチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、2-(ジメチルアミノ)-エタノール、トロメタミン、メグルミン、シクロブチルアミン、シクロプロパンメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、1-ビシクロ[1.1.1]ペンチルアミン、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、アニリン、ピリジン、キノリン、フェニレンジアミン、またはベンザチンから誘導されたカチオンであり、
nは、1、2、3、および4からなる群から選択される数である]を得るためのプロセスに関する。
【0015】
さらに、本発明は、薬剤として使用するための、本発明による式Iの化合物、または式IIのその薬学的塩に関する。
【0016】
そのうえ、本発明は、PPARγアゴニストに応答する疾患の治療または予防に使用するための、本発明による式Iの化合物、または式IIのその薬学的塩に関する。
【0017】
本発明はまた、式IIの薬学的塩
【化23】
[式中、式IIの薬学的塩は、式Iの化合物のアニオン
【化24】
ならびに
アルカリ金属無機化合物から誘導されたカチオンと、
アルカリ土類金属無機化合物から誘導されたカチオンと、
L-リジン、L-アルギニン、トリメチルアミン、プロピルアミン、メチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、2-(ジメチルアミノ)-エタノール、トロメタミン、メグルミン、シクロブチルアミン、シクロプロパンメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、1-ビシクロ[1.1.1]ペンチルアミン、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、アニリン、ピリジン、キノリン、フェニレンジアミン、およびベンザチンからなる群から選択される化合物から、プロトン化によって、誘導されたカチオンと、からなる群から選択されるカチオンを含む、
PPARγアゴニストに応答する疾患の治療または予防に使用するための塩であり、PPARγアゴニストに応答する疾患は、アテローム硬化症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、肝線維症、腎症、乾癬、皮膚創傷治癒、皮膚再生、膵炎、胃炎、神経変性障害、神経炎症性障害、強皮症、癌、高血圧、肥満、および2型糖尿病からなる群から選択され、
nは、1または2から選択される数である]に関する。
【0018】
いくつかの態様では、本発明は、本発明による有効量の式Iの化合物、または式IIのその薬学的塩を患者に投与することを含む、PPARγアゴニストに応答する疾患を治療または予防するための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】式IIのカンナビゲロールキノン酸のトロメタミン塩(IIa)の濃度(濃度の対数として)に対してプロットした分極のパーセンテージとして表されるPPARγに対する相対的親和性。
図2】式IIのカンナビゲロールキノン酸のエチレンジアミン塩(IIb)の濃度(濃度の対数として)に対してプロットした分極のパーセンテージとして表されるPPARγに対する相対的親和性。
図3】式IIのカンナビゲロールキノン酸のベンザチン塩(IIc)の濃度(濃度の対数として)に対してプロットした分極のパーセンテージとして表されるPPARγに対する相対的親和性。
図4】式IIのカンナビゲロールキノン酸のカルシウム塩(IId)の濃度(濃度の対数として)に対してプロットした分極のパーセンテージとして表されるPPARγに対する相対的親和性。
図5】式IIのカンナビゲロールキノン酸のナトリウム塩(IIe)の濃度(濃度の対数として)に対してプロットした分極のパーセンテージとして表されるPPARγに対する相対的親和性。
図6】式IIのカンナビゲロールキノン酸のジシクロヘキシルアミン塩(IIf)の濃度(濃度の対数として)に対してプロットした分極のパーセンテージとして表されるPPARγに対する相対的親和性。
図7】式IIのカンナビゲロールキノン酸のL-アルギニン塩(IIg)の濃度(濃度の対数として)に対してプロットした分極のパーセンテージとして表されるPPARγに対する相対的親和性。
図8】式IIのカンナビゲロールキノン酸のメグルミン塩(IIh)の濃度(濃度の対数として)に対してプロットした分極のパーセンテージとして表されるPPARγに対する相対的親和性。
図9】式IIのカンナビゲロールキノン酸のL-リジン塩(IIi)の濃度(濃度の対数として)に対してプロットした分極のパーセンテージとして表されるPPARγに対する相対的親和性。
図10】式IIのカンナビゲロールキノン酸のカリウム塩(IIj)の濃度(濃度の対数として)に対してプロットした分極のパーセンテージとして表されるPPARγに対する相対的親和性。
図11】式IIのカンナビゲロールキノン酸の2-ジメチルアミノエタノール塩(IIk)の濃度(濃度の対数として)に対してプロットした分極のパーセンテージとして表されるPPARγに対する相対的親和性。
図12】カンナビゲロールキノン酸(I)の濃度(濃度の対数として)に対してプロットした分極のパーセンテージとして表されるPPARγに対する相対的親和性。
図13】293T細胞におけるPPARγトランス活性化アッセイ。試験した化合物の濃度(μM)をx軸に示し、PPARγ誘導倍率をy軸に示す。VCE-003を比較対照として使用した。倍数活性化レベルは、基準として、任意のPPARγアゴニストまたは活性化剤の存在なしで、対照サンプル(-)を取り上げて計算された。データは、少なくとも3つの独立した実験の平均±SDとして表される。
図14】3NP(3-ニトロプロピオン酸)中毒の後、およびカンナビゲロールキノン酸(I)による処置の後のマウスの行動スコア。 マウスは、経口カンナビゲロールキノン酸(I)(ゴマ油で溶解した10mg/Kg)による処置の後、および腹腔内送達(エタノール/クレモホル/生理食塩水で溶解した10mg/Kg)の後、それらの神経学的なステータスを判定するため、行動試験を受けた。後肢の抱擁、自発運動活動性、後弯症を重症度に基づいて0から2で評価した:0のスコアは典型的には正常機能を示し、2は深刻な影響を受けていることを示す。値は1つの群当たり6匹の動物の平均±SEMとして表される。
図15】3NP中毒の後、および式IIのカンナビゲロールキノン酸のナトリウム塩(IIe)による処置の後のマウスの行動スコア。 マウスは、カンナビゲロールキノン酸の経口ナトリウム塩(生理食塩水に溶解した30mg/Kg)による処置の後、および腹腔内送達(生理食塩水で溶解した10mg/Kg)の後、それらの神経学的なステータスを判定するため、行動試験を受けた。後肢の抱擁、自発運動活動性、後弯症を重症度に基づいて0から2で評価した:0のスコアは典型的には正常機能を示し、2は深刻な影響を受けていることを示す。値は1つの群当たり6匹の動物の平均±SEMとして表される。
図16】3NP中毒マウスにおけるカンナビゲロールキノン酸(I)の神経保護および抗炎症活性。 線条体(ニッスル染色)およびIba1(ミクログリアマーカー)の神経細胞の損失は、ビヒクル、3NP+ビヒクル、3NP+化合物I(経口および腹腔内)で処置されたマウスの線条体の冠状切片を免疫染色することにより、検出された。マウス線条体中のニッスル染色(A)およびIba1(B)陽性細胞の定量化。神経細胞およびミクログリアの合計の平均数量が示される。値は1つの群当たり3匹の動物の平均±SEMとして表される。
図17】3NP中毒マウスにおける式IIのカンナビゲロールキノン酸のナトリウム塩(IIe)の神経保護および抗炎症活性。 線条体(ニッスル染色)およびIba1(ミクログリアマーカー)の神経細胞の損失は、ビヒクル、3NP+ビヒクル、3NP+式IIのカンナビゲロールキノン酸のナトリウム塩(経口および腹腔内)で処置されたマウスの線条体の冠状切片を免疫染色することにより、検出された。マウス線条体中のニッスル染色(A)およびIba1(B)陽性細胞の定量化。神経細胞およびミクログリアの合計の平均数量が示される。値は1つの群当たり3匹の動物の平均±SEMとして表される。
図18】3NP中毒マウスの脳における炎症誘発性メディエーターの発現に対するカンナビゲロールキノン酸(I)の効果。 炎症マーカーTNFα(A)およびIL-6(B)の遺伝子発現は、3NP+ビヒクルマウスと比較して、3NP+カンナビゲロールキノン酸(I)処置マウス(10mg/kg、経口および腹腔内)において下方調節された。発現レベルは2-ΔΔCt法を用いて計算された。値は1つの群当たり3匹の動物の平均±SEMとして表される。
図19】3NP中毒マウスの脳における炎症誘発性メディエーターの発現に対する式IIのカンナビゲロールキノン酸のナトリウム塩(IIe)の効果。 炎症マーカーTNFα(A)およびIL-6(B)の遺伝子発現は、3NP+ビヒクルマウスと比較して、3NP+式IIのカンナビゲロールキノン酸のナトリウム塩(IIe)処置マウス(30mg/kg経口および10mg/Kg腹腔内)において下方調節された。発現レベルは2-ΔΔCt法を用いて計算された。値は1つの群当たり3匹の動物の平均±SEMとして表される。
図20】カンナビゲロールキノン酸(I)は、6-ヒドロキシドーパミン(6-OH-DA)投与マウスにおける臨床症状を緩和する。 C57BL/6マウスは、6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)または生理食塩水(対照マウス)を脳室内に片側に注入され、6-OHDA注入の16時間後に開始される、カンナビゲロールキノン酸(I)(ゴマ油中の20mg/mL経口、およびTween80/生理食塩水(1/16)中の10mg/Kg腹腔内)またはビヒクル(14日)を用いた慢性型の腹腔内処置を受けた。SHAM群は、6-OHDAの注入をせず、外科処置を受けたマウスに相当する。運動協調性は、ロータロッドのパフォーマンスで評価され、運動活性はコンピュータ支援アクチメータを使用して評価された。A:経口処置後のポール試験の結果、B:経口処置後のシリンダー立ち上がり試験の結果、C:腹腔内処置後のポール試験の結果、D:腹腔内処置後のシリンダー立ち上がり試験の結果。値は1つの群当たり6匹の動物の平均±SEMとして表される。
図21】式IIのカンナビゲロールキノン酸のナトリウム塩(化合物IIe)は、6-OH-DA投与マウスにおける臨床症状を緩和する。 C57BL/6マウスは、6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)または生理食塩水(対照マウス)を脳室内に片側に注入され、6-OHDA注入の16時間後に開始される、生理食塩水で溶解した式IIのカンナビゲロールキノン酸のナトリウム塩(40mg/mL経口および10mg/kg腹腔内)またはビヒクル(14日)を用いた慢性型の腹腔内処置を受けた。運動協調性は、ロータロッドのパフォーマンスで評価され、運動活性はコンピュータ支援アクチメータを使用して評価された。A:経口処置後のポール試験の結果、B:経口処置後のシリンダー立ち上がり試験の結果、C:腹腔内処置後のポール試験の結果、D:腹腔内処置後のシリンダー立ち上がり試験の結果。値は1つの群当たり6匹の動物の平均±SEMとして表される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、式Iの化合物
【化25】
または式Iの該化合物の式IIの薬学的塩
【化26】
[式中、R n+は、
金属カチオン、
アミノ酸カチオン、および
式IIIのアンモニウムカチオン
【化27】
(式中、R、R、RおよびRは各々、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択されるか、またはR、R、RおよびRの2つは、連結して複素環基を形成する)、ならびに
式(IV)のグアニジニウムカチオン
【化28】
(式中、R´、R´、R´、R´およびR´は各々、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択されるか、またはR´、R´、R´、R´およびR´の2つは、連結して複素環基を形成する)からなる群から選択され、
nは、1、2、3、および4からなる群から選択される数である]を指す。
【0021】
本発明はまた、該式Iの化合物または式IIのその該薬学的塩を含む薬学的組成物に関する。本発明はまた、薬剤として使用するための式Iの該化合物または式IIのその該薬学的塩、ならびにPPARγアゴニストに応答する疾患の治療または予防に使用するための、式Iの該化合物または式IIのその該薬学的塩を指す。同様に、本発明はまた、有効量の式Iの該化合物、または式IIのその該薬学的塩を患者に投与することを含む、PPARγアゴニストに応答する疾患を治療または予防するための方法を指す。本発明はまた、式Iの該化合物を得るためのプロセス、および式IIの該薬学的塩を得るためのプロセスを指す。
【0022】
本明細書に記載の式Iの化合物、およびその式IIの薬学的塩はまた、それらの互変異性体、異性体、立体異性体、多形体、およびこれらを含む組成物を含む。
【0023】
本発明の一実施形態は、式(I)の化合物に関する。
【化29】
本発明の別の実施形態は、式(II)の、式Iの化合物の薬学的塩
【化30】
(式中、nは、1、2、3、および4からなる群から選択される数である)に関する。
【0024】
指数「n」は、カチオンR n+の電荷、および式IIのカルボキシレートアニオンの数を指し、1、2、3および4、好ましくは1または2からなる群から選択される全ての数である。
【0025】
好ましい実施形態では、R n+は金属カチオンであり、該金属カチオンはアルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンであり、より好ましくはR n+は、Ca2+(nが2である)、またはKもしくはNa(nが1である)である。
【0026】
好ましい実施形態では、R n+は式IIIのアンモニウムカチオンであり、R、R、RおよびRは各々、独立して、H、アルキル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、シクロアルキル、アリールアルキル、アミノアルキル、およびアリールアルキルアミノアルキルからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、アルキルはC1~6アルキルであり、最も好ましくは、メチル、エチル、プロピル、およびブチルからなる群から選択される。好ましい実施形態では、ヒドロキシアルキルは、C1~6ヒドロキシアルキルであり、より好ましくは、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、およびヒドロキシブチルからなる群から選択される。好ましい実施形態では、ポリ(ヒドロキシ)アルキルは、エタニル-1,2-ジオール、2-(ヒドロキシメチル)プロパニル-1,3-ジオール、ブタニル-1,2,3,4-テトロール、(2R,4R)-ペンタニル-1,2,3,4,5-ペントール、(2R,3R,4R,5S)-ヘキサニル-1,2,3,4,5-ペントール、および(2R,3R,4R,5R)-ヘキサニル-1,2,3,4,5,6-ヘキソールからなる群から選択される。好ましい実施形態では、シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、およびビシクロヘキシルからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、アリールアルキルは、ベンジルである。好ましい実施形態では、アミノアルキルは、C1~6アミノアルキルであり、最も好ましくは、アミノメチルおよびアミノエチルからなる群から選択される。好ましい実施形態では、アリールアルキルアミノアルキルは、ベンジルアミノエチルである。
【0027】
好ましい実施形態では、R n+はアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、および式IIIのアンモニウムカチオンからなる群から選択され、R、R、RおよびRは各々、独立して、H、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、エタニル-1,2-ジオールの、2-(ヒドロキシメチル)プロパニル-1,3-ジオール、ブタニル-1,2,3,4-テトロール、(2R,4R)-ペンタニル-1,2,3,4,5-ペントール、(2R,3R,4R,5S)-ヘキサニル-1,2,3,4,5-ペントール、(2R,3R,4R,5R)-ヘキサニル-1,2,3,4,5,6-ヘキソール、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、アミノメチル、アミノエチル、およびベンジルアミノエチルからなる群から選択される。
【0028】
別の好ましい実施形態では、R n+は、式IIIのアンモニウムカチオンであり、RはHであり、式IIIのアンモニウムカチオンは、プロトン化によって式Vのアミンから誘導されたアンモニウムカチオンであり、
【化31】
部分R、RおよびRは、式IIIにおいて、その式IIIのアンモニウムカチオンの少なくとも1つの置換基がHであり、少なくともRがHである場合、本発明では、式Vと同じである。より好ましくは、R、RおよびRは各々、独立して、アルキル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、アミノアルキル、シクロアルキル、アリールアキル、アルキルアリール、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択される。
【0029】
さらにより好ましい実施形態では、R n+が式IIIのアンモニウムカチオンであり、RがHである場合、R、RまたはRのうちの少なくとも1つは、アルキルまたはシクロアルキルである。さらにより好ましくは、該アルキルは、直鎖アルキルまたは分岐鎖のアルキル部分である。さらにより好ましくは、アルキルまたはシクロアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、またはビシクロヘキシルからなる群から選択される。さらにより好ましくは、式IIIのアンモニウムカチオンは、プロトン化によって、トリメチルアミン、プロピルアミン、メチルアミン、プロピルアミン、2-プロパンアミン、ジエチルアミン、ジ(シクロヘキシル)アミン、シクロブチルアミン、シクロプロパンメチルアミン、1-ビシクロ[1.1.1]ペンチルアミン、メグルミン、または2-(ジメチルアミノ)エタノールから誘導されたアンモニウムカチオンである。最も好ましくは、式IIIのアンモニウムカチオンは、プロトン化によって、ジ(シクロヘキシル)アミン、メグルミン、または2-(ジメチルアミノ)エタノールから誘導されたアンモニウムカチオンである。
【0030】
別のさらにより好ましい実施形態では、R n+が式IIIのアンモニウムカチオンであり、RがHである場合、R、RまたはRのうちの少なくとも1つは、直鎖または分岐鎖のヒドロキシアルキルまたはポリ(ヒドロキシ)アルキル基である。さらにより好ましくは、RがHであり、R、RまたはRのうちの少なくとも1つが、直鎖または分岐鎖のヒドロキシアルキルまたはポリ(ヒドロキシ)アルキル基である場合、式IIIのアンモニウムカチオンは、プロトン化によって、トロメタミン、メグルミンまたは2-(ジメチルアミノ)エタノールから誘導されたアンモニウムカチオンである。
【0031】
別のさらにより好ましい実施形態では、R n+が式IIIのアンモニウムカチオンであり、RがHである場合、R、R、RまたはRのうちの少なくとも1つは、アミノアルキルまたはアリールアルキルアミノアルキル部分である。さらにより好ましくは、アミノアルキルまたはアリールアルキルアミノアルキル部分は、アミノエチル、ベンジルアミノエチル、アミノプロピル、アミノイソプロピルまたはアミノブチル部分から選択される。一実施形態では、R n+が式IIIのアンモニウムカチオンであり、RがHである場合、R、RまたはRのうちの少なくとも1つは、アミノアルキルまたはアリールアルキルアミノアルキル部分であり、式IIIのアンモニウムカチオンは、プロトン化によって、エチレンジアミン、ベンザチンまたはジアミノプロパンから誘導されたアンモニウムカチオンである。最も好ましくは、式IIIのアンモニウムカチオンは、プロトン化によって、エチレンジアミンまたはベンザチンから誘導されたアンモニウムカチオンである。
【0032】
別のさらにより好ましい実施形態では、R n+が式IIIのアンモニウムカチオンであり、RがHである場合、R、R、RまたはRのうちの少なくとも1つは、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルキルアミノアルキル、アルキルアミノアリールまたはアミノアリールから選択されるか、あるいはR、R、RおよびRの2つは、連結して複素環基を形成する。さらにより好ましくは、R、RまたはRのうち少なくとも1つが、アリールアルキルまたはアリールアルキルアミノアルキルから選択される場合、式IIIのアンモニウムカチオンは、プロトン化によって、ベンザチンから誘導されたアンモニウムカチオンであり、R、RまたはRのうち少なくとも1つがアリールまたはアミノアリールから選択されるか、あるいはR、R、RおよびRの2つが、連結して複素環基を形成する場合、式IIIのアンモニウムカチオンは、プロトン化によって、アニリン、ピリジン、キノリンまたはフェニレンジアミンから誘導されたアンモニウムカチオンである。
【0033】
別の好ましい実施形態では、R n+は、NH 、N,N,N-トリメチルエタノールアンモニウムおよびキノロニウムからなる群から選択される式IIIのアンモニウムカチオンである。
【0034】
別の好ましい実施形態では、R n+は、アミノ酸カチオンである。より好ましくは、該アミノ酸カチオンは、プロトン化によってアミノ酸から誘導され、該アミノ酸は天然アミノ酸である。最も好ましくは、アミノ酸は、L-リジンまたはL-アルギニンである。
【0035】
本発明で定義される式IVのグアニジニウムカチオンは、以下の式IVの異なる標準的表現のいずれかによって表されるように、電荷が非局在化されるカチオンおよび電荷が窒素原子のいずれかに局在化されるカチオンを含む。
【化32】
別の好ましい実施形態では、R n+は、式IVのグアニジニウムカチオンであり、プロトン化によってL-アルギニンから誘導される。
【0036】
別の好ましい実施形態では、R n+は、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、ならびにプロトン化によって、L-リジン、L-アルギニン、トリメチルアミン、プロピルアミン、メチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、2-(ジメチルアミノ)-エタノール、トロメタミン、メグルミン、シクロブチルアミン、シクロプロパンメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、1-ビシクロ[1.1.1]ペンチルアミン、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、アニリン、ピリジン、キノリン、フェニレンジアミン、およびベンザチンから誘導されたカチオンからなる群から選択される。所与のカチオンが所与の化合物から「誘導されたカチオン」として本明細書に開示される場合、該カチオンは、該化合物のアミノまたはグアニジン部分のプロトン化によって得られるものである。したがって、別の好ましい実施形態では、R n+は、それぞれ、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、L-リシネートカチオン、L-アルギネートカチオン、トリメチルアンモニウムカチオン、プロピルアンモニウムカチオン、メチルアンモニウムカチオン、イソプロピルアンモニウムカチオン、ブチルアンモニウムカチオン、ジエチルアンモニウムカチオン、2-ヒドロキシエチル-ジメチルアンモニウムカチオン、(HOCHCNH カチオン、Nメチル-N-ソルビチルアンモニウムカチオン、シクロブチルアンモニウムカチオン、シクロプロパンメチルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン、1-ビシクロ[1.1.1]ペンチルアンモニウムカチオン、2-アミノ-エチルアンモニウムカチオン、アミノプロピルアンモニウムカチオン、フェニルアンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、キノリニウムカチオン、アミノフェニルアンモニウムカチオンまたはN-[N’-(フェニルメチル)-アミノエチル]-N-(フェニルメチル)アンモニウムカチオンからなる群から選択される。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、R n+は、Na、K、Ca2+、またはプロトン化によってトロメタミン、エチレンジアミン、L-アルギニン、L-リジン、2-(ジメチルアミン)エタノール、メグルミン、もしくはベンザチンから誘導されたカチオンから選択される。
【0038】
カンナビゲロール酸(CBGA)は、式Iの化合物および本発明の式IIのその全ての薬学的塩の前駆体である。
【0039】
本発明は、本明細書に記載されるように、式Iの化合物を得るためのプロセスに関し、
【化33】
該プロセスは、
a.少なくとも11.5のpKaを有する塩基の存在下で、非プロトン性溶媒中の酸化剤でカンナビゲロール酸(CBGA)を酸化させるステップであって、該pKaが25℃の水中で測定されて、式Iの化合物を得る、ステップ、
【化34】
および
b.ステップ(a)で形成された式Iの化合物を単離する、ステップを含む。
【0040】
好ましい実施形態では、該非プロトン性溶媒は、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、2-メチルテトラヒドロフラン、または酢酸エチルである。好ましい実施形態では、ステップ(a)の好適な溶媒は、エーテルまたはエステル溶媒である。より好ましくは、エーテル溶媒は、テトラヒドロフランまたはジオキサンであり、エステル溶媒は、酢酸エチルである。
【0041】
好ましい実施形態では、酸化剤は、亜塩素酸塩、硝酸塩、過ヨウ素酸塩、タングステン酸塩、または空気から選択される。より好ましくは、酸化剤は、亜塩素酸ナトリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、硝酸アンモニウムセリウム(IV)、タングステン酸ナトリウム二水和物、または空気である。最も好ましくは、酸化剤は、空気である。
【0042】
本出願で言及されるpKa値は、25℃の水中で、好ましくは電位差滴定、分光法、ボルタンメトリー、電気伝導法または電気泳動によって測定される。
【0043】
好ましい実施形態では、ステップ(a)で使用される塩基は、少なくとも14、より好ましくは少なくとも15、最も好ましくは約15~38のpKaを有する。より好ましい実施形態では、ステップ(a)で使用される塩基は、アルコキシド、アルカリ性アミド塩基、またはアルカリ性アルキルシリルアミド塩基である。さらにより好ましい実施形態では、ステップ(a)で使用される塩基は、アルコキシド、またはアルカリ性アルキルシリルアミドである。
【0044】
本発明の目的で、用語アルコキシドは、アニオンROを含む塩基を指し、Rは、アルキル基である。好適なアルコキシドの例としては、リチウム、ナトリウムまたはカリウムアルコキシド、特に、リチウム、ナトリウムまたはカリウムメトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、プロポキシド、ブトキシド、tert-ブトキシドが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ステップ(a)で使用されるアルコキシドは、リチウム、ナトリウムまたはカリウムtert-ブトキシド、最も好ましくはカリウムtert-ブトキシドである。
【0045】
本発明の目的で、用語アルカリ性アミド塩基は、Rを含むアルカリ性アザニド塩基を指し、Rは、Hまたはアルキル基であり得る。好適なアルカリ性アミド塩基の例としては、リチウムジエチルアミドまたはリチウムジイソプロピルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本発明の目的で、用語アルカリ性アルキルシリルアミド塩基は、アニオンRを含むアザニド塩基を指し、Rは、Hまたはアルキルシリル基である。好ましくは、アルキルシリルアミドは、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドまたはリチウムビス(トリメチルシリル)アミド、最も好ましくは、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドまたはカリウムビス(トリメチルシリル)アミドである。
【0047】
特に好ましい実施形態では、ステップ(a)は、アルコキシドおよびエーテル溶媒の存在下で、空気でカンナビゲロール酸(CBGA)を酸化させることを含む。
【0048】
好ましくは、ステップ(a)は、15℃~25℃で少なくとも1時間実施される。より好ましくは1~10時間、最も好ましくは2~5時間である。
【0049】
本発明はまた、本明細書に開示されるように、式IIの薬学的塩
【化35】
[式中、R n+は、
金属カチオン、
アミノ酸カチオン、
式IIIのアンモニウムカチオン
【化36】
(式中、R、R、RおよびRは各々、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択されるか、またはR、R、RおよびRの2つは、連結して複素環基を形成する)、ならびに
式(IV)のグアニジニウムカチオン
【化37】
(式中、R´、R´、R´、R´およびR´は各々、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ポリ(ヒドロキシ)アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノアリール、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アリールアルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノアリールからなる群から選択されるか、またはR´、R´、R´、R´およびR´の2つは、連結して複素環基を形成する)からなる群から選択され、
該プロセスは、
i.R n+が、金属カチオンである場合、
i.a.式Iの化合物の溶液を該金属カチオンと接触させること、または
i.b.式Iの化合物の溶液を第1のカチオンと接触させて、式Iの化合物および該第1のカチオンの塩を形成すること、ならびに式Iの化合物および該第1のカチオンの該塩を該金属カチオンと接触させること、
i.c.式Iの化合物の溶液を、該金属カチオンが誘導される金属もしくは該金属の無機化合物と接触させること、
ii.R n+が、アミノ酸カチオンである場合、
ii.a.式Iの化合物の溶液を該アミノ酸カチオンと接触させること、
ii.b.式Iの化合物の溶液を第1のカチオンと接触させて、式Iの化合物および該第1のカチオンの塩を形成すること、ならびに式Iの化合物および該第1のカチオンの該塩を該アミノ酸カチオンと接触させること、または
ii.c.式Iの化合物の溶液を、該アミノ酸カチオンがプロトン化によって誘導されるアミノ酸と接触させること、
iii.R n+が、式IIIのアンモニウムカチオンである場合、
iii.a.式Iの化合物の溶液を式IIIの該アンモニウムカチオンと接触させること、または
iii.b.式Iの化合物の溶液として第1のカチオンと接触させて、式Iの化合物および該第1のカチオンの塩を形成すること、ならびに式Iの化合物および該第1のカチオンの該塩を式IIIの該アンモニウムカチオンと接触させること、または
iii.c.Rが、Hである場合、式Iの化合物の溶液を式IIIの該アンモニウムカチオンがプロトン化によって誘導される式Vのアミンと接触させること、
【化38】
および
iv.R n+が、式IVのグアニジニウムカチオンである場合、
iv.a.式Iの化合物を式IVの該グアニジニウムカチオンと接触させること、
iv.b.式Iの化合物の溶液として第1のカチオンと接触させて、式Iの化合物および該第1のカチオンの塩を形成すること、ならびに式Iの化合物および該第1のカチオンの該塩を式IVの該グアニジニウムカチオンと接触させること、または
iv.c.式Iの化合物の溶液を式IVの該グアニジウムカチオンがプロトン化によって誘導される式IVbのグアニジン誘導体と接触させること、を含み、
【化39】
nは、1、2、3、および4からなる群から選択される数である]を得るためのプロセスに関する。
【0050】
(i.b)、(ii.b)、(iii.b)および(iv.b)で定義される第1のカチオンは、アンモニウムカチオンまたはグアニジンカチオンなどのアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、遷移金属カチオンまたは有機カチオン、好ましくはアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンまたは遷移金属カチオンであり得る任意のカチオンを指す。この意味で、(i.b)、(ii.b)、(iii.b)および(iv.b)は、2つのサブステップで式IIの薬学的塩を提供し、第1のサブステップで、式Iの化合物の塩および第1のカチオンが形成され、第2のサブステップで、該第1のカチオンがカチオンR +nに置き換えられて、式IIの薬学的塩を形成する。該置き換えは、カチオンR +nの塩および第1のアニオンを使用してイオン交換によって行われ、該第1のアニオンは、好ましくは、ハロゲン化物アニオン、酢酸塩アニオン、乳酸塩アニオン、安息香酸アニオン、トリフレートアニオン(CFSO )、メシル酸アニオン(CHSO )、チオシアン酸アニオン(SCN)、tBuPO アニオン、PF アニオン、FまたはPhアニオン、より好ましくは、Clアニオン、BrアニオンまたはIアニオンまたは酢酸塩アニオン、トリフレートアニオン、メシル酸アニオン、PF アニオンまたはFアニオンから選択されるハロゲン化物アニオンである。
【0051】
(i.c)では、該金属カチオンが誘導される金属は、金属カチオンの還元型を指す。好ましくは、該金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である。
【0052】
(i.c)では、金属カチオンの無機化合物は、イオン結合による金属カチオンを含む、C-CまたはC-H結合を含まない化合物を指す。好ましくは、金属カチオンの該無機化合物は、水酸化物、酸化物、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、塩酸塩および臭化水素酸塩からなる群から選択され得る。
【0053】
好ましい実施形態では、該プロセスは、
i.a.R n+が、金属カチオンである場合、式Iの化合物の溶液を該金属カチオンと接触させること、
ii.c.R n+が、アミノ酸カチオンである場合、式Iの化合物の溶液を、該アミノ酸カチオンがプロトン化によって誘導されるアミノ酸と接触させること、
iii.R n+が、式IIIのアンモニウムカチオンである場合、
iii.a.式Iの化合物の溶液を式IIIの該アンモニウムカチオンと接触させること、または
iii.b.式Iの化合物の溶液として第1のカチオンと接触させて、式Iの化合物および該第1のカチオンの塩を形成すること、ならびに式Iの化合物および該第1のカチオンの該塩を式IIIの該アンモニウムカチオンと接触させること、または
iii.c.Rが、Hである場合、式Iの化合物の溶液を式IIIの該アンモニウムカチオンがプロトン化によって誘導される式Vのアミンと接触させること、
【化40】
iv.c.R n+が、式IVのグアニジニウムカチオンである場合、式Iの化合物の溶液を式IVの該グアニジウムカチオンがプロトン化によって誘導される式IVbのグアニジン誘導体と接触させること、を含む。
【化41】
【0054】
本明細書に記載の式IIの薬学的塩を得るためのプロセスの特に好ましい実施形態では、式Iの化合物を、等モル量で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、L-リジン、L-アルギニン、トロメタミン、エチレンジアミン、L-アルギニン、L-リジン、2-(ジメチルアミノ)-エタノール、ジシクロヘキシルアミン、メグルミン、およびベンザチンからなる群から選択される化合物と接触させることを含む。
【0055】
より特に好ましい実施形態では、R n+は金属カチオンであり、ステップ(i.a)で使用される該金属カチオンは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化カルシウムから選択される化合物に含まれる。
【0056】
式IIの薬学的塩を得るためのプロセスの別のより特に好ましい実施形態では、R n+はアミノ酸カチオンであり、ステップ(ii.c)で使用されるアミノ酸は、天然アミノ酸である。さらにより好ましくは、該アミノ酸は、L-リジンまたはL-アルギニンである。
【0057】
式IIの薬学的塩を得るためのプロセスの別のより特に好ましい実施形態では、R n+は式IIIのアンモニウムカチオンであり、式IIIの該アンモニウムカチオンは、本明細書に記載のように、プロトン化によって式Vのアミンから誘導されたアンモニウムカチオンであり、アルキルアミン、アリールアミン、アルキルジアミン、アリールアルキルジアルキルミン、シクロアルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、またはポリ(ヒドロキシ)アルキルアミンからなる群から選択される。さらに好ましくは、式Vの該アミンは、トロメタミン、メグルミン、2-(ジメチルアミノ)-エタノール、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、およびベンザチンからなる群から選択される。
【0058】
式IIの薬学的塩を得るためのプロセスの別のより特に好ましい実施形態では、R n+はグアニジニウムカチオンであり、ステップ(iv.c)で使用される式(IVb)のグアニジン誘導体は、L-アルギニンである。
【0059】
好ましくは、本明細書に記載の式IIの薬学的塩を得るためのプロセスの各実施形態で使用される溶液は、水、アルコール、エーテルまたはエステルからなる群から選択される溶媒を含む。最も好ましくは、該溶媒は、酢酸エチル、イソプロパノール、エタノール、メタノール、およびエチルエーテルのうちの1つ以上から選択される。
【0060】
本発明はまた、本明細書で上記のように、式Iの化合物を得るためのプロセスによって得られる式Iの化合物、または式IIの薬学的塩を得るためのプロセスによって得られ得る式IIの薬学的塩に関する。
【0061】
本発明の別の実施形態は、有効量の式Iの該化合物および少なくとも1つの薬学的賦形剤または担体を含む薬学的組成物を指す。
【0062】
本発明のさらなる実施形態は、有効量の式IIの該薬学的塩および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤または担体を含む薬学的組成物を指す。
【0063】
以下の実施例および図から推測されるように、本発明の式Iの化合物およびその式IIの全ての薬学的塩の化合物は、PPARγを活性化する能力を示す。
【0064】
本発明はまた、薬剤として使用するための、式Iの化合物または式IIのその該薬学的塩、または式Iの該化合物もしくは式IIのその該薬学的塩を含む薬学的組成物に関する。
【0065】
さらに、本発明は、PPARγアゴニストに応答する疾患の治療または予防に使用するための、式Iの該化合物または式IIのその該薬学的塩、または式Iの該化合物もしくは式IIのその該薬学的塩を含む薬学的組成物を指す。PPARγアゴニストに応答する疾患は、その治療が該PPARγアゴニストの投与から利益を得る疾患である。好ましくは、PPARγに応答する疾患は、アテローム硬化症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、肝線維症、腎症、乾癬、皮膚創傷治癒、皮膚再生、膵炎、胃炎、神経変性障害、神経炎症性障害、強皮症、癌、高血圧、肥満、および2型糖尿病からなる群から選択される。
【0066】
好ましくは、式Iの該化合物または式IIのその該薬学的塩、または式Iの該化合物もしくは式IIのその該薬学的塩を含む薬学的組成物は、Nfr2の活性化を誘導しないPPARγ受容体のPPARγアゴニストとして使用するためのものである。好ましくは、該薬剤は、アテローム硬化症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、肝線維症、腎症、乾癬、皮膚創傷治癒、皮膚再生、膵炎、胃炎、神経変性障害、神経炎症性障害、強皮症、癌、高血圧、肥満、および2型糖尿病などの疾患、ならびにPPARγアゴニストで治療することができる他の疾患の治療に使用するためのものである。
【0067】
本発明の他の実施形態は、アテローム硬化症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、肝線維症、腎症、乾癬、皮膚創傷治癒、皮膚再生、膵炎、胃炎、神経変性障害、神経炎症性障害、強皮症、癌、高血圧、肥満、2型糖尿病などのPPARγ関連疾患、ならびにPPARγアゴニストで治療することができる他の疾患を治療するための細胞毒性が低下した組成物の製造における、式Iの該化合物または式IIのその該薬学的塩の使用に関する。
【0068】
同様に、本発明は、本明細書に記載されるように、有効量の式Iの該化合物、または式IIのその該薬学的塩を患者に投与することを含む、PPARγアゴニストに応答する疾患を治療または予防するための方法に関する。
【0069】
同様に、本発明は、本明細書に記載されるように、式Iの該化合物または式IIのその該薬学的塩を含む有効量の該組成物、および少なくとも1つの賦形剤を患者に投与することを含む、PPARγアゴニストに応答する疾患を治療または予防するための方法に関する。
【0070】
本発明の代替の実施形態は、式Iの該化合物または式IIのその該薬学的塩を、単独で、または組成物、特に薬学的組成物(相加的または相乗的な生物学的活性を有する少なくとも1つの他の活性化合物と組み合わせた、少なくとも式Iの該化合物または式IIのその該薬学的塩を含む)に処方して使用することに関する。あるいは、該組成物は、共溶媒、界面活性剤、油、保湿剤、皮膚軟化剤、防腐剤、安定剤、および抗酸化剤などの担体または賦形剤として少なくとも1つの不活性成分とともに処方することができる。薬理学的に許容される任意の緩衝液、例えば、TRISまたはリン酸緩衝液を使用することができる。
【0071】
本記載の目的で、用語「活性化合物」は、ヒトまたは動物に投与されたときに治療効果を発揮する化学物質または活性成分を意味する。
【0072】
典型的な組成物は、一例として、担体または希釈剤であり得る少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と関連する、本発明の該化合物、または式IIのその該薬学的塩を含む。そのような組成物は、カプセル、小袋、紙または他の容器の形態であり得る。組成物を作製する際に、薬学的組成物を調製するための従来の技術を使用してもよい。例えば、対象の化合物は、通常、アンプル、カプセル、小袋、紙、または他の容器の形態であり得る担体と混合されるか、担体によって希釈されるか、または担体内に封入される。担体が希釈剤として機能する場合、それは、活性化合物のビヒクル、賦形剤、または培地として作用する固体、半固体、または液体の物質であり得る。対象の化合物は、例えば小袋の中の粒状固体容器に吸着させることができる。好適な担体のいくつかの例は、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエトキシル化ヒマシ油、ピーナッツ油、オリーブ油、ラクトース、白土、スクロース、シクロデキストリン、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸またはセルロース、ケイ酸、脂肪酸、脂肪酸アミン、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリドの低級アルキルエーテル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン、ヒドロキシメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンである。同様に、担体または希釈剤は、単独でまたはワックスと混合した、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリルなどの、当該技術分野で既知の任意の徐放物質を含み得る。製剤はまた、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、保存剤、甘味剤または香味剤を含み得る。本発明の製剤は、当該技術分野で周知の手順を利用することにより、患者への投与後に、活性成分の急速放出、持続放出、または遅延放出を提供するように処方され得る。
【0073】
薬学的組成物は、必要に応じて、滅菌され、活性化合物と有害に反応しない助剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝液および/または着色物質などと混合することができる。
【0074】
本発明の1つの好ましい実施形態は、経口、頬側、経鼻、局所、肺、経皮、非経口、直腸、皮下、静脈内、尿道内、筋肉内、鼻腔内、点眼または眼などの作用の適切なまたは所望の部位に、対象の化合物を有効に輸送する任意の経路であり得る、投与経路を指す。
【0075】
経鼻投与の場合、調製物は、エアロゾル用途のために、液体担体、特に水性担体に溶解または懸濁された対象の化合物を含有し得る。担体は、可溶化剤などの添加剤、例えば、プロピレングリコール、界面活性剤、レシチン(ホスファチジルコリン)などの吸収促進剤、またはシクロデキストリン、あるいはパラベンなどの防腐剤を含有し得る。
【0076】
局所製剤を調製するために、対象の化合物は、当該技術分野で知られているように皮膚科学的ビヒクル内に置かれる。投与される対象の化合物の量および局所製剤中の化合物の濃度は、ビヒクル、選択される送達システムまたはデバイス、患者の臨床状態、副作用、および製剤中の化合物の安定性に依存する。したがって、医師は、当該患者または同様の患者の臨床経験に応じて、適切な濃度の対象の化合物を含有している適切な調製物を利用し、投与される製剤の量を選択する。
【0077】
眼科用途の場合、対象の化合物は、眼における使用に適した溶液、懸濁液、および軟膏に処方される。濃度は、通常、局所調製物について上述した通りである。
【0078】
経口投与の場合、固体または液体の単位剤形のいずれかが調製され得る。錠剤などの固形組成物の調製のために、対象の化合物は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、硫酸カルシウム、デンプン、ラクトース、アカシア、メチルセルロース、および薬学的希釈剤または担体と機能的に類似した物質などの従来の成分と混合されて製剤される。
【0079】
カプセルは、対象の化合物を不活性な薬学的希釈剤と混合し、その混合物を適切なサイズの硬ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルに充填することによって調製される。軟ゼラチンカプセルは、対象の化合物のスラリーを許容可能な植物油、軽流動ワセリンまたは他の不活性な油で機械的にカプセル化することによって調製される。シロップ、エリキシル剤、および懸濁液などの経口投与用の液体単位剤形が調製され得る。水溶性剤形は、糖、芳香性の香味剤および防腐剤と一緒に水性ビヒクル中に溶解されて、シロップを形成することができる。エリキシル剤は、芳香性の香味剤と一緒に、糖およびサッカリンなどの適切な甘味剤を有する水アルコール性(例えば、水/エタノール)ビヒクルを使用することによって調製される。懸濁液は、アカシア、トラガカントゴム、メチルセルロースなどの懸濁化剤の助けとともに、水性ビヒクルで調製され得る。
【0080】
非経口使用のための適切な製剤は、適切な注入可能な溶液または懸濁液の使用など、当該技術の開業医には明らかである。無菌である製剤は、皮膚内、筋肉内、血管内、および皮下を含む、様々な局所または非経口の経路に適している。
【0081】
対象の化合物に加えて、組成物は、所望される製剤および送達の様式に依存して、動物またはヒトへの投与用に薬学的組成物を形成するために一般に使用されるビヒクルを含む、薬学的に許容される、無毒の担体または希釈剤を含み得る。希釈剤は、組み合わせの生物学的活性に過度に影響を与えないように選択される。
【0082】
注入可能な製剤に特に有用であるそのような希釈剤の例は、水、様々な生理食塩水、有機塩溶液または無機塩溶液、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス液である。加えて、薬学的組成物または製剤は、他の担体などの添加剤;アジュバント;または無毒で、非治療的な、非免疫原性の安定剤などを含み得る。
【0083】
さらに、賦形剤を製剤中に含まれ得る。例としては、共溶媒、界面活性剤、油、保湿剤、皮膚軟化剤、防腐剤、安定剤、および抗酸化剤が挙げられる。薬理学的に許容される任意の緩衝液、例えば、トリスまたはリン酸緩衝液を使用することができる。希釈剤、添加剤、および賦形剤の有効量は、溶解性または生物活性の観点から薬学的に許容される製剤を得るのに有効な量である。
【0084】
対象の化合物は、ミクロスフェアに組み込まれ得る。対象の化合物をアルブミンミクロスフェアにロードすることができ、そこから、経鼻投与のためにそのようなミクロスフェアを乾燥粉末に回収することが可能である。ミクロスフェアの調製に適した他の物質としては、寒天、アルギン酸塩、キトサン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、アルブミン、アガロース、デキストラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、コラーゲン、およびカゼインが挙げられる。ミクロスフェアは、噴霧乾燥プロセスまたは乳化プロセスなどの当業者に既知の様々なプロセスによって生成され得る。
【0085】
例えば、アルブミンミクロスフェアは、リン酸緩衝液中のウサギ血清アルブミンをオリーブ油に撹拌しながら加えることによって調製され、油中水型エマルジョンを生成することができる。次いで、グルタルアルデヒド溶液は、エマルジョンに加えられ、エマルジョンは撹拌されて、アルブミンを架橋結合する。次いで、ミクロスフェアは、遠心分離によって単離され得、油は除去され、その球は、例えば、石油エーテルで、続いてエタノールで洗浄され得る。最終的に、ミクロスフェアは、ふるいにかけられ、収集され、濾過によって乾燥され得る。
【0086】
デンプンミクロスフェアは、例えばジャガイモデンプンの温かい水性デンプン溶液を、水中のポリエチレングリコールの加熱した溶液に撹拌しながら加えることによって調製され、エマルジョンを形成することができる。(内相としてのデンプン溶液を用いて)二相系が形成された場合、混合物は撹拌を続けながら室温まで冷却され、その上で、内相はゲル粒子に変換される。次いで、これらの粒子は、室温で濾別され、エタノールなどの溶媒中でスラリー状にされ、その後、粒子は再度濾別され、空気中で乾燥するように静置される。ミクロスフェアは、熱処理などの周知の架橋結合手順によって、または化学的架橋結合剤の使用によって、硬化され得る。好適な薬剤としては、グリオキサール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、アジポアルデヒド、グルタルアルデヒド、およびフタルアルデヒドを含むジアルデヒド、ブタジオン、エピクロロヒドリン、ポリリン酸塩、およびホウ酸塩などのジケトンが挙げられる。ジアルデヒドは、アミノ基との相互作用によってアルブミンなどのタンパク質を架橋結合するために使用され、ジケトンは、アミノ基を有するシッフ塩基を形成する。エピクロロヒドリンは、アミノまたはヒドロキシルなどの求核試薬を持つ化合物をエポキシド誘導体に活性化する。
【0087】
本発明の別の好ましい実施形態は、投薬スキームである。用語「単位剤形」は、対象、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、およびげっ歯類などの哺乳動物対象のための一体型の剤形として適切な物理的に個別の単位を指し、各単位は、必要とされる薬学的な希釈剤、担体、またはビヒクルに関連して所望の薬学的効果を生成するために計算される、予め定められた量の活性物質を含有している。本発明の単位剤形の仕様は、(a)活性物質の固有の特性および達成される特定の効果、ならびに(b)ヒトおよび動物での使用のためにそのような活性物質を調合する技術に固有の制限によって、かつそれらに依存して決定される。単位剤形の例は、錠剤、カプセル、丸剤、粉末パケット、ウェーハ、坐剤、顆粒、カシェ剤、茶さじ1杯、テーブルスプーン1杯、スポイト1滴、アンプル、バイアル、定量的排出を伴うエアロゾル、前述のいずれかの分離した倍数、および本明細書に記載されるような他の形態である。組成物は、組成物の1つ以上の単位剤形および本明細書に記載される障害の1つ以上の処置に使用するための説明書を含み得る、キットに含まれ得る。
【0088】
多数の生体高分子のいずれかを含む遅延放出または徐放性送達システム(生物学ベースのシステム)、リポソーム、コロイド、樹脂を利用するシステム、および他のポリマー送達システム、または区画化されたリザーバは、治療用化合物の連続的または長期的なソースを提供するために、本明細書に記載される組成物とともに利用される。そのような遅延放出システムは、局所、眼内、経口、および非経口経路を介した送達のための製剤に適用可能である。それらはまた、凍結乾燥組成物などの無菌固形組成物の形態で製造され得、これは、使用直前に無菌の注入可能培地に溶解または懸濁され得る。それらは、例えば、当該技術分野で既知の懸濁剤または分散剤を含有し得る。
【0089】
有効量の対象の化合物が治療に利用される。本発明に従って使用される化合物の投与量は、化合物および治療される状態、例えば、レシピエント患者の年齢、体重、および臨床状態に応じて変化する。他の因子としては、投与経路、患者、患者の病歴、疾患プロセスの重症度、および特定の化合物の効力が挙げられる。投与量は、患者に許容できない毒性を生じさせることなく、治療された疾患の症状または徴候を改善するのに十分でなければならない。一般に、化合物の有効量は、臨床医または他の資格のある観察者によって指摘されるように、症状の主観的な軽減または客観的に識別可能な改善のいずれかを提供する量である。
【0090】
本発明の最後の実施形態は、PPARγアゴニストで治療することができるか、またはPPARγアゴニストに応答する、アテローム硬化症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、肝線維症、腎症、乾癬、皮膚創傷治癒、皮膚再生、膵炎、胃炎、神経変性障害、神経炎症性障害、強皮症、癌、高血圧、肥満、および2型糖尿病などの疾患を治療するための方法に関し、該方法は、有効量の式Iの化合物または式IIのその薬学的塩、あるいは本発明による式Iの化合物または式IIのその薬学的塩の少なくとも1つを含む組成物の患者への投与を含む。
【実施例
【0091】
以下に記載される本発明の例は、その保護の範囲を制限することなく、開示された実施形態のいくつかを説明することを目的としている。
【0092】
実施例1:式Iの化合物および式IIのその薬学的塩の合成。
式Iの化合物は、それが脱炭酸を受けるほとんどの反応条件において不安定であることを示した。
【0093】
カンナビゲロール酸(CBGA、(Z)-3-(3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエニル)-2,4-ジヒドロキシ-6-ペンチル安息香酸)(0.995g;2.76mmol、Sigma Aldrich)を20℃でTHF(10mL)に溶解し、KOtBu(0.867g;7.73mmol)を加えた(スキーム1)。混合物を空気に開放して3時間撹拌し、反応混合物をAcOEt(50mL)およびHO(50mL)に溶解し、層を分離し、水層をAcOEt(50mL)で洗浄した。有機層を廃棄し、水層をpH=5.5~6.0に酸性化し、AcOEt(2×50mL)で抽出した。酸性有機層を乾燥させ(NaSO)、真空下で濃縮して、化合物1を赤色油として得た(691mg、67%、サンプルはEtOAcを含有していた)。
【0094】
【化42】
NMR-H(CDCl,300MHz)δ ppm:5.08(m,2H),3.18(d,J=7.0Hz,2H),2.80(t,J=7.6Hz,2H),2.00(m,4H),1.73(s,3H),1.65(s,3H),1.57(s,3H),1.50(m,2H),1.36(m,4H),0.89(t,J=7.0Hz,3H)。
【0095】
MS-ESI-m/z:373(M-1、100);ESI+m/z:375(M+1、70)、392(M+NH、100)
これらの条件により、高収率および高純度の式Iの化合物が得られた。
【0096】
式Iの化合物に構造が最も近い化合物であるWO2015128200(スキーム1)に開示されたCBGAメチルエステルの酸化を行う、式Iの化合物を合成する別の代替法が検討された。その合成的経路によって、式Iの酸は提供されなかった。実際、CBGAメチルエステルの酸化はCBGAキノンエステルをもたらしたが、それを式Iの所望の化合物に加水分解する試みは成功しなかった。CBGAの酸化反応には、式Iの化合物の代わりに、VCE-003(CBG-Q)が得られる、脱炭酸を引き起こし得る過酷な条件が必要である。
【化43】
該VCE-003は、位置2に置換がないため、親電子性(Nrf2活性化)および細胞毒性活性をもたらす。この意味で、本発明に記載の方法は、単一の合成ステップで式Iの化合物を得るのに成功した方法を提供する。
【0097】
【化44】
【0098】
トロメタミン塩(IIa)
式Iの化合物(0.105g、0.28mmol)をiPrOH(1mL)に溶解した。トロメタミン(34mg;0.28mmol、Sigma Aldrich)を加え、沈殿物は観察されなかった。混合物を蒸留して残留させ、EtOAcを加えてゴム油を得、これをデカントして、トロメタミン塩(51mg、37%、純度95.61%)を得た。
【0099】
NMR-H(DO,300MHz)δ ppm:5.14(m,2H),3.64(s,22H),2.96(m,2H),2.22(m,2H),2.07(m,2H),1.98(m,2H),1.69(s,3H),1.63(s,3H),1.57(s,3H),1.38(m,2H),1.25(m,4H),0.83(t,J=7.0Hz,3H)。
【0100】
L-リジン塩(IIi)
式Iの化合物(0.065g、0.17mmol)をAcOEt(1mL)に溶解した。L-リジン(25mg、0.174mmol、Sigma Aldrich)の水(0.2mL)中溶液を、滴加した。形成された紫色の油をデカントし、エタノールを加え、真空下で濃縮して、微量の水を除去し、残油をEtO(2mL)で処理して、リジン塩を暗色の固体として得た(48mg、53%、純度93.14%)。
【0101】
NMR-H(DO,300MHz)δ ppm:5.15(m,2H),3.71(t,J=6.4Hz,3H),3.0(m,8H),2.23(m,2H),2.07(m,2H),1.98(m,2H),1.89(m,5H),1.70(s,3H),1.69(m,5H),1.64(s,3H),1.58(s,3H),1,44(m,4H),1.27(m,3H),0.85(m,3H)。
【0102】
L-アルギニン塩(IIg)
式Iの化合物(0.097g、0.259mmol)をAcOEt(1mL)に溶解した。L-アルギニン(45mg、0.259mmol、Sigma Aldrich)の水(0.2mL)中溶液を、滴加して、暗色の油を形成した。溶媒を真空下で除去し、エタノール(2×3mL)を加え、真空下で濃縮して、微量の水を除去した。油性残留物をEtO(2mL)で処理して、アルギニン塩を暗色の固体として得た(87mg、61%、純度98.23%)。
【0103】
NMR-H(DO,300MHz)δ ppm:5.13(m,2H),3.74(t,J=5.9Hz,2H),3.22(t,J=6.4Hz,4H),2.96(d,J=5.9Hz,2H),2.24(m,2H),2.06(m,2H),1.97(m,2H),1.88(m,6H),1.69(s,3H),1.68(m,3H),1.63(s,3H),1.56(s,3H),1.40(m,2H),1.27(m,4H),0.84(m,3H)。
【0104】
ベンザチン塩(IIc)
式Iの化合物(0.10g、0.25mmol)をAcOEt(1mL)に溶解した。ベンザチン(0.067g;0.283mmol、Sigma Aldrich)を加えたところ、わずかな沈殿物が観察された。混合物を0~5℃に冷却し、1時間撹拌し、濾過して、ベンザチン塩を暗色の固体として得た(93mg、53%、純度95.13%)。
【0105】
NMR-H(DMSO-d,300MHz)δ ppm:7.39(m,12H),5.05(m,2H),3.89(s,4H),2.85(m,6H),2.37(m,1H),1.96(m,2H),1.87(m,2H),1.64(s,3H),1.60(m,3H),1.52(s,3H),1.36(s,3H),1.34(m,2H),1.23(m,4H),0.83(m,3H)。
【0106】
エチレンジアミン塩(IIb)
式Iの化合物(0.099g、0.264mmol)をAcOEt(1mL)に溶解し、エチレンジアミン(0.018mL;0.264mmol、Sigma Aldrich)を滴加した。形成された暗色の粘着性ペーストを濾過し、ケーキをEtO(2mL)で洗浄して、エチレンジアミン塩40mgを暗紫色の固体として得た(40mg、35%;96.46%)。
【0107】
NMR-H(DMSO-d,300MHz)δ ppm:4.99(m,2H),3.09(m,5H),2.81(m,5H),2.08(m,2H),1.92(m,2H),1.83(m,2H),1.54(s,3H),1.48(s,3H),1.25(s,3H),1.25(m,2H),1.12(m,4H),0.68(m,3H)。
【0108】
メグルミン塩(IIh)
式Iの化合物(0.106g、0.283mmol)をMeOH(1mL)に溶解した。メグルミン(55mg;0.283mmol、Sigma Aldrich)を加えた。沈殿物は観察されなかった。混合物を残留物まで蒸留し、AcOEt(1mL)を加えて油を得、これをデカントし、EtO(1mL)で洗浄した。高真空で乾燥すると、油は暗色の固体になった(43mg、27%;純度99.29%)。
【0109】
ナトリウム塩(IIe)
式Iの化合物(0.086g、0.23mmol)をAcOEt(1mL)に溶解した。NaOH 1Nの溶液(0.045mL、0.23mmol、Sigma Aldrich)を加え、混合物を蒸留して残留させ、AcOEt(1mL)中でスラリー化し、室温で撹拌し、濾過して、ナトリウム塩を褐色がかった固体として得た(18mg、20%、純度99.34%)。
【0110】
NMR-H(CDCl,300MHz)δ ppm:5.04(m,2H),3.04(d,J=7.0Hz,2H),2.40(t,J=8.2Hz,2H),2.00(m,2H),1.79(m,2H),1.67(s,3H),1.63(s,3H),1.55(s,3H),1.47(m,2H),1.28(m,4H),0.84(t,J=7.0Hz,3H)。
【0111】
カリウム塩(IIj)
式Iの化合物(0.106g、0.283mmol)をEtO(1mL)に溶解した。KOH(0.016g、0.24mmol、Sigma Aldrich)の水(0.05mL)中溶液を加えて、油を形成した。混合物を濃縮して水を除去し、残留物をEtO(2mL)中でスラリー化して、カリウム塩を粘着性固体として得た(29mg、25%、純度90.09%)。母液をメタノール/水 5:0.2(0.5mL)中のKOH(7mg)で処理し、濃縮し、残留物をEtOでスラリー化して、カリウム塩の2番目の収穫物を得た(51mg、44%、91.09%純度)。
【0112】
カルシウム塩(IId)
式Iの化合物(0.099g、0.264mmol)のEtOAc(1mL)中溶液に、水(0.05mL)中のCa(OH)(0.020g、0.264mmol、Sigma Aldrich)の溶液を滴加した。混合物を濃縮して残留させ、次いで、EtOAc(2×1mL)を加え、真空下で濃縮して、微量の水を除去した。残留物をEtOAc(1mL)中で0.5時間スラリー化し、濾過して、カルシウム塩を暗色の固体として得た(105mg、100%、98.66%)。
【0113】
NMR-H(DMSO-d,300MHz)δ ppm:5.10(m,2H),2.08(d,J=7.0Hz,2H),2.18(m,2H),1.97(m,2H),1.87(m,2H),1.73(s,3H),1.63(s,3H),1.55(s,3H),1.24(m,6H),0.85(t,J=7.0Hz,3H)。
【0114】
ジシクロヘキシルアミン塩(IIf)
式Iの化合物(0.105g、0.28mmol)の0~5℃のiPrOH(1mL)中溶液に、ジシクロヘキシルアミン(0.051mg;0.28mmol、Sigma Aldrich)を加えた。混合物を低温で2時間撹拌し、濾過して、ジシクロヘキシルアミン塩を暗色の固体として得た(76mg、49%収率;純度98.74%)。
【0115】
NMR-H(CDCl,300MHz)δ ppm:5.13(m,1H),5.05(m,1H),3.85(bs,4H),3.09(d,J=7.0Hz,2H),2.81(m,4H),2.43(m,2H),1.96(m,12H),1.75(m,10H),1.71(s,3H),1.65(s,3H),1.57(s,3H),1.26(m,23H),0.87(t,J=7.0Hz,3H)。
【0116】
2-(ジメチルアミノ)エタノール塩(IIk)
式Iの化合物(0.097g、0.26mmol)のEtOAc(1mL)中溶液に、2-(ジメチルアミノ)エタノール(0.023mg;0.26mmol、Sigma Aldrich)を加えた。形成された油をデカントし、次いで、EtOで処理したが、固体は形成されなかった。混合物を濃縮し、残留物を高真空下で乾燥させて、表題塩を暗色の油として得た(59mg、49%、純度95.76%)。
【0117】
NMR-H(CDCl,300MHz)δ ppm:5.08(m,2H),4.87(sa,7H),3.87(m,3H),3.08(d,J=7.0Hz,2H),2.98(m,3H),2.73(s,9H),2.42(m,2H),2.01(m,2H),1.93(m,2H),1.70(s,3H),1.65(s,3H),1.57(s,3H),1.50(m,2H),1.31(m,4H),0.87(m,3H)。
【0118】
実施例2:PPARγ結合アッセイ。
PPARγ結合活性は、PolarScreen(商標)PPAR競合アッセイキット(Life Technologies)を使用して、製造元の仕様に従って判定された。PolarScreen(商標)PPAR競合アッセイは、PPARγに結合する化合物のIC50値を判定するための結合アッセイである。
【0119】
図1~12に示されるように、分極のパーセンテージとしてのPPARγに対する相対的親和性を、実施例1で得られた式Iの化合物および式IIの塩の濃度に対してプロットした。
【0120】
式Iの化合物および式IIの塩の濃度は、分極値において最大半分のシフトをもたらし、IC50を判定する。表1は、基準PPARγアゴニストVCE-003と比較して、トロメタミン(IIa)、エチレンジアミン(IIb)、ベンザチン(IIc)、カルシウム(IId)、ナトリウム(IIe)、ジシクロヘキシルアミン(IIf)、L-アルギニン(IIg)、メグルミン(IIh)、L-リジン(IIi)、カリウム(IIj)、および2-ジメチルアミノエタノール(IIk)の式IIの式I(I)および塩のIC50値を含む。
【0121】
【表1】
【0122】
実施例3:PPARγ転写活性
式(I)の酸および式(II)の塩の生物学的活性を調査するために、HEK-293T細胞でPPARγトランス活性化アッセイを実施した。
【0123】
HEK293T細胞を、10%のウシ胎児血清(FBS)で補充したDMEM中に5%のCO、および1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシンを含む湿気のある大気中で37℃で維持した。全ての試薬は、Sigma Co(St Louis、MO、USA)から入手した。HEK293T細胞(2x10/ウェル)を、24時間、Clear Bottom 96ウェルのMicrotest(商標)Optilux(商標)プレートを備えたBD Falcon(商標)Whiteに播種した。その後、製造元の説明書に従って、Roti(著作権)-Fect(Carl Roth、Karlsruhe、Germany)を使用して、細胞を、発現ベクターGAL4-PPARγおよびルシフェラーゼレポーターベクターGAL4-lucで一時的に同時トランスフェクトした。24時間のトランスフェクション後、細胞を6時間、化合物の漸増用量で前処理した。次いで、細胞を、25mMのトリス-リン酸塩pH7.8、8mMのMgCl、1mMのDTT、1%のトリトンX-100、および7%のグリセロール中に溶解させた。ルシフェラーゼ活性は、TriStar LB 941マルチモードマイクロプレートリーダー(Berthold)を使用して、ルシフェラーゼアッセイキット(Promega、Madison、WI、USA)の説明書に従って、細胞溶解物中で測定された。タンパク質濃度は、Bradfordアッセイ(Bio-Rad、Richmond、CA、USA)によって測定された。溶解緩衝液で得られたバックグラウンドを各実験値で差し引き、特定のトランス活性化を未処理細胞に対する誘導倍率として表した。実験は全て、少なくとも3回繰り返された。使用されるプラスミドは、Gal4-hPPARガンマ(プラスミド名:pCMV-BD-hPPARγ、Sinal Laboratory、Dept.of Pharmacology、Dalhousie University製)およびルシフェラーゼ遺伝子に融合した5つのGal4 DNA結合部位を含むGal4-Lucレポータープラスミドであった。上記のアッセイの結果は、図13によって例証され、これは、ルシフェラーゼレポーター遺伝子(PPARγ-GAL4/GAL4-Luc)と組み合わせて、6時間化合物で処理したPPARγを一時的に過剰発現する細胞で実施されるトランス活性化アッセイによる、PPARγ活性に対するCBGA-Q(化合物I)および式IIの塩(R n+は、トロメタミン、L-リジン、L-アルギニン、ベンザチン、エチレンジアミン、メグルミン、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ジシクロヘキシルアミン、およびジメチルアミンから選択される化合物から誘導されたカチオンである)の効果を示す。データは、3回の繰り返しの偏差標準エラーバーの平均として示される。
【0124】
実施例4:ハンチントン病の3NPマウスモデルにおけるカンナビゲロールキノン誘導体の有効性。
ミトコンドリア複合体II酵素の強力な不可逆的阻害剤である、3-ニトロプロピオン酸(3NP)によるマウスの中毒は、動物モデルにおいてミトコンドリア機能障害および酸化ストレスを引き起こし、その結果、ハンチントン病(HD)の病理学のいくつかの側面を彷彿とさせる無数の神経学的、生化学的、組織学的効果がもたらされる。例えば、3NP処置マウスは、対照動物と比較して、後肢の抱擁、ジストニア、後弯症、および一般的な自発運動活動性において高いスコアを示した。
【0125】
線条体の病変を、成体(16週齢;30g)オスのC57BL/6マウス(Harlan Iberica、Barcelona、Spain)の3-NPにより誘導した。この目的のために、マウスを3日間、(リン酸緩衝生理食塩水において調製された)50mg/kgの用量で3NPの7回の腹腔内(i.p.)注入(12時間毎に1回の注入)に供した。このような動物およびそれらのそれぞれの病変のない対照を、カンナビゲロールキノン酸(I)または式IIのカンナビゲロールキノン酸のナトリウム塩のいずれかを用いた薬理学的研究に使用した。1つの実験群当たり少なくとも5~6匹の動物を使用した。処置は、3NPの注入の30分前の、示された用量での化合物の4回の腹腔内注入もしくは経口強制注入(24時間毎に1回の処置)、またはビヒクルからなる。最後の3NPの注入の12時間後に全ての動物を安楽死させた。安楽死させたら、動物を解剖し、それらの脳を迅速に摘出した。右半球を使用して線条体を解剖して、それをRNAlater(Sigma-Aldrich、Germany)の中で急速に凍結させて、Real Time PCRによって炎症マーカーを分析した。左半球を4℃で48時間、新鮮な4%のパラホルムアルデヒド(0.1Mのリン酸緩衝生理食塩水中)に固定し、組織学的分析のためにパラフィンワックスに包埋した。神経状態を判定するための行動試験にマウスを供した。一般的な自発運動活動性、後肢の抱擁およびジストニア、および躯幹ジストニアを評価した。調査中の化合物の急性効果を回避するために、全ての行動試験を薬物注入前に実施した。カンナビゲロールキノン酸(I)(図14)および式IIのカンナビゲロールキノン酸のナトリウム塩(図15)は、3-NP中毒によって誘導される臨床症状を明らかに緩和する。
【0126】
実施例5.組織学的分析。
3NPモデルの脳を、ミクログリア細胞のマーカーであるIba-1のニッスル染色および免疫組織化学的分析のために、4%のパラホルムアルデヒドおよび5μm厚の切片に固定した。免疫組織化学のために、切片を1/50希釈で使用したモノクローナル抗マウスIba-1抗体(Millipore、MA、USA)とともに4℃で一晩インキュベートした。対応する一次抗体によるインキュベーションの後、切片を0.1MのPBSの中で洗浄し、ヤギ抗マウス(Millipore、MA、USA)二次抗体とともに4℃でO/Nでインキュベートした。ジアミノベンジジンとの反応が明らかになった。一次抗体を省略した同じプロトコルを使用して、陰性対照切片を得た。各免疫組織化学的手順の全てのセクションを、同時に同じ条件下で処理した。Leica DM2500顕微鏡およびLeica DFC 420Cカメラをスライド観察および写真撮影に使用し、米国衛生研究所(Bethesda.MD、USA)が開発し、無料で配布したソフトウェアであるImageJを使用して、全ての画像処理を行った。これらの3NP病変動物の線条体実質は、ニッスル染色によって確認された重要な程度の神経細胞死を示した。神経細胞(ニッスル陽性細胞)の損失は、Iba-1細胞の顕著な発現増加(反応性小膠細胞症)を伴った。カンナビゲロールキノン酸(I)(図16)および式IIのカンナビゲロールキノン酸のナトリウム塩(IIe)(図17)は、ニッスル染色によって明らかにされたように、3NP毒性に対する線条体神経細胞の保存を引き起こした。さらに、両方の化合物での処置により、反応性小膠細胞症(Iba-1細胞)の誘導を妨げた。
【0127】
実施例6.本発明で使用されるリアルタイム定量PCR。
RNeasy Lipid Tissueミニキット(Qiagen、GmbH)を使用して、線条体(3NPモデル)から全RNAを単離した。抽出されたRNAの総量は260nmでの分光法によって定量化され、その純度は260nmおよび280nmでの吸光度値の比率から定量化された。DNA汚染を排除するためにゲノムDNAを除去した。一本鎖相補的DNAは、iScript(商標)cDNA合成キット(Bio-Rad、Hercules、CA、USA)を使用して、最大1μgの総RNA(1つの群当たり少なくとも3匹の動物からのプール)から合成された。反応混合物は、酵素増幅までー20℃で凍結保存した。iQ(商標)SYBR Green Supermix(Bio-Rad)を使用して、TNF-αおよびIL-6のmRNAレベルを定量化した。CFX96 Real-Time PCR検出システム(Bio-Rad)を使用して、リアルタイムPCRを行った。GAPDHハウスキーピング遺伝子を使用して、全てのサンプルにおけるmRNA発現レベルを標準化した。発現レベルは2-ΔΔCt法を用いて計算された。オリゴヌクレオチドプライマーの配列を表2に示す。炎症性サイトカインTNFαおよびIL-6の発現は、3NP病変マウスにおいて有意に上方調節された。カンナビゲロールキノン酸(I)(図18)および式IIのカンナビゲロールキノン酸のナトリウム塩(IIe)(図19)により、3NPで処置されたマウスの線条体の炎症促進性マーカーTNFαおよびIL-6の上方調節は減弱した。表2:定量的ポリメラーゼ連鎖反応で使用されるマウスプライマー配列のリスト。
【表2】
【0128】
実施例7.パーキンソン病の誘導(6-OHDAモデル)。
カンナビゲロールキノン酸(I)および式IIのカンナビゲロールキノン酸のナトリウム塩(IIe)はまた、パーキンソン病(PD)のマウスモデルにおいて治療的に使用された。
【0129】
脳室内で前処理されたC57BL/6マウスは、200mg/Kgの2,2,2-トリブロモエタノール(Sigma-Aldrich)の腹腔内注入で麻酔され、マウスアダプター(David Kopf Instruments、Tujunga、CA、USA)で定位固定フレームに配置された。ハミルトンシリンジ(Hamilton、Bonaduz、Switzerland)を使用して、0.02%のアスコルビン酸(Sigma Aldrich)中の4μLの6-OHDA-HBr溶液(5μg/μL)を、次の定位座標(ブレグマからmm):側背の線条体を標的としてAP、+0.65;L-2.0;V1-4およびV2-3.5で2つの沈着物の左線条体に注入した。注入後、皮膚を縫合し、動物を定位固定装置から取り出し、加熱パッド上に30分間置いた。マウスは、6-OHDA注入の16時間後に開始され、かつ14日間のカンナビゲロールキノン酸(I)および式IIのカンナビゲロールキノン酸のナトリウム塩(IIe)、またはビヒクルによる慢性型の経口または腹腔内処置を受けた。ポール試験およびシリンダー立ち上がり試験を使用して、運動活性を評価した。ポール試験を使用して運動緩慢を検出し、運動試験およびシリンダー立ち上がり試験を使用して、PDマウスの感覚運動障害を評価した。ポール試験では、マウスを垂直の粗面ポール(直径8mm、高さ55cm)の頂上に上向きに置き、マウスが床に降りるまでの時間を最大90秒で記録した。試行は1回のトレーニング後に行われた。マウスが下向きに方向転換できず、代わりにポールから落下した場合、時間は90秒(デフォルト値)とみなされた。シリンダー立ち上がり試験(CRT)では、直径15.5cmおよび高さ12.7cmのメタクリレート透明シリンダー内にマウスを置いた後の初期の前肢(左、右、または両方)の選好性を測定した。各スコアは、最低4つの壁接触で使用した3分間の試行から作成された。カンナビゲロールキノン酸(I)(図20)および式IIのカンナビゲロールキノン酸のナトリウム塩(IIe)(図21)により、6-OHDA投与マウスにおける運動緩慢および運動障害は減弱した。
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【国際調査報告】