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特表2022-511959逆乳化重合法における使用のための安定剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】逆乳化重合法における使用のための安定剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/32 20060101AFI20220125BHJP
   C08F 8/10 20060101ALI20220125BHJP
   C08F 8/32 20060101ALI20220125BHJP
   C08F 8/44 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
C08F2/32
C08F8/10
C08F8/32
C08F8/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533265
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(85)【翻訳文提出日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2019084013
(87)【国際公開番号】W WO2020120323
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】18211362.1
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521127723
【氏名又は名称】ソレニス・テクノロジーズ・ケイマン・エル・ピー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト・ホマー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール・ヘルト
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ミュールバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン・ヴァーグナー
(72)【発明者】
【氏名】ローザ・コルベラン・ロク
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011LA04
4J011LA07
4J011LA08
4J011LB10
4J100AA06P
4J100HA31
4J100HA35
4J100HA37
4J100HA57
4J100HA61
4J100HC30
4J100HC39
4J100HC46
(57)【要約】
本発明は、逆エマルション、例えば、逆相乳化重合法で、例えば、アクリルアミド及びエチレン性不飽和カチオンモノマーの重合で使用される逆エマルション中での、安定剤としてのポリイソブチレンの四級化誘導体の使用を対象とする。こうしたエマルションは、例えば、廃水処理用の凝集剤として使用される。本発明は、ポリイソブチレンの四級化誘導体を含む逆エマルションを更に対象とする。逆エマルションは、十分に低い粘度及び十分に高いせん断安定性を有する。本発明は、逆エマルションがポリイソブチレンの四級化誘導体を含む逆乳化重合法を更に対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆エマルション中での安定剤としての、ポリイソブチレンの四級化誘導体の使用。
【請求項2】
ポリイソブチレンの前記四級化誘導体が、
a)ポリイソブチレン置換アシル化剤と、前記アシル化剤と反応することが可能な窒素原子を有し、かつ第三級アミノ基を更に有する化合物との反応、及び
b)前記第三級アミノ基を第四級アンモニウム基に変換するのに適した四級化剤
の反応生成物であり、
前記ポリイソブチレン置換アシル化剤と、前記アシル化剤と反応することが可能な窒素原子を有する前記化合物との反応が、前記アシル化剤のアシル基における求核置換反応であり、それがポリイソブチレン置換アミド又はポリイソブチレン置換イミドをもたらす、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ポリイソブチレン置換アシル化剤が、ポリイソブチレンとアシル化剤との反応生成物である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記アシル化剤が、アルファ,ベータ-不飽和モノカルボン酸若しくはアルファ,ベータ-不飽和ポリカルボン酸、ポリカルボン酸無水物、モノカルボン酸塩化物若しくはポリカルボン酸塩化物、又はモノカルボン酸エステル若しくはポリカルボン酸エステルである、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記アシル化剤が、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸のジエチルエステル、及びその混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
前記ポリイソブチレンが、300~5000g/モルの数平均分子量を有する、請求項3から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記ポリイソブチレン置換アシル化剤が、ポリイソブチレン無水コハク酸を含む、請求項2に記載の使用。
【請求項8】
前記ポリイソブチレン置換アシル化剤のポリイソブチレン部分が、300~5000g/モルの数平均分子量を有する、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記アシル化剤と反応することが可能な窒素原子を有し、かつ第三級アミノ基を更に有する前記化合物において、前記アシル化剤と反応することが可能な前記窒素原子及び前記第三級アミノ基が、直接共有結合によって、又は1個から6個までの炭素原子を含む連結基によって連結されている、請求項2から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記アシル化剤と反応することが可能な窒素原子を有し、かつ第三級アミノ基を更に有する前記化合物が、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジブチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジブチルエチレンジアミン、1-(3-アミノプロピル)イミダゾール、4-(3-アミノプロピル)モルホリン、1-(2-アミノエチル)ピペリジン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、3,3’-アミノビス(N,N-ジメチルプロピルアミン)、1-アミノピペリジン、1-(3-アミノプロピル)-2-ピペコリン、1-メチル-(4-メチルアミノ)ピペリジン、4-(1-ピロリジニル)ピペリジン、1-(2-アミノエチル)ピロリジン、2-(2-アミノエチル)-1-メチルピロリジン、N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチル-N’-エチルエチレンジアミン、N,N-ジエチル-N’-メチルエチレンジアミン、N,N,N’-トリエチルエチレンジアミン、N,N,N’-トリメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,2,2-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、2-アミノ-5-ジエチルアミノペンタン、N,N,N’,N’-テトラエチルジエチレントリアミン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、3,3’-イミノビス(N,N-ジメチルプロピルアミン)、及びその混合物からなる群から選択される、請求項2から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記アシル化剤と反応することが可能な窒素原子を有し、かつ第三級アミノ基を更に有する前記化合物において、前記アシル化剤と反応することが可能な前記窒素原子が、第一級アミノ基の一部である、請求項2から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記四級化剤が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、硫酸ジアルキル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、ヒドロカルビル置換カーボネート、及びその混合物からなる群から選択される、請求項2から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記第四級アンモニウム基が、その窒素原子に結合した4つの基を含有し、これらの基が、独立に、1~6個の炭素原子を有する脂肪族基又は芳香族基である、請求項2から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記の基が、独立して、1~6個の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基であり、それらは任意選択により、独立に、これらの基の少なくとも1つが1個又は複数のヒドロキシル基を有していてもよい、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記の基の少なくとも2つが同じである、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項において規定するポリイソブチレンの四級化誘導体を含む逆エマルション。
【請求項17】
逆エマルション重合法であって、逆エマルションが請求項1から15のいずれか一項において規定するポリイソブチレンの四級化誘導体を含む、重合法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆相乳化重合法のための、特にアクリルアミド、エチレン性不飽和カチオンモノマー、又はエチレン性不飽和アニオンモノマーの重合のための、添加剤としての、ポリイソブチレン (PIB) の四級化誘導体である安定剤の使用を対象とする。
【背景技術】
【0002】
逆乳化重合法(inverse emulsion polymerization process)は、当業者に既知である。独国特許出願公告第2183242号及び米国特許第3284393号に記載されているように、逆乳化重合の手順は、重合を受ける材料が、水中油型乳化剤を用いて調製される水非混和性モノマーの水性連続相のエマルションよりもむしろ、油中水型乳化剤を用いて調製される連続油相の水溶性モノマーの水溶液のエマルションで構成される点で、従来の乳化重合と異なる。したがって逆乳化重合法において、親水性モノマーの重合は、水性相中で起こり、すなわち親水性モノマーは、油性相に分散された水滴中に溶解し、乳化剤によって安定化される。この技術により、極高分子量ポリマーが、水性液滴に閉じ込められる油中水型エマルションの形成がもたらされる。
【0003】
独国特許出願公告第2183242号は続けて、この方法が、例えば下水処理における凝集剤として広く使用されるポリアクリルアミド等の水溶性ポリマーの調製のために特に興味をもたれることを教示している。得られるエマルションは、適切に配合される場合、水中に希釈されると容易に逆になり、このように高分子量ポリマーの水溶液が、粉末形態で単離された同等のポリマーの溶解によるものよりも、更により容易に得られるという、価値ある性質を有する。しかし、この手法を商業的に魅力あるものにするために、エマルションのポリマー固体含有量は可能な限り高くあるべきであり、それが容易に扱われるように十分に低い粘度を有するエマルションに適合していることが望ましい。独国特許出願公告第2183242号は、乳化剤としての、その好ましい一実施形態によれば、ポリイソブチレンコハク酸モノエステル又はポリイソブチレンコハク酸モノアミドに基づく、ある種の群の界面活性化合物の適用を教示している。
【0004】
したがって、逆エマルション(inverse emulsion)に基づくポリアクリルアミド (PAM) の生産のためには、水性モノマー相を、乳化剤の存在下で鉱油中に分散させる。しかし、生成において、エマルションのやや低いせん断安定性は、容器中で、とりわけ熱交換器において塊の形成をもたらす。更に、適用前のポリマー製造時に、逆エマルションは、とりわけオンラインシステムにおいて、高いせん断応力にさらされることがある。こうしたせん断応力は、塊の形成をもたすことがあり、故に最悪の場合、装置の閉塞をもたらすことがある。この問題を克服するためには、少量のポリマー安定剤をモノマー相に追加的に添加することが慣例である。こうしたポリマー安定剤の市販されている例は、Croda International PLC (GB) 社によって、商標名Hypermer (商標) で販売され、米国特許出願公開第2012/0288464号において、アルコキシル化アルコール基を含む長鎖脂肪酸のアルコキシル化エステル油であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公告第2183242号明細書
【特許文献2】米国特許第3284393号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0288464号明細書
【特許文献4】国際公開第2006/135881号
【特許文献5】国際公開第2006/138269号
【特許文献6】国際公開第2010/132259号
【特許文献7】国際公開第2012/004300号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】DIN EN ISO1628-1: 2010-10, 8頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、こうしたポリマー安定剤の、より効率的な、且つより有効な代替物を提供することが依然として必要である。したがって、本発明の目的は、こうしたポリマー安定剤の、より効率的な、且つより有効な代替物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、例えば、ポリイソブチレン無水コハク酸 (PIBSA) の誘導体の群に属する、ポリイソブチレン (PIB) の四級化誘導体、すなわち四級化PIBSA-誘導体である安定剤の提供によって上記目的を解決し得るという発見に基づいている。
【0009】
こうした化合物は既知であり、例えば、国際公開第2006/135881号、国際公開第2006/138269号、国際公開第2010/132259号、及び国際公開第2012/004300号に開示されている。
【0010】
国際公開第2006/135881号は、第四級アンモニウム塩洗浄剤、及び吸気バルブデポジットを減らし、吸気バルブに存在するデポジットを除去するか又は洗浄するための燃料組成物における、こうした第四級アンモニウム塩洗浄剤の使用を対象とする。第四級アンモニウム塩は、ヒドロカルビル置換アシル化剤と、上記アシル化剤で縮合することが可能な酸素原子又は窒素原子を有し、第三級アミノ基を更に有する化合物との反応の反応生成物であり、第三級アミノ基を第四級窒素に変換するのに好適な四級化剤である。ヒドロカルビル置換アシル化剤は、好ましくはポリイソブチレン無水コハク酸 (PIBSA) である。酸素原子又は窒素原子を有し、第三級アミノ基を更に有する化合物は、好ましくはN,N-ジメチル-アミノプロピル-アミン (DMAPA) である。四級化剤は、例えば、スチレンオキシド等のヒドロカルビルエポキシドである。したがって、得られる第四級アンモニウム塩洗浄剤は、例えば、ポリイソブチレン無水コハク酸 (PIBSA) のN,N-ジメチル-アミノプロピルアミンコハク酸イミドのスチレンオキシド第四級アンモニウム塩である。
【0011】
国際公開第2006/138269号は、有機媒体中に粒子固体を均一に分布させるために、例えば、インク、ペンキ、及びプラスチックにおける分散のために、有効な分散剤を提供することを目的として、分散剤の塩、粒子固体、及び有機媒体を含む組成物を対象とする。分散剤の塩は、好ましくはポリイソブチレン無水コハク酸 (PIBSA) とN,N-ジメチル-アミノプロピル-アミン (DMAPA) との反応の反応生成物である、ヒドロカルビル置換アシル化剤と、硫酸ジメチル、塩化ベンジル、炭酸ジメチル、又はスチレンオキシド (四級化剤) 等の化合物との塩である。
【0012】
国際公開第2010/132259号は、第四級アンモニウムアミド及び第四級アンモニウムエステルの塩、並びに燃料、例えばディーゼル燃料及び燃料油における、添加剤、特に洗浄剤としてのその使用を対象とする。アミド基又はエステル基を含有する第四級アンモニウム塩洗浄剤は、アミド基又はエステル基を含有する非四級化洗浄剤と、四級化剤との反応生成物であり、この洗浄剤は第三級アミン官能性を有する。非四級化洗浄剤は、好ましくは、ヒドロカルビル置換アシル化剤、例えばポリイソブチレン無水コハク酸 (PIBSA) と、上記アシル化剤と縮合しうる、酸素原子又は窒素原子を有しかつさらに少なくとも1種の第三級アミノ基を有する化合物、例えば、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン (DMAPA) との縮合生成物を含む。四級化剤は、好ましくは、エチレンオキシド又はスチレンオキシド等の化合物を含む。四級化コハク酸イミド洗浄剤の観点から、四級化コハク酸アミド洗浄剤の好ましい調製を可能にする方法が開示されている。
【0013】
国際公開第2012/004300号は、無酸四級化窒素化合物、並びに燃料及び潤滑剤における添加剤としての、例えば、直接噴射式ディーゼルエンジンの内部のディーゼルインジェクターデポジットを減らすための添加剤としての、その使用を対象とする。完全に分散させるための、遊離酸の添加を可能にするエポキシド-四級化窒素化合物を調製する方法が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
したがって、本発明は、一態様において、逆エマルション(inverse emulsion)における安定剤としての、ポリイソブチレン (PIB) の四級化誘導体の使用を対象とする。
【0015】
本発明による使用は、特に、逆エマルションの合成及び安定化のための安定剤としての使用、より詳細には、逆相乳化重合法のため、例えば、アクリルアミド、エチレン性不飽和カチオンモノマー、又はエチレン性不飽和アニオンモノマーの重合のために使用される、逆エマルション中の安定剤としての使用を包含する。こうしたエマルションは、例えば、廃水処理用の凝集剤として使用される。
【0016】
本明細書で使用するとき、ポリイソブチレン (PIB) の四級化誘導体は、第四級アンモニウム基を含むポリイソブチレン (PIB) 誘導体である。こうした化合物は、第三級アミノ基を含むポリイソブチレン (PIB) の好適な誘導体 (ポリイソブチレン (PIBの非四級化誘導体) を四級化剤と反応させることによって得ることができる。
【0017】
本発明の好ましい一実施形態によれば、ポリイソブチレン (PIB) の四級化誘導体は、ポリイソブチレン部分と第四級アンモニウム基との間にアミド又はイミド連結基を有する。
【0018】
本発明の特定の好ましい一実施形態によれば、ポリイソブチレンの四級化誘導体は、
a) ポリイソブチレン置換アシル化剤と、そのアシル化剤と反応することが可能な窒素原子を有し、さらに第三級アミノ基を有する化合物との反応、及び
b) その第三級アミノ基を第四級アンモニウム基に変換するための好適な四級化剤
の反応の生成物であり、
ポリイソブチレン置換アシル化剤と、そのアシル化剤と反応することが可能な窒素原子を有する化合物との反応は、アシル化剤のアシル基における求核置換反応であり、ポリイソブチレン置換アミド又はポリイソブチレン置換イミドをもたらす。
【0019】
既に上で示したように、本発明に従って適用されるポリイソブチレン (PIB) の四級化誘導体は既知のものであるが、本発明による、その特定の適用分野は知られていない。
【0020】
<ポリイソブチレン置換アシル化剤>
ポリイソブチレン置換アシル化剤は、ポリイソブチレンとアシル化剤との反応生成物であることが好ましい。
【0021】
イソブチレン(2-メチルプロペン)のカチオン重合によるポリイソブチレンの調製は、当業者に知られている。ポリイソブチレンは、好ましくは、300~5000g/モルの数平均分子量を有する。より好ましい範囲は、450~4000g/モル、500~3000g/モル、及び550~2500g/モルである。
【0022】
アシル化剤は、好ましくは、モノ不飽和カルボン酸反応剤、より好ましくはアルファ,ベータ-(モノ)不飽和のモノカルボン酸若しくはポリカルボン酸、ポリカルボン酸無水物、モノカルボン酸塩化物若しくはポリカルボン酸塩化物、又はモノカルボン酸エステル若しくはポリカルボン酸エステルであり、エステルは、好ましくはC1~C5アルコールから誘導される。これに関して、特に好ましいのは、C4~C10ジカルボン酸及びその無水物及び(半)エステル(ハーフエステル)、並びにC3~C10モノカルボン酸及びそのエステルであり、エステルは、好ましくはC1~C5アルコールから誘導される。
【0023】
ジカルボン酸のエステルの例は、フマル酸のジエチルエステルである。
【0024】
好ましくは、アシル化剤は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸のジエチルエステル、及びその混合物からなる群から選択される。本明細書において、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0025】
ポリイソブチレンとモノ不飽和カルボン酸反応剤等のアシル化剤との反応によってポリイソブチレン置換アシル化剤を製造する方法は周知である。これに関して、国際公開第2006/135881号の7頁に示される先行技術が参照される。
【0026】
本発明の特に好ましい一実施形態によれば、ポリイソブチレン置換アシル化剤は、ポリイソブチレン無水コハク酸を含む、より好ましくはそれのみから構成される。これに関して、ポリイソブチレン置換アシル化剤のポリイソブチレン部分は、300~5000g/モルの数平均分子量を有することが好ましい。より好ましい範囲は、450~4000g/モル、500~3000g/モル、及び550~2500g/モルである。
【0027】
<窒素原子を有する化合物>
窒素原子を有する化合物は、ポリイソブチレン置換アシル化剤と反応することが可能であり、かつさらに第三級アミノ基を有する。ポリイソブチレン置換アシル化剤と、そのアシル化剤と反応することが可能な窒素原子を有する化合物との反応は、アシル化剤のアシル基における求核置換反応であり、ポリイソブチレン置換アミド又はポリイソブチレン置換イミドをもたらす。
【0028】
1個の窒素原子が1個のアシル基と反応する場合、得られる官能基はアミド基である。1個の窒素原子が2個のアシル基と反応する場合、得られる官能基はイミド基である。
【0029】
好ましくは、アシル化剤と反応することが可能な窒素原子を有し、かつ第三級アミノ基を更に有する化合物において、そのアシル化剤と反応することが可能な窒素原子及び第三級アミノ基は、直接共有結合によって、又は1個から6個までの炭素原子を含むリンカー基(連結基)によって連結される。
【0030】
好ましくは、アシル化剤と反応することが可能な窒素原子を有し、かつ第三級アミノ基を更に有する化合物は、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジブチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジブチルエチレンジアミン、1-(3-アミノプロピル)イミダゾール、4-(3-アミノプロピル)モルホリン、1-(2-アミノエチル)ピペリジン、3,3'-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、3,3'-アミノビス(N,N-ジメチルプロピルアミン)、1-アミノピペリジン、1-(3-アミノプロピル)-2-ピペコリン、1-メチル-(4-メチルアミノ)ピペリジン、4-(1-ピロリジニル)ピペリジン、1-(2-アミノエチル)ピロリジン、2-(2-アミノエチル)-1-メチルピロリジン、N,N,N'-トリメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチル-N'-エチルエチレンジアミン、N,N-ジエチル-N'-メチルエチレンジアミン、N,N,N'-トリエチルエチレンジアミン、N,N,N'-トリメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,2,2-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、2-アミノ-5-ジエチルアミノペンタン、N,N,N',N'-テトラエチルジエチレントリアミン、3,3'-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、3,3'-イミノビス(N,N-ジメチルプロピルアミン)、及びその混合物からなる群から選択される。
【0031】
好ましくは、アシル化剤と反応することが可能な窒素原子を有し、かつ第三級アミノ基を更に有する化合物において、アシル化剤と反応することが可能な窒素原子は、第一級アミノ基の一部である。より好ましくは、その化合物は、ただ1つの第一級アミノ基及び1つの第三級アミノ基を有する。
【0032】
本発明の特に好ましい一実施形態によれば、アシル化剤と反応することが可能な窒素原子を有し、かつ第三級アミノ基を更に有する化合物は、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパンを含み、より好ましくはそれのみで構成される。
【0033】
<ポリイソブチレン置換アミド又はポリイソブチレン置換イミド>
ポリイソブチレン置換アミド又はポリイソブチレン置換イミドは、ポリイソブチレン置換アシル化剤と、そのアシル化剤と反応することが可能な窒素原子を有し、かつ第三級アミノ基を更に有する化合物との反応の生成物である。したがって、ポリイソブチレン置換アミド又はポリイソブチレン置換イミドは、第三級アミノ基を有する。
【0034】
アシル基におけるこうした求核置換反応は、当業者にとって慣用のものである。これに関して、国際公開第2006/135881号、国際公開第2006/138269号、国際公開第2010/132259号、及び国際公開第2012/004300号の開示が参照される。
【0035】
<四級化剤>
四級化剤は、第三級アミノ基を第四級アンモニウム基へ変換するために好適である。
【0036】
したがって、四級化剤は、ポリイソブチレンの非四級化誘導体の第三級アミノ基と反応して、ポリイソブチレンの四級化誘導体をもたらす。
【0037】
好ましくは、四級化剤は、上で定義した、ポリイソブチレン置換アミド又はポリイソブチレン置換イミドと反応する。
【0038】
四級化剤及び好適な反応条件は当業者に既知である。これに関して、国際公開第2006/135881号、国際公開第2006/138269号、国際公開第2010/132259号、及び国際公開第2012/004300号の開示が参照される。
【0039】
好ましくは、四級化剤は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、及び他のヒドロカルビルエポキシド、硫酸ジアルキル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、ヒドロカルビル置換カーボネート、及びその混合物からなる群から選択される。
【0040】
したがって、好適なヒドロカルビルエポキシドは、脂肪族及び芳香族のアルキレンオキシド、例えば、とりわけC2~12-アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、2-メチル-1,2-プロペンオキシド(イソブテンオキシド)、1,2-ペンテンオキシド、2,3-ペンテンオキシド、2-メチル-1,2-ブテンオキシド、3-メチル-1,2-ブテンオキシド、1,2-ヘキセンオキシド、2,3-ヘキセンオキシド、3,4-ヘキセンオキシド、2-メチル-1,2-ペンテンオキシド、2-エチル-1,2-ブテンオキシド、3-メチル-1,2-ペンテンオキシド、1,2-デセンオキシド、1,2-ドデセンオキシド、又は4-メチル-1,2-ペンテンオキシド、及びまた芳香族置換エチレンオキシド、例えば、任意選択により置換されていてもよいスチレンオキシド、とりわけスチレンオキシド又は4-メチルスチレンオキシドである。
【0041】
特に好ましい四級化剤は、ヒドロカルビルエポキシド、特に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドである。プロピレンオキシドが最も好ましい。
【0042】
四級化剤としてエポキシドを使用する場合、それらは、とりわけ遊離酸がない状態で、とりわけ遊離プロトン酸、例えば、特に、C1~12-モノカルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸、若しくはプロピオン酸、又はC2~12-ジカルボン酸、例えば、シュウ酸若しくはアジピン酸がない状態で、或いはスルホン酸、例えば、ベンゼンスルホン酸若しくはトルエンスルホン酸、又は水性鉱酸、例えば、硫酸若しくは塩酸がない状態で使用される。したがって、調製される四級化生成物は「無酸」(酸を含まない)である。
【0043】
これに関して、特に国際公開第2012/004300号の開示も参照される。
【0044】
<ポリイソブチレンの四級化誘導体>
本明細書において、第四級アンモニウム基は、窒素原子に結合した4つの基を有し、これらの基が、独立に1~6個の炭素原子を有する脂肪族基又は芳香族基であることが好ましい。
【0045】
これに関して、これらの基は、独立して1~6個の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基であり、任意選択により場合によっては、独立して、これらの基の少なくとも1つが、1個又は複数のヒドロキシル基を有することが更に好ましい。
【0046】
これに関して、これらの基の少なくとも2つは同じであり、より好ましくはメチル基であることが更に好ましい。これに関して、これらの基の少なくとも2つは同じであり、より好ましくはメチル基であり、更にこれらの基の1つが、ヒドロキシル基を有し、より好ましくは1個のヒドロキシル基を有することが更に好ましい。
【0047】
これらの基の4つ目は、ポリイソブチレン置換アシル化剤と反応した窒素原子へのリンカー基(連結基)である。
【0048】
本発明の特定の好ましい一実施形態によれば、これらの基の2つはメチル基であり、1つは2-ヒドロキシプロピル基であり、ポリイソブチレン置換アシル化剤と反応した窒素原子に連結した4つ目の基は、(二価の)プロピル基である。
【0049】
これに関して、ポリイソブチレン置換アシル化剤は、ポリイソブチレン無水コハク酸であることが更に好ましい。
【0050】
したがって、本発明の特定の好ましい一実施形態によれば、ポリイソブチレンの四級化誘導体は、
a) ポリイソブチレン置換アミド又はポリイソブチレン置換イミドをもたらす、ポリイソブチレン無水コハク酸とN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパンとの反応、及び
b) プロピレンオキシド
の反応の生成物である。
【0051】
したがって、特定の好ましい化合物は、以下の式Iによって表される。
【0052】
【化1】
【0053】
<逆エマルションにおける安定剤としての、ポリイソブチレンの四級化誘導体の使用>
上で示したように、本発明は、逆エマルション中の安定剤としてのポリイソブチレンの四級化誘導体の使用を対象とする。
【0054】
本発明による使用は、特に、逆エマルションの合成及び安定化のための安定剤としての使用、より詳細には、逆相乳化重合法のために、例えば、アクリルアミド、エチレン性不飽和カチオンモノマー、又はエチレン性不飽和アニオンモノマーの重合のために使用される逆エマルション中での安定剤としての使用を包含する。こうしたエマルションは、例えば、廃水処理の凝集剤として使用される。
【0055】
エマルション中のポリマー固体の含有量は、可能な限り高くあるべきであり、エマルションを容易に扱うために十分に低い粘度を有するエマルションと一致していることが望ましい。塊の形成をもたらす、エマルションのやや低いせん断安定性の問題を克服するために、ポリマー安定剤が添加される。
【0056】
本発明による、逆エマルション中での安定剤としてのポリイソブチレンの四級化誘導体の使用により、十分に低い粘度及び十分に高いせん断安定性を有する逆エマルションの調製が可能になる。
【0057】
逆エマルション中のポリイソブチレンの四級化誘導体の量は、好ましくは、全体の逆エマルションの質量に対して、0.025~3.00質量%、より好ましくは0.05~2.50質量%である。
【0058】
<逆エマルション>
本発明は、さらなる一態様において、全ての好ましい実施形態を含めて、逆エマルション中での安定化剤としてのポリイソブチレンの四級化誘導体の使用を対象とする本発明の態様に関連して、上で規定したポリイソブチレンの四級化誘導体を含む逆エマルションを対象とする。
【0059】
好ましくは、逆エマルションは、逆相乳化重合法に、より好ましくは、アクリルアミド、エチレン性不飽和カチオンモノマー、又はエチレン性不飽和アニオンモノマーの重合に好適であり、更により好ましくは、逆エマルションは、追加で、アクリルアミド及び/又はポリアクリルアミドを含有する。また好ましいのは、重合が既に完了した、すなわち、例えば、ポリアクリルアミドを含有した逆エマルション、より好ましくは廃水処理の凝集剤として好適な逆エマルションでもある。
【0060】
<逆乳化重合法(Inverse Emulsion Polymerization Process>
本明細書で使用するとき、用語「逆相乳化重合法」及び「逆乳化重合法」は同義である。
【0061】
本発明は、さらなる一態様において、全ての好ましい実施形態を含めて、逆エマルション中での安定化剤としてのポリイソブチレンの四級化誘導体の使用を対象とする本発明の態様に関連して、逆エマルションが、上で規定したポリイソブチレンの四級化誘導体を含む逆乳化重合法を対象とする。
【0062】
好ましくは、上記方法は、アクリルアミド、エチレン性不飽和カチオンモノマー、又はエチレン性不飽和アニオンモノマーの重合を包含する。
【実施例
【0063】
以下の例において、以下の化合物を使用する。
【0064】
【表1】
【0065】
(例1)
以下の表1に示される配合表の逆エマルションを以下の手順に従って調製した。
【0066】
油相を、ガラス容器中で、Exxsol D 100S 295 g、Span 80 25.4 g、及びHypermer2296 5.2 gを混合することによって作る。水性相を、ビーカー中で、水性アクリルアミド溶液 (51 %) 589.8 g、水性DMA3Q溶液 (80 %) 178.4 g、NaBrO3 0.118 g、脱塩水4.4 g、ギ酸0.595 g、Trilon C 0.7 g、及びアジピン酸14 gを混合することによって作る。そのガラス容器をSilverson分散機の下に設置し、水性相を、撹拌下で10秒以内に油相に添加する。添加の後、そのエマルションを3分間撹拌する。その後、そのエマルションを含むガラス容器を、反応器装置にフランジで取り付ける。そのモノマーエマルションを10℃まで冷却し、N2で1時間パージする。重合は、Na2S2O5 0.2質量%溶液10.6 mLを用いて開始させ、その溶液を、1℃/分の温度上昇を確実にするようにゆっくりと添加する。40℃に達した時、温度を外部冷却によって一定に保つ。重合は、前述したNa2S2O5溶液を添加するにつれて進行する。全反応時間は、40℃にて、90分、続いて、反応後30分である。
【0067】
冷却後、ブレーカー界面活性剤を添加する(油中水乳化剤、イソトリデカノールエトキシレート2質量%)。
【0068】
例2から例9は、表1による、様々な油相で同じように調製される。
【0069】
【表2】
【0070】
[せん断安定性試験-T凝結
せん断安定性試験をプレート-プレートジオメトリ (25 mm、距離50マイクロメートル)のPhysica MCRレオメーターを使用して、40℃において、せん断速度3500秒-1で最長1時間実施した。各測定を3回繰り返した。凝集は、せん断時に、急な粘度の上昇が始まるときとして定義される。
【0071】
この条件下で生じる凝集までの時間T凝集が決定される。エマルションのこれらの結果及びさらなる性質は表2に示してある。そこに示した時間の範囲は、3つの繰り返しからの最低値及び最高値を反映している。
【0072】
[K-値]
FikentscherによるK-値は、ポリマーの平均分子量の目安であり、DIN EN ISO1628-1: 2010-10, 8頁に準じて、以下の数式及び式それぞれによって計算した:
K-値 = 1000k
ここで
【0073】
【数1】
【0074】
式中、cはポリマー濃度 (g/cm3) であり、
ηrは、そのポリマー溶液の粘度比ηr=η/η0である。
【0075】
[粘度]
最終生成物の粘度は、Brookfield粘度計によって決定した。
【0076】
[PSD-粒径分布]
粒径分布は、希釈用の溶媒としてExxol D 100 + 2.5% Span 80を使用して、撹拌セル中で、Mastersizer S (レンズ範囲300 mm) を使用して測定した。溶媒の屈折率は1.449である。粒子屈折率は1.599(虚数部分0)、分析モデル:多分散系、である。
【0077】
【表3】
【0078】
実施例は、本発明(例4~例9)にしたがうポリイソブチレンの四級化誘導体は、単独で使用されるか(例6及び例7)又は従来の化合物のうちただ1つと組み合わせて使用される(例4、例5、例8、例9)従来の化合物からみて、エマルションに改善された安定性をもたらすことを示している。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆エマルション中での安定剤としての、ポリイソブチレンの四級化誘導体の使用。
【請求項2】
ポリイソブチレンの前記四級化誘導体が、
a)ポリイソブチレン置換アシル化剤と、前記アシル化剤と反応することが可能な窒素原子を有し、かつ第三級アミノ基を更に有する化合物との反応、及び
b)前記第三級アミノ基を第四級アンモニウム基に変換するのに適した四級化剤
の反応生成物であり、
前記ポリイソブチレン置換アシル化剤と、前記アシル化剤と反応することが可能な窒素原子を有する前記化合物との反応が、前記アシル化剤のアシル基における求核置換反応であり、それがポリイソブチレン置換アミド又はポリイソブチレン置換イミドをもたらす、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ポリイソブチレン置換アシル化剤が、ポリイソブチレンとアシル化剤との反応生成物である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において規定するポリイソブチレンの四級化誘導体を含む逆エマルション。
【請求項5】
逆エマルション重合法であって、逆エマルションが請求項1から3のいずれか一項において規定するポリイソブチレンの四級化誘導体を含む、重合法。
【国際調査報告】