(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ヘモグロビンA1cアッセイにおける濁度正規化アルゴリズム及びイントラリピッド/脂肪血症干渉を低減する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/72 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
G01N33/72 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544140
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(85)【翻訳文提出日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 US2019061612
(87)【国際公開番号】W WO2020159599
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ジアン・ダイ
(72)【発明者】
【氏名】キャンディス・ロビンソン
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045DA48
2G045FA13
(57)【要約】
生物学的サンプルにおいて糖化ヘモグロビンパーセント又は糖化ヘモグロビン:総ヘモグロビン比を分光的に測定する方法が開示される。該方法は、分光測定結果から計算された総ヘモグロビン濃度を正規化して総ヘモグロビン濃度から任意の濁度干渉を実質的に除去するための濁度正規化アルゴリズムの使用を含む。濁度正規化により、イントラリピッド/脂肪血症で観察される負のバイアスが排除され、したがってイントラリピッド/脂肪血症からの有意な干渉を含まない糖化ヘモグロビンアッセイを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプルにおいて糖化ヘモグロビンパーセントまたは糖化ヘモグロビン:総ヘモグロビン比を測定する方法であって:
(i) 溶解した赤血球を含有する生物学的サンプルにおいて第一の波長及び第二の波長で吸光度を測定し、そしてこれらの2つの波長で得られた測定結果に基づいて総ヘモグロビン濃度(tHb)を決定する工程であって、ここで、第一の波長は658であり、そして第二の波長は約689nm~約699nmの範囲内である、工程;
(ii) 溶解した赤血球を含有する該生物学的サンプルにおいて第三の波長及び第四の波長で吸光度を測定し、そしてこれらの2つの波長で得られた測定結果に基づいて糖化ヘモグロビン濃度(A1c)を決定する工程であって、ここで、第三の波長は658nmであり、そして第四の波長は約785nm~約825nmの範囲内である、工程;
(iii) 工程(ii)において第四の波長で測定された吸光度(cHb)及び濁度正規化アルゴリズムを利用して、(i)において算出された総ヘモグロビン濃度を正規化して(i)の波長測定結果から任意の濁度干渉を実質的に除去する工程であって、ここで、任意の濁度干渉は、約1000mg/dLまでのイントラリピッド濃度で+/-約5%未満まで実質的に減少され、そして濁度正規化アルゴリズムは:
正規化tHb=1.03×tHb(μmol/L)-cHb×0.7899
である、工程;並びに
(iv) (ii)及び(iii)において算出された濃度に基づいて、糖化ヘモグロビンパーセントまたは糖化ヘモグロビン:総ヘモグロビン比を計算する工程
を含む、上記方法。
【請求項2】
生物学的サンプルは溶解全血サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程は単一の反応キュベットにおいて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第二の波長は694nmであり、そして第四の波長は805nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
生物学的サンプルにおいて糖化ヘモグロビンパーセント又は糖化ヘモグロビン:総ヘモグロビン比を測定する方法であって:
(a) 生物学的サンプル中に存在する赤血球を溶解する工程;
(b) 溶解した赤血球を試薬と反応させて、ヘモグロビンを酸化してメトヘモグロビンにする工程;
(c) プロテアーゼを用いてN-末端フルクトシルジペプチドフラグメントをヘモグロビンベータ鎖から切断する工程;
(d) メトヘモグロビンをアジド-メトヘモグロビンに変換する工程;
(e) 第一の波長及び第二の波長で吸光度を測定し、そしてこれら2つの波長で得られた測定結果に基づいて総ヘモグロビン濃度(tHb)を決定する工程であって、ここで、第一の波長は658nmであり、そして第二の波長は約689nm~約699nmの範囲内である、工程;
(f) N-末端フルクトシルペプチドフラグメントを試薬と反応させて過酸化水素を生成する工程;
(g) 第三の波長及び第四の波長で吸光度を測定し、そしてこれら2つの波長で得られた測定結果に基づいて糖化ヘモグロビン濃度(A1c)を決定する工程であって、ここで、第三の波長は658nmであり、そして第四の波長は約785nm~約825nmの範囲内である、工程;
(h) 工程(g)における第四の波長で測定された吸光度(cHb)及び濁度正規化アルゴリズムを利用して、工程(e)において算出された総ヘモグロビン濃度を正規化し、工程(e)の波長測定結果から任意の濁度干渉を実質的に除去する工程;並びに
(i) 工程(g)及び(h)において算出された濃度に基づいて、糖化ヘモグロビンパーセント又は糖化ヘモグロビン:総ヘモグロビン比を計算する工程
を含む、上記方法。
【請求項6】
工程(h)において使用される濁度正規化アルゴリズムは:
正規化tHb=1.03×tHb(μmol/L)-cHb×0.7899
である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
生物学的サンプルは全血サンプルである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)~(g)は単一の反応キュベットにおいて行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
第二の波長は694nmであり、そして第四の波長は805nmである、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)においてヘモグロビンをメトヘモグロビンに酸化するために使用される試薬は亜硝酸ナトリウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
工程(d)において、メトヘモグロビンはアジ化ナトリウムの存在下でアジド-メトヘモグロビンに変換される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
工程(f)において使用される試薬はフルクトシルペプチドオキシダーゼである、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
任意の濁度干渉は、約1000mg/dLまでのイントラリピッド濃度で+/-約5%未満に実質的に減少される、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
生物学的サンプルにおいて糖化ヘモグロビンパーセント又は糖化ヘモグロビン:総ヘモグロビン比を測定する方法であって:
(a) 生物学的サンプル中に存在する赤血球を溶解する工程;
(b) 溶解した赤血球を亜硝酸ナトリウムと反応させて、ヘモグロビンを酸化してメトヘモグロビンにする工程;
(c) N-末端フルクトシルジペプチドフラグメントをヘモグロビンベータ鎖からプロテアーゼを用いて切断する工程;
(d) アジ化ナトリウムの存在下でメトヘモグロビンをアジド-メトヘモグロビンに変換する工程;
(e) 第一の波長及び第二の波長で吸光度を測定し、そしてこれら2つの波長で得られた測定結果に基づいて総ヘモグロビン濃度(tHb)を決定する工程であって、ここで、第一の波長は658nmであり、そして第二の波長は約689nm~約699nmの範囲内である、工程;
(f) N-末端フルクトシルペプチドフラグメントを試薬と反応させて過酸化水素を生成する工程;
(g) 第三の波長及び第四の波長で吸光度を測定し、そしてこれら2つの波長で得られた測定結果に基づいて糖化ヘモグロビン濃度(A1c)を決定する工程であって、ここで、第三の波長は658nmであり、そして第四の波長は約785nm~約825nmの範囲内である、工程;
(h) 工程(g)において第四の波長で測定された吸光度(cHb)及び濁度正規化アルゴリズムを利用して、工程(e)において算出された総ヘモグロビン濃度を正規化し、工程(e)の波長測定結果から任意の濁度干渉を実質的に除去する工程であって、ここで、任意の濁度干渉は、約1000mg/dLまでのイントラリピッド濃度で+/-約5%未満に実質的に減少され、そして濁度正規化アルゴリズムは:
正規化tHb=1.03×tHb(μmol/L)-cHb×0.7899
である、工程;並びに
(i) 工程(g)及び(h)において算出された濃度に基づいて糖化ヘモグロビンパーセント又は糖化ヘモグロビン:総ヘモグロビン比を計算する工程
を含む、上記方法。
【請求項15】
生物学的サンプルは全血サンプルである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(a)~(g)は単一の反応キュベットにおいて行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
第二の波長は694nmであり、そして第四の波長は805nmである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
工程は単一の反応キュベットにおいて行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項19】
第二の波長は694nmであり、そして第四の波長は805nmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
生物学的サンプルは全血サンプルである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項21】
工程(a)~(g)は単一の反応キュベットにおいて行われる、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
第二の波長は694nmであり、そして第四の波長は805nmである、請求項5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
工程(b)においてヘモグロビンを酸化してメトヘモグロビンにするために使用される試薬は亜硝酸ナトリウムである、請求項5~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
工程(d)において、メトヘモグロビンはアジ化ナトリウムの存在下でアジド-メトヘモグロビンに変換される、請求項5~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
工程(f)において使用される試薬はフルクトシルペプチドオキシダーゼである、請求項5~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
任意の濁度干渉は、約1000mg/dLまでのイントラリピッド濃度で+/-約5%未満に実質的に減少される、請求項5~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
工程(a)~(g)は単一の反応キュベットにおいて行われる、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項28】
第二の波長は694nmであり、そして第四の波長は805nmである、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照/参照の記載による加入
該当なし。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
該当なし。
【0003】
背景
赤血球中に存在するヘモグロビンは、ヘモグロビンのβ鎖のアミノ末端への非酵素的グルコース分子付加により糖化され得る。ヘモグロビン分子が糖化されると糖化されたままになり、そして赤血球内の糖化ヘモグロビンの蓄積は、その生活環の間に細胞が曝露されたグルコースの平均レベルを反映する。したがって個体の血液中に存在する糖化ヘモグロビンのレベルは、血中グルコースレベルに比例し、直前の4週間から3か月にわたる個体の平均日内血糖濃度の指標である。したがって全血サンプル中の総ヘモグロビンに対する糖化ヘモグロビンの比率は、糖尿病を有する患者の診断及びモニタリングにおいて非常に有用である。
【0004】
血糖の正確なコントロールは、糖尿病に関連する罹患率及び死亡率の多くを改善することができる。したがって、ヘモグロビンの物理的及び化学的特性に基づいて、又はその特異的抗体認識エピトープに基づいて、ヘモグロビンについての多くの様々なアッセイが開発されてきた。臨床研究は、HbA1cの結果が意思決定、患者コンプライアンス、及び予後を改善することを示した(非特許文献1;及び非特許文献2)。
【0005】
糖化ヘモグロビン(HbA1c)は、ヘモグロビンAのβ鎖のN末端の非酵素的糖化により形成される。HbA1cの測定は、糖尿病を有する患者における診断及び長期血糖コントロールのモニタリングにおいて補助として、及び糖尿病を発症する危険性がある患者の同定における補助として使用される。HbA1cレベルは、直前の一定期間(個体に依存して約8~12週)にわたる平均グルコース濃度を反映し、そして血糖及び尿中グルコース決定よりも、長期の血糖コントロールのより良い指標を提供する。HbA1cレベルの長期コントロールは、糖尿病により引き起こされる慢性合併症の発症の危険性及び進行を減少させることができるということが研究により示された。
【0006】
イムノアッセイは、臨床検査の状況において使用されるヘモグロビンアッセイ法の現在最も一般的な種類である。これらのイムノアッセイは、ヘモグロビンのエピトープを認識する抗体を利用し、そして特定の例では、(限定されないが)そのN末端糖化アミノ酸の少なくとも一部のような糖化ヘモグロビン(HbA1c)のエピトープを認識する抗体を利用する。例えば、検体HbA1cのための免疫比濁阻害法(turbidimetric inhibition immunoassay)(TINIA)は、抗HbA1c抗体及びポリハプテン凝集因子(polyhapten agglutinator)(すなわち、遊離抗体との凝集を引き起こす複数のHbA1cエピトープを含有する合成分子)を利用する。しかし、これは不溶性の抗体-ポリハプテン複合体を本質的に模倣するので、不完全に分散されたポリハプテン試薬は、このアッセイにおいて主要な妨害であり;不完全に分散されたポリハプテン試薬は、光分散を引き起こし、これがその後比濁法で測定され、それ故、吸光度と検体濃度との間の逆相関に起因して、誤って低いHbA1c値に変換される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Thaler et al. (1999) Diabetes Care、22:1415-1421
【非特許文献2】Miller et al. (2003) Diabetes Care、26:1158-1163
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
分光法もヘモグロビンアッセイに利用される;しかし、生物学的サンプル内の脂質の存在は、これらの方法において利用される波長の1つ又はそれ以上において干渉を生じ得る。したがって、分光法を利用し、それに対してイントラリピッド(intralipid)/脂肪血症から有意な干渉が観察されない新しい改善されたヘモグロビンA1cアッセイの必要性が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、Atellica CH臨床化学分析機(Siemens Healthineers、Tarrytown、NY)でイントラリピッドを添加された全血サンプルを用いて得られたイントラリピッド濃度(mg/dL)に対する糖化ヘモグロビンパーセント(% A1c)の結果をグラフに示す。
【
図2】
図2は、イントラリピッドを添加された全血(6.5%HbA1c)を用いて得られたイントラリピッド濃度(mg/dL)に対する%バイアス(Bias)の結果をグラフに示す。
【
図3】
図3は、イントラリピッドを添加された全血(8.0%HbA1c)を用いて得られたイントラリピッド濃度(mg/dL)に対する%バイアスの結果をグラフに示す。
【
図4】
図4は、イントラリピッド添加全血(6.5%及び8%HbA1c)を使用して得られたイントラリピッド濃度(mg/dL)に対するA1c(μmol/L)の結果をグラフに示す。
【
図5】
図5は、イントラリピッド添加全血(6.5%及び8%HbA1c)を使用して得られたイントラリピッド濃度(mg/dL)に対する総ヘモグロビン(tHb;μmol/L)の結果をグラフに示す。
【
図6】
図6は、イントラリピッドが存在しない場合に対する、イントラリピッドの増加のtHbに対する影響(%)をグラフに示す
【
図7】
図7は、イントラリピッド添加サンプルのための希釈スキームを図示する。
【
図8】
図8は、イントラリピッドを添加した全血(6.5%HbA1c)における805nmでの吸光度に対する、イントラリピッドを増加させた状態でのデルタtHb(μmol/L)をグラフに示す。
【
図9】
図9は、正常サンプルについての希釈スキームを図示する。
【
図10】
図10は、食塩水で希釈された正常サンプルにおけるtHb(μmol)に対する805nmでの吸光度をグラフに示す。
【
図11】
図11は、Atellica CH-イントラリピッド干渉に使用される希釈スキームを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
例となる言語及び結果により本開示の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、当然のことながら、本開示はその出願において、以下の説明に示される構成要素の構造及び配置の詳細に限定されない。本開示は他の実施形態の能力があり、又は本開示を様々なやり方で実施若しくは実行することができる。そのようにして、本明細書で使用される言語は、最も広い可能な範囲及び意味を与えられることを意図され;そして実施形態は例示的であり、包括的ではないことを意図される。また当然のことながら、本明細書で使用される表現及び用語は説明の目的のためのものであり、限定と解釈されるべきではない。
【0011】
本明細書において他の定義がなければ、本開示に関連して使用される科学技術用語は、当業者により一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈により他に必要とされなければ、単数形は複数を含むものとし、そして複数の用語は単数を含むものとする。一般に、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、並びにタンパク質及びオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド化学並びにハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法及びこれらの技術は、当該分野において周知であり、一般的に使用されるものである。組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、及び組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)には標準的な技術が使用される。酵素反応及び精製技術は、製造者の仕様書に従って、又は当該分野で一般的に行われているように若しくは本明細書に記載されるように行われる。前述の技術及び手順は、当該分野で周知の従来の方法に従って、及び本明細書の全体を通して引用され考察される様々な一般的な及びより具体的な参考文献に記載されるように、一般的に行われる。例えば、Sambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989))及びColiganら(Current Protocols in Immunology、Wiley Interscience(1994))を参照のこと。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、並びに医薬及び薬化学に関連して利用される命名法、並びにこれらの研究手順及び技術は、当該分野において周知であり一般的に使用されるものである。化学合成、化学分析、医薬品、製剤化、及び送達、並びに患者の処置には標準的な技術が使用される。
【0012】
明細書において言及されるすべての特許、公開特許出願、及び非特許刊行物は、本開示が属する分野の当業者の技能のレベルを示す。本出願の任意の部分において参照される全ての特許、公開特許出願、及び非特許刊行物は、各個々の特許又は刊行物が具体的にかつ個別に参照により加入されると示されるのと同じ程度までそれら全体として参照により本明細書に明示的に加入される。
【0013】
本明細書で開示される組成物、キット、及び/又は方法の全ては、本開示を考慮すれば過度の実験を行うことなく製造されかつ実施され得る。組成物、キット、及び/又は方法は特定の実施形態に関して記載されてきたが、当業者には当然のことながら、本開示の概念、精神、及び範囲から逸脱することなく、組成物、キット、及び/又は方法に、そして本明細書に記載される方法の工程又は一連の工程において、変形が適用され得る。当業者に明らかな全てのこのような類似した置換基及び修飾は、添付の特許請求の範囲により定義されるとおりの本開示の精神、範囲、及び概念内であるとみなされる。
【0014】
本開示に従って利用されるように、以下の用語は、別の指示がなければ、以下の意味を有すると理解されるものとする:
特許請求の範囲及び/又は明細書における用語「含むこと」に関連して使用される場合の用語「a」又は「an」の使用は、「1つ」を意味し得るが、これは、「1つ又はそれ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は1つより多く」の意味とも一致する。このようにして、用語「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうではないと示していない限り、複数の参照を含む。したがって、例えば「化合物(a compound)」への言及は、1つ若しくはそれ以上の化合物、2つ若しくはそれ以上の化合物、3つ若しくはそれ以上の化合物、4つ若しくはそれ以上の化合物、又はより多い数の化合物を指していてよい。用語「複数」は「2つ又はそれ以上」を指す。
【0015】
用語「少なくとも1つ」の使用は、1つに加えて、限定されないが2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含む、1つより多くの任意の量も含むことが理解されるだろう。用語「少なくとも1つ」は、それが付随した用語に依存して100又は1000又はそれ以上まで拡張され得る;さらに、より高い限定も満足できる結果を生じ得るので、100/1000の量は限定とみなされるべきではない。さらに、用語「X、Y、及びZの少なくとも1つ」の使用は、Xのみ、Yのみ、及びZのみ、さらにはX、Y、及びZの任意の組み合わせも含むと理解されるだろう。序数用語(すなわち、「第一の」、「第二の」、「第三の」、「第四の」など)の使用は、単に2つ又はそれ以上の項目の間を区別する目的のためのものであり、例えば別の項目に対する1つの項目の任意の順番若しくは順序若しくは重要性を示すことも、付加の任意の順序を示すことを意味するものでもない。
【0016】
特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、選択肢のみを指すと明確に示されてていなければ、又は選択肢が相互に排除されていなければ、両立的な「及び/又は」を意味するために使用される。例えば、条件「A又はB」は、以下のいずれか1つにより満たされる: Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在せず)かつBが真である(又は存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)。
【0017】
本明細書で使用されるように、「一実施形態」、「実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一例」、「例えば」、又は「例」への言及は、その実施形態に関連して記載される特定の要素、特性、構造、又は特徴が少なくとも1つの実施形態に含まれるということを意味する。明細書中の様々な箇所における句「いくつかの実施形態において」又は「一例」の出現は、例えば、必ずしも同じ実施形態への全ての言及ではない。さらに、1つ又はそれ以上の実施形態又は例への全ての言及は、特許請求の範囲に対して非限定的と解釈されるべきである。
【0018】
本出願全体を通して、用語「約」は、組成物/装置/デバイス、その値を決定するために使用される方法に固有の誤差の変動、又は試験対象間に存在する変動を値が含むことを示すために使用される。そのような変動は開示された方法を行うために適切であるので、そして当業者に理解されるように、例えば、限定ではないが、用語「約」が利用される場合、指定された値は、特定された値からプラスマイナス20パーセント、又は15パーセント、又は12パーセント、又は11パーセント、又は10パーセント、又は9パーセント、又は8パーセント、又は7パーセント、又は6パーセント、又は5パーセント、又は4パーセント、又は3パーセント、又は2パーセント、又は1パーセント変動し得る。
【0019】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されるように、語「含むこと(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」のような含むことの任意の形態)、「有すること」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」のような有することの任意の形態)、含むこと(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)」のような含むことの任意の形態)、又は「含有すること」(並びに「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」のような含有することの任意の形態は、両立的又はオープンエンドであり、追加の記載されていない要素又は方法工程を排除しない。
【0020】
本明細書で使用されるように用語「又はその組み合わせ」は、その用語の前に列挙された項目の全ての並べ替え及び組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、又はその組み合わせ」は:A、B、C、AB、AC、BC、又はABC、並びに特定の文脈で順序が重要な場合は、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABの少なくとも1つを含むことを意図される。この例に続いて、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB、などのような1つ又はそれ以上の項目又は用語の繰り返しを含有する組み合わせも明示的に含まれる。当業者は、そうではないと文脈から明らかでなければ、典型的に任意の組み合わせ中の項目又は用語の数に制限はないということを理解するだろう。
【0021】
本明細書で使用されるように、用語「実質的に」は、続けて記載される事象若しくは状況が完全に発生するか、又は続けて記載される事象若しくは状況が大部分又はかなりの程度まで発生するということを意味する。例えば、特定の事象又は状況に付随する場合、用語「実質的に」は、続けて記載される事象又は状況が少なくとも80%の場合、又は少なくとも85%の場合、又は少なくとも90%の場合、又は少なくとも95%の場合に発生することを意味する。用語「実質的に隣接する」は、2つの項目が、互いに100%隣接していること、又は2つの項目が互いに近接しているが、100%隣接しているわけではないということ、又は2つの項目のうちの1つの一部が他方の項目に100%隣接していないが、他方の項目と近接していることを意味し得る。
【0022】
本明細書で使用される用語「サンプル」は、本開示に従って利用され得る任意の種類の生物学的サンプルを含むと理解されるだろう。利用され得る流体生物学的サンプルの例としては、限定されないが、全血又はその任意の部分(すなわち、血漿又は血清)、尿、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、皮膚、腸液、腹腔液、嚢胞液、汗、間質液、細胞外液、涙、粘液、膀胱洗浄液、精液、糞便、胸水、鼻咽頭液、その組み合わせなどが挙げられる。
【0023】
本明細書で使用されるように、用語「反応キュベット」は、本明細書に記載されるような少なくとも1つの診断アッセイを行うことができる任意のデバイスを含む。反応キュベットは、診断アッセイを手動で行い得るが、多くの場合、反応キュベットは、診断アッセイの実行を自動化するシステムに挿入される。1つの非限定的な実施形態において、反応キュベットは、限定としてではなく、例えば、Siemens Healthineers (Tarrytown、NY)から市販されているAtellica臨床化学システムにより実行される自動化診断アッセイにおける使用のための反応キュベットを含む。しかし、当然のことながら、反応キュベットは、いずれの市販製品でも、本開示に従って1つ又はそれ以上の診断アッセイを行うことができる本明細書において記載されるか又は別の方法で企図されるキュベットであってもよい。
【0024】
現在開示され、かつ/又は特許請求される発明の概念のことをここで考えると、本開示の特定の非限定的な実施形態は、概してヘモグロビンA1cアッセイにおける干渉を減少する方法に関し、ここで干渉は、(限定としてではなく、例えば)イントラリピッド/脂肪血症により引き起こされ、そして干渉は濁度正規化アルゴリズムの使用により減少される。特に、本開示の特定の非限定的な実施形態は、任意の濁度干渉が実質的に除去される糖化ヘモグロビンアッセイに関し;(限定としてではないが)例えば、任意の濁度干渉は、約1000mg/dLまでのイントラリピッド濃度で+/-約5%未満に実質的に減少され得る。このようにして、任意のイントラリピッド/脂肪血症で観察される任意の負バイアスはアッセイから除去される。
【0025】
本開示の特定の非限定的な実施形態は、生物学的サンプルにおいて糖化ヘモグロビンパーセント又は糖化ヘモグロビン:総ヘモグロビン比を測定する方法に関する。この方法は: (i)溶解した赤血球を含有する生物学的サンプルにおいて第一の波長及び第二の波長で吸光度を測定し、そしてこれら2つの波長で得られた測定結果に基づいて総ヘモグロビン濃度(tHb)を決定する工程、[ここで第一の波長は658nmであり、そして第二の波長は約689nm~約699nmの範囲内である]; (ii)溶解した赤血球を含有する生物学的サンプルにおいて第三の波長及び第四の波長で吸光度を測定し、そしてこれら2つの波長で得られた測定結果に基づいて糖化ヘモグロビン濃度(A1c)を決定する工程、[ここで第三の波長は658nmであり、そして第四の波長は約785nm~約825nmである]; (iii)工程(ii)において第四の波長で測定された吸光度(cHb)及び濁度正規化アルゴリズムを利用して、(i)において算出された総ヘモグロビン濃度を正規化して(i)の波長測定結果から任意の濁度干渉を実質的に除去する工程、[ここで、任意の濁度干渉は、約1000mg/dLまでのイントラリピッド濃度で+/-約5%未満まで実質的に減少され、そして濁度正規化アルゴリズムは: 正規化tHb=1.03×tHb(μmol/L)-cHb×0.7899 である];並びに (iv)(ii)及び(iii)において算出された濃度に基づいて、糖化ヘモグロビンパーセントまたは糖化ヘモグロビン:総ヘモグロビン比を計算する工程を含む。
【0026】
上記の方法の特定の非限定的な実施形態において、生物学的サンプルは溶解した全血サンプルである。
【0027】
上記の方法の特定の非限定的な実施形態において、工程は単一の反応キュベットで行われる。
【0028】
第二の波長は約689nmから約699nmの範囲内の任意の整数であり得、これらとしては、約689nm、約690nm、約691nm、約692nm、約693nm、約694nm、約695nm、約696nm、約697nm、約698nm、及び約699nmが挙げられる。特定の(しかし非限定的な)実施形態において、第二の波長は694nmである。
【0029】
第四の波長は、約785nmから約825nmの範囲内の任意の整数であり得、これらとしては、約785nm、約786nm、約787nm、約788nm、約789nm、約790nm、約791nm、約792nm、約793nm、約794nm、約795nm、約796nm、約797nm、約798nm、約799nm、約800nm、約801nm、約802nm、約803nm、約804nm、約805nm、約806nm、約807nm、約808nm、約809nm、約810nm、約811nm、約812nm、約813nm、約814nm、約815nm、約816nm、約817nm、約818nm、約819nm、約820nm、約821nm、約822nm、約823nm、約824nm、及び約825nmが挙げられる。特定の(しかし非限定的な)実施形態において、第四の波長は805nmである。
【0030】
本開示の特定の非限定的な実施形態は、生物学的サンプルにおいて糖化ヘモグロビンパーセント又は糖化ヘモグロビン:総ヘモグロビン比を測定する方法に関する。この方法は: (a)生物学的サンプル中に存在する赤血球を溶解する工程;(b)溶解した赤血球を試薬と反応させて、ヘモグロビンを酸化してメトヘモグロビンにする工程;(c)プロテアーゼを用いてN-末端フルクトシルジペプチドフラグメントをヘモグロビンベータ鎖から切断する工程;(d)メトヘモグロビンをアジド-メトヘモグロビンに変換する工程;(e)第一の波長及び第二の波長で吸光度を測定し、そしてこれら2つの波長で得られた測定結果に基づいて総ヘモグロビン濃度(tHb)を決定する工程、[ここで、第一の波長は658nmであり、そして第二の波長は約689nm~約699nmの範囲内である];(f)N-末端フルクトシルペプチドフラグメントを試薬と反応させて過酸化水素を生成する工程;(g)第三の波長及び第四の波長で吸光度を測定し、そしてこれら2つの波長で得られた測定結果に基づいて糖化ヘモグロビン濃度(A1c)を決定する工程、[ここで、第三の波長は658nmであり、そして第四の波長は約785nm~約825nmの範囲内である];(h)工程(g)における第四の波長で測定された吸光度(cHb)及び濁度正規化アルゴリズムを利用して、工程(e)において算出された総ヘモグロビン濃度を正規化し、工程(e)の波長測定結果から任意の濁度干渉を実質的に除去する工程;並びに(i) (g)及び(h)において算出された濃度に基づいて、糖化ヘモグロビンパーセント又は糖化ヘモグロビン:総ヘモグロビン比を計算する工程を含む。
【0031】
特定の非限定的な実施形態において、工程(h)において使用される濁度正規化アルゴリズムは:
正規化tHb=1.03×tHb(μmol/L)-cHb×0.7899
である。
【0032】
特定の非限定的な実施形態において、任意の濁度干渉は、約1000mg/dLまでのイントラリピッド濃度で+/-約5%未満に実質的に減少される。
【0033】
特定の非限定的な実施形態において、工程(a)~(g)は全て単一の反応キュベットで行われる。
【0034】
第二の波長は、約689nmから約699nmの範囲内の任意の整数であり得、これらとしては、約689nm、約690nm、約691nm、約692nm、約693nm、約694nm、約695nm、約696nm、約697nm、約698nm、及び約699nmが挙げられる。特定の(しかし非限定的な)実施形態において、第二の波長は694nmである。
【0035】
第四の波長は約785nmから約825nmの範囲内の任意の整数であり得、これらとしては、約785nm、約786nm、約787nm、約788nm、約789nm、約790nm、約791nm、約792nm、約793nm、約794nm、約795nm、約796nm、約797nm、約798nm、約799nm、約800nm、約801nm、約802nm、約803nm、約804nm、約805nm、約806nm、約807nm、約808nm、約809nm、約810nm、約811nm、約812nm、約813nm、約814nm、約815nm、約816nm、約817nm、約818nm、約819nm、約820nm、約821nm、約822nm、約823nm、約824nm、及び約825nmが挙げられる。特定の(しかし非限定的な)実施形態において、第四の波長は805nmである。
【0036】
特定の非限定的な実施形態において、生物学的サンプルは全血サンプルである。
【0037】
当該分野で公知の任意の溶解試薬又は本明細書で考慮される他の方法を利用して、本開示に従って生物学的サンプル中に存在する赤血球を溶解し得る。溶解試薬は当該分野で周知であり、そして広く市販されており、したがってそのさらなる考察は不必要と考えられる。
【0038】
本明細書に開示される方法においてヘモグロビンをメトヘモグロビンに酸化することができる当該分野で公知のいずれの試薬も本開示に従って利用され得る。特定の非限定的な実施形態において、工程(b)においてヘモグロビンをメトヘモグロビンに酸化するために使用される試薬は亜硝酸ナトリウムである。
【0039】
本明細書に開示される方法の工程(d)においてメトヘモグロビンをアジド-メトヘモグロビンに変換することができるいずれのアジドも本開示に従って利用され得る。特定の非限定的な実施形態において、メトヘモグロビンはアジ化ナトリウムの存在下でアジド-メトヘモグロビンに変換される。
【0040】
本明細書に開示される方法の工程(f)においてヘモグロビンベータ鎖のN末端フルクトシルペプチドフラグメントとの反応の際に過酸化水素の生成をもたらすことができるいずれの試薬も本開示にしたがって利用され得る。特定の非限定的な実施形態において、工程(f)において使用される試薬はフルクトシルペプチドオキシダーゼである。
【0041】
本開示の特定の非限定的な実施形態は、生物学的サンプルにおいて糖化ヘモグロビンパーセント又は糖化ヘモグロビン:総ヘモグロビン比を測定する方法に関する。この方法は: (a) 生物学的サンプル中に存在する赤血球を溶解する工程; (b)溶解した赤血球を亜硝酸ナトリウムと反応させて、ヘモグロビンを酸化してメトヘモグロビンにする工程; (c)N-末端フルクトシルジペプチドフラグメントをヘモグロビンベータ鎖からプロテアーゼを用いて切断する工程; (d)アジ化ナトリウムの存在下でメトヘモグロビンをアジド-メトヘモグロビンに変換する工程; (e)第一の波長及び第二の波長で吸光度を測定し、そしてこれら2つの波長で得られた測定結果に基づいて総ヘモグロビン濃度(tHb)を決定する工程、[ここで、第一の波長は658nmであり、そして第二の波長は約689nm~約699nmの範囲内である]; (f)N-末端フルクトシルペプチドフラグメントを試薬と反応させて過酸化水素を生成する工程; (g)第三の波長及び第四の波長で吸光度を測定し、そしてこれら2つの波長で得られた測定結果に基づいて糖化ヘモグロビン濃度(A1c)を決定する工程、[ここで、第三の波長は658nmであり、そして第四の波長は約785nm~約825nmの範囲内である]; (h)工程(g)において第四の波長で測定された吸光度(cHb)及び濁度正規化アルゴリズムを利用して、工程(e)において算出された総ヘモグロビン濃度を正規化し、(e)の波長測定結果から任意の濁度干渉を実質的に除去する工程、[ここで、任意の濁度干渉は、約1000mg/dLまでのイントラリピッド濃度で+/-約5%未満に実質的に減少され、そして濁度正規化アルゴリズムは: 正規化tHb=1.03×tHb(μmol/L)-cHb×0.7899 である];並びに(i)(g)及び(h)において算出された濃度に基づいて糖化ヘモグロビンパーセント又は糖化ヘモグロビン:総ヘモグロビン比を計算する工程
を含む。
【0042】
上記の方法の特定の非限定的な実施形態において、生物学的サンプルは全血サンプルである。
【0043】
上記の方法の特定の非限定的な実施形態において、工程(a)~(g)は単一の反応キュベットで行われる。
【0044】
第二の波長は、約689nmから約699nmの範囲内の任意の整数であり得、これらとしては約689nm、約690nm、約691nm、約692nm、約693nm、約694nm、約695nm、約696nm、約697nm、約698nm、及び約699nmが挙げられる。特定の(しかし非限定的な)実施形態において、第二の波長は694nmである。
【0045】
第四の波長は、約785nmから約825nmの範囲内の任意の整数であり得、これらとしては、約785nm、約786nm、約787nm、約788nm、約789nm、約790nm、約791nm、約792nm、約793nm、約794nm、約795nm、約796nm、約797nm、約798nm、約799nm、約800nm、約801nm、約802nm、約803nm、約804nm、約805nm、約806nm、約807nm、約808nm、約809nm、約810nm、約811nm、約812nm、約813nm、約814nm、約815nm、約816nm、約817nm、約818nm、約819nm、約820nm、約821nm、約822nm、約823nm、約824nm、及び約825nmが挙げられる。特定の(しかし非限定的な)実施形態において、第四の波長は805nmである。
【実施例】
【0046】
本明細書以下に実施例を提供する。しかし本開示は、その適用において、本明細書に開示される具体的な実験、結果、及び研究手順に限定されないということが理解されるべきである。むしろ実施例は、単に多様な実施形態の1つとして提供されるものであり、包括的ではなく例示的であることを意図される。
【0047】
現在使用される糖化ヘモグロビンアッセイ(Advia臨床化学分析機;Siemens Healthineers、Tarrytown、NYのために開発された)は、2つの別々の測定からなる: 糖化ヘモグロビン(A1c_E)及び総ヘモグロビン(tHb_E)。2つの測定結果を使用して、%HbA1c (NGSP単位)又はヘモグロビンA1c_E/tHb_E比をmmol/mol(IFCC単位)で決定する。
【0048】
抗凝固剤処理された全血試料を、自動化アッセイのためのシステムで溶解するか、又は前処理溶液を使用して手動で溶解して手動アッセイのための溶血液を得てもよい。
【0049】
この糖化ヘモグロビンアッセイは、HbA1cのベータ鎖上のN末端フルクトシルジペプチドを特異的に測定する酵素的方法である。前処理工程において、赤血球を溶解し、そしてヘモグロビンを亜硝酸ナトリウムとの反応により酸化してメトヘモグロビンにする。反応の第一の工程において、N末端フルクトシルジペプチドフラグメントをヘモグロビンベータ鎖からプロテアーゼを用いて切断する。同時に、メトヘモグロビンをアジ化ナトリウムの存在下で安定なアジド-メトヘモグロビンに変換し、そして478/805nmでの吸光度を測定することにより総ヘモグロビン濃度を決定する。反応の第二の工程において、フルクトシルペプチドオキシダーゼ(FPOX)を加えてフルクトシルジペプチドと反応させ、過酸化水素を生成する。過酸化水素はペルオキシダーゼの存在下でクロマゲン(chromagen)と反応して658/805nmで測定される色を発生する。
【0050】
この糖化ヘモグロビンアッセイはまた、tHb_E測定に影響を与え得る任意のサンプル濁度を有効に除去するために、884nmで測定される濁度正規化機構(cHb_E)を組み込む。
【0051】
しかし、他の臨床化学分析機は、上記のアッセイの濁度正規化成分に使用される波長(884nm)でのフィルターを有しておらず;したがって、他の正規化方法は、これらの臨床化学分析機が、濁度正規化成分を含む糖化ヘモグロビンアッセイを実行することを可能にするように開発されなければならない。本明細書以下に記載されるように、本明細書似記載される糖化ヘモグロビンアッセイがイントラリピッド/脂肪血症からの任意の有意な干渉を除去することが見いだされた。
【0052】
ここで本開示の糖化ヘモグロビンアッセイを見てみると、このアッセイもまた酵素エンドポイントアッセイであり、この場合、結果は2つのパラメーターのパーセントとして測定される:658/805nmで測定されるA1c、及び478/694nmで測定される総ヘモグロビン(tHb)。アッセイは、イントラリピッド干渉及び/又は高濁度を有するサンプルにおいて誤って上昇したtHb値を正規化するために、第三のサブパラメーターcHbの組み込みをさらに含む。
【0053】
本明細書で上に記載されたAdvia臨床化学分析機のために開発されたアッセイと対照的に、現在の糖化ヘモグロビンアッセイでは、cHbはtHbと同じ読み取りサイクルの間に805nmで測定され、ここで吸光度はイントラリピッド干渉又は増加した濁度から独立している。以下の正規化等式を、本明細書に開示される糖化ヘモグロビンアッセイにおいて使用する:
正規化tHb_E = 1.055×tHb(μmol/L) - cHb(Abs884nm)×1400。
【0054】
イントラリピッドを含むか又は増加した濁度を有するサンプルを2つの異なる臨床化学分析機(Atellica CH及びAdviaモジュール、Siemens Healthineers、Tarrytown、NY)で試験し、そして両方のプラットフォームで類似した挙動が見られた。濁度正規化をしない場合、これらのサンプルは、誤って上昇したtHb値を示し、結果として誤って減少したHbA1c(%)値を示した(
図1)。
【0055】
イントラリピッドを添加した場合、全血サンプルは|+/-5%|バイアス特定化に失敗する。目標|+/-5%|バイアスに対して計算した場合、合格したサンプルはイントラリピッドを約300mg/dLしか有しておらず、これは1000 mg/dL イントラリピッド目標濃度より十分低いものである(
図2及び
図3及び表I)。
【0056】
【0057】
前のアッセイプラットフォームと同様に、現在の糖化ヘモグロビンアッセイに対するイントラリピッド干渉及びサンプル濁度の影響を、tHb比率で示す。したがって、濁度正規化等式はこのプラットフォームにも必要である(
図4、
図5、及び
図6並びに表II)。
【0058】
【0059】
糖化ヘモグロビンアッセイが行われる全ての臨床化学分析機が884nmにフィルターを有しているわけではない;したがって、他の分析機(例えば、限定されないが、Atellica CHモジュール、Siemens Healthineers、Tarrytown、NY)での実行を可能にするために、本明細書に記載される糖化ヘモグロビンアッセイは、tHb正規化定数とともにtHb及びcHb試験波長の再計算を含む。この糖化ヘモグロビンアッセイによるA1c試験波長の使用は、658/805nmで同じままである。現在のアッセイにおいて使用されるtHb試験波長は478/694nmであり、そして現在のアッセイにおいて使用されるcHb試験波長は805nmである。
【0060】
以下のプロトコルは、本開示の糖化ヘモグロビンアッセイのパラメーターを最適化するために使用された方法を記載する。
【0061】
5.0、6.5、8.0、及び12.0%HbA1cで評価された全血の医療判断プール(Medical Decision Pools)を、複数の実行可能性研究において使用した。これらのサンプルを以下のようにして作製した。新鮮な採血部位のサンプルを集め、そして高BBI材料(Hemoglobin A1C HbA1C、SKU P186-0B; BBI Solutions、Crumlin、UK)を添加して上述の目標%HbA1c値を得た。これらのサンプルをTosoh G8 HPLC分析機(Tosoh Bioscience、Inc.、South San Francisco、CA; SN 13523607)で値を割り当てた。サンプルをピペットで0.5mLのアリコートに取り分けて凍結させた。
【0062】
線形回帰を使用して、新しい波長でのtHb濃度に対するイントラリピッドの影響を評価した。6.5% HbA1cで評価された凍結全血MDP(医療判断点(Medical Decision Point))サンプル2mLを解凍し、そしてゆっくりと約1時間反転させた。20,000mg/dLイントラリピッド50μLを、解凍したMDP 950μLに添加して、最終イントラリピッド濃度1000mg/dLを有する全血サンプルを合計で1mLにした。均一性を確実にするためにこの混合物を約30分間反転させた。ついで、増加するイントラリピッド濃度(0mg/dL、250mg/dL、500mg/dL、750mg/dL、及び1000mg/dL)の5つの特異な全血サンプルを、
図7において説明される希釈図式を使用して作製した。次いで各レベルをAtellica CHモジュールで3回反復して試験した。次いでデータをプロットし、そして勾配及びy切片を線形回帰により得た。
【0063】
図8に示されるように、線形回帰及びその勾配により等式y=0.7899x-4.7676を定めて、新しい濁度正規化等式を開発した。
【0064】
線形回帰を使用して、tHb濃度と805nmでの吸光度との関係を評価した。溶血液をドナー部位採血から作製してヒト全血合計10mLとした。EDTAチューブを>4時間冷蔵で放置し、そして細胞及び血漿が自然に分離した。血漿を各チューブから除去し、そして別の容器に移した。次いで赤血球を10分間2000gで遠心分離して細胞を濃縮し、そして上清を廃棄した。濃縮された細胞を食塩水で洗浄し、そして3回再遠心分離し、各洗浄の間の上清を廃棄した。洗浄した細胞を終夜-70℃で凍結し、そして翌日に試験のために解凍した。血漿の等間隔希釈及び濃縮した溶血液(≧250μmol/L tHb)を作製し、
図9に示される希釈図式に従って合計で6つの増加するtHb濃度の異なるサンプルとした。5番目及び最も高いレベル(≧250μmol/L tHb)はAtellica希釈プローブにより吸引することができず、これにより粘度サンプルデルタフラッグを変更した;したがって、4.5レベルをレベル4及び5を使用して作製した。次いで各レベルをAtellica CH分析機で3回反復で試験した。次いでデータをプロットし、そして勾配及びy切片を得た。
【0065】
図10に示されるように、等式y=0.0326x+1.2168を線形回帰により定め、そしてその勾配を使用して新しい濁度正規化等式を開発した。
【0066】
両方の実験からの勾配0.7899及び0.0326を使用して、正規化等式を以下に示すように定式化した:
正規化tHb_Eを、等式[1]に従って計算する:
[1] tHb_Enorm=tHb_Enot-norm-tHb_Eturbidity
ここで、tHb_Enormは正規化後の総ヘモグロビン(μmol/L)であり;tHb_Enot-normは正規化前の総ヘモグロビン(μmol/L)であり;そしてtHb_EturbidityはtHb_Eへの濁度寄与(μmol/L)である。
【0067】
tHb_Eturbidityを等式[2a]に従って計算する。等式[2a]において、805nmでの吸光度(cHb)を使用して、アッセイの読み取り波長(478nm)での濁度に起因する等価tHb寄与を決定する。等式の第二の部分(tHb_Enot-norm×0.0326)は、884nmでの真のヘモグロビン寄与に相当し、そしてtHb_Eへの真の濁度寄与を決定するために差し引かれなければならない。
【0068】
係数0.7899及び0.0326は経験的に導かれる。0.7899は、805nmでの吸光度(Abs805nm)に対する、増加する濁度(全血に添加するためにイントラリピッドを使用して、脂肪血症サンプル条件をシミュレートする)を有するサンプルにおける478nmで測定された総ヘモグロビン(tHb_Enotnorm)の変化の線形回帰の勾配である。0.0326は、増加するヘモグロビン濃度に対する884nmでの吸光度の勾配である。
【0069】
[2a] tHb_Eturbidity=0.7899×[Abs805nm-(tHb_Enot-norm×0.0326)]
等式[2a]を等式[2b]及び[2c]に簡略化する。
[2b] tHb_Eturbidity=(0.7899)(Abs805nm)-(0.7899)(tHb_Enot-norm)(0.0326)
[2c] tHb_Eturbidity=(0.7899)(Abs805nm)-(0.03)(tHb_Enot-norm)
等式[2c]を等式[1]に置換し戻して等式[3a]を得る:
[3a] tHb_Enorm=tHb_Enot-norm-((0.7899)(Abs805nm)-(0.03)(tHb_Enot-norm))
次いで等式[3a]を[3b]及び[3c]に簡略化する:
[3b] tHb_Enorm=tHb_Enot-norm-(0.7899)(Abs805nm)+(0.03)(tHb_Enot-norm)
[3c] tHb_Enorm=(1.03)(tHb_Enot-norm)-(0.7899)(Abs805nm))
最終正規化等式:
正規化tHb_E=1.03×tHb(μmol/L)-cHb(Abs805nm)×0.7899
【0070】
波長を評価するために、6.5% HbA1cで評価された凍結全血MDPサンプル2mLを解凍し、そして約1時間穏やかに反転させた。20,000mg/dLのイントラリピッド50μLを解凍したMDP 950μLに添加し、1000mg/dLの最終イントラリピッド濃度を有する合計で1mLの全血サンプルとした。この混合物を約30分間反転して均一性を確実にした。対照サンプル(イントラリピッドを含まないMDP)及び試験サンプル(イントラリピッドを添加したMDP)を、分析機で3回反復して試験した。干渉(Dobs)及び%バイアスを計算し、そして以下の波長の組み合わせについて評価した: (1)A1c-658/805nm及びtHb-478/805nm、表IIIに示されるとおり; (2)A1c-658/694nm及びtHb-478/694nm、表IVに示されるとおり; (3)A1c-658/694nm及びtHb-478/805nm、表Vに示されるとおり;並びに(4)A1c-658/805nm及びtHb-478/694nm、表VIに示されるとおり。A1cについての試験波長658/805nm及びtHbについての478/694nm(表VI)は、最良の性能を示し、したがって新しい試験波長として規定された。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
以下の実行可能性データは全て新しい正規化等式を分析の間使用した。
【0076】
6.5%及び8.0%HbA1cで評価された凍結全血MDPサンプル2mLを解凍し、そして約1時間穏やかに反転させた。20,000mg/dLのイントラリピッド50μLを、解凍した6.5%MDP 950μLに添加して、全血1mLで最終イントラリピッド濃度1000mg/dLに達した。20,000mg/dLのイントラリピッド50μLを、解凍した8.0%MDP 950μLに添加して、全血1mLで最終イントラリピッド濃度1000mg/dLに達した。この混合物を約30分間反転させて均一性を確実にした。次いで増加するイントラリピッド濃度(0mg/dL、250mg/dL、500mg/dL、750mg/dL、及び1000mg/dL)の5つの異なる全血サンプルを、
図11において説明される希釈図式を使用して両方のMDPレベルについて作製した。次いで各レベルをAtellica CH分析機で3回反復して試験し、そして表VII及び表VIIIに示されるように、平均及び%バイアスを計算した。
【0077】
【0078】
【0079】
以上のように、イントラリピッド干渉は、本開示の新しい糖化ヘモグロビンアッセイにおいては影響が重要でなく、そして目標イントラリピッド濃度(1000mg/dL)で測定された場合、得られた%バイアスは特定の目標|+/-5%|未満であった。
【0080】
したがって、本開示に従って、本明細書で上に示された目標及び利点を完全に満たす組成物並びにそれらの製造方法及び使用方法が提供された。本開示は、本明細書で上に示される具体的な図面、実験、結果、及び言語に関連して記載されてきたが、多くの代替、改変、及び変形が当業者に明らかであることは明白である。したがって、本開示の精神及び広範な範囲内である全てのこのような代替、改変及び変形を包含することが意図される。
【国際調査報告】