(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】有価文書のセキュリティ要素、これを製造する方法、およびこれを含む有価文書
(51)【国際特許分類】
B42D 25/324 20140101AFI20220125BHJP
B42D 25/42 20140101ALI20220125BHJP
B42D 25/29 20140101ALI20220125BHJP
【FI】
B42D25/324
B42D25/42
B42D25/29
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546475
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2019078765
(87)【国際公開番号】W WO2020083938
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520209657
【氏名又は名称】オベルトゥール フィデュシエール エスアエス
【氏名又は名称原語表記】OBERTHUR FIDUCIAIRE SAS
【住所又は居所原語表記】7 AVENUE DE MESSINE, 75008 PARIS, FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ボルド、グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ギロー、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】シャポー、ギヨ-ム
【テーマコード(参考)】
2C005
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA03
2C005HA04
2C005HB10
2C005JB40
(57)【要約】
本発明は、有価文書のセキュリティ要素(1)であって、連続または隣接した少なくとも2つのライン(2、2’、2”)の配列(R)を含み、前記ラインのうち少なくとも1つ(2)は、レリーフ化され、2つの対向する側面(20、21)を有し、前記側面のうち少なくとも1つは、部分的に傾斜し、各側面は、前記ライン(2)の対向する長手方向縁部(200、210)の1つに沿って始まり、前記2つの対向する側面(20、21)は、前記ライン(2)の長手方向に沿って伸びる単一の途切れない波状の接合領域(22)で合流し、前記側面(20、21)は、少なくとも前記長手方向に連続するまたは途切れないことを特徴とするセキュリティ要素に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価文書(8)のセキュリティ要素(1)であって、連続または隣接した少なくとも2つのライン(2、2’、2”)の配列(R)を含み、前記ラインのうち少なくとも1つ(2)は、レリーフ化され、2つの対向する側面(20、21)を有し、前記側面のうち少なくとも1つは、部分的に傾斜し、各側面は、前記ライン(2)の前記対向する長手方向縁部(200、210)の1つに沿って始まり、前記2つの対向する側面(20、21)は、前記ライン(2)の長手方向に沿って伸びる単一の途切れない波状の接合領域(22)で合流し、前記側面(20、21)は、少なくとも前記長手方向に連続するまたは途切れないことを特徴とするセキュリティ要素。
【請求項2】
前記接合領域(22)は、正弦波の形状を有することを特徴とする請求項1に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項3】
前記正弦波は、その全範囲にわたって一定の周期を有することを特徴とする請求項2に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項4】
前記正弦波は、その範囲内で少なくとも1つの周期変化を有することを特徴とする請求項2に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項5】
前記配列(R)は、非周期構造を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項6】
前記少なくとも2つのライン(2、2’、2”)のレリーフは、その範囲内で非周期変化を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項7】
前記接合領域(22)は、前記対向する長手方向縁部(200、210)が含まれる平面(P)と平行または実質的に平行であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項8】
前記接合領域(22)は、前記対向する長手方向縁部(200、210)が含まれる平面(P)に垂直または実質的に垂直であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項9】
前記接合領域(22)の振幅は、可変であることを特徴とする請求項7または8に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項10】
前記接合領域(22)と、前記長手方向縁部(200、210)が含まれる平面(P)との間の間隔は、一定または可変であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項11】
前記接合領域(22)は、リッジまたは好ましくはストライプからなることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項12】
前記側面(20、21)のうち少なくとも1つは、直線状または非直線状の傾斜を有することを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項13】
前記配列(R)の全てのライン(2、2’、2”)は、同一の幅を有することを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項14】
前記少なくとも2つのライン(2、2’、2”)は、幅および/または長さが非三角形のレリーフプロファイルを有することを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項15】
前記配列(R)の少なくとも1つのライン(2、2’、2”)は、他のラインとは異なる幅を有することを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項16】
前記配列(R)の少なくとも1つのライン(2、2’、2”)は、他のラインとは異なる形状の接合領域(22)を有することを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項17】
前記側面(20、21)は、前記対向する長手方向縁部(200、210)に対して、上向きまたは下向きに傾斜していることを特徴とする請求項1~16のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項18】
前記セキュリティ要素(1)は、多層アセンブリ(E)を含み、前記配列(R)は、前記多層アセンブリ(E)に組み込まれており、その追加層は、染料または顔料インク、色変更顔料インク、液晶、屈折率変化を有する多層樹脂フィルム、薄層を有する光学干渉フィルタ、および真空蒸着金属から選択されることを特徴とする請求項1~17のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)のエンボス加工ツールを製造する方法であって、
a)前記配列(R)のライン(2、2’、2”)の部分に特徴的な2次元画像であって、深度または高度がそれぞれ割り当てられた複数のグレーレベル有する2次元画像を作成または製造するステップと、
b)必要に応じてステップa)を繰り返し、同一または異なる部分を組み合わせて、所望の形状および長さのラインを作成するステップと、
c)必要に応じてステップa)およびb)を繰り返し、連続または隣接して組み立てられるラインを作成して、サブアセンブリを形成するステップと、
d)必要に応じてステップa)~c)を繰り返し、最終パターンを得るステップと、
e)ステップa)~d)で得られた前記画像または前記最終パターンから、各点が前記グレーレベルの位置特徴を有する3次元画像を形成するステップと、
f)ステップe)で得られた前記画像に特徴的なインプリントを得るため、3次元ハードウェアを作成するステップと、を少なくとも含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
オリジネーションは、フォトリソグラフィ、特にグレーレベルフォトリソグラフィ、レーザーリソグラフィ、電子リソグラフィ、または電子ビームリソグラフィのいずれかの技術を実施することによって行われることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~15のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)を少なくとも含むことを特徴とする有価文書、特に紙幣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価文書のセキュリティ要素に関する。また、本発明は、このようなセキュリティ要素の製造方法、および、このようなセキュリティ要素を少なくとも含む有価文書に関する。
【背景技術】
【0002】
第一レベルセキュリティと呼ばれるセキュリティは、追加設備なしで視認できるものであり、偽造されたセキュリティ文書や紙幣などの有価文書に対する有効な防波堤となる。
【0003】
また、この種の文書の製造者は、操作が非常に直感的でありながら、適切なノウハウや設備がなければ実現が困難であり、もちろん偽造も不可能であることを保証することで、これらのセキュリティの実現に重点を置いている。これは、その実現のために使用される技術が一般の人々にはアクセスしにくく、これらのツールの導入が制限されていること、および/または、文書保護の特定の取引に特化していることを意味する。
【0004】
実際、これらの要素は誰にでも簡単に確認でき、誰もが紙幣などの文書が本物であることを証明することができる。
【0005】
仏国特許出願公開第2942811号明細書には、レリーフラインの配列からなるセキュリティ要素の形成技術が開示されている。各ラインは、傾斜角度がラインに沿って徐々に変化する少なくとも1つの側面を含み、この要素の観察角度に応じて変化する光学的陰影効果を反射光に与える。
【0006】
この文献には、特に、上述のラインの配列のネガティブレリーフを含む、レーザー彫刻や精密機械加工ツールを用いて作られる凹版印刷用プレートの製造について教示されている。
【0007】
このプレートは、虹色インクや色変更インクなどの反射面を含む紙型媒体をエンボス加工する手段として使用される。別の態様では、事前にエンボス加工された表面をインクで覆う(コートする)ことも可能である。
【0008】
より詳細には、配列のラインの幅は10μm~2mm、好ましくは100μm~1mmであり、高さは0~200μmである。
【0009】
実際には、プレートの凹版彫刻に従来使用されている彫刻ツールの解像度に対応するレーザー「スポット」サイズ(有効彫刻領域)とピッチ、すなわち彫刻ツールの最小変位で、400μmの線幅と0~100μmの高さが使用される。
【0010】
これらの寸法は、もちろん、好ましくは+90°~-90°の角度、より好ましくは従来からの検査時の紙幣の傾きに相当する+30°~-30°の角度で文書を傾けたときに視覚効果が得られるように計算されている。
【0011】
このセキュリティ要素は、2cm2程度の部分に有効である。「部分」とは、ユーザが快適に見えるようにシステムが延在する推奨面を意味することを理解されたい。
【0012】
これは、配列の主な延在方向と垂直な方向に、少なくとも50の隣接する刻印ライン(例えば2cm辺)があることを表している。
【0013】
また、これらの寸法は彫刻を作成するために使用されるツールの彫刻限界を表している。実際、作成された彫刻を顕微鏡で観察すると、表面状態が非常に乱れている。彫刻の側面や底部は滑らかではなく、制御が難しい粗さ(アスペリティ)やブリスタが存在する。これらの欠陥は、彫刻工程で、レーザー彫刻された材料の部分的な溶融や、ビーズ、切削残留物によって形成される。
【0014】
また、上述したように、彫刻ツールの変位のピッチが比較的大きく、解像度、すなわちレーザー「スポット」のサイズが3~5μm程度であるため(8,000~5,080dpiの解像度)、滑らかな表面の形成が制限され、むしろ不連続で、突出したエッジによって互いに分離された隣接するファセットの形成が促進される。
【0015】
さらに、これらの構造の寸法は、これが適用される媒体、すなわち紙に適合される。紙は、彫刻と同じオーダーの表面粗さを有するため、ソフトウェア上で構造を作成してから最終的な結果を得るまでの間に、求められる光学的効果の質が損なわれてしまう。
【0016】
したがって、このセキュリティ要素を改良する必要があり、特に小型化と光学的性能の最大化が求められる。ここでいう「小型化」とは、上述の技術水準に比べて(幅および高さ/深さが)少なくとも10倍以上小さい構造で得られる光学的効果の視認性を意味する。
【0017】
これは、セキュリティ要素を、文書の印刷部分ではなく、セキュリティ「スレッド」や「フォイル」上で使用したい場合に特に興味深い。実際、セキュリティスレッドの場合、これらが紙に挿入される「窓」であれば、スレッドの視認部分は、表示面を最大に増加する傾向にあるとしても、通常、幅が約2~5mm、好ましくは3~4mm、高さが4~14mmの表面である。
【0018】
「フォイル」とは、パッチまたはストライプ(シートや紙幣の高さ全体にわたって伸びる帯)の形で紙の表面に冷間または好ましくは熱間で直接転写されるセキュリティ要素を意味する。
【0019】
より最近の変形例として、パッチやストライプが媒体に形成された局所的な開口部を覆うものがある。
【0020】
セキュリティ要素を含む薄膜を媒体上に転写した後にキャリアフィルムを巻き戻す熱転写と、セキュリティ要素のキャリアフィルムを媒体上に直接蒸着するラミネートの2つの主要な技術が想定される。
【0021】
いずれにおいても、「フォイル」の場合、幅と長さで区切られた表面が問題とならなければ、仏国特許出願公開第2942811号明細書で知られている技術に従ってセキュリティ要素を作成する際に使用できる厚さは小さく、数十ミクロンを超えることはない。
【0022】
したがって、前述の文献で知られている彫刻を0.15cm2の表面に直接使用する場合(平均窓が3×5mmのスレッドの場合)、彫刻ラインの数を大幅に減らす(5倍以上)必要があり、これは所望の視覚効果の視認性を犠牲にしていることになる。
【0023】
もう1つの方法は、同じ彫刻、つまり400μmの幅の同一の彫刻ラインを4mmの幅に伸ばして使用することである。この方法の欠点は、彫刻の側面が形成する角度がほぼ平坦になる、具体的には、ラインの幅が400μmの場合のように30°程度ではなく、1°以下になることである。ほぼ平坦になった斜面では、肉眼で容易に確認できる光反射が変化する効果が失われてしまう。
【0024】
また、この文献で教示されている彫刻の深さは、0~200μmまで様々であり、実際には0~100μm程度である。
【0025】
このような深さは、スレッドの形態のセキュリティ要素とは相容れない。実際、スレッドは製造時に紙に挿入されるため、その厚さは約100μmの紙の厚さを超えないように十分に薄くなければならない。
【0026】
したがって、セキュリティスレッドが挿入される紙の耐久性に特に問題がない場合の最大厚さは、40~50μm程度となる。この厚さから機能層(ワニスや保護層、ラミネート接着剤、熱接着剤など)を取り除くと、彫刻される要素の高さは数μm~30μm程度となる。この彫り込み深さの小ささは、そのままセキュリティスレッドに転用した場合、角度を平らにするのに寄与する。
【0027】
同様の理由は、フォイルについても当てはまり、前述のように使用できる厚さが小さいため、角度が平坦化されてしまう。
【0028】
したがって、仏国特許出願公開第2942811号明細書に記載されるような彫刻技術は、すべてのセキュリティ要素、特にそれらがスレッドやフォイルの形態である場合には適合しない。
【発明の概要】
【0029】
したがって、本発明は特に、期待される視覚的効果に悪影響を与えることなく、さらには改善することができる、小型化に完全に適したセキュリティ要素構造を提供することを目的する。
【0030】
また、彫刻の側面や底、関連する頂部が可能な限り滑らかで、光の反射効果の展開に有害な欠陥や粗さが最小限となるような要素を製造する方法を提案することも目的とする。
【0031】
したがって、本発明は、有価文書のセキュリティ要素であって、連続または隣接した少なくとも2つのラインの配列(R)を含み、前記ラインのうち少なくとも1つは、レリーフ化され、2つの対向する側面を有し、前記側面のうち少なくとも1つは、部分的に傾斜し、各側面は、前記ラインの対向する長手方向縁部の1つに沿って始まり、前記2つの対向する側面は、前記ラインの長手方向に沿って伸びる単一の途切れない波状の接合領域で合流し、前記側面は、少なくとも前記長手方向に連続するまたは途切れないことを特徴とするセキュリティ要素に関する。
【0032】
このセキュリティ要素は、媒体の傾きによって光反射が徐々に制御されて変化する視覚的効果を有し、この光反射は、セキュリティ要素のサイズが特に小さくなっても変わらない。
【0033】
このセキュリティ要素の他の有利で非限定的な特徴は以下のとおりである。
・前記接合領域は、正弦波の形状を有する。
・前記正弦波は、その全範囲にわたって一定の周期を有する。
・前記正弦波は、好ましくは、その範囲内で少なくとも1つの周期変化を有する。
・前記配列(R)は、非周期構造を有する。
・前記少なくとも2つのラインのレリーフは、高さ、幅および/または長さにおいて、その範囲内で非周期変化を有する。
・前記接合領域は、前記対向する長手方向縁部が含まれる平面と平行または実質的に平行である。
・前記接合領域は、前記対向する長手方向縁部が含まれる平面に垂直または実質的に垂直である。
・前記接合領域の振幅は、可変である。
・前記接合領域と、前記長手方向縁部が含まれる平面との間の間隔は、一定または可変である。
・前記接合領域は、リッジまたは好ましくはストリップからなる。
・前記側面のうち少なくとも1つは、直線状または非直線状の傾斜を有する。
・前記配列の全てのラインは、同一の幅を有する。
・前記少なくとも2つのラインは、幅および/または長さが非三角形のレリーフプロファイルを有する。
・前記配列の少なくとも1つのラインは、他のラインとは異なる幅を有する。
・前記配列の少なくとも1つのラインは、他のラインとは異なる形状の接合領域を有する。
・前記側面は、前記対向する長手方向縁部に対して、上向きまたは下向きに傾斜している。
・前記アセンブリは、多層アセンブリを含み、前記配列は、前記多層アセンブリに組み込まれており、その追加層は、染料または顔料インク、色変更顔料インク、液晶、屈折率変化を有する多層樹脂フィルム、薄層を有する光学干渉フィルタ、および真空蒸着金属から選択される。
・セキュリティ要素は、スレッド、パッチ、またはフォイルである。
【0034】
得られる視覚効果は、有利には、以下の効果の少なくとも1つを含む。
・コントラストの変化
・反射
・画像のインターレース、特に光強度の変化によるグレーレベル画像。
・光物体の移動および/または変位
・スレッドとは異なる1つまたは複数の面に表示される画像
【0035】
上述の追加層は,最終的な構造体に他の効果を加えることができる。これは、特に、その視野角に応じて構造体の色を変化させる効果であり、この効果は、特に、色変更顔料インク、液晶、屈折率変化を有する多層樹脂フィルム、および薄層を有する光学干渉フィルタから選択される追加層によって得られる。
【0036】
本発明の別の態様は、上述の特徴のいずれかによるセキュリティ要素のエンボス加工ツールを製造する方法に関する。
【0037】
この方法は、
a)前記配列(R)のライン(2、2’、2”)の部分に特徴的な2次元画像であって、深度または高度がそれぞれ割り当てられた複数のグレーレベル有する2次元画像を作成または製造するステップと、
b)必要に応じてステップa)を繰り返し、同一または異なる部分を組み合わせて、所望の形状および長さのラインを作成するステップと、
c)必要に応じてステップa)およびb)を繰り返し、連続または隣接して組み立てられるラインを作成して、サブアセンブリを形成するステップと、
d)必要に応じてステップa)~c)を繰り返し、最終パターンを得るステップと、
e)ステップa)~d)で得られた前記画像または前記最終パターンから、各点が前記グレーレベルの位置特徴を有する3次元画像を形成するステップと、
f)ステップe)で得られた前記画像に特徴的なインプリントを得るため、3次元ハードウェアを作成するステップと、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0038】
特定の実施形態では、このオリジネーションは、フォトリソグラフィ、特にグレーレベルフォトリソグラフィ、レーザーリソグラフィ、電子リソグラフィ、または電子ビームリソグラフィのいずれかの技術を実施することによって行われる。
【0039】
最後に、本発明は、上述の特徴のいずれかによるセキュリティ要素を少なくとも含むことを特徴とする有価文書、特に紙幣に関する。
【0040】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の好ましい実施形態の以下の説明を読むと明らかになるであろう。この説明は、以下の添付図面を参照して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明によるセキュリティ要素のラインの配列を示す三次元的な部分概略図である。
【
図2】
図1のラインの一部を「グレーレベル」で表した図である。
【
図3】
図1の配列のより延伸させたラインを「グレーレベル」で表した図である。
【
図4】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図5】本発明による要素の傾斜した側面の具体的な形状を説明するための模式図である。
【
図6】本発明による要素の傾斜した側面の具体的な形状を説明するための模式図である。
【
図7】本発明による要素の傾斜した側面の具体的な形状を説明するための模式図である。
【
図8】本発明による要素の傾斜した側面の具体的な形状を説明するための模式図である。
【
図9】本発明による要素の傾斜した側面の具体的な形状を説明するための模式図である。
【
図10】本発明による要素の傾斜した側面の具体的な形状を説明するための模式図である。
【
図11】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図12】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図13】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図14】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図15】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図16】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図17】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図18】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図19】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図20】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図21】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図22】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図23】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図24】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図25】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図26】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図27】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図28】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図29】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図30】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図31】本発明の一変形例による配列のラインの一部を示す上面図である。
【
図32】本発明による多層セキュリティ要素の概略断面図である。
【
図33】本発明による多層セキュリティ要素の概略断面図である。
【
図34】本発明による多層セキュリティ要素の概略断面図である。
【
図35】本発明による多層セキュリティ要素の概略断面図である。
【
図36】本発明による多層セキュリティ要素の概略断面図である。
【
図37】本発明による2つのセキュリティ要素を統合した紙幣の上面図である。
【
図38】本発明による要素の実施形態を示す図である。
【
図39】本発明による要素の実施形態を示す図である。
【
図40】本発明による要素の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
【0043】
図の参照を容易にするため、本要素は、ごく一部しか表現されていない。
【0044】
要素1は、特にこれに限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)や二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)などのプラスチック材料に形成されている。
【0045】
ここで示される例では、要素1は、3つの連続したライン2、2’、2”で形成される配列Rを含む。もちろん、より多い数のラインを有する要素を提供することも可能である。この特定の例では、ラインの長さLは、同一であり、数ミリメートルから数センチメートルのオーダーであってもよい。ここではその一部のみが示されている。同様に、この特定の例では、各ラインの幅lは、同一であり、入射光を拡散させる下限値(回避すべき1μm付近)から完全反射現象に制限される100μmの間で構成され、上限値は、好ましくは50μm未満、さらに好ましくは40μm未満である。
【0046】
高さhは、例えば1~50μm、好ましくは10μm以下である。
【0047】
もちろん、不図示の実施形態では、異なる幅lのラインが提供され得る。
【0048】
示される例では、ライン2~2”は、直線状に伸びる。しかし、不図示の一変形例では、配列Rは、曲線や円形、より一般的な任意の形状を有するライン、あるいは、単一の、例えば配列Rが複数の螺旋のターンによって形成される螺旋状のラインで構成され得る。
【0049】
図から明らかであるように、配列Rの3つのラインはそれぞれレリーフになっている。しかしながら、ラインの一部がレリーフであり、残りのラインは厳密には平面であることも考えられる。したがって、例えば、レリーフラインと平面ラインを交互に配置することも考えられる。反射しない、特に透明なラインは、視覚的に識別可能な情報の要素を明らかにするために使用することができる。
【0050】
本発明の示される例では、各レリーフライン2~2”は、ライン2の対向する長手方向縁部200、210の1つに沿ってそれぞれ始まる、2つの対向する傾斜した側面20、21を有する。ここでは、側面は上向きに傾斜しており、これは、長手方向縁部200、210の高度よりも高い高度まで互いに向かって延びていることを意味する。
【0051】
本願を通して、「傾斜した側面」とは、これら2つの側面のうち少なくとも一方の少なくとも一部が傾斜していることを意味する。言い換えれば、側面が局所的に垂直または水平であることを排除するものではない。
【0052】
さらに本発明によれば、2つの側面20、21は、ラインの長手方向に沿って延びる単一の途切れない波状の接合領域22で合流し、これらの側面20、21は、少なくとも長手方向に連続する、または途切れない。
【0053】
なお、「波状の接合領域」とは、この波状の接合領域に角度のある領域が含まれていないことを意味する。つまり、配列の平面への接合領域の投影と、配列に垂直でラインに平行な平面への接合領域の投影は、それぞれ任意の点で微分可能な連続関数で記述される。また、この接合領域は、当該ラインの一方の端から他方の端まで一意に伸び、途切れない。
【0054】
図1の特定の実施形態では、接合領域22は正弦波の形状を有し、リッジを形成するラインに限定されている。以下に説明するいくつかの他の実施形態では、この接合領域は、リッジではなく、一定または可変の幅のストライプ(帯状)で構成され得る。
【0055】
また、この接合領域は、正弦波とは異なる波状を有することができる。
【0056】
ここで、正弦波はその全範囲にわたって一定の周期を有している。また、隣接するラインは同位相(接合領域の平行展開)であるが、もちろんそうでなくてもよい。さらに、その振幅は、ラインの幅lに等しいが、そうでなくてもよい。特に、正弦波は可変の周期を有していてもよく、隣接するラインは位相のずれを有していてもよく、および/または、正弦波の振幅はラインの幅と異なっていてもよい。
【0057】
最後に、この正弦波が延びる平面は、2つの長手方向縁部200、210を含む平面Pと平行であることに留意されたい。しかしながら、他の図を参照して示されるように、そうでなくてもよい。
【0058】
さらに、各ラインの側面20、21は、長手方向縁部の1つから接合領域22に向かって直線的な傾斜を有することに留意されたい。
【0059】
図2は、
図1の配列Rのラインの1つのみを示している。また、このラインは「グレーレベル」で表現されている。すなわち、ラインの点が上記の平面Pから離れているほど色が濃くなるという規則に従い、ラインの各点には、白と黒の間の濃淡が割り当てられている。したがって、領域22は黒色で表現されている。このグレーレベルでの表現は、後述するように、セキュリティ要素の製造に使用される。
【0060】
図3は、より大きな長手方向の範囲を有するライン2が示されていることを除いて、
図2と同等の図である。
【0061】
図4は、
図2および
図3のラインの上面図であり、正弦波の1周期の表現に限定されている。考慮される位置に応じて、異なる濃淡差を区別することがさらに容易である。
図4Aの断面は、この領域において、接合領域22が長手方向縁部200の垂直方向に位置していることを明示している。また、この図は、側面21が直線状の傾斜を有することを示している。
【0062】
図4Bは、図示された切断面によると、接合領域22が2つの長手方向縁部200、210の間の中間に位置するという事実を示している。領域22の垂直方向に位置する直線を23で示すが、この直線は仮想線である。
【0063】
図5は、
図4Aと同様に、側面21が直線状の傾斜を有することを強調している。図において、符号hは、正弦波22の最大高さを表す。
【0064】
図6~
図10は、異なる側面21の一般的な形状(断面)を示しているが、これは網羅的なパネルを構成するものではない。しかしながら、これらの説明は、ここでは示されていない第2の側面20についても適用できることを明記しておく。もちろん、側面20と21は、異なる形状を有することができる。
【0065】
このように、
図6では、側面21は、側面の基部から離れる方向にわずかに凸状の斜面を有する。
【0066】
逆に、
図7では、斜面が側面の基部に向かってわずかに凹んでいる側面21が示されている。
【0067】
図8~
図10は、上述したものに基づく実施形態を示している。
【0068】
より具体的には、
図8は、側面21が直線状であるが、局所的にわずかな凹部(窪み)24と、わずかな凸部(突起)25を有する場合を示している。
【0069】
図9は、凸状であるが、縁部210に向かって変曲点、すなわち曲率の変化を有する側面21を示している。
【0070】
図10は、
図9と類似した形状の側面21を示しているが、局所的にわずかな凹部(窪み)24と、わずかな凸部(突起)25とを有する。
【0071】
これらの突起(隆起)と窪み(凹み)は、見る角度に応じてバックグラウンドから情報を明らかにするように、要素内に特定の光の反射面を生成する。
【0072】
図11は、
図4と類似した一変形例の図である。ここでもまた、振幅がラインの幅lに等しい正弦波の形状を有する接合領域22が示されている。しかしながら、
図11Aおよび
図11Bから分かるように、2つの側面20、21は凸状の斜面を有する。
【0073】
【0074】
図13の実施形態でも、正弦波の形状を有する接合領域が示されている。しかしながら、ここでは、その振幅はラインの幅lよりも小さい。さらに、
図13Bに示すように、側面20、21は、1つまたは2つの直線部分からなる斜面を有する。実際、このラインの一部の領域では、各側面20、21は、上記の平面Pと一致する縁部200、210への取り付け部分を有する。
【0075】
上述した実施形態では、接合領域22が、長手方向端部200、210が含まれる平面Pと平行であることが共通していた。
【0076】
これは、特に
図14には当てはまらない。実際、この実施形態では、接合領域22は、依然として正弦波に含まれるが、上記の平面Pに垂直または実質的に垂直な面に展開される。
【0077】
図14A~
図14Cを参照すると、側面20、21は、対向する縁部200、210と交わり、これらの側面は、変曲点を有する曲線状の傾斜を有することが示されている。
【0078】
図15の実施形態は、
図14の変形例と実質的に同じ特徴を示している。しかしながら、正弦波の振幅はわずかに小さく、側面20、21がわずかに凹んだ形状をしている。
【0079】
同様に、
図16、16A、16B、16Cの変形例は、接合領域22の最大高度が特定の範囲で安定しているためプラトー状になっていることを除いて、
図14等の実施形態を実質的に扱っている。
【0080】
上述した実施形態では、側面20、21の起点となる位置に対して、接合領域22が常に突出している。
【0081】
これとは異なり
図17に示される例では、接合領域22が側面20、21よりも常に低い位置にある。この領域は、振幅がラインの幅よりも小さい正弦波の形状を有する。また、
図17Aおよび
図17Bに示されるように、その「高度」、すなわち平面Pに対する距離は一定ではない。
【0082】
図18は、
図17に比較的類似した場合を示している。この場合も、接合領域22の振幅はラインの幅lよりも小さく、側面21は、局所的に窪み24として配置される高低差を有する。
【0083】
図19も、接合領域が正弦波の形状を有する場合を模式的に示しているが、長手方向端部200、210が含まれる平面Pに厳密に平行な面に展開されているわけではない。より具体的には、このラインの長手方向に進むほど、接合領域は平面Pに近づく。
【0084】
図20の実施形態は、依然として正弦波に含まれる接合領域を示している。しかしながら、この接合領域は、特に
図20Aに示されるように、ストライプ状、すなわち、リッジではなく、無視できない横方向の広がりを有する。
【0085】
図21は、
図4と同様の場合を示している。しかしながら、正弦波状の接合領域22は、ラインの幅より小さい振幅を有し、側面20、21がそれぞれ上記の平面Pと一致する厳密な平面領域によって長手方向縁部200、210に向かって縁取られるように、ライン上に中心付けられている。
【0086】
図22は、特に
図22Aおよび
図22Bに示されるように、側面20、21に対して凹んだ接合領域22を示している。一方で、この接合領域の振幅は、ラインの幅と等しい。
【0087】
これとは異なり
図23では、正弦波状の接合領域22は、ラインの幅よりも小さい振幅を有する。また、接合領域は、側面20、21に対して凹んでいる。
【0088】
図24は、振幅がラインの幅よりも小さい正弦波状の接合領域22を示している。また、
図24Aおよび24Bの2つの断面図に示されるように、側面20、21は、局所的に、(プラトー形状として)水平方向、または、水平方向と斜め(傾斜)方向の組み合わせのいずれかを有する。
【0089】
図25は、
図23と比較的類似した正弦波状の接合領域22の形状を示している。しかしながら、
図25Bを見て分かるように、長手方向の範囲のいくつかの領域では、側面20、21はそれぞれ、異なる方向の2つの直線部分から構成される。
【0090】
図26は、
図14とは全く逆の一実施形態を示している。すなわち、正弦波状の接合領域22は、縁部200、210を含む平面と平行に展開されているが、側面20、21は、接合領域に対して隆起している。
【0091】
図27は、接合領域22を構成する正弦波の周期と振幅が異なることを除いて、
図26と比較的類似した場合を示している。
【0092】
図28は、
図27に非常に類似した実施形態を示しているが、側面20、21が、凸状でなく、凹状であるという点が異なる。
【0093】
図29は、水平方向と垂直方向にミラーリングされた単位モジュールで構成される。この基本モジュールは4つのコーナーを有する。基本モジュールの各コーナーには高度が設定されている。対向するコーナーは同じ高度に位置する。2つは最大高度であり、2つは最小高度である。したがって、このモジュールは、対向する2つの先端が上がり、他の2つの先端が下がった「X」形状を有する。
【0094】
図30は、正弦波がブロックの中央に位置しない場合を示している。接合領域22は、連続しているが不規則な形状を有する。側面20、21は、ブロック上の位置に応じて、可変の振幅を有する。したがって、
図30Aに示される断面図では、側面20、21は、完全に対称なプラトーおよび山/谷からなるが、
図30Bに表される断面図では、側面20、21のプラトーおよび傾斜は対称ではなく、多かれ少なかれ狭い谷の効果が発生する。
【0095】
最後に、
図31の実施形態も、正弦波状の接合領域を示している。これは、上記の平面Pに平行な面内に延びているが、特に
図31と31Cを比較すると、正弦波の周期がラインの長手方向の広がりに応じて変化することが分かる。
【0096】
以上、本発明によるセキュリティ要素1の異なる実施形態を説明した。次に、このようなセキュリティ要素のインプリントの製造に関する少なくとも1つの例について説明する。
【0097】
本説明では、より具体的に
図1、2、3、4を参照する。
【0098】
この方法は、第1のステップとして、構成される配列Rのラインの部分に特徴的な2次元画像作成または製造する。この画像は、深度または高度がそれぞれ割り当てられた複数の「グレーレベル」有する。
【0099】
好ましくは、この第1のステップでは、現在入手可能なソフトウェアなどのベクタまたはラスタのグラフィックツールを使用する。これにより、ここでは正弦波の周期が単位セグメントである2次元画像を取得する。この単位セグメントは、得られる効果が視覚的に連続し、目に見える接続点がないように、上述の
図3および
図4で示されるように複製されるか、または新しいセグメントに隣接される。少なくとも2つの同一または異なる単位セグメントは、第1ブロックまたは第1フラクションを形成し、これらは必要に応じて何度でも複製される。
【0100】
第2のステップでは、上述のステップを必要な回数だけ繰り返し、異なる単位セグメントおよび/または同一もしくは異なるブロックやフラクションを組み立てて、所望の形状と長さのラインを形成する。もちろん、デザインの連続性を保つために、各ブロックの接合領域の始点と終点が、目に見える接続点なしに互いにつながるようにする。
【0101】
もちろん、接合領域が上記の平面Pに垂直な面に延在する場合も同様である。
【0102】
次のステップでは、前のステップを必要な回数だけ繰り返し、連続または隣接して組み立てられる複数のラインを作成して、肉眼で視認可能な光学効果を生成することができるサブアセンブリを構成する。サブアセンブリの配列Rのラインは、同一でも異なっていてもよい。さらに、これらのサブアセンブリを用いて最終的なパターンを得るため、全てのステップを繰り返す。ここで、「サブアセンブリ」とは、光学的効果が顕著であり、また、同一または異なるサブアセンブリの組み立てを、接続の不連続性を伴って(ラインの非連続性、屈折の急な変化、または完全な切断、但し肉眼では識別できないほど小さい)実行できるという点で、それ自体で十分な光学効果を有する三次元構造を意味すると理解されるべきであることに留意されたい。好ましい変形例によれば、同一または異なるサブアセンブリの組み立ては、接続部に連続性があるように作られる。
【0103】
次のステップでは、上述したものに基づき、各点がグレーレベルの位置特性を有する3次元画像を、ベクタグラフィックツールを用いて作成する。次に、この画像は、実際の彫刻要素を生成するツールの特定の言語でエンコードされ、彫刻可能な媒体にインプリントの形で記録される。
【0104】
例えば、これに限定するものではないが、得られた各ラインは、
図3の構成を有する。
【0105】
本方法の次のステップでは、前のステップで得られた画像の彫刻特徴を得るため、三次元彫刻により感光性樹脂のオリジネーションを実施する。
【0106】
このオリジネーションは、特に以下のような手法で実現できる。
a)フォトリソグラフィまたは光投影リソグラフィ
この技術では、感光性樹脂にマスクを介して光子を照射する。露光部では、光子が樹脂の溶解度を変化させる。樹脂がポジ型の場合、現像時に露光部が除去され、ネガ型の場合、現像時に露光部が維持される。
b)グレーレベルフォトリソグラフィ
この場合、マスクがグレースケールマスクであるため、不透明なピクセルの濃度が透明な背景に表示され、露光度の高い部分と低い部分により異なる高さを制御することができる。
c)レーザーリソグラフィ
この技術は、マスクを使わないため興味深い。UVレーザー、ナノ秒パルスレーザー、エキシマレーザー、NdYAGレーザー、ピコ秒レーザー、フェムト秒レーザーなどのレーザーを樹脂に直接照射して使用する。
分解能は0.8μm程度である。
d)電子リソグラフィまたは電子ビームリソグラフィ
この技術は、樹脂フィルムに電子ビーム(10~100電子ボルト)を直接走査してパターンを形成するマスクレス方式である。分解能は電子ビームの直径に等しく、数ナノメートル程度である。彫刻の深さは、電子線の透過性によって決まり、100nm程度である。
【0107】
これらの技術に共通しているのは、ほとんど滑らかで平面的な彫刻を得ることができるという点である。言い換えれば、ツールのピッチが非常に小さい(数ナノメートルから0.8μm)場合、少なくとも前述の技術と比較して、彫刻の基部だけでなく彫刻の側面からも粗さをほぼ排除できる。
【0108】
しかし、所望の光学的効果と視認性を妨げる表面の凹凸が依然として存在する場合、マイクロポリッシングを検討することができる。これにより、彫刻方向に延び、角度が連続的に変化する側面の形状に湾曲した単一の鏡面が各ラインで得られる。
【0109】
エンボス加工要素(プレートなど)を製造する後続のステップは比較的従来のものであり、オリジネーションステップで作成されたユニット要素を、熱可塑性エンボス加工または「ナノインプリント」リソグラフィと呼ばれる技術によるUVアシストエンボス加工に使用されるマルチプルアップツールまで変換(電着、再結合、クロムメッキなど)する。
【0110】
以上、単層のセキュリティ要素についてのみ説明したが、多くの場合、セキュリティ要素は、多層セキュリティ要素である。いくつかの実施形態を、特に
図32~36を参照して説明する。
【0111】
図32の実施形態では、エンボス加工可能なワニス4で覆われた樹脂フィルム3からなる本発明によるセキュリティ要素1を有するアセンブリEが示されている。例示として、薄膜クロム5、酸化シリカ6およびアルミニウム7の層が、セキュリティ要素上に連続的に積層されている。もちろん、顕著な視覚効果を得るため、他の材料および/または異なる数の他の薄膜を積層することも考えられる。さらに、アルミニウム7の一部が局所的に除去され、開口部70が形成されている。
【0112】
この変形例によれば、フィルム3を通してアセンブリを見た観察者は、いくつかの光学的効果の組み合わせに気づくだろう。すなわち、層5、6、7は、見る角度に応じて構造体の色を変化させる効果、例えばマゼンタから緑への変化を起こす。この色の変化効果は、セキュリティ要素1によって形成される曲面鏡の角度の段階的な変化に関連しており、これにより、彫刻の窪みが均一な色で着色され、側面が徐々に緑色の色合いに変化する相乗効果が得られる。なお、セキュリティ要素1は、良好な理解のために、図の平面内に位置するように、現実から90°回転させて表現されていることに留意されたい。
【0113】
図33の実施形態では、上から下に向かって、樹脂フィルム3、エンボス加工可能なワニス4、開口部70を有するアルミニウム層7、酸化ケイ素層6、クロム層5が示されている。セキュリティ要素1は、この重ね合わせた層のアセンブリ上に作成される。
【0114】
観察側が薄膜クロム層5側である、さらに別のアセンブリEが
図34に示される。
【0115】
図35の実施形態では、内部または表面に色変化効果を含む支持体3が示されている。これは、屈折率変化を有する多層材料または少なくとも1つの液晶インクからなる。この支持体は、UVアシストウェットマイクロレプリケーション(またはナノインプリント)による適用時に変形するワニス1で被覆されており、彫刻ツールの形状はワニスにインプリントを再現する。その後、ワニスは、例えば黒などの着色層7で覆われ、支持体を通して見た際に、印刷された領域71に合わせて、色の変化と曲面鏡の複合効果が現れる。黒インクで覆われていない領域に対応する開口部70では、はっきりした透明なテキスト効果が得られる。
【0116】
図36の実施形態では、ワニス材3が、セキュリティ要素1と層7との間に介在している。さらに、ワニス材3のワニスの屈折率と十分に異なる屈折率を有する追加層6が要素1の後方に設けられている。この層は、例えばZnS系の高屈折率のワニスや、パーフルオロポリエーテル系の低屈折率のワニスの中から選ばれるのが好ましい。
【0117】
もちろん、迷彩層のようなスレッド、別の樹脂基板を含む積層体、熱接着層、保護層、接着層など、セキュリティ要素の製造に使用される追加層は、簡略化のために、上述で説明した図には示されていない。
【0118】
図37は、本発明による2つのセキュリティ要素、すなわち、左側には長方形のブロック(パッチ)の形態をしたセキュリティ要素1、右側には窓付きのセキュリティスレッドの形態をした要素1を有する紙幣を示している。
【0119】
図38は、本発明の教示によるセキュリティ要素1の例を示しており、正弦波が互いに位相を合わせて配列Rを形成する10本のラインの一連のサブアセンブリからなる正方形状のパターンを表している。これらのサブアセンブリは、それぞれ左および右隣りに対して垂直方向に変位している。この変位は、画像の中央部で反転するまで規則的である。これにより、要素1が導入/固定された媒体の傾きに応じて動くことができるヘリングボーンの巨視的効果が得られる。
【0120】
図39は、本発明の教示によるセキュリティ要素1の第2の例を示しており、北斎の「神奈川沖浪裏」の様式化された波を形成する一連のサブアセンブリからなる正方形状のパターンを表している。
【0121】
この特定の例では、波は2つのサブアセンブリで構成される。第1のサブアセンブリは曲線で構成されており、その内部は最大まで広がる。第2のサブアセンブリはこれに隣接しており、ラインが第1のサブアセンブリと同じ方向に湾曲しているが、内部は最小まで狭まる。この隣接したサブアセンブリのペアが繰り返され、その間に隙間ができないように並べられている。これにより、要素1が導入/固定された媒体の傾きに応じて動くことができる波の巨視的な効果が得られる。
【0122】
最後に、
図40は、本発明の教示によるセキュリティ要素1の第3の例を示しており、水面上を航行するボートの様式化されたパターンを形成する一連のサブアセンブリからなる正方形状のパターンを表している。水面は
図38の方法で作られており、ボートは
図39の方法で、特に、船体を形成する最大まで内部が広がる曲線からなる第1のサブアセンブリと、同じように帆を再現する別のサブアセンブリにより作られている。これら全てのサブアセンブリが重ね合わされ、
図40に示される全体像を形成する。
【0123】
これらの3つの図は、創造の可能性のほんの一部である。これらのサブアセンブリの配置の可能性は実質的に無限であり、多かれ少なかれ具象的な、多かれ少なかれ様式化された画像を作ることが可能である。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価文書(8)のセキュリティ要素(1)であって、連続または隣接した少なくとも2つのライン(2、2’、2”)の配列(R)を含み、
前記ラインは、対向する長手方向縁部(200、210)を含み、前記ラインのうち少なくとも1つ(2)は、レリーフ化され、2つの対向する側面(20、21)を有し、前記側面のうち少なくとも1つは、部分的に傾斜し、各側面は、前記ライン(2)の前記対向する長手方向縁部(200、210)の1つに沿って始まり、前記2つの対向する側面(20、21)は、前記ライン(2)の長手方向に沿って伸びる単一の途切れない波状の接合領域(22)で合流し、前記側面(20、21)は、少なくとも前記長手方向に連続するまたは途切れないことを特徴とするセキュリティ要素。
【請求項2】
前記接合領域(22)は、正弦波の形状を有することを特徴とする請求項1に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項3】
前記正弦波は、その全範囲にわたって一定の周期を有することを特徴とする請求項2に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項4】
前記正弦波は、その範囲内で少なくとも1つの周期変化を有することを特徴とする請求項2に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項5】
前記配列(R)は、非周期構造を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項6】
前記少なくとも2つのライン(2、2’、2”)のレリーフは、その範囲内で非周期変化を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項7】
前記接合領域(22)は、前記対向する長手方向縁部(200、210)が含まれる平面(P)と平行または実質的に平行であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項8】
前記接合領域(22)は、前記対向する長手方向縁部(200、210)が含まれる平面(P)に垂直または実質的に垂直であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項9】
前記接合領域(22)の振幅は、可変であることを特徴とする請求項7または8に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項10】
前記接合領域(22)と、前記長手方向縁部(200、210)が含まれる平面(P)との間の間隔は、一定または可変であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項11】
前記接合領域(22)は、リッジまたは好ましくはストライプからなることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項12】
前記側面(20、21)のうち少なくとも1つは、直線状または非直線状の傾斜を有することを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項13】
前記配列(R)の全てのライン(2、2’、2”)は、同一の幅を有することを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項14】
前記少なくとも2つのライン(2、2’、2”)は、幅および/または長さが非三角形のレリーフプロファイルを有することを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項15】
前記配列(R)の少なくとも1つのライン(2、2’、2”)は、他のラインとは異なる幅を有することを特徴とする請求項
1~12および14のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項16】
前記配列(R)の少なくとも1つのライン(2、2’、2”)は、他のラインとは異なる形状の接合領域(22)を有することを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項17】
前記側面(20、21)は、前記対向する長手方向縁部(200、210)に対して、上向きまたは下向きに傾斜していることを特徴とする請求項1~16のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項18】
前記セキュリティ要素(1)は、多層アセンブリ(E)を含み、前記配列(R)は、前記多層アセンブリ(E)に組み込まれており、
前記多層アセンブリは、染料または顔料インク、色変更顔料インク、液晶、屈折率変化を有する多層樹脂フィルム、薄層を有する光学干渉フィルタ、および真空蒸着金属から選択される
追加層を含むことを特徴とする請求項1~17のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)のエンボス加工ツールを製造する方法であって、
a)前記配列(R)のライン(2、2’、2”)の部分に特徴的な2次元画像であって、深度または高度がそれぞれ割り当てられた複数のグレーレベル有する2次元画像を作成または製造するステップと、
b)必要に応じてステップa)を繰り返し、同一または異なる部分を組み合わせて、所望の形状および長さのラインを作成するステップと、
c)必要に応じてステップa)およびb)を繰り返し、連続または隣接して組み立てられるラインを作成して、サブアセンブリを形成するステップと、
d)必要に応じてステップa)~c)を繰り返し、最終パターンを得るステップと、
e)ステップa)~d)で得られた前記画像または前記最終パターンから、各点が前記グレーレベルの位置特徴を有する3次元画像を形成するステップと、
f)ステップe)で得られた前記画像に特徴的なインプリントを得るため、3次元ハードウェアを作成するステップと、を少なくとも含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
オリジネーションは、フォトリソグラフィ、特にグレーレベルフォトリソグラフィ、レーザーリソグラフィ、電子リソグラフィ、または電子ビームリソグラフィのいずれかの技術を実施することによって行われることを特徴とする請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~
18のいずれか一項に記載のセキュリティ要素(1)を少なくとも含むことを特徴とする有価文書、特に紙幣。
【国際調査報告】