(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】トリプルネガティブ乳癌治療のための併用免疫療法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220125BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20220125BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220125BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220125BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220125BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220125BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61K38/08
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
C12N15/12 ZNA
C07K7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547041
(86)(22)【出願日】2019-10-19
(85)【翻訳文提出日】2021-06-21
(86)【国際出願番号】 US2019057095
(87)【国際公開番号】W WO2020086412
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521172848
【氏名又は名称】エスエルエスジー リミテッド エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(74)【代理人】
【識別番号】100201938
【氏名又は名称】杉山 静可
(72)【発明者】
【氏名】ピープルズ,ジョージ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ステルギオウ,アンジェロス エム.
(72)【発明者】
【氏名】サーリス,ニコラス ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA22
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA23
4C084DA01
4C084MA02
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4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB01
4C085CC23
4C085EE03
4C085FF13
4C085GG02
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA15
4H045CA41
4H045DA86
4H045EA28
(57)【要約】
本発明は、個体においてトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を治療するための、及び/又は低レベルのHER2/neuを発現するトリプルネガティブ乳癌を有する個体においてHER2/neuに対する免疫応答を誘導するための方法であって、(a)有効量のトラスツズマブ又はその誘導体;及び(b)有効量のネリペピムト-S又はその変異体を、任意に免疫学的アジュバントと共に個体に投与することを含む方法に関する。好ましくは、この方法が患者の免疫系に対するHER2ペプチドフラグメントの主要組織適合性複合体(MHC)媒介提示を実質的に増加させるのに十分な、トラスツズマブ又はトラスツズマブ誘導体投与の頻度及び持続時間を含む、準備相又はプライミング相を含む。本発明はまた、個体においてTNBCを治療するための、及び/又はHER2/neuを発現するTNBCを有する個体においてHER2/neuに対する免疫応答を誘導するための薬物及びキットを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有効量のトラスツズマブ又はその誘導体、及び(b)有効量のネリペピムト-S又はその変異体を個体に投与することを含む、個体におけるトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を治療するための方法。
【請求項2】
前記トラスツズマブ又はその誘導体、及び前記ネリペピムト-S又はその変異体を間隔をあけて投与し、前記ネリペピムト-S又はその変異体の投与は、前記トラスツズマブ又はその誘導体の投与の開始後に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、ネリペピムト-S又は変異体なしで、前記トラスツズマブ又は誘導体の用量の定期的投与を含む準備相の開始、続いて、前記トラスツズマブ又は誘導体、及びネリペピムト-S又は変異体の両方の用量の定期的投与を含む組み合わせ相を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記準備相は、前記ネリペピムト-S又はその変異体の前記投与後の前記個体の乳癌細胞上のHER2抗原の主要組織適合性複合体タイプI媒介提示を増加させるのに十分なトラスツズマブ又はその誘導体の投与の頻度及び期間を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
初期免疫化相中の前記ネリペピムト-S又は変異体の投与は、トラスツズマブ又はその誘導体の第3、第4、又は第5の投与の完了後に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記トラスツズマブ又はその誘導体は、8mg/kgの初期負荷用量及び3週間ごと(q3wk)の6mg/kgの維持用量で投与され、1,000mcgの用量のネリペピムト-S又は変異体が投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記TNBCは、免疫組織化学(IHC)による1+又は2+のHER2発現を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記個体は、HLA-A2陽性、HLA-A3陽性、HLA-A24陽性、又はHLA-A26陽性である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記個体は、前記TNBCに対する標準的な治療療法(例えば、化学療法、手術原発性腫瘍摘出、放射線療法、又は上記のうちの2つ以上の組み合わせ)を受けた後に、前記投与時に臨床的に無病である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
トラスツズマブ又はその誘導体の投与は、標準的なケア療法の完了後3週間から12週間の間に開始される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記TNBCは、前記投与の時点でリンパ節転移陰性(例えば、AJCC N0又はN0(i+))である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記トラスツズマブ又はその誘導体は、静脈内に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ネリペピムト-S又はその変異体は、皮内投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
免疫学的アジュバントを個体に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記免疫アジュバントは、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
250mcgのGM-CSFの用量が、1日当たり投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記免疫アジュバントは、3週間(q3wk)ごとに投与される、請求項14~16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
1,000mcgの前記ネリペピムト-S又はその変異体及び250mcgの前記GM-CSFは、トラスツズマブ又はその誘導体の注入の完了後30~120分後に、3週間ごとに皮内投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記免疫学的アジュバントは、ネリペピムト-S又はその変異体と共に、同一又は別個の処方で投与される、実施形態14に記載の方法。
【請求項20】
前記ネリペピムト-Sは、アミノ酸配列KIFGSLAFL(配列番号1)からなるHER2/neuペプチドを含み、前記変異体は、配列番号1の4位にアルファ-アミノ酪酸、ノルバリン又はノルロイシン、配列番号1の7位にアルファ-アミノ酪酸、ノルバリン又はノルロイシン、あるいは、配列番号1の8位にイソフェニルアラニンを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ネリペピムト-Sの変異体が投与され、変異体は、
KIFAbuSLAFL(配列番号:2)、
KIFNvaSLAFL(配列番号:3)、
KIFNleSLAFL(配列番号4)、
KIFGSLAbuFL(配列番号:5)、
KIFGSLNvaFL(配列番号:6)、
KIFGSLNleFL(配列番号:7)、及び
KIFGSLAイソFL(配列番号:8)の中から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記トラスツズマブ又はその誘導体、及びネリペピムト-S又はその変異体の投与前、投与中、又は投与後に、追加の治療薬を前記対象に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記追加の治療剤は、免疫療法薬である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記免疫療法薬は、免疫チェックポイント阻害剤を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記投与は、腫瘍サイズを減少させ、及び/又は個体の無病生存(無再発生存)を増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
トラスツズマブ又はその誘導体、及び前記ネリペピムト-S又はその変異体の投与は、前記個体に対して相乗効果を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記方法は、トラスツズマブ又はその誘導体、及びネリペピムト-S又はその変異体の投与前、投与中、又は投与後に、追加の治療薬を個体に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記追加の治療剤は、免疫療法薬である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記免疫療法薬は、免疫チェックポイント阻害剤を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記個体は、前記TNBCに対する治療(例えば、化学療法、手術原発性腫瘍摘出、放射線療法、又は上記のうちの2つ以上の組み合わせ)を受けた後に、前記投与の時点で臨床的に無病であり、前記方法は、前記個体における前記TNBCの再発を遅延又は防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
トラスツズマブ又はその誘導体、及び前記ネリペピムト-S又はその変異体の投与は、前記個体に対して相乗効果を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
有効量のトラスツズマブ及び有効量のネリペピムト-Sが前記個体に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
低レベルのHER2/neuを発現するトリプルネガティブ乳癌を有する個体において、HER2/neuに対する免疫応答を誘導する方法であって、(a)有効量のトラスツズマブ又はその誘導体、及び(b)有効量のネリペピムト-S又はその変異体を個体に投与することを含む、方法。
【請求項34】
前記トラスツズマブ又はその誘導体、及び前記ネリペピムト-S又はその変異体を間隔をあけて投与し、前記ネリペピムト-S又はその変異体の投与は、前記トラスツズマブ又はその誘導体の投与の開始後に開始される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記方法は、ネリペピムト-S又は変異体なしで、前記トラスツズマブ又は誘導体の用量の定期的投与を含む準備相の開始、続いて、前記トラスツズマブ又は誘導体、及びネリペピムト-S又は変異体の両方の用量の定期的投与を含む組み合わせ相を含む、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記準備相は、前記ネリペピムト-S又はその変異体の前記投与後の前記個体の乳癌細胞上のHER2抗原の主要組織適合性複合体タイプI媒介提示を増加させるのに十分なトラスツズマブ又はその誘導体の投与の頻度及び期間を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ネリペピムト-S又は変異体の投与は、トラスツズマブ又はその誘導体の第3、第4、又は第5の投与の完了後に開始される、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記トラスツズマブ又はその誘導体は、8mg/kgの初期負荷用量及び3週間ごと(q3wk)の6mg/kgの維持用量で投与され、1,000mcgの用量のネリペピムト-S又は変異体が投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記TNBCは、免疫組織化学(IHC)による1+又は2+のHER2発現を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記個体は、HLA-A2陽性、HLA-A3陽性、HLA-A24陽性、又はHLA-A26陽性である、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記個体は、HLA-A24陽性である、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記個体は、前記TNBCに対する標準的な治療療法(例えば、手術原発性腫瘍摘出、化学療法、放射線療法、又は上記のうちの2つ以上の組み合わせ)を受けた後に、前記投与の時点で臨床的に無病である、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
トラスツズマブ又はその誘導体の投与は、標準的なケア療法の完了後3週間から12週間の間に開始される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記TNBCは、前記投与の時点でリンパ節転移陰性(例えば、AJCC N0又はN0(i+))である、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
前記トラスツズマブ又はその誘導体は、静脈内に投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
前記ネリペピムト-S又はその変異体は、皮内投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項47】
免疫学的アジュバントを投与することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項48】
前記免疫アジュバントは、ネリペピムト-S又はその変異体と共に、同一又は別個の処方で投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記免疫アジュバントは、皮内投与される、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項50】
前記免疫アジュバントは、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項51】
250mcgのGM-CSFの用量が、1日当たり投与される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記免疫アジュバントは、3週間(q3wk)ごとに投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
1,000mcgの前記ネリペピムト-S又はその変異体及び250mcgの前記GM-CSFは、トラスツズマブ又はその誘導体の注入の完了後30~120分後に、3週間ごとに皮内投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項54】
前記ネリペピムト-Sは、アミノ酸配列KIFGSLAFL(配列番号1)からなるHER2/neuペプチドを含み、前記変異体は、配列番号1の4位にアルファ-アミノ酪酸、ノルバリン又はノルロイシン、配列番号1の7位にアルファ-アミノ酪酸、ノルバリン又はノルロイシン、あるいは、配列番号1の8位にイソフェニルアラニンを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項55】
前記ネリペピムト-Sの変異体が投与され、変異体は、
KIFAbuSLAFL(配列番号:2)、
KIFNvaSLAFL(配列番号:3)、
KIFNleSLAFL(配列番号:4)、
KIFGSLAbuFL(配列番号:5)、
KIFGSLNvaFL(配列番号:6)、
KIFGSLNleFL(配列番号:7)、及び
KIFGSLAイソFL(配列番号:8)の中から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
ネリペピムト-S又はその変異体の投与は、一次ワクチン接種を表し、前記一次ワクチン接種の完了後に、1、2、3、4、又はそれ以上の追加用量のネリペピムト-S又はその変異体を、30ヶ月以上、任意で免疫学的アジュバント(例えば、GM-CSF)と共に、前記一次ワクチン接種よりも少ない周期で投与することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項57】
2つ以上の追加用量のネリペピムト-S又はその変異体が投与され、1つの追加用量が6ヶ月ごとに投与される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記方法がトラスツズマブ又はその誘導体、及びネリペピムト-S又はその変異体の投与前、投与中、又は投与後に、追加の治療薬を個体に投与することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項59】
前記追加の治療剤は、免疫療法薬である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記免疫療法薬は、免疫チェックポイント阻害剤を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記投与は、腫瘍サイズを減少させ、及び/又は個体の無病生存(無再発生存)を増加させる、請求項33に記載の方法。
【請求項62】
前記個体は、前記TNBCに対する治療(例えば、化学療法、手術原発性腫瘍摘出、放射線療法、又は上記のうちの2つ以上の組み合わせ)を受けた後に、前記投与の時点で臨床的に無病であり、前記方法は、前記個体における前記TNBCの再発を遅延又は防止する、請求項33に記載の方法。
【請求項63】
トラスツズマブ又はその誘導体、及び前記ネリペピムト-S又はその変異体の投与は、前記個体に対して相乗効果を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項64】
有効量のトラスツズマブ及び有効量のネリペピムト-Sが前記個体に投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項65】
個体におけるトリプルネガティブ乳癌を治療するための、トラスツズマブ又はその誘導体と併用するための、ネリペピムト-S又はその変異体を含む薬剤。
【請求項66】
免疫アジュバントをさらに含む、請求項65に記載の薬剤。
【請求項67】
前記免疫アジュバントは、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、請求項66に記載の薬剤。
【請求項68】
個体におけるトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を治療するための、ネリペピムト-S又はその変異体と併用するための、トラスツズマブ又はその誘導体を含む薬剤。
【請求項69】
第1の容器、第2の容器及び添付文書を含むキットであって、前記第1の容器は、トラスツズマブ又はその誘導体を含む薬剤の少なくとも1回用量を含み、前記第2の容器は、ネリペピムト-S又はその変異体を含む薬剤の少なくとも1回用量を含み、前記添付文書は、前記薬剤を使用してトリプルネガティブ乳癌の個体を治療するための説明書を含む、キット。
【請求項70】
免疫アジュバントをさらに含み、前記免疫アジュバントは、ネリペピムト-S又はその変異体と共に、第3の容器内にあるか、又は第2の容器内にある、請求項69に記載のキット。
【請求項71】
免疫アジュバントは、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、請求項70に記載のキット。
【請求項72】
前記キットは、トラスツズマブ及びネリペピムト-Sを含む、請求項69又は70に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2019年5月31日出願の米国仮出願第62/855,650号及び2018年10月21日出願の米国仮出願第62/748,511号の優先権を主張するものであり、図表、核酸配列、アミノ酸配列や図面を含む内容を参照することにより組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
現在の乳癌の標準治療には、ホルモン受容体、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、及びヒト上皮成長因子受容体2(HER2)キナーゼの発現レベルに関する腫瘍のスクリーニングが含まれる。乳癌と診断された女性は、標的療法を開始する前に、手術、化学療法(一部の症例では任意)、放射線療法で予備的に治療されることがある。
【0003】
ホルモン受容体陽性乳癌は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター又はSERM(例、タモキシフェン、トレミフェン)、アロマターゼ阻害薬(例、アナストロゾール)、又は選択的エストロゲン受容体分解薬又はSERD(例、フルベストラント)によるホルモン療法の影響を受けやすい。アロマターゼ阻害薬(AI)等のホルモン療法は、体内でのエストロゲンの産生を遮断するが(典型的には閉経後の女性に使用される)、SERM及びSERDは、乳癌細胞に対するエストロゲンの増殖作用を遮断する。初期ホルモン療法に失敗したホルモン受容体陽性及びHER2陰性の患者は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4型及び6型の阻害剤(CDK4/6阻害剤)パルボシクリブ(イブランス)と、レトロゾール又はフルベストラントのいずれかとの併用で治療されることが多い。HER2-陽性乳癌は、HER2キナーゼ阻害薬(例、トラスツズマブ及びラパチニブ)に感受性があり、一般的に、転移性疾患に用いられる。これらの複数ある標的治療があるにもかかわらず、患者は難治型の乳癌であったり、これを発症することが多い。
【0004】
難治性乳癌の例には、トリプルネガティブ(ER、PR、及びHER2を欠く)、ホルモン抵抗性(SERM、SERD、又はAI抵抗性)、キナーゼ阻害剤抵抗性、又は転移性乳癌腫瘍である原発性腫瘍が含まれる。いったん標的療法が失敗したり、腫瘍が転移すると、難治性乳癌腫瘍を除去するために放射線療法と大量化学療法が必要となる。難治性乳癌の治療に利用可能な化学療法には、アントラサイクリン系薬剤、タキサン系薬剤、エポチロン系薬剤等があるが、有害で、リスクを伴い、費用がかかり、特に転移性疾患の治療には効果がないことが多い。
【0005】
HER2免疫組織化学検査(IHC)で1+又は2+と定義されるHER2低発現乳癌の患者は、現在のところトラスツズマブによる補助療法に適格ではない。無作為の相III全国手術アジュバント乳腺腸プロジェクト(NSABP)B-47によると、標準アジュバント化学療法に、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)として米国で現在市販されている)を追加しても、HER2レベルが低いことが判明した早期乳癌患者の浸潤性無病生存率は改善されなかった。従って、HER2低発現乳癌患者は、現在、トラスツズマブ単剤療法によるHER2指向性治療に不適格である。現在のガイドラインでは、免疫組織化学(IHC)検査でIHC3+と定義されるHER2蛋白が高値であることが示された場合、又は蛍光ベースのin situハイブリダイゼーション(FISH)でFISH陽性と定義されるHER2遺伝子のコピー数が増加していることが示された場合に、乳癌を「HER2陽性」と分類している。
【0006】
乳癌の大半はホルモン受容体陽性(ER、PR)又はHER2陽性と考えられているが、乳癌と診断された女性の15~20%はER、PRの発現の欠如、又はHER2の高レベルの発現を特徴とするトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を有する。TNBCはより若い患者(50歳未満)により頻繁に発生し、一般的に、より攻撃的な挙動を示す。進行性TNBC患者に対する標準緩和的治療の選択肢は、細胞傷害性化学療法に限られている。しかしながら、化学療法に対する最初の反応後であっても、反応の持続期間は短く、ホルモン陽性乳癌と比較して内臓転移、急速進行性疾患、及び生存率が劣る可能性が高い。注目すべきことに、標準フロントライン治療後の初期TNBC患者では再発率が高く、現在では、典型的に、術前又は術後アジュバント化学療法、外科的腫瘍摘出術、及び選択された症例では放射線療法が含まれる。それにもかかわらず、アジュバント/維持療法の設定(すなわち、フロントライン治療の完了後)において、このような再発の遅延や予防に有効であることが証明されている標的療法、化学療法又は免疫療法はない。従って、TNBC等の治療困難な癌に罹患した患者には転移性癌においても新たな治療アプローチが必要であるが、重要なことは、早期疾患におけるアジュバント療法の設定である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Fehrenbacher, L. et al. SABCS, 2017; Abstract GS1-02.
【非特許文献2】Mittendorf, E. et al. Ann Oncol., 2014, 25:1735-1742.
【非特許文献3】Gall, V. et al. Cancer Res., 2017, 77:5374-5383.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、個体においてトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を治療するための、及び/又はトリプルネガティブ乳癌、すなわちホルモン受容体陰性であるが低レベルのHER2/neu(例えば、IHCによる1+又は2+)も発現している癌を有する個体において、HER2/neuに対する免疫応答を誘導するための方法であって、(a)有効量のトラスツズマブ(TZ)又はその誘導体、及び(b)有効量のネリペピムト-S(NPS)又はその変異体を個体に投与することを含む方法に関する。ある実施形態において、この方法はさらに、免疫学的アジュバント、例えば、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、を個体に投与することを包む。本発明はまた、個体においてTNBCを治療するための、及び/又は低レベルのHER2/neu(例えば、IHCによる1+又は2+)を発現するTNBCを有する個体において、HER2/neuに対する免疫応答を誘導するための薬剤及びキットを含む。
【0009】
本発明の一態様は、(a)有効量のトラスツズマブ又はその誘導体、及び(b)有効量のネリペピムト-S又はその変異体を個体に投与することを含む、個体におけるトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を治療するための方法に関する。ある実施形態において、トラスツズマブ又はその誘導体、及びネリペピムト-S又はその変異体は、間隔をおいて投与され、ネリペピムト-S又はその変異体の投与は、トラスツズマブ又はその誘導体の投与の開始後に開始される。ある実施形態において、この方法は、ネリペピムト-S又は変異体なしで、トラスツズマブ又はその誘導体の用量の定期的投与を含む準備相の開始、続いて、トラスツズマブ又はその誘導体、及びネリペピムト-S又は変異体の両方の用量の定期的投与を含む組み合わせ相を含む。ある実施形態において、個体はリンパ節転移陰性であり、及び/又はTNBCはIHCによる1-2+のHER2発現を有する。ある実施形態において、この方法は、免疫学的アジュバント(例えば、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF))を投与する工程をさらに含む。この免疫学的アジュバントは、ネリペピムト-S又はその変異体と同じ処方、又は別の処方で投与される。任意で、30ヶ月以上の期間、ネリペピムト-Sによる追加接種を使用することができ、ネリペピムト-S又はその変異体の投与は、一次ワクチン接種相を表すものであり、本方法は、一次ワクチン接種の完了後に、1、2、3、4、又はそれ以上の用量のネリペピムト-S又はその変異体(追加投与相)を、任意で、免疫学的アジュバント(例えば、GM-CSF)と共に、一次ワクチン接種よりも少ない周期で投与することをさらに含む。例えば、ネリペピムト-S又はその変異体の2つ以上の追加用量を投与することができ、この場合、6ヶ月ごとに1回の追加用量が投与される。
図2は、免疫学的アジュバント(GM-CSF)及び追加用量が使用される実施形態による治療レジメンの概略を示す(NeuVax(NPS+GM-CSF)+TZの治療群を参照されたい)。
【0010】
本発明の他の態様は、低レベルのHER2/neuを発現するトリプルネガティブ乳癌を有する個体において、HER2/neuに対する免疫応答を誘導する方法に関し、この方法は、(a)有効量のトラスツズマブ又はその誘導体、及び(b)有効量のネリペピムト-S又はその変異体を個体に投与する工程を含む。ある実施形態において、トラスツズマブ又はその誘導体、及びネリペピムト-S又はその変異体は間隔をおいて投与され、ネリペピムト-S又はその変異体の投与は、トラスツズマブ又はその誘導体の投与の開始後に開始される。ある実施形態において、本方法は、ネリペピムト-S又は変異体を含まない、トラスツズマブ又はその誘導体の用量の周期的投与、続いて、トラスツズマブ又は誘導体及びネリペピムト-S又は変異体の両方の用量の周期的投与を含む組み合わせ相を含む、準備相の開始を含む。ある実施形態において、個体はリンパ節転移陰性であり、及び/又はTNBCはIHCによる1+又は2+のHER2発現を有する。ある実施形態において、この方法は、免疫学的アジュバント、例えば、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、を投与する工程をさらに含み、この免疫学的アジュバントは、ネリペピムト-Sと同じ処方又はその変異体において、又は別の処方で投与される。任意で、NPS又はその変異体の30ヶ月以上の期間、追加接種を用いてもよく、ここで、NPS又はその変異体の投与は、一次ワクチン接種相を表し、そしてこの方法は、一次ワクチン接種の完了後に、1、2、3、4又はそれ以上の用量のネリペピムト-S又はその変異体(追加投与相)を、任意で、免疫学的アジュバント(例えば、GM-CSF)と共に、一次ワクチン接種よりも少ない周期で投与することをさらに含む。例えば、ネリペピムト-S又はその変異体の2つ以上の追加用量を投与することができ、この場合、6ヶ月ごとに1回の追加用量が投与される。
図2は、免疫学的アジュバント(GM-CSF)及び追加用量が使用される実施形態による治療レジメンの概略を示す(NeuVax(NPS+GM-CSF)+TZの治療群を参照されたい)。
【0011】
本発明の方法のある実施形態において、個体は、HLA-A2陽性、HLA-A3陽性、HLA-A24陽性、又はHLA-A26陽性である。
【0012】
本発明の他の態様は、個体におけるトリプルネガティブ乳癌を治療するための、トラスツズマブ又はその誘導体と併用するための、ネリペピムト-S又はその変異体を含む薬剤に関する。任意で、薬剤は、GM-CSF等の免疫学的アジュバントをさらに含むことができる。
【0013】
本発明の他の態様は、個体におけるトリプルネガティブ乳癌を治療するための、ネリペピムト-S又はその変異体と併用するための、トラスツズマブ又はその誘導体を含む薬剤に関する。
【0014】
本発明の他の態様は、第1の容器、第2の容器、及び添付文書を有するキットに関し、ここで、第1の容器はトラスツズマブ又はその誘導体を含む薬剤の少なくとも1回用量を含み、第2の容器はネリペピムト-S又はその変異体を含む薬剤の少なくとも1回用量を含み、添付文書は、薬剤を使用してトリプルネガティブ乳癌の個体を治療するための説明書を含む。任意で、キットは免疫学的アジュバント、例えば、GM-CSF、をさらに含み、ここで、免疫学的アジュバントは、又はネリペピムト-S又はその変異体とともに第3の容器内にあるか、第2の容器内にある。
【0015】
特許出願書類は、色付で作成された少なくとも1の図面を含んでいる。本特許出願又は公開の写しで色付のものは要求があり、かつ、必要な手数料が納付されたときは特許庁により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】HER2タンパク質及び9量体ネリペピムト-Sペプチド(KIFGSLAFL)が誘導される領域(アミノ酸369~377)の概略を示す。NeuVax(商標)HER-2/neuペプチドワクチンは、ネリペピムト-Sペプチド及び免疫学的アジュバントGM-CSF(Mittendorf Eet alAnn Oncol、2014、25:1735-42)を含む。aa-アミノ酸、GM-CSF-顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、HER2-ヒト上皮成長因子受容体2、HLA-ヒト白血球抗原、MHC-主要組織適合性複合体、TZ-トラスツズマブ。
【
図2】TNBC腫瘍を含むHER2低発現腫瘍を有する患者において、トラスツズマブとNeuVax(商標)ワクチン(ネリペピムト-S+GM-CSF)の併用により、疾患の再発を遅延又は予防できるかどうかを検討するヒト臨床試験の研究デザインを示す。この研究デザインは、NeuVax(商標)ワクチン(NPS+GM-CSF)とトラスツズマブ(TZ)の併用する投与群を含み、これは、トリプルネガティブ乳癌の治療のための、及び/又はトリプルネガティブ乳癌を有する個体におけるHER2/neuに対する免疫応答を誘導するための、本発明の方法の実施形態を表す。DFS-無病生存期間、DP-病勢進行、GM-CSF-顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、HER2-ヒト上皮成長因子受容体2、IHC-免疫組織化学、NPS-ネリペピムト-S、q3 wks-3週ごと、TZ-トラスツズマブ。
【
図3】治療関連有害事象の棒グラフを示す。介入を受けた患者の93.1%(243/261)が少なくとも1件のTRAEを経験した。群間でTRAEに差はなかった。TRAEの大半はグレード1又は2であり、その内容は局所注射部位反応、皮膚硬結、そう痒症及び疲労であった。TRAE:治療関連有害事象、TZ:トラスツズマブ。
【
図4】心臓毒性の線グラフを示す。心駆出率の経時変化(p=0.558)及び各時点において、投与群間に差は認められなかった。トラスツズマブにNeuVax(商標)ワクチンを添加しても、トラスツズマブ単独と比較して心毒性が付加されることはなかった。TZ、トラスツズマブ。
【
図5】無病生存期間のグラフを示しており、ITT(治療意図)全試験集団において、併用療法群(NeuVax+TZ)を支持する臨床的に意味のあるDFS中央値の差を示す。NeuVax+TZ(N=136)、36ヵ月DFS=83.1%、24ヵ月DFS=88.6%、TZ(N=139)、36ヵ月DFS=82.5%、24ヵ月DFS=82.5%、追跡期間中央値19.6(IQR12.5-28.3)月、P値=0.257、ハザード比(HR)=0.67(CI0.33-1.35)、最終解析:追跡期間中央値25.7月、P値=0.175、HR=0.62(0.31~1.25)、CI:信頼区間、DFS:無病生存期間、ITT:治療意図、IQR:四分位範囲、TZ:トラスツズマブ。
【
図6】ITT集団内のホルモン受容体陽性(HR+)患者における無病生存期間のグラフを示しており、DFS平均に群間差はないことが示されている。DFSはNSAPB-47試験(89%)と同等であったほか、この疾患の自然史を標準一次治療後に追跡する初期TNBC試験に関する最近のいくつかの発表もあった。NeuVax+TZ(N=82):36か月DFS=87.1%、24か月DFS=87.1%、TZ(N=92):36か月DFS=89.7%、24か月DFS=89.7%、追跡期間中央値19.5(IQR15.4)月、P値=0.567、HR=0.55(CI0.27-1.10、最終解析:追跡期間中央値25.4か月、P値-0.714、HR=1.19(0.46-3.01)、CI:信頼区間、DFS:無病生存期間、HR:ホルモン受容体、ITT:治療意図、IQR:四分位範囲、TZ:トラスツズマブ。
【
図7】TNBC患者(HR陰性、HER2 IHC1+又は2+と定義)における無病生存率のグラフを示しており、併用群(NeuVax(商標)+TZ)を支持する臨床的に意味のある統計的有意差がDFS平均で示されている。NeuVax+TZ(N=53):36ヵ月DFS=72.9%、24ヵ月DFS=91.1%、TZ(N=45):36ヵ月DFS=69.9%、24ヵ月DFS=69.9%、追跡期間中央値19.3(IQR12.8-28.0)月、P値=0.023、HR=0.26(Cl0.09-0.90)。最終解析:追跡期間中央値26.1月、P値=0.013、HR:0.26(0.08-0.81)、DFS:無病生存期間、IQR:四分位範囲、TNBC:トリプルネガティブ乳癌、TZ:トラスツズマブ。
【
図8】TNBC患者における全てのHLA型に対する相対的有益性を示すForrestプロットを示す。
【
図9】HLA-A24+TNBC患者に対するKaplan-Meier法による推定DFSを示す。
【
図10】全HLA-A24+患者に対するKaplan-Meier推定DFSを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、個体においてトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を治療するための、及び/又はHER2/neuを発現するTNBCを有する個体においてHER2/neuに対する免疫応答を誘導するための方法であって、(a)有効量のトラスツズマブ又はその誘導体、及び(b)有効量のネリペピムト-S又はその変異体を個体に投与することを含む方法に関する。ある実施形態において、トラスツズマブ又はその誘導体、及びネリペピムト-S又はその変異体は間隔をおいて投与され、ネリペピムト-S又はその変異体の投与は、トラスツズマブ又はその誘導体の投与の開始後に開始される。例えば、この方法は、ネリペピムト-S又は変異体なしで、トラスツズマブ又はその誘導体の用量の定期的投与を含む準備相の開始、続いて、トラスツズマブ又は誘導体、及びネリペピムト-S又は変異体の両方の用量の定期的投与を含む組み合わせ相を含んでもよい。ある実施形態において、ネリペピムト-S又は変異体の投与は、トラスツズマブ又は誘導体の3回目、4回目、又は5回目の投与の完了後に開始される。ある実施形態において、トラスツズマブ又はその誘導体は、8mg/kgの初期負荷用量及び3週間ごと(q3wk)の6mg/kgの維持用量で投与され、1,000mcgの用量のネリペピムト-S又は変異体が投与される。
【0018】
ある実施形態において、準備相は、各種HER2タンパク質ペプチド断片(ネリペピムト-S又はその変異体のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有するペプチド、すなわちワクチンの抗原対象を含む)の、主要組織適合性複合体(MHC)タイプIコンテキストにおける、乳癌細胞膜(ヒト白血球抗原[HLA]分子に結合した)上の宿主(患者)の免疫系への提示を増加させるのに十分な、トラスツズマブ又はその誘導体(ネリペピムト-Sでのワクチン接種前)の投与の頻度及び持続時間を含む。このトラスツズマブ誘導、又は誘導体により誘導される、HER2抗原提示が、患者の乳癌細胞上で実質的に増加してから、ネリペピムト-S又はその変異体を(抗原提示細胞の活性化及び患者の免疫シナプス上のナイーブCD8+T-リンパ球の結合により)投与すると、患者の乳癌細胞上のこの抗原に対する細胞毒性T-リンパ球(CTL)の誘導、活性化、及び増殖につながる。これにより、患者のHER2発現乳癌細胞が免疫学的に媒介されて死滅する。従って、これらの2つの薬剤(まずトラスツズマブ又はその誘導体、続いてネリペピムト-S又はその変異体)の投与順序又はスケジュールを用いた準備相を用いることによって、これらの2つの薬剤が最適に相乗的であること、すなわち、トラスツズマブ又は誘導体による抗原性及び免疫原性を促進し、従って、個体におけるネリペピムト-S又はその変異体の免疫学的に媒介される作用の薬力学的エンハンサーとして確実に作用する。
【0019】
図2に示す、NeuVax(商標)ワクチン(NPS+GM-CSF)及びトラスツズマブ(TZ)を併用する、本明細書の材料及び方法及び実施例に記載される研究デザインにおける併用療法群は、トリプルネガティブ乳癌の治療のための、及び/又はトリプルネガティブ乳癌を有する個体におけるHER2/neuに対する免疫応答を誘導するための、本発明の方法の実施形態を表す。他の用量、用量の頻度、及び治療期間を決定することができる。例えば、混合リンパ球反応(MLR)の本質的に変異体であるex vivoアッセイを使用して、所与の患者又は患者群におけるプライミング相に十分なトラスツズマブ又はその誘導体の他の用量、頻度、及び持続時間を決定することができる。抗原特異的Tリンパ球を含む末梢血単核細胞(PBMC)を、インキュベーション培地中の様々な濃度のトラスツズマブの存在下でHER2を発現する乳癌細胞株とコインキュベートすることができる。実験で用いたin vitroトラスツズマブ用量と活性化CTLを介した乳癌細胞溶解との間には用量関係がある。これらのアッセイのin vitro法は、Gall VAら、Cancer Res、2017 Oct 1;77(19):5374-5383、及びMittendorf EAら、Ann Surg Oncol、2006 Aug;13(8):1085-98の「方法」の項に記載されており、これらの全体は参照により本明細書に組み込まれる。これらの試験では、PBMCはワクチン接種した患者由来であり、NeuVaxワクチンのみの治療(すなわち、単独療法)を受けた患者の臨床試験ではワクチンの開始後6~8週間に相当する早期免疫相相応の約3回又は4回の初回ワクチン接種を受けていると仮定している。
【0020】
ex vivoでのMLRの要素を以下に簡単に記載する。
(1)HER2低発現乳癌細胞株(TNBC表現型乳癌細胞株を含む)、
(2)細胞培養培地中のトラスツズマブ又は誘導体(様々な濃度のトラスツズマブ)溶液、及び
(3)PBMC(本質的には、NPS又は変異体ワクチン接種患者由来のTリンパ球)。
【0021】
(1)+(2)を、種々のin vitro濃度/用量で、コインキュベートする。次に、(3)を種々の存在レベルのTリンパ球に添加する。これは、トラスツズマブ又はその誘導体、続いてNPS又はその変異体の臨床的な投与順序に対応/シミュレートするものである。
【0022】
別の選択肢は、(1)+(3)、続いて(2)を実行することである。これは、NPS又はその変異体、続いてトラスツズマブ又はその誘導体の投与の臨床シーケンスに対応/シミュレートするものである。
【0023】
別の選択肢は、(1)+(2)+(3)を同時に実行し、次いで(2)を実行することである。これは、トラスツズマブ又はその誘導体とNPS又はその変異体との同時投与に対応/シミュレートするものである。
【0024】
本発明の方法のある実施形態において、TNBCは、IHCによる1+又は2+のHER2発現を有する。
【0025】
本発明の方法のある実施形態において、個体は、HLA-A2陽性、HLA-A3陽性、HLA-A24陽性、又はHLA-A26陽性である。
【0026】
本発明の方法のある実施形態において、個体はHLA-A24陽性である。実施例2に記載されているように、HLA-A24+TNBC患者は、E75とこのHLA-型との間の最低予測結合能にもかかわらず、無病生存において有意な改善を有した。実際、NPS+トラスツズマブ併用でこれまでにみられた最も強力な臨床効果は、TNBCコホート及びITT集団(後者はホルモン受容体の状態に関係なくHER2 IHC 1+/2+)のいずれについてもHLA-A24+患者であった。HLA-A24は、アジア/太平洋流域に住む集団で最も多く発現するHLA型である。
【0027】
本発明の方法のある実施形態において、個体はTNBCのための治療、例えば、標準的なケア療法(例えば、手術、化学療法、放射線療法、又は上記の2つ以上の組み合わせ))を受けた後に、投与の時点で臨床的に疾患(癌)を有していない。ある実施形態において、トラスツズマブ又はその誘導体の投与は、標準的なケア療法の完了後3週間~12週間の間に開始される。TNBCは、リンパ節陽性又はリンパ節陰性であってよい。ある実施形態において、TNBCが投与の時点にリンパ節転移陰性(例えば、AJCC N0又はN0(i+))である。
【0028】
他の実施形態では、個体が投与の時点で癌でないわけではない。
【0029】
ある実施形態において、トラスツズマブが投与される。ある実施形態において、トラスツズマブの誘導体が投与される。トラスツズマブ又はその誘導体は、任意の有効な方法によって個体に投与される。ある実施形態において、トラスツズマブ又はその誘導体は、静脈内に投与される。
【0030】
ネリペピムト-S又はその変異体は、任意の有効な方法及び経路によって個体に投与することができる。ネリペピムト-S又はその変異体は、例えば、抗原提示細胞(APC)におけるその後の発現のために、ペプチドの形成で、又はペプチドをエンコードする核酸の形成において投与することができる。ネリペピムト-S又はその変異体をエンコードする核酸を投与する場合、核酸は、ネイキッドDNA又はRNAとして投与するか、又はウイルス又は非ウイルスベクター中で投与することができる。ある実施形態において、ネリペピムト-S又はその変異体(ペプチド又は核酸)は個体に皮内投与される。
【0031】
NPS又はその変異体をコードする遺伝子配列の導入は、様々な手段によって達成することができる。この方法は、NPS又はその変異体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを個体に投与することを含む(Tindle, R.W.ら、Virology、1994、200:54)。他の実施形態において、本方法は、NPS又はその変異体をコードするネイキッド核酸(DNA又はRNA)を、又は他の実施形態において、このようなペプチドの2つ以上のペプチドを投与することを含む(Nabelら、PNAS-USA、1990、90: 11307)。他の実施形態において、マルチエピトープ、アナログベースの癌ワクチンが利用される。それぞれ、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0032】
核酸(DNA又はRNA)は、当該分野で公知の任意の手段(皮内、非経口、又は静脈内投与を含む)を介して、又は他の実施形態においては、遺伝子銃を用いて個体に投与される。他の実施形態において、核酸は組成物で投与され、他の実施形態において本明細書に列挙される任意の実施形態に対応する。DNA又はRNAは、ネイキッド核酸として個体に投与され得るか、又はベクターによって運ばれる。
【0033】
本発明の方法に従う使用されるベクターは、他の実施形態において、in vivoでの個体におけるペプチド(例えば、NPSペプチド又はその変異体)の発現を容易にするか、又は可能にする任意のベクターを含み得る。「ベクター」という用語は、コード配列情報(例えば、NPSペプチド又はその変異体をコードする核酸配列)を細胞又は個体に転移するために使用可能な任意の分子(例えば、核酸、プラスミド、ウイルス、粒子)を指すのに使用される。いくつかの癌を対象とした核酸ワクチンは、臨床試験に入っている(Wahren Bら、"DNA vaccines: Recent Developments and Future"、Vaccines、2014、2:785-796; Fioretti Dら、"DNA vaccines: Developing New Strategies Against Cance, Journal of Biomedicine and Biotechnology、2010、2010(938):174378)。
【0034】
一実施形態において、ベクターはウイルスベクターである。他の実施例において、ベクターは非ウイルスベクターである。一実施形態において、非ウイルスベクターは、プラスミドDNA又はmRNAベクターのような核酸ベクターである(例えば、Weide B.ら、"plasmid DNA- and messenger RNA-based Anti-Cancer Vaccination"、Immunol Lett、2008、115(1):33-42); Kim H.ら、"Self-Assembled Messenger RNA Nanoparticles(mRNA-NP) for Efficient Gene Expression"、Sci Rep、2015、5:12737); Ulmer J.B.ら、"RNA-based Vaccines"、Vaccine、2012、30:4414-4418を参照のこと)。他の実施形態において、ベクターは、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,722,848号に記載されているような、ワクシニアや鶏痘のような弱毒ウイルスを含む。他の実施形態において、ベクターは、
Stoverら、Nature,1991,351:456-460に記載されるようなBCG(Bacille Calmette Guerin)である。
【0035】
NPSペプチド又は変異体ペプチド、例えば、Salmonella typhiベクター、Listeria monocytogenesベクター等の治療的投与又は免疫化に有用な他のベクターは、本明細書の記載から当業者に明らかであろう。in vivoで対象に、かつin vitroで細胞に核酸分子を投与するために使用されるベクターとしては、これらに限られるものではないが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV))、レンチウイルス、痘そうウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、修飾ワクシニアアンカラ(MVA))、ヘルペスウイルス(例えば、サイトメガロウイルス)、センダイウイルス、ウイルス様粒子(VLP)、プラスミド、カチオン性脂質、リポソーム、及びナノ粒子が挙げられる。
【0036】
「コード配列」は、mRNAに転写及び/又はポリペプチドに翻訳される核酸配列である。コード配列の境界は、5'末端にある翻訳開始コドンと3'末端にある翻訳終結コドンとによって決定される。コード配列としては、これらに限定されるものでないが、mRNA、cDNA、及び組換えポリヌクレオチド配列が挙げられる。変異体又は類似体は、コード配列の一部の欠失によって、配列の挿入によって、及び/又は配列内の1つ以上のヌクレオチドの置換によって作製される。部位特異的突然変異誘発のような核酸配列を修飾するための技術は当業者に周知である(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Second Edition,1989; DNA Cloning、Vols .I and II, D. N. Glover編,1985を参照のこと)。任意で、本発明の核酸配列、そのようなポリヌクレオチドを利用する本発明の組成物及び方法は、非コード配列を含むことができる。
【0037】
「操作可能に連結された」という用語は、本明細書中ではこのように記載されたフランキング配列がそれらの通常の機能を実行するように構成又は組み立てられる、フランキング制御配列の配置を指すために使用される。従って、コード配列に操作可能に連結されたフランキング制御配列は、制御配列と適合する条件下で、コード配列の複製、転写及び/又は翻訳に影響を及ぼし得る。例えば、プロモーターがそのコード配列の転写を指示することができる場合、コード配列はプロモーターに操作可能に連結される。フランキング配列はそれが正しく機能する限り、コード配列と連続している必要はない。従って、例えば、介在する非翻訳ではあるが転写されている配列がプロモーター配列とコード配列との間に存在することができ、プロモーター配列はなおコード配列と「操作可能に連結されている」と考えることができる。ペプチド(例えば、NPSペプチド又は変異体NPSペプチド)をコードする各核酸配列は、典型的にはそれ自体操作可能に連結されたプロモーター配列を有する。
【0038】
他の実施形態において、ベクターは本明細書に記載されているように、免疫調節化合物をさらにコードする。他の実施形態において、個体は、NPSペプチド又は変異体ペプチドをコードするベクターの個体への投与と同じ、同時、前、又は後に、さらなるベクターをコードする追加のベクターを投与される。
【0039】
任意で、ネリペピムト-S又はその変異体は、ネリペピムト-S又は変異体が、別のネリペピムト-S又は変異体アミノ酸配列、又は異なるペプチドの配列に直接的又は間接的に融合される、融合ポリペプチドの形態で投与されてもよい。任意で、ネリペピムト-Sをコード化する核酸又はその変異体は、ネリペピムト-Sの複数のコピーをコード化する核酸、又は変異体アミノ酸配列(複数量体として)を含む遺伝的構築物の形態で投与されてもよい。任意で、遺伝子構築物は、他のペプチドをコードするさらなる核酸を含むことができる。
【0040】
好ましくは、治療には、ネリペピムト-S又はその変異体と共に、同じ又は別の処方内で投与される、免疫学的アジュバント、例えば、GM-CSF、の投与が含まれる。アジュバントは、任意の有効な方法によって個体に投与される。ある実施形態において、アジュバントは、皮内投与される。
【0041】
NPS又はその変異体は、免疫学的アジュバント又はアジュバントの組み合わせと共に投与することができる。NPS又はその変異体を含有する免疫原又は組成物は、本明細書ではワクチン、ペプチドワクチン等と呼ばれる。
【0042】
アジュバントは、ミョウバン塩及び他のミネラルアジュバント、細菌産物又は細菌由来アジュバント、テンソアクティブ剤(例えば、サポニン)、水中油(o/w)及び油中水(w/o)エマルジョン、リポソームアジュバント、サイトカイン(例えば、IL-2、GM-CSF、IL-12、及びIFN-γ)、ならびにアルファ-ガラクトシルセラミド類似体のような任意の部類のものであってよい。アジュバントとしては、これらに限られるものではないが、モンタニド乳剤、QS21、フロイント完全又は不完全アジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、Bacillus Calmette-Guerin(BCG)、及びミョウバンが例示される。一実施形態において、アジュバントは、NPS又はその変異体に対する免疫系のCTL応答を増強する薬剤である。アジュバントは、NPSもしくはその変異体と同じ組成で、又は1つ以上のトラスツズマブもしくはその誘導体と同じ組成で、又はNPSもしくはその変異体とトラスツズマブもしくはその誘導体の両方と同じ組成物で、又はNPSもしくはその変異体とトラスツズマブもしくはその誘導体とは別の組成で投与することができる。
【0043】
ある実施形態において、アジュバントは、GM-CSFであり、250mcgの用量のGM-CSFが1日当たり投与される。アジュバントは、3週間ごと(q3wk)等の間隔で投与してもよい。ある実施形態において、1,000mcgのネリペピムト-S又はその変異体、及び250mcgのGM-CSFを、トラスツズマブ又はその誘導体の注入完了後30~120分の3週間ごとに皮内投与する。
【0044】
ネリペピムト-S(NPS)は、アミノ酸配列KIFGSLAFL(配列番号1)からなるHER2/neuペプチドを含み、抗原提示細胞(APC)上の特定HLA分子への結合後に特定CD8+CTLを刺激する。NPS及び/又はNPSの変異体を個体に投与することができる。NPS変異体は、1つ以上のアミノ酸置換を有する。NPSのアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸又は修飾されたアミノ酸で置換されてもよい。NPS変異体ペプチド及びそれらの製造については、米国特許第8,802,618号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ある実施形態において、NPS変異体は、配列番号1の4位にアルファ-アミノ酪酸、ノルバリン又はノルロイシン、配列番号1の7位にアルファ-アミノ酪酸、ノルバリン又はノルロイシン、又は配列番号1の8位にイソフェニルアラニンを有する。ある実施形態において、NPS変異体は、KIFAbuSLAFL(配列番号:2)、KIFNvaSLAFL(配列番号:3)、KIFNleSLAFL(配列番号:4)、KIFGSLAbuFL(配列番号:5)、KIFGSLNvaFL(配列番号:6)、KIFGSLNleFL(配列番号:7)、及びKIFGSLAイソFL(配列番号:8)の中から選択される。NPS及びNPS変異体は当該技術分野において公知の方法により製造される。従って、ペプチドは、合成、組換え的に産生されるか、又は公知の供給源から精製される。
【0045】
トラスツズマブは、ヒト上皮成長因子受容体タンパク質(HER2)の細胞外ドメインに高い親和性で選択的に結合する、ヒト化モノクローナル抗体である組換えIgG1カッパである。トラスツズマブは米国特許第5,821,337号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。トラスツズマブの軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列は、配列番号9及び配列番号10に規定されている。
【0046】
トラスツズマブの軽鎖のアミノ酸配列:DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRASQDVN TAVAWYQQKP GKAPKLLIYS ASFLYSGVPS RFSGSRSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ HYTTPPTFGQ GTKVEIKRTV AAPSVFIFPP SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC(配列番号9)。
トラスツズマブの重鎖のアミノ酸配列:EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFNIK DTYIHWVRQA PGKGLEWVAR IYPTNGYTRY ADSVKGRFTI SADTSKNTAY LQMNSLRAED TAVYYCSRWG GDGFYAMDYW GQGTLVTVSS ASTKGPSVFP LAPSSKSTSG GTAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV HTFPAVLQSS GLYSLSSVVT VPSSSLGTQT YICNVNHKPS NTKVDKKVEP KSCDKTHTCP PCPAPELLGG PSVFLFPPKP KDTLMISRTP EVTCVVVDVS HEDPEVKFNW YVDGVEVHNA KTKPREEQYN STYRVVSVLT VLHQDWLNGK EYKCKVSNKA LPAPIEKTIS KAKGQPREPQ VYTLPPSREE MTKNQVSLTC LVKGFYPSDI AVEWESNGQP ENNYKTTPPV LDSDGSFFLY SKLTVDKSRW QQGNVFSCSV MHEALHNHYT QKSLSLSPG(配列番号10)。
【0047】
本明細書中の方法及び組成物のある実施形態において、トラスツズマブ-アン(Kanjinti(商標)Amgen及びAllergan)、トラスツズマブ-qyyp(Trazimera(商標)、Pfizer)、トラスツズマブ-dtb(Ontruzant(商標)、Samsung Bioepis)、トラスツズマブ-pkrb(Herzuma(商標)、Celltrion)、トラスツズマブ-dkst(Ogivri(商標)、Mylan GmbH)、又は上記のいずれかの誘導体が投与される。
【0048】
任意で、本明細書中の方法及び組成物の種々の実施形態において、トラスツズマブ誘導体は、トラスツズマブの代わりに使用される。トラスツズマブの誘導体を使用する場合、HER2の細胞外ドメインに対する結合特異性を保持する。好ましくは、トラスツズマブが細胞ベースのアッセイにおいて高い親和性(例えば、Kd≦5nM)でHER2に選択的に結合する。
【0049】
トラスツズマブ誘導体の例にはSelis Fら、Int J Mol Sci、2016 Apr; 17(4): 491の表1及び2に列挙されるものが含まれるが、これらに限定されるものではない(例えば、TrastFab、TrastFab(ab')2、TrastFab'、TrastFab'-Cys-PEG(2×10kDa)、TrastFab'-Cys-PEG(2×20kDa)、及びTrastFab-(N-Term)-PEG20kDa)。トラスツズマブ又はトラスツズマブ誘導体は、修飾されていても修飾されていなくてもよく、コンジュゲートされていてもコンジュゲートされていなくてもよい。
【0050】
NPS等のペプチド又はトラスツズマブ等の抗体の断片及び変異体を生成し、当技術分野で知られている標準的な技法を使用して、その標的に対する免疫原性活性又は親和性の有無について試験することができる。本発明の範囲内で意図されるポリヌクレオチド、ペプチド、キメラ、及びコンジュゲートされたポリヌクレオチドはまた、本明細書中に特に例示される本発明の配列とのより特定の同一性及び/又は類似性の範囲に関して定義される。配列同一性は、典型的には60%超、好ましくは75%超、より好ましくは80%超、さらにより好ましくは90%超であり、95%超である。配列の同一性及び/又は類似性は、本明細書に例示される配列と比較して、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%である。特に明記しない限り、本明細書で使用されるように、2つの配列のパーセント配列同一性及び/又は類似性は、KarlinとAltschul(1990)のアルゴリズム(Karlin、S.とAltschul、SF(1990) "Methods for Assessing Statistical Significance of Molecular Sequence Features by Using General Scoring Schemes"、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268)を使用して決定され、KarlinとAltschul(1993)において改変される(Karlin、S.とAltschul、S. "Applications and Statistics for Multiple High-Scoring Segments in Molecular Sequences," Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877。このようなアルゴリズムは、Altschulら(1990)のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれている。所望のパーセント配列同一性を有する配列を得るために、NBLASTプログラム(スコア=100、ワード長=12)を用いてBLAST検索を行うことができる。比較目的で、ギャップアラインメントを得るために、Altschulら(1997)に記載されるように、Gapped BLASTを使用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(NBLAST及びXBLAST)のデフォルトパラメーターを使用することができる。ワールドワイドウェブサイト: ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。
【0051】
ある実施形態において、トラスツズマブ誘導体は、それぞれ配列番号9及び/又は配列番号10と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖及び重鎖を含む。
【0052】
トラスツズマブの誘導体は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ミニボディ、二機能性抗体、一本鎖抗体(scFv)、可変領域断片(Fv又はFd)、Fab又はF(ab)2等の、全抗体又はその抗原結合断片であってもよい。ある実施形態において、トラスツズマブの誘導体は、ado-トラスツズマブエムタンシンである(参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO/2001/000244号を参照のこと)。
【0053】
好ましくは、NPS及び/又はNPS変異体の追加ドーズ量が使用される。ある実施形態において、NPS又はその変異体の投与は、一次ワクチン接種相を表し、方法は、一次ワクチン接種の完了後に、1、2、3、4、又はそれ以上の追加ドーズ量のNPS又はその変異体を、30ヶ月以上の期間、任意で免疫学的アジュバント(例えば、GM-CSF)と共に、一次ワクチン接種よりも少ない周期で投与することをさらに含む。
【0054】
ある実施形態において、NPS又はその変異体の2つ以上の追加用量が投与され、1つの追加用量が6ヶ月ごとに投与される。各追加ドーズ量は、一次ドーズ量で送達されるのと同じ量のNPS及び/又はNPS変異体であってもよく、又は異なる量(多少)であってもよい。
【0055】
トラスツズマブ及びネリペピムト-S又はその変異体の投与前、投与中、又は投与後に、1つ以上の追加の治療薬を個体に投与することができる。追加の治療剤は、免疫療法薬、標的化剤、又は化学療法剤等の抗癌剤を含むことができる。ある実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤が投与される。
【0056】
追加の治療薬は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、皮内、腹腔内、眼窩内、移植、吸入、髄腔内、脳室内、又は鼻腔内等、使用される薬剤の機能に適した任意の経路によって投与することができる。
【0057】
本発明の種々の方法のある実施形態において、個体に投与されるさらなる治療薬は免疫療法である。本明細書中で使用される場合、「免疫療法」という用語は、癌又は他の有害なタンパク質、細胞又は組織に対する適応免疫又は自然免疫(能動的又は受動的)を誘発又は増幅するための、対象の免疫系の刺激、誘導、破壊、模倣、増強、増加又は任意の他の調節を介する疾患の治療をいう。免疫療法(すなわち、免疫療法剤)には、癌ワクチン、免疫調節剤、チェックポイント阻害剤、腫瘍微小環境モジュレーター、モノクローナル抗体(例えば、ヒト化モノクローナル抗体)が含まれ、既存の癌を治療するため、又は癌の発生を予防するため、又は癌の再発の可能性を低下させるためのアジュバント設定での使用のために設計されているかにかかわらず、二重特異的抗体、免疫刺激薬、樹状細胞、及びウイルス療法が含まれる。
【0058】
追加の治療剤は、免疫療法、すなわち免疫療法剤であってもよい。例えば、免疫療法はチェックポイント阻害剤(免疫チェックポイント阻害剤としても知られる)であってもよく、これは免疫チェックポイントタンパク質をブロック又は阻害する(すなわち、チェックポイントレセプター又はチェックポイントレセプターリガンドをブロック又は阻害する)化合物又は薬剤である。チェックポイント阻害剤である化合物又は薬剤、又は使用されるチェックポイント阻害剤の活性を調節する化合物又は薬剤としては、これらに限られるものではないが、小分子、ペプチド、及び抗体が挙げられる。抗体としては、これらに限られるものではないが、ニボルマブ(OPDIVO)、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA)、ピジリズマブ(CT-011)、MEDI680(AMP-514)、AMP-224、AUNP-12、BMS936559、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、デュルバルマブ(MEDI4736)、アベルマブ(MSB0010718C)、BMS93559(MDX-1105)、rHIgM12B7、BMS-986016、GSK2831781、IMP321、リルマブ(BMS-986015)、IPH2101(1-7F9)、PF-05082566、ウレルマブ(BMS-663513)、及びMEDI6469が挙げられ、小分子としては、これらに限られるものではないが、インドキシモド(NLG9189)、NLG919及びエパカドスタット(INCB024360)が挙げられる。
【0059】
変調の標的となり得るチェックポイントタンパク質の例としては、これらに限られるものではないが、CTLA-4、PD-L1、PD-L2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、IDO、KIR、2B4(CD2系列の分子に属し、全てのNK細胞、及びメモリCD8+T細胞上に発現する)、CD160(BY55とも呼ばれる)、CGEN-15049、CHK1及びCHK2キナーゼ、A2aR、ならびに種々のB-7系列配位子が挙げられる。陰性の免疫規制性ヒト細胞表面受容体プログラム死-1(PD‐1)は、T細胞活性化の規制に関与する分子の免疫グロブリンスーパーファミリー(IGSF)の一員である。PD-1は、細胞死を受けるT細胞ハイブリドーマでアップレギュレートされる遺伝子として1992年に同定された時に、「プログラム死」と名付けられた。PD―1の構造は1つのIGSFドメイン、膜貫通ドメイン、及び免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(ITIM)と免疫受容体チロシンベーススイッチモチーフ(ITSM)を含む細胞内ドメインから構成される。PD-1は、2つの結合相手を有する。PD-L1(B7-H1、CD274)とPD-L2(B7-DC、CD273)である。PD-L1は、造血系及び非造血系の両方の系統に広く発現される。PD-1は、T細胞、B細胞、マクロファージ、NK細胞、DC、肥満細胞のほか、末梢組織にも認められる。PD-1結合は、腫瘍が免疫監視及びクリアランスを回避する1つの手段を意味する。ニボルマブによりPD-1経路の遮断が示されている。
【0060】
追加の治療薬は、カペシタビン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン(リポソーム又は非リポソーム)、エピルビシン、エリブリオン、5-フルオロウラシル(5FU)、ゲムシタビン、イキサベピリン、メトトレキサート、パクリタキセル(アルブミン結合又は非アルブミン結合)、及びビノレルビンの1つ又は複数のような化学療法剤である。ドキソルビシン及びシクロホスファミド;又はドキソルビシン及びシクロホスファミドの後に、パクリタキセル又はドセタキセル;又はドキソルビシン及びシクロホスファミド;又はシクロホスファミド及びドセタキセル;又はシクロホスファミド、メトトレキサート及び5-FU(CMF);又は5-FU、ドキソルビシン及びシクロホスファミド(FAC);又は5-FU、エピルビシン及びシクロホスファミド(FEC);ドセタキセル、カルボプラチン及びトラスツズマブ;又はドセタキセル、カルボプラチン、トラスツズマブ及びペルツズマブ;又はパクリタキセル及びトラスツズマブ;又はパクリタキセル、トラスツズマブ、及びペルツズマブ;といった化学療法剤の組み合わせを投与してもよい。
【0061】
ある実施形態において、ネリペピムト-S又はその変異体、トラスツズマブ又はその誘導体、免疫アジュバント(使用する場合)、及び追加の治療薬(使用する場合)を、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、皮内、腹腔内、眼窩内、移植、吸入、髄腔内、脳室内、又は鼻腔内によって投与する。
【0062】
ある実施形態において、トラスツズマブ又はその誘導体を静脈内投与し、ネリペピムト-S又はその変異体を皮内投与する。ある実施形態において、NPS又はその変異体、及び免疫学的アジュバントを皮内投与し、トラスツズマブ又はその誘導体を静脈内投与する。
【0063】
ある実施形態において、個体はTNBCを有しており、TNBCの治療(標準的なケア治療等)を受けた後、TZ又はその誘導体、及びNPS又はその変異体の投与の時点で臨床的に無病であり、本発明の方法は、個体におけるTNBCの再発を遅延又は防止する。
【0064】
本発明の方法は、腫瘍サイズを減少させることができ、及び/又は個体の無病生存(無再発生存)を増加させることができる。ある実施形態において、トラスツズマブ及びネリペピムト-S又はその変異体は個体に対して相乗効果を有する。
【0065】
本発明の他の態様は、本発明の方法におけるように、低レベルのHER2/neuを発現するTNBCを有する個体において、TNBCを治療するため、及び/又はHER2/neuに対する免疫応答を誘導するために有用な薬物及びキットに関する。本発明の1つの態様は、個体におけるトリプルネガティブ乳癌を治療するためのトラスツズマブと併用するための、ネリペピムト-S又はその修飾体を含む薬剤に関する。薬剤は、GM-CSF等の免疫学的アジュバントをさらに含んでもよい。
【0066】
本発明の別の態様は、個体におけるトリプルネガティブ乳癌を治療するための、ネリペピムト-S又はその変異体と併用するための、トラスツズマブを含む医薬に関する。
【0067】
本発明の別の態様は、第1の容器、第2の容器、及び添付文書を含むキットであって、第1の容器は、トラスツズマブを含む薬剤の少なくとも1回用量を含み、第2の容器は、ネリペピムト-S又はその変異体を含む薬剤の少なくとも1回用量を含み、添付文書は薬剤を使用してトリプルネガティブ乳癌の個体を治療するための説明書を含むキットである。キットは、GM-CSF等の免疫学的アジュバントをさらに含んでもよい。免疫学的アジュバントは、ネリペピムト-S又はその変異体と共に容器内に、又は別個の容器内に保持することができる。キットは、追加の治療薬(すなわち、トラスツズマブ又はトラスツズマブ誘導体、及びNPS又はNPS変異体に加えて)を含むことができる。
【0068】
キットは、好ましくは包装材料を含む。本明細書で使用される「包装材料」という用語は、キットの要素を収容する物理的な構造を指す。包装材料は、要素を無菌状態に維持することができ、そのような目的に一般的に使用される材料(例えば、紙、波形ファイバ、ガラス、プラスチック、箔、アンプル等)から作製することができる。ラベル又は包装挿入物は、例えば、本発明の方法を実施するための、例えば、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)を治療するための、適切に印刷された、及び/又はデジタル指示書を含む。従って、追加の実施形態において、キットは、溶液中で本発明の方法を実施するための説明書を含むラベル又は包装挿入物を含む。
【0069】
従って、説明書は、本明細書に記載の本発明の方法のいずれかを実施するための説明書を含むことができる。例えば、医薬組成物は、TNBC(例えば、低レベルのHER2/neuを発現するTNBC)を治療するために対象に投与するための説明書と共に、容器、パック、又はディスペンサーに含めることができる。説明書は、十分な臨床エンドポイント又は起こり得る有害な症状の徴候、貯蔵情報、有効期限、又は個体における使用のために食品医薬品局もしくは欧州医薬品局のような規制当局によって必要とされる任意の情報をさらに含み得る。
【0070】
説明書は、デジタル又は「印刷物」、例えば、キット内の紙又は厚紙、キット又は包装材料に貼付されたラベル、又はキットの要素を含むバイアル又は管に貼付されたものであってもよい。説明書は、音声又はビデオテープを含んでもよく、さらに、ディスク(ディスケット又はハードディスク)、CD又はDVD-ROM/RAM等の光CD、磁気テープ、RAM及びROM等の電気記憶媒体、ならびに磁気/光記憶媒体等のこれらのハイブリッドに含まれてもよい。
【0071】
キットは、本発明の方法において使用される少なくとも1つの化合物を安定化するための緩衝剤、防腐剤、又は薬剤をさらに含むことができる。キットの各要素は、個々の容器内に、又は混合物中に封入することができ、様々な容器の全ては、単一又は複数の包装内とすることができる。
【0072】
キットは、バイアル、管等の1つ又は複数の容器を受け入れるように区画化された包装材料を含むことができ、各容器は、本明細書に記載の方法で使用される別個の要素の1つを含む。医薬品を包装する際に使用するための包装材料には、例として、米国特許第5,323,907号、第5,052,558号、第5,052,558号及び第5,033,252号に記載のものが含まれる。医薬包装材料の例としては、ブリスターパック、瓶、管、ポンプ、バッグ、バイアル、遮光密閉容器、シリンジ、瓶、及び選択された処方ならびに投与及び治療の意図されるモードに適切な任意の包装材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
キットは、TNBCの治療及び/又は所望の免疫応答の誘導に使用される化合物の使用のために商業的及び使用者の観点から望ましい種々の材料の1つ以上を有する、1つ以上の追加の容器を含む。このような材料の非限定的な例には内容物及び/又は使用説明書を列挙する緩衝液、希釈剤、キャリア、包装、容器、バイアル及び/又はチューブラベル、ならびに使用説明書を伴う添付文書が含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
ラベルは、本発明の方法で使用される化合物を含有する容器上又は関連付けることができる。ラベルを形成する文字、数字、又は他の文字が容器自体に取り付けられ、成形され、又はエッチングされる場合、ラベルは容器上に付けることができ、例えば、包装挿入物として保持する容器又はキャリア内に存在する場合、ラベルは容器と関連付けることができる。ラベルは、内容物が特定の治療用途に使用されることを示すために使用することができる。また、ラベルは本明細書に記載の方法におけるように、内容物の使用のための指示を示すこともできる。
【0075】
キットのある実施形態において、本発明の方法において使用される化合物は、本明細書に開示される化合物を含有する1つ以上の単位剤形を含有することができるパック又はディスペンサーデバイスに提示することができる。パックは、例えば、ブリスターパック等の金属又はプラスチック箔を含む。パック又はディスペンサ装置には、投与のための指示書を添付することができる。パック又はディスペンサには、医薬品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって規定された形態の容器に関連する通知を添付することもでき、この通知はヒト又は獣医学的投与のための医薬品の形態の機関による承認を反映する。このような通知は、例えば、米国食品医薬品局によって処方薬品について承認されたラベル、又は承認された製品挿入物である。適合する薬学的担体中に処方された本明細書中に提供される化合物を含有する組成物はまた、調製され、適切な容器内に配置され、示された状態の治療のために標識される。
【0076】
本発明の方法において有用な、化合物、及びそれらを含む組成物は、薬学的に有用な組成物を調製するための公知の方法に従って処方される。トラスツズマブ、トラスツズマブ誘導体、NPS、NPS変異体、免疫学的アジュバント、及び追加の治療剤の各々は、担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて投与される。処方は、当業者に周知であり、容易に利用可能な多数の出典に詳細に記載されている。例えば、E.WMartinによるRemington's Pharmaceutical Scienceには、本発明に関連して使用することができる処方が記載されている。一般に、本発明の組成物は、組成物の効果的な投与を容易にするために、本発明の少なくとも1つの化合物の有効量が適切な担体又は希釈剤と組み合わせられるように処方される。本方法において使用される組成物はまた、種々の形態とすることができる。例えば、錠剤、丸剤、粉末、液体溶液又は懸濁液、坐剤、注射用及び注入可能用溶液、及びスプレー等の固体、半固体、及び液体投与形態が挙げられる。好ましい形態は、投与方法及び治療適用内容に基づいて決められる。組成物はまた、好ましくは、当業者に公知の従来の薬学的に受容可能なキャリア及び希釈剤を含む。対象のペプチド及びポリヌクレオチドと共に使用するための担体又は希釈剤の例としては水、生理食塩水、鉱油を含む油、エタノール、ジメチルスルホキシド、ゼラチン、シクロデキストラン、ステアリン酸マグネシウム、デキストロース、セルロース、糖、炭酸カルシウム、グリセロール、アルミナ、澱粉、ならびに同等のキャリア及び希釈剤、又はこれらのいずれかの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物の処方はまた、懸濁剤、保護剤、潤滑剤、緩衝剤、防腐剤、及び安定剤を含むことができる。
【0077】
実施例1及び2、材料及び方法、図に開示された試験において、治験者はHER2の低レベル(1+)又は中間レベル(2+)を発現する腫瘍を有する乳癌患者において、NP(又はエストロゲン(ER)受容体及びプロゲステロン(PR)受容体の両方に陰性の場合、NN)における再発を防止するために、補助療法で投与されるハーセプチン(登録商標)抗体(トラスツズマブ)及びNeuVax(商標)ワクチン(HER2タンパク質E75ペプチド)の組合せの能力を評価した。登録された患者は、トラスツズマブ及びNeuVax(商標)ワクチンを受ける群と、GM-CSF単独(NeuVax(商標)ワクチンなし)でトラスツズマブを受ける群に無作為に割り付けられた。併用療法の安全性が実証され、特に、HER2を標的とした併用療法による相添加剤心毒性が生じないことを確認した。有効性は、DFS及び免疫学的応答を治療群間で比較することにより立証された。有効性のプライマリーエンドポイントは、24ヵ月時点のDFSを治療群間で比較することである。安全性の主な課題は、HER2を標的とした併用療法による添加剤心毒性がないことを証明することである。この試験の副次的評価項目は、36ヵ月時点でのDFSを比較することである。ワクチンに対する免疫学的応答も立証され、臨床的利益と相関していた。
【0078】
試験は、ハーセプチン(登録商標)抗体+NeuVax(商標)ワクチン対ハーセプチン(登録商標)抗体+GM-CSF単独の多施設、プロスペクティブ、無作為化、単盲検、プラセボ対照、第II相試験である。対象となる試験集団は、標準治療後に無病状態であるHER21+及び2+発現腫瘍を有するNP(又はERとPRの両方が陰性の場合はNN)乳癌患者である。標準治療の集学的治療後の無病対象をスクリーニングし、HLA型を判定した。ネリペピムト-S(以前はE75ペプチドと呼ばれていた)は、CD8誘発ペプチドワクチンで、CD8誘発ペプチドワクチンはHLA-A2+又はHLA-A3+患者(米国人口の約3分の2)に限定され、HLA-A24+及びHLA-A26+にも拡大されている。
【0079】
他の適格基準を全て満たすHLA-A2+/A3+/A24+/又はA26+患者を、トラスツズマブ+NeuVax(商標)ワクチン群又はトラスツズマブ+GM-CSF単独群に無作為に割り付けた。両群とも、トラスツズマブは単剤療法として3週間ごとに1年間投与され、標準治療である化学療法/放射線療法の終了時に投与された。トラスツズマブの初回注入は、化学療法/放射線療法終了後3週間以内に実施し、12週間以内に実施した。トラスツズマブは、推奨初期負荷用量である8mg/kg及び推奨維持用量である6mg/kgを3週間ごとに投与した。トラスツズマブは、4.3節で述べたように投与した。NeuVaxワクチン群に無作為に割り付けられた患者は、トラスツズマブ注入完了の30~120分後に、ネリペピムト-Sペプチド(1000mcg)及びGM-CSF(250mcg)のワクチン接種を3週間ごとに計6回、皮内投与された。NeuVaxワクチンシリーズは、3回目のトラスツズマブ注入終了直後から開始する。状況に応じて、トラスツズマブの初回接種は、治験責任医師の事前承認を得た上で、4回目又は5回目の投与まで延期してもよい。GM-CSF単独群に無作為に割り付けられた患者は、NeuVaxワクチンを受けた患者と同じ方法でGM-CSF(250mcg)のワクチン接種を受けた。患者は、NeuVaxワクチン又はGM-CSFの単独投与を受けているかどうかについて盲検化された。
【0080】
ワクチン接種シリーズが完了した時点で、追加接種(同じ用量及び経路)を6ヵ月ごとに4回、合計組み合わせ(トラスツズマブ及びNPSワクチン)治療期間30ヵ月間にわたり実施した。初回の追加接種はトラスツズマブの最終注入時に行い、その後の追加接種は初回の追加接種から6ヵ月ごとに実施した。ネリペピムツト-S/GM-CSF投与に無作為に割り付けられた患者のほか、GM-CSF単独投与に無作為に割り付けられた患者に追加接種が行われ、同じ処理及び投与から構成された(すなわち、ネリペピムツト-S/GM-CSF患者にはネリペピムツト-S/GM-CSFを追加接種し、一方、GM-CSF単独患者にはGM-CSF単独を追加接種した)。盲検化は、患者、臨床担当者(臨床医M.D.、看護及び補助職員)、ならびに臨床試験コーディネーター、データマネジャー、統計家、及び臨床試験組織のリーダーシップにおいて、試験期間を通じて維持された。ただし、盲検化された材料の用量及びラベル貼付を準備している試験薬剤師は例外であった。
【0081】
安全性の問題、免疫学的応答及び臨床的再発について対象者を追跡調査した。各接種から48~72時間後に患者をモニタリングし、接種に対する反応のほか、経験されたあらゆる有害作用の記録を得る。免疫学的応答はin vivo遅延型過敏症(DTH)反応であり、in vitro表現型及び機能アッセイでも立証される予定である。全患者について、無病状態を記録するために、計36カ月間追跡することにしていた。
【0082】
定義
本発明のいくつかの態様を、例示目的のみのために実施例を参照して以下に記載する。本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細、関係、及び方法が記載されていることを理解されたい。しかし、当業者は、本発明が1つ以上の特定の詳細なしに実施され得るか、又は他の方法、プロトコル、試薬、細胞株、及び動物で実施され得ることは容易に認識される。本発明は、いくつかの行為が異なる順序で、及び/又は他の行為又は事象と同時に起こり得るので、行為又は事象の図示された順序によって限定されない。さらに、本発明による方法を実施するために、図示された全ての動作、ステップ、又は事象が必要とされるわけではない。本明細書に記載された、又は参照された技術及び手順の多くは、当業者によって、従来の方法を使用してよく理解され、一般に使用される。
【0083】
本発明を詳細に説明した後、いくつかの用語を定義することは本発明の理解に役立つことがあり、従って、これらは以下の次のセクションで説明される。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記、及び他の科学用語又は用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有することが意図される。場合によっては一般に理解される意味を有する用語が明確にするために、及び/又は容易に参照するために本明細書で定義され、本明細書にそのような定義を含めることは当技術分野で一般に理解されるものに対して実質的な差を表すと必ずしも解釈されるべきではない。さらに、一般的に使用される辞書で定義されるような用語は関連技術の文脈において、及び/又は本明細書で別に定義されるように、それらの意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであることが理解されるものとする。
【0084】
「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語は、本明細書中で区別なく用いられ、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいい、そしてDNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、及び/又はそれらの類似体、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼによってポリマーに組み込まれ得る任意の塩基である。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドは、例えば、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含む。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの組立体の前又は後に行われる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、重合後に、例えば、標識成分とのコンジュゲーションによって、さらに修飾されてもよい。他のタイプの修飾例には、例えば、「キャップ」、類似体による1つ以上の天然に存在するヌクレオチドの置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、非荷電結合によるもの(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメート等)及び荷電結合によるもの(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)、懸垂部分を含有するもの、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジン等)等)、インターカレーターによるもの(例えば、アクリジン、ソラレン等)、キレート剤を含むもの(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属等)、アルキル化剤を含有するもの、修飾結合を有するもの(例えば、アルファアノマー核酸等)、ならびにポリヌクレオチドの未修飾形態が含まれる。さらに、糖中に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えば、ホスホネート基、ホスフェート基によって置換されてもよく、標準的な保護基によって保護されてもよく、又は追加のヌクレオチドへのさらなる連結をつくるために活性化されてもよく、又は固体支持体にコンジュゲートされてもよい。5'及び3'端末OHは、リン酸化されるか、又は1~20個の炭素原子のアミン又は有機キャッピング基部分で置換することができる。他のヒドロキシルもまた、標準的な保護基に誘導体化される。ポリヌクレオチドはまた、例えば、2'-O-メチル-2'-O-アリル、2'-フルオロ-又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖類似体、a-アノマー糖、アラビノースのようなエピマー糖、キシロース又はリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプタロース、非環式類似体、ならびにメチルリボシドのような非塩基ヌクレオシドアナログを含む、当該分野で一般に公知である類似の形態のリボース又はデオキシリボース糖を含むことができる。1つ以上のホスホジエステル結合は、代替結合基によって置換される。これらの代替結合基としては、これらに限られるものではないが、リン酸塩がP(O)S(「チオエート」)、P(S)(「ジチオエート」)、「(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO又はCH2(「ホルムアセタール」)によって置換される実施形態が含まれ、式中、各R又はR'は、独立して、H又は置換又は非置換アルキル(1~20C)であり、任意で、エーテル(-O-)結合、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルキルを任意で含有する。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。上記の説明は、RNA及びDNAを含む、本明細書中で言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0085】
本明細書で使用される「発現」という用語は、mRNAの産生及びmRNAのタンパク質への翻訳を指す。
【0086】
本明細書中で使用される「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、区別なく用いられ、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基を含む任意の長さのポリマーを指す。
【0087】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される、「1つ」及び「その」は文脈が別段の明確な指示をしない限り、複数の参照を含むものとする。
【0088】
本明細書で使用される「含有する」、「有する」、又はそれらの変形の用語は、「含む」と包括的に同様とする。
【0089】
本明細書中で使用される「個体」、「対象」及び「患者」とう用語は区別なく用いられ、トリプルネガティブ乳癌に罹患する可能性のある任意の性別のヒトをいう。ある実施形態において、個体は、18歳以上の女性である。ある実施形態において、対象は、HER2低発現(IHC1+/2+、FISH非増幅)乳癌を有するか、又は有していた。
【0090】
本明細書で使用される「及び/又は」という語句は、結合した要素の「いずれか又は両方」、すなわち、ある場合においては結合して存在し、他の場合には分離して存在する要素を意味すると理解されるべきである。
【0091】
本明細書で使用される場合、「又は」は上記で定義される「及び/又は」と同一の意味を有するものとする。例えば、項目のリストを分けるとき、「及び/又は」、「又は」は、包含する、すなわち、少なくとも1つ、2つ以上、数多くの項目を含み、任意で追加のリストされていない項目を含むものと解釈される。「1つのみ」又は「正確に1つ」のように、又は「から成る」のように請求項において使用される場合、反義的に明確に示される用語のみが、複数の要素又は要素のリストの正確に1つの要素を包含することを意味する。
【0092】
本明細書中で使用される場合、「治療」は治療される個体又は細胞の自然経過を変化させる試みにおける臨床的介入をいい、臨床病理学の経過前又はその間に実施される。治療の望ましい効果は、トリプルネガティブ乳癌のような疾患又は状態の発生又は再発の遅延又は予防、又はその症状、疾患又は状態の発症の遅延、疾患の状態又は症状の軽減、疾患の直接的又は間接的な病理学的結果の減少、疾患進行速度の低下、疾患状態の改善又は緩和、寛解の達成又は予後の改善、及び無病生存の増加を含む。TNBCの治療において、トラスツズマブ又はその誘導体、及びNPS又はその変異体の組み合わせは、治療有効量で投与される。
【0093】
「有効量」とは、ヒトにおけるTNBCの有害な影響を予防又は遅延させ、再発を予防又は遅延させ、除去し、減少させ、又は遅延させる、トラスツズマブ又はその誘導体、及びNPS又はその変異体の量を意味する。投与される用量は、患者、病理学、投与モードに従って、当業者によって適合されるものと考えられる。
【0094】
本明細書で使用する「腫瘍」という用語は、悪性であるか良性であるかにかかわらず、全ての新生物細胞の成長及び増殖を指し、全ての前癌性及び癌性細胞及び組織を指す。例えば、特定の癌は、固形塊腫瘍又は非固形腫瘍によって特徴付けられる。固形腫瘍の塊は、存在する場合、原発腫瘍塊のことがある。原発性腫瘍塊とは、その組織の正常細胞の形質転換により生じる組織中の癌細胞の成長物をさす。多くの場合、原発性腫瘍塊は、目視若しくは触診法を通じて、又は組織の形状の不規則性、質感、若しくは重量により見出される嚢腫の存在により識別される。しかしながら、いくつかの原発腫瘍は触知できず、X線(例えば、マンモグラフィー)又は磁気共鳴画像法(MRI)のような医学的画像化技術、又は針吸引によってのみ検出することができる。これら後者の技術の使用は、早期発見においてより一般的である。組織内の癌細胞の分子的及び表現型解析は、通常、癌が組織に内因性であるかどうか、又は病変が別の部位からの転移によるものかどうかを確認するために用いることができる。切除不能な腫瘍もある(例えば、転移巣の数のため、又は手術危険域にあるため、外科的に切除できない)。本発明の方法は、早期、中期、又は後期の疾患、及び急性又は慢性の疾患に利用することができる。
【0095】
MHCクラスIペプチドワクチンはHLA制限であるが、複数のHLA型に結合することができる。HLA型は、チェックポイント阻害剤を含む複数の免疫療法に対する応答と関連している。HLA型、予測されるペプチド結合能、及び臨床反応の関係は、能動的免疫療法の設計及び開発に影響を及ぼす。リンパ節陽性及び/又はER-/PR-陰性のHER2低発現乳癌患者における再発を予防するために、MHCクラスIペプチド、E75(HER2369-377)+GM-CSF(NeuVax)+トラスツズマブ対GM-CSF+トラスツズマブの無作為第IIb相試験が実施されている。計画された中間解析では、特にTNBC患者において、NeuVax+トラスツズマブに対する有意な無病生存利益が実証された。実施例1及び2の分析では、HLA型が試験転帰に及ぼす影響を検討する。
【0096】
標準治療後の臨床的無病、HER2低発現(IHC1+/2+、FISH非増幅)、リンパ節陽性(AJCC N1、N2、又はN3)及び/又はトリプルネガティブ乳癌患者を対象に、フローサイトメトリーによりA2、A3、A24、及びA26アレルの有無を検査した。HLA-A2、A3、A24、及び/又はA26+患者をトラスツズマブ+NeuVax投与群(ワクチン群)又はトラスツズマブ+GM-CSF投与群(対照群)に無作為に割り付けた。全患者に標準治療あたり1年間のトラスツズマブを投与した。NeuVax又はGM-CSFは3回目のトラスツズマブ投与から開始して3週間ごとに6回投与し、その後は6ヵ月ごとに4回追加投与した。事前に規定した中間解析は、最終患者登録から6ヵ月後に実施した。主要評価項目はログランクで評価した無病生存期間とした。MHCクラスI結合予測は、IEDBアナリシスリソースコンセンサスツールを使用して行った。
【0097】
材料及び方法
実験:ハーセプチン+NeuVaxワクチン試験群
この試験群に無作為に割り付けられた患者にはハーセプチン(登録商標)抗体(トラスツズマブ)を単剤療法として3週間ごとに1年間投与し、初回のトラスツズマブ注入は標準治療化学療法/放射線療法の完了後3週間以内かつ12週間以内に行った。トラスツズマブは、推奨初期負荷用量である8mg/kg及び推奨維持用量である6mg/kgを3週間ごとに投与した。患者には、トラスツズマブの注入終了後30~120分後に、NeuVaxワクチンを3週間ごとに6回、全ワクチン接種した。一連のNPSワクチンは、3回目のトラスツズマブ注入終了直後から開始されたが、PIの事前承認を得て4回目又は5回目のトラスツズマブ注入まで延期可能であった。割り付けられた治療群に関して患者を盲検化した。一連の一次ワクチン完了後、患者にNeuVaxワクチン追加接種を4回、6ヵ月ごとに4回、合計30ヵ月間実施した。
【0098】
実験:実薬対照:ハーセプチン+GM-CSF単独試験群
この試験群に無作為に割り付けられた患者には、ハーセプチン(登録商標)抗体(トラスツズマブ)を3週間ごとに単剤療法として1年間投与した。トラスツズマブの初回注入は標準治療である化学療法/放射線療法の終了後3週間以内に実施し、12週間以内に実施した。トラスツズマブは、推奨初期負荷用量である8mg/kg及び推奨維持用量である6mg/kgを3週間ごとに投与した。患者には、トラスツズマブ注入完了から30~120分後に、3週間ごとに計6回、GM-CSFのみ(250mcg)を皮内投与した。一連のGM-CSFのみの接種は、3回目のトラスツズマブ注入終了直後から開始した。患者は、NeuVaxワクチン又はGM-CSFのみを投与されているかどうかについて盲検化された。6回接種の一連の一次ワクチン接種完了後、患者は、合計4回のGM-CSF単独の追加接種を受け、トラスツズマブの初回注入日から12、18、24、及び30ヵ月後に投与された。
【0099】
トラスツズマブ介入
トラスツズマブは、標準治療である化学療法/放射線療法の完了時に投与され、1年間、単剤療法として3週間ごとに患者に投与された。トラスツズマブの初回注入は化学療法/放射線療法終了後3週間から12週間以内に実施した。トラスツズマブは、推奨初期負荷用量である8mg/kg及び推奨維持用量である6mg/kgを3週間ごとに投与した。
【0100】
ネリペピムト-S介入
ワクチン投与時に、E75酢酸塩の凍結溶液(1.5mg/ml)を解凍し、1000mcgのE75ペプチド(KIFGSLAFL(配列番号1)、HER2/neu、369-377)を250mcgのGM-CSF(サルグラモスチム)と完全に混合した。NeuVaxワクチンをこのように構成した。トラスツズマブ+NeuVaxワクチン群に無作為に割り付けられた患者については、トラスツズマブ単剤療法を開始し、3回目のトラスツズマブ注入終了直後に一連のNeuVaxワクチンを開始した。一連のワクチンは3週間ごとに6回の全ワクチン接種を行うNeuVaxワクチンを皮内投与し、トラスツズマブ注入終了後30~120分とした。
【0101】
GM-CSF介入
トラスツズマブ+GM-CSF単独療法群に無作為に割り付けられた患者については、トラスツズマブ単独療法を開始し、3回目のトラスツズマブ注入終了直後に、一連のGM-CSF(サルグラモスチム)接種を開始した。一連のGM-CSF接種で、GM-CSF250mcgを3週間ごとに6回の全ワクチン接種、トラスツズマブ注入完了30~120分後に皮内投与した。
【0102】
試験基準:選択基準
患者は以下の基準に基づいて試験に組み入れられた。
・18歳以上の女性
・リンパ節転移陽性乳癌(AJCC N1、N2、又はN3)
・エストロゲン(ER)受容体とプロゲステロン(PR)受容体の両方が陰性で、標準治療として化学療法を受けている場合は、リンパ節転移陰性乳癌
・標準治療(手術、化学療法、放射線療法、NCCNガイドラインによる指示)後に臨床的に無癌(疾患の証拠なし)。標準治療に従ってホルモン療法を継続した。術前化学療法は許可された。
・先行する補助療法に関連するあらゆる毒性からの回復。
・IHCによる1+又は2+のHER2発現。FISH(又はDual-ISH)検査はIHC2+腫瘍に対して実施し、FISH(≦2.0)(又はDual-ISH、≦2.0)で非増幅であることが示されなければならない。
・HLA-A2、A3、A24、又はA26陽性
・LVEFが50%を超える、又は施設の特定の検査(マルチゲート収集法[MUGA]心臓スキャン又は心臓エコー図[エコー])の正常範囲内のLVEF
・米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)のパフォーマンスステータス0又は1
・署名されたインフォームド・コンセント
・適切な避妊(禁欲、子宮摘出、両側卵巣摘出、両側卵管結紮、経口避妊、子宮内避妊具(IUD)、又はコンドームやペッサリーの使用)
・標準治療の終了から3~12週間の間に治験薬の投与を開始する(トラスツズマブの療法注入を受ける)。
【0103】
試験基準:除外基準
患者は、以下の基準に基づいて試験から除外された。
・エストロゲン(ER)受容体とプロゲステロン(PR)受容体の両方が陰性で、標準治療として化学療法を受けていない限り、リンパ節転移陰性乳癌(米国癌合同委員会[AJCC]N0又はN0(i+))
・遠隔又は残留乳癌の臨床的又はX線撮影による証拠
・HER2陰性(IHC 0)又はHER2 3+又はFISH又はDual-ISH増幅(FISH>2.0、Dual-ISH>2.0)
・ヒト白血球抗原(HLA)-A2、A3、A24、A26陰性
・トラスツズマブによる前治療歴
・ニューヨーク心臓協会(NYHA)のステージ3又は4の心疾患
・左室駆出率(LVEF)<50%、又は施設の特異的検査(MUGA又はEcho)の正常限界未満
・免疫不全症又はHIV、HBV、HCV
・化学療法、慢性ステロイド、メトトレキサート、又は他の既知の免疫抑制剤を含む免疫抑制療法を受けていること
・ECOGパフォーマンスステータス≧2
・総(血清)ビリルビン>1.8mg/dL、クレアチニン>2.0mg/dL、ヘモグロビン<10g/L、血小板<50,000/uL、WBC<2,000/uL
・妊娠(尿中HCGで評価)
・母乳栄養
・白斑を除き、処理を必要とするあらゆる活性自己免疫疾患
・複数の吸入器を含む薬剤を必要とする活動性肺疾患
・他の実験プロトコル(他の試験PIの許可を除いて)に関与
【0104】
評価:24ヵ月時点での無病生存(DFS)
無作為化にかかわらず、全患者のDFSは、ルーチンの追跡スクリーニング中に個々の試験施設の患者自身の医師により決定された。これは、一次治療終了後の最初の24ヵ月間は3ヵ月ごとに、その後は6ヵ月ごとに、臨床検査、臨床検査及びX線検査によるサーベイランスを実施した。本試験の主な目的は、24カ月時点での無病生存期間(DFS)であった。
【0105】
評価:36カ月時点での無病生存期間(DFS)
無作為化にかかわらず、全患者のDFSは、ルーチンの追跡スクリーニング中に個々の試験施設の患者自身の医師により決定された。これは、臨床検査、臨床検査及びX線サーベイランスによる一次治療終了後30ヵ月目と36ヵ月目に実施した。本試験の副次的目的は、36カ月時点での無病生存期間(DFS)であった。
【0106】
評価:24ヵ月時点での心毒性
無作為化にかかわらず、各患者は、ベースラインのマルチゲートアクイジションスキャ(MUGA)が望ましい、心エコー図(ECHO)が許可、一貫性が必要)、3、6、12、24ヵ月時に、心臓評価(駆出率)を受けた。治験期間中又は消失まで、患者がベースラインから10%を超える低下を示した場合は、6ヵ月ごとに心臓の評価を継続した。
【0107】
一連のワクチン又は接種及び一連の追加の期間における局所及び全身毒性
標準局所毒性及び全身毒性を集め、米国国立癌研究所有害事象共通用語規準(NCI-CTCAE)、バージョン4.03毒性規模に従って等級付けした。定期接種、追加接種ともに、接種後1時間、問診、連続検査及びバイタルサインを15分ごとに綿密にモニタリングし、過敏反応の有無を観察した。また、全身毒性に関する質問及び接種部位の局所反応の検査・測定のため、各接種から48~72時間後に患者は診療所に戻った。
【0108】
本明細書に言及又は引用した全特許、特許出願、仮出願、及び刊行物はそれらが本明細書の明白な開示と矛盾しない限り、その図面及び表を含む全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0109】
以下は、本発明を実施するための手順を例示する。これらの実施例は限定とはみなされない。全てのパーセンテージは重量で表示されており、全ての混合比率は特に注意がない限り体積比である。
【0110】
実施例1-再発予防を目的としたトラスツズマブ+ネリペピムト-S(NEUVAX)併用療法対トラスツズマブの無作為相2b試験の事前に規定された中間解析により、トリプルネガティブ(HER2低発現)乳癌患者における有益性を実証する
ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)低発現乳癌(免疫組織化学(IHC)1~2+)は、アジュバントトラスツズマブ(TZ)による治療に適格ではない。NSABP B-47により確認されたトラスツズマブは、HER2低発現乳癌の転帰を改善しない(Fehrenbacherら、SABCS、2017、Abstract GS1-02)。これらの患者は現在、HER2指向療法に不適格である。TZは、癌について成功した標的療法として周知されている。15-20%のBC患者は、HER2過剰発現(IHC3+又はFISH増幅)であるため、TZの投与に適格である。
【0111】
トラスツズマブの適用を拡大する取り組みが以前からなされてき。NSABP B-47試験は、最近、TZがこの集団において転帰を改善しないことを確認した(Fehrenbacherら、2017)。HER2陰性、ER陽性の患者は非常に良好であり、ホルモン療法以外の標的療法を必要としない可能性が高い。しかし、TNBC患者は長期生存率が最も悪く、治療選択肢もほとんどない。従って、TNBC患者に対する新規治療法が必要とされている。
【0112】
HER2は、トラスツズマブの標的でもあり、乳癌患者の20人%が投与対象となる。NeuVaxは、HER2標的ワクチンであり、当初、HER2が「低発現」である乳癌患者の50~60%のより広いベースに利用できるように準備されていた。
図1に示すように、ネリペピムト-Sは、乳癌患者におけるワクチン接種の有望な標的であるHER2タンパク質の細胞外ドメインに由来する免疫優性ペプチドである。ネリペピムツト-Sは、抗原提示細胞(APC)上の特定HLA分子に結合した後、特定CD8+CTLを刺激する。
【0113】
アジュバントネリペピムツト-S+GM-CSF(NeuVax)の第1/2相試験は安全かつ免疫原性のプロファイルを実証し、臨床的有効性を示唆した(Gallら、Cancer Res.,2017,77:5374-83)。このワクチンを使用する目的は乳癌で見つかったHER2タンパク質を認識し攻撃するように免疫系をプライミングすることであり、その結果、初期乳癌患者が初期治療終了後に再発のリスクがある場合、その免疫系はネリペピムト-S投与後にHER2を認識し、作用することで、再発の臨床的出現を遅らせるか、又は防止する。これは臨床では無病生存期間(DFS)、最終的には全生存期間(OS)の延長と考えられる。
【0114】
ハーセプチン(登録商標)抗体+NeuVax(商標)ワクチン(ネリペピムト-S(NPS、E75ペプチドとしても知られる)+顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF))とハーセプチン(登録商標)抗体+GM-CSF単独との多施設、プロスペクティブ、無作為化、単盲検、プラセボ対照、第II相試験が実施された。対象試験集団は、標準治療後に無病であったHER2 1+及び2+発現腫瘍を有する乳癌患者で、リンパ節転移陽性(NP)(又はERとPRの両方が陰性の場合はリンパ節転移陰性[NN])であった。標準治療の集学的治療後の無病対象者をスクリーニングし、HLA型を判定した。NeuVax(商標)ワクチンはCD8誘発ペプチドワクチンで、HLA-A2+又はHLA-A3+患者(米国人口の約3分の2)に限定され、HLA-A24+及びHLA-A26+にも拡大されている。試験デザインを
図2に示す。
【0115】
主要選択基準
・女性>18才
・IHCで1-2+のHER2発現を認めた高リスク浸潤性乳癌
・標準治療を受けた後の臨床的無病状態
・HLA-A2、A3、A24、又はA26陽性
【0116】
評価
・局所及び全身毒性
・心毒性
・免疫学的in vivo応答
・無病生存率
【0117】
詳細な選択基準
・18歳以上の女性、ECOG PS0-1
・リンパ節転移陽性(HR+/-)又はリンパ節転移陰性(HR-)で、IHCによりHER2発現が1-2+であることが組織学的に証明された浸潤性乳癌*
-IHC2+腫瘍については、FISH又はDual-ish HER2:CEP17≦2.0(非増幅)
・手術、アジュバント化学療法又はネオアジュバント化学療法及び放射線療法を受けた後の臨床的無病状態
・HLA-A2、A3、A24、又はA26陽性
・HR-及びHER2 1+/2+の患者は現在、TNBC患者と定義されている。
【0118】
詳細な評価:
・局所及び全身毒性(NCI CTCAEバージョン4.03)
・心毒性:心駆出率(MUGA又は心エコー):ベースライン、3、6、12、及び24ヵ月
・遅延型過敏症(DTH)反応(感受性ボールペン法):接種前及び接種後の測定時点
・DFS:初回治療終了後の最初の24ヵ月間は3ヵ月ごとに、その後は6ヵ月ごとに評価した再発
・略号:CEP:染色体数測定プローブ、DFS:無病生存期間、DTH:遅延型過敏症、ECOG PS:米国東海岸癌臨床試験グループ、FISH:蛍光in situハイブリダイゼーション、HER2:ヒト上皮成長因子受容体2、HLA:ヒト白血球抗原、HR:ホルモン受容体、IHC:免疫組織化学、MUGA:マルチゲート収集走査、NCI CTCAE:米国国立癌研究所有害事象共通用語規準。
【0119】
所定の中間解析の結果を得た。
・最後の患者が登録されてから6ヵ月後
・安全性及び有効性を評価した
以下の表1及び表2に患者背景(ITT)を示す。
【0120】
【0121】
【0122】
589人の患者がスクリーニングを受け、HLAタイピングに同意し、HLAの状態に基づいて適格でなかったのはわずか16.6%であった。216人は適切なHLA型であったが、スクリーニングの障害又は患者の選択は登録しなかった。275の患者が登録された。治療群間(AJCC7ステージ)で臨床病理学的な差は認められなかった。
【0123】
図3に、患者当たりの最大段階的毒性のグラフを示す。各群7例は割り付けられた治療を開始せず、安全性解析から除外した。患者が経験した関連毒性又は最大毒性の分布又は重症度に差はなかった。NeuVaxグループでグレード1/2の限局性そう痒及び疼痛がわずかに多かったことを除いて、個々の局所毒性又は全身毒性に差はなかった。TRAEは、主に管理可能な局所注射部位反応、皮膚硬結、そう痒症及び疲労から構成された。グレード4/5のTRAEは認められなかった。
【0124】
図4は、同図心駆出率(LVEF)のグラフである。心臓関連の有害事象の発現率には、治療群間で有意差は認められなかった(表2)。LVEFの平均値は、事前に設定した3、6、12ヵ月目の評価時に両群ともベースラインからわずかに低下したが(p<0.02)、24ヵ月目にトラスツズマブを中止した後には差が認められなかった(p>0.58、
図3)。LVEFを線形混合回帰モデルで評価した全ての時点を評価したところ、心駆出率の経時的変化(p=0.65)、無作為化群間(p=0.91)、治療群間の経時変化(p=0.81、
図4)に有意差は認められなかった。
【0125】
【0126】
図7に、TNBC患者の無病生存率のグラフを示す。事前に規定したサブグループ解析では、トリプルネガティブ集団内ではるかに強い臨床的有益性が認められた。
【0127】
この患者集団は、乳癌に対する効果的な標的療法の時代において、これらの患者は有効な治療法が極めて少なく放置されているため、特に関心が必要である。すでに述べたように、乳癌患者のおよそ80%は現在、有効なHER2標的分子療法(トラスツズマブや他のHER2結合高分子/抗体等)に適格ではないが、これらの患者のおよそ4分の3はER陽性疾患であり、これは比較的攻撃性が低く、確実にホルモン療法が受けられ、非常に有効である。ホルモン受容体陽性、HER2陰性(ホルモン受容体陽性、HER2「低発現」を含む)疾患を有するこれらの患者は非常に良好な予後を有するが、トリプルネガティブ疾患患者の約20%は、現在、乳癌患者の最もリスクの高い生物学的サブセットであり、特に予後不良で、治療の中心として細胞毒性化学療法のみに頼っている。重要なのは、これは転移性及び初期の設定のほか、初期治療に対する一次治療が成功した後の補助/維持療法の設定においても当てはまることである。従って、TNBC患者は、新しい治療法を必要とする、十分に治療されていない乳癌患者集団である。
【0128】
この試験では、NeuVax+トラスツズマブの併用が安全であることが明らかにされ、治療群間で安全性に顕著な差は認められなかった。心毒性は追加されなかった。NeuVax+トラスツズマブは、HER2低発現乳癌患者に臨床的に意義のある利益をもたらす可能性がある。最も重要なことは、NeuVax+トラスツズマブの併用により、TNBC患者におけるDFSの統計的に有意な改善が実証されたことである。
【0129】
実施例2-HLA-A24+トリプルネガティブ(HER2低発現)乳癌患者におけるNPSの活性
本試験のトリプルネガティブ乳癌(TNBC)コホート(n=97)の患者において(実施例1)、実薬治療(NPS+トラスツズマブ)は全てのHLAタイプに利益をもたらした(
図8参照、試験した患者の各種HLAサブタイプのハザード比についてのフォレストプロットを示す。TNBCコホート全体のハザード比[H.R.]は、HLAタイプ間で非常に強い、0.29)。しかし、このフォレストプロットサブグループ分析は、HLA-A24+の患者で達成された最低のH.R.を示し、顕著なH.R.値は0.08、p値は0.003であった。HLA-A24陽性率は、特にアジア/太平洋流域の個体群に関連している。
【0130】
図9に、HLA-A24+TNBC患者に対するDFSを示す。TNBC患者の後者のサブグループでは、NPS+トラスツズマブの併用により、24ヵ月DFSランドマーク解析において、対照(トラスツズマブ単独)群と比較して24ヵ月時点での再発又は死亡の相対リスクが顕著に90.6%低下する。
【0131】
図8及び9のデータによれば、TNBC患者のHLA-A24+サブグループが試験された全ての他のサブグループ(各種ベースラインの患者及び疾患の特徴及びデータ層別化パラメータに従って定義されるこのようなサブグループ)の中で、観察されたことのある最高の臨床活性(実薬(コンボNPS+トラスツズマブ)と対照(トラスツズマブ単独)の間のデルタ(DFS)によって評価される)を示すことが確認される。
【0132】
さらに、HLA-A24+患者は、試験全体(すなわち、TNBC患者と非TNBC患者の両方を含むITT集団のHLA-A24+部分)においても、DFSの改善傾向を示した(
図10参照)。ITT内のHLA-A24+患者(大規模な試験集団)を対象としたこの解析では、H.R.が0.43で、その値は0.07であったことが示され、24ヵ月DFSのランドマーク解析において、併用(NPS+トラスツズマブ)群vs対照(トラスツズマブのみ)群では24ヵ月時点での再発又は死亡の相対リスクが61.2%低下したことに相当した。
【0133】
このように、NPS+トラスツズマブの併用でこれまでにみられた最も強力な臨床効果は、TNBCコホート及びITT集団(後者はホルモン受容体の状態に関係なくHER2 IHC1+/2+)のいずれについてもHLA-A24+患者であった。この監察結果は、少なくとも2つの理由で非常に興味深い。
【0134】
第一に、HLA-A24は、アジア/太平洋流域地域に生息する集団において最も強く発現されるHLA型であり、次の点で、アジア市場に非常に適切であるという知見を与える。アジアにおけるHLA-A24対立遺伝子の非常に高い有病率を考慮して、世界中で依然として活性である一方で、NPSを、これらの領域において(トラスツズマブと併用して)最適に使用され得る薬剤として、これらのデータが強く位置づけている。
【0135】
第二に、E75(NPS)ペプチドに対する種々のHLAサブタイプの結合親和性を見ると、この知見は予測できなかった。実際、HLA-A24(及びA26)分子(アジア人患者で高頻度に発現)は、NPSペプチドに対する結合活性が最も低いが(表4参照)、最も強力な臨床反応と尚関連している(上記のDFS臨床転帰データによる)。
【0136】
以下の表4において、人工ニューラルネットワーク(ANN)IC50は、MHCクラスIとの50%結合に必要なタンパク質の濃度を示す。低いIC50値は、所与のHLA分子の抗原認識生物物理学的「ポケット」への強い結合を示し、逆に高いIC50値は、この「ポケット」への弱い結合を示す。
【0137】
【0138】
【0139】
表4から明らかなように、ペプチド結合についての最高のIC50値は、対立遺伝子HLA-A24(及びA-26)について得られる。モデリングによる結合の強さの順位(IC50の上に追加因子を含む)で評価すると、4つの主要なHLAクラスI対立遺伝子(A02、A03、A24[この場合、A26])の中でNPSペプチドとの最も弱い関連を示すのはHLA-A24サブタイプである。
【0140】
以上を総合すると、NPSは、高親和性コンホメーション、すなわちA02及びA03に加えて、特にアジア集団において、より低親和性のMHC-Iコンホメーション(A24)の両方に結合できることが示唆される。実際、生物物理学的/分子レベルでこれら両方のHLAコンホメーションと会合するこの能力は、少なくとも一部、ワクチン接種している抗原(NPS)に対する最適に好ましい免疫応答の生成に役立つ可能性があり、これは、他のHER2断片全体で可能性が最も高い。これは、いくつかのさらなるHER2エピトープにわたる場合である可能性が最も高いと予想され、NPSワクチン接種後に広がるエピトープが以前の研究で繰り返し示されている(Conrad Hら、J Immunol. 2008;180:8135-45; Emens LAら、Endocr Relat Cancer. 2005;12:1-17; Mittendorf EAら、Surgery. 2006;139:407-18; Disis MLら、J Clin Oncol. 2002;20:2624-32; Brossart P ら Blood. 2000;96:3102-8; Disis MLら、Clin Cancer Res. 1999;5:1289-97)。
【0141】
実際のHLA-A24分子に対するNPSの親和性が低い(見かけのパラドックス)にもかかわらず、NPS接種後のHLA-A24+患者において深い臨床反応がみられるという事実は、宿主の抗原提示細胞(抗原提示細胞(APC)、すなわちマクロファージ及び単球)-及び、最終的には、HLA-A24個体におけるNPSエピトープに対するCD8 T細胞-の「露出」の減少(免疫系による抗原認識「事象」の頻度が低いため)に起因する可能性が最も高い。従って、この効果は、この重要なエピトープ(NPS)に対する公差出現率の減少に起因するものと思われる。言い換えれば、ペプチド結合のより低い親和性は、アジア集団における多くのHLA-A24結合自己ペプチド(NPSを含む)に対する非効率的な寛容化の基礎である。このことは重要である。なぜなら、HLA-A24に高い親和性をもつNPS以外のペプチドワクチン(特に一価ワクチン)は(初期免疫反応性の「緩慢な」レベルの誘導にもかかわらず)急速に寛容原性を獲得し、経時的に免疫原性を徐々に減弱させることができるからである。さらに、この効果はHLA-A24+の個体でより増強される可能性がある。このことは、特にアジアの集団において、NPSで予測外の効果であり、これはNPSの非常に肯定的な顕著に区別される属性情報である。
【0142】
上記の全ては、NPS(又はNPS変異体)対他のHER2標的免疫療法薬(ペプチド又は他のタイプのワクチンを含む)の潜在的に強い違いを、特にアジア人患者では、提供することができ、そのような薬剤は、HLA-A24との親和性が低すぎるかどうかを示すことができ、その場合、NPSに対する抗原性/免疫原性は低い、あるいはHLA-A24との親和性が高すぎ、その場合、免疫寛容と特定の抗原に対するアネルギーへと急速かつ決定的に導かれる。また、一般的なペプチドワクチンの文献において、T細胞を免疫するのに必要なペプチド-HLA結合活性の閾値と比較して、免疫寛容を誘導するにはペプチド-HLA結合活性の閾値が高くなければならないことも知られている。従って、ペプチドワクチン抗原のほとんどの場合、バランスは免疫原性対免疫寛容誘導の2つの方向のどちらかに向かう。要するに、上記の知見は驚くべきことに、そして非常に有利なことに、NPSは、最適には抗原性と抗寛容性の両方があり(特にHLA-A24を有する患者のコンテキストにおいて)、これはNPS(及びNPS変異体)に独特かつ「特異的」な特徴である。
【0143】
最後に、所与の自己抗原(すなわち、ほとんどの腫瘍関連抗原がNPSを含むので、本質的に「弱い」抗原)の関連性の弱さをその同族のHLA/MHCクラスI「ポケット」に正に相関させる基本的/一般的(すなわち、NPSに特異的でないか、又は適切でない)文献(下記のアスタリスク[*]で示されるリストを参照)が存在し、抗原に対する寛容性が欠如している(後者の特性は、NPSが有すると思われる抗癌ワクチンに最適な特性である)。最後に、NPSのこの抗寛容原性特性が、ワクチン接種患者におけるNPS特異的CD4(すなわち、Tメモリ)細胞クローンの活性化と持続にある可能性があることは非常に興味深く、NPSのまれな(臨床的観点からも非常に有益である)特性である(Peoples GEらClin Cancer Res.2008;14:797-803;これは、NPSワクチン接種後の良好なCD4Tメモリ細胞応答を実証する主要な論文であり、主にNPSのようなCD8活性化短[9-アミノ酸]ペプチドでは予測されないものである)。
【0144】
*抗原のHLA結合活性と寛容原性との関係(癌免疫療法では、NPSに直接関連するものではないが)についての引用文献を以下に挙げる。
・Blum JSら Annu Rev Immunol. 2013;31:443-73.
・Janicki CNら Cancer Res. 2008;68:2993-3000.
・Gebreselassie Dら Hum Immunol. 2006;67:894-906.
・Gross DAら J Clin Invest. 2004;113:425-33.
・McMahan C and Fink P. J Immunol. 2000;165:6902-7.
・Arnold Bら Immunol Today. 1993;14:12-4.
・Nikolic-Zugic J & Carbone FR. Immunol Res. 1991;10:54-65.
・Milich DRら J Immunol. 1989;143:3148-56.
【0145】
例示的な実施形態
本発明の実施形態の例には、これらに限定されないが、以下が含まれる。
【0146】
実施形態1 (a)有効量のトラスツズマブ又はその誘導体、及び(b)有効量のネリペピムト-S又はその変異体を個体に投与することを含む、個体におけるトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を治療するための方法。
実施形態2 前記トラスツズマブ又はその誘導体、及び前記ネリペピムト-S又はその変異体を間隔をあけて投与し、前記ネリペピムト-S又はその変異体の投与は、前記トラスツズマブ又はその誘導体の投与の開始後に開始される、実施形態1に記載の方法。
実施形態3 前記方法は、ネリペピムト-S又は変異体なしで、前記トラスツズマブ又は誘導体の用量の定期的投与を含む準備相の開始、続いて、前記トラスツズマブ又は誘導体、及びネリペピムト-S又は変異体の両方の用量の定期的投与を含む組み合わせ相及び期間を含む、実施形態3に記載の方法。
実施形態5 初期免疫化相中の前記ネリペピムト-S又は変異体の投与は、トラスツズマブ又はその誘導体の第3、第4、又は第5の投与の完了後に開始される、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態6 前記トラスツズマブ又はその誘導体は、8mg/kgの初期負荷用量及び3週間ごと(q3wk)の6mg/kgの維持用量で投与され、1,000mcgの用量のネリペピムト-S又は変異体が投与される、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態7 前記TNBCは、免疫組織化学(IHC)による1+又は2+のHER2発現を有する、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態8 前記個体は、HLA-A2陽性、HLA-A3陽性、HLA-A24陽性、又はHLA-A26陽性である、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態9 前記個体は、前記TNBCに対する標準的な治療療法(例えば、化学療法、手術原発性腫瘍摘出、放射線療法、又は上記のうちの2つ以上の組み合わせ)を受けた後に、前記投与時に臨床的に無病である、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態10 トラスツズマブ又はその誘導体の投与は、標準的なケア療法の完了後3週間から12週間の間に開始される、実施形態9に記載の方法。
実施形態11 前記TNBCは、前記投与の時点でリンパ節転移陰性(例えば、AJCC N0又はN0(i+))である、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態12 前記トラスツズマブ又はその誘導体は、静脈内に投与される、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態13 前記ネリペピムト-S又はその変異体は、皮内投与される、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態14 免疫学的アジュバントを個体に投与することをさらに含む、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態15 前記免疫アジュバントは、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、実施形態12に記載の方法。
実施形態16 250mcgのGM-CSFの用量が、1日当たり投与される、実施形態15に記載の方法。
実施形態17 前記免疫アジュバントは、3週間(q3wk)ごとに投与される、実施形態14~16のいずれか一つに記載の方法。
実施形態18 1,000mcgの前記ネリペピムト-S又はその変異体及び250mcgの前記GM-CSFは、トラスツズマブ又はその誘導体の注入の完了後30~120分後に、3週間ごとに皮内投与される、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態19 前記免疫学的アジュバントは、ネリペピムト-S又はその変異体と共に、同一又は別個の処方で投与される、実施形態14~18のいずれか一つに記載の方法。
実施形態20 前記ネリペピムト-Sは、アミノ酸配列KIFGSLAFL(配列番号1)からなるHER2/neuペプチドを含み、前記変異体は、配列番号1の4位にアルファ-アミノ酪酸、ノルバリン又はノルロイシン、配列番号1の7位にアルファ-アミノ酪酸、ノルバリン又はノルロイシン、あるいは、配列番号1の8位にイソフェニルアラニンを有する、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態21 前記ネリペピムト-Sの変異体が投与され、変異体は、
KIFAbuSLAFL(配列番号:2)、
KIFNvaSLAFL(配列番号:3)、
KIFNleSLAFL(配列番号4)、
KIFGSLAbuFL(配列番号:5)、
KIFGSLNvaFL(配列番号:6)、
KIFGSLNleFL(配列番号:7)、及び
KIFGSLAイソFL(配列番号:8)の中から選択される、実施形態20に記載の方法。
実施形態22 前記トラスツズマブ又はその誘導体、及びネリペピムト-S又はその変異体の投与前、投与中、又は投与後に、追加の治療薬を前記対象に投与することをさらに含む、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態23 前記追加の治療剤は、免疫療法薬である、実施形態22に記載の方法。
実施形態24 前記免疫療法薬は、免疫チェックポイント阻害剤を含む、実施形態23に記載の方法。
実施形態25 前記投与は、腫瘍サイズを減少させ、及び/又は個体の無病生存(無再発生存)を増加させる、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態26 トラスツズマブ又はその誘導体、及び前記ネリペピムト-S又はその変異体の投与は、前記個体に対して相乗効果を有する、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態27 前記方法は、トラスツズマブ又はその誘導体、及びネリペピムト-S又はその変異体の投与前、投与中、又は投与後に、追加の治療薬を個体に投与することをさらに含む、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態28 前記追加の治療剤は、免疫療法薬である、実施形態27に記載の方法。
実施形態29 前記免疫療法薬は、免疫チェックポイント阻害剤を含む、実施形態28に記載の方法。
実施形態30 前記個体は、前記TNBCに対する治療(例えば、化学療法、手術原発性腫瘍摘出、放射線療法、又は上記のうちの2つ以上の組み合わせ)を受けた後に、前記投与の時点で臨床的に無病であり、前記方法は、前記個体における前記TNBCの再発を遅延又は防止する、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態31 トラスツズマブ又はその誘導体、及び前記ネリペピムト-S又はその変異体の投与は、前記個体に対して相乗効果を有する、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態32 有効量のトラスツズマブ及び有効量のネリペピムト-Sが前記個体に投与される、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態33 低レベルのHER2/neuを発現するトリプルネガティブ乳癌を有する個体において、HER2/neuに対する免疫応答を誘導する方法であって、(a)有効量のトラスツズマブ又はその誘導体、及び(b)有効量のネリペピムト-S又はその変異体を個体に投与することを含む、方法。
実施形態34 前記トラスツズマブ又はその誘導体、及び前記ネリペピムト-S又はその変異体を間隔をあけて投与し、前記ネリペピムト-S又はその変異体の投与は、前記トラスツズマブ又はその誘導体の投与の開始後に開始される、実施形態33に記載の方法。
実施形態35 前記方法は、ネリペピムト-S又は変異体なしで、前記トラスツズマブ又は誘導体の用量の定期的投与を含む準備相の開始、続いて、前記トラスツズマブ又は誘導体、及びネリペピムト-S又は変異体の両方の用量の定期的投与を含む組み合わせ相を含む、実施形態33又は34に記載の方法。
実施形態36 前記準備相は、前記ネリペピムト-S又はその変異体の前記投与後の前記個体の乳癌細胞上のHER2抗原の主要組織適合性複合体タイプI媒介提示を増加させるのに十分なトラスツズマブ又はその誘導体の投与の頻度及び期間を含む、実施形態35に記載の方法。
実施形態37 前記ネリペピムト-S又は変異体の投与は、トラスツズマブ又はその誘導体の第3、第4、又は第5の投与の完了後に開始される、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態38 前記トラスツズマブ又はその誘導体は、8mg/kgの初期負荷用量及び3週間ごと(q3wk)の6mg/kgの維持用量で投与され、1,000mcgの用量のネリペピムト-S又は変異体が投与される、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態39 前記TNBCは、免疫組織化学(IHC)による1+又は2+のHER2発現を有する、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態40 前記個体は、HLA-A2陽性、HLA-A3陽性、HLA-A24陽性、又はHLA-A26陽性である、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態41 前記個体は、HLA-A24陽性である、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態42 前記個体は、前記TNBCに対する標準的な治療療法(例えば、手術原発性腫瘍摘出、化学療法、放射線療法、又は上記のうちの2つ以上の組み合わせ)を受けた後に、前記投与の時点で臨床的に無病である、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態43 トラスツズマブ又はその誘導体の投与は、標準的なケア療法の完了後3週間から12週間の間に開始される、実施形態42に記載の方法。
実施形態44 前記TNBCは、前記投与の時点でリンパ節転移陰性(例えば、AJCC N0又はN0(i+))である、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態45 前記トラスツズマブ又はその誘導体は、静脈内に投与される、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態46 前記ネリペピムト-S又はその変異体は、皮内投与される、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態47 免疫学的アジュバントを投与することをさらに含む、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態48 前記免疫アジュバントは、ネリペピムト-S又はその変異体と共に、同一又は別個の処方で投与される、実施形態47に記載の方法。
実施形態49 前記免疫アジュバントは、皮内投与される、実施形態47又は48に記載の方法。
実施形態50 前記免疫アジュバントは、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、実施形態47~49のいずれか一つに記載の方法。
実施形態51 250mcgのGM-CSFの用量が、1日当たり投与される、実施形態49に記載の方法。
実施形態52 前記免疫アジュバントは、3週間(q3wk)ごとに投与される、実施形態14~16のいずれか一つに記載の方法。
実施形態53 1,000mcgの前記ネリペピムト-S又はその変異体及び250mcgの前記GM-CSFは、トラスツズマブ又はその誘導体の注入の完了後30~120分後に、3週間ごとに皮内投与される、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態54 前記ネリペピムト-Sは、アミノ酸配列KIFGSLAFL(配列番号1)からなるHER2/neuペプチドを含み、前記変異体は、配列番号1の4位にアルファ-アミノ酪酸、ノルバリン又はノルロイシン、配列番号1の7位にアルファ-アミノ酪酸、ノルバリン又はノルロイシン、あるいは、配列番号1の8位にイソフェニルアラニンを有する、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態55 前記ネリペピムト-Sの変異体が投与され、変異体は、
KIFAbuSLAFL(配列番号:2)、
KIFNvaSLAFL(配列番号:3)、
KIFNleSLAFL(配列番号:4)、
KIFGSLAbuFL(配列番号:5)、
KIFGSLNvaFL(配列番号:6)、
KIFGSLNleFL(配列番号:7)、及び
KIFGSLAイソFL(配列番号:8)の中から選択される、実施形態54に記載の方法。
実施形態56 ネリペピムト-S又はその変異体の投与は、一次ワクチン接種を表し、前記一次ワクチン接種の完了後に、1、2、3、4、又はそれ以上の追加用量のネリペピムト-S又はその変異体を、30ヶ月以上、任意で免疫学的アジュバント(例えば、GM-CSF)と共に、前記一次ワクチン接種よりも少ない周期で投与することをさらに含む、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態57 2つ以上の追加用量のネリペピムト-S又はその変異体が投与され、1つの追加用量が6ヶ月ごとに投与される、実施形態56に記載の方法。
実施形態58 前記方法がトラスツズマブ又はその誘導体、及びネリペピムト-S又はその変異体の投与前、投与中、又は投与後に、追加の治療薬を個体に投与することをさらに含む、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態59 前記追加の治療剤は、免疫療法薬である、実施形態58に記載の方法。
実施形態60 前記免疫療法薬は、免疫チェックポイント阻害剤を含む、実施形態59に記載の方法。
実施形態61 前記投与は、腫瘍サイズを減少させ、及び/又は個体の無病生存(無再発生存)を増加させる、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態62 前記個体は、前記TNBCに対する治療(例えば、化学療法、手術原発性腫瘍摘出、放射線療法、又は上記のうちの2つ以上の組み合わせ)を受けた後に、前記投与の時点で臨床的に無病であり、前記方法は、前記個体における前記TNBCの再発を遅延又は防止する、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態63 トラスツズマブ又はその誘導体、及び前記ネリペピムト-S又はその変異体の投与は、前記個体に対して相乗効果を有する、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態64 有効量のトラスツズマブ及び有効量のネリペピムト-Sが前記個体に投与される、先行するいずれかの実施形態に記載の方法。
実施形態65 個体におけるトリプルネガティブ乳癌を治療するための、トラスツズマブ又はその誘導体と併用するための、ネリペピムト-S又はその変異体を含む薬剤。
実施形態66 免疫アジュバントをさらに含む、実施形態65に記載の薬剤。
実施形態67 前記免疫アジュバントは、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、実施形態65に記載の薬剤。
実施形態68 個体におけるトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を治療するための、ネリペピムト-S又はその変異体と併用するための、トラスツズマブ又はその誘導体を含む薬剤。
実施形態69 第1の容器、第2の容器及び添付文書を含むキットであって、前記第1の容器は、トラスツズマブ又はその誘導体を含む薬剤の少なくとも1回用量を含み、前記第2の容器は、ネリペピムト-S又はその変異体を含む薬剤の少なくとも1回用量を含み、前記添付文書は、前記薬剤を使用してトリプルネガティブ乳癌の個体を治療するための説明書を含む、キット。
実施形態70 免疫アジュバントをさらに含み、前記免疫アジュバントは、ネリペピムト-S又はその変異体と共に、第3の容器内にあるか、又は第2の容器内にある、実施形態69に記載のキット。
実施形態71 免疫アジュバントは、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、実施形態69又は70に記載のキット。
実施形態72 前記キットは、トラスツズマブ及びネリペピムト-Sを含む、実施形態69又は70に記載のキット。
【0147】
本明細書に記述の実施例及び態様は説明する目的に限られ、それに照らした様々な改変又は変更が、当業者に提案されるがそれらも本出願の趣旨及び範囲ならびに添付の請求の範囲の範囲に含まれると理解すべきである。さらに、本明細書に開示された任意の発明又はその実施形態の任意の要素又は制限は本明細書に開示された任意の及び/又は全ての他の要素又は制限(個体に又は任意の組み合わせで)又は任意の他の発明又はその実施形態と組み合わせることができ、全てのそのような組み合わせは、それに限定されることなく本発明の範囲で想定される。
【配列表フリーテキスト】
【0148】
配列の簡単な説明
配列番号1は、ネリペピムト-Sペプチドである。:KIFGSLAFL
配列番号2は、4位にアルファ-アミノ酪酸を有するネリポエピムト-Sペプチドの変異体である。:KIFAbuSLAFL
配列番号3は、4位にノルバリンを有する、ネリペチム-Sペプチドの変異体である。:KIFNvaSLAFL
配列番号4は、4位にノルロイシンを有するネリポエピムト-Sペプチドの変異体である。:KIFNvaSLAFL
配列番号5は、7位にアルファ-アミノ酪酸を有するネリペピムト-Sペプチドの変異体である。:KIFGSLAbuFL
配列番号6は、7位にノルバリンを有するネリペピムト-Sペプチドの変異体である。:KIFGSLNvaFL
配列番号7は、7位にノルロイシンを有するネリペピムト-Sペプチドの変異体である。:KIFGSLNleFL
配列番号8は、8位にイソフェニルアラニンを有するネリペピムト-Sペプチドの変異体である。KIFGSLAイソFL
配列番号9は、トラスツズマブ軽鎖(抗HER2軽鎖(1及び2))のアミノ酸配列である。
配列番号10は、アミノ酸配列トランスツズマブ重鎖(抗HER2重鎖(1及び2))である。
【配列表】
【国際調査報告】