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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(54)【発明の名称】オレフィン重合用触媒の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20220126BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
C08F4/6592
C08F10/00 510
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531640
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(85)【翻訳文提出日】2021-06-02
(86)【国際出願番号】 KR2019016300
(87)【国際公開番号】W WO2020116842
(87)【国際公開日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】10-2018-0153342
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン テウク
(72)【発明者】
【氏名】バク ヘラン
(72)【発明者】
【氏名】イム ソンゼ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ウィガプ
(72)【発明者】
【氏名】チョエ スンイル
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA02
4J128AB00
4J128AC28
4J128AD05
4J128AD06
4J128AD08
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC15B
4J128BC25A
4J128CA28A
4J128CB55A
4J128DB02A
4J128DB08A
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB09
4J128EC02
4J128FA04
4J128FA09
4J128GA26
4J128GB07
(57)【要約】
本発明は、オレフィン重合用触媒の調製方法に関するものである。具体的に、本発明は、ゲルの形成が抑制されたポリオレフィンを調製し得るメタロセン担持触媒の調製方法に関するものである。本発明の具体例によるメタロセン担持触媒の調製方法は、遷移金属化合物の担持後にステアリン酸金属で処理して、巨大分子であるポリオレフィンの生成を抑制することにより、ゲルの生成が最小化したポリオレフィンを調製することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)1つ以上の遷移金属化合物に助触媒化合物を添加して、遷移金属化合物を活性化させる段階と、
(2)活性化された遷移金属化合物を担体に担持させる段階と、
(3)担持触媒をステアリン酸金属で処理する段階とを含み、
ステアリン酸金属の含有量が担持触媒の総重量を基準に0.01重量%~5.0重量%である、オレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法。
【請求項2】
前記遷移金属化合物が下記化学式1で表される第1遷移金属化合物と、下記化学式2で表される第2遷移金属化合物との混合物である、請求項1に記載のオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法:
【化8】
前記化学式1および2において、M1とM2はそれぞれ独立して元素周期表の第4族遷移金属であり、
~Xはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~40のアルキルアリール基、炭素数7~40のアリールアルキル基、炭素数1~20のアルキルアミド基、炭素数6~20のアリールアミド基、または炭素数1~20のアルキリデン基であり、
~R10はそれぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数7~40のアルキルアリール基、または置換または非置換の炭素数7~40のアリールアルキル基であり、互いに結合され環を形成することができ、
~Rが結合しているシクロペンタジエンと、R~R10が結合しているシクロペンタジエンとは、互いに同じ構造か異なる構造でよく、各シクロペンタジエンは結合していないため、非架橋構造の化合物を形成し、
11~R16はそれぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数7~40のアルキルアリール基、または置換または非置換の炭素数7~40のアリールアルキル基であり、互いに結合され環を形成することができ、
17とR18はそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数7~40のアルキルアリール基、または置換または非置換の炭素数7~40のアリールアルキル基であり、互いに結合され環を形成することができ、
19~R22はそれぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数7~40のアルキルアリール基、または置換または非置換の炭素数7~40のアリールアルキル基であり、互いに結合され環を形成することができ、
前記R11~R16と結合しているインデンと、R19~R22が結合しているシクロペンタジエンとは互いに異なる構造であり、シリコン(Si)によりインデンとシクロペンタジエンとが結合しているので、架橋構造を形成する。
【請求項3】
前記第1遷移金属化合物が、[インデニル(シクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、[4-メチルインデニル(シクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、[インデニル(テトラメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、[2-メチルインデニル(テトラメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、[2-メチルベンゾインデニル(シクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、および[4,5-ベンゾインデニル(テトラメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリドからなる群より選択される少なくとも1つを含み、
前記第2遷移金属化合物が、rac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル{テトラメチルシクロペンタジエニル}{2-メチル-4-(4-t-ブチルフェニル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、およびジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項2に記載のオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法。
【請求項4】
前記第1遷移金属化合物が、下記化学式1aで表される[インデニル(シクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリドであり、前記第2遷移金属化合物が、下記化学式2aで表されるrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドである、請求項2に記載のオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法:
【化9】
前記化学式2aにおいて、Meはメチル基であり、Phはフェニル基である。
【請求項5】
前記第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物とが20:1~1:20の重量比で含まれる、請求項2に記載のオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法。
【請求項6】
前記助触媒化合物が、下記化学式3で表される化合物、下記化学式4で表される化合物、および下記化学式5で表される化合物からなる群より選択される1つ以上である、請求項1に記載のオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法:
【化10】
[化学式5]
[L-H][Z(A)または[L][Z(A)
前記化学式3において、nは2以上の整数であり、Rはハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、またはハロゲンで置換された炭素数1~20の炭化水素基であり、
前記化学式4において、Dはアルミニウム(Al)またはボロン(B)であり、R、RおよびRはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲンで置換された炭素数1~20の炭化水素基、または炭素数1~20のアルコキシ基であり、
前記化学式5において、Lは中性または陽イオン性ルイス塩基であり、[L-H]および[L]はブレンステッド酸であり、Zは第13族元素であり、Aはそれぞれ独立して置換または非置換の炭素数6~20のアリール基か、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基である。
【請求項7】
前記化学式3で表される化合物が、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、およびブチルアルミノキサンからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項6に記載のオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法。
【請求項8】
前記化学式4で表される化合物が、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、およびトリブチルボロンからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項6に記載のオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法。
【請求項9】
前記化学式5で表される化合物が、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(o、p-ジメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o、p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(o、p-ジメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラペンタフルオロフェニルボレートからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項6に記載のオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法。
【請求項10】
前記担体が、シリカ、アルミナ、および酸化マグネシウム(マグネシア)からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法。
【請求項11】
前記第1遷移金属化合物、前記第2遷移金属化合物、前記助触媒化合物が、単一種の担体に担持される、請求項10に記載のオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法。
【請求項12】
前記第1遷移金属化合物、前記第2遷移金属化合物、前記助触媒化合物が、シリカに担持される、請求項11に記載のオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法。
【請求項13】
前記担体に担持される前記第1遷移金属化合物と前記第2遷移金属化合物との総量が、担持触媒の総重量を基準に0.5重量%~3.0重量%であり、前記担体に担持される前記助触媒化合物の量が担持触媒の総重量を基準に20重量%~30重量%である、請求項11に記載のオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法。
【請求項14】
前記段階(3)において、前記ステアリン酸金属を、ヘキサン、ペンタン、トルエン、ベンゼン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、および酢酸エチルからなる群より選択される少なくとも1つの有機溶媒に、0.01重量%~5.0重量%の含有量で溶解または懸濁させた後、担持触媒を処理する、請求項1に記載のオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法。
【請求項15】
前記ステアリン酸金属が、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項14に記載のオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合用触媒の調製方法に関するものである。具体的に、本発明は、遷移金属化合物の担持後にステアリン酸金属で処理することにより、ゲルの形成が抑制されたポリオレフィンを調製し得るメタロセン担持触媒の調製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィンを重合するために用いられる触媒の1つであるメタロセン触媒は、遷移金属または遷移金属ハロゲン化合物に、シクロペンタジエニル(cyclopentadienyl)、インデニル(indenyl)、シクロヘプタジエニル(cycloheptadienyl)などのリガンドが配位結合された化合物としてサンドイッチ構造を基本的な形態として有する。
【0003】
オレフィンを重合するために用いられる別の触媒であるチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒が、活性点である金属成分が不活性の固体表面に分散され、活性点の性質が均一でないのに対し、メタロセン触媒は、一定の構造を有する1つの化合物であるため、すべての活性点が同一の重合特性を有する単一活性点触媒(single-site catalyst)として知られている。このようなメタロセン触媒で重合された高分子は、分子量の分布が狭く、共単量体の分布が均一な特徴を示す。
【0004】
メタロセン触媒により調製されるポリエチレンは、一定の長さの短鎖分枝(short chain branch、SCB)を有し、一般的に長鎖分枝(long chain branch、LCB)を有しない。ところで、触媒の気孔(pore)内の活性点において重合体が生成される際、気孔の形状、構造、および触媒の種類によっては、ポリエチレンが長鎖分枝を有したり巨大分子(macromolecule)が生成されたりもする。
【0005】
一方、ポリオレフィン樹脂を溶融させて加工するときに溶けきれない成分が存在し得るが、このような不溶性の塊をゲル(gel)と言う。このようなゲルがポリオレフィン樹脂内に存在すると、この樹脂から製造されるフィルムは、透明性や製品外観の品質が低下し得るため、望ましくない。
【0006】
通常、ゲルは触媒に起因して生成され得る。また、樹脂の生産および加工過程において、異物によってゲル(異物ゲル)が生成され得、不完全な押出や樹脂間の分子量/密度などの差、樹脂の分散不足などによりゲル(非分散または不均一ゲル)が生成されることもある。あるいは、押出機の中で樹脂が長時間滞留して酸化されることによりゲル(酸化または炭化ゲル)が生成されることもあり、物理化学的架橋反応により反応器や押出機内で巨大分子が生成されゲル(架橋ゲル)が生成されることもある。
【0007】
前述のように、触媒によっては気孔内の活性点で長鎖分枝を有する巨大分子が生成され、これが押出を経る際に物理的な架橋が起こってゲルを生成する原因となることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、遷移金属化合物の担持後にステアリン酸金属で処理することにより、ゲルの生成が抑制されたポリオレフィンを調製し得るメタロセン担持触媒の調製方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するための本発明の一具体例により、(1)1つ以上の遷移金属化合物に助触媒化合物を添加して、遷移金属化合物を活性化させる段階と、(2)活性化された遷移金属化合物を担体に担持させる段階と、(3)担持触媒をステアリン酸金属で処理する段階とを含み、ステアリン酸金属の含有量が担持触媒の総重量を基準に、0.01重量%~5.0重量%である、オレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法が提供される。
【0010】
ここで、遷移金属化合物が、下記化学式1で表される第1遷移金属化合物と、下記化学式2で表される第2遷移金属化合物との混合物であり得る。
【0011】
【化1】
【0012】
前記化学式1と2において、M1とM2はそれぞれ独立して、元素周期表の第4族遷移金属である。
【0013】
前記X~Xはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~40のアルキルアリール基、炭素数7~40のアリールアルキル基、炭素数1~20のアルキルアミド基、炭素数6~20のアリールアミド基、または炭素数1~20のアルキリデン基である。
【0014】
前記R~R10はそれぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数7~40のアルキルアリール基、または置換または非置換の炭素数7~40のアリールアルキル基であり、互いに結合され環を形成し得る。
【0015】
前記R~Rが結合しているシクロペンタジエンと、前記R~R10が結合しているシクロペンタジエンとは、互いに同じ構造か異なる構造でよく、各シクロペンタジエンは結合していないため、非架橋構造の化合物を形成する。
【0016】
前記R11~R16はそれぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数7~40のアルキルアリール基、または置換または非置換の炭素数7~40のアリールアルキル基であり、互いに結合され環を形成し得る。
【0017】
前記R17とR18はそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数7~40のアルキルアリール基、または置換または非置換の炭素数7~40のアリールアルキル基であり、互いに結合され環を形成し得る。
【0018】
前記R19~R22はそれぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数7~40のアルキルアリール基、または置換または非置換の炭素数7~40のアリールアルキル基であり、互いに結合され環を形成し得る。
【0019】
前記R11~R16と結合しているインデンと、前記R19~R22が結合しているシクロペンタジエンとは互いに異なる構造であり、シリコン(Si)によりインデンとシクロペンタジエンとが結合しているので、架橋構造を形成する。
【0020】
より好ましくは、前記第1遷移金属化合物が、[インデニル(シクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、[4-メチルインデニル(シクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、[インデニル(テトラメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、[2-メチルインデニル(テトラメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、[2-メチルベンゾインデニル(シクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、および[4,5-ベンゾインデニル(テトラメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリドからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0021】
前記第2遷移金属化合物が、rac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル{テトラメチルシクロペンタジエニル}{2-メチル-4-(4-t-ブチルフェニル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、およびジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0022】
最も好ましくは、前記第1遷移金属化合物が、下記化学式1aで表される[インデニル(シクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリドであり、前記第2遷移金属化合物が、下記化学式2aで表されるrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドであり得る。
【0023】
【化2】
【0024】
前記化学式2aにおいて、Meはメチル基であり、Phはフェニル基である。
【0025】
この際、第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物とが20:1~1:20の重量比で含まれ得る。
【0026】
好ましくは、助触媒化合物が、下記化学式3で表される化合物、化学式4で表される化合物、および化学式5で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。
【0027】
【化3】
[化学式5]
[L-H][Z(A)または[L][Z(A)
【0028】
前記化学式3において、nは2以上の整数であり、Rはハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、またはハロゲンで置換された炭素数1~20の炭化水素基である。
【0029】
前記化学式4において、Dはアルミニウム(Al)またはボロン(B)であり、R、RおよびRはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲンで置換された炭素数1~20の炭化水素基、または炭素数1~20のアルコキシ基である。
【0030】
前記化学式5において、Lは中性または陽イオン性ルイス塩基であり、[L-H]および[L]はブレンステッド酸であり、Zは第13族元素であり、Aはそれぞれ独立して置換または非置換の炭素数6~20のアリール基か、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基である。
【0031】
具体的に、前記化学式3で表される化合物は、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、およびブチルアルミノキサンからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0032】
また、前記化学式4で表される化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、およびトリブチルボロンからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0033】
また、前記化学式5で表される化合物は、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(o、p-ジメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o、p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(o、p-ジメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラペンタフルオロフェニルボレートからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0034】
好ましくは、前記担体がシリカ、アルミナ、および酸化マグネシウム(マグネシア)からなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。
【0035】
より好ましくは、前記第1遷移金属化合物、第2遷移金属化合物、助触媒化合物が、単一種の担体に担持され得る。具体的に、第1遷移金属化合物、第2遷移金属化合物、助触媒化合物がシリカに担持され得る。
【0036】
この際、前記担体に担持される第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物との総量が、担持触媒の総重量を基準に0.5重量%~3.0重量%であり、担体に担持される助触媒化合物の量が、担持触媒の総重量を基準に20重量%~30重量%であり得る。
【0037】
好ましくは、前記ステアリン酸金属を、ヘキサン、ペンタン、トルエン、ベンゼン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、および酢酸エチルからなる群より選択される少なくとも1つの有機溶媒に0.01重量%~5.0重量%の含有量で溶解または懸濁させた後、担持触媒を処理し得る。
【0038】
この際、前記ステアリン酸金属が、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。
【発明の効果】
【0039】
本発明の具体例によるメタロセン担持触媒の調製方法は、遷移金属化合物の担持後にステアリン酸金属で処理して、巨大分子であるポリオレフィンの生成を抑制することにより、ゲルの生成が最小化したポリオレフィンを調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明の一具体例によるオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法は、(1)1つ以上の遷移金属化合物に助触媒化合物を添加して、遷移金属化合物を活性化させる段階と、(2)活性化された遷移金属化合物を担体に担持させる段階と、(3)担持触媒をステアリン酸金属で処理する段階とを含み、ステアリン酸金属の含有量が担持触媒の総重量を基準に0.01重量%~5.0重量%である。
【0041】
[段階(1)]
前記段階(1)において、1つ以上の遷移金属化合物に助触媒化合物を添加して、遷移金属化合物を活性化させる。
【0042】
ここで、遷移金属化合物は、下記化学式1で表される第1遷移金属化合物と、下記化学式2で表される第2遷移金属化合物とのうち少なくとも1つを含み得る。好ましくは、遷移金属化合物が下記化学式1で表される第1遷移金属化合物と、下記化学式2で表される第2遷移金属化合物との混合物であり得る。
【0043】
【化4】
【0044】
前記化学式1と2において、M1とM2はそれぞれ独立して、元素周期表の第4族遷移金属である。具体的に、M1とM2はそれぞれ独立して、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)であり、より具体的にジルコニウム(Zr)であり得る。
【0045】
~Xはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~40のアルキルアリール基、炭素数7~40のアリールアルキル基、炭素数1~20のアルキルアミド基、炭素数6~20のアリールアミド基、または炭素数1~20のアルキリデン基である。具体的に、X~Xはそれぞれ独立してハロゲンであり、より具体的に、塩素(Cl)であり得る。
【0046】
~R10はそれぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数7~40のアルキルアリール基、または置換または非置換の炭素数7~40のアリールアルキル基であり、互いに結合され環を形成し得る。
【0047】
また、R~Rが結合しているシクロペンタジエンと、R~R10が結合しているシクロペンタジエンとは、互いに同じ構造か異なる構造でよく、各シクロペンタジエンは結合していないため、非架橋構造の化合物を形成し得る。
【0048】
11~R16はそれぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数7~40のアルキルアリール基、または置換または非置換の炭素数7~40のアリールアルキル基であり、互いに結合され環を形成し得る。
【0049】
17とR18はそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数7~40のアルキルアリール基、または置換または非置換の炭素数7~40のアリールアルキル基であり、互いに結合され環を形成し得る。
【0050】
19~R22はそれぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数7~40のアルキルアリール基、または置換または非置換の炭素数7~40のアリールアルキル基であり、互いに結合され環を形成し得る。
【0051】
また、R11~R16と結合しているインデンと、R19~R22が結合しているシクロペンタジエンとは互いに異なる構造で、シリコン(Si)によりインデンとシクロペンタジエンが結合しているので、架橋構造を形成し得る。
【0052】
好ましくは、第1遷移金属化合物が、[インデニル(シクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、[4-メチルインデニル(シクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、[インデニル(テトラメチルシクロペンタジにニール)]ジルコニウムジクロリド、[2-メチルインデニル(テトラメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、[2-メチルベンゾインデニル(シクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、および[4,5-ベンゾインデニル(テトラメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリドからなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。
【0053】
また、第2遷移金属化合物が、rac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル{テトラメチルシクロペンタジエニル}{2-メチル-4-(4-t-ブチルフェニル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、およびジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドからなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。
【0054】
より好ましくは、第1遷移金属化合物が下記化学式1aで表される[インデニル(シクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリドであり、第2遷移金属化合物が下記化学式2aで表されるrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドであり得る。
【0055】
【化5】
【0056】
前記化学式2aにおいて、Meはメチル基であり、Phはフェニル基である。
【0057】
本発明の具体例によるオレフィン重合用触媒は、前記第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物とを20:1~1:20の重量比で含み得る。好ましくは、オレフィン重合用触媒が第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物とを、10:1~1:10の重量比で含み得る。より好ましくは、オレフィン重合用触媒が第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物とを6:4~4:6の重量比で含み得る。第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物との含有量比が前記範囲内であると、適切な担持触媒活性を示し、触媒の活性維持および経済性の面から有利であり得る。さらに、前記範囲を満足するオレフィン重合用触媒の存在下で調製されたオレフィン系重合体は優れた加工性を示し、これにより製造されるフィルムは、優れた機械的特性、光学的特性を示し得る。
【0058】
一方、前記段階(1)における助触媒化合物は、下記化学式3で表される化合物、化学式4で表される化合物、および化学式5で表される化合物のうち1つ以上を含み得る。
【0059】
【化6】
【0060】
前記化学式3において、nは2以上の整数であり、Rはハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素、またはハロゲンで置換された炭素数1~20の炭化水素であり得る。具体的に、Rは、メチル、エチル、n-ブチル、またはイソブチルであり得る。
【0061】
【化7】
【0062】
前記化学式4において、Dはアルミニウム(Al)またはボロン(B)であり、R、RおよびRはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲンで置換された炭素数1~20の炭化水素基、または炭素数1~20のアルコキシ基である。具体的に、Dがアルミニウム(Al)のとき、R、RおよびRはそれぞれ独立してメチルまたはイソブチルであり、Dがボロン(B)のとき、R、RおよびRはそれぞれペンタフルオロフェニルであり得る。
【0063】
[化学式5]
[L-H][Z(A)または[L][Z(A)
【0064】
前記化学式5において、Lは中性または陽イオン性ルイス塩基であり、[L-H]および[L]はブレンステッド酸であり、Zは第13族元素であり、Aはそれぞれ独立して置換または非置換の炭素数6~20のアリール基か、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基である。具体的に、[L-H]はジメチルアニリニウム陽イオンであり、[Z(A)は[B(Cであり、[L]は[(CC]であり得る。
【0065】
前記化学式3で表される化合物の例としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン等が挙げられ、メチルアルミノキサンが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0066】
前記化学式4で表される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、およびトリブチルボロン等が挙げられ、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0067】
前記化学式5で表される化合物の例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(o、p-ジメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o、p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(o、p-ジメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート等が挙げられる。
【0068】
段階(1)において、1つ以上の遷移金属化合物に助触媒化合物を添加する過程は、溶媒の存在下で行われ得る。この際、溶媒はヘキサン、ペンタンのような脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)のようなエーテル系溶媒、アセトン、酢酸エチルなどと、ほとんどの有機溶媒であってよく、好ましくはトルエンまたはヘキサンであり得るが、これらに特に限定されない。
【0069】
段階(1)において、1つ以上の遷移金属化合物に助触媒化合物を添加する過程は、0℃~100℃の温度、好ましくは10℃~30℃の温度にて行われ得る。
【0070】
また、段階(1)において、1つ以上の遷移金属化合物に助触媒化合物を添加した後、5分~24時間、好ましくは30分~3時間これを十分に撹拌することが好ましい。
【0071】
[段階(2)]
前記段階(2)において、活性化した遷移金属化合物を担体に担持させる。
【0072】
なお、担体は、表面にヒドロキシ基を含有する物質を含んでも良く、好ましくは、乾燥され表面に水分が除去された、反応性の大きいヒドロキシ基とシロキサン基とを有する物質が使用され得る。例えば、担体は、シリカ、アルミナ、および酸化マグネシウム(マグネシア)からなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。具体的に、高温で乾燥されたシリカ、シリカ-アルミナ、およびシリカ-マグネシア等が担体として用いられ得、これらは通常、NaO、KCO、BaSO、およびMg(NO等の酸化物、炭酸塩、硫酸塩、および硝酸塩成分を含有し得る。また、これらは、炭素、ゼオライト、塩化マグネシウム等をも含み得る。ただし、担体はこれらに限定されるものではなく、第1および第2遷移金属化合物と助触媒化合物とを担持し得るものであれば特に限定されない。
【0073】
担体は、平均粒度が10μm~250μmであり、好ましくは、平均粒度が10μm~150μmであり、より好ましくは20μm~100μmであり得る。
【0074】
担体の微細気孔の体積は0.1cc/g~10cc/gであり、好ましくは0.5cc/g~5cc/gであり、より好ましくは1.0cc/g~3.0cc/gであり得る。
【0075】
担体の比表面積は、1m/g~1000m/gであり、好ましくは100m/g~800m/gであり、より好ましくは200m/g~600m/gであり得る。
【0076】
好適な一実施例において、担体がシリカである場合、シリカの乾燥温度は200℃~900℃であり得る。乾燥温度は、好ましくは300℃~800℃、より好ましくは400℃~700℃であり得る。乾燥温度が200℃未満の場合には、水分が多すぎて表面の水分と助触媒が反応することとなり、900℃を超えると、担体の構造が崩壊され得る。
【0077】
乾燥されたシリカ内のヒドロキシ基の濃度は0.1mmol/g~5mmol/gであり、好ましくは0.7mmol/g~4mmol/gであり、より好ましくは1.0mmol/g~2mmol/gであり得る。ヒドロキシ基の濃度が0.1mmol/g未満であると、助触媒の担持量が低くなり、5mmol/gを超えると、触媒成分が不活性化する問題が発生し得る。
【0078】
段階(2)において、担体に遷移金属化合物と助触媒化合物との混合物を添加する過程は、溶媒の存在下で行われ得る。この際、溶媒は、前記段階(1)で説明したものと実質的に同一である。
【0079】
段階(2)において、担体に遷移金属化合物と助触媒化合物との混合物を添加する過程は、0℃~100℃の温度、好ましくは10℃~50℃の温度で行われ得る。
【0080】
また、段階(2)において、担体に遷移金属化合物と助触媒化合物との混合物を添加した後、5分~24時間、好ましくは30分~3時間これを十分に撹拌することが好ましい。
【0081】
好ましくは、第1遷移金属化合物、第2遷移金属化合物および助触媒化合物が、単一種の担体に担持され得る。具体的に、第1遷移金属化合物、第2遷移金属化合物、助触媒化合物がシリカに担持され得る。
【0082】
この際、担体に担持される第1遷移金属化合物と第2遷移金属化合物との総量が、担持触媒の総重量を基準に0.5重量%~3.0重量%であり、担体に担持される助触媒化合物の量が、担持触媒の総重量を基準に20重量%~30重量%であり得る。
【0083】
[段階(3)]
前記段階(3)において、担持触媒をステアリン酸金属で処理する。
【0084】
この際、ステアリン酸金属の含有量は、担持触媒の総重量を基準に0.01重量%~5.0重量%であり、好ましくは、0.1重量%~4.0重量%、0.5重量%~3.0重量%、0.5重量%~2.5重量%、または1.0重量%~2.0重量である。
【0085】
好ましくは、ステアリン酸金属が、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つを含み得るが、特にこれらに限定されるものではない。より好ましくは、ステアリン酸金属がステアリン酸アルミニウムである。
【0086】
ステアリン酸金属は、有機溶媒などに均一に溶解または懸濁された状態で担持触媒に添加され得る。この際、溶媒としては、ヘキサン、ペンタンのような脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)のようなエーテル系溶媒、アセトン、酢酸エチルなどと、ほとんどの有機溶媒であってよく、好ましくはトルエンまたはヘキサンであり得るが、特にこれらに限定されない。
【0087】
有機溶媒に溶解または懸濁されるステアリン酸金属の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.01重量%~5.0重量%、より好ましくは0.1重量%~4.0重量%であり得る。
【0088】
好適な一実施例において、ステアリン酸金属を0.01重量%~5.0重量%の含有量で有機溶媒に溶解または懸濁させた後、カニューレを用いて反応器に投入し、窒素雰囲気下で60℃にて1時間撹拌する。
【0089】
前術のステアリン酸金属を1種以上含む本発明のメタロセン触媒システムは、気相重合またはスラリー重合によるポリオレフィン調製の際、重合体粒子間の摩擦または重合体粒子と反応器内壁との摩擦によって発生する静電気を最小限に抑えながらも、触媒の固有活性を安定して維持することができる。これは、メタロセン触媒システムが、反応器内に存在する高分子の粒子サイズとバルク密度とを、摩擦による静電気発生が最小化となり得る範囲で形成するからであるものと推定される。
【0090】
[段階(4)]
本発明の具体例によるオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法は、(4)ステアリン酸金属で処理された担持触媒を溶媒で洗浄し、乾燥させる段階をさらに含み得る。
【0091】
具体的に、ステアリン酸金属処理が完了した後、3分~3時間静置させ、担持触媒を沈殿させる。次いで、上澄み液を除去して担持触媒を分離した後、溶媒で洗浄し、室温~80℃の温度にて6時間~48時間乾燥させて担持触媒が得られる。なお、溶媒は、前記段階(1)で説明したものと実質的に同一である。
【0092】
一方、本発明の具体例におけるオレフィン重合用メタロセン担持触媒の調製方法によって調製された触媒の存在下でオレフィン系単量体を重合して、オレフィン系重合体を提供し得る。
【0093】
なお、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体の単独重合体(homopolymer)、またはオレフィン系単量体と共単量体との共重合体(copolymer)であり得る。
【0094】
オレフィン系単量体は、炭素数2~20のα-オレフィン(α-olefin)、炭素数1~20のジオレフィン(diolefin)、炭素数3~20のシクロオレフィン(cycloolefin)、および炭素数3~20のシクロジオレフィン(cyclodiolefin)からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0095】
例えば、オレフィン系単量体は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、または1-ヘキサデセン等であり得、オレフィン系重合体は、前記例示のオレフィン系単量体を1種のみ含む単独重合体か、または2種以上を含む共重合体であり得る。
【0096】
例示的な実施例において、オレフィン系重合体は、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンが共重合された共重合体でもよく、エチレンと1-ヘキセンとが共重合された共重合体が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0097】
この場合、エチレンの含有量は55重量%~99.9重量%が好ましく、90重量%~99.9重量%がより好ましい。α-オレフィン系共単量体の含有量は0.1重量%~45重量%が好ましく、0.1重量%~10重量%がより好ましい。
【0098】
本発明の具体例によるオレフィン系重合体は、例えば、フリーラジカル(free radical)、陽イオン(cationic)、配位(coordination)、縮合(condensation)、添加(addition)などの重合反応により重合され得るが、これらに限定されるものではない。
【0099】
好ましい実施例として、オレフィン系重合体は、気相重合法、溶液重合法、またはスラリー重合法などにより調製され得る。オレフィン系重合体が溶液重合法またはスラリー重合法により調製される場合、使用され得る溶媒の例として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびこれらの異性体のような炭素数5~12の脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロベンゼンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
また、本発明の具体例により調製されたオレフィン系重合体を成形してフィルムを提供することができる。
【0101】
本発明の具体例によるフィルムの製造方法は特に制限されず、本発明が属する技術分野に公知の方法を使用し得る。例えば、本発明の具体例によるオレフィン系重合体を、インフレーションフィルム成形、押出成形、キャスティング成形などと、通常の方法により加工してフィルムを製造し得る。中でもインフレーションフィルム成形が最も好ましい。
【0102】
このように製造されたフィルムは、本発明のオレフィン系重合体を含むことにより、ゲルの生成が抑制されたものであり得る。
【0103】
具体的に、本発明の具体例によるフィルムは、気孔体積が調整されていないオレフィン重合用メタロセン担持触媒に比べ、ゲル全体の数が55%以上、70%以上、または80%以上減少したものであり得る。本発明の具体例によるフィルムは、気孔体積が調整されていないオレフィン重合用メタロセン担持触媒に比べ、ゲル全体の数が、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上減少したものであり得る。
【0104】
また、本発明の具体例によるフィルムは、気孔体積が調整されていないオレフィン重合用メタロセン担持触媒に比べ、サイズが400μm以下の微細ゲルの数が70%以上、75%以上、または85%以上の減少したものであり得る。本発明の具体例によるフィルムは、気孔体積が調整されていないオレフィン重合用メタロセン担持触媒に比べ、ゲル全体の数が、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上減少したものであり得る。
【0105】
このように、本発明の具体例によるフィルムは、ゲル全体の数だけでなく、サイズが400μm以下の微細ゲルの数が著しく減少されるので、透明性と外観に優れる。
【0106】
(実施例)
以下、実施例および比較例により、本発明をより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を例示するためのものであるのみ、本発明の範囲がこれらのみに限定されるものではない。
【0107】
(調製例1:[インデニル(シクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド(第1遷移金属化合物)の合成)
ドライボックスの中でインデン(5g、0.043mol)をヘキサン(150ml)に溶かした後十分に混ぜて、-30℃まで冷却した。その後、このヘキサン溶液に2.5Mのn-ブチルリチウム(n-BuLi)ヘキサン溶液(17ml、0.043mol)をゆっくり滴下し、常温にて12時間撹拌した。白色懸濁液をガラスフィルターでろ過して白色固体を得た後、これを十分に乾燥させ、インデンリチウム塩5.2g(収率:99%)を得た。
【0108】
グローブボックスの中で(シクロペンタジエニル)ジルコニウムトリクロリド(CpZrCl)(2.24g、8.53mmol)をエーテル(30ml)にゆっくり溶解した後、-30℃まで冷却した。このエーテル溶液に、エーテル(15ml)に溶かしたインデンリチウム塩(1.05g、8.53mmol)をゆっくり滴下した後、24時間撹拌した。
【0109】
真空減圧下で、生成済みの黄色懸濁液からエーテルを除去した後、ジクロロメタン(50ml)により抽出した。セライト(Celite)に通過させて塩化リチウム(LiCl)を除去した後乾燥させ、精製された第1メタロセン化合物として、[インデニル(シクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド2.82g(収率:97%)を得た。
【0110】
(調製例2:rac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド(第2遷移金属化合物)の合成)
[段階A:2-メチル-7-フェニル-1H-インデンの合成]
7-ブロモ-2-メチル-1H-インデン(7g、1当量)と、[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)クロリド(363mg、0.02当量)とをエーテル(100ml)に入れ、0℃にて3.0Mの臭化フェニルマグネシウムエーテル溶液(8.23g、1.05当量)を1時間添加した後、温度を徐々に上げて50℃にて12時間還流撹拌した。
【0111】
反応終了後、溶液を氷浴に浸した後、1Nの塩酸を添加してpHを4まで下げた。有機層を抽出した後、硫酸マグネシウム(MgSO)で処理して水を除去し、溶媒を乾燥した後、白色固体の2-メチル-7-フェニル-1H-インデン6.68g(収率:97%)を得た。
【0112】
[段階B:ジメチルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)シランの合成]
2-メチル-7-フェニル-1H-インデン(2.14g、1当量)をヘキサン(50ml)に入れて、1.6Mのn-ブチルリチウム(n-BuLi)ヘキサン溶液(7.8ml、1.2当量)を-30℃にてゆっくり添加した後、温度を徐々に常温まで上げて12時間撹拌した。生成された固体をろ過し、ヘキサンで洗浄した後、真空下で乾燥させた。生成された2-メチル-4フェニルインデニルリチウム(1.5g、2当量)にトルエン20ml、テトラヒドロフラン(THF)5mlを入れて、ジメチルジクロロシラン(456mg、1当量)を-30℃にてゆっくり添加した後、温度を徐々に上げて80℃にて2時間撹拌した。
【0113】
反応終了後、溶媒を除去して、エーテルと水との混合溶液を用いて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムで処理して水を除去した。カラムクロマトグラフィーを用いてジメチルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)シラン1.3g(収率:80%)を得た。この際、ヘキサンとジクロロメタンとの体積比20:1の混合液を移動相として使用した。
【0114】
[段階C:rac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドの合成]
ジメチルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)シラン(1.4g、1当量)をエーテル(20ml)に溶かした溶液に1.6Mのn-ブチルリチウムヘキサン溶液(4ml、2.1当量)を-30℃にてゆっくり添加した後、温度を徐々に常温まで上げて12時間撹拌した。溶媒を乾燥させた後、生成された固体をヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥させて、ジリチウム塩(dilithium salt)を得た。塩化ジルコニウム(ZrCl)(484mg、1当量)にジリチウム塩(1g、2当量)とエーテル(100ml)溶液とを-30℃にてゆっくり添加し、温度を徐々に上げて4時間撹拌した。
【0115】
反応終了後、溶媒を除去し、再結晶化溶媒としてジクロロメタンを用いて、再結晶法によりrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド130mg(収率:10%)を得た。
【0116】
(実施例1)
グローブボックス内における2リットルの丸ガラス反応器に751gのメチルアルミノキサン(10重量%トルエン溶液)を添加して、調製例1の第1遷移金属化合物1.2gと、調製例2の第2遷移金属化合物3.33gとを130mlのトルエン溶液に溶解させた後、カニューレを用いて反応器に投入し、25℃にて1時間撹拌した。一方、シリカ(XPO2402、Grace Davison社)200gを反応器に投入し、窒素雰囲気下で75℃にて3時間撹拌した。次いで、ジステアリン酸アルミニウム(Al-St)4.2gをトルエン150mlに懸濁した後、カニューレを用いて反応器に投入し、窒素雰囲気下で60℃にて1時間撹拌した。担持が終わり固体/液体が十分に分離された後、上澄み液を除去した。トルエンを用いて担持触媒を3回洗浄し、60℃の真空下で30分間乾燥させて、自由流動粉体状の混成担持触媒268gを得た。
【0117】
(実施例2~4)
ジステアリン酸アルミニウムの代わりにジステアリン酸亜鉛(Zn-St)、ジステアリン酸マグネシウム(Mg-St)、およびジステアリン酸カルシウム(Ca-St)をそれぞれ用いたことを除いては、実施例1と同様の方法により混成担持触媒275g、259g、および266gをそれぞれ得た。
【0118】
(実施例5)
ジステアリン酸アルミニウムを3.0重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法により混成担持触媒270gを得た。
【0119】
(比較例1)
ジステアリン酸アルミニウムを使用していないことを除いては、実施例1と同様の方法により混成担持触媒263gを得た。
【0120】
(比較例2)
ジステアリン酸アルミニウムを6.0重量%の含有量で添加したことを除いては、実施例1と同様の方法により混成担持触媒272gを得た。
【0121】
(比較例3)
ジステアリン酸アルミニウムの代わりにアルキルアミンエトキシレート(alkylamine ethoxylate、ASA)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法により混成担持触媒268gを得た。
【0122】
前記実施例1~5および比較例1~3の触媒調製条件を下記表1にまとめた。
【0123】
【表1】
【0124】
(実験例)
流動層気相反応器を用いて、実施例1~5と比較例1~3とにおいて得られたそれぞれの混成担持触媒50mgと、スカベンジャーとして1Mトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)0.5mlの存在下で、エチレンと1-ヘキセンを1時間共重合した。反応器内の温度は約80℃に維持しており、エチレンと1-ヘキセンのほかに水素を添加して、調製されるエチレン/1-ヘキセン共重合体の重合度を調節した。この際、エチレンの圧力は14kgf/cm、1-ヘキセンの量は15ccである。重合時の触媒の活性を表2に示した。
【0125】
次いで、40mm径のスクリュー、75mm径のダイ、および2mmのダイギャップを有する押出機にて、80rpmのスクリュー速度でエチレン/1-ヘキセン共重合体を押出し、幅41mmで2.0mの面積のキャスト成形により厚さ60μmのフィルムを得た。
【0126】
このようにして得られた、2.0mサイズのそれぞれのフィルムに存在するゲル全体の数と、大きさが400μm以下の微細ゲルの数を目視で測定した。その結果を表2に示した。
【0127】
【表2】
【0128】
表2から確認されるように、本発明の実施例で調製された混成担持触媒の存在下で生産されたオレフィン系重合体は、比較例1で調製された混成担持触媒の存在下で生産されたオレフィン系重合体に比べて、ゲル全体の数が約56%以上減少しており、微細ゲルの数が約73%以上減少している。
【0129】
一方、実施例1、5と比較例2とを対比すると、ステアリン酸金属の含有量が増加することにより、ゲル全体の数と微細ゲルの数は減少するが、触媒の活性が低下することが分かる。したがって、ステアリン酸金属の含有量が、担持触媒の総重量を基準に5.0重量%を超えると、触媒の活性が十分ではなくなり得るため、望ましくない。
【0130】
また、比較例1と比較例3を対比すると、ステアリン酸金属とは異なり、アルキルアミンエトキシレート系の帯電防止剤は実質的にゲルを減少させる効果がないことが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の具体例の調製方法によって調製された混成担持触媒は、ゲルの生成が著しく抑制され、透明性および外観に優れたオレフィン系フィルムを提供することができ、該フィルムは、ストレッチフィルム、オーバーラップフィルム、ラミー(ramie)、サイレージラップ、農業用フィルムなどとして効果的に使用し得る。

【国際調査報告】