(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(54)【発明の名称】加圧下または真空下でガスネットワーク中の漏れおよび障害を同時検出するためのガスネットワークおよび方法
(51)【国際特許分類】
F17D 5/02 20060101AFI20220126BHJP
G01M 3/00 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
F17D5/02
G01M3/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021531771
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(85)【翻訳文提出日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 IB2019060165
(87)【国際公開番号】W WO2020115609
(87)【国際公開日】2020-06-11
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521234870
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・エアパワー・ナームロゼ・ベンノートシャープ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・グエンス
(72)【発明者】
【氏名】エブラヒム・ルアーローディ
【テーマコード(参考)】
2G067
3J071
【Fターム(参考)】
2G067AA14
2G067BB02
2G067CC04
2G067DD02
2G067DD04
2G067DD08
2G067EE12
2G067EE13
3J071AA04
3J071BB03
3J071BB11
3J071CC12
3J071EE06
3J071EE07
3J071EE19
3J071EE24
3J071EE25
3J071EE27
3J071EE37
(57)【要約】
加圧下または真空下のガスネットワーク(1)中の漏れ(13a)および障害(13b)の同時検出、位置特定、および定量化のための方法であって、ガスネットワーク(1)が、圧縮したガスまたは真空の1つまたは複数の供給源(6)と、圧縮したガスまたは真空利用の1つまたは複数の消費者(7)または消費者区域と、圧縮したガスまたは真空を供給源(6)から消費者(7)、消費者区域または利用に移送するためのパイプライン(5)またはパイプライン(5)のネットワーク(4)と、ガスネットワーク(1)中の異なる時間および場所でガスの1つまたは複数の物理パラメータを提供する複数のセンサ(9a、9b、9d)とを備え、ガスネットワーク(1)が、いくつかの制御可能または調節可能な安全弁(10a)、いくつかの制御可能または調節可能な絞り弁(10b)、ならびに場合によって安全弁(10a)および/または絞り弁(10b)の状態または状況を監視することが可能な1つまたは複数のセンサ(9c)をさらに備え、方法が以下のステップ、すなわち、第1のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)および第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)の測定値の間で、これらのセンサ(9a、9b、9c、9d)の異なる測定値に基づいて、数学的モデルが確立されるトレーニングフェーズ(16)であって、制御可能または調節可能な安全弁(10a)および絞り弁(10b)が、予め規定されたシーケンスで、よく設計されたシナリオにしたがって漏れ(13a)および障害(13b)をそれぞれ発生させるために制御される、フェーズと、第1のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)および第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)の測定値の間で確立された数学的モデルが使用されて、ガスネットワーク中の漏れ(13a)および障害(13b)を検出、位置特定、および定量化する動作フェーズ(17)とを含み、動作フェーズ(17)が以下のステップ、すなわち、予め規定された順序で、よく設計されたシナリオにしたがって、必要に応じて、安全弁および絞り弁を制御するステップと、第1のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)を読み出すステップと、これらの読み出した測定値に基づいて、数学的モデルを用いて、第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)の値を計算または決定するステップと、第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)の計算した値または決定した値を第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)の読み出した値と比較し、それらの間の差異を決定するステップと、上述した差異およびその派生物のいずれかに基づいてガスネットワーク中に漏れ(13a)および/または障害(13b)が存在するかを決定するステップと、漏れ(13a)もしくは障害(13b)が検出される場合に警告を生成するステップ、ならびに/または漏れ(13a)および/もしくは障害(13b)の場所を決定するステップ、ならびに/または漏れ(13a)の流量および/もしくは障害(13b)の障害の程度を決定するステップ、ならびに/または漏出費用および/もしくは障害費用を生成するステップとを含むことを特徴とする方法。
![](/Kouhou/img?c=P_P1&n=2022512111&FileName=2022512111000001.tif&ImageFormatCategory=tif)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧下または真空下のガスネットワーク(1)中の漏れ(13a)および障害(13b)の同時検出、位置特定、および定量化のための方法であって、前記ガスネットワーク(1)が、
圧縮したガスまたは真空の1つまたは複数の供給源(6)と、
圧縮したガスまたは真空利用の1つまたは複数の消費者(7)または消費者区域と、
前記圧縮したガスまたは真空を前記供給源(6)から前記消費者(7)、消費者区域または利用に移送するためのパイプライン(5)またはパイプライン(5)のネットワーク(4)と、
前記ガスネットワーク(1)中の異なる時間および場所で前記ガスの1つまたは複数の物理パラメータを提供する複数のセンサ(9a、9b、9d)と
を備え、
前記ガスネットワーク(1)が、いくつかの制御可能または調節可能な安全弁(10a)、いくつかの制御可能または調節可能な絞り弁(10b)、ならびに場合によって前記安全弁(10a)および/または絞り弁(10b)の状態または状況を監視することが可能な1つまたは複数のセンサ(9c)をさらに備えること、ならびに、前記方法が以下のステップ、すなわち、
第1のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)および第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)の測定値の間で、これらのセンサ(9a、9b、9c、9d)の異なる測定値に基づいて、数学的モデルが確立されるトレーニングフェーズ(16)であって、前記制御可能または調節可能な安全弁(10a)および絞り弁(10b)が、予め規定されたシーケンスで、よく設計されたシナリオにしたがって漏れ(13a)および障害(13b)をそれぞれ発生させるために制御される、フェーズと、
前記第1のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)および前記第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)の前記測定値の間で確立された前記数学的モデルが使用されて、前記ガスネットワーク中の漏れ(13a)および障害(13b)を検出、位置特定、および定量化する動作フェーズ(17)と
を含み、
前記動作フェーズ(17)が以下のステップ、すなわち、
予め規定された順序で、よく設計されたシナリオにしたがって、必要に応じて、前記安全弁および前記絞り弁を制御するステップと、
前記第1のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)を読み出すステップと、
これらの読み出した測定値に基づいて、前記数学的モデルを用いて、前記第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)の値を計算または決定するステップと、
前記第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)の前記計算した値または決定した値を前記第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)の前記読み出した値と比較し、それらの間の差異を決定するステップと、
上述した差異およびその派生物のいずれかに基づいて前記ガスネットワーク中に漏れ(13a)および/または障害(13b)が存在するかを決定するステップと、
漏れ(13a)もしくは障害(13b)が検出される場合に警告を生成するステップ、ならびに/または前記漏れ(13a)および/もしくは前記障害(13b)の場所を決定するステップ、ならびに/または前記漏れ(13a)の流量および/もしくは前記障害(13b)の障害の程度を決定するステップ、ならびに/または漏出費用および/もしくは障害費用を生成するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)が、複数の圧力センサ(9b)、複数の流量センサ(9a)、場合によって前記安全弁(10a)および/または絞り弁(10b)の前記状態を決定することができる複数のセンサ(9c)、ならびに場合によって1つまたは複数の差圧センサ(9d)を前記ガスネットワーク(1)中の異なる場所に含むこと、ならびに前記第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)が複数の流量センサ(9a)および前記絞り弁の前記状態を決定することが可能なセンサ(9c)を前記ガスネットワーク(1)の中の異なる場所に備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流量センサ(9a)の少なくとも一部が前記安全弁(10a)の近傍に配置されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上述のセンサ(9a、9b、9d)が以下の前記ガスの物理パラメータ、すなわち、流量、圧力、差圧、温度、湿度、ガス速度などのうちの1つまたは複数を測定できることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記トレーニングフェーズ(16)についての方法が、上述のセンサ(9a、9b、9c、9d)が使用の前に較正される開始フェーズ(15)を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも前記第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)が、動作期間に現場でまたは自己較正によって較正されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記動作フェーズ(17)がある時点で一時的に中断されまたは止められ、その後、異なるセンサ(9a、9b、9c、9d)の測定値間の前記数学的モデルまたは関係式を再定義するために前記トレーニングフェーズ(16)が再開され、その後前記動作フェーズ(17)が再開されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記動作フェーズ(17)のステップが所与の時間間隔で順次繰り返されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記安全弁(10)が排流弁によって形成されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記センサ(9a、9b、9c、9d)の少なくともいくつかが、安全弁(10a)または絞り弁(10b)とともに1つのモジュールに一体化されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ガスネットワーク(1)の中の各安全弁(10a)および/または絞り弁(10b)の近傍にセンサ(9a、9b、9c、9d)が設けられ、および/または逆も同様であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記数学的モデルがブラックボックスモデルであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
上述の数学的モデルが、パラメータまたは定数を有する行列および/または非線形ベクトル関数の形をとり、前記数学的モデルの出力または「ターゲット」の変化が前記動作フェーズ(17)の期間監視されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
それがガス、空気、酸素、もしくは窒素、または別の毒性のないおよび/もしくは危険なガス、またはガスの混合物であることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記絞り弁(10b)の状態または状況を決定することができる状態センサ(9c)として、前記絞り弁(10b)の両端間の差圧センサ(9d)が使用されることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
加圧下または真空下のガスネットワーク(1)であって、少なくとも、
圧縮したガスまたは真空の1つまたは複数の供給源(6)と、
圧縮したガスまたは真空利用の1つまたは複数の消費者(7)、消費者区域と、
前記ガスまたは真空を前記供給源(6)から前記消費者(7)または消費者区域に移送するためのパイプライン(5)またはパイプライン(5)のネットワーク(4)と、
前記ガスネットワーク(1)中の異なる時間および場所で前記ガスの1つまたは複数の物理パラメータを提供する複数のセンサ(9a、9b、9d)と
を備え、
いくつかの制御可能または調節可能な安全弁(10a)およびいくつかの制御可能または調節可能な絞り弁(10b)と、
場合によって、1つまたは複数の安全弁(10a)および1つまたは複数の絞り弁(10b)の状態または状況を登録できる1つまたは複数のセンサ(9c)と、
前記センサ(9a、9b、9c、9d)からのデータの収集のため、ならびに上述の安全弁(10a)および絞り弁(10b)を制御または調節するためのデータ取得制御ユニット(11)と、
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法を実行するための計算ユニット(12)と
をさらに備えることを特徴とする、ガスネットワーク。
【請求項17】
前記安全弁(10a)が排流弁によって形成されることを特徴とする、請求項16に記載のガスネットワーク。
【請求項18】
前記センサ(9a、9b、9c、9d)の少なくともいくつかが、安全弁(10a)または絞り弁(10b)とともに1つのモジュールに一体化されることを特徴とする、請求項16または17に記載のガスネットワーク。
【請求項19】
前記ガスネットワーク(1)の中の各安全弁(10a)および/または絞り弁(10b)の近傍にセンサ(9a、9b、9c、9d)が設けられ、および/または逆も同様であることを特徴とする、請求項16から18のいずれか一項に記載のガスネットワーク。
【請求項20】
漏れ(13a)および障害(13b)、漏れ流量、障害、漏出費用、障害、漏れ(13a)および障害(13b)の場所を表示または信号伝達するためのモニタ(14)を前記ガスネットワーク(1)がさらに備えることを特徴とする、請求項16から19のいずれか一項に記載のガスネットワーク。
【請求項21】
消費者(7)の状態または状況を記録することが可能な前記センサ(9c)が前記消費者(7)自体の部分であることを特徴とする、請求項16から20のいずれか一項に記載のガスネットワーク。
【請求項22】
前記計算ユニット(12)が、前記ガスネットワーク(1)にワイヤレスで接続されてもされなくてもよいクラウドベースの計算ユニット(12)であることを特徴とする、請求項16から21のいずれか一項に記載のガスネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧下または真空下でガスネットワーク中の漏れおよび障害を同時検出するための方法に関する。
【0002】
より詳細には、本発明では、ガスネットワーク中で生じる漏れおよび障害を検出および定量化することが可能となることが意図される。
【背景技術】
【0003】
本明細書では、「ガス」とは、たとえば空気を意味するが、必ずしも空気とは限らない。
【0004】
本明細書では、「障害」とは、ガスネットワーク中の部分的もしくは全体的な閉塞、またはパイプラインの抵抗の増加を意味する。
【0005】
加圧下でガスネットワークを監視するまたは制御する方法が既に知られている一方で、これらの方法は、長くて真っ直ぐなパイプラインのために設定され、ここでは、対象のガスの圧縮率に起因して、入る流れは、出る流れと必ずしも等しくない。
【0006】
特に、漏れの検出のための方法は、1つまたは複数の圧縮工場が加圧下で消費者の複雑なネットワークにガスを供給する、加圧下の複雑なガスネットワークでは好適でない、非常に長いパイプライン、真っ直ぐなパイプラインなどといった、いくつかの仮定に基づく。
【0007】
また、方法は、最終消費者自身の空気構成要素または空気工具中の漏れを検出するため、米国特許第7,031,850(B2)号および米国特許第6,711,507(B2)号中に記載されるように、既に所定の場所にある。最終消費者は、個別の最終消費者であってよく、またはいわゆる消費者区域または個別の最終消費者のグループを含んでよい。
【0008】
供給源側の総漏出率を推定するための方法は、たとえば、DE20.2008.013.127U1およびDE20.2010.015.450U1からやはり知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7,031,850(B2)号
【特許文献2】米国特許第6,711,507(B2)号
【特許文献3】DE20.2008.013.127U1
【特許文献4】DE20.2010.015.450U1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのような知られている方法の欠点は、供給源と消費者または消費者区域との間のパイプラインの複雑なネットワーク中の漏れおよび障害を検出することを可能にしないという点である。したがって、そのような知られている方法は、過小評価されるべきでない漏れおよび障害の原因となる欠点を有する。
【0011】
ガスネットワーク中での漏れと障害の同時検出について、特定の方法はまだ知られていない。
【0012】
本発明は、上述および他の欠点のうちの少なくとも1つを解決することをねらいとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、加圧下または真空下のガスネットワーク中での漏れおよび障害の同時検出および定量化のための方法に関し、ガスネットワークは、
- 圧縮したガスまたは真空の1つまたは複数の供給源と、
- 圧縮したガスまたは真空利用の1つまたは複数の消費者(7)または消費者区域と、
- ガスまたは真空を供給源から消費者、消費者区域または利用に移送するためのパイプラインまたはパイプラインのネットワークと、
- ガスネットワーク中の異なる時間および場所でガスの1つまたは複数の物理パラメータを決定する複数のセンサと
を備え、
ガスネットワークが、いくつかの制御可能または調節可能な安全弁、いくつかの制御可能または調節可能な絞り弁、ならびに場合によって、安全弁および/または絞り弁の状態または状況を監視することが可能な1つまたは複数のセンサをさらに備えること、ならびに、方法が以下のステップ、すなわち、
- 上述のセンサが使用される何らかの開始フェーズと、
- 第1のグループのセンサおよび第2のグループのセンサの測定値の間で、これらのセンサの異なる測定値に基づいて、数学的モデルが確立されるトレーニングフェーズであって、制御可能または調節可能な安全弁および絞り弁が、予め規定された順序で、よく設計されたシナリオにしたがって漏れまたは障害を発生させるために制御される、フェーズと、
- 第1のグループのセンサおよび第2のグループのセンサの測定値の間で確立された数学的モデルが使用されて、ガスネットワーク中の漏れおよび障害を検出および定量化する動作フェーズと
を含み、
ここで、動作フェーズが以下のステップ、すなわち、
- 予め規定された順序で、よく設計されたシナリオにしたがって、安全弁および必要に応じて絞り弁を制御するステップと、
- 第1のグループのセンサを読み出すステップと、
- これらの読み出した測定値に基づいて、数学的モデルを使用して、第2のグループのセンサの値を計算または決定するステップと、
- 第2のグループのセンサの計算した値またはある値を第2のグループのセンサの読み出した値と比較し、それらの間の差異を決定するステップと、
- 上述した差異およびその派生物のいずれかに基づいてガスネットワーク中に漏れおよび/または障害が存在するかを決定するステップと、
- 漏れおよび/もしくは障害が検出される場合に警告を生成するステップ、ならびに/または漏れおよび/もしくは障害の場所を決定するステップ、ならびに/または漏れの流量および/もしくは障害の程度を決定するステップ、ならびに/または漏出費用および/もしくは障害費用を生成するステップと
を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0014】
安全弁および絞り弁が制御される「予め規定された順序」とは、2つ以上がある場合に安全弁が制御され絞り弁が開閉される順序を意味する。
【0015】
「シナリオ」とは、異なる安全弁の異なるオンおよびオフの状態、ならびに異なる絞り弁の異なる開閉状態のことを呼び、たとえば、[0 0 0 0]、[1 0 0 0]、[0 1 1 0]、…となる。単なるオンまたは開(1)およびオフまたは閉(0)以外のさらなる状態があることが可能であり、ここでは、漏れの検出、障害の検出、および定量化のために、中間状態(たとえば、1/2)が等しく重要である。
【0016】
「差異の派生物」とは、たとえば、和、算術平均、最小2乗和などといった、差異から引き出すことができる任意の数学的量を意味する。
【0017】
「消費者区域」とは、個別の(最終)消費者のグループのことを呼ぶ。ガスネットワークは、いくつかの消費者グループまたは消費者区域を含む場合がある。
【0018】
長所は、ガスネットワーク自体の漏れおよび障害を同時に知り、検出し、定量化することをそのような方法が可能にするという点である。
【0019】
言い換えれば、本方法を使用して検出および定量化された漏れおよび障害は、圧縮ガスの供給源または消費者での、すなわち、圧縮工場および空気工具または構成要素での漏れおよび障害に限定されず、ガスネットワーク自体のパイプラインでの漏れおよび障害にも関することができる。
【0020】
加圧下のガスネットワークの場合に、漏れは外側へと生じることになり、ガスが周囲の区域に流出することに留意されたい。真空のガスネットワークでは、漏れは「内向きに」発生する、すなわち、環境空気がガスネットワークに入ることになる。
【0021】
トレーニングフェーズの期間に、様々なセンサの測定値を使用して、このグループのセンサ間に関係式が確立される。
【0022】
安全弁および/または絞り弁の異なる設定で、異なる測定が行われる。言い換えれば、異なる試験シナリオ下の特別な順序で、異なる漏れおよび/または障害がガスネットワーク中で発生され、次いで、センサの測定値が読み出される。
【0023】
すべてのデータに基づいて、第1のグループのセンサすなわち数学的モデルの入力と、第2のグループのセンサすなわち数学的モデルの出力との間に、数学的モデルが確立される。入力または数学的操作は数学的モデルの「特徴」とも呼ばれ、出力は「ターゲット」とも呼ばれる。
【0024】
この方法では、センサによって測定された様々なパラメータ間の関数関係を表す数学的モデルが作成されることになる。これらのパラメータまたは係数は、「重み」とも呼ばれる。
【0025】
このモデルは、次いで、モデルの結果とセンサの新しい測定値を比較することによって、センサの将来の測定値における不規則性を迅速に検出するために使用することができる。
【0026】
この方法では、漏れおよび障害がとても迅速かつ正確に検出、位置特定、および定量化され、漏れおよび/または障害が検出される場合、アクションを行うことができ、漏れを閉じること、および/または障害を修復することができる。
【0027】
本発明にしたがった方法のさらなる長所は、ガスネットワークの正確なトポロジーが知られている必要がないことである。漏れまたは障害を検出、定量化、および位置特定するのに、安全弁および絞り弁の場所を知ることで、原理的には十分である。
【0028】
本発明によれば、別の長所は、本方法が、ガスネットワーク全体を考慮に入れ、したがって、ガスネットワーク全体での漏れおよび障害を検出、定量化、および位置特定できることである。これは、ネットワークを、本方法を適用することを可能にするために、本方法が適用される「サブネットワーク」へと分割するべきでないことを意味する。
【0029】
別の長所は、「真の」漏れまたは障害がガスネットワーク中で生じる場合のセンサからのデータを使用しなければならない代わりに、トレーニングフェーズ中のセンサの測定値またはデータセットを使用して、漏れおよび障害がシミュレーションされる数学的モデルを作成することを本方法が可能にすることである。したがって、センサからの必要なデータの生成は、過去に生じた可能性がある漏れまたは障害に依存することなく数学的モデルを確立するために必要である。
【0030】
好ましくは、動作フェーズがある時点で一時的に中断されるまたは止められるべきであり、その後、異なるセンサの測定値間の数学的モデルまたは関係式を再定義するためにトレーニングフェーズが再開されるべきであり、その後動作フェーズが再開される。
【0031】
プロセス、すなわち供給源、パイプライン、および消費者を有するガスネットワークは停止されず、方法だけとなることに留意されたい。言い換えれば、動作フェーズが一時的に中断されるまたは止められる場合、供給源は依然として消費者にガス、または真空を供給することになる。
【0032】
動作フェーズを中断してトレーニングフェーズを再開することには、数学的モデルまたは関係式が更新されるという長所がある。
【0033】
このことによって、たとえば、修復されている検出済みの漏れおよび障害、または、時間とともに行われているガスネットワークへの調節もしくは拡張を考慮に入れることが可能になる。
【0034】
本発明は、加圧下または真空下のガスネットワークにも関する。ガスネットワークは、少なくとも以下、すなわち
- 圧縮したガスまたは真空の1つまたは複数の供給源と、
- 圧縮したガスまたは真空利用の1つまたは複数の消費者、消費者区域と、
- ガスまたは真空を供給源から消費者、消費者区域または利用に移送するためのパイプラインまたはパイプラインのネットワークと、
- ガスネットワーク中の異なる場所で圧縮したガスの1つまたは複数の物理パラメータを決定する複数のセンサと
を備え、
ガスネットワークが以下、すなわち
- いくつかの制御可能または調節可能な安全弁およびいくつかの制御可能または調節可能な絞り弁と、
- 場合によって、1つまたは複数の安全弁の状態または状況を登録でき、1つまたは複数の絞り弁を登録できる1つまたは複数のセンサと、
- センサからのデータの収集のため、ならびに上述の安全弁および絞り弁を制御または調節するためのデータ取得制御ユニットと、
- 上記の請求項のいずれかにしたがった方法を実行するための計算ユニットと
をさらに備えるという特徴を有する。
【0035】
そのような配置構成を使用して、本発明にしたがった方法を適用することができる。
【0036】
本発明の特性をより良好に説明するために、以下で、本発明にしたがった方法およびガスネットワークのいくつかの好ましい実施形態が、何ら限定的な性質のない例として、添付図面を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明にしたがったガスネットワークを概略的に示す図である。
【
図2】本発明にしたがった方法の概略フローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1のガスネットワーク1は、供給源側2、消費者側3、およびその2つの間のパイプライン5のネットワーク4を主に備える。
【0039】
この場合のガスネットワーク1は、加圧下のガスネットワーク1である。ガスは、空気、酸素、もしくは窒素、または任意の他の毒性のないおよび/もしくは有害なガス、またはガスの混合物であってよい。
【0040】
供給源側2は、圧縮空気を生成する、いくつかの、この場合は3つのコンプレッサ6を備える。消費者側3は、圧縮空気の、いくつかの、この場合はやはり3箇所の消費者7を含む。
【0041】
コンプレッサ6が圧縮空気ドライヤを含むことも可能である。
【0042】
ガスネットワーク1の下流にコンプレッサ6がやはり存在できることは除外されない。これは、「ブーストコンプレッサ」と呼ばれる。
【0043】
圧縮空気は、コンプレッサ6から消費者7にパイプライン5のネットワーク4を通して経路指定される。
【0044】
このネットワーク4は、ほとんどの場合に、パイプライン5の非常に複雑なネットワークである。
【0045】
図1は、非常に概略的で簡略化した方法における本ネットワーク4を示す。最も現実的な状況では、パイプライン5のネットワーク4が多数のパイプライン5、および消費者7を直列および並列にコンプレッサ6と接続する継手を備える。ネットワーク4の部分がリング構成を採用することまたは含むことは除外されない。
【0046】
これは、ガスネットワーク1が、追加の消費者7またはコンプレッサ6で時間とともに拡張されることが多く、それによって既存のパイプライン5間の新しいパイプライン5を敷設しなければならず、このことによって、絡み合うパイプライン5がもたらされるためである。
【0047】
ガスネットワーク1は、圧力容器8を備えることもでき、この圧力容器8の前にすべてのコンプレッサ6がある。
【0048】
ガスネットワーク1の下流に1つまたは複数の圧力容器8が存在する場合があることは除外されない。
【0049】
加えて、フィルタ、分離器、噴霧器、および/または調整器などといった構成要素18をガスネットワーク1の中に設けることもできる。これらの構成要素18は、様々な組合せで見いだすことができ、バッファタンク8の近くと個別の消費者7の近くの両方に見いだすことができる。
【0050】
示される例では、構成要素18は、バッファ容器8の後、個別の消費者7の近くに設けられる。
【0051】
ネットワーク4は、ネットワーク4中の異なる場所に配置されるいくつかのセンサ9a、9b、9cも含む。
【0052】
この場合では、2つの流量センサ9aが設置されており、そのうちの1つは、上述の圧力容器8の直後にあり、これが、すべてのコンプレッサ6によってもたらされる全流量qを測定することになる。
【0053】
コンプレッサ6の流量がコンプレッサ6自体によって計算または測定されることは除外されない。
【0054】
加えて、図では4つの圧力センサ9bを示しており、これが、ネットワーク4中の異なる場所の圧力を測定する。
【0055】
圧力容器8中の圧力を測定するための圧力センサ9bは、大きい濃縮した容積についての、「流入質量-流出質量(mass in - mass out)」原理を補正するようにやはり推奨される。
【0056】
4つより多いまたはより少ない圧力センサ9bを設けることもできるのは、明らかである。加えて、流量センサ9aの数は、本発明にとって限定するものではない。
【0057】
流量センサ9aまたは圧力センサ9bに加えて、追加または代替として、センサ9a、9bは、以下のガスの物理パラメータ、すなわち、差圧、温度、湿度、ガス速度などのうちの1つまたは複数を決定するために使用することができる。
【0058】
本発明によれば、ガスネットワーク1は、ガスネットワーク1からガスを吹き出すことができるいくつかの安全弁10aも設けられる。安全弁10aは調節可能または制御可能であって、これは、安全弁10が放出するガスの量を設定または調整できることを意味する。
【0059】
安全弁10aは、ガスネットワーク1で標準として設けられることが多い排流弁によって形成することができる。そのような排流弁は、安全弁10aとして制御することができる。
【0060】
本発明によれば、ガスネットワーク1は、様々な場所でパイプライン5の中に設置されるいくつかの絞り弁10bも設けられる。絞り弁10bは、いわば、障害をシミュレーションするために、パイプライン5を部分的に閉鎖することができる。絞り弁10bは調節可能または制御可能であって、これは、絞り弁10bが関連するパイプライン5を閉鎖する程度を設定または制御できることを意味する。
【0061】
ガスの物理パラメータを測定する、上述のセンサ9aおよび9bに加えて、安全弁10aおよび絞り弁10bに配置されるいくつかのセンサ9c、すなわち「状態センサ9c」もある。
【0062】
安全弁10aの状態センサ9cが安全弁10aのオン/オフ状態を測定することが可能である一方、安全弁10bの状態センサ9cは、弁の開度、すなわち、こうして生成された障害の相対的な増減を測定することになる。絞り弁10bの近くの状態センサ9cは、絞り弁10bの両端間の圧力低下を決定する差圧センサ9dによって置き換えることができる。
【0063】
図1に明示的には示されないが、ガスネットワーク1中で、コンプレッサ6および消費者7の近傍に、これらの構成要素のオン/オフ状態を決定する追加の状態センサ9cがあることは、除外することができない。好ましくは、これらの状態センサは、消費者7自体の部分である。
【0064】
追加の状態センサ9c(たとえば、コンプレッサ6のオン/オフ)は、ここで、下で説明されるように、トレーニングフェーズ16および動作フェーズ17の期間に、モデルの交差感度を著しく低下させる意図がある。
【0065】
安全弁10aおよび10bでガスの圧力または流量を測定するセンサ9a、9bを使用することも可能である。安全弁10aおよび絞り弁10bでガスの温度を測定するセンサを使用することも可能である。
【0066】
好ましくは、流量センサ、圧力センサ、温度センサ、および/または状態センサ9a、9b、9cのうちの少なくとも一部は、安全弁10aおよび絞り弁10bの近傍に配置されるべきである。
【0067】
この場合では、各状態センサ9cは安全弁10aまたは絞り弁10bの近傍に配置され、1つの流量センサ9aが安全弁10aの近傍に配置され、1つの圧力センサ9bが安全弁10aの近傍に配置され、3つの圧力センサ9bが絞り弁10bの近傍に配置される。
【0068】
このことによって、状態センサ9cを使用して、安全弁10aおよび絞り弁10bの状態すなわち開閉、ならびに絞り弁10bの弁の開度を決定することが可能になる。この場合では、状態センサ9cで、関係する絞り弁10bの相対的な障害の増減を測定することが可能になり、このことによって、障害の程度の定量化が可能になる。加えて、流量センサ9aで、それぞれの安全弁10aの流量を測定することが可能になり、このことによって、漏出率を定量化することが可能になる。
【0069】
どのセンサ9a、9b、9cが安全弁10aまたは絞り弁10bに配置されるかされないかを選択する多くの自由度があるが、ガスネットワーク1の中の各安全弁10aまたは絞り弁10bの近傍に、センサ9a、9b、9cを有することが好ましく、および/または逆も同様である。すなわち、各センサ9a、9bの近くに安全弁10aまたは絞り弁10bが設けられる。
【0070】
センサ9a、9b、9cの少なくとも部分を、安全弁10aまたは絞り弁10bとともに1つのモジュールに一体化することも可能である。
【0071】
このことは、センサ9a、9b、9cと安全弁10 aおよび10bの設置または一体化を簡略化およびスピードアップすることになる。加えて、安全弁10aおよび絞り弁10bのための正しい好適なセンサ9a、9b、9cが1つのモジュール中に一緒に配置されることを確実にすることができる。
【0072】
この場合に、好ましくは、状態センサ9cが、各々、対応する安全弁10aまたは絞り弁10bと一緒に1つのモジュールに一体化される。
【0073】
上述の差圧センサ9dは、好ましくは、フィルタ、分離器、噴霧器、および/または調整器構成要素18にわたって配置される。現在の場合では、4つの差圧センサ9dがガスネットワーク1の中に含まれる。差圧センサ9dを絞り弁10bの両端間にやはり置かれ、そこで、状態センサ9cの役割を引き継ぐことができる。
【0074】
一方で、上述の湿度および温度センサは、好ましくは、コンプレッサ6および消費者7の入口/出口に搭載するべきである。示される例では、これらの追加センサは、ガスネットワーク1の中にすべてが含まれるわけではないが、これも可能であるのは当然である。特に、質量流量の代わりに体積流量だけが測定されるネットワーク中と同様に、より広範囲で複雑なガスネットワーク1では、そのようなセンサを使用することができる。
【0075】
本発明によれば、ガスネットワーク1は、上述のセンサ9a、9b、9c、9dからのデータを集めて、安全弁10aおよび絞り弁10bを制御もするための、データ取得制御ユニット11をさらに備える。
【0076】
言い換えれば、センサ9a、9b、9c、9dは、ガス、安全弁10aおよび絞り弁10bの物理パラメータを決定または測定し、このデータをデータ取得制御ユニット11に送信し、データ取得制御ユニット11は、ガスを吹き出すことにより漏れをシミュレーションするため、または障害を作成もしくはシミュレーションするために、安全弁10aおよび絞り弁10bが開閉されるか、どれだけ開閉されるかを制御または確認することになる。
【0077】
本発明によれば、ガスネットワーク1は、センサ9a、9b、9c、9dからのデータを処理するための計算ユニット12をさらに備える。ここで、計算ユニット12は、下で説明されるように、ガスネットワーク1中の漏れ13aおよび障害13bを検出および定量化するための本発明にしたがった方法を実行することが可能となる。
【0078】
上述の計算ユニット12は、ガスネットワーク1の物理的な部分である、物理モジュールであってよい。計算ユニット12が物理モジュールでなく、ガスネットワーク1にワイヤレスで接続されてもされなくてもよい、いわゆるクラウドベースの計算ユニット12であることを除外することはできない。これは、計算ユニット12または計算ユニット12のソフトウェアが「クラウド」の中にあることを意味する。
【0079】
この場合では、ガスネットワーク1は、本方法を使用して検出された漏れ13aおよび障害13bを表示または信号伝達するためのモニタ14をさらに備える。
【0080】
本発明にしたがった、ガスネットワーク1の動作および方法は、非常に簡単で、以下となる。
【0081】
図2は、
図1のガスネットワーク1中の漏れ13aおよび障害13bの同時検出のための方法を概略的に図示する。
【0082】
第1のフェーズ15、開始フェーズ15では、必要な場合に、使用する前にセンサ9a、9b、9c、9dが較正される。他のセンサがある場合、それらも使用前に較正できるのは当然である。
【0083】
これは、ガスネットワーク1中にセンサ9a、9b、9c、9dが配置されるときに一度行われる。もちろん、センサ9a、9b、9c、9dを経時的に再較正できることも可能である。
【0084】
好ましくは、少なくともセンサ9a、9b、9c、9dの第2のグループは、動作期間に、または現場の自己較正によって較正されるべきである。これは、ガスネットワーク1の中のこれらのセンサ9aが、すなわち、センサ9a、9b、9c、9dが設置された後に較正されることを意味する。「動作中」または「現場で」とは、ネットワーク1からセンサ9a、9b、9c、9dを取り外すことのない較正を意味する。
【0085】
もちろん、すべてのセンサ9a、9b、9c、9d、したがって第1のグループのセンサ9a、9b、9c、9dを動作中に、または自己較正によって現場で較正してよい。
【0086】
この方法では、センサ9a、9b、9c、9dの配置および/またはあり得る汚染は、それらの測定値に影響を及ぼさないことを確信することができる。というのは、センサ9a、9b、9c、9dの配置後にだけ較正を実施する、またはある時間期間で較正を繰り返すためである。
【0087】
次いで、第2のフェーズ16、すなわちトレーニングフェーズ16が開始する。
【0088】
このフェーズでは、第1の較正されたグループのセンサ9a、9b、9c、9d、すなわち「特徴」の測定値と第2の較正されたグループのセンサ9a、9b、9c、9d、すなわち「ターゲット」の測定値との間で、数学的モデルが作成される。
【0089】
好ましくは、第1のグループのセンサ9a、9b、9c、9dは、ガスネットワーク中の異なる場所に複数の圧力センサ9b、いくつかの流量センサ9a、および場合によって1つまたは複数のセンサ9cを含み、第2のグループのセンサ9a、9b、9c、9dは、ガスネットワーク中の異なる場所に複数の流量センサ9aおよび状態センサ9cを含む。
【0090】
この場合では、流量センサ9aの部分、圧力センサ9b、および状態センサ9cの部分が第1のグループのセンサを形成し、残りの流量センサ9aおよび状態センサ9cが第2のグループのセンサを形成する。
【0091】
完全にするために、ここで、本発明がこれに限定されないことが明記される。第1のグループのセンサおよび第2のグループのセンサについて、センサ9a、9b、9c、9dからランダムな選択を行うことができるが、第1のグループのセンサは第2のグループのセンサに入ることが許されず、逆も同様であるという制限だけがある。
【0092】
上述の数学的モデルは、センサ9a、9b、9c、9dの様々な測定値に基づいており、ここで、調節可能な安全弁10aは、漏れを発生するように制御され、調節可能な絞り弁10bは障害を発生するように制御される。
【0093】
言い換えれば、データ取得制御ユニット11が、センサ9a、9b、9c、9dからデータまたは測定値を収集する。ここで、データ取得制御ユニット11が、ガスネットワーク1の中に漏れが生じるように安全弁10aを開くために安全弁10aを制御し、データ取得制御ユニットが、ガスネットワーク1の中に障害が生じるように絞り弁10bを閉じるために絞り弁10bを制御し、その結果、ガスネットワーク1の中に1つまたは複数の漏れ13aまたは障害13bが生じる場合に、センサ9a、9b、9c、9dからデータを収集することができる。
【0094】
この方法では、安全弁10aおよび絞り弁10bからの情報、すなわち、漏れ13aの場所およびサイズならびに障害13bの場所および程度とともに、データまたは測定値の全セットを収集することができる。計算ユニット12は、すべてのこの情報に基づいて数学的モデルを作ることになる。この数学的モデルは、好ましくは、ブラックボックスモデルまたはデータ駆動モデルである。モデルは、典型的には、推定される「重み」とも呼ばれるいくつかのパラメータまたは係数を含む。
【0095】
このブラックボックスモデルは、たとえば、行列、非線形数学的ベクトル関数などの形をとる。
【0096】
数学的モデルは、仮定には基づかない。
【0097】
トレーニングフェーズ16は、好ましくは、ガスネットワーク1の動作期間、またはガスネットワーク1が動作可能であるときに実行されるべきである。
【0098】
数学的モデルは、動作フェーズ17中で使用されて、ガスネットワーク1中の漏れ13aおよび障害13bを検出および定量化する。一般的でないが、動作フェーズ期間に、漏れ13aの位置特定をするために、予め規定された順序で安全弁10aが制御されることは、除外することができない。シナリオ[0 0 0 … ]にしたがった制御も可能であることに留意されたい。動作フェーズ期間に、障害13bの位置特定をするために、予め規定された順序で調節可能な絞り弁10bが制御されることは、除外することができない。
【0099】
やはりこのフェーズの期間に、データ取得制御ユニット11がセンサ9a、9b、9c、9dから異なるデータを収集し、計算ユニット12が、以前のフェーズ16で設定された数学的モデルを使用して必要な計算を実施する。
【0100】
動作フェーズ17は、第1のグループのセンサ9a、9b、9c、9dの読出しで開始する。
【0101】
これらの読み出された測定値を用い、第2のグループのセンサ9a、9b、9c、9dの値が、数学的モデルを使用して計算ユニット12によって決定または計算され、「予測されるターゲット」とも呼ばれる。
【0102】
第2のグループのセンサ9a、9b、9c、9dの決定または計算された値が、第2のグループのセンサ9a、9b、9c、9dの読み出された値と比較され、それらの間の差異が決定される。
【0103】
上述の差異に基づいて、計算ユニット12は、漏れ13aまたは障害13bがあるかを決定し、必要な場合には、ガスネットワーク1の中で漏れ13aまたは障害13bが位置特定される。
【0104】
この目的で、差異がある閾値を超えるかが検査され、これが次いでガスネットワーク1中の漏れ13aまたは障害13bを示すことになる。
【0105】
この閾値は、事前に設定すること、または経験的に選択することができる。
【0106】
漏れ13aまたは障害13bが検出されると、場合によっては対応する場所、漏出率、障害レベル、ならびに/または漏出および障害費用と一緒に、警告が生成されることになる。この場合、これは、警告を表示するモニタ14を使用して行われる。
【0107】
ガスネットワーク1のユーザがこの警告に気づき、適切なステップをとることが可能になる。
【0108】
動作フェーズ17のステップは、好ましくは、ある時間間隔で順次、循環的に繰り返される。
【0109】
結果として、漏れ13aおよび障害13bは、たとえば、ガスネットワーク1の全動作周期の期間に検出することができ、期間中にただ1回ではなく、ガスネットワーク1の開始直後だけでもない。
【0110】
上述の時間間隔は、ガスネットワーク1に依存して選択および設定することができる。時間間隔が経時的に変わることができることは除外することができない。
【0111】
本発明の好ましい変形形態では、ある瞬間に、動作フェーズ17が一時的に中断されまたは止められ、その後に、異なるセンサ9a、9b、9c、9dの測定値間の数学的関係式を再確立するために、トレーニングフェーズ16が再開され、その後、動作フェーズ17が再開される。
【0112】
「ある瞬間に」とは、本明細書では、たとえば、週に1回、月に1回、もしくは年に1回プリセットされる瞬間として、またはユーザが選択できる瞬間として解釈するべきである。
【0113】
これは、起こりうるシステムの時間変化挙動を考慮に入れるために数学的モデルを更新する。これらの時間変化挙動とは、数学的モデルが異なるシナリオ下でトレーニングされたときのトレーニングフェーズ16期間に、数学的モデルによって取得されなかった挙動である。
【0114】
これは、たとえば、ガスネットワーク1のトポロジーの変化、またはガスネットワーク1への新しい構成要素の追加を含むことができる。
【0115】
図1の例では、方法は、加圧下のガスネットワーク1であるが、真空下のガスネットワーク1であってもよい。
【0116】
ここで、供給源側2が、いくつかの真空の供給源、すなわち、真空ポンプまたは同様のものを備える。
【0117】
この場合では、消費者7は、真空を必要とする利用によって置き換えられている。
【0118】
さらに、方法は上で述べたのと同じであり、ここで、漏れ13aが環境空気をガスネットワーク1の中へ導くことを考慮に入れる。好ましくは、警告を発するために他の閾値が設定されることになる。
【0119】
また、この場合では、安全弁10aは、真の空気を噴き出すのではなく、むしろ、環境空気をガスネットワーク1の中に導くことになる。したがって、安全弁10aは、吸気弁である可能性が高い。しかし、原理は同じままである。
【0120】
本発明は、例として説明され図に示された実施形態に決して限定されず、本発明にしたがった方法およびガスネットワークは、本発明の範囲を超えることなくすべての種類の変形形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0121】
1 ガスネットワーク
2 供給源側
3 消費者側
4 ネットワーク
5 パイプライン
6 コンプレッサ
7 消費者
8 圧力容器、バッファタンク、バッファ容器
9a 流量センサ
9b 圧力センサ
9c 状態センサ
9d 差圧センサ
10 安全弁、吸気弁
10a 安全弁
10b 絞り弁
11 データ取得制御ユニット
12 計算ユニット
13 漏れ
13a 漏れ
13b 障害
14 モニタ
15 第1のフェーズ、開始フェーズ
16 第2のフェーズ、トレーニングフェーズ
17 動作フェーズ
18 構成要素
【手続補正書】
【提出日】2020-10-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧下または真空下のガスネットワーク(1)中の漏れ(13a)および障害(13b)の同時検出、位置特定、および定量化のための方法であって、前記ガスネットワーク(1)が、
圧縮したガスまたは真空の1つまたは複数の供給源(6)と、
圧縮したガスまたは真空利用の1つまたは複数の消費者(7)または消費者区域と、
前記圧縮したガスまたは真空を前記供給源(6)から前記消費者(7)、消費者区域または利用に移送するためのパイプライン(5)またはパイプライン(5)のネットワーク(4)と、
前記ガスネットワーク(1)中の異なる時間および場所で前記ガスの1つまたは複数の物理パラメータを提供する複数のセンサ(9a、9b、9d)と
を備え、
前記ガスネットワーク(1)が、いくつかの制御可能または調節可能な安全弁(10a)、いくつかの制御可能または調節可能な絞り弁(10b)、ならびに場合によって前記安全弁(10a)および/または絞り弁(10b)の状態または状況を監視することが可能な1つまたは複数のセンサ(9c)をさらに備えること、ならびに、前記方法が以下のステップ、すなわち、
第1のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)および第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)の測定値の間で、数学的モデルが確立されるトレーニングフェーズ(16)であって、
前記第1のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)が、複数の圧力センサ(9b)、複数の流量センサ(9a)、場合によって前記安全弁(10a)および/または絞り弁(10b)の前記状態を決定することができる複数のセンサ(9c)、ならびに場合によって1つまたは複数の差圧センサ(9d)を前記ガスネットワーク(1)中の異なる場所に含み、前記第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)が複数の流量センサ(9a)および前記絞り弁の前記状態を決定することが可能なセンサ(9c)を前記ガスネットワーク(1)の中の異なる場所に備え、前記第1のグループからのセンサが前記第2のグループの中になく、逆も同様であり、これらのセンサ(9a、9b、9c、9d)の異なる測定値に基づき、前記制御可能または調節可能な安全弁(10a)および絞り弁(10b)が、予め規定されたシーケンスで、よく設計されたシナリオにしたがって漏れ(13a)および障害(13b)をそれぞれ発生させるために制御される、フェーズと、
前記第1のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)および前記第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)の前記測定値の間で確立された前記数学的モデルが使用されて、前記ガスネットワーク中の漏れ(13a)および障害(13b)を検出、位置特定、および定量化する動作フェーズ(17)と
を含み、
前記動作フェーズ(17)が以下のステップ、すなわち、
予め規定された順序で、よく設計されたシナリオにしたがって、必要に応じて、前記安全弁および前記絞り弁を制御するステップと、
前記第1のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)を読み出すステップと、
これらの読み出した測定値に基づいて、前記数学的モデルを用いて、前記第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)の値を計算または決定するステップと、
前記第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)の前記計算した値または決定した値を前記第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)の前記読み出した値と比較し、それらの間の差異を決定するステップと、
上述した差異および
前記差異から抽出可能な数学的量を含むその派生物のいずれかに基づいて前記ガスネットワーク中の漏れ(13a)および/または障害(13b)が存在するかを決定するステップと、
漏れ(13a)もしくは障害(13b)が検出される場合に警告を生成するステップ、ならびに/または前記漏れ(13a)および/もしくは障害(13b)の前記場所を決定するステップ、ならびに/または前記漏れ(13a)の前記流量および/もしくは前記障害(13)の障害の程度を決定するステップ、ならびに/または漏出費用および/もしくは障害費用を生成するステップと
を含み、
前記場所が予め規定された順序で前記調節可能な絞り弁および/または安全弁を制御することによって決定される
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記流量センサ(9a)の少なくとも一部が前記安全弁(10a)の近傍に配置されることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
上述のセンサ(9a、9b、9d)が以下の前記ガスの物理パラメータ、すなわち、流量、圧力、差圧、温度、湿度、ガス速度などのうちの1つまたは複数を測定できることを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
前記トレーニングフェーズ(16)についての方法が、上述のセンサ(9a、9b、9c、9d)が使用の前に較正される開始フェーズ(15)を含むことを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも前記第2のグループのセンサ(9a、9b、9c、9d)が、動作期間に現場でまたは自己較正によって較正されることを特徴とする、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記動作フェーズ(17)がある時点で一時的に中断されまたは止められ、その後、異なるセンサ(9a、9b、9c、9d)の測定値間の前記数学的モデルまたは関係式を再定義するために前記トレーニングフェーズ(16)が再開され、その後前記動作フェーズ(17)が再開されることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記動作フェーズ(17)のステップが所与の時間間隔で順次繰り返されることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記安全弁(10)が排流弁によって形成されることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記センサ(9a、9b、9c、9d)の少なくともいくつかが、安全弁(10a)または絞り弁(10b)とともに1つのモジュールに一体化されることを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ガスネットワーク(1)の中の各安全弁(10a)および/または絞り弁(10b)の近傍にセンサ(9a、9b、9c、9d)が設けられ、および/または逆も同様であることを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記数学的モデルがブラックボックスモデルであることを特徴とする、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
上述の数学的モデルが、パラメータまたは定数を有する行列および/または非線形ベクトル関数の形をとり、前記数学的モデルの出力または「ターゲット」の変化が前記動作フェーズ(17)の期間監視されることを特徴とする、請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
それがガス、空気、酸素、もしくは窒素、または別の毒性のないおよび/もしくは危険なガス、またはガスの混合物であることを特徴とする、請求項1から
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記絞り弁(10b)の状態または状況を決定することができる状態センサ(9c)として、前記絞り弁(10b)の両端間の差圧センサ(9d)が使用されることを特徴とする、請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
加圧下または真空下のガスネットワーク(1)であって、少なくとも、
圧縮したガスまたは真空の1つまたは複数の供給源(6)と、
圧縮したガスまたは真空利用の1つまたは複数の消費者(7)、消費者区域と、
前記ガスまたは真空を前記供給源(6)から前記消費者(7)または消費者区域に移送するためのパイプライン(5)またはパイプライン(5)のネットワーク(4)と、
前記ガスネットワーク(1)中の異なる時間および場所で前記ガスの1つまたは複数の物理パラメータを提供する複数のセンサ(9a、9b、9d)と
を備え、
いくつかの制御可能または調節可能な安全弁(10a)およびいくつかの制御可能または調節可能な絞り弁(10b)と、
場合によって、1つまたは複数の安全弁(10a)および1つまたは複数の絞り弁(10b)の状態または状況を登録できる1つまたは複数のセンサ(9c)と、
前記センサ(9a、9b、9c、9d)からのデータの収集のため、ならびに上述の安全弁(10a)および絞り弁(10b)を制御または調節するためのデータ取得制御ユニット(11)と、
請求項1から
14のいずれか一項に記載の方法を実行するための計算ユニット(12)と
をさらに備えることを特徴とする、ガスネットワーク。
【請求項16】
前記安全弁(10a)が排流弁によって形成されることを特徴とする、請求項
15に記載のガスネットワーク。
【請求項17】
前記センサ(9a、9b、9c、9d)の少なくともいくつかが、安全弁(10a)または絞り弁(10b)とともに1つのモジュールに一体化されることを特徴とする、請求項
15または
16に記載のガスネットワーク。
【請求項18】
前記ガスネットワーク(1)の中の各安全弁(10a)および/または絞り弁(10b)の近傍にセンサ(9a、9b、9c、9d)が設けられ、および/または逆も同様であることを特徴とする、請求項
15から
17のいずれか一項に記載のガスネットワーク。
【請求項19】
漏れ(13a)および障害(13b)、漏れ流量、障害、漏出費用、障害、漏れ(13a)および障害(13b)の場所を表示または信号伝達するためのモニタ(14)を前記ガスネットワーク(1)がさらに備えることを特徴とする、請求項
15から
18のいずれか一項に記載のガスネットワーク。
【請求項20】
消費者(7)の状態または状況を記録することが可能な前記センサ(9c)が前記消費者(7)自体の部分であることを特徴とする、請求項
15から
19のいずれか一項に記載のガスネットワーク。
【請求項21】
前記計算ユニット(12)が、前記ガスネットワーク(1)にワイヤレスで接続されてもされなくてもよいクラウドベースの計算ユニット(12)であることを特徴とする、請求項
15から
20のいずれか一項に記載のガスネットワーク。
【国際調査報告】