(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(54)【発明の名称】木香抽出物を含む月経前症候群症状改善用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/28 20060101AFI20220126BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220126BHJP
A61P 5/24 20060101ALI20220126BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220126BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220126BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20220126BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220126BHJP
A61P 15/14 20060101ALI20220126BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220126BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220126BHJP
【FI】
A61K36/28
A61P15/00
A61P5/24
A61P43/00
A61P25/18
A61P1/14
A61P3/04
A61P15/14
A61P21/00
A23L33/105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532472
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(85)【翻訳文提出日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 KR2019012938
(87)【国際公開番号】W WO2020122385
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】10-2018-0159060
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521154914
【氏名又は名称】ジェネンセル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】カン ス チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヨン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ユン ジュン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4C088AB26
4C088CA05
4C088CA06
4C088CA08
4C088NA14
4C088ZA18
4C088ZA70
4C088ZA73
4C088ZA81
4C088ZA94
4C088ZC11
(57)【要約】
本発明は、木香抽出物を含む月経前症候群予防及び改善又は治療用の組成物に関し、具体的に、本組成物は、月経前症候群に現れる現象である脳下垂体細胞におけるプロラクチンの分泌を効果的に抑制することにより、女性の黄体期に低くなったプロゲステロンの分泌量を増加させる他、低くなった黄体形成ホルモンと濾胞刺激ホルモンの分泌を効果的に調節し、女性月経前症候群の予防及び改善又は治療用の組成物として有用に利用可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木香抽出物を有効成分として含む、月経前症候群予防、改善又は治療用組成物。
【請求項2】
前記木香は、Aucklandia lappa Decne.又はInula helenium L.である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抽出物は、水抽出物、C
1~C
5アルコール抽出物又はC
1~C
5アルコール水溶液抽出物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記木香抽出物は、組成物全重量を基準に0.001~90重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記木香抽出物は、10%~80%エタノール水溶液抽出物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記木香抽出物は、20%~40%エタノール水溶液抽出物である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、月経前黄体期の女性においてプロラクチン分泌を抑制するか或いはプロゲステロンの分泌を増加させることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記月経前症候群の症状は、軽微な精神的障害(minor psychological discomfort)、腹部膨満感(bloating)、体重増加(weight gain)、乳房痛(breast tenderness)、筋肉痛(muscular tension or aches)、集中力低下(poor concentration)及び食欲変化(change in appetite)のいずれか一つ以上であり、前記月経前症候群症状は、月経周期のうち黄体期にのみ現れることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記月経前症候群予防又は治療用組成物は、医薬組成物である、請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記月経前症候群改善用組成物は、健康機能食品組成物である、請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、有効成分として木香抽出物を含む月経前症候群改善、予防又は治療用組成物に関する。
背景技術
【0002】
国際疾病分類(International Classification of Disease,[ICD]-10)では、軽微な精神的障害(minor psychological discomfort)、腹部膨満感(bloating)、体重増加(weight gain)、乳房痛(breast tenderness)、筋肉痛(muscular tension or aches)、集中力低下(poor concentration)、食欲変化(change in appetite)の7症状のいずれか1つ以上を満たすとともに、このような症状が月経周期の黄体期に限られるとき、月経前症候群と診断できると定義しており、これは、生理4~7日前から生理前まで現れる症状であり、生理の開始と同時に完全に消える。したがって、生理期間に子宮内膜が剥がれながら発生する生理痛とは異なる疾患として区分されている。
【0003】
月経前症候群の発生原因は明確に糾明されていないが、ホルモンのアンバランスと遺伝的性向、排卵生理周期、薬物服用、喫煙、飲酒及びカフェイン摂取、食事パターン、避姙薬服用、感情状態及び結婚状態などの生活習慣及び社会的要因、その他に年齢、身長及び体重、出産及び月経力、ストレスなども月経前症候群と関連していると知られており、最近では、月経周期にしたがって変化する女性ホルモンと黄体ホルモンが各種脳神経伝達物質に影響を及ぼし、月経前症候群の発生を誘導できると報告されている。特に、プロラクチンの増加によるプロゲステロンとエストロゲンとのアンバランス、及びセロトニンの減少などのホルモン問題が月経前症候群の発生に非常に重要に作用すると報告されている(Biqqs and Demuth,2011;Imai et al., 2015;Schmidt et al., 2017)。
【0004】
プロラクチンは、脳下垂体前葉の酸好性細胞で分泌される乳汁分泌刺激ホルモンであり、エストロゲンによって増加し、視床下部で分泌されるドーパミンによって減少すると知られている。正常人では、黄体期にプロゲステロンの分泌量がエストロゲンよりも高いのでプロラクチンの分泌量が安定化するが、月経前症候群を示す女性では、プロゲステロンの分泌量がエストロゲンよりも低くなってプロラクチンの分泌量を増加させ、このようなプロラクチン分泌の増加が月経前症候群を誘導すると報告されている(Halbreich等、1976)。これに対する根拠として、プロラクチン分泌抑制効能を示すプレフェミン錠(アグヌス・カストゥスの実抽出物)は代表的な月経前症候群治療剤として販売されており、臨床試験で苛立ち、憂欝感、怒り、頭痛、乳房痛などの症状を約50%程度改善したものと知られている。
【0005】
一方、木香(モッコウ、Aucklandiae Radix)は古くから中国で薬剤として用いられてきた。この木香を原料とした脱毛改善防止組成物が韓国公開特許第10-2015-0146981号に記載されている。また、木香とコノテガシワ抽出物を使用した免疫疾患改善用組成物が韓国公開特許第10-2013-0118396号に記載されている。また、木香を使用した難妊/不妊治療組成物が、韓国公開特許第10-2016-0151263号に記載されている。
【0006】
しかしながら、韓国の伝統薬剤として使用される木香を用いて月経前症候群を予防、又は治療する方法に関する研究は皆無な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2015-0146981号
【特許文献2】韓国公開特許第10-2013-0118396号
【特許文献3】韓国公開特許第10-2016-0151263号
【特許文献4】米国公開特許第2018-0104295号
【特許文献5】米国公開特許第2016-0008406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、女性月経前症候群に対する予防及び治療の重要性を認知し、様々な天然素材を用いて脳下垂体細胞におけるプロラクチン分泌抑制効能と脳下垂体細胞増殖効能を示す天然資源を選別した。その結果、木香抽出物は、脳下垂体細胞でプロラクチンの分泌を強く抑制し、また、高プロラクチン血症誘導動物モデルにおいて、これらの組成物は、プロゲステロンの分泌を効果的に調節することによってエストロゲンとプロゲステロンの逆転現象による月経前症候群の予防及び改善、又は治療のための組成物として商業化可能性が非常に大きい。
【0009】
したがって、本発明の目的は、木香抽出物を含む月経前症候群予防、改善又は治療用の薬剤組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、木香抽出物を含む月経前症候群症状の予防及び改善用健康機能食品組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の目的は、以上に言及した目的に制限されない。本発明の目的は、以下の説明からさらに明確になり、特許請求の範囲に記載された手段及びその組合せによって実現されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面は、木香抽出物を有効成分として含む、月経前症候群の改善、予防又は治療用の組成物を提供する。
【0013】
本発明の一側面において、上記組成物は、木香の指標成分を含む組成物を提供する。
【0014】
本発明の一側面において、前記木香は、Aucklandia lappa Decne.又はInula helenium L.である、組成物を提供する。
【0015】
本発明の一側面において、前記抽出物は、水抽出物、C1~C5アルコール抽出物又はC1~C5アルコール水溶液抽出物である、組成物を提供する。
【0016】
本発明の一側面において、前記木香抽出物は、組成物全重量を基準に0.001~90重量%である、組成物を提供する。
【0017】
本発明の一側面において、前記木香抽出物は、10%~80%エタノール水溶液抽出物である、組成物を提供する。
【0018】
本発明の一側面において、前記組成物は、月経前黄体期の女性においてプロラクチン分泌を抑制するか或いはプロゲステロンの分泌を増加させることを特徴とする、組成物を提供する。
【0019】
本発明の一側面において、前記月経前症候群の症状は、軽微な精神的障害(minor psychological discomfort)、腹部膨満感(bloating)、体重増加(weight gain)、乳房痛(breast tenderness)、筋肉痛(muscular tension or aches)、集中力低下(poor concentration)及び食欲変化(change in appetite)のいずれか一つ以上であり、前記月経前症候群症状は、月経周期のうち黄体期にのみ現れることを特徴とする、組成物を提供する。
【0020】
本発明の一側面において、前記月経前症候群予防又は治療用組成物は、医薬組成物である、組成物を提供する。
【0021】
本発明の一側面において、前記月経前症候群改善用組成物は、健康機能食品組成物である、組成物を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の組成物のうち、有効成分として含まれる木香抽出物は、脳下垂体細胞においてプロラクチンの分泌を有意に抑制し、黄体期にプロゲステロンの分泌量を増加させる他に、低下した黄体形成ホルモンと濾胞刺激ホルモンの分泌を増加させる効果を有する。したがって、木香抽出物は、プロラクチンの分泌抑制及びプロゲステロンの分泌増加が必要な疾患、すなわち、月経前症候群を改善、予防又は治療することができる。
【0023】
本発明の効果は、以上に言及した効果に限定されない。本発明の効果は、以下の説明から推論可能ないかなる効果も含むと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】高プロラクチン血症誘導動物モデルにおいて本発明の木香抽出物のプロラクチン分泌抑制効果を示す図である。
【
図2】高プロラクチン血症誘導動物モデルにおいて本発明の木香抽出物のエストロゲン対比プロゲステロンの分泌増加効果を示す図である。
【
図3】高プロラクチン血症誘導動物モデルにおいて本発明の木香抽出物の黄体形成ホルモン(LH)分泌増加効果を示す図である。
【
図4】高プロラクチン血症誘導動物モデルにおいて本発明の木香抽出物の卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌増加効果を示す図である。
【
図5】高プロラクチン血症誘導動物モデルにおいて本発明の木香抽出物のプロスタグランジンE2の分泌抑制効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
別に断りのない限り、本明細書で使われた成分、反応条件、成分の含有量を表現するあらゆる数字、値及び/又は表現は、これらの数字が本質的に異なるものからこのような値を得る上で発生する測定の様々な不確実性が反映された近似値であるので、全ての場合、「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。また、本記載において数値範囲が開示される場合、かかる範囲は連続的であり、別に指摘されない限り、これらの範囲における最小値から最大値が含まれた該最大値までのいずれの値も含む。さらに、このような範囲が整数を指す場合、別に断りのない限り、最小値から最大値が含まれた該最大値までを含むいずれの整数も含まれる。
【0026】
本明細書において、範囲が変数に対して記載される場合、前記変数は、前記範囲の記載された終了点を含む記載された範囲内におけるいずれの値も含むものとして理解されるべきである。例えば、「5~10」の範囲は、5、6、7、8、9、及び10の値だけでなく、6~10、7~10、6~9、7~9などの任意の下位範囲も含み、5.5、6.5、7.5、5.5~8.5及び6.5~9などのような記載された範囲の範ちゅうに妥当な整数の間の任意の値も含むものとして理解すべきであろう。また、例えば、「10%~30%」の範囲は、10%、11%、12%、13%などの値と30%までを含む全ての整数だけでなく、10%~15%、12%~18%、20%~30%などの任意の下位範囲も含み、10.5%、15.5%、25.5%などのように、記載された範囲の範ちゅう内の妥当な整数の間の任意の値も含むものとして理解されるべきであろう。
【0027】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0028】
本発明は、木香抽出物を含む月経前症候群予防、改善又は治療用組成物に関する。具体的に、本組成物は、月経前症候群に見られる現象である脳下垂体細胞におけるプロラクチンの分泌を効果的に抑制することにより、女性の黄体期に低下したプロゲステロンの分泌量を増加させるとともに黄体形成ホルモン及び濾胞刺激ホルモンの分泌量を増加させ、女性月経前症候群予防及び改善又は治療用の組成物として有用に用いることができる。
【0029】
木香(Aucklandiae radix、Aucklandia lappa Decne.又はInula helenium L.)は、キク科に属する多年生草本で、根を漢方薬材として使用し、気血循環剤として気を通らせて鎮痛作用、芳香性健胃作用及び去痰作用をし、漢方や民間では霍乱、吐瀉、下痢、腹痛、消化不良、食滞、回虫駆除、健胃、利尿剤、去痰、発汗、喘息、気管支炎、咳嗽、腫脹、害毒などに用いられてきた。木香の主要成分としては、セスキテルペンラクトン化合物であるコスツノリド(costunolide)及びデヒドロコスツスラクトン(dehydrocostus lactone)、アラントラクトン(alantolactone)、ジヒドロコスツノリド(dihydrocostunolide)、イソジヒドロコスツノリド(isodihydrocostunolide)、イソアラントラクトン(isoalantolactone)、モッコウラクトン及びリグナン(mokko lactone and lignan)、アルカロイド(alkaloid)、タンニン(tannin)、ジヒドロコスツノリド(dihydrocostunolide)、コスタスラクトン(costuslactone)、α‐コストール(α-costol)、サウスシュレアラクトン(saussurea lactone)などが報告されており、大韓民国生薬規格集と中和人民共和国薬典では、木香の指標成分をコスツノリド及びデヒドロコスツスラクトンと規定しており、その総量を1.8%以上含有すると規定している。
【0030】
木香抽出物は、抗炎症、抗癌、抗酸化、抗菌、抗アレルギー作用などの様々な生理活性が報告されているが、現在まで発表されたいかなる文献においても、木香抽出物及びその主要成分がプロラクチン分泌抑制による女性月経前症候群の予防、改善又は治療に有効であると明らかにしたことはない。
【0031】
本発明は、木香抽出物を含む月経前症候群予防、改善又は治療用医薬組成物を提供する。前記組成物は、液状の抽出物又は該液状抽出物の凍結乾燥した粉末形態のものでよい。
【0032】
また、本発明は、木香抽出物を含む月経前症候群改善用健康機能食品組成物を提供する。該組成物は、液状の抽出物又は該液状抽出物の凍結乾燥した粉末形態のものでよい。
【0033】
以下、本発明の様々な側面を説明する。
【0034】
本発明の一側面は、木香抽出物を有効成分として含む、月経前症候群の改善、予防又は治療用の組成物を提供する。
【0035】
前記組成物は、脳下垂体細胞においてプロラクチンの分泌を効果的に抑制し、黄体期にプロゲステロンの分泌量を増加させる。また、前記組成物は、日常的に摂取及び服用してきた天産物で、月経前症候群の予防及び改善又は治療に安全に用いることができる。
【0036】
前記木香抽出物は、木香を通常の抽出方法で抽出したものでよく、前記抽出物を減圧乾燥及び凍結乾燥の方法を経て粉末状にした抽出物でよい。
【0037】
前記木香は、Aucklandia lappa Decne.又はInula helenium L.でよい。
【0038】
本発明の一側面において、前記抽出物は、水抽出物、C1~C5アルコール抽出物又はC1~C5アルコール水溶液抽出物である、組成物を提供する。
【0039】
前記抽出溶媒内のアルコールの含有量は、アルコール0~95重量%の濃度、好ましくは10~70重量%、より好ましくは30重量%、50重量%、又は70重量%の濃度範囲を維持することが、抽出の効率性面において有利である。このようなアルコールは、当分野で一般に用いられるいかなるものも適用可能であり、好ましくは、炭素数1~5のアルコールでよく、前記アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール及びブタノールから選ばれる1種以上が適用されてよい。より好ましくは、前記アルコールとしてはエタノール(酒精)などを用いることができる。
【0040】
前記抽出方法は、当業界で一般に知られた方法であり、例えば、超臨界抽出、亜臨界抽出、高温抽出、高圧抽出又は超音波抽出法などの抽出装置を用いた方法又はXAD及びHP-20を含む吸着樹脂を用いる方法などが利用できる。
【0041】
また、抽出液は、真空回転蒸発器などを用いて減圧濃縮してエキスを得る。また、得られたエキスは、必要によって、減圧乾燥、真空乾燥、沸騰乾燥、噴霧乾燥、常温乾燥又は凍結乾燥などを施してもよい。特に、凍結乾燥の方法を適用する場合、抽出物内の揮発性有機物質の損失を低減できるという長所がある。
【0042】
上記の方法で得られる木香抽出物は、脳下垂体細胞においてプロラクチンの分泌を効果的に抑制し、黄体期にプロゲステロンの分泌量を増加させる。また、上記の方法で得られる木香抽出物を含む組成物は、脳下垂体細胞においてプロラクチンの分泌を抑制し、且つプロゲステロンの分泌量をより効果的に調節する。
【0043】
本発明の一側面において、前記木香抽出物は、組成物全重量を基準に0.001~90重量%である、組成物を提供する。
【0044】
本発明の一側面において、前記木香抽出物は、10%~80%エタノール水溶液抽出物である、組成物を提供する。
【0045】
本発明の一側面において、前記組成物は、月経前黄体期の女性においてプロラクチン分泌を抑制したり或いはプロゲステロンの分泌を増加させることを特徴とする、組成物を提供する。
【0046】
本発明の一側面において、前記月経前症候群の症状は、軽微な精神的障害(minor psychological discomfort)、腹部膨満感(bloating)、体重増加(weight gain)、乳房痛(breast tenderness)、筋肉痛(muscular tension or aches)、集中力低下(poor concentration)及び食欲変化(change in appetite)のいずれか一つ以上であり、前記月経前症候群症状は、月経周期のうち黄体期にのみ現れることを特徴とする、組成物を提供する。
【0047】
本発明の一側面において、前記月経前症候群の予防又は治療用組成物は医薬組成物である、組成物を提供する。
【0048】
前記薬剤組成物を臨床的に利用するときは、薬学的分野における通常の担体と共に配合して薬学的分野における通常の製剤、例えば、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、丸剤、液剤及び懸濁剤などの経口投与用製剤;注射用溶液又は懸濁液、又は注射に当たって注射用蒸留水で製造して使用できる即時使用型注射用乾燥粉末などの形態である注射用製剤;又は軟膏剤などの様々な製剤に剤形化できる。通常の担体を用いて製造された薬学的製剤は、経口的に投与したり、或いは、非経口的に、例えば、静脈内、皮下、腹腔内又は局所適用できる。したがって、本発明の薬剤組成物は、薬剤の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。
【0049】
本発明の薬剤組成物に含み得る担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、微結晶セルロース、ケイ素化微結晶セルロース、ポビドン、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、ノイシリン、コロイドシリコンジオキシド、乳糖、タルク、ステアリン酸マグネシウム、コロイドステアリルマグネシウム、及び鉱物油などから選ばれる1種以上が用いられてよい。
【0050】
製剤化する場合には、一般に使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて調製する。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、トローチ剤、ロゼンジ、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、本発明の組成物に少なくとも一つの賦形剤、例えば、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アミロペクチン、セルロース、炭酸カルシウム、ゼラチンなどを混ぜて調製する。また、単純な賦形剤の他、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤には、懸濁剤、耐溶液剤、乳剤、エリキシル剤、シロップ剤などが該当するが、一般に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤なども含まれてよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどを用いることができる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロールゼラチンなどを用いることができる。非経口投与は、一般に、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射又は胸部内注入方式を用いることができる。
【0051】
本発明の薬剤組成物の好ましい投与量は、患者の年齢、体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び期間によって異なるが、当業者にとって適度に選択できる。ただし、好ましい効果のために、本発明の薬剤組成物は、1日に0.01mg/kg~10g/kgで、好ましくは1mg/kg~1g/kgで投与することができる。投与は、医師又は薬剤師の判断によって一定の時間間隔で1日数回、好ましくは1回~6回に分割投与できる。
【0052】
本発明の一側面において、前記月経前症候群改善用組成物は健康機能食品組成物である、組成物を提供する。
【0053】
本発明に係る健康機能食品組成物は、木香抽出物を有効成分として含み、月経前状態を改善させる目的で摂取できる。前記有効成分は、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、丸剤、液剤、懸濁剤などとして製造した食品で摂取してもよく、或いは一般食品に添加して摂取してもよい。前記健康機能食品は、一般薬品とは違い、食品を原料とするので、薬品の長期服用時に発生し得る副作用などがないという長所がある。有効成分の含有量は、その使用目的(予防又は改善用)によって適切に決定することができる。一般に、健康機能食品組成物中に有効成分を0.1~90重量%含むことができる。しかし、健康及び衛生を目的としたり又は健康調節を目的とする長期間の摂取では、前記量は、前記範囲の以下であってもよく、安全性面で何ら問題もないので、有効成分は前記範囲以上の量であってもよい。
【0054】
前記食品の種類には特に制限がない。前記有効成分を添加できる食品の例には、ドリンク剤、肉類、ソーセージ、パン、ビスケット、モチ、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、アルコール飲料及びビタミン複合剤、乳製品及び乳加工製品などがあり、通常の意味を有するあらゆる健康機能食品を含む。前記食品の性状も特に制限されず、固体状、半固体状、ゲル状、液体状、粉末状などのいずれであってもよい。
【0055】
本発明の健康機能食品組成物を用いて飲料として製造することができる。飲料に含まれる成分として、有効成分以外の他の成分の選択に特に制限はなく、通常の飲料と同様に、様々な香味剤又は天然炭水化物などを追加成分として含むことができる。前記天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロースなど;及びポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。上述した以外の香味剤として、天然香味剤(タウマチン)、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用することができる。前記天然炭水化物の比率は、一般に、本発明の組成物100ml当たりに約1~20g、好ましくは約5~12gである。
【0056】
また、本発明の健康機能食品組成物は、有効成分の他にも、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び充填剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを添加剤として含有できる。その他にも、天然果物ジュース及び果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有できる。このような成分は、独立して又は組み合わせて使用することができる。このような添加剤の比率は、特に重要ではないが、本発明の健康機能食品組成物中に0.1~20重量%の範囲で含まれるのが一般的である。
【0057】
以下、具体的な実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0058】
[実施例及び比較例]
【0059】
実施例1:木香抽出物の製造
【0060】
木香(Aucklandiae Radix)は、キョンド市場で購入し、粉砕した木香1kgを30%酒精で80℃で5時間抽出した後に濃縮及び凍結乾燥し、木香抽出物315g(収率31.5%)を得た。
【0061】
実施例2及び3
【0062】
前記実施例1と同一に製造するが、酒精の濃度を50%(実施例2)及び70%(実施例3)にして抽出した。
【0063】
比較例1~2
【0064】
比較例として前記実施例1と同一に製造するが、木香の熱水抽出物(比較例1)、及び95%(比較例2)酒精抽出物が使用された。
【0065】
[実験例]
【0066】
実験例1:プロラクチン分泌抑制効能測定
【0067】
前記実施例で得られた木香抽出物及び比較例(比較例1~3)に対してプロラクチン分泌抑制効能を脳下垂体細胞を用いて測定した。
【0068】
ラットの脳下垂体細胞GH3はATCC(American Type Culture Collection)から購入し、DMEM培養培地、トリプシン、FBS(Fetal bovine serum)はギブコ(GibcoTM,Invitrogen corporation)から購入し、測定用プロラクチンELISAキットはMol-innovationから購入して使用した。
【0069】
4×104cells/wellの濃度でGH3脳下垂体細胞を24ウェルプレート(well plate)に分注し、24時間培養した。プロラクチン分泌抑制効能評価のために、実施例1~3及び比較例1~2の木香抽出物を2550μg/mL、50μg/mLで処理して48時間培養した後、ラットプロラクチンELISAキットを用いてプロラクチン分泌量を標準曲線に代入して定量した。
【0070】
木香抽出物のプロラクチン分泌抑制効能を表1に示す。
【0071】
【0072】
前記表1に示したように、木香は30%(実施例1)、50%(実施例2)、70%(実施例3)酒精抽出物50μg/mLで非常に優れたプロラクチン分泌抑制効能を示し、本発明では、酒精濃度が最も低い30%酒精抽出物を用いて下記実験例2の動物試験を行った。
【0073】
実験例2:高プロラクチン血症誘導動物モデルにおける月経前症候群効能評価
【0074】
メトクロプラミド(Metoclopramide;MCP)は嘔吐抑制剤として用いられる物質であり、ドーパミン分泌抑制によってプロラクチンの分泌を増加させ、これによってプロゲステロン、黄体形成ホルモン及び濾胞刺激ホルモンの分泌量を抑制させる薬物として知られている(Wang等、2014)。そこで、本発明では、雌マウスの腹腔に20日間2日間隔でメトクロプラミドを20mg/kgで投与した後、高プロラクチン血症を誘導してホルモン分泌障害による月経前症候群動物モデルを確立した。
【0075】
ICRマウス(雌、12週齢)はラオンバイオから入手し、一般の固形飼料と水を自由に供給しながら1週間馴化させた。動物室の環境条件は、温度23±3℃、相対湿度50±10%、照明時間12時間(午前8時~午後8時)、換気回数10~20回/時間、照度150~300Luxに設定した。実験期間において動物室の温度及び湿度は恒温湿気によって自動に調節した。
【0076】
実験動物群は、1)正常群、2)高プロラクチン血症誘導対照群、3)プレフェミン投与群、4)製造例25mg/kg投与群、5)製造例50mg/kg投与群、6)製造例100mg/kg投与群とし、3週間経口投与した。実験終了後に血液を採取し、血清を分離した後、血清中のプロラクチン、プロゲステロン及びエストロゲン、黄体形成ホルモン(LH)、濾胞刺激ホルモン(FSH)、プロスタグランジンE2の分泌量を測定し、その結果を
図1、
図2、
図3、
図4、及び
図5に図式化した。
【0077】
図1によれば、血清中プロラクチンは、メトクロプラミドによって増加し、本発明の木香30%酒精抽出物(製造例)によって血中プロラクチンの濃度が効果的に減少した。
【0078】
また、
図2によれば、本発明の木香30%酒精抽出物は、エストロゲンに比べてプロゲステロンの分泌量を効果的に増加させ、
図3及び
図4の結果に見られるように、黄体形成ホルモン及び濾胞刺激ホルモンの分泌量も効果的に増加させた。
【0079】
血中プロスタグランジンは、中枢神経系、水分-電解質バランス、消化器系機能及び子宮の収縮など、様々な生理機能を調節する物質であり、このような血中プロスタグランジンの調節に問題が発生すると、情動障害、頭痛、乳房痛、腹部膨満及び体重増加などの月経前症候群の症状が現れる。
図5に示すように、本発明の木香30%酒精抽出物はプロスタグランジンの血中濃度を効果的に減少させることを確認した。
【0080】
このような点から、本発明の木香抽出物は、脳下垂体細胞におけるプロラクチンを分泌抑制させることによって、月経前症候群において低くなったプロゲステロンの分泌量を増加させる他、黄体形成ホルモンと濾胞刺激ホルモンの分泌を正常化させ、このような機能によって月経前症候群の予防及び改善又は治療剤として有効であることが分かる。
【0081】
以上、添付の図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更しないで他の具体的な形態にも実施され得るということが理解できよう。したがって、以上に述べた実施例は、いずれの面においても例示的であり、限定的でないものとして理解しなければならない。
【国際調査報告】