(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(54)【発明の名称】コバルト前駆体、その製造方法およびこれを用いた薄膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 211/65 20060101AFI20220126BHJP
C23C 16/18 20060101ALI20220126BHJP
C07F 15/06 20060101ALN20220126BHJP
【FI】
C07C211/65
C23C16/18
C07F15/06 CSP
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532479
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(85)【翻訳文提出日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 KR2018016739
(87)【国際公開番号】W WO2020130215
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0165373
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヒョ-ソク
(72)【発明者】
【氏名】パク, ミン-ソン
(72)【発明者】
【氏名】ソク, チャン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク, チュン-ウ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H050
4K030
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB90
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB90
4H050WB11
4H050WB14
4H050WB21
4K030AA11
4K030AA12
4K030AA13
4K030AA14
4K030BA05
(57)【要約】
本発明は、気相蒸着により薄膜蒸着が可能な気相蒸着化合物に関し、具体的には、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)に適用可能であり、反応性、揮発性および熱的安定性に優れた新規コバルト前駆体、その製造方法およびこれを用いた薄膜の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物:
【化1】
前記化学式1において、
R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素;置換もしくは非置換の炭素数1~6の線状または分枝状、飽和または不飽和のアルキル基、またはこれらの異性体であり、
Lは、電子対または多重結合を含む中性リガンドである。
【請求項2】
R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、およびこれらの異性体からなる群より選択されるいずれか1つである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Lは、カルボニル(carbonyl、CO)、ニトロシル(nitrosyl、NO)、シアン(cyan、CN)、イソシアニド(isocyanide)、ニトリル(nitrile)、アルキン(alkyne)、アルケン(alkene)、ジエン(diene)、またはトリエン(triene)を含むリガンドからなる群より選択されるいずれか1つである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-1で表されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物:
【化1-1】
前記化学式1-1において、
R
1、R
2、R
3およびR
4は、前記化学式1と同一であり、
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素;置換もしくは非置換の炭素数1~3の線状または分枝状、飽和または不飽和のアルキル基、またはこれらの異性体である。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物を含む、気相蒸着前駆体。
【請求項6】
請求項5に記載の気相蒸着前駆体をチャンバに導入するステップを含む、薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記薄膜の製造方法は、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)を含む、請求項6に記載の薄膜の製造方法。
【請求項8】
反応ガスとして、水素(H
2)、酸素(O)原子含有化合物、窒素(N)原子含有化合物、またはケイ素(Si)原子含有化合物の中から選択されたいずれか1つ以上を注入するステップをさらに含む、請求項6に記載の薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記反応ガスは、水(H
2O)、酸素(O
2)、水素(H
2)、オゾン(O
3)、アンモニア(NH
3)、ヒドラジン(N
2H
4)、またはシラン(Silane)の中から選択されたいずれか1つ以上である、請求項8に記載の薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相蒸着により薄膜蒸着が可能な気相蒸着化合物に関し、具体的には、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)に適用可能であり、反応性、揮発性および熱的安定性に優れた新規コバルト前駆体、その製造方法およびこれを用いた薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハ上に前駆体を用いた表面反応により絶縁膜や導電性薄膜などを形成させる原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)において適切な前駆体の選択は工程装置とともに非常に重要な要素である。
【0003】
コバルトの場合、コバルトボライド(CoB)の形成によるコンタクト抵抗増加の問題がないだけでなく、コバルトシリサイド膜の形成時、相対的に比抵抗が低く、熱的安定性に優れるという利点により次世代半導体工程におけるオーミックコンタクト層としてコバルトシリサイドを使用しようとする研究が進められている。
【0004】
特に、半導体素子の集積度が高くなりその構造が複雑化を増すにつれ、高いアスペクト比(high aspect ratio)を有する構造に優れた段差被覆性(step coverage)を有するコバルト薄膜が求められている。
【0005】
また、コバルト酸化物薄膜は、磁気検出器(magnetic detector)、湿気センサ、酸素センサおよび超伝導体などの多様な分野で応用が期待されている。その他にも、金属コバルト薄膜を接着層として用いて銅薄膜と拡散防止膜の接着性を向上させる研究も活発に進められている。
【0006】
一般的に、従来広く用いられているコバルト蒸着用前駆体化合物としては、Co(CO)3(NO)[cobalt tricarbonyl nitrosyl]、Co(CO)2Cp[cabalt dicarbonyl cyclopentadienyl]、Co2(CO)8[dicobalt octacarbonyl]、CoCp2[biscyclopentadienyl cobalt]などが知られている。
【0007】
このうち、Co(CO)3(NO)、Co(CO)2Cp化合物は、常温で液体であり、蒸気圧が極めて高いという利点があるが、常温で熱分解が発生するなど熱的に不安定であるため、工程上多くの困難をもたらしうるという欠点がある。また、Co2(CO)8およびCoCp2化合物は、常温で固体であり、蒸気圧も比較的低いため、Co(CO)3(NO)、Co(CO)2Cp化合物より工程の適用がさらに難しい問題がある。
【0008】
これとともに、シクロペンタジエニル(cyclopentadienyl)系の化合物は、蒸着温度が300℃以上と相対的に高いだけでなく、リガンドの分解特性上、炭素汚染が深刻に発生する問題点がある。
【0009】
これらの問題点を解決するために、C=N二重結合を含んでいるジアザジエン(Diazadiene、DAD)リガンドを含むコバルト前駆体や中性リガンドを含む前駆体に関する研究が進められていたが、依然として多様な蒸着工程で活用できる反応性、揮発性および熱的安定性に優れたコバルト前駆体に関する研究が切実に求められているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した従来のコバルト前駆体の問題点を解決するためのものであって、反応性、熱的安定性および揮発性に優れた薄膜蒸着用コバルト前駆体化合物を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、前記コバルト前駆体化合物を用いた薄膜の製造方法を提供しようとする。
【0012】
しかし、本願が解決しようとする課題は以上に述べた課題に制限されず、述べていないさらに他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
コバルト薄膜(特に、コバルト金属薄膜)の蒸着時、コバルト1価または2価(Co1+、Co2+)前駆体を用いる場合、水素ガスを使用しければならなかったり、薄膜の汚染が誘発されるなどの欠点があった。
【0014】
これに対し、コバルト0価化合物が前駆体として用いられる場合、コバルト1価または2価(Co1+、Co2+)前駆体の使用時に発生しうる問題点が解消できるが、まだコバルト0価化合物前駆体は多く知られていない状態である。
【0015】
C=N二重結合を含んでいるジアザジエン(Diazadiene、DAD)リガンドは、金属と結合方式が0価、1価、2価と多様であり、リガンドが0価の形態で作用する場合、コバルト薄膜の形成に適したリガンドと判断されている。
【0016】
特に、Co(DAD)骨格に電子を提供できる中性リガンド(neutral ligand)を導入してコバルト金属の周りに空いているサイトを取り囲んで化合物を安定化させ、従来のコバルト前駆体化合物を越える、反応性、揮発性および熱的安定性に優れた、常温で液体状態である新規コバルト前駆体を得ることができる。
【0017】
本願の一側面は、下記化学式1で表される化合物を提供する。
【化1】
【0018】
前記化学式1において、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素;置換もしくは非置換の炭素数1~6の線状または分枝状、飽和または不飽和のアルキル基、またはこれらの異性体であり、Lは、電子対または多重結合を含む中性リガンドである。
【0019】
本願の他の側面は、前記化合物を含む気相蒸着前駆体を提供する。
【0020】
本願のさらに他の側面は、前記気相蒸着前駆体をチャンバに導入するステップを含む薄膜の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る新規気相蒸着コバルト化合物および前記気相蒸着化合物を含む前駆体は、反応性、揮発性および熱的安定性に優れていて高温で薄膜蒸着が可能であり、熱損失による残留物が少なくて工程上副反応を防止することができる。
【0022】
また、本発明の気相蒸着前駆体は、粘度および気化率が低くて均一な薄膜蒸着が可能であり、これによる優れた薄膜物性、厚さおよび段差被覆性の確保が可能である。
【0023】
前記のような物性は、原子層蒸着法および化学気相蒸着法に適した前駆体を提供し、優れた薄膜特性に寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の新規コバルト前駆体は、下記化学反応式1で表した合成反応により製造できる。
【0025】
まず、ハロゲン元素(X)が置換されたコバルト化合物(CoX
2)とC=N二重結合を含んでいるジアザジエン(Diazadiene、DAD)リガンド化合物とを反応させてCo(DAD)骨格を有する化合物を合成する。以後、Co(DAD)骨格に電子を提供できる電子対または多重結合を含む中性リガンドを導入して新規コバルト前駆体を合成した。
【化2】
【0026】
前記化学反応式1において、Xは、ハロゲン元素であり、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素;置換もしくは非置換の炭素数1~6の線状または分枝状、飽和または不飽和のアルキル基、またはこれらの異性体であり、Lは、電子対または多重結合を含む中性リガンドである。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本願の実施形態および実施例を詳しく説明する。しかし、本願は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態および実施例に限定されない。
【0028】
本願の一側面は、下記化学式1で表される化合物を提供する。
【化1】
【0029】
前記化学式1において、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素;置換もしくは非置換の炭素数1~6の線状または分枝状、飽和または不飽和のアルキル基、またはこれらの異性体であり、Lは、電子対または多重結合を含む中性リガンド(neutral ligand)であることが好ましい。
【0030】
本願の一実施形態において、より好ましくは、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、およびこれらの異性体からなる群より選択されるいずれか1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0031】
本願の一実施形態において、より好ましくは、Lは、カルボニル(carbonyl、CO)、ニトロシル(nitrosyl、NO)、シアン(cyan、CN)、イソシアニド(isocyanide)、ニトリル(nitrile)、アルキン(alkyne)、アルケン(alkene)、ジエン(diene)、またはトリエン(triene)を含むリガンドからなる群より選択されるいずれか1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0032】
本願の一実施形態において、さらに好ましくは、Lは、下記のような構造式を有することができるが、これに限定されるものではない。
1)アルキン(alkyne):R1’-C≡C-R2’
2)アルケン(alkene):R3’R4’C=CR5’R6’
3)ジエン(diene):R7’R8’C=CR9’-CR10’=CR11’R12’
4)トリエン(triene):R13’R14’C=CR15’-CR16’=CR17’-CR18’=CR19’R20’
5)サイクリックジエン(cyclic diene):1,3(1,4)-cyclohexadiene、1,3(1,4)-cycloheptadiene、cyclopentadiene、1,5-cyclooctadiene、1,5-dimethyl-1,5-cyclooctadiene
6)サイクリックトリエン(cyclic triene):1,3,5-cycloheptadiene
7)イソシアニド(isocyanide):R21’-NC
8)アルキルニトリル(alkyl nitrile):R22’-CN
【0033】
前記1)~8)において、R1’~R22’は、それぞれ独立して、水素;置換もしくは非置換の炭素数1~6の線状または分枝状、飽和または不飽和のアルキル基、またはこれらの異性体であることが好ましい。
【0034】
本願の一実施形態において、先に説明した本発明の化合物は、常温で液状であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0035】
本願の一実施形態において、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-1で表されることを特徴とする化合物であることが好ましい。
【化1-1】
【0036】
前記化学式1-1において、R1、R2、R3およびR4は、前記化学式1と同一であり、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素;置換もしくは非置換の炭素数1~3の線状または分枝状、飽和または不飽和のアルキル基、またはこれらの異性体であることが好ましい。
【0037】
本願の他の側面は、先に説明した本発明の化合物を含む気相蒸着前駆体を提供する。
【0038】
本願のさらに他の側面は、本発明の気相蒸着前駆体をチャンバに導入するステップを含む薄膜の製造方法を提供する。前記気相蒸着前駆体をチャンバに導入するステップは、物理吸着、化学吸着、または物理および化学吸着するステップを含むことができる。
【0039】
本願の一実施形態において、前記薄膜の製造方法は、本発明の気相蒸着前駆体と反応ガスを順次に導入する原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)と本発明の気相蒸着前駆体と反応ガスを継続して注入して成膜する化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)をすべて含むことができる。
【0040】
より具体的には、前記蒸着法は、有機金属化学気相蒸着(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、MOCVD)、低圧化学気相蒸着(Low Pressure Chemical Vapor Deposition、LPCVD)、パルス化化学気相蒸着法(P-CVD)、プラズマ強化原子層蒸着法(PE-ALD)、またはこれらの組み合わせを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0041】
本願の一実施形態において、前記薄膜の製造方法は、反応ガスとして、水素(H2)、酸素(O)原子含有化合物(または混合物)、窒素(N)原子含有化合物(または混合物)、またはケイ素(Si)原子含有化合物(または混合物)の中から選択されたいずれか1つ以上の反応ガスを注入するステップをさらに含むことができる。
【0042】
より具体的には、水(H2O)、酸素(O2)、水素(H2)、オゾン(O3)、アンモニア(NH3)、ヒドラジン(N2H4)、またはシラン(Silane)の中から選択されたいずれか1つ以上を反応ガスとして使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0043】
具体的には、コバルト酸化物薄膜を蒸着するために、反応ガスとして、水蒸気(H2O)、酸素(O2)、およびオゾン(O3)を使用することができ、コバルト窒化物薄膜を蒸着するために、反応ガスとして、アンモニア(NH3)またはヒドラジン(N2H4)を使用することができる。
【0044】
また、金属コバルト薄膜を蒸着するために、反応ガスとして、水素(H2)またはシラン(Silane)類の化合物を使用することができ、コバルトシリサイド(CoSiまたはCoSi2)薄膜を蒸着するために、反応ガスとして、水素(H2)またはシラン類の化合物を使用することができる。
【0045】
本発明の薄膜の製造方法により製造された薄膜は、コバルト金属薄膜、コバルト酸化薄膜、コバルト窒化薄膜、またはコバルトシリサイド薄膜であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
以下、実施例を用いて本願をより具体的に説明するが、本願がこれに限定されるものではない。
【0047】
本発明の新規コバルト前駆体は、下記化学反応式1で表した合成反応により製造できる。
【0048】
まず、ハロゲン元素(X)が置換されたコバルト化合物(CoX
2)とC=N二重結合を含んでいるジアザジエン(Diazadiene、DAD)リガンド化合物とを反応させてCo(DAD)骨格を有する化合物を合成する。以後、Co(DAD)骨格に電子を提供できる電子対または多重結合を含む中性リガンドを導入して新規コバルト前駆体を合成した。
【化2】
【0049】
前記化学反応式1において、Xは、ハロゲン元素であり、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素;置換もしくは非置換の炭素数1~6の線状または分枝状、飽和または不飽和のアルキル基、またはこれらの異性体であり、Lは、電子対または多重結合を含む中性リガンドである。
【0050】
[実施例1]
Co(DAD)Br2化合物の合成
下記化学反応式2に表したCo(DAD)Br2化合物を合成するために、フラスコにCoBr2(1当量)をTHF溶媒に入れて、低温で撹拌させた後、溶媒に溶かしたDADリガンド化合物(1当量)をゆっくり入れた。混合物を常温で一晩撹拌し、反応が終了した後、溶媒を除去して固体化合物を得た。
【0051】
実施例1で使用されたDADリガンド化合物は、下記化学反応式2のR1、R2が、それぞれ独立して、イソプロピル(isopropyl、iPr)またはtert-ブチル(tert-butyl、tBu)であり、R3、R4は、それぞれ独立して、水素(H)、メチル(Me)、またはエチル(Et)であった。
【0052】
[実施例2]
Co(DAD)(dienyl ligand)化合物の合成
下記化学反応式2に表しているように、フラスコにNa/K合金(alloy)(1当量)をTHFに入れて、低温に下げた後、溶媒に溶かした実施例1により合成されたCo(DAD)Br2(1当量)をゆっくり入れた。混合物に中性リガンドに相当するジエニルリガンド(dienyl ligand)化合物を入れて、常温で一晩撹拌した後、反応が終了すると、混合物を減圧濾過し、溶媒を除去する。
【0053】
得られた化合物を再びペンタン(pentane)に溶かした後、減圧濾過し、溶媒を除去して蒸留または昇華法で精製して純粋な最終化合物を得た。
【0054】
実施例2で使用されたジエニルリガンド(dienyl ligand)化合物は、下記化学反応式2におけるR
5、R
6が、それぞれ独立して、水素またはメチル(Me)であった。
【化3】
【0055】
[製造例1]
化学気相蒸着法(CVD)を利用してコバルト薄膜を製造した。
実施例1または2の新規コバルト前駆体が0.02Mの濃度でオクタン(octane)に含まれている前駆体を出発前駆体溶液(starting precursor solution)として使用した。この前駆体溶液を気化させるために、0.1cc/minの流速で50~150℃の温度が維持される気化器に伝達した。このように気化した前駆体を50~300sccmのヘリウム(キャリアガス)を用いて蒸着チャンバに伝達した。反応ガスとしては水素(H2)を使用し、1L/min(1pm)の流速で蒸着チャンバに供給した。蒸着チャンバの圧力は1~20torrに調節し、蒸着温度は80~300℃に調節した。このような条件で約15分間蒸着工程を行った。
【0056】
[製造例2]
原子層蒸着法(ALD)を利用してコバルト薄膜を製造した。
基板上に実施例1または2の新規コバルト前駆体と酸素(O2)を含む反応ガスを交互に供給してコバルト薄膜を製造した。前駆体と反応ガスを供給した後には、それぞれパージガスであるアルゴンを供給して、蒸着チャンバ内に残存する前駆体と反応ガスをパージした。前駆体の供給時間は8~15秒に調節し、反応ガスの供給時間も8~15秒に調節した。蒸着チャンバの圧力は1~20torrに調節し、蒸着温度は80~300℃に調節した。
【0057】
[製造例3]
原子層蒸着法(ALD)を利用してコバルト薄膜を製造した。
抵抗が0.02Ωmのp-型Si(100)ウエハを用いた。蒸着に先立ち、p-型Siウエハはアセトン-エタノール-脱イオン水(DI water)にそれぞれ10分ずつ超音波処理(Ultra sonic)して洗浄した。Siウエハ上に形成された自然酸化物薄膜はHF10%(HF:H2O=1:9)の溶液に10秒間浸漬した後に除去した。
【0058】
[Co(DAD)(dienyl ligand)前駆体](10秒/15秒)-[Ar](10~30秒)-[O3](5秒/8秒/10秒)-[Ar](10~30秒)の順に供給し、パージのためのアルゴン(Ar)の流量は1000sccmとした。反応ガスとしては224g/cm3の濃度のオゾン(O3)を使用し、各反応気体は空圧バルブのon/offを調節して注入し、80~300℃の工程温度で成膜した。
【0059】
従来のコバルト化合物は、常温で不安定であるという欠点により前駆体としての使用が難しかった。これに対し、本発明であるジアザジエン(diazadiene、DAD)リガンドと中性リガンドを共に含む新規コバルト前駆体は、熱安定性が相対的に高いとともに、酸化性反応気体との反応性も高いという利点がある。
【0060】
また、本発明であるジアザジエン(DAD)リガンドと中性リガンドを共に含む新規コバルト前駆体により均一な薄膜蒸着が可能であり、これによって優れた薄膜物性、厚さおよび段差被覆性を確保することができる。
【0061】
本発明の範囲は、上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出されるあらゆる変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、気相蒸着により薄膜蒸着が可能な気相蒸着化合物に関し、具体的には、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)に適用可能であり、反応性、揮発性および熱的安定性に優れていて高温で薄膜蒸着が可能であり、熱損失による残留物が少なくて工程上副反応を防止することができる。
【0063】
また、本発明の気相蒸着前駆体は、粘度および気化率が低くて均一な薄膜蒸着が可能であり、これによる優れた薄膜物性、厚さおよび段差被覆性の確保が可能である。
【0064】
上記のような物性は、原子層蒸着法および化学気相蒸着法に適した前駆体を提供し、優れた薄膜特性に寄与する。
【国際調査報告】