(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(54)【発明の名称】希土類前駆体、その製造方法およびこれを用いて薄膜を形成する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 217/08 20060101AFI20220126BHJP
C23C 16/18 20060101ALI20220126BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220126BHJP
H01L 21/314 20060101ALI20220126BHJP
C07F 5/00 20060101ALN20220126BHJP
C07F 17/00 20060101ALN20220126BHJP
【FI】
C07C217/08
C23C16/18
H01L21/31 C
H01L21/314 A
C07F5/00 D CSP
C07F5/00 G
C07F17/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532480
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(85)【翻訳文提出日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 KR2018016740
(87)【国際公開番号】W WO2020130216
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0165384
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヒョ-ソク
(72)【発明者】
【氏名】ソク, チャン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク, チュン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】チョ, ウン-チョン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H048
4H050
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB90
4H006BU32
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4H048AB90
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4K030LA15
5F045AA04
5F045AA06
5F045AA08
5F045AA15
5F045AB31
5F045AC11
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5F058BC03
5F058BF04
5F058BF06
5F058BF07
5F058BF22
5F058BF29
5F058BF36
(57)【要約】
本発明は、気相蒸着により薄膜蒸着できる化合物に関し、具体的には、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)に適用可能であり、熱的安定性および反応性に優れた希土類化合物、これを含む希土類前駆体、その製造方法およびこれを用いて薄膜を形成する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物:
【化1】
前記化学式1において、
Lnは、希土類元素であり、
R
1~R
11は、それぞれ独立して、水素;置換もしくは非置換の炭素数1~6の線状または分枝状の飽和または不飽和のアルキル基、またはこれらの異性体である。
【請求項2】
R
1~R
11は、それぞれ水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、およびこれらの異性体からなる群より選択されるいずれか1つである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Lnは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか1つである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1-1で表されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物:
【化1-1】
前記化学式1-1において、
Lnは、ランタン(La)またはイットリウム(Y)であり、
tBuは、tert-ブチルである。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物を含む、気相蒸着前駆体。
【請求項6】
請求項5に記載の気相蒸着前駆体をチャンバに導入するステップを含む、薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記薄膜の製造方法は、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)を含む、請求項6に記載の薄膜の製造方法。
【請求項8】
反応ガスとして、酸素(O)原子含有化合物、窒素(N)原子含有化合物、炭素(C)原子含有化合物、およびケイ素(Si)原子含有化合物のいずれか1つ以上を注入するステップをさらに含む、請求項6に記載の薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記反応ガスは、水素(H
2)、酸素(O
2)、オゾン(O
3)、水(H
2O)、過酸化水素(H
2O
2)、窒素(N
2)、アンモニア(NH
3)、ヒドラジン(N
2H
4)、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、t-ブチレン、イソブチレン、シラン(Silane)、SiH
4、Si
2H
6、Si
3H
8、トリスジメチルアミノシラン(Tris(dimethylamino)silane)、ビスジメチルアミノシラン(Bis(dimethylamino)silane)、ビスジエチルアミノシラン(Bis(Diethylamino)silane)、トリスジエチルアミノシラン(Tris(diethylamino)silane)、テトラエチルメチルアミノシラン(Tetra[ethyl(methyl)amino]silane)、(SiH
3)
3N、(SiH
3)
2O、GeH
4、Ge
2H
6、Ge
3H
8、(GeH
3)
3N、(GeH
3)
2O、トリシリアミン、ジシロキサン、トリシリルアミン、ジシラン、トリシラン、アルコキシシラン、シラノール、またはアミノシランの中から選択されたいずれか1つ以上である、請求項8に記載の薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相蒸着により薄膜蒸着が可能な気相蒸着化合物に関し、具体的には、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)に適用可能な揮発性および熱的安定性に優れ、融点が低い希土類前駆体、その製造方法およびこれを用いて薄膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年間、二酸化ケイ素(SiO2)は信頼できる誘電体であったが、半導体素子はさらに密集パッキングされており、チャネル長もさらに微細化するにつれ、「金属ゲート/ハイ-K(High-k)」トランジスタに代替されてきており、SiO2系ゲート誘電体の信頼性はその物理的限界に到達している。特に、動的ランダムアクセス記憶装置(Dynamic Random Access Memory、DRAM)メモリ素子およびキャパシタのための新たなゲート誘電体材料の開発が必要なのが現状である。
【0003】
素子のサイズが20nm水準となることにより、高誘電定数材料および工程に対する要求が増加している。好ましくは、高-k物質は高いバンドギャップおよびバンドオフセット、高いk値、ケイ素相に対する優れた安定性、最小のSiO2界面層および基材上の高品質界面を有しなければならない。また、非晶質または高結晶質温度のフィルムが好ましい。
【0004】
特に、希土類元素含有材料は、進歩したケイ素CMOS、ゲルマニウムCMOSおよびIII-Vトランジスタ素子に有望な高-k誘電体物質で、これを基材とした新世代の酸化物は、通常の誘電体材料に比べて容量において大きな利点を提供すると報告されている。
また、希土類元素含有材料は、強誘電性、焦電性、圧電性、抵抗変換などの特性を有するペロブスカイト材料の製造に応用が期待されている。
【0005】
希土類は、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などを含む。
【0006】
にもかかわらず、希土類含有層の蒸着が困難で、新たな材料および工程が次第に求められてきている。これについて多様なリガンドを有する希土類前駆体が研究されてきた。
【0007】
希土類前駆体を構成するリガンドの代表例としては、ベータ-ジケトネートおよびシクロペンタジエニル電子の化合物群があるが、これらの前駆体は、熱的安定性には優れているものの、融点が90℃超と蒸着温度範囲が高く、反応性が比較的低い方であるので、実用的でない。
【0008】
ランタン-2,2,6,6-テトラメチルヘプタンジオネート([La(tmhd)3])は、260℃以上の高い融点を有し、希土類-2,2,7-トリメチルオクタンジオネート([La(tmod)3])の融点は197℃である。また、ベータ-ジケトネートの伝達効率は非常に制御しにくく、薄膜成長率が低く、カーボン不純物の生成率が高くて薄膜純度が低い。
【0009】
非置換シクロペンタジエニル(cyclopentadienyl、Cp)化合物も、高い融点と低い揮発性を示す。分子設計は揮発性を向上させ、融点を減少させることに役立つことができるが、工程条件で限られた用途を有することが判明した。例えば、La(iPrCp)3(iPrはイソプロピル(isopropyl))は、225℃より高い温度ではALD工程に適していない。
【0010】
その他にも、アルコキシド系リガンドは、低い揮発性を有し、アミド系リガンドであるRE(NR2)3(REは希土類元素)は、化合物の構造的不安定性によりALDやCVD工程に適していない。
【0011】
また、現在活用可能な希土類含有前駆体の一部は、蒸着工程での使用時に多くの問題点を示す。例えば、フッ化希土類前駆体は、副産物としてLnF3を生成しうる。この副産物は除去しにくいことが知られている。
【0012】
すなわち、従来の希土類前駆体は、高温で熱的に安定しておらず、化学気相蒸着(chemical vapor deposition、CVD)および原子層蒸着(atomic layer deposition、ALD)工程時に低い蒸着率を有するという欠点があった。
【0013】
結果として、希土類含有フィルムの蒸着のための代案的な前駆体の開発が必要なのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した従来の希土類前駆体の問題点を解決するためのものであって、熱的安定性および揮発性に優れ、融点が低い薄膜蒸着用希土類前駆体化合物を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、前記希土類前駆体化合物を用いる薄膜の製造方法を提供しようとする。
【0016】
しかし、本願が解決しようとする課題は以上に述べた課題に制限されず、述べていないさらに他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述のような希土類前駆体の問題を解決するために、多様なリガンドに関する研究が行われたが、前駆体のすべてのリガンドの種類が同一のホモレプティック(homoleptic)希土類前駆体は、依然として同一の問題点を抱えていた。また、以降新たに登場したヘテロレプティック(heteroleptic)化合物Y(iPr-Cp)2(iPr-amd)は、室温で液体として存在し、熱的安定性と揮発性を有するという利点があるが、薄膜蒸着時の蒸着温度範囲が制限的であり、薄膜純度や成長率(growth rate)などがY(iPr-Cp)3やY(iPr-amd)3を使用する場合に比べて低い方であるという欠点があった。
【0018】
そこで、本発明者らは、このような問題点を解消するために、Heteroleptic化合物Y(iPr-Cp)2(iPr-amd)の利点は維持し欠点を補完可能な化合物の製造のために、前駆体のすべてのリガンドの種類が同一でなく、2以上のリガンドの種類を含むヘテロレプティック(heteroleptic)希土類前駆体を合成した。
【0019】
特に、置換されたシクロペンタジエニル(cyclopentadienyl、Cp)骨格を有するリガンドとキレート効果を奏し得るリガンドとを組み合わせて新規希土類前駆体を合成した。
【0020】
これにより、従来公知のランタン前駆体化合物に比べて揮発性、熱的安定性に優れ、低い融点を有する新規な希土類前駆体を得ることができる。
【0021】
本願の一側面は、下記化学式1で表される化合物を提供する:
【化1】
【0022】
前記化学式1において、Lnは、希土類元素であり、R1~R11は、それぞれ独立して、水素;置換もしくは非置換の炭素数1~6の線状または分枝状、飽和または不飽和のアルキル基、またはこれらの異性体である。
【0023】
本願の他の側面は、前記化合物を含む気相蒸着前駆体を提供する。
【0024】
本願のさらに他の側面は、前記気相蒸着前駆体をチャンバに導入するステップを含む、薄膜の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る新規気相蒸着希土類化合物および前記気相蒸着化合物を含む前駆体は、熱的安定性に優れていて高温で薄膜蒸着が可能であり、熱損失による残留物が少なくて工程上副反応を防止することができる。
【0026】
また、本発明の気相蒸着前駆体は、粘度および気化率が低くて均一な薄膜蒸着が可能であり、これによる優れた薄膜物性、厚さおよび段差被覆性の確保が可能である。
【0027】
前記のような物性は、原子層蒸着法および化学気相蒸着法に適した前駆体を提供し、優れた薄膜特性に寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本願の実施形態および実施例を詳しく説明する。しかし、本願は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態および実施例に限定されない。
【0029】
以下、本願の実施形態および実施例を詳しく説明する。しかし、本願がこのような実施形態および実施例と図面に制限されるものではない。
【0030】
本願の一側面は、下記化学式1で表される化合物を提供する:
【化1】
【0031】
前記化学式1において、Lnは、希土類元素であり、R1~R11は、それぞれ独立して、水素;置換もしくは非置換の炭素数1~6の線状または分枝状、飽和または不飽和のアルキル基、またはこれらの異性体である。
【0032】
本願の一実施形態において、好ましくは、R1~R11は、それぞれ水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、およびこれらの異性体からなる群より選択されるいずれか1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0033】
本願の一実施形態において、Lnは、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0034】
本願の一実施形態において、前記化学式1で表される化合物は、好ましくは、下記化学式1-1で表される化合物であってもよい。
【化1-1】
【0035】
前記化学式1-1において、Lnは、ランタン(La)またはイットリウム(Y)であり、tBuは、tert-ブチルである。
【0036】
本願の他の側面は、前記化合物を含む蒸着前駆体、好ましくは、気相蒸着前駆体を提供する。
【0037】
本願のさらに他の側面は、前記気相蒸着前駆体をチャンバに導入するステップを含む薄膜の製造方法を提供する。前記気相蒸着前駆体をチャンバに導入するステップは、物理吸着、化学吸着、または物理および化学吸着するステップを含むことができる。
【0038】
本願の一実施形態において、前記薄膜の製造方法は、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition、CVD)を含むことができ、前記化学気相蒸着は、有機金属化学気相蒸着(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、MOCVD)、低圧化学気相蒸着(Low Pressure Chemical Vapor Deposition、LPCVD)、パルス化化学気相蒸着法(P-CVD)、プラズマ強化原子層蒸着法(PE-ALD)、またはこれらの組み合わせを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0039】
本願の一実施形態において、前記薄膜の製造方法は、反応ガスとして、酸素(O)原子含有化合物、窒素(N)原子含有化合物、炭素(C)原子含有化合物、ケイ素(Si)原子含有化合物、およびケイ素(Ge)原子含有化合物のいずれか1つ以上を注入するステップをさらに含むことができる。
【0040】
所望の希土類含有フィルムが酸素を含有する場合、反応ガスは、酸素(O2)、オゾン(O3)、水(H2O)、過酸化水素(H2O2)、およびこれらの任意の組み合わせから選択することができるが、これに限定されるものではない。
【0041】
所望の希土類含有フィルムが窒素を含有する場合、反応物ガスは、水素(H2)、窒素(N2)、アンモニア(NH3)、ヒドラジン(N2H4)、およびこれらの任意の組み合わせから選択することができるが、これに限定されるものではない。
【0042】
所望の希土類含有フィルムが炭素を含有する場合、反応ガスは、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、t-ブチレン、イソブチレン、およびこれらの任意の組み合わせから選択することができるが、これに限定されるものではない。
【0043】
所望の希土類含有フィルムがケイ素を含有する場合、反応ガスは、SiH4、Si2H6、Si3H8、TriDMAS(Tris(dimethylamino)silane、トリスジメチルアミノシラン、SiH(N(CH3)2)3)、BDMAS(Bis(dimethylamino)silane、ビスジメチルアミノシラン、SiH2(N(CH3)2)2)、BDEAS(Bis(Diethylamino)silane、ビスジエチルアミノシラン、C8H22N2Si)、TDEAS(Tris(diethylamino)silane、トリスジエチルアミノシラン、(Et2N)3SiH)、TEMAS(Tetra[ethyl(methyl)amino]silane、テトラエチルメチルアミノシラン、C12H32N4Si)、(SiH3)3N、(SiH3)2O、トリシリアミン、ジシロキサン、トリシリルアミン、ジシラン、トリシラン、アルコキシシラン、シラノール、アミノシラン、およびこれらの任意の組み合わせから選択されかつ、これに限定されないケイ素供給源を含むことができる。標的フィルムは、代案的にゲルマニウム(Ge)を含有することができ、この場合、上述したSi-含有反応物種は、Ge-含有反応種に代替可能である。Ge-含有反応種は、GeH4、Ge2H6、Ge3H8、(GeH3)3N、(GeH3)2O、およびこれらの任意の組み合わせから選択されかつ、これに限定されないゲルマニウム供給源を含むことができる。
【0044】
また、所望の希土類含有フィルムが他の金属を含むこともできる。
【0045】
以下、実施例を用いて本願をより具体的に説明するが、本願がこれに制限されるものではない。
【0046】
新規希土類前駆体は、下記化学反応式1で表した合成反応のように置換されたシクロペンタジエニル(cyclopentadienyl、Cp)骨格を有するリガンドとキレート効果を奏し得るリガンドとを組み合わせて新規希土類前駆体を製造することができる。キレート効果を奏し得るリガンドは、アルコキシアミン(alkoxyamine)リガンドを使用することができる。
【0047】
より詳しくは、ハロゲン元素(X)が置換された希土類化合物(LnX
3)とシクロペンタジエニル(cyclopentadienyl、Cp)誘導体リガンド化合物とを反応させた後、アルコキシアミン(alkoxyamine)系リガンド(1当量)を導入して希土類前駆体を合成した。
【化2】
【0048】
前記化学反応式1において、Lnは、希土類元素であり、Xは、ハロゲン元素であり、R1~R11は、それぞれ独立して、水素;置換もしくは非置換の炭素数1~6の線状または分枝状、飽和または不飽和のアルキル基、またはこれらの異性体である。希土類元素は上記の通りである。
【実施例】
【0049】
[実施例1]
下記化学式2に表した化学反応のために、フラスコにYCl3(1当量)を入れて、有機溶媒に溶かした後、シクロペンタジエニル(cyclopentadienyl、Cp)誘導体リガンド(1当量)とトリエチルアミン(triethylamine、TEA)(2当量)を入れて撹拌した。
【0050】
以後、混合物にLi置換されたアルコキシアミン(alkoxyamine)系リガンド(1当量)を入れて、一晩撹拌した。
【0051】
反応が終了すると、減圧フィルタし、溶媒を除去した後、蒸留または昇華精製して純粋なイットリウム(Y)気相蒸着前駆体用最終化合物を得た。
【化3】
【0052】
[実施例2]
前記実施例1において、YCl3ではないLaCl3を用いて、ランタン(La)気相蒸着前駆体用最終化合物を得た。
【0053】
[製造例1]
本発明の実施例1により合成された新規希土類前駆体および反応物O3を交互に適用して基板上に希土類薄膜を蒸着した。本実験に用いられた基板はp-型Siウエハであって、抵抗は0.02Ω・cmである。蒸着に先立ち、p-型Siウエハは、アセトン-エタノール-脱イオン水(DI water)でそれぞれ10分ずつ超音波処理(Ultra sonic)して洗浄した。Siウエハ上に形成された自然酸化物薄膜は、HF10%(HF:H2O=1:9)の溶液に10秒間浸漬した後、除去した。基板は150~450℃の温度に維持して用意し、前記実施例1で合成された固体の新規希土類前駆体は、90~150℃の温度に維持されたバブラー(bubbler)で気化させた。
【0054】
パージ(purge)ガスはアルゴン(Ar)を供給して、蒸着チャンバ内に残存する前駆体と反応ガスをパージし、アルゴンの流量は1000sccmとした。反応ガスとしては224g/cm3の濃度のオゾン(O3)を使用し、各反応気体は空圧バルブのon/offを調節して注入し、工程温度で成膜した。
【0055】
ALDサイクルは、前駆体パルス10/15秒後、アルゴン10秒パージング後、反応物パルス2/5/8/10秒後、アルゴン10秒パージングの順を含んだ。蒸着チャンバの圧力は1~1.5torrに調節し、蒸着温度は150~450℃に調節した。
【0056】
酸化イットリウム薄膜の成長速度は1.0Å/サイクルであることが観察され、蒸着厚さは約200Åであった。
【0057】
[製造例2]
本発明の実施例2により合成された新規希土類前駆体を用いることを除き、前記製造例1と同様の条件下で、基板上に酸化ランタン薄膜を蒸着した。酸化ランタン薄膜の成長速度は1.0Å/サイクルであることが観察され、厚さは約200Åであった。
【0058】
[製造例3]
本発明の実施例1および実施例2により合成された新規希土類前駆体を交互に適用して酸化イットリウムおよび酸化ランタンの多重成分コーティングを製造した。前記希土類前駆体は、気化器に連結された2つのそれぞれ異なるバブラーにそれぞれ担持されて蒸着チャンバに交互にパルスされる。ALDの条件は前記製造例1および2のように進行し、各酸化物薄膜の厚さは4~10Åずつ形成された。得られた多重成分コーティング層の数は各蒸着工程の繰り返し数による。
【0059】
[製造例4]
本発明の実施例1により合成された新規希土類前駆体を用いて、化学気相蒸着法で希土類元素を含む薄膜を製造した。前記実施例1により合成した前駆体が0.02Mの濃度でオクタン(octane)に含まれている前駆体開始溶液(starting precursor solution)を用意した。この前駆体開始溶液を0.1cc/minの流速で90~150℃の温度が維持される気化器に伝達した。このように気化した前駆体は、50~300sccmのヘリウムキャリアガスを用いて蒸着チャンバに伝達した。反応ガスとしては水素(H2)と酸素(O2)を使用し、それぞれ0.5L/min(0.5pm)ずつの流速で蒸着チャンバに供給した。蒸着チャンバの圧力は1~15torrに調節し、蒸着温度は150~450℃に調節した。このような条件で約15分間蒸着工程を行った。
【0060】
希土類含有前駆体および1種以上の反応ガスは、反応チャンバに同時に、化学気相蒸着法、原子層蒸着法、または他の組み合わせで導入される。
【0061】
一例として、希土類含有前駆体は1つのパルスで導入されてもよく、2つのさらなる金属供給源は個別パルスで共に導入されてもよい。また、反応チャンバは、希土類含有前駆体の導入前にすでに反応物種を含有してもよい。
【0062】
反応物ガスは、反応チャンバから遠く位置するプラズマシステムを通過してラジカルに分解されてもよい。また、他の金属供給源がパルスによって導入されながら、希土類含有前駆体が連続的に反応チャンバに導入されてもよい。
【0063】
例えば、原子層蒸着類型の工程で蒸気相の希土類含有前駆体が反応チャンバに導入され、ここで、適当な基板と接触した後、過剰の希土類含有前駆体は反応器をパージングすることにより反応チャンバから除去できる。
【0064】
酸素供給源が反応チャンバに導入され、ここで、自己制限方式で吸収された希土類前駆体と反応する。過剰の酸素供給源は反応チャンバをパージングおよび/または脱気することにより反応チャンバから除去できる。所望のフィルムが希土類酸化物フィルムの場合、前記工程は所望のフィルム厚さを得るまで繰り返される。
【0065】
上記の薄膜の製造により、新規合成された実施例1または2の希土類前駆体が、従来の希土類前駆体の薄膜蒸着時の問題点を補完する上に、CVDのみならずALDにも適用可能な優れた揮発性、熱的安定性を有しており、低い融点を有することを確認した。
【0066】
また、前記新規希土類前駆体により均一な薄膜蒸着が可能であり、これによる優れた薄膜物性、厚さおよび段差被覆性を確保することができる。
【0067】
本発明の範囲は、上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出されるあらゆる変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る新規気相蒸着希土類化合物および前記気相蒸着化合物を含む前駆体は、熱的安定性に優れていて高温で薄膜蒸着が可能であり、熱損失による残留物が少なくて工程上副反応を防止することができる。また、本発明の気相蒸着前駆体は、粘度および気化率が低くて均一な薄膜蒸着が可能であり、これによる優れた薄膜物性、厚さおよび段差被覆性の確保が可能である。前記のような物性は、原子層蒸着法および化学気相蒸着法に適した前駆体を提供し、優れた薄膜特性に寄与する。
【0069】
したがって、本発明の新規気相蒸着希土類化合物およびこれを含む気相蒸着化合物を含む前駆体を用いて、原子層蒸着法および化学気相蒸着法で半導体用薄膜を効果的に製造することができる。
【国際調査報告】