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特表2022-512189自動車用トリム部品を成形するための型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(54)【発明の名称】自動車用トリム部品を成形するための型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/40 20060101AFI20220126BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20220126BHJP
   B29C 44/02 20060101ALI20220126BHJP
   B29C 44/36 20060101ALI20220126BHJP
   B29C 44/58 20060101ALI20220126BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20220126BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20220126BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220126BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220126BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
B29C33/40
B29C43/34
B29C44/02
B29C44/36
B29C44/58
B29C43/36
B29C64/165
B33Y10/00
B33Y80/00
B22F3/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532975
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(85)【翻訳文提出日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2019079894
(87)【国際公開番号】W WO2020120021
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】18211409.0
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19179885.9
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512099884
【氏名又は名称】オートニアム マネジメント アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Autoneum Management AG
【住所又は居所原語表記】Schlosstalstrasse 43, CH-8406 Winterthur, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【弁理士】
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】イェレミアス シュルマン
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
4F213
4F214
4K018
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AB02
4F202AB25
4F202AH25
4F202AJ02
4F202AJ03
4F202AJ07
4F202AJ09
4F202AJ10
4F202AR12
4F202CA01
4F202CA09
4F202CA23
4F202CB01
4F202CD22
4F202CD27
4F202CD28
4F202CN01
4F202CN05
4F202CN12
4F202CN22
4F204AH17
4F204AJ08
4F204FA01
4F204FB01
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ15
4F213AC04
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4F214AH17
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4F214UA08
4F214UA21
4F214UB01
4F214UD13
4F214UK31
4F214UQ01
4K018BA02
4K018BA08
4K018BA15
4K018BA16
4K018BD04
4K018CA44
4K018KA18
(57)【要約】
本発明は、自動車用トリム部品の圧縮成形及び/又は型内発泡のための、3次元形状の空洞を有する少なくとも一つの型を備えている成形工具に関するものであり、この型の部品が、熱硬化性樹脂バインダーマトリックスと、このマトリックス内に結合された粒子状物質とを含むことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用トリム部品の圧縮成形及び/又は型内発泡のための、3次元形状の空洞を有する少なくとも一つの型を備えている成形工具であって、前記型の部品が、熱硬化性樹脂バインダーマトリックスと、前記マトリックス内に結合された粒子状物質とを含むことを特徴とする、成形工具。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂バインダーが、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フラン系樹脂、エポキシ系樹脂、又はフェノール系樹脂のうちの一つである、請求項1に記載の成形工具。
【請求項3】
前記粒子状物質が、500μm未満、好ましくは100~300μmの平均粒径を有する粒状材料である、請求項1又は2に記載の成形工具。
【請求項4】
前記粒子状物質又は粒状材料が、石英砂又は珪砂、人工砂、セラミック粒子又は金属粒子又は熱伝導性合金、又は前記材料の組み合わせの群から選択される一つである、請求項1~3のいずれか一項に記載の成形工具。
【請求項5】
少なくとも前記型の前記空洞を形成する表面が、第2の材料によるコーティング及び/又は注入及び/又は浸透から選択される少なくとも一つの表面処理をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の成形工具。
【請求項6】
前記表面処理が、第2の材料による注入又は浸透であり、それによって、少なくとも前記型の内面の前記樹脂バインダーと前記結合された粒子との間の任意の空隙を塞ぐ、請求項5に記載の成形工具。
【請求項7】
前記表面処理のための前記第2の材料が、熱硬化性材料であり、好ましくは、アクリル系材料、ポリエステル系材料、フラン系材料、エポキシ系材料、又はフェノール系材料のうちの少なくとも一つである、請求項5又は6に記載の成形工具。
【請求項8】
前記表面処理の樹脂と前記バインダーの樹脂とが同一である請求項5、6、又は7に記載の成形工具。
【請求項9】
前記表面処理の材料は、成形面の少なくとも一部に、前記型の厚さの少なくとも5%の、好ましくは前記型の厚さの100%までの、又は前記型の厚さのうち少なくとも1mmの閉塞層を形成していることを特徴とする請求項5~8のいずれか一項に記載の成形工具。
【請求項10】
前記型の温度を制御することを可能にするために、前記型内に統合した流路、好ましくは、前記型の前記空洞の内面に対して少なくとも部分的に平行に向けられた流路をさらに備えている、請求項1~9のいずれか一項に記載の成形工具。
【請求項11】
(1)粒子の層を積層すること、及び(2)所望のパターンでバインダーの液滴を堆積して、粒子状物質と前記バインダー材料とを共に局所的に結合させることの工程を交互に行い、かつ前記型を完全に印刷するまで前記交互の工程(1)及び(2)を繰り返すことによって、層を印刷して前記型を形成する工程(100)を少なくとも含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の成形工具の製造方法。
【請求項12】
表面を処理する追加の工程であって、第2の材料によって、少なくとも成形空洞を形成する表面を処理し、前記バインダーと前記粒子状物質との間の空隙を充填する追加の工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
印刷した前記型の少なくとも成形空洞を形成する表面を第2の材料でコーティングして、少なくとも前記型の表面で前記バインダーと前記粒子状物質との間の空隙を充填する追加の工程をさらに含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
製造した前記型を洗浄して、前記型の使用又は成形した前記部品の品質を阻害する可能性のある任意のデブリ又は遊離材料を除去する追加の工程を含む、請求項11、12又は13に記載の方法。
【請求項15】
印刷した前記型を処理するか、又は印刷しかつ表面処理した前記型を処理するための、少なくとも一つの熱処理工程をさらに含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
発泡体、好ましくは型内発泡体若しくはスラブ発泡体、繊維層、不織布、スクリム、充填された熱可塑性エラストマー層によって形成された重層、フィルム、又は箔層である少なくとも一つの層を有する、単層又は多層材料でできた自動車部品を圧縮成形及び/又は型内発泡するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の成形工具、又は請求項11~15のいずれか一項に記載の方法によって製造された成形工具の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用トリム部品又はパネル用材を製造するための型、そのような型を製造する方法、並びにそのような型の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用トリム部品は、大部分が繊維質フェルト、フィルム、又は発泡体のような層状材料でできており、車内の関連する空間に適合するように適した所望の3次元形状を形成するように一緒に成形され、例えば、内部フローリング部品は、車両のフロアパネル上に取り付けられ、かつ/又は成形されて、車の中央のトンネルの周りを形成する。ホイールアーチライナーやアンダーボディパネルなどの大型外装部品はもちろん、エンジンカバーのような小型クラッド部品や、エンジン周辺の吸音材なども、成形プロセスを用いて作られている。
【0003】
自動車用トリム部品を成形するための成形方法に、加熱された材料の冷間成形を使用することができる。この成形プロセスは、2段階プロセスであってよく、第1の工程では、使用するバインダーの融点又は硬化点近くに材料を加熱し、かつ第2の工程では、この材料を成形しかつ冷却する。バインダーが硬化したら成形された部品を工具から取り出すことができ、又は成形された部品を冷却ジグに移して成形した部品をさらに冷却することができる。
【0004】
自動車用トリム部品を成形するための成形プロセスは、型内発泡を使用する。型内発泡は密閉型内で行われ、この密閉型の多くは、反応性発泡混合物を流し込む半分にした2つの型からなる。反応によって発泡が起こり、密閉型内で発泡体が膨張して自動車部品を形成する。
【0005】
自動車用トリム部品は、フェルトを含む再生綿又はガラス繊維を含んだ繊維質フェルト、発泡体、熱可塑性エラストマー充填材料の形態の重層、フィルム、又はこれらのタイプの層の組み合わせのような種々の材料の単層又は積層でできている。型は、かなりの量の部品のために使用されている一方、型は、成形プロセスの間に、高温及び高圧、並びに過酷な摩耗条件に耐える。ほとんどは締め付け力によるものである成形プロセス中の圧力は、圧縮された材料に起因して型の内部で高く、かつ閉止圧力及び締め付け圧力に起因して型自体においても高い。製造される部品の大きさ及び厚さ、材料組成、及び材料層の最終密度に応じて、型への圧力は250トンまで上昇する可能性がある。局所的には、小さな表面にさらに高い荷重が発生する可能性もある。
【0006】
現在、非腐食性金属でできている型は、特に、生産サイズが10,000パーツを超える場合には、このタイプのプロセスに使用することができる。
【0007】
ほとんどの場合、中実鋼又はアルミニウムを使用することができ、製品の形状を形成するネガ面は、鋼又はアルミニウムブロックをフライス加工するか、又は彫刻する。このプロセスは費用と時間がかかる。型が改造を必要とする場合、鋼又はアルミニウムの型のブロックを交換するか、又は型を再度製造しなければならない。選んだ材料に起因して、このような金属の型は、重くかつ費用が掛かる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、自動車用トリム部品の成形プロセスに使用できる代替となる成形工具を提供することであり、特に、例えば、発泡体、繊維質フェルト、スクリム、熱可塑性エラストマー充填材料の形態の重層、又はフィルムの少なくとも単層又は多層でできた部品のための成形プロセスに使用できる成形工具を提供することである。特に、本発明の目的は、大量の部品の製造プロセスで使用できる代替となる成形工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、請求項1に記載の成形工具、及び請求項11に記載の成形工具の製造方法、並びに請求項16に記載の自動車用トリム部品を製造するための成形工具の使用によって達成される。
【0010】
特に、本発明の目的は、3次元形状の空洞を有する少なくとも一つの型を備えている、自動車用トリム部品を圧縮成形するための成形工具によって達成され、ここで、この型は、熱硬化性樹脂バインダーマトリックスと、このマトリックス内に結合された粒子状物質とを含むことを特徴とする。
【0011】
特に、本発明の目的は、3次元形状の空洞を有する少なくとも一つの型を備えている、自動車用トリム部品を成形するための型内発泡のための成形工具によって達成され、ここで、この成形部品が、反応性発泡混合物、例えば、ポリオール及びイソシアネートを含み、ポリウレタンフォームを形成することを特徴とする。密閉型内での成分の反応によって、発泡体の膨張が起こり、型の空洞が充填され、かつ自動車部品を形成する。
【0012】
一つの型、又複数の型半体は、好ましくは、この型によって形成されるべき自動車部品の表面を画定する空洞を有するように成形されている。
【0013】
好ましくは、成形工具は、2つの型の半体からなり、この型半体のそれぞれは、最終的な自動車部品の第1の面及び第2の面の形状を有しており、形成されるべき自動車用トリム部品のための成形空洞を一緒になって形成する。
【0014】
好ましくは、この型は、3次元印刷技術を用いて、好ましくは、バインダー噴射技術によって、付加製造(積層造形)プロセスを用いて作製され、それによって、バインダーを粉体床上に選択的に堆積し、堆積領域の粒子とバインダーとを一緒に結合して、一度に中実部品の一層を形成する。
【0015】
好ましくは、熱硬化性樹脂は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フラン系樹脂、エポキシ系樹脂、又はフェノール系樹脂のうちの一つである。
【0016】
驚くべきことに、本発明による好ましい材料と共にこのプロセスを用いて、熱圧縮成形用の型を製造することができ、例えば、繊維質フェルト及び/又は発泡体、最終的には箔又はスクリムのような他の熱可塑性材料層や、充填された重層材料を含むもののような単層又は多層から、自動車部品を製造するプロセスに使用することができる耐久性のある型を製造することができる。
【0017】
驚くべきことに、この材料は、部品の成形中に、内圧及び型への圧力に耐えることができる。加えて、この材料は、その高温耐性によって、表面の摩耗に対してより耐性を示し、このため、この型はより耐久性がある。本発明による型で製造された自動車部品は、より長い期間、許容範囲内に留まる。したがって、型の改造の必要性は低減する。このタイプの型にしては材料及び製造コスト並びに生産時間がより少ないので、必要な場合には、型の変更はより容易に達成される。
【0018】
印刷と選択された材料との組み合わせによって、非常に精密な型の内面を得ることが可能であり、これにより、より良好に画定された、より高精度の、成形最終製品を保証することができる。
【0019】
本発明によって製造された型は、通常の生産に使用することができるが、少量生産のために、及び新しい材料や方法の試験のためにも有益であり、そのような工具の価格及び製造時間は、標準的な工具による場合よりもはるかに低い。
【0020】
さらなる好ましい実施形態では、少なくとも成形空洞に面している型の表面に、第2の材料を、好ましくは熱硬化性樹脂を、好ましくは、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、又はフラン系樹脂を浸透させる。好ましくは、型の厚さ方向で少なくとも最初の1mmに浸透させる。浸透によって、バインダー-粒子状物質マトリックス間の空隙が第2の材料で充填され、この材料を非多孔性にし、かつこの層を不浸透性にする。
【0021】
印刷した材料の内面で少なくとも一層に含浸させるが、この型は、型の厚さのうち少なくとも1mm、又は型の厚さの少なくとも5%について、その全表面にわたって含浸させるか又はコーティングすることもできる。含浸は、型の厚さの100%まで行うことが可能である。この工具で、利用可能であれば任意の流路に、同じ厚さの含浸を適用することもできる。
【0022】
驚くべきことに、こうして処理された成形面は、必要であれば研磨することができる、より優れた表面品質を示したと同時に、印刷した型部品はまた、全体的により堅く、かつ耐久性があった。
【0023】
さらに、浸透させた表面の最上部に、又は印刷した表面上に直接、追加的な樹脂材料を付加して、滑らかで中実でありかつ連続的な型表面をもたらすことができる。
【0024】
加えて、注入(又は浸透)処理は、印刷した材料を気密及び液密にし、したがって、成形された材料と接触することなく、温度制御のための流路を通る流体又は気体を分布させることが可能である。
【0025】
より詳細には、この型は、層状化プロセスを用いて製造される。最初に、粒子状物質の床を形成する型を製造するために十分に大きな面積を有する台の上に、粒子状物質の薄い層を広げ;次いで、少なくとも一つのインクジェットタイプのノズルを有する台車が、広がった粒子の床の上を通過し、かつ粒子状物質を一緒に結合するバインダーの液滴を選択的に堆積し;このプロセスが終了した後で、台を一層分の距離だけ下げ、かつプロセスを同様に再開する。複数の層が一緒になって、最終的な型が形成される。印刷プロセスを終了した後、型を、好ましくは粒子状物質に封入した型を、放置して硬化させ、その最終強度を確立する。硬化後に型を洗浄し、余分でありかつ結合していない粒子を取り除く。
【0026】
このタイプの型は熱可塑性樹脂で作ることができるが、熱硬化性材料で作ることが好ましい。これは、これらの材料の溶融温度又は劣化温度、及び熱安定性が、成形される材料よりもはるかに高く、型の耐久性を増大させるからである。
【0027】
ほとんどの自動車用トリム部品は、90~240℃の溶融又は軟化温度を有する熱可塑性バインダーを用いて作られている。したがって、型に熱硬化性樹脂を使用することによって、型は、成形中の材料の加熱による影響を受けない。
【0028】
粒子を一緒に結合するために使用する本発明による樹脂バインダーは、溶液ベースの系、すなわち、バインダーを溶媒中に適用し、例えば、溶解又は分散させ、かつ溶媒を蒸発させて最終的な結合を得る溶液ベースの系であるか、あるいは重合系、すなわち、バインダーが長鎖を形成し、かつ粒子を結合又は封入して型材料を形成する重合系であるかのいずれかに基づくことかでき、これらの系を使用することができる。結合又は硬化プロセスの後で、材料は化学的に変化する。
【0029】
熱硬化性樹脂は高い熱安定性を有するので、これらの樹脂が、好ましくはバインダーとして使用される。例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フラン系樹脂、フェノール系樹脂、又はエポキシ系樹脂に基づく系を、例えば、このバインダーとして選択することができる。バインダー強化添加剤、又はプリンタプロセスを強化する添加剤をバインダーシステムに添加することができる。しかしながら、最終製品の特性を強化する添加剤、特にその表面の汚れを防止する添加剤もまた好ましい。
【0030】
型を洗浄するか又は掃除し、型の揮発性成分を減少させて、型を使用して製造されるべき自動車部品中の揮発性成分の増加を防止することができる。
【0031】
熱圧縮成形プロセスにおける型の使用中に、予熱した材料を型内に配置し、かつ型を閉じて最終部品を形成する。
【0032】
型内での熱い材料の使用に起因して、型は温度が上昇する。型の温度を管理するために、流路を型の構造に統合することが好ましく、これらの流路は、成形空洞の内面に近接して配置される場合に最も効果的である。好ましくは、これらは、表面に対して一定の距離を置いて、表面の形状に追従して配置される。好ましくは、流路は、冷気若しくは周囲空気(大気)のような気体、又は例えば水若しくは油のような流体に基づく外部システムに接続することができる。
【0033】
驚くべきことに、型内発泡の間に成形工具内でより良好でより均一な発泡体を得ることを可能にしながら、成形工具を局所的に又は全表面にわたって加熱するために、統合した3次元に設計された流路を備えた精密な成形工具を作ることができる。型内発泡用工具を製造するための古いシステムでは、工具内で良好な加熱システムを得ることができず、必要な場所で表面の均一な加熱を得ることができなかった。
【0034】
特に、3次元印刷によって、実際の加熱又は冷却要件に適応し又は関連した冷却又は加熱流路を自由に設計することが可能である。
【0035】
樹脂バインダーは、型の製造中、及び/又は印刷の直後に、熱で硬化させることができる。
【0036】
好ましくは、最終的な型材料中のバインダーの量は、総重量の0.9~2.1%であり得る。
【0037】
好ましくは、500μm未満、好ましくは100~300μmの平均粒径を有する粒子状物質又は粒状材料が使用される。粒径が粗いほど型はより多孔性になり、それによって型の透過性が増し、材料及び型の冷却プロセスは向上する。その一方、平均粒径が小さいほど表面は滑らかになるが、冷却時間が増加する可能性がある。より滑らかな表面は、自動車部品の製造時には、表面の汚れ防止のためにより有益となり得る。
【0038】
ある種の材料を成形するためには、さらなるコーティング及び/又は浸透工程及び/又は注入工程が必要でない場合がある。平均粒径が小さいほど粒子密度が増加し、したがって、型はより重くなる可能性があるが、型の耐久性も向上する可能性がある。しかしながら、平均粒径がより小さいと、型のための実際の印刷時間が長くなる可能性があるため、型のために必要な条件と、粒子の最適な粒径との間の最適化されたバランスが確立されなければならない。
【0039】
より多孔性の型については、より粗い粒径を選択することができ、より粗い型は、成形中の自動車用トリム部品の冷却プロセスを向上させ、したがって、冷却時間をさらに減少させることになる。また、多くの部品を成形するプロセスの間に、型は時間の経過とともにそれ自体の温度を上昇させるので、より粗い型は、型自体の冷却時間を短縮する。しかしながら、より小さな直径を有する粒子状物質を使用することは、冷却の速度を落とすことができ、かつ成形される材料の冷却又は硬化のために有益である可能性があるので、より小さな直径の粒子を使用することが好ましい場合がある。例えば、急速な冷却プロセスが、成形品に悪影響を与える場合などである。
【0040】
型の主成分は、粒子又は粒子状物質である。好ましくは、粒子状物質又は粒状材料は、不活性な、天然若しくは人工のものであり、例えば、石英砂又は珪砂、人工砂、セラミック粒子、又は鋼、アルミニウム、銅、又は熱伝導性合金のような金属粒子、又はこれらの粒子の組み合わせの群から選択される少なくとも一つである。選択した材料に応じて、型の冷却特性をさらに適合させることができる。
【0041】
砂として、少なくとも95%のSiO含量を有する石英砂を使用することができる。最終的には、アルミニウム酸化物又はシリカを含む砂を使用するか、又は他の鉱物ベースの砂を使用して、型の密度を増加させることができる。自動車部品の製造が少なく、かつ低い耐久性が問題とならない場合には、天然砂が好ましくは使用される。天然砂は低コストであるため、型の費用を減らすことになる。人工砂は、砂の形が球形であり、かつ鉱物含有量を型の要件に基づいて適応させることができるので、人工砂が好ましい。
【0042】
粒径は、必要な結合強度と、型の密度と、多孔性(気孔率)との間のバランスを取るように適合させる。
【0043】
型内での異なる大きさ又は異なる材料の組み合わせが可能であり、例えば、型の基部で使用される材料と、型の表面の方で使用される別の材料とが異なることが可能である。基部は、プレスプラテンに載っている型の下部として見ることができる。異なる粒子状物質を有する別の機械の上で基部を印刷し、かつ上側部分を好ましくは第2の工程で基部の最上部に印刷することも可能である。
【0044】
型がその十分な強度を達成するためには、好ましくは、樹脂に結合された粒子を、乾燥、凝結、又は炉内での加熱のいずれかを通じて、非結合材料の除去の前又は除去の後に硬化させる。しかしながら、好ましくは、室温で硬化する材料が使用され、これは、製造される自動車部品の大きさ、適合度、及び形状を保証しながら、最終的な型の収縮又は反りを防止するからである。あるいは、型は、浸透工程の後に熱処理することができる。
【0045】
樹脂及び粒状物は、材料の曲げ強度が少なくとも100N/cm、好ましくは曲げ強度が300N/cmを超えるように選択される。
【0046】
例えば、フラン系の型では、好ましくは220~330N/cmの曲げ強度を得ることができ、一方、フェノール系樹脂は、より高い曲げ強度に向けられており、好ましくは350~450N/cmの曲げ強度が得られる。
【0047】
熱可塑性バインダーを有するフェルト、スクリム、重層材料、又は発泡体のように、使用する部品材料によっては、型の内面に接する材料がくっついたり、成形後に内面に不要なデブリが残ったりすることがある。
【0048】
型の内面の汚れを防止するために、好ましくは、型の内面の表面処理を適用し、多孔性表面を閉塞し、かつ表面粗さを滑らかにする。例えば、浸透させた表面の最上部に、又は印刷した表面に直接、追加的な樹脂材料を付加して、滑らかで中実でありかつ連続的な型表面をもたらすことができる。
【0049】
表面処理として、コーティング、注入、又は浸透を一回又は定期的に適用し、性能を向上させ、かつ型の寿命を延ばすことができる。
【0050】
好ましくは、表面処理は、表面の多孔性空隙内に第2の材料をある程度の深さまで浸透させるか又は注入し、成形空洞を形成する型の少なくとも内面の空隙率を減少させることによって達成される。
【0051】
型を非多孔性の型にしながら、第2の材料を型に完全に浸透させることもできる。これは、型の冷却要件、その構造中の任意の冷却流路の付加及び成形される材料、並びに成形プロセスによって異なる。好ましくは、表面処理及びバインダーは、同じ樹脂タイプのものをベースとする。
【0052】
詳細には、表面処理は、処理する表面の最上部に適用される、それほど好ましいわけではない単純なコーティングによって行うことができる。しかしながら、型の表面の最上部に層を追加すると、問題が発生する可能性がある。通常、型は2つの型半体に分かれており、この型半体は、一緒になって正確に閉じ、完全な型の空洞を形成する必要がある。型の内部空洞を形成している各々の型表面の最上部に層を追加すると、型が完全には合致しなくなるか、又は型が許容範囲外になる可能性があるというリスクを生じる。最上部にコーティングを配置することは表面保護をもたらすが、型表面への浸透が生じない限り、型の全体的な強度をもたらすものではない。しかしながら、製造するトリム部品によっては、又は製造する部品が半完成部品のみである場合には、コーティングは安価でありかつ耐久性のある解決策となる可能性がある。
【0053】
より好ましいのは、表面処理として注入又は浸透プロセスを使用することである。そのように処理した印刷材料の細孔又は空隙を閉塞しながら、成形された材料と接触する表面に隣接する型の少なくともある一定の厚さに材料を浸透させる。
【0054】
注入工程の間に、型を表面処理材に浸すか、型材料の内側に表面処理材を加圧注入又は真空注入するか、あるいは型に表面処理材を、例えば、噴霧、塗装、又は拡散して適用し、バインダー-粒子マトリックス間の多孔性の空隙を充填する。好ましくは、表面から又は型の空洞を形成する表面から少なくともある一定の厚さをこうして処理する。好ましくは、型の厚さの少なくとも5%、好ましくは表面厚さの約1mmに、印刷した材料間の空隙又は細孔を塞ぐために、材料を浸透させる。
【0055】
製造される部品の3次元形状に起因して、有効な型の厚さは、型にわたって局所的に変化することができる。
【0056】
代替的に、注入又は浸透は、型に最大強度を与えるために型全体にわたって行うこともでき、又は型表面の少なくとも一部、好ましくは、実質的に型の表面全体にわたって行うこともできる。
【0057】
注入が必要であり、かつ冷却又は加熱流路が存在する場合の適用においては、注入は、冷却又は加熱流路を開いたままにして行う。
【0058】
発泡体をより良く活性化するためには、加熱することが好ましい。驚くべきことに、3次元印刷構造において表面の近くに加熱流路を配置することが可能であり、それによって、発泡体の全体的な均一性を最適化し、したがって、型内で製造される発泡体の品質を最適化することができる。
【0059】
注入材料は、使用するバインダー材料と同じか、又は使用するバインダー材料と適合性のある熱硬化性若しくは熱可塑性材料のいずれかである。この材料は、適合した粘度及び他の特性を有し、細孔の良好な充填及びマトリクスへの結合を可能にすることができる。
【0060】
3次元印刷工具、又は厚さ方向の表面の少なくとも一部の注入や浸透は、工具を浴中に浸漬することによって、及び/又は処理する表面に垂直な圧力下で第2の材料を型に含浸又は浸透させることによって達成することができ、それによって、型部品の厚さ方向に空隙を充填するようになっている。局所的には、浸透の深さは部品にわたって変化することができるが、好ましくは、少なくとも10mm及び/又は局所的な厚さの5%である。
【0061】
また、第2の材料による注入又は浸透と、表面上に追加のコーティング層を適用することとの組み合わせも、選択肢であり得る。
【0062】
特に、大量生産において型を使用する場合には、表面の再印刷は、表面若しくは表面の少なくとも一部を付加又は交換したり、あるいは既存の型表面を補修したりするための選択肢となり得る。
【0063】
本発明は、発泡体、繊維層、不織布、スクリム、充填熱可塑性層、フィルム又は箔層である少なくとも一つの層を有する加熱された単層又は多層材料でできている自動車部品を圧縮成形するための本発明による3次元印刷した型の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1図1は、本発明による型半体を有する圧縮成形工具の例である。
図2図2は、本発明による型を製造する方法の概略図である。
図3図3は、型の材料積層の概略図である。
図4図4は、本発明による型を製造するための3次元印刷プロセスの例である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1は、本発明によって作製された型半体を用いた圧縮成形の一例を示している。図1によれば、プレス型1は、下部型半体2と上部型半体3とを備えている。これらの型は、可能な例として、例えば、開口部4及び流路を通じる断面6によって示されるような冷却流路を有することができる。好ましくは、流路は、表面に対して、少なくとも部分的に平行にかつ近接して配置される。2つの型半体である2及び3は、一緒になって型空洞を画定し、この型空洞で自動車製品が成形される。図示したような自動車製品7の例は、繊維質材料又は発泡体の単一層からなるものとすることができる。しかしながら、層内及び/又は層間に圧縮及び結合を必要とする多層についても、この型を使用することができる。
【0066】
好ましくは、型半体の構造は、切断要素及び/又は封止要素を挿入するための空間、又は他のタイプの挿入物を可能にするための空間を有していてもよい。好ましくは圧力下に、例えば成形プレスの圧力下に、必要な時間型を閉じて、材料を最終形状に成形しかつ硬化させる。その後、型を開き、かつ部品を取り外すことができる。
【0067】
型又は型の半体は、型をプレス機に取り付けるための専用領域、及び型によって通常提供される他の機能のための専用領域を有することができる。
【0068】
型は、これら型半体内に、流路4、6を備える冷却又は加熱システムをさらに備えることができる。流路は流体を含んでいてもよく、さらに、流路を通って流体を流体輸送するための受動的又は能動的な置換(補充)システム(図示せず)を有することができる。流体は、使用中、型内及びより低い温度の領域内を循環し、必要なときに型を冷却するか又は加熱することができる。
【0069】
図2は、型半体を製造するための好ましい方法を概略的に示したものであり、この方法は、層を印刷して所望の構造を有する型半体を形成すること(100);少なくとも空洞を形成する表面に、型を形成する印刷材料間の空隙又は細孔を充填する浸透材料を浸透させることにより、型半体に注入すること(200);及び自動車部品の成形プロセス中に型の使用を妨げる可能性のある任意のデブリ又は遊離材料を除去するために、任意に型半体を洗浄すること(300);という基本的な工程を有する。
【0070】
図3は注入領域を有する型半体を概略的に示したものである。型は、型構造を形成する熱硬化性樹脂バインダー(9)によって結合された粒子(8)により形成されており、結合粒子間には空隙(10)が形成されている。少なくとも樹脂材料(11)を空隙(10)の中に部分的に浸透させることによって、成形空洞を形成する型の少なくとも表面(12)について、型を気密及び/又は液密にすることができる。注入層(13)の厚さは、型の全厚の少なくとも5%であり、好ましくは、少なくとも10mmであり、型の厚さの100%までとすることができる。注入プロセスの間、冷却流路は開いたままにしておくべきであり、例えば、冷却流路が位置する厚さまで樹脂材料を浸透させることによって、表面を気密にすることができる。あるいは、冷却流路に流体又は材料を充填して、浸透プロセス中に流路への完全な浸透を防止することもできる。この材料又は流体は、浸透プロセスの後に廃棄することができる。
【0071】
図4は、本発明による型を製造する装置及びプロセスの一例を示したものである。3次元印刷用の工具は、供給粒子21を供給し、かつ粒子24に埋め込まれた印刷部品23を取り上げるためのハウジング20を備えている。さらに、液体樹脂供給装置、例えばポンプ又は押出機及びポンプシステム26を使った液体樹脂供給装置を有するバインダー樹脂供給システム、並びに所望のパターンでバインダー樹脂の液滴を適用するための印刷ヘッドを備えることができる。
【0072】
印刷された部品を製造するプロセスは、粉体供給ローラによって粉体の層を設けながら下記の工程を繰り返すプロセスである。粉体の新しい層が台又は印刷された部品の上に置かれるとすぐに、バインダー印刷ヘッドがバインダー樹脂の液滴を、粒子層の最上部に所望の2次元パターンで配置する。このパターンを終えた後、矢印で示したようにピストンが一段上又は下に再び動き、かつこのようにして形成された部品の上に、次の粉体の層が再び広げられる。粉体の層と樹脂バインダーの印刷とを、部品の全厚がもたらされるまで繰り返す。結合粒子と一体になった印刷した部品を有するボックスを、好ましくは硬化オーブン中でインキュベートし、樹脂の完全な結合強度を達成する。結合していない粒子を取り除きながら完全に結合した部品を洗浄して、そのような部品として使用することができ、あるいは第2の工程で使用して、少なくとも型の表面を樹脂材料で含浸又は浸透させて、結合した粒子間の空隙を塞ぐことができる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】