(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(54)【発明の名称】グラファイトシート用多層ポリイミドフィルム、その製造方法およびそれから製造されるグラファイトシート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20220126BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20220126BHJP
C01B 32/205 20170101ALI20220126BHJP
【FI】
B32B27/34
C08G73/10
C01B32/205
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533146
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(85)【翻訳文提出日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 KR2020010319
(87)【国際公開番号】W WO2021025454
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】10-2019-0094723
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0097064
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520160738
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム・キュン ス
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・ドン ユン
【テーマコード(参考)】
4F100
4G146
4J043
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AA01B
4F100AA01C
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4J043VA021
4J043VA041
4J043ZB11
4J043ZB47
(57)【要約】
【要約】厚さが約100μm以上であり、非熱可塑性ポリイミド層、および前記非熱可塑性ポリイミド層の一面または両面に積層された熱可塑性ポリイミド層を含むポリイミドフィルムを2つ以上含み、前記2つ以上のポリイミドフィルムが前記熱可塑性ポリイミド層を介して接着積層されている、グラファイトシート用多層ポリイミドフィルム、その製造方法およびそれから製造されるグラファイトシートが開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが約100μm以上であり、
非熱可塑性ポリイミド層、および前記非熱可塑性ポリイミド層の一面または両面に積層された熱可塑性ポリイミド層を含むポリイミドフィルムを2つ以上含み、
前記2つ以上のポリイミドフィルムが前記熱可塑性ポリイミド層を介して接着積層されている、グラファイトシート用多層ポリイミドフィルム。
【請求項2】
前記ポリイミドフィルムは、共押出によって非熱可塑性ポリイミド層の一面または両面に熱可塑性ポリイミド層が積層して一体化したものである、請求項1または2に記載のグラファイトシート用多層ポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記多層ポリイミドフィルムは、前記2つ以上のポリイミドフィルムを熱圧着し、前記熱可塑性ポリイミド層を介して接着積層したものである、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のグラファイトシート用多層ポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記ポリイミドフィルムの非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層との厚さ比が約1:0.01ないし約1:1である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のグラファイトシート用多層ポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記多層ポリイミドフィルムは、前記ポリイミドフィルムが3つ以上積層されたものである、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のグラファイトシート用多層ポリイミドフィルム。
【請求項6】
前記非熱可塑性ポリイミド層は、ピロメリット酸二無水物、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’、4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,3’、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、または、これらの組み合わせを含む二無水物単量体、および4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンジアニリン、3,3’-メチレンジアニリン、または、これらの組み合わせを含むジアミン単量体から形成されたものである、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のグラファイトシート用多層ポリイミドフィルム。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリイミド層は、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’、4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、または、これらの組み合わせを含む二無水物単量体、および4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、1、3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、または、これらの組み合わせを含むジアミン単量体から形成されたものである、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のグラファイトシート用多層ポリイミドフィルム。
【請求項8】
前記多層ポリイミドフィルムは、昇華性無機充填剤をさらに含む、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のグラファイトシート用多層ポリイミドフィルム。
【請求項9】
共押出によって非熱可塑性ポリイミド層の一面または両面に熱可塑性ポリイミド層が積層して一体化したポリイミドフィルムを2つ以上形成し、前記2つ以上のポリイミドフィルムが熱可塑性ポリイミド層を介して接着できるように積層し、そして積層された2つ以上のポリイミドフィルムを熱圧着するステップを含み、
厚さが約100μm以上である、グラファイトシート用多層ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記熱圧着は、約0.1Mpaないし約30Mpaの圧力および約250℃ないし約450℃の温度で約10秒ないし約150秒の間行われるものである、請求項9に記載のグラファイトシート用多層ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の多層ポリイミドフィルムを炭化および黒鉛化して製造され、厚さが約50μm以上である、グラファイトシート。
【請求項12】
前記グラファイトシートの熱伝導度が約500W/m・K以上である、請求項11に記載のグラファイトシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラファイトシート用多層ポリイミドフィルム、その製造方法およびそれから製造されるグラファイトシートに関するものであり、より詳細には、優れた熱伝導度を有する高厚度グラファイトシート用多層ポリイミドフィルム、その製造方法およびそれから製造されるグラファイトシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器は、軽量化、小型化、薄型化および高集積化しており、これによって、電子機器には多量の熱が生じている。このような熱は、製品の寿命を短縮させるか、故障、誤動作などを誘発することがある。したがって、電子機器に対する熱管理が重要な問題として頭をもたげている。
グラファイトシートは、銅やアルミニウムなどの金属シートよりも高い熱伝導度を有し、電子機器の放熱部材として注目されている。特に、薄型グラファイトシート(例えば、約40μm以下の厚さを有するグラファイトシート)に比べて熱受容量の面で有利な高厚度グラファイトシート(例えば、約50μm以上の厚さを有するグラファイトシート)に対する研究が盛んに行われている。
グラファイトシートは、様々な方法で製造されてもよいが、例えば、高分子フィルムを炭化および黒鉛化して製造されてもよい。特に、ポリイミドフィルムは、それらの優れた機械的熱的寸法安定性、化学的安定性などによって、グラファイトシート製造用高分子フィルムとして脚光を浴びている。
高厚度グラファイトシートを製造するためには、高厚度ポリイミドフィルム(例えば、約100μm以上の厚さを有するポリイミドフィルム)の製造が先行される必要があるが、ポリアミド酸溶液をキャストし、熱処理してポリイミドフィルムを製造する通常の方法では、内外部の均一な硬化が難しく、分層、気泡などが生じるため、高厚度ポリイミドフィルムの製造が難しいという問題がある。また、接着剤を使用して2つ以上のポリイミドフィルムを接着して高厚度ポリイミドフィルムを製造する場合、黒鉛化時に接着界面では黒鉛化が進行されず、層分離が起こり、高厚度グラファイトの製造が不可能な問題がある。
または、高厚度グラファイトシートを製造するために、両面テープを使用して2つ以上の薄型グラファイトシートを積層することができるが、このような場合、従来の両面テープは、グラファイトシートよりも熱伝導度が低く、そのため、追加工程が必要となり、コスト、性能などの面で問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、熱伝導度に優れた高厚度グラファイトシート用多層ポリイミドフィルムを提供することである。
本発明の他の目的は、グラファイトシート用多層ポリイミドフィルムの製造方法を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、グラファイトシート用多層ポリイミドフィルムから製造されたグラファイトシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1.本発明の一側面によると、グラファイトシート用多層ポリイミドフィルムが提供される。前記多層ポリイミドフィルムは、厚さが約100μm以上であり、非熱可塑性ポリイミド層、および前記非熱可塑性ポリイミド層の一面または両面に積層された熱可塑性ポリイミド層を含むポリイミドフィルムを2つ以上含み、前記2つ以上のポリイミドフィルムが前記熱可塑性ポリイミド層を介して接着積層されていてもよい。
2.前記第1の具現例において、前記ポリイミドフィルムは、共押出によって非熱可塑性ポリイミド層の一面または両面に熱可塑性ポリイミド層が積層して一体化したものであってもよい。
3.前記第1または第2の具現例において、前記多層ポリイミドフィルムは、前記2つ以上のポリイミドフィルムを熱圧着し、前記熱可塑性ポリイミド層を介して接着積層したものであってもよい。
4.前記第1ないし第3の具現例のいずれか一つにおいて、前記ポリイミドフィルムの非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層との厚さ比が約1:0.01ないし約1:1であってもよい。
5.前記第1ないし第4の具現例のいずれか一つにおいて、前記多層ポリイミドフィルムは、前記ポリイミドフィルムが3つ以上積層されたものであってもよい。
6.前記第1ないし第5の具現例のいずれか一つにおいて、前記非熱可塑性ポリイミド層は、ピロメリット酸二無水物、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’、4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,3’、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、または、これらの組み合わせを含む二無水物単量体、および4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンジアニリン、3,3’-メチレンジアニリン、または、これらの組み合わせを含むジアミン単量体から形成されてもよい。
7.前記第1ないし第6の具現例のいずれか一つにおいて、前記熱可塑性ポリイミド層は、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’、4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、または、これらの組み合わせを含む二無水物単量体、および4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、1、3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、または、これらの組み合わせを含むジアミン単量体から形成されてもよい。
8.前記第1ないし第7の具現例のいずれか一つにおいて、前記多層ポリイミドフィルムは、昇華性無機充填剤をさらに含んでもよい。
9.本発明の他の側面によると、グラファイトシート用多層ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。前記方法は、共押出によって非熱可塑性ポリイミド層の一面または両面に熱可塑性ポリイミド層が積層して一体化したポリイミドフィルムを2つ以上形成し、前記2つ以上のポリイミドフィルムが熱可塑性ポリイミド層を介して接着できるように積層し、そして積層された2つ以上のポリイミドフィルムを熱圧着するステップを含んでもよいし、多層ポリイミドフィルムは、厚さが約100μm以上であってもよい。
10.前記第9の具現例において、前記熱圧着は、約0.1Mpaないし約30Mpaの圧力および約250℃ないし約450℃の温度で約10秒ないし約150秒の間行われてもよい。
11.本発明のもう一つの側面によると、グラファイトシートが提供される。前記グラファイトシートは、前記第1ないし第8の具現例のいずれか一つの多層ポリイミドフィルム、または前記第8または第9の具現例の方法で製造された多層ポリイミドフィルムから製造され、厚さが約50μm以上であってもよい。
12.前記第11の具現例において、前記グラファイトシートは、熱伝導度が約500W/m・K以上であってもよい。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、熱伝導度に優れた高厚度グラファイトシート用多層ポリイミドフィルム、その製造方法およびそれから製造されるグラファイトシートを提供する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一具現例によるグラファイトシート用多層ポリイミドフィルムを概略的に図示したものである。
【
図2】本発明の他の具現例によるグラファイトシート用多層ポリイミドフィルムを概略的に図示したものである。
【
図3】(a)、(b)は、本発明の実施例1のグラファイトシート用多層ポリイミドフィルムの断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において、単数の表現は、文脈上明らかに異に意味しない限り、複数の表現を含む。
明細書の全体にわたって同一参照符号は同一構成要素を称する。また、本発明を説明するにおいて、関連する公知技術に関する具体的な説明が、本発明の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
「~上に」、「~上部に」、「~下部に」、「~側に」などで二つの部分の位置関係が説明される場合は、「すぐに」または「直接」が使用されない限り、二つの部分の間に一つ以上の他の部分が位置してもよい。
図面を説明するにおいて、「上部」、「上面」、「下部」、「下面」などのような位置関係は、図面を基準に記載されただけであり、絶対的な位置関係を示すものではない。つまり、観察する位置に応じて、「上部」および「下部」または「上面」および「下面」の位置が互いに変更されてもよい。
本明細書中で、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴または構成要素が存在することを意味するものであり、一つ以上の他の特徴または構成要素が付加される可能性を事前に排除するものではない。
本明細書で使用される「第1」、「第2」などの用語は、様々な構成要素を説明するに使用されてもよいが、構成要素は用語によって限定されてはいけない。用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。
構成要素を解釈するにおいて、別途の明示的な記載がなくても誤差範囲を含むものと解釈する。
本明細書で数値範囲を表す「aないしb」において、「ないし」は、≧aで、かつ、≦bと定義する。
本明細書中で、「熱可塑性ポリイミド」とは、DSC(示差走査熱量測定)で測定したガラス転移温度(Tg)が15℃から350℃であることを意味することができる。
本明細書中で、「非熱可塑性ポリイミド」とは、ポリイミドフィルムを350℃ないし500℃に加熱したときに、フィルムの形状が維持されることを意味することができる。
【0008】
グラファイトシート用多層ポリイミドフィルム
本発明の一側面によるグラファイトシート用多層ポリイミドフィルム(以下、「多層ポリイミドフィルム」と称する。)は、厚さが約100μm以上であり、非熱可塑性ポリイミド層、および前記非熱可塑性ポリイミド層の一面または両面に積層された熱可塑性ポリイミド層を含むポリイミドフィルムを2つ以上含み、前記2つ以上のポリイミドフィルムが前記熱可塑性ポリイミド層を介して接着積層されていてもよい。
【0009】
多層ポリイミドフィルムは、約100μm以上(例えば、100μm以上、110μm以上、120μm以上、130μm以上、140μm以上、150μm以上、160μm以上、170μm以上、180μm以上、または190μm以上)の厚さを有することによって、約50μm以上の厚さを有する高厚度グラファイトシートの製造を可能にすることができる。例えば、多層ポリイミドフィルムは、約100μmないし約10,000μm、他の例としては、約150μmないし約1,000μm、他の例としては、約150μmないし約500μmの厚さを有してもよいが、これに限定されるものではない。
多層ポリイミドフィルムの厚さは、積層されるポリイミドフィルムの厚さ(例えば、非熱可塑性ポリイミド層の厚さ、熱可塑性ポリイミド層の厚さ)、個数などを調節して容易に制御することができる。例えば、所定の厚さを満足するように多層ポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルムを3以上(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15以上)、他の例としては、約3ないし約1,000、他の例としては、約3ないし約100、他の例としては、約3ないし約50、他の例としては、約3ないし約20積層して形成してもよい。
【0010】
多層ポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミド層、および前記非熱可塑性ポリイミド層の一面または両面に積層された熱可塑性ポリイミド層を含むポリイミドフィルムを2つ以上含むものであるが、このとき、前記2つ以上のポリイミドフィルムは、前記熱可塑性ポリイミド層を介して接着積層されたものであってもよい。熱可塑性ポリイミド層の場合、熱圧着などによって容易に接着することができ、優れた密着性を有し、多層ポリイミドフィルムの炭化および黒鉛化時に接着界面で層分離することなく、熱伝導度に優れた高厚度グラファイトシートを製造することができる。
【0011】
多層ポリイミドフィルムに含まれる各々のポリイミドフィルムは、互いに同一または異なってもよい。例えば、各々のポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミド層および/または熱可塑性ポリイミド層の材質(例えば、ポリイミド前駆体成分、成分の含量)、厚さなどが互いに同一または異なってもよい。また、ポリイミドフィルムが非熱可塑性ポリイミド層の両面に熱可塑性ポリイミド層を含む場合、各々の熱可塑性ポリイミド層も、互いに同一または異なってもよい。また、ポリイミドフィルムに含まれる非熱可塑性ポリイミド層および/または熱可塑性ポリイミド層は、単層または複数の層からなってもよい。一具現例によると、各々のポリイミドフィルムに含まれた熱可塑性ポリイミド層は同一の材質であってもよいし、このような場合、より優れた熱可塑性ポリイミド層間の接着力が得られ、後工程時により優れた剥離防止効果が得られるが、これに限定されるものではない。
【0012】
一具現例によると、多層ポリイミドフィルムに含まれるポリイミドフィルムは、共押出によって非熱可塑性ポリイミド層の一面または両面に熱可塑性ポリイミド層が積層して一体化したものであってもよい。例えば、ポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物および熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物を2層以上の押出成形用ダイを有する押出成形機に同時に供給し、前記ダイの吐出口から前記2つの組成物を2層以上のフィルム状に押出する工程を経て製造することができる。より詳細には、非熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物および熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物を2層以上の押出成形用ダイを有する押出成形機に同時に供給し、2層以上の押出成形用ダイから吐出された前記2つの組成物を支持体上に連続的にフィルム状に押し出した後、(例えば、約30℃ないし約300℃の温度で)加熱乾燥して自己維持性を有するゲルフィルムを製造し、前記ゲルフィルムを支持体から分離した後に高温(例えば、約50℃ないし約700℃)処理することによって、ポリイミドフィルムを得ることができる。2層以上の押出成形用ダイとしては、公知の様々な構造を使用してもよいし、例えば、多層フィルム製造用Tダイ(例えば、フィードブロックTダイまたはマルチマニホールドTダイ)などを使用してもよい。
【0013】
一具現例によると、ポリイミドフィルムの非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層とは直接(direct)接触していてもよい。ここで、「直接接触」とは、非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層との間に、他の層が介在されていないことを意味することができる。
【0014】
一具現例によると、多層ポリイミドフィルムは、2つ以上のポリイミドフィルムを熱圧着して、熱可塑性ポリイミド層を介して接着積層したものであってもよい。これによって、ポリイミドフィルムの熱可塑性ポリイミド層同士を容易に接着させることができ、優れた接着力も得られる。熱圧着は、例えば、約0.1Mpaないし約30Mpa(例えば、約10Mpaから約20Mpa)の圧力および約250℃ないし約450℃(例えば、約300℃ないし約370℃)の温度で約10秒ないし約150秒(例えば、約30秒ないし約80秒)の間行われてもよいが、これに限定されるものではない。一具現例によると、ポリイミドフィルムの熱可塑性ポリイミド層同士(例えば、ポリイミドフィルムを2つ含む場合、1つのポリイミドフィルムの熱可塑性ポリイミド層と他の一つのポリイミドフィルムの熱可塑性ポリイミドミッド層とが)互いに直接(direct)接触していてもよい。
【0015】
一具現例によると、ポリイミドフィルムにおいて、非熱可塑性ポリイミド層の厚さと熱可塑性ポリイミド層の厚さとの割合(非熱可塑性ポリイミド層の両面に熱可塑性ポリイミド層が積層された場合であれば、非熱可塑性ポリイミド層の厚さと一面に積層された熱可塑性ポリイミド層の厚さとの割合)は、約1:0.01ないし約1:1(例えば、1:0.01、1:0.1、1:0.2、1:0.3、1:0.4、1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9または1:1)であってもよい。前記範囲において、均一でかつ厚いグラファイトシートの製造が可能である。例えば、非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層との厚さ比は、約1:0.01以上ないし約1:1未満、他の例としては、約1:0.05ないし約1:0.5、他の例としては、約1:0.05ないし約1:0.3であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0016】
一具現例によると、ポリイミドフィルムにおいて、非熱可塑性ポリイミド層の厚さは、約10μmないし約100μm(例えば、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μmまたは100μm)であってもよい。前記範囲において、均一でかつ厚いグラファイトシートの製造が可能である。例えば、非熱可塑性ポリイミド層の厚さは、約10μmないし約75μm、他の例としては、約10μmないし約50μm、他の例としては、約10μmないし約30μmであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0017】
一具現例によると、ポリイミドフィルムにおいて、熱可塑性ポリイミド層の厚さ(非熱可塑性ポリイミド層の両面に熱可塑性ポリイミド層が積層された場合であれば、一面に積層された熱可塑性ポリイミド層の厚さ)は、約0.1μmないし約100μm(例えば、0.1μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μmまたは100μm)であってもよい。前記範囲において、均一でかつ厚いグラファイトシートの製造が可能である。例えば、熱可塑性ポリイミド層の厚さは、約1μmないし約75μm、他の例としては、約1μmないし約50μm、他の例としては、約1μmないし約30μm、他の例としては、約1μmないし約10μmであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0018】
一具現例によると、多層ポリイミドフィルムに含まれるポリイミドフィルム一つの厚さは、約10μmないし約100μm(例えば、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μmまたは100μm)であってもよい。前記範囲において、2つ以上のポリイミドフィルムが熱可塑性ポリイミド層を介して上手く接着積層することができる。例えば、ポリイミドフィルムの1つの厚さは、約10μmないし約70μm、他の例としては、約10μmないし約50μm、他の例としては、約20μmないし約35μmであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0019】
一具現例によると、非熱可塑性ポリイミド層および熱可塑性ポリイミド層は、二無水物単量体とジアミン単量体から形成されてもよい。例えば、非熱可塑性ポリイミド層および熱可塑性ポリイミド層は、二無水物単量体とジアミン単量体との反応によって形成されたポリアミド酸をイミド化して製造されてもよい。非熱可塑性ポリイミド層および熱可塑性ポリイミド層の形成に使用可能な二無水物単量体とジアミン単量体の種類は特に限定されず、ポリイミドフィルム製造分野において通常使用される様々な単量体が使用されてもよい。例えば、非熱可塑性ポリイミド層および熱可塑性ポリイミド層の形成には、二無水物単量体として、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’、3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’、4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水水、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、または、これらの誘導体、または、これらの組み合わせが使用されてもよい。また、ジアミン単量体としては、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-メチレンジアニリン、3,3’-メチレンジアニリン、ベンジジン、3,3’-ジクロロベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキサイド、4,4’-ジアミノジフェニルN-メチルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルN-フェニルアミン、1,4-ジアミノベンゼン(p-フェニレンジアミン)、1,3-ジアミノベンゼン、1,2-ジアミノベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、または、これらの誘導体、または、これらの組み合わせが使用されてもよい。
【0020】
一具現例によると、非熱可塑性ポリイミド層を形成するために、二無水物単量体としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’、4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,3’、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、または、これらの組み合わせを使用し、ジアミン単量体としては、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンジアニリン、3,3’-メチレンジアニリン、または、これらの組み合わせを使用してもよいし、このような場合、配向性に優れたポリイミド層の形成が可能であり、炭化、黒鉛化時に優れた熱伝導度を有するグラファイトシートを形成することができるが、これに限定されるものではない。
一具現例によると、熱可塑性ポリイミド層を形成するために、二無水物単量体としては、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’、4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、または、これらの組み合わせを使用し、ジアミン単量体としては、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、または、これらの組み合わせを使用してもよいし、このような場合、2つ以上のポリイミドフィルムが熱可塑性ポリイミド層を介してより上手く接着積層することができるが、これに限定されるものではない。
【0021】
一具現例によると、多層ポリイミドフィルムは、昇華性無機充填剤をさらに含んでもよい。ここで、「昇華性無機充填剤」とは、グラファイトシートの製造時に炭化および/または黒鉛化工程中に熱によって昇華される無機充填剤を意味することができる。多層ポリイミドフィルムが昇華性無機充填剤を含む場合、グラファイトシートの製造時に昇華性無機充填剤の昇華を通じて生じる気体によってグラファイトシートに空隙が形成され、これによって、グラファイトシートの製造時に生じる昇華ガスの排気が円滑に行われ、良質のグラファイトシートが得られるだけでなく、グラファイトシートの柔軟性を向上させ、終局的にグラファイトシートの取り扱い性や成形性を向上させることができる。昇華性無機充填剤の例としては、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸バリウムなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。昇華性無機充填剤の平均粒径(D50)は、約0.05μmないし約5.0μm(例えば、約0.1μmないし約4.0μm)であってもよいし、前記範囲で良質のグラファイトシートを得ることができるが、これに限定されるものではない。昇華性無機充填剤の含量は、多層ポリイミドフィルム100重量部に対して、約0.05重量部ないし約0.5重量部であってもよいし、前記範囲で良質のグラファイトシートを得ることができるが、これに限定されるものではない。一具現例によると、多層ポリイミドフィルムのうち、非熱可塑性ポリイミド層および熱可塑性ポリイミド層の両方に昇華性無機充填剤が含まれてもよい。他の具現例によると、多層ポリイミドフィルムのうち、非熱可塑性ポリイミド層には昇華性無機充填剤が含まれており、熱可塑性ポリイミド層には昇華性無機充填剤が含まれていないことがある。
【0022】
図1は、本発明の一具現例による多層ポリイミドフィルム(100)を概略的に図示したものである。
図1を参照すると、多層ポリイミドフィルム(100)は、非熱可塑性ポリイミド層(111、121)および非熱可塑性ポリイミド層(111、121)の一面に積層された熱可塑性ポリイミド層(112、122)を含むポリイミドフィルム(110、120)を含んでもよいし、選択的にポリイミドフィルム(110、120)の間に非熱可塑性ポリイミド層および非熱可塑性ポリイミド層の両面に積層された熱可塑性ポリイミド層を含むポリイミドフィルム(図示せず)を1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上)をさらに含んでもよい。例えば、多層ポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミド層、および前記非熱可塑性ポリイミド層の一面に積層された熱可塑性ポリイミド層を含む2つの第1ポリイミドフィルム、および非熱可塑性ポリイミド層、および前記非熱可塑性ポリイミド層の両面に積層された熱可塑性ポリイミド層を含む1つ以上の第2ポリイミドフィルムを含み、前記2つの第1ポリイミドフィルムの間に、前記1つ以上の第2ポリイミドフィルムが介在するが、第1ポリイミドフィルムと前記第2ポリイミドフィルムとは、前記第1ポリイミドフィルムと前記第2ポリイミドフィルムに含まれた熱可塑性ポリイミド層を介して接着積層されたものであってもよい。
【0023】
図2は、本発明の他の具現例による多層ポリイミドフィルム(200)を概略的に図示したものである。
図2を参照すると、多層ポリイミドフィルム(200)は、非熱可塑性ポリイミド層(211、221)および非熱可塑性ポリイミド層(211、221)の両面に積層された熱可塑性ポリイミド層(212、222)を含むポリイミドフィルム(210、220)を含んでもよいし、選択的にポリイミドフィルム(210、220)の間に非熱可塑性ポリイミド層および非熱可塑性ポリイミド層の両面に積層された熱可塑性ポリイミド層を含むポリイミドフィルム(図示せず)を1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上)をさらに含んでもよい。
【0024】
本発明の一具現例に係る多層ポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミド層の一面または両面に熱可塑性ポリイミド層が積層して一体化した2つ以上のポリイミドフィルムが前記熱可塑性ポリイミド層を介して接着積層されることによって、ポリイミドフィルムが優れた接着性で接着されており、炭化および/または黒鉛化時に接着界面で層分離することなく、熱伝導度に優れた高厚度グラファイトシートに変換することができる。
【0025】
多層ポリイミドフィルムの製造方法
本発明の他の側面によると、グラファイトシート用多層ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。前記多層ポリイミドフィルムは、厚さが約100μm以上であり、共押出によって非熱可塑性ポリイミド層の一面または両面に熱可塑性ポリイミド層が積層して一体化したポリイミドフィルムを2つ以上形成し、前記2つ以上のポリイミドフィルムが熱可塑性ポリイミド層を介して接着できるように積層し、そして積層された2つ以上のポリイミドフィルムを熱圧着するステップを含んでもよい。
【0026】
まず、共押出によって非熱可塑性ポリイミド層の一面または両面に熱可塑性ポリイミド層が積層して一体化したポリイミドフィルムを形成することができる。
ポリイミドフィルムは、例えば、非熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物を製造し、熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物を製造し、前記非熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物および前記熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物を支持体上に2層以上のフィルム状に共押出し、乾燥してゲルフィルムを形成し、前記ゲルフィルムを熱処理して製造することができる。
【0027】
非熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物は、例えば、溶媒、ジアミン単量体および二無水物単量体を混合してポリアミド酸溶液を形成するステップを含んで製造されてもよいし、選択的に前記ポリアミド酸溶液に昇華性無機充填剤、脱水剤および/またはイミド化剤を添加するステップをさらに含んでもよい。熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物は、例えば、溶媒、ジアミン単量体および二無水物単量体を混合してポリアミド酸溶液を形成するステップを含んで製造されてもよいし、選択的に前記ポリアミド酸溶液に昇華性無機充填剤、脱水剤および/またはイミド化剤を添加するステップをさらに含んでもよい。ジアミン単量体、二無水物単量体および昇華性無機充填剤については、前述したものを参照する。
溶媒は、ポリアミド酸を溶解し得るものであれば、特に限定されない。例えば、溶媒は、非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)を含んでもよい。非プロトン性極性溶媒の例としては、N、N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N、N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)などのアミド系溶媒、p-クロロフェノール、o-クロロフェノールなどのフェノール系溶媒、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ガンマブチロラクトン(GBL)、ジグリム(Diglyme)などを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用されてもよい。場合によっては、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、エタノール、水などの補助的溶媒を使用してポリアミド酸の溶解度を調節することもできる。
【0028】
一具現例によると、ポリアミド酸溶液は、固形分含量、すなわち、ジアミン単量体、二無水物単量体および溶媒の総重量に対するジアミン単量体および二無水物単量体の重量パーセントが、例えば、約5重量%ないし約35重量%、他の例としては、約10重量%ないし約30重量%であってもよい。前記範囲でポリアミド酸溶液はフィルムを形成するに適当な分子量と粘度を有することができるが、これに限定されるものではない。
【0029】
一具現例によると、非熱可塑性ポリイミド層形成用ポリアミド酸溶液は、23℃で粘度が約100,000cPないし約500,000cPであってもよい。前記範囲でポリアミド酸が所定の分子量を有するようにしながらも、ポリイミドフィルム製膜時に優れた工程性が得られる。ここで、「粘度」は、ハケマース(HAAKE Mars)粘度計を用いて測定されてもよい。例えば、ポリアミド酸溶液の粘度は、23℃で約150,000cPないし約450,000cP、他の例としては、約200,000cPないし約400,000cP、他の例としては、約250,000cPないし約350,000cPであってもよいが、これに限定されるものではない。
一具現例によると、熱可塑性ポリイミド層形成用ポリアミド酸溶液は、23℃で粘度が約1,000cPないし約500,000cPであってもよい。前記範囲でポリアミド酸が所定の分子量を有するようにしながらも、ポリイミドフィルム製膜時に優れた工程性が得られ、適切な温度および圧力の下で熱圧着することができる。ここで、「粘度」は、ハケマース(HAAKE Mars)粘度計を用いて測定されてもよい。例えば、ポリアミド酸溶液の粘度は、23℃で約1,000cPないし約100,000cP、他の例としては、約1,000cPないし約50,000cP、他の例としては、約5,000cPないし約50,000cPであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0030】
一具現例によると、非熱可塑性ポリイミド層形成用ポリアミド酸は、重量平均分子量が約50,000g/molないし約500,000g/molであってもよい。前記範囲で、より優れた熱伝導度を有するグラファイトシートを製造するに有利である。ここで、「重量平均分子量」は、ゲルクロマトグラフィー(GPC)を使用し、ポリスチレンを標準試料として用いて測定されてもよい。例えば、ポリアミド酸の重量平均分子量は、約150,000g/molないし約500,000g/mol、他の例としては、約100,000g/molないし約400,000g/molであってもよいが、これに限定されるものではない。
一具現例によると、熱可塑性ポリイミド層形成用ポリアミド酸は、重量平均分子量が約5,000g/molないし約500,000g/molであってもよいが、これに限定されるものではない。前記範囲で、より優れた熱伝導度を有するグラファイトシートを製造するに有利である。ここで、「重量平均分子量」は、ゲルクロマトグラフィー(GPC)を使用し、ポリスチレンを標準試料として用いて測定されてもよい。
【0031】
脱水剤とは、ポリアミド酸に対する脱水作用を通じて閉環反応を促進するものであって、例えば、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N、N’-ジアルキルカルボジイミド、ハロゲン化低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物などを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。その中でも、入手の容易性およびコストの観点から酢酸無水物、プロピオン酸無水物、乳酸無水物などの脂肪族酸無水物を単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。脱水剤は、ポリアミド酸のうちアミド酸基1モルに対して、約0.5モルないし約5モル(例えば、約1モルないし約4モル)添加されてもよいし、前記範囲で十分なイミド化が可能であり、フィルム状にキャストするに有利であるが、これに限定されるものではない。
【0032】
イミド化剤とは、ポリアミド酸に対する閉環反応を促進するものであって、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、および複素環式3級アミンなどが使用されてもよい。その中でも、触媒としての反応性の観点から、複素環式3級アミンが使用されもよい。複素環式3級アミンの例としては、キノリン、イソキノリン、β-ピコリン、ピリジンなどがあり、これらは単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。イミド化剤は、ポリアミド酸のうちアミド酸基1モルに対して、約0.05モルないし約3モル(例えば、約0.2モルないし約2モル)添加されてもよいし、前記範囲で十分なイミド化が可能であり、フィルム状にキャストするに有利であるが、これに限定されるものではない。
【0033】
その後、非熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物および熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物を支持体上に2層以上のフィルム状に共押出し、乾燥してゲルフィルムを形成することができる。例えば、非熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物および熱可塑性ポリイミド層前駆体組成物を2層以上の押出成形用ダイを有する押出成形機に同時に供給し、前記ダイの吐出口から前記2つの組成物を2層以上のフィルム状に共押出し、乾燥してゲルフィルムを製造することができる。ここで、ゲルフィルムは、ポリアミド酸からポリイミドへの硬化の中間段階にあり、自己支持性を有することができる。
支持体としては、ガラス板、アルミニウム箔、無断(endless)ステンレスベルト、ステンレスドラムなどを挙げることができる。乾燥は、例えば、約30℃ないし約300℃(例えば、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃、280℃、290℃または300℃、他の例としては、約80℃ないし約200℃、他の例としては、約100℃ないし約180℃、他の例としては、約100℃ないし約150℃)の温度で行われてもよいが、これに限定されるものではない。乾燥時間は、例えば、約1分ないし約10分(例えば、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分または10分)、他の例としては、約2分ないし約7分、他の例としては、約2分ないし約5分の間行われてもよいが、これに限定されるものではない。
場合によっては、最終的に得られるポリイミドフィルムの厚さおよび大きさを調整し、配向性を向上させるためにゲルフィルムを延伸させるステップを含んでもよいし、延伸は、MD(machine direction)およびTD(transverse direction)のうち少なくとも一つの方向に行われてもよい。
【0034】
その後、ゲルフィルムを熱処理してポリイミドフィルムを製造することができる。ゲルフィルムの熱処理によってゲルフィルムに残存するほとんどのアミド酸基がイミド化してポリイミドフィルムを得ることができる。熱処理温度は、約50℃ないし約700℃(例えば、50℃、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃または700℃)、例えば、約150℃ないし約600℃、他の例としては、約200℃ないし約600℃、他の例としては、約350℃ないし約500℃、他の例としては、約400℃ないし約450℃であってもよいが、これに限定されるものではない。熱処理時間は、例えば、約1分ないし約20分、他の例としては、約1分ないし約10分、他の例としては、約2分ないし約8分の間行われてもよいが、これに限定されるものではない。
【0035】
次いで、2つ以上のポリイミドフィルムが熱可塑性ポリイミド層を介して接着できるように積層することができる。より詳細には、熱可塑性ポリイミド層が互いに向き合うように、各々のポリイミドフィルムを積層することができる。
【0036】
次いで、積層された2つ以上のポリイミドフィルムを熱圧着することができる。熱圧着は、例えば、約0.1Mpaないし約30Mpa(例えば、0.1Mpa、1Mpa、2Mpa、3Mpa、4Mpa、5Mpa、6Mpa、7Mpa、8Mpa、9Mpa、10Mpa、11Mpa、12Mpa、13Mpa、14Mpa、15Mpa、16Mpa、17Mpa、18Mpa、19Mpa、20Mpa、21Mpa、22Mpa、23Mpa、24Mpa、25Mpa、26Mpa、27Mpa、28Mpa、29Mpaまたは30Mpa)の圧力で行われてもよいが、これに限定されるものではない。熱圧着は、例えば、約250℃ないし約450℃(例えば、250℃、260℃、270℃、280℃、290℃、300℃、310℃、320℃、330℃、340℃、350℃、360℃、370℃、380℃、390℃、400℃、410℃、420℃、430℃、440℃または450℃)の温度で行われてもよいが、これに限定されるものではない。熱圧着は、例えば、約10秒ないし約150秒(例えば、10秒、20秒、30秒、40秒、50秒、60秒、70秒、80秒、90秒、100秒、110秒、120秒、130秒、140秒、または150秒)の間行われてもよいが、これに限定されるものではない。
【0037】
前述のように製造された多層ポリイミドフィルムは、共押出によって非熱可塑性ポリイミド層の一面または両面に熱可塑性ポリイミド層が積層して一体化した2つ以上のポリイミドフィルムを熱圧着し、前記熱可塑性ポリイミド層を介して接着積層されることによって、ポリイミドフィルムが優れた接着性で接着されており、炭化および/または黒鉛化時に接着界面で層分離することなく、熱伝導度に優れた高厚度グラファイトシートに変換することができる。
【0038】
グラファイトシート
本発明のもう一つの側面によると、前述の多層ポリイミドフィルム、または前述の製造方法で製造された多層ポリイミドフィルムから製造されたグラファイトシートが提供される。このようなグラファイトシートは、約50μm以上、例えば、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μmまたは約200μm以上、他の例としては、約50μmないし約4,000μm、他の例としては、約50μmないし約500μmの厚さを有すると共に、優れた熱伝導度を有することができる。
【0039】
一具現例によると、グラファイトシートは、熱伝導度が約500W/m・K以上(例えば、500W/m・K、600W/m・K、700W/m・K、800W/m・K、900W/m・K、1,000W/m・K、1,100W/m・K、1,200W/m・K、1,300W/m・K、1,400W/m・Kまたは1,500W/m・K以上)であってもよい。例えば、グラファイトシートの熱伝導度は約500W/m・Kないし約2,000W/m・K、他の例としては、約1,000W/m・Kないし約2,000W/m・Kであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0040】
前述のグラファイトシートは、グラファイトシート製造分野において通常使用される様々な方法で製造することができる。例えば、グラファイトシートは、前述の多層ポリイミドフィルムを炭化および黒鉛化して製造することができる。
「炭化」は、ポリイミドフィルムの高分子鎖を熱分解して非晶質炭素体、非結晶質炭素体および/または無定形炭素体を含む予備グラファイトシートを形成する工程であって、例えば、ポリイミドフィルムを減圧下でまたは非活性気体雰囲気下で、常温から最高温度である約1000℃ないし約1500℃の範囲の温度まで約10時間ないし約30時間にかけて昇温および維持するステップを含んでもよいが、これに限定されるものではない。選択的に、炭素の高配向性のために、炭化時にホットプレスなどを用いて、ポリイミドフィルムに圧力をかけてもよいし、このときの圧力は、例えば、約5kg/cm2以上、他の例としては、約15kg/cm2以上、他の例としては、約25kg/cm2以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
黒鉛化は、非晶質炭素体、非結晶質炭素体および/または無定形炭素体の炭素を再配列してグラファイトシートを形成する工程であって、例えば、予備グラファイトシートを、選択的に非活性気体雰囲気下で、常温から最高温度である約2500℃ないし約3000℃の範囲の温度まで約2時間ないし約30時間にかけて昇温および維持するステップを含んでもよいが、これに限定されるものではない。選択的に、炭素の高配向性のために、黒鉛化時にホットプレスなどを用いて、予備グラファイトシートに圧力をかけてもよいし、このときの圧力は、例えば、約100kg/cm2以上、他の例としては、約200kg/cm2以上、他の例としては、約300kg/cm2以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げ、本発明をより詳述することにする。ただし、これは、本発明の好ましい例として提示されたものであって、いかなる意味でも、これによって本発明が制限されるものと解釈されることはない。
【0042】
実施例1
反応器に、溶媒として、ジメチルホルムアミド178.6gを投入し、温度を20℃に合わせた。ここで、ジアミン単量体として、4,4’-オキシジアニリン(ODA)25.7gを添加し、続いて、二無水物単量体として、ピロメリット酸二無水物(PMDA)26.5gを添加して、粘度が230,000cPであるポリアミド酸溶液を製造した。続いて、製造されたポリアミド酸溶液に、脱水剤として、酢酸無水物55.8g、イミド化剤として、β-ピコリン8.1g、昇華性無機充填剤として、第二リン酸カルシウム(平均粒径(D50):2.5μm)0.1g、および、溶媒として、ジメチルホルムアミド34gを混合して非熱可塑性ポリイミド層用前駆体溶液を製造した。
別の反応器に、溶媒として、ジメチルホルムアミド178.6gを投入し、温度を20℃に合わせた。ここで、ジアミン単量体として、4,4’-オキシジアニリン(ODA)21.8gを添加し、続いて、二無水物単量体として、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)30.2gを添加して、粘度が10,000cPであるポリアミド酸溶液を製造した。続いて、製造されたポリアミド酸溶液に、脱水剤として、酢酸無水物46.8g、イミド化剤として、β-ピコリン7.0g、昇華性無機充填剤として、第二リン酸カルシウム(平均粒径(D50):1.5μm)1.1g、および、溶媒として、ジメチルホルムアミド29.5gを混合して熱可塑性ポリイミド層用前駆体溶液を製造した。
製造した非熱可塑性ポリイミド層用前駆体溶液および熱可塑性ポリイミド層用前駆体溶液を非熱可塑性ポリイミド層の両面に熱可塑性ポリイミド層が積層して一体化するように、3層押出用ダイスを設けた製膜装置を使用してSUS板(100SA、Sandvik社)上に製膜し、130℃で3分間乾燥させてゲルフィルムを製造した。製造されたゲルフィルムをSUS板と分離した後、420℃で4分間熱処理して熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミド層/熱可塑性ポリイミド層(厚さ:4μm/16μm/4μm)構造のポリイミドフィルムを製造した。
製造したポリイミドフィルムを8枚積層した後、20Mpaの圧力をかけながら、350℃で1分間熱圧着して192μmの厚さを有する多層ポリイミドフィルムを製造した。
【0043】
評価例1
走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、実施例1の多層ポリイミドフィルムの断面を観察し、その結果を
図3(a)、(b)に示した。
図3(a)は、多層ポリイミドフィルムの全体断面であり、
図3(b)は、多層ポリイミドフィルムの断面のうち一部を拡大したものである。
図3(a)、(b)から、ポリイミドフィルムの熱可塑性ポリイミド層間の界面が不分明であることが分かり、このことから8枚のポリイミドフィルムが上手く接着されていることを予測することができる。
【0044】
実施例2
実施例1の多層ポリイミドフィルムを電気炉を使用して窒素気体下で、1℃/分の速度で1200℃まで昇温した後、前記温度で2時間維持して炭化した。その後、アルゴン気体下で、20℃/分の速度で2800℃まで昇温した後、前記温度で1時間維持して黒鉛化し、100μmの厚さを有するグラファイトシートを製造した。
【0045】
評価例2
実施例2のグラファイトシートを直径25.4mmの円形に切断して試片を製造し、前記試片に対して熱拡散率測定装置(LFA467、Netsch社)を使用し、laser flash法で熱拡散率を測定した後、前記熱拡散率測定値に密度および比熱(理論値:0.85kJ/kg・K)を乗じて熱伝導度を求めた。その結果、実施例2のグラファイトシートは1,051W/m・Kの優れた熱伝導度を有することが確認された。
【0046】
これまで本発明について実施例を中心に説明した。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明が、本発明の本質的な特性から外れない範囲で変形された形で具現し得ることが理解されるべきである。したがって、開示された実施例は、限定的な観点ではなく、説明的な観点から考慮されるべきである。本発明の範囲は、前述の説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等の範囲内にあるすべての相違点は、本発明に含まれるものと解釈されるべきである。
【国際調査報告】