(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(54)【発明の名称】ハイブリッド固体電解質
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0565 20100101AFI20220126BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220126BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20220126BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/052
H01M10/058
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533286
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 NL2019050856
(87)【国際公開番号】W WO2020130822
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595115802
【氏名又は名称】ネーデルランセ オルハニサチエ フォール トゥーヘパスト-ナツールウェーテンシャッペルック オンデルズク テーエヌオー
【氏名又は名称原語表記】Nederlandse Organisatie voor toegepast-natuurwetenschappelijk onderzoek TNO
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トゥウォッツィエツキ、ミハル
(72)【発明者】
【氏名】ウニクリシュナン、サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】ハバーケート、ルカス アウグスティヌス
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ06
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK04
5H029AK05
5H029AK07
5H029AK15
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL13
5H029AL15
5H029AL18
5H029AM12
5H029AM14
5H029CJ24
5H029CJ28
5H029DJ17
(57)【要約】
本開示は、バッテリー中の負極と正極との間のイオン伝導性接続を提供する固体電解質に関し、ここで前記固体電解質は、ポリマーを含むイオン伝導性マトリクス、前記イオン伝導性マトリクス中に分散された金属塩、及び第1のセラミック材料を含み、負極又は正極に接続するためのイオン伝導性マトリクスの面の少なくとも一方に前記第1のセラミック材料が浸透して、第1のハイブリッド界面層を形成している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-ポリマー(P)を含む連続的イオン伝導性マトリクス(10m)、及び
-前記イオン伝導性マトリクス(10m)に分散された金属塩(S)、及び
-第1のセラミック材料(C1)
を含み、
負極又は正極に接続するための前記イオン伝導性マトリクス(10m)の面の少なくとも一方に前記第1のセラミック材料(C1)が浸透して、バッテリー中の負極及び正極の少なくとも一方と前記イオン伝導性マトリクスとの間の向上したイオン伝導性を有する第1のハイブリッド界面層10h1を形成している、
バッテリー中の負極と正極との間のイオン伝導接続を提供するための固体電解質(10)。
【請求項2】
前記両電極に接続するための前記イオン伝導性マトリクス(10m)の両面にセラミック材料(C1、C2)が浸透して第1のハイブリッド界面層10h1及び第2のハイブリッド界面層10h2を形成しており、ここで、前記第2のハイブリッド界面層は第2のセラミック材料(C2)を含んでいてもよく、又は前記第1のハイブリッド界面層と同じセラミック材料を含んでいてもよい、請求項1に記載の固体電解質(10)。
【請求項3】
前記両電極に接続するための前記イオン伝導性マトリクス(10m)の面の1つ又は複数に第1のキャップ層(10c)が設けられており、前記第1のキャップ層(10c)は、次のうち1つ又は複数を含む、請求項1又は請求項2に記載の固体電解質(10):
-イオン伝導性セラミック材料、及び
-セラミック材料であって、負極材料との間の反応からイオン伝導性材料を形成する前記セラミック材料。
【請求項4】
前記イオン伝導性マトリクス(10m)は負極材料に接続するための面に前記第1のセラミックキャップ(10c1)が設けられており、正極材料に接合(interface)するための面に第2のセラミック材料が含浸されている、請求項1又は請求項3に記載の固体電解質(10)。
【請求項5】
前記イオン伝導性マトリクス(10m)は正極材料に接続するための面に前記第1のセラミックキャップ(10c1)が設けられており、負極材料に接合(interface)するための面に第2のセラミック材料が含浸されている、請求項1又は請求項3に記載の固体電解質(10)。
【請求項6】
前記両電極に接続するための前記イオン伝導性マトリクス(10m)の両面にキャップ層(10c1、10c2)が設けられている、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の固体電解質(10)。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の固体電解質層(10)のスタックから形成される多層固体電解質。
【請求項8】
正極(3)と負極(2)との間に設けられた、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の固体電解質(10)を含むバッテリー(100)。
【請求項9】
前記負極がリチウムを含み、前記金属塩がリチウムイオンを含み、前記負極に面しているセラミックコーティングがリチウム親和性材料を含む、請求項8に記載のバッテリー。
【請求項10】
-ポリマー(P)及び分散された金属塩(S)を含むイオン伝導性マトリクス(10m)を提供すること;
-前記イオン伝導性マトリクス(10m)を、その層にセラミック材料を含浸させるためのステーションに供給すること;
-前記イオン伝導性マトリクス(10m)の第1の面を、化学的気相含浸(chemical vapor impregnation)法を用いて気相セラミック前駆体材料に曝すこと
を含み、
前記気相セラミック前駆体材料は前記イオン伝導性マトリクス(10m)に浸透し、共反応物質と反応してハイブリッド界面層を形成し、該ハイブリッド界面層は、バッテリー中の負極及び正極の少なくとも一方とバッテリー中の前記イオン伝導性マトリクスとの間の向上したイオン伝導性を有する界面層を形成する、
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の固体電解質(10)を製造するプロセス。
【請求項11】
前記化学的気相含浸法が、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、原子層堆積(ALD)、及び空間分離したALD(sALD)の1つ又は複数から選択され、好ましくはsALDであり、
ここで、前記気相セラミック前駆体材料の含浸深さは、曝露濃度及び/又は圧力、曝露温度、曝露時間、及び逐次曝露の間の経過時間(delay time)の1つ又は複数により調整しうる、
請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
セラミックキャップ層を提供することを含む、請求項10又は請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記イオン伝導ハイブリッド界面層形成ステップ及びキャップ層形成ステップの1つ又は複数が、前記イオン伝導性マトリクス(10m)の第2の面でも行われる、請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
正極材料及び負極材料を配置(deposit)することをさらに含む、請求項10~請求項13のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルカリ(土類)金属バッテリー用の固体ポリマー電解質及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ(土類)金属ベースのバッテリーにおいては、負極は電気化学的に活性な金属を含んでいる。安全上の問題、例えば可燃性のため、現在の金属イオンバッテリー、例えば液体電解質を有するリチウムイオンバッテリーは金属バッテリーの用途には適していない。代わりに、固体電解質、例えばポリマー電解質及びセラミック電解質を用いることができる。ポリマー系電解質は、その材料を処理するのがより容易であるため、セラミック電解質よりも好ましいものでありうる。しかし、環境条件、例えば室温、で固体ポリマー電解質を使用すると、しばしばバッテリー性能が乏しいものとなってしまう。バッテリー性能が乏しいことは、ポリマー電解質と金属電極材料との間の接触抵抗が高いことに起因しうる。さらに、温度を下げると、固体電解質のバルクイオン伝導率は低下する。ポリマー電解質の場合、温度が低下すると、ポリマー鎖は内部的に可動性が小さくなる。例えば、高抵抗の非適合性界面が形成されうる。金属-ポリマーバッテリーを上昇した温度で作動させることでより良い性能が得られうる。Blue Solutions SA(Bollore(eはアクサンテギュ) Groupの子会社)により製造されたリチウム金属ポリマー(LMP(登録商標))バッテリーは、ポリマー電解質を含み、60℃超の温度で良好な性能で作動する。電子デバイスにおいては、電子回路は、電気化学的デバイスにおけるもの等の種類の集電体を備えていてもよい。例えば、電気化学的デバイスは、バッテリー、例えば、非平面的デザインの集電体を有する充電式Liイオン固体バッテリーである。バッテリー放電モードでは、アノードは、「正極」であるカソードから正電荷の流れが流れ込む「負極」である。充電の際は、これらの機能は逆になる。充/放電モードに関わらず、電気化学的関係は負極材料と正極材料との間での電荷移動を特徴とし、負極材料は正極材料の仕事関数又は酸化還元電位よりも低い仕事関数又は酸化還元電位を有している。
【0003】
例えば、公知の負極(バッテリー放電の際のアノード)材料はLi4Ti5O12(スピネル型リチウムチタン酸あるいはLTO);LiC6(グラファイト);Li4.4 Si(ケイ素)及びLi4.4Ge(ゲルマニウム)であり、公知の正極(カソード)材料は、LiCoO2(リチウムコバルト酸化物あるいはLCO)、LiCoPO4、(ドープ)LiMn2O4(スピネル型リチウムマンガン酸化物あるいはLMO)、LiMnPO4、LiFePO4(LFP)、LiFePO4F(LFPF)又はLiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2(LCNMO)である。
【0004】
薄膜固体リチウムイオン型の薄膜バッテリー等の薄膜バッテリーは、一緒に結合されることでバッテリーを形成する負極、正極、及び電極材料を製造する種々の配置(deposition)技術により作製することができる。そのような技術は、典型的には、前記材料の薄膜を真空蒸着又は同様の薄膜を生み出す他の技術を用いて配置(deposit)して、「薄膜」バッテリーを製造することを含んでもよい。薄膜バッテリーは、スペースと重量は好ましくは保存されてよく、かつ極めて長いサイクル寿命が望まれうる用途においてよく用いられる。ポリマー固体電解質を含むバッテリーを高温で作動させると、ポリマー電解質は軟化し、系はデンドライト成長が起こりやすいものとなる。米国特許第2018/026302号明細書は、液体電解質と組み合わせて用いるための、デンドライト成長を防ぐためにセラミック材料で被覆された多孔質ポリエチレンセパレータを記載している。しかし、記載された電解質は接触抵抗の問題に対処しておらず、さらに液体電解質を用いているため安全上の問題につながりうるものであり、例えば、電池温度が高くなったときに短絡により液体電解質が発火するおそれがある。
【0005】
代わりとして、イオン伝導性セラミック材料を電解質物質として用いてもよい。そのような材料は、電極材料とより適合性の界面を形成しうる。しかし、そのようなセラミック電極材料は、典型的には限られたバルクイオン伝導性を有し、また典型的には扱いが難しく非常に脆い。このため、固体セラミック電解質を含むバッテリーは割れ(cracking)及び/又はその他の形態の欠陥を生じやすいものとなる。Energy & Environmental Science, 2018, 11, pages 185-201におけるS. Zekloll et al.による発表は、細孔性(microporous)3次元印刷イオン伝導性セラミック電解質構造であって、孔がポリプロピレン又はエポキシポリマーによって充填された構造を記載している。この記載されたポリマー/セラミック微小構造電解質は向上した機械的特性を示すものの、イオン伝導性を犠牲としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、良好なバルクイオン伝導性、イオン輸率、及び低い界面抵抗を組み合わせ持つ固体電解質を提供するニーズが存在する。
【0007】
本開示は、浸透セラミック相を有するポリマーマトリクスを含む固体電解質を提供することにより上記の制限のうち1つ又は複数を軽減する固体電解質、及びそれを製造するプロセスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のいくつかの態様は、バッテリー中における負極と正極との間のイオン伝導性接続を提供するのに適した固体電解質に関連する。該固体電解質は、ポリマーを含むイオン伝導性マトリクス、前記イオン伝導性マトリクスに分散された金属塩、及び第1のセラミック材料を含み、負極又は正極に接続するためのイオン伝導性マトリクスの面の少なくとも一方に第1のセラミック材料が浸透して、バッテリー中の負極及び正極の少なくとも一方と前記イオン伝導性マトリクスとの間の向上したイオン伝導性を有する第1のハイブリッド界面層を形成する。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は固体電解質に関連し、該固体電解質においては、バッテリーの両電極に接続するためのイオン伝導性マトリクスの両方の面にセラミック材料が浸透して第1及び第2のハイブリッド層を形成する。第2のハイブリッド層は、第1のセラミック材料とは異なる第2のセラミック材料を含んでいてもよい。あるいは、第2のハイブリッド層は、第1のハイブリッド層と同じセラミック材料を含んでいてもよい。
【0010】
いくつかの好ましい実施形態においては、両電極に接続するためのイオン伝導性マトリクスの面の1つ又は複数が第1のキャップ層を備えている。第1のキャップ層は、イオン伝導性セラミック材料、及び、セラミック材料であって、負極材料との間の反応からイオン伝導性材料を形成する前記セラミック材料、のうち1つ又は複数を含む。
【0011】
本開示のいくつかの態様は、さらに、本開示の固体電解質を製造するプロセス及び該プロセスにより得ることができる製品に関連する。該プロセスは、ポリマー及び分散された金属塩を含むイオン伝導性マトリクスを提供すること;並びに、前記イオン伝導性マトリクスの第1の面を気相セラミック前駆体材料に曝すこと、を含む。前記気相セラミック前駆体材料は前記イオン伝導性マトリクスに浸透し、共反応物質と反応してハイブリッド層を形成する。当該浸透は、ポリマーマトリクス中にセラミック(ナノ)粒子を分散することにつながり得、前記ポリマーマトリックスを通じてのイオン伝導性の向上を助けうる。
【0012】
共反応物質は、水、硫化水素、及び酸化性プラズマからなる群から選択される1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、共反応物質は、気相からイオン伝導性マトリクス10mに提供されてもよい。代わりに又は加えて、共反応物質が水のときは、共反応物質はイオン伝導性マトリクス内に存在してもよい。例えば、イオン伝導性マトリクスを形成するステップにおいて適量の水をイオン伝導性マトリクス内に導入してもよい。
いくつかの好ましい実施形態においては、前記プロセスはセラミックキャップ層を提供することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の装置、システム及び方法のこれら及びその他の特徴、態様、及び利点は以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び付属の図面からよりよく理解されるであろう。
【
図1A】
図1Aは、デンドライト形成しやすい固体電解質を含むバッテリースタックを示す。
【
図1B】
図1Bは、第1のハイブリッド層を含む固体電解質を含むバッテリースタックを示す。
【
図2A】
図2A~Dは、バッテリーの負極又は正極に接続するための固体電解質の一方又は複数の面にハイブリッド層及び/又はキャップ層を含む固体電解質の4つの例示的実施形態を示す。
【
図2B】
図2A~Dは、バッテリーの負極又は正極に接続するための固体電解質の一方又は複数の面にハイブリッド層及び/又はキャップ層を含む固体電解質の4つの例示的実施形態を示す。
【
図2C】
図2A~Dは、バッテリーの負極又は正極に接続するための固体電解質の一方又は複数の面にハイブリッド層及び/又はキャップ層を含む固体電解質の4つの例示的実施形態を示す。
【
図2D】
図2A~Dは、バッテリーの負極又は正極に接続するための固体電解質の一方又は複数の面にハイブリッド層及び/又はキャップ層を含む固体電解質の4つの例示的実施形態を示す。
【
図3A】
図3Aは固体電解質層のスタックにより形成された多層固体電解質を示す。
【
図3B】
図3B~Cは、固体電解質を含む例示的な2次元バッテリー及び3次元バッテリーを示す。
【
図3C】
図3B~Cは、固体電解質を含む例示的な2次元バッテリー及び3次元バッテリーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
具体的な実施形態を記載するために用いられる用語は、本発明の限定であることを意図するものではない。本開示において用いられる単数形「a」、「an」及び「the」は、そうではないことを文脈が明らかに示している場合以外は、複数形をも含むことを意図している。用語「及び/又は」は関連するリストに記載のアイテムの1つ又は複数のいかなる、かつ全ての組み合わせを含む。用語「含む」及び/又は「含んでいる」は、言及された特徴の存在を特定するが、1つ又は複数の他の特徴の存在又は付加を排除するものではないことが理解されよう。さらに、方法の特定のステップが他のステップの後であると記載されたとき、特に断りが無ければ、前記ステップは前記他のステップに直ぐ後続してもよく、又は前記特定のステップを実行する前に1つ若しくは複数の中間ステップを行ってもよいことも理解されよう。同様に、構造間又はコンポーネント間の接続が記載されたとき、特に断りの無い限り、この接続は直接になされてもよく、又は中間構造若しくは中間コンポーネントを通じてなされてもよいことも理解されよう。
【0015】
以降、本発明は、本発明の実施形態が示されている添付の図面を参照してより完全に説明される。図面において、システム、コンポーネント、層、及び領域の絶対サイズ及び相対サイズは、明確性のために誇張されている。本発明の理想化されている可能性のある実施形態及び中間構造の模式的及び/又は断面図示を参照して実施形態が説明される場合がある。明細書及び図面において、全体を通じて、同様の数字は同様の要素を示す。相対的な用語及びその派生表現は、当該記載における向き又は論じられている図面に示されている向きを指していると解釈すべきである。これらの相対的用語は説明の便宜のためのものであって、断りの無い限り、システムが特定の向きに製造又は作動することが求められるものではない。
【0016】
図1Aは、比較バッテリースタック100の断面図を模式的に示す。描かれている比較バッテリースタックは固体下部(bottom)集電体6、固体負極層2(アノード)、金属塩及びイオン伝導性ポリマーの混合物からなる固体電解質層1、固体正極層3(カソード)、並びに固体上部(top)集電体5を含む。前記固体電解質層は、バッテリーの放電サイクルの際における負極から正極への、及びバッテリーの充電サイクルの際における逆向きのイオンの輸送を促進する、つまりイオンを通す層として働く。典型的には、負極はリチウム金属を含み、そして固体電解質はリチウムイオンの伝導に適したポリマーマトリクスを含む。
図1Aは、そのようなバッテリーが例えば上昇した温度で、例えば60℃超の温度で、作動させられたときに該バッテリーで生じうる典型的なデンドライト形成問題をさらに示す。
【0017】
理論に拘束されることを望むものではないが、充電サイクルの際、リチウムイオンは固体電解質層を通じて輸送され、負極との界面で電気化学的に活性な状態へと還元されると考えられる。しかし、均一な電極層を形成する代わりに、デンドライトD、例えば鋭い針又はスパイク、が固体電解質層中へと外向きに飛び出した電極材料から形成されうる。このようなデンドライトは、それらが最終的に固体電解質層を貫通して突き破り、正極材料に到達してそこで危険な短絡SCを起こすまで成長するおそれがある。このプロセスにおいては多くの因子が重要な因子として働くと考えられる。これらの因子は、充電速度、温度及び電位などの作動条件の他にも、電解質層の厚さ、電解質層の硬さ、及び充電の際の電場分布を含む。不均一な電場分布は不均一で局在化した電極材料析出につながるおそれがあり、このことがさらに不均一な電場分布につながってデンドライト形成を悪化させるおそれがある。軟らかい及び/又は薄い固体電解質層はデンドライト形成のリスクをさらに増加させうる。
【0018】
図1Bは本発明の1つ又は複数の態様に係る固体電解質10を含むバッテリー101の断面を模式的に示す。このバッテリーは、固体電解質10によって互いに離された負極2及び正極3を含む層のスタックからなる。上部(top)集電体及び下部(bottom)集電体は示していない。本発明のある態様によると、固体電解質10はイオン伝導性マトリクス10mを含む。図示された実施形態では、固体電解質10は負極に接続する面にハイブリッド層10h及びキャップ層10cを含む。ハイブリッド層10hの厚さzが示されている。ハイブリッド層の厚さzは好ましくは10nm~50μmの範囲内であり、より好ましくは50nm~20μmの範囲であり、最も好ましくは100nm~10μmの範囲、例えば250nm又は1μmである。代わりにあるいは加えて、固体電解質は固体電解質層の厚さの大部分(majority)にわたって存在するものであってもよい。
【0019】
第1の態様によれば、本開示の固体電解質10はイオン伝導性マトリクス10mを含む。開示された固体電解質10はバッテリー、例えば充電式バッテリー、の正極と負極との間のイオン伝導性接続を提供するのに適している。
【0020】
バッテリーの負極(アノード)は、Li、Na、K、Mg、Ca、及びAl、ケイ素及び錫、グラファイトからなる群からの1種又は複数種の金属を含んでいてもよい。代わりに又は加えて、負極はコンバージョン型材料、例えば対応する金属酸化物MO若しくはその混合物、を含んでいてもよい。正極(カソード)は、インサーション又はコンバージョンベースの材料を含んでいてもよい。適した材料は、例えば、金属酸化物、ケイ素、グラファイト材料、硫黄、リン酸、酸素、及び空気からなる群から選択されてもよい。Liイオンバッテリー用には、例えば、LiCoO2、MnO2、LiMn2O4、LiNiO2、LixMnyNizO2、LiNi1-xCoxO2、LiNixCoyAlzO2、Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O2、Li(NixMnyCo1-x-y)O2、Li(LixMnyNizCo1-x-y-z)O2、LiFePO4、Li2FePO4F、V2O5、V2O5-TeO2、WO3-V2O5、TiSxOy、金属酸化物MOx、金属フッ化物MFx、金属塩化物MClx、金属硫化物MSx、又はLi-V2Oが含まれてもよい。他のイオンインサーション型バッテリー用には、正極層は、例えば、Liイオンバッテリー用に上記した材料と同様ながらLiが当該他のイオンで置換された材料を含んでもよい。例えば、Naイオンバッテリー用には、第1の電極層12は、例えば、NaMn2O4を含んでもよく;Mgイオンバッテリー用には、第1の電極層は、例えば、MgMn2O4を含んでもよく;Alイオンバッテリー用には、第1の電極層は、例えば、AlxV2O3を含んでもよい。ただし、本開示にはこれらに限定されない。
【0021】
さらなる態様によれば、イオン伝導性マトリクスはポリマーP及び金属塩Sを含む。好ましくは、金属塩Sはイオン伝導性マトリクス10mに分散されている。イオン伝導性マトリクス10mはイオン伝導性媒体を形成する。
図1Bから、前記媒体は連続的な単層であってもよいことが明らかである。例えば、イオン伝導性マトリクス10mは材料の均質な層を形成する。代わりに又は追加で、イオン伝導性マトリクス10mはナノポアを含んでいてもよい。前記媒体が稠密な材料である場合でも、小さな空隙が存在しうる、該空隙は例えば隙間空間(interstitial space)の形態である。そのような隙間は、例えば、前記媒体に含まれる隣接するポリマー鎖間に存在してもよい。代わりに又は追加で、さらなる空隙が(ナノ)ポアの形態で存在してもよい。いくつかの実施形態においては、イオン伝導性マトリクス10mはゲル化ポリマーを含んでいてもよい。
【0022】
イオン伝導性マトリクス10mは典型的にはポリエーテル型ポリマーを含む。そのようなポリマーは、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリブチレンオキサイド、及び/又はそれらのブレンド及び/又はそれらの誘導体、例えばブロックコポリマー、からなる群から選択してもよいが、これらに限定されない。イオン伝導性マトリクス10mはさらに金属塩を含み、好ましくは金属塩は弱配位性アニオンを含み、その例としては過塩素酸塩(ClO4)、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、及びフルオロリン酸塩(PF6)が挙げられるがこれらに限定されない。代わりに又は加えて、イオン伝導性マトリクス10mはゲルベースの電解質を含んでいてもよく、その例としてはポリマーと、液体電解質又は(スクシノニトリル及び/又はイオン性液体のような)その他の添加剤とのゲル化混合物がある。
【0023】
好ましくは、金属塩Sは固体電解質10が適しているバッテリーの負極に含まれる金属に対応する金属イオンを含む。例えば、負極が金属リチウムを含むバッテリースタックの場合は、金属塩Sはリチウムイオンを含む。
【0024】
さらなる態様によると、イオン伝導性マトリクス10mは第1のセラミック材料C1を含む。この材料は、負極又は正極に接続するためのイオン伝導性マトリクス10mの面の少なくとも1つに第1のセラミック材料C1が浸透するように、イオン伝導性マトリクス10m上に配置される。いくつかの好ましい実施形態では、イオン伝導性マトリクス10mは100μm未満の厚さを有し、好ましくは25μm未満の厚さを有し、例えば、25μm~5μmの範囲若しくは10μm~1μmの範囲の厚さを有する。
【0025】
イオン伝導性マトリクス10mを浸透させることについては、面から本体(bulk)に向かって、前記セラミック材料が固体電解質10層に浸透することが理解されうる。いくつかの好ましい実施形態においては、第1のセラミック材料C1はイオン伝導性マトリクス10mに浸透して、固体電解質10の第1の面から固体電解質の本体(bulk)へと広がる第1のハイブリッド層10h1を形成する。第1のハイブリッド層の厚さzは、好ましくは、イオン伝導性マトリクス10mの厚さの少なくとも1%である。所望により、第1のハイブリッド層はより厚いものでもよく、例えば5%、20%、50%又はそれ以上の厚さでもよく、最大100%でありこの場合はイオン伝導性マトリクス10mの反対面までの全体にわたって広がる。
【0026】
いくつかの好ましい実施形態では、セラミックは小さなセラミックドメインの状態で形成される。好ましくは、セラミックドメインは少なくとも1つのメゾスコピックスケールの寸法を含む。言い換えると、ハイブリッド層中のセラミックドメインは、好ましくは、原子スケールより大きくマクロスコピックスケールよりも小さい範囲のサイズを有する少なくとも1つの寸法、例えば直径、を有する。例えば、メゾスコピックセラミックドメインは1nm~5μmの範囲、好ましくは5nm~1μmの範囲、より好ましくは10nm~500nmの範囲の少なくとも1つの寸法を含む。
【0027】
ポリマーマトリクスと浸透したセラミック表面との間の増加した界面面積により、電極と形成された固体電解質10との間の接触抵抗が減少しうる。全てのポリマー固体電解質において、界面接触抵抗はポリマーと電極との間の界面面積により支配されると考えられる。ハイブリッド材料界面を形成することによって、抵抗を、セラミックと電極との間の界面接触抵抗、及びポリマーマトリクスとハイブリッド層内部のセラミックとの間の界面抵抗に分けることができる。セラミックとイオン伝導性マトリクス10mとの間の面積を増加させることによって、総体的な界面接触抵抗を減少させうる。セラミックとイオン伝導性マトリクス10mとの間の界面面積は、a)ポリマーマトリックスにある量のセラミック材料を浸透させること、b)ハイブリッド層10h1中のセラミックドメインのサイズを減少させること、及び/又はc)体積を増加させて、例えばハイブリッド層の厚さを増加させて、ハイブリッド層を形成すること、により向上しうる。
【0028】
好ましい実施形態では、ハイブリッド層はセラミック材料の少なくとも5体積パーセントを占め、好ましくは10体積%~90体積%を占め、より好ましくは20体積%~80体積%を占め、いっそう好ましくは30体積%~60体積%を占める。セラミック材料の体積とイオン伝導性マトリクス10mの体積がより均等であるハイブリッド層を設けることで、これらの材料同士の界面面積が増加しうる。ナノ粒子がポリマーマトリックスのTgを低下させるのを助けるため、上記の浸透はまたハイブリッドの体積抵抗(bulk resistance)を増加させうることを本発明者らは見出している。
【0029】
第1のセラミック材料C1は、金属又は半金属の単純酸化物(MO);二元系酸化物(M1M2O);又は高次構造(higher order)酸化物、例えば三元系酸化物(M1M2M3O);硫化物;窒化物;又はハロゲン化物、例えば塩化物又はフッ化物、の1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0030】
イオン伝導性マトリクスにセラミック材料を浸透させることで、ポリマー及び分散された金属塩のイオン伝導性を有利に維持しうる。セラミック材料をイオン伝導性マトリクスに浸透させることで、大きな表面積を有する界面が形成される。好ましくは、セラミックはイオン伝導性マトリクス10mの隙間(interstices)に存在してもよい。大きな界面面積を有するハイブリッド層を提供することで、セラミック材料とマトリクスとの接着が向上しうる。大きな界面面積を有するハイブリッド層を提供することで、該層中のイオン伝導性が向上しうる。例えば、イオンはセラミックドメインとマトリクス材料との間の界面に沿って優先的に拡散しうる。
【0031】
固体電解質10にセラミック材料を与えることで、固体電解質10とバッテリースタック中の他の機能層、例えば電極材料層、との間の接触が、例えば界面抵抗が減少することにより、向上しうる。加えて、界面セラミック材料は、電極への/電極からの向上されたイオン注入挙動を有するように選択することもでき、該イオン注入挙動は、少なくとも、ポリマー電極の元来のイオン注入特性よりも良好である。例えば、負極材料、例えば金属リチウム、に接触するための面における固体電解質10に、適切なハイブリッド層を与えることで、界面抵抗が減少しうる。代わりに又は加えて、界面セラミック材料は、電極への/電極からの向上したイオン注入挙動を有するように選択することもできる。固体電解質10に対し負極に接続するための界面にハイブリッド層が設けられているバッテリーは、例えば充電サイクルの際、低温における向上した性能を有する。このような向上した性能は減少した接触抵抗の結果であってもよい。さらに、そのようなバッテリーは、負極と固体電解質10との間の界面における電場の向上した均一性により、向上した充電特性を与えられていてもよい。小さなセラミックドメインを有するハイブリッド層を設けることは、前記効果をさらに向上しうる。代わりに又は加えて、固体電解質10にセラミック材料を与えることは、バッテリースタック中の界面間及び層間の機械的接触を向上し得、例えば密着性を向上しうる。向上した機械的接触は、バッテリースタックへのダメージ、例えば機能層の剥離によるダメージ、を軽減させうる。代わりに又は加えて、固体電解質10にセラミック材料を与えることにより、固体電解質の機械的特性が向上しうる。このことは固体電解質10の層の取り扱い性を向上し得、固体電解質10へのダメージの恐れ、例えば引き裂きによるダメージの恐れ、を減少させうる。
【0032】
いくつかの実施形態では、電極と接続するためのイオン伝導性マトリクス10mの両方の面にセラミック材料C1、C2が浸透して、第1のハイブリッド層10h1及び第2のハイブリッド層10h2を形成する。第2のハイブリッド層は第1のハイブリッド層と同じセラミック材料を含んでもよい。あるいは、第2のハイブリッド層は第2のセラミック材料C2を含んでいてもよい。異なるセラミック材料を有する第2のハイブリッド層を提供することにより、負極に接続するための固体電解質10の面と正極に接続するための固体電解質10の面の接着及び電気的性質を独立に調整できる、固体電解質10が形成されうる。第1のハイブリッド層の厚さと第2のハイブリッド層の厚さは異なっていてもよく、互いに独立に調整してもよく、ここで、各層はイオン伝導性マトリクス10mの厚さの少なくとも1%を含む。所望により、これらハイブリッド層は両方が、又は個々が、より厚くてもよく、例えば5%、20%、50%、又はこれより厚く、最大99%で、例えば、反対側のハイブリッド層までの全体にわたって広がっていてもよい。
【0033】
ある特定の場合においては、ポリマーマトリックスにLi金属の方を向いた面でセラミック材料を浸透させると、サイクル安定性が向上し、また、安全上の懸念を軽減しうる。
【0034】
セラミック材料はセラミックLiイオン電極、例えばLiPO(N)であってもよく、例えばTiO2、AlxOy、ZrOx、ZnOyのような酸化物であってもよく、リチウム塩であってもよい。このことは、好ましい界面キネティクスに加えて、膜の向上した機械的強度によりサイクル安定性を向上する。追加の態様として、誘電遮蔽(dielectric screening)によりLi金属成長を均一化し、デンドライト成長を防止するため、誘電率が20超あるいはさらに200超である高誘電率セラミック材料を選択してもよい。
【0035】
さらに、2ステッププロセスで2つのセラミック材料を組み合わせる、例えば高誘電率物質とLiイオン電解質とを組み合わせる、ことは、両方の有益な態様を組み合わせるために用いられてもよい。
ある特定の実施形態は、
1. 4μm未満の厚さのLi金属層で被覆(両面)された銅箔基板
2. そして、Li金属層の方を向いた面にセラミック材料が浸透しているポリマー膜を積層する、例えばこれに限定されないもののホットプレスにより積層する、
ことからなる。接着及び界面キネティクスを向上させるために、積層前にLi金属/膜上に追加の接着/湿潤(wetting)層(例えば、ゲル若しくはプラスチック電解質、又は液体電解質若しくはイオン性液体)を配置(deposit)してもよい。
【0036】
別の又はさらなる好ましい実施形態においては、固体電解質10には1つ又は複数のキャップ層10cがさらに設けられている。これらのキャップ層は、電極に接続するための面の1つ又は複数に設けられてもよい。前記1つ又は複数のキャップ層は好ましくはイオン伝導性セラミック材料を含む。負極に接続するための面に設けられるキャップ層の場合、キャップ層は、代わりにあるいは追加で、セラミック材料であって、負極材料との間の反応からイオン伝導性材料を形成する前記セラミック材料、を含んでいてもよい。いくつかの好ましい実施形態においては、電極に接続するための固体電解質10の両方の面にキャップ層が備えられ、ここで第1のキャップ層及び第2のキャップ層は同じキャップ材料を含んでいても異なるキャップ材料を含んでいてもよい。
【0037】
1つ又は複数のキャップ層に含まれるセラミック材料は、イオン伝導性セラミック材料、及び、セラミック材料であって、負極材料との間の反応からイオン伝導性材料を形成する前記セラミック材料、のうち1つ又は複数を含んでいてもよい。1つ又は複数のハイブリッド層に含まれるセラミック材料は、イオン伝導性セラミック材料、及び、セラミック材料であって、負極材料との間の反応からイオン伝導性材料を形成する前記セラミック材料、のうち1つ又は複数も含んでいてもよい。あるいは、1つ又は複数のハイブリッド層に含まれるセラミック材料はイオン伝導性ではない材料も含んでいてもよい。このような場合、ハイブリッド層中のイオン伝導性は、イオン伝導性マトリクス10m、及びセラミックとイオン伝導性マトリクスとの界面、のうち1つ又は複数により提供されてもよい。好ましくは、キャップ層は、セラミック材料が接触しうるそれぞれの電極材料と良好な界面を提供するセラミック材料を含む。適切なキャップ層を有する固体電解質10を提供することにより、固体電解質10と正極材料との間の界面特性が向上した、及び/又は固体電解質10と負極材料との間の界面特性が向上したバッテリーが製造されうる。向上した界面特性は、向上した接着特性、例えば接着強度、及び/又は減少した接触抵抗、及び/又は向上したイオン伝導、及び/又は向上した(電気)化学的安定性、及び/又はデンドライト侵入(dendrite penetration)を軽減すること、によって分類してもよい。
【0038】
Liイオンバッテリーのカソード側の界面安定性及びイオンキネティクスはこのようにして向上することができる。例えばポリマー膜は、高電圧(3.8V超)カソード材料に対する限られた安定性に悩まされる可能性がある。安定性を向上するため、例えばTiO2、AlxOy、ZrOxなどの酸化物、又は高電圧材料に対して高い安定性を有するセラミックLiイオン電解質を、カソードの方を向いた面に浸透するセラミック材料として選択してもよい。
【0039】
このようなスタックの具体的な例:
1.金属基板上に、カソード材料(例えばNMC、LMNO、LCO)、カーボンブラック、バインダーを含む多孔質カソード層が配置されている。
2.前記多孔質カソード層に、カソード界面で良好な安定性を有するカソード電解質(catholyte)、例えば液体電解質、イオン性液体、プラスチック電解質が充填されていてもよい。
3.カソードの方を向いた面にセラミック材料が浸透したハイブリッドポリマー膜が積層され、カソードとアノードとの間でセパレータとして働く。前記積層は例えばホットプレスにより行う。セラミック材料はカソードとの接触点で安定性を向上させる。
【0040】
好ましくは、キャップ層を形成するセラミック材料は、電極材料への接着特性、例えば濡れ性、が良好なキャップ層を形成するように選択される。固体電解質10がリチウム金属負極と共に用いられるいくつかの実施形態では、固体電解質10には、好ましくは、リチウム親和性の材料を含むキャップが設けられる。リチウム親和性のキャップ層を有する固体電解質10を提供することによって、より平坦なリチウム電極が例えば最初の充電サイクルの際に形成されうるリチウムバッテリーを製造しうる。キャップ層が固体電解質10の金属電極に接続するための面に設けられている実施形態においては、キャップは、好ましくは、金属負極のモジュラスよりも高いモジュラスを有する。例えば、リチウム金属バッテリーで用いるための固体電解質の場合、キャップ層の硬度は好ましくは4.9GPaを超えることが好ましい。金属電極の硬度を超える硬度を有するキャップ層を固体電解質(10)に設けることにより、デンドライト形成が軽減されうる。
【0041】
他の又はさらなる実施形態においては、さらなるセラミックキャップが第1のキャップ層上に設けられ、積層型多層固体電解質10を形成するが、これは例えば、キャップ層のスタックを含む固体電解質(10)であって、さらなるセラミックキャップ材料がイオン伝導性であるか、又は金属電極材料とさらなるセラミックキャップ材料との反応物がイオン伝導性である、固体電解質である。
【0042】
図2A~
図2Dはこれまでに記載した特徴の1つ又は複数が組み込まれた固体電解質10の4つの実施形態の断面図を模式的に描いたものである。
図2Aは、イオン伝導性マトリクス10mの2つの反対の面に、異なる厚さz1及びz2を有するハイブリッド層10h1及び10h2が設けられた、固体電解質10の例示的実施形態を描いたものである。
図2Bは、イオン伝導性マトリクス10mの2つの反対の面にハイブリッド層が設けられ、固体電解質10の面の一方にセラミックキャップ層10cがさらに設けられている、固体電解質10の例示的実施形態を描いたものである。
図2Cは、第1の面にキャップ層及びハイブリッド層を、固体電解質10の反対の面に第2のキャップ層10cを含む、固体電解質10の例示的実施形態を描いたものである。
図2Dは、イオン伝導性マトリクスの完全な厚さにわたってハイブリッド層が浸透し、浸透済みイオン伝導性マトリクス10mに対し第1及び第2のキャップ層10c1、10c2がそれぞれ反対側の面に設けられた、固体電解質10の例示的実施形態を描いたものである。描かれた例示的実施形態は限定的な例であると理解すべきものではないことが理解されよう。本発明はさらに、イオン伝導性マトリクス、ハイブリッド層、及びセラミックキャップ層の異なる又はさらなる組み合わせを含む固体電解質10にも関連する。
【0043】
好ましい実施形態においては、イオン伝導性マトリクス10mに対し、第1のセラミックキャップが、負極材料(アノード)と接続するための面に設けられていてもよく、また、第2のセラミック材料が、正極材料(カソード)と接合(interface)するための面に含浸されていてもよい。別の又はさらなる好ましい実施形態においては、イオン伝導性マトリクス10mに対し、第1のセラミックキャップが、正極材料(カソード)と接続するための面に設けられ、第2のセラミック材料が、負極材料(アノード)と接合(interface)するための面に含浸されていてもよい。いくつかの実施形態においては、固体電解質10は両電極と接続するためのイオン伝導性マトリクス10mの両方の面にキャップ層を含む。
【0044】
前記1つ又は複数のハイブリッド層及び1つ又は複数のキャップ層は同じセラミック材料を用いて形成してもよいことが理解されよう。
【0045】
有利には、ハイブリッド層及び/又はキャップ層に含まれるセラミック材料は独立に選択してもよい。固体電解質10に異なるセラミック材料を含浸及び被覆することにより、形成された固体電解質の伝導特性及び界面特性を独立に最適化しうる。例えば、第1のセラミック材料をイオン伝導性マトリクス10mを含浸するために選択してもよく、第2の、異なっていてもいなくてもよいセラミック材料を、最適な機械的特性及び/又は電極材料との界面における最適な接触抵抗のために選択してもよい。
【0046】
1つの実施形態、例えば
図3Aに示されている実施形態、においては、本開示はさらに多層固体電解質20に関する。多層固体電解質は、本発明に係る固体電解質層10を2つ以上積み重ねることにより形成されてもよい。図示されている例示的実施形態においては、多層固体電解質は3つのイオン伝導性マトリクス10m、11m、及び12m、3つのハイブリッド層10h、11h、及び12h、並びに3つのキャップ層10c、11c、及び12cを含む。多層固体電解質20は図示された実施形態に限定されないことが理解されよう。本開示に記載の固体電解質10のうち任意のもの2つ以上から形成された他のスタックも同様に想定される。
【0047】
本発明の態様は、さらに、先行する請求項のうち任意のものに係る固体電解質10を含むバッテリーにも関わることがさらに理解されよう。1つの実施形態、例えば
図3Aに示した実施形態、では、バッテリー102は本質的に2次元の積層アーキテクチャで形成されている。前記例示的な2次元のバッテリースタックは断面視で描かれ、集電体2cに接続した負極層2;集電体3cに接続した正極層3;本開示に記載の固体電解質10のうち任意のものに係る固体電解質10を含む。有利には、本発明に係る固体電解質10の製造のためのプロセスは、3次元バッテリーの製造プロセスとも適合するものであってもよい。3次元バッテリーは、典型的には、互いに距離を離して配置され、ベースから遠ざかる方向に伸びる導電性要素のアレイを含むベース構造からなる構造化集電体を含む。これらの要素の上に、さらなる機能層、例えば電極、及び/又は電解質、が設けられるが、これは好ましくは、3次元電池が機能層間により大きな界面面積を含むように共形(conformal)な様式でなされ、また、対応する2次元電池よりも大きい電流を供給しうる。したがって、別の又はさらなる実施形態では、本開示はさらに3次元集電体構造を含むバッテリー103に関し、ここで少なくとも1つの電極材料は当該3次元構造に大きく沿う。所望により、スタック中の層のうちの多くが、少なくとも部分的に、前記3次元構造に沿う。
図3Cは、3次元構造化集電体2cに接続した負極層2;集電体3cに接続した正極層3;並びに本発明に係る固体電解質のうち任意のものに係る固体電解質10を含む3次元バッテリーの断面視を描く。いくつかの好ましい実施形態においては、バッテリーは、金属リチウムを含む負極、リチウムイオンを含む金属塩を含む。好ましくは、そのようなバッテリーにおいては、固体電解質10にはリチウム親和性材料を含むセラミックコートが設けられていてもよい。
【0048】
本開示の態様は、さらに、固体電解質の製造のためのプロセスに関する。一つの実施形態では、前記製造プロセスは、ポリマーPと、イオン伝導性マトリクス中に分散された金属塩Sと、を含むイオン伝導性マトリクス10mを得ることを含む。好ましくは、イオン伝導性マトリクス10mはキャリア基板上に設けられうる膜の形態で得られてもよく、あるいはイオン伝導性マトリクスは独立した(free-standing)膜として提供されてもよい。本開示の固体電解質の製造のためのプロセスは、さらに、イオン伝導性マトリクス10mを、当該層にセラミック材料を含浸させるためのステーションに供給することを含む。好ましい実施形態では、含浸は化学的気相浸透(chemical vapor infiltration)により行ってもよい。化学的気相浸透はイオン伝導性マトリクス10mの面を気相セラミック前駆体材料に曝すことを含む。気相セラミック前駆体材料はイオン伝導性マトリクス10mに浸透し、共反応物質と反応してハイブリッド層を形成する。所望により、セラミック前駆体材料はマトリクスの全厚にわたりイオン伝導性マトリクス10mに浸透し、イオン伝導性マトリクス10mの完全厚にわたって広がるハイブリッド層を形成する。適切なセラミック前駆体材料は、典型的には、低蒸気圧の金属有機化合物を含む。適切な共反応物質は、水、H2S、及び酸化性プラズマからなる群から選択されてもよい。共反応物質は気相で提供してもよい。
【0049】
イオン伝導性マトリクス10mは基板上に設けられてもよい。あるいは、固体電解質10は、独立した(free standing)イオン伝導性マトリクス10m膜を用いて製造してもよい。所望により、固体電解質10の製造プロセスは、先行する請求項のうち任意のものに係る固体電解質10を含むバッテリーの製造プロセスに統合されてもよい。例えば、基板は集電体及び電極材料の1つ又は複数を含んでもよく、これは、例えば、積層型バッテリーの層逐次(layer-by-layer)製造プロセスの際の中間産物である。
【0050】
好ましい実施形態においては、浸透プロセスは、化学蒸着プロセス、例えば化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、及び原子層堆積(ALD)若しくはその空間分離した派生型(sALD)、又はマトリクス内での気相反応を用いて行われる。代わりに又は追加で、浸透プロセスはウエットケミカルプロセスを用いて行ってもよい。好ましくは、セラミック前駆体材料及び/又は共反応物質は、時間又は空間的に分離したやり方で添加される。セラミック前駆体材料及び/又は共反応物質を時間分離した又は空間分離したやり方で提供することで、反応プロセスに対する制御、例えば形成されたセラミック材料の量及び浸透深さ、が得られうる。sALDプロセスを用いることにより、固体電解質(10)の作製を、有利なことに、ロールtoロール製造プロセスに統合しうる。
【0051】
理論に拘束されることを望むものではないが、態様(i~vi)の1つ又は複数がハイブリッド層の形成を可能にすると考えられる:(i)イオン伝導性マトリクス10mの面をセラミック前駆体材料、例えば気相セラミック前駆体材料、に曝すことにより、前記前駆体材料がマトリクス内部へと向かってマトリックスに浸透、例えば侵入(penetrate)、しうる;(ii)イオン伝導性マトリクス10mの孔又は隙間(interstices)への、又はイオン伝導性マトリクス10mの孔又は隙間(interstices)に沿っての(気相)前駆体材料の拡散の形態によりマトリクスへの侵入(penetration)が促進されうる;(iii)これらの隙間(interstices)の孔の内部で、セラミック前駆体材料はセラミック材料を形成するために共反応物質と反応しうる;(iv)セラミックはマトリクスの孔又は隙間(interstices)で、例えばマトリクスに含まれるポリマーの隣接する鎖の間で、形成されるため、形成されたセラミックドメインは小さいものであり得、例えば形成されたセラミックドメインはメゾスケールの寸法、例えば直径、を有しうる;(v)前記共反応物質も気相で供給されてよく、この場合、共反応物質もイオン伝導性マトリクス10mに侵入(penetrate)しうる;(vi)セラミック前駆体材料及び共反応を時間的及び/又は空間的に分離したやり方で供給することで、前記複数の反応物質のイオン伝導性マトリクス10mへの量及び/又は侵入(penetration)深さに対する制御が得られる。
【0052】
イオン伝導性マトリクス10mに含浸する気相セラミック前駆体材料の量及びそれがマトリクスに含浸する深さは、曝露濃度及び/又は圧力、曝露温度、曝露時間、及び逐次曝露の間の経過時間の1つ又は複数により調整しうる。例えば、曝露濃度、曝露圧力、及び/又は曝露時間を増加させると、形成されるセラミックの量が増加しうる。逐次曝露の間の経過時間(delay)を増加させると、共反応物質と反応する前に前駆体材料がイオン伝導性マトリクス10m中に深く拡散可能な時間が増加し得、含浸深さを増加させる。上昇した曝露温度は拡散速度を増加させ、これにより含浸深さを増加させうる。いくつかの好ましい実施形態では、水が意図される共反応物質である。気相から水をマトリクスに与える代わりに又は気相から水をマトリクスに与えるのに追加で、イオン伝導性マトリクス10m全体にわたって分散していてもよい水を用いてセラミック前駆体材料が反応してハイブリッド層を形成してもよい。有利には、イオン伝導性マトリクス10mに含まれるポリマーPは、典型的には、水をよく吸収するポリエーテル型ポリマーである。取り込まれた水は、前記イオン伝導性マトリクス10mの形成又は配置(deposit)プロセスからの残留物であってもよい。所望により、マトリクス全体において分散した水の量は、圧力及び温度の勾配の1つ又は複数を適用することによって調整してもよい。言い換えれば、湿潤イオン伝導性マトリクス10mの制御された部分的乾燥により、適切な量の水をマトリクスに与えてもよい。イオン伝導性マトリクス10mに適切な水プロファイルを与えることにより、セラミック前駆体材料の浸透深さを制御しうる。例えば、マトリクス表面近くのマトリクスから水を部分的に枯渇させることによって、セラミック蒸気(ceramic vapors)は、水と反応する前にマトリクスの本体(bulk)内部へとより深く拡散しうる、つまり、ハイブリッド層の厚さを増加しうる。マトリクス全体を通しての水の量を増加させることにより、それぞれの反応性蒸気(vapor)は表面のより近くで反応することとなり得、そのため浸透深さは減少し得、つまり、ハイブリッド層の厚さが減少しうる。
【0053】
今度は、
図2Aを参照すると、イオン伝導性マトリクス10mの面から本体(bulk)へと向かって拡散する前駆体がハイブリッド界面層10h1、10h2を形成し、ここで、ハイブリッド層の単位体積あたりのセラミックの体積濃度として表した浸透済みセラミック材料の濃度が固体電解質の外面における初期値からイオン伝導性マトリクス10mに向かってより低い値に徐々に減少することが理解されよう。いくつかの実施形態では、イオン伝導性マトリクスとの界面におけるセラミック材料の体積濃度は徐々に0へと減少しうる。他の実施形態、例えば
図2Dに示されるようにセラミック前駆体が両端から提供される実施形態、では、固体電解質の本体(bulk)の体積濃度はより高いものであってもよく、例えば外部界面における体積濃度の約5%であってもよく、あるいは、例えば10%超、さらには25%超であってもよい。いくつかの特定の実施形態、例えばイオン伝導性マトリクスが均一に飽和するまで前駆体の曝露を続ける実施形態、においては、形成されたハイブリッド界面層は浸透したセラミック材料の体積濃度がほぼ均一であってもよい。イオン伝導性マトリクスの負極又は正極に接続するための面におけるセラミック材料の体積濃度は、一般的には、固体電解質の本体(bulk)におけるセラミック材料の体積濃度よりも高いものとされる。いくつかの実施形態では、イオン伝導性マトリクスの負極又は正極に接続するための面における体積濃度は10%以上、例えば15%又は30%、とされる。いくつかの実施形態、例えば(
図2Dに示された)ハイブリッド界面層上にセラミックキャップ層が形成される実施形態、では、キャップ層とハイブリッド層との間の境界は存在しなくてもよい、つまり、ハイブリッド層はキャップ層中へと徐々に連続するものと理解されうる。言い換えると、イオン伝導性マトリクスの負極又は正極に接続するための面におけるセラミック材料の体積濃度は、ほぼ100%であってもよい。
【0054】
さらに、セラミック前駆体材料がイオン伝導性マトリクスを通ってより深い深さまで次第に拡散するにつれてセラミック前駆体材料は反応してセラミック材料を形成するため、形成されたセラミックドメインは拡散経路に類似する形状を有しうる。例えば、均質又は緻密なイオン伝導性マトリクスにおいては、拡散経路、例えば空隙(void)、は、例えば隙間(interstitial)空間の形状で存在し得、該隙間空間は、例えば、媒体に含まれる隣接するポリマー鎖の間に存在しうる。したがって、形成されたセラミック材料は、メゾスコピックなスケールの少なくとも1つの寸法、及び第1の寸法よりも長い、好ましくは少なくとも5倍長い、好ましくはそれ以上の倍率長い、例えば少なくとも10倍長い、さらには少なくとも50倍長い、拡散経路に沿った他の寸法を有する細長形状を採ってもよい。イオンはセラミックドメインとマトリクス材料との界面に沿って優先的に拡散しうるため、細長ドメイン又は相互連絡したセラミック材料のネットワークを設けることで、固体電解質中におけるイオン伝導性を向上させることができる。ハイブリッド層中のセラミックドメインは、好ましくは、原子スケールより大きくただしマクロスコピックなスケールよりは小さい範囲のサイズを有する少なくとも1つの寸法、例えば直径、を有する。例えば、先に説明したように、メゾスコピックな寸法は、1nm~5μmの範囲であってもよく、好ましくは5nm~1μmの範囲であり、より好ましくは10nm~500nmである。前記他の方向における寸法は、ハイブリッド界面層の厚さとなるまで長くてもよく、例えば10nm~50μmであり、より好ましくは50nm~20μmの範囲であり、最も好ましくは100nm~10μmの範囲であり、例えば250nm又は1μmである。さらに、いくつかの実施形態では、マトリクス中の独立した粒子の均一又はランダムに分布したコンポシットとは反対に、セラミックドメインは相互連絡したネットワーク、つまり接続したセラミック多孔ネットワーク、を形成してもよく、ここで、対向する部分同士はイオン伝導性マトリクス(10m)により分けられている。
【0055】
連続層は、一面(例えば上面)から反対の面(例えば下面)へと層を通過する連続的、つまり途切れの無い、経路を与える連続的マトリクスからなる、又は該連続的マトリクスを含む層を包含すると理解しうる。連続的経路、例えばイオン拡散経路、は、好ましくは、追加の拡散障壁及び/又は減少した機械的特性を示しうる内部の界面層によって途切れていない。そのような追加の拡散障壁及び/又は減少した機械的特性は、例えば、当該界面で生じうる剥離によるものである。連続層、例えばイオン伝導性マトリクス、は複合材料、例えばブレンド又はコポリマー、でもよく、及び/又は、介在物、例えば浸透したセラミックドメイン、を含むと理解されうることが理解されよう。
【0056】
別の又はさらなる好ましい実施形態においては、前記プロセスは、1つ又は複数のセラミックキャップ層を提供することをさらに含む。前記セラミック材料は、適切なセラミック前駆体材料と共反応物質との間の反応から形成されてもよい。好ましくは、前記反応物質は、CVD、PVD、ALD、及びsALD等の化学蒸着プロセスを用いて与えうる。代わりに又は追加で、反応物質はウエットケミカル技法により与えてもよく、ウエットケミカル技法には、スプレーコーティング、例えばナノ粒子のスプレーコーティング、が含まれるが、これに限定されない。有利には、ハイブリッド層及びセラミックキャップ層の形成は同じツールを用いて、例えば同じプロセスを用いて、行ってもよい。所望により、キャップ層は、異なる蒸着方法を用いて形成してもよい。所望により、キャップ層を異なるセラミック材料から形成してもよい。所望により、形成されたキャップ層にさらなるキャップ層を設けてもよい。
【0057】
前記プロセスのいくつかの好ましい実施形態では、イオン伝導性ハイブリッド層形成及びキャップ層形成の1つ又は複数がイオン伝導性マトリクス10mの第2の面に対しても行われる。
【0058】
他の又はさらなる好ましい実施形態においては、前記プロセスは電極材料を配置(deposit)することをさらに含む。有利には、前記プロセスはバッテリーを製造するためのプロセスに統合されてもよい。したがって、固体電解質10の形成に続き、前記プロセスは固体電解質10に正極材料を配置(deposit)することを含んでもよい。あるいは、固体電解質10の形成に続いて負極材料を配置(deposit)してもよい。
【0059】
連続的イオン伝導性マトリクスは、ハイブリッドポリマー膜のメルトインフュージョンにより負極又は正極に接続されてもよい。単一の連続的イオン伝導性電解質マトリクスにセラミック材料を浸透させる。セラミックの体積含量が最も高い面が、例えば、第1の電極上に配置(deposit)され、ここで第1の電極はカソードでもアノードでもよく、例えば数十(several 10s)ミクロン~200μmの厚さを有し、20%~95%の多孔度(porosity)を有する。そして、セラミック材料を含まない又はセラミック材料の濃度が低いハイブリッドポリマー膜の面を第1の電極の孔に浸透させるのにメルトインフュージョンプロセスを用いることができる。導電性マトリクスの溶融温度に近くなる又は該溶融温度よりも僅かに高くなるように昇温し、同時に圧力をかけることによって、第1の電極の方を向いた面が溶融し、第1の電極のマトリクスの孔に浸透しうるが、一方、第1の電極から遠い方を向いた面はより多くのセラミック材料が浸透しているため、より高いTmeltを有し、固体/ガラス状/ゴム状の状態に留まる。
【0060】
セラミック電解質の浸透深さは典型的には5μm又は10μm又は20μmであってもよい。第2の電極は上に直接配置してもよく、あるいは追加的な電解質層(セパレータ膜を有する又は有さない、固体、液体電解質)を第2の電極側に用いてもよい。
【0061】
この例では、一方の面に又は2つの面に複数種類のセラミック材料が存在することも可能であり、2つの面の間の主な違いはセラミックの平均体積濃度であり、多孔質電極の側でのセラミックの平均体積濃度をより低くすることでこの部分が多孔質電極にメルトインフュージョンすることとなる。
【0062】
このようなプロセスを繰り返して互い違いの(カソード-アノード-カソード)パターンの電極を得てもよく、この互い違いパターンの電極は充填された単一の連続的導電性マトリクスと共に3次元バッテリースタックを形成する。これらの電極は多孔質でも非多孔質でもよく、後者の場合には例えば完全に稠密な電極であってもよい。先に記載した機能性(伝導性及び安定性の向上)に加えて、上面に浸透した例えばAlxOy、ZrOxのようなセラミック材料は、O、N、H2Oリッチな環境に接した際に3次元バッテリースタックを分解から保護することができる。
【0063】
多孔質電極には単一の連続的イオン伝導性マトリクスを充填してもよく、該マトリクスはカソード材料の上に例えば1μm、5μm、10μm、20μm、40μmにわたって存在してもよい。そして、膜は蒸着プロセスに曝され、上面にセラミック材料が浸透する。1種又は複数種のセラミック材料は、LIPON、LAGPのような固体電解質でもよく、若しくはAlxOy、TiOx、ZnOx、ZrOxのような酸化物でもよく、Li塩でもよく、又はこれらの組み合わせでもよい。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-ポリマー(P)を含む連続的イオン伝導性マトリクス(10m)、及び
-前記イオン伝導性マトリクス(10m)に分散された金属塩(S)、及び
-第1のセラミック材料(C1)
を含み、
負極又は正極に接続するための前記イオン伝導性マトリクス(10m)の面の少なくとも一方に前記第1のセラミック材料(C1)が浸透して、バッテリー中の負極及び正極の少なくとも一方と前記イオン伝導性マトリクスとの間の向上したイオン伝導性を有する第1のハイブリッド界面層10h1を形成している、
バッテリー中の負極と正極との間のイオン伝導接続を提供するための固体電解質(10)。
【請求項2】
前記両電極に接続するための前記イオン伝導性マトリクス(10m)の両面にセラミック材料(C1、C2)が浸透して第1のハイブリッド界面層10h1及び第2のハイブリッド界面層10h2を形成しており、ここで、前記第2のハイブリッド界面層は第2のセラミック材料(C2)を含んでいてもよく、又は前記第1のハイブリッド界面層と同じセラミック材料を含んでいてもよい、請求項1に記載の固体電解質(10)。
【請求項3】
前記両電極に接続するための前記イオン伝導性マトリクス(10m)の面の1つ又は複数に第1のキャップ層(10c)が設けられており、前記第1のキャップ層(10c)は、次のうち1つ又は複数を含む、請求項1又は請求項2に記載の固体電解質(10):
-イオン伝導性セラミック材料、及び
-セラミック材料であって、負極材料との間の反応からイオン伝導性材料を形成する前記セラミック材料。
【請求項4】
前記イオン伝導性マトリクス(10m)は負極材料に接続するための面に前記第1のセラミックキャップ
層(10c1)が設けられており、正極材料に接合(interface)するための面に第2のセラミック材料が含浸されている
、請求項3に記載の固体電解質(10)。
【請求項5】
前記イオン伝導性マトリクス(10m)は正極材料に接続するための面に前記第1のセラミックキャップ
層(10c1)が設けられており、負極材料に接合(interface)するための面に第2のセラミック材料が含浸されている
、請求項3に記載の固体電解質(10)。
【請求項6】
前記両電極に接続するための前記イオン伝導性マトリクス(10m)の両面にキャップ層(10c1、10c2)が設けられている、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の固体電解質(10)。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の固体電解質層(10)のスタックから形成される多層固体電解質。
【請求項8】
正極(3)と負極(2)との間に設けられた、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の固体電解質(10)を含むバッテリー(100)。
【請求項9】
前記負極がリチウムを含み、前記金属塩がリチウムイオンを含み、前記負極に面しているセラミックコーティングがリチウム親和性材料を含む、請求項8に記載のバッテリー。
【請求項10】
-ポリマー(P)及び分散された金属塩(S)を含むイオン伝導性マトリクス(10m)を提供すること;
-前記イオン伝導性マトリクス(10m)を、その層にセラミック材料を含浸させるためのステーションに供給すること;
-前記イオン伝導性マトリクス(10m)の第1の面を、化学的気相含浸(chemical vapor impregnation)法を用いて気相セラミック前駆体材料に曝すこと
を含み、
前記気相セラミック前駆体材料は前記イオン伝導性マトリクス(10m)に浸透し、共反応物質と反応してハイブリッド界面層を形成し、該ハイブリッド界面層は、バッテリー中の負極及び正極の少なくとも一方とバッテリー中の前記イオン伝導性マトリクスとの間の向上したイオン伝導性を有する界面層を形成する、
請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の固体電解質(10)を製造するプロセス。
【請求項11】
前記化学的気相含浸法が、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、原子層堆積(ALD)、及び空間分離したALD(sALD)の1つ又は複数から選択さ
れ、
ここで、前記気相セラミック前駆体材料の含浸深さは、曝露濃度及び/又は圧力、曝露温度、曝露時間、及び逐次曝露の間の経過時間(delay time)の1つ又は複数により調整しうる、
請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
セラミックキャップ層を提供することを含む、請求項10又は請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記イオン伝導ハイブリッド界面層形成ステップ及びキャップ層形成ステップの1つ又は複数が、前記イオン伝導性マトリクス(10m)の第2の面でも行われる、請求項10~請求項12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
正極材料及び負極材料を配置(deposit)することをさらに含む、請求項10~請求項13のいずれか1項に記載のプロセス。
【国際調査報告】