(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(54)【発明の名称】均一平面表面を使用する3Dプリンティングシステムにおける光開始重合反応の酸素阻害を防止するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/364 20170101AFI20220126BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20220126BHJP
B29C 64/205 20170101ALI20220126BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20220126BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20220126BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220126BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220126BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20220126BHJP
【FI】
B29C64/364
B29C64/124
B29C64/205
B29C64/264
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021533302
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(85)【翻訳文提出日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 IB2019060451
(87)【国際公開番号】W WO2020121131
(87)【国際公開日】2020-06-18
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519016549
【氏名又は名称】アイオー テック グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ゼノウ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジラン ジブ
(72)【発明者】
【氏名】リプツ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シャイ ユヴァル
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AP06
4F213AP20
4F213AQ01
4F213AR07
4F213AR20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL32
4F213WL34
4F213WL43
4F213WL52
4F213WL56
4F213WL72
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL87
(57)【要約】
【課題】3Dプリンティングシステムにより使用される光開始重合反応の酸素阻害を防止するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】反応表面から酸素を除去することにより、光開始重合反応の酸素阻害を防止するシステム及び方法であって、幾つかの実施形態では、平坦化面(例えば、透明薄膜及び/又は透明平面表面)を加工物上に配置されたUV硬化性材料の層と接触させ、次いで平坦化面をUV材料が硬化される加工物から離れて移動させることによって酸素がパージされる。
【選択図】
図3a-3b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲条件での光開始重合反応の酸素阻害を防止するシステムであって、
紫外線(UV)光源と、
UV硬化性材料の層を有する加工物を受け入れるUV硬化スペースと、
前記UV光源が前記UV硬化性材料の層に光を放射するときに、前記UV硬化スペース内で前記UV硬化性材料のUV硬化を促進するため前記UV硬化スペースから酸素をパージする手段と、
を備え、
酸素をパージする前記手段は、前記UV硬化性材料の層を平坦化するためのUV透過性表面を含み、前記UV透過性表面が、張力がかかった薄膜、固体材料のプレート、又は張力がかかった薄膜と固体材料のプレートとの組み合わせを含み、
前記システムが更に、
前記UV硬化性材料の層と前記UV透過性表面との間で接触が達成されたかどうかを決定するために、前記UV透過性表面の反射特性を評価するように構成されたカメラを備える、システム。
【請求項2】
前記加工物の硬化したUV硬化性層との接触から前記UV透過性表面を除去する手段を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記除去手段が、除去プロセス中に前記薄膜を張力がかかった状態に保つように構成されたローラーのペアを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
周囲条件での光開始重合反応の酸素阻害を防止する方法であって、
製造中の物体のプリンティング面に紫外線(UV)光硬化性材料の層を堆積するステップと、
UV源がUV光硬化性材料の層に光を放射するときに、UV硬化スペース内で前記UV光硬化性材料のUV硬化を促進するため、前記UV光硬化性材料の層を有する前記製造中の物体が配置される前記UV硬化スペースから酸素をパージするステップと、
を含み、
前記UV硬化スペースから酸素をパージするステップは、前記UV光硬化性材料の層を堆積した後、UV光硬化性材料の層を有する製造中の物体のプリンティング面をUV-透過性平坦化面に向けて上昇させ、前記UV光硬化性材料の層と前記UV-透過性平坦化面との間で接触が達成されたかどうかを決定するように前記UV透過性表面の反射特性を評価するステップを含む、
前記方法が更に、
前記UV源を作動させて、前記製造中の物体のプリンティング面上に配置された前記UV光硬化性材料の層の少なくとも一部を硬化させるステップを含む、
方法。
【請求項5】
前記UV光硬化性材料の層の少なくとも一部を硬化させた後、前記製造中の物体から離れて前記平坦化面を変位させるステップを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記平坦化面がUV透過性薄膜を含み、前記製造中の物体から離れて前記平坦化面を変位させるステップは、前記製造中の物体のプリンティング表面上に配置された前記UV光硬化性材料の層の硬化部分から前記薄膜を剥離するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記平坦化面は更に、UV透過性平坦表面を含み、前記製造中の前記物体から離れて前記平坦化面を変位させるステップは、前記製造中の物体のプリンティング表面上に配置された前記UV光硬化性材料の層の硬化部分から前記薄膜を剥離するステップの前に、前記平坦表面を前記薄膜から離れて引き上げるステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ローラーを使用して前記薄膜の張力を制御するステップを更に含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2018年12月11日に提出された米国仮出願番号62/777,902の本出願であり、この仮出願に対する優先権を主張し、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、不活性ガス流を使用して反応表面から酸素をパージすることにより、又は固い平面表面で覆うことによって反応表面から酸素を強制的に取り除くことにより、3Dプリンティングシステムにより使用される光開始重合反応の酸素阻害を防止するシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの付加製造、又はいわゆる3次元(「3D」)プリンティング応用では、紫外線(「UV」)光硬化性ポリマーを使用する。UV硬化プロセスは、光開始、進行、及び終了の3段階からなる。光開始時に、UV放射に晒されると、光開始剤がフリーラジカルを生成する。これらのフリーラジカルは、近くのモノマーと反応してこれらをフリーラジカルに変換する。次に、進行段階で、フリーラジカルモノマーが他のモノマーと結合し、これらのモノマーをフリーラジカルに変える。このようにして、モノマーはポリマー鎖を形成する。プロセスは終端に到るまで継続する。2つの鎖が互いに結合する場合、フリーラジカルがモノマーに移行し、又は鎖がモノマーではなく環境からの分子と反応する場合など、終端は、様々な方法で発生することができる。
【0004】
酸素とフォトポリマーの間には、硬化を阻害する2つの相互作用、すなわち、クエンチングとスカベンジングがある。光開始剤は、UV放射線に曝露されることにより励起された後、フリーラジカルを生成する。分子状酸素はこのフリーラジカルと容易に反応し、連鎖成長プロセスでモノマーとの反応を阻止する。これがクエンチング反応である。この反応はまた、酸素フリーラジカルを生成する。スカベンジング反応では、この酸素フリーラジカルは、進行するポリマー鎖の一部であるフリーラジカルと反応する。この反応によりフリーラジカルの反応性が低下し、重合プロセスが早期に終了することになる。これら2つのプロセスは、以下のように記述することができる。
クエンチング反応: PI*+O2 ⇒ PI+O2
*
スカベンジング反応: R・+O2
* ⇒ R-O-O・
【0005】
これらの現象に起因して、3Dプリンティングプロセスの硬化中にフォトポリマーが酸素に晒された場合、空気に晒された表面上に未硬化のポリマー在留物がもたらされる可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一実施形態では、UV硬化性材料と接触する透明薄膜及び/又は透明な平面表面を使用して、UV硬化性材料の表面から酸素がパージされる。一例として、UV硬化性材料の層を有する加工物が引き上げられ、薄膜と接触する。酸素バブルの除去を最適化するように、フィルム張力が制御される。ローラーはまた、バブルを除去するのに使用される。透明な平面表面を保持しているアームが下向きに回転し、プレートを薄膜及びUV硬化性材料と接触させて、一方の端部から始めて、徐々に他端部まで継続する。このことはバブルの除去に更に役立つ。UV硬化性材料と平坦化面との接触は、平坦化面の反射率を測定するカメラを用いて監視される。このプロセスはまた、UV硬化性材料層を平坦化し、UV硬化中に層の上部の平坦性を確保する。完全接触が完了した後、UV光によりUV硬化性材料層を硬化させる。次いで、平坦化面がプリンティング物体から離れて引き上げられ、薄膜が剥離される。
【0007】
本発明の他の実施形態では、張力下にある薄膜のみを使用してUV硬化性材料に接触させ、剛性プレートを使用せずに平坦化を行う。ローラーを用いて薄膜を剥がすのに同じ方法が使用できる。或いは、薄膜に張力をかけることなく、剛性プレートのみを使用して、UV硬化性材料と接触させて平坦化を行うことができる。
【0008】
本発明のこれら及び更なる実施形態は、本発明は限定ではなく例証として示されている添付図面を参照しながら以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1a】従来の3Dプリンティングプロセスにおけるプリンティングされた物体を示す図である。
【
図1b】従来の3Dプリンティングプロセスにおける、物体上に堆積されたUV硬化性材料の層を示す図である。
【
図1c】従来の3Dプリンティングプロセスにおける、UV硬化性材料の層がUV光への曝露によって硬化される図である。
【
図2】UV硬化プロセス中の重合プロセスの酸素阻害を防止するために透明プレート及び薄膜を用いている、本発明の別の実施形態に従って構成されたUV硬化システムを示す。
【
図3a-3b】
図3aは、UV硬化性材料層が引き上げられて、薄膜及びプレート機構と接触し、これらの間の界面で酸素が外に押し出される、
図2に示すUV硬化システムの動作の態様を示す図であり、
図3bは、酸素が除去された後、UV硬化性材料層がUV硬化される、
図2に示すUV硬化システムの動作の態様を示す図である。
【
図4a】透明プレートが加工物から引き上げられ、ローラーが薄膜を剥離している、
図2に示すUV硬化システムの動作の態様を示す図である。
【
図4b】一定の薄膜張力でローラーによって剥がされている薄膜を示し、結果として硬化層からの薄膜の脱離角度が小さくなった図である。
【
図4c】一定の薄膜張力なしでローラーによって剥がされている薄膜を示し、結果として硬化層からの薄膜の脱離角度が大きくなった図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるUV硬化システムの動作プロセスのステップを示すフローチャートである。
【
図6a-6b】
図6a、6bは、本発明の一実施形態による、硬化前の加工物の高さを測定し、以前の較正された測定値を使用して薄膜への接触距離を決定する高さセンサーの実施例を示す図である。
【
図7a】本発明の一実施形態による、UV硬化層の高さをリアルタイムで測定して、薄膜及び透明表面との接触を制御する高さセンサーの実施例を示す図である。
【
図7b】本発明の一実施形態による、UV硬化層の高さをリアルタイムで測定して、薄膜及び透明表面との接触を制御する高さセンサーの実施例を示す図である。
【
図8】UV硬化前に酸素を除去するために、
図2に示すUV硬化システムに関連して使用される透明薄膜及び透明表面を搬送するための組立体の態様を示す図である。
【
図9】UV硬化前に酸素を除去するために、
図2に示すUV硬化システムに関連して使用される透明薄膜及び透明表面を搬送するための組立体の態様を示す図である。
【
図10a-10d】
図10a~10dは、
図2に示すUV硬化システムにおける薄膜接触を最適化するための1つの方法の態様を示す図である。
【
図11】UV硬化前に酸素を除去するために、
図2に示すUV硬化システムに関連して使用される透明薄膜及び透明表面を搬送するための組立体の態様を示す図である。
【
図12】UV硬化前に酸素を除去するために、
図2に示すUV硬化システムに関連して使用される透明薄膜及び透明表面を搬送するための組立体の態様を示す図である。
【
図13】
図2に示されるUV硬化システムに関連して使用されるUV硬化モジュールの態様を示す図である。
【
図14a】
図2に示されるUV硬化システムに関連して使用されるUV硬化モジュールの態様を示す図である。
【
図14b】
図2に示されるUV硬化システムに関連して使用されるUV硬化モジュールの態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態は、周囲条件での光開始重合反応の酸素阻害を防止するためのシステム及び方法を提供する。本発明を詳細に説明する前に、概要を説明すると有用である。
図1a、1b、及び1cに示される一連の画像を参照すると、物体10が製造されている多くの3Dプリンティングプロセスでは、表面16上にUV硬化性材料14を堆積するために、材料プリンティングシステム12が使用される。この堆積材料は、UV光源18で硬化されて、所望の部品10′の新しい層を生成する。このプロセスは、製造中の部品が完成するまで続く。
【0011】
次に、本発明の実施形態を示す
図2~5を参照すると、UV硬化システム60において、セルロース、パラフィルム(プラスチックパラフィン薄膜)、テフロン(登録商標)又は他のポリテトラフルオロエチレンベースのポリマー、その他などの固着防止特性を有する材料で作られた透明薄膜62を使用したUV硬化層36の表面54、及びUV源26とUV硬化層36との間に配置された透明な平面表面64から酸素がパージされる。薄膜62及び表面64は、構築中の部品を製造するために使用される光硬化性材料の硬化が達成されるUV源62の1又は2以上の波長において透明である。
【0012】
これらの図に示されるように、UV硬化性材料36がプリンティング面に堆積された後、UV硬化性材料層(すなわち、加工物34)は引き上げられ、薄膜62と接触する。UV硬化性材料36の表面を透明薄膜62に押し付けることにより、これらの界面から酸素が追い出される。このプロセスは、薄膜張力を調整するためにローラー66のペア(又は複数のペア)を使用して支援され、これによってUV硬化性材料36の表面から酸素バルブを除去することができる。
【0013】
UV硬化システム60のアーム68は、透明面64を保持し、図面に示すように軸を中心に下向きに回転して、表面64の一端から始まって他端部まで漸次的に継続する角度で表面64を薄膜62及びUV硬化性材料36と接触させる。この動作は、ヒンジで閉じるドアの動作に似ており、ヒンジポイントは、表面64の端部近くにあり、最初に薄膜62と接触する。透明表面64の長さにわたって薄膜62全体に緩慢に接触するこのヒンジ様の方法は更に、薄膜62とUV硬化性材料36との界面からの酸素(例えば、バブルの形で)の除去を助ける。透明面64は、その存在がUV硬化中のUV硬化性材料層の上部の平面性を確保する傾向があるため、平坦化面と呼ばれることがある。すなわち、透明面64は、UV硬化性材料36の上に載ってこれに接触する薄膜62に当接する剛性面であり、ストップとして機能して、UV源からの光に晒されたときにUV硬化性材料の均一な層を保証する。
【0014】
薄膜62及びUV硬化性材料36と平坦化面64との間の接触は、高さセンサー70として反射率を測定するカメラ又は他のセンサーを使用してチェックすることができる。上部にUV硬化性材料36を有する加工物が薄膜62に接触すると、薄膜の反射率が変化する。反射率を測定することで、システムは、いつ完全に接触したかを決定することができる。
【0015】
高さセンサーには幾つかのオプションがある。
図2-4a及び
図7aに示す一例では、高さセンサーは、UV源26及び加工物の間の光路の片側に変位され、UV硬化性材料36を硬化するための対象波長のUV光48を通過可能にし、高さセンサーの対象波長の光90を反射する部分反射ミラー又は他の光学部品72は、当該光路に位置付けられる。本明細書に記載される様々な実施例において、高さセンサーは、UV材料硬化層の光硬化を開始しない波長の光で動作する。例えば、赤外スペクトルの光を用いることができる。ここで、上部にUV硬化性材料36を備えた加工物が薄膜62と接触し、透明面64がその上部の上の位置まで下降すると、プロセスは高さセンサー70によって監視され、高さセンサーは、ミラー72によって薄膜62から高さセンサー70に向かって反射された光90からの入力を受け取る。
【0016】
薄膜62及び透明面64と加工物34との完全な接触が達成された後、
図3bに示すように、UV源26からのUV光48がUV硬化性材料36の層を硬化させる。ミラー72、透明プレート64、透明薄膜62は、硬化UV光の波長で透明(又はほぼ透明)であるので、UV源26により放出される当該波長の光は、ミラー72、透明プレート64及び透明薄膜62を比較的変化することなく通過して、UV硬化性材料36に入射する。UV硬化性材料36の層が硬化された後、光源26からのUV光が停止され、透明面64がプリンティング物体から引き上げられる。
【0017】
高さセンサーの代替の配置が
図7bに示されている。この実施例では、光源92は、光ビーム94を検出器96に向ける。光源と検出器は、加工物34の反対側に配置され、加工物が薄膜62に接触するように上昇したときに、光94のビームが検出器96から遮断されるようになる。検出器に到達する光が存在しないことは、加工物が適切な高さまで上昇し、UV硬化プロセスが開始できる信号として機能する。本明細書では、単一の高さセンサーが記載されているが、実際には、記載の実施形態の何れかにおいて、複数の高さセンサーを同時に使用して、加工物と薄膜との間の相対距離が、このような複数の高さセンサーの各々によって提供される出力の組み合わせ、場合によっては重み付けされた組み合わせに基づいて評価できる点に留意されたい。
【0018】
高さセンサー70の更に別の配置が
図6aに示されている。この実施例では、高さセンサーは、UV硬化システムから離れて配置されて遠隔的に動作され、硬化プロセスが開始される前に加工物34の高さを測定する。次に、加工物は、UV硬化システム60の動作領域内に収められ、事前に較正された測定値に基づいて、
図6bに示すように、薄膜64と接触するために測定された高さから必要と見なされる量だけ引き上げられる。更に別の高さセンサーの配置は、1又は2以上の圧力センサー又は歪みゲージ(図示せず)を利用して、加工物が薄膜62にいつ接触したかを決定することができる。例えば、加工物が薄膜62に接触すると、薄膜の幾らかの変形が予想することができる。薄膜に関連する導電性ストリップ(その非作業領域)は、薄膜に張力がかかっている場合でも同様に変形する可能性があり、導電性ストリップを流れる電流の測定値が結果として変化すると、加工物と薄膜間の十分な接触が達成された旨の信号を送ることができる。
【0019】
硬化プロセスが完了し、透明面64が引き上げられると、薄膜62は、加工物から除去することができる。しかしながら、このプロセス中にUV硬化性材料の新たに硬化した層を損傷しないように注意する必要がある。従って、加工物を透明薄膜62から単に下降すると、薄膜が加工物に接着し、最終的には分離時にUV硬化性材料の新たに硬化した層が裂ける可能性があるので、そうではなく、一連のローラーを使用して、薄膜を加工物から剥離する。薄膜と加工物の分離点にて大きな角度を実現することによって、例えば、横方向の力又は他の力によるプリンティング物体への損傷が回避される。張力下にある薄膜62のみを使用して加工物34に接触して、透明面64を使用せずに平坦化を行う本発明の実施形態においても、ローラーを用いて薄膜を除去するこの同じ方法を使用することができる。同様に、この方法は、透明面64のみを使用して加工物と接触し、薄膜なしで平坦化を行う実施形態に使用することができる。
【0020】
ローラーの動作に関する更なる詳細は、
図4a、4b、及び4cを参照すると最もよく理解される。
図4aでは、透明面64が加工物34から引き上げられている。次に、薄膜62を加工物34(すなわち、その上部の新たに硬化された層)から分離するために、薄膜の片側に配置されたローラー66のペアが、ローラーが取り付けられているアーム(
図11、要素114)を上昇させるピストン(この図には示されていないが、
図11の要素112を参照)によって薄膜から、例えば0.1~3mm程度引き上げられる。
【0021】
図4b及び4cに示されるように、ローラーの配置により、加工物34の新たに硬化された層と薄膜62との間で、加工物の上面にわたって横方向に(各図面に示される図のページに向かって)延びる脱離線にて角度が形成される。加工物34からの分離中に薄膜62において張力が維持される場合、薄膜は、下側ローラー66lと接触をし続け、
図4bに示すように、小さな分離角74で加工物から分離されることになる。しかしながら、ローラーが移動したときに薄膜の張力が解放された場合、薄膜62は、加工物34の同じ接触点に付着し、
図4cに示すように上側ローラー66uの周りに巻き付く。これにより、薄膜に再び張力を加えたときの分離角76が広がる。
【0022】
薄膜の張力を定期的に解放することにより、薄膜の剥離が最適化される。分離プロセス中、ローラー66のペアが載ったフレームが加工物の反対側の端部に向かって滑動し、加工物から薄膜62を剥離する。この動作が、薄膜62と加工物34の表面との間に大きな分離角がある、
図4cを参照して説明される条件下で実行されると、剥離力は、加工物34の薄膜62の最上層の狭い領域にのみ加えられる。これにより、加工物の表面の平面(すなわち、
図4b及び4cのxy平面)で新たに硬化した層に最小限の力を加えながら、薄膜62を加工物34から分離することが可能となり、加工物の新たに硬化した層への損傷を最小限に抑える。従って、薄膜62は、加工物の新たに硬化した表面全体から一度に剥離するのではなく、加工物の一方の側から始めて他方の側で終わる。これにより、最適な分離のために、薄膜を加工物から分離する力を1つの線に集中させて、分離前の新たに硬化した層のz方向の弾性変形を最小限に抑える。薄膜は、薄膜用の巻き取りリール上のモーターを使用して、このプロセス全体の間で張力下に維持することができる(これらの図には示されていないが、
図8の要素104a、104b、及び106a、106bを参照)
【0023】
上記では、場合によっては、透明面64は、加工物34が薄膜と接触するように引き上げられた後で、薄膜64上の所定の位置に降下される場合があることを述べた。或いは、
図5のフローチャートに示され、
図7a~7b及び
図3a~3bにて示唆されているように、例えば、層プリンティングシーケンスは、薄膜64(72)上の所定の位置に透明面64を降下し、次いで、UV硬化層が薄膜(74)に接触するように加工物34を上昇させることによって開始することができる(70)。このプロセスは、上述の反射率測定に従って、高さセンサー70の制御下にあるものとすることができる(75)。UV硬化(76)が完了した後、透明面64が引き上げられ(78)、薄膜が加工物から剥離される(80)。次に、新たに硬化した層を備えた加工物が取り外され(82)、又は別の層がプリンティングされる。
【0024】
ここで
図8~12を参照すると、本発明の実施形態に従って使用するための透明薄膜62を搬送するための組立体100の実施例が記載されている。組立体は、薄膜62を搬送するための対向するリール104a、104bが取り付けられたフレーム102を含む。リールは、プログラム可能なコントローラ(図示せず)の制御下で、それぞれのモーター106a、106b、例えばステッピングモーターによって作動する。組立体100はまた、回転アーム68に取り付けられた透明面64を支持する。回転アームは、モーター108によって作動し、適切なリンク110を介してモーター108に取り付けられている。動作中、薄膜62は、一方のリールから薄膜を巻き取って、他方のリールに巻き上げることにより、UV硬化プロセス間で進むことができる。これは、薄膜を前進させることによって平坦化面をリフレッシュ及び交換する能力をデバイスに与え、硬化ステップ間の材料汚染も回避させる。
【0025】
上記のように、本発明のこの実施形態では、透明薄膜62及び透明平面表面64を使用して、硬化される表面から酸素がパージされる。
図9に示すように、加工物34上にUV硬化層36を堆積した後、加工物は、薄膜及び表面に向かって引き上げられる。加工物が薄膜及び表面に接触すると、エアバブルが押し出され、最適なUV硬化のため酸素のない環境を生成する。このバブルの押し出しプロセスは、加工物34の垂直位置、薄膜62の張力、及び薄膜の垂直位置を制御することにより最適化することができる。例えば、
図10aに示すように、薄膜62の張力は、(例えば、リール104a、104b、及び/又はローラー66を制御することにより)解放されて、薄膜62の底部が加工物34のほぼ中心上に位置付けられる。
図10bに示すように、試料が引き上げられると、薄膜62の張力が増加し、接触領域が徐々に広がって、UV硬化層36全体を覆うようになる。こうすることで、薄膜がUV硬化層に静止すると、薄膜は、エアバブルを側部に押し出す。別の実施可能な手法は、薄膜の高さを制御することである。
図10cに示すように、薄膜62は、その片側でUV硬化層36と接触する。一方、薄膜は、加工物の上方で懸下される。次に、
図10dに示すように、例えばローラー66の位置を制御することにより、薄膜62が徐々に降下し、UV硬化層36全体を覆うように接触面積を徐々に広げる。
【0026】
薄膜62が加工物と完全に接触した後、透明面64が、モーター108及びアーム68を介して降下されて薄膜62と接触する。透明面64を使用すると、加工物34上のプリンティング層の平面性が向上する。次いで、UV光が作動して試料を硬化させる。
【0027】
図13、14a、及び14bは、UV硬化組立体120の一例を示す。この実施例では、UV硬化組立体は、UV LED光モジュール122a、122bのペアを含み、これらは、各々1又は2以上のLEDを含むことができる。LEDは、層36のUV硬化性材料を硬化させるのに適した波長で光を放射する。また、カメラ124も含まれる。カメラは、上記の方法で高さセンサーとして使用する、及び/又は製造中の部品を撮像するのに用いることができる。
図9aは、UV硬化組立体120の底面図を提示し、カメラ124用の照明ユニット126を示している。
図9bには、硬化のために加工物が位置付けられるフレーム102の領域上に配置されたフード130内のUV硬化組立体120の配置の切り欠き図が示されている。
【0028】
硬化が完了すると、
図11に示すように、透明面64が加工物から引き上げられる。上記のように、加工物への損傷を確実に最小限に抑えながら、薄膜を加工物から分離するために、薄膜62の一方の側のローラー66は、ローラー66が取り付けられているアーム114を上昇させるピストン112によって薄膜から離れて約0.1~3mm引き上げられる。ローラーの配置により、脱離線において薄膜と加工物表面との間で大きな角度が生成されるので、
図12に示すようにローラー66を移動させたときの剥離力は、加工物の上部層の狭い領域にだけ作用する。これにより、薄膜62は、x-y平面で最小限の力を加工物34上に加えながら、新たに硬化された材料から分離することができ、これによって、新たに硬化した材料への損傷を最小限に抑える。分離プロセス中、ローラー66が載っているフレームは、第3のローラー118に向かって滑動する。このようにして、薄膜62は、加工物の表面全体から一度に分離されるのではなく、一方の側から始めて、他方の側で終わるように加工物から除去される。これにより、分離前のZ方向での硬化直後の材料の最適な分離及び最小限の弾性変形のために、薄膜を加工物から分離する力が1つの線に集中する。リール104a、104b上のモーター106a、106bは、このプロセス全体の間、薄膜62の張力を維持する。
図4b及び4cを参照して前述したように、分離中に薄膜に張力が維持されている場合、薄膜は、下部ローラーと接触したままになり、小さな分離角で分離する。しかしながら、ローラーが移動するときに張力が解放された場合、薄膜は、同じ接点に付着し、上側ローラーに巻き付く。これにより、薄膜に再度張力を加えたときの分離角が拡大する。
【0029】
本発明の別の実施形態では、使用される表面は、張力下にある薄膜なしで、剛性プレートのみである。上記実施例と同様に、モーター及びリンクを介してプレートを下降させ、次いで、プリンティング面を引き上げて当接させる。必要に応じて、平坦化及び硬化の後、又は他の後プロセスを行った後、プレートがプリンティング面から引き上げられる。
【0030】
本発明の更に別の実施形態では、使用される表面は、張力がかかった状態が保持された薄膜であるが、剛性プレートはない。この実施形態の構成及び動作は、平坦化を助けるための剛性プレートの下降又は上昇がないことを除いて、上記の実施形態と同じである。
【0031】
(実施形態)
実施形態1. 周囲条件での光開始重合反応の酸素阻害を防止するシステムであって、
紫外線(UV)光源と、
UV硬化性材料の層を有する加工物を受け入れるUV硬化スペースと、
UV光源がUV硬化性材料の層に光を放射するときに、UV硬化スペース内でUV硬化性材料のUV硬化を促進するためUV硬化スペースから酸素をパージする手段と、
を含むシステム。
【0032】
実施形態2. 酸素をパージする手段が、UV硬化性材料の層を平坦化するためのUV透過性表面を含む、実施形態1に記載のシステム。
【0033】
実施形態3. UV透過性表面が、張力がかかった薄膜、固体材料のプレート、又は張力がかかった薄膜と固体材料のプレートとの組み合わせを含む、実施形態1~2の何れかに記載のシステム。
【0034】
実施形態4. UV硬化性材料の層とUV透過性表面との間で接触が達成されたかどうかを決定する手段を更に含む、実施形態1~3の何れかに記載のシステム。
【0035】
実施形態5. 決定する手段が、UV透過性表面の反射特性を評価するように構成されたカメラを含む、実施形態1~4の何れかに記載のシステム。
【0036】
実施形態6. 加工物の硬化したUV硬化性層との接触からUV透過性表面を除去する手段を更に含む、実施形態1~5の何れかに記載のシステム。
【0037】
実施形態7. 除去手段が、除去プロセス中に薄膜を張力がかかった状態に保つように構成されたローラーのペアを含む、実施形態1~6の何れかに記載のシステム。
【0038】
実施形態8. 周囲条件での光開始重合反応の酸素阻害を防止する方法であって、
製造中の物体のプリンティング面に紫外線(UV)光硬化性材料の層を堆積するステップと、
UV源がUV光硬化性材料の層に光を放射するときに、UV硬化スペース内でUV硬化性材料のUV硬化を促進するため、UV光硬化性材料の層を有する製造中の物体が配置されるUV硬化スペースから酸素をパージするステップと、
UV源を作動させて、製造中の物体のプリンティング面上に配置されたUV光硬化性材料の層の少なくとも一部を硬化させるステップと、
を含む方法。
【0039】
実施形態9. UV硬化スペースから酸素をパージするステップは、UV光硬化性材料の層を堆積した後、UV光硬化性材料の層を有する製造中の物体のプリンティング面をUV-透過性平坦化面と接触させるステップを含む、実施形態8に記載の方法。
【0040】
実施形態10. UV光硬化性材料の層の少なくとも一部を硬化させた後、製造中の物体から離れて平坦化面を変位させるステップを更に含む、実施形態8又は9の何れかに記載の方法。
【0041】
実施形態11. 平坦化面がUV透過性薄膜を含み、製造中の物体から離れて平坦化面を変位させるステップは、製造中の物体のプリンティング表面上に配置されたUV光硬化性材料の層の硬化部分から薄膜を剥離するステップを含む、実施形態8~10の何れかに記載の方法。
【0042】
実施形態12. 平坦化面は更に、UV透過性平坦表面を含み、製造中の物体から離れて平坦化面を変位させるステップは、製造中の物体のプリンティング表面上に配置されたUV光硬化性材料の層の硬化部分から薄膜を剥離するステップの前に、平坦表面を薄膜から離れて引き上げるステップを含む、実施形態8~11の何れかに記載の方法。
【0043】
実施形態13. ローラーを使用して薄膜の張力を制御するステップを更に含む、実施形態8~11の何れか実施形態11に記載の方法。
【0044】
このように、不活性ガス流を使用して反応表面から酸素をパージすることにより、又は酸素を反応表面から除去することにより、光開始重合反応の酸素阻害を防止するシステムが記載された。
【符号の説明】
【0045】
34 加工物
36 UV硬化層
48 UV光
60 UV硬化システム
62 透明薄膜
64 平面表面
70 高さセンサー
72 光学部品
【国際調査報告】