(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(54)【発明の名称】運転体験をシミュレートするための最適化された装置
(51)【国際特許分類】
G09B 9/04 20060101AFI20220126BHJP
G09B 19/16 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
G09B9/04 A
G09B19/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533315
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(85)【翻訳文提出日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 IB2019060602
(87)【国際公開番号】W WO2020121185
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】202018000003923
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519129632
【氏名又は名称】クレスノ エッセアー
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(74)【代理人】
【識別番号】100217467
【氏名又は名称】鶴崎 一磨
(72)【発明者】
【氏名】ボルトロン、リカルド
(57)【要約】
運転体験シミュレーション装置は、少なくとも5つの互いに重ね合わされた平面を含む。前記平面は、下から上に向かって順番に、第1回転板(1’)を含む第1平面(1)と;第2回転板(2’)を含む第2平面(2)と;上に重なる摺動ベース(4’)を摺動させるための軌道状構造体(3’)を含む第3平面(3)と;前記摺動ベース(4’)、前記摺動ベース(4’)の下に一体的に接合された第4回転板(4’’)、及び、前記第4回転板(4’’)を支持するとともに前記構造体(3’)において摺動可能である支持体(4’’’)を含む第4平面(4)と;少なくとも1つのコックピット(5’)を含む少なくとも1つの第5平面(5)と、を含み、前記シミュレーション装置は、前記第3平面(3)の前記軌道状構造体(3’)が、ピン(6)によって、下に重なる前記第2回転板(2’)に連結されており、前記ピンは、前記軌道状構造体(3’)の矩形の前側の短辺(3’’)を、前記第2平面(2)における下に重なる前記回転板(2’)の周縁に連結することを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも5つの互いに重ね合わされた平面を含む運転体験シミュレーション装置であって、前記平面は、下から上に向かって順番に、第1回転板(1’)を含む第1平面(1)と;第2回転板(2’)を含む第2平面(2)と;上に重なる摺動ベース(4’)を摺動させるための軌道状構造体(3’)を含む第3平面(3)と;前記摺動ベース(4’)、前記摺動ベース(4’)の下に一体的に接合された第4回転板(4’’)、及び、前記第4回転板(4’’)を支持するとともに前記構造体(3’)において摺動可能である支持体(4’’’)を含む第4平面(4)と;前記運転体験シミュレーション装置のユーザのアクセスを可能にするのに適した少なくとも1つのコックピット(5’)を含む少なくとも1つの第5平面(5)と、を含み、前記シミュレーション装置は、前記回転板が互いに中心がずれた状態で重ね合わされて非同軸構造をなすように構成されており、前記第1回転板(1’)の直径は、前記第2回転板(2’)の直径よりも大きく、前記第2回転板の直径は、前記第4回転板(4’’)の直径と等しいか、或いはそれよりも大きく、前記第2回転板(2’)の中心は、下に重なる前記第1回転板(1’)の半径上の位置に存在し、前記第4回転板(4’’)の中心は、下に重なる前記回転板(2’)の半径上の位置か、或いは、その周縁に沿う位置に存在し、前記軌道状構造体(3’)は、前記第2回転板(2’)の上部に一体的に接合されるとともに、上に重なる前記摺動ベース(4’)の摺動を可能にするよう寸法設定されており、前記第1回転板(1’)、前記第2回転板(2’)、及び、前記第4回転板(4’’)の各々は、その回転軸を中心として時計回り及び反時計回りの両方に360°回転することができ、前記運転体験シミュレーション装置は、カーブを曲がる際に生じる横加速度に関連する力の感覚をユーザに与えるのに適しており、前記第3平面(3)の前記軌道状構造体(3’)は、ピン(6)によって、下に重なる前記第2回転板(2’)に連結されており、前記ピンは、前記軌道状構造体(3’)の矩形の前側の短辺(3’’)を、前記第2平面(2)における下に重なる前記回転板(2’)の周縁に連結することを特徴とする、運転体験シミュレーション装置。
【請求項2】
前記第1回転板(1’)の直径と前記第2回転板(2’)の直径との比は、2:1であり、前記第2回転板(2’)の直径は、前記構造体(3’)の長さと等しく、前記構造体は、矩形状であり、前記第4回転板(4’’)の直径と前記第2回転板(2’)の直径との比は、1:1である、請求項1に記載の運転体験シミュレーション装置。
【請求項3】
前記第2回転板(2’)の中心は、前記第1回転板(1’)の中心を起点として、前記第1回転板(1’)に関連する半径の3/4の位置にあり、前記第4回転板(4’’)の中心は、下に重なる前記第2回転板(2’’)の周縁に沿う位置に存在する、請求項1又は2に記載の運転体験シミュレーション装置。
【請求項4】
前記回転板の各々は、遊星歯車機構のように構成されており、前記第1回転板(1’)、前記第2回転板(2’)、及び、前記第4回転板(4’’)は、それぞれのピニオンによって可動なクラウンギアのように構成されている、請求項1~3のいずれかに記載の運転体験シミュレーション装置。
【請求項5】
磁気浮上タイプの磁気サスペンション及び推進システムをさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の運転体験シミュレーション装置。
【請求項6】
前記ユーザがアクセスするための前記コックピット(5’)内に、ハンドル、ハンドルバー、ラダー、操縦桿、及び、ジョイスティックのうちの少なくとも1つのビークル操縦システムを含む、請求項1~5のいずれかに記載の運転体験シミュレーション装置。
【請求項7】
ポリマー材料、及び/又は、金属材料、及び/又は、複合材料で作製される、請求項1~6のいずれかに記載の運転体験シミュレーション装置。
【請求項8】
特徴的な運転体験に変換可能な電気信号を送信するのに適したソフトウェアを用いて管理することができ、前記電気信号の送信は、無線モード、又は、有線モードで行われる、請求項1~7のいずれかに記載の運転体験シミュレーション装置。
【請求項9】
送信手段、電気モータ、及び、ギアモータを含む、請求項1~8のいずれかに記載の運転体験シミュレーション装置。
【請求項10】
傾斜の変化に関連する運転をシミュレートするための昇降システムをさらに含み、前記昇降システムは、アクチュエータのような支柱を含み、且つ、前記第5平面(5)に含まれている、請求項1~9のいずれかに記載の運転体験シミュレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械産業に関する。より詳しくは、本発明は、運転シミュレーションシステムの分野に関し、具体的には、限定するものではないが、ビークルの運転体験をシミュレートするための最適化された装置であって、以前に開示した旧バージョンに対して、そのコンポーネントのいくつかに、より高い動きの自由度を与える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年、職業的な自動車の運転及び航空機の操縦などの行為のシミュレーションを可能にする自動化装置が成功し普及している。これらのシステムは、当初は航空宇宙産業、後に航空産業における訓練のために考案されたが、すぐさま娯楽産業及びエデュテインメント産業に応用され、時間をかけて大幅に革新及び改良が行われることにより、上述した行為を競技レベルや職業レベルで行うパイロットの訓練に欠かせないものとなった。
【0003】
フライトシミュレータの場合、これらのシステムは、航空機の操縦体験をできるだけ現実に近い形でシミュレートすることを目指している。従って、シミュレータは、ビデオゲームから「コックピット」と呼ばれる実際のコックピットキャビンを実物大に再現したものまで多岐にわたり、実物大の再現の場合には、全体がコンピュータで管理される電気機械式又は油圧式アクチュエータに飛行機が搭載される。このタイプのシミュレータは、航空産業や軍事産業において、あらゆる状況下でのパイロットの訓練、特に緊急時や災害時の訓練に用いられている。
【0004】
これらはすべて、航空開発を継続的に進めるとともに、訓練によるコスト及びリスクを低減するためのものである。
【0005】
自動車分野においては、近年、高度なシミュレーションシステムが開発され、フォーミュラ1、NASCAR、IndyCarのドライバーや、その他のメジャーなカーレース競技のドライバーを訓練するために、有名な自動車メーカーが使用するまでになっている。
【0006】
例えば、3Dで再現されスクリーン上に投影されたコース内をユーザが「運転」することができる、革新的なフォーミュラ1運転シミュレーションプラットフォームが存在する。
【0007】
このプラットフォームは動くことができるため、シングルシーターがコース上の正確な位置にあるような印象を与えることができる。
【0008】
さらに、シングルシーターの後部に配置されたステッピングモータ及び前部に配置された少なくとも1つのモータにより、ユーザは、視覚的な感覚反応と共に、ロール、ピッチ、及びヨーを体験することができる。
【0009】
より詳細には、これらのプラットフォームは、浮き床(floating floor)に設置されたベースで構成されたシャシと、並進ステッピングモータを収容する車体と、振動を再現するための音声増幅システムと、無停電電源装置と、ハンドルなどの駆動系と、駆動系のフィードバックのためのモータと、アクセル及びブレーキ用のペダルアセンブリと、様々なコンポーネントの管理のための電気部品、電子部品、及び表示用部品とを含む。
【0010】
機械的動作のためのステッピングモータを収容する機械部品は、これらのモータが保護ケースで覆われるように構成されている。
【0011】
航空産業において、本発明が関係する分野におけるシミュレーションの最新技術は、6つのピストン状アクチュエータが接続されたプラットフォームからなる、いわゆる「ヘキサポッド」システムに代表される。このシステムは、仮想デカルト座標系に割り当てられた座標をコントローラによる単一のアクチュエータの位置コマンドに変換することが可能な、特定のソフトウェアによって制御される。このハイテクシミュレーションシステムには、多数の応用分野がある。例えば、特許文献WO2014076079号には、非限定的な例として、原子炉の修理に使用される、上述したヘキサポッドシステムの特徴を有するロボットが記載されている。より詳細には、上記文献には、第1及び第2の支持体と、2つの端部を有するリニアアクチュエータ6つとを含むロボット用のヘキサポッドシステムが記載されている。
【0012】
各端部は、回転接続手段によってそれぞれの支持体に接続されている。
【0013】
幾度か述べたように、このタイプのシミュレーションシステムは、様々な応用分野で使用することができ、特に、このようなシステムは、通常の状況下だけでなく、いわゆる極限状況や危険な状況での自動車や航空機の運転体験をシミュレートするのに適している。
【0014】
多くの場合、運転体験のシミュレーションをできる限り現実に近づけることが可能な革新的なシミュレータは、レーシングカーや着陸中の航空機の動きを忠実に再現可能な高度な装置を構成するためだけでなく、むしろ、このようなシステムのユーザが、上述したような航空機や自動車の運転状況において、乗り物酔いを起こすことなくパイロットの訓練体験を行えるようにするという重要な目的で必要とされている。乗り物酔いは、急激且つ突然に方向転換が行われる状況、人間の体が予測した感覚が提示される視覚感覚と一致しない状況、あるいは、上述したような状況を伴う訓練が長時間にわたった場合に、発生する。
【0015】
上述のような輸送手段を運転/操縦する際にドライバー/パイロットが遭遇しうるあらゆる状況を忠実に再現できることは、訓練装置としてのシミュレータの有効性のために極めて重要である。
【0016】
シミュレータにより提供される運転/操縦体験の忠実な再現性を評価する上で今日最も重要なパラメータの1つは、いわゆる「横Gの力(lateral G force)」である。このパラメータは、ビークルを運転する際、軍用戦闘機を操縦する際、ならびに、人間の体が突然の急激な方向転換を経験するすべての場合において、特に重要である。
【0017】
これは、より詳しくは、荷重係数に比例して、カーブの中心に向かって、タイヤの静摩擦によって発生する横方向の求心加速力(lateral centripetal acceleration force)を示す大きさである。
【0018】
スポーツカーは、一般的に、短時間で1~1.5Gの範囲の横G値に到達しうるが、レーシングカーは、5Gを超える横G値に到達しうる。
【0019】
フォーミュラ1のコースを走行する際に発生しうる横加速度から生じる力を正確に知覚する運転体験を再現できる特徴的なシミュレータが、特許出願番号IT201600106809に記載されている。
【0020】
本発明の特許出願の目的は、上述の特許出願に記載のものよりも進歩したバージョンである、最適化された運転体験シミュレーション装置を開示することであり、当該装置は、巨視的なレベルでは、そのコンポーネントのいくつかに、より高い動きの自由度を与えるものである。これらのすべてにより、ユーザによってシミュレートされる運転体験が、より現実に近いものになる。
【発明の概要】
【0021】
本明細書による発明は、運転体験をシミュレートするための特徴的且つ最適化された装置であり、イタリア出願番号IT201600106809による旧バージョンに対して、そのコンポーネントのいくつかに、より高い動きの自由度を与える構造的特徴を有しており、これにより、シミュレーション装置は、例えばフォーミュラ1のコースに典型的な運転体験のよりリアルな知覚を提供することができる。
【0022】
説明の網羅性を高めることのみを目的とし、また、本発明の実施態様を理解しやすくするために、上述したイタリア特許出願による旧バージョンの詳細な説明を、以下に概説し、その実施態様も、明らかにする。
【0023】
具体的には、本発明による最適化された運転体験シミュレーション装置は、旧バージョンと同様に、輸送手段を運転する際に人間の体が受ける機械的応力ならびに感覚を忠実に再現することができるシミュレーション装置である。より詳しくは、この運転体験シミュレーション装置は、カーブを曲がる際に発生する横加速度「G」を生成することができる。
【0024】
さらに詳しくは、本シミュレーション装置は、様々な期間及び強度の幅広い種類のカーブに関して、これを曲がる際の上述した横方向の力をシミュレートすることができる。
【0025】
当該装置は、シミュレーションに含まれる力をリアルタイムで反転させることもできる。
【0026】
より具体的には、本シミュレーション装置は、旧バージョンと同様に、その構成コンポーネントの特徴的な配置により、カーブの際に横加速度によって生じる力を再現することができる。
【0027】
さらに具体的には、当該装置は、独立した回転運動を行う平面を含み、これらの回転運動が、並進運動も行う平面によって中継される。
【0028】
これらの運動平面は、数値制御システムにより、同期して動作する。
【0029】
本発明によるシミュレーション装置は、その機械的構造、ならびに、そのコンポーネントの並進水平運動及び回転水平運動の強度及び大きさにより、予測される動きとユーザが知覚する動きとの間のずれ(latency)が無いようになっている。
【0030】
さらに、当該装置は、特定の機能を様々な平面に割り当てて分配することにより、再現しようとする横加速度に関連する一連の力をより速く且つ正確に生成することができ、ユーザの多様な感覚予測に一致させることができる。
【0031】
より具体的には、当該シミュレーションシステムは、実質的に、少なくとも4つの重ね合わされた非同軸平面を含み、これらの平面は、本発明による効果のすべてを実現するのに適した、以下に詳述する特定の空間構成を有する。
【0032】
第1平面は、ユーザの体の位置の関数として横加速度に関連する力を生成する機能を有する円形回転板を含み、水平面内で動作する。
【0033】
第2平面は、前記第1平面上に配置されており、その中心が前記第1平面上に非同軸に配置された円形回転板を含む。好ましくは、第2平面は、その中心が、第1回転板の中心を起点として、前記第1平面に関連する半径の4分の3に位置するように配置される。第2平面は、第4平面と協働して、平面1の回転方向に対して横向きとなる姿勢にユーザの体を配置する機能を有する。この第2平面も、水平面内で動作する。
【0034】
第3平面は、前記第2平面の中心に配置された直線位置決め板を含む。
【0035】
第3平面は、加速及び制動に関連する力を生成するように設計されており、この平面もまた、水平面内で動作する。第3平面は、上にある摺動ベースを摺動させるための軌道状構造体を含む。
【0036】
第4平面は、前記第3平面上に配置されており、回転板と、前記第3平面に含まれる前記軌道状構造体上で直線的に摺動する摺動ベースとを含む。
【0037】
第4平面は、急激且つ突然の方向転換、及び/又は、前輪または後輪のグリップ力の低下により生じる横加速度に関連する力を生成する機能を有する。
【0038】
前記第4平面も、水平面内で動作する。
【0039】
なお、第2平面及び第4平面は、横加速度を受けた体を、必要時間内に正しく位置付けるために必要である。
【0040】
当該装置は、支柱を備えた昇降装置を含む第5平面をさらに含み、当該昇降装置は、例えばアクチュエータの形態であり、仮想デカルト座標系で割り当てられた座標を単一のアクチュエータの位置制御に変換することが可能な関連するシミュレーションソフトウェアによって制御される。第5平面は、ユーザを収容するのに適したコックピットをさらに含み、限定するものではないが、いくつかの好ましい実施形態においては、第三者が運転の制御を行うための別のコックピットも含みうる。
【0041】
上述した運転体験シミュレーション装置に対して、本発明による最適化された装置の特徴は、前記第3平面が、ピンによって第2平面の縁部に連結されることにより、当該平面内での揺動が可能となっていることである。
【0042】
以下の説明及び添付図面からより明らかになるように、このピンは、前記第3平面の一端に設けることができる。
【0043】
本発明をより理解しやすく且つ明確にするために、好ましい実施形態のうちの1つにおける本装置の動作を、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1は、本発明の特定の実施形態における運転体験シミュレーション装置の側面図である。
【0045】
より詳細には、同図は、上述の装置が5つの平面、すなわち、第1平面1、第2平面2、第3平面3、第4平面4、及び、第5平面5を含むことを示している。具体的には、第1平面1、第2平面2、及び、第4平面は、中心が互いにずれた状態で重ね合わされた回転板を含み、これらの回転板は、其々の軸に対する各回転板の回転運動によって、ドライバーが感じるであろう横加速度に関連する力が生成されるように、空間内に配置されており、これによって、当該装置は、フォーミュラ1のコースに特徴的なカーブと同様のカーブを曲がる際の運転体験をシミュレートすることができる。
【0046】
同図は、輪郭を有する4つの平面を示しており、これらは、図示の特定の実施形態では、遊星歯車に類似のものである。
【0047】
より具体的には、第1平面1、第2平面2、及び、第4平面4に其々含まれる第1回転板1’、第2回転板2’、及び、第4回転板4’’は、其々のピニオンによって駆動可能な歯車として表されている。
【0048】
また、当該装置では、中心がずれた状態で重ね合わされたこれらの平面の独特の空間構成も表している。
【0049】
より詳細には、第2回転板2’の中心は、第1回転板1’の中心を起点として、第1回転板1’に関連する半径の3/4の位置にあり、カーブ配置における第4回転板4’’の回転中心は、第2回転板2’の周縁に沿う点に概ね位置する。同図はさらに、第2回転板2’の上に一体的に接合された第3平面3の構造体3’も示しており、当該構造体は、第4回転板4’’が下部に一体的に接合された摺動ベース4’の摺動を可能にするものである。
【0050】
図2は、
図1に示した運転体験シミュレーション装置の上面図である。
【0051】
図3は、
図1に示した運転体験シミュレーション装置の斜視図である。同図は、第4回転板4’’の直径と第2回転板2’の直径との比が1:4である場合を示しており、これらの間の比が1:1である前述の図に示した例とは異なっている。
【0052】
図4は、本シミュレーション装置の斜視図であり、コックピット5’がシングルシーターであることが同図からわかる。また、
図4には、上述したコックピット5’が、摺動ベース4’を含む第4平面4の上方に配置されている様子が示されており、摺動ベースの下部には、支持体4’’’によって支持された第4回転板4’’が一体的に接合され、支持体は、第3平面の構造体3’内で縦方向に摺動する。この構成により、回転並進運動を摺動ベース4’に関連付けることができる。
【0053】
図5は、本発明による装置を示す図であり、第3平面3が、特別なピン6によって、下にある平面2に連結されている様子を示しており、当該ピンは、例えば、第3平面の一端、具体的には、軌道状構造体3’の短辺側の一端に設けられている。より具体的には、このピン6は、軌道状構造体3’の矩形の前方の短辺3’’を、下にある第2平面2の回転板2’の周縁に連結する。
図5(a)及び
図5(b)は、第3平面3の平面内における動き、具体的には、上記ピン6による構造体3’の動きを示している。
【発明を実施するための形態】
【0054】
非限定的な例として提示している添付図面を参照して、本発明を、その好ましい実施形態の1つについて説明する。本装置を、その実施態様に限らず、より理解できるように、装置全体の詳細な説明を以下に提示する。また、前述の発明の特許出願に係る旧バージョンの装置に関して説明したのと同様の特徴についても概説する。
【0055】
概して、本発明による運転体験シミュレーション装置は、少なくとも5つの互いに重ね合わされた平面を実質的に含む構造体であり、これらの平面のいくつかは、中心がずれた状態で重ね合わせられている。具体的には、当該装置は、下から上への順に、第1回転板1’を含む第1平面1と、第2回転板2’を含む第2平面2と、好ましくは矩形の構造体3’を含む第3平面3と、摺動ベース4’及び第4回転板4’’を含む第4平面4と、を含み、前記構造体は、上に重なる平面4を支持するための軌道状ベースとして機能するのに適した構成であり、前記摺動ベースは、軌道状構造体3’に沿って縦方向に摺動するのに適した構成であり、第4回転板4’’は、摺動ベース4’の下に一体的に接合されるとともに、構造体3’において縦方向に摺動可能な支持体4’’’によって支持されている。
【0056】
より詳細には、当該シミュレーション装置に含まれる前記平面、具体的にはこれらの平面内にある前記回転板は、これらの縦軸が互いに一致しないように重ね合わせられることにより、非同軸構造となっている。
【0057】
これらの寸法、より具体的には寸法比、ならびにその空間配置は、当該装置がユーザに提供しようとする利点を得るために非常に重要である。このような利点として、まず、例えばフォーミュラ1のコースのカーブなどのカーブを曲がる際のビークルの横加速度に関連する力をユーザが知覚することができ、乗り物酔いの影響をなくすことができ、正確な動きを実現できる。
【0058】
当該装置は、典型的にはシングルシーターに似た少なくとも1つのコックピット5’を含む第5平面5をさらに含み、第5平面は前記第4平面の上にある。
【0059】
本発明によるシミュレーション装置の動作では、カーブに差し掛かる際には、コックピットに座っているユーザ/ドライバーが、その背中が第2平面2の第2回転板2’の周縁に向いているとともに、前記第1平面1の第1回転板1’の回転中心に向くようになっている。
【0060】
より詳しくは、ユーザ/ドライバーの体は、回転板2’の周縁とその回転中心との間に存在している。
【0061】
第4回転板4’’の半径は、第4回転板4’’の回転中心とその周縁との間で体が占める長さによって決まる。
【0062】
右カーブを曲がるためには、ハンドル(またはコックピット5’に設けられた同等の操縦システム)が時計回りに回され、第4回転板4’’も時計回りに回転する。
【0063】
第2平面2内にある下側の回転板2’も時計回りに回転し、第4回転板4’’の回転と相乗的に作用して、ユーザ/ドライバーのコックピット5’が、第1回転板1’の周縁に横向きに接する状態となる。このようにして、ユーザは、自分の右側が第1平面1の第1回転板1’の中心を向き、自分の左側が第1回転板1’の周縁を向いた状態となる。この回転板は、上に重なる回転板の回転と同時に、時計回りに右に向かって回転し始め、この回転により、第4回転板4’’の上方に配置されたすべての物体が遠心力の影響を受ける。ユーザもまた、この影響を受けて、カーブを曲がる時に作用する力を現実のように感じることができる。
【0064】
これらのすべてにより、カーブを曲がる体験をできる限り現実に近い形でシミュレートすることができる。
【0065】
第3平面3及び第5平面5は、横Gの力の生成には無関係であるが、加速、制動、衝突、傾斜の変化、又は、位置の変化により生じる力を一部だけでもシミュレートするために、主として、コックピット、ひいては間接的にはユーザの前方、後方、及び、垂直方向における並進運動を実現する役割を果たす。ピン6によって軌道状構造体3’をその下方の第2回転板2’に連結していることにより、さらに、第3平面3は、ピン6に対して揺動することができる。
【0066】
寸法に関しては、概して、装置全体が、常にそうとは限らないが典型的には、第5平面5に含まれるコックピット5’のサイズの影響を受け、この寸法に基づいて、下に重なる平面の寸法がカスケード式に確定される。
【0067】
概して、第1回転板1’の直径は、第2回転板2’の直径よりも大きく、当該第2回転板の中心は、下に重なる第1回転板1’の半径上の点に存在する。また、第2回転板2’の直径は、第4回転板4’’の直径と等しいか、或いはそれよりも大きく、当該第4回転板の中心は、下に重なる第2回転板2’の半径上の点か、或いは、その周縁に沿う位置に存在する。これに関して、他の実施形態も同様に、本発明によるシミュレーション装置においては、第1平面1及び第2平面2の直径、具体的には、これらに含まれる回転板の直径、すなわち、第1回転板1’及び第2回転板2’の直径は、第3平面3に割り当てるように選択された長さに依存し、この長さは、第4平面の第4回転板4’’の半径に依存する。典型的には、第1回転板1’の直径と第2回転板2’の直径との比は、2:1であることが好ましいが、これに限定されない。第2回転板2’の直径は、典型的には、限定するものではないが、第3平面3の長さ、具体的には、軌道状構造体3’の長さと等しく、当該構造体は、典型的には矩形状であり、上に重なる摺動ベース4’の摺動を可能にする寸法を有する。従って、第2回転板2’の上述の直径は、軌道状構造体3’の矩形の長辺の長さに等しい。第4回転板4’’の直径と第2回転板2’の直径との比は、典型的には、1:1であるが、これに限定されない。
【0068】
なお、この最適化されたシミュレーション装置の前述した複数の平面は、当該装置の様々な実施形態において様々な構造を有することができる。
【0069】
添付図面を参照すると、前記平面、具体的には、第1平面1、第2平面2、及び、第4平面4は、図示の特定の実施形態においては、歯車と同様に構成される。
【0070】
従って、前記平面は、機械的モーメントを伝達するためのこの種の機構に関連する既知の機械的コンポーネント及びリンク機構を含む。
【0071】
より具体的には、本実施形態では、第1平面1が、一般的な歯車に類似の構造の回転板1’を含み、当該歯車の動きが、既知の遊星歯車で行われるのと同様に、前記歯車に囲まれた一般的なピニオンによって付与されるようになっている。
【0072】
同様に、他の回転板2’及び4’’もまた、遊星歯車システムのような構造を有しており、従って、これらが属する平面はすべて、その運動学的動作に適した既知のコンポーネントで構成される。
【0073】
一般的な当業者であれば上述した既知のコンポーネントや同等のシステムの存在を把握しており、また、本発明の本質は、当該装置に含まれる少なくとも4つの平面の特徴的な空間配置とその動作原理にあることから、本明細書では上述した既知のコンポーネントの説明は省略する。そして、この動作原理は、上記平面に含まれるとともに空間内に適切に配置された回転板の回転により、例えば、フォーミュラ1のコースに特徴的なカーブを曲がる際に生じるような横加速度に関連する力を忠実に再現して、ユーザに知覚させることができるものである。
【0074】
いずれにしても、運動伝達のための当該装置は、電気モータ及びギアモータによって駆動することができ、モータの数は、装置の全体的な寸法及び達成しようとする性能によって変わる。
【0075】
本発明によるさらなる実施形態では、本シミュレーション装置は、磁気浮上「マグレブ(Maglev)」システムに典型的な磁気サスペンション及び推進システムを利用する。
【0076】
この場合においても、上記回転板を含む平面は、本発明によるシミュレーション装置の動作原理を変わらず維持し、当該原理は、幾度か繰り返し述べたように、例えばフォーミュラ1のサーキットに特徴的なカーブと同様のカーブを曲がる際の横加速度により生じる力を再現することを目的とする。
【0077】
この場合、他の実施形態と同様に、装置の少なくとも4つの平面、具体的には、第1平面1、第2平面2、第3平面3、及び、第4平面4は、回転部品間の摩擦を低減するために、永久磁石の極性が反対になるように向かい合うことによって、互いに間隔をあけることができる。
【0078】
本装置の平面の独特の空間配置に加えて、本発明によるさらなる本質的な特徴は、含まれる回転板、すなわち、第1回転板1’、第2回転板2’、及び、第4回転板4’’が、それらの軸を中心として、360°で停止することなく連続的に時計回りと反時計回りの両方に回転することができる点にある。
【0079】
本発明による装置において、様々な実施形態において生じうる構造的な変形に関わらず、これらは、当該装置の動作原理及びこれを用いる方法において発明の単一性を有するものである。
【0080】
本装置を用いる上記方法により、シミュレーション装置のユーザは、カーブを曲がる際にビークルの横加速度に対する力を知覚することができる。従って、上記方法は、所望の効果を得るために上述した平面のような少なくとも5つの平面を利用することからなる。
【0081】
より詳細には、上記方法によれば、少なくとも5つの平面、具体的には、これらに設けられた回転板のうち、昇降装置とユーザのコックピット5’とを含む第5平面5の下に設けられた第4回転板4’’によって、ユーザは、カーブに「入る」際に、ハンドルバー、ジョイスティック、ラダー、ハンドル、操縦桿(cloche)などを操作して、時計回り又は反時計回りの方向や、操縦を制御することができる。また、第4回転板4’が下部に一体的に接合された摺動ベース4’の摺動を可能にする構造体3’の下に位置して当該構造体を支持する第2回転板2’(摺動ベースの上には第5平面5が配置されている)が、その軸を中心に回転することによって、ユーザを含めてこの第2回転板2’の上にあるすべてのものに遠心力を付与するようになっている。
【0082】
これらの回転板の下に設けられるとともに、これらよりも径が大きく、上にある平面を支持している第1回転板1’が、その軸を中心に回転することによって、全体が主たる遠心力を受けることができ、これによって、第2回転板2’及び第4回転板4’’の回転の遠心力を増大させて完全なものとし、すべての点で最大延伸分離機(maxi centrifuge)のように作用させることができる。
【0083】
これら全体により、ユーザは、フォーミュラ1のコースのカーブに典型的な横加速度に関連する力を可能な限り現実に近い形で再現したものを、知覚することができる。
【0084】
本明細書で述べたように、当該装置は、特徴的な運転体験に変換可能な特別な電気信号を送信するのに適したソフトウェアを用いて、自動化し、管理することができる。
【0085】
このような電気信号の送信は、無線モード、または、一般的な有線の手法で行うことができる。
【0086】
モータ駆動用の電流は、有線または磁気誘導のいずれかで伝達することができる。
【0087】
本発明に関するものに似た従来の運転体験シミュレーションシステムと同様に、本装置は、典型的にはユーザがするコックピットに、ハンドル、ハンドルバー、ラダー、操縦桿、ジョイスティックなどの操縦システムのうちの少なくとも1つを備えており、これらから、信号、並びに選択される方向及び相対加速度が回転板に送信される。
【0088】
すべての実施形態において、本発明による運転体験シミュレーション装置のコンポーネントは、ポリマー材料、及び/又は、金属材料、及び/又は、複合材料で作製することができる。
【0089】
なお、すべての実施形態において、本シミュレーション装置は、第5平面5に、上述したコックピット5’に加えて、傾斜の変化に関連する運転体験をシミュレーションするための昇降システムを含んでいてもよい。
【0090】
上記昇降システムは、例えば、アクチュエータのような支柱を含むシステムに代表される。
【0091】
本シミュレーション装置に関連するソフトウェアにより、仮想デカルト座標系における座標を単一のアクチュエータのような支柱の位置制御に変換することができる。
【0092】
上記支柱は、第5平面5に含まれる上記昇降システムが再現すべき空間傾斜を管理する上記シミュレーションソフトウェアの制御下で動作する。
【0093】
上述したように、上記昇降システムは、上記第5平面に含まれており、本シミュレーション装置の主たる目的である横加速度に関連する力の生成とは無関係である。
【国際調査報告】