(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(54)【発明の名称】部材の表面特性の検出方法、部材の表面品質をモニタリングするための前記方法の使用、および部材の表面特性を調整するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 21/47 20060101AFI20220126BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
G01N21/47 B
G01N21/84 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533469
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(85)【翻訳文提出日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2019083019
(87)【国際公開番号】W WO2020120162
(87)【国際公開日】2020-06-18
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】シェーネ,イェンス・ローラント
【テーマコード(参考)】
2G051
2G059
【Fターム(参考)】
2G051AA88
2G051AA90
2G051AB02
2G051BA06
2G051CA04
2G051CA07
2G051CB01
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE02
2G059FF04
2G059HH01
2G059KK01
2G059KK03
2G059KK09
2G059LL01
2G059PP04
(57)【要約】
本発明は、1つ以上の部材の表面特性の違いの検出方法であって、部材の特定の温度で部材により放射された赤外線を、部材に対する特定のレシーバー表面で放射照度として検出する方法に関する。異なるポジションで、または複数の部材について検出する場合も、レシーバー表面によりカバーされる立体角および部材表面からの距離はほとんど変わらないことが保証される。検出された放射照度の違いは、部材の表面特性の違いと同等と見なすことができる。本発明は更に、製造方法に由来する部材の表面品質をモニタリングおよび場合により調整をするための本発明のそのような方法の使用、並びに部材の連続生産において表面特性を調整するためのデバイスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材の表面特性の違いの検出方法であって、
部材の特定の温度で部材により放射された赤外線を、部材に対する少なくとも2つの異なったポジションにおける特定のレシーバー表面で放射照度として検出し、
ポジショニングを、部材表面からのレシーバー表面上の3つの固定点の距離が、レシーバー表面の各ポジションに対し、その表面法線に沿って実質的に変化しないままであるように実施し、
検出された放射照度のポジション依存度を、部材の表面特性の違いと同等と見なす、方法。
【請求項2】
部材表面の表面法線に沿ったレシーバー表面の幾何学的重心の位置の投影を検出された放射照度の位置と同等と見なすことにより、検出された放射照度のポジション依存度を部材表面での位置依存度に変換することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
検出された放射照度のポジション依存度または位置依存度を着色画像化により行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
同じ材料から作られた少なくとも2つの部材の表面特性の違いを検出する方法であって、
関連する部材の特定の温度で部材により放射された赤外線を、各部材に対する少なくとも1つの異なったポジションにおける特定のレシーバー表面で放射照度として検出し、
特定の部材に対するレシーバー表面の少なくとも1つのポジションにおける表面法線に沿った特定の部材表面からのレシーバー表面上の3つの固定点の距離、および各部材の温度が実質的に変化しないままであるように、各部材により放射された放射照度を常に検出し、
レシーバー表面で検出された部材の放射照度の違いを、部材の表面特性の違いと同等と見なす、方法。
【請求項5】
放射照度を検出するためのレシーバー表面は焦電材料で作られていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
1.0×10
-6~1.0×10
-4mの範囲、特に好ましくは3.0×10
-6~2.0×10
-5mの範囲の波長範囲または波長で放射照度を検出することを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
温度センサーにより部材の温度を測定し、部材は好ましくは、特定の温度を設定するための熱源またはヒートシンクに接続されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
部材は少なくとも1Wm
-1K
-1の熱伝導率を有し、好ましくは金属であり、特に好ましくはスズ、チタン、アルミニウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、クロム、ニッケル、銅およびそれらの合金から選択される金属材料で作られていることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
部材は被膜またはウェットフィルムを有してよく、被膜またはウェットフィルムの各々は、それぞれの場合において、検出波長範囲または検出波長について実質的に透過性であることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
製造方法に由来する部材の表面品質をモニタリングし、必要に応じて調整するための、請求項1~9のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項11】
表面品質の実価としての、部材から赤外線として放射され、請求項1~9のいずれかに記載の方法で検出された放射照度を、表面品質の目標値としての、所望の表面品質を有する同じ部材の同様に検出された放射照度と比較し、場合により、部材を、互いの偏差に対する所定の許容範囲に関してチェックし、および/または定性的に分類することを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
多数の製造工程を含む部材の連続生産の一部として、特定の製造段階における目標値からの連続した各部材の表面品質の実価の偏差の程度に関する、偏差の程度に一意的に依存した情報を、表面品質の実価の検出に先行する製造工程における製造パラメーターのために操作変数を出力する少なくとも1つのコントローラーに供給し、操作変数は、変化した製造パラメーターでの先行する製造工程を経る特定の製造段階での部材の表面品質の実価が、目標値からの偏差が操作変数の原因である部材の実価と比べて、表面品質の目標値により近づくよう、製造パラメーターの値の変化をもたらすことを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
表面品質のモニタリングおよび必要に応じた調整の後、好ましくは金属である部材を、好ましくは接合により、同じまたは別の部材と一体型接続し、被膜または材料を適用することを含む更なる製造方法に供給することを特徴とする、請求項10~13のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
部材は金属であり、ストリップ、シート、パイプ、プロファイル、キャスト部品、容器、(飲料)缶または(自動車)本体または(自動車)本体部品から選択されることを特徴とする、請求項10~14のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
i)a)レシーバー表面で検出された放射照度に比例する物理的変数、好ましくは放射照度に比例する電圧信号を出力するのに適した、赤外線を測定するためのレシーバー表面;
b)部材に対する所定の少なくとも1つのポジションで部材により放射された赤外線として、レシーバー表面での放射照度を測定することができるよう、連続した個々の部材を測定デバイスのレシーバー表面を通過させることを目的とした輸送デバイス;および
c)任意に、加熱および/または冷却要素並びに任意に温度センサーを含んでなり、測定デバイスのレシーバー表面を通過する際に部材の温度を実質的に等しく設定するのに適した温度制御装置
を含んでなり、請求項1~9のいずれかに記載の方法を実施するのに適した測定デバイス、
ii)測定デバイスにより発行され、表面特性の実価としてレシーバー表面で検出された放射照度に比例する物理的測定変数を、表面特性の目標値と同じ物理的測定変数の参照値と比較して、実価および目標値からの偏差のための一対一の制御変数を調整デバイスに出力するために設計されたコントローラー、並びに
iii)表面品質の実価の検出に先行する製造工程における製造パラメーターのために、制御変数を操作変数に変換するのに適した調整デバイス
を含んでなり、測定デバイス、コントローラーおよび調整デバイスは、表面特性の実価と目標値との偏差を最小化する制御ループを形成している、部材の連続生産において表面特性を調整するためのデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の部材の表面特性の違いの検出方法であって、部材の特定の温度で部材により放射された赤外線を、部材に対する特定のレシーバー表面で放射照度として検出する方法に関する。異なるポジションまたは複数の部材で検出しても、レシーバー表面よりカバーされる立体角および部材表面からの距離はほとんど変わらないことが保証される。そして、検出された放射照度の違いは、部材の表面特性の違いと同等と見なすことができる。別の実施形態では、本発明は、製造方法に由来する部材の表面品質をモニタリングし、必要に応じて調整するための、そのような本発明の方法の使用、および部材の連続生産において表面特性を調整するためのデバイスを包含する。
【背景技術】
【0002】
材料の表面特性は、しばしば、その製造方法、またはこの材料を使用する下流の製造工程において重要な役割を果たす。これは主に、金属材料を接合またはシーリングする場合に当てはまる。なぜなら、材料に対する接着剤およびシーラントの接着性は、金属表面の特性に大きく依存するからである。腐食生成物または先行の製造工程からの残留物は、金属表面に対する接着性に悪影響を及ぼす可能性がある。従って、表面品質をモニタリングすることは、半製品または完成部材を提供するための製造方法の最中および直後の両方において、あらゆる種類の材料の一体接合における品質保証の不可欠な部分である。複雑な部材の製造に使用される材料の表面特性をタイミングよく、即ちほぼ製造中に測定することにより、製造方法を適応させることができる;例えば、製造方法にとって不利な材料の表面特性を排除するために、表面処理の対象を絞った手段を開始することができる。従来の表面分析法は、管理しきれないほど多く存在しているが、材料の表面特性を、成型、接合、シーリングまたは被覆によるかどうかにかかわらず、その更なる修正の間、即ち製造方法の間にモニタリングできる方法を提供することに対する要求が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、数秒以内またはせいぜい何秒かの間に、材料、特に金属の表面特性の評価を可能にする方法であって、非破壊的かつ非接触で機能し、かつ、検査対象の材料を実際の製造方法から一時的に取り除く必要がない方法を確立することである。主な目標は、材料の表面積の特性に関して結論を導き出せるようにするために、表面特性の違いを測定または認識できるようにすることである。蛍光X線、エネルギー分散型X線分光法またはX線光電子分光法などの確立された非破壊表面分析方法は真空技術であるため、一般的に、工業的な製造方法で材料の表面品質を捉えるのに適していない。
【0004】
本発明は、赤外線領域で電磁波を放射する材料の性質を利用したものであり、個別化された部材の表面の放射率の違いが測定または可視化される限りにおいて、これらの違いは部材の表面特性の違いに相当する。
【0005】
全ての材料が物質固有の放射率を持つという物理現象はもちろんよく知られているが、この材料特性は、これまで主に非接触温度測定のためにのみ測定されており、材料表面の材料表面特性を明確化して評価するためのものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明が解決しようとする課題は、部材の表面特性の違いの検出方法であって、部材の特定の温度で部材により放射された赤外線を、部材に対する少なくとも2つの異なったポジションにおける特定のレシーバー表面で放射照度として検出し、ポジショニングを、部材表面からのレシーバー表面上の3つの固定点の距離が、レシーバー表面の各ポジションに対し、その表面法線に沿って実質的に変化しないままであるように実施し、検出された放射照度のポジション依存度を、部材の表面特性の違いと同等と見なす、方法によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
「部材」という用語は、材料または材料の組み合わせから作られたあらゆる固体を包含し、従って半製品も包含する。半製品は、その後、例えば再成形、および接合またはシーリングによる一体接合による、より複雑な部材の製造のための更なる製造工程に付される。
【0008】
「レシーバー表面」は平らでも曲がっていてもよい。好ましくは、レシーバー表面は平らであるか、または2πsr未満の立体角を有する球面として設計されている。球面として設計されている場合、本発明のレシーバー表面は、その表面法線が共通の固定点を指す複数の平らな部分的表面で構成されていてもよい。本発明の範囲において、レシーバー表面は、特定の波長範囲または特定の波長でそこに入射する赤外線を、レシーバー表面で記録される放射束に比例する物理信号に、即ち特定の波長範囲または特定の波長での放射照度に変換するのに適している。専門用語で放射束密度とも称される放射照度は、レシーバー表面により検出される放射束に相当する。それは平方メートルあたりのワットの単位を有する。従って、本発明では、放射照度を検出するためのレシーバー表面が、焦電センサー(PIRセンサーとも称される)の感光面であり、従って、焦電材料で作られており、その仕様が、レシーバー表面による放射照度が検出される好ましい赤外線波長範囲の選択にのみ依存することが好ましい。部材および表面部材の材料の放射率または部材上の薄層の赤外線透過率の波長依存度に応じて、放射照度の検出のために特定の波長範囲を選択すること、従って、特定のPIRセンサーを選択することが有利な場合がある。通常、従って好ましくは、部材により放射された赤外線は1.0×10-6~1.0×10-4mの範囲、特に好ましくは3.0×10-6~2.0×10-5mの範囲である波長範囲または波長で検出される。
【0009】
部材の表面特性の違いを測定するために、放射照度は、部材に対する少なくとも2つのポジションで検出される必要がある。少なくとも2つのポジションでの検出は、同時に、または異なる時間に行うことができる;検出を同時に行う場合、例えば部材の平らな部分的表面により放射された赤外線を検出する場合、その表面の表面法線が好ましくは幾何学的な重心に収束せず、特に好ましくは互いに平行に伸びている、多くのレシーバー表面を通常は使用する。
【0010】
部材表面からの距離が変化するように放射照度が検出されたときに部材に対するレシーバー部材のポジションが変化すると、厳密には、それ以外の同じ温度で放射照度と表面特性との間に相関関係はもはや存在しない。従って、本発明では、放射照度の検出中、レシーバー表面の各ポジションに対し、その表面法線に沿った、部材表面からのレシーバー表面上の3つの固定点の距離が実質的に変化しないままであることが必要である。レシーバー表面上の固定点は、レシーバー表面の2次元構成内の明確に定義された位置点である。この点に関して、部材上方の異なるポジションでの検出中に、部材表面からの固定点の距離が、それぞれの場合において、間隔の算術平均から20%以下、好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下、非常に特に好ましくは2%以下しか逸脱していない場合、部材に対するレシーバー表面に関連ポジションは実質的に変化していないと見なされる。
【0011】
部材の表面特性の違いを示すためには、検出された放射照度のポジション依存度が部材表面上の位置依存度に変換されることが明らかに好ましい。これは、放射照度が検出される特定のポジションでのレシーバー表面の幾何学的重心の位置が、幾何学的重心の表面法線に沿って部材表面に投影されることで達成される。このように部材表面に投影された位置を介して、検出された放射照度は、検査対象の部材表面の位置と相関する。また、本発明では、表面特性の違いを表すために、部材表面の位置依存マッピングを、部材に対する多数の異なったポジションにおけるレシーバー表面での放射照度の検出により実施し、全てのポジションまたはレシーバー表面上の3つの固定点は好ましくは相互に平行な3つの面にあり、これは部材表面のトポグラフィーと合同であり、従って、検出された放射照度がマッピングされた部材表面に対し、レシーバー表面の同じ間隔および方向で発生することが確実となることが好ましい。
【0012】
本発明の方法の好ましい態様では、検出された放射照度のポジション依存度または位置依存度は着色画像化により示される。このようにして、表面特性の違いは当業者に一目で分かる。これは、部材の連続生産における表面特性のランダムなモニタリングの場合、またはそれ以外に純粋にコンピュータ支援によるモニタリングの際の要求に応じて個別化された部材の表面特性の視覚的表現を提供する場合でさえ、有利であり得る。
【0013】
特に、表面特性をマッピングする場合、または一般的に、例えば連続生産の品質モニタリングなど、多数の類似した部材の表面特性を測定する場合、全ての測定にわたって一定である部材の特定温度での放射照度を検出するためには、部材の温度を温度センサーにより測定し、部材が特定の温度を設定するための熱源またはシンクに接続されていることが有利であり得る。このようにして、温度が一定であるかどうかを受動的に判断し、場合により温度を所定の温度に一定に調整することが可能になり、このことは、特定の部材の表面特性の測定に特に適当であり得る。放射照度を検出する温度は、本発明の方法において特に制限されず、任意の値を取り得る。-10~300℃の温度範囲が実際には関連している。
【0014】
これに関して、本発明の方法では、熱エネルギーをよく散逸させ、部材の温度差を非常にゆっくりとしか補正しない部材の表面を分析することが特に容易である。従って、部材が少なくとも1Wm-1K-1の熱伝導率を有すること、特に好ましくは金属であること、特に好ましくはスズ、チタン、アルミニウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、クロム、ニッケル、銅およびそれらの合金から選択される金属材料で作られていることが好ましい。後者の選択肢は、自然酸化物層を形成し、腐食過程の影響を受ける金属に関する。従って、これらの材料を含む部材の工業生産におけるその表面特性は、通常、部材の機能性または更なる加工、例えば接合および接続加工のために非常に重要である。本発明において、用語「金属部材」は、金属または非金属基材上の金属被膜、例えばニッケルメッキされたアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンまたは亜鉛メッキまたはアルミメッキされた鋼ストリップも包含する。
【0015】
本発明の方法の特定の態様では、好ましくは金属である部材の表面特性の違いを、被覆された部材上またはウェットフィルムを有する部材上で測定し、被膜またはウェットフィルムは、検出波長範囲または特定の検出波長について実質的に透過性である。バックグラウンド補正後、45°の入射角でATR赤外線分光法を使用して、被膜またはウェットフィルムの波長依存吸収を測定し、特定の波長範囲または特定の波長におけるSavitzky-Golay補正が30%未満、好ましくは20%未満であれば、被膜またはウェットフィルムは実質的に「透過性」である。
【0016】
上記方法の変法において、検出された放射照度はまた、標準化されたまたは既知の表面特性を有する同じ材料で作られた他の部材によって同じように放出され、検出された放射照度と相関している。従って、部材の表面特性の偏差の程度または同一性を、所望の基準値で示すことができる。本発明はまた、同じ材料から作られた少なくとも2つの部材の表面特性の違いを検出する方法であって、関連する部材の特定の温度で部材により放射された赤外線を、各部材に対する少なくとも1つの異なったポジションにおける特定のレシーバー表面で放射照度として検出する方法に関する。この方法は、特定の部材に対するレシーバー表面の少なくとも1つのポジションにおける表面法線に沿った特定の部材表面からのレシーバー表面上の3つの固定点の距離、および各部材の温度が実質的に変化しないままであるように、各部材により放射された放射照度を常に検出し、レシーバー表面で検出された部材の放射照度の違いを、部材の表面特性の違いと同等と見なす、ことを特徴とする。各部材の放射照度として放射される赤外線の検出時の温度は、算術平均からの偏差が20%未満、好ましくは10%未満、特に好ましくは5%未満、非常に特に好ましくは2%未満である場合に実質的に変化しない。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、製造方法に由来する部材の表面品質をモニタリングおよび場合により調整するための、上述した2つの本発明の方法(これらの方法に関連して示された好ましい態様を包含する)の一方の使用に関する。この目的のために、好ましくは、表面品質の実価を、まず、部材から赤外線として放射され、上述した2つの方法のいずれかを使用して検出された放射照度と同等と見なし、次いで、表面品質の目標値としての、所望の表面品質を有する同じ部材の同様に検出された放射照度と比較し、部材を、目標値および実価からの偏差に対する所定の許容範囲に関してチェックし、定性的に分類するように、本発明の方法を実施する。2つの異なった部材の放射照度は、この目的のために同一のレシーバー表面を用い、特定の部材に対する、放射照度が検出されるレシーバー表面のポジションでの表面法線に沿った特定の部材表面からのレシーバー表面上の3つの固定点の距離、および各部材の温度が実質的に変化しないままである場合に、同様に検出される。部材表面からの固定点の温度および間隔は、各固定点での温度および間隔の算術平均からの偏差がそれぞれ20%未満、好ましくは10%未満、特に好ましくは5%未満、非常に特に好ましくは2%未満である場合に実質的に変化しない。
【0018】
部材の表面品質の実価は、好ましくは-10~300℃の範囲の部材の温度で、特に好ましくは、表面状態の放射率の違いが最大であると同時に部材の化学的表面状態がスケーリングまたは結晶化などの変質を生じない温度で測定される。従って、当業者は、部材の材料および表面状態の問題に応じて、放射照度が検出される部材の温度を予め選択することができる。
【0019】
連続生産において材料表面の品質を測定するため、および場合により、個々の部材を製造方法からチャンネルするため、若しくは所望の品質が達成されるようそれらを個々に処理するため、または表面品質の測定に先行する製造段階の少なくとも1つにおいて、所望の表面品質が連続生産において回復されるよう工程を調整するため、好ましくは、部材の表面特性の違いの測定方法を本発明に従って用いる。
【0020】
従って、本発明の使用では、表面品質の実価が特定の許容範囲内にもはや入らず、その目標値から逸脱している場合に部材を表面処理に付し、場合により、その目標値からの表面品質の実価の偏差を再び測定し、表面品質の実価が特定の許容範囲内になるまで表面処理工程を繰り返すことが好ましい。適した適用は、部材を接合またはシーリングすることによる一体型接続である。接合する部材の十分な接着のために、通常、部材表面が適当な表面特性を有し、金属部材が、例えば、長期的な一体型接続のための接着剤またはシーラントとの接触前に、成形油などの有機汚染物質および錆を有さないことが重要である。ここで、本発明により検出されるような所望の表面状態が得られるまで、個々の部材を再度洗浄する必要があり得る。
【0021】
或いは、多数の製造工程を含む部材の連続生産の場合、本発明の使用では、表面品質の測定に先行する製造工程において、部材の表面品質の実価が特定の許容範囲内にもはや入らず、その目標値から逸脱している場合に、その後に製造された部材の表面品質の実価が再び特定の許容範囲内に入るよう、製造パラメーターを制御することが好ましい。ここで、下流の製造工程のために部材の表面状態はしばしば、最終製品の品質および機能性にとって非常に重要なので、特に連続生産との関連で異なる製造工程を経る金属部材に対して、適切な適用分野が生じる。例えば、溶融めっき鋼ストリップなどの金属ストリップを製造する場合、金属表面は湿式化学不動態化に付されるが、その性能には可能な限り均質な(ほとんどが無機の)不動態化被膜の薄い層が必要とされる。本発明の方法は、焦電センサーがセンサーを連続的に通過する金属ストリップのコンベヤーベルトに対して適当な位置に固定され、電子的に準連続的に検出された放射照度を検出し、照射照度をデータ処理システムにデータパケットとして送る(これは、許容範囲外の偏差の場合は、十分な量の不動態化がストリップの全領域に実施されるよう、ストリップ表面に対する不動態化剤のウェットフィルム適用または適用ローラーのポジションの調整をもたらす)限りにおいて、ストリップ不動態化の表面特性の測定に理想的に適している。
【0022】
多数の製造工程を含む部材の連続生産と関連した本発明による2つの方法の使用の好ましい変形では、特定の製造段階における目標値からの連続した各部材の表面品質の実価の偏差の程度に関する、偏差の程度に一意的に依存した情報を、表面品質の実価の検出に先行する製造工程における製造パラメーターのために操作変数を出力する少なくとも1つのコントローラーに供給し、操作変数は、変化した製造パラメーターでの先行する製造工程を経る特定の製造段階での部材の表面品質の実価が、目標値からの偏差が操作変数の原因である部材の実価と比べて、表面品質の目標値により近づくよう、製造パラメーターの値の変化をもたらす。
【0023】
従って、一般に、多数の製造工程を実施する、および/または表面品質のモニタリングおよび場合により調整の後に好ましくは金属である部材を、好ましくは接合により、同じまたは別の部材と一体型接続し、被膜または材料を適用することを含む更なる製造方法に供給する、部材の連続生産に関して、表面特性の違いを測定するために本発明の2つの方法を使用することが好ましい。
【0024】
既に説明したように、金属部材は本発明の使用に特に適している。この部材は、好ましくは、ストリップ、シート、パイプ、プロファイル、キャスト部品、容器、(飲料)缶または(自動車)本体または(自動車)本体部品から選択される。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、
i)a)レシーバー表面で検出された放射照度に比例する物理的変数、好ましくは放射照度に比例する電圧信号を出力するのに適した、赤外線を測定するためのレシーバー表面;
b)部材に対する所定の少なくとも1つのポジションで部材により放射された赤外線として、レシーバー表面での放射照度を測定することができるよう、連続した個々の部材を測定デバイスのレシーバー表面を通過させることを目的とした輸送デバイス;および
c)任意に、加熱および/または冷却要素並びに任意に温度センサーを含んでなり、測定デバイスのレシーバー表面を通過する際に部材の温度を実質的に等しく設定するのに適した温度制御装置
を含んでなり、請求項1~9のいずれかに記載の方法を実施するのに適した測定デバイス、
ii)測定デバイスにより発行され、表面特性の実価としてレシーバー表面で検出された放射照度に比例する物理的測定変数を、表面特性の目標値と同じ物理的測定変数の参照値と比較して、実価および目標値からの偏差のための一対一の制御変数を調整デバイスに出力するために設計されたコントローラー、並びに
iii)表面品質の実価の検出に先行する製造工程における製造パラメーターのために、制御変数を操作変数に変換するのに適した調整デバイス
を含んでなり、測定デバイス、コントローラーおよび調整デバイスは、表面特性の実価と目標値との偏差を最小化する制御ループを形成している、部材の連続生産において表面特性を調整するため、例えば最終部材の一定の表面品質を確実にするためのデバイスに関する。
【0026】
そのようなデバイスにより、表面特性の高価な化学的組成分析の必要も、そのような化学分析のために連続生産を停止する必要もなく、部材の連続生産の際に特定の製造段階で部材の表面特性を所望の表面特性に調整することが可能となる。試運転では、表面処理、例えば湿式化学不動態化または洗浄工程を、一般的に適用可能な実用的な知識で設定でき、製造システムを、赤外線の放射照度の基準値に調整でき、これは、表面特性の目標値として、システム上の「対象部材」で測定および参照される。操作変数を適応および最適化した後、短時間で製造運転に切り替えることができる。操作変数の適応および最適化、並びに表面特性のモニタリングは、関連する操作変数および測定信号に属するアナログ物理的変数をデジタルデータに変換した後、データ処理システムによって行うことが好ましい。有利には、データ処理システムで制御ループを制御およびモニタリングできるようにするために、測定デバイス、コントローラーおよび調整デバイスにより出力される信号、制御変数および操作変数を、インターフェースから取り出し、デジタル形式のデータとして電子的に検出する。これに関して、別の位置でインターフェースによって検出されたデータを読み取るオプションを提供するため、および/またはデータを別の位置へおよび/または別の位置から移動し、この別の位置からデータパケットを移動して制御ループ、例えばコントローラーおよびアウトプット操作変数に影響を与えるオプションを提供するために、インターフェースがテレメトリーモジュールを備えることも有利である。
【国際調査報告】