(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(54)【発明の名称】血液透析を用いた家庭用ペットにおける腎不全の治療
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20220127BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
A61M1/16 111
A61M1/36 153
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021521234
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(85)【翻訳文提出日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 RU2019000851
(87)【国際公開番号】W WO2020117096
(87)【国際公開日】2020-06-11
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521157133
【氏名又は名称】アリポフ アレクサンドル アンドレーエヴィッチ
【氏名又は名称原語表記】Alipov Alexandr Andreevich
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】アリポフ アレクサンドル アンドレーエヴィッチ
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH20
4C077KK02
4C077KK25
(57)【要約】
本発明は、獣医の分野に関する。腎外血液浄化処置を行って、血液から毒素を除去する。血液浄化処置中に、血清中の尿素およびクレアチニンの基準パラメータを測定する;得られたデータに基づいて、透析強度指数(DII)が毒素を浄化された体液の体積に対する患者の体液全体の体積の割合として特定され、尿毒症毒素蓄積指数(UTAI)が単位時間当たりの尿素またはクレアチニンの量の蓄積の割合として特定される。さらに、尿素についてのUTAI値が0.5より大きい、および/またはクレアチニンについてのUTAI値が8より大きい、および/またはDII値が0.9未満である場合に、血液透析処置を繰り返すことが必要であると考えられる。特に、血栓症を防ぐために、35IU/kg体重の投与量でi/v注入により、およびその後に15IU/kg/hの速度でi/v点滴注入により、抗血液凝固ダルテパリンナトリウムが動物に投与される。本発明の方法によって、各透析間期間における尿素およびクレアチニンについてのUTAI値が特定され、腎臓の濾過能力における変化が観察され、血液透析を繰り返すことが必要とされるか否かの予測が行われる;この処置を用いることによって、動物の平均寿命が著しく増加する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液透析を用いた家庭用ペットにおける腎不全の治療方法であって、
血液から毒素を腎外浄化するための処置の実行;
前記血液浄化プロセス内での血清の尿素およびクレアチニンについて重要な指標を測定する工程;
得られたデータに基づいて、単位時間当たりの尿素またはクレアチニンの増加量として定められる透析強度指数(DII)および尿毒症毒素の上昇指数(RUTI)を定める工程;
尿素についてのRUTI指標が0.5より大きい場合、および/またはクレアチニンについてのRUTI指標が8より大きい場合、および/またはDII指標が0.9未満である場合に、血液透析の繰り返し処置の必要性を定める工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記処置中、血栓症を防ぐために、動物は、体重の1kgごとに35マウスユニットのストリーム注入によって静脈に、および次いで、15MU/kg/時の速度で点滴注入によって静脈に、抗血液凝固ダルテパリンナトリウムを与えられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、獣医の分野、特に、包括的治療の方法に関し、家庭用ペット(ネコまたはイヌ)の急性腎不全(ARF)、慢性腎臓病(CKD)および中毒に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
ロシア国特許第2636850号明細書「The method of haemodialysis for house pets as cats and dogs」が知られている。これは、以下のようである:最大8kgの重量の病気のネコまたはイヌが、体外回路(contour)に接続され、浄化された血液が、体外回路の血液誘導ラインを通って透析器に導かれ、透析器の後に動物の浄化された血液が血液誘導ラインを通って戻される。この方法によって、最大8kgの重量のネコおよびイヌの血液を尿毒症毒素からきれいにし、血液を酸-イオン性組成物で安定化させることが可能となる。
【0003】
本発明が対処する主な問題は、病変器官(腎臓)を治療するための方法の開発である。現在、尿毒症中毒から動物の死を回避するために病変器官で医師が腎保護作用を行う際、動物のための腎外血液浄化の処置が、「人工腎臓」すなわち血液透析を用いて行われる。
【0004】
本発明との違いは、血液透析はそれ自体が目的ではなく、腎保護が行われる間に患者の生命を延ばす手段に過ぎないことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、患者の腎臓の濾過能力の変化を監視し、続く血液透析処置を繰り返す必要性を予測することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
血液透析処置を与える決定は、動物の身体検査および既往歴からのデータに基づいて、医師によって行われる。病気の動物の腎臓が必要な量の毒素を十分に除去できないと医師が判断した場合には、「人工腎臓」すなわち血液透析処置を用いて毒素から器官を浄化することが決定される。この処置は以下のようである:毒素を有する病気の動物の血液が、PVC管を通して装置中に供給される;そこで毒素から濾過され、その後、病気の動物の血流に戻される。
【0007】
血液透析を用いた家庭用ペットにおける腎不全の治療は、「腎外(extra kideny)」処置を行って血液から毒素を除去し、血液浄化処置中に尿素および血清クレアチニンの主な指標を測定し、実験データに基づいて、単位時間当たりに増加する尿素またはクレアチニンの量として透析強度指数(DII)および尿毒症毒素の上昇指数(RUTI)を評価することからなる。
【0008】
血液透析処置を繰り返す必要性は、尿素のRUTIが0.5より大きい場合に定められる;クレアチニンのRUTIが8超では、処置が繰り返される必要があり、RUTIのレベルにかかわらず、DIIが0.9未満の場合に血液浄化処置が繰り返される。
【0009】
処置中、血栓症を防ぐために、動物は、体重の1kgごとに35マウスユニットのストリーム注入によって静脈に、次いで、15MU/kg/時の速度で点滴注入によって静脈に、抗血液凝固ダルテパリンナトリウムを与えられる。
【0010】
患者の状態に応じて、医師は、毒素の浄化のために所定量の液体を処方する。
【0011】
DIIは、透析強度指数である;透析処置の有効性を測定するために導入される。
【0012】
医師が、患者の状態に基づいて、毒素から浄化される液体の量を決定すると、DIIは1から0.5まで変わりうる。その後DIIが0.9未満であると、血液浄化処置が繰り返される。
【0013】
DII指標は、毒素のない体液の体積に対する、血液および水を含む患者の体液の全体積の割合である。
【0014】
例えば、10kgの重量のイヌは、組織において6リットルの体液を有する。すべての体液(6リットル)が毒素を浄化されると、指数は1である。体液の半分(3リットル)が浄化されると、DIIは0.5である。
【0015】
患者の体液の体積は、身体の質量の65%であると仮定される。DIIは、小数点によって表される。DII-0.6は、身体の体液の60%が処置中に血液透析装置を通過したことを意味する。
【0016】
次の血液透析の再実行を予測するために、RUTIが導入され(尿毒症毒素の上昇指数)、1時間当たりの単位で測定される。
【0017】
血清尿素、血清クレアチニン、またはこの2つの組合せを用いて、RUTIを計算することができる。
【0018】
RUTI指標は、単位時間当たりの血清中の尿素単位の上昇の量を計算することによって特定される。
【0019】
割合が1時間当たり0.5~2単位である場合、血液透析が繰り返されるべき時間は、24時間を超えてはならない。
【0020】
クレアチニンについてのRUTIもまた、単位時間当たりの血清中のクレアチニンの単位の上昇の量を計算することによって特定される。概して、クレアチニンの量は200~300ユニット/時である(筋肉量および物理的負荷の強度に依存して)。クレアチニンについてのRUTIが8超のレベルである場合、血液透析処置を繰り返す必要がある。
【0021】
急性腎不全(ARF)中、腎臓は、血液透析直後に機能を開始しない。回復には時間を必要とする。血清尿素、血清クレアチニン、またはこの2つの組合せを用いてRUTIを計算できる。
【0022】
例えば、血液透析後、患者の血清尿素は20mmol/lであった。24時間後、血清尿素は32mmol/lになった。24時間で、12ユニットで増大した。患者のRUTIは0.5ユニット/時であった。通常、健康な器官では、尿素およびクレアチニンRUTIは0ユニット/時である。腎臓が完全に機能不全である場合、尿素におけるRUTIは0.5~2ユニット/時である(食餌の代謝速度およびタンパク質レベルに依存して)。
【0023】
各透析間の間隔におけるRUTI測定によって、腎臓の濾過能力において変化が見られ、次の血液透析を繰り返す必要性が予測できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するためのバリエーション
実施例1。種類:イヌ、名前:レックス、犬種:雑種、性別:オス、体重:20kg、診断:ARFを伴うピロプラズマ症
【表1】
【0025】
動物が一次血液透析処置を受けたので、尿素およびクレアチニンについてのRUTI指標は計算することができない。
【0026】
DII比率が0.9未満であるので、血液透析処置を24時間以内に繰り返す。
【表2】
【0027】
RUTIおよびDII指標から必要であるので、浄化処置を24時間以内に繰り返す。
【表3】
【0028】
RUTIおよびDII指標から必要であるので、浄化処置を24時間以内に繰り返す。
【表4】
【0029】
RUTIおよびDII指標から必要であるので、浄化処置を24時間以内に繰り返す。
【0030】
5日目
クレアチニンについてのマイナスのRUTI指標(-4)および尿素についての非常に小さいRUTI指標(0.12)により、血液透析が動物に必要でないと考えられた。動物は24時間以内に退院した。
【表5】
【0031】
実施例2
種類:イヌ、名前:ピューマ、犬種:アムスタッフ、性別:メス、体重:28kg、診断:急性腎盂腎炎
【表6】
【0032】
動物が一次血液透析処置を受けたので、尿素およびクレアチニンについてのRUTI指標は計算することができない。
【0033】
DII指標が0.9未満であるので、血液透析処置を24時間以内に繰り返す。
【0034】
2日目
クレアチニンについてのマイナスのRUTI指標(-13)および尿素についてのマイナスのRUTI指標(-0.3)により、血液透析が動物に必要でないと結論付けられた。動物は退院した。
【表7】
【0035】
実施例3
種類:イヌ、名前:ベイト、犬種:ダックスフント、性別:オス、体重:9kg、診断:衰弱性嘔吐に冒された、慢性間質性腎炎および急性脱水症の悪化
【表8】
【0036】
動物が一次血液透析処置を受けたので、尿素およびクレアチニンについてのRUTI指標は計算することができない。
【0037】
DII指標が0.9未満であるので、血液透析処置を24時間以内に繰り返す。
【表9】
【0038】
RUTIおよびDII指標から必要であるので、浄化処置を24時間以内に繰り返す。
【表10】
【0039】
浄化処置を24時間以内に繰り返す。
【0040】
4日目
クレアチニンについてのマイナスのRUTI指標(-2)および尿素についての小さいRUTI指標(0.2)により、血液透析が動物に必要でないと結論付けられた。動物は処置の2日後に退院した。
【表11】
【0041】
所与の実施例から分かるように、各透析間の間隔における尿素およびクレアチニンについてのRUTI測定によって、腎臓の濾過能力の変化を観察し、血液透析を繰り返す必要性またはそのような必要性がないことを予測することが可能となる。
【0042】
この処置を用いることによって、動物の寿命が著しく増加する。処置中、腎臓が一時的にその機能を失った際に、医師は腎臓の病状を医学的に正し、尿毒症毒素から器官を浄化することができる。
【国際調査報告】