(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(54)【発明の名称】フッ素-熱可塑性エラストマーブレンド
(51)【国際特許分類】
C08L 27/12 20060101AFI20220127BHJP
C08L 27/16 20060101ALI20220127BHJP
C08L 27/20 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
C08L27/12
C08L27/16
C08L27/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532149
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(85)【翻訳文提出日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 US2019064647
(87)【国際公開番号】W WO2020118033
(87)【国際公開日】2020-06-11
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ダブリュ・ハウザー
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・カペロ
(72)【発明者】
【氏名】フロランス・メルマン
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・オブライエン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD14W
4J002BD14X
4J002BD16W
4J002BD16X
4J002GC00
4J002GJ02
4J002GQ00
(57)【要約】
少なくとも2つのフルオロポリマーのブレンドを含む熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。第1のフルオロポリマーは、0~30重量%のモノマーJを有し、Jは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。第2のフルオロポリマーは、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%のモノマーTを有し、Tは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマーS及びフルオロポリマーHを含むフルオロポリマーブレンドを含むフルオロポリマー組成物であって、
Hは、0~30重量%、好ましくは15~30重量%、より好ましくは20~30重量%のモノマーJを含むフルオロポリマーであって、Jは、HFP、フッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、
Sは、好ましくは少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも43重量%のモノマーTを含み、Tは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、
Hの量は、前記組成物の20~80重量%であり、Sの量は、前記組成物の80~20重量%である、
フルオロポリマー組成物。
【請求項2】
フルオロポリマーS及びフルオロポリマーHを含むフルオロポリマーブレンドを含むフルオロポリマー組成物であって、
Hは、0~30重量%、好ましくは15~30重量%、より好ましくは20~30重量%のモノマーJを含むフルオロポリマーであって、Jは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、
Sは、好ましくは少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%、最も好ましくは少なくとも43重量%のモノマーTを含み、Tは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、
Hの量は、前記組成物の20~80重量%であり、Sの量は、前記組成物の80~20重量%であり、
ただし、S中の前記モノマーTの重量%は、H中の前記モノマーJの重量%よりも常に少なくとも5%大きい、
フルオロポリマー組成物。
【請求項3】
ASTM規格D412による応力/緩和プロトコルに従って、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の弾性回復を有するエラストマーである、請求項1又は2のフルオロポリマー組成物。
【請求項4】
Hの溶融粘度が、230℃、100s
-1で測定した場合に1~30kPである、請求項1~3のいずれか1項に記載のフルオロポリマー組成物。
【請求項5】
Sの溶融粘度が、230℃、100s
-1で測定した場合に10~55kPである、請求項1~4のいずれか1項に記載のフルオロポリマー組成物。
【請求項6】
Hは、フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、パーフルオロメチルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)、長鎖過フッ素化ビニルエーテルを含むフッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、フッ素化ジオキソール、C4以上の部分的若しくは過フッ素化アルファオレフィン、C3以上の部分的若しくは過フッ素化環状アルケン、フッ素化若しくは部分的にフッ素化されたアクリレート及びメタクリレート、並びにそれらの組み合わせ並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のフルオロポリマー組成物。
【請求項7】
Sは、フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、パーフルオロメチルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)、長鎖過フッ素化ビニルエーテルを含むフッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、フッ素化ジオキソール、C4以上の部分的若しくは過フッ素化アルファオレフィン、C3以上の部分的若しくは過フッ素化環状アルケン、フッ素化若しくは部分的にフッ素化されたアクリレート及びメタクリレート、並びにそれらの組み合わせ並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のフルオロポリマー組成物。
【請求項8】
フルオロポリマーHがVDFとHFPとのコポリマーであり、VDFが少なくともHの70重量%を占める、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
フルオロポリマーSがVDFとHFPとのコポリマーであり、HFPが少なくともSの30重量%、好ましくはSの少なくとも40重量%、より好ましくは少なくともSの45重量%を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
Hの量が前記組成物の20~80重量%であり、Sの量が前記組成物の80~20重量%である、好ましくは、Hの量が前記組成物の40~60重量%であり、Sの量が前記組成物の60~40重量%である、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物中のフルオロポリマーHとSの合計比率が少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%である、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
フルオロポリマーブレンド、SとHの溶融粘度は、230℃の温度及び100s
-1のせん断速度の場合、1000~4400Pa・s、好ましくは1000~3000Pa・s、より好ましくは800~2200Pa・sである、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
ポリマーブレンドがリサイクル可能である、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
形態がHのマトリックス中のSの小滴である、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
形態が共連続であり、S及びHの両方がネットワークを介して浸透している、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
形態がSのマトリックス中のHの小滴である、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記コポリマーは乳化重合によって合成され、ラテックスとしてブレンドされ、次に通常なラテックス分離プロセスによってブレンドとして分離される、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記コポリマーは懸濁重合によって合成され、懸濁液としてブレンドされ、次に通常な分離プロセスによってブレンドとして分離される、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物から作られる物品。
【請求項20】
前記物品が射出成形によって製造され、離型時に5%未満の収縮を示す、請求項19に記載の物品。
【請求項21】
前記物品中のフルオロポリマー(S+H)の総比率が少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%である、請求項19又は20に記載の物品。
【請求項22】
前記物品は、ウェアラブル物品及び家庭用電化製品の物品から選択され、好ましくは、センサの支持体、電子デバイスの支持体、ケーシング、ベルト、手袋、パッド、ストリップ、及びバンドから選択される、請求項19~21のいずれか1項に記載の物品。
【請求項23】
ケチャップ及びマスタードなどの汚れに対して高い汚れ抵抗性を有する、請求項19~22のいずれか1項に記載の物品。
【請求項24】
前記組成物を成形する工程を含む、請求項19~23のいずれか1項に記載の物品を製造するプロセス。
【請求項25】
以下のステップを含む、請求項19~23のいずれか1項に記載の物品を製造するプロセス:
e)固体形態、好ましくは粉末、顆粒、ペレット又は小片の形態で前記組成物を提供すること;
f)温度を上げることによって組成物を柔らかくすること;
g)軟化した組成物を成形すること;
h)冷却すること。
【請求項26】
前記成形が、圧縮成形、射出成形、ホットプレス又は押出によって行われる、請求項24又は25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記成形が射出成形によって行われる、請求項24又は25に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリマー、好ましくはフッ化ビニリデン(VDF)由来の単位及びヘキサフルオロプロペン(HFP)由来の単位を含むコポリマーに基づく熱可塑性エラストマー組成物に関する。この組成物は、熱可塑性成形プロセスを使用して、ウェアラブル又は家庭用電化製品の物品又は物品の部品を製造することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
ポリマー混合を介して二相材料を達成することは、高分子科学分野においてよく知られている。さらに、熱可塑性相(熱可塑性加硫物又はTPV)内の化学的に架橋された個別の軟質相が、その弾性特性が架橋相に由来する熱可塑性エラストマーに所望の特性を与えることができることは広く知られている。このような材料は、古典的な完全架橋ゴムに代表される分野で有用であるが、熱可塑性プラスチックとして処理でき、リサイクル可能であるという点で有利である。リサイクル可能とは、物品に形成されたポリマー又はプロセスからのスクラップが、大幅な劣化又は特性の変化なしに(20%未満の変化、好ましくは10%未満の変化)別の物品に再形成され得ることを意味する。TPVは一般に、押出中に1つの相が架橋される複雑な動的加硫プロセスによって作成される。特性を犠牲にすることなく製造を容易にするために、これらの材料を単純化する必要がある。
【0003】
文献US6624251は、熱可塑性加硫物(TPV)と呼ばれる、熱可塑性プラスチック内で離散した架橋相を最終的に達成するために、架橋可能なフルオロ樹脂と混合されたフッ素化熱可塑性プラスチックの使用を開示している。文献WO2018046355は、エラストマー特性を達成するために、TPVとして記載される材料を達成するための離散した軟相として架橋される可塑化された架橋可能なフルオロ樹脂と混合される特定のフルオロポリマーの使用を開示している。文献US2016200907は、ラテックスをブレンドして、衝撃改質熱可塑性プラスチック用のフルオロ熱可塑性マトリックス内に小さな(直径1ミクロン未満)離散したフルオロポリマー粒子を実現できることを示している。これらのブレンドは、他の形態を示さず、エラストマー特性も示さない。
【0004】
家庭用電化製品及びウェアラブル産業では、多くのデバイスが人体と接触することを目的としている。このようなデバイスには、高い柔軟性と弾力性、柔らかな手触り、耐汚染性と耐薬品性、さまざまな形状への加工性など、多くの望ましい要件がある。これらの用途では、2つの主要な種類のポリマーが従来から使用されている。第一に、架橋フッ素エラストマーは、一般に優れた機械的特性と耐薬品性を持ち、一部は(ただし限定的である)耐汚染性があるが、それらは、最初に架橋を提供するための成分を用いて製品を配合する必要があり、次に熱いモールドでエラストマーを架橋し、物品を排出又は除去する必要があるため、処理が難しい。第二に、ポリウレタンなどの熱可塑性エラストマーは、一般に加工が容易で、機械的特性は良好であるが、耐汚染性や耐薬品性はしばしば低い。さらに、望ましい「柔らかな手触り」特性には、通常、これらのポリマーの上にシリコーンコーティングの追加を必要とする。
【0005】
例として、文献US2016/0037878は、架橋されたフルオロエラストマーで作られたリストバンドを開示している。高コストと低歩留まりは、このような材料の2つの主な欠点である。
【0006】
文献US7,718,727は、フルオロ樹脂と架橋シリコーンのブレンドを開示している。このようなブレンドは、優れた機械的特性と改善された触感を持っているが、シリコーン相の反応性のために、最終物品に造形するのは困難である。この文献では、リアクティブ押出が使用されている。これは、適切に制御するのが困難でコストのかかるプロセスである。
【0007】
文献US2011/0009572は、熱可塑性マトリックスにブレンドされた非架橋シリコーンコポリマーに関する。このような組成物の加工性は良好であるが、耐汚染性と耐薬品性が限られていると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、高い柔軟性及び弾性、耐汚染性及び耐薬品性を有し、様々な形状に加工することが容易である、ウェアラブル及び家庭用電化製品産業に適したポリマー組成物を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示されているのは、架橋されていない十分に高い粘度(又は分子量)のソフトフルオロポリマー「S」と、架橋されていない十分に高い粘度(又は分子量)のハードフルオロポリマー「H」とのブレンドを含む組成物である。硬質熱可塑性プラスチックから軟質エラストマー(TPE)まで、機械的にさまざまな加工が容易な材料を幅広く実現できる。最終組成物の形態は、より硬質なマトリックス内の離散した軟質粒子、共連続の軟質及び硬質相、又は軟質マトリックス内の離散した硬質粒子であり得る。これは、硬質及び軟質フルオロポリマーの体積%又は重量%、溶融粘度比、溶融粘度を調整し、結晶化度を制御することによって実現される。
【0010】
重要なことに、この方法を通じて、上記の各形態タイプにおいて真のエラストマー挙動を達成することができる。
【0011】
形態及び機械的特性を制御することは、弾性挙動を示す、容易に処理可能で耐汚染性の高い材料を達成するために重要である。より具体的には加工に関連して、これらのブレンドは簡単に射出成形して、通常の射出条件下で5%未満の収縮で部品を作ることができる。ここで定義される収縮は、少なくとも0.1mmの感度のキャリパーで測定されたASTM標準タイプI引張棒の165mmの金型長さからの長さの変化として定義される。
【0012】
共連続及び離散の両方の硬質粒子形態を達成することは、このアプローチに特有である。TPVは、定義上、硬質マトリックス内の離散した軟質架橋粒子に限定される。
【0013】
本発明は、少なくとも1つの軟質相フルオロポリマー「S」及び少なくとも1つの硬質相フルオロポリマー「H」を含むフルオロポリマーのブレンドを含む組成物に関する。ここで、組成物は、20~80重量%のS及び80~20重量%のHを含む。ポリマーSとポリマーHはどちらも架橋剤なしで製造されている。
【0014】
一実施形態では、ポリマーHフルオロポリマーは、少なくとも70重量%のフッ化ビニリデンモノマー単位を有するホモポリマー又はコポリマーである。Sは、少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%のHFPを有するフルオロポリマーコポリマーである。
【0015】
組成物は、ポリマーSとポリマーHを、HとSの合計重量に対してSの20~80重量%とポリマーHの80~20重量%、好ましくは、Sの25~75重量%とポリマーHの75~25重量%、より好ましくは、Sの60~40重量%とポリマーHの40~60重量%の比率で組み合わせることによって調製される。一実施形態では、ブレンドは、SのラテックスをHのラテックスと所望の比率で組み合わせ又は混合することによって調製される。フルオロポリマーS及びHはまた、一緒に組み合わされた場合、粉末の形態であり得る。
【0016】
本発明の態様
態様1:フルオロポリマーS及びフルオロポリマーHを含むフルオロポリマーブレンドを含むフルオロポリマー組成物であって、
Hは、0~30重量%、好ましくは15~30重量%、より好ましくは20~30重量%のモノマーJを含むフルオロポリマーであって、Jは、HFP、フッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、
Sは、好ましくは少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも43重量%のモノマーTを含み、Tは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、
Hの量は、前記組成物の20~80重量%であり、Sの量は、前記組成物の80~20重量%である、
フルオロポリマー組成物。
【0017】
態様2:フルオロポリマーS及びフルオロポリマーHを含むフルオロポリマーブレンドを含むフルオロポリマー組成物であって、
Hは、0~30重量%、好ましくは15~30重量%、より好ましくは20~30重量%のモノマーJを含むフルオロポリマーであって、Jは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、
Sは、好ましくは少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%、最も好ましくは少なくとも43重量%のモノマーTを含み、Tは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、
Hの量は、前記組成物の20~80重量%であり、Sの量は、前記組成物の80~20重量%であり、
ただし、S中の前記モノマーTの重量%は、H中の前記モノマーJの重量%よりも常に少なくとも5%大きい、
フルオロポリマー組成物。
【0018】
態様3:ASTM規格D412による応力/緩和プロトコルに従って、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の弾性回復を有するエラストマーである、態様1又は2のフルオロポリマー組成物。
【0019】
態様4:Hの溶融粘度が、230℃、100s-1で測定した場合に1~30kPである、態様1~3のいずれか1項に記載のフルオロポリマー組成物。
【0020】
態様5:Sの溶融粘度が、230℃、100s-1で測定した場合に10~55kPである、態様1~4のいずれか1項に記載のフルオロポリマー組成物。
【0021】
態様6:Hは、フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、パーフルオロメチルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)、長鎖過フッ素化ビニルエーテルを含むフッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、フッ素化ジオキソール、C4以上の部分的若しくは過フッ素化アルファオレフィン、C3以上の部分的若しくは過フッ素化環状アルケン、フッ素化若しくは部分的にフッ素化されたアクリレート及びメタクリレート、並びにそれらの組み合わせ並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む、態様1~5のいずれか1項に記載のフルオロポリマー組成物。
【0022】
態様7:Sは、フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、パーフルオロメチルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)、長鎖過フッ素化ビニルエーテルを含むフッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、フッ素化ジオキソール、C4以上の部分的若しくは過フッ素化アルファオレフィン、C3以上の部分的若しくは過フッ素化環状アルケン、フッ素化若しくは部分的にフッ素化されたアクリレート及びメタクリレート、並びにそれらの組み合わせ並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む、態様1~6のいずれか1項に記載のフルオロポリマー組成物。
【0023】
態様8:フルオロポリマーHがVDFとHFPとのコポリマーであり、VDFが少なくともHの70重量%を占める、態様1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【0024】
態様9:フルオロポリマーSがVDFとHFPとのコポリマーであり、HFPが少なくともSの30重量%、好ましくはSの少なくとも40重量%、より好ましくは少なくともSの45重量%を含む、態様1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【0025】
態様10:Hの量が前記組成物の20~80重量%であり、Sの量が前記組成物の80~20重量%である、好ましくは、Hの量が前記組成物の40~60重量%であり、Sの量が前記組成物の60~40重量%である、態様1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【0026】
態様11:前記組成物中のフルオロポリマーHとSの合計比率が少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%である、態様1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【0027】
態様12:フルオロポリマーブレンド、SとHの溶融粘度は、230℃の温度及び100s-1のせん断速度の場合、1000~4400Pa・s、好ましくは1000~3000Pa・s、より好ましくは800~2200Pa・sである、態様1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【0028】
態様13:ポリマーブレンドがリサイクル可能である、態様1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【0029】
態様14:形態がHのマトリックス中のSの小滴である、態様1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【0030】
態様15:形態が共連続であり、S及びHの両方がネットワークを介して浸透している、態様1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【0031】
態様16:形態がSのマトリックス中のHの小滴である、態様1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【0032】
態様17:前記コポリマーは乳化重合によって合成され、ラテックスとしてブレンドされ、次に通常なラテックス分離プロセスによってブレンドとして分離される、態様1~16のいずれか1項に記載の組成物。
【0033】
態様18:前記コポリマーは懸濁重合によって合成され、懸濁液としてブレンドされ、次に通常な分離プロセスによってブレンドとして分離される、態様1~16のいずれか1項に記載の組成物。
【0034】
態様19:態様1~18のいずれか1項に記載の組成物から作られる物品。
【0035】
態様20:前記物品が射出成形によって製造され、離型時に5%未満の収縮を示す、態様19に記載の物品。
【0036】
態様21:前記物品中のフルオロポリマー(S+H)の総比率が少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%である、態様19又は20に記載の物品。
【0037】
態様22:前記物品は、ウェアラブル物品及び家庭用電化製品の物品から選択され、好ましくは、センサの支持体、電子デバイスの支持体、ケーシング、ベルト、手袋、パッド、ストリップ、及びバンドから選択される、態様19~21のいずれか1項に記載の物品。
【0038】
態様23:ケチャップ及びマスタードなどの汚れに対して高い汚れ抵抗性を有する、態様19~22のいずれか1項に記載の物品。
【0039】
態様24:前記組成物を成形する工程を含む、態様19~23のいずれか1項に記載の物品を製造するプロセス。
【0040】
態様25:以下のステップを含む、態様19~23のいずれか1項に記載の物品を製造するプロセス:
a)固体形態、好ましくは粉末、顆粒、ペレット又は小片の形態で前記組成物を提供すること;
b)温度を上げることによって組成物を柔らかくすること;
c)軟化した組成物を成形すること;
d)冷却すること。
【0041】
態様26:前記成形が、圧縮成形、射出成形、ホットプレス又は押出によって行われる、態様24又は25に記載のプロセス。
【0042】
態様27:前記成形が射出成形によって行われる、態様24又は25に記載のプロセス。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【発明を実施するための形態】
【0044】
本出願に記載されているすべての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。組成物中のすべてのパーセンテージは、特に明記しない限り、重量%であり、すべての分子量は、特に明記しない限り、GPC(標準としてPMMA(ポリメチルメタクリレート)を使用するゲル浸透クロマトグラフィー)によって決定される重量平均分子量として与えられる。
【0045】
「ポリマー」という用語は、特に明記しない限り、ホモポリマー、コポリマー、及びターポリマー(3つ以上のモノマー単位)のいずれもを意味するために使用される。任意のコポリマー又はターポリマーは、ランダム、ブロック、又はグラジエントであり得、ポリマーは、線状、分岐状、星型、くし型、又は他の任意の構造のものであり得る。
【0046】
本発明は、フルオロポリマーS及びフルオロポリマーHを含むフルオロポリマーブレンドを含むフルオロポリマー組成物を提供し、ここで、
Hは、0~30重量%、好ましくは15~30重量%、より好ましくは20~30重量%のモノマーJを含むフルオロポリマーであって、Jは、HFP、フッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、
Sは、好ましくは少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも43重量%のモノマーTを含み、Tは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、
Hの量は、前記組成物の20~80重量%であり、Sの量は、前記組成物の20~80重量%である。
【0047】
本発明の組成物において、S中のモノマーTの重量%は、H中のモノマーJの重量%よりも常に少なくとも5%大きい。
【0048】
一実施形態では、本発明は、フルオロポリマーS及びフルオロポリマーHを含むフルオロポリマーブレンドを含む組成物を提供し、ここで、
a.Hは、VDFと30重量%未満のHFPを含むフルオロポリマーであり、
b.Sは、35重量%を超えるHFPを含むフルオロポリマーであり、
c.Hの量は、組成物の20~80重量%であり、
d.Sの量は、組成物の20~80重量%である。
【0049】
本発明の組成物は、ASTM D412に準拠するエラストマーであり得る。
【0050】
本発明はまた、本発明の組成物から作られた物品を提供する。
【0051】
いくつかの実施形態において、本発明は、射出成形に特に有用である。
【0052】
フルオロポリマーH
硬質相ポリマーHは、0~30重量%、好ましくは15~30重量%、より好ましくは20~30重量%のモノマーJを含むフルオロポリマーである。Jは、HFP、パーフルオロメチルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)を含むフッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、長鎖パーフルオロビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。ポリマーHは、ホモポリマー又は50重量%を超えるフルオロモノマーを含むコポリマーであり得る。一実施形態では、Hは、好ましくは、ホモポリマー、又は70~100重量%のフルオロモノマーと0~30重量%のHFPを有するコポリマーであり、230℃で100-1で測定した場合、1~30kP、好ましくは4~20kPの溶融粘度を有する。
【0053】
本発明の硬質相フルオロポリマーHは、少なくとも50重量%の1つ又は複数のフルオロモノマーを含むポリマーを含むが、これに限定されない。本発明に従って使用される「フルオロモノマー」という用語は、フッ素化され、フリーラジカル重合反応を受けることができるオレフィン的に不飽和のモノマーを意味する。本発明による使用に適した例示的なフルオロモノマーには、以下が含まれるが、これらに限定されない:フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、フッ素化ジオキソール、C4以上の部分的若しくは過フッ素化アルファオレフィン、C3以上の部分的若しくは過フッ素化環状アルケン、及びフッ素化若しくは部分的にフッ素化されたアクリレート及びメタクリレート、ならびにそれらの組み合わせ。本発明の実施に使用されるフルオロポリマーには、上記のフルオロモノマーの重合生成物、例えば、フッ化ビニリデン(VDF)をそれ自体で重合することによって作製されたホモポリマー、又はフッ化ビニリデン(VDF)をヘキサフルオロプロペン(HFP)と重合することによって作製されたコポリマーが含まれる。
【0054】
テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン及びフッ化ビニリデンモノマー単位を有するものなどのターポリマーを含む、フルオロターポリマーも想定される。最も好ましくは、フルオロポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーのホモポリマー又はコポリマーである。本発明は、PVDFに関して例示されるが、当業者は、PVDFという用語が例示される場合、他のフルオロポリマーを表すことができることを認識するであろう。
【0055】
ポリマーHは、好ましくは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーである。PVDFは、ホモポリマー、コポリマー、又はポリマーアロイであり得る。本発明のポリフッ化ビニリデンポリマーHは、フッ化ビニリデン(VDF)を重合することによって作製されたホモポリマー、及びフッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマー及び高級ポリマーを含み、フッ化ビニリデン単位は、ポリマー中のすべてのモノマー単位の総重量の51重量%より多く、好ましくは70%より多くを占め、より好ましくは、モノマー単位の総重量の75重量%より多くを占める。フッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマー及び高級ポリマー(本明細書では「コポリマー」と総称する)は、フッ化ビニリデンを、以下からなる群からの1つ又は複数のモノマーと反応させることによって作製することができる:フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、3,3,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン、及びヘキサフルオロプロペンなどの部分的若しくは完全にフッ素化されたアルファ-オレフィンの1つ若しくは複数、部分的にフッ素化されたオレフィンヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロ-n-プロピルビニルエーテル、及びパーフルオロ-2-プロポキシプロピルビニルエーテルなどのパーフルオロビニルエーテル、パーフルオロ(1,3-ジオキソール)及びパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)などのフッ素化ジオキソール、アリル、部分的にフッ素化されたアリル、又は2-ヒドロキシエチルアリルエーテル若しくは3-アリルオキシプロパンジオールなどのフッ素化アリルモノマー、及びエテン又はプロペン、ならびにフッ素化若しくは部分的にフッ素化されたアクリレート又はメタクリレート。好ましいコポリマー又はターポリマーは、フッ化ビニル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン(TFE)、及びヘキサフルオロプロペン(HFP)で形成される。
【0056】
ポリマーHの好ましいコポリマーには、約70~約99重量%のVDF、及び対応して約1~約30重量%のHFPを含むもの、好ましくは15~30重量%のHFPのレベルを含むもの、VDF/HFP/TFEのターポリマー;及びVDFとTFEのコポリマーが含まれる。
【0057】
ポリマーHの場合、すべてのモノマー単位がフルオロモノマーであることが好ましいが、フルオロモノマーと非フルオロモノマーとのコポリマーも本発明によって想定される。非フルオロモノマーを含むコポリマーの場合、モノマー単位の少なくとも60重量%はフルオロモノマーであり、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%がフルオロモノマーである。有用なコモノマーには、エチレン、プロピレン、スチレン、アクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、ビニルエーテル、非フッ素含有ハロゲン化エチレン、ビニルピリジン、及びN-ビニル線状と環状アミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
フルオロポリマーS
本発明の軟質フルオロポリマーSは、好ましくは、少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも43重量%のモノマーTを含む。Tは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、パーフルオロメチルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)、長鎖パーフルオロビニルエーテルを含むフッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、この群から選択されるモノマーTは、Sの35~70重量%、好ましくは40~70重量%、より好ましくは43~70重量%である。残りの重量%は、好ましくは他のフルオロモノマーで構成されている。本発明に従って使用される「フルオロモノマー」という用語は、フッ素化され、フリーラジカル重合反応を受けることができるオレフィン的に不飽和のモノマーを意味する。本発明による使用に適した例示的なフルオロモノマーには、以下が含まれるが、これらに限定されない:フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,1-トリフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、フッ素化ジオキソール、C4以上の部分的若しくは過フッ素化アルファオレフィン、C3以上の部分的若しくは過フッ素化環状アルケン、パーフルオロメチルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)、長鎖パーフルオロビニルエーテルを含むフッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、及びフッ素化若しくは部分的にフッ素化されたアクリレート及びメタクリレート、並びにそれらの組み合わせ。本発明の実施において使用されるフルオロポリマーSは、上記のフルオロモノマーの重合生成物、例えば、フッ化ビニリデン(VDF)をヘキサフルオロプロペン(HFP)と重合することによって作製されたコポリマーを含む。
【0059】
テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン及びフッ化ビニリデンモノマー単位を有するものなどのターポリマーを含む、フルオロターポリマーも想定される。
【0060】
ポリマーSは、好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)ヘキサフルオロプロペン(HFP)コポリマーである。Sは、コポリマー又はポリマーアロイであり得る。本発明のポリフッ化ビニリデンポリマーSには、ヘキサフルオロプロペン(HFP)のコポリマー、ターポリマー、及び高級ポリマーが含まれ、ヘキサフルオロプロペン(HFP)単位は、ポリマー中のすべてのモノマー単位の総重量の35重量%より多く、好ましくは40重量%、より好ましくは43重量%を占める。HFPモノマー単位は、ポリマーS中のすべてのモノマー単位の総重量の70重量%をも占めることができる。フッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマー及び高級ポリマー(本明細書では「コポリマー」と総称する)は、フッ化ビニリデンを、以下からなる群からの1つ又は複数のモノマーと反応させることによって作製することができる:フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、3,3,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン、及びヘキサフルオロプロペンなどの部分的若しくは完全にフッ素化されたアルファ-オレフィンの1つ若しくは複数、部分的にフッ素化されたオレフィンヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロ-n-プロピルビニルエーテル、及びパーフルオロ-2-プロポキシプロピルビニルエーテルなどのパーフルオロビニルエーテル、パーフルオロ(1,3-ジオキソール)及びパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)などのフッ素化ジオキソール、アリル、部分的にフッ素化されたアリル、又は2-ヒドロキシエチルアリルエーテル若しくは3-アリルオキシプロパンジオールなどのフッ素化アリルモノマー、及びエテン又はプロペン。好ましいコポリマー又はターポリマーは、フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン(TFE)、及びヘキサフルオロプロペン(HFP)で形成される。
【0061】
ポリマーSの好ましいコポリマーには、約35~約70重量%のHFP、及び対応して約65~約30重量%のVDFを含むもの、好ましくは40~55重量%のHFPのレベルを含むもの、VDF/HFP/TFEのターポリマー;及びVDFとTFEのコポリマーが含まれる。
【0062】
本発明の一実施形態では、ポリマーSに関して、すべてのモノマー単位がフルオロモノマーであることが好ましいが、フルオロモノマーと非フルオロモノマーとのコポリマーも本発明によって想定される。非フルオロモノマーを含むコポリマーの場合、モノマー単位の少なくとも60重量%はフルオロモノマーであり、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%がフルオロモノマーである。有用なコモノマーには、エチレン、プロピレン、スチレン、アクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、ビニルエーテル、非フッ素含有ハロゲン化エチレン、ビニルピリジン、及びN-ビニル線状と環状アミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
ポリマーSは、10~55kP、好ましくは15~55kP、より好ましくは20~50kP、さらにより好ましくは25~50kP、最も好ましくは30~50kPの溶融粘度を有する。
【0064】
好ましい実施形態では、軟質相ポリマーSは、30重量%を超える、好ましくは35重量%を超えるHFP、そして最大70重量%のHFP、より好ましくは40%を超えて70重量%のHFPを含む。
【0065】
一実施形態では、Sは、30~65重量%のVDF(フッ化ビニリデン)及び35~70重量%のHFPのコポリマーであり、粘度が10~55kP、好ましくは15~55kP、より好ましくは20~50kP、さらにより好ましくは25~50kP、最も好ましくは30~50kPである。
【0066】
フルオロポリマーの製法は当業者によく知られている。フルオロポリマーは、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合、又は溶液支援懸濁又は乳化重合を介して製造することができる。
【0067】
ポリマーH及びポリマーSのラテックスを生成するための反応は、当業者に知られており、例えば、米国特許第4360652号、第6869997号、第8080621号、第8158734号、第8697822号、第8765890号及び他の多くの特許に開示されている。そのような特許の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
その他の添加剤
本発明のフルオロポリマー組成物はまた、限定的ではないが、以下を含む典型的な添加剤を含み得る:染料;顔料;着色剤;耐衝撃性改良剤;抗酸化剤;難燃剤;紫外線安定剤;フローエイド;金属、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの導電性添加剤;消泡剤;ワックス;溶剤;可塑剤などのレオロジー調整剤;界面活性剤;フィラー(ナノフィラーを含む)、及び帯電防止剤。フルオロポリマー組成物にはまた、ホワイトニングを提供する他の添加剤として、限定的ではないが、以下を含むもの添加することができる:酸化亜鉛などの金属酸化物フィラー;リン酸塩又は亜リン酸塩安定剤;及びフェノール安定剤。少なくとも1つのフルオロポリマーH又はS又は他のポリマーを合成するために使用される任意の残留添加剤が存在し得る。
【0069】
可塑剤は、「Encyclоpedia оf Polymer Science and Engineering」(Wiley及びSons、1989)第568~569頁及び第588~593頁で定義されている。それらは、単量体又は高分子であり得る。ジブチルセバケート、ジオクチルフタレート、N-n-ブチルスルホンアミド、ポリマーポリエステル及びそれらの組み合わせは、適切な可塑剤の例である。適切なポリマーポリエステルは、例えば、アジピン酸、アゼライン酸又はセバシン酸、ならびにジオール及びそれらの組み合わせから得られる。それらの分子量は、好ましくは少なくとも1500g/モル、より好ましくは少なくとも1800g/モルである。
【0070】
添加剤が存在する場合、それらは、好ましくは、組成物中に0.1~10重量%、より好ましくは0.2~5重量%、最も好ましくは0.5~3重量%の量で存在する。
【0071】
特性
ポリマーが乳化重合によって合成される場合、本発明で使用されるラテックス中の固形分レベルは、好ましくは20重量%を超え、好ましくは26重量%を超え、より好ましくは28重量%を超え、より好ましくは30重量%を超え、さらにより好ましくは35重量%を超える。40重量%を超え、さらに50重量%を超える固形分の重量%も想定される。好ましい固形分範囲は、26~40重量%の固形分であり、より好ましくは、28~35重量%である。
【0072】
プロトン(1H)及びフッ素(19F)NMRなどの多核NMR技術を使用し、適切な重水素化溶媒中で、フルオロポリマーH又はSの溶液を分析することが可能である。NMRスペクトルは、多核プローブを備えたFT-NMR分光計で記録される。次に、生成されたスペクトルの異なる単位から生じる特定の信号が識別される。例えば、TrFE由来の単位が存在する場合、プロトンNMRは、CFH基に特徴的な特定の信号(約5ppm)になる。同じことがVDF由来単位のCH2グループにも当てはまる(3ppmを中心とする未解消のピーク)。2つの信号の相対的な統合により、2つのモノマーの相対的な存在量、すなわちVDF/TrFEのモル比(TrFE由来の単位が存在する場合)を知り得る。
【0073】
同様に、HFP由来のユニットに存在するCF3基は、フッ素NMRにおいて特徴的で十分に分離された信号をもたらす。プロトンNMR及び/又はフッ素NMRで得られたさまざまな信号の相対積分の組み合わせにより、連立方程式が得られる。その解は、フルオロポリマー中の異なる単位のモル比率を提供する(そこから重量比率を計算することができる)。
【0074】
文献US6,586,547は、NMRを使用して、P(VDF-HFP)コポリマー中のHFP由来のユニットの含有量を決定する方法の例を提供している。
【0075】
最後に、例えば、塩素又は臭素などのヘテロ原子についての元素分析と、NMR分析とを組み合わせることが可能である。
【0076】
本発明のフルオロポリマーS又はH(又はそれぞれ)は、好ましくは、統計的(ランダム)な線状ポリマーである。
【0077】
少なくとも1つのフルオロポリマーS(すなわち、単一のフルオロポリマーS又はフルオロポリマーSの混合物のいずれか)は、好ましくはエラストマーである。
【0078】
「エラストマー」とは、本明細書では、ASTM規格D412による応力/緩和プロトコルに従って、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の弾性回復を有する材料を意味する。このプロトコルは、ASTM D638で定義されている引張棒に適用される。このサンプルは、25℃で100%の引張変形を受ける。100%の変形が5分間維持された後、サンプルが解放される。5分間の緩和後、残留変形が測定される。弾性回復は、初期サンプル長から残留変形を差し引いたものとして定義される。引張プロトコルは、100又は200ポンドのロードセルを備えたインストロンモデル4201、4202などで実行される。
【0079】
少なくとも1つのフルオロポリマーS(すなわち、単一のフルオロポリマーS又はフルオロポリマーSの混合物のいずれか)は、好ましくは、結晶化度が低いか、又は全くない。これは、示差走査熱量計(DSC)スキャンで検出された20J/g未満、好ましくは15J/g未満、さらにより好ましくは10J/g未満の最初の吸熱から計算された融解熱を特徴とする。DSCスキャンは、DSC装置を使用してASTM D 451-97に従って実行される。機器には、ドライボックスを介した窒素パージを備えたドライボックスが装備されている。9~10mgの標本が使用され、アルミニウム鍋に圧着される。通常、DSCの実行は-50℃で開始され、その後、210℃まで10℃/分の傾斜が続く。
【0080】
本出願の文脈において、他に示されない限り、すべての粘度は、230℃の温度及び100s-1の剪断速度で測定される溶融粘度である。より具体的には、溶融粘度は、Dynisco LCR 7000毛細管レオメーターによって測定することができる。測定は230℃で10~3000s-1の範囲のせん断速度で実行され、粘度は100s-1で記録される。
【0081】
組成物中に2つ以上のフルオロポリマーSが存在する場合、本明細書に記載の粘度値は、組成物にあるのと同じ相対比率の対応するフルオロポリマーSの混合物の粘度値である。
【0082】
組成物中に2つ以上のフルオロポリマーHが存在する場合、本明細書に記載の粘度値は、組成物にあるのと同じ相対比率の対応するフルオロポリマーHの混合物の粘度値である。
【0083】
フルオロポリマーの分子量は、それが比較的高い場合、正確に決定するのが難しい場合がある。したがって、本出願では、フルオロポリマーH及びフルオロポリマーSの全体的な溶融粘度をそれぞれ参照することにより、それらの分子量を間接的に特徴付けることがより便利でより正確である。
【0084】
本発明のフルオロポリマーHの重量平均分子量は、一般に、約2.0~4.0の分散度で50,000~600,000g/モルの範囲である。
【0085】
本発明のフルオロポリマーSの重量平均分子量は、一般に、約2.0~4.0の分散度で50,000~1,000,000g/モルの範囲である。
【0086】
使用
組成物から作製された物品又は部品は、ウェアラブルバンド、ソフトシール(仮想現実構造の場合のように)、家庭用電化製品分野のリモコン、ハンドル、可撓性電子ハウジング、ケーシング、パッド、ベルト、生体認証デバイスのボタンやその他の特徴として使用し得る。具体的には、バンドに形成された物品又は部品は、耐候性、耐汚染性、及び柔らかな手触りが重要であるスマートウォッチ及びその他の生体認証バンドアプリケーションに非常に適している。具体的には、この組成物から作製されたそのような部品は、シリコーンなどの追加のコーティングを必要とせずに、高い耐汚染性及び柔らかな感触を有するであろう。
【0087】
組成物から作製された物品又は部品はまた、シール、ガスケット又はホースなどの熱可塑性エラストマー又は架橋エラストマーに典型的な用途での使用を見出すであろう。
【0088】
このような物品又は物品は、射出成形によって製造することができ、ほとんど収縮しない(5%未満)。
【0089】
本発明の組成物は、最初に、粉末、顆粒、ペレット又は小片などの固体形態で製造され得る。次に、以下でさらに説明するように、それを加工して、中実の物品又は物品の部品に成形することができる。
【0090】
形成された物品の密度は、好ましくは1.6~2.0、より好ましくは1.7~1.9である。したがって、組成物の密度は、好ましくは、典型的な架橋フッ素エラストマーの密度よりも低く、これにより、製造プロセスを節約することが可能になる。他方、組成物の密度は、組成物が以下に記載されるように物品又は物品の部品を製造するために使用される場合、消費者による質感の知覚を達成するのに十分に高い。
【0091】
本発明の組成物は、好ましくは、以下のパラメータのうちの1つ又は複数、好ましくはすべてによって特徴付けられる:
a)300%以上、好ましくは350%以上、より好ましくは400%以上、最も好ましくは450%以上の破断時の変形(ISO527に従って25℃及び25mm/分の速度で測定);
b)ISO868に従って測定された、90ショアA未満、好ましくは85ショアA未満の硬度。
c)ASTM標準D412で定義された応力緩和プロトコルに従って、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%の弾性回復(したがって、本発明の組成物は、好ましくは、上で定義されたエラストマー組成物である)。
【0092】
組成物で作られた物品又は部品
コポリマーS及びHは、ラテックスとしてブレンドされ得、次いで、粉末、顆粒、ペレット、小片、又はスラブの形態に分離され得る。別の方法として、HとSをラテックスから個別に分離し、ブレンドすることもできる。
【0093】
コポリマーS及びHは、懸濁液からブレンドされ得、次いで、粉末、顆粒、ペレット、小片、又はスラブの形態に分離され得る。別の方法として、HとSを懸濁液から個別に分離し、ブレンドすることもできる。
【0094】
例えば、本発明の組成物の粉末、顆粒、ペレット又は小片又はスラブから出発して、様々な物品又は部品を製造することができる。
【0095】
あるいは、物品は、(例えば、S及びHを1つ又は複数の追加成分とブレンドすることにより)本発明の組成物を作製し、物品又は物品の部品の形態にこの組成物を直接製造することによって製造することができる。
【0096】
いくつかの実施形態において、本発明に従って作製された物品は、本発明の組成物からなる。他の実施形態では、前記物品は、本発明の組成物からなる1つ又は複数の部分、及び1つ又は複数の追加の部分を含む。例えば、本発明の組成物は、多層物品中の1つ又は複数の層として存在することができる。
【0097】
本発明の物品又は物品の部品は、本発明の組成物を所望の形状に成形する少なくとも1つのステップを含むプロセスによって製造することができる。
【0098】
好ましくは、前記成形は、組成物を比較的高温にさらすことによって組成物を軟化させ、好ましくはそれを混合し、軟化した組成物に所望の形状を供給し、冷却することによって実施される。
【0099】
組成物が軟化する温度は、好ましくは100~260℃、より好ましくは150~260℃、さらにより好ましくは200~260℃である。
【0100】
最も好ましくは、成形及び冷却の工程中に、組成物の架橋又は硬化は起こらない。
【0101】
好ましくは、組成物の架橋又は硬化は、製造プロセス全体の間に起こらず、したがって、組成物は、物品又は物品の部分において架橋又は硬化されない。
【0102】
成形工程は、押出工程、又はホットプレス工程、又は射出成形工程又は圧縮成形工程などの成形工程であり得る。
【0103】
例えば、圧縮成形工程は、上記の温度で数分間高圧を加えて、物品又は物品の部品に所望の形状を提供し、次いで、例えば、離型を可能にするために材料を3~5分間冷却することからなることができる。
【0104】
射出成形は、30~70℃に維持された金型内で低速で同じ温度範囲で実施することができる。
【0105】
本発明の組成物は、任意選択で、既存の部品上に(例えば、オーバーモールドによって)成形することができる。
【0106】
任意選択で、物品の追加の部分は、本発明の成形された組成物上で成形され得る(例えば、オーバーモールドによって)。この追加の部分はまた、任意選択で、本発明の組成物から作製され得る。
【0107】
あるいは、物品の2つ以上の部分は、接着などの任意の既知の技術によって別々に組み立てられてもよい。
【0108】
上記の熱可塑性処理技術の代替として、本発明の組成物はまた、インクを形成するように液体ビヒクルに懸濁及び/又は溶解することができる。次に、液体ビヒクルを蒸発させる前に、インクが表面に堆積される。
【0109】
液体ビヒクルは、好ましくは溶媒である。より好ましくは、これは、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトンなどのケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロペンタノン、テトラヒドロフランなどのフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル;炭酸ジメチルなどの炭酸塩、リン酸トリエチルなどのリン酸塩から選択される。これらの化合物の混合物を使用することもできる。
【0110】
液体ビヒクル中のポリマーブレンドの総重量濃度は、特に、0.1~30%、好ましくは0.5~20%であり得る。
【0111】
インクは、特に、ガラス表面又はシリコン表面又はポリマー表面又は金属表面に堆積させることができる。前記堆積は、特に、スピンコーティング、スプレーコーティング、バーコーティング、ディップコーティング、ロールツーロール印刷、セリグラフィー印刷、リソグラフィー印刷、又はインクジェット印刷によって実行され得る。
【0112】
好ましくは、本発明の組成物で作られた物品又は物品の部品の上に、コーティングを行わず、特に、シリコーンベースのコーティングを提供しない。
【0113】
好ましくは、本発明の組成物で作られた物品又は物品の部品は、それ自体がコーティングではない。
【0114】
したがって、本発明の組成物で作られた物品又は物品の部品は、好ましくは、少なくとも100μm、好ましくは少なくとも200μm、又は少なくとも500μm、又は少なくとも1mm、又は少なくとも2mmの最小寸法を有する。
【0115】
前記最小寸法は、特に、長さ、幅、深さ、厚さ、又は直径であり得る。
【0116】
例えば、帯状又は板状の物品の場合、最小寸法は平均厚さである;実質的に細長い円筒形の物品の場合、最小寸法は円筒の平均直径である;などなど。
【0117】
本発明の物品は、特に、ウェアラブル物品及び家庭用電化製品の物品から選択することができる。
【0118】
特定の実施形態では、それらは、人体、より具体的にはヒトの皮膚と接触することを意図している。
【0119】
好ましい例には、センサの支持体、電子デバイスの支持体、ケーシング、ベルト、手袋、パッド、ストリップ、及びバンドが含まれる。
【実施例】
【0120】
硬質フルオロポリマーH及び軟性フルオロポリマーSを、スタティックミキサーにおいて、230℃で10~60分間、示された重量%でブレンドした。
【0121】
例[1]のポリマーHとSはラテックスとしてブレンドされ、凍結して分離された後、直接又は水と一緒に、市販のブレンダーで粉砕された。ポリマーHは、粘度5kPの26重量%HFP及び74重量%VDFのコポリマーであり、Sは、粘度40kPの50重量%HFP及び50重量%VDFである。
(a)33重量%S、67重量%H
(b)50重量%S、50重量%H
(c)67重量%S、33重量%H
【0122】
例[2]は[1]と同じであるが、ポリマーHは26重量%のHFPと74重量%のVDFのコポリマーであり、粘度は10kPであり、Sは50重量%のHFPと50重量%のVDF、粘度は40kPである。
(a)33重量%S、67重量%H
(b)50重量%S、50重量%H
(c)67重量%S、33重量%H
【0123】
例[3]は[1]と同じであるが、ポリマーHは26重量%のHFPと74重量%のVDFのコポリマーであり、粘度は20kPであり、Sは50%HFPと50%のVDF、粘度は40kPである。ブレンドは50重量%Sである。
【0124】
例[4]は[1]と同じであるが、ポリマーHは26重量%のHFPと74重量%VDFのコポリマーであり、粘度は5kPであり、Sは50重量%のHFPと50重量%のVDF、粘度20kPである。
(a)33重量%S、67重量%H
(b)50重量%S、50重量%H
(c)67重量%S、33重量%H
【0125】
機械的特性
引張特性は、各例についてASTM D638に従って測定された。引張永久歪みは、引張り棒を上記の手順にかけた後、ASTM規格D412に従って報告される。ショアA硬度は、ASTM D2240に従って測定された。
【0126】
【0127】
形態学
原子間力顕微鏡法(atomic force microscopy、AFM)は、Oxford InstrumentsのMFP3D AFM及びニコンのME600光学顕微鏡を用いて実施される。イメージングの前に、サンプルをトリミングしてミクロトーム処理した。トリミングは、Boeckeler Instruments(Powertome X)のUltramicrotomeを使用して行われた。ミクロトームは、RMC 990ロータリーミクロトームを使用して、-1200℃の温度でガラスとダイヤモンドのナイフで行われた。
図7、8、9。
【0128】
収縮
【0129】
【国際調査報告】