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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(54)【発明の名称】受動型外骨格のネックスイッチ装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20220127BHJP
   A61F 2/56 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
A61F2/56
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532346
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(85)【翻訳文提出日】2021-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2019082398
(87)【国際公開番号】W WO2020126322
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】18212840.5
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】シモン ケースマン
(72)【発明者】
【氏名】ラルス メルツァー
【テーマコード(参考)】
3C707
4C097
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707HS14
3C707HT04
3C707HT22
3C707XK02
3C707XK06
3C707XK17
3C707XK24
3C707XK43
3C707XK46
3C707XK85
3C707XK86
4C097AA11
4C097BB03
4C097BB09
4C097CC10
4C097CC18
4C097TA10
4C097TB05
4C097TB08
(57)【要約】
使用者(AW)の少なくとも一方の腕(20)を支持するための外骨格(10)であって、この外骨格(10)は、外骨格(10)を使用者(AW)の胴部(OK)に解放可能に接続するための胴部取付装置(30)と、胴部取付装置(30)に接続するためのブラケット(9)と、第1の方向(A)及び第2の方向(B)においてブラケット(9)に対して反転可能に移動可能である押し上げ棒(7)と、使用者(AW)の腕(20)への解放可能に接続するための片持ち梁(4)と、押し上げ棒(7)の第1の端部(7a)を片持ち梁(4)の第1の端部(2a)に接続するためのラチェット機構(1)とを備え、このラチェット機構(1)により、第1の回転方向(E)において繰り返しの扇形回転運動を実行するように片持ち梁(4)を選択的に設定することと、第2の回転方向(F)において片持ち梁(4)が動くのを防ぐことを選択的に設定することが可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者(AW)の少なくとも一方の腕(20)を支持するための外骨格(10)であって、
前記外骨格(10)を使用者(AW)の胴部に解放可能に接続するための胴部取付装置(30)と、
前記胴部取付装置(30)に接続可能な少なくとも1つのブラケット(9)と、
前記少なくとも1つのブラケット(9)によって前記胴部取付装置(30)に接続可能であり、前記ブラケット(9)に対して第1及び第2の方向(A、B)に反転可能に移動可能である、押し上げ棒(7)と、
使用者(AW)の前記腕(20)に解放可能に接続可能である、使用者(AW)の前記腕(20)を支持するための片持ち梁(4)と、
前記押し上げ棒(7)の第1の端部(7a)を前記片持ち梁(4)の第1の端部(4a)に接続するためのラチェット機構(1)であって、その結果、第1の回転方向(E)における前記片持ち梁(4)の繰り返しの扇形回転運動と、第2の回転方向(F)における前記片持ち梁(4)の阻止動作とを選択的に設定できる、ラチェット機構(1)と
からなる、ことを特徴とする外骨格。
【請求項2】
第1の端部(2a)及び第2の端部(2b)を有する連結棒(2)であって、前記連結棒(2)は、前記第1の端部(2a)によって前記片持ち梁(4)に、また前記第2の端部(2b)によって補償機構(50)を介して前記押し上げ棒(7)に、それぞれ回転可能に接続される、ことを特徴とする、請求項1に記載の外骨格。
【請求項3】
前記補償機構(50)は、前記連結棒(2)の前記第2の端部(2b)におけるスロット(51)と、前記押し上げ棒(7)上のピボット軸受(14)として構成され、前記ピボット軸受(14)は前記スロット(51)に配置される、ことを特徴とする、請求項2に記載の外骨格。
【請求項4】
前記補償機構(50)は、前記連結棒(2)の前記第2の端部(2b)と前記押し上げ棒(7)との間においてスロット付きガイドとして構成される、ことを特徴とする、請求項2に記載の外骨格。
【請求項5】
前記補償機構(50)は、扇形歯車(3)とラック(13)として構成され、前記扇形歯車(3)は、前記扇形歯車(3)の歯(3a)が前記ラック(13)の歯(13a)と噛み合うように前記押し上げ棒(7)に回転可能に接続される、ことを特徴とする、請求項2に記載の外骨格。
【請求項6】
前記押し上げ棒(7)及び前記ラック(13)は、ピストン-シリンダユニットとして構成される、ことを特徴とする、請求項4に記載の外骨格。
【請求項7】
前記ラチェット機構を解放位置から阻止位置に調整するための阻止装置を有し、前記阻止装置は、前記解放位置では、前記片持ち梁が前記押し上げ棒に対して旋回可能であり、前記阻止位置では、前記押し上げ棒に対する前記片持ち梁の旋回運動が阻止される、ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の外骨格。
【請求項8】
前記阻止装置のための作動機構を含み、前記作動機構は前記使用者の頭部の動きによって操作可能である、ことを特徴とする、請求項7に記載の外骨格。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の少なくとも一方の腕を支持するための外骨格に関する。
【背景技術】
【0002】
市販されており、且つ使用者の四肢、特に腕の受動的及び/又は能動的支持に利用可能な外骨格は、通常、腰部締結具と、第1及び第2の支柱と、第1及び第2の腕支持具とを備える。第1及び第2の支柱は、腰部締結具の左側及び右側にそれぞれ垂直に固定される。第1の支柱の上端には、第1の腕支持具がピボット軸受を介して回転可能に締結される。同様に、第2の支柱の上端には、第2の腕支持具が更なるピボット軸受を介して回転可能に締結される。腕支持具は、使用者の腕を展開された腕支持具上に載せて休ませることができるように、支柱に対して異なる角度位置に固定され得る。ばねの助けにより、腕支持具は使用者の腕を上方に押し上げることができ、その結果、かなりの負荷(すなわち、重量の大きい負荷)を持ち上げることが容易になる。
【0003】
人体肩部の解剖学的構造に起因して、図1aに概略的に示されているように、腕を持ち上げると肩の関節も同時に持ち上がる。しかしながら、従来技術による外骨格では、上部支持支柱と腕支持具との間のピボット軸受は1つの位置に留まり、人体肩部の関節が持ち上がっても追従しない。これにより、外骨格と腕との間において厄介な相対運動がもたらされることになり得る。このため、腕が使用者の望まない運動経路に押し込まれるか、又は外骨格と人体との間の取付点が外れるかのいずれかになる。結果として、動きが制限され、装着時の快適さが損なわれる。先行技術によるこの種の外骨格は、例えば、特許文献1及び特許文献2に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第9,205,017号明細書
【特許文献2】米国特許第9,737,374号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決することであり、特に、使用者の少なくとも一方の腕を支持するための改良された外骨格を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、使用者の少なくとも一方の腕を支持するための外骨格によって達成される。
【0007】
本発明によれば、外骨格は、外骨格を使用者の胴部に解放可能に接続するための胴部取付装置と、胴部取付装置に接続可能である少なくとも1つのブラケットと、少なくとも1つのブラケットによって胴部取付装置に接続可能であり、且つブラケットに対して第1及び第2の方向に反転可能に移動可能である押し上げ棒と、使用者の腕に解放可能に接続可能である、使用者の腕を支持するための片持ち梁と、押し上げ棒の第1の端部を片持ち梁の第1の端部に接続するためのラチェット機構であって、これにより、第1の回転方向における片持ち梁の繰り返しの扇形回転運動と、第2の回転方向における片持ち梁の阻止動作とを選択的に設定できる、ラチェット機構とを備える。この結果、使用者の腕を載せて休ませる可能性を可能にし、腕が持ち上げられたときに人体肩部の関節が持ち上がることに適応した外骨格が提供される。この、使用者の腕を人間工学的又は解剖学的に正しく載せて休ませる可能性の結果として、重い負荷を保持するときに使用者により良好な支持を実現できる。
【0008】
本発明の有利な態様によれば、第1及び第2の端部の缶を有する連結棒であって、上記連結棒が、第1の端部によって片持ち梁に、また第2の端部によって補償機構を介して押し上げ棒にそれぞれ回転可能に接続される、連結棒。連結棒によって、押し上げ棒に対する片持ち梁の動きが案内且つ支持される。その結果、押し上げ棒及び/又はブラケットに対する片持ち梁の望ましくない横方向の動き、又は片持ち梁のひねり若しくはねじれを防ぐことができる。
【0009】
本発明の有利な態様によれば、補償機構が、連結棒の第2の端部におけるスロットと、押し上げ棒上のピボット軸受との形態で構成され、ピボット軸受がスロットに配置され得る。その結果、補償機構は簡素に実施され得る。更に、スロットが連結棒の端部にあるおかげで、片持ち梁は、他の構成要素に力をかけることなく下げる(つまり下方に動かす)ことができる。
【0010】
本発明の有利な態様によれば、補償機構が、連結棒の第2の端部と押し上げ棒との間におけるスロット付きガイドの形態で構成され得る。これにより、連結棒の第2の端部の確実な案内が確保される。
【0011】
本発明の有利な態様によれば、補償機構が、扇形歯車とラックとの形態で構成され、扇形歯車が、扇形歯車の歯がラックの歯と噛み合うように押し上げ棒に回転可能に接続され得る。扇形歯車は部分歯車とも呼ばれることもある。その結果、押し上げ棒及び/又はブラケットに対する片持ち梁の望ましくない横方向の動き、又は片持ち梁のひねり若しくはねじれを回避するための有効な案内が簡素に実現され得る。スロットが連結棒の端部にあるおかげで、片持ち梁は、扇形歯車に力をかけることなく下げる(つまり下方に動かす)ことができる。
【0012】
本発明の有利な態様によれば、片持ち梁と押し上げ棒との間の関節接続は、片持ち梁を上方に動かすために補償機構ではなくスピンドル又はアクチュエータによって具体化され得る。押し上げ棒に対する腕支柱の角度位置又は角度は、片持ち梁が持ち上げられた高さを正しく判定するために、片持ち梁と押し上げ棒との間の機械的結合ではなく、センサを介して判定されてもよい。
【0013】
本発明の有利な態様によれば、押し上げ棒及びラックは、ピストン-シリンダユニットとして構成され得る。これにより、押し上げ棒及びラックのブラケットへの取り付けが省スペースで実施され得る。
【0014】
本発明の有利な態様によれば、阻止装置が、ラチェット機構を解放位置から阻止位置に調整するために備えられ得、解放位置では、片持ち梁が押し上げ棒に対して旋回可能であり、阻止位置では、押し上げ棒に対する片持ち梁の旋回運動が阻止される。特別な阻止装置により、ラチェット機構が特定の位置又は角度位置に特に設定され得る。
【0015】
本発明の有利な態様によれば、阻止装置のための作動機構であって、上記作動機構が使用者の頭部の動きによって操作可能である、作動機構が含まれ得る。これにより、ラチェット機構の阻止位置には、この目的のために手を使う必要なく、使用者の頭部の動きだけで到達し得る。したがって、使用者の手は、例えば手持ち式の動力工具を持つために、自由なままとなる。
【0016】
更なる利点は、以下の図の説明から明らかになる。各図は、本発明の様々な例示的な実施例を示している。図、詳細な説明、及び特許請求の範囲は、多数の特徴を組み合わせて含む。当業者もまた、有用な更なる組み合わせを形成するために、適宜、特徴を個別に検討し、それらを組み合わせるであろう。
【0017】
図では、同一及び類似の構成要素は同じ参照符号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1a】いくつかの概略的に描かれた関節部位を含む人体胴部の正面図である。
図1b】いくつかの概略的に描かれた関節部位を含む人体胴部の更なる正面図である。
図2】使用者の腕を第1及び第2の位置において支持するための外骨格の概略側面図である。
図3】使用者の2本の腕を支持するための外骨格に接続された外骨格の概略図である。
図4】片持ち梁が第1の設定にある状態での外骨格の斜視図である。
図5】片持ち梁が第1の設定にある状態での外骨格の側面図である。
図6】片持ち梁が第2の設定にある状態での外骨格の斜視図である。
図7】片持ち梁が第2の設定にある状態での外骨格の側面図である。
図8】片持ち梁が第3の設定にある状態での外骨格の斜視図である。
図9】片持ち梁が第3の設定にある状態での外骨格の側面図である。
図10】外骨格及び阻止装置を伴う人体胴部の背面図である。
図11】阻止装置の作動機構の側面図である。
図12】使用者の人体頭部と阻止装置の作動機構であって、作動機構が頭部により操作可能である、作動機構との側面図、並びに外骨格が解放位置にある状態での使用者の概略図である。
図13】使用者の人体頭部と阻止装置の作動機構であって、作動機構が頭部により操作可能である、作動機構との側面図、並びに外骨格が阻止位置にある状態での使用者の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図3は、使用者AWの腕20を支持するため、又は使用者AWの腕20の作業能力を向上させるための外骨格10が配置されている、使用者AWの人体上半身OKの正面図を示している。
【0020】
外骨格10は、胴部取付装置30と、ブラケット9と、押し上げ棒7と、片持ち梁4と、ラチェット機構1とを実質的に備える。
【0021】
胴部取付装置30は、外骨格10を使用者AWの胴部(すなわち、上半身OK)に解放可能に接続するように働く(図3参照)。胴部取付装置30は、この場合、ハードシェル、可撓性チェストストラップ、又はベルトの形態で構成され得る。更に、胴部取付装置30は、使用者AWの胸部の中央に配置された留め具VSを備え、留め具により、例えばチェストストラップとして構成された胴部取付装置30を開閉できる。留め具VSは、例えば面ファスナとして、又はベルトバックル若しくはベルト締め具として構成され得る。
【0022】
本発明による外骨格10の代替的な実施例(図示せず)によれば、胴部取付装置30はまた、腰部ベルトの形態で構成され、その結果、使用者AWの腰部又は骨盤上に配置され得る。加えて、1本又は2本のストラップが、胴部取付装置30を使用者AWの肩部40に固定するために、又は胴部取付装置30が矢印の方向Bに外れないようにするために締結され得る。これらのストラップ(図示せず)は、チェストストラップ又はベルトとして構成された胴部取付装置30の前面から、使用者AWの肩部40を越えて(すなわち、サスペンダと同様に)、胴部取付装置30の後面まで案内され得る。
【0023】
図4図9に示されるように、ブラケット9は、4つの円形切り欠き11並びに第1のすべり軸受8a及び第2のすべり軸受8bを備えた平坦な金属シートとして実質的に構成される。4つの切り欠き11はねじボスとも呼ばれ、ブラケット9を胴部取付装置30に横方向に取り付けるように働き得る。この目的のために、4本のねじ又はリベットが、ブラケット9にある4本の切り欠き11を通して、胴部取付装置30への締結のために打ち込まれ得る。更に、ブラケット9の第1及び第2のすべり軸受8a、8bは、ブラケット9において押し上げ棒7を受け入れ、且つ案内するように働く。
【0024】
図2には第1のすべり軸受8aのみが示されている。
【0025】
すべり軸受8a、8bのそれぞれが円形の開口部を備える。この場合では、第1のすべり軸受8aがブラケット9の第1の端部9aの近くに配置され、第2のすべり軸受8bがブラケット9の第2の端部9bの近くに配置されて、押し上げ棒7がすべり軸受8a、8bのそれぞれの円形の開口部を通して案内されることにより矢印の方向A及びBに移動可能且つ反転可能にブラケット9に接続されるようにする。更に、ブラケット9は第2の端部9bに支持プレート12を備える。図4に示されるように、押し上げ棒7がブラケット9に配置される場合、押し上げ棒7は支持プレート12上に回転可能に取り付けられる。或いは、支持プレート12は、押し上げ棒7に向けられた凹状又は湾曲した形状を有することもできる。
【0026】
有利な実施例によれば、押し上げ棒7は、図4図8に示されるように、第1の端部7aと第2の端部7bとを備えたチューブとして実質的に構成される。押し上げ棒7のこの構成は、パイプ又はスリーブと呼ばれることもある。特に図4から明らかなように、押し上げ棒7の第1の端部7aは、矢印の方向Aにブラケット9の第1の端部9aを超えて延びる。図2から、チューブとして構成された押し上げ棒7が、第2の端部7bから押し上げ棒7の略中央7cまで延びる空洞HRを備えることがわかる。空洞HRは、止まり穴又は切り欠きと呼ばれることもある。
【0027】
有利な実施例によれば、支持要素6が押し上げ棒7の空洞HRに導入され得る。支持要素6は円筒形に構成され、その形状を押し上げ棒7の空洞HRに適合され得る。押し上げ棒7と支持要素6とは、矢印の方向A及びBに互いに対して反転可能に移動可能である。支持要素6は、押し上げ棒7を支持し、押し上げ棒7がブラケット9に対して動かされたときの安定性を高めるように実質的に働く。後述のように、支持要素6はまた、歯を備えて、したがってラックの形態で構成され得る。
【0028】
既に上述したように、押し上げ棒7は、押し上げ棒7が第1及び第2のすべり軸受8a、8bの開口部を通して延びるようにブラケット9に接続される。その結果、押し上げ棒7は、ブラケット9に対して、第1の矢印の方向A及び第2の矢印の方向Bに反転可能に移動可能である。換言すれば、押し上げ棒7は、ブラケット9に対して矢印の方向A及び矢印の方向Bに動かされ得る。更に、押し上げ棒7は、第1及び第2のすべり軸受8a、8bによって、ブラケット9に対して回転方向C又はDに回転軸Rを中心として回転され得る。
【0029】
片持ち梁4は、第1の端部4aと第2の端部4bとを備えた棒として実質的に構成される。棒はまた、アーム、支持体、バー、又はレバーと呼ばれることもある。図4図9に示されるように、アームレスト5が片持ち梁4上に配置される。アームレスト5は、使用者AWの上腕を受け入れて保持するように働く。アームレスト5に腕を一時的に固定するために、留め具を有するアームストラップが設けられる。アームストラップ及び留め具は図3に示されている。留め具は、この場合、例えば面ファスナとして構成される。
【0030】
ラチェット機構1は、所定の回転方向における阻止動作を有するピボット軸受として実質的に構成される。更に、ラチェット機構1は阻止装置80を備え、阻止装置80によって、所定の回転方向Fにおける阻止動作はラチェット機構1が回転方向Fに自由に回転可能ではなくなるようにされる。解放装置80は図に示されているだけであり、後で詳しく説明される。
【0031】
ラチェット機構1はまた、ラチェット又は細歯ラチェットと呼ばれることもある。ラチェット機構1は、押し上げ棒7の第1の端部7aを片持ち梁4の第1の端部4aに接続するように働き、その結果、第1の回転方向Eにおける回転軸Sを中心とした片持ち梁4の繰り返しの扇形回転運動と、第2の回転方向Fにおける片持ち梁4の阻止動作とを選択的に設定できる。換言すれば、片持ち梁4は、例えばアームストラップによって片持ち梁4に接続されている使用者AWの腕によって、回転方向Eには自由に引っ張られ、ラチェット機構の阻止動作の助けにより回転方向Fには阻止され得る。ラチェット機構1は、枢着点を中心とした回転方向Eにおける片持ち梁4の自由な回転運動を可能にするため、使用者AWは、例えば動力工具を特定の高さで保持するために、矢印の方向Aに上方に腕を動かすことができる。動力工具は図示されていない。回転方向Fにおけるラチェット機構1の阻止動作の助けにより、片持ち梁4は、回転方向Fにおいて阻止された片持ち梁により腕を載せて休ませる可能性を提供するために、使用者AWが意図した高さに保たれ得る。使用者AWが意図する高さにおける片持ち梁4によって提供される、載せて休ませる可能性に起因して、重い動力工具の保持が大幅に改善され得る。このようにして、動力工具の重量からの力は、腕を介して片持ち梁4、押し上げ棒7、ブラケット9、そして最後に胴部取付装置30に消散される。
【0032】
ラチェット機構1は、1つの方向にのみレバーの旋回運動を伝達するが、反対側の方向における動きは自動的に阻止される2つの停止爪の組み合わせによって実現される。動作原理は、フリーホイール(自転車など)の動作原理と同様である。阻止装置80が特定の回転方向(この場合は回転方向F)にラチェット機構1の阻止動作をもたらし得るようにするために、阻止装置80は、2つの停止爪を互いに接続させて、それらが互いに阻止するように作用し、一切動かないようにすることが可能である。
【0033】
2つの停止爪を用いた実施例に加えて、ばね仕掛けのグリッドロッカを用いた実施例も可能である。ラチェット機構1は、四角い通し孔を備えたプッシュスルーラチェットによっても実現され得る。この場合、必要な(停止)爪は1つだけであり、有効な回転方向は、ラチェットの一方の側又は他方の側にある四角いスタブを押すことによって実現される。
【0034】
更なる有利な構成によれば、外骨格10は連結棒2を更に備え、連結棒2は、第1の端部2aと第2の端部2bとを備えたバーとして実質的に構成される(図4図9を参照)。連結棒2は、第1の端部2aによって片持ち梁4に回転可能に接続され、第2の端部2bによって補償機構50を介して押し上げ棒7にこれも回転可能に接続される。連結棒2は、片持ち梁4が押し上げ棒7に対して動く際に支持するもの及び案内するものとして実質的に働く。
【0035】
本発明による外骨格10の有利な実施例(図示せず)によれば、補償機構50が、連結棒2の第2の端部におけるスロット51と、押し上げ棒7上のピボット軸受との形態で構成され得る。ピボット軸受は、この場合、スロット51に配置され、スロット51に沿って、且つスロット51によって案内されて移動可能である。スロット及びピボット軸受として構成された補償機構50の助けにより、片持ち梁4が押し上げ棒7に対して回転されたときの連結棒2の動きが補償され得る。
【0036】
図4図9に示される本発明による外骨格10の更なる実施例によれば、補償機構50が、連結棒2の第2の端部2bにおけるスロット51と、扇形歯車3と、ラック13と、ピボット軸受14との形態で構成され得る。
【0037】
任意選択の支持要素6は、図4図9に示される本発明による外骨格10の実施例によるラック13の形態をしている。本発明による外骨格10の有利な実施例によれば、支持要素6とラック13との両方を支持プレート12上に互いに並べて配置させることも可能である。
【0038】
円筒状に構成されたラック13は、ラック13の長手方向の範囲と押し上げ棒7の長手方向の範囲とが互いに平行に向くように、押し上げ棒7の内部に突出する。
【0039】
特に図4から明らかなように、押し上げ棒7は、ラック13の歯へのアクセスを提供する切り欠き7dを有する。ラック13は、ピボット軸受(図示せず)により、回転方向C又はDに回転軸Rを中心として回転可能であるように、押し上げ棒7の第2の端部7bに接続され、特に押し上げ棒7の第2の端部7bにおいて支持プレート12に接続される。この場合では、ラック13は、ラック13が矢印の方向A又はBブラケットに動くことができないように支持プレート12に接続される。このため、ラック13とブラケット9との間における相対運動はない。
【0040】
ラック13と押し上げ棒7とが矢印の方向A又はBに互いに対して動くことができる可能性に起因して、またラック13が押し上げ棒7の内部に導入されるため、押し上げ棒13と押し上げ棒7との組み合わせ又は協働は、ピストン-シリンダユニットと呼ばれることがある。この場合では、ラック13はピストンとして実施され、押し上げ棒7、特に押し上げ棒7の空洞HRは、ラックとして構成されたピストンを受け入れるためのシリンダとして実施される。
【0041】
更に、押し上げ棒7は、扇形歯車3を受け入れて保持するように働く軸16を有する保持装置15を備える。保持装置15が軸16を有することにより、扇形歯車3の歯3aがラック13の歯13と噛み合うことができるように、扇形歯車3が押し上げ棒7に対して回転され得る。扇形歯車3はレバー要素3bを更に備え、レバー要素3bの自由端にピボット軸受14が配置される。ピボット軸受14は、スロット51に配置され、スロット51に沿って自由に移動可能であり、且つスロット51に沿って案内される。
【0042】
片持ち梁4は、ブラケット9に対する枢着点DPにおける回転取り付けの結果として、第1、第2、又は第3の位置に反転可能に持ち込まれ得る。
【0043】
図4及び図5は、片持ち梁4が第1の位置にある状態での外骨格10を示している。
【0044】
図6及び図7は、片持ち梁4が第2の位置にある状態を示している。
【0045】
図8及び図9は、片持ち梁4が第3の位置にある状態を示している。
【0046】
第1の位置では、片持ち梁4の第2の端部4bが矢印の方向Bに下方に傾斜している。
【0047】
第2の位置では、片持ち梁4の第2の端部4bは略水平である。
【0048】
第3の位置では、片持ち梁4の第1の端部4aが矢印の方向Aに上方を向いている。
【0049】
使用者AWが片持ち梁4に接続されている腕を矢印の方向Aに上方に動かすと、押し上げ棒7も同様にラチェット機構によって方向A1に上方に引き上げられる。押し上げ棒7は、ブラケット9に対して矢印の方向A又はBに移動可能であるように取り付けられているため、枢着点SPは、腕を持ち上げる際の人体肩部40の解剖学的運動を補償するために移動量Δyを補償することができる。
【0050】
更なる実施例によれば、図10図13に示されるように、解放装置60が、ラチェット機構1を解放位置から阻止位置に調整するために設けられる。解放位置では、片持ち梁4は押し上げ棒7に対して旋回可能であり、阻止位置では、押し上げ棒7に対する片持ち梁4の旋回運動は、動かない、又は阻止される。
【0051】
図10及び図11が示すように、解放装置60は、使用者AWの頭部の動きによって操作可能である作動機構70を備える。そして作動機構70は、ベースプレート71と、操舵要素72と、ケーブルプルレバー73と、ケーブル74(ボーデンケーブルのコア)と、保持ブッシング75と、作動要素76とを備える。ケーブル74は、ボーデンケーブルのコアと呼ばれることもある。
【0052】
作動機構70は、全体としてケーブルプル又はボーデンケーブルと呼ばれることもあり、ケーブル74はケーブルプル又はボーデンケーブルのためのコアとして働く。
【0053】
図10が同様に示すように、ベースプレート71は、ウェブ77を介して胴部取付装置30に接続される。或いは、ベースプレート71はまた、使用者AWの首にのみ又は首に直接接続され得る。ベースプレート71は、第1の端部71aと第2の端部71bとを備える。ピボット軸受78は第1の端部に設けられる。
【0054】
操舵要素72は、第1、第2、及び第3の取付要素72a、72b、72cを有する三角形のプレートとして実質的に構成される。操舵要素72はトランスバースリンクと呼ばれることもある。第1の取付要素72aは、ベースプレート71のピボット軸受78に回転可能に接続される。第2の取付要素72bは保持ブッシング75に接続され、第3の取付要素72cは作動要素76に接続される。
【0055】
ケーブルプルレバー73は、第1及び第2の端部73a、73bを備え、第1の端部73aは、操舵要素72の第1の取付要素72aに同様に接続される。ケーブルプルレバー73の第2の端部73bは、ケーブル74の第1の端部74aに接続される。そしてケーブル74の第2の端部はラチェット機構の阻止装置80に接続される。ケーブル74の第2の端部は図示されていない。
【0056】
保持ブッシング75は、ケーブル74が移動可能に案内される可撓性チューブの取付点として働く。可撓性チューブは、ホース、シース、ボーデンケーブルシース、又はテンションシースと呼ばれることもある。既に上述したように、保持ブッシング75は第2の取付要素に接続される。
【0057】
作動要素76は曲がったプレートの形態で構成され、第1及び第2の側面79a、79bを有する。第1の側面79aは第3の取付要素72cに接続される。第3の取付要素72cは、単に図示されているに過ぎない。
【0058】
方向Nにおける使用者AWの頭部の動きによって、作動機構76は、ラチェット機構1が解放位置から阻止位置に動かされ得るように操作され得る(図12及び図13参照)。解放位置では、片持ち梁4は押し上げ棒7に対して旋回可能であり、阻止位置では、押し上げ棒7に対する片持ち梁4の旋回運動は阻止される。
【0059】
更なる実施例によれば、送信機及びアクチュエータが、ケーブル74の代わりに、又はボーデンケーブルの代わりに設けられてもよい。アクチュエータは作動機構と呼ばれることもある。センサがここで作動機構70上に配置され、使用者AWの頭部の動きを識別する。対応する信号は、無線送信ユニットによってセンサからアクチュエータに送信される。アクチュエータはラチェット機構1上に配置される。アクチュエータがセンサからの信号を受信すると、ラチェット機構1は解放位置から阻止位置に動く。無線送信ユニットは、ここではBluetooth(登録商標)又は他の無線技術を使用して信号を送信できる。
【符号の説明】
【0060】
1 ラチェット機構
2 連結棒
2a 連結棒の第1の端部
2b 連結棒の第2の端部
3 扇形歯車
3a 扇形歯車の歯
3b レバー要素
4 片持ち梁
4a 片持ち梁の第1の端部
4b 片持ち梁の第2の端部
5 アームレスト
6 支持要素
7 押し上げ棒
7a 押し上げ棒の第1の端部
7b 押し上げ棒の第2の端部
7c 押し上げ棒の中央
7d 押し上げ棒の切り欠き
8a 第1のすべり軸受
8b 第2のすべり軸受
9 ブラケット
9a ブラケットの第1の端部
9b ブラケットの第2の端部
10 外骨格
11 ブラケット上の切り欠き
12 支持プレート
13 ラック
13a ラックの歯
14 ピボット軸受
15 保持装置
16 保持装置の軸
20 使用者の腕
30 胴部取付装置
40 使用者の肩部
50 補償機構
51 スロット
70 作動機構
71 ベースプレート
71a ベースプレートの第1の端部
71b ベースプレートの第2の端部
72 操舵要素
72a 第1の取付要素
72b 第2の取付要素
72c 第3の取付要素
73 ケーブルプルレバー
73a ケーブルプルレバーの第1の端部
73B ケーブルプルレバーの第2の端部
74 ケーブル
74a ケーブルの第1の端部
75 保持ブッシング
76 作動要素
77 ウェブ
78 ピボット軸受
79a 第1の側面
79b 第2の側面
80 阻止装置
HR 押し上げ棒の空洞
DP 枢着点
OK 上半身
AW 使用者
VS 留め具
R 押し上げ棒の回転軸
C、D 押し上げ棒の回転方向
S 片持ち梁の回転軸
E、F 片持ち梁の回転方向
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】