(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(54)【発明の名称】トンネル型スラスタのためのグリッド
(51)【国際特許分類】
B63B 13/02 20060101AFI20220127BHJP
B63H 25/42 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
B63B13/02
B63H25/42 M
B63H25/42 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533495
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 FI2019050899
(87)【国際公開番号】W WO2020128159
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518082367
【氏名又は名称】エロマチック オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ラウタヘイモ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】タンッタリ,ユハ
(57)【要約】
本発明は、トンネル型スラスタ(200)のためのグリッド(100)を提供する。グリッド(100)は、互いに角度間隔で配置された複数の第1の放射状に延びるバー(101)と、複数の第1の接続バー(102)とを含み、第1の接続バー(102)のそれぞれは、隣接する第1の放射状に延びるバー(101)の間に接続されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル型スラスタのためのグリッドであって、当該グリッドは、
互いに角度間隔で配置された複数の第1の放射状に延びるバーと、
複数の第1の接続バーであって、該第1の接続バーのそれぞれは、隣接する第1の放射状に延びるバーの間に接続されている、複数の第1の接続バーと、
を含むグリッド。
【請求項2】
前記第1の放射状に延びるバーは平坦なバーであり、該平坦なバーのそれぞれは、丸みを帯びた又は面取りされた前端を有する、請求項1に記載のグリッド。
【請求項3】
前記第1の放射状に延びるバーは平坦なバーであり、該平坦なバーのそれぞれは、該平坦なバーの横方向に曲げられている、請求項1又は2に記載のグリッド。
【請求項4】
前記第1の放射状に延びるバーのそれぞれは、前記第1の接続バーにより、隣接する第1の放射状に延びるバーに接続されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のグリッド。
【請求項5】
前記第1の接続バーは、前記グリッドの中心から同じ距離にあるように接続されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のグリッド。
【請求項6】
前記第1の放射状に延びるバーの第1の端部は互いに接続されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のグリッド。
【請求項7】
前記グリッドは、前記第1の放射状に延びるバーの第1の端部が接続された中央部を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のグリッド。
【請求項8】
前記グリッドは複数の第2の接続バーを含み、該第2の接続バーのそれぞれは、前記第1の接続バーよりも前記グリッドの中心から離れるように隣接する第1の放射状に延びるバーの間に接続されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のグリッド。
【請求項9】
前記第2の接続バーは、前記グリッドの中心から同じ距離にあるように接続されている、請求項8に記載のグリッド。
【請求項10】
前記グリッドは、互いに角度間隔で配置された複数の第2の放射状に延びるバーを含み、該第2の放射状に延びるバーのそれぞれは、1つの第1の接続バーと1つの第2の接続バーとの間に接続されている、請求項8又は9に記載のグリッド。
【請求項11】
前記第2の放射状に延びるバーは平坦なバーであり、該平坦なバーのそれぞれは、丸みを帯びた又は面取りされた前端を有する、請求項10に記載のグリッド。
【請求項12】
前記第2の放射状に延びるバーは平坦なバーであり、該平坦なバーのそれぞれは、該平坦なバーの横方向に曲げられている、請求項10又は11に記載のグリッド。
【請求項13】
前記第1及び/又は第2の放射状に延びるバー及び前記第1及び/又は第2の接続バーは平坦なバーである、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のグリッド。
【請求項14】
前記第1の放射状に延びるバー及び/又は前記第2の放射状に延びるバーの数は4~12である、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のグリッド。
【請求項15】
トンネル型スラスタであって、
トンネル区画と、
前記トンネル区画の内部に配置されるプロペラと、
を含み、
前記トンネル型スラスタは、前記トンネル区画の端部に関連して配置される、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のグリッドを含む、トンネル型スラスタ。
【請求項16】
前記グリッドは、前記トンネル区画の前記端部から少なくとも10mmの距離のところで前記トンネル区画の内部に配置されている、請求項15に記載のトンネル型スラスタ。
【請求項17】
前記第1の放射状に延びるバーは前記トンネル区画に接続されている、請求項15又は16に記載のトンネル型スラスタ。
【請求項18】
前記第1の放射状に延びるバー及び/又は前記第2の放射状に延びるバーの数は、プロペラブレードの数と異なる、請求項15乃至17のいずれか一項に記載のトンネル型スラスタ。
【請求項19】
船舶であって、当該船舶の船体に設置される、請求項15乃至18のいずれか一項に記載のトンネル型スラスタを含む、船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添付の独立請求項の前提部に記載のトンネル型スラスタのためのグリッドに関する。本発明は、トンネル型スラスタ及びそのようなグリッドが組み込まれた船舶にも関する。
【背景技術】
【0002】
横スラスタ又は操縦スラスタとしても知られるトンネル型スラスタは、船やボート等の船舶で幅広く用いられている。通常、水線の下で船舶の船首又は船尾内に設置されるトンネル型スラスタは、船舶の操船、係留、位置保持及び動的な位置調整をサポートする横推力を提供する。
【0003】
例示のトンネル型スラスタは両端が開口したトンネル区画を含む。トンネル区画内部にプロペラが取り付けられ、モータによりそれを回転させていずれの方向にも推力を作り出すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トンネル型スラスタに関連する既知の問題は、船舶の水中での動きに対する抵抗が増加することである。この問題に対する既知の解決策は、船舶の移動方向に対して垂直に配置されたバーを含むグリッドをトンネル区画の両端(開口)に設けることである。これらのグリッドは船舶の水中での動きに対する抵抗を低下させるものの、トンネル型スラスタの推力が低下するという形の問題も生じさせる。推力は、グリッドのバーにより生成される乱流抵抗のために低下する。
【0005】
本発明の主たる目的は、上述の先行技術の問題を軽減するか又はなくすことである。
【0006】
本発明の目的はトンネル型スラスタのためのグリッドを提供することである。より詳細には、本発明の目的は、水中での動きに対する抵抗を減少させ、トンネル型スラスタの推力を増加させることを可能にするトンネル型スラスタのためのグリッドを提供することである。信頼性及び耐久性のあるグリッドを提供することも本発明の目的である。本発明のさらなる目的は、生じる騒音及び振動が少ないグリッドを提供することである。本発明のさらに別の目的は、トンネル型スラスタのトンネル区画への設置が容易なグリッドを提供することである。
【0007】
水中での動きに対する抵抗が小さく、大きな推力を発生するトンネル型スラスタを提供することも本発明の目的である。本発明のさらなる目的は、水中での動きに対する抵抗が小さく、推力が大きい船舶を提供することである。
【0008】
上記の目的を実現するために、本発明に係るグリッドは、添付の独立請求項の特徴部で提示されている事項により特徴づけられる。本発明の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る、トンネル型スラスタのためのグリッドは、互いに角度間隔で配置された複数の第1の放射状に延びるバー(radially extending bars)と、複数の第1の接続バーであって、該第1の接続バーのそれぞれは、隣接する前記第1の放射状に延びるバーの間に接続されている、複数の第1の接続バーと、を含む。
【0010】
本発明のグリッドは、横推力を提供するために船又はボート等の船舶の船体に設置可能なトンネル型スラスタにおいて用いることを意図している。トンネル型スラスタは、船舶の船首又は船尾に設置されることが好ましい。トンネル型スラスタは、トンネル区画と、トンネル区画内部に配置され、いずれかの方向に推力を生成するプロペラと含む。グリッドは、トンネル区画の内部で、トンネル区画の端部(開口)の近くに配置されることが好ましい。グリッドは、第1の放射状に延びるバーがトンネル区画の壁部に接続できるような寸法を有することが好ましい。
【0011】
グリッドのサイズ及び形状は、用途に応じて変化し得る。グリッドは、実質的に円形であり、本質的に円形の断面を有するトンネル区画の内部に適合するような寸法を有することができる。グリッドは実質的に平坦又は平面状であり得るが、一部の実施形態ではわずかに湾曲し得る。
【0012】
グリッドの第1の放射状に延びるバーは、互いに角度間隔で配置される。隣接する第1の放射状に延びるバーの間の角度は、互いに同じでも異なっていてもよい。隣接する第1の放射状に延びるバーの間の角度が、例えば、2、3、4又は5の可能な値を有するように第1の放射状に延びるバーを配置することも可能である。
【0013】
第1の放射状に延びるバーの目的は、トンネル型スラスタのプロペラにより生成される回転流を軸(直線)流に変換することである。これは、トンネル型スラスタの推力を改善する。
【0014】
第1の放射状に延びるバーは実質的に真っ直ぐであることが好ましいが、一部の実施形態では第1の放射状に延びるバーは1つ以上の方向に湾曲し得る。第1の放射状に延びるバーは、それらの長さに沿ってねじられた構成とすることもできる。第1の放射状に延びるバーの長さは、例えば0.1~5m、好ましくは0.5~4m、より好ましくは0.5~2.5mとすることができる。第1の放射状に延びるバーの長さは実質的に同じであることが好ましい。第1の放射状に延びるバーはステンレス鋼で作られていることが好ましい。
【0015】
第1の放射状に延びるバーの数は用途に応じて変化し得る。第1の放射状に延びるバーの数は、例えば4~12、好ましくは5、7、9又は11である。第1の放射状に延びるバーの数とプロペラブレードの数とは、これらの数が整除できないように異なることが好ましい。
【0016】
グリッドの第1の接続バーは、隣接する第1の放射状に延びるバーの間に接続される。第1の接続バーのそれぞれは2つの隣接する第1の放射状に延びるバーの間に接続され、第1の接続バーの一端が一方の第1の放射状に延びるバーに接続され、第1の接続バーの他端が他方の第1の放射状に延びるバーに接続される。第1の接続バーは、例えば溶接により又はボルト等の接続手段を用いることにより第1の放射状に延びるバーに接続できる。第1の放射状に延びるバーのそれぞれは、第1の接続バーにより隣接する第1の放射状に延びるバーに接続されることが好ましい。この場合、第1の接続バーの数は、第1の放射状に延びるバーの数と同じである。
【0017】
第1の接続バーの目的は、水中での動きに対する抵抗を減らすことである。それらは、グリッドの剛性も向上させる。
【0018】
第1の接続バーは実質的に真っ直ぐであるか又は1つ以上の方向に湾曲することができる。第1の接続バーは湾曲し、それらが共に円を形成するようにグリッドに配置できる。第1の接続バーの長さは、例えば0.1~2m、好ましくは0.5~1.5m、より好ましくは0.5~1mである。第1の接続バーの長さは実質的に同じであることが好ましい。第1の接続バーはステンレス鋼で作られていることが好ましい。
【0019】
第1の接続バーの数は用途に応じて変化し得る。第1の接続バーの数は、例えば4~12、好ましくは5、7、9又は11である。第1の接続バーの数は第1の放射状に延びるバーの数と同じであることが好ましい。
【0020】
本発明に係るグリッドの利点は、水中での動きに対する抵抗を減少させ、トンネル型スラスタの推力を高めることである。本発明に係るグリッドの別の利点は、信頼性があり、耐久性があることである。本発明に係るグリッドのさらなる別の利点は、騒音及び振動が少ないことである。本発明に係るグリッドのさらに別の利点は、トンネル型スラスタのトンネル区画に容易に設置できることである。本発明に係るグリッドのさらに別の利点は、物体がトンネル型スラスタのトンネル区画に入るのを防止するため、トンネル区画内のプロペラを保護することである。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、第1の放射状に延びるバーは平坦なバーであり、平坦なバーのそれぞれは、丸みを帯びた又は面取りされた前端を有する。前端の長さの全体又は一部が丸みを帯びているか又は面取りされた構成とすることができる。平坦なバーは、それらの平面がグリッドの平面に対して垂直になるようにグリッドに配置される。グリッドは、平坦なバーの前端がトンネル区画の内部に配置されるプロペラに対向するように、トンネル型スラスタのトンネル区画の端部に関連して配置されることを想定している。平坦なバーの後端も丸みを帯びているか又は面取りされた構成とすることができる。前端及び後端は平坦なバーの長手方向の端部である。平坦なバーの長さは、例えば0.1~5m、好ましくは0.5~4m、より好ましくは0.5~2.5mである。平坦なバーの幅は、例えば5~50cm、好ましくは10~30cmである。平坦なバーの厚さは、例えば0.1~5cm、好ましくは1~2cmである。丸みを帯びるか又は面取りされた前端の利点は、トンネル型スラスタの推力を改善することである。丸みを帯びた又は面取りされた前端の別の利点は、騒音及び振動を減少させることである。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、第1の放射状に延びるバーは平坦なバーであり、平坦なバーのそれぞれは、平坦なバーの横方向に曲げられている。平坦なバーは、少なくとも平坦なバーの前端が曲げられるように曲げられていることが好ましい。曲げ半径は、例えば1~10cmであり得る。曲げることの利点は、トンネル型スラスタの推力を改善することである。曲げることのもう一つの利点は、騒音及び振動を減少させることである。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、第1の放射状に延びるバーのそれぞれは、第1の接続バーにより隣接する第1の放射状に延びるバーに接続されている。この場合、グリッドの第1の接続バーの数は、第1の放射状に延びるバーの数と同じである。第1の放射状に延びるバーを第1の接続バーにより隣接する第1の放射状に延びるバーに接続することの利点は、水中での動きに対する抵抗を減少させ、グリッドの剛性をより高めることである。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、第1の接続バーはグリッドの中心から同じ距離にあるように接続される。グリッドの中心とは、第1の放射状に延びるバーの第1の端部が互いに取り付けられる点であるか又は第1の放射状に延びるバーの延長線が交差する点を意味する。グリッドの中心からの第1の接続バーの距離は、例えば0.1~2m、好ましくは0.5~1.5m、より好ましくは0.5~1mであり得る。第1の接続バーは、それらが共に円を形成するように湾曲させることができる。グリッドの中心から同じ距離に第1の接続バーを配置することの利点は、水中での動きに対する抵抗を減少させ、グリッドの剛性をより高めることである。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、第1の放射状に延びるバーの第1の端部は互いに接続されている。第1の放射状に延びるバーの第1の端部は、グリッドの中心で互いに接続されている。第1の放射状に延びるバーの第1の端部を共に接続することの利点は、グリッドにわたる圧力低下を抑えることである。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、グリッドは、第1の放射状に延びるバーの第1の端部が接続される中央部を含む。中央部は、例えばディスク又はリングであり得る。中央部の直径は、プロペラハブの直径よりも小さいことが好ましい。中央部の利点は、トンネル区画の開口をカバーする最小面積の最適化を促進することである。また、グリッドの製造を容易にする。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、グリッドは、複数の第2の接続バーを含み、第2の接続バーのそれぞれは、第2の接続バーが第1の接続バーよりもグリッドの中心から離れるように隣接する第1の放射状に延びるバーの間に接続される。
【0028】
グリッドの第2の接続バーは、隣接する第1の放射状に延びるバーの間に接続される。第2の接続バーのそれぞれは2つの隣接する第1の放射状に延びるバーの間に接続され、第2の接続バーの一端が一方の第1の放射状に延びるバーに接続され、第2の接続バーの他端が他方の第1の放射状に延びるバーに接続される。第2の接続バーは、例えば溶接により又はボルト等の接続手段を用いることにより、第1の放射状に延びるバーに接続できる。第1の放射状に延びるバーのそれぞれは、第2の接続バーにより隣接する第1の放射状に延びるバーに接続されることが好ましい。この場合、第2の接続バーの数は、第1の放射状に延びるバーの数と同じである。
【0029】
第2の接続バーは実質的に真っ直ぐであるか又は1つ以上の方向に湾曲していてもよい。第2の接続バーは、それらが共に円を形成するように湾曲され、グリッドに配置され得る。第2の接続バーの長さは、例えば、0.3~3m、好ましくは0.6~1.7m、より好ましくは0.7~1.2mであり得る。第2の接続バーは長さが実質的に同じであることが好ましい。第2の接続バーはステンレス鋼で作られていることが好ましい。
【0030】
第2の接続バーの数は用途に応じて変化し得る。第2の接続バーの数は、例えば4~12、好ましくは5、7、9又は11である。第2の接続バーの数は第1の放射状に延びるバーの数と同じであることが好ましい。
【0031】
第2の接続バーの利点は、水中での動きに対する抵抗をさらに減少させ、グリッドの剛性をより高めることである。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、第2の接続バーはグリッドの中心から同じ距離にあるように接続される。グリッドの中心からの第2の接続バーの距離は、例えば0.3~3m、好ましくは0.6~1.7m、より好ましくは0.7~1.2mであり得る。第2の接続バーは、それらが共に円を形成するように湾曲させることができる。グリッドの中心から同じ距離に第2の接続バーを配置することの利点は、水中での動きに対する抵抗を減少させ、グリッドの剛性をより高めることである。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、グリッドは、互いに角度間隔で配置された複数の第2の放射状に延びるバーを含み、第2の放射状に延びるバーのそれぞれは、1つの第1の接続バーと1つの第2の接続バーとの間に接続される。第2の放射状に延びるバーのそれぞれは、第2の放射状に延びるバーの一端が第1の接続バーに接続され、第2の放射状に延びるバーの他端が第2の接続バーに接続されるように接続される。第2の放射状に延びるバーは、例えば溶接により又はボルト等の接続手段を用いることにより第1及び第2の接続バーに接続できる。第2の放射状に延びるバーは、第1の放射状に延びるバーの間で放射状に配置される。第2の放射状に延びるバーは、それらの延長線がグリッドの中心で交差するように配置されることが好ましい。第2の放射状に延びるバーは、それらの端部がトンネル型スラスタのトンネル区画の壁部に接続され得るような寸法を有し得る。
【0034】
隣接する第2の放射状に延びるバーの間の角度は、互いに同じでも異なっていてもよい。隣接する第2の放射状に延びるバーの間の角度が、例えば、2、3、4又は5の可能な値を有するように第2の放射状に延びるバーを配置することも可能である。
【0035】
一部の実施形態では、第2の放射状に延びるバーは実質的に真っ直ぐであることが好ましいが、一部の実施形態では第2の放射状に延びるバーは1つ以上の方向に湾曲し得る。第2の放射状に延びるバーは、それらの長さに沿ってねじられた構成とすることもできる。第2の放射状に延びるバーの長さは、例えば0.1~3m、好ましくは0.5~2m、より好ましくは0.5~1.2mとすることができる。第2の放射状に延びるバーの長さは実質的に同じであることが好ましい。第2の放射状に延びるバーはステンレス鋼で作られていることが好ましい。
【0036】
第2の放射状に延びるバーの数は用途に応じて変化し得る。第2の放射状に延びるバーの数は、例えば4~12、好ましくは5、7、9又は11である。第2の放射状に延びるバーの数は第1の放射状に延びるバーの数と同じであることが好ましい。
【0037】
第2の放射状に延びるバーの利点は、トンネル型スラスタのプロペラによって生成される回転流を軸(直線)流に変換することにより、トンネル型スラスタの推力を改善することである。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、第2の放射状に延びるバーは平坦なバーであり、平坦なバーのそれぞれは、丸みを帯びた又は面取りされた前端を有する。前端の長さの全体又は一部が丸みを帯びているか又は面取りされた構成とすることができる。平坦なバーは、それらの平面がグリッドの平面に対して垂直になるようにグリッドに配置される。グリッドは、平坦なバーの前端がトンネル区画の内部に配置されるプロペラに対向するように、トンネル型スラスタのトンネル区画の端部に関連して配置されることを想定している。平坦なバーの後端も丸みを帯びているか又は面取りされた構成とすることができる。前端及び後端は平坦なバーの長手方向の端部である。平坦なバーの長さは、例えば0.1~3m、好ましくは0.5~2m、より好ましくは0.5~1.2mである。平坦なバーの幅は、例えば5~50cm、好ましくは10~30cmである。平坦なバーの厚さは、例えば0.1~5cm、好ましくは1~2cmである。丸みを帯びるか又は面取りされた前端の利点は、トンネル型スラスタの推力を改善することである。丸みを帯びた又は面取りされた前端の別の利点は、騒音及び振動を減少させることである。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、第2の放射状に延びるバーは平坦なバーであり、平坦なバーのそれぞれは、平坦なバーの横方向に曲げられている。平坦なバーは、少なくとも平坦なバーの前端が曲げられるように曲げられていることが好ましい。曲げ半径は、例えば1~10cmであり得る。曲げることの利点は、トンネル型スラスタの推力を改善することである。曲げることのもう一つの利点は、騒音及び振動を減少させることである。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、第1及び/又は第2の放射状に延びるバー及び第1及び/又は第2の接続バーは平坦なバーである。放射状に延びるバー及び/又は接続バーの幅は、例えば5~50cm、好ましくは10~30cmであり得る。放射状に延びるバー及び/又は接続バーの厚さは、例えば0.1~5cm、好ましくは1~2cmであり得る。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、第1の放射状に延びるバー及び/又は第2の放射状に延びるバーの数は4~12である。第1の放射状に延びるバー及び/又は第2の放射状に延びるバーの数は5、7、9又は11であることが好ましい。
【0042】
本発明はトンネル型スラスタにも関する。本発明に係るトンネル型スラスタは、トンネル区画と、トンネル区画の内部に配置されるプロペラと、トンネル区画の端部に関連して配置される本発明に係るグリッドとを含む。
【0043】
トンネル区画は管状であり、その両端が開口している。トンネル区画の長さは、例えば1~4m、4~10m又は10~20mであり得る。トンネル区画は丸い断面を有することが好ましい。トンネル区画の直径は、例えば1~4mであり得る。
【0044】
プロペラは、可変ピッチ(CP)プロペラ又は固定ピッチ(FP)プロペラであり得る。プロペラは、トンネル区画に組み込まれたモータにより駆動することができる。あるいは、プロペラは、トンネル区画の外側に位置する別個に取り付けられたモータにより駆動することもできる。モータによりプロペラを回転させて、いずれの方向にも推力を作り出すことができる。
【0045】
グリッドはトンネル区画内部でトンネル区画の端部(開口)の近くに配置されることが好ましい。グリッドは、第1の放射状に延びるバーがトンネル区画の壁部に接続できるような寸法を有することが好ましい。トンネル区画の両端(開口)に本発明に係るグリッドが設けられることが好ましい。
【0046】
本発明に係るトンネル型スラスタは、横推力を提供するために、船又はボート等の船舶の船体に設置することができる。トンネル型スラスタは、水線の下で船首又は船尾に設置されることが好ましい。トンネル型スラスタは、船舶の操船、係留、位置保持及び動的な位置調整に用いることができる。
【0047】
本発明に係るトンネル型スラスタの利点は、水中での動きに対する抵抗が小さく、大きな推力を生成することである。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、グリッドは、トンネル区画内部の、トンネル区画の端部から少なくとも10mmの距離のところに配置される。トンネル区画の端部(開口)から少なくとも10mmの距離のところにグリッドを配置することにより、水中での動きに対する抵抗が大幅に低減されることが見いだされた。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、第1の放射状に延びるバーはトンネル区画に接続されている。第1の放射状に延びるバーは、例えば溶接により又はボルト等の接続手段を用いることによりトンネル区画の壁部に接続できる。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、第1の放射状に延びるバー及び/又は第2の放射状に延びるバーの数とプロペラブレードの数とは異なる。第1の放射状に延びるバー及び/又は第2の放射状に延びるバーの数と、プロペラブレードの数とは、これらの数が整除できないように異なることが好ましい。これの利点は、プロペラ及びグリッドによって提供される機械的共振を低減することである。
【0051】
本発明は船舶にも関する。本発明に係る船舶は、船舶の船体に設置された本発明に係るトンネル型スラスタを含む。トンネル型スラスタは、水線の下で船首又は船尾に設置されることが好ましい。トンネルスラスタは、船舶の操船、係留、位置保持及び動的な位置調整を支持するために横推力を提供する。船舶は船又はボートであり得る。船舶は2つ以上のトンネル型スラスタ、例えば、2、3又は4つのトンネル型スラスタを含み得る。船舶は、船舶の船首及び/又は船尾に設置される1~4つのトンネル型スラスタを含み得る。
【0052】
本発明に係る船舶の利点は、水中での動きに対する抵抗が小さく、推力が大きいことである。
【0053】
本明細書に提示される本発明の例示の実施形態は、添付の特許請求の範囲の適用可能を制限するものと解釈すべきでない。この明細書では「含む」という動詞を、記載されていない特徴の存在を除外しないオープンな限定として用いている。従属請求項に記載の特徴は、別段の明示がない限り、相互に自由に組み合わせることができる。
【0054】
本明細書に提示される例示の実施形態及びそれらの利点は、必ずしも別個に言及されていないが、適用可能な部分により本発明に係るグリッド、トンネル型スラスタ及び船舶に関する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るグリッドを示す。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るグリッドを示す。
【
図3】
図3は、本発明の第3の実施形態に係るグリッドを示す。
【
図4】
図4は、本発明の第4の実施形態に係るグリッドを示す。
【
図5】
図5は、本発明の第5の実施形態に係るグリッドを示す。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係るトンネル型スラスタを示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
異なる実施形態において、同じ又は同様の構成要素に同じ参照記号が用いられている。
【0057】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るグリッドを示す。グリッド100は、互いに角度間隔で配置された第1の放射状に延びるバー101を含む。第1の放射状に延びるバー101の第1の端部はグリッド100の中心で互いに接続されている。第1の放射状に延びるバー101の第2の端部は、トンネル型スラスタ(
図1に図示せず)のトンネル区画に接続できる。第1の放射状に延びるバー101は真っ直ぐであり、同じ長さを有する。
【0058】
グリッド100は第1の接続バー102も含む。第1の接続バー102のそれぞれは隣接する2つの第1の放射状に延びるバー101の間に接続され、第1の接続バー102の一端は一方の第1の放射状に延びるバー101に接続され、第1の接続バー102の他端は他方の第1の放射状に延びるバー101に接続される。第1の接続バー102は、グリッド100の中心から同じ距離で接続され、それらが共に円を形成するように湾曲している。
【0059】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るグリッドを示す。
図2のグリッドは、グリッド100が第2の接続バー103をさらに含む点で
図1のグリッドと異なる。第2の接続バー103のそれぞれは2つの隣接する第1の放射状に延びるバー101の間に接続され、第2の接続バー103の一端が一方の第1の放射状に延びるバー101に接続され、第2の接続バー103の他端が他方の第1の放射状に延びるバー101に接続される。第2の接続バー103は、第1の接続バー102よりもグリッド100の中心から離れて接続されている。第2の接続バー103は、グリッド100の中心から同じ距離で接続され、それらが共に円を形成するように湾曲している。
【0060】
図3は、本発明の第3の実施形態に係るグリッドを示す図である。
図3のグリッドは、グリッド100が互いに角度間隔で配置された第2の放射状に延びるバー104をさらに含む点で
図2のグリッドと異なる。放射状に延びる第2のバー104のそれぞれは1つの第1の接続バー102と1つの第2の接続バー103に接続されている。第2の放射状に延びるバー104は、それらの延長線がグリッド100の中心で交差するように第1の放射状に延びるバー101の間に放射状に配置されている。第2の放射状に延びるバー104は真っ直ぐであり、同じ長さを有する。
【0061】
図4は、本発明の第4の実施形態に係るグリッドを示す。
図4のグリッドは、グリッド100が、第1の放射状に延びるバー101の第1の端部が接続される中央部105を含む点で
図3のグリッドと異なる。
図4では、中央部105はディスクである。
【0062】
図5は、本発明の第5の実施形態に係るグリッドを示す。
図5のグリッドは、中央部105がリングであり、第1の接続バー102及び第2の接続バー103が真っ直ぐである点で
図4のグリッドと異なる。
【0063】
図6は、本発明の一実施形態に係るトンネル型スラスタを示す。トンネル型スラスタ200は、横推力を提供するために船舶300の船体301に設置されている。トンネル型スラスタ200は、管状で且つ両端が開口したトンネル区画201を含む。トンネル区画201は丸い断面を有する。トンネル型スラスタ200は、トンネル区画201内部に配置されるプロペラ202を含む。プロペラ202は、トンネル区画201の外に位置するモータ(
図6では図示せず)により駆動される。モータによって、プロペラ202を回転させていずれの方向にも推力を発生させることができる。
【0064】
トンネル型スラスタ200は、トンネル区画201の内部でトンネル区画201の一端の近くに配置されるグリッド100を含む。第1の放射状に延びるバー101の端部はトンネル区画201の壁部に接続される。第1の放射状に延びるバー101の数とプロペラブレード203の数とは、これらの数が整除できないように異なる。
【0065】
図7A~
図7Eは、第1及び第2の放射状に延びるバーの例示の断面を示す。
図7Aは、一方側が面取りされた前端106を有する放射状に延びるバーの断面を示す。
図7Bは、一方側が面取りされた前端106及び両側が面取りされた後端107を有する放射状に延びるバーの断面を示す。
図7Cは、前端106及び後端107の双方が丸みを帯びた放射状に延びるバーの断面を示す。
図7Dは、前端106が丸みを帯び、後端107が両側で面取りされた放射状に延びるバーの断面を示す。
図7Eは、前端106が放射状に延びるバーの横方向に曲げられた放射状に延びるバーの断面を示す。
【0066】
本発明の有利な例示の実施形態のみが図面に記載されている。本発明は上記の例のみに限定されず、本発明は以下で提示する特許請求の範囲の限度内で変化し得ることが当業者には明らかである。本発明のいくつかの可能な実施形態は、従属請求項に記載されており、それらは本発明の保護の範囲を制限するものとみなすべきではない。
【国際調査報告】