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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(54)【発明の名称】開始静電線形イオントラップ
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/42 20060101AFI20220127BHJP
   H01J 49/02 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
H01J49/42 350
H01J49/02 200
H01J49/02 700
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533567
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(85)【翻訳文提出日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 IB2019060573
(87)【国際公開番号】W WO2020121166
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】62/779,363
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジーコンスキー, エリック トーマス
(57)【要約】
ELITは、電圧源と、スイッチと、中心軸に沿って整列させられた電極板の第1の組と、第1の組と中心軸に沿って整列させられた電極板の第2の組とを含む。第1の組および第2の組の板の第1の群は、第1の経路長内にイオンを捕獲するために位置付けられている。第1の組および第2の組の板の第2の群は、より短い第2の経路長内にイオンを捕獲するために位置付けられている。スイッチは、電圧源からの電圧を第1の組および第2の組に印加することによって、第1の経路長を選択し、電圧源からの電圧は、板の第1の群に第1の経路長内にイオンを捕獲させる。代替として、スイッチは、電圧を印加することによって第2の経路長を選択し、電圧は、板の第2の群に第2の経路長内にイオンを捕獲させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択可能なイオン経路長を伴う静電線形イオントラップ(ELIT)であって、前記ELITは、
1つ以上の電圧源と、
中心軸に沿って整列させられた中心に孔を伴う電極板の第1の組と、
前記第1の組と前記中心軸に沿って整列させられた中心に孔を伴う電極板の第2の組であって、前記第1の組および前記第2の組の板の第1の群は、前記中心軸の第1の経路長内にイオンを捕獲するために前記中心軸に沿って位置付けられ、前記第1の組および前記第2の組の板の第2の群は、前記第1の経路長より短い前記中心軸の第2の経路長内にイオンを捕獲するために前記中心軸に沿って位置付けられている、電極板の第2の組と、
1つ以上のスイッチと
を備え、
前記1つ以上のスイッチは、
前記1つ以上の電圧源からの電圧を前記第1の組および前記第2の組に印加することによって、前記第1の経路長を選択することであって、前記1つ以上の電圧源からの電圧は、前記板の第1の群に前記第1の経路長内にイオンを捕獲させる、ことと、
前記1つ以上の電圧源からの電圧を前記第1の組および前記第2の組に印加することによって、前記第2の経路長を選択することであって、前記1つ以上の電圧源からの電圧は、前記板の第2の群に前記第2の経路長内にイオンを捕獲させる、ことと
を行う、ELIT。
【請求項2】
前記板の第1の群および前記板の第2の群は、どんな板も共有していない、請求項1に記載のELIT。
【請求項3】
前記板の第1の群および前記板の第2の群は、2つ以上の板を共有している、請求項1に記載のELIT。
【請求項4】
前記板の第1の群および前記板の第2の群の各々は、捕獲板と、方向転換点の近くの電場の湾曲を変化させるための板と、イオンを半径方向に閉じ込めるための板とを含む、請求項1に記載のELIT。
【請求項5】
前記板の第2の群における各板の前記中心軸に沿った位置は、前記板の第1の群における対応する板の位置に正比例している、請求項4に記載のELIT。
【請求項6】
前記第1の経路長内にイオンを捕獲するために前記板の第1の群の捕獲板に印加される電圧は、前記第2の経路長内にイオンを捕獲するために前記板の第2の群の対応する捕獲板に印加される電圧と同じである、請求項5に記載のELIT。
【請求項7】
前記第1の経路長内にイオンを捕獲するために前記板の第1の群の方向転換点の近くの電場の前記湾曲を変化させるための板に印加される電圧は、前記第2の経路長内にイオンを捕獲するために前記板の第2の群の方向転換点の近くの電場の湾曲を変化させるための対応する板に印加される電圧と同じである、請求項5に記載のELIT。
【請求項8】
前記第1の経路長内にイオンを捕獲するために前記板の第1の群のイオンを半径方向に閉じ込めるための板に印加される電圧は、前記第2の経路長内にイオンを捕獲するために前記板の第2の群のイオンを半径方向に閉じ込めるための対応する板に印加される電圧と異なる、請求項5に記載のELIT。
【請求項9】
前記1つ以上のスイッチは、前記第2の経路長を選択し、前記板の第1の群の1つ以上の板に印加される電圧は、前記1つ以上の板に前記第2の経路長の外側に半径方向にイオンを集束させる、請求項1に記載のELIT。
【請求項10】
前記1つ以上のスイッチは、サンプル分析間で、前記第1の経路長と前記第2の経路長との間で切り替わる、請求項1に記載のELIT。
【請求項11】
前記スイッチは、サンプル分析内で、前記第1の経路長と前記第2の経路長との間で切り替わる、請求項1に記載のELIT。
【請求項12】
前記板の第1の群は、前記第1の組からの少なくとも4つの板と、前記第2の組からの少なくとも4つの板とを含み、前記板の第2の群は、前記第1の組からの少なくとも4つの板と、前記第2の組からの少なくとも4つの板とを含む、請求項1に記載のELIT。
【請求項13】
前記第1の組および前記第2の組の板の第3の群は、前記第2の経路長より短い前記中心軸の第3の経路長内にイオンを捕獲するために前記中心軸に沿って位置付けられ、前記1つ以上のスイッチは、前記1つ以上の電圧源からの異なる別個の電圧を前記第1の組および前記第2の組に印加することによって、前記第3の経路長を選択し、前記1つ以上の電圧源からの異なる別個の電圧は、前記板の第3の群に前記第3の経路長内にイオンを捕獲させる、請求項1に記載のELIT。
【請求項14】
静電線形イオントラップ(ELIT)において異なるイオン経路長を選択する方法であって、前記方法は、
プロセッサを使用して、1つ以上の電圧源からの電圧を電極板の第1の組および電極板の第2の組に印加することによって、第1の経路長を選択するように1つ以上のスイッチに命令することであって、前記1つ以上の電圧源からの電圧は、前記第1の組および前記第2の組の板の第1の群に前記第1の経路長内にイオンを捕獲させ、前記第1の組の板は、中心に孔を含み、中心軸に沿って整列させられており、前記第2の組の板は、中心に孔を含み、前記第1の組と前記中心軸に沿って整列させられており、前記板の第1の群は、前記中心軸の第1の経路長内にイオンを捕獲するために前記中心軸に沿って位置付けられ、前記第1の組および前記第2の組の板の第2の群は、前記第1の経路長より短い前記中心軸の第2の経路長内にイオンを捕獲するために前記中心軸に沿って位置付けられている、ことと、
前記プロセッサを使用して、前記1つ以上の電圧源からの電圧を前記第1の組および前記第2の組に印加することによって、前記第2の経路長を選択するように前記1つ以上のスイッチに命令することであって、前記1つ以上の電圧源からの電圧は、前記板の第2の群に前記第2の経路長内にイオンを捕獲させる、ことと
を含む、方法。
【請求項15】
非一過性および有形コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を備えているコンピュータプログラム製品であって、前記記憶媒体の内容は、命令を伴うプログラムを含み、前記命令は、静電線形イオントラップ(ELIT)において異なるイオン経路長を選択する方法を実施するためにプロセッサ上で実行され、前記方法は、
システムを提供することであって、前記システムは、1つ以上の異なるソフトウェアモジュールを備え、前記異なるソフトウェアモジュールは、制御モジュールを備えている、ことと、
前記制御モジュールを使用して、1つ以上の電圧源からの電圧を電極板の第1の組および電極板の第2の組に印加することによって、第1の経路長を選択するように1つ以上のスイッチに命令することであって、前記1つ以上の電圧源からの電圧は、前記第1の組および前記第2の組の板の第1の群に前記第1の経路長内にイオンを捕獲させ、前記第1の組の板は、中心に孔を含み、中心軸に沿って整列させられており、前記第2の組の板は、中心に孔を含み、前記第1の組と前記中心軸に沿って整列させられており、前記板の第1の群は、前記中心軸の第1の経路長内にイオンを捕獲するために前記中心軸に沿って位置付けられ、前記第1の組および前記第2の組の板の第2の群は、前記第1の経路長より短い前記中心軸の第2の経路長内にイオンを捕獲するために前記中心軸に沿って位置付けられている、ことと、
前記制御モジュールを使用して、前記1つ以上の電圧源からの電圧を前記第1の組および前記第2の組に印加することによって、前記第2の経路長を選択するように前記1つ以上のスイッチに命令することであって、前記1つ以上の電圧源からの電圧は、前記板の組の第2の群に前記第2の経路長内にイオンを捕獲させる、ことと
を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、その内容が参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる2018年12月13日に出願された米国仮特許出願第62/779,363号の利益を主張する。
【0002】
本明細書の教示は、低分解能で広い質量電荷比(m/z)範囲、またはより高い分解能でより狭いm/z範囲を選択的に質量分析し得る質量分析計のための単一の静電線形イオントラップ(ELIT)に関する。より具体的に、ELITは、追加の軸方向電極板を含み、それによって、軸方向に整列させられた電極板の2つ以上の異なる群のうちの1つに電圧を選択的に印加することが、イオンが2つ以上の異なるイオン経路長のうちの1つに沿って捕獲されることを引き起こす。
【0003】
本明細書に開示される装置および方法は、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、または図1のコンピュータシステム等のコンピュータシステムと併せて実施されることができる。
【背景技術】
【0004】
(ELIT-MS)
静電線形イオントラップ質量分析計(ELIT-MS)は、あるタイプの質量分析計である。ELIT-MSは、イオンの質量分析を実施するためのELITを含む。ELITにおいて、トラップ内のイオンを振動させることによって誘導電流が、検出される。イオンの振動の測定された周波数は、イオンのm/zを計算するために使用される。例えば、フーリエ変換が、測定された誘導電流に対して実施される。
【0005】
Dziekonski et al.,Int.J.Mass Spectrom.410 (2016) p12-21,(「Dziekonski Paper」)が、例示的ELITを説明している。Dziekonski Paperは、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0006】
図2は、例示的な従来のELIT200の3次元切り取り斜視図である。ELIT200は、Dziekonski PaperのELITに類似する。ELIT200は、電極板の第1の組210と、ピックアップ電極215と、電極板の第2の組220とを含む。電極板の第1の組210および電極板の第2の組220は、それらが、イオンを反射するために使用されるので、リフレクトロン板とも呼ばれ得る。電極板の第1の組120および電極板の第2の組220は、中心に孔を含む。電極板の第1の組210および電極板の第2の組220の端部電極が中心に孔を含まないことに留意されたい。しかしながら、これは、シミュレーション目的のためにすぎない。実際のデバイスでは、これらの端部電極は、ELIT200への、およびそれからのイオンの導入および除去のために、中心に孔を含むことができる。そして、電極板の第1の組210および電極板の第2の組220の内側からの(ピックアップ電極215に向かう)1つ以上の電極は、それがアインツェルレンズとしての機能を果たし、それによってイオンビームを半径方向に集束させるであろうようにバイアスをかけられる。
【0007】
ELIT200において、イオンが、軸方向に導入され、電極板の第1の組210と電極板の第2の組220との間で軸方向に振動する。ピックアップ電極215が、振動するイオンによって生成される誘導鏡像電流または鏡像電荷を測定するために使用される。フーリエ変換(FT)が、振動周波数を取得するために、ピックアップ電極215から測定されたデジタル化信号に対して実施される。振動周波数または複数の周波数から、1つ以上のイオンのm/zが、計算される。検出は、複数の電極または成形電極を使用して、電極板に対して実施されることもできる。
【0008】
(ELIT m/z範囲対分解能問題)
ELITの軸方向長は、ELITの許容される飛行時間距離に直接関連する。妥当な大きさ、すなわち、10メートル未満のトラップに関して、かつ固定された低質量カットオフに関して、より長いELITが、より広いm/z範囲にわたってイオンを分析するために使用されることができる。しかしながら、ELITの軸方向長は、固定された入手時間およびイオン運動エネルギーに関して分解能に反比例して関連する。言い換えると、より長いELITは、所与の入手時間およびイオン運動エネルギーに関してより低い質量分析分解能を有する。したがって、より広いm/z質量範囲を分析するために、より長いELITを使用することが、より良好であるが、より高い分解能を取得するために、より短いELITを使用することが、より良好である。
【0009】
m/z範囲と分解能との間のこの対立は、イオン注入(外部)およびイオン検出の両方が、軸方向次元において起こるという事実に起因する。一般に、ELITの中に注入されるイオンの平均運動エネルギー(平均速度)は、注入方法、電極幾何学形状、および捕獲電位によって固定される。その結果、ELIT内のイオンは、m/z特定の平均速度を伴って軸に沿って端から端まで前後に振動する。同様のイオンエネルギーおよび板電位がより長いELITとともに使用される場合、イオンは、より長い経路長を横断するために、より長い時間を要求するであろう。その結果、振動の周波数は、より低い。FT周波数分解能は、振動の周波数に正比例する。したがって、より低い振動の周波数は、固定された入手時間に関してより低い分解能を生成する。板電位が、時間的および半径方向焦点が同じ位置にないであろうから、異なるサイズのELITにおいてわずかに異なることに留意されたい。より長い経路長を補償するために、ある電極をオフセットすることが可能であることにも留意されたい。
【0010】
したがって、より長いトラップが、広範なm/z範囲の質量スペクトルを発生させるために有益である一方、より小さいトラップが、同重体化合物を分解すること、電荷状態決定に関して同位体エンベロープを分解すること等のために有益である。概して、この問題の唯一の解決策は、1つのトラップを物理的に除去し、それを着目分析問題に最良に答えるために適切にサイズを決定されたトラップと置換することであった。しかしながら、これは、真空破壊、数日の中断時間、および熟練者を要求する。
【0011】
別の可能な解決策は、異なるサイズのELITを並列に設置することである。しかしながら、この解決策も、いくつかの欠点を有する。例えば、イオンのビームをオフセットするための複数の偏向器等のより多くの要素が、必要とされ、前置増幅器が、各ELITのために必要とされ、より多くのイオンが、失われる可能性が高い。
【0012】
その結果、追加のシステムおよび方法が、低分解能で広いm/z範囲、またはより高い分解能でより狭いm/z範囲を選択的に分析し得る単一のELITを提供するために必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
選択可能なイオン経路長を伴うELITが、開示される。加えて、ELITにおいて異なるイオン経路長を選択する方法およびコンピュータプログラム製品が、開示される。
【0014】
ELITは、1つ以上の電圧源と、電極板の第1の組と、電極板の第2の組と、1つ以上のスイッチとを含む。電極板の第1の組は、中心軸に沿って整列させられる。電極板の第2の組も、中心に孔を含み、第1の組と中心軸に沿って整列させられる。
【0015】
板の第1の組および板の第2の組の板の第1の群が、中心軸の第1の経路長内にイオンを捕獲するために中心軸に沿って位置付けられる。板の第1の組および板の第2の組の板の第2の群が、第1の経路長より短い中心軸の第2の経路長内にイオンを捕獲するために中心軸に沿って位置付けられる。
【0016】
1つ以上のスイッチは、1つ以上の電圧源からの電圧を板の第1の組および板の第2の組に印加することによって、第1の経路長を選択し、それらは、板の第1の群に第1の経路長内にイオンを捕獲させる。代替として、1つ以上のスイッチは、1つ以上の電圧源からの電圧を板の第1の組および板の第2の組に印加することによって、第2の経路長を選択し、それらは、板の第2の群に、第2の経路長内にイオンを捕獲させることができる。
【0017】
本出願人の教示のこれらおよび他の特徴が、本明細書に記載される。
【0018】
当業者は、下記に説明される図面が例証目的のみのためであることを理解するであろう。図面は、いかようにも本教示の範囲を限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本教示の実施形態が実装され得るコンピュータシステムを図示するブロック図である。
【0020】
図2図2は、例示的な従来の静電線形イオントラップ(ELIT)の3次元切り取り斜視図である。
【0021】
図3図3は、低分解能で広いm/z範囲を分析するように構成された例示的な従来のELITの切り取り側面図である。
【0022】
図4図4は、より高い分解能で図3のELITより狭いm/z範囲を分析するように構成された例示的な従来のELITの切り取り側面図である。
【0023】
図5図5は、種々の実施形態による、低分解能で広いm/z範囲、またはより高い分解能でより狭いm/z範囲を選択的に分析し得る単一のELITを提供するために、ELIT内に同軸に設置された例示的ELITの切り取り側面図である。
【0024】
図6図6は、種々の実施形態による、ELITが低分解能で広いm/z範囲を分析するように動作させられる方法を示す図5の例示的ELITの切り取り側面図である。
【0025】
図7図7は、種々の実施形態による、ELITがより高い分解能でより狭いm/z範囲を分析するように動作させられる方法を示す図5の例示的ELITの切り取り側面図である。
【0026】
図8図8は、種々の実施形態による、低分解能で広いm/z範囲、またはより高い分解能でより狭いm/z範囲を選択的に分析し得る単一のELITを提供するために、追加の板が図4のELITに追加された例示的ELITの切り取り側面図である。
【0027】
図9図9は、種々の実施形態による、ELITが低分解能で広いm/z範囲を分析するように動作させられる方法を示す図8の例示的ELITの切り取り側面図である。
【0028】
図10図10は、種々の実施形態による、ELITがより高い分解能でより狭いm/z範囲を分析するように動作させられる方法を示す図8の例示的ELITの切り取り側面図である。
【0029】
図11図11は、種々の実施形態による、選択可能なイオン経路長を伴うELITの概略図である。
【0030】
図12図12は、種々の実施形態による、ELITにおいて異なるイオン経路長を選択する方法を示すフローチャートである。
【0031】
図13図13は、種々の実施形態による、ELITにおいて異なるイオン経路長を選択する方法を実施する1つ以上の明確に異なるソフトウェアモジュールを含むシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本教示の1つ以上の実施形態が、詳細に説明される前に、当業者は、本教示が、それらの用途において、以下の詳細な説明に記載され、または図面に図示される構造の詳細、構成要素の配列、およびステップの配列に限定されないことを理解するであろう。本明細書に使用される表現法および専門用語が説明の目的のためのものであり、限定的と見なされるべきではないことも理解されたい。
【0033】
(コンピュータ実装システム)
図1は、本教示の実施形態が実装され得るコンピュータシステム100を図示するブロック図である。コンピュータシステム100は、情報を通信するためのバス102または他の通信機構と、情報を処理するためのバス102と結合されるプロセッサ104とを含む。コンピュータシステム100は、プロセッサ104によって実行されるべき命令を記憶するためにバス102に結合されたランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶デバイスであり得るメモリ106も含む。メモリ106は、プロセッサ104によって実行されるべき命令の実行中に一時変数または他の中間情報を記憶するためにも使用され得る。コンピュータシステム100は、プロセッサ104のための静的情報および命令を記憶するためのバス102に結合される読み取り専用メモリ(ROM)108または他の静的記憶デバイスをさらに含む。磁気ディスクまたは光学ディスク等の記憶デバイス110が、情報および命令を記憶するために提供され、バス102に結合される。
【0034】
コンピュータシステム100は、情報をコンピュータユーザに表示するために、バス102を介してブラウン管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)等のディスプレイ112に結合され得る。英数字および他のキーを含む入力デバイス114が、情報およびコマンド選択をプロセッサ104に通信するためにバス102に結合される。別のタイプのユーザ入力デバイスは、方向情報およびコマンド選択をプロセッサ104に通信し、かつディスプレイ112上のカーソル移動を制御するためのマウス、トラックボール、またはカーソル方向キー等のカーソル制御装置116である。この入力デバイスは、典型的に、このデバイスが平面内の位置を規定することを可能にする2つの軸、第1の軸(すなわち、x)および第2の軸(すなわち、y)において2自由度を有する。
【0035】
コンピュータシステム100は、本教示を実施することができる。本教示のある実装と一貫して、結果が、プロセッサ104がメモリ106内に含まれる1つ以上の命令の1つ以上の一続きを実行することに応答して、コンピュータシステム100によって提供される。そのような命令は、記憶デバイス110等の別のコンピュータ読み取り可能な媒体からメモリ106に読み込まれ得る。メモリ106内に含まれる命令の一続きの実行は、プロセッサ104に本明細書に説明されるプロセスを実施させる。代替として、配線回路が、本教示を実装するために、ソフトウェア命令の代わりに、またはそれと組み合わせて、使用され得る。したがって、本教示の実装は、ハードウェア回路およびソフトウェアのいずれの具体的組み合わせにも限定されない。
【0036】
種々の実施形態において、コンピュータシステム100は、ネットワーク化システムを形成するように、ネットワークを横断して、コンピュータシステム100のような1つ以上の他のコンピュータシステムに接続されることができる。ネットワークは、私設ネットワークまたはインターネット等の公衆ネットワークを含むことができる。ネットワーク化システムでは、1つ以上のコンピュータシステムは、データを記憶し、他のコンピュータシステムにサービス提供することができる。データを記憶およびサービス提供する、1つ以上のコンピュータシステムは、クラウドコンピューティングシナリオでは、サーバまたはクラウドと称され得る。1つ以上のコンピュータシステムは、例えば、1つ以上のウェブサーバを含むことができる。サーバまたはクラウドに、およびそれからデータを送信および受信する、他のコンピュータシステムは、例えば、クライアントまたはクラウドデバイスと称され得る。
【0037】
本明細書に使用されるような用語「コンピュータ読み取り可能な媒体」は、実行のために命令をプロセッサ104に提供することに関与する任意の媒体を指す。そのような媒体は、限定ではないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含む多くの形態をとり得る。不揮発性媒体は、例えば、記憶デバイス110等の光学または磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メモリ106等の動的メモリを含む。伝送媒体は、バス102を備えているワイヤを含む同軸ケーブル、銅ワイヤ、および光ファイバを含む。
【0038】
コンピュータ読み取り可能な媒体またはコンピュータプログラム製品の一般的形態は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または任意の他の磁気媒体、CD-ROM、デジタルビデオディスク(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク、任意の他の光学媒体、サムドライブ、メモリカード、RAM、PROM、およびEPROM、FLASH(登録商標)-EPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、またはコンピュータが読み取り得る任意の他の有形媒体を含む。
【0039】
コンピュータ読み取り可能な媒体の種々の形態が、実行のために1つ以上の命令の1つ以上の一続きをプロセッサ104に搬送することに関与し得る。例えば、命令は、最初に、遠隔コンピュータの磁気ディスク上で搬送され得る。遠隔コンピュータは、命令をその動的メモリの中にロードし、モデムを使用して、電話線を経由して命令を送信することができる。コンピュータシステム100にローカルのモデルが、電話線上でデータを受信し、赤外線伝送機を使用し、データを赤外線信号に変換することができる。バス102に結合される赤外線検出器が、赤外線信号内で搬送されるデータを受信し、バス102上にデータを設置することができる。バス102は、メモリ106にデータを搬送し、それから、プロセッサ104が、命令を読み出し、実行する。メモリ106によって受信される命令は、随意に、プロセッサ104による実行の前または後のいずれかに記憶デバイス110上に記憶され得る。
【0040】
種々の実施形態によると、方法を実施するためにプロセッサによって実行されるように構成される命令が、コンピュータ読み取り可能な媒体上に記憶される。コンピュータ読み取り可能な媒体は、デジタル情報を記憶するデバイスであり得る。例えば、コンピュータ読み取り可能な媒体は、ソフトウェアを記憶するための当技術分野で公知であるようなコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)を含む。コンピュータ読み取り可能な媒体は、実行されるように構成される命令を実行するために好適なプロセッサによってアクセスされる。
【0041】
本教示の種々の実装の以下の説明は、例証および説明の目的のために提示されている。これは、包括的ではなく、本教示を開示される精密な形態に限定しない。修正および変形例が、上記の教示に照らして可能であるか、または、本教示の実践から入手され得る。加えて、説明される実装は、ソフトウェアを含むが、本教示は、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせとして、またはハードウェア単独で実装され得る。本教示は、オブジェクト指向および非オブジェクト指向プログラミングシステムの両方を用いて実装され得る。
【0042】
(ELIT内のELIT)
上で説明されるように、ELITの軸方向長またはサイズは、許容されるm/z範囲に直接関連する。しかしながら、ELITの軸方向長は、分解能に反比例的に関連する。その結果、より長いELITが、低分解能で広い質量範囲を分析するためにより良好である一方、より短いELITが、より高い分解能でより狭い質量範囲を分析するためにより良好である。
【0043】
本問題の1つの解決策は、1つのトラップを物理的に除去し、それを着目分析問題に最良に答えるために適切にサイズを決定されたトラップと置換することであった。しかしながら、これは、真空破壊、数日の中断時間、および熟練者を要求する。別の可能な解決策は、異なるサイズのELITを並列に設置することである。しかしながら、この解決策も、いくつかの欠点を有する。例えば、イオンのビームをオフセットするための複数の偏向器等のより多くの要素が、必要とされ、前置増幅器が、各ELITのために必要とされ、より多くのイオンが、失われる可能性が高い。
【0044】
その結果、追加のシステムおよび方法が、低分解能で広いm/z範囲、またはより高い分解能でより狭いm/z範囲を選択的に分析し得る単一のELITを提供するために必要とされる。
【0045】
種々の実施形態において、ELITが、低分解能で広いm/z範囲、またはより高い分解能でより狭いm/z範囲を選択的に分析し得る単一のELITを提供するために、ELIT内に同軸に設置される。両方のELITは、同じピックアップ電極を共有するが、別個の検出システムが、前置増幅器の周波数応答を異なるトラップのそれに合致させるために使用され得る。
【0046】
図3は、低分解能で広いm/z範囲を分析するように構成された例示的な従来のELITの切り取り側面図300である。図3のELITにおいて、イオン305が、イオン入口301を通して軸方向に注入され、経路330に沿って電極板の第1の組310と電極板の第2の組320との間で軸方向に振動する。経路330は、例えば、イオン経路長340を有する。ピックアップ電極303が、経路330に沿って振動するイオンによって生成される誘導鏡像電荷または電流を測定するために使用される。
【0047】
図4は、より高い分解能で図3のELITより狭いm/z範囲を分析するように構成される、例示的な従来のELITの切り取り側面図400である。図4のELITにおいて、イオン405が、イオン入口401を通して軸方向に注入され、経路430に沿って電極板の第1の組410と電極板の第2の組420との間で軸方向に振動する。経路430は、例えば、イオン経路長440を有する。ピックアップ電極403が、経路430に沿って振動するイオンによって生成される誘導鏡像電荷または電流を測定するために使用される。図4のELITと図3のELITとの比較は、図3のELITが、図4のELITのイオン経路長440よりはるかに長いイオン経路長340を有することを示す。
【0048】
図5は、種々の実施形態による、低分解能で広いm/z範囲、またはより高い分解能でより狭いm/z範囲を選択的に分析し得る単一のELITを提供するために、ELIT内に同軸に設置された例示的ELITの切り取り側面図500である。図5の単一のELITは、図3のELITからの電極板の第1の組310および電極板の第2の組320と、図4のELITの電極板の第1の組410および電極板の第2の組420とを含む。ピックアップ電極503が、誘導鏡像電荷または電流を測定するために使用される。
【0049】
図6は、種々の実施形態による、ELITが低分解能で広いm/z範囲を分析するように動作させられる方法を示す図5の例示的ELITの切り取り側面図600である。電圧が、第1のイオン経路長340内にイオンを捕獲するために、板の第1の群に印加される。板の第1の群は、電極板の第1の組310と、電極板の第2の組320とを含む。イオン605が、イオン入口301を通して軸方向に注入され、経路330に沿って電極板の第1の組310と電極板の第2の組320との間で軸方向に振動する。
【0050】
板の第2の群は、電極板の第1の組410と、電極板の第2の組420とを含む。電圧が、イオン605が安定した軌道に沿って板を通過するように、板の第2の群に印加される。板の第2の群に印加される電圧は、イオン605の時間平均運動エネルギーを改変し、振動周波数を増加させるか、または減少させるかのいずれかのために使用されることができる。
【0051】
図7は、種々の実施形態による、ELITがより高い分解能でより狭いm/z範囲を分析するように動作させられる方法を示す図5の例示的ELITの切り取り側面図700である。電圧が、第2のイオン経路長440内にイオンを捕獲するために、板の第2の群に印加される。板の第2の群は、電極板の第1の組410と、電極板の第2の組420とを含む。イオン705が、イオン入口301を通して軸方向に注入され、経路430に沿って電極板の第1の組410と電極板の第2の組420との間で軸方向に振動する。
【0052】
板の第1の群は、電極板の第1の組310と、電極板の第2の組320とを含む。電圧が、板の第1の群がイオン705の分析に関与しないように、板の第1の群に印加される。しかしながら、板の第1の群の外側板は、イオン705を集束させるために使用されることができる。
【0053】
図6および7の板の第1の群および板の第2の群は、どんな板も共有しない。しかしながら、種々の実施形態において、板の第1の群および板の第2の群は、板を共有することができる。
【0054】
図8は、種々の実施形態による、低分解能で広いm/z範囲、またはより高い分解能でより狭いm/z範囲を選択的に分析し得る単一のELITを提供するために、追加の板が図4のELITに追加される、例示的ELITの切り取り側面図800である。図8の単一のELITは、図4のELITからの電極板の第1の組410と、電極板の第2の組420とを含む。3つの追加の板が、電極板の第1の組410に追加され、電極板の第1の組810を生成する。同様に、3つの追加の板が、電極板の第2の組420に追加され、電極板の第1の組820を生成する。図8のELITは、その電極板を板を共有する2つの群に分割することによって、低分解能で広いm/z範囲、またはより高い分解能でより狭いm/z範囲を選択的に分析することができる。
【0055】
図9は、種々の実施形態による、ELITが低分解能で広いm/z範囲を分析するように動作させられる方法を示す図8の例示的ELITの切り取り側面図900である。電圧が、第1のイオン経路長940内にイオンを捕獲するために、電極板の第1の組810および電極板の第2の組820の板の第1の群(太線で示される)に印加される。イオン905が、イオン入口801を通して軸方向に注入され、経路930に沿って軸方向に振動する。ピックアップ電極803が、経路930のイオン905からの誘導鏡像電荷または電流を測定するために使用される。電圧は、イオン905が、安定した様式でそれらを通して伝送されるように、電極板の第1の組810および電極板の第2の組820の他の板にも印加される。
【0056】
図10は、種々の実施形態による、ELITがより高い分解能でより狭いm/z範囲を分析するように動作させられる方法を示す図8の例示的ELITの切り取り側面図1000である。電圧が、第2のイオン経路長1040内にイオンを捕獲するために、電極板の第1の組810および電極板の第2の組820の板の第2の群(太線で示される)に印加される。イオン1005が、イオン入口801を通して軸方向に注入され、経路1030に沿って軸方向に振動する。ピックアップ電極803が、経路1030のイオン1005からの誘導鏡像電荷または電流を測定するために使用される。電圧はまた、それらが、イオン1005の分析に関与しないように、電極板の第1の組810および電極板の第2の組820の他の板にも印加されるが、しかしながら、それらは、イオンが分析器に入射するとき、またはそれから出射するとき、イオン1005を集束させるために使用されることができる。
【0057】
図9および10の比較は、図8のELITが、図9の長い第1のイオン経路長940に沿って、または図10のより短い第2のイオン経路長1040に沿ってイオンを捕獲するために使用され得ることを示す。図9および10はまた、電圧を板の2つの異なる群に印加すると、図9の板の第1の群および図10の板の第2の群が、これらの異なる経路長を生成し得ることを示す。最後に、図9および10は、図9の板の第1の群および図10の板の第2の群が、板812、815、822、および825を共有し得ることを示す。ある意味では、板811、812、813、814、815、821、822、823、824、および825が、両方の構造間で共有される。より大きいELITは、依然として、動作するためにそれらの板の全てに印加される電圧を必要とする。
【0058】
図9に示されるような図8のELITの動作は、例えば、通常の動作と称され得る。上で説明されるように、電圧が、最も外側の板を含む図9の板の第1の群に印加される。これは、イオン905の経路長を第1のイオン経路長940まで増加させる。より小さいELITに対して、これは、より広い許容されるm/z範囲(広帯域検出)を可能にする。しかしながら、イオン905の測定される周波数および分解能/時間は、より低い。より低い周波数間隔に起因して、この実装は、空間電荷の影響をより受けやすく、ピーク合体に対するより低い閾値を有する。合体は、2つのイオンが、空間電荷に起因して合併するときに起こり、それによって、2つの個々のピークではなく、単一のピークのみが、検出される。
【0059】
図10に示されるような図8のELITの動作は、例えば、ズーム走査モード(狭帯域検出)と称され得る。上で説明されるように、電圧が、最も内側の板を含む図10の板の第2の群に印加される。これは、イオン1005の経路長を第2のイオン経路長1040まで減少させる。この幾何学形状は、より短い経路長を有し、それによって、許容されるm/z範囲を損なう。しかしながら、イオン1005は、その「通常の」周波数に対してより高い周波数を有する。これは、観察される分解能/時間およびイオン合体に関する閾値を増加させる。
【0060】
6つのみの板が、図8のELITにおいて2つの独特のELIT構造を発生させるために追加されたが、任意の数の板が、多数の構造を発生させるために追加され得ることに留意することが重要である。その結果、多くの異なる効果的な経路長を伴うELITが、作製され、1つのデバイスが、多くの顧客の必要性に適合することを可能にすることができる。
【0061】
また、調整を容易にするために、種々の実施形態において、各ELIT構造の軸方向間隔は、互いに比例している。加えて、図10に示されるように、ズーム走査モードを使用するとき、最も外側の電極に印加される電圧が、それらが、イオン1005の分析に関与しないように印加されるが、外側電極が、入射イオンビームをより良好に集束させるために使用される場合、より有用である可能性が高い。
【0062】
(選択可能なイオン経路長を伴うELIT)
図11は、種々の実施形態による、選択可能なイオン経路長を伴うELITの概略図1100である。ELITは、1つ以上の電圧源1101と、ピックアップ電極1103と、電極板の第1の組1110と、電極板の第2の組1120と、1つ以上のスイッチ1102とを含む。図11のELITは、ピックアップ電極1103を含むが、検出は、電極板の第1の組および電極板の第2の組1120を使用して、複数の電極(図示せず)を使用して、または成形電極(図示せず)を使用して実施されることもできる。
【0063】
電極板の第1の組1110が、中心軸1105に沿って整列させられている。電極板の第2の組1120も、中心に孔を含み、電極板の第1の組1110と中心軸1105に沿って整列させられている。
【0064】
板の第1の組1110および板の第2の組1120の板の第1の群が、中心軸1105の第1の経路長内にイオンを捕獲するために中心軸1105に沿って位置付けられている。第1の経路長内にイオンを捕獲するために位置付けられる板の第1の群は、例えば、図9に太線で示されている。
【0065】
図11に再び目を向けると、板の第1の組1110および板の第2の組1120の板の第2の群が、第1の経路長より短い、中心軸1105の第2の経路長内にイオンを捕獲するために中心軸1105に沿って位置付けられる。第1の経路長より短い第2の経路長内にイオンを捕獲するために位置付けられる板の第2の群は、例えば、図10に太線で示される。
【0066】
図11に再び目を向けると、1つ以上のスイッチ1102は、1つ以上の電圧源1101からの電圧を板の第1の組1110および板の第2の組1120に印加することによって、第1の経路長を選択し、1つ以上の電圧源1101からの電圧は、板の第1の群に第1の経路長内にイオンを捕獲させる。代替として、1つ以上のスイッチ1102は、1つ以上の電圧源1102からの電圧を板の第1の組1110および板の第2の組1120に印加することによって、第2の経路長を選択し、1つ以上の電圧源1102からの電圧は、板の第2の群に第2の経路長内にイオンを捕獲させることができる。1つ以上のスイッチ1102は、限定ではないが、電子スイッチまたは電気機械スイッチを含む任意のタイプのスイッチを含むことができる。
【0067】
種々の実施形態において、板の第1の群および板の第2の群は、どんな板も共有しない。例えば、図6に太線で示される板の第1の群は、図7に太線で示される板の第2の群とどんな板も共有しない。
【0068】
図11に再び目を向けると、種々の実施形態において、板の第1の群および板の第2の群は、2つ以上の板を共有することができる。例えば、図9に太線で示される板の第1の群は、図10に太線で示される板の第2の群と4つの板(812、815、822、および825)を共有する。再び、ある意味では、板811、812、813、814、815、821、822、823、824、および825が、両方の構造の間で共有される。より大きいELITは、依然として、動作するためにそれらの板の全てに印加される電圧を必要とする。
【0069】
図11に再び目を向けると、種々の実施形態において、板の第1の群および板の第2の群の各々は、捕獲板と、方向転換点の近くの電場の湾曲を変化させるための板と、イオンを半径方向に閉じ込めるための板とを含む。例えば、図10に太線で示される板の第2の群は、捕獲板815および825と、方向転換点の近くの電場の湾曲を変化させるための板814、813、812、824、823、および822と、イオンを半径方向に閉じ込めるための板811および821とを含む。
【0070】
図11に再び目を向けると、種々の実施形態において、板の第2の群における各板の中心軸1105に沿った位置は、板の第1の群における対応する板の位置に正比例する。例えば、図9の板の第1の群の捕獲板818からピックアップ電極803までの距離は、図10の板の第2の群の対応する捕獲板815からピックアップ電極803までの距離の2倍である。
【0071】
上で説明されるように、調整は、板の第2の群における板の場所が、板の第1の群における板に比例する場合、簡略化される。特に、これは、同じ電圧が、2つの群における板の大部分に印加され得ることを意味する。捕獲板および方向転換点の近くの電場の湾曲を変化させるための板は、運動エネルギー分布のみを収束させ、それは、より長いELITが使用されるとき、またはより短いELITが使用されるときに一定である。その結果、板の第2の群における板の場所が、板の第1の群における板に比例する場合、イオンを半径方向に閉じ込めるために使用される板の電圧のみが、板の第1の群と板の第2の群との間で切り替わるときに大幅に変更される必要があるはずである。
【0072】
したがって、種々の実施形態において、板の第2の群における板の場所が、板の第1の群における板に比例する場合、第1の経路長内にイオンを捕獲するために、板の第1の群の捕獲板に印加される電圧は、第2の経路長内にイオンを捕獲するために、板の第2の群の対応する捕獲板に印加される電圧と同じである(または非常に類似する)。同様に、板の第2の群における板の場所が、板の第1の群における板に比例する場合、第1の経路長内にイオンを捕獲するために、板の第1の群の方向転換点の近くの電場の湾曲を変化させるための板に印加される電圧は、第2の経路長内にイオンを捕獲するために、板の第2の群の方向転換点の近くの電場の湾曲を変化させるための対応する板に印加される電圧と同じである(または非常に類似する)。
【0073】
板の第2の群における板の場所が、板の第1の群における板に比例する場合、イオンを半径方向に閉じ込めるために使用される板の電圧のみが、大幅に変更される必要がある。具体的に、板の第2の群における板の場所が、板の第1の群における板に比例する場合、第1の経路長内にイオンを捕獲するために、板の第1の群のイオンを半径方向に閉じ込めるための板に印加される電圧は、第2の経路長内にイオンを捕獲するために、板の第2の群のイオンを半径方向に閉じ込めるための対応する板に印加される電圧と異なる。
【0074】
上で説明されるように、板の第2の群が、より短い第2の経路長内にイオンを捕獲するために選択されるとき、板の第1の群の最も外側の電極に印加される電圧は、それらが、イオンの分析に関与しないように印加される。しかしながら、種々の実施形態において、これらの板は、イオンを集束させるために使用されることができる。具体的に、図11に再び目を向けると、1つ以上のスイッチ1102が、第2の経路長を選択するとき、板の第1の群の1つ以上の板に印加される電圧は、1つ以上の板に第2の経路長の外側に半径方向にイオンを集束させる。
【0075】
種々の実施形態において、ELIT間の切り替えは、サンプル実験の間で行われる。具体的に、1つ以上のスイッチ1102は、サンプル分析の間で第1の経路長と第2の経路長との間で切り替わる。
【0076】
種々の実施形態において、ELITの間の切り替えは、単一のサンプル実験内で動的に、またはリアルタイムで行われる。具体的に、1つ以上のスイッチ1102は、サンプル分析内で第1の経路長と第2の経路長との間で切り替わる。例えば、標的化走査では、着目ピークが、狭いm/z範囲内に位置することが、既知であり得る。着目ピークが、より長い第1の経路長を使用して分解されない場合、1つ以上のスイッチ1102は、分解能を増加させ、着目ピークを位置特定するために、第1の経路長から第2の経路長に切り替わることができる。
【0077】
種々の実施形態において、各捕獲点の近くで、1つの捕獲板が、必要とされ、最低3つの板が、電気の湾曲を変化させ、イオンを半径方向に閉じ込めるために必要とされる。その結果、板の第1の群は、第1の組からの少なくとも4つの板と、第2の組からの少なくとも4つの板とを含み、板の第2の群は、第1の組からの少なくとも4つの板と、第2の組からの少なくとも4つの板とを含む。種々の実施形態において、電極が、成形され、すなわち、それらが、例えば、Hogan,J.A.;Jarrold,M.F.J.Am.Soc.Mass Spectrom.2018,1-10によって説明されるように、単純な円筒形構造によって表されない場合、より少ない電極を使用することが、可能である。
【0078】
上で説明されるように、種々の実施形態において、任意の数の板が、ELIT内に1つ以上の追加のELITを作成するために、ELITに追加されることができる。例えば、板の第1の組1110および板の第2の組1120の板の第3の群(図示せず)が、第2の経路長より短い、中心軸1105の第3の経路長内にイオンを捕獲するために中心軸1105に沿って位置付けられることができる。1つ以上のスイッチ1102は、1つ以上の電圧源1101からの異なる別個の電圧を板の第1の組1110および板の第2の組1120に印加することによって、第3の経路長を選択し、それらは、板の第3の群に第3の経路長内にイオンを捕獲させることができる。
【0079】
種々の実施形態において、プロセッサ1104が、1つ以上のスイッチ1102および1つ以上の電圧源1101への命令を制御または提供し、収集されたデータを分析するために使用される。プロセッサ1104は、1つ以上の電圧、電流、または圧力源(図示せず)を制御することによって、または電流または電圧を印加することによって、命令を制御または提供する。プロセッサ1104は、図11に示されるような別個のデバイスであり得るか、または、質量分析計(図示せず)の1つ以上のデバイスのプロセッサまたはコントローラであり得る。プロセッサ1104は、限定ではないが、コントローラ、コンピュータ、マイクロプロセッサ、図1のコンピュータシステム、または制御信号およびデータを送信ならびに受信することが可能な任意のデバイスであり得る。
【0080】
(異なるELITイオン経路長を選択する方法)
図12は、種々の実施形態による、ELITにおいて異なるイオン経路長を選択する方法1200を示すフローチャートである。
【0081】
方法1200のステップ1210において、1つ以上のスイッチが、プロセッサを使用して、1つ以上の電圧源からの電圧を電極板の第1の組および電極板の第2の組に印加することによって、第1の経路長を選択するように命令され、1つ以上の電圧源からの電圧は、板の第1の組および板の第2の組の板の第1の群に第1の経路長内にイオンを捕獲させる。第1の組の板は、中心に孔を含み、中心軸に沿って整列させられる。第2の組の板は、中心に孔を含み、第1の組と中心軸に沿って整列させられる。板の第1の群は、中心軸の第1の経路長内にイオンを捕獲するために中心軸に沿って位置付けられる。板の第1の組および板の第2の組の板の第2の群は、第1の経路長より短い、中心軸の第2の経路長内にイオンを捕獲するために中心軸に沿って位置付けられる。
【0082】
ステップ1210において、1つ以上のスイッチは、プロセッサを使用して、1つ以上の電圧源からの電圧を板の第1の組および板の第2の組に印加することによって、第2の経路長を選択するように命令され、1つ以上の電圧源からの電圧は、板の第2の群に、第2の経路長内にイオンを捕獲させる。
【0083】
(異なるELITイオン経路長を選択するためのコンピュータプログラム製品)
種々の実施形態において、コンピュータプログラム製品が、その内容がELITにおいて異なるイオン経路長を選択する方法を実施するようにプロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含む有形コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含む。この方法は、1つ以上の異なるソフトウェアモジュールを含むシステムによって実施される。
【0084】
図13は、種々の実施形態による、ELITにおいて異なるイオン経路長を選択する方法を実施する1つ以上の明確に異なるソフトウェアモジュールを含むシステム1300の概略図である。システム1300は、制御モジュール1310を含む。
【0085】
制御モジュール1310は、1つ以上の電圧源からの電圧を電極板の第1の組および電極板の第2の組に印加することによって、第1の経路長を選択するように1つ以上のスイッチに命令し、1つ以上の電圧源からの電圧は、第1の組および第2の組の板の第1の群に第1の経路長内にイオンを捕獲させる。第1の組の板は、中心に孔を含み、中心軸に沿って整列させられる。第2の組の板は、中心に孔を含み、第1の組と中心軸に沿って整列させられる。板の第1の群は、中心軸の第1の経路長内にイオンを捕獲するために中心軸に沿って位置付けられる。第1の組および第2の組の板の第2の群は、第1の経路長より短い中心軸の第2の経路長内にイオンを捕獲するために中心軸に沿って位置付けられる。
【0086】
制御モジュール1310は、1つ以上の電圧源からの電圧を第1の組および第2の組に印加することによって、第2の経路長を選択するように1つ以上のスイッチに命令し、1つ以上の電圧源からの電圧は、板の組の第2の群に第2の経路長内にイオンを捕獲させる。
【0087】
本教示は、種々の実施形態と併せて説明されるが、本教示が、そのような実施形態に限定されることを意図していない。対照的に、本教示は、当業者によって理解されるであろうように、種々の代替物、修正、および均等物を包含する。
【0088】
さらに、種々の実施形態を説明することにおいて、本明細書は、ステップの特定の一続きとして、方法および/またはプロセスを提示していることもある。しかしながら、方法またはプロセスが本明細書に記載されるステップの特定の順序に依拠しない限りにおいて、方法またはプロセスは、説明されるステップの特定の一続きに限定されるべきではない。当業者が理解するであろうように、ステップの他の一続きも、可能性として考えられ得る。したがって、本明細書に記載されるステップの特定の順序は、請求項に対する限定として解釈されるべきではない。加えて、方法および/またはプロセスを対象とする請求項は、書かれる順序でのそれらのステップの実施に限定されるべきではなく、当業者は、一続きが変動され、依然として、種々の実施形態の精神および範囲内に留まり得ることを容易に理解することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】