(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(54)【発明の名称】金属基板上のポリマーコーティングの結晶化度の測定法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3563 20140101AFI20220127BHJP
G01N 21/57 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
G01N21/3563
G01N21/57
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021533814
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(85)【翻訳文提出日】2021-07-13
(86)【国際出願番号】 IB2019060277
(87)【国際公開番号】W WO2020128687
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2018/060438
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラベ,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】フェルテ,モルガン
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059BB08
2G059BB10
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE12
2G059FF01
2G059HH01
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM03
(57)【要約】
本発明は、ハイパースペクトルカメラを使用した、金属基板上のポリマーコーティングの結晶化度の方法および測定装置、ならびに前記結晶化度の表現またはマッピングに関する。本発明による、ポリマーの結晶化度のオンライン測定のための装置は、少なくとも1台のハイパースペクトルカメラと、少なくとも1つの光源と、基板上に堆積されたポリマー層と、前記基板を搬送する手段とを備え、光源およびハイパースペクトルカメラは、前記ポリマー層に向かって鏡面反射するようセットアップされている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する金属基板(2)のポリマーコーティング(1)の結晶化度をマッピングするためのプロセスであって、プロセスは、以下のステップ、
a)赤外線領域の波長を含む多色光により、ポリマーコーティングの全幅Wを包含する、前記ポリマーコーティング(1)の前記の横方向エリアを照射するステップ、
b)少なくとも1台のハイパースペクトルカメラ(3)により、前記移動する金属基板(2)上の、前記横方向エリア内の相異なる2つの場所(L1、L2)での反射の後の、前記多色光からの少なくとも2つの光ビーム(B1、B2)の、
- 赤外線領域において前記コーティングの結晶化度によって影響を受ける、所定の波長λαでの光強度S
impacted,λα、および
- 赤外線領域において前記コーティングの結晶化度によって影響を受けない、所定の波長λβでの光強度S
stable,λβ
を測定するステップ、
c)ビーム(B1、B2)ごとの、結晶化度によって影響を受ける前記所定の波長λαでの前記光強度S
impacted,λαを使用して、少なくとも影響を受ける吸光度A
impを決定するステップ、
d)ビーム(B1、B2)ごとの、結晶化度によって影響を受けない前記所定の波長λβでの前記光強度S
stable,λβを使用して、少なくとも変化のない吸光度A
staを決定するステップ、
e)ビーム(B1、B2)ごとの、A
imp/A
staに等しい比率Rを決定するステップ、
f)各比率Rを、結晶化度に変換するステップ、
g)前記結晶化度および前記場所(L1、L2)を使用して、前記横方向エリアで、前記ポリマーコーティングの結晶化度をマッピングするステップ
を含む、プロセス。
【請求項2】
方法が、前記基板のコーティング表面全体をカバーするように、規則的に繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーコーティングが、PETで作られている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属基板が、鋼で作られている、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
λαが、8マイクロメートルと12マイクロメートルとの間に含まれる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
λαが、10.3マイクロメートルと10.7マイクロメートルとの間に含まれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップb)が、前記横方向エリア内の少なくとも30の場所(L1、...、L30)で行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記比率Rが、アバカスを使用して結晶化度に変換される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ハイパースペクトルカメラ(3)が、金属基板に対して30°と60°との間に含まれる角度をなすように、向きを合わせられている、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
金属基板上のポリマーコーティングの結晶化度のオンライン測定のための装置(6)であって、少なくとも1台のハイパースペクトルカメラ(3)と、少なくとも1つの多色発光体(4)と、前記基板を搬送する手段とを備え、多色発光体(4)およびハイパースペクトルカメラ(3)は、前記基板に向かって鏡面反射するようセットアップされている、装置。
【請求項11】
前記多色発光体(4)が、赤外線光源である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記多色発光体(4)が、少なくとも金属またはセラミックで作られている、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記装置が、多色発光体(4)からの光を前記基板上に反射するよう配置されている、凸面反射手段(5)を備え、前記凸面反射手段(5)およびハイパースペクトルカメラ(3)が、前記基板に向かって鏡面反射するようセットアップされている、請求項10から12のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基板上のポリマーコーティングの結晶化度の方法および測定装置、ならびに前記結晶化度を表現することまたはマッピングすることに関する。
【背景技術】
【0002】
金属基板にコーティングを適用することは、耐食性などの金属基板の特性を強化する。ポリマーコーティングフィルムは通常、金属基板上に積層され、次いで加熱され、最終的に急冷される。この急冷は、適用される冷却速度に応じて、ポリマー内の結晶相の形成を妨げることができ、ポリマーは部分的にアモルファス状態になる。結晶構造を有するポリマーの割合を表す、コーティングの結晶化度は、コーティングの特性に大きく影響する。したがって、かかるコーティングの結晶化度を評価して、所望の特性、要件、および仕様が満たされていることを確実にすることが不可欠である。
【0003】
最先端技術では、金属基板上のポリマーコーティングの結晶化度は、主に、ラマン分光法を使用して非破壊的に測定される。この方法は、湿度、基板のチャタリングchattering)、基板と照射デバイスまたは測定デバイスとの間の媒体、サンプルと測定デバイスまたは照射デバイスとの間の距離の変化などの、いくつかの測定条件によって悪影響を受ける。さらに、ラマン分光法の際に使用される光源は、概して、コーティングを加熱して劣化させ、結晶相の形成を助長する。さらに、光源以外のどんな光も、測定精度に悪影響を及ぼす。したがって、測定エリアは自然光および外光から保護される必要があり、これはラマン分光法の産業用途における大きな欠点である。
【0004】
DRXまたは赤外線分光法などの他の技法は、ポリマーの結晶化度を測定できるが、金属基板上のポリマーコーティングには適用されない。
【0005】
その上、最先端技術で説明されている方法および装置を使用しても、基板のコーティング幅に沿った単一スポットの結晶化度しか決定することができない。こうした単一スポットは、使用される技法によって、取得時間(ラマン分光法で少なくとも数十秒から、赤外線分光法で数分の1秒まで)および基板の速度に応じて、多かれ少なかれ間隔を空けられる。
図1は、測定技法に応じた2つの連続する測定スポット間の間隔を概略的に示しており(A:ラマン分光法、BおよびC:赤外線分光法、DおよびE:本発明)、各色づけされたスポットは、測定スポットを表す。
【0006】
したがって、金属基板上に堆積されたかかるコーティングの全幅で、前記コーティングを劣化させることなく、良好な測定精度で、ポリマーコーティングの結晶化度を測定および表現する手法を見出す必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、前述の必要性を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の方法を提供することによって達成される。この方法はまた、請求項2から9のいずれかの特徴を含むことができる。この目的はまた、請求項10から13に記載の装置を提供することによって達成される。
【0009】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【0010】
本発明を説明するために、具体的には以下の図を参照して、様々な実施形態が説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】様々な技法である、A)ラマン分光法A);赤外線B)およびC);本発明D)およびE)による、測定エリアの概略図である。
【
図3】一方が100%結晶性、他方が100%アモルファスである、2種類の相異なるコーティングについての、波長に応じての強度曲線の概略図である。
【
図4】2種類の相異なる測定条件での、波長に応じての強度曲線の概略図である。
【
図5】ビームによって、入射角に応じて、コーティング層を通して進行される距離の概略図である。
【
図6】PETコーティングへの入射角が45°の場合の、計算された比率を結晶化度とリンクするアバカス(abacus)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、移動する金属基板2上のポリマーコーティング1の結晶化度をマッピングするためのプロセスに関し、このプロセスは、以下のステップを繰り返す:
a)赤外線領域の波長を含む多色光により、ポリマーコーティングの全幅Wを包含する、前記ポリマーコーティング1の横方向エリアを照射するステップ、
b)少なくとも1台のハイパースペクトルカメラ3により、前記移動する金属基板2上の、前記横方向エリア内の相異なる2つの場所(L1、L2)での反射の後の、前記多色光からの少なくとも2つの光ビーム(B1、B2)の、
- 赤外線領域において前記コーティングの結晶化度によって影響を受ける、所定の波長λαでの光強度Simpacted,λα、および
- 赤外線領域において前記コーティングの結晶化度によって影響を受けない、所定の波長λβでの光強度Sstable,λβ
を測定するステップ、
c)ビーム(B1、B2)ごとの、結晶化度によって影響を受ける前記所定の波長λαでの前記光強度Simpacted,λαを使用して、少なくとも影響を受ける吸光度Aimpを決定するステップ、
d)ビーム(B1、B2)ごとの、結晶化度によって影響を受けない前記所定の波長λβでの前記光強度Sstable,λβを使用して、少なくとも変化のない吸光度Astaを決定するステップ、
e)ビーム(B1、B2)ごとの、Aimp/Astaに等しい比率Rを決定するステップ、
f)各比率Rを、結晶化度に変換するステップ、
g)前記結晶化度および前記場所(L1、L2)を使用して、前記横方向エリアで、前記ポリマーコーティングの結晶化度をマッピングするステップ。
【0013】
図には、多色発光体4から放射され、移動する基板上で反射され、ハイパースペクトルカメラで測定された光ビームだけが示されている。
図2に示されるように、移動する金属基板2上に堆積されたポリマーコーティング1は、多色発光体4から到来し得る多色光によって、少なくとも700nmから0.1mmの赤外線領域で照射される。照射は、前記ポリマーコーティング1の全幅Wを包含する横方向のゾーンが照射されるように行われる。
【0014】
次いで、ハイパースペクトルカメラ3は、以下で説明されるように、結晶化度によって影響を受ける、赤外線領域における所定の波長λαでの光強度Simpacted,λαを測定する。測定は、少なくとも2つのビーム、たとえば、前記移動する金属基板2によって少なくとも2つの場所、たとえばL1およびL2で反射された、多色発光体4からのB1およびB2に対して行われる。場所は、カメラによって規定される。
【0015】
次いで、ハイパースペクトルカメラ3はまた、結晶化度によって影響を受けない、赤外線領域における所定の波長λβでの光強度Sstable,λβも測定する。測定は、少なくとも2つのビーム、たとえば、前記移動する金属基板2によって少なくとも2つの場所、たとえばL1およびL2で反射された、多色発光体4からのB1およびB2に対して行われる。場所は、カメラによって規定される。
【0016】
図3に示されるように、本発明の枠内で、この波長での強度の変化が、100%結晶性コーティングと100%アモルファスコーティングとの間で7%以上であるとき、波長は結晶化度の影響を受けている。この波長での強度の変化が、100%結晶性コーティングと100%アモルファスコーティングとの間で7%未満のとき、波長は結晶化度の影響を受けていない。
【0017】
図3は2つのスペクトルを提示しており、一方は、最適な測定条件での完全に結晶性のコーティング(実線)、他方は、最適な測定条件での完全にアモルファスのコーティング(一点鎖線)である。本発明の枠内で、最適条件とは、いかなるポリマーコーティングもない金属基板上で測定が行われることを意味する。3つの波長について記されている(λ
1、λ
2、およびλ
3)。波長λ1は、完全に結晶性のコーティングと完全にアモルファスのコーティングで波長λ
1での強度が同じなので、結晶化度の影響を受けていないと考えられる。波長λ
2もまた、完全に結晶性のコーティングと完全にアモルファスのコーティングとの間の、波長λ
2での波長強度(wavelength intensity)の相異が7%より小さいので、結晶化度の影響を受けていないと考えられる。波長λ
3は、波長強度の相異が7%より大きいので、結晶化度の影響を受けていると考えられる。
【0018】
次いで、ビームごとに、結晶化度によって影響を受ける、波長λαでの前記強度Simpacted,λαを使用して、少なくとも影響を受ける吸光度が決定される。ある波長での結晶化度に起因する強度の変化がより大きいほど、測定がより正確になるため、影響を受ける吸光度を決定するためにかかる波長を使用することは、一層興味深いものになる。
【0019】
影響を受ける吸光度は、たとえば以下の式を使用して計算され得る:
Aimp=[(Simpacted,λα-Dλα)]
ここで:
- Simpacted,λαは、収集された多色光の、決定された波長λαでの、結晶化度によって影響を受ける波長強度である。
- Dλαは、暗部を取得したものであり、決定された波長λ1での背景雑音を表す。暗部は雑音に相当し、カメラの温度に影響される。前記暗部は優先的に測定される。暗部は、測定前に、またはカメラの自動シャッタによって規則的時間に測定され得る。
【0020】
コーティング幅に沿った同じ場所で、いくつかの影響を受ける吸光度が決定される場合、吸光度の代表値であるVsimpactedが決定される。好ましくは、代表値は、結晶化度に影響を受けないすべての吸光度の平均または中央値であり得る。
【0021】
次いで、ビームごとに、結晶化度によって影響を受けない、波長λβでの前記強度Sstable,λβを使用して、少なくとも変化のない吸光度が決定される。ある波長での結晶化度に起因する強度の変化がより小さいほど、結晶化度に影響を受けない吸光度を決定するためにかかる波長を使用することは、一層興味深いものとなる。
【0022】
変化のない吸光度は、たとえば以下の式を使用して計算され得る:
Asta=[(Sstable,λβ-D,λβ)]
ここで:
- Sstable,λβは、収集された多色光の、決定された波長λβでの、結晶化度によって影響を受ける波長強度である。
- Dλβは、暗部を取得したものであり、決定された波長λβでの背景雑音を表す。暗部は雑音に相当し、カメラの温度に影響される。暗部は、測定前に、またはカメラの自動シャッタによって規則的時間に測定され得る。
【0023】
コーティング幅に沿った同じ場所での、いくつかの変化のない吸光度が決定される場合、吸光度の代表値であるVsstableが決定される。好ましくは、代表値は、結晶化度に影響を受けないすべての吸光度の平均または中央値であり得る。
【0024】
次いで、ビームごとに、結晶化度によって影響を受ける吸光度と結晶化度によって影響を受けない吸光度との比率Rが決定される。
R=[Simpacted,λα/Sstable,λβ]
【0025】
結晶化度によって影響を受ける吸光度の代表値と、結晶化度によって影響を受けない吸光度の代表値とが決定されている場合、以下の比率RVが計算される:
RV=[Vsimpacted/Vsstable]
【0026】
各比率RまたはRVは、結晶化度にリンクされる。
【0027】
別の実施形態では、影響を受ける吸光度は、たとえば以下の式を使用して決定され得る:
Aimp2=[(Simpacted,λα-Dλα)/(Ri,λα-Dλα)]
ここで:
- Simpacted,λαは、収集された多色光の、決定された波長λαでの、結晶化度によって影響を受ける波長強度である。
- Ri,λαは、コーティングがない金属基板に最適な状態で収集された多色光の、決定された波長λαでの波長強度である。
- Dλαは、暗部を取得したものであり、決定された波長λ1での背景雑音を表す。暗部は雑音に相当し、カメラの温度に影響される。前記暗部は優先的に測定される。暗部は、測定前に、またはカメラの自動シャッタによって規則的時間に測定され得る。
【0028】
別の実施形態では、変化のない吸光度は、たとえば以下の式を使用して決定され得る。
Asta2=[(Sstable,λβ-Dλβ)/(Ri,λβ-D,λβ)]
ここで:
- Sstable,λβは、収集された多色光の、決定された波長λβでの、結晶化度によって影響を受ける波長強度である。
- Ri,λβは、コーティングが表面上にない鋼に最適な状態で収集された多色光の、決定された波長λβでの波長強度である。
- Dλβは、暗部を取得したものであり、決定された波長λβでの背景雑音を表す。暗部は雑音に相当し、カメラの温度に影響される。暗部は、測定前に、またはカメラの自動シャッタによって規則的時間に測定され得る。
【0029】
図4は2つのスペクトルを提示しており、一方は、最適な測定条件で測定された完全に結晶性のコーティング(S1)、一方は、測定条件が劣る工業用測定条件で測定された完全に結晶性のコーティング(S2)である。相異なる測定条件に起因して、工業用のスペクトルは、より低い値またはより高い値にシフトされる可能性がある。これが、測定条件が結晶化度に与える影響をより小さくするために、上記で計算された吸光度の比率であるA
imp2およびA
sta2が好ましくは使用される理由である。
【0030】
次いで、各ビームの、すなわち各場所の結晶化度は、事前に決定された比率を結晶化度に変換することによって推定される。
【0031】
有利なことには、
図6に示されるように、前記比率がアバカス(abacus)を使用して、結晶化度に変換される。アバカスの、吸光度と結晶化度との間の相関は、好ましくは、DRX、DSC、または赤外線分光法などの他の測定方法によって、前もって確認されている。
【0032】
コーティングの結晶化度のマップまたは視覚的表現は、前記事前に決定された結晶化度およびそれらの関連する場所を使用して作成される。
【0033】
前述のすべてのステップが繰り返され、また金属基板は移動しているので、コーティング用ポリマーの長手方向に沿って結晶化度が推定され得る。長手方向の解像度、すなわち規定されたエリア内の測定されるスポットの数は、金属基板の速度およびハイパースペクトルカメラの取得時間に依存する。速度がより遅くなり、また取得時間がより短くなるほど、解像度は一層高くなるであろう。
【0034】
本発明による方法を使って、金属基板上に堆積されたポリマーコーティングの、全幅の結晶化度が測定され、表現され得る。さらに、結晶化度は、基板のチャタリングおよび湿度などの動作条件に影響されず、光源によってコーティングが劣化することもない。さらに、
図1に示されるように、結晶化度のマッピングの解像度は、最先端技術の技法に比べて、より正確である。
【0035】
有利なことには、前記方法は、前記基板のコーティング表面全体をカバーするように、規則的に繰り返される。好ましくは、できるだけ正確な結晶化度のマップを得るために、この方法のステップが、できるだけ頻繁に繰り返される。
【0036】
有利なことには、前記ポリマーコーティングは、ポリエチレンテレフタレート(PET)で作られている。
【0037】
有利なことには、前記金属基板は鋼で作られている。かかる基板は、その低い凹凸度(rugosity)に起因して、測定品質を向上する。
【0038】
有利なことには、λαは、8マイクロメートルと12マイクロメートルとの間に含まれる。さらに好ましい実施形態では、λαは、10.3マイクロメートルと10.7マイクロメートルとの間に含まれる。
【0039】
明らかに、これらの範囲の一部の波は、他の範囲よりも結晶化度によって影響を受ける。したがって、かかる波長を有する光線の強度の測定が、ポリマーの結晶化度のより良好な推定を可能にする。
【0040】
有利なことには、前記少なくとも1台のハイパースペクトルカメラは、結晶化度に影響を受けない波長強度を有する、少なくとも9.5マイクロメートルと9.7マイクロメートルとの間に含まれる波長の強度を測定する。この範囲を使用することが、結晶化度の影響を最も受けない強度の1つを得ることを可能にする。言い換えれば、結晶化度に応じた変化強度はほとんど存在せず、これによって測定条件とは無関係に、良好な基準を確立することが可能となる。
【0041】
有利なことには、ステップb)は、前記横方向エリア内の少なくとも30の場所で行われる。コーティング幅に沿って少なくとも30の場所で測定を行うことは、結晶化度マップの解像度を増加させる。したがって、結晶化度が所望のものとは異なる、初期状態を検出する確率がより高くなる。
【0042】
本発明はまた、金属基板上のポリマーコーティングの結晶化度のオンライン測定のための装置6に関し、装置は、
- 少なくとも1台のハイパースペクトルカメラ3と、
- 少なくとも1つの多色発光体4と、
- 前記基板を搬送する手段と
を備え、
- 多色発光体4およびハイパースペクトルカメラ3は、前記基板に向かって鏡面反射するようセットアップされている。
【0043】
図2に示されるように、基板上に堆積されたポリマー層は、ロール5などの搬送手段によって搬送される。少なくとも光源2および少なくとも1台のハイパースペクトルカメラ1から構成される測定装置は、基板上に堆積された前記ポリマー層、および前記基板を搬送する手段(図示せず)の上に配置されている。前記ハイパースペクトルカメラは、ピクセルごとの波長強度のスペクトルを記録することができ、光源からの、基板上に堆積されたポリマー層で反射されたビームを記録するために、向きを合わせられている。
【0044】
有利なことには、前記ハイパースペクトルカメラ3は、金属基板に対して30°と60°との間に含まれる角度、優先的には40°と50°との間に含まれる角度、より好ましくは45°の角度をなすように、向きを合わせられている。一方では、
図5に10°のビームで示されているように、測定角度がより小さくなるほど、ビームによってコーティングを通して進行される距離が一層短くなり、したがって検出される強度の変化がより一層小さくなる。他方では、
図5に80°のビームで示されているように、測定角度がより大きくなるほど、ビームによってコーティングを通して進行される距離が一層長くなり、したがって基板の振動に対して、より一層高い感度で強度の変化が検出される。したがって、角度が45°により近いほど、十分な強度の変化と小さな振動による攪乱(vibration perturbation)との間で一層適切な折り合いがつく。
【0045】
有利なことには、前記多色発光体4は赤外線光源である。レーザとは対照的に、赤外線光源は、概して使用される電力が、レーザ光源よりも約1,000から100,000倍少ないので、コーティングに損傷を与える傾向が一層低くなる。
【0046】
有利なことには、前記多色発光体4は、少なくとも金属またはセラミックで作られている。優先的には、光源は、加熱されたニッケルクロム棒または加熱された加熱されたセラミック板である。かかる加熱が、結晶化度の影響を受ける吸光度と影響を受けない吸光度とがある、赤外線領域でのより高い発光を可能にする。加熱温度に応じて、放射される波長の強度が変化する。前記バーまたはセラミックは、好ましくは、600℃と800℃との間で加熱される。
【0047】
有利なことには、
図7に示されように、前記装置は、多色発光体4からの光を前記基板上に反射するよう配置されている、凸面反射手段5を備え、前記凸面反射手段5およびハイパースペクトルカメラ3は、前記基板に向かって鏡面反射するようセットアップされている。かかるデバイスは、照射強度をエリア上に集中することを可能にし、したがって、より良好で正確な測定を可能にする。
【0048】
優先的には、反射デバイス5は、基板の長さ方向の小さな部分であるが基板の幅全体に、ビームを集束させることを可能にする凸面鏡である。この反射性デバイスは、反射ビームと基板平面との間で、20と80°との間、優先的には35と55°との間の角度を形成するために、向きを合わせられている。好ましくは、前記角度は、45°である。
【国際調査報告】