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特表2022-512443リチウム二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
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  • 特表-リチウム二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池 図1
  • 特表-リチウム二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池 図2
  • 特表-リチウム二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20220127BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220127BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220127BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 E
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534122
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(85)【翻訳文提出日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 KR2018015868
(87)【国際公開番号】W WO2020122284
(87)【国際公開日】2020-06-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】511038879
【氏名又は名称】ポスコ ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ナム、 サン チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジェ ハン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジョン ハン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 ジョン フン
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB03
4G048AC06
4G048AD04
5H050AA08
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB12
5H050FA17
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA08
(57)【要約】
本開示は、化学式1で表される第1化合物、および化学式2で表される第2化合物を含み、前記第1化合物の含有量は、正極活物質100重量%を基準として65重量%以上であるリチウム二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
[化1]
Lia1Nib1Coc1Mnd1M1e1M2f12-f1
[化2]
Lia2Nib2Coc2Mnd2M3e2M4f22-f2
化学式1および2の各組成およびモル比は、明細書で定義した通りである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1で表される第1化合物;および
化学式2で表される第2化合物
を含み、
前記第1化合物の含有量は、正極活物質100重量%を基準として65重量%以上であるリチウム二次電池用正極活物質。
[化1]
Lia1Nib1Coc1Mnd1M1e1M2f12-f1
(前記化学式1において、
0.97≦a1≦1.05、0.75≦b1≦0.95、0.09≦c1≦0.18、0≦d1≦0.09、0≦e1≦0.05、0≦f1≦0.01、b1+c1+d1+e1=1であり、
M1は、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ba、Wおよびこれらの組み合わせより選択された1つであり、
M2は、N、F、P、S、Cl、Br、Iおよびこれらの組み合わせより選択された1つである。)
[化2]
Lia2Nib2Coc2Mnd2M3e2M4f22-f2
(前記化学式2において、
1.0≦a2≦1.1、0.4≦b2<0.75、0.1≦c2≦0.4、0.1≦d2≦0.4、0≦e2≦0.05、0≦f2≦0.01、b2+c2+d2+e2=1であり、
M3は、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ba、Wおよびこれらの組み合わせより選択された1つであり、
M4は、N、F、P、S、Cl、Br、Iおよびこれらの組み合わせより選択された1つである。)
【請求項2】
前記第1化合物の含有量は、正極活物質100重量%を基準として70重量%~95重量%の範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記化学式1において、b1は、0.8~0.95の範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記第1化合物は、Ni0.80Co0.10Mn0.10、Ni0.80Co0.12Mn0.08、Ni0.83Co0.10Mn0.07、Ni0.83Co0.12Mn0.05、Ni0.85Co0.10Mn0.05、Ni0.85Co0.10Mn0.03Al0.02、Ni0.86Co0.09Mn0.03Al0.02、Ni0.88Co0.09Mn0.03、Ni0.9Co0.08Mn0.02、Ni0.95Co0.03Mn0.02のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記第1化合物の平均粒径(D50)は、13.0μm~20.0μmの範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記化学式2において、b2は、0.5~0.7の範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記第2化合物は、Ni0.5Co0.2Mn0.3、Ni0.50Co0.25Mn0.25、Ni0.55Co0.20Mn0.25、Ni0.6Co0.2Mn0.2、Ni0.65Co0.15Mn0.20、Ni0.65Co0.17Mn0.18のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項8】
前記第2化合物の平均粒径(D50)は、3.0μm~6.0μmの範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項9】
前記リチウム二次電池用正極活物質の平均粒径は、10μm~20μmの範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項10】
前記第1化合物のタップ密度は、2.2g/cc~2.8g/ccである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項11】
前記第2化合物のタップ密度は、1.5g/cc~2.2g/ccである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項12】
前記リチウム二次電池用正極活物質のタップ密度は、2.2g/cc~2.8g/ccである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項13】
負極と、
請求項1~12のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質を含む正極と、
電解質とを含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、優れた電気化学特性および熱安定性を有するリチウム二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、作動電圧およびエネルギー密度が高いだけでなく、長期間使用可能で、多様な電子機器の駆動電源として用いられている。
【0003】
このようなリチウム二次電池は、一般にリチウムイオンの可逆的な挿入/脱離が可能な物質を正極活物質および負極活物質として用い、これらを含む正極および負極の間に電解質を充填して製造する。
【0004】
前記正極活物質としては、LiCoOが最も広範囲に使用されている。ところが、最近は、リチウム二次電池の用途が携帯情報電子機器から電動工具、自動車などの産業へ広がるに伴い、高容量と高出力および安定性がさらに要求される。
【0005】
これによって、LiCoOの性能改善と三成分系、オリビン系のような代替物質としてニッケル含有量の高いリチウムニッケル系酸化物を用いるための技術の開発に関する研究が活発に進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態は、高いエネルギー密度および優れた熱安定性を有するリチウム二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面において、一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、化学式1で表される第1化合物、および化学式2で表される第2化合物を含み、前記第1化合物の含有量は、正極活物質100重量%を基準として65重量%以上であってもよい。
【0008】
[化1]
Lia1Nib1Coc1Mnd1M1e1M2f12-f1
前記化学式1において、
0.97≦a1≦1.05、0.75≦b1≦0.95、0.09≦c1≦0.18、0≦d1≦0.09、0≦e1≦0.05、0≦f1≦0.01、b1+c1+d1+e1=1であり、
M1は、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ba、Wおよびこれらの組み合わせより選択された1つであり
M2は、N、F、P、S、Cl、Br、Iおよびこれらの組み合わせより選択された1つである。
【0009】
[化2]
Lia2Nib2Coc2Mnd2M3e2M4f22-f2
前記化学式2において、
1.0≦a2≦1.1、0.4≦b2<0.75、0.1≦c2≦0.4、0.1≦d2≦0.4、0≦e2≦0.05、0≦f2≦0.01、b2+c2+d2+e2=1であり、
M3は、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ba、Wおよびこれらの組み合わせより選択された1つであり、
M4は、N、F、P、S、Cl、Br、Iおよびこれらの組み合わせより選択された1つである。
【0010】
ここで、前記第1化合物の含有量は、正極活物質100重量%を基準として65重量%~95重量%の範囲であってもよい。
【0011】
また、前記化学式1において、b1は、0.8~0.95の範囲であってもよい。
【0012】
前記第1化合物は、Ni0.80Co0.10Mn0.10、Ni0.80Co0.12Mn0.08、Ni0.83Co0.10Mn0.07、Ni0.83Co0.12Mn0.05、Ni0.85Co0.10Mn0.05、Ni0.85Co0.10Mn0.03Al0.02、Ni0.86Co0.09Mn0.03Al0.02、Ni0.88Co0.09Mn0.03、Ni0.9Co0.08Mn0.02、Ni0.95Co0.03Mn0.02のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0013】
前記第1化合物の平均粒径(D50)は、13.0μm~20.0μmの範囲であってもよい。
【0014】
前記化学式2において、b2は、0.5~0.7の範囲であってもよい。
【0015】
前記第2化合物は、Ni0.5Co0.2Mn0.3、Ni0.50Co0.25Mn0.25、Ni0.55Co0.20Mn0.25、Ni0.6Co0.2Mn0.2、Ni0.65Co0.15Mn0.20、Ni0.65Co0.17Mn0.18のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0016】
前記第2化合物の平均粒径(D50)は、3.0μm~6.0μmの範囲であってもよい。
【0017】
前記リチウム二次電池用正極活物質の平均粒径は、10μm~20μmの範囲であってもよい。
【0018】
前記第1化合物のタップ密度は、2.2g/cc~2.8g/ccの範囲であってもよい。
【0019】
前記第2化合物のタップ密度は、1.5g/cc~2.2g/ccの範囲であってもよい。
【0020】
前記リチウム二次電池用正極活物質のタップ密度は、2.2g/cc~2.8g/ccの範囲であってもよい。
【0021】
他の側面において、一実施形態によるリチウム二次電池は、負極と、本開示の一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質を含む正極と、電解質とを含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
本実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、ペレット密度を向上させることができるため、これを適用する場合、高いエネルギー密度を有するとともに、熱安定性が顕著に改善されたリチウム二次電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態によるリチウム二次電池を概略的に示す図である。
図2】実施例1~3および比較例1~2および8により製造された正極活物質に対するペレット密度の測定結果を示す図である。
図3】実施例1~4および比較例1~2により製造された正極活物質に対するペレット密度の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して、本発明の様々な実施形態について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0025】
本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付す。
【0026】
また、図面に示された各構成の大きさおよび厚さは説明の便宜のために任意に示したので、本発明が必ずしも図示のところに限定されない。
【0027】
さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0028】
本開示の一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、化学式1で表される第1化合物、および化学式2で表される第2化合物を含み、前記第1化合物の含有量は、正極活物質100重量%を基準として65重量%以上であることを特徴とする。
【0029】
前記第1化合物の含有量は、より具体的には、正極活物質100重量%を基準として75重量%~95重量%または80重量%~95重量%の範囲であってもよい。第1化合物の含有量が前記範囲を満足する場合、本実施形態による正極活物質をリチウム二次電池に適用する際に、高容量、高密度化による高エネルギー密度の実現が可能という利点がある。
【0030】
次に、化学式1で表される第1化合物は下記の通りである。
[化1]
Lia1Nib1Coc1Mnd1M1e1M2f12-f1
【0031】
前記化学式1において、0.97≦a1≦1.05、0.75≦b1≦0.95、0.09≦c1≦0.18、0≦d1≦0.09、0≦e1≦0.05、0≦f1≦0.01、b1+c1+d1+e1=1であり、M1は、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ba、Wおよびこれらの組み合わせより選択された1つであり、M2は、N、F、P、S、Cl、Br、Iおよびこれらの組み合わせより選択された1つである。
【0032】
前記化学式1において、b1は、0.8~0.95の範囲であってもよく、より具体的には、b1は、0.82~0.90の範囲であってもよい。化学式1において、Niのモル比が前記範囲を満足する場合、本実施形態による正極活物質をリチウム二次電池に適用する場合、200mAh/g以上の高容量に基づく高エネルギー密度を有する電池を実現できるので、非常に有利である。
【0033】
前記第1化合物は、例えば、Ni0.80Co0.10Mn0.10、Ni0.80Co0.12Mn0.08、Ni0.83Co0.10Mn0.07、Ni0.83Co0.12Mn0.05、Ni0.85Co0.10Mn0.05、Ni0.85Co0.10Mn0.03Al0.02、Ni0.86Co0.09Mn0.03Al0.02、Ni0.88Co0.09Mn0.03、Ni0.9Co0.08Mn0.02、Ni0.95Co0.03Mn0.02のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0034】
前記第1化合物の平均粒径(D50)は、例えば、13.0μm~20.0μmの範囲であってもよく、より具体的には、14.0μm~19.0μmまたは16.0μm~18.0μmであってもよい。第1化合物の平均粒径が前記範囲を満足する場合、第2化合物との混合適用時、圧延密度がさらに上昇するという点で有利な効果を有する。
【0035】
つまり、本開示において、前記第1化合物の平均粒径(D50)は、前記第2化合物の平均粒径(D50)より大きい値を有しうる。
【0036】
本明細書において、平均粒子直径(D50)は、粒度分布において累積体積が50体積%である粒子の直径を意味する。
【0037】
前記第1化合物のタップ密度は、例えば、2.2g/cc~2.8g/ccまたは2.4g/cc~2.7g/ccの範囲であってもよい。第1化合物のタップ密度が前記範囲を満足する場合、高圧延密度の実現の面で有利な効果を有する。
【0038】
本明細書において、タップ密度(tap density)は、単位体積あたりの試料の充填程度を測定するための方法で、当業界にて一般に用いられる方法で測定することができる。例えば、ASTM B527に規定された測定機器および方法に準じて試料を入れた測定用容器を機械的に一定の高さで定められた回数だけ自由落下(tapping)後に変化した体積変化量により計算された密度(試料の重量/体積)である。
【0039】
次に、化学式2で表される第2化合物は下記の通りである。
[化2]
Lia2Nib2Coc2Mnd2M3e2M4f22-f2
【0040】
前記化学式2において、1.0≦a2≦1.1、0.3≦b2<0.75、0.1=c2≦0.4、0.1≦d2≦0.4、0≦e2≦0.05、0≦f2≦0.01、b2+c2+d2+e2=1であり、M3は、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ba、Wおよびこれらの組み合わせより選択された1つであり、M4は、N、F、P、S、Cl、Br、Iおよびこれらの組み合わせより選択された1つである。
【0041】
前記化学式2において、b2は、0.5~0.7の範囲であってもよく、より具体的には、b1は、0.55~0.65の範囲であってもよい。化学式2において、Niのモル比が前記範囲を満足する場合、熱安定性に優れているという利点がある。
【0042】
前記第2化合物は、Ni0.5Co0.2Mn0.3、Ni0.50Co0.25Mn0.25、Ni0.55Co0.20Mn0.25、Ni0.6Co0.2Mn0.2、Ni0.65Co0.15Mn0.20、Ni0.65Co0.17Mn0.18のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0043】
前記第2化合物の平均粒径(D50)は、例えば、3.0μm~6.0μmの範囲であってもよく、より具体的には、3.5μm~5.5μmまたは4.0μm~5.0μmであってもよい。第2化合物の平均粒径が前記範囲を満足する場合、第1化合物との混合適用時、圧延密度がさらに上昇するという点で有利な効果を有する。
【0044】
前記第2化合物のタップ密度は、例えば、1.5g/cc~2.2g/ccまたは1.8g/cc~2.1g/ccの範囲であってもよい。第2化合物のタップ密度が前記範囲を満足する場合、第1化合物との混合適用により高圧延密度を実現できるという点で有利な効果を有する。
【0045】
一方、本実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質、つまり、第1化合物および第2化合物を含む正極活物質の平均粒径は、10.0μm~20.0μmの範囲であってもよい。より具体的には、13.0μm~18.0μmまたは14.0μm~16.0μmの範囲であってもよい。正極活物質の平均粒径が前記範囲を満足する場合、熱安定性に優れ、高エネルギー密度を有するリチウム二次電池の実現が可能という利点がある。
【0046】
前記リチウム二次電池用正極活物質のタップ密度は、例えば、2.2g/cc~2.8g/ccまたは2.4g/cc~2.7g/ccの範囲であってもよい。正極活物質のタップ密度が前記範囲を満足する場合、これを正極に適用する時、高圧延密度を実現できるという点で有利な効果を有する。
【0047】
前述した正極活物質は、リチウム二次電池の正極に有用に使用できる。つまり、一実施形態によるリチウム二次電池は、負極と共に、前述した正極活物質を含む正極と、電解質とを含む。
【0048】
図1には、一実施形態によるリチウム二次電池の構造を概略的に示した。
【0049】
図1を参照すれば、リチウム二次電池30は、正極23と、負極22と、前記正極23と前記負極22との間に配置されたセパレータ24とを含む電極組立体を含むことができる。このような電極組立体は、ワインディングされるか、折り畳まれてケース25に収容される。
【0050】
以後、前記電池容器25に電解質(図示せず)が注入され、封入部材26で密封されてリチウム二次電池30が完成できる。この時、ケース25は、円筒形、角型、薄膜型などの形態を有することができる。
【0051】
前記負極22は、負極活物質、バインダー、および選択的に導電材を混合して負極活物質層形成用組成物を製造した後、これを銅などの負極集電体に塗布して製造できる。
【0052】
前記負極活物質としては、リチウムを挿入/脱離可能な材料が使用され、例えば、リチウム金属やリチウム合金、コークス、人造黒鉛、天然黒鉛、有機高分子化合物燃焼体、炭素繊維などを使用する。
【0053】
前記バインダーとしては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース/スチレン-ブタジエンラバー、ヒドロキシプロピレンセルロース、ジアセチレンセルロース、ポリビニルクロライド、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどを使用することができるが、これに限定されるものではない。前記バインダーは、前記負極活物質層形成用組成物の総量に対して1~30重量%混合できる。
【0054】
前記導電材としては、電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用できる。前記導電材は、前記負極活物質層形成用組成物の総量に対して0.1~30重量%混合できる。
【0055】
前記正極23は、一実施例による正極活物質の製造方法で製造された正極活物質を含む。つまり、前述した正極活物質、バインダー、および選択的に導電材を混合して正極活物質層形成用組成物を製造した後、この組成物をアルミニウムなどの正極集電体に塗布して製造することができる。また、導電材、結合剤および溶媒は、前述した正極の場合と同一に使用される。
【0056】
前記リチウム二次電池30に充填される電解質としては、非水性電解質または公知の固体電解質などを使用することができ、リチウム塩が溶解したものを使用することができる。
【0057】
前記リチウム塩は、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCl、およびLiIからなる群より選択された1種以上を使用することができる。
【0058】
前記非水性電解質の溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類;1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジオキサン、2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類などを使用することができるが、これに限定されるものではない。これらを単独または複数組み合わせて使用可能である。特に、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒を好ましく使用することができる。
【0059】
また、電解質として、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどの重合体電解質に電解液を含浸したゲル状重合体電解質や、LiI、LiNなどの無機固体電解質が可能である。
【0060】
前記セパレータ24は、耐薬品性および疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維、ポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使用できる。電解液としてポリマーなどの固体電解液が使用される場合、固体電解液が分離膜を兼ねることもできる。
【実施例
【0061】
以下、実験例を通じて本発明をより詳細に説明する。このような実験例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明がこれに限定されるものではない。
【0062】
実施例1
(1)正極の製造
運転体積ベースで100Lの共沈反応器を用いて、Ni0.88Co0.09Mn0.03で表される第1化合物、およびNi0.6Co0.2Mn0.2で表される第2化合物を製造した。
【0063】
この時、前記第1化合物の平均粒径(D50)は13.6μmであり、前記第2化合物の平均粒径(D50)は5.3μmであった。
【0064】
全体正極活物質を基準として、前記第1化合物80重量%および第2化合物20重量%を混合して正極活物質を製造した。
【0065】
製造された正極活物質97重量%、アセチレンブラック導電材1.5重量%、ポリビニリデンフルオライドバインダー1.5重量%をN-メチルピロリドン溶媒中で混合して正極活物質スラリーを製造した。
【0066】
前記正極活物質スラリーをアルミニウム(Al)集電体に均等に塗布した後、ロールプレスで圧着した後、100℃の真空オーブンで12時間真空乾燥して正極を製造した。
【0067】
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)で製造した正極および対電極としてリチウム金属(Li-metal)を用い、電解液としてはエチレンカーボネート(EC、Ethylene Carbonate):ジメチルカーボネート(DMC、Dimethyl Carbonate)の体積比率が1:1の混合溶媒に1モルのLiPF溶液を溶解させたものを用いた。
【0068】
前記各構成要素を用いて、通常の製造方法によりコインセルタイプの半電池(half coin cell)を作製した。
【0069】
実施例2
全体正極活物質を基準として、第1化合物90重量%および第2化合物を10重量%混合して正極活物質を製造したことを除けば、前記実施例1と同様の方法で正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0070】
実施例3
全体正極活物質を基準として、第1化合物70重量%および第2化合物を30重量%混合して正極活物質を製造したことを除けば、前記実施例1と同様の方法で正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0071】
実施例4
実施例1を基準として、第1化合物の平均粒径(D50)は18.7μmであり、前記第2化合物の平均粒径(D50)は5.3μmである正極活物質を製造したことを除けば、前記実施例1と同様の方法で正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0072】
実施例5
運転体積ベースで100Lの共沈反応器を用いて、Ni0.85Co0.10Mn0.05で表される第1化合物、およびNi0.6Co0.2Mn0.2で表される第2化合物を製造し、これを混合して正極活物質を製造したことを除けば、実施例1と同様の方法で正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0073】
実施例6
運転体積ベースで100Lの共沈反応器を用いて、Ni0.9Co0.08Mn0.02で表される第1化合物、およびNi0.6Co0.2Mn0.2で表される第2化合物を製造し、これを混合して正極活物質を製造したことを除けば、実施例1と同様の方法で正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0074】
比較例1
(1)正極の製造
運転体積ベースで100Lの共沈反応器を用いて、Ni0.88Co0.09Mn0.03で表される化合物を製造した後、これを含む正極活物質を製造した。
【0075】
製造された正極活物質97重量%、アセチレンブラック導電材1.5重量%、ポリビニリデンフルオライドバインダー1.5重量%をN-メチルピロリドン溶媒中で混合して正極活物質スラリーを製造した。
【0076】
前記正極活物質スラリーをアルミニウム(Al)集電体に均等に塗布した後、ロールプレスで圧着した後、100℃の真空オーブンで12時間真空乾燥して正極を製造した。
【0077】
(2)リチウム二次電池の製造
前記(1)で製造した正極および対電極としてリチウム金属(Li-metal)を用い、電解液としてはエチレンカーボネート(EC、Ethylene Carbonate):ジメチルカーボネート(DMC、Dimethyl Carbonate)の体積比率が1:1の混合溶媒に1モルのLiPF溶液を溶解させたものを用いた。
【0078】
前記各構成要素を用いて、通常の製造方法によりコインセルタイプの半電池(half coin cell)を作製した。
【0079】
比較例2
Ni0.6Co0.2Mn0.2で表される化合物を製造した後、これを含む正極活物質を製造したことを除けば、比較例1と同様の方法で正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0080】
比較例3
Ni0.80Co0.12Mn0.08で表される化合物を製造した後、これを含む正極活物質を製造したことを除けば、比較例1と同様の方法で正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0081】
比較例4
Ni0.83Co0.10Mn0.07で表される化合物を製造した後、これを含む正極活物質を製造したことを除けば、比較例1と同様の方法で正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0082】
比較例5
Ni0.85Co0.10Mn0.05で表される化合物を製造した後、これを含む正極活物質を製造したことを除けば、比較例1と同様の方法で正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0083】
比較例6
直径が14.2μmであり、Ni0.83Co0.10Mn0.07で表される第1化合物、直径が4.8μmであり、Ni0.83Co0.10Mn0.07で表される第2化合物を8:2(第1化合物:第2化合物)の重量比で混合して正極活物質を製造したことを除けば、実施例1と同様の方法で正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0084】
比較例7
直径が14.4μmであり、Ni0.60Co0.20Mn0.20で表される第1化合物、直径が5.3μmであり、Ni0.60Co0.20Mn0.20で表される第2化合物を8:2(第1化合物:第2化合物)の重量比で混合して正極活物質を製造したことを除けば、実施例1と同様の方法で正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0085】
比較例8
直径が13.6μmであり、Ni0.88Co0.09Mn0.03で表される第1化合物、直径が5.3μmであり、Ni0.6Co0.2Mn0.2で表される第2化合物を6:4(第1化合物:第2化合物)の重量比で混合して正極活物質を製造したことを除けば、実施例1と同様の方法で正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0086】
実施例1~6および比較例1~8による大粒および小粒の組成、混合比、粒度および正極活物質の平均組成を下記表1に示した。
【0087】
【表1】
【0088】
実験例1-ペレット密度の測定
(1)ペレットの製造および密度の測定
使用された装置はCARVER 4350Lモデルで、これを用いたペレットの製造およびペレット密度の測定方法は下記の通りである。
【0089】
前記装置で専用加圧モールドに対してブランク(blank)状態での高さをバーニアキャリパー(Vernier calipers)で測定した。
【0090】
次に、実施例1~4および比較例1~2により製造された正極活物質3.0gを入れた後、定められた圧力で30秒間維持した後、加圧モールドに加えられた圧力を解除し、バーニアキャリパーを用いて加圧モールドの高さを測定した。
【0091】
この時、前記正極活物質に対して、2.5トンから5.0トンまで0.5トンの単位で圧力を加えてペレットを製造した。
【0092】
この後、下記の計算式によりペレット密度を計算した。
[計算式]
ペレット密度(g/cm)=活物質の重量(g)/ペレット体積(cm
(ペレット体積=モールド半径×モールド半径×3.14×ペレット高さ)
【0093】
実施例1~3および比較例1~2、8により製造された正極活物質を用いて製造されたペレットに対して、加圧圧力に応じたペレット密度を測定して、その結果を図2に示した。
【0094】
実施例4により製造された正極活物質を用いて製造されたペレットに対して、実施例1により製造された正極活物質を用いて製造されたペレットと比較したペレットの密度の差を図3に示した。
【0095】
実験例2-熱安定性評価
前記実施例1~6および比較例1~8により製造されたリチウム二次電池に対する熱安定性評価を次のように行った。この時、実施例1~2および比較例1~2によるリチウム二次電池は、サンプルを2つずつ製造して熱的安定性を評価し、下記の表にはその平均値を記載した。
【0096】
前記リチウム二次電池を0.2Cで2.5V~4.25Vカット-オフ電圧で1回充放電を実施した後(化成工程(formation))、0.2C、4.25Vカット-オフ電圧で1回充電を実施した。
【0097】
充電が完了した電池から正極を水分のないドライルームで回収した後、DMC(Dimethyl carbonate)で洗浄、自然乾燥で乾燥させる。
【0098】
この後、3pi電極パンチ機を用いて3piの大きさの電極3個(計4.5mgである)を得た。この後、金メッキした(gold plated)30μlの耐圧セルに前記3個の電極と共に、電解液(1M LiPF EC/DMC/EMC=30/40/30(Vol.%))0.5μlを追加した後、示差重量熱分析(DSC:Differential Scanning Calorimetry)装置を用いて熱量変化を測定した。
【0099】
熱量変化の測定は30℃で10分間維持後、30℃で1分あたり10℃の昇温速度で温度を350℃まで上昇させる方法で行った。
【0100】
熱安定性評価の結果、つまり、結晶化開始温度(onset)、最大ピーク温度および計算された発熱量(DSC上の発熱数値曲線を温度に対して積分した数値)の値を下記表2に示した。
【0101】
【表2】
【0102】
実験例3-電気化学的特性評価
前記実施例1~6および比較例1~8により製造されたリチウム二次電池に対して充電および放電容量を評価した。
【0103】
まず、一定の電流が印加される充放電器(Toscat-3000)を用いて、25℃、2.5V~4.25Vの範囲内で0.2Cで充電および放電を実施して、初期充放電容量および効率を下記表3に示した。
【0104】
【表3】
【0105】
表1~表3を参照すれば、実施例1~6により製造されたリチウム二次電池は、同一の組成の比較例に比べて熱安定性に優れているとともに、非常に高い充放電容量を有することを確認できる。これに対し、大粒正極活物質のみ適用した比較例1および3~5によるリチウム二次電池は、熱安定性が低下したり、充電または放電容量が小さいことが分かる。また、小粒正極活物質のみ適用した比較例2によるリチウム二次電池も、充放電容量が顕著に低いことが分かる。
【0106】
同時に、正極活物質が大粒および小粒をすべて含んでも、これら大粒および小粒のニッケル含有量がいずれも0.75以上である比較例6によるリチウム二次電池は、熱安定性が顕著に低下し、および充電および放電容量が非常に低いことが分かる。また、正極活物質の大粒および小粒のニッケル含有量がいずれも0.75未満である比較例7によるリチウム二次電池は、熱安定性には優れているが、充電および放電容量が非常に低いことが分かる。
【0107】
一方、正極活物質において大粒および小粒をすべて含むが、大粒の含有量が65重量%未満である比較例8によるリチウム二次電池の場合、図2を参照すれば、非常に低いペレット密度を示すことが分かる。つまり、正極活物質において小粒の含有量が増加する場合、結果として、正極活物質の平均粒度および表面積が増加し、これによって低いペレット密度を示し、このため、リチウム二次電池のエネルギー密度が低下する問題点がある。
【0108】
本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例はあらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0109】
30:リチウム電池
22:負極
23:正極
24:セパレータ
25:電池容器
26:封入部材
図1
図2
図3
【国際調査報告】