(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(54)【発明の名称】トレンチゲートIGBT及び装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/739 20060101AFI20220127BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
H01L29/78 655A
H01L29/78 653A
H01L29/78 652K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534149
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 CN2019125812
(87)【国際公開番号】W WO2020135138
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】201811589486.1
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521007481
【氏名又は名称】▲広▼▲東▼美的白色家▲電▼技▲術▼▲創▼新中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG MIDEA WHITE HOME APPLIANCE TECHNOLOGY INNOVATION CENTER CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Building #4,Midea Global Innovation Center,Industry Boulevard,Beijiao,Shunde Foshan,Guangdong 528311,CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】512237419
【氏名又は名称】美的集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MIDEA GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】B26-28F, Midea Headquarter Building, No.6 Midea Avenue, Beijiao, Shunde, Foshan, Guangdong 528311 China
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】▲蘭▼ 昊
(72)【発明者】
【氏名】▲馮▼ 宇翔
(57)【要約】
本願の実施例は、従来技術のトレンチゲートIGBTを改良したトレンチゲートIGBTであって、エミッタと、pウェル領域と、ゲートと、ゲート酸化層と、ドリフト領域と、裏面コレクタとを備え、前記ゲートはトレンチ内に位置し、それとエミッタ、pウェル領域、およびドリフト領域との間がゲート酸化層によって分離され、前記トレンチは基板の内部に設けられ、それとドリフト領域との境界に複数の凹みを有するトレンチゲートIGBTおよび装置を提供する。トレンチゲートIGBTのスイッチング過程において、前記トレンチの側面とドリフト領域の界面に、電子電荷を拘束し蓄積することができる複数の凹んだゲート酸化層を有することで、伝導能力を向上させ、従来技術におけるトレンチゲートIGBTのスイッチング消費電力が高すぎるという技術的課題を解決して、トレンチゲートIGBTのスイッチング消費電力を低減するという有益な効果を奏する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートとドリフト領域を備え、前記ゲートと、前記ゲートと対応する、基板の内部に設けられたトレンチとの表面にゲート酸化層が設けられるトレンチゲートIGBTにおいて、
前記トレンチの側面とドリフト領域とで形成された界面に複数の凹みを有することを特徴とするトレンチゲートIGBT。
【請求項2】
前記複数の凹みは、トレンチ内に均等に配列されている
ことを特徴とする請求項1に記載のトレンチゲートIGBT。
【請求項3】
前記トレンチとドリフト領域との界面部分に対応するゲート酸化層は、前記トレンチの他の部分に対応するゲート酸化層よりも厚さが厚い
ことを特徴とする請求項1に記載のトレンチゲートIGBT。
【請求項4】
前記複数の凹みからなる界面は、トレンチゲートIGBTの側断面視において、正弦波、矩形波、三角波および階段波のいずれか1つまたは複数の形状の組み合わせを構成する
ことを特徴とする請求項1に記載のトレンチゲートIGBT。
【請求項5】
前記トレンチ内に充填されたポリシリコンゲートをさらに備え、前記ポリシリコンゲートとトレンチとはゲート酸化膜によって分離されている
ことを特徴とする請求項1に記載のトレンチゲートIGBT。
【請求項6】
半導体基板の上部であって、ドリフト領域の上方に配置され、
前記ドリフト領域および前記トレンチに接続した
pウェル領域をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載のトレンチゲートIGBT。
【請求項7】
半導体基板の裏面であって、ドリフト領域の下方に配置されたコレクタと、
前記pウェル領域および前記トレンチにそれぞれ接続したエミッタと、
をさらに備える
ことを特徴とする請求項6に記載のトレンチゲートIGBT。
【請求項8】
前記ドリフト領域の底部と前記コレクタとの間に位置するバッファ層をさらに備える
ことを特徴とする請求項7に記載のトレンチゲートIGBT。
【請求項9】
半導体基板は、単結晶構造のシリコン基板である
ことを特徴とする請求項1に記載のトレンチゲートIGBT。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のトレンチゲートIGBTを備えることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2018年12月25日に提出された出願番号が2018115894861、発明の名称が「トレンチゲートIGBT及び装置」である中国特許出願の優先権を主張するものであり、その全体が援用により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は半導体技術分野に関し、特にトレンチゲートIGBT及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
絶縁ゲート型バイポーラジャンクショントランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBTと略称する)は、バイポーラトランジスタ(BJT)と絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(MOSFET)からなる複合完全制御型の電圧駆動式パワー半導体素子であり、MOSFET素子の高入力インピーダンスとパワートランジスタ(即ち、ジャイアントトランジスター、GTRと略称する)の低オン電圧降下の両方の利点を兼ね備えており、IGBTは駆動電力が小さく飽和電圧降下が低下するという利点を持っているため、現在、新しい電気・電子素子として様々な分野に広く適用されている。
【0004】
IGBTは、また、プレーナゲートIGBTとトレンチゲートIGBTにさらに分けることができ、トレンチゲートIGBTの性能は、動的特性と静的特性に分けることができる。このうち、静的特性は、主にトレンチゲートIGBTのオン電圧降下に現れ、オン電圧降下が低いほど、トレンチゲートIGBTのオン消費電力が低くなり、その静的特性が良くなる。オン特性は、動的消費電力に影響を与える重要なパラメータの1つである。
【0005】
現在、従来技術におけるトレンチゲートIGBTの動的電力消費が特殊な応用シナリオの要求を満たすことができないことは、半導体技術分野で早急な解決の待たれる技術的課題の一つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の実施例は、従来技術におけるトレンチゲートIGBTの動的電力消費が高すぎるという技術的課題を解決して、トレンチゲートIGBTの動的電力消費を低減するという有益な効果を奏するためのトレンチゲートIGBT及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の実施例の第1の側面によれば、ゲートとドリフト領域を備え、前記ゲートと、前記ゲートと対応する、基板の内部に設けられたトレンチとの表面にゲート酸化層が設けられるトレンチゲートIGBTにおいて、前記トレンチの側面とドリフト領域とで形成された界面に複数の凹みを有するトレンチゲートIGBTが提供される。
【0008】
さらに、前記複数の凹みは、トレンチ内に均等に配列されている。
【0009】
さらに、前記トレンチとドリフト領域との界面部分に対応するゲート酸化層は、前記トレンチの他の部分に対応するゲート酸化層よりも厚さが厚い。
【0010】
さらに、前記複数の凹みからなる界面は、トレンチゲートIGBTの側断面視において、正弦波、矩形波、三角波および階段波のいずれか1つまたは複数の形状の組み合わせを構成する。
【0011】
さらに、前記トレンチ内に充填されたポリシリコン層をさらに備え、前記ポリシリコン層とトレンチとはゲート酸化層によって分離され、前記ゲートは多結晶シリコン層の上方に配置される。
【0012】
さらに、半導体基板の上部であって、ドリフト領域の上方に配置され、
前記ドリフト領域および前記トレンチに接続した
pウェル領域をさらに備える。
【0013】
さらに、半導体基板の裏面であって、ドリフト領域の下方に配置されたコレクタと、
前記pウェル領域および前記トレンチにそれぞれ接続したエミッタと、
をさらに備える。
【0014】
さらに、前記ドリフト領域の底部と前記コレクタとの間に位置するバッファ層をさらに備える。
【0015】
さらに、半導体基板は、単結晶構造のシリコン基板である。
【0016】
本願の実施例の第2の側面によれば、上記のいずれかに記載のトレンチゲートIGBTを備える装置が提供される。
【0017】
本願の実施例は、従来技術のトレンチゲートIGBTを改良したトレンチゲートIGBTであって、ゲートを備え、前記ゲートと、前記ゲートと対応する、基板の内部に設けられたトレンチとの表面にゲート酸化層が設けられ、前記トレンチの側面とリフト領域とで形成された境界に複数の凹みを有するトレンチゲートIGBT及び装置を提供する。トレンチゲートIGBTのスイッチング過程において、前記凹みに対応するゲート酸化層が電子電荷を拘束し蓄積することができることで、伝導能力を向上させ、従来技術におけるトレンチゲートIGBTの動的消費電力が高すぎるという技術的課題を解決して、トレンチゲートIGBTの動的消費電力を低減するという有益な効果を奏する。
【0018】
本願の実施例又は従来技術における技術方案をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明するが、明らかに、以下の説明における図面は、本願の一部の実施例を示しているに過ぎず、当業者にとっては、創作的な労力なしで前述の図面により他の図面を導き出すことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】従来技術のトレンチゲートIGBTチップの断面構造模式図。
【
図2】本願の実施例で提供されるトレンチゲートIGBTチップの断面構造模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願の実施例の目的、技術方案および利点をより明確にするために、以下、本願の実施例における図面を参照して、本願の実施例における技術方案を明確に、かつ、全面的に説明するが、明らかに、説明される実施例は、本発明の実施例の全てというよりは一部に過ぎない。創作的な労力なしで本願の実施例に基づいて当業者によって得られる他の実施例は全て、本願の保護範囲内に含まれる。
【0021】
トレンチゲートIGBTの性能は、動的特性と静的特性に分けることができる。このうち、静的特性は、主にトレンチゲートIGBTのオン電圧降下に現れ、オン電圧降下が低いほど、トレンチゲートIGBTのオン消費電力が低くなり、その静的特性が良くなる。オン特性は、動的消費電力に影響を与える重要なパラメータの1つである。
【0022】
従来技術のトレンチゲートIGBTチップは、その断面模式図である
図1に示すように、エミッタA101、トレンチA121、トレンチゲート酸化層A122、ポリシリコンゲートA123、pウェル領域A103、ドリフト領域A104およびコレクタA105を備える。
【0023】
IGBTはターンオンすると、エミッタA101からドリフト領域A104に電子が注入され、コレクタA105からドリフト領域A104に正孔が注入され、電子と正孔がドリフト領域A104で伝導度変調効果を起こし、IGBTのオン電圧降下が低くなる。IGBTはターンオフするときに、ドリフト領域A104中の正孔が、主にドリフト領域A104中の電子と再結合することによって消滅し、これによりIGBTのターンオフが実現されるが、正孔と電子の再結合速度が比較的低いため、IGBTのターンオフに比較的長い時間が要し、ひいてはIGBTのターンオフ消費電力も比較的高い。
【0024】
上記の少なくとも1つの技術的課題を解決するために、本願の実施例は、ゲートを備え、前記ゲートと、前記ゲートと対応する、基板の内部に設けられたトレンチとの表面にゲート酸化層が設けられ、前記トレンチとリフト領域との境界に複数の凹みを有するトレンチゲートIGBTを提供して、トレンチゲートIGBTの動的消費電力を低減するという有益な効果を奏する。
【0025】
以下、図面を参照して本願を実施するための形態について説明する。
【0026】
図2は、本願の実施例で提供されるトレンチゲートIGBTチップの断面構造模式図である。
【0027】
図2を参照すると、本願の実施例で提供されるトレンチゲートIGBTチップは、シリコンウェーハ基板と、シリコンウェーハ基板の第1の表面上の能動領域A200およびドリフト領域A204と、シリコンウェーハの第2の表面上のコレクタA205とを備え、前記ドリフト領域A204は前記能動領域A200とコレクタA205とを接続している。
【0028】
前記能動領域A200は、エミッタA201、トレンチA221、ポリシリコン層A223、波形トレンチゲート酸化層A224、pウェル領域A203を備える。エミッタA201およびpウェル領域A203に隣接する部分のトレンチA221には、通常のトレンチゲート酸化層A222が形成され、ドリフト領域A204に隣接する部分のトレンチA221における複数の凹みは均一な波形を構成し、その上に波形トレンチゲート酸化層A224が形成された。前記pウェル領域A203は、前記エミッタA201と前記ドリフト領域A204とを接続し、前記トレンチA221は、前記エミッタA201、前記pウェル領域A203、および前記ドリフト領域A204を貫通している。前記エミッタA201およびpウェル領域A203に隣接する通常のトレンチゲート酸化層A222と、前記ドリフト領域A204に隣接する波形トレンチゲート酸化層A224とは、前記トレンチA221の表面を覆い、前記ポリシリコン層A223は前記トレンチA221の中に充填された。
【0029】
なお、トレンチA221とドリフト領域A204との境界にある凹みはそれぞれ、異なる形状であることも同じ形状であることもできるが、本願の実施例は、特に限定されない。また、各凹みの形状は、矩形、三角形、円弧形、台形などであることができるが、本願の実施例も特に限定されない。
【0030】
さらに、本願の実施例で提供されるトレンチゲートIGBTは、前記ドリフト領域の底部と前記コレクタとの間に位置するバッファ層A206をさらに備える。ここで、バッファ層は電界遮断が可能であり、IGBTの破壊または早期破壊を十分且つ効果的に防止することができるという有益な効果を有する。
【0031】
またさらに、前記凹みは、開口がドリフト領域A204に向かっている鈍角または鋭角を形成しても良い。
【0032】
またさらに、能動領域とは、シリコンウェーハ上の能動素子として用いられる領域である。能動領域では、外部から適切なバイアス電圧を印加しなければ正常に動作できない素子が必要となる。例えば、BJTでは、エミッタ接合が正にバイアスされ、コレクタ接合が逆バイアスされ、増幅動作状態となる。バイアス電圧が異なると、トランジスタの動作状態が異なる。また、MOSトランジスタも同様に、ゲートに電圧を印加して、チャネルが反転した場合だけで動作することができる。そうでない場合は、ソース-ドレインにどのように電圧を印加しても、トランジスタは動作しない。このように、外部からの電源供給がなければ動作できない素子を能動素子という。従って、一般的に、2つのポートである(ダイオードが例外的に能動素子である)のは受動素子であり、3個以上のポートであるのは能動素子である。
【0033】
本願は、ドリフト領域に隣接するトレンチの側面に複数の凹みを設けることで、ドリフト領域に隣接するトレンチの厚さを比較的厚くし、ゲート容量を低減し、スイッチング速度を向上させる。一方、IGBTのスイッチング過程において、凹みに対応するゲート酸化層の境界には、凹み構造を有するため、電子電荷を拘束し蓄積することができ、伝導能力を向上させる。これにより、IGBTのスイッチング時間の短縮、並びにオン特性の向上、IGBTの消費電力の低減が実現される。
【0034】
前記複数の凹みからなる面は、トレンチゲートIGBTの側断面視において、正弦波、矩形波、三角波および階段波のいずれか1つまたは複数の形状の組み合わせを構成する。
【0035】
図2を参照すると、本願で提供されるトレンチゲートIGBTチップは、シリコンウェーハ基板と、シリコンウェーハの第1の表面上の能動領域A200およびドリフト領域A204と、シリコンウェーハの第2の表面上のコレクタA205とを備え、前記ドリフト領域A204は前記能動領域A200とコレクタA205とを接続している。
【0036】
前記能動領域A200は、エミッタA201、トレンチA221、通常のトレンチゲート酸化層A222、ポリシリコン層A223、波形トレンチゲート酸化層A224、pウェル領域A203を備える。前記pウェル領域A203は、前記エミッタA201と前記ドリフト領域A204とを接続し、前記トレンチA221は、前記エミッタA201、前記pウェル領域A203、および前記ドリフト領域A204を貫通している。前記エミッタA201およびpウェル領域A203に隣接する通常のトレンチゲート酸化層A222と、前記ドリフト領域A204に隣接する波形トレンチゲート酸化層A224とは、前記トレンチA221の表面を覆い、前記ポリシリコン層A223は前記トレンチA221の中に充填された。
【0037】
前記通常のトレンチゲート酸化層A222は波形トレンチゲート酸化層A224とともにゲート酸化層を構成する。前記通常のトレンチゲート酸化層A222の厚さは0.15μmであり、前記トレンチA221は幅1.5μm、深さ5.5μm~10μmであり、前記波形トレンチゲート酸化膜A224は、複数回の異方性及び等方性エッチング後に酸化、沈積することによって得られる。前記エミッタA201の厚さは0.5um、pウェル領域A203の厚さは2.8um、ドリフト領域A204の厚さは70um、コレクタA205の厚さは0.5umである。前記エミッタA201のドーピング濃度は5×1019/cm-3、前記pウェル領域A203のドーピング濃度は4×1016/cm-3、前記ドリフト領域A204のドーピング濃度は、1.5×1014/cm-3、前記コレクタA205のドーピング濃度は、8×1017/cm-3である。
【0038】
IGBTでは、オンになると、エミッタA201からドリフト領域A204に電子が注入され、コレクタA205からドリフト領域A204に正孔が注入された。本実施例は、IGBTのスイッチング特性とオン特性に応じて、ドリフト領域A204に隣接する通常のトレンチゲート酸化層A222を、複数回の異方性および等方性エッチング等のプロセスにより波形ゲート酸化層A224とする。このため、トレンチA221とドリフト領域との境界部分に対応するゲート酸化層は、ゲート酸化層厚が比較的厚くなり、ゲート容量が低下し、スイッチング速度が向上した。一方、波形トレンチゲート酸化層A224の波の間のノッチ部分は、IGBTのスイッチング過程において電子電荷を拘束し蓄積することができ、これにより、伝導能力を向上させる。
【0039】
本願の上述したいずれかの実施例に基づいて、上記のいずれかのトレンチゲートIGBTを備える装置を提供する。
【0040】
IGBTは、電気・電子分野における主流を占める重要なハイパワー素子の一つとして、家電製品、交通輸送、パワーエンジニアリング、再生可能エネルギー、およびスマートグリッドなどの分野で広く用いられている。産業用途には、例えば、交通制御、電力変換、産業用モータ、無停電電源装置、風力発電および太陽光発電装置、ならびに自動制御用のインバータがある。大衆消費電子製品では、IGBTは、家電製品、カメラ、携帯電話に用いられている。本願の実施例に記載の装置の種類は特に限定されず、IGBTが適用される装置であれば本願の実施例が保護する装置であると考えられる。
【0041】
最後に、本願の実施例は、従来技術のトレンチゲートIGBTを改良したトレンチゲートIGBTであって、ゲートを備え、前記ゲートと、前記ゲートと対応する、基板の内部に設けられたトレンチとの表面にゲート酸化層が設けられ、前記トレンチとリフト領域との境界に複数の凹みを有するトレンチゲートIGBT及び装置を提供する。トレンチゲートIGBTのスイッチング過程において、前記トレンチとリフト領域との境界に複数の凹みに対応するゲート酸化層が電子電荷を拘束し蓄積することができることで、伝導能力を向上させ、従来技術におけるトレンチゲートIGBTの動的消費電力が高すぎるという技術的課題を解決して、トレンチゲートIGBTの動的消費電力を低減するという有益な効果を奏する。
【0042】
上述した装置実施例は例示的なものに過ぎず、ここで、上記独立の部材として記述されたユニットは、物理的に独立するものであってもよいし、そうでないものであってもよく、ユニットとして表示された部材は、物理的なユニットであってもよいし、そうでないものであってもよく、1つの箇所にあってもよいし、複数のネットワークユニットに分布していてもよい。本実施例における方案の目的を実現するために、実際のニーズに応じてその一部又は全部のモジュールを選択することができる。これは、当業者が創作的な労力なしで理解して実施できることである。
【0043】
上記の実施態様の説明から、各実施態様が、必要な汎用ハードウェアプラットフォームに加えて、ソフトウェアによって実現されることは当業者にとって明らかであり、ハードウェアによっても実現できることは言うまでもない。このような理解に基づき、上記の技術方案は本質的に、または従来技術に寄与する部分は、ソフトウェア製品の形で実現され得、そのコンピュータソフトウェア製品は、例えばROM/RAM、磁気ディスク、光ディスクなどのコンピュータ可読記憶媒体内に記憶され、コンピュータ装置(コンピュータ、サーバ、またはネットワーク装置などであってよい)を各実施例または実施例の一部に記載の方法を実行させるように指示するためのいくつかの命令を含んでもよい。
【0044】
最後に説明する必要があるのは、上記の実施例は本願の技術方案を説明するためのものに過ぎず、それを限定する意図はない。前述の実施例を参照して本願を詳細に説明したが、当業者は、本願の前述の各実施例における技術方案の精神と範囲から実質的に逸脱することなく、その実施例に記載の技術方案についてさらに修正を行い得るか、又は、それらのいくつかの技術的特徴について等価な置換を行い得る、ということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0045】
A101 エミッタ
A103 pウェル領域
A104 ドリフト領域
A105 コレクタ
A121 トレンチ
A123 ポリシリコンゲート
A201 エミッタ
A203 pウェル領域
A204 ドリフト領域
A205 コレクタ
A206 バッファ層
A221 トレンチ
【国際調査報告】