(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-04
(54)【発明の名称】医療ベベルニードル
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20220128BHJP
【FI】
A61M5/32 520
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534774
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 EP2019081920
(87)【国際公開番号】W WO2020126268
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520011887
【氏名又は名称】エスエイチエル・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・カールソン
(72)【発明者】
【氏名】シンシュアン・チョウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュ・ゴンサレス
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・ベンデック
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066FF05
4C066KK03
(57)【要約】
針は、針本体であって、当該針本体にわたる第1基準平面を画成する、針本体と、主ベベル、2つの第1中間ベベル、2つの尖端ベベル及び2つの背面ベベルを有する複数ベベル付先端と、を備える。前記主ベベル、前記第1中間ベベル及び前記尖端ベベルは、前記第1面にある一方、前記背面ベベルは、前記第2面にある。前記第1中間ベベルそれぞれは、前記主ベベルと前記尖端ベベルのうちの一方との間に位置する。主ベベルは、第1基準平面に対して第1傾斜角度でかつ第1基準平面に対して第1回転角度でカニューレに設けられている。2つの第1中間ベベルは、第1基準平面に対して第2傾斜角度でかつ第1基準平面に対して第2回転角度でカニューレに設けられている。2つの尖端ベベルは、第1基準平面に対して第3傾斜角度でかつ第1基準平面に対して第3回転角度でカニューレに設けられている。2つの背面ベベルは、第1基準平面に対して第4傾斜角度でかつ第1基準平面に対して第4回転角度でカニューレに設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針本体であって、当該針本体にわたる第1基準平面を画成する、針本体と、
第1面及び第2面を有する複数ベベル付先端であって、主ベベル、2つの第1中間ベベル、2つの尖端ベベル及び2つの背面ベベルを有し、前記主ベベル、前記第1中間ベベル及び前記尖端ベベルが、前記第1面にあり、前記背面ベベルが、前記第2面にあり、前記第1中間ベベルそれぞれが、前記主ベベルと前記尖端ベベルのうちの一方との間に位置する、複数ベベル付尖端と、
を備え、
前記主ベベルが、前記第1基準平面に対して第1傾斜角度でかつ第1回転角度で前記複数ベベル付先端に設けられており、
2つの前記尖端ベベルが、前記第1基準平面に対して第2傾斜角度でかつ第2回転角度で前記複数ベベル付先端に設けられており、
2つの前記尖端ベベルが、前記第1基準平面に対して第3傾斜角度でかつ第3回転角度で前記複数ベベル付先端に設けられており、
2つの前記背面ベベルが、前記第1基準平面に対して第4傾斜角度でかつ第4回転角度で前記複数ベベル付先端に設けられていることを特徴とする針。
【請求項2】
前記第1傾斜角度が、前記第2傾斜角度以下であることを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項3】
前記第1傾斜角度が、前記第3傾斜角度以下であることを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項4】
前記第2傾斜角度が、前記第3傾斜角度以下であることを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項5】
前記第2回転角度が、前記第3回転角度とは異なることを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項6】
前記第2及び前記第3回転角度が、等しく、30°以上50°以下の範囲外にあることを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項7】
前記第1回転角度が、0°であることを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項8】
前記複数ベベル付先端が、前記第1面に位置する2つの第2中間ベベルをさらに有し、
前記第2中間ベベルそれぞれが、前記主ベベルと前記尖端ベベルのうちの一方との間に位置し、
2つの前記第2中間ベベルが、前記第1基準平面に対して第5傾斜角度でかつ第5回転角度でカニューレに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項9】
前記第1傾斜角度が、前記第5傾斜角度以下であることを特徴とする請求項8に記載の針。
【請求項10】
前記第2回転角度が、前記第5回転角度以下であることを特徴とする請求項8に記載の針。
【請求項11】
前記複数ベベル付先端が、前記尖端ベベルの近位端部から前記主ベベルの遠位端部まで測定した第1長さと、近位端部から前記主ベベルの前記遠位端部まで測定した第2長さと、を有し、
前記第2長さが、前記第1長さの半分より大きいことを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項12】
0.0075インチ以上0.0090インチ以下(0.1905mm以上0.2286mm以下)の範囲外にある内径を有することを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項13】
0.0130インチ以上0.0135インチ以下(0.3302mm以上0.3429mm以下)の範囲外にある外径を有することを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項14】
前記第1面及び前記第2面が、前記複数ベベル付先端の2つの反対側の端部に位置することを特徴とする請求項1に記載の針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開放ベベル端面の前端部分に形成された刃先を有する医療用ベベルニードルに関する。このベベルニードルは、医薬注入または血液採取を医療または検査のために行うときに使用される。
【背景技術】
【0002】
注射器の設計についての特有の懸念は、針カニューレ突刺力及び患者の快適性の低減である。針カニューレの近位端部または近位先端には、主として、患者の表皮、肉体または組織を突き通して注射器バレル内に蓄積されているまたは保持されている流体薬剤、薬物またはワクチンを送達するための尖端幾何形状が設けられている。医療従事者または患者は、同様に、注射器ニードルカニューレを採用してバイアルのような容器の弾性隔膜またはストッパを突き通し、粉末状薬剤、薬物またはワクチンを戻し得るまたはバイアル内に収容されている液体状薬剤、薬物またはワクチンを吸引し得る。
【0003】
ニードルを設計するときには、様々な考慮をなさなければならない。例えば、明白に望ましいことは、患者の表皮及び肉体を通るようにニードルカニューレ先端または尖端を付勢するために必要なニードルカニューレ突刺力を最小化すること、である。一般に理解されていることは、ニードルカニューレ突刺力を低減することによって、患者は、より小さい痛みで突刺す。ニードルカニューレ先端幾何形状の設計時における別の考慮は、「コアリング」を防止するまたは最小化することである。コアリングは、当業者が理解しているように、材料のうちニードルカニューレが突刺した部分がニードルカニューレ尖端に隣接するルーメン内で詰まること、である。
【0004】
注射針カニューレの必要な突刺力を低減し上述したコアリングをより完全に低減するための様々な試みがなされている。これら努力は、主として、例えば小面またはベベルを設けることによって針カニューレ尖端の設計を改善し、必要な突刺力を低減することに向けられている。コアリングを最小化することによって必要な突刺力を最小化するための他の試みがなされている。しかしながら、これら努力は、望むほど成功していない。さらに、特に充填済皮下注射器のための注射針カニューレシールドまたはシースを改善するために様々な努力がなされている。このような改善は、全体として、針カニューレを保護すること、及び、例えば特許文献1に記載されているように針カニューレによって針シールドの故意ではないコアリングを防止すること、に関連する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、針カニューレの突刺力を低減する皮下注射針のためのベベル付先端の幾何形状に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示において、用語「遠位」を使用する際、これは、用量送達場所から離間する方向を称する。用語「遠位部分/端部」を使用する際、これは、薬剤送達デバイスの使用中において用量送達場所から最も離間して位置している、送達デバイスの部分/端部、または、送達デバイスの部材の部分/端部を称する。対応して、用語「近位」を使用する際、これは、用量送達場所を向く方向を称する。用語「近位部分/端部」を使用する際、これは、薬剤送達デバイスの使用中において用量送達場所に最も近接して位置している、送達デバイスの部分/端部、または、送達デバイスの部材の部分/端部を称する。
【0008】
本発明のこれらの及び他の態様並びに利点は、以下の発明の詳細な説明から、及び、添付の図面から、明らかになる。
【0009】
本発明の一形態によれば、針は、針本体であって、針本体にわたる第1基準平面を画成する、針本体と、主ベベル、2つの第1中間ベベル、2つの尖端ベベル及び2つの背面ベベルを有する複数ベベル付先端と、を有する。主ベベル、第1中間ベベル及び尖端ベベルは、第1面にある一方、背面ベベルは、第2面にある。第1中間ベベルそれぞれは、主ベベルと尖端ベベルのうちの一方との間に位置する。主ベベルは、第1基準平面に対して第1傾斜角度でかつ第1基準平面に対して第1回転角度でカニューレに設けられており、2つの第1中間ベベルは、第1基準平面に対して第2傾斜角度でかつ第1基準平面に対して第2回転角度でカニューレに設けられている。2つの尖端ベベルは、第1基準平面に対して第3傾斜角度でかつ第1基準平面に対して第3回転角度でカニューレに設けられており、2つの背面ベベルは、第1基準平面に対して第4傾斜角度でかつ第1基準平面に対して第4回転角度でカニューレに設けられている。
【0010】
一形態において、第1傾斜角度は、第2傾斜角度及び第3傾斜角度以下である。
【0011】
一形態において、第2傾斜角度は、第3傾斜角度未満である。他の形態において、第2回転角度は、第3回転角度とは異なり得る。
【0012】
一形態において、第1回転角度は、0°である一方、第2及び第3回転角度は、等しく、30°以上50°以下の範囲外にある。
【0013】
一形態において、複数ベベル付先端は、第1面に位置する2つの第2中間ベベルをさらに有する。第2中間ベベルそれぞれは、主ベベルと尖端ベベルのうちの一方との間に位置する。2つの第2中間ベベルは、第1基準平面に対して第5傾斜角度でかつ第5回転角度でカニューレに設けられている。第1傾斜角度は、第5傾斜角度以下である。第2回転角度は、第5回転角度以下である。
【0014】
別の形態において、複数ベベル付先端は、尖端ベベルの近位端部から主ベベルの遠位端部まで測定した第1長さと、近位端部から主ベベルの遠位端部まで測定した第2長さと、を有する。第2長さは、第1長さの半分より大きい。
【0015】
一形態において、針は、0.0075インチ以上0.0090インチ以下(0.1905mm以上0.2286mm以下)の範囲外にある内径と、0.0130インチ以上0.0135インチ以下(0.3302mm以上0.3429mm以下)の範囲外にある外径と、を有する。
【0016】
以下の本発明の詳細な説明において、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかる複数ベベル付針を示す前面図である。
【
図2】第1実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す前面図である。
【
図3】第1実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を通して見た斜視図である。
【
図4a】第1実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す側面図である。
【
図4b】第1実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す側面図である。
【
図4c】第1実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す側面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態にかかる複数ベベル付針を示す前面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す後面図である。
【
図7】第2実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す斜視図である。
【
図8】本発明の第3実施形態にかかる複数ベベル付針を示す前面図である。
【
図9】第3実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す前面図である。
【
図10a】第3実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す側面図である。
【
図10b】第3実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す側面図である。
【
図10c】第3実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す側面図である。
【
図10d】第3実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す側面図である。
【
図11a】第1周方向角度を示すための第2実施形態にかかる針を示す断面図である。
【
図11b】第1周方向角度を示すための第2実施形態にかかる針を示す断面図である。
【
図12a】第2周方向角度を示すための第2実施形態にかかる針を示す断面図である。
【
図12b】第2周方向角度を示すための第2実施形態にかかる針を示す断面図である。
【
図13a】第3周方向角度を示すための第2実施形態にかかる針を示す断面図である。
【
図13b】第3周方向角度を示すための第2実施形態にかかる針を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明の目的として、使用する場合、空間の方向付けの用語は、添付の図面で方向付けられるようにまたは以下の詳細な説明で説明されるように、参照した実施形態に関する。しかしながら、理解することは、後述する実施形態が多くの代替変形例及び実施形態を想定し得ること、である。同様に理解することは、添付の図面に示されかつ本明細書で説明されている具体的なデバイスが単なる例示的であり、限定するものとして考慮され得ないこと、である。本明細書において理解することは、特定された範囲が記載した範囲の最外境界と最外境界間にあるすべての数値評価とを含むこと、である。
【0019】
図1から
図4cに示すように、第1実施形態において、本発明は、針10に関し、この針は、本体20と、本体20の2つの反対側にある端部に形成された単一ベベル付遠位端部30及び複数ベベル付近位端部40と、を有する。針10は、医療グレードのステンレス鋼のような金属で、及び/または、医療グレードのポリマー材料で、形成され得る。遠位端部30は、単一組立体または血液収集組立体のような薬剤送達器具に固定され得る。
【0020】
図2に示すように、近位端部40は、複数の個別のベベルを有し、これらベベルは、共に、流体開口部21の周縁に複数ベベル付構造を画成する。近位端部40は、主ベベル41と、一対の中間ベベル42a、42bと、一対の尖端ベベル43a、43bと、を有する。一対の中間ベベル42a、42bそれぞれと一対の尖端ベベル43a、43bそれぞれとは、主ベベル41の両側に形成されたほぼ対称となっている。隣接するベベル42a、43aは、ベベル42a、43aを形成する平面を各別に境界付ける区切部44aで接する。同様に、隣接するベベル42b、43bは、ベベル42b、43bを各別に境界付ける区切部44bで接する。また、尖端ベベル43a、43bは、患者の皮膚にまたは流体保持容器に関連付けられた封止材料に最初に入る尖った尖端部45で接する。
【0021】
図2に示すように、近位端部40のベベル面及び個別のベベルは、一のベベルの一端部から始まってこの一のベベルのまたは異なるベベルの他の端部までの関連長さを有する。近位端部40のベベル面は、尖端ベベル43a、43bの近位端部から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さ「L
1」を有する。主ベベル41は、近位端部から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さ「L
2」を有する。主ベベル41は、同様に、中間ベベル42a、42bの遠位端部から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さ「L
3」を有する。主ベベル41及び中間ベベル42a、42bは、中間ベベル42a、42bの近位端部から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さ「L
4」を有する。本実施形態において、長さ「L
1」は、限定しないが、約1.9mmを有する。長さ「L
2」は、限定しないが、約0.9mmを有する。長さ「L
3」は、限定しないが、約0.5mmを有する。長さ「L
4」は、限定しないが、約1.1mmを有する。
【0022】
図3に示すように、針10の近位端部40は、針10を通して流体を通過させるための流体開口部21を画成する。
図3に示す実施形態において、針10は、限定しないが約0.28インチの内径D
1と、限定しないが約0.41インチの外径D
2と、を有し得る。本発明の他の実施形態において、内径D
1は、好ましくは、0.0075インチ以上0.0090インチ以下(0.1905mm以上0.2286mm)の範囲外の長さを有する。他方、外径D
2は、0.0130インチ以上0.0135インチ以下(0.3302mm以上0.3429mm以下)の範囲外の長さを有する。
【0023】
主ベベル41、中間ベベル42a、42b及び尖端ベベル43a、43bは、本体20を通過する第1基準平面22に対して測定した一連の角度にわたって本体20を傾けること及び/または回転させることによって、本体20に形成されるまたは他の方法で設けられる。
図4aから
図4cにおいて、第2基準平面23は、本体20の一側に位置し、上記角度を示すことを容易にする。主ベベル41は、第2基準平面23から測定した角度50において針10の第1基準平面22を傾けることによって、そして任意で第2基準平面23に対して時計回り及び反時計回り双方において第1回転角度で針10の第1基準平面22を回転させることによって、本体20に形成されるまたは他の方法で設けられる。本実施形態において、第1回転角度は、限定しないが、0°である。
【0024】
中間ベベル42a、42b及び尖端ベベル43a、43bは、第2基準平面23に対して所定角度において針10の第1基準平面22を傾けることによって、かつ、基準平面22に対して所定角度だけ第1基準平面22周りに針10を回転させることによって、針10に形成されるまたは他の方法で設けられる。中間ベベル42a、42bそれぞれは、第2基準平面23に対して角度51において針10の第1基準平面22を傾けることによって、かつ、第2基準平面23に対して時計回り及び反時計回り方向双方で第2回転角度において針10の第1基準平面22を回転させることによって、形成されまたは他の方法で設けられ、中間ベベル42a、42bを形成する。これにより、中間ベベル42a、42bに外側を向く表面を設ける。同様に、尖端ベベル43a、43bは、傾斜角度52において針10の第1基準平面22を傾けることによって、かつ、第2基準平面23に対して第3回転角度において時計回り及び反時計回り方向双方で第1基準平面22周りに針10を回転させることによって、針10に形成されまたは他の方法で設けられ、尖端ベベル43a、43bを各別に形成する。これにより、尖端ベベル43a、43bに外側を向く表面を設ける。
【0025】
図4aから
図4dに示す実施形態において、主ベベル41の傾斜角度50は、約8°である(許容誤差に関してプラスマイナス1°を計上する)。中間ベベル42a、42bの傾斜角度51は、約10°である(許容誤差に関してプラスマイナス1°を計上する)。尖端ベベル43a、43bの傾斜角度52は、約18.5°である(許容誤差に関してプラスマイナス1°を計上する)。他の実施形態において、尖端ベベル43a、43bの傾斜角度52は、主ベベル41の傾斜角度50よりも小さくなり得る。
【0026】
他方、中間ベベル42a、42bの第2回転角度は、約35°であり(許容誤差に関してプラスマイナス2°を計上する)、尖端ベベル43a、43bの第3回転角度は、約40°である(許容誤差に関してプラスマイナス2°を計上する)。本実施形態において、中間ベベル42a、42bの第2回転角度は、尖端ベベル43a、43bの第3回転角度と異なっているが、これら回転角度は、これに限定されない。他の実施形態において、2つの回転角度は、これら回転角度が30°以上50°以下の範囲外にある場合に、等しくなり得る。
【0027】
図5から
図7に示すように、本発明にかかる第2実施形態は、針10に関し、この針は、本体20と、本体20の2つの反対側にある端部に形成された単一ベベル付遠位端部30及び複数ベベル付近位端部40と、を有する。
図6に示す針10の近位端部40は、
図1に示す針10の近位端部と同一である。すなわち、2つの複数ベベル付針10は、同一の主ベベル41と、中間ベベル42a、42bと、尖端ベベル43a、43bと、を有する。他方、
図6に示すように、近位端部40は、ほぼ対称に形成されており尖った尖端部45で接する一対の背面ベベル46a、46bを有し、この尖った尖端部は、まず、患者の皮膚にまたは流体保持容器に関連付けられた封止材料に最初に入る。
【0028】
図6に示すように、背面ベベル46a、46bは、ベベル46a、46bの一端部から同じベベルの他端部まで延びる関連長さを有する。背面ベベル46a、46bは、背面ベベル46a、46bの遠位端部から尖った尖端部の近位端部まで測定した長さL
5を有する。本実施形態において、長さL
5は、限定されないが、約0.3mmを有する。
【0029】
図7に示す実施形態において、背面ベベル46a、46bは、針10の第2基準平面23に対して傾斜角度53だけ第1基準平面22を傾けることによって、かつ、第2基準平面23に対する時計回り方向及び反時計回り方向双方で第4回転角度だけ、第1基準平面22回りに回転させることによって、針10に形成されるまたは他の方法で設けられる。これにより、背面ベベル46a、46bに外方を向く表面を設ける。
図6から
図8に示す実施形態において、傾斜角度53は、約12°であり、第4回転角度は、約40°である(許容誤差に関してプラスマイナス2°を計上する)がこれに限定されない。
【0030】
図8から
図10dに示すように、本発明にかかる第3実施形態は、針10に関し、この針は、本体20と、本体20の2つの両端部に形成された単一ベベル付遠位端部30及び複数ベベル付端部40と、を有する。
図7に示す7段ベベル付針10の背面図は、
図8から
図10dに示す9段ベベル付針10の背面図と同じである。すなわち、2つの複数ベベル付針10は、ほぼ同一の背面ベベル46a、46bを有する。しかしながら、本実施形態にかかる複数ベベル付端部40は、一対の尖端ベベル43a、43bと一対の中間ベベル42a、42bとの間に形成されたまたは他の方法で設けられたさらなる対の中間ベベル47a、47bを有する。隣接するベベル42a、47aは、ベベル42a、47aを各別に形成する平面を境界付ける区切部44cで接する。隣接するベベル43a、47aは、ベベル43a、47aを各別に形成する平面を境界付ける区切部44dで接する。隣接するベベル42b、47bは、ベベル42b、47bを各別に形成する平面を境界付ける区切部44eで接する。隣接するベベル43b、47bは、ベベル43b、47bを各別に形成する平面を境界付ける区切部44fで会う。
【0031】
図9に示すように、近位端部40のベベル面及び個別のベベルは、一のベベルの一端部から同じベベルのまたは別のベベルの別の端部まで延びる関連する長さを有する。近位端部40のベベル面は、尖端ベベル43a、43bの近位端部(すなわち尖った端部45)から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さL
1を有する。主ベベル41は、近位端部から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さL
2を有する。主ベベル41は、同様に、中間ベベル42a、42bの遠位端部から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さL
3を有する。主ベベル41及び中間ベベル42a、42bは、中間ベベル42a、42bの近位端部から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さL
4を有する。主ベベル41及び中間ベベル47a、47bは、中間ベベル47a、47bの近位端部から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さL
6を有する。本実施形態において、長さL
1は、限定されないが、約1.9mmを有する。長さL
2は、限定されないが、0.9mmを有する。長さL
3は、限定されないが、約0.5mmを有する。長さL
4は、限定されないが、約1.0mmを有する。長さL
6は、限定されないが、約1.2mmを有する。
【0032】
図8から
図10dに示す第3実施形態の第1、第2及び第3傾斜角度50、51、52は、
図5から
図7に示す第2実施形態の第1、第2及び第3傾斜角度50、51、52と同一である。同様に、第3実施形態にかかる針10は、第2実施形態にかかる針10の第1、第2及び第3回転角度と同じ第1、第2及び第3回転角度を有する。他方、
図10dに示すように、中間ベベル47a、47bは、第2基準平面23に対して角度53だけ針10の第1基準平面22を傾けることによって、かつ、基準平面22に対して第4回転角度だけ第1基準平面22回りに針10を回転させることによって、形成されているまたは他の方法で設けられている。これにより、中間ベベル47a、47bに外方を向く表面を設ける。
図10dに示す実施形態において、傾斜角度53は、約15°であり、第4回転角度は、約35°である(許容誤差に関してプラスマイナス2°を計上)が、これに限定されない。
【0033】
図11a及び
図11bは、針10を主ベベルの近位端部において切断することによって形成された横断面図である。切断は、主ベベル41と中間ベベル42a、42bとの間の区切部の中間に形成されている。
図11bに示すように、切断によって形成された第1周方向角度54は、約285°である。
図12a及び
図12bは、針10を主ベベルの近位端部においてもう一度切断することによって形成された横断面図である。この切断は、中間ベベル42a、42bと尖端ベベル43a、43bとの間の区切部44a、44bの中間に形成されている。
図12bに示すように、切断によって形成された第1周方向角度55は、約120°である。
図13a、
図13bは、針10を尖端ベベル43a、43bの中間において切断することによって形成された横断面図である。
図13bに示すように、切断によって形成された第1周方向角度55は、約100°である。
【0034】
もっとも実用的かつ好ましい実施形態であると現在考えられていることに基づいて例示する目的で本発明を詳細に説明したが、理解されることは、このような詳細がその目的のみのものであること、及び、本発明が開示した実施形態に限定されないが、逆に添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内にある改変及び均等物に及ぶことを意図していること、である。例えば、理解されることは、可能な範囲で、本発明が任意の実施形態の1以上の特徴を他の実施形態の1以上の特徴と組み合わせ得ること、である。
【符号の説明】
【0035】
10 複数ベベル付針,7段ベベル付針、20 本体、21 流体開口部、22 第1基準平面、23 第2基準平面、30 単一ベベル付遠位端部、40 複数ベベル付近位端部、41 主ベベル、42a,42b 中間ベベル、43a,43b 尖端ベベル、44a,44b,44c,44d,44e,44f 区切部、45 尖端部、46a,46b 背面ベベル、47a,47b 中間ベベル、50 第1傾斜角度、51 第2傾斜角度、52 第3傾斜角度、53 傾斜角度、54 第1周方向角度、55 第1周方向角度
【手続補正書】
【提出日】2021-08-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針本体であって、当該針本体にわたる第1基準平面を画成する、針本体と、
第1面及び第2面を有する複数ベベル付先端であって、主ベベル、2つの第1中間ベベル
及び2つの尖端ベベ
ルを有し、前記主ベベル、前記第1中間ベベル及び前記尖端ベベルが、前記第1面にあり
、前記第1中間ベベルそれぞれが、前記主ベベルと前記尖端ベベルのうちの一方との間に位置する、複数ベベル付尖端と、
を備え、
前記主ベベルが、前記第1基準平面に対して第1傾斜角度でかつ第1回転角度で前記複数ベベル付先端に設けられており、
2つの前記尖端ベベルが、前記第1基準平面に対して第2傾斜角度でかつ第2回転角度で前記複数ベベル付先端に設けられており、
2つの前記尖端ベベルが、前記第1基準平面に対して第3傾斜角度でかつ第3回転角度で前記複数ベベル付先端に設けられており、
前記第2回転角度及び前記第3回転角度が、前記第1基準平面に対して前記第1回転角度よりも大きいことを特徴とする針。
【請求項2】
前記複数ベベル付先端が、前記第2面にある一対の背面ベベルをさらに備え、
前記第2面が、前記第1基準平面に対する回転角度として180°で配設されていることを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項3】
前記第1傾斜角度が、
前記第2傾斜角度以下であり、
前記第2傾斜角度が、前記第3傾斜角度
未満であることを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項4】
前記第2傾斜角度が、前記第3傾斜角度
とは異なることを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項5】
前記第2及び前記第3回転角度が、等しく、30°以上50°以下の範囲外にあることを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項6】
前記第1回転角度が、0°であることを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項7】
前記複数ベベル付先端が、前記第1面に位置する2つの第2中間ベベルをさらに有し、
前記第2中間ベベルそれぞれが、前記主ベベルと前記尖端ベベルのうちの一方との間に位置し、
2つの前記第2中間ベベルが、前記第1基準平面に対して第5傾斜角度でかつ第5回転角度で
当該針に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項8】
前記第1傾斜角度が、前記第5傾斜角度以下であることを特徴とする
請求項7に記載の針。
【請求項9】
前記第2回転角度が、前記第5回転角度以下であることを特徴とする
請求項7に記載の針。
【請求項10】
前記複数ベベル付先端が、前記尖端ベベルの近位端部から前記主ベベルの遠位端部まで測定した第1長さと、近位端部から前記主ベベルの前記遠位端部まで測定した第2長さと、を有し、
前記第2長さが、前記第1長さの半分より大きいことを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項11】
0.0075インチ以上0.0090インチ以下(0.1905mm以上0.2286mm以下)の範囲外にある内径を有することを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項12】
0.0130インチ以上0.0135インチ以下(0.3302mm以上0.3429mm以下)の範囲外にある外径を有することを特徴とする請求項1に記載の針。
【請求項13】
前記第1面及び前記第2面が、前記複数ベベル付先端の2つの反対側の端部に位置することを特徴とする請求項1に記載の針。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開放ベベル端面の前端部分に形成された刃先を有する医療用ベベルニードルに関する。このベベルニードルは、医薬注入または血液採取を医療または検査のために行うときに使用される。
【背景技術】
【0002】
注射針の設計についての懸念は、針突刺力及び患者の快適性の低減並びに組織のコアリング(coring)の防止である。針の近位端部または近位先端には、主として、患者の表皮、肉体または組織を突き通して注射器バレル内に蓄積されているまたは保持されている流体薬剤、薬物またはワクチンを送達するための尖端幾何形状が設けられている。医療従事者または患者は、同様に、注射器ニードルを採用してバイアルのような容器の弾性隔膜またはストッパを突き通し、粉末状薬剤、薬物またはワクチンを戻し得るまたはバイアル内に収容されている液体状薬剤、薬物またはワクチンを吸引し得る。
【0003】
ニードルを設計するときには、様々な考慮をなさなければならない。例えば、明白に望ましいことは、患者の表皮及び肉体を通るようにニードル先端または尖端を付勢するために必要なニードル突刺力を最小化すること、である。一般に理解されていることは、ニードル突刺力を低減すること及び/または針の様々なベベル間でより漸次的に移行させることによって、患者は、より小さい痛みで突刺す。さらに、筒状針本体が突刺側を通過すると、これにより、傷を伸長させてまたは傷に張力をかけて、患者の不快な扞格を引き起こし得る。したがって、傷を伸長させるまたは傷に張力をかけることは、同様に、注射の痛みを低減するために求められている。ニードル先端幾何形状の設計時における別の考慮は、「コアリング」を防止するまたは最小化することである。コアリングは、当業者が理解しているように、材料のうちニードルが突刺した部分がニードル尖端に隣接するルーメン内で詰まること、である。
【0004】
注射針の必要な突刺力を低減し、注入傷を伸長させることを防止し、さらに上述したコアリングをより完全に低減するための様々な試みがなされている。これら努力は、主として、例えば小面またはベベルを設けることによって針尖端の設計を改善し、必要な突刺力を低減することに向けられている。コアリングを最小化することによって必要な突刺力を最小化するための他の試みがなされている。しかしながら、これら努力は、望むほど成功していない。さらに、特に充填済皮下注射器のための注射針シールドまたはシースを改善するために様々な努力がなされている。このような改善は、全体として、針を保護すること、及び、例えば特許文献1に記載されているように針によって針シールドの故意ではないコアリングを防止すること、に関連する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した問題を解決するまたは少なくとも緩和する皮下注射針のためのベベル付先端の幾何形状に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示において、用語「遠位」を使用する際、これは、用量送達場所から離間する方向を称する。用語「遠位部分/端部」を使用する際、これは、薬剤送達デバイスの使用中において用量送達場所から最も離間して位置している、送達デバイスの部分/端部、または、送達デバイスの部材の部分/端部を称する。
対応して、用語「近位」を使用する際、これは、用量送達場所を向く方向を称する。用語「近位部分/端部」を使用する際、これは、薬剤送達デバイスの使用中において用量送達場所に最も近接して位置している、送達デバイスの部分/端部、または、送達デバイスの部材の部分/端部を称する。
【0008】
本発明のこれらの及び他の態様並びに利点は、以下の発明の詳細な説明から、及び、添付の図面から、明らかになる。
【0009】
本発明の一形態によれば、針は、針本体であって、針本体にわたる第1基準平面を画成する、針本体と、主ベベル、2つの第1中間ベベル、2つの尖端ベベルを有する複数ベベル付先端と、を有する。
主ベベル、第1中間ベベル及び尖端ベベルは、第1面にある。
第1中間ベベルそれぞれは、主ベベルと尖端ベベルのうちの一方との間に位置する。
主ベベルは、第1基準平面に対して第1傾斜角度でかつ第1基準平面に対して第1回転角度で針に設けられており、2つの第1中間ベベルは、第1基準平面に対して第2傾斜角度でかつ第1基準平面に対して第2回転角度で針に設けられている。
2つの尖端ベベルは、第1基準平面に対して第3傾斜角度でかつ第1基準平面に対して第3回転角度で針に設けられている。
第2回転角度及び第3回転角度は、第1基準平面に対する第1回転角度より大きい。
【0010】
一形態において、第1傾斜角度は、第2傾斜角度及び第3傾斜角度以下である。
【0011】
一形態において、第2傾斜角度は、第3傾斜角度未満である。他の形態において、第2回転角度は、第3回転角度とは異なり得る。
【0012】
一形態において、第1回転角度は、0°である一方、第2及び第3回転角度は、等しく、30°以上50°以下の範囲外にある。
【0013】
一形態において、複数ベベル付先端は、第1面に位置する2つの第2中間ベベルをさらに有する。第2中間ベベルそれぞれは、主ベベルと尖端ベベルのうちの一方との間に位置する。2つの第2中間ベベルは、第1基準平面に対して第5傾斜角度でかつ第5回転角度で針に設けられている。第1傾斜角度は、第5傾斜角度以下である。第2回転角度は、第5回転角度以下である。
【0014】
別の形態において、複数ベベル付先端は、尖端ベベルの近位端部から主ベベルの遠位端部まで測定した第1長さと、近位端部から主ベベルの遠位端部まで測定した第2長さと、を有する。第2長さは、第1長さの半分より大きい。
【0015】
一形態において、針は、0.0075インチ以上0.0090インチ以下(0.1905mm以上0.2286mm以下)の範囲外にある内径と、0.0130インチ以上0.0135インチ以下(0.3302mm以上0.3429mm以下)の範囲外にある外径と、を有する。
【0016】
理解されていることは、針挿入中に患者が受ける痛みが針尖端にある先鋭縁部による組織の切断及びその後の針管本体による組織の伸長によって引き起こされること、である。複数ベベル付近位端部にある様々なベベル間の漸次移行部は、切断及び伸長動作を滑らかにできる。したがって、尖端主ベベル及び一対の尖端ベベルのみを有する針や複数ベベル付端部を有し様々なベベル間で大きな傾斜角度差がある針のように針尖端の様々なベベル間に急な移行領域がある針尖端に替えて、上述した上記構成は、様々なベベル間により滑らかな移行部を設ける。
【0017】
さらに、針の近位側の複数ベベル付端部は、同様に、組織のコアリングの問題を防止するように設計されており、このコアリングは、痛みまたは針の挿入中に組織小片が容器内に入る場合に血液の詰まりを引き起こし得る。この問題を緩和するために、注射針の一対の尖端ベベルにおける主ベベルに対する回転角度を通常、設ける。それにより、一対の尖端ベベルの回転角度は、先鋭開口部を拡大し、針尖端の先鋭端部を幅広にする。それにより、組織コアリングを防止し得る。したがって、本発明は、同様に、一対の尖端ベベル及び一対の中間ベベル双方に回転角度設計を有する。
【0018】
その上、通常、皮下注射は、注入深さとして3mm以上6mm以下を必要とし、静脈内または筋肉内注射は、注入深さとしてさらに長くを必要とする。したがって、注射針の複数ベベル付端部が患者の組織内に入るだけでなく、円状針管本体も、患者の組織内に入り、それにより、伸長動作は、円状針管本体が患者の組織内に入ると生じ得る。
本発明の第2実施形態は、近位側の複数ベベル付端部の背面側に配設された一対のベベルをさらに導入する。この設計は、一対の尖端ベベルの先鋭端部をさらに鋭くし得、切断傷の伸長を防止し得る。同様に、針挿入場所にある切断傷は、その後、「Y」字状として形成され、そのため、針本体が挿入場所内へ移動すると、切断された組織は、外方へ返り、針本体は、容易に通過し得る。このような切断傷は、同様に、切断傷がまっすぐな切断線によって形成されているので、針を取り除いた後により容易に癒える。
【0019】
以下の本発明の詳細な説明において、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかる複数ベベル付針を示す前面図である。
【
図2】第1実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す前面図である。
【
図3】第1実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を通して見た斜視図である。
【
図4a】第1実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す側面図である。
【
図4b】第1実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す側面図である。
【
図4c】第1実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す側面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態にかかる複数ベベル付針を示す前面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す後面図である。
【
図7】第2実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す斜視図である。
【
図8】本発明の第3実施形態にかかる複数ベベル付針を示す前面図である。
【
図9】第3実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す前面図である。
【
図10a】第3実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す側面図である。
【
図10b】第3実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す側面図である。
【
図10c】第3実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す側面図である。
【
図10d】第3実施形態にかかる複数ベベル付針の近位端部を示す側面図である。
【
図11a】第1周方向角度を示すための第2実施形態にかかる針を示す断面図である。
【
図11b】第1周方向角度を示すための第2実施形態にかかる針を示す断面図である。
【
図12a】第2周方向角度を示すための第2実施形態にかかる針を示す断面図である。
【
図12b】第2周方向角度を示すための第2実施形態にかかる針を示す断面図である。
【
図13a】第3周方向角度を示すための第2実施形態にかかる針を示す断面図である。
【
図13b】第3周方向角度を示すための第2実施形態にかかる針を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明の目的として、使用する場合、空間の方向付けの用語は、添付の図面で方向付けられるようにまたは以下の詳細な説明で説明されるように、参照した実施形態に関する。
しかしながら、理解することは、後述する実施形態が多くの代替変形例及び実施形態を想定し得ること、である。同様に理解することは、添付の図面に示されかつ本明細書で説明されている具体的なデバイスが単なる例示的であり、限定するものとして考慮され得ないこと、である。本明細書において理解することは、特定された範囲が記載した範囲の最外境界と最外境界間にあるすべての数値評価とを含むこと、である。
【0022】
図1から
図4cに示すように、第1実施形態において、本発明は、針10に関し、この針は、本体20と、本体20の2つの反対側にある端部に形成された単一ベベル付遠位端部30及び複数ベベル付近位端部40と、を有する。針10は、医療グレードのステンレス鋼のような金属で、及び/または、医療グレードのポリマー材料で、形成され得る。遠位端部30は、単一組立体または血液収集組立体のような薬剤送達器具に固定され得る。
【0023】
図2に示すように、近位端部40は、複数の個別のベベルを有し、これらベベルは、共に、流体開口部21の周縁に複数ベベル付構造を画成する。近位端部40は、主ベベル41と、一対の中間ベベル42a、42bと、一対の尖端ベベル43a、43bと、を有する。一対の中間ベベル42a、42bそれぞれと一対の尖端ベベル43a、43bそれぞれとは、主ベベル41の両側に形成されたほぼ対称となっている。
隣接するベベル42a、43aは、ベベル42a、43aを形成する平面を各別に境界付ける区切部44aで接する。同様に、隣接するベベル42b、43bは、ベベル42b、43bを各別に境界付ける区切部44bで接する。また、尖端ベベル43a、43bは、患者の皮膚にまたは流体保持容器に関連付けられた封止材料に最初に入る尖った尖端部45で接する。
【0024】
図2に示すように、近位端部40のベベル面及び個別のベベルは、一のベベルの一端部から始まってこの一のベベルのまたは異なるベベルの他の端部までの関連長さを有する。近位端部40のベベル面は、尖端ベベル43a、43bの近位端部から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さ「L
1」を有する。主ベベル41は、近位端部から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さ「L
2」を有する。主ベベル41は、同様に、中間ベベル42a、42bの遠位端部から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さ「L
3」を有する。
主ベベル41及び中間ベベル42a、42bは、中間ベベル42a、42bの近位端部から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さ「L
4」を有する。本実施形態において、長さ「L
1」は、限定しないが、約1.9mmを有する。長さ「L
2」は、限定しないが、約0.9mmを有する。長さ「L
3」は、限定しないが、約0.5mmを有する。長さ「L
4」は、限定しないが、約1.1mmを有する。
【0025】
図3に示すように、針10の近位端部40は、針10を通して流体を通過させるための流体開口部21を画成する。
図3に示す実施形態において、針10は、
29G注射針であり得る、すなわち、この針は、限定しないが約0.28インチの内径D
1と、限定しないが約0.41インチの外径D
2と、を有し得る。
本発明の他の実施形態において、内径D
1は、好ましくは、0.0075インチ以上0.0090インチ以下(0.1905mm以上0.2286mm)の範囲外の長さを有する。他方、外径D
2は、0.0130インチ以上0.0135インチ以下(0.3302mm以上0.3429mm以下)の範囲外の長さを有する。
【0026】
主ベベル41、中間ベベル42a、42b及び尖端ベベル43a、43bは、本体20を通過する第1基準平面22に対して測定した一連の角度にわたって本体20を傾けること及び/
もしくは回転させることによって、
または、例えば研削ホイールなどの研削工具を傾けること及び/もしくは回転させることによって、本体20に形成されるまたは他の方法で設けられる。
図4aから
図4cにおいて、第2基準平面23は、本体20の一側に位置し、上記角度を示すことを容易にする。主ベベル41は、第2基準平面23から測定した角度50において針10の第1基準平面22を傾けることによって、そして任意で第2基準平面23に対して時計回り及び反時計回り双方において第1回転角度で針10の第1基準平面22を回転させることによって、本体20に形成されるまたは他の方法で設けられる。本実施形態において、第1回転角度は、限定しないが、0°である。
【0027】
中間ベベル42a、42b及び尖端ベベル43a、43bは、第2基準平面23に対して所定角度において針10の第1基準平面22を傾けることによって、かつ、基準平面22に対して所定角度だけ第1基準平面22周りに針10を回転させることによって、針10に形成されるまたは他の方法で設けられる。
中間ベベル42a、42bそれぞれは、第2基準平面23に対して角度51において針10の第1基準平面22を傾けることによって、かつ、第2基準平面23に対して時計回り及び反時計回り方向双方で第2回転角度において針10の第1基準平面22を回転させることによって、形成されまたは他の方法で設けられ、中間ベベル42a、42bを形成する。
これにより、中間ベベル42a、42bに外側を向く表面を設ける。同様に、尖端ベベル43a、43bは、傾斜角度52において針10の第1基準平面22を傾けることによって、かつ、第2基準平面23に対して第3回転角度において時計回り及び反時計回り方向双方で第1基準平面22周りに針10を回転させることによって、針10に形成されまたは他の方法で設けられ、尖端ベベル43a、43bを各別に形成する。これにより、尖端ベベル43a、43bに外側を向く表面を設ける。
【0028】
図4aから
図4dに示す実施形態において、
一対の中間ベベル42a、42bの傾斜角度は、主ベベル41の傾斜角度に近くなるように構成されている。それにより、一対の尖端ベベルと主ベベルとの間の長い斜面は、分解され得、より漸次的にされ得、それにより、この経路のセクションにおける移行力を低減し得る。
主ベベル41の傾斜角度50は、約8°である(許容誤差に関してプラスマイナス1°を計上する)。中間ベベル42a、42bの傾斜角度51は、約10°である(許容誤差に関してプラスマイナス1°を計上する)。尖端ベベル43a、43bの傾斜角度52は、約18.5°である(許容誤差に関してプラスマイナス1°を計上する)。他の実施形態において、尖端ベベル43a、43bの傾斜角度52は、主ベベル41の傾斜角度50よりも小さくなり得る。
【0029】
他方、中間ベベル42a、42bの第2回転角度は、約35°であり(許容誤差に関してプラスマイナス2°を計上する)、尖端ベベル43a、43bの第3回転角度は、約40°である(許容誤差に関してプラスマイナス2°を計上する)。本実施形態において、中間ベベル42a、42bの第2回転角度は、尖端ベベル43a、43bの第3回転角度と異なっているが、これら回転角度は、これに限定されない。他の実施形態において、2つの回転角度は、これら回転角度が30°以上50°以下の範囲外にある場合に、等しくなり得る。
【0030】
図5から
図7に示すように、本発明にかかる第2実施形態は、針10に関し、この針は、本体20と、本体20の2つの反対側にある端部に形成された単一ベベル付遠位端部30及び複数ベベル付近位端部40と、を有する。
図6に示す針10の近位端部40は、
図1に示す針10の近位端部と同一である。すなわち、2つの複数ベベル付針10は、同一の主ベベル41と、中間ベベル42a、42bと、尖端ベベル43a、43bと、を有する。他方、
図6に示すように、近位端部40は、ほぼ対称に形成されており尖った尖端部45で接する一対の背面ベベル46a、46bを有し、この尖った尖端部は、まず、患者の皮膚にまたは流体保持容器に関連付けられた封止材料に最初に入る。
【0031】
図6に示すように、背面ベベル46a、46bは、ベベル46a、46bの一端部から同じベベルの他端部まで延びる関連長さを有する。背面ベベル46a、46bは、背面ベベル46a、46bの遠位端部から尖った尖端部の近位端部まで測定した長さL
5を有する。本実施形態において、長さL
5は、限定されないが、約0.3mmを有する。
【0032】
図7に示す実施形態において、背面ベベル46a、46bは、針10の第2基準平面23に対して傾斜角度53だけ第1基準平面22を傾けることによって、かつ、第2基準平面23に対する時計回り方向及び反時計回り方向双方で第4回転角度だけ、第1基準平面22回りに回転させることによって、針10に形成されるまたは他の方法で設けられる。
これにより、背面ベベル46a、46bに外方を向く表面を設ける。
図6から
図8に示す実施形態において、傾斜角度53は、約12°であり、第4回転角度は、約40°である(許容誤差に関してプラスマイナス2°を計上する)がこれに限定されない。
【0033】
図8から
図10dに示すように、本発明にかかる第3実施形態は、針10に関し、この針は、本体20と、本体20の2つの両端部に形成された単一ベベル付遠位端部30及び複数ベベル付端部40と、を有する。
図7に示す7段ベベル付針10の背面図は、
図8から
図10dに示す9段ベベル付針10の背面図と同じである。すなわち、2つの複数ベベル付針10は、ほぼ同一の背面ベベル46a、46bを有する。
しかしながら、本実施形態にかかる複数ベベル付端部40は、一対の尖端ベベル43a、43bと一対の中間ベベル42a、42bとの間に形成されたまたは他の方法で設けられたさらなる対の中間ベベル47a、47bを有する。
隣接するベベル42a、47aは、ベベル42a、47aを各別に形成する平面を境界付ける区切部44cで接する。隣接するベベル43a、47aは、ベベル43a、47aを各別に形成する平面を境界付ける区切部44dで接する。隣接するベベル42b、47bは、ベベル42b、47bを各別に形成する平面を境界付ける区切部44eで接する。隣接するベベル43b、47bは、ベベル43b、47bを各別に形成する平面を境界付ける区切部44fで会う。
一対の第1中間ベベル42a、42bの傾斜角度は、主ベベル41の傾斜角度に近くなるように構成されており、さらなる対の中間ベベル47a、47bの傾斜角度は、一対の尖端ベベル43a、43bの傾斜角度に近くなるように構成されている。それにより、一対の尖端ベベルと主ベベルとの間の斜面は、より漸次的になり得、それにより、この経路のセクションにおける移行力を低減し得る。
【0034】
図9に示すように、近位端部40のベベル面及び個別のベベルは、一のベベルの一端部から同じベベルのまたは別のベベルの別の端部まで延びる関連する長さを有する。近位端部40のベベル面は、尖端ベベル43a、43bの近位端部(すなわち尖った端部45)から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さL
1を有する。主ベベル41は、近位端部から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さL
2を有する。主ベベル41は、同様に、中間ベベル42a、42bの遠位端部から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さL
3を有する。
主ベベル41及び中間ベベル42a、42bは、中間ベベル42a、42bの近位端部から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さL
4を有する。主ベベル41及び中間ベベル47a、47bは、中間ベベル47a、47bの近位端部から主ベベル41の遠位端部まで測定した長さL
6を有する。
本実施形態において、長さL
1は、限定されないが、約1.9mmを有する。長さL
2は、限定されないが、0.9mmを有する。長さL
3は、限定されないが、約0.5mmを有する。長さL
4は、限定されないが、約1.0mmを有する。長さL
6は、限定されないが、約1.2mmを有する。
【0035】
図8から
図10dに示す第3実施形態の第1、第2及び第3傾斜角度50、51、52は、
図5から
図7に示す第2実施形態の第1、第2及び第3傾斜角度50、51、52と同一である。同様に、第3実施形態にかかる針10は、第2実施形態にかかる針10の第1、第2及び第3回転角度と同じ第1、第2及び第3回転角度を有する。他方、
図10dに示すように、中間ベベル47a、47bは、第2基準平面23に対して角度53だけ針10の第1基準平面22を傾けることによって、かつ、基準平面22に対して第4回転角度だけ第1基準平面22回りに針10を回転させることによって、形成されているまたは他の方法で設けられている。
これにより、中間ベベル47a、47bに外方を向く表面を設ける。
図10dに示す実施形態において、傾斜角度53は、約15°であり、第4回転角度は、約35°である(許容誤差に関してプラスマイナス2°を計上)が、これに限定されない。
【0036】
図11a及び
図11bは、針10を主ベベルの近位端部において切断することによって形成された横断面図である。切断は、主ベベル41と中間ベベル42a、42bとの間の区切部の中間に形成されている。
図11bに示すように、切断によって形成された第1周方向角度54は、約285°である。
図12a及び
図12bは、針10を主ベベルの近位端部においてもう一度切断することによって形成された横断面図である。この切断は、中間ベベル42a、42bと尖端ベベル43a、43bとの間の区切部44a、44bの中間に形成されている。
図12bに示すように、切断によって形成された第1周方向角度55は、約120°である。
図13a、
図13bは、針10を尖端ベベル43a、43bの中間において切断することによって形成された横断面図である。
図13bに示すように、切断によって形成された第1周方向角度55は、約100°である。
【0037】
図14a及び図14bは、本発明にかかる注射針の試験結果を示す。図14aは、一般に使用されている29G注射針であって3つのベベルが針尖端部にある注射針を用いたときの突刺力及び突刺深さのグラフである。図14bは、第1実施形態にかかる29G注射針を用いたときの突刺力及び突刺深さのグラフである。
双方の針の長さが1.9mmであるので、突刺深さが1.9mmである場合には、針本体が注射場所内に入り始めることを意味する。さらに、一対の尖端ベベルの長さは、全て0.9mmである。そのため、突刺深さとして針が0.8mmに達した後かつ突刺深さとして針が1.9mmに達する前に、突刺力の試験結果は、第1実施形態において説明したような1以上の対の中間ベベルの衝撃を反映する。図14a及び図14bを観察すると、第1実施形態における注射針は、0.8mm以上1.9mm以下の長さにおけるより滑らかな移行、及び、1.9mm以上2mm以下の長さにおける突刺力を提供する。
【0038】
図15は、本発明の第2実施形態を示す。一対の背面ベベルは、予想できない伸長動作を低減したことに起因して、より均一な突刺力に寄与する。
【0039】
もっとも実用的かつ好ましい実施形態であると現在考えられていることに基づいて例示する目的で本発明を詳細に説明したが、理解されることは、このような詳細がその目的のみのものであること、及び、本発明が開示した実施形態に限定されないが、逆に添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内にある改変及び均等物に及ぶことを意図していること、である。例えば、理解されることは、可能な範囲で、本発明が任意の実施形態の1以上の特徴を他の実施形態の1以上の特徴と組み合わせ得ること、である。
【符号の説明】
【0040】
10 複数ベベル付針,7段ベベル付針、20 本体、21 流体開口部、22 第1基準平面、23 第2基準平面、30 単一ベベル付遠位端部、40 複数ベベル付近位端部、41 主ベベル、42a,42b 中間ベベル、43a,43b 尖端ベベル、44a,44b,44c,44d,44e,44f 区切部、45 尖端部、46a,46b 背面ベベル、47a,47b 中間ベベル、50 第1傾斜角度、51 第2傾斜角度、52 第3傾斜角度、53 傾斜角度、54 第1周方向角度、55 第1周方向角度
【国際調査報告】