(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-04
(54)【発明の名称】仮想画像を生成するための光学系、及び光学系の出力結合配置を生成する方法
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20220128BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534925
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(85)【翻訳文提出日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2019084425
(87)【国際公開番号】W WO2020126672
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】102018133383.8
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516087698
【氏名又は名称】トーツ・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TOOZ TECHNOLOGIES GMBH
【住所又は居所原語表記】Turnstrasse 27, 73430 Aalen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルグ ミヒェルス
(72)【発明者】
【氏名】モンチル ダヴィドコフ
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA12
2H199CA43
2H199CA47
2H199CA59
2H199CA66
2H199CA83
2H199CA86
(57)【要約】
画像生成器(12)上に提供されるソース画像の仮想画像を生成するための光学系は、眼(14)の前に装着される少なくとも1つの光導波管(16)と、ソース画像から発する光線路(26)を光導波管(16)内へ結合するための入力結合配置(24)と、光導波管(16)からの光線路(26)を眼(14)に向かって結合するための出力結合配置(28)とを含み、入力結合配置(24)は、光線路(26)が光導波管(16)の内面及び/又は外面(18,20)における反射の結果として光導波管(16)内を出力結合配置(28)まで伝播するやり方で光線路(26)を光導波管(16)内へ結合し、出力結合配置(28)は光導波管(16)内を出力結合配置(28)まで伝搬する光線路(26)に対して露出された面(29)を有する。光線路(26)に対して露出された出力結合配置(28)の面(29)は、光線路(26)が出力結合配置(28)の面(29)の第1の部分領域(42,44,46;60)から眼に向かって光導波管(16)から出力結合される一方で、出力結合配置(28)の面(29)の、第1の部分領域とは異なる第2の部分領域(48a,48b,50a,50b,52a,52b;62)内では、前記光線路は、せいぜい低減された強度で光導波管(16)から眼(14)に向かって出力結合されるか又は全く出力結合されないやり方で、表面処理される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像生成器(12)上に提供されるソース画像の仮想画像を生成するための光学系であって、前記光学系は、
眼(14)の前に装着される少なくとも1つの光導波路(16)と、
前記ソース画像から発する光線路(26)を前記光導波路(16)内へ結合するための入力結合配置(24)と、
前記光導波路(16)からの前記光線路(26)を前記眼(14)に向かって結合するための出力結合配置(28)とを含み、
前記入力結合配置(24)は、前記光線路(26)が前記光導波路(16)の内面及び/又は外面(18,20)における反射により前記光導波路(16)内で前記出力結合配置(28)まで伝播するやり方で、前記光線路(26)を前記光導波路(16)内へ結合し、前記出力結合配置(28)は、前記光導波路(16)内で前記出力結合配置(28)まで伝搬する前記光線路(26)により当接されるエリア(29)を有する、
光学系において、
前記光線路(26)により当接される前記出力結合配置(28)の前記エリア(29)は、前記光線路(26)が、前記ソース画像を結像するための予め定められた前記出力結合配置(28)の前記エリア(29)の第1の部分(42,44,46;60)から前記眼へ前記光導波路(16)から出力結合される一方で、前記光線路は、前記第1の部分(42,44,46;60)とは異なる前記出力結合配置(28)の前記エリア(29)の第2の部分(48a,48b,50a,50b,52a,52b;62)内で前記光導波路(16)から前記眼(14)へ出力結合されないか又はせいぜい低減された強度で出力結合されるやり方で、表面処理された、ことを特徴とする光学系。
【請求項2】
前記第1の部分(42,44,46;60)は反射層により表面処理された、請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記反射層は1%~100%の範囲の反射率を有する、請求項2に記載の光学系。
【請求項4】
前記第1の部分(42,44,46;60)はその反射率値が少なくとも0.1%だけ異なる反射層により表面処理された、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項5】
前記第2の部分(48a,48b,50a,50b,52a,52b;62)は屈折率整合層により表面処理されており、前記第2の部分(48a,48b,50a,50b,52a,52b;62)内の前記屈折率整合層は、前記眼に向かって前記光線路(26)の反射を少なくとも低減する及び/又は前記光導波路から前記眼から離れる方向への前記光線路(26)の出力結合を引き起こす、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項6】
前記出力結合配置(28)は1つ又は複数のフレネルセグメント(28a~28g)を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項7】
前記第1の部分(42,44,46;60)のそれぞれは、隣接フレネルセグメント(28
i)により投じられる陰影の外側にあるフレネルセグメント(28
i+1)の領域である、請求項6に記載の光学系。
【請求項8】
前記第2の部分(48a,48b,50a,50b,52a,52b;62)のそれぞれは、隣接フレネルセグメント(28
i)により投じられた陰影内にあるフレネルセグメント(28
i+1)の少なくとも1つの領域(36)である、請求項6又は7に記載の光学系。
【請求項9】
画像生成器上に提供されるソース画像の仮想画像を生成するための光学系(10)の出力結合配置(28)を生成する方法であって、
前記ソース画像を結像する目的のために、前記ソース画像から発し光導波路(16)内を伝播する光線路(26)を前記光導波路(16)からユーザの眼(14)に向かって出力結合するのに好適である前記出力結合配置(28)のエリア(29)の第1の部分(42,44,46;60)を判断することと、
前記光線路(26)が前記第1の部分(42,44,46;60)から前記ユーザの前記眼(14)へ前記光導波路(16)から出力結合される一方で、前記光線路は、前記第1の部分(42,44,46;60)とは異なる前記出力結合配置(28)の前記エリア(29)の第2の部分(48a,48b,50a,50b,52a,52b;62)内で前記光導波路(16)から前記眼(14)へ出力結合されないか又はせいぜい低減された強度で出力結合されるやり方で、前記出力結合配置(28)の前記エリア(29)を表面処理することと
を含む方法。
【請求項10】
前記出力結合配置(28)の前記エリア(29)を表面処理することは、前記第1の部分(42,44,46;60)上への反射層の塗布を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記表面処理は、前記反射層が塗布されている間に、前記第2の部分(48a,48b,50a,50b,52a,52b;62)を隠すマスクを使用して行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記出力結合配置(28)の前記エリア(29)を表面処理することは、前記第2の部分(48a,48b,50a,50b,52a,52b;62)上の屈折率整合層の塗布を含む、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の前文による画像生成器上に提供されるソース画像の仮想画像を生成するための光学系に関する。
【0002】
さらに、本発明はこのような光学系の出力結合配置を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭に記載されたタイプの光学系は、国際公開第2016/102190A1号パンフレットから知られている。
【0004】
冒頭に記載されたタイプの光学系は、所謂頭部装着型ディスプレイ(HMD:head-mounted display)、すなわち頭上に装着される表示装置において使用され得る。1つの従来形式のHMDは、眼の前に装着されそしてコンピュータ生成画像又はカメラにより撮影された画像をユーザに提示する画面を使用する。このようなHMDはしばしば容積が大きく、周囲の直接知覚を許容しない。周囲の直接知覚を妨害することなくカメラにより記録された画像又はコンピュータ生成画像をユーザに提示することができるHMDが開発されたのは比較的最近のことに過ぎない。スマート眼鏡とも呼ばれるこのようなHMDは、この技術が日常生活において使用されることを可能にする。
【0005】
このようなスマート眼鏡の光学系は通常、画像生成器、入力結合素子、光導波路及び出力結合素子を有する。ソース画像から発する光の光導波路内への入力結合及び光導波路から光導波路内に伝播する光の出力結合は、様々な手法を使用して(例えば反射、屈折、回折、ホログラフィなど又はそれらの組み合わせに基づき)実現され得る。スマート眼鏡は、比較的大きな結像比を有する一方で、結像品質に対する高い要求により区別される。同時に、このような頭部装着型システムの場合の重点は、可能な限り少ない光学面を使用して仮想画像を生成するためのソース画像の結像を要求する低重量及びコンパクト性(小さな設置スペース)にあり、その結果、ほんのいくつかの面が光学収差の補償のために利用可能であるだけである。特に、完全な透視スマート眼鏡(所謂シースルー機能)は、HMD製品の受容及び成功を決定する重要な判断基準の1つである。
【0006】
光導波路内を伝搬する光の出力結合が、冒頭に記載の文献において説明されているように、1つ又は複数のセグメント(例えば自由形式鏡映)を有する自由形式フレネル面における反射により実現される光学系の場合、光学的結像品質は、光学系の射出瞳とユーザの眼の瞳とに近い出力結合配置の相対位置が理由で、出力結合配置の表面真度及び品質に非常に強く依存する。個々のフレネルセグメントの局所的形状偏位は、コントラストの損失、二重画像(ゴースト画像)及び他の結像収差で表現される光学性能の著しい低下に至る。さらに、接続条件が、連続的に継続可能な自由形式面と理解されるべきフレネル面の個々のセグメント間に適用され、前記接続条件は、受容可能結像品質が達成され得るように、形状偏位に関する公差だけでなく、サブマイクロメートル範囲内の個々のフレネルセグメントの相互相対位置(すなわち互いに対する位置)に関する公差(<<1μm)も必要とする。フレネルセグメントの形状に対する真度及び相互アラインメントに関する非常に小さな公差範囲を維持することは、熱膨張、圧縮率、内部ストレス、表面接着などのプラスチックの特性並びに射出成形、射出圧縮成形などの使用される製造技術及びプロセスの結果として、実際には非常に困難且つ複雑である(特にプラスチック部品を製造する際に)と分かった。しかし、非常に小さな公差範囲を維持することは、良質な部品の歩留りに直接影響を与えるとともに、技術とプロセスとの両方の観点から大きな課題を表す。
【0007】
出力結合配置の領域内の光導波路の前述のシースルー機能(透明性)を保証するために、画像生成器から発する光線路の光度の一部を反射する部分的透明層であるがそれを透過する凝視の方向に光線路を可能な限り透明にする特性を有し、且つ結果的に、ユーザの眼に向かって結合される光出力の実現し得る最高の透明性と最大強度との妥協点を表す部分的透明層を出力結合配置に設けることが有利である。さらに、出力結合配置は通常、第2のシェルへ適用される。第2のシェルは出力結合配置の領域内の出力結合配置の形状へ整合され得る。第2のシェルは接着剤により又は任意の他のやり方で光導波路へ固定される。出力結合配置の溝がまた、シェルを使用することなく別の透明物質(例えば接着剤)により充填され得る。接着剤に面するその表面が抗接着特性を有する(本質的にか、又は適切な処理後にかのいずれかで)シェルは、硬化処理中だけの整形のために使用され、そしてその後除去される可能性がある。
【0008】
部分的透明層の使用に伴う別の問題であるがシースルー機能のために決定的に重要である別の問題は、1つのフレネルセグメントを介し部分的に透過され、その後フレネルセグメントの陰影領域内に入射し、そして単一反射又は多重反射に続いて観察者の眼に到達する光にその本質がある。ここでは、出力結合配置が自由形式のフレネル面を有すれば、一般的な場合、連続性条件の侵害がある。重点は、フレネル面を設計する際のフレネルセグメントの反射領域を最適化することにあるので、結像収差は、フレネル端を通過中に、且つ光線路が反射されるフレネルセグメントの陰影領域内に光線路が入射する場合に、発生する。この効果は、例えば超精密処理中に、製造プロセスに起因する標的幾何学形状からの偏位(例えばダイヤモンド工具の半径に起因するセグメントの丸み)により、さらに増幅される。このようにして発生した光成分は、ユーザの眼に到達し、コントラストの損失、二重画像、知覚画像のスミアを生じ、そして全体として光学系の結像品質に悪影響を及ぼすさらに望ましくない効果を生じる。
【0009】
特開2016-110080A号公報は同様に、請求項1の前文による光学系を開示する。出力結合配置は互いに対し傾斜された複数のエリアを有し、光導波管内を伝搬する光線が直接入射するこれらのエリアは反射層を部分的に備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、その結像品質を改善するという旨の初めに記載されたタイプの光学系を開発するという目的に基づく。
【0011】
さらに、本発明は、改善された出力結合配置を生成する方法を提供するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、目的は、出力結合配置のエリアの第1の部分(ソース画像を結像するために予め定義された)から眼へ光導波路から出力結合される一方で、前記光線路は、第1の部分とは異なる出力結合配置のエリアの第2の部分内で光導波路から眼へ出力結合されないか又はせいぜい低減された強度で出力結合されるやり方で表面処理された光線路により当接される出力結合配置のエリアのおかげで、冒頭に記載された光学系に関して達成される。
【0013】
本発明による光学系は、光線路により当接される出力結合配置の全エリアが光線路を光導波路から眼へ出力結合するように、出力結合配置の全エリアに部分的鏡映性(partial mirroring)を与える、という概念から逸脱する。対照的に、本発明によるシステムでは、光線路は、光線路をユーザの眼へ出力結合する目的のために、光線路により当接される出力結合配置のエリアの部分(標的を定めるやり方で選択される)だけから採用される。この目的を達成するために、光線路により当接される出力結合配置のエリアは、光線路が、出力結合配置のエリアの予め定義された第1の部分から眼へ光導波路から単に出力結合される一方で、前記光線路は、光線路により当接されるエリアの第2の部分内でユーザの眼へ光導波路から出力結合されないか又はせいぜい低減された強度で出力結合されるやり方で、表面処理される。ここで、低減された強度は、第1の部分内で出力結合された光線路の強度に対するものであると理解されるべきであり、したがって第2の部分内の低強度出力結合は、内に生成される仮想画像の品質を顕著に損なわない。出力結合配置のエリアの第1の部分は、光学系の最適結像品質という観点で選択又は判断される。
【0014】
特に、第1の部分は、表面品質、形状に対する真度、結像品質に関連する他のパラメータに関し規定最小要件を満足する出力結合配置のエリアの部分である。第1の部分は好適な測定方法により確定され得る。一例として、好適な測定方法は触覚的及び非接触的形状測定のための従来方法措置(例えばプロフィロメトリ、白色光干渉計、クロマティック共焦点測定方法など)を含む。
【0015】
ソース画像から発しユーザの眼に入る光の光成分を出力結合する結果としての、コントラストの損失、二重画像、知覚された画像のスミア及びさらなる望ましくない効果(結像に実際に寄与しない)は、本発明による光学系を使用することにより回避されるか又は少なくとも低減される。
【0016】
光線路により当接される出力結合配置のエリアの第1の部分は、光線路を光導波路から出力結合するのに役立ち、反射層が設けられるおかげで表面処理され得る。この文脈では、反射層は部分的反射層も意味するものと理解されるべきである。したがって、反射層は1%~100%の範囲の反射率を有し得る。さらに、反射層は複数の個々の層から構築される層も意味するものと理解されるべきである。本発明によると、複数の出力結合エリアで構成される出力結合配置の場合の個々の出力結合エリアは、様々な表面処理を有し得る。これは同様に、異なる出力結合エリアのいくつかの部分及び同一出力結合エリアのいくつかの部分へ適用される。特に、第1の部分は、その反射率が少なくとも0.1%だけ異なる反射層により表面処理され得る。
【0017】
従来システムとは対照的に、反射層は、出力結合配置の全エリアへ塗布されるのではなく、当該エリアの選択された部分(第1の部分)内においてだけ塗布される。
【0018】
反射層を備えない第2の部分は結局、光導波路からの光線路の出力結合に寄与しないか又は低減された程度でだけ寄与する。さらに、第1の部分内だけの出力結合配置のエリアを被覆する結果として、光導波路の透明性(シースルー機能)は、被覆されない第2の部分が最大可能透過率を有するので、出力結合配置の領域内で増加する。出力結合配置のエリアがあらゆる所で反射層を備えていないということに起因する、光導波路から結合された光線路の強度の低減は、画像生成器の光度を増加することにより、又はより高い反射率を有する第1の部分を被覆することにより、達成され得る。
【0019】
反射層による第1の部分の表面処理の代案として又はそれに加えて、光線路が光導波路からユーザの眼へ出力結合されるべきでないか又はせいぜい低減された強度で出力結合されるべき、出力結合配置のエリアの第2の部分は、可視スペクトル内で透明である層により表面被覆され、且つ理想的には屈折率整合され得、第2の部分内の屈折率整合された層は、ユーザの眼に対する光線路の反射を少なくとも低減する及び/又は光導波路からの光線路の眼から離れる方向の出力結合を引き起こす。
【0020】
この措置はまた、出力結合配置のエリアの当該部分のおかげで、光学系の結像品質の増加に有利に寄与する。出力結合配置のエリアの当該部分は、光線路が光導波路からユーザの眼へ出力結合されればコントラストの損失、二重画像又は結像品質における任意の他の劣化に至り、これにより、屈折率整合された層の理由で第1の部分に対して低減された反射率を有する及び/又は、ユーザだけからそれた方向に光線路を出力結合するための光線路の透過の増加を促進する。
【0021】
屈折率整合された層は、好適には可視スペクトル内で高度に透明である。屈折率は、反射を生じる屈折率ジャンプが出力結合配置のエリアの第2の部分内で可能な限り小さくなるやり方で、光導波路及び/又は出力結合配置の材料と整合される。
【0022】
屈折率整合された層は、例えばフレネルセグメント表面の場合に溝を屈折率整合材料により充填することにより生じた層も意味するものと理解されるべきである。
【0023】
出力結合配置は、1つ又は複数のフレネルセグメントを備えたエリアを有し得る。特に、フレネル面は1つ又は複数のセグメントを備えた自由形式フレネル面であり得る。
【0024】
出力結合配置が複数のフレネルセグメントにより構成される場合、光線路のユーザの眼への所望の出力結合のために使用されるべき、出力結合配置のエリアの第1の部分は、いずれの場合も、隣接フレネルセグメントにより投じられる陰影の外側にある領域である。
【0025】
冒頭で既に説明したように、結像収差は、光線路がフレネル端を透過し、そして光がフレネルセグメントの陰影領域内に侵入する場合に発生し得る。しかし、上述の測定により提供されるように、光線路が第1の部分内の光導波路だけから出力結合されるように、それぞれの投じられた陰影の外側にあるフレネルセグメントの長端の領域が第1の部分として少なくとも部分的に選択されるならば、フレネルセグメントの陰影領域内へ到達する光線路の成分は最早、光線路のこれらの成分が光導波路から出力結合されないか又はせいぜい低減された強度で出力結合されるので、結像収差を生じ得ない。
【0026】
光導波路からユーザの眼に向かう方向の光線路の出力結合が低減又は抑制される第2の部分はそれぞれ、隣接フレネルセグメントにより投じられた陰影内にあるフレネルセグメントの領域であり得る、及び/又は、一般的にそれぞれ、最適結像品質に関する要件を満たさないために光線路のユーザの眼への出力結合に好適でない領域であり得る。
【0027】
さらに、例えば本発明による光学系の、出力結合配置を生成する方法が、本発明に従って提供される。本発明によると、方法は、
ソース画像を結像する目的のために、ソース画像から発し光導波路内を伝播する光線路を光導波路からユーザの眼に向かって出力結合するのに好適である出力結合配置のエリアの第1の部分を判断することと、
光線路が第1の部分からユーザの眼へ光導波路から出力結合される一方で、前記光線路は、第1の部分とは異なる出力結合配置のエリアの第2の部分内で光導波路から眼へ出力結合されないか又はせいぜい低減された強度で出力結合されるようなやり方で、出力結合配置のエリアを表面処理することと
を含む。
【0028】
第1の部分は、上に例示的やり方で規定されたように、好適な光学的測定方法を使用して判断され得る。
【0029】
本発明による方法は、本発明による光学系との関連で説明したものと同じ利点を有する。
【0030】
好ましい構成では、出力結合配置のエリアを表面処理することは、第1の部分上の反射層の塗布を含み得る。
【0031】
有利には、表面処理はこの場合、反射層が塗布されている時に、被覆されるべきでない出力結合配置のエリアの部分を隠すマスクにより行われ得る。第1の部分を判断した後、このような被膜マスクは、例えばレーザ切断方法、エッチング方法、又は任意の他の方法で製造され得る。マスクは有利には、出力結合配置のエリアの所望の第1の部分上だけの反射被覆の塗布を保証する。
【0032】
その代替案として又はそれに加えて、出力結合配置のエリアを表面処理することは、第2の部分上の屈折率整合層の塗布を含み得る。
【0033】
さらなる利点及び特徴は以下の説明及び添付図面から明らかである。
【0034】
前述の特徴及び未だ説明されていない以下のものは、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれに規定された組み合わせだけでなく他の組み合わせでも又はそれ自体でも使用され得るということは言うまでもない。
【0035】
本発明の例示的実施形態は、添付図面に示され、そしてこれを参照して以下にさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】仮想画像を生成するための光学系の例示的実施形態の上面視図を示す。
【
図2】どのように迷光が本システムにおける出力結合配置の領域内で発生するかを説明するための光学系の断面を示す。
【
図3】本発明の原理に従って仮想画像を生成するための光学系の断面を示す。
【
図4】いくつかの領域内で表面処理された出力結合配置のエリアの例を示す。
【
図5】いくつかの領域内で表面処理された出力結合配置のエリアの例を示す。
【
図6】いくつかの領域内で表面処理された出力結合配置のエリアの例を示す。
【
図7】いくつかの領域内で表面処理された出力結合配置のエリアの例を示す。
【
図8】仮想画像を生成するための光学系の出力結合配置を生成する方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、画像生成器12上に提供されるソース画像の仮想画像を生成するため光学系(一般参照符号10を備える)を示す。光学系10は頭部装着型ディスプレイ(HMD)(より具体的にはスマート眼鏡)の光学系であり得る。特に、光学系10は、画像生成器12により提供されそしてカメラ記録画像又はコンピュータ生成画像であり得るソース画像を周囲の直接知覚を妨げることなくユーザへ提示することができる。これは「光学系10は従来の眼鏡の場合におけるようにユーザが光学系10を介し同時に凝視すること(所謂シースルー機能)を可能にする」ということを意味する。このようなシステムはまた拡張現実眼鏡又は仮想現実眼鏡と呼ばれる。
【0038】
光学系10はユーザの眼14の前に装着される少なくとも1つの光導波路16を含む。光導波路16は眼鏡レンズとして具現化されてもよいし又は眼鏡レンズへ組み込まれてもよい。
図1は1つの光導波路16だけを示し、システム10はユーザの他方の眼の前に装着される第2の光導波路(図示せず)を有し得る。光導波路16は例えば1つのそれぞれの光導波路を1つのそれぞれのスペクトラム範囲の伝送チャンネルとして使用するためにこのようなシステムにおいてそうであり得るように複数の光導波路の積み重ね配置から構築され得るということがさらに理解される。
【0039】
光導波路16は眼14に面する内面18と眼から見て外方に向く外面20とを有する。光導波路16は、ユーザが視軸22の方向に光導波路16を介し凝視し得るように可視光に対して透明である。
【0040】
光学系10はさらに、画像生成器12のソース画像から発する光線路26を内面18と外面20との間の光導波路16内へ入力結合するように働く入力結合配置24を含む。入力結合配置24及び光導波路16はモノリシック(すなわちインターフェースのない)実施形態を有し得、したがって入力結合配置24と光導波路16との間にいかなる空隙も存在しない。画像生成器12から発する光線路26を光導波路16内へ入力結合することに加えて、入力結合配置24はまた、画像生成器12から発する発散光線路26を平行にするように働く。
【0041】
光導波路16では、入力結合配置24を介し光導波路16内へ結合された光線路26は内面18及び外面20における反射により伝播する。この場合、光線路26の反射は光導波路16の内面18及び外面20における光線路26の全反射に基づく。光線路16は、内面18及び/又は外面20における1回又は複数回の反射後に光導波路16内の出力結合配置28へ伝播する(簡略化目的のために、
図1は内面18における1回の反射だけを示す)。出力結合配置28の機能は、光導波路16からユーザの眼14へ光線路26を出力結合してその結果ユーザがシステム10により結像されたソース画像の仮想画像を知覚し得るようにする機能である。
【0042】
生成される仮想画像の光学的結像品質は、光学系の射出瞳及び眼14の瞳に近い出力結合配置28の相対位置に起因する出力結合配置28の表面真度及び表面品質に非常に強く依存する。
【0043】
示された例示的実施形態では、出力結合配置28は鋸歯型実施形態を有する複数のフレネルセグメント28aを備えた自由形式フレネル面として具現化される。7つのセグメントが例示的やり方で
図1に示される。フレネルセグメントは、それぞれのフレネルセグメント(切子面)28aに入射する光線路26の零次光線が光導波路16の内面18の方向に反射され、そこからユーザの眼14に入るやり方で配向される。外面20を通って周囲から出力結合配置28に入射する光線は、画像生成器12のソース画像から生成された仮想画像が周囲に浮かぶという印象を光学系10のユーザに与えるために前記出力結合配置により可能な最大限度通される。
【0044】
図1Aは、出力結合配置28自体のそして
図1に対して増加されたスケーリングによる全エリア29の平面図を示す。示された例では、出力結合配置28は7つのフレネルセグメント28a~28gを有する。フレネルセグメント28a~28gは、入力結合配置24から出力結合配置28まで光導波路16内を伝搬する光線路26により当接される出力結合配置28のエリア29を形成する。従来の光学系の場合、全エリア29が例えば
図1Aに示すように光線路26をユーザの眼14内へ出力結合するために使用される。しかし、これは、光学系10の結像品質に関する欠点(コントラストの損失、二重画像(ゴースト画像)の生成、及び他の収差で表現される)を有する。これは、
図2を参照して例示的やり方で以下に説明される。特別なケースでは、出力結合配置28のエリア29は単一フレネルセグメントで構成され得る。
【0045】
図2は出力結合配置28の領域内の光導波路16の断面を示し、そのうちの2つの連続フレネルセグメント28
i、28
i+1が示される。さらに、
図2は光導波路16内を伝播する光線路26を示す。光線路26の光線(26aで表される)はフレネルセグメント28
iを通過し、フレネルセグメント28
i+1の長端34にぶつかり、光線26bにより示すように、出力結合配置28の部分的透明性に起因してそこから部分的に反射し、そして光線26cにより示すように、フレネルセグメント28
i+1に部分的に入る。したがって、光線26bは、フレネルセグメント28
i+1により光導波路16からユーザ(ここでは図示せず)の眼の方向に出力結合される。光線26bは、ユーザの眼内に仮想画像を生成する目的のためにソース画像を結像するために必要とされそして使用される標的光線である。
図2はさらに、光線26aとは対照的に、フレネルセグメント28
iを当初透過し、より正確にはフレネルセグメント28
iの長端30及び短端32を透過し、そしてその透過に続いてフレネルセグメント28
i+1の長端34に入射する光線路26の光線26dを示す。そこから光線26dは、光線26eにより指示されるように部分的に反射され、そして光線26fにより指示されるように部分的に透過される。光線26dは、出力結合配置28の領域36内のフレネルセグメント28
i+1(実際にはフレネルセグメント28
iの陰影内にある)に入射する。陰影領域36内で反射され、そしてフレネルセグメント28
i+1により光導波路16からユーザの眼内へ出力結合される光線26eは、仮想画像を生成する目的のためにソース画像の適切な結像に寄与しないが、その代わりに、二重画像を生成する結果として結像品質と干渉する、外部光又は迷光を表す。光線26eが適切な結像に寄与し得ないという事実は、とりわけフレネルセグメント28
iを追加透過したことに起因する。さらに、結像品質を低減する多重反射は端30、32を通過中に発生し得る。加えて、フレネルセグメント28
i内の点線38により指示されるように、製造公差の理由で、フレネルセグメント28
i、28
i+1が(例えばフレネルセグメント28
iの丸みの結果として)標的幾何学形状から逸脱すれば結像品質はさらに一層劣化し得る。このような幾何学的エラーは結像品質のさらなる劣化に繋がる。
【0046】
出力結合配置の結像パラメータを設計する際、光線路26がセグメントの端を通ることと、ユーザの眼14とのその後の出力結合とは通常は考慮されないままであり、したがって望ましくない。他方で、出力結合配置の一定の透明性がシースルー機能に必要とされる。
【0047】
前述の問題を回避するために、光線路26により当接される出力結合配置28のエリア29が従来技術におけるように全体として(部分的に)鏡映されないための措置が、本発明に従って、例えば
図1Aに示すように行われ、その結果、光線路26は出力結合配置28の全エリア29にわたって光導波路16から出力結合されるがエリア29の所定部分内のいくつかの領域内だけで(部分的に)鏡映される。これは、「光線路26により当接される出力結合配置28のエリアは、光線路26が、光線路26により当接される出力結合配置のエリア29の第1の部分から光導波路16から眼14へ出力結合される一方で、第1の部分とは異なる光線路により当接される出力結合配置のエリア29の第2の部分内では光導波路16から眼14へ出力結合されないか又はせいぜい低減された強度で出力結合されるようなやり方で、所定領域内で表面処理された」という事実のおかげで達成される。これは
図3~
図7を参照して以下に説明される。
【0048】
図3は例示的実施形態を示す。ここでは、3つの光線路26が示され、光線路26は、フレネルセグメント28a、b、cの第1の部分42、44、46だけを介し、ユーザの眼14に向かって光導波路16から出力結合される(
図1を参照されたい)一方で、光線路26は、第2の部分48a、48b(フレネルセグメント28c)、50a、50b(フレネルセグメント28b)、52a、52c(フレネルセグメント28a)内では、ユーザの眼14に向かって光導波路16から出力結合されない。この目的を達成するために、第1の部分42、44、46は、1%~100%の範囲の反射率を有し得る反射層を備える。第1の部分42、44、46は、特にそれらの反射率値に関し、塗布される層の観点で異なり得る。第1の部分42、44、46は、好適な測定方法を含む先行する測定過程に基づき判断される。第1の部分42、44、46は、表面品質、形状に対する真度、結像品質に関連する他のパラメータに関する最小要件に基づき確定される。一例として、好適な測定方法は例えば、プロフィロメトリ、白色光干渉計、クロマティック共焦点測定方法などの触覚的及び非接触的形状測定のための従来方法措置を含む。
【0049】
対照的に、第2の部分48a、48b、50a、50b、52a、52bは反射層を備えない。反射層は個々の層を意味するだけでなく複数の個々の層で作られた層状構造も意味するものと理解されるべきであるということが理解される。
【0050】
第1の部分42、44、46への反射層の塗布に加えて又はその代替として、第2の部分48a、48b、50a、50b、52a、52bは、第2の部分において眼14へ向かう光線路26の反射を少なくとも低減する及び/又は
図3に光線26tにより示されるように光導波路16から眼から離れる方向への光線路26の出力結合を引き起こす屈折率整合層を備え得る。
【0051】
第2の部分内の屈折率整合層はまた、フレネルセグメント28に隣接するセグメントに関し斜線領域59により指示されるように、フレネルセグメント28a、b、cが、眼14からそれたそれらの側面上で透明な屈折率整合材料で充填されるおかげで形成され得る。
【0052】
図3に示すように、第1の部分42、44、46はそれぞれ、隣接フレネルセグメントのそれぞれの陰影領域(
図2の陰影領域36又は
図4の陰影領域の63を例えば参照されたい)の外側にあるフレネルセグメント28a、28b、28cのそれぞれの長端の領域である。
【0053】
対照的に、フレネルセグメントの陰影領域は反射層を備えないが、第2の部分48b、50b、52bを形成する。
【0054】
図4~
図7は、光線路26により当接される出力結合配置28のエリア29であって選択的に反射被覆された第1の部分60と選択的に被覆されなかった部分62とを備えるエリア29の例示的実施形態を示す。
図4~
図7では、光線路26がユーザの眼14に向かって出力結合される、出力結合配置28のエリアの第1の部分60は、斜線領域により指示される。特に、斜線領域はすべて、異なる被膜を有してもよいし又は部分的に異なる被膜を有してもよい。第2の部分62は白色領域により指示される。
図4の例示的実施形態は2次元表現の
図3の例示的実施形態に対応する。
図5~
図7は、光線路26がユーザの眼14に向かって出力結合される第1の部分の代替例示的実施形態を示す。上述のように、反射層は第1の部分内に存在し得る。出力結合配置28のエリアの白色で示される残りの部分(第2の部分)では、ユーザの眼14に向かう光線路26の出力結合は存在しない。これらの領域では、光線路26の光成分は、いかなる外部光又は迷光もこれらの第2の部分からユーザの眼14に到達しないように、特にユーザの眼14からそれた方向の透過又は出力結合により無害にされ得る。
図4~
図7では、隣接フレネルセグメントの陰影領域は同様にハッチングにより示され、且つ参照符号63を備える。
【0055】
図8は、出力結合配置28を生成する方法をフローチャートで示す。
【0056】
工程S1では、出力結合配置28のエリア29が測定される及び/又は好適なパターンが記録される。ソース画像を結像する目的のために眼の方向に光導波路16から光線路26を出力結合するのに好適である出力結合配置28のエリアの第1の部分は、工程S2において判断される。第1の部分は、例示的やり方で上に規定されたように、好適な測定方法を使用して判断され得る。例えばレーザ切断方法、エッチング方法又は任意の他の方法の範囲内で、工程S3aにおいてマスクが生成される。工程S3aの代案として又はそれに加えて、第1の部分の後の被膜のための局所的接着条件が、工程S3bにおいて確立される。工程S2において判断されたエリア29の第1の部分は、工程S4において反射層を備える。
【0057】
それに加えて又はその代わりに、工程S2は、光導波路16からの光線路26をユーザの眼14に向かって出力結合するのに好適でない第2の部分の判断を含み得る。工程S4では、第2の部分は、第2の部分における光線路26の反射を低減又は妨害する及び/又はユーザの眼14からそれた方向の光線路26の出力結合を促進する屈折率整合層を備え得る。この目的を達成するために、フレネルセグメントは上述のように透明材料により外側上で充填され得る。この場合、屈折率整合層はまた、第1の部分42、44、46、60の反射被覆を覆い得る。
【0058】
本発明はフレネルセグメントを備えた出力結合配置28の構成に制限されなく、非セグメント化出力結合配置(これらが反射光学ユニット、回折光学ユニット、又は屈折出力結合光学ユニットであっても)へも適用可能であるということが理解される。光線路26により当接される出力結合配置のエリアのいくつかの部分もまた非セグメント化出力結合配置の場合に判断され、当該エリアの表面処理は、上述のように、判断された部分内だけにおいて、ユーザの眼14に向かって光線路16の出力結合を引き起こす。
【国際調査報告】