(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】抗体-薬物コンジュゲートの中間体のワンポット合成法による製造プロセス
(51)【国際特許分類】
C07K 16/00 20060101AFI20220131BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220131BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20220131BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20220131BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20220131BHJP
A61K 31/5513 20060101ALI20220131BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20220131BHJP
A61K 31/136 20060101ALI20220131BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20220131BHJP
C07K 1/02 20060101ALI20220131BHJP
C07K 5/06 20060101ALI20220131BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C07K16/00
A61K47/68
A61P35/00
A61K38/07
A61K31/4745
A61K38/08
A61K31/5513
A61K31/704
A61K31/136
A61K31/7076
C07K1/02
C07K5/06
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020535962
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(85)【翻訳文提出日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 CN2020074987
(87)【国際公開番号】W WO2020233174
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】201910420868.X
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910916200.4
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910916510.6
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910916508.9
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910916198.0
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910916470.5
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910916242.8
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519463064
【氏名又は名称】煙台邁百瑞国際生物医薬股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MabPlex International Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 60, Beijing Middle Road, Yantai Development Zone, Yantai District, China (Shandong) Pilot Free Trade Zone, 264006, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】于 昭興
(72)【発明者】
【氏名】李 新芳
(72)【発明者】
【氏名】藍 明超
(72)【発明者】
【氏名】毛 新潔
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
4H039
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA06
4C084BA01
4C084BA10
4C084BA14
4C084BA15
4C084BA23
4C084BA32
4C084BA42
4C084CA59
4C084DA27
4C084NA13
4C084ZB261
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086CB11
4C086CB22
4C086EA10
4C086EA18
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZB26
4C206AA01
4C206AA04
4C206FA31
4C206KA05
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA13
4C206ZB26
4H039CA71
4H039CD90
4H045AA11
4H045AA20
4H045BA11
4H045BA50
4H045BA72
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA30
(57)【要約】
本発明は、「ワンポット合成法」による抗体-薬物コンジュゲートの中間体の製造方法に関し、本発明で提供される製造プロセスは、操作が簡単であり、中間過程で中間反応液の濃縮、洗浄、ろ過、有機廃液の処理、及び中間体の包装、保管などの手順を必要とすることなく、反応系全体は、分離精製処理を1回だけ行い、労働力、設備、スペース、原料などのコストを節約できるだけでなく、環境汚染を大幅に低減させている。さらに、本発明で提供される「ワンポット合成法」による抗体-薬物コンジュゲートの中間体の製造プロセスにより得られた抗体-薬物コンジュゲートの中間体は、より高い収率を有する。本発明で提供される「ワンポット合成法」による抗体-薬物コンジュゲートの中間体の製造プロセスは、大量生産により適する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンカー部分及び薬物部分を含む抗体-薬物コンジュゲートの中間体の製造プロセスであって、前記抗体-薬物コンジュゲートの中間体はPy-MAA-Val-Cit-PAB-D又はMC-Val-Cit-PAB-Dであり、前記中間体のPy-MAA-Val-Cit-PAB又はMC-Val-Cit-PABは、リンカー部分であり、前記中間体のDは、連結される薬物部分を示し、前記連結される薬物部分は、遊離のアミノ基を含む前記抗体-薬物コンジュゲートの中間体の製造プロセスにおいて、以下の反応経路を含み、前記製造プロセスは、ワンポット合成法であり、2つの階段の反応は、いずれも1つの反応系で行う、ことを特徴とする製造プロセス。
【化1】
【請求項2】
Py-MAA-Val-Cit-PAB-OH又はMC-Val-Cit-PAB-OHと炭酸ビス(4-ニトロフェニル)(NPC)とを有機塩基の存在下で接触させて反応させ、上記反応終了後、反応系に有機塩基を追加し、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール及び前記薬物部分Dを加えて反応させることを特徴とする請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項3】
前記薬物部分Dは、オーリスタチン(auristatin)類細胞傷害性薬剤、アントラマイシン(Anthramycin)類細胞傷害性薬剤、アントラサイクリン(anthracycline)類細胞傷害性薬剤又はピューロマイシン(puromycin)細胞傷害性薬剤、カンプトテシン類似体である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造プロセス。
【請求項4】
前記オーリスタチン(auristatin)類細胞傷害性薬剤は、MMAE、MMAF、MMAD又はその誘導体であり、前記アントラマイシン(Anthramycin)類細胞傷害性薬剤は、アントラマイシン又はその誘導体であり、前記アントラサイクリン(anthracycline)類細胞傷害性薬剤は、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン又はその誘導体であり、前記ピューロマイシン(puromycin)細胞傷害性薬剤は、ピューロマイシン又はその誘導体であり、前記カンプトテシン類似体は、DX8951又はその誘導体である、ことを特徴とする請求項3に記載の製造プロセス。
【請求項5】
前記Py-MAA-Val-Cit-PAB-D又はMC-Val-Cit-PAB-Dの構造は、式(1)~(22)に示される、ことを特徴とする請求項4に記載の製造プロセス。
【化2】
【請求項6】
前記有機塩基1及び有機塩基2は、それぞれ独立にN,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンの1つ又は複数であり、好ましくは、前記有機塩基1及び有機塩基2は、それぞれ独立にN,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンの1つ又は2つである、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の製造プロセス。
【請求項7】
前記トリアゾール類触媒は、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-7-アゾベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボン酸エチルの1つ又は複数であり、好ましくは、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールである、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の製造プロセス。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の製造プロセスの、抗腫瘍薬の調製における応用。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の製造プロセスの、抗体-薬物コンジュゲートの調製における応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体-薬物コンジュゲートの技術分野に関し、具体的には、抗体-薬物コンジュゲートの中間体(即ち、リンカー部分-薬物部分コンジュゲート)のワンポット合成法による製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
抗体-薬物コンジュゲート(Antibody drug conjugate、単にADCと称される)は、抗体部分(Antibody)、リンカー部分(Linker)及び薬物部分(Drug)という3つの部分を含む抗腫瘍薬であり、ここで、抗体部分と薬物部分とがリンカー部分を介して連結され、その作用機序は、標的抗体により薬物を標的細胞(例えば、腫瘍細胞)に輸送した後、薬物を放出して腫瘍細胞を殺すという目的を達成する。
【0003】
現在、抗体-薬物コンジュゲートの最も一般的な合成方法は、リンカー部分と薬物部分を液相で共有結合させてリンカー-薬物コンジュゲートを形成した後、さらに抗体にチオール基又はアミノ基を介してカップリングして抗体-薬物コンジュゲートを形成する。公開番号がCN107427591Aである中国特許は、リンカー-薬物コンジュゲートの一般的な合成方法を詳しく記載しており(明細書の第34頁及び第47~48頁)(図面1に示す)、上記一般的な合成方法は、第1階段では、遊離ベンジルアルコール基を含むリンカー溶液を適切な溶媒に溶解させ、反応系に炭酸ビス(4-ニトロフェニル)及びジイソプロピルエチルアミンを添加し、数時間の反応後、中間生成物を抽出して精製し、第2段階で、上記の中間生成物、遊離アミノ基を含む薬物部分を適切な溶媒に溶解させ、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール及びピリジンを加え、数時間の反応後、溶媒を減圧下で除去し、リンカー-薬物コンジュゲートを得る。
【0004】
上記二段階反応系において、中間体を抽出及び精製する必要があり、最終的な反応収率に影響を与える。加えて、上記製造プロセスは、製造に際して多反応系の反応中の不可避な欠点があり、即ち、多段階の反応液の濃縮、洗浄、ろ過、有機廃液の処理、第1階段の中間体の包装及び保管などが必要であり、生産の消耗品、労働力、設備、スペースなどのコストを増加させるだけでなく、より多くの生産廃液を生成し、全体の生産コストと生産時間を増加させる。
【0005】
公開番号がCN107921030Aである中国特許には、さらに、抗体に架橋カップリングで共有結合することができる複数のリンカーが開示され、その明細書の第42頁に以下に示されるような抗体-薬物コンジュゲートの中間体(Py-MAA-Val-Cit-PAB-MMAE)(ここで、Pyは1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン(CAS No:959-52-4)であり、Bailingwei Technology Co.,Ltd.、南京康満林化工実業有限公司)が記載されている。
【0006】
【0007】
さらに、その特許出願の第32頁には、薬物部分がMMAD(Demethyldolastatin 10)である抗体-薬物コンジュゲートの中間体(Py-MAA-Val-Cit-PAB-MMAD)の製造プロセスが開示されている。
【0008】
【0009】
そのプロセスは、まず、Val-Cit-PABを薬物部分(MMAD)とカップリングしてVal-Cit-PAB-MMADコンジュゲートを形成した後、精製して目的の生成物を得た後、さらにPy-MAAと反応させて抗体-薬物コンジュゲートの中間体Py-MAA-Val-Cit-PAB-MMADを生成する。同様に多反応系の合成を利用するとともに、抗体-薬物コンジュゲートの連結される薬物部分(例えば、MMAD/MMAE又はMMAFなど)は、反応の最後の階段ではなく前期段階(MMADは、Val-Cit-PAB-MMADが生成される時に反応物として反応系に加える)で連結反応に関与するため、上記プロセスで生成された薬物部分(例えば、MMAD/MMAE又はMMAFなど)の仕込み損失が高くなることに繋がり、抗体-薬物コンジュゲートの連結される薬物部分(例えば、MMAD/MMAE又はMMAFなど)は、通常、比較的高価であるので、製造コストも大幅に増加する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の問題を解決するために、本発明は、「ワンポット合成法」による抗体-薬物コンジュゲートの中間体(即ち、リンカー-薬物コンジュゲート)の製造方法を提供する。
【0011】
具体的には、本発明は、リンカー部分及び薬物部分を含む抗体-薬物コンジュゲートの中間体の製造プロセスであって、抗体-薬物コンジュゲートの中間体はPy-MAA-Val-Cit-PAB-D又はMC-Val-Cit-PAB-Dであり、前記中間体のPy-MAA-Val-Cit-PAB又はMC-Val-Cit-PABは、リンカー部分であり、前記中間体のDは、連結される薬物部分を示し、前記連結される薬物部分は、遊離のアミノ基を含む前記抗体-薬物コンジュゲートの中間体の製造プロセスにおいては、以下の反応経路を含み、前記製造プロセスは、ワンポット合成法であり、2つの階段の反応は、いずれも1つの反応系で行うことを特徴とする製造プロセスを提供する。
【0012】
【0013】
さらに、前記製造プロセスは、Py-MAA-Val-Cit-PAB-OH又はMC-Val-Cit-PAB-OHと炭酸ビス(4-ニトロフェニル)(NPC)とを有機塩基の存在下で接触させて反応させ、反応終了後、同一の反応系に有機塩基を直接追加し、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール及び前記薬物部分Dを加えて反応させる。
【0014】
さらに、前記的薬物部分Dは、オーリスタチン(auristatin)類細胞傷害性薬剤、アントラマイシン(Anthramycin)類細胞傷害性薬剤、アントラサイクリン(anthracycline)類細胞傷害性薬剤又はピューロマイシン(puromycin)細胞傷害性薬剤、カンプトテシン類似体である。
【0015】
さらに、前記オーリスタチン(auristatin)類細胞傷害性薬剤は、MMAE、MMAF、MMAD又はその誘導体であり、前記アントラマイシン(Anthramycin)類細胞傷害性薬剤は、アントラマイシン又はその誘導体であり、前記アントラサイクリン(anthracycline)類細胞傷害性薬剤は、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン又はその誘導体であり、前記ピューロマイシン(puromycin)細胞傷害性薬剤は、ピューロマイシン又はその誘導体であり、前記カンプトテシン類似体は、DX8951(エキサテカン)又はその誘導体である。
【0016】
さらに、前記Py-MAA-Val-Cit-PAB-D又はMC-Val-Cit-PAB-Dの構造は、化学式(1)~(22)に示す。
【0017】
【0018】
さらに、前記有機塩基1及び有機塩基2は、それぞれ独立にN,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンの1つ又は複数であり、好ましくは、前記有機塩基1及び有機塩基2は、それぞれ独立にN,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンの1つ又は2つである。
【0019】
さらに、前記トリアゾール類触媒は、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-7-アゾベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボン酸エチルの1つ又は複数であり、好ましくは、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールである。
【0020】
さらに、前記反応の反応温度は、約15~35℃であり、さらに、反応温度は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34又は35℃であってもよい。
【0021】
上記のいずれか1項に記載の方法の、抗腫瘍薬の製造における応用。
【0022】
上記のいずれか1項に記載の方法の、抗体-薬物コンジュゲートの製造における応用。
【0023】
従来の二段階反応系と比較しては、本発明で提供される「ワンポット合成法」による抗体-薬物コンジュゲートの中間体の製造プロセスは、操作が簡単であり、中間過程で中間反応液の濃縮、洗浄、ろ過、有機廃液の処理、及び中間体中間体の包装、保管などの手順を必要としないが、第1階段の反応が終了した後に、同一反応系において、次の反応操作を直接に行い、反応系全体は、分離精製処理を1回だけ行い、消耗品、労働力、設備、スペース、原料などのコストを削減できるだけでなく、生産廃液を大幅に低減させ、製造コストを削減させ、生産効率を向上させている。さらに、反応過程では、連結される薬物部分は、最後の反応工程に添加され、薬物部分(例えば、MMAD、MMAE又はMMAF、DX8951など)の仕込み損失を効果的に低減させている。従って、本発明で提供される「ワンポット合成法」による抗体-薬物コンジュゲートの中間体の製造プロセスは、大量生産により適する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、公開番号がCN107427591Aである中国特許の明細書の第34頁及び第47~48頁に記載されたリンカー-薬物コンジュゲートの製造方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
略語
特に明記しない限り、本発明で使用されるすべての略語は、当業者によって理解されるのと同じ意味を有する。本発明で使用される、一般的に使用される略語及びそれらの定義は以下の通りである。
【0026】
【0027】
定義
特に定義されない限り、本発明で使用されるすべての科学技術用語は、当業者によって理解されるのと同じ意味を持つ。
【0028】
本発明で使用される「抗体-薬物コンジュゲート」という用語は、抗体/抗体機能性断片、リンカー、及び薬物部分が化学反応によって連結されている化合物を指し、その構造は、抗体又は抗体類リガンド、薬物部分、及び抗体又は抗体類リガンド及び薬物をカップリングするリンカー(linker)という3つの部分からなる。現在、抗体-薬物コンジュゲートの調製は、通常、リンカーと薬物部分とを化学反応により「リンカー-薬物」コンジュゲートを形成する第1のステップと、「リンカー-薬物」コンジュゲートのリンカー部分を抗体/抗体機能性断片とチオール基又はアミノ基を介して共有結合する第2のステップという2つのステップに分けられる。本発明に係る「抗体-薬物コンジュゲートの中間体」という用語は、以上に係る「リンカー-薬物」コンジュゲートを意味し、さらに、本発明に係る「抗体-薬物コンジュゲートの中間体」とは、それらのリンカーと薬物との間でアミンとエステルの交換反応により「-CO-NH-」結合を形成してカップリングされる「リンカー-薬物」コンジュゲートを意味する。
【0029】
本発明で使用される「リンカー」及び「リンカー部分」という用語は、抗体-薬物カップリングの抗体と薬物を連結する部分を指し、切断可能又は切断不可能であってもよい。切断可能なリンカー(即ち、開裂可能なリンカー又は生分解性リンカー)は、標的細胞内またはその上で切断され、薬物を放出することができる。いくつかの実施形態では、本発明に係るリンカーは、切断可能リンカー、例えば、ジスルフィドによるリンカー(それは、チオール基の濃度がより高い腫瘍細胞で選択的に切断される)、ペプチドリンカー(それは、腫瘍細胞内の酵素により切断される)、ヒドラゾンリンカーから選ばれる。他の実施形態では、本発明に係るリンカーは、切断不可能なリンカー(即ち、開裂不可能なリンカー)から選ばれ、例えば、チオエーテルリンカーである。更に他の実施形態では、本発明に係るリンカーは、開裂可能なリンカーと開裂不可能なリンカーとの組み合わせである。
【0030】
本発明で使用される「薬物」及び「薬物部分」という用語は、一般的に、本発明に記載のコンジュゲートを調製するために、所望の生物活性を有し、且つ反応性官能基を有する任意の化合物を指す。所望の生物活性は、人又は他の動物の疾患の診断、治癒、緩和、治療、予防を含む。新薬の継続的な発見及び開発に伴い、これらの新薬も本発明に記載の薬物に含まれるべきである。具体的には、前記薬物には、細胞毒性薬、細胞分化因子、幹細胞栄養因子、ステロイド薬、自己免疫疾患を治療するための薬物、抗炎症薬又は抗感染症薬が含まれるが、これらに限定されない。より具体的には、前記薬物には、チューブリン重合阻害剤又はDNA、RNA損傷剤が含まれるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の技術態様を具体的な実施形態によりさらに非制限的で詳しく説明する。以下の実施例は、本発明の技術的概念及び特徴を説明するためだけのものであり、当業者が本発明の内容を理解し、それに応じて実施できることを目的とし、これらに本発明の保護範囲を限定しないことを指摘すべきである。本発明の精神及び主旨に従ってなされた同等の変更または修飾は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【0032】
一般的な調製方法:Py-MAA-Val-Cit-PAB-OHの調製:
【0033】
(1) Py-MAAの調製
【0034】
【0035】
化合物Py(1.87g,7.51mmol)及びEt3N(104μL,0.75mmol)を無水CH2Cl2(40mL)に溶解させ、チオグリコール酸(103.9μL,1.50mmol)のCH2Cl2(40mL)溶液を滴下し、滴下終了後、反応系を室温まで昇温させ、室温で一晩撹拌した。反応終了後、溶剤を真空条件下で除去し、粗生成物をクロマトグラフィーにより精製し、白色固体としてPy-MAA(1.87g)を得た。
【0036】
(2)Py-MAA-Val-Cit-PAB-OHの調製
【0037】
【0038】
化合物Py-MAA(10.00g,29.33mmol)をテトラヒドロフラン(200mL)に入れ、N’,N-カルボニルジイミダゾール(7.13g,44.00mmol)、Val-Cit-PAB-OH(13.34g,35.20mmol)を加え、室温で24時間撹拌した。石油エーテル(200mL)を加え、0.5時間撹拌し、ろ過し、白色固体を得た。白色固体を分取用高速液体クロマトグラフ(Preparative HPLC)により精製し、分取液を減圧下でロータリーエバポレーターにて蒸発させてPy-MAA-Val-Cit-PAB-OH(6.67g,白色固体粉末)を得た。
【0039】
実施例1 Py-MAA-Val-Cit-PAB-MMAEの調製
(1)「ワンポット合成法」による調製
【0040】
【0041】
三つ口丸底フラスコにPy-MAA-Val-Cit-PAB-OH(1.8g,1.0eq)及びDMF(40mL)を順次に加え、撹拌して溶解させた後、NPC(882mg,1.1eq)、DIPEA(336mg,1.0eq)を加え、24±2℃で24時間撹拌した。次いで、反応液にDIPEA(672mg,2.0eq)、ピリジン(2.3mL)、HoBt(351mg,1.0eq)及びMMAE(1.7g,0.9eq)を順次に加え、24±2℃で反応を48時間続け、分取用高速液体クロマトグラフにより精製して生成物Py-MAA-Val-Cit-PAB-MMAE(1.9g,純度99.84%、収率51.3%)を得た[計算式:収率=Py-MAA-Val-Cit-PAB-MMAE生成量÷(Py-MAA-Val-Cit-PAB-OH用量÷702.8×1446.8)×100%]。
【0042】
(2)「二階段法」による調製
第1ステップ:Py-MAA-Val-Cit-PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネートの調製
【0043】
【0044】
反応フラスコにDMF(40mL)、Py-MAA-Val-Cit-PAB-OH(1.8g,1.0eq.)を加え、撹拌して溶解させた後、炭酸ビス(4-ニトロフェニル)(NPC、882mg,1.1eq.)及びDIPEA(336mg,1.0eq.)を加え、24±2℃で24時間反応させた。反応液に酢酸エチル(mL)を加え、石油エーテル(mL)を滴下し、20分間かけて滴下し、10min撹拌し続け、ろ過した後、酢酸エチル及び石油エーテルで各々3回洗浄し、ロータリーエバポレーターにて蒸発させ、Py-MAA-Val-Cit-PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネート(1.6g,収率72.1%,純度:86%)を得た。
【0045】
第2ステップ:Py-MAA-Val-Cit-PAB-MMAEの調製
【0046】
【0047】
反応フラスコにPy-MAA-Val-Cit-PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネート(1.5g)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HoBt,234mg,1.0eq.)、DMF(30mL)、MMAE(1.1g,0.9eq.)、ピリジン(1.5mL)及びDIPEA(447mg,2.0eq)を加え、24±2℃で48時間反応させ、ロータリーエバポレーターにて蒸発させ、HPLCにより分取してPy-MAA-Val-Cit-PAB-MMAE(1.3g,収率52%、純度:99%)を得た。
【0048】
比較すると、主原料の仕込み量が同じ場合には、ワンポット合成法によるPy-MAA-Val-Cit-PAB-MMAEの最終製品の収率は51.3%であり、二階段法によるPy-MAA-Val-Cit-PAB-MMAEの最終製品の収率は37.49%であり、比較すると、ワンポット合成法によるPy-MAA-Val-Cit-PAB-MMAEの最終製品の収率は、二階段法によるPy-MAA-Val-Cit-PAB-MMAEの最終製品の収率よりもはるかに高くなることが分かった。
【0049】
実施例2 Py-MAA-Val-Cit-PAB-MMADの調製
(1)「ワンポット合成法」による調製
【0050】
【0051】
反応フラスコにDMF(4mL)、Py-MAA-Val-Cit-PAB-OH(200mg,1.0eq.)を加え、撹拌して溶解させた後に、炭酸ビス(4-ニトロフェニル)(NPC,95mg,1.1eq.)及びDIPEA(36mg,1.0eq.)を加え、24±2℃で24時間反応させ、反応フラスコに1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HoBt,38mg,1.0eq.)、MMAD(197mg,0.9eq.)、ピリジン(248μL)及びDIPEA(73mg,2.0eq)を加え、24±2℃で48時間反応させ、ロータリーエバポレーターにて蒸発させ、HPLCにより分取してPy-MAA-Val-Cit-PAB- MMAD(208mg,収率:48.7%,純度:99%)を得た。
【0052】
(2)「二階段法」による調製
第1ステップ:Py-MAA-Val-Cit-PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネートの調製
【0053】
【0054】
反応フラスコにDMF(4mL)、Py-MAA-Val-Cit-PAB-OH(200mg,1.0eq.)を加え、撹拌して溶解させた後に炭酸ビス(4-ニトロフェニル)(NPC、95mg,1.1eq.)及びDIPEA(36mg,1.0eq.)を加え、24±2℃で24時間反応させた。反応液に酢酸エチル(6mL)を加え、石油エーテル(12mL)を滴下し、20分間かけて滴下を完了し、10min撹拌し続け、ろ過した後、酢酸エチル及び石油エーテルで各々3回洗浄した。ロータリーエバポレーターにて蒸発させ、Py-MAA-Val-Cit-PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネート(170mg,収率:68.8%,純度:86%)を得た。
【0055】
第2ステップ:Py-MAA-Val-Cit-PAB-MMADの調製
【0056】
【0057】
反応フラスコにPy-MAA-Val-Cit-PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネート(170mg)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HoBt,27mg,1.0eq.)、DMF(4mL)、MMAD(139mg,0.9eq.)、ピリジン(174μL)及びDIPEA(52mg,2.0eq)を加え、24±2℃で48時間反応させ、ロータリーエバポレーターにて蒸発させ、HPLCにより分取してPy-MAA-Val-Cit-PAB-MMAD(139mg,収率:47.3%,純度:99%)を得た。
【0058】
比較すると、主原料の仕込み量が同じ場合には、ワンポット合成法によるPy-MAA-Val-Cit-PAB-MMADの最終製品の収率は48.7%であり、二階段法によるPy-MAA-Val-Cit-PAB-MMADの最終製品の収率は32.54%であり、比較すると、ワンポット合成法によるPy-MAA-Val-Cit-PAB-MMADの最終製品の収率は、二階段法によるPy-MAA-Val-Cit-PAB-MMADの最終製品の収率よりもはるかに高くなることが分かった。
【0059】
実施例3 Py-MAA-Val-Cit-PAB-DX8951の調製
(1)「ワンポット合成法」による調製
【0060】
【0061】
反応フラスコにDMF(4mL)、Py-MAA-Val-Cit-PAB-OH(200mg,1.0eq.)を加え、撹拌して溶解させた後に炭酸ビス(4-ニトロフェニル)(NPC,95mg,1.1eq.)及びDIPEA(36mg,1.0eq.)を加えた。24±2℃で24時間反応させ、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HoBt,38mg,1.0eq.)、DX8951(136mg,0.9eq.)、ピリジン(248μL)及びDIPEA(110mg,3.0eq)を加え、24±2℃で反応を48時間続け、ロータリーエバポレーターにて蒸発させ、HPLCにより分取してPy-MAA-Val-Cit-PAB-DX8951(123mg,収率:37.1%,純度:97%)を得た。
【0062】
(2)「二階段法」による調製
第1ステップ:Py-MAA-Val-Cit-PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネートの調製
【0063】
【0064】
反応フラスコにDMF(4mL)、Py-MAA-Val-Cit-PAB-OH(200mg,1.0eq.)、撹拌して溶解させた後に炭酸ビス(4-ニトロフェニル)(NPC,95mg,1.1eq.)及びDIPEA(36mg,1.0eq.)を加え、24±2℃で24時間反応させた。反応液に酢酸エチル(6mL)を加え、石油エーテル(12mL)を滴下し、20分間かけて滴下を完了し、10min撹拌し続け、ろ過した後、酢酸エチル及び石油エーテルで各々3回洗浄し、ロータリーエバポレーターにて蒸発させ、Py-MAA-Val-Cit-PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネート(176mg,収率:71.3%,純度:86%)を得た。
【0065】
第2ステップ:Py-MAA-Val-Cit-PAB-DX8951の調製
【0066】
【0067】
反応フラスコにPy-MAA-Val-Cit-PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネート(170mg)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HoBt,27mg,1.0eq.)、DMF(4mL)、DX8951(96mg,0.9eq.)、ピリジン(174μL)及びDIPEA(78mg,3.0eq)を加え、24±2℃で48時間反応させ、ロータリーエバポレーターにて蒸発させ、HPLCにより分取してPy-MAA-Val-Cit-PAB-DX8951(76mg,収率:33.3%,純度:97%)を得た。
【0068】
比較すると、主原料の仕込み量が同じ場合には、ワンポット合成法によるPy-MAA-Val-Cit-PAB-DX8951の最終製品の収率は37.1%であり、二階段法によるPy-MAA-Val-Cit-PAB-DX8951の最終製品の収率は23.74%であり、比較すると、ワンポット合成法によるPy-MAA-Val-Cit-PAB-DX8951の最終製品の収率は、二階段法によるPy-MAA-Val-Cit-PAB-DX8951の最終製品の収率よりもはるかに高くなることが分かった。
【0069】
実施例4 Mc-Val-Cit-PAB-MMADの調製
(1)「ワンポット合成法」による調製
【0070】
【0071】
反応フラスコにDMF(4mL)、MC-Val-Cit-PAB-OH(200mg,1.0eq.)を加え、撹拌して溶解させた後に炭酸ビス(4-ニトロフェニル)(NPC,116mg,1.1eq.)及びDIPEA(45mg,1.0eq.)を加え、24±2℃で18時間反応させ、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HoBt,47mg,1.0eq.)、MMAD(242mg,0.9eq.)、ピリジン(304μL)及びDIPEA(90mg,2.0eq)を加え、24±2℃で反応を48時間続け、ロータリーエバポレーターにて蒸発させ、HPLCにより分取してMC-Val-Cit-PAB-MMAD(228mg,収率:47.7%,純度:99%)を得た。
【0072】
(2)「二階段法」による調製
第1ステップ:MC-Val-Cit -PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネートの調製
【0073】
【0074】
反応フラスコにDMF(4mL)、MC-Val-Cit-PAB-OH(200mg,1.0eq.)を加え、撹拌して溶解させた後に炭酸ビス(4-ニトロフェニル)(NPC,116mg,1.1eq.)及びDIPEA(45mg,1.0eq.)を加えた。24±2℃で18時間反応させ、酢酸エチル(6mL)を加え、石油エーテル(12mL)を滴下し、20分間かけて滴下を完了し、10min撹拌し続け、ろ過した後、酢酸エチル及び石油エーテルで各々3回洗浄した。ロータリーエバポレーターにて蒸発させ、MC-Val-Cit-PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネート(177mg,収率:68.6%,純度:90%)を得た。
【0075】
第2ステップ:MC-Val-Cit-PAB-MMADの調製
【0076】
【0077】
反応フラスコに第1ステップで得られたMC-Val-Cit-PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネート(170mg)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HoBt,31mg,1.0eq.)、DMF(4mL)、MMAD(160mg,0.9eq.)、ピリジン(200μL)及びDIPEA(59mg,2.0eq)を加え、24±2℃で48時間反応させ、ロータリーエバポレーターにて蒸発させ、HPLCにより分取してMC-Val-Cit-PAB-MMAD(156mg,収率:49.4%,純度:99%)を得た。
【0078】
比較すると、主原料の仕込み量が同じ場合には、ワンポット合成法によるMC-Val-Cit-PAB-MMADの最終製品の収率は47.7%であり、二階段法によるMC-Val-Cit-PAB-MMADの最終製品の収率は33.88%であり、比較すると、ワンポット合成法によるMC-Val-Cit-PAB-MMADの最終製品の収率は、二階段法によるMC-Val-Cit-PAB-MMADの最終製品の収率よりもはるかに高くなることが分かった。
【0079】
実施例5 Mc-Val-Cit-PAB-DX8951の調製
(1)「ワンポット合成法」による調製
【0080】
【0081】
反応フラスコにDMF(4mL)、MC-Val-Cit-PAB-OH(200mg,1.0eq.)を加え、撹拌して溶解させた後に炭酸ビス(4-ニトロフェニル)(NPC,116mg,1.1eq.)及びDIPEA(45mg,1.0eq.)を加えた。24±2℃で18時間反応させ、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HoBt、47mg,1.0eq.)、DMF(4mL)、DX8951(167mg,0.9eq.)、ピリジン(304μL)及びDIPEA(135mg,3.0eq)を加え、24±2℃で48時間反応させ、ロータリーエバポレーターにて蒸発させて、HPLCにより分取してMC-Val-Cit-PAB-DX8951(139mg,収率:38.4%,純度:97%)を得た。
【0082】
(2)「二階段法」による調製
第1ステップ:MC-Val-Cit-PAB -(4-ニトロフェニル)カーボネートの調製
【0083】
【0084】
反応フラスコにDMF(4mL)、MC-Val-Cit-PAB-OH(200mg,1.0eq.)を加え、撹拌して溶解させた後に炭酸ビス(4-ニトロフェニル)(NPC,116mg,1.1eq.)及びDIPEA(45mg,1.0eq.)を加えた。24±2℃で18時間反応させ、酢酸エチル(6mL)を加え、石油エーテル(12mL)を滴下し、20分間かけて滴下を完了し、10min撹拌し続け、ろ過した後、酢酸エチル及び石油エーテルで各々3回洗浄した、ロータリーエバポレーターにて蒸発させ、MC-Val-Cit-PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネート(174mg,収率:67.4%,純度:90%)を得た。
【0085】
第2ステップ:MC-Val-Cit-PAB-DX8951の調製
【0086】
【0087】
反応フラスコにMC-Val-Cit-PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネート(170mg)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HoBt,31mg,1.0eq.)、DMF(4mL)、DX8951(110mg,0.9eq.)、ピリジン(200μL)及びDIPEA(89mg,3.0eq)を加え、24±2℃で48時間反応させ、ロータリーエバポレーターにて蒸発させ、HPLCにより分取してMC-Val-Cit-PAB-DX8951(85mg,収率:35.6%,純度:97%)を得た。
【0088】
比較すると、主原料の仕込み量が同じ場合には、ワンポット合成法によるMC-Val-Cit-PAB-DX8951の最終製品の収率は38.4%であり、二階段法によるMC-Val-Cit-PAB-DX8951の最終製品の収率は23.99%であり、比較すると、ワンポット合成法によるMC-Val-Cit-PAB-DX8951の最終製品の収率は、二階段法によるMC-Val-Cit-PAB-DX8951の最終製品の収率よりもはるかに高くなることが分かった。
【0089】
実施例6 Mc-Val-Cit-PAB-MMAEの調製
(1)「ワンポット合成法」による調製
【0090】
【0091】
三つ口丸底フラスコにMC-Val-Cit-PAB-OH(CAS No.:159857-80-4)(200mg,1.0eq)及びDMF(4mL)を順次に加え、室温で撹拌して溶解させた後、NPC(117mg,1.1eq)、DIPEA(45mg,1.0eq)を加え、24±2℃で18時間撹拌した。次いで、上記反応液にDIPEA(90mg,2.0eq)、ピリジン(0.3mL,Vピリジン/VDIPEA=2.5)、HoBt(47mg,1.0eq)及びMMAE(251mg,1.0eq)を順次に加え、24±2℃で反応を48時間続け、分取用高速液体クロマトグラフにより精製して生成物MC-Val-Cit-PAB-MMAE(214mg,純度99.45%、収率46.5%)を得た[計算式:収率 = MC-Val-Cit-PAB-MMAE生成量 ÷(MC-Val-Cit-PAB-OH用量÷572.7×1316.6)×100%]。
【0092】
(2)「二階段法」による調製
第1ステップ:MC-Val-Cit-PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネートの調製
【0093】
【0094】
三つ口丸底フラスコにMC-Val-Cit-PAB-OH(200mg,1.0eq)及びDMF(4mL)を順次に加え、室温で撹拌して溶解させた後、NPC(117mg,1.1eq)、DIPEA(45mg,1.0eq)を加え、24±2℃で18時間撹拌した。酢酸エチル(12mL)及び石油エーテル(18mL)を加え、撹拌し、ろ過し、ロータリーエバポレーターにて蒸発させて粗生成物を得た。粗生成物を酢酸(2mL)及びメタノール(0.3mL)に加え、撹拌して溶解させ、次いで、精製水(6mL)を滴下し、ろ過した。得られた固体をロータリーエバポレーターにて蒸発させ、MC-Val-Cit-PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネート(185mg,収率:71.8%,純度:97%)を得た。
【0095】
第2ステップ:MC-Val-Cit-PAB-MMAEの調製
【0096】
【0097】
反応フラスコにMC-Val-Cit-PAB-(4-ニトロフェニル)カーボネート(185mg)、DIPEA(64mg,2.0eq)、ピリジン(0.2mL,Vピリジン/VDIPEA=2.5)、HoBt(34mg,1.0eq)及びMMAE(180mg,1.0eq)を順次に加え、24±2℃で反応を48時間続け、分取用高速液体クロマトグラフにより精製して生成物MC-Val-Cit-PAB-MMAE(115mg,収率34.8%,純度99%)を得た。
【0098】
比較すると、主原料の仕込み量が同じ場合には、ワンポット合成法によるMC-Val-Cit-PAB-MMAEの最終製品の収率は46.5%であり、二階段法によるMC-Val-Cit-PAB-MMAEの最終製品の収率は24.99%であり、比較すると、ワンポット合成法によるMC-Val-Cit-PAB-MMAEの最終製品の収率は、二階段法によるMC-Val-Cit-PAB-MMAEの最終製品の収率よりもはるかに高くなることが分かった。
【0099】
【0100】
Py-MAA-Val-Cit-PAB-MMAE、Py-MAA-Val-Cit-PAB-MMAD、Py-MAA-Val-Cit-PAB-DX8951、Mc-Val-Cit-PAB-MMAD、Mc-Val-Cit-PAB-DX8951、Mc-Val-Cit-PAB-MMAEの「ワンポット合成法」及び「二階段法」による最終製品の収率を比較すると、従来技術の「二階段法」による製造プロセスよりも、本発明で提供される「ワンポット合成法」による製造プロセスの最終製品の収率は大きく向上し、薬物(例えば、MMAE、DX8951)などの原料が高価であるので、医薬品の製造コストを大幅に削減するため、従来技術の「二階段法」による製造プロセスよりも、本発明で提供される「ワンポット合成法」による製造プロセスは、顕著な進歩及び予測できない技術的効果を有することは明らかである。
【0101】
さらに、本発明で提供されるワンポット合成法による製造プロセスは、同一の反応系で反応する必要があるだけであるが、従来の製造プロセスでは、2つの反応系で反応するが必要があり(即ち、Py-MAA-Val-Cit-PAB-PNPを抽出した後、再度反応に付する)、これには、有機試薬(酢酸エチル及び石油エーテルなど)、機器(濃縮用)及び新たな反応容器(次の反応に使用される)を使用する必要があり、合成プロセスに多くの作業をもたらすことは間違いなく、また、有機試薬の使用及び回収は、より多くの労力を必要とすることに加えて、環境に一定の影響を与えるため、本発明で提供されるワンポット合成法による製造プロセスは、大規模生産により適する。
【0102】
【0103】
本発明は、各々の具体的な実施例によって例示して説明した。しかしながら、当業者は、本発明が各々の具体的な実施形態に限定されないことを理解すべきであり、当業者にとっては、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本発明の保護範囲内で様々な改良又は変更を加え、且つ本明細書の各場所で言及される、各々の技術的特徴の組み合わせは、本発明の範囲内である。
【国際調査報告】