(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】キノリン誘導体と抗体による薬物の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4709 20060101AFI20220131BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220131BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220131BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220131BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220131BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220131BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K31/4709
A61K39/395 N
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/04
A61P11/00
A61P1/16
A61K45/00
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021502798
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(85)【翻訳文提出日】2021-01-18
(86)【国際出願番号】 CN2019096540
(87)【国際公開番号】W WO2020015703
(87)【国際公開日】2020-01-23
(31)【優先権主張番号】201810790198.6
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910149525.4
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811346173.3
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティアン,シン
(72)【発明者】
【氏名】シェン,チェン
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ペン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シャンジャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シーチュアン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ジェン
(72)【発明者】
【氏名】シャ,ユ
(72)【発明者】
【氏名】ジン,シャオピン
(72)【発明者】
【氏名】リ,バイヨン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジョンミン マックスウェル
(72)【発明者】
【氏名】ハン,バオフイ
(72)【発明者】
【氏名】チュ,ティエンチン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ファ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ロン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA591
4C084ZA751
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC75
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD62
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA07
4C086NA05
4C086ZA59
4C086ZA75
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
免疫チェックポイント阻害剤と、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩であるチロシンキナーゼ阻害剤とを含む、キノリン誘導体と抗体による薬物の組み合わせを提供する。薬物の組み合わせは良好な抗肺腫瘍活性及び抗肝腫瘍活性を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)PD-1及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤と、
b)
【化1】
の化合物又は薬学的に許容されるその塩であるチロシンキナーゼ阻害剤とを含む薬物の組み合わせ。
【請求項2】
式Iの化合物の薬学的に許容される塩は1-[[[4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イル)オキシ-6-メトキシキノリン-7-イル]オキシ]メチル]シクロプロピルアミンの塩酸塩である請求項1に記載の薬物の組み合わせ。
【請求項3】
前記PD-1及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤は抗PD-1もしくは抗PD-L1抗体、又はその抗原結合フラグメントである請求項1又は2に記載の薬物の組み合わせ。
【請求項4】
前記抗PD-1抗体はニボルマブ、ペンブロリズマブ、トリパリマブ、シンチリマブ、カムレリズマブ、チスレリズマブ、14C12H1L1、ゲノリムズマブ、リズマブ、HLX-10、BAT-1306、AK103、AK104、CS1003、SCT-I10A、F520、SG001、GLS-010のいずれか1種又は2種以上から選ばれる請求項3に記載の薬物の組み合わせ。
【請求項5】
前記抗PD-L1抗体はアテゾリズマブ(Atezolizumab)、アベルマブ(Avelumab)、デュルバルマブ(Durvalumab)、KL-A167、SHR-1316、BGB-333、JS003、STI-A1014(ZKAB0011)、KN035、MSB2311、HLX-20、CS-1001のいずれか1種又は2種以上から選ばれる請求項3に記載の薬物の組み合わせ。
【請求項6】
前記抗PD-1抗体は、
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号31、配列番号32、または配列番号33から選ばれるアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号34、配列番号35、または配列番号36から選ばれるアミノ酸配列又はそれと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む請求項3に記載の薬物の組み合わせ。
【請求項7】
前記抗PD-1抗体は、
a.配列番号1に示す重鎖可変領域と、配列番号4に示す軽鎖可変領域と、
b.配列番号2に示す重鎖可変領域と、配列番号5に示す軽鎖可変領域と、
c.配列番号3に示す重鎖可変領域と、配列番号6に示す軽鎖可変領域と、
d.配列番号7に示す重鎖可変領域と、配列番号9に示す軽鎖可変領域と、
e.配列番号8に示す重鎖可変領域と、配列番号10に示す軽鎖可変領域と、
f.配列番号11に示す重鎖可変領域と、配列番号14に示す軽鎖可変領域と、
g.配列番号12に示す重鎖可変領域と、配列番号15に示す軽鎖可変領域と、
h.配列番号13に示す重鎖可変領域と、配列番号16に示す軽鎖可変領域と、
i.配列番号17に示す重鎖と、配列番号18に示す軽鎖と、
j.配列番号31に示す重鎖可変領域と、配列番号34に示す軽鎖可変領域と、
k.配列番号32に示す重鎖可変領域と、配列番号35に示す軽鎖可変領域と、
l.配列番号33に示す重鎖可変領域と、配列番号36に示す軽鎖可変領域と、
m.配列番号37に示す重鎖と、配列番号40に示す軽鎖と、
n.配列番号38に示す重鎖と、配列番号41に示す軽鎖と、又は
o.配列番号39に示す重鎖と、配列番号42に示す軽鎖とを含む請求項6に記載の薬物の組み合わせ。
【請求項8】
a)抗PD-1もしくは抗PD-L1抗体、又はその抗原結合フラグメントと、
b)式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩であるチロシンキナーゼ阻害剤とを含む治療有効量の薬物の組み合わせを対象に投与することを含む対象におけるがんの治療方法。
【請求項9】
前記抗PD-1抗体はニボルマブ、ペンブロリズマブ、トリパリマブ、シンチリマブ、カムレリズマブ、チスレリズマブ、14C12H1L1、ゲノリムズマブ、リズマブ、HLX-10、BAT-1306、AK103、AK104、CS1003、SCT-I10A、F520、SG001、GLS-010のいずれか1種又は2種以上から選ばれる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗PD-L1抗体はアテゾリズマブ(Atezolizumab)、アベルマブ(Avelumab)、デュルバルマブ(Durvalumab)、KL-A167、SHR-1316、BGB-333、JS003、STI-A1014、KN035、MSB2311、HLX-20、CS-1001のいずれか1種又は2種以上から選ばれる請求項8に記載の方法。
【請求項11】
約週に1回(q1w)、約2週に1回(q2w)、約3週に1回(q3w)、又は約4週に1回(q4w)の頻度で抗PD-1又は抗PD-L1抗体を投与する請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記がんはドライバー遺伝子陰性であり、例えば、EGFR、ALK及びROS1遺伝子の1種、2種又は3種は変異陰性である請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記がんは再発性及び/又は転移性肺がんである請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記がんは晩期肺がんである請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記がんは小細胞又は非小細胞肺がんである請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記がん治療は再発性又は転移性非小細胞肺がんの第一選択治療である請求項8~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記非小細胞肺がんは肺腺がん、肺扁平上皮がん又は肺大細胞がんである請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記がんは原発性肝腫瘍又は続発性肝腫瘍である請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記がんは肝細胞がんである請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記がんは転移性肝がんである請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記転移性肝がんは肺がん、胃がん、直腸がん、結腸がん、大腸がん、膵臓がん又は乳がんから転移している転移性がんである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗PD-1もしくは抗PD-L1抗体又はその抗原結合フラグメント及びチロシンキナーゼ阻害剤はそれぞれ医薬組成物として提供され、同時に投与され、連続して投与され、又は間隔投与される請求項8~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩は投与2週(14日)と休薬1週(7日)の治療期間で投与する請求項8~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記各治療期間に投与する薬物の組み合わせは約84~168mgの式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む請求項8~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記薬物の組み合わせは約84mg、約112mg、約140mg、約168mg、又は任意の前記値からなる範囲から選ばれる量の式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む請求項8~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
毎日に約8mg、約10mg又は約12mgの式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を投与し、投与2週後、1週休薬する請求項25に記載の用途又は方法。
【請求項27】
約2週に1回(q2w)又は約3週に1回(q3w)の頻度で100~600mgの抗PD-1抗体を投与する請求項8~26のいずれか1項に記載の用途又は方法。
【請求項28】
約2週に1回(q2w)又は約3週に1回(q3w)の頻度で約200mgの抗PD-1抗体を投与する請求項8~27のいずれか1項に記載の用途又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、医薬品分野に関し、抗腫瘍のための併用療法に関する。具体的には、キノリン誘導体と抗体の組み合わせ及びその抗腫瘍のための用途に関する。
【背景技術】
【0002】
チロシンキナーゼは、タンパク質チロシン残基のリン酸化を触媒する一連の酵素であり、細胞内シグナル伝達に重要な役割を果たし、正常な細胞の調節、シグナル伝達、発達に関与し、腫瘍細胞の増殖、分化、移動、アポトーシスと深い関係がある。腫瘍の形成に関係する受容体チロシンキナーゼは多く存在し、その細胞外ドメインの構造によって、表皮成長因子受容体(EGFR)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)等に分類される。
【0003】
アンロチニブ(Anlotinib)は1種のキノリン誘導体系チロシンキナーゼ阻害剤であり、多標的チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)として腫瘍の血管新生と増殖シグナルの伝達に影響を与える役割があり、受容体チロシンキナーゼ血管内皮成長因子受容体(VEGFR)1~3、表皮成長因子受容体(EGFR)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)1~4、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)α、β、幹細胞因子受容体(SCFR)7、8、9が主な標的である。第2相試験では、アンロチニブが無増悪生存期間を改善でき、全生存期間に潜在的なメリットがあることが示される(Han B,et
al.,Br J Cancer.2018,118(5):654-661)。多施設で二重盲検の第3相無作為化臨床試験では、アンロチニブが中国患者において全生存期間、無増悪生存期間を延長していることが示される。これは晩期NSCLC患者にアンロチニブは良好な忍容性があり、第三選択治療又は更なる治療として有望であることを示唆する(Han B,et al.,JAMA Oncol.2018 Nov,4(11):1569-1575)。
【0004】
文献WO2008112407の実施例24は、キノリン誘導体系チロシンキナーゼ阻害剤、1-[[[4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イル)オキシ-6-メトキシキノリン-7-イル]オキシ]メチル]シクロプロピルアミン及びその製造方法を開示し、構造式は式Iのとおりである。
【化1】
【0005】
Tリンパ球を含む自然免疫系は、強力な抗がん作用を持ち、作用範囲が幅広く高度な特異性を有するため、様々な腫瘍抗原に応答を与える。最近のがん免疫療法では、活性化されたエフェクター細胞の養子移入、関連の抗原に対する免疫接種又は非特異的免疫刺激剤
の提供により抗腫瘍免疫応答を増強させる。過去の20年、研究者ががん治療のための新たな免疫療法を生み出そうとして、特異的免疫チェックポイント阻害剤の開発に取り込む。晩期黒色腫患者の治療薬として、CTLA-4と結合してこれを抑制する抗体(Antibody)、イピリムマブ(Ipilimumab)(YERVOY(登録商標))の開発(Hodi,et al.,(2010)N Engl J Med 363:711-23)や、プログラム細胞死受容体-1(PD-1)と特異的に結合し阻害性PD-1/PD-1リガンド経路を遮断するニボルマブ(Nivolumab、Opdivo(登録商標))、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab、Keytruda(登録商標))等抗体の開発(Topalian,et al.,(2012a)N Engl J Med 366:2443-54)などである。PD-1(programmed death-1、略称PD-1)は活性化されたTリンパ球及びBリンパ球によって発現された、免疫抑制を仲介する重要な免疫チェックポイント受容体であり、そのリガンドは少なくともPD-L1、PD-L2を含む。PD-L1(Programmed death-ligand 1)はCD274、B7-H1とも呼ばれ、CD274遺伝子によってコードされる40kDaの1型膜貫通タンパク質であり、PD-1のリガンドである。PD-L1もPD-1も免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、いずれも2つの細胞外Igドメイン、即ちN末端Vドメイン及びC末端定常ドメインからなる。プログラム細胞死受容体-1(PD-1)及びB7-1(CD80)に対するPD-L1の結合インターフェースはIgV様ドメインにある(Lin,et al.,(2008)PNAS 105:3011-3016)。PD-L1は保存された短い細胞質尾部(約30のアミノ酸)を含み、PD-1は2つの細胞質チロシン依存性シグナルモチーフ(免疫受容体チロシン依存性抑制モチーフ(ITIM)、免疫受容体チロシン依存性スイッチモチーフ(ITSM))を含む。T細胞の刺激後、PD-1がチロシンホスファターゼSHP-2をその細胞質尾部内のITSMモチーフに動員することで、CD3+T細胞シグナル伝達カスケードに関与するエフェクター分子(例えば、CD3ζ、PKCθ、ZAP70)は脱リン酸化する(Freeman,et al.,(2000)J Exp Med
192:1027-34、Latchman,et al.,(2001)Nat Immunol 2:261-8、Carter,et al.,(2002)Eur J
Immunol32:634-43)。PD-L1はリンパ組織及び非リンパ組織内の白血球及び非造血細胞に幅広く分布しているだけでなく、様々ながん細胞にも幅広く分布しており、様々な腫瘍細胞の表面に高度に発現され、腫瘍の悪性度及び予後不良はPD-L1の発現レベルにも密接に関連する。腫瘍におけるPD-L1の高発現が腫瘍の攻撃性の増加や予後不良と関連があることは既に臨床データから判明する。PD-1/PD-L1複合体の形成により抑制性シグナルが伝達されT細胞の免疫応答が負に調節され、その結果、TCRが仲介するT細胞活性化、サイトカイン産生、T細胞増殖は阻害される(Fife,et al.,(2011)Nature Immunology 10:1185-1193)。相同抗原特異性T細胞の消耗又はアネルギーは誘導され(Hofmeyer,et al.,(2011)Journal of Biomedicine and Biotechnology 2011:1-9)、Th1細胞のFoxp3+制御性T細胞への分化は促進され(Armanath,et al.,(2011)Science TransMed 3:1-13、Francisco,et al.,(2009)J.Exp.Med.206:3015-3029)、エフェクターT細胞のアポトーシスは誘導される。PD-L1遺伝子の破壊により、T細胞応答がアップレギュレーションされ自己反応性T細胞が産生される(Latchman,et al.,(2004)PNAS 101:10691-10696)。PD-1又はPD-L1による抗体遮断は抗腫瘍免疫の増加につながる(Iwai,et al.,(2002)PNAS 99:12293-12297)。
【0006】
これまでの腫瘍免疫療法で最大の課題は、腫瘍の免疫耐性及び回避による効果不良である。したがって、小分子抗腫瘍化合物と抗PD-1/PD-L1抗体を組み合わせて使用
することで腫瘍細胞に形成されていた免疫耐性を解消することは、理論研究にとっても実際の応用にとっても大きな価値がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO2008112407号
【特許文献2】中国公開特許第CN108473977A号
【特許文献3】中国公開特許第CN106977602A号
【特許文献4】中国公告特許第CN105026428B号
【特許文献5】国際公開第WO2015085847A1号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Han B,et al.,Br J Cancer.2018,118(5):654-661.
【非特許文献2】Han B,et al.,JAMA Oncol.2018 Nov,4(11):1569-1575.
【非特許文献3】Hodi,et al.,(2010)N Engl J Med 363:711-23.
【非特許文献4】Topalian,et al.,(2012a)N Engl J Med 366:2443-54.
【非特許文献5】Lin,et al.,(2008)PNAS 105:3011-3016.
【非特許文献6】Freeman,et al.,(2000)J Exp Med 192:1027-34.
【非特許文献7】Latchman,et al.,(2001)Nat Immunol 2:261-8.
【非特許文献8】Carter,et al.,(2002)Eur J Immunol32:634-43.
【非特許文献9】Fife,et al.,(2011)Nature Immunology 10:1185-1193.
【非特許文献10】Hofmeyer,et al.,(2011)Journal of Biomedicine and Biotechnology 2011:1-9.
【非特許文献11】Armanath,et al.,(2011)Science TransMed 3:1-13.
【非特許文献12】Francisco,et al.,(2009)J.Exp.Med.206:3015-3029.
【非特許文献13】Latchman,et al.,(2004)PNAS 101:10691-10696.
【非特許文献14】Iwai,et al.,(2002)PNAS 99:12293-12297.
【発明の概要】
【0009】
本願の目的は、少なくとも、チロシンキナーゼ阻害剤と、PD-1及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤とを含む薬物の組み合わせを提供することである。いくつかの実施形態では、前記チロシンキナーゼ阻害剤は式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩であり、いくつかの特定の実施形態では、前記チロシンキナーゼ阻害剤は式Iの化合物の塩酸塩、即ち塩酸アンロチニブである。
【0010】
いくつかの実施形態では、PD-1受容体及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用
の阻害剤はプログラム細胞死受容体1(PD-1)と結合し且つ/もしくはPD-1活性を阻害する抗体又はその抗原結合部分であり、又は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)と結合し且つ/もしくはPD-L1活性を阻害する抗体又はその抗原結合部分であり、例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体である。いくつかの特定の実施形態では、前記抗体又はその抗原結合部分は、(a)ヒトPD-1と特異的に結合し且つヒトPD-L1とヒトPD-1の結合を遮断するモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメント、又は(b)ヒトPD-L1と特異的に結合し且つヒトPD-L1とヒトPD-1の結合を遮断するモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記抗PD-1又はPD-L1抗体は抗PD-1又はPD-L1モノクローナル抗体である。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記抗PD-1又はPD-L1抗体はヒト抗体又はマウス抗体である。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体はニボルマブ(Nivolumab)、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、デュルバルマブ(Durvalumab)、トリパリマブ(JS-001)、シンチリマブ(IBI308)、カムレリズマブ(Camrelizumab)、チスレリズマブ(BGB-A317)、14C12H1L1(康方生物)、ゲノリムズマブ(GB226)、リズマブ(LZM009)、HLX-10、BAT-1306、AK103(HX008)、AK104(康方生物)、CS1003、SCT-I10A、F520、SG001、GLS-010のいずれか1種又は2種以上から選ばれてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記抗PD-L1抗体はアテゾリズマブ(Atezolizumab)、アベルマブ(Avelumab)、デュルバルマブ(Durvalumab)、KL-A167、SHR-1316、BGB-333、JS003、STI-A1014(ZKAB0011)、KN035、MSB2311、HLX-20、CS-1001のいずれか1種又は2種以上から選ばれてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体は、
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号31、配列番号32、配列番号33から選ばれるアミノ酸配列又はこれに対して少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも85%の同一性、好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号34、配列番号35、配列番号36から選ばれるアミノ酸配列又はこれに対して少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも85%の同一性、好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体は、配列番号17、配列番号37、配列番号39から選ばれる重鎖と、配列番号18、配列番号40、配列番号42から選ばれる軽鎖とを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体は、
a.配列番号1に示す重鎖可変領域と、配列番号4に示す軽鎖可変領域と、
b.配列番号2に示す重鎖可変領域と、配列番号5に示す軽鎖可変領域と、
c.配列番号3に示す重鎖可変領域と、配列番号6に示す軽鎖可変領域と、
d.配列番号7に示す重鎖可変領域と、配列番号9に示す軽鎖可変領域と、
e.配列番号8に示す重鎖可変領域と、配列番号10に示す軽鎖可変領域と、
f.配列番号11に示す重鎖可変領域と、配列番号14に示す軽鎖可変領域と、
g.配列番号12に示す重鎖可変領域と、配列番号15に示す軽鎖可変領域と、
h.配列番号13に示す重鎖可変領域と、配列番号16に示す軽鎖可変領域と、
i.配列番号17に示す重鎖と、配列番号18に示す軽鎖と、
j.配列番号31に示す重鎖可変領域と、配列番号34に示す軽鎖可変領域と、
k.配列番号32に示す重鎖可変領域と、配列番号35に示す軽鎖可変領域と、
l.配列番号33に示す重鎖可変領域と、配列番号36に示す軽鎖可変領域と、
m.配列番号37に示す重鎖と、配列番号40に示す軽鎖と、
n.配列番号38に示す重鎖と、配列番号41に示す軽鎖と、又は
o.配列番号39に示す重鎖と、配列番号42に示す軽鎖とを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体は、6F5抗体に由来するCDR配列を含み、PD-1と結合する分離された抗体又は抗体フラグメントであり、前記6F5抗体のCDR配列は次のとおりである。
HCDR1:GFTFSSYG(配列番号19)、
HCDR2:ISGGGSDT(配列番号20)、
HCDR3:ARQLNYAWFAY(配列番号21)、
LCDR1:ESVDNYGISF(配列番号22)、
LCDR2:TSS(配列番号23)、及び
LCDR3:QQSKEVPWT(配列番号24)。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体は、14C12抗体に由来するCDR配列を含み、PD-1と結合する分離された抗体又は抗体フラグメントであり、前記14C12抗体のCDR配列は次のとおりである。
HCDR1:GFAFSSYD(配列番号25)、
HCDR2:ISGGGRYT(配列番号26)、
HCDR3:ANRYGEAWFAY(配列番号27)、
LCDR1:QDINTY(配列番号28)、
LCDR2:RAN(配列番号29)、及び
LCDR3:LQYDEFPLT(配列番号30)。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記式Iの化合物は薬学的に許容される塩又は薬学的に許容されるその製剤として存在してもよく、その塩酸塩であることが好ましい。
【0021】
いくつかの特定の実施形態では、前記化合物は1-[[[4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イル)オキシ-6-メトキシキノリン-7-イル]オキシ]メチル]シクロプロピルアミンの塩酸塩であり、即ち塩酸アンロチニブである。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記薬物の組み合わせは、式Iの化合物又はその塩酸塩(例えば二塩酸塩)と、シンチリマブもしくはその抗原結合フラグメント、InVivoMAb抗マウスPD-1モノクローナル抗体もしくはその抗原結合フラグメント、又は14C12H1L1もしくはその抗原結合フラグメントとを含む。
【0023】
本願の更なる目的は、少なくとも、チロシンキナーゼ阻害剤と、PD-1受容体及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤とを含む薬物の組み合わせの抗腫瘍のための用途を提供することである。いくつかの実施形態では、前記チロシンキナーゼ阻害剤は式Iの化合物又はその塩酸塩であり、且つ前記PD-1受容体及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤は抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体又はその抗原結合フラ
グメントである。いくつかの特定の実施形態では、前記抗PD-1モノクローナル抗体は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号31、配列番号32、配列番号33から選ばれるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号34、配列番号35、配列番号36から選ばれるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0024】
本願は、さらに、治療有効量のチロシンキナーゼ阻害剤及び治療有効量の、PD-1受容体及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤を対象に投与することを含む、がん又は腫瘍に罹患する対象の治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記チロシンキナーゼ阻害剤は式Iの化合物又はその塩酸塩である。いくつかの実施形態では、PD-1受容体及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤はプログラム細胞死受容体1(PD-1)と結合し且つ/もしくはPD-1活性を阻害する抗体又はその抗原結合部分であり、例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0025】
本願は、さらに、対象に、治療有効量のチロシンキナーゼ阻害剤を単独で投与し、且つPD-L1及び/又はPD-L1結合活性を阻害する治療有効量の抗体又はその抗原結合部分を単独で投与することを含む、がん又は腫瘍に罹患する対象を治療するための併用療法を提供する。
【0026】
本願は、さらに、がん又は腫瘍に罹患する対象の治療方法を提供する。前記がん又は腫瘍は肺がんであり、前記方法は、(i)前記対象の検体におけるPD-1及び/又はPD-L1レベルを測定するステップであって、前記対象はPD-1及び/又はPD-L1陽性であるステップと、(ii)治療有効量の抗PD-1及び/又はPD-L1抗体又はその抗原結合部分を前記対象に投与するステップとを含む。
【0027】
本願は、がん又は腫瘍に罹患する対象の治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記対象は肺がんが確診された患者であり、例えば、非小細胞肺がんが確診された患者であり、又は小細胞肺がんが確診された患者であり、前記がんは難治性、再発性又は転移性の肺がんであってもよい。例えば、一部の患者では、前記肺がんは再発性であり、一部の患者では、前記肺がんは転移性であり、一部の患者では、前記肺がんは難治性である。本願のいくつかの特定の実施形態では、非小細胞肺がんとは扁平上皮非小細胞がんであり、本願の他の特定の実施形態では、非小細胞肺がんとは非扁平上皮非小細胞がんである。本願のいくつかの特定の実施形態では、非小細胞肺がんとは肺腺がん、肺扁平上皮がん又は肺大細胞がんである。
【0028】
本願のいくつかの実施形態では、前記対象は既に手術、化学療法及び/又は放射線療法を受けている。いくつかの特定の実施形態では、前記対象は手術、化学療法及び/又は放射線療法により完全寛解後に再び疾患が進行している。いくつかの特定の実施形態では、前記対象は手術、化学療法及び/又は放射線療法後に完全寛解又は部分寛解と認められない。
【0029】
本願のいくつかの実施形態では、対象は系統的化学療法を受けたことはない。いくつかの実施形態では、対象は既に手術治療、放射線療法、誘導化学療法及び/又は補助化学療法を受けており、又は対象は同時化学療法を受ける。いくつかの特定の実施形態では、対象は系統的化学療法を受けたことはなく、手術治療、放射線療法、誘導化学療法及び/又は補助化学療法を受けたことがあり又は同時化学療法を受ける。いくつかの特定の実施形態では、対象は手術治療、放射線療法、誘導化学療法、同時化学療法及び/又は補助化学療法により完全寛解後に、疾患が再び進行している。いくつかの特定の実施形態では、対
象は手術治療、放射線療法、誘導化学療法、同時化学療法及び/又は補助化学療法後に完全寛解又は部分寛解と認められない。いくつかの特定の実施形態では、対象は手術治療、放射線療法、誘導化学療法、同時化学療法及び/又は補助化学療法後に、がんが転移している。
【0030】
本願のいくつかの実施形態では、前記がん又は腫瘍は肺がん(Lung Cancer)又は肺悪性腫瘍である。いくつかの特定の実施形態では、前記がんは非小細胞肺がん(NSCLC)である。他のいくつかの特定の実施形態では、前記がんは小細胞肺がん(SCLC)である。いくつかの特定の実施形態では、前記がんは再発性又は難治性肺がんである。いくつかの特定の実施形態では、前記肺がんは再発性である。いくつかの特定の実施形態では、前記肺がんは難治性である。いくつかの特定の実施形態では、前記肺がんは転移性である。いくつかの特定の実施形態では、前記がん治療は再発性又は難治性非小細胞肺がんの第一選択治療である。いくつかの特定の実施形態では、前記がん治療は転移性非小細胞肺がんの第一選択治療であり、例えば、リンパ転移、脳転移及び/又は骨転移のある非小細胞肺がんの第一選択治療である。
【0031】
本願のいくつかの実施形態では、前記肺がんは非小細胞肺がんである。いくつかの実施形態では、前記肺がんは肺扁平上皮細胞がん、肺腺がんを含む。いくつかの特定の実施形態では、前記肺がんは晩期肺がんである。いくつかの特定の実施形態では、前記肺がんはEGFR、ALK及び/又はROS1野生型非小細胞肺がんである。いくつかの特定の実施形態では、前記肺がんは晩期扁平上皮がん型非小細胞肺がん、晩期腺がん型非小細胞肺がんから選ばれる。いくつかの特定の実施形態では、前記肺がんはi)EGFR、ALK及び/又はROS1野生型扁平上皮がん型非小細胞肺がん、及びii)EGFR、ALK及び/又はROS1野生型腺がん型非小細胞肺がんから選ばれる。いくつかの実施形態では、前記肺がんは第一選択治療として標準化学療法を受け治療が失敗した、又は化学療法に忍容性がない晩期(IIIB/IV期)肺がんである。
【0032】
本願のいくつかの実施形態では、がんは再発性及び/又は転移性非小細胞肺がんである。いくつかの実施形態では、がんは再発性及び/又は転移性小細胞肺がんである。
【0033】
本願のいくつかの実施形態では、前記薬物の組み合わせは原発性肺腫瘍又は続発性肺腫瘍である肺悪性腫瘍を治療又は予防するために用いられる。
【0034】
本願のいくつかの実施形態では、前記肺悪性腫瘍は転移性肺がんである。他のいくつかの実施形態では、前記転移性肺がんは肺がん、胃がん、直腸がん、結腸がん、大腸がん、膵臓がん又は乳がんから転移している転移性がんである。
【0035】
本願のいくつかの実施形態では、前記対象はドライバー遺伝子陰性(即ちEGFR、ALK及びROS1変異陰性)の局所晩期(IIIB期)、転移性又は再発性(IV期)NSCLC患者である。いくつかの例では、前記患者は手術治療を実施できず且つ根治的な同時化学放射線療法を受けられないと組織学的に又は細胞学的に判断される。いくつかの非限定的な例では、前記EGFR変異は第19又は第21エキソン変異を含むが、これに限られない。
【0036】
本願のいくつかの実施形態では、前記薬物の組み合わせは原発性肝腫瘍又は続発性肝腫瘍である肝悪性腫瘍を治療又は予防するために用いられる。
【0037】
本願のいくつかの実施形態では、前記肝悪性腫瘍は肝細胞がんである。
【0038】
本願のいくつかの実施形態では、前記肝悪性腫瘍は転移性肝がんである。他のいくつか
の実施形態では、前記転移性肝がんは肺がん、胃がん、直腸がん、結腸がん、大腸がん、膵臓がん又は乳がんから転移している転移性がんである。
【0039】
本願のいくつかの実施形態では、前記薬物の組み合わせは固定の組み合わせである。いくつかの実施形態では、前記固定の組み合わせは固体医薬組成物又は液体医薬組成物として提供される。
【0040】
本願のいくつかの実施形態では、前記薬物の組み合わせは非固定の組み合わせである。いくつかの実施形態では、前記非固定の組み合わせで抗PD-1/PD-L1抗体、式Iの化合物はそれぞれ医薬組成物として提供される。
【0041】
いくつかの実施形態では、さらに、肺腫瘍又は肝悪性腫瘍を治療する薬物の組み合わせとして、(a)有効成分として抗PD-1/PD-L1抗体を含む第1医薬組成物と、(b)有効成分として式Iの化合物を含む第2医薬組成物とを含むキットを提供する。
【0042】
本願のいくつかの実施形態では、前記キットは56~168mg、例えば84~168mgの式Iの化合物を含む。いくつかの実施形態では、前記キットは56mg、70mg、84mg、112mg、140mg、168mg、又は任意の前記値からなる範囲から選ばれる量の式Iの化合物を含む。いくつかの実施形態では、前記キットは112~168mgの式Iの化合物を含む。いくつかの実施形態では、前記用量範囲内の式Iの化合物は一体的に包装されてもよい。他のいくつかの実施形態では、前記用量範囲内の式Iの化合物は単位用量で個別に包装されてもよく、例えば、8mg、10mg又は12mgの単位用量で個別に包装される。
【0043】
本願の更なる目的は、治療有効量のチロシンキナーゼ阻害剤及び治療有効量の、PD-1受容体及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤を適用者に(連続して又は同時に)投与する、がん又は腫瘍を予防又は治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記チロシンキナーゼ阻害剤は式Iの化合物又はその塩酸塩である。いくつかの実施形態では、PD-1受容体及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤はプログラム細胞死受容体1(PD-1)と結合し且つ/もしくはPD-1活性を阻害する抗体又はその抗原結合部分であり、例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体又はその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、前記がん又は腫瘍は肝腫瘍(例えば、肝細胞がん等肝悪性腫瘍)又は肺腫瘍(例えば、非小細胞肺がん等肺がん)から選ばれる。
【0044】
本願の更なる目的は、少なくとも、がんの治療における、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩と組み合わせ使用されるPD-1又はPD-L1拮抗剤の用途を提供することである。
【0045】
本願の更なる目的は、少なくとも、がんの治療における、PD-1又はPD-L1拮抗剤と組み合わせて使用される式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩の用途を提供することである。いくつかの実施形態では、PD-1拮抗剤はヒトPD-1と特異的に結合し且つヒトPD-L1とヒトPD-1の結合を遮断するPD-1モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントであり、且つ/又は、PD-L1拮抗剤はヒトPD-1と特異的に結合し且つヒトPD-L1とヒトPD-1の結合を遮断するPD-L1モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0046】
本願の更なる目的は、少なくとも、独立している容器にそれぞれ別個包装される医薬組成物を含み、第1の容器に式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を含み、且つ第2の容器にPD-1拮抗剤又はPD-L1拮抗剤を含む医薬組成物を含む
医薬品パックを提供することである。
【0047】
本願のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物は56~168mg、例えば、84~168mgの式Iの化合物を含む。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は56mg、70mg、84mg、112mg、140mg、168mg、又は任意の前記値からなる範囲から選ばれる量の式Iの化合物を含む。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は112~168mgの式Iの化合物を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体は1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、9mg/kg、10mg/kg体重の用量で投与される。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記抗PD-1抗体は前記がんの治療に有効な1つ以上の所定の用量で投与される。いくつかの特定の実施形態では、前記所定の用量は抗PD-1抗体約10mg~約1000mgの範囲内である。いくつかの特定の実施形態では、前記所定の用量は抗PD-1抗体約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mgから選ばれる。いくつかの特定の実施形態では、前記所定の用量は抗PD-1抗体約200mgである。
【0050】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体を投与する治療は2週(14日)又は3週(21日)が一期間であり、各期間の初日(D1)に抗PD-1抗体を静脈投与することが好ましい。即ち、前記抗PD-1抗体は2週間に1回(q2w)又は3週間に1回(q3w)の頻度で投与される。
【0051】
本発明は固定用量の抗PD-1抗体を含む容器を含む製品を提供する。本発明はさらに、がんを治療するための、固定用量の抗PD-1抗体を含む容器を含む製品の製造における抗PD-L1抗体の用途を提供する。いくつかの特定の実施形態では、前記容器はバイアルである。前記固定用量は抗PD-1抗体約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約500mg、約1000mgから選ばれる。いくつかの特定の実施形態では、前記製品は前記固定用量の抗PD-1抗体をがん患者に投与するよう使用者に指示する、包装に添付する印刷物又は取扱説明書をさらに含む。いくつかの特定の実施形態では、前記製品は1つ以上のバイアルを含み、前記バイアルは抗PD-1抗体約50mg、100mg、200mg、300mg、350mg、400mg、500mg、600mgを含む。いくつかの特定の実施形態では、前記製品は1つのバイアルを含み、前記バイアルは抗PD-1抗体約50mgを含む。いくつかの特定の実施形態では、前記製品は1つのバイアルを含み、前記バイアルは抗PD-1抗体約200mgを含む。いくつかの特定の実施形態では、前記製品は1つのバイアルを含み、前記バイアルは抗PD-1抗体約350mgを含む。いくつかの特定の実施形態では、前記製品は抗PD-1抗体溶液を50mg/5mL/瓶、100mg/10mL/瓶、200mg/10mL/瓶、又は350mg/35mL/瓶の規格で包装したものである。
【0052】
本願の更なる目的は、がん又は腫瘍を予防又は治療するための、チロシンキナーゼ阻害剤と、PD-1及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤とを含む薬物の組み合わせを提供することである。いくつかの実施形態では、前記チロシンキナーゼ阻害剤は式Iの化合物又はその塩酸塩である。いくつかの実施形態では、PD-1受容体及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤はプログラム細胞死受容体1(PD-1)と結合し且つ/もしくはPD-1活性を阻害する抗体又はその抗原結合部分であり、例えば
、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体又はその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、前記がん又は腫瘍は肝腫瘍(例えば、肝細胞がん等肝悪性腫瘍)又は肺腫瘍(例えば、非小細胞肺がん等肺がん)から選ばれる。
【0053】
本願の更なる目的は、がん又は腫瘍を予防又は治療するための製剤の製造における、チロシンキナーゼ阻害剤と、PD-1及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤とを含む薬物の組み合わせの用途を提供することである。いくつかの実施形態では、前記チロシンキナーゼ阻害剤は式Iの化合物又はその塩酸塩である。いくつかの実施形態では、PD-1受容体及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤はプログラム細胞死受容体1(PD-1)と結合し且つ/もしくはPD-1活性を阻害する抗体又はその抗原結合部分であり、例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体又はその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、前記がん又は腫瘍は肝腫瘍(例えば、肝細胞がん等肝悪性腫瘍)又は肺腫瘍(例えば、非小細胞肺がん等肺がん)から選ばれる。
【0054】
本願の更なる目的は、化合物成分として6~12mgの式Iの化合物又はその塩酸塩と、抗体成分として50~350mgの抗PD-1抗体又はその抗原結合フラグメントとを含み、化合物成分及び抗体成分はそれぞれ個別に包装される単位製剤を提供することである。
【0055】
本願の更なる目的は、1つ以上の前記単位製剤を適用者に投与する、がん又は腫瘍を予防又は治療する方法を提供することである。前記単位製剤の化合物成分及び抗体成分はそれぞれ投与されることが好ましい。
【0056】
「アンロチニブ医薬組成物」
本願では、アンロチニブ医薬組成物は有効成分としてアンロチニブ又は塩酸アンロチニブ(即ち、式Iの化合物又はその塩酸塩)を含む任意の医薬組成物である。
【0057】
本願のいくつかの実施形態では、前記アンロチニブ医薬組成物の単位用量には、アンロチニブ2mg、6mg、8mg、10mg、又は12mgを含む。
【0058】
本願のいくつかの実施形態では、投与2週と休薬1週が1つの治療期間であり、各治療期間に投与する前記アンロチニブ医薬組成物の総用量は84~168mgである。いくつかの実施形態では、前記アンロチニブ医薬組成物の総用量は84mg、112mg、140mg、168mg、又は任意の前記値からなる範囲から選ばれる。いくつかの実施形態では、前記アンロチニブ医薬組成物の総用量は112~168mgであることが好ましい。
【0059】
「アンロチニブ」
本願では、アンロチニブ(即ち、式Iの化合物)の化学名は1-[[[4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イル)オキシ-6-メトキシキノリン-7-イル]オキシ]メチル]シクロプロピルアミンであり、構造式は次のとおりである。
【化2】
【0060】
本願では、アンロチニブには、その非塩形態(例えば、遊離酸、遊離塩基)、薬学的に許容されるその塩を含み、前記非塩形態も塩も本願の保護範囲に含まれる。例えば、アンロチニブの薬学的に許容される塩は塩酸塩、二塩酸塩であってもよい。本願でアンロチニブ又はその塩の用量は、特に説明がない限り、アンロチニブ遊離塩基によって算出される。
【0061】
「シンチリマブ」
本願では、シンチリマブ(Sintilimab、IBI308、IBI-308)とは、配列及び構造が文献CN108473977Aの抗体Dに示される抗PD-1モノクローナル抗体である。信達生物のPD-1抗体薬「シンチリマブ注射液」は、2018年12月27日に中国国家食品薬品監督管理局(NMPA)によって、少なくとも第二系統的化学療法を受けていた再発性又は難治性古典的ホジキンリンパ腫の治療薬として承認される。
【0062】
シンチリマブの重鎖全長配列:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSSYAISWVRQAPGQGLEWMGLIIPMFDTAGYAQKFQGRVAITVDESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARAEHSSTGTFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK。
【0063】
シンチリマブの軽鎖全長配列:
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPGKAPKLLISAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANHLPFTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。
【0064】
「14C12H1L1」
本願では、14C12H1L1とは、配列及び構造が文献CN106977602Aに
示される抗PD-1モノクローナル抗体である。14C12H1L1モノクローナル抗体において、HCDR1は配列GFAFSSYD(配列番号25)を含み、HCDR2は配列ISGGGRYT(配列番号26)を含み、HCDR3は配列ANRYGEAWFAY(配列番号27)を含み、LCDR1は配列QDINTY(配列番号28)を含み、LCDR2は配列RAN(配列番号29)を含み、LCDR3は配列LQYDEFPLT(配列番号30)を含む。
【0065】
関連の用語及び定義
特に説明がない限り、本明細書で使用される下記の用語は以下記載の意味を有する。特定の用語は、特に定義されなければ、確定しない又は不明瞭なものとしてではなく、本分野通常の意味で理解される。本明細書で商品名が記載される場合、対応する製品、組成物又はその有効成分を指す。
【0066】
本明細書で使用される用語「抗体」とは、少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む抗原結合タンパク質である。本願の抗体及びそのフラグメントは抗体全体であってもよいし、その任意のフラグメントであってもよい。したがって、本願の抗体及びそのフラグメントにはモノクローナル抗体又はそのフラグメント、抗体バリアント又はそのフラグメント、免疫複合体を含む。抗体フラグメントの例には、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab)’フラグメント、Fvフラグメント、分離されたCDR領域、一本鎖Fv分子(scFv)、本分野で知られる他の抗体フラグメントを含む。抗体及びそのフラグメントにはさらに組換えポリペプチド、融合タンパク質、二重特異性抗体を含む。本明細書で抗PD-L1抗体及びそのフラグメントはIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4アイソタイプであってもよい。
【0067】
用語「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体種である。一実施形態では、本明細書で抗PD-1/PD-L1抗体及びそのフラグメントはIgG1又はIgG4アイソタイプである。本願で抗PD-1/PD-L1抗体及びそのフラグメントは、非限定的な例としてマウス、ラット、ウサギ、霊長類、ラマ、ヒトなど、任意の生物種から誘導されてもよい。PD-1/PD-L1抗体及びそのフラグメントはキメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体であってもよい。
【0068】
用語「ヒト化抗体」とは、抗原結合部位が非ヒト生物種に由来し且つ可変領域フレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体である。ヒト化抗体はフレームワーク領域に置換をも含むため、当該フレームワークは発現されるヒト免疫グロブリン又は生殖細胞系遺伝子配列の正確なコピーでないこともある。
【0069】
「分離された抗体」とは、異なる抗原特異性を持つ他の抗体を実質的に含まない抗体である(例えば、PD-1/PD-L1と特異的に結合する分離された抗体は、PD-1/PD-L1以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、抗体と特異的に結合する分離されたPD-1/PD-L1は他の抗原(例えば、異なる生物種からのPD-1/PD-L1分子)との交差反応性を有してもよい。また、分離された抗体は他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まないものであってもよい。
【0070】
用語「モノクローナル抗体(mAb)」とは、単一の分子組成物からなる抗体分子である。モノクローナル抗体組成物は特定のエピトープに単一の結合特異性及び親和性を示し、又は二重特異性モノクローナル抗体である場合に、2種の異なるエピトープに二重の結合特異性を示す。mAbは分離された抗体の一例である。当業者が周知するハイブリドーマ技術、遺伝子組換え技術、又は他の技術で、mAbを生産することができる。分離された抗PD-1/PD-L1モノクローナル抗体の非限定的な例は、ニボルマブ(Nivolumab)(Opdivo(登録商標))、ペンブロリズマブ(Pembrolizu
mab)(Keytruda(登録商標))、デュルバルマブ(Durvalumab)、アベルマブ(Avelumab)、トリパリマブ(JS-001、君実生物)、シンチリマブ(Sintilimab、IBI308、信達生物)、カムレリズマブ(SHR-1210、Camrelizumab、恒瑞医薬、CN105026428B又はWO2015085847A1を参照)、チスレリズマブ(BGB-A317、百済神州)、14C12H1L1(中山康方)、ゲノリムズマブ(GB226、嘉和生物)、リズマブ(LZM009、麗珠製薬)、HLX-10(復宏漢霖)、BAT-1306(百奥泰)、HX008(AK103、康方生物/翰中生物)、AK104(中山康方)、CS1003(基石薬業)、SCT-I10A(神州細胞)、F520(山東新時代薬業/魯南制薬)、SG001(尚健生物)、GLS-010(誉衡薬業)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)(Tecentriq(登録商標)、エフ・ホフマン・ラ・ロシュ)、アベルマブ(Avelumab)(Bavencio(登録商標)、メルク/ファイザー)、デュルバルマブ(Durvalumab)(Imfinzi(登録商標)、アストラゼネカ)、KL-A167(科倫薬業)、SHR-1316(恒瑞医薬)、BGB-333(百済神州)、JS003(君実生物)、STI-A1014(ZKAB0011、兆科薬業)、KN035(康寧傑瑞/思路迪)、MSB2311(MabSpace製)、HLX-20(復宏漢霖)、CS-1001(基石薬業)等である。
【0071】
抗体の「抗原結合部分(抗原結合フラグメントともいう)」は、無傷抗体と結合される抗原と特異的に結合する能力が保持された抗体の1つ以上のフラグメントである。
【0072】
本明細書で使用される用語「誘導」とは、参照抗体又は他の結合タンパク質の分子又はポリペプチドに対して用いる場合に、参照抗体又は他の結合タンパク質と同じエピトープと特異的に結合する分子又はポリペプチドである。
【0073】
本明細書で使用される用語「EC50」とは、抗体の50%最大応答の有効濃度である。本明細書で使用される用語「IC50」とは、抗体の50%最大応答の阻害濃度である。EC50、IC50はELISA、FACS解析又は本分野周知の他の任意の方法で測定することができる。
【0074】
用語「治療」とは一般に所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得るための操作である。当該効果は疾患又は症状を完全に又は部分的に予防する場合に、予防用であり、且つ/又は、疾患及び/もしくは疾患に伴う副作用を部分的に又は完全に安定させ又は治癒する場合に、治療用である。本明細書で使用される用語「治療」には、患者の疾患に対する任意の治療として、(a)疾患又は症状が発生しやすいが確診はされていない患者に発生する疾患又は症状の予防、(b)疾患の症状の抑制、即ちその進行に対する阻止、又は(c)疾患の症状の寛解、即ち、疾患又は症状を解消させることを含む。
【0075】
本明細書で使用される用語「全身的な治療」とは、薬物の成分が血流によって輸送されることで、全身の細胞に届いて影響を与える治療をいう。
【0076】
本明細書で使用される用語「系統的化学療法」とは、集学的治療の一環として局所晩期疾患に対する化学療法を含まない全身的化学療法をいう。局所晩期疾患に対して行われる化学療法には、誘導化学療法、放射線療法との同時化学療法、補助化学療法を含む。
【0077】
本明細書で使用される用語「適用者」とは、哺乳類であり、例えば、げっ歯類、ネコ、イヌ、霊長類である。本願で適用者はヒトであることが好ましい。
【0078】
用語「投与」とは、当業者が周知する様々な方法及び送達システムのいずれかを利用して、治療剤を含む組成物を対象に物理的に導入することである。免疫チェックポイント阻
害剤(例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体)の投与経路は静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、髄腔内、又は他の非経口投与経路(例えば、注射又は注入)を含む。本明細書で使用される用語「非経口投与」とは、腸内及び局所投与以外の一般に注射で行われる投与経路であり、その非限定的な例は、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ管内、病巣内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮膚内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊椎内、硬膜外、胸骨内の注射及び注入、生体内エレクトロポレーションである。いくつかの実施形態では、前記免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体)は非経口経路で投与され、いくつかの実施形態では、経口投与される。他の非経口経路は、局所、表皮又は粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、膣内、直腸内、舌下、局所を含む。投与は1回であってもよいし、複数回であってもよく、且つ/又は1つ以上の延長した期間内において行われてもよい。
【0079】
本明細書で使用される「有害事象(AE)」とは、医学的治療としての用途に関連する不利な及び一般には非意図的な又は望ましくない任意の兆候(異常な検査所見を含む)、症状又は疾患である。例えば、有害事象は治療に応答する免疫系の活性化又は免疫細胞(例えば、T細胞)の増加に関連するものである。医学的治療ではそれぞれ重症度が異なる1種以上の関連のAEがあってもよい。「有害事象を改善する」方法が言及される場合には、様々な治療計画の適用に関連する1種以上のAEの発生率及び/又は重症度を低減する治療計画をいう。
【0080】
本明細書で使用される用語「投与間隔」とは、本明細書の製剤を複数の用量で対象に投与する場合に、用量間の経過時間のことである。投与間隔は範囲として示されてよい。
【0081】
本明細書で使用される用語「投与頻度」とは、所定期間における本明細書の製剤の投与用量の頻度である。投与頻度は各所定期間における投与回数として示されてもよく、例えば、週に1回、2週に1回である。
【0082】
用語「所定の用量(flat dose)」とは、患者の体重又は体表面積(BSA)に関係なく患者に投与される用量である。所定の用量はmg/kg用量ではなく、薬物(例えば、抗PD-1抗体)の絶対量として規定される。例えば、60kgのヒトと100kgのヒトには同じ用量の抗体(例えば、240mgの抗PD-1抗体)を投与する。
【0083】
本願で組成物に対して使用される用語「固定用量」とは、1つの対象組成物で2種以上の異なる抗体が互いに特定(固定)の比率で前記組成物に存在することである。いくつかの実施形態では、前記固定用量は前記抗体の重量(例えば、mg)に基づく。いくつかの実施形態では、前記固定用量は前記抗体の濃度(例えば、mg/mL)に基づく。いくつかの実施形態では、前記第1抗体(mg):第2抗体(mg)の比率は少なくとも約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:15、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、約1:100、約1:120、約1:140、約1:160、約1:180、約1:200、約200:1、約180:1、約160:1、約140:1、約120:1、約100:1、約90:1、約80:1、約70:1、約60:1、約50:1、約40:1、約30:1、約20:1、約15:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1である。例えば、第1抗体と第2抗体の比率が3:1であるとは、瓶内に第1抗体約240mg及び第2抗体80mgを含むことであってもよいし、又は第1抗体は約3mg/mL、第2抗体は1mg/mLということであってもよい。
【0084】
本明細書で使用される用語「体重に基づく用量」とは、患者の体重に基づいて算出される患者への投与用量である。例えば、体重60kgの患者に3mg/kgの抗PD-1抗
体及び1mg/kgの抗CTLA-4抗体が必要である場合には、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の比率が3:1の固定用量製剤から適量の抗PD-1抗体(180mg)及び抗CTLA-4抗体(60mg)を一度に抽出してもよい。
【0085】
用語「免疫療法」とは、所定の方法で疾患に罹患している対象や感染又は再発のリスクのある対象を治療することであり、前記方法は誘導、増強、阻害又は他の方法で免疫応答を変えることを含む。対象の「治療」又は「療法」とは、症状、合併症又は症状の発作、進行、重症度もしくは再発、又は疾患に関連する生化学的指標の逆転、軽減、改善、阻害、遅延又は阻止のために、対象に任意のタイプの処置又はプロセスを行い、又は対象に活性剤を投与することである。
【0086】
本明細書で使用される用語「PD1/PD-L1陽性」は「少なくとも約1%のPD-1/PD-L1発現」と入れ替えて使用される。一実施形態では、本分野で周知される任意の方法でPD-1/PD-L1を発現させる。別の実施形態では、自動化IHCでPD-1/PD-L1の発現を測定する。いくつかの実施形態では、「PD-1/PD-L1陽性」とは、細胞表面上でPD-1/PD-L1を発現する細胞が少なくとも100個存在することである。
【0087】
「プログラム細胞死受容体-1(PD-1)」は、CD28ファミリーに属する免疫抑制性受容体である。PD-1は主に生体内の既に活性化されたT細胞に発現され、且つ2種のリガンドPD-L1、PD-L2と結合する。本明細書で使用される用語「PD-1」にはヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1のバリアント、同族体、種間同族体、hPD-1と少なくとも1つの共通のエピトープを含む類似体を含む。
【0088】
「プログラム細胞死リガンド-1(PD-L1)」はPD-1を対象とする2種の細胞表面糖タンパク質リガンドの1つであり(もう1つはPD-L2)、PD-1と結合するとT細胞の活性化及びサイトカインの分泌をダウンレギュレートする。
【0089】
「対象」にはヒト又は非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」の非限定的な例は、脊椎動物(例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ)、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、モルモット)である。いくつかの実施形態では、前記対象はヒトである。本明細書で用語「対象」、「適用者」、「患者」は特定の文脈で入れ替えて使用する。
【0090】
薬物又は治療剤の「治療有効量」又は「治療に有効な用量」とは、単独で使用され又は別の治療剤と組み合わせて使用される場合に疾患の発症を防ぐか又は疾患の解消を促進する薬物の任意の量であり、疾患の解消は、疾患の症状の重症度の軽減、無症状期の頻度及び持続期間の増加、又は疾患に関連する傷害又は障害の防止によって示される。当業者が熟知する様々な方法で疾患の解消に対する治療剤の促進効果を評価することができ、例えば、ヒトを対象とする臨床試験の間に、ヒトに対する有効性を予測するための動物モデルにおいて、又はインビトロアッセイにおいて薬物の活性を測定する。
【0091】
本明細書で使用される「サブ治療用量」とは、過剰増殖性疾患(例えば、がん)の治療用として単独で投与される場合に、治療用化合物の通常用量又は代表的な用量より少ない治療用化合物(例えば、抗体)の用量である。
【0092】
一例として、「抗がん剤」は対象におけるがんの解消又は腫瘍の更なる増殖の阻止を促進する。いくつかの実施形態では、治療有効量の薬物はがんの解消を消失するまで促進している。「がんの解消を促進する」とは、有効量の薬物を単独で又は抗腫瘍剤と組み合わせて投与することによる腫瘍の増殖又はサイズの縮小、腫瘍の壊死、少なくとも1種の症状の重症度の軽減、無症状期の頻度及び持続期間の増加、疾患に関連する傷害又は障害の
防止である。治療に関連する用語「有効」、「有効性」には薬理学的な有効性及び生理学的な安全性を含む。薬理学的な有効性は薬物が患者におけるがんの解消を促進する能力である。生理学的な安全性は薬物の投与による細胞、器官及び/又は全身における毒性又は他の不利な生理学的影響(不良事象)である。
【0093】
腫瘍の治療の一例として、治療を受けたことのない対象と比べ、又は、いくつかの実施形態では、標準療法を受けた患者と比べ、治療有効量の抗がん剤が細胞又は腫瘍の増殖を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、又は少なくとも約80%阻害している。本願の他の実施形態では、腫瘍が少なくとも約20日間、少なくとも約40日間、又は少なくとも約60日間解消されていることは目視で確認される。治療有効性に関するこれらの測定結果はあるものの、免疫治療薬を評価するには「免疫に関連する」応答パターンを考慮する必要がある。
【0094】
「免疫に関連する」応答パターンは臨床上免疫治療剤で治療されるがん患者によく見られる応答のパターンであり、前記免疫治療剤はがん特異的免疫応答を誘導し又は自然免疫を変えることで抗腫瘍効果をもたらす。当該応答パターンの特徴は初期の腫瘍量の増加又は新しい病変の出現後の有益な治療効果であり、従来の化学療法剤の評価では、薬物の無効と同じ意味で疾患進行として見なされる。これに鑑みて、免疫治療剤を適切に評価するには目的疾患に対するこれらの薬剤の影響を長期に監視する必要がある。
【0095】
薬物の治療有効量(予防有効量を含む)は、がんが発生するリスクのある対象(例えば、悪化前の兆しのある対象)又はがんが再発するリスクのある対象に単独で又は抗腫瘍剤と組み合わせて投与される場合に、がんの発生又は再発を抑制する薬物の任意の量である。いくつかの実施形態では、予防有効量はがんの発生又は再発を完全に抑制する。がんの発生又は再発を「抑制」するとは、がんの発生又は再発の可能性を低減すること、又はがんの発生又は再発を完全に防止することである。
【0096】
「再発性」がんは最初の治療(例えば、手術)に応答が現われた後、その場で又は遠隔の部位に再発するがんである。「局所再発性」がんとは治療後に、既に治療を受けていたがんと同じ場所に出現するがんである。
【0097】
「切除不能な」がんは手術によって除去できない。
【0098】
「転移性」がんとは、体の特定の部分(例えば、肺)から他の部分に拡散するがんである。
【0099】
選択的な形態(例えば、「又は」に続いて記載される形態)を用いるのは選択的な形態の任意の1つ、2つの又はこれらの任意の組み合わせと理解される。本明細書で使用される非限定性の修飾語「1つ」又は「1種」は列挙された全ての構成要素のうちの「1つ以上/1種以上」と理解される。
【0100】
用語「約」又は「実質的に含む」とは当業者が確定した特定の値又は組成の許容誤差範囲を含む値又は組成であり、部分的には測定の方法、測定値又は組成、即ち、測定システムの制限によって決まる。例えば、「約」又は「実質的に含む」とは本分野の実務上1つ以上の標準偏差内であってもよい。あるいは、「約」又は「実質的に含む」はそれによって修飾されたパラメータ又は数値と最大10%又は20%(即ち、±10%又は±20%)の差がある範囲であってもよい。例えば、約3mgには2.7~3.3mg(10%)又は2.4~3.6mg(20%)の任意の数値が含まれる。また、生物学的システム又はプロセスで、当該用語は特定の桁数に達し又は確定数値の最大5倍に達することであってもよい。本明細書及び特許請求の範囲で特定の値又は組成が示される場合に、特に説明
がない限り、「約」又は「実質的に含む」は当該特定の値又は組成の許容誤差範囲内に限定されるという意味である。
【0101】
本明細書で使用される用語「約週に1回」、「約2週に1回」又は他の任意の投与間隔は近似の説明である。「約週に1回」は7日±1日に1回、即ち6~8日に1回を含む。「約2週に1回」は14日±3日に1回、即ち11~17日に1回を含む。他に、約3週に1回、約4週に1回、約5週に1回、約6週に1回、約12週に1回などの表現については同様である。いくつかの実施形態では、約6週に1回又は約12週に1回の投与間隔とは、1週目の任意の日に第1剤を投与し、その後、6週目又は12週目の任意の日に第2剤を投与することであってもよい。他の実施形態では、約6週に1回又は約12週に1回の投与間隔とは、1週目の特定の日(例えば、月曜日)に第1剤を投与し、その後、6週目又は12週目の同日(月曜日)に第2剤を投与することであってもよい。他に「約2週に1回」、「約月に1回」等の表現については同様である。
【0102】
本明細書に記載の任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲又は整数範囲は記載された範囲内の任意の整数の値を含むように理解され、特に説明のない限り、適切ならば、その分数(例えば、整数の十分の一又は百分の一)も含まれる。
【0103】
特に説明がない限り、本願で用語「約」は、記載された具体的な数値範囲±5%の範囲であり、±2%の範囲であることが好ましく、±1%の範囲であることがより好ましい。例えば、pH値が約5.5である場合に、pHは5.5±5%であり、pHは5.5±2%であることが好ましく、pHは5.5±1%であることがより好ましい。
【0104】
用語「薬学的に許容される」とは、毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題や合併症はなく、ヒト又は動物の組織に接触して使用することに適し、メリット/リスク比が合理的であると医学的に判断される化合物、材料、組成物及び/又は剤形に対して使用される。
【0105】
用語「薬学的に許容される塩」には塩基イオンと遊離酸が形成した塩、又は酸性イオンと遊離塩基が形成した塩を含み、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩であり、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミノ酸塩等であることが好ましい。本願では、薬学的に許容される塩を形成する場合に、前記遊離酸と塩基イオンのモル比は約1:0.5~1:5であり、1:0.5、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8であることが好ましい。本願で、薬学的に許容される塩を形成する場合に、前記遊離塩基と酸性イオンのモル比は約1:0.5~1:5であり、1:0.5、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8であることが好ましい。
【0106】
用語「固定の組み合わせ」とは、有効成分(例えば、抗PD-1抗体又は式Iの化合物)は固定の総用量もしくは用量比で、又は単一の実体、医薬組成物もしくは製剤として適用者に同時に投与されることである。
【0107】
用語「非固定の組み合わせ」とは、2種以上の有効成分は独立している実体(例えば、医薬組成物、製剤)として同時に、又は特に時間上の制限はなく連続して適用者に投与されることであり、適用者に投与される前記有効成分は治療有効量のレベルに達している。非固定の組み合わせの一例はカクテル療法であり、例えば、3種以上の有効成分を投与する。非固定の組み合わせで、前記各有効成分は完全に独立している医薬組成物として包装
、販売又は投与されてもよい。前記「非固定の組み合わせ」には複数の「固定の組み合わせ」、又は「固定の組み合わせ」と任意の1種以上の有効成分を含む独立の実体と組み合わせて使用されることを含む。
【0108】
本明細書で使用される用語「併用」又は「組み合わせて使用」とは2種以上の有効物質が混合物で、単一の製剤として同時に、又は単一の製剤として特定の順番に従わず適用者に投与されることである。
【0109】
用語「医薬組成物」とは1種以上の本願の有効成分(例えば、抗PD-1抗体又は式Iの化合物)又はその薬物の組み合わせと薬学的に許容される賦形剤からなる混合物である。医薬組成物は適用者に本願の化合物又はその薬物の組み合わせを投与しやすいようになされるものである。
【0110】
用語「相乗効果」とは、2種以上の成分(例えば、抗PD-1抗体又は式Iの化合物)がもたらす効果(例えば、結腸腫瘍の増殖抑制、又は結腸がんの症状寛解)が成分の単独投与の効果の和より大きいことである。
【0111】
「投与経路」
次の内容は本願の薬物の組み合わせの投与経路を限定するものではない。
【0112】
本願の薬物の組み合わせの成分はそれぞれ製造されてもよいし、又はその一部又は全部が同時に製造されてもよい。一実施形態では、本願の薬物の組み合わせは1回又は複数回の投与に適する医薬組成物に製造されてもよい。
【0113】
本願の薬物の組み合わせの成分はそれぞれ単独で投与されてもよいし、又はその一部又は全部が同時に投与されてもよい。本願の薬物の組み合わせの成分は実質的に非同時に投与されてもよいし、又はその一部又は全部が実質的に同時に投与されてもよい。
【0114】
本願の薬物の組み合わせの成分は、経口又は非経口(静脈内、筋肉内、局所又は皮下)を含むが、これに限られない適切な経路で、それぞれ独立して、又はその一部又は全部が同時に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本願の薬物の組み合わせの成分はそれぞれ独立して、又はその一部又は全部が同時に経口投与又は注射投与(例えば、静脈注射又は腹腔内注射)されてもよい。
【0115】
本願の薬物の組み合わせの成分は、錠剤、トローチ、ピル、カプセル(例えば、ハードカプセル、ソフトカプセル、腸溶カプセル、マイクロカプセル)、エリキシル剤、顆粒、シロップ、注射剤(筋肉内、静脈内、腹腔内)、顆粒、エマルジョン、懸濁液、溶液、分散液、経口又は非経口投与のための徐放性製剤用剤形を含むが、これに限られない適切な剤形で、それぞれ独立して、又はその一部又は全部が同時に投与されてもよい
【0116】
本願の薬物の組み合わせの成分はそれぞれ独立して、又はその一部又は全部が同時に薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含んでもよい。
【0117】
本願の薬物の組み合わせは他の治療剤を含んでもよい。一実施形態では、前記他の治療剤は本分野周知のがん治療剤であってもよく、肺がん治療剤であることが好ましい。
【0118】
本願のいくつかの特定の実施形態では、肺腫瘍に対する塩酸アンロチニブ、抗PD-1抗体の単独又は併用の効果を調べた。実験結果から、塩酸アンロチニブと抗PD-1抗体は明らかな相乗効果を有し、腫瘍細胞に形成されていた免疫耐性を解消できるということが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【
図1】
図1はマウスにおける肝がんH22皮下移植腫瘍の増殖に対する塩酸アンロチニブ、メシル酸レンバチニブ単独又は抗mPD-1抗体との併用の影響を示す。
【
図2】
図2は塩酸アンロチニブ、メシル酸レンバチニブ単独又は抗mPD-1抗体との併用の各処理群のマウス個体における腫瘍増殖曲線を示す。
【
図3】
図3は実験終了時(D17)の、塩酸アンロチニブ、メシル酸レンバチニブ単独又は抗mPD-1抗体との併用の各処理群の個体の腫瘍体積(上の図)及び個体の腫瘍重量(下の図)を示す。
【
図4】
図4は担がんマウスの体重に対する塩酸アンロチニブ、メシル酸レンバチニブ単独又は抗mPD-1抗体との併用の影響を示す。
【
図5】
図5は肝がんH22皮下移植腫瘍に対する塩酸アンロチニブ、メシル酸レンバチニブ単独又は抗mPD-1抗体との併用の効果に関する腫瘍写真を示す。
【
図6】
図6は14C12H1L1と塩酸アンロチニブの組み合わせによる切除不能な肝細胞がんの第一選択治療に関する多施設オープンラベル第Ib/II相臨床試験で13人の患者におけるSLD(治療開始後に記録された最小標的病変の最長径の和)の変化を示す。
【
図7】
図7は14C12H1L1と塩酸アンロチニブの組み合わせによる切除不能な肝細胞がんの第一選択治療に関する多施設オープンラベル第Ib/II相臨床試験で13人の患者における経時的なSLDの変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0120】
次にいくつかの実施例を用いて本願のさらなる説明を行う。ただし、本願のこれらの実施例は説明のためのもので、本願の範囲を限定するものではない。本願は、本明細書に記載されている特定の好ましい実施形態にも限定されない。当業者が理解したように、本願の技術的特徴に行う同等な置換や、対応する改善はなおも本願の保護範囲に含まれる。特に説明がない限り、次の実施例で使用される試薬は全て市販品であり、溶液の調製は本分野通常の技術を用いる。
【0121】
【0122】
【0123】
実施例1:塩酸アンロチニブの併用による晩期非小細胞肺がんの治療
本実施例は、塩酸アンロチニブの併用による晩期非小細胞肺がんの治療の研究結果を示す。主な対象集団はドライバー遺伝子陰性(即ち、EGFR、ALK、ROS1変異陰性
)で、手術治療を実施できず且つ根治的な同時化学放射線療法を受けられないと組織学的に又は細胞学的に判断された局所晩期(IIIB)の転移性又は再発性(IV期)NSCLC患者である。
【0124】
主要評価項目:安全性、ORR。
【0125】
副次的評価項目:DCR、PFS、OS。
【0126】
無増悪生存期間(PFS):最初の投与から客観的に腫瘍進行と認められる又は死亡するまでの時間と定義する。
【0127】
全生存期間(OS):最初の投与から何らかの原因で死亡するまでの時間と定義する。日数で数え、追跡不能の被験者は一般に最後の追跡を死亡時間として計算する。
【0128】
主要組み入れ基準:中国IIIB/IV期NSCLC、系統的な治療を受けたことはない、分子型別が明確、年齢は18~75歳、PS評価0~1点、予想生存期間は3月以上、器官に十分な予備力あり、症状のある脳転移なし。
【0129】
主要除外基準:既に系統的な抗がん治療を受けていた、経口薬に影響がある複数の要因あり、症状のある脳転移、脊髄圧迫、がん性髄膜炎、又はスクリーニング段階でCTもしくはMRIにより脳又は軟膜に疾患があると判明した患者、中心型空洞性扁平上皮がん又は出血傾向あり、重度及び/又は制御不能な疾患に罹患する患者。
【0130】
塩酸アンロチニブ:淡黄色の結晶性粉末、含有量98.9%、バッチ番号17316007、2~8℃遮光保存。正大天晴薬業集団股フン(にんべんに分)有限公司が提供する。蒸留水で所定の濃度に希釈する。
【0131】
投与用量:
抗PD-1抗体:各治療期間(合計21日)の初日(D1)にシンチリマブ注射剤200mgを静脈内注入で投与し、21日に1回投与する。
【0132】
塩酸アンロチニブカプセル(有効成分はアンロチニブ二塩酸塩):抗PD-1抗体注射液の注入開始後±5分内に空腹で塩酸アンロチニブカプセル12mgを服用し、2週連続して経口服用後に1週休薬し、即ち21日を一治療期間とする。
【0133】
試験が開始する前に本試験の試験内容、電子症例報告書の写し、インフォームド・コンセント見本等を臨床試験実施機関及び各参加機関の倫理委員会に提出して審査を受け、臨床試験の実施に同意する倫理委員会の承認文書を取得した場合にのみ臨床試験を行う。臨床試験が開始する前に実施者は被験者全員に本試験の目的、リスク、メリットを説明し、被験者全員は試験前に事情を了解及び同意した上、インフォームド・コンセントに署名しなければならず、試験中に被験者の権利及び利益は十分に確保する。研究者は「ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則(ヘルシンキ宣言(2013))」及び「医薬品の臨床試験の実施基準(2003)」等関連法や規則の規定を厳守し、研究者としての職務を遂行する。
【0134】
2019年1月25日現在、効果評価の要件を満たす患者は11人である。研究に参加する当該11人の患者の基本状況及び効果評価の結果を表2にまとめ、効果評価時間はそれぞれ第2期間(約42日)、第4期間(約84日)であり、効果評価の統計結果を表3に示す。
【0135】
【0136】
アンロチニブと第一選択の併用による晩期非小細胞肺がんの治療である本研究のデータから、シンチリマブと併用する場合にORRは63.6%、DCRは100%(表3を参照)と優れた効果は判明し、PFS及びOSに期待できる。また、アンロチニブと第一選択の併用では患者に高い忍容性がある(結果詳細は未記載)。
【0137】
【0138】
実施例2:塩酸アンロチニブの併用による肝がん治療
1.薬物基本情報
塩酸アンロチニブ:淡黄色の結晶性粉末、含有量98.9%、バッチ番号17316007、有効期限は2018年12月前、2~8℃遮光保存。
【0139】
メシル酸レンバチニブ:略白色の結晶性粉末、含有量98.7%、バッチ番号19916003、有効期限は2019年6月前、2~8℃遮光保存。
【0140】
アンチマウスPD-1(略称mPD-1):無色透明の液体、純度>95%、濃度7.83mg/mL、バッチ番号665418F1、2~8℃遮光保存。
【0141】
2.提供元
塩酸アンロチニブ、メシル酸レンバチニブは正大天晴薬業集団股フン有限公司が提供する。
【0142】
mPD-1はBio X Cellから購入するInVivoMAb抗マウスPD-1(CD279)である。
【0143】
3.調製手順
塩酸アンロチニブ、メシル酸レンバチニブは蒸留水で所定の濃度に希釈し、mPD-1は生理食塩水で所定の濃度に希釈し、使用前に調製する。
【0144】
4.細胞
10-cmシャーレでH22細胞を培養する。RPMI 1640培地に10%胎児ウシ血清と、ペニシリン、ストレプトマイシンとを加え、37℃で5%CO2を含むインキュベータにおいて培養する。週に2回継代し、指数関数的に成長すると、細胞を収集し、カウントし、接種する。
【0145】
5.実験動物
6~7週齢の雌性のKMマウスを使用し、上海傑思捷実験動物有限公司から購入する。承認番号はSCXK(上海)2013-0006であり、動物合格証明書番号はNo.311620400013790である。飼育基準はSPFである。
【0146】
本研究では実験動物の使用及びその他関連事項の実行は「国際実験動物ケア評価認証協会(AAALAC)」の規定に準拠する。毎日に動物の健康状態と死亡状況を記録し、定期検査は動物の日常的な行動、体重変化、様態やバイタルサイン等に対する被験物質又は薬物の影響の観察を含む。
【0147】
6.実験指標
実験指標は腫瘍増殖に対する薬物の影響であり、具体的にはT/C(%)又は腫瘍増殖抑制率TGI(%)である。
【0148】
週に2回、ノギスで腫瘍の直径を測定し、下式で腫瘍体積(V)を計算する。
V=1/2×a×b2
ここで、aは長さであり、bは幅である。
【0149】
T/C(%)=(T-T0)/(C-C0)×100
ここで、Tは実験群動物における実験終了時の腫瘍体積であり、Cは対照群動物における同腫瘍体積である。T0は実験群動物における実験開始時の腫瘍体積であり、C0は対照群動物における同腫瘍体積である。
【0150】
腫瘍増殖抑制率(TGI)(%)=100-T/C(%)
【0151】
腫瘍が寛解する場合には、
腫瘍増殖抑制率(TGI)(%)=100-(T-T0)/T0×100
腫瘍が初期体積より縮小したこと、即ちT<T0又はC<C0であることを、部分寛解(PR)と定義し、腫瘍が完全に消失することを、完全寛解(CR)と定義する。
【0152】
7.実験実施
各マウスにH22細胞を皮下接種し、腫瘍が100~200mm3になると、マウスをランダムに群分けして投与する。胃内(i.g.)又は腹腔内注射(IP)投与である。溶媒群は同じ体積の蒸留水を胃内投与し、投与体積は0.1mL/10g体重である。投与用量及び投与計画の詳細を表4に示す。
【0153】
【0154】
実験終了後、又は動物で腫瘍体積が安楽死実施基準1500mm3になると、二酸化炭素吸入で動物を殺した後、解剖で腫瘍組織を採取し、秤量して写真を撮影する。
【0155】
8.実験結果
塩酸アンロチニブ(1mg/kg、i.g.、QD×17)はマウスにおける肝がんH22皮下移植腫瘍の増殖を抑制でき、腫瘍増殖抑制率は61.7%である。メシル酸レンバチニブ(5mg/kg、i.g.、QD×17)のH22皮下移植腫瘍に対する腫瘍増殖抑制率は79%である。mPD-1(1mg/kg、IP、週に2回、合計5回)のH22に対する腫瘍増殖抑制率は29.3%であり、2/10の腫瘍が完全寛解している。塩酸アンロチニブとmPD-1の併用で腫瘍増殖抑制率は79.5%に上げられ、1/10の腫瘍が部分寛解し、1/10の腫瘍が完全寛解している。メシル酸レンバチニブとmPD-1の併用はH22に対する腫瘍増殖抑制率は63.4%であり、1/10の腫瘍が部分寛解している。塩酸アンロチニブとmPD-1の併用に担がんマウスは忍容性が高く、明らかな体重軽減等症状はない。塩酸アンロチニブとmPD-1の併用は塩酸アンロチニブ又はmPD-1単独より肝がんH22皮下移植腫瘍に対する効果が優れている。結果は表5を参照する。
【0156】
【0157】
各投与群のマウスの腫瘍増殖状況を分析し、以下の結果が得られる。
【0158】
図1に示すように、投与後D0~D17に、各投与群のマウスの平均腫瘍体積は投与日数の増加に伴って増え、各群の増加率は異なる。溶媒対照群のマウスは平均腫瘍体積の増加が最も早く、D17に体積が最も大きく、他の群のD17の平均腫瘍体積の比較結果は次のとおりでる。mPD-1(1mg/kg)>塩酸アンロチニブ(1mg/kg)>メシル酸レンバチニブ(5mg/kg)+mPD-1(1mg/kg)>塩酸アンロチニブ(1mg/kg)+mPD-1(1mg/kg)>メシル酸レンバチニブ(5mg/kg)。
【0159】
図2に示すように、投与後D0~D17に、各群のマウス個体の腫瘍増殖状況はほぼ
図1に一致しており、溶媒対照群は早く増殖しており、塩酸アンロチニブ(1mg/kg)+mPD-1(1mg/kg)は増殖が最も遅い。
【0160】
図3に示すように、試験終了時(D17)に各用量群のマウス個体の腫瘍体積及び腫瘍重量の比較結果は次のとおりである。溶媒対照群>mPD-1(1mg/kg)>メシル酸レンバチニブ(5mg/kg)+mPD-1(1mg/kg)>塩酸アンロチニブ(1mg/kg)>メシル酸レンバチニブ(5mg/kg)>塩酸アンロチニブ(1mg/kg)+mPD-1(1mg/kg)。
【0161】
図4に示すように、投与後D0~D17に、溶媒対照群及びmPD-1群のマウスは体重が安定的に増え、メシル酸レンバチニブ(5mg/kg)+mPD-1(1mg/kg)群、塩酸アンロチニブ(1mg/kg)群、メシル酸レンバチニブ(5mg/kg)群、塩酸アンロチニブ(1mg/kg)+mPD-1(1mg/kg)群で明らかな体重軽減等症状はない。
【0162】
図5に示すように、投与終了後にマウスを解剖して腫瘍を取り出すと、腫瘍の増殖状況が
図1の結果に一致している。
【0163】
メシル酸レンバチニブ(5mg/kg、i.g.、QD17)はマウスにおける肝がんH22皮下移植腫瘍の増殖を顕著に抑制し、塩酸アンロチニブ(1mg/kg)+mPD-1(1mg/kg)はほぼ同等な腫瘍抑制効果が得られ、メシル酸レンバチニブよりも腫瘍増殖の抑制効果が優れており、しかも用量は大幅に低減しているため、薬物の副作用関連のリスク低減には役立つ。mPD-1はH22にある程度の効果があり、塩酸アンロチニブとの併用はH22腫瘍の増殖抑制率が顕著に上昇し、担がんマウスは併用投与に良好な忍容性を示す。
【0164】
実施例3:抗PD-1モノクローナル抗体の調製
PD-1ハイブリドーマ細胞株の作成
1.分子生物学的手法で所定のアミノ酸配列を有するPD-1融合タンパク質を調製し、前記方法で調製したPD-1融合タンパク質を抗原とし、フロイントアジュバントで乳化することでBALB/Cマウスに免疫を付与する。マウスに免疫応答が現れるとその脾細胞とマウス骨髄腫細胞の細胞融合を行ってハイブリドーマ細胞を得る。96ウェルプレートで前記ハイブリドーマ細胞を培養する。
【0165】
2.各ハイブリドーマ細胞株の細胞が分泌した抗体について、PD-1-hFcを抗原としてELISA用マイクロプレートをコーティングし、BSA1%含有PBSバッファーでELISA用マイクロプレートをブロックする。コーティングされたELISA用マイクロプレートは間接ELISA法で、PD-1と特異的に結合する新規抗体を分泌するハイブリドーマ細胞をスクリーニングするために用いられる。
【0166】
3.競合ELISA法で、間接ELISA法でスクリーニングされたハイブリドーマ細胞からPD-L1と競合的にPD-1と結合するモノクローナル抗体を分泌できるハイブリドーマ細胞をスクリーニングする。
【0167】
4.スクリーニングされた細胞株のサブクローニングを行って、PD-L1と競合的にPD-1抗体と特異的に結合するモノクローナルを分泌する安定細胞株をスクリーニングする。手順は次のとおりである。サブクローニングしたい細胞に対して生細胞をカウントし、生細胞の数量に応じて胎児ウシ血清15%含有IMDM培地で希釈した後、96ウェル細胞培養プレートに接種して培養し、理論的な接種細胞密度は1セル/ウェルである。細胞がモノクローナル細胞クラスターに成長するとELISA法でスクリーニングし、サブクローニングとスクリーニングを複数回繰り返した後、安定モノクローナル細胞株を得る。
【0168】
5.安定細胞株を得ると、10%低IgG胎児ウシ血清で安定細胞株を培養し、7~10日培養した後、細胞培養上清を収集し、抗体精製を行って所望の抗PD-1抗体を得る。
【0169】
ヒト化抗体の設計
ヒト化抗体を構築するために、マウス抗体の可変領域のアミノ酸配列とヒト可変領域の遺伝子配列を比較する。選択的な変異によりマウスアミノ酸配列の一部をヒトアミノ酸配列に導入することで、様々なヒト化抗体を得る。
【0170】
ヒト化抗体1の重鎖可変領域配列は次のとおりである。
EVKLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFTFSSYGMSWVRQTPEKSLEWVATISGGGSDTYYPDSVKGRFTISRDNAKNNLYLQMSSLRSEDTALYYCARQLNYAWFAYWGQGTLVTVSAAKTTPPSVYRSSKGNSSTLAAVTS(配列番号1)
ヒト化抗体1の軽鎖可変領域配列は次のとおりである。
DIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVDNYGISFMNWFQQKPGQPPKLLIYTSSNQGSGVPARFSGSGSGTDFSLNIHPMEEDDTAMYFCQQSKEVPWTFGGGTKLEIKR(配列番号4)
ヒト化抗体2の重鎖可変領域配列は次のとおりである。
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMSWVRQAPGKGLEWVATISGGGSDTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMSSLRAEDTAVYYCARQLNYAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号2)
ヒト化抗体2の軽鎖可変領域配列は次のとおりである。
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVDNYGISFMNWFQQKPGQPPKLLIYTSSNQGTGVPARFSGSGSGTDFTLNINPMEADDTAMYFCQQSKEVPWTFGGGTKLEIK(配列番号5)
ヒト化抗体3の重鎖可変領域配列は次のとおりである。
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYGMSWVRQAPGKGLEWVATISGGGSDTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARQLNYAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号3)
ヒト化抗体3の軽鎖可変領域配列は次のとおりである。
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVDNYGISFMNWYQQKPGQPPKLLIYTSSNKDTGVPARFSGSGSGTDFTLTINPMEAEDTAVYYCQQSKEVPWTFGGGTKLEIK(配列番号6)
ヒト化抗体4の重鎖可変領域配列は次のとおりである。
EVKLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFAFSSYDMSWVRQTPEKRLEWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNARNTLYLQMSSLRSEDTALYYCANRYGEAWFAYWGQGTLVTVSA(配列番号7)
ヒト化抗体4の軽鎖可変領域配列は次のとおりである。
DIKMTQSPSSMYASLGERVTFTCKASQDINTYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVDGVPSRFSGSGSGQDYSLTISSLEYEDMGIYYCLQYDEFPLTFGAGTKLEL(配列番号9)
ヒト化抗体5の重鎖可変領域配列は次のとおりである。
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFAFSSYDMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCANRYGEAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号8)
ヒト化抗体5の軽鎖可変領域配列は次のとおりである。
DIQMTQSPSSMSASVGDRVTFTCRASQDINTYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVSGVPSRFSGSGSGQDYTLTISSLQPEDMATYYCLQYDEFPLTFGAGTKLELK(配列番号10)
ヒト化抗体6の重鎖可変領域配列は次のとおりである。
EVQLVQSGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSSYGMSWVRQTPEKGLDWVATISGGGRDTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCARQKGEAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号11)
ヒト化抗体6の軽鎖可変領域配列は次のとおりである。
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVDNYGISFMNWFQQKPGQPPKLLIYAASNKGTGVPARFSGSGSGTDFTLNIHPMEENDTAMYFCQQSKEVPWTFGGGTKLEIK(配列番号14)
ヒト化抗体7の重鎖可変領域配列は次のとおりである。
EVQLVQSGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSSYGMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRDTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCARQKGEAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号12)
ヒト化抗体7の軽鎖可変領域配列は次のとおりである。
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVDNYGISFMNWFQQKPGQPPKLLIYAASNKGTGVPARFSGSGSGTDFTLNINPMEENDTAMYFCQQSKEVPWTFGGGTKLEIK(配列番号15)
ヒト化抗体8の重鎖可変領域配列は次のとおりである。
EVQLVQSGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSSYGMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRDTYYPDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARQKGEAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号13)
ヒト化抗体8の軽鎖可変領域配列は次のとおりである。
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVDNYGISFMNWYQQKPGQPPKLLIYAASNKATGVPARFSGSGSGTDFTLNINPMEANDTAVYFCQQSKEVPWTFGGGTKLEIK(配列番号16)
ヒト化抗体8Aの重鎖配列は次のとおりである。
EVQLVQSGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSSYGMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRDTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCARQKGEAWFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMIRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHHYTQKSLSLSLGK(配列番号17)
ヒト化抗体8Aの軽鎖配列は次のとおりである。
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVDNYGISFMNWFQQKPGQPPKLLIYAASNKGTGVPARFSGSGSGTDFTLNINPMEENDTAMYFCQQSKEVPWTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号18)
ヒト化抗体9の重鎖可変領域配列は次のとおりである。
QVQLVQSGVEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYMYWVRQAPGQGLEWMGGINPSNGGTNFNEKFKNRVTLTTDSSTTTAYMELKSLQFDDTAVYYCARRDYRFDMGFDYWGQGTTVTVSS(配列番号31)
ヒト化抗体9の軽鎖可変領域配列は次のとおりである。
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASKGVSTSGYSYLHWYQQKPGQAPRLLIYLASYLESGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQHSRDLPLTFGGGTKVEIK(配列番号34)
ヒト化抗体9の重鎖配列は次のとおりである。
QVQLVQSGVEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYMYWVRQAPGQGLEWMGGINPSNGGTNFNEKFKNRVTLTTDSSTTTAYMELKSLQFDDTAVYYCARRDYRFDMGFDYWGQGTTVTVSS
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号37)
ヒト化抗体9の軽鎖配列は次のとおりである。
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASKGVSTSGYSYLHWYQQKPGQAPRLLIYLASYLESGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQHSRDLPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号40)
ヒト化抗体10の重鎖可変領域配列は次のとおりである。
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSS(配列番号32)
ヒト化抗体10の軽鎖可変領域配列は次のとおりである。
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIK(配列番号35)
ヒト化抗体10の重鎖配列は次のとおりである。
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号38)
ヒト化抗体10の軽鎖配列は次のとおりである。
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号41)
ヒト化抗体11の重鎖可変領域配列は次のとおりである。
EVQLLESGGVLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNFGMTWVRQAPGKGLEWVSGISGGGRDTYFADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLKGEDTAVYYCVKWGNIYFDYWGQGTLVTVSS(配列番号33)
ヒト化抗体11の軽鎖可変領域配列は次のとおりである。
DIQMTQSPSSLSASVGDSITITCRASLSINTFLNWYQQKPGKAPNLLIYAASSLHGGVPSRFSGSGSGTDFTLTIRTLQPEDFATYYCQQSSNTPFTFGPGTVVDFR(配列番号36)
ヒト化抗体11の重鎖配列は次のとおりである。
EVQLLESGGVLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNFGMTWVRQAPGKGLEWVSGISGGGRDTYFADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLKGEDTAVYYCVKWGNIYFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号39)
ヒト化抗体11の軽鎖配列は次のとおりである。
DIQMTQSPSSLSASVGDSITITCRASLSINTFLNWYQQKPGKAPNLLIYAASSLHGGVPSRFSGSGSGTDFTLTIRTLQPEDFATYYCQQSSNTPFTFGPGTVVDFRRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号42)
【0171】
人工遺伝子合成により上記のヒト化抗体をコードする核酸配列を得、発現担体に導入する。発現担体からDNAを抽出して、哺乳類293細胞をトランスフェクトする。トランスフェクション後、哺乳類細胞で抗体が発現され、細胞外に分泌される。抗体アフィニティークロマトグラフィーによって発現抗体を精製することにより、ヒト化抗体タンパク質を得る。前記操作はいずれも本分野で周知の通常操作である。
【0172】
実施例4:14C12H1L1と塩酸アンロチニブの組み合わせによる切除不能な肝細胞がんの第一選択治療に関する臨床試験
本研究は14C12H1L1と塩酸アンロチニブの組み合わせによる切除不能な肝細胞がんの第一選択治療に関する多施設オープンラベル第Ib/II相臨床試験の初期結果を開示する。
【0173】
本研究は多施設オープンラベル第Ib/II相臨床試験であり、目的は14C12H1L1とアンロチニブの組み合わせによる切除不能な肝細胞がんの第一選択治療の有効性、即ち安全性を評価することである。
【0174】
主要評価項目:RECISIT v1.1に基づく客観的奏効率(ORR)。
【0175】
副次的評価項目:(1)RECISIT v1.1に基づく疾患制御率(DCR)、寛解持続期間(DOR)、寛解までの期間(TTR)、無増悪生存期間(PFS)、疾患進行期間(TPP)。(2)全生存期間(OS)。(3)安全評価:AE発生率及び重症度、臨床的意義のある異常な実験室検査結果。
【0176】
無増悪生存期間(PFS):最初の投与から客観的に腫瘍進行と認められる又は死亡するまでの時間と定義する。
【0177】
全生存期間(OS):最初の投与から何らかの原因で死亡するまでの時間と定義する。日数で数え、追跡不能の被験者は一般に最後の追跡を死亡時間として計算する。
【0178】
寛解持続期間(DOR):1回目のCR又はPR評価から1回目のPD評価又は死亡までの時間と定義する。
【0179】
寛解までの期間(TTR):被験者に対する初回の投与から1回目のCR又はPR評価までの時間。
【0180】
被験薬物:
14C12H1L1注射液、100mg/10mL溶液、康方天成(広東)制薬有限公司提供、2~8℃遮光保存。
【0181】
塩酸アンロチニブカプセル(福可維)、8mg/粒、正大天晴薬業集団股フン有限公司提供、密封遮光。
【0182】
投与:
投与計画及び用量:
14C12H1L1とアンロチニブを併用する。14C12H1L1は200mgのQ3W静脈注射である。アンロチニブは1日1回で8mgを投与し、投与14日と休薬7日の21日を一期間とする。
【0183】
早期研究結果:
治療効果:
2019年7月15日現在、合計で13人の被験者は少なくとも1回の腫瘍評価を受けており、平均治療期間は3回である。前記患者で3例は部分寛解(PR)であり、客観的奏効率(ORR)は23.1%(3/13)であり、疾患制御率(DCR)は69.2%(9/13)である(
図6、
図7を参照)。
【0184】
有害事象:
2019年6月27日現在、試験治療下で発現した有害事象(TRAE)の発生率は75%であり、3級以上TRAEは12.5%である。14C12H1L1と塩酸アンロチニブの組み合わせによる切除不能な肝細胞がんの第一選択治療はアンロチニブ単独治療(データ未記載)又は14C12H1L1単独治療(データ未記載)よりも有害事象発生率(表6を参照)が顕著に低下していることは結果から示される。
【0185】
【0186】
本願に記載の例示的な実施形態は下記番号の事項に要約することができる。
事項1.
a)PD-1及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤と、
b)式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩であるチロシンキナーゼ阻害剤とを含む薬物の組み合わせ。
【化3】
【0187】
事項2.式Iの化合物の薬学的に許容される塩は1-[[[4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イル)オキシ-6-メトキシキノリン-7-イル]オキシ]メチル]シクロプロピルアミンの塩酸塩であり、二塩酸塩であることが好ましい事項1に記載の薬物の組み合わせ。
【0188】
事項3.前記PD-1及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤は抗PD-1もしくは抗PD-L1抗体、又はその抗原結合フラグメントである事項1又は2に記載の薬物の組み合わせ。
【0189】
事項4.前記抗PD-1又は抗PD-L1抗体は抗PD-1又は抗PD-L1モノクローナル抗体である事項3に記載の薬物の組み合わせ。
【0190】
事項5.前記抗PD-1抗体はニボルマブ、ペンブロリズマブ、トリパリマブ、シンチリマブ、カムレリズマブ、チスレリズマブ、14C12H1L1、ゲノリムズマブ、リズマブ、HLX-10、BAT-1306、AK103、AK104、CS1003、SCT-I10A、F520、SG001、GLS-010のいずれか1種又は2種以上から選ばれてもよい事項3又は4に記載の薬物の組み合わせ。
【0191】
事項6.前記抗PD-L1抗体はアテゾリズマブ(Atezolizumab)、アベルマブ(Avelumab)、デュルバルマブ(Durvalumab)、KL-A167、SHR-1316、BGB-333、JS003、STI-A1014(ZKAB0011)、KN035、MSB2311、HLX-20、CS-1001のいずれか1種又は2種以上から選ばれてもよい事項3又は4に記載の薬物の組み合わせ。
【0192】
事項7.前記抗PD-1抗体は、
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号31、配列番号32、配列番号33から選ばれるアミノ酸配列又はこれに対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号34、配列番号35、配列番号36から選ばれるアミノ酸配列又はこれに対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む事項3又は4に記載の薬物の組み合わせ。
【0193】
事項8.前記抗PD-1抗体は、
a.配列番号1に示す重鎖可変領域と、配列番号4に示す軽鎖可変領域と、
b.配列番号2に示す重鎖可変領域と、配列番号5に示す軽鎖可変領域と、
c.配列番号3に示す重鎖可変領域と、配列番号6に示す軽鎖可変領域と、
d.配列番号7に示す重鎖可変領域と、配列番号9に示す軽鎖可変領域と、
e.配列番号8に示す重鎖可変領域と、配列番号10に示す軽鎖可変領域と、
f.配列番号11に示す重鎖可変領域と、配列番号14に示す軽鎖可変領域と、
g.配列番号12に示す重鎖可変領域と、配列番号15に示す軽鎖可変領域と、
h.配列番号13に示す重鎖可変領域と、配列番号16に示す軽鎖可変領域と、
i.配列番号17に示す重鎖と、配列番号18に示す軽鎖と、
j.配列番号31に示す重鎖可変領域と、配列番号34に示す軽鎖可変領域と、
k.配列番号32に示す重鎖可変領域と、配列番号35に示す軽鎖可変領域と、
l.配列番号33に示す重鎖可変領域と、配列番号36に示す軽鎖可変領域と、
m.配列番号37に示す重鎖と、配列番号40に示す軽鎖と、
n.配列番号38に示す重鎖と、配列番号41に示す軽鎖と、又は
o.配列番号39に示す重鎖と、配列番号42に示す軽鎖とを含む事項7に記載の薬物の組み合わせ。
【0194】
事項9.固定の組み合わせである事項1~8のいずれか1項に記載の薬物の組み合わせ。
【0195】
事項10.前記固定の組み合わせは固体医薬組成物又は液体医薬組成物として提供される事項9に記載の薬物の組み合わせ。
【0196】
事項11.非固定の組み合わせである事項1~8のいずれか1項に記載の薬物の組み合わせ。
【0197】
事項12.前記非固定の組み合わせで抗PD-1抗体、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩はそれぞれ医薬組成物として提供される事項11に記載の薬物の組み合わせ。
【0198】
事項13.式Iの化合物又はその塩酸塩と、シンチリマブもしくはその抗原結合フラグメント、InVivoMAb抗マウスPD-1モノクローナル抗体もしくはその抗原結合フラグメント、又は14C12H1L1もしくはその抗原結合フラグメントとを含む事項1~12のいずれか1項に記載の薬物の組み合わせ。
【0199】
事項14.肝悪性腫瘍を治療又は予防するための事項1~13のいずれか1項に記載の薬物の組み合わせの用途。
【0200】
事項15.前記薬物の組み合わせは原発性肝腫瘍又は続発性肝腫瘍を治療するため用いられる事項14に記載の用途。
【0201】
事項16.前記肝悪性腫瘍は肝細胞がんである事項14に記載の用途。
【0202】
事項17.前記肝悪性腫瘍は転移性肝がんである事項14に記載の用途。
【0203】
事項18.前記転移性肝がんは肺がん、胃がん、直腸がん、結腸がん、大腸がん、膵臓がん又は乳がんから転移している転移性がんである事項17に記載の用途。
【0204】
事項19.がんを予防又は治療するための、PD-1及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤と式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩の組み合わせの用途。
【0205】
事項20.がん又は腫瘍を予防又は治療するための、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩と、PD-1及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤とを含む薬物の組み合わせ。
【0206】
事項21.前記PD-1及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤はヒトPD-1又はPD-L1と特異的に結合し且つヒトPD-L1とヒトPD-1の結合を遮断する抗PD-1もしくは抗PD-L1モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである事項19又は20に記載の用途。
【0207】
事項22.前記がん又は腫瘍は肝腫瘍(例えば、肝細胞がん等肝悪性腫瘍)又は肺腫瘍(例えば、非小細胞肺がん等肺がん)から選ばれる事項19~21のいずれか1項に記載の用途。
【0208】
事項23.
PD-1受容体及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤と、
式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩であるチロシンキナーゼ阻害剤とを含む治療有効量の薬物の組み合わせを対象に投与することを含む対象におけるがんの治療方法。
【0209】
事項24.前記PD-1及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤は抗PD-1もしくは抗PD-L1抗体、又はその抗原結合フラグメントである事項23に記載の方法。
【0210】
事項25.前記抗PD-1抗体はニボルマブ、ペンブロリズマブ、トリパリマブ、シンチリマブ、カムレリズマブ、チスレリズマブ、14C12H1L1、ゲノリムズマブ、リズマブ、HLX-10、BAT-1306、AK103、AK104、CS1003、SCT-I10A、F520、SG001、GLS-010のいずれか1種又は2種以上から選ばれてもよい事項24に記載の方法。
【0211】
事項26.前記抗PD-L1抗体はアテゾリズマブ(Atezolizumab)、アベルマブ(Avelumab)、デュルバルマブ(Durvalumab)、KL-A167、SHR-1316、BGB-333、JS003、STI-A1014、KN035、MSB2311、HLX-20、CS-1001のいずれか1種又は2種以上から選ばれてもよい事項24に記載の方法。
【0212】
事項27.前記抗PD-1抗体は、
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号31、配列番号32、配列番号33から選ばれるアミノ酸配列又はこれに対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号34、配列番号35、配列番号36から選ばれるアミノ酸配列又はこれに対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む事項24に記載の方法。
【0213】
事項28.約週に1回(q1w)、約2週に1回(q2w)、約3週に1回(q3w)、又は約4週に1回(q4w)の頻度でPD-1受容体及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤を投与する事項23~27のいずれか1項に記載の方法。
【0214】
事項29.客観的な応答、好ましくは完全な応答又は部分的な応答が現れる事項23~28のいずれか1項に記載の方法。
【0215】
事項30.前記対象は系統的化学療法を受けたことはない事項23~29のいずれか1項に記載の方法。
【0216】
事項31.前記対象は系統的化学療法を受けたことはなく、手術治療、放射線療法、誘導化学療法及び/又は補助化学療法の1種以上を受けたことがあり、又は対象は同時化学療法を受ける事項23~30のいずれか1項に記載の方法。
【0217】
事項32.前記対象は既に系統的化学療法を受けている事項23~30のいずれか1項に記載の方法。
【0218】
事項33.前記がんはドライバー遺伝子陰性である事項23~32のいずれか1項に記載の方法。
【0219】
事項34.前記ドライバー遺伝子陰性は対象のEGFR、ALK及びROS1遺伝子の1種、2種又は3種は変異陰性であることを含む事項33に記載の方法。
【0220】
事項35.前記対象のEGFR、ALK及びROS1遺伝子はいずれも野生型遺伝子であり又はいずれも変異陰性である事項26~32のいずれか1項に記載の方法。
【0221】
事項36.前記がんは肺がんである事項26~35のいずれか1項に記載の方法。
【0222】
事項37.前記がんは再発性及び/又は転移性肺がんである事項23~36のいずれか1項に記載の方法。
【0223】
事項38.前記がんは晩期肺がんである事項23~37のいずれか1項に記載の方法。
【0224】
事項39.前記がんは小細胞又は非小細胞肺がんである事項23~38のいずれか1項に記載の方法。
【0225】
事項40.前記がん治療は再発性又は転移性非小細胞肺がんの第一選択治療である事項23~39のいずれか1項に記載の方法。
【0226】
事項41.前記非小細胞肺がんは肺腺がん、肺扁平上皮がん又は肺大細胞がんである事項39又は40に記載の方法。
【0227】
事項42.前記がんは原発性肝腫瘍又は続発性肝腫瘍である事項26~35のいずれか1項に記載の方法。
【0228】
事項43.前記肝悪性腫瘍は肝細胞がんである事項41に記載の方法。
【0229】
事項44.前記肝悪性腫瘍は転移性肝がんである事項41に記載の方法。
【0230】
事項45.前記転移性肝がんは肺がん、胃がん、直腸がん、結腸がん、大腸がん、膵臓がん又は乳がんから転移している転移性がんである事項44に記載の方法。
【0231】
事項46.がん又は腫瘍を予防又は治療するための、式Iの化合物又は薬学的に許容さ
れるその塩であるチロシンキナーゼ阻害剤と、PD-1及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤とを含む薬物の組み合わせ。
【0232】
事項47.前記PD-1受容体及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤及びチロシンキナーゼ阻害剤はそれぞれ医薬組成物として提供され、同時に投与され、連続して投与されてもよいし又は間隔投与されてもよい事項23~46のいずれか1項に記載の方法又は薬物の組み合わせ。
【0233】
事項48.前記式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩は投与2週(14日)と休薬1週(7日)の治療期間で投与する事項23~47のいずれか1項に記載の方法又は薬物の組み合わせ。
【0234】
事項49.前記各治療期間に投与する薬物の組み合わせは約84~168mgの式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む事項48に記載の方法又は薬物の組み合わせ。
【0235】
事項50.前記薬物の組み合わせは約84mg、約112mg、約140mg、約168mg、又は任意の前記値からなる範囲から選ばれる量の式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む事項48又は49に記載の方法又は薬物の組み合わせ。
【0236】
事項51.前記薬物の組み合わせは約112mgの式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む事項50に記載の方法又は薬物の組み合わせ。
【0237】
事項52.前記薬物の組み合わせは約140mgの式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む事項50に記載の方法又は薬物の組み合わせ。
【0238】
事項53.前記薬物の組み合わせは約168mgの式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む事項50に記載の方法又は薬物の組み合わせ。
【0239】
事項54.毎日に約8mg、約10mg又は約12mgの式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を投与し、投与2週後、1週休薬する事項50に記載の方法又は薬物の組み合わせ。
【0240】
事項55.約2週に1回(q2w)又は約3週に1回(q3w)の頻度で100~600mgの抗PD-1抗体を投与する事項23~54のいずれか1項に記載の方法又は薬物の組み合わせ。
【0241】
事項56.約2週に1回(q2w)の頻度で約200mgの抗PD-1抗体を投与する事項23~55のいずれか1項に記載の方法又は薬物の組み合わせ。
【0242】
事項57.約3週に1回(q3w)の頻度で約200mgの抗PD-1抗体を投与する事項23~56のいずれか1項に記載の方法又は薬物の組み合わせ。
【0243】
事項58.独立している容器に個別包装される医薬組成物を含み、第1の容器に式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を含み、且つ第2の容器にPD-1受容体及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤を含む医薬組成物を含む医薬品パック。
【0244】
事項59. 84~168mgの式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む事項58に記載の医薬品パック。
【0245】
事項60. 84mg、112mg、140mg、168mg、又は任意の前記値からなる範囲から選ばれる量の式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む事項59に記載の医薬品パック。
【0246】
事項61. 112~168mgの式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む事項60に記載の医薬品パック。
【0247】
事項62.(a)有効成分としてPD-1受容体及びそのリガンドPD-L1の間の相互作用の阻害剤を含む第1医薬組成物と、(b)有効成分として式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む第2医薬組成物とを含む肝腫瘍を治療するキット。
【0248】
事項63. 84~168mgの式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む事項62に記載のキット。
【0249】
事項64. 84mg、112mg、140mg、168mg、又は任意の前記値からなる範囲から選ばれる量の式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む事項63に記載のキット。
【0250】
事項65. 112~168mgの式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む事項64に記載のキット。
【0251】
事項66.化合物成分として6~12mgの式Iの化合物又はその塩酸塩と、抗体成分として50~350mgの抗PD-1抗体又はその抗原結合フラグメントとを含み、化合物成分及び抗体成分はそれぞれ個別に包装される単位製剤。
【0252】
事項67.適用者に1つ以上の事項66に記載の単位製剤を投与する、がん又は腫瘍を予防又は治療する方法。
【0253】
事項68.前記がん又は腫瘍は肝腫瘍(例えば、肝細胞がん等肝悪性腫瘍)又は肺腫瘍(例えば、非小細胞肺がん等肺がん)から選ばれる事項67に記載の方法。
【0254】
本開示では、好ましい実施形態で本願の組成物及び方法を説明しているが、当業者が理解したように、本願の基本原理、趣旨から逸脱することなく、組成物及び/又は方法並びに前記方法のステップ又はステップの順番を変更することができる。
【0255】
本明細書で引用される全ての文献は、その記載内容に係るプロセス及び他に関する例示的な詳細によって本明細書の内容が補足されるように本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】