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特表2022-512563エラストマースキンを生成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】エラストマースキンを生成するための方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 41/36 20060101AFI20220131BHJP
   B29C 41/02 20060101ALI20220131BHJP
   B29K 75/00 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
B29C41/36
B29C41/02
B29K75:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021517434
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(85)【翻訳文提出日】2021-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2019075901
(87)【国際公開番号】W WO2020069937
(87)【国際公開日】2020-04-09
(31)【優先権主張番号】18198032.7
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517118423
【氏名又は名称】レクティセル オートモービルシステム ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バンルーチェン,イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】デンドンケル,リンダ
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA42
4F205AB11
4F205AB12
4F205AC05
4F205AF01
4F205AG05
4F205GA05
4F205GB01
4F205GC06
4F205GF25
4F205GN29
(57)【要約】
視覚的にスポットのある外観を有するエラストマースキンを生成する方法は、少なくとも40μmの最長寸法を有する固体スポット形成粒子を含む液体スキン形成組成物を提供するステップと、液滴のスプレーの形態で液体スキン形成組成物をモールド表面にスプレーするステップとを含む。液滴サイズに匹敵するサイズの固体スポット形成粒子の提供は、モールド表面への衝突時に固体スポット形成粒子を前方に投射するのを助け、その結果、そのある割合が、離型後にエラストマースキンの前面に見えるようになり、それによって複数の液体スキン形成組成物を使用する必要なしに、スポットのある外観を有する前面をもたらす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールド表面に対して生成された可視前面を有するエラストマースキンを生成するための方法であって、前記可視前面は、視覚的にスポットのある外観を有し、前記方法が、
液体スキン形成組成物を提供するステップと;
液滴のスプレーの形態で前記液体スキン形成組成物を前記モールド表面の少なくとも一部にスプレーするステップと;
前記液体スキン形成組成物を硬化させるステップと;
生成されたエラストマースキンを前記モールド表面から取り外すステップと;
を含む、方法において、
前記液体スキン形成組成物は、少なくとも40μmの最長寸法を有する固体スポット形成粒子を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記液体スキン形成組成物は、前記固体スポット形成粒子が、前記生成されたエラストマースキンの不透明マトリックスに含まれるように、少なくとも1種の着色剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記着色剤は、少なくとも90体積%が、最大10μm、特に最大1μm、より具体的には最大0.5μmの最長寸法を有する顔料粒子を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記生成されたエラストマースキンは、0.01重量%~10重量%、好ましくは0.05重量%~7重量%、より好ましくは0.1重量%~5重量%の前記顔料粒子を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記固体スポット形成粒子は、前記不透明マトリックスとは異なる色であり、前記不透明マトリックスは、特に、CIELAB色空間において、前記固体スポット形成粒子とは異なる色値を有する、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ASTM E799-03(2015)に従って決定された前記液滴のメジアン体積径は、少なくとも40μm、好ましくは少なくとも60μm、より好ましくは少なくとも70μm、最も好ましくは少なくとも80μmである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記固体スポット形成粒子の少なくとも50体積%、好ましくは少なくとも90体積%は、ASTM E799-03(2015)に従って決定された前記液滴のメジアン体積径の少なくとも半分の最長寸法を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記固体スポット形成粒子は、少なくとも50μm、好ましくは少なくとも70μm、より好ましくは少なくとも90μm、最も好ましくは少なくとも100μmの最長寸法を有する粒子を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも40μmの最長寸法を有する前記固体スポット形成粒子の少なくとも75体積%、好ましくは少なくとも90体積%の最長寸法が、少なくとも60μmである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記生成されたエラストマースキンは、0.1重量%~5重量%、好ましくは0.2重量%~4重量%、より好ましくは0.3重量%~2重量%の、少なくとも40μmに等しい最長寸法を有する前記固体スポット形成粒子を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記固体スポット形成粒子は、300μmを超える、特に240μmを超える最長寸法を有する粒子を実質的に含まない、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記液体スキン形成組成物をスプレーするステップは、液滴の前記スプレーを前記モールド表面上に通過させて、前記モールド表面の前記少なくとも一部の様々な場所への前記スプレーの第1の通過によって、前記モールド表面上の前記様々な場所に前記液体スキン形成組成物の第1の層を堆積させることを含み、前記第1の層は、好ましくは連続層であり、前記スプレーの1回の通過によって形成される前記第1の層は、前記様々な場所で、10μm~1000μmの間の平均厚さを有し、この平均厚さは具体的には少なくとも50μm、より具体的には少なくとも100μmであり、この平均厚さは具体的には最大500μm、より具体的には最大300μmであり、この平均厚さは最も具体的には約200μmである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記固体スポット形成粒子は、フレークから本質的になる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記液体スキン形成組成物は、硬化性組成物、好ましくは硬化性ポリウレタンベース組成物、特に脂肪族ポリウレタンベース組成物である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
可視前面を有し、特に請求項1から14のいずれか一項に記載の方法によって得られるスプレー成形エラストマースキンであって、前記エラストマースキンは、不透明マトリックスに埋め込まれた固体スポット形成粒子を含み、前記固体スポット形成粒子は、前記可視前面が視覚的にスポットのある外観を有するように、40μm~500μmの間の最長寸法を有する、スプレー成形エラストマースキン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド(型)表面に対して生成された可視前面を有するエラストマースキンを生成するための方法に関し、可視前面は、視覚的にスポットのある外観を有する。
【背景技術】
【0002】
エラストマースキンは、様々な用途で装飾的な表面被覆として使用される。例えば、インストルメントパネル、ダッシュボード、ドアパネル、コンソール等の自動車の内装部品は、エラストマースキンで被覆された硬質基板によって形成される。そのような用途では、エラストマースキンは、直接的に、しかし好ましくは中間発泡体層の介在物を通して間接的に、硬質基板に接着される。この発泡体層は、200kg/m未満の密度を有し、通常これは120~180kg/mの間に含まれる。そのような発泡体層の存在は、エラストマースキンを弾力的に凹ませることを可能にし、その結果、トリム部分にソフトな感触が提供される。このような用途では、エラストマースキンはポリウレタン(PU)等の熱硬化性材料で作製され得る。さらに、エラストマースキンは、革のテクスチャだけでなく、幾何学的なテクスチャや点描のテクスチャ等の他のテクスチャも示すことができ、これらは、熱硬化性材料を粗面加工されたモールド表面にスプレーすることにより得られる。あるいは、熱硬化性材料を平坦なモールド表面にスプレーすることにより、テクスチャのないエラストマースキンを得ることができる。
【0003】
視覚的にスポットのある外観を有するエラストマースキンを生成するための既知の方法は、液体スキン形成組成物を提供するステップと;液滴のスプレーの形態で液体スキン形成組成物をモールド表面の少なくとも一部にスプレーするステップと;液体スキン形成組成物を硬化させステップと;生成されたエラストマースキンをモールド表面から取り外すステップとを含む。
【0004】
そのような方法は、特許文献1に開示されており、モールド表面に連続的にスプレーされて視覚的にスポットのあるエラストマースキンを生成する2つの異なる液体スキン形成組成物の使用に依存している。具体的には、第1の明るい色調の液体スキン形成組成物の液滴がモールド表面に塗布され、それらの少なくともいくつかがその上で合体させられて、明るい色調の液体スキン形成組成物の非連続層をモールド表面上に形成する。この非連続的な明るい色調の層は、モールド表面の第1の領域に、モールド表面が明るい色調の液体スキン形成組成物で被覆されていない複数のギャップを含む。第2の、より暗い色調の液体スキン形成組成物が、ギャップの場所でモールド表面を被覆するために塗布される。明るい色調の液体スキン組成物で被覆されたモールド表面の領域に応じて、エラストマースキンは、暗い色調のスポットを伴う明るい色調の背景、または明るい色調のスポットを伴う暗い色調の背景の外観を有する。
【0005】
この方法の欠点は、小さな点がその表面全体に均一に分布しているように見えるエラストマースキンを生成することが非常に難しいことである。これは、いくつかの効果によって引き起こされる。
【0006】
第一に、第1の液体スキン形成組成物がモールド表面の非常に広い領域を被覆するように塗布される場合、すなわち第2の液体スキン形成組成物がスポットとして現れる場合、ドットの寸法は第1の液体スキン形成組成物の合体によって画定される。実際には、この合体を制御することは不可能あり、すなわち目的のドットサイズを得ることは不可能である。さらに、ドットの均一性も直接合体の結果であるため、所望の均一性を達成することは不可能である。
【0007】
第二に、第1の液体スキン形成組成物がモールド表面の非常に限られた領域のみを被覆するように塗布される場合、すなわち第1の液体スキン形成組成物がスポットとして現れる場合、ドットの寸法はモールド表面に衝突する液滴の寸法に正比例する。典型的には、液滴のサイズは、使用されるスプレーノズル、および液体スキン形成組成物をスプレーするときに加えられる圧力の両方に依存し、液滴サイズは、ASTM E799-03(2015)に従って決定されたメジアン体積径を使用して表される。典型的には、液滴のメジアン体積径は、50μm~500μmの間である(例えば、特許文献2を参照されたい)。衝突により、球状液滴は平坦化し、すなわちそのサイズがさらに大きくなり、小さなドットを得ることが困難になる。さらに、モールド表面のそのような限られた領域のみを被覆することは、実際には、特に材料が湾曲したゾーンの近くに蓄積する傾向がある三次元形状において、達成するのが非常に困難である。
【0008】
第三に、合体は、典型的には、第1の液体スキン形成組成物の被覆の程度に関係なく、目に見えるフィラメント構造をもたらす。このフィラメント構造は大規模な構造を形成し、これは小規模なスポットパターンの視認性に悪影響を及ぼす。
【0009】
既知のプロセスの別の欠点は、所望の視覚効果を得るために、複数の異なる液体スキン形成組成物をモールド表面にスプレーする必要があることである。これは、複数のスプレーステップが必要であり、それによってエラストマースキンの生成に必要な時間が長くなることを意味する。さらに、複数の液体スキン形成組成物をスプレーするための要件は、複数のノズルの使用を必要とし、これは、自動スプレーシステムもまた、エラストマースキンを生成するために必要な時間をさらに増加させる様々なノズルの切り替えを必要とすることを意味する。さらに、液体スキン形成組成物が連続使用の間に硬化し、この硬化によってノズルが使用できなくなることを回避するために、様々なノズルを洗浄することも必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO-A-2011/000957
【特許文献2】US-B-8262002
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、より時間がかからず、より複雑でない、視覚的にスポットのある前面を有するエラストマースキンを生成するための方法を提供することである。
【0012】
この目的は、液体スキン形成組成物が、少なくとも40μmの最長寸法を有する固体スポット形成粒子を含む本発明により達成される。
【0013】
液体スキン形成組成物中に少なくとも40μmの最長寸法を有する固体スポット形成粒子を提供することは、固体スポット形成粒子のある割合が、離型後に、すなわち生成されたエラストマースキンをモールド表面から取り外した後に、エラストマースキンの前面に位置するまたはエラストマースキンの前面の近くに位置するという効果を有する。さらに、固体スポット形成粒子は、これらが肉眼で見ることができるほど長い寸法を有するため、エラストマースキンの可視表面での固体スポット形成粒子も肉眼で視覚的に知覚可能であり、これは、固体スポット形成粒子が、硬化したスキン形成材料に囲まれたスポットとして現れることを意味する。したがって、本発明による方法は、既知の方法のように複数の組成物を互いに連続してスプレーすることを必要とせずに、スポットのある外観を有するエラストマースキンを製造することを可能にする。したがって、本発明による方法は、スポットのある外観を達成するために複数のノズルを使用する必要が回避されるため、時間がかからず、また複雑さも少ない。
【0014】
本明細書で使用される場合、「スポット」という用語は、表面の周囲の領域とは目に見えて異なる(例えば、色、仕上げ、または材料において)表面の小さな領域を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「固体スポット形成粒子」という用語は、スポットを形成することができる固体粒子を指し、その固体粒子は、少なくとも40μmの最長寸法を有する。
【0016】
本発明の一実施形態では、固体スポット形成粒子の最長寸法は、最大フェレ径を見つけるために、ISO13322-1:2014に従った光学顕微鏡法を使用して決定され得る。
【0017】
本発明による方法で生成されたエラストマースキンのさらなる利点は、その耐摩耗性である。特に、固体スポット形成粒子は、エラストマースキンの前面近くまたはさらには前面に位置しているが、エラストマースキンの一部として形成されたマトリックスに依然として埋め込まれており、さらには非常に薄いフィルムで被覆され得る。したがって、固体スポット形成粒子は、典型的には、マトリックスにしっかりと付着し、これは、固体スポット形成粒子をエラストマースキンから簡単にこすり落とすことができないことを意味する。
【0018】
さらに、固体スポット形成粒子は、液体スキン形成組成物に直接含まれるため、固体スポット形成粒子は液体スキン形成組成物中に均一に分布し、特に分散しており、これは、固体スポット形成粒子がまた平均的に(すなわち少なくとも5cmの表面積を有する前面を考慮する場合)エラストマースキンの前面全体に均一に現れることを意味する。
【0019】
さらに、スポットのサイズは、固体スポット形成粒子のサイズを選択することによって直接制御可能である。したがって、肉眼で視覚的に認識できる範囲の境界である約40μmという小さい、非常に小さなドットを実現することができる。
【0020】
固体スポット形成粒子は、必ずしもエラストマースキンの別の目に見える知覚をもたらす必要はないことが容易に理解されよう。代わりに、固体スポット形成粒子は、例えば、改善された表面の濡れ効果、改善された摩耗特性、抗菌挙動、特定の接触特性等の特別な表面特性をエラストマースキンに与えることができる。しかし、これらの効果の1つまたは複数をもたらす固体スポット形成粒子の使用はまた、エラストマースキンの外観を変更する可能性が高い。
【0021】
当技術分野では、固体粒子を液体組成物に懸濁して、効果顔料の使用を通してエラストマースキンに強調された粗面(粒々状、シボ)構造を提供することがすでに知られている。特に、US-A-2017/239851は、典型的には溶媒ベースまたは水ベースの第1の液体組成物が、金属または真珠光沢顔料等の効果顔料が懸濁されている透明または半透明の媒体として機能し得ることを開示しており、この顔料は、典型的には、第1の液体組成物の10重量%~20重量%を形成する。この第1の液体組成物は、モールド内に設けられるコーティング層を形成する。その後、第2の液体スキン形成組成物、典型的にはポリウレタン組成物が、乾燥したコーティング層に対して成形される。しかしながら、得られるエラストマースキンは、スポットのある外観を達成するのではなく、むしろ粗面構造を強調する金属の外観を達成する。
【0022】
本発明の一実施形態において、液体スキン形成組成物は、固体スポット形成粒子が、生成されたエラストマースキンの不透明マトリックスに含まれるように、少なくとも1種の着色剤をさらに含む。
【0023】
マトリックスの不透明性により、エラストマースキンの局所的に変化する厚さが、効果顔料を含む透明または半透明の媒体を使用するUS-A-2017/239851の方法の場合のように、固体スポット形成粒子の視覚効果に影響を与えないことが保証される。マトリックスの不透明性と組み合わせた固体スポット形成粒子の均一な分散は、エラストマースキンの均一な厚さを達成することが事実上不可能である三次元形状のモールド表面上にスポットのあるエラストマースキンを生成するのに特に適している。
【0024】
本明細書で使用される場合、「不透明マトリックス」という用語は、1mmの平均厚さを有する材料の層として設けられた場合、ASTM G173-03(2012)標準スペクトルAM1.5グローバルに従い、垂直に入射する可視太陽光の放射エネルギーの最大5%、特に最大1%、具体的には最大0.1%、より具体的には最大0.01%を透過するマトリックス材料を説明するために使用される。換言すれば、層が最小の厚さの閾値を超えた途端に、それは視覚的に透明でも、視覚的に半透明でもない。したがって、最小厚さの閾値を下回る厚さの材料の層は、典型的には、厚さが非常に薄くなった場合に視覚的に半透明またはさらには視覚的に透明である。
【0025】
材料の層の平均厚さは、その体積を、この層でコーティングされたモールド表面の表面積(モールド表面に存在するテクスチャによって提供される追加の表面積を含まない)で割ることによって決定することができる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「視覚的に透明な」という用語は、可視スペクトル内で像形成光を透過することができる材料を説明するために使用される。媒体を透過した像の明瞭さは、透明度の尺度として使用され得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「視覚的に半透明」という用語は、1mmの平均厚さを有する層として設けられた場合、ASTM G173-03(2012)標準スペクトルAM1.5グローバルに従い、垂直に入射する可視太陽光の少なくとも5%を透過する材料を説明するために使用される。
【0028】
本発明の一実施形態において、液体スキン形成組成物は、いかなる溶媒も実質的に含まない。
【0029】
本明細書で使用される場合、「溶媒を実質的に含まない」という表現は、ポリマーマトリックス媒体の総重量に対する溶媒含有量が0.01重量%未満、特に0.005重量%未満、具体的には0.001重量%未満、より具体的には0.0005重量%未満、さらにより具体的には0.0001重量%未満であることを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「溶媒」という用語は、水、水性溶媒または非水性溶媒を含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、「水性溶媒」という用語は、溶媒が水を含むことを意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「非水性溶媒」という用語は、水を実質的に含まない有機溶媒を指す。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、着色剤は、顔料粒子を含み、顔料粒子の少なくとも90体積%は最大10μm、特に最大1μm、より具体的には最大0.5μmの最長寸法を有す。生成されたエラストマースキンは、好ましくは、0.01重量%~10重量%、より好ましくは0.05重量%~7重量%、最も好ましくは0.1重量%~5重量%の顔料粒子を含む。
【0034】
不透明マトリックスの着色量、すなわち着色剤の重量割合は、エラストマースキンの不透明度に影響を与える。具体的には、着色剤の量が多いほど、固体スポット形成粒子の可視性がより低くなる、なぜなら、最も薄い、例えば数ミクロンの厚さのマトリックス材料の層であっても、スポットのある外観が部分的に失われ得るように固体スポット形成粒子を視覚的に被覆するためである。さらに、液体スキン形成組成物はいかなる溶媒も実質的に含まないため、生成されたエラストマースキン中の着色剤の重量割合は、液体スキン形成組成物中の着色剤の重量割合とほぼ同一である。
【0035】
本発明の一実施形態において、ASTM E799-03(2015)に従って決定された、液滴のメジアン体積径は、少なくとも40μm、好ましくは少なくとも60μm、より好ましくは少なくとも70μm、最も好ましくは少なくとも80μmである。本発明の一実施形態において、固体スポット形成粒子の少なくとも50体積%、好ましくは少なくとも90体積%は、ASTM E799-03(2015)に従って決定された液滴のメジアン体積径の少なくとも半分の最長寸法を有する。
【0036】
両方の実施形態において、形成された液滴は、固体スポット形成粒子のサイズと比較して比較的小さく、これは、スプレー中に、空気に対する固体スポット形成粒子の相対運動によってもたらされる剪断力が、固体スポット形成粒子を液体スキン形成材料から分離し得ることを意味する。その結果として、固体スポット形成粒子は、衝突前に液滴からすでに実質的に分離され得、これは、液滴のスプレーの衝突の間、固体スポット形成粒子をモールド表面に向かって投射するに役立つ。
【0037】
本発明の一実施形態において、固体スポット形成粒子は、少なくとも50μm、好ましくは少なくとも70μm、より好ましくは少なくとも90μm、最も好ましくは少なくとも100μmの最長寸法を有する粒子を含む。本発明の一実施形態において、少なくとも40μmの最長寸法を有する固体スポット形成粒子の少なくとも75体積%、好ましくは少なくとも90体積%の最長寸法は、少なくとも60μmである。
【0038】
両方の実施形態において、固体スポット形成粒子が大きいほど、固体スポット形成粒子がスプレー内の液体スキン形成材料から分離される可能性が高くなり、固体スポット形成粒子はエラストマースキンの前面上の明確なスポットとしてより多く見られる。
【0039】
本発明の一実施形態において、生成されたエラストマースキンは、(エラストマースキンの総重量に対して)0.1重量%~5重量%、好ましくは0.2重量%~4重量%、より好ましくは0.3重量%~2重量%の固体スポット形成粒子を含む。
【0040】
エラストマースキン中の固体スポット形成粒子の割合が比較的低い場合でも、所望の視覚的にスポットのある外観を達成できることが見出された。
【0041】
本発明の一実施形態において、固体スポット形成粒子は、300μmを超える、特に240μmを超える最長寸法を有する粒子を実質的に含まない。換言すれば、固体スポット形成粒子の少なくとも90体積%、特に少なくとも95体積%、具体的には少なくとも99体積%が、300μmより小さい、特に240μmより小さい最長寸法を有する。
【0042】
固体スポット形成粒子が大きくなりすぎると、組成物をモールド表面にスプレーするために使用されるスプレーガンおよび/またはフィルタの目詰まりを引き起こす可能性があることが見出された。
【0043】
本発明の一実施形態において、液体スキン形成組成物をスプレーするステップは、液滴のスプレーをモールド表面上に通過させて、モールド表面の少なくとも一部の様々な場所へのスプレーの第1の通過によって、モールド表面上の様々な場所に液体スキン形成組成物の第1の層を堆積させることを含み、第1の層は、好ましくは連続層であり、スプレーの1回の通過によって形成される第1の層は、様々な場所で、10μm~1000μmの間の平均厚さを有し、この平均厚さは具体的には少なくとも50μm、より具体的には少なくとも100μmであり、この平均厚さは具体的には最大500μm、より具体的には最大300μmであり、この平均厚さは最も具体的には約200μmである。液体スキン形成組成物をモールド表面にスプレーする場合、それは通常、互いに重なり合うストリップとしてスプレーされる。重なり合う場所では、第1の通過によって生成された層の厚さのみを考慮する必要がある。
【0044】
本発明の一実施形態において、固体スポット形成粒子は、フレークから本質的になる。換言すれば、固体スポット形成粒子は、比較的薄い構造である。
【0045】
本発明による方法において、特にモールド表面の様々な場所のそれぞれに比較的薄い第1の層をスプレーする場合、固体スポット形成粒子は、それらの最大表面積側がモールド表面に実質的に平行になるように配向されているという意味で、モールド表面とある程度整列することが見出されたが、これは、固体スポット形成粒子がフレークである場合に特に有利である。フレークの利点は、フレークがエラストマースキン内で比較的小さな体積を占めるため、スキンの機械的特性に最小限の影響しか及ぼさないことである。
【0046】
本発明の一実施形態において、液体スキン形成組成物は、硬化性組成物、好ましくは硬化性ポリウレタンベース組成物、特に脂肪族ポリウレタンベース組成物である。
【0047】
本発明はまた、本発明による方法によって得られるエラストマースキンに関する。
【0048】
本発明のさらなる目的は、より小さなドットを備えた視覚的にスポットのある外観を有するエラストマースキンを提供することである。
【0049】
このさらなる目的は、可視前面を有するスプレー成形エラストマースキンにより達成され、エラストマースキンは、不透明マトリックスに埋め込まれた固体スポット形成粒子を含み、この固体スポット形成粒子は、可視前面が視覚的にスポットのある外観を有するように、40μm~500μmの間の最長寸法を有する。
【0050】
スポットのサイズは、固体スポット形成粒子のサイズを選択することによって直接制御可能である。したがって、肉眼で視覚的に認識できる範囲の境界である約40μmという小さい、非常に小さなドットを実現することができる。
【0051】
さらに、エラストマースキンはスプレー成形されるため、固体スポット形成粒子は、スプレーされる液体スキン形成組成物に直接含まれ得る。結果として、固体スポット形成粒子は、液体スキン形成組成物の中に均一に分布し、特に分散しており、これは、固体スポット形成粒子がまたエラストマースキンの前面全体により均一に現れることを意味する。
【0052】
液体スキン形成組成物は、硬化性ポリウレタンベース組成物等の熱硬化性および/または反応性材料であってもよいことが理解されよう。
【0053】
本発明は、特定の実施形態および添付の図を参照してさらに説明されるが、本発明は、それらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。様々な実施形態は、「好ましい」および/または「有利な」と呼ばれるが、本発明の範囲を限定するものとしてではなく、本発明を実施することができる例示的な方法として解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】実施例1に従ってテクスチャ加工モールド表面に対して生成されたエラストマーポリウレタンスキンの可視前面の写真である。
図2】実施例2に従って同じテクスチャ加工モールド表面に対して生成されたエラストマーポリウレタンスキンの可視前面の写真であり、これは、半分の量のスポット形成粒子の使用のみが実施例1と異なる。
図3図1の写真に対応する写真であり、画像特性は、実質的に固体スポット形成粒子のみを示すように変更されている。
図4図2の写真に対応する写真であり、画像特性は、実質的に固体スポット形成粒子のみを示すように変更されている。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の方法によって生成されたエラストマースキンは、固体スポット形成粒子が埋め込まれているマトリックス、特に、固体スポット形成粒子が埋め込まれているポリマーマトリックスを含む少なくとも一部を有する。前記一部の隣に、エラストマースキンは、とりわけ異なる組成、テクスチャまたは色等の異なる特性を有する1つまたは複数の別の部分を含み得る。
【0056】
「エラストマー」という用語は、スキンまたはスキン層が、DIN/EN/ISO527-3に従って測定される、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%の伸びを有することを示す。ASTM D790-03に従って測定される、スキンまたはスキン層の曲げ弾性率は、好ましくは100MPaより小さく、より好ましくは75MPaより小さく、最も好ましくは55MPaより小さく、さらには40MPaより小さい。一般に、スキンの全体的な密度は、300kg/mより大きく、好ましくは500kg/mより大きく、より好ましくは600kg/mより大きい。
【0057】
エラストマースキンは、液体スキン形成組成物をモールド表面にスプレーして、その上に液体スキン形成組成物の連続層を形成することによって形成される。モールド表面にスプレーされ得る適切な硬化性ポリウレタン組成物は、EP-A-0379246およびUS-B-9464156に開示されており、これらはそれぞれ、その全体が本明細書に組み込まれる。これらの組成物および液体スキン形成組成物は、一般に、非常に限られた量の溶媒、特に5重量%未満、より具体的には3重量%未満の溶媒しか含まず、好ましくはいかなる溶媒も実質的に含まない。
【0058】
好ましくは、光安定性エラストマースキンを提供するために、脂肪族ポリウレタン組成物が使用される。本発明の方法によって生成されるエラストマースキンは、エラストマースキンの最も外側の層、すなわち可視(目に見える)層であるため、これは有利である。
【0059】
有利には、ポリウレタン組成物は着色されており、これは、着色剤(例えば、染料等の液体着色剤、および/または二酸化チタン粒子もしくはカーボンブラック粒子等の顔料粒子)を使用することによって達成され得る。そのような着色剤は、好ましくはポリウレタン組成物のポリオールブレンドと混合される、なぜなら、ポリオールブレンドは典型的にはイソシアネートブレンドより高い粘度を有し、その高粘度が顔料粒子を懸濁状態に保つことに寄与するためである。着色ポリウレタン組成物の使用は、これが、上記のように、三次元形状のモールド表面に特に適している不透明なエラストマースキン材料を典型的にもたらすため有益である。エラストマースキンの不透明度は、典型的には、着色剤の重量割合と層の厚さに依存する。
【0060】
0.01%~10重量%、好ましくは0.2重量%~5重量%、より好ましくは0.3重量%~2重量%の顔料を含む生成されたエラストマースキンと組み合わせて、0.01mm~3mmの間の平均厚さを有し、その平均厚さが特に少なくとも0.1mm、より具体的には少なくとも0.3mm、最も具体的には少なくとも0.7mmであり、その平均厚さが特に最大2mm、より具体的には最大1.5mmであり、その平均厚さが、最も具体的には、約1mmであるエラストマースキンが、不透明なエラストマースキンをもたらすことが見出された。
【0061】
これらの組成物は、例えば、その全体が本明細書に組み込まれるEP-A-0303305、EP-A-0389014、US-B-8262002、およびUS-B-8318259に記載されている技術によってスプレーされ得る。このようにして、液滴は、好ましくは、ASTM E799-03(2015)に従って決定される、少なくとも40μm、好ましくは少なくとも60μm、より好ましくは少なくとも70μm、最も好ましくは少なくとも80μm、および最大500μm、好ましくは最大300μm、より好ましくは最大200μm、最も好ましくは最大150μmのメジアン体積径を有する。
【0062】
エラストマースキンは、エラストマースキンの厚さを増加させるために、液体スキン形成組成物を後続の層に複数回連続して適用することによって形成され得ることを理解されたい。特に三次元形状のモールド表面では、重力により液体スキン形成組成物が流動し始めるため、エラストマースキンの必要な厚さを単層で達成できるとは限らない。
【0063】
着色剤が顔料粒子を含む場合、顔料粒子の少なくとも90体積%が、最大10μm、特に最大1μm、さらに具体的には最大0.1μmの最長寸法を有すると有利である。このように、顔料粒子は、液滴のスプレーと比較して小さく、これは、顔料粒子が液滴中に懸濁され、したがって、以下に説明する固体スポット形成粒子とは反対に、スプレーしている間にモールド表面に向けて投射されないことを意味し、この投射がエラストマースキンの不透明度を局所的に変化させる。
【0064】
既知の組成物は、その中に固体スポット形成粒子、すなわち少なくとも40μmの最長寸法を有する粒子を含めることによって調整されている。スポット形成粒子として様々な種類の粒子が使用され得る。例えば、効果顔料がスポット形成粒子として使用され得る。効果顔料という用語は、金属顔料と、真珠様または真珠光沢顔料との両方を含む。金属顔料は光に対して不透明であり、入射光を反射する。それらは、例えば、アルミニウム、チタンまたは銅からなってもよい。真珠光沢または真珠様顔料は、天然真珠の効果を模倣し、スペクトルの可視領域内で透明な薄い小板(すなわちフレーク)で構成される。
【0065】
効果顔料は、多くの場合、小板状の粒子(すなわちフレーク)に基づいている。光学効果は光の多重反射および透過の結果であるため、粒子が見られる媒体内で整列する粒子を提供し、望ましい効果を最適化することが望ましい。効果顔料、特に雲母をベースとする顔料は、他の理由の中でもとりわけ、着色金属効果を達成するために、自動車のトップコートに長い間使用されてきた。その金属効果は、見る角度が変わると、明るい色と暗い色との間で変化するフリップフロップ性によって特徴付けることができる。マイカ顔料の場合、そのフリップフロップ性はマイカの反射色から暗い色となる。
【0066】
着色粒子を固体スポット形成粒子として使用することも可能である。その場合、これらの着色粒子は、エラストマースキンの不透明マトリックスに対して異なるように着色される。特に、着色粒子は、1976年にCIE(Commission Internationale de I’Eclairage)によって定義されたようなCIELAB色空間で、エラストマースキンの不透明マトリックスとは異なる色の値を有する。CIE L(CIELAB)は、国際照明委員会によって指定された色空間である。L色空間は、知覚可能なすべての色を含み、L色空間の最も重要な属性の1つは、デバイス独立性であり、これは、色が作成の性質に依存しないことを意味する。CIELABの3つの座標は、色の明るさ(L=0は黒色を生成し、L=100は散乱白色を示す(反射白色はより高くなり得る))、赤色、マゼンタおよび緑色の間の位置(a、負の値は緑色を示し、正の値はマゼンタを示す)、ならびに黄色および青色の間の位置(b、負の値は青色を示し、正の値は黄色を示す)を表す。
【0067】
固体スポット形成粒子はまた、ガラス、ポリエステルまたはアルミニウム光輝性粒子等の光輝性粒子であってもよい。光輝性粒子は様々な角度で光を反射し、表面をキラキラと輝かせる。
【0068】
固体スポット形成粒子は、ガラスビーズ(充填および中空の両方)、粉砕熱可塑性材料、金属フレーク等の他のタイプの材料によってさらに形成され得ることが容易に理解されよう。さらに、様々な異なるタイプの固体スポット形成粒子が単一のエラストマースキンに組み合わされてもよい。しかしながら、視覚的にスポットのある表面を有するエラストマースキンを得るためには、これらの固体スポット形成粒子が肉眼で見えること、およびそれらが視覚的に識別可能となるようにエラストマースキンの不透明マトリックスに対して異なるように着色されることが不可欠である。
【0069】
さらに、固体スポット形成粒子は、球状粒子からフレークまで、例えば薄い六角柱までの範囲の様々な形状を有し得る。フレーク粒子は、球状粒子と比較した場合、より高い表面対体積比を有するため有利であることが見出された。特に、エラストマースキンの構造的完全性をできるだけ損なわないようにするためには、固体スポット形成粒子の体積は、可能な限り最大の可視性を提供しながら、可能な限り小さくするべきである。いくつかの実施形態において、固体スポット形成粒子は、それぞれのスポット形成粒子の最長寸法に等しい直径を有する球状粒子の最大45%、好ましくは最大35%、より好ましくは最大30%の体積を有し、一方、固体スポット形成粒子の表面積は、それぞれのスポット形成粒子の最長寸法に等しい直径を有する球状粒子の少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%である。これは、例えば、一辺の長さが60μm、高さが30μmの正六角柱によって実現され得る。
【0070】
フレークを固体スポット形成粒子として使用することは、エラストマースキンが複数のスプレー通過によってスプレーされる場合に特に有利であり、各スプレー通過は、好ましくは、モールド表面の所望の部分に連続層を形成する。エラストマースキンがモールド表面に生成されるモールド表面の様々な場所で、モールド表面のその場所を通過する第1のスプレーによって最初にモールド表面のそれぞれの場所に形成されるスキン層は、典型的には、10μm~1000μmの間の平均厚さを有し、その平均厚さは特に少なくとも50μm、より具体的には少なくとも100μmであり、その平均厚さは特に最大500μm、より具体的には最大300μmであり、その平均厚さは最も具体的には約200μmである。そのような薄い層は、フレークが、それらの最大表面積側がモールド表面に略平行になるように配向されるという意味で、フレークがモールド表面と整列するのに役立つことが見出された。
【0071】
顔料粒子に関しては、固体スポット形成粒子がポリウレタン組成物のポリオールブレンドと混合されると有利である、なぜなら、これは、ポリオールブレンドが典型的にはイソシアネートブレンドより高い粘度を有し、その高粘度が固体スポット形成粒子を懸濁状態に保つことに寄与するためである。
【0072】
視覚的にスポットの存在する面を有するエラストマースキンを得るためには、固体スポット形成粒子は、少なくとも40μmの最長寸法を有さなければならないことが見出された。固体スポット形成粒子の最長寸法は、ISO13322-1:2014に従って光学顕微鏡で測定されるフェレ径、特に最大フェレ径である。
【0073】
一般に、同じオーダーの大きさを有する固体スポット形成粒子および液滴の混合物と、固体スポット形成粒子が液滴よりはるかに小さく、したがって液滴中に懸濁している固体スポット形成粒子および液滴の混合物との間には、物理的挙動に差が存在する。特に、固体スポット形成粒子および液滴が同程度のサイズである場合、液滴がモールド表面に衝突すると、液滴は多数の小さな液滴に分解されるか、またはより大きな表面積にわたって流出し、その結果、固体スポット形成粒子がモールド表面により近くに、したがってエラストマースキンの可視表面のより近くに堆積する。さらに、衝突時の液滴の分解はまた、スポット形成粒子を解放し、この粒子はしたがって、分解した液滴と比較して非常に大きい前方への運動量を維持すると考えられる。これは、生成されたエラストマースキンが背面よりも前面に、より高濃度のスポットを有するという観察結果の考えられる説明のようである。しかし、固体スポット形成粒子が液滴中に懸濁している場合、液滴の分解は懸濁粒子をより小さなサイズの液滴に懸濁させるだけであり、これは、液滴および懸濁した固体スポット形成粒子の前方運動量が同様であることを意味する。
【0074】
結果として、最長寸法が典型的な液滴サイズと同じオーダーの大きさ、すなわち少なくとも40μmの最長寸法であるように、この最長寸法に基づいて固体スポット形成粒子を選択することにより、液体スキン形成組成物のスプレー中に、固体スポット形成粒子は分解した液滴と比較して非常に大きい前方運動量を有し、それらはモールド表面に向かって前方に投射される。固体スポット形成粒子の前方投射は、エラストマースキンの可視表面に位置する固体スポット形成粒子の割合を増加させ、その可視表面はモールドの表面に対応する。固体スポット形成粒子はまた、これらが肉眼で見ることができるほど長い最長寸法を有するように選択されるため、エラストマースキンの可視表面での固体スポット形成粒子も肉眼で視覚的に知覚可能であり、これは、固体スポット形成粒子が、硬化した液滴に囲まれたスポットとして現れることを意味する。
【0075】
有利には、固体スポット形成粒子の少なくとも50体積%、好ましくは少なくとも90体積%は、液滴のメジアン体積径の少なくとも半分の最長寸法を有する。上記のように、形成された液滴は、典型的には固体スポット形成粒子を完全に封入できないため、これは、液滴のスプレーの衝突中にモールド表面のより近くに固体スポット形成粒子を堆積させるのに役立つ。
【0076】
人間の目の可視範囲は40μm程度であることから、少なくとも50μm、好ましくは少なくとも70μm、より好ましくは少なくとも90μm、最も好ましくは少なくとも100μmの最長寸法を有する粒子を含む固体スポット形成粒子は、スポットの視認性を向上させるため、有益である。同様の効果は、固体スポット形成粒子の少なくとも75体積%、好ましくは少なくとも90体積%の最長寸法が少なくとも60μmであるように、固体スポット形成粒子を選択することによって達成される。
【0077】
しかしながら、モールド表面に液体スキン形成組成物をスプレーするために使用されるスプレーガンの技術的制限により、固体スポット形成粒子がスプレーガンの狭いチャネルを詰まらせる可能性があるため、固体スポット形成粒子は大きすぎるサイズを有するべきではない。これは、最長寸法が300μmを超える、好ましくは240μmを超える、より好ましくは180μmを超える、最も好ましくは150μmを超える粒子を実質的に含まない固体スポット形成粒子を選択することによって回避されることが見出された。これはまた、大きな固体スポット形成粒子の割合を減少させることによって、特に固体スポット形成粒子の最大25体積%、好ましくは最大10体積%、より好ましくは最大5体積%の最長寸法が300μmを超える場合に回避される。これはまた、固体スポット形成粒子の少なくとも50体積%、好ましくは少なくとも90体積%が、液滴のスプレーのメジアン体積径の最大で3倍の最長寸法を有するように固体スポット形成粒子を選択することによって回避され得る。
【0078】
スポットが多すぎないようにするため、すなわち、固体スポット形成粒子が、エラストマースキンの、過度に高い割合の可視領域を形成することを回避するために、固体スポット形成粒子の限られた重量割合のみが含まれるべきであることが見出された。特に、生成されたエラストマースキン、したがって好ましくは実質的に溶媒を含まない液体スキン形成組成物もまた、0.1重量%~10重量%の間、好ましくは0.1重量%~5重量%の間、より好ましくは0.2重量%~4重量%の間、有利には0.3重量%~2重量%の間の固体スポット形成粒子を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、エラストマースキンは、ザラザラした、すなわちテクスチャが提供されている可視前面を有し得ることが理解されるであろう。このテクスチャは、例えば、動物様テクスチャ、特に革のテクスチャ、または点描構造、幾何学的テクスチャ等であってもよい。好ましくは、モールド表面は、エラストマースキンの前面の可視光沢のある(輝いた)外観を低減するためにのみ粗面加工されている。換言すれば、粗面構造を使用して、マットな外観を有する色が形成される。DIN EN ISO4287:1998に従って測定された表面粗さ深さ(Rz)として決定される、テクスチャ表面の粗面深さは、一般に5~250μmの間に含まれる。この粗面深さは、特に200μmより小さく、好ましくは175μmより小さく、より好ましくは150μmより小さく、最も好ましくは125μmより小さく、および/またはこの粗面深さは特に15μmより大きく、好ましくは30μmより大きく、より好ましくは40μmより大きく、最も好ましくは50μmより大きい。
【0080】
そのような粗面加工表面テクスチャは、本明細書にその全体が組み込まれているUS-A-2017/239851に記載されているように、粗面加工されたモールド表面を利用することによって達成され得る。このモールド表面の粗面は、スキンの可視前面の粗面の元になるテクスチャである。モールド表面もまた、特に、DIN EN ISO4287:1998に従って測定された5~250μmの表面粗さ深さ(Rz)として決定される粗面深さを有する。この粗面深さは、好ましくは200μmより小さく、より好ましくは175μmより小さく、最も好ましくは150μmより小さく、さらにより好ましくは125μmより小さい。
【実施例
【0081】
一連のエラストマースキン試料を本発明に従って生成した。具体的には、それぞれ異なる液体スキン形成組成物、特にポリウレタン組成物を使用して、4つのエラストマースキンサンプルを調製した。各液体スキン形成組成物は、成分Aとして、脂肪族ポリイソシアネートを含み、成分Bとして、ポリオール混合物、固体スポット形成粒子(すなわちフレーク)、および顔料粒子の形態の着色剤を含む。着色剤および固体スポット形成粒子の両方がポリオール混合物に添加される。4種のポリウレタン組成物の液体スキン形成組成物を表1に示す。実施例1、2、および3の黒色フレークは、最長寸法が136μmで厚さが38μmの六角柱形状のポリエステルフレークである。実施例4の白色フレークは、最長寸法が101μmで厚さが50μmの六角柱形状のポリエステルフレークである。液体組成物は、0.54に等しい成分A/成分Bの比率で、14g/秒の出力速度で粗面加工されたモールド表面にスプレーされ、その後エラストマースキンが離型される。3つの連続した層をスプレーすることにより、最終的なエラストマースキンは0.7mmの平均厚さを有する。
【0082】
【0083】
実施例1、2、および3のエラストマースキンは、黒いスポットのあるベージュ色の表面を示す。実施例2のエラストマースキンは、実施例1と比較して、フレークの濃度が低いため、より少ないスポットの効果を示す。実施例3のエラストマースキンでは、フレークおよび着色顔料の投入量の比率が最も高いため、黒いスポット効果が最も顕著に見られ、これは、ポリウレタンの非常に薄い層で被覆されたフレークが依然として見え、したがってスポット効果が増加することを意味する。実施例4のエラストマースキンは、白いスポットのある黒色の表面を示す。エラストマースキン表面の顕微鏡分析は、スキン表面と整列している白い六角形のフレークの対照的な色を示している。実施例1で生成されたスキンの写真を図1に示し、実施例2で生成されたスキンの写真を図2に示す。図3および図4は、それぞれ図1図2の写真を示しており、図3および図4に示される写真の画像特性は、テクスチャの影響を排除し、それによって固体スポット形成粒子のみを示すように調整されている。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2020-11-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールド表面に対して生成された可視前面を有するエラストマースキンを生成するための方法であって、前記可視前面は、視覚的にスポットのある外観を有し、前記方法が、
液体スキン形成組成物を提供するステップと;
液滴のスプレーの形態で前記液体スキン形成組成物を前記モールド表面の少なくとも一部にスプレーするステップと;
前記液体スキン形成組成物を硬化させるステップと;
生成されたエラストマースキンを前記モールド表面から取り外すステップと;
を含む、方法において、
前記液体スキン形成組成物は、40μm~500μmの最長寸法を有する固体スポット形成粒子を0.1重量%~5重量%含み、
前記固体スポット形成粒子の少なくとも50体積%は、ASTM E799-03(2015)に従って決定された前記液滴のメジアン体積径の少なくとも半分の最長寸法を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記液体スキン形成組成物は、前記固体スポット形成粒子が、前記生成されたエラストマースキンの不透明マトリックスに含まれるように、少なくとも1種の着色剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記着色剤は、少なくとも90体積%が、最大10μm、特に最大1μm、より具体的には最大0.5μmの最長寸法を有する顔料粒子を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記生成されたエラストマースキンは、0.01重量%~10重量%、好ましくは0.05重量%~7重量%、より好ましくは0.1重量%~5重量%の前記顔料粒子を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記固体スポット形成粒子は、前記不透明マトリックスとは異なる色であり、前記不透明マトリックスは、特に、CIELAB色空間において、前記固体スポット形成粒子とは異なる色値を有する、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ASTM E799-03(2015)に従って決定された前記液滴のメジアン体積径は、少なくとも40μm、好ましくは少なくとも60μm、より好ましくは少なくとも70μm、最も好ましくは少なくとも80μmである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記固体スポット形成粒子の少なくとも90体積%は、ASTM E799-03(2015)に従って決定された前記液滴のメジアン体積径の少なくとも半分の最長寸法を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記固体スポット形成粒子は、少なくとも50μm、好ましくは少なくとも70μm、より好ましくは少なくとも90μm、最も好ましくは少なくとも100μmの最長寸法を有する粒子を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも40μmの最長寸法を有する前記固体スポット形成粒子の少なくとも75体積%、好ましくは少なくとも90体積%の最長寸法が、少なくとも60μmである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記生成されたエラストマースキンは、0.2重量%~4重量%、好ましくは0.3重量%~2重量%の、少なくとも40μmに等しい最長寸法を有する前記固体スポット形成粒子を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記固体スポット形成粒子は、300μmを超える、特に240μmを超える最長寸法を有する粒子を実質的に含まない、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記液体スキン形成組成物をスプレーするステップは、液滴の前記スプレーを前記モールド表面上に通過させて、前記モールド表面の前記少なくとも一部の様々な場所への前記スプレーの第1の通過によって、前記モールド表面上の前記様々な場所に前記液体スキン形成組成物の第1の層を堆積させることを含み、前記第1の層は、好ましくは連続層であり、前記スプレーの1回の通過によって形成される前記第1の層は、前記様々な場所で、10μm~1000μmの間の平均厚さを有し、この平均厚さは具体的には少なくとも50μm、より具体的には少なくとも100μmであり、この平均厚さは具体的には最大500μm、より具体的には最大300μmであり、この平均厚さは最も具体的には約200μmである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記固体スポット形成粒子は、フレークから本質的になる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記液体スキン形成組成物は、硬化性組成物、好ましくは硬化性ポリウレタンベース組成物、特に脂肪族ポリウレタンベース組成物である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
可視前面を有し、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法によって得られるスプレー成形エラストマースキンであって、前記エラストマースキンは、不透明マトリックスに埋め込まれた固体スポット形成粒子を含み、前記固体スポット形成粒子は、前記可視前面が視覚的にスポットのある外観を有するように、40μm~500μmの間の最長寸法を有する、スプレー成形エラストマースキン。
【国際調査報告】