(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】抗-B7H3抗体-エキサテカンアナログコンジュゲート及びその医薬用途
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20220131BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20220131BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220131BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220131BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220131BHJP
C07K 5/10 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K31/4745
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 T
A61K47/68
C07K5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021517606
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(85)【翻訳文提出日】2021-05-24
(86)【国際出願番号】 CN2019107852
(87)【国際公開番号】W WO2020063673
(87)【国際公開日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】201811156667.5
(32)【優先日】2018-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510166892
【氏名又は名称】ジエンス ヘンルイ メデイシンカンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI MEDICINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】508209602
【氏名又は名称】シャンハイ ヘンルイ ファーマスーティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214259
【氏名又は名称】山本 睦也
(72)【発明者】
【氏名】イン ファ
(72)【発明者】
【氏名】チャン リン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ティン
(72)【発明者】
【氏名】チャン レイ
(72)【発明者】
【氏名】シイ ジェンイェン
(72)【発明者】
【氏名】タオ ウェイカン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZB27
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA13
4H045BA50
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA10
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、抗-B7H3抗体-エキサテカンアナログコンジュゲート、その調製方法、及びその抗腫瘍医薬用途を開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物:
【化1】
ここで:
Yは、-O-(CR
aR
b)
m-CR
1R
2-C(O)-, -O-CR
1R
2-(CR
aR
b)
m-, -O-CR
1R
2-, -NH-(CR
aR
b)
m-CR
1R
2-C(O)- 及び -S-(CR
aR
b)
m-CR
1R
2-C(O)- からなる群より選択される;
R
a及びR
bは、同一若しくは異なる、及びそれぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、重水素化アルキル、アルコキシ、水酸基、アミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル及びヘテロシクリルからなる群より選択される;
又は、R
a及びR
bは、それらが結合している炭素原子と一緒に、シクロアルキル若しくはヘテロシクリルを形成する;
R
1は、ハロゲン、ハロアルキル、重水素化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択される;
R
2は、水素原子、ハロゲン、ハロアルキル、重水素化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択される;
又は、R
1及びR
2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、シクロアルキル若しくはヘテロシクリルを形成する;
又は、R
a及びR
2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、シクロアルキル若しくはヘテロシクリルを形成する;
mは、0 から4の整数である;
nは、1から10である、これは小数若しくは整数である;
Lは、リンカー・ユニットである;
Pcは、抗-B7H3抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【請求項2】
請求項1に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、ここで、前記抗-B7H3抗体又はその抗原結合フラグメントは、以下を含む:
配列番号(SEQ ID NO):8, 9及び10のアミノ酸配列でそれぞれ表される重鎖HCDR1、HCDR2及びHCDR3、又は配列番号(SEQ ID NO):8, 9及び10のアミノ酸配列でそれぞれ表される重鎖HCDR1、HCDR2及びHCDR3と、3、2若しくは1アミノ酸の相違を有するHCDRバリアント;並びに、
配列番号(SEQ ID NO):11, 12及び13のアミノ酸配列でそれぞれ表される軽鎖LCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は配列番号(SEQ ID NO):11, 12及び13のアミノ酸配列でそれぞれ表される軽鎖LCDR1、LCDR2及びLCDR3と、3、2若しくは1アミノ酸の相違を有するLCDRバリアント。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、ここで、前記抗-B7H3抗体若しくはその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域上の軽鎖FR領域は、ヒト生殖系列軽鎖配列若しくはその変異配列に由来する、及び/又は重鎖可変領域上の重鎖FR領域は、ヒト生殖系列重鎖配列若しくはその変異配列に由来する。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、ここで、前記抗-B7H3抗体又はその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含む:
ここで、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号(SEQ ID NO):6によって表される、若しくは配列番号(SEQ ID NO):6と少なくとも95%の配列同一性を有する、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号(SEQ ID NO):7によって表される、若しくは配列番号(SEQ ID NO):7と少なくとも95%の配列同一性を有する。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、ここで、前記抗-B7H3抗体又はその抗原結合フラグメントは、抗体定常領域を含む;前記抗体定常領域の重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4に由来する、又はそれらと少なくとも95%の配列同一性を有する、前記抗体定常領域の軽鎖定常領域は、ヒト抗体のκ、λ鎖に由来する、又はそれらと少なくとも95%の配列同一性を有する;並びに好ましくは、前記重鎖定常領域のアミノ酸配列は、ヒトIgG1に由来する、又はそれと少なくとも95%の配列同一性を有する。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、ここで、Pcは全長抗体である、ここで、前記全長抗体は、以下からなる群より選択される:
配列番号(SEQ ID NO):14で表される重鎖配列、及び配列番号(SEQ ID NO):15で表される軽鎖配列からなるh1702抗体、並びに、
配列番号(SEQ ID NO):14で表される重鎖配列、及び配列番号(SEQ ID NO):16で表される軽鎖配列からなるh1702DS抗体。
【請求項7】
請求項1から5の何れか一項に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、ここで、前記抗原結合フラグメントは、Fab、Fab'、F(ab')
2、単鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(二重抗体)、ジスルフィド安定化V領域(dsFv)、及びCDRを含むペプチドの抗原結合フラグメントからなる群より選択される。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、ここで、nは2から8である、好ましくは5から9である、及び、nは小数又は整数である。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、
ここで:
Yは、-O-(CR
aR
b)
m-CR
1R
2-C(O)-である;
R
a及びR
bは、同一若しくは異なる、及びそれぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン、及びアルキルからなる群より選択される;
R
1は、ハロアルキル若しくはC
3-6シクロアルキルである;
R
2は、水素原子、ハロアルキル若しくはC
3-6シクロアルキルからなる群より選択される;
又は、R
1及びR
2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、C
3-6シクロアルキルを形成する;
mは、0又は1である。
【請求項10】
請求項1から9の何れか一項に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、ここで、Yは以下からなる群より選択される:
【化2】
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、ここで、YのO末端はリンカー・ユニットLに結合している。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、ここで、前記リンカー・ユニット-L-は、-L
1-L
2 -L
3 -L
4 -である、
L
1は、
【化3】
である、及びs
1は、2から8の整数である;
L
2は、化学結合である;
L
3は、テトラペプチド残基である;
L
4は、-NR
5(CR
6R
7)t-である、R
5、R
6及びR
7は、同一若しくは異なる、及びそれぞれ独立して、水素原子及びアルキルからなる群より選択される、並びにtは1又は2である。
【請求項13】
請求項1から12の何れか一項に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、ここで、前記リンカー・ユニット-L-のL
1末端は、Pcに結合している、及び前記リンカー・ユニット-L-のL
4末端は、Yに結合している。
【請求項14】
請求項1から13の何れか一項に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、ここで、L
3のテトラペプチド残基は、フェニルアラニン、グリシン、バリン、リジン、シトルリン、セリン、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群より選択される2種以上のアミノ酸からなるアミノ酸残基である、並びに好ましくは、GGFGというテトラペプチド残基である。
【請求項15】
請求項1から14の何れか一項に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、ここで、-L-Y-は、以下のような構造である:
【化4】
L
2は、化学結合である;
L
3は、GGFGというテトラペプチド残基である;
R
1は、ハロアルキル若しくはC
3-6シクロアルキルである;
R
2は、水素原子、ハロアルキル若しくはC
3-6シクロアルキルからなる群より選択される;
又は、R
1及びR
2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、C
3-6シクロアルキルを形成する;
R
5、R
6及びR
7は、同一若しくは異なる、及びそれぞれ独立して、水素原子及びアルキルからなる群より選択される;
s
1 は、2から8の整数である;
mは、0から4の整数である。
【請求項16】
請求項1から15の何れか一項に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、ここで、-L-Y-は、以下からなる群より選択される:
【化5-1】
【化5-2】
【請求項17】
請求項1から11の何れか一項に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、これは、以下の式(Pc-L
a-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物である:
【化6】
ここで:
Wは、C
1-8アルキル、C
1-8アルキル-シクロアルキル及び1~8個の原子を含む線状ヘテロアルキルからなる群より選択される、前記ヘテロアルキルは、N、O及びSからなる群より選択される1~3個のヘテロ原子を含む、ここで、前記C
1-8アルキル、シクロアルキル及び線状ヘテロアルキルは、ハロゲン、水酸基、シアノ、アミノ、アルキル、クロロアルキル、重水素化アルキル、アルコキシ及びシクロアルキルからなる群より選択される1個以上の置換基により、それぞれ独立して、任意選択的にさらに置換される;
L
2は、-NR
4(CH
2CH
2O)
p1CH
2CH
2C(O)-, -NR
4(CH
2CH
2O)
p1CH
2C(O)-, -S(CH
2)
p1C(O)-及び化学結合からなる群より選択される、並びにp
1は、1から20の整数である;
L
3は、2から7アミノ酸からなるペプチド残基である、前記アミノ酸は置換されていても置換されていなくてもよい、置換されている場合、その置換基は任意の利用可能な結合位置で置換されていてもよい、前記置換基は、ハロゲン、水酸基、シアノ、アミノ、アルキル、クロロアルキル、重水素化アルキル、アルコキシ及びシクロアルキルからなる群より独立して選択される1種以上の基である;
R
1は、ハロゲン、ハロアルキル、重水素化アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択される;
R
2は、水素原子、ハロゲン、ハロアルキル、重水素化アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択される;
又は、R
1及びR
2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、シクロアルキル若しくはヘテロシクリルを形成する;
R
4及びR
5は、同一若しくは異なる、及びそれぞれ独立して、水素原子、アルキル、ハロアルキル、重水素化アルキル、及びヒドロキシアルキルからなる群より選択される;
R
6及びR
7は、同一若しくは異なる、及びそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、重水素化アルキル、及びヒドロキシアルキルからなる群より選択される;
mは、0から4の整数である;
nは、1から10である、これは小数又は整数である;
Pcは、抗-B7H3抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【請求項18】
請求項17に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、これは、以下の式(Pc-L
b-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物である:
【化7】
ここで:
s
1は、2から8の整数である;
R
1、R
2、R
5~R
7、m及びnは、請求項17に定義されている通りである。
【請求項19】
請求項1から18の何れか一項に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、これは、以下からなる群より選択される:
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
ここで、Pc及びnは請求項1に定義されている通りである。
【請求項20】
請求項1から19の何れか一項に記載の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、これは、以下からなる群より選択される:
【化9-1】
【化9-2】
ここで、nは請求項1に定義されている通りである。
【請求項21】
式(Pc-L
a-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を調製するための方法、これは以下のステップからなる:
【化10】
Pcを式(L
a-Y-Dr)の化合物と還元後にカップリングして、式(Pc-L
a-Y-Dr)の化合物を得る;
ここで:
Pcは、抗-B7H3抗体又はその抗原結合フラグメントである;
W、L
2、L
3、R
1、R
2、R
5~R
7、m及びnは、請求項17に定義されている通りである。
【請求項22】
請求項21に記載の方法、ここで、式L
a-Y-Drの前記化合物は、式L
b-Y-Drの化合物である:
【化11】
若しくはその互変異性体、メソマー(mesomer)、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー、又はそれらの混合物、若しくはそれらの薬学的に許容可能な塩である、
ここで、
R
1、R
2、R
5 ~R
7、s
1及びmは、請求項18に定義されている通りである。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の方法、ここで、式(L
a-Y-Dr)の前記化合物、又は式(L
b-Y-Dr)の前記化合物は、以下からなる群より選択される:
【化12-1】
【化12-2】
【請求項24】
請求項1から20の何れか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、及び1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤又は担体を含む、医薬組成物。
【請求項25】
B7H3を介した疾患又は障害を治療するための薬剤の調製における、請求項1から20の何れか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート、若しくはそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物の、又は請求項24に記載の医薬組成物の、使用。
【請求項26】
請求項25に記載の使用、ここで、前記B7H3を介した疾患又は障害は、B7H3の高発現を伴うがんである。
【請求項27】
腫瘍を治療する又は予防するための薬剤の調製における、請求項1から20の何れか一項に記載のリガンド-薬物コンジュゲート、若しくはそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物の、又は請求項24に記載の医薬組成物の、使用。
【請求項28】
がんを治療する又は予防するための薬剤の調製における、請求項1から20の何れか一項に記載のリガンド-薬物コンジュゲート、若しくはそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物の、又は請求項24に記載の医薬組成物の、使用、ここで、前記がんは、好ましくは乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、肺がん、子宮がん(uterine cancer)、前立腺がん、腎臓がん(kidney cancer)、尿道がん、膀胱がん、肝臓がん、胃がん(stomach cancer)、子宮内膜がん、唾液腺がん、食道がん(esophageal cancer)、メラノーマ、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫、咽頭がん、肺がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、白血病、骨がん、皮膚がん、甲状腺がん、膵臓がん及びリンパ腫からなる群より選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗-B7H3抗体-エキサテカンアナログコンジュゲート、その調製方法、それを含む医薬組成物、及びB7H3を介した疾患又は障害を治療するための薬剤の調製におけるその使用に関し、特に、抗がん剤の調製におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
T細胞性免疫応答は、生物の抗腫瘍プロセスにおいて非常に重要な役割を果たす。ただし、T細胞の活性化及び増殖には、TCRによって認識される抗原シグナルだけでなく、共刺激分子によって提供される第二のシグナルも必要である。B7ファミリーの分子は、共刺激分子免疫グロブリンスーパーファミリーに属している。益々多くの研究が、このファミリーの分子が生物における正常な免疫機能及び病理学的状態において重要な調節的役割を果たすことを示している。
【0003】
B7H3はB7ファミリーの一員であって、I型膜貫通タンパク質であり、アミノ末端にあるシグナルペプチド、細胞外免疫グロブリン様可変領域(IgV)及び定常領域(IgC)、膜貫通領域、並びに45個のアミノ酸を有する細胞質尾部領域、を含む(Tissue Antigens. 2007 August; 70(2): 96-104)。B7H3には、B7H3a及びB7H3bの2種類のスプライシングバリアントがある。B7H3aの細胞外ドメインはIgV-IgCの2つの免疫グロブリンドメイン(2IgB7H3としても知られている)からなり、B7H3bの細胞外ドメインはIgV-IgC-IgV-IgCの4つの免疫グロブリンドメイン(4IgB7H3としても知られている)からなる。
【0004】
B7H3タンパク質は、正常組織や細胞では発現していない又は発現が不十分であるが、種々な腫瘍組織で高度に発現し、腫瘍の進行並びに患者の生存率及び予後と密接に相関している。B7H3は多くの種類のがん、特に非小細胞肺がん、腎がん(renal Cancer)、尿路上皮がん、結腸直腸がん、前立腺がん、多形性神経膠芽細胞腫(glioblastoma multiforme)、卵巣がん及び膵臓がんで過剰発現することが臨床的に報告されている(Lung Cancer. 2009 November; 66(2): 245-249; Clin Cancer Res. 2008 Aug. 15; 14(16): 5150-5157)。また、前立腺がんにおいては、B7H3の発現レベルが臨床病理学的悪性度(腫瘍体積、前立腺外浸潤又はグリソンスコアなど)と正の相関があり、がんの進行にも関連することが文献にて報告されている(Cancer Res. 2007 Aug. 15; 67(16):7893-7900)。同様に、多形性膠芽腫(glioblastoma multiforme)ではB7H3の発現は無再発生存期間と逆相関し、膵臓がんではB7H3の発現はリンパ節転移及び病理学的進行と関連している。したがって、B7H3は新しい腫瘍マーカー及び潜在的な治療標的と考えられている。
【0005】
現在、前臨床試験のB7H3標的に特異的な治療戦略が存在する。例えば、マウスB7H3を標的とする抗体は、腫瘍内の浸潤性CD8陽性T細胞を増強し、腫瘍の増殖を抑制する(Mod Pathol. 2010 August; 23(8): 1104-1112)。さらに、国際公開第WO2008/066691号は、B7H3バリアントであるB7-H3aを認識する抗体が、生体内で腺がんに対して抗腫瘍効果を発揮したことを示している。臨床研究では、放射性I131と結合したマウスB7H3抗体の薬剤が、患者における神経芽細胞腫の増殖を有意に抑制した[J Neufooocol 97(3):409-18 (2010)]。しかし、現在研究中のプロジェクトは、マウス抗体のヒト化によって操作されたヒト化抗体である。免疫化時のヒト化抗体は免疫原性のリスクがより高く、これはヒトへの適用において好ましくない要因である。
【0006】
ファージディスプレイ技術は、ファージ粒子の表面上に外因性タンパク質を発現させるために、外因性タンパク質又はポリペプチドをファージコートタンパク質と融合させることを指す。ファージ抗体ライブラリは、ファージディスプレイ技術、PCR増幅技術、及びタンパク質発現技術を総合的な技術的手段で組み合わせることによって確立された抗体ライブラリである。
【0007】
ファージ抗体ライブラリの最大の利点は、動物を免疫することなしに、生体内での抗体産生の3つのプロセスを模倣することによって、完全ヒト化抗体を調製することである。さらに、ファージ抗体ライブラリは以下の利点を有する:1)遺伝子型及び表現型の統一が達成される;さらに、実験方法が単純かつ迅速である;ハイブリドーマ技術による従来の抗体産生方法は数ヶ月かかるが、前記抗体ライブラリ技術はわずか数週間である;2)発現した産物は完全ヒト化抗体であり、前記抗体は主に活性フラグメントFab及びscFvの形式で発現する。分子量が小さいため、発現した抗体はインタクトな抗体と比較して組織への浸透性において明らかな利点を有する;3)スクリーニング能力が大きい;ハイブリドーマ技術は数千個のクローンの中からスクリーニングするために使用されるが、抗体ライブラリ技術は数百万又は数億もの分子から選択するために使用することができる;したがって、より多様な抗体が得られる;4)幅広い適用;原核生物発現システムが使用されるため、大規模産生においてより明白な利点が得られる(Curr Opin Biotechnol. 2002 December; 13(6):598-602; Immunotechnology, 2013, 48(13) 48(13): 63-73)。
【0008】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)は、化学的に安定したリンカーを介してモノクローナル抗体又は抗体フラグメントを生物学的に活性な細胞毒素と組み合わせることができ、正常細胞又は腫瘍細胞の表面抗原に結合する抗体の特異性及び細胞毒素の高い有効性を最大限に活用する一方で、抗体の低い有効性及び細胞毒素の毒性副作用を回避する。つまり、従来の化学療法薬と比較して、抗体薬物コンジュゲートは腫瘍細胞に正確に結合し、正常細胞への影響を減らすことができる。
【0009】
現在、様々なADC薬が臨床又は臨床研究において使用されている。例えば、Kadcylaは、Her2及びDM1を標的とするトラスツズマブによって形成されるADC薬である。同時に、WO2008100934、WO2012147713、WO2014061277、WO2015184203及びWO2016044383など、B7H3を標的とする抗体及びADC薬を報告する特許出願もある。
【0010】
抗体薬物コンジュゲートで使用される細胞傷害性小分子にはいくつかの種類があり、そのうちの1つはカンプトテシン誘導体であり、これはトポイソメラーゼIを阻害することによって抗腫瘍効果を示す。カンプトテシン誘導体であるエキサテカン(化学名:(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[デ] ピラノ[3',4':6,7]イミダゾ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン)の抗体薬物コンジュゲート(ADC)における使用を報告する文書は、WO2014057687、Clinical Cancer Research (2016) 22 (20): 5097-5108、及びCancer Sci (2016) 107: 1039-1046を含む。しかし、より有効性の高いADC薬をさらに開発することが、依然として必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は、抗-B7H3抗体のADC及びその使用に関するものであり、モノクローナル抗体又は抗原結合フラグメントを細胞毒性エキサテカンアナログに結合させることによって形成されるADC薬物を提供する、ここで、前記モノクローナル抗体又は抗原結合フラグメントは、B7H3の細胞外領域のアミノ酸配列又は三次元構造と結合する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本開示の目的は、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物:
【化1】
を提供することであり、ここで、
Yは、-O-(CR
aR
b)
m- CR
1R
2-C(O)-、-O-CR
1R
2-(CR
aR
b)
m-、-O-CR
1R
2-、-NH-(CR
aR
b)
m-CR
1R
2-C(O)-、及び-S-(CR
aR
b)
m-CR
1R
2-C(O)-からなる群より選択される;
R
a及びR
bは、同一若しくは異なる、及びそれぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、重水素化アルキル、アルコキシ、水酸基、アミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル及びヘテロシクリルからなる群より選択される;
又は、R
a及びR
bは、それらが結合している炭素原子と一緒に、シクロアルキル若しくはヘテロシクリルを形成する;
R
1は、ハロゲン、ハロアルキル、重水素化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択される;
R
2は、水素原子、ハロゲン、ハロアルキル、重水素化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択される;
又は、R
1及びR
2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、シクロアルキル若しくはヘテロシクリルを形成する;
又は、R
a及びR
2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、シクロアルキル若しくはヘテロシクリルを形成する;
mは、0から4の整数である;
nは、1から10であり、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10から任意に選択される;nは整数又は小数であってよい;
Lはリンカー・ユニットである;
Pcは、抗-B7H3抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0013】
本開示のいくつかの実施形態では、提供される式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、前記抗-B7H3抗体又はそれらの抗原結合フラグメントは、以下を含む:
配列番号(SEQ ID NO):8, 9及び10のアミノ酸配列でそれぞれ表される重鎖HCDR1、HCDR2及びHCDR3、又は配列番号(SEQ ID NO):8, 9及び10のアミノ酸配列でそれぞれ表される重鎖HCDR1、HCDR2及びHCDR3と、3、2若しくは1アミノ酸の相違を有するHCDRバリアント;並びに、
配列番号(SEQ ID NO):11, 12及び13のアミノ酸配列でそれぞれ表される軽鎖LCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は配列番号(SEQ ID NO):11, 12及び13のアミノ酸配列でそれぞれ表される軽鎖LCDR1、LCDR2及びLCDR3と、3、2若しくは1アミノ酸の相違を有するLCDRバリアント。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、抗-B7H3抗体若しくはその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域上の軽鎖FR領域は、ヒト生殖系列軽鎖配列若しくはその変異配列に由来する、及び/又は重鎖可変領域上の重鎖FR領域は、ヒト生殖系列重鎖配列若しくはその変異配列に由来する。
【0015】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、抗-B7H3抗体又はその抗原結合フラグメントは、以下より選択される重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含む:
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号(SEQ ID NO):6によって表される、若しくは配列番号(SEQ ID NO):6と少なくとも95%の配列同一性を有する、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号(SEQ ID NO):7によって表される、若しくは配列番号(SEQ ID NO):7と少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0016】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、抗-B7H3抗体又はその抗原結合フラグメントは、抗体定常領域を含む;前記抗体定常領域の重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4に由来する、又はそれらと少なくとも95%の配列同一性を有する、前記抗体定常領域の軽鎖定常領域は、ヒト抗体のκ、λ鎖に由来する、又はそれらと少なくとも95%の配列同一性を有する;並びに好ましくは、前記重鎖定常領域のアミノ酸配列は、ヒトIgG1に由来する、又はそれと少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0017】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、Pcは全長抗体である、ここで、前記全長抗体は、以下からなる群より選択される:
配列番号(SEQ ID NO):14で表される重鎖配列、及び配列番号(SEQ ID NO):15で表される軽鎖配列からなるh1702抗体、並びに、
配列番号(SEQ ID NO):14で表される重鎖配列、及び配列番号(SEQ ID NO):16で表される軽鎖配列からなるh1702DS抗体。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、前記抗原結合フラグメントは、Fab、Fab'、F(ab')2、単鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(二重抗体)、ジスルフィド安定化V領域(dsFv)、及びCDRを含むペプチドの抗原結合フラグメントからなる群より選択される。
【0019】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、R1はハロアルキル又はC3-6シクロアルキルである。
【0020】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、R2は水素原子である。
【0021】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、R1はC3-6シクロアルキルである;R2は水素原子である。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、
Yは、-O-(CRaRb)m-CR1R2-C(O)-である;
Ra及びRbは、同一若しくは異なる、及びそれぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン、及びアルキルからなる群より選択される;
R1は、ハロアルキル若しくはC3-6シクロアルキルである;
R2は、水素原子、ハロアルキル若しくはC3-6シクロアルキルからなる群より選択される;
又は、R1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、C3-6シクロアルキルを形成する;
mは、0又は1である。
【0023】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、
Yは、-O-(CRaRb)m-CR1R2-C(O)-である;
Ra及びRbは、同一若しくは異なる、及びそれぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン、及びアルキルからなる群より選択される;
R1は、C3-6シクロアルキルである;
R2は、水素原子である;
又は、R1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、C3-6シクロアルキルを形成する;
mは、0である。
【0024】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、Yは以下からなる群より選択される:
【化2】
【0025】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、YのO端末はリンカー・ユニットLに結合している。
【0026】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、nは2から8、好ましくは5から9、最も好ましくは7.5であり、非限定的な例には、3、4、5、6、7.2、7.5、8、8.5、9が含まれる。
【0027】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、前記リンカー・ユニット-L-は、-L
1-L
2 -L
3 -L
4 -であり、
L
1は、
【化3】
である、及びs
1は、2から8の整数である;
L
2は、化学結合である;
L
3は、テトラペプチド残基である;
L
4は、-NR
5(CR
6R
7)t-である、R
5、R
6及びR
7は、同一若しくは異なる、及びそれぞれ独立して、水素原子及びアルキルからなる群より選択される、並びにtは1又は2である。
【0028】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、前記リンカー・ユニット-L-のL1末端は、リガンドに結合している、及び前記リンカー・ユニット-L-のL4末端は、Yに結合している。
【0029】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、L3のテトラペプチド残基は、フェニルアラニン(E)、グリシン(G)、バリン(V)、リジン(K)、シトルリン、セリン(S)、グルタミン酸(E)及びアスパラギン酸(N)からなる群より選択される2種以上のアミノ酸からなるアミノ酸残基である、並びに好ましくは、GGFG(グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン)というテトラペプチド残基である。
【0030】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、-L-Y-は、以下のような構造である:
【化4】
L
2は、化学結合である;
L
3は、GGFGというテトラペプチド残基である;
R
1は、ハロアルキル若しくはC
3-6シクロアルキルである;
R
2は、水素原子、ハロアルキル若しくはC
3-6シクロアルキルからなる群より選択される;
又は、R
1及びR
2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、C
3-6シクロアルキルを形成する;
R
5、R
6及びR
7は、同一若しくは異なる、及びそれぞれ独立して、水素原子及びアルキルからなる群より選択される;
s
1は、2から8の整数である;
mは、0から4の整数である。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態では、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、-L-Y-は、以下からなる群より選択される:
【化5-1】
【化5-2】
【0032】
本開示のいくつかの実施形態において、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物は、以下の式(Pc-L
a-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物である:
【化6】
ここで:
Wは、C
1-8アルキル、C
1-8アルキル-シクロアルキル及び1~8個の原子を含む線状ヘテロアルキルからなる群より選択される、前記ヘテロアルキルは、N、O及びSからなる群より選択される1~3個のヘテロ原子を含む、ここで、前記C
1-8アルキル、シクロアルキル及び線状ヘテロアルキルは、ハロゲン、水酸基、シアノ、アミノ、アルキル、クロロアルキル、重水素化アルキル、アルコキシ及びシクロアルキルからなる群より選択される1個以上の置換基により、それぞれ独立して、任意選択的にさらに置換される;
L
2は、-NR
4(CH
2CH
2O)
p1CH
2CH
2C(O)-, -NR
4(CH
2CH
2O)
p1CH
2C(O)-, -S(CH
2)
p1C(O)-及び化学結合からなる群より選択される、並びにp
1は、1から20の整数であって、好ましくは1から6である;
L
3は、2から7アミノ酸からなるペプチド残基である、前記アミノ酸は置換されていても置換されていなくてもよい、置換されている場合、その置換基は任意の利用可能な結合位置で置換されていてもよい、前記置換基は、ハロゲン、水酸基、シアノ、アミノ、アルキル、クロロアルキル、重水素化アルキル、アルコキシ及びシクロアルキルからなる群より独立して選択される1種以上の基である;
R
1は、ハロゲン、ハロアルキル、重水素化アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択される;
R
2は、水素原子、ハロゲン、ハロアルキル、重水素化アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択される;
又は、R
1及びR
2は、それらが結合している炭素原子と一緒に、シクロアルキル若しくはヘテロシクリルを形成する;
R
4及びR
5は、同一若しくは異なる、及びそれぞれ独立して、水素原子、アルキル、ハロアルキル、重水素化アルキル、及び水酸基アルキルからなる群より選択される;
R
6及びR
7は、同一若しくは異なる、及びそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、重水素化アルキル、及び水酸基アルキルからなる群より選択される;
mは、0から4の整数である;
nは、1から10である、これは整数又は小数であってよい;
Pcは、抗-B7H3抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0033】
本開示のいくつかの実施形態において、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、これは、以下の式(Pc-L
b-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物である:
【化7】
ここで:
s
1は、2から8の整数であって、好ましくは5である;
R
1、R
2、R
5~R
7、m及びnは、式(Pc-L
a-Y-Dr)に定義されている通りである。
【0034】
本開示のいくつかの実施形態において、式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物において、前記リガンド-薬物コンジュゲートは、以下からなる群より選択される:
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
;
ここで、Pc及びnは式(Pc-L-Y-Dr)に定義されている通りである。
【0035】
典型的な本開示の式(Pc-L-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲートには、以下のリガンド-薬物コンジュゲートが含まれるが、これらに限定されない:
【化9-1】
【化9-2】
又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物;
ここで、nは、0から10までのゼロ以外の整数又は小数であってよく、好ましくは、nは1から10までの整数又は小数である;より好ましくは、nは2から8であり、これは整数又は小数であってよい;最も好ましくは、nは3から8であり、これは整数又は小数であってよい。
【0036】
本開示はさらに、(Pc-L
a-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を調製するための方法を提供し、これは以下のステップからなる:
【化10】
Pcを式(L
a-Y-Dr)の化合物と還元後に結合して、式(Pc-L
a-Y-Dr)の化合物を得る;還元剤は好ましくはTCEPである;
ここで:
Pcは、抗-B7H3抗体又はその抗原結合フラグメントである;
W、L
2、L
3、R
1、R
2、R
5~R
7、m及びnは、式(Pc-L
a-Y-Dr)に定義されている通りである。
【0037】
別の実施形態では、別の方法を提供し、ここで、式L
a-Y-Drの前記化合物は、以下の式L
b-Y-Drの化合物である:
【化11】
若しくはその互変異性体、メソマー(mesomer)、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー、又はそれらの混合物、若しくはそれらの薬学的に許容可能な塩であり、
ここで、R
1、R
2、R
5~R
7、s
1及びmは、式Pc-L
b-Y-Drに定義されている通りである。
【0038】
本開示の好ましい実施形態では、式(Pc-L
a-Y-Dr)若しくは(Pc-L
b-Y-Dr)のリガンド-薬物コンジュゲート、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を調製するための方法において、式(L
a-Y-Dr)の前記化合物、又は式(L
b-Y-Dr)の前記化合物は、以下からなる群より選択される:
【化12-1】
【化12-2】
【0039】
別の態様において、本開示は、本開示によるリガンド-薬物コンジュゲート又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、及び1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤又は担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0040】
別の態様において、本開示は、B7H3を介した疾患若しくは障害を治療するための薬剤の調製において、抗体-薬物コンジュゲート若しくはそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又は本開示によるこれらのものを含む医薬組成物、の使用を提供する;前記B7H3を介した疾患又は障害は、B7H3の高発現を伴うがんである。
【0041】
別の態様において、本開示は、腫瘍を治療する又は予防するための薬剤の調製において、リガンド-薬物コンジュゲート若しくはそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又は本開示によるこれらのものを含む医薬組成物、の使用を提供する、ここで、前記がんは、好ましくは乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、肺がん、子宮がん(uterine cancer)、前立腺がん、腎臓がん(kidney cancer)、尿道がん、膀胱がん、卵巣がん、肝臓がん、胃がん(stomach cancer)、子宮内膜がん、唾液腺がん、食道がん(esophageal cancer)、メラノーマ、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫、咽頭がん、肺がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、白血病、骨がん、皮膚がん、甲状腺がん、膵臓がん及びリンパ腫からなる群より選択される。
【0042】
別の態様において、本開示はさらに、腫瘍の治療及び/又は予防を必要とする患者に、治療有効量のリガンド-薬物コンジュゲート若しくはその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又は本開示によるこれらのものを含む医薬組成物を投与する、腫瘍を治療する及び/又は予防するための方法に関するものであり、ここで、前記腫瘍は好ましくはB7H3の高発現を伴うがんである。
【0043】
別の態様において、本開示はさらに、がんの治療又は予防を必要とする患者に、治療有効量のリガンド-薬物コンジュゲート若しくはその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又は本開示によるこれらのものを含む医薬組成物を投与する、がんを治療する又は予防するための方法に関するものであり、ここで、前記がんは好ましくは乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、肺がん、子宮がん(uterine cancer)、前立腺がん、腎臓がん(kidney cancer)、尿道がん、膀胱がん、卵巣がん、肝臓がん、胃がん(stomach cancer)、子宮内膜がん、唾液腺がん、食道がん(esophageal cancer)、メラノーマ、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫、咽頭がん、肺がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、白血病、骨がん、皮膚がん、甲状腺がん、膵臓がん及びリンパ腫からなる群より選択される。
【0044】
活性化合物は、任意の適切な経路による投与に適した形態に処方することができ、前記活性化合物は、好ましくは、単位用量の形態、又は患者が単回用量で自己投与できる形態である。本開示の化合物又は組成物の単位用量の形態は、錠剤、カプセル、カシェ剤、アンプル、粉末、顆粒、トローチ剤、坐剤、再生粉末又は液体製剤であってよい。
【0045】
本開示の治療方法で使用される化合物又は組成物の投与量は一般に、疾患の重症度、患者の体重、及び化合物の相対的な有効性に応じて変化する。ただし、一般的な目安として、適切な単位用量は0.1~1000mgであってよい。
【0046】
活性化合物に加えて、本開示の医薬組成物はまた、充填剤(希釈剤)、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、賦形剤などを含む1種以上の補助剤を含むことができる。投与様式に応じて、前記組成物は、0.1~99重量%の活性化合物を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】U87MG細胞に対するB7H3抗体のエンドサイトーシス効果である。
【
図2】
図2A~2Fは、各種腫瘍細胞の増殖に対する本ADCの抑制効果の結果である。
図2Aは、A498細胞の増殖に対する各種ADCの抑制効果の試験結果である;
図2Bは、Calu-6細胞の増殖に対する各種ADCの抑制効果の試験結果である;
図2Cは、U87細胞の増殖に対する各種ADCの抑制効果の試験結果である;
図2Dは、A375細胞の増殖に対する各種ADCの抑制効果の試験結果である;
図2Eは、Detroit562細胞の増殖に対する各種ADCの抑制効果の試験結果である;
図2Fは、CHOK1細胞の増殖に対する各種ADCの抑制効果の試験結果である。
【
図3】試験例7における腹腔内注射時のヌードマウスにおけるU87MG異種移植腫瘍に対する本開示のADC-8(1mpk、3mpk)及びADC-5(1mpk、3mpk)の抑制効果である。
【
図4】試験例8における腹腔内注射時のヌードマウスにおけるDetroit562異種移植腫瘍に対する本開示のADC-2(1mpk、3mpk)及びADC-1(1mpk、3mpk)の抑制効果である。
【
図5】
図5Aは、試験例9における本開示のADC-4、ADC-6及びADC-7のDetroit562細胞に対する増殖抑制率である。
図5Bは、試験例9における本開示のADC-4、ADC-6及びADC-7のCalu-6細胞に対する増殖抑制率である。
図5Cは、試験例9における本開示のADC-4、ADC-6及びADC-7のCHOK1細胞に対する増殖抑制率である。
【
図6】試験例10における本開示のADC-4の血漿安定性試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(I. 用語)
別段の指定がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者の共通の理解と一致する。本明細書に記載されているものと類似又は同等の任意の方法及び物質を、本開示の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び物質を本明細書に記載する。本開示を説明し、保護するとき、以下の用語は、以下の定義に従って使用される。
【0049】
本開示において商品名が使用される場合、出願人は、前記商品名である製品の、調製物、ジェネリック医薬品及び有効成分を含めることを意図する。
【0050】
特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語は、以下に記載される意味を有する。
【0051】
「薬物」という用語は、腫瘍細胞の正常な成長を強力に破壊することができる化学分子である、Drによって表される細胞傷害性薬物を指す。原則として、すべての細胞傷害性薬物は、十分に高い濃度で腫瘍細胞を死滅させることができる。しかし、特異性の欠如が原因で、腫瘍細胞を死滅させる一方で、正常細胞のアポトーシス及び重篤な副作用を引き起こす可能性がある。この用語は、細菌、真菌、植物又は動物由来の低分子毒素又は酵素活性毒素などの毒素、放射性同位元素(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位元素)、毒性薬物、化学療法薬物、抗生物質及び核酸分解酵素を含み、並びに好ましくは毒性薬物を含む。
【0052】
「リンカー・ユニット(又は連結フラグメント)」という用語は、一方の端部でリガンドに連結され、他方の端部で薬物に連結される、又は別のリンカーを介して薬物に連結される、化学構造フラグメント又は結合を指す。本開示の好ましい実施形態は、L及びL1からL4によって表され、ここで、L1端部はリガンドに連結され、L4端部は、構造単位Yを介して薬物(Dr)に連結される。
【0053】
延長単位、スペーサ単位、及びアミノ酸単位を含むリンカーは、米国特許出願公開第2005-0238649A1号に記載されているものなど、当技術分野で公知の方法によって合成することができる。リンカーは、細胞内での薬物の放出を促進する「切断可能なリンカー」であってよい。例えば、酸に不安定なリンカー(例えば、ヒドラゾン)、プロテアーゼ感受性(例えば、ペプチダーゼ感受性)リンカー、光に不安定なリンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al, Cancer Research 52: 127-131 (1992);米国特許第5,208,020号)を使用することができる。
【0054】
「リガンド-薬物コンジュゲート」という用語は、リガンドが安定した連結ユニットを介して生物活性薬剤に結合されていることを意味する。本開示において、「リガンド-薬物コンジュゲート」は、好ましくは抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であって、これは、モノクローナル抗体又は抗体フラグメントが、安定した連結ユニットを介して生物活性毒性薬物に連結されていることを意味する。
【0055】
本開示で使用されるアミノ酸についての3文字コード及び1文字コードは、J. biol.chem、243、p3558 (1968)に記載されている通りである。
【0056】
「抗体」という用語は、2つの同一重鎖と2つの同一軽鎖の間の鎖間ジスルフィド結合によって互いに連結された4つのポリペプチド鎖構成である免疫グロブリンを指す。異なる免疫グロブリン重鎖定常領域は異なるアミノ酸構成要素及び配列を示し、これにより異なる抗原性を示す。したがって、免疫グロブリンは5つのタイプ、又はいわゆる免疫グロブリンアイソタイプと呼ばれる、すなわちIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEに分類することができ、これらはそれぞれ対応する重鎖μ、δ、γ、α及びεを有する。ヒンジ領域のアミノ酸構成要素並びに重鎖ジスルフィド結合の数及び位置に応じて、同一タイプのIgをさらに異なるサブタイプに分類することができ、例えば、IgGはIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4に分類することができる。軽鎖は、異なる定常領域に基づいてκ鎖又はλ鎖に分類することができる。5つのタイプのIgは、それぞれκ鎖又はλ鎖を有することができる。
【0057】
抗体の重鎖又は軽鎖のN末端に隣接する約110アミノ酸の配列は非常に可変であり、このため可変領域(Fv領域)と呼ばれている。C末端に隣接する残りのアミノ酸配列は比較的安定しており、このため定常領域と呼ばれている。可変領域には、3つの超可変領域(HVR)及び4つの比較的保存的な骨格領域(FR)が含まれる。抗体の特異性を決定する3つの超可変領域は、相補性決定領域(CDR)としても知られている。各軽鎖可変領域(LCVR)又は各重鎖可変領域(HCVR)は、3つのCDR領域及び4つのFR領域からなり、これらのアミノ末端からカルボキシル末端への順序は、以下の通りである:FR1、CDR1、FR2、CDR2、 FR3、CDR3、FR4。軽鎖の3つのCDR領域は、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を指す;並びに重鎖の3つのCDR領域は、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を指す。本開示の抗体又は抗原結合フラグメントのLCVR及びHCVR領域におけるCDRアミノ酸残基の数及び位置は、既知のカバット(Kabat)番号付け基準(LCDR1-3、HCDR2-3)に準拠するか、又はカバット及びチョシア(Chothia)番号付け基準(HCDR1)に準拠する。
【0058】
「完全ヒト化抗体」という用語は、「完全ヒト化モノクローナル抗体」としても知られており、ここで、本抗体の可変領域及び定常領域はいずれもヒト由来であり、免疫原性及び副作用を排除する。モノクローナル抗体の開発は、マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、及び完全ヒト化モノクローナル抗体の4段階を経ている。完全ヒト化抗体調製の関連技術には、主にヒトハイブリドーマ技術、EBV形質転換Bリンパ球技術、ファージディスプレイ技術、遺伝子組換えマウス抗体調製技術、単一B細胞抗体調製技術などが含まれる。本開示の「完全ヒト化抗体」は、ファージディスプレイ技術によって得られる。ファージディスプレイ技術には、ヒトPBMC、脾臓、リンパ節組織からB細胞を単離することによって天然の一本鎖ファージヒト抗体ライブラリを構築すること、又はヒト抗体の軽鎖及び重鎖を発現する遺伝子組換えマウスを免疫することによって抗体をスクリーニングすることが含まれる。
【0059】
「抗原結合フラグメント」という用語は、抗原に対する特異的結合能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを指す。全長抗体のフラグメントを使用して、抗原と結合する機能を達成できることが示されている。「抗原結合フラグメント」という用語における結合フラグメントの例には、以下が含まれる:(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント、ヒンジ領域におけるジスルフィド結合によって接続された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VHドメイン及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)片腕抗体(one-arm antibody)のVHドメイン及びVLドメインからなるFvフラグメント;(v)単一ドメイン、又はVHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al. (1989) Nature 341:544-546);並びに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)又は(vii)合成リンカーによって任意に結合された2つ以上の単離されたCDRの組み合わせ。さらに、FvフラグメントのVLドメイン及びVHドメインは2つの別々の遺伝子によってコードされるが、これらは組換え法を使用して合成リンカーによって連結することができ、これによりVL及びVHドメインをペアリングすることによって形成される一価分子(一本鎖Fv(scFv)と呼ばれる;例えば、Bird et al. (1988) Science: 242:423-426及びHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci USA 85:5879-5883を参照)が形成される単一のタンパク質鎖を産出する。この単鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に含まれることが意図される。このような抗体フラグメントは、当業者に公知の従来の技術を使用して得られ、インタクトな抗体の場合と同じ方法を使用することによって、機能的フラグメントについてスクリーニングされる。抗原結合部位は、組換えDNA技術によって、又はインタクトな免疫グロブリンの酵素的若しくは化学的破壊によって産出することができる。抗体は、異なるアイソタイプの抗体、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM抗体であってよい。
【0060】
Fabは、IgG抗体分子をパパイン(これはH鎖の224位のアミノ酸残基を切断する)で処理することによって得られる抗体フラグメントである。Fabフラグメントは約5万の分子量を有し、抗原結合活性を有し、H鎖のN末端側の約半分及びL鎖全体がジスルフィド結合を介して一緒に結合している。
【0061】
F(ab')2は、IgGのヒンジ領域にある2つのジスルフィド結合の下流部分をペプシンで消化することによって得られる抗体フラグメントであって、約10万の分子量を有し、抗原結合活性を有し、ヒンジ位置で結合された2つのFab領域を含む。
【0062】
Fab'は、上記F(ab')2のヒンジ領域にあるジスルフィド結合を切断することによって得られる抗体フラグメントであって、約5万の分子量を有し、抗原結合活性を有する。
【0063】
さらに、Fab'は、抗体のFab'フラグメントをコードするDNAを原核生物発現ベクター又は真核生物発現ベクターに挿入し、次いでこれを原核生物又は真核生物に導入してFab'を発現させることによって産生することができる。
【0064】
「単鎖抗体」、「単鎖Fv」又は「scFv」という用語は、リンカーによって連結された抗体重鎖可変ドメイン(又は領域;VH)及び抗体軽鎖可変ドメイン(又は領域;VL)を含む分子を指す。このようなscFv分子は、NH2-VL-リンカー-VH-COOH又はNH2-VH-リンカー-VL-COOHの一般的な構造を有することができる。従来技術における好適なリンカーは、繰り返しGGGGSアミノ酸配列又はそのバリアントからなり、例えば、1~4個の繰り返しを有するバリアントを使用する(Holliger et al. (1993), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448)。本開示において使用することができる他のリンカーは、Alfthan et al. (1995), Protein Eng. 8:725-731、Choi et al. (2001), Eur. J. Immunol. 31:94-106、Hu et al. (1996), Cancer Res. 56:3055-3061、Kipriyanov et al. (1999), J. Mol. Biol. 293:41-56 及びRoovers et al. (2001), Cancer Immunolに記載されている。
【0065】
「CDR」という用語は、主に抗原結合に寄与する抗体の可変ドメイン内の6つの超可変領域のうちの1つを指す。6つのCDRについて最も一般的に使用される定義の1つは、Kabat E. A. et al. (1991) Sequences of proteins of immunological interest. NIH Publication 91-3242によって提供されている。本明細書で使用されるように、CDRのカバット(Kabat)定義は、軽鎖可変ドメインのCDR1、CDR2及びCDR3(CDR L1、CDR L2、CDR L3又はL1、L2、L3)、並びに重鎖可変ドメインのCDR2及びCDR3(CDR H2、CDR H3又はH2、H3)のみに適用される。
【0066】
「抗体骨格」という用語は、可変ドメインの抗原結合ループ(CDR)の足場として機能する可変ドメインVL又はVHの一部を指す。本質的に、これはCDRのない可変ドメインである。
【0067】
「エピトープ」又は「抗原決定基」という用語は、免疫グロブリン又は抗体が特異的に結合する抗原の部位を指す。エピトープは、典型的には少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の連続または非連続アミノ酸を独特の空間的立体配座で含む。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, G. E. Morris, Ed. (1996)を参照。
【0068】
「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合する」及び「特異的に結合する」という用語は、所定の抗原上のエピトープへの抗体の結合を指す。典型的には、抗体は、約10-8M未満、10-9M又は10-10M以下など、約10-7M未満の親和性(KD)で結合する。
【0069】
「核酸分子」という用語は、DNA分子及びRNA分子を指す。核酸分子は一本鎖又は二本鎖であってよいが、好ましくは二本鎖DNAである。核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれた時に、「効果的に連結」される。例えば、プロモーター又はエンハンサーがコーディング配列の転写に影響を与える場合、該プロモーター又はエンハンサーはコーディング配列に効果的に連結されている。
【0070】
「ベクター」という用語は、それに連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。一実施形態において、ベクターは、追加のDNAセグメントを連結することができる環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。別の実施形態において、ベクターはウイルスベクターであり、ここで、追加のDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができる。本明細書に開示されるベクターは、それらが導入された宿主細胞において自己複製することができる(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)、又は宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、これにより宿主ゲノムと共に複製される(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)。
【0071】
抗体及び抗原結合フラグメントを産生及び精製するための方法は、当該分野で公知であり、例えば、Cold Spring Harbor Antibody Technical Guide, Chapters 5-8 及び 15があげられる。抗原結合フラグメントはまた、従来の方法によっても調製することができる。本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、非ヒトCDR領域に1つ以上のヒトFR領域を付加するように遺伝子操作される。ヒトFR生殖細胞系列配列は、ImMunoGeneTics(IMGT)ウェブサイト(http://imgt.cines.fr)のIMGTヒト抗体可変生殖細胞系列遺伝子データベース及びMOEソフトウェアをアライメントさせることによって、又はJournal of Immunoglobulins 20011SBN012441351から、得ることができる。
【0072】
「宿主細胞」という用語は、発現ベクターが導入された細胞を指す。宿主細胞には、細菌、微生物、植物又は動物の細胞が含まれ得る。形質転換されやすい細菌には、大腸菌又はサルモネラ菌の菌株などの腸内細菌科のメンバー;枯草菌などのバシラス科;肺炎球菌;連鎖球菌及びインフルエンザ菌が含まれる。適切な微生物には、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びピキア・パストリス(Pichia pastoris)が含まれる。適切な動物宿主細胞株には、CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞株)及びNS0細胞が含まれる。
【0073】
本開示の操作された抗体又は抗原結合フラグメントは、従来の方法によって調製及び精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列をクローニングし、GS発現ベクターに組換えることができる。組換え免疫グロブリン発現ベクターは、CHO細胞に安定的にトランスフェクトすることができる。より推奨される既存の技術として、哺乳類発現系は、特にFc領域の高度に保存されたN末端部位において、抗体のグリコシル化を引き起こす可能性がある。陽性クローンは、バイオリアクター内の無血清培地中で増幅され、抗体を産生する。分泌された抗体を含む培地は、従来の技術によって精製することができる。例えば、精製は、調整されたバッファを含むA又はGセファロースFFカラムを使用して行われる。非特異的に結合した成分は、溶出によって除去される。結合した抗体をpH勾配法によって溶出し、抗体フラグメントをSDS-PAGEによって検出して採取する。抗体は、従来の方法によって濾過及び濃縮することができる。可溶性の凝集体及び多量体はまた、サイズ排除又はイオン交換などの従来の方法によっても除去することができる。得られた生成物は、-70°Cなどで直ちに凍結するか、又は凍結乾燥する必要がある。
【0074】
「ペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して互いに連結された2つ以上のアミノ酸分子からなる、アミノ酸とタンパク質との間の化合物フラグメントを指す。ペプチドは、タンパク質の構造的及び機能的フラグメントである。ホルモン、酵素などは本質的にペプチドである。
【0075】
「糖質」という用語は、C、H及びOの3つの要素から構成される生体高分子を指し、単糖類、二糖類及び多糖類に分類することができる。
【0076】
「蛍光プローブ」という用語は、紫外-可視-近赤外領域に特徴的な蛍光を有する一種の蛍光分子を指す。蛍光プローブの蛍光特性(励起及び発光波長、強度、寿命及び偏光など)は、極性、屈折率、粘度などの環境の特性に応じて敏感に変化し得る。蛍光プローブと核酸(DNA又はRNA)、タンパク質又はその他の高分子構造との間の非共有結合的な相互作用によって1つ以上の蛍光特性の変化が可能になり、これは高分子物質の特性及び挙動を研究するために使用することができる。
【0077】
「毒性薬物」という用語は、細胞の機能を阻害又は停止する、及び/又は細胞の死滅又は破壊を引き起こす物質を指す。毒性薬物には、腫瘍の治療に使用可能な毒素及びその他の化合物が含まれる。
【0078】
「アルキル」という用語は、飽和脂肪族炭化水素基を指し、これは、1~20個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖基であり、好ましくは1~12個の炭素原子を有するアルキル、より好ましくは1~10個の炭素原子を有するアルキル、最も好ましくは、1~6個の炭素原子を有する(1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する)アルキルである。非限定的な例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、n-ヘキシル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2,3-ジメチルブチル、n-ヘプチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、n-オクチル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチルヘキシル、4,4-ジメチルヘキシル、2-エチルヘキシル、3-エチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2-メチル-2-エチルペンチル、2-メチル-3-エチルペンチル、n-ノニル、2-メチル-2-エチルヘキシル、2-メチル-3-エチルヘキシル、2,2-ジエチルペンチル、n-デシル、3,3-ジエチルヘキシル、2,2-ジエチルヘキシル、及びそれらの種々の分岐異性体が含まれる。より好ましくは、アルキル基は、1~6個の炭素原子を有する低級アルキルであり、非限定的な例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、n-ヘキシル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2,3-ジメチルブチルなどが含まれる。アルキルは置換されていても置換されていなくてもよい。置換される場合、置換基は、任意の利用可能な接続点で置換することができる。置換基は、好ましくは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、水酸基、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクリルチオ及びオキソからなる群より独立して選択される1つ以上の基である。
【0079】
「ヘテロアルキル」という用語は、N、O及びSからなる群より選択される1つ以上のヘテロ原子を含むアルキルを指し、ここで、アルキルは上記で定義されている通りである。
【0080】
「アルキレン」という用語は、親アルカンの同じ炭素原子又は2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去することに由来する2つの残基を有する飽和直鎖又は分岐脂肪族炭化水素基を指す。アルキレンは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~12個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子を有する(1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する)直鎖または分枝鎖基である。アルキレンの非限定的な例には、メチレン(-CH2-)、1,1-エチレン(-CH(CH3)-)、1,2-エチレン(-CH2CH2)-、1,1-プロピレン(-CH(CH2CH3)-)、1,2-プロピレン(-CH2CH(CH3)-)、1,3-プロピレン(-CH2CH2CH2-)、1,4-ブチレン(-CH2CH2CH2CH2-)、1,5-ペンチレン(-CH2CH2CH2CH2CH2-)などが含まれるが、これらに限定されない。アルキレンは、置換されていても置換されていなくてもよい。置換される場合、置換基は、任意の利用可能な接続点で置換することができる。置換基は、好ましくは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、水酸基、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロアルコキシ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクリルチオ及びオキソからなる群より独立して任意選択される1つ以上の基である。
【0081】
「アルコキシ」という用語は、-O-(アルキル)又は-O-(非置換シクロアルキル)基を指し、ここで、アルキル及びシクロアルキルは上記で定義されている通りである。アルコキシの非限定的な例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシが含まれる。アルコキシは、任意に置換されていても置換されていなくてもよい。置換される場合、置換基は、好ましくは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、水酸基、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ及びヘテロシクリルチオからなる群より独立して選択される1つ以上の基である。
【0082】
「シクロアルキル」という用語は、3~20個の炭素原子、好ましくは3~12個の炭素原子、より好ましくは3~10個の炭素原子、最も好ましくは3~8個の炭素原子を有する(3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を有する)飽和若しくは部分不飽和単環式又は多環式炭化水素置換基を指す。単環式シクロアルキルの非限定的な例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロヘプタトリエニル、シクロオクチルなどが含まれる。多環式シクロアルキルには、スピロ環、縮合環又は架橋環を有するシクロアルキルが含まれる。
【0083】
「ヘテロシクリル」という用語は、3~20員の飽和又は部分不飽和単環式又は多環式炭化水素基を指し、ここで、1つ以上の環原子は、N、O及びS(O)m(ここで、mは0、1又は2の整数)からなる群より選択されるヘテロ原子であるが、環内の-O-O-、-O-S-、又は-S-S-を除き、残りの環原子は炭素原子である。好ましくは、ヘテロシクリルは、3~12個の環原子を有し、ここで、1~4個の原子はヘテロ原子(1、2、3又は4個のヘテロ原子)である;より好ましくは、3~10個の環原子(3、4、5、6、7、8、9又は10個の環原子を有する)である。単環式ヘテロシクリルの非限定的な例には、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ホモピペラジニルなどが含まれる。多環式ヘテロシクリルには、スピロ環、縮合環又は架橋環を有するヘテロシクリルが含まれる。
【0084】
「スピロヘテロシクリル」という用語は、1つの共有原子(スピロ原子と呼ばれる)を介して連結された個々の環を有する5~20員の多環式ヘテロシクリル基を指し、ここで、1つ以上の環原子は、N、O及びS(O)
m(ここで、mは0から2の整数)からなる群より選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素原子であり、環は1つ以上の二重結合を含むことができるが、環のいずれも完全に共役したπ電子システムを有さない。スピロヘテロシクリルは、好ましくは6~14員のスピロヘテロシクリルであり、より好ましくは7~10員のスピロヘテロシクリルである。環間で共有されるスピロ原子の数に応じて、スピロヘテロシクリルは、モノ-スピロヘテロシクリル、ジ-スピロヘテロシクリル、又はポリ-スピロヘテロシクリルに分類することができ、スピロヘテロシクリルは好ましくは、モノ-スピロヘテロシクリル又はジ-スピロヘテロシクリルであり、より好ましくは4員/4員、4員/5員、4員/6員、5員/5員、又は5員/6員のモノ-スピロヘテロシクリルである。スピロヘテロシクリルの非限定的な例には、以下が含まれる:
【化13】
【0085】
「縮合ヘテロシクリル」という用語は、5~20員の多環式ヘテロシクリル基を指し、ここで、システム内の各環は、隣接する原子対を別の環と共有し、ここで、1つ以上の環は1つ以上の二重結合を含むことができるが、環のいずれも完全に共役したπ電子システムを有することがなく、1つ以上の環原子はN、O及びS(O)
m(ここで、mは0、1又は2の整数)からなる群より選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素原子である。縮合ヘテロシクリルは、好ましくは6~14員の縮合ヘテロシクリルであり、より好ましくは7~10員(7、8、9又は10員)の縮合ヘテロシクリルである。員環の数に応じて、縮合ヘテロシクリルは、二環式、三環式、四環式又は多環式縮合ヘテロシクリルに分類することができ、縮合ヘテロシクリルは好ましくは二環式又は三環式縮合ヘテロシクリルであり、より好ましくは5員/5員又は5員/6員の二環式縮合ヘテロシクリルである。縮合ヘテロシクリルの非限定的な例には、以下が含まれる:
【化14】
【0086】
「架橋ヘテロシクリル」という用語は、5~14員の多環式ヘテロシクリル基を指し、ここで、システム内の2つの環はそれぞれ2つの離ればなれの原子(disconnected atom)を共有し、環は1つ以上の二重結合を有することができるが、環のいずれも完全に共役したπ電子システムを有することがなく、1つ以上の環原子はN、O、及びS(O)
m(ここで、mは0、1、又は2の整数)からなる群より選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素原子である。架橋ヘテロシクリルは、好ましくは6~14員の架橋ヘテロシクリルであり、より好ましくは7~10員(7、8、9又は10員)の架橋ヘテロシクリルである。員環の数に応じて、架橋ヘテロシクリルは、二環式、三環式、四環式又は多環式架橋ヘテロシクリルに分類することができ、架橋ヘテロシクリルは、好ましくは二環式、三環式又は四環式架橋ヘテロシクリルであり、より好ましくは二環式又は三環式架橋ヘテロシクリルである。架橋ヘテロシクリルの非限定的な例には、以下が含まれる:
【化15】
【0087】
ヘテロシクリル環は、アリール、ヘテロアリール又はシクロアルキルの環に縮合することができ、ここで、親構造に結合した環はヘテロシクリルである。その非限定的な例には、以下が含まれる:
【化16】
【0088】
ヘテロシクリルは、置換されていても置換されていなくてもよい。置換される場合、置換基は、好ましくは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、水酸基、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクリルチオ及びオキソからなる群より独立して選択される1つ以上の基である。
【0089】
「アリール」という用語は、共役π電子システムを有する、6~14員の全炭素単環又は多環式縮合環(すなわち、システム内のそれぞれの環は、隣接する炭素原子の対をシステム内の別の環と共有する)を指し、好ましくは6~10員(6、7、8、9又は10員)のアリールであり、例えば、フェニル及びナフチルであり、好ましくはフェニルである。アリール環は、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又はシクロアルキルの環に縮合することができ、ここで、親構造に結合した環はアリール環である。その非限定的な例には、以下が含まれる:
【化17】
【0090】
アリールは、置換されていても置換されていなくてもよい。置換される場合、置換基は、好ましくは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、水酸基、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ及びヘテロシクリルチオからなる群より独立して選択される1つ以上の基である。
【0091】
「ヘテロアリール」という用語は、O、S及びNからなる群より選択される1~4個のヘテロ原子(1、2、3又は4個のヘテロ原子)を有する5~14員の複素芳香族系を指す。ヘテロアリールは、好ましくは5~10員(5、6、7、8、9又は10員)のヘテロアリールであり、より好ましくは5又は6員のヘテロアリールであり、例えば、フリル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N-アルキルピロリル、ピリミジニル、ピラジニル、イミダゾリル、テトラゾリルなどである。ヘテロアリール環は、アリール、ヘテロシクリル又はシクロアルキルの環に縮合することができ、ここで、親構造に結合した環はヘテロアリール環である。その非限定的な例には、以下が含まれる:
【化18】
【0092】
ヘテロアリールは、置換されていても置換されていなくてもよい。置換される場合、置換基は、好ましくは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、水酸基、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ及びヘテロシクリルチオからなる群より独立して選択される1つ以上の基である。
【0093】
「アミノ保護基」という用語は、分子の他の部分が反応を受けたときにアミノ基が反応することを妨げ、かつ容易に除去することができる基を指す。非限定的な例には、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、アセチル、ベンジル、アリル、p-メトキシベンジルなどが含まれる。これらの基は、ハロゲン、アルコキシ及びニトロからなる群より選択される1~3個の置換基(1、2又は3個の置換基)によって任意に置換されていてもよい。アミノ保護基は、好ましくは、9-フルオレニルメチルオキシカルボニルである。
【0094】
「ハロアルキル」という用語は、1つ以上のハロゲンで置換されたアルキル基を指し、ここで、アルキルは上記で定義されている通りである。
【0095】
「重水素化アルキル」という用語は、1つ以上の重水素原子で置換されたアルキル基を指し、ここで、アルキルは上記で定義されている通りである。
【0096】
「水酸基アルキル」という用語は、1つ以上の水酸基で置換されたアルキル基を指し、ここで、アルキルは上記で定義されている通りである。
【0097】
「水酸基」という用語は、-OH基を指す。
【0098】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0099】
「アミノ」という用語は、-NH2基を指す。
【0100】
「ニトロ」という用語は、-NO2基を指す。
【0101】
「シアノ」という用語は、-CN基を指す。
【0102】
「アミド」という用語は、-C(O)N(アルキル)又は-C(O)N(シクロアルキル)基を指し、ここで、アルキル及びシクロアルキルは上記で定義されている通りである。
【0103】
「アルコキシカルボニル」という用語は、-C(O)O(アルキル)又は-C(O)O(シクロアルキル)基を指し、ここで、アルキル及びシクロアルキルは上記で定義されている通りである。
【0104】
本開示はまた、種々の重水素化形態の式(I)の化合物を含む。炭素原子に結合した利用可能な水素原子の各々は、独立して重水素原子で置換することができる。当業者は、関連文献を参照して、重水素化形態の式(I)の化合物を合成することができる。重水素化形態の式(I)の化合物は、市販の重水素化原料を使用することによって調製することができ、又は重水素化ボラン、テトラヒドロフラン中の三重水素化ボラン、重水素化リチウムアルミニウム(deuterated lithium aluminum hydride)、重水素化ヨードエタン、重水素化ヨードメタンなどを含むがこれらに限定されない重水素化試薬を用いて従来の技術によって合成することができる。
【0105】
「任意」又は「任意に」とは、それに続いて説明される事象又は状況が起こり得るが、必ずしも起こる必要はないことを意味し、そのような記載には、事象又は状況が起こる又は起こらない状況が含まれる。例えば、「アルキルによって任意に置換されたヘテロシクリル」は、アルキル基が存在し得るが、存在する必要はないことを意味し、そのような記載には、ヘテロシクリルがアルキルで置換された状況、及びヘテロシクリルがアルキルで置換されていない状況が含まれる。
【0106】
「置換された」とは、基中の1個以上の水素原子、好ましくは5個まで、より好ましくは1、2又は3個の水素原子が、対応する数の置換基によって独立して置換されていることを指す。置換基がそれらの可能な化学的位置にのみ存在することは、言うまでもない。当業者は、過度の努力をすることなく、実験又は理論によって、置換が可能であるか不可能であるかを判断することができる。例えば、遊離水素を有するアミノ又は水酸基と、不飽和結合を有する炭素原子(オレフィン等)との組み合わせは、不安定でありえる。
【0107】
「医薬組成物」という用語は、本明細書に記載の1つ以上の化合物、又はその生理学的/薬学的に許容可能な塩若しくはプロドラッグ及び他の化学成分、並びに生理学的/薬学的に許容可能な担体及び賦形剤などの他の成分との混合物を指す。医薬組成物の目的は、化合物の生物への投与を容易にすること(これは、生物学的活性を示すように有効成分の吸収を助長すること)である。
【0108】
「薬学的に許容可能な塩」又は「医薬塩」という用語は、哺乳動物において安全かつ効果的であり、所望の生物学的活性を有する、本開示のリガンド-薬物コンジュゲートの塩又は本開示の化合物の塩を指す。本開示のリガンド-薬物コンジュゲートは、少なくとも1つのアミノを含むため、酸及び塩を形成することができる。薬学的に許容可能な塩の非限定的な例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、ソルビン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素、サリチル酸塩、クエン酸水素塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩が含まれる。
【0109】
「溶媒和物」という用語は、本開示のリガンド-薬物コンジュゲート及び1つ以上の溶媒分子によって形成される薬学的に許容可能な溶媒和物を指す。溶媒分子の非限定的な例には、水、エタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、DMSO、酢酸エチルが含まれる。
【0110】
「薬物搭載数(drug loading)」という用語は、式(I)の化合物中の各リガンドに搭載された細胞傷害性薬物の平均数を指し、抗体の数に対する薬物の数の比として表すこともできる。薬物搭載数は、リガンド(Pc)あたり0~12個、好ましくは1~10個の細胞傷害性薬物(D)の範囲であってよい。本開示の一実施形態において、薬物搭載数は、DAR値としても知られるnとして表され、その値は例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の平均であってよい。カップリング反応後のADC分子あたりの薬物の平均数は、UV/可視分光法、質量分析法、ELISA試験及びHPLC特性評価などの従来の方法で判定することができる。
【0111】
本開示の一実施形態において、細胞傷害性薬物は、連結ユニットを介して、リガンドのリジン残基のN末端アミノ及び/又はε-アミノに結合される。典型的には、カップリング反応において抗体に結合する薬物分子の数は、理論上の最大値未満である。
【0112】
以下の非限定的な方法を使用して、リガンド-細胞傷害性薬物コンジュゲートの搭載数を制御することができる。
(1)モノクローナル抗体に対する結合試薬のモル比を制御する、
(2)反応時間及び反応温度を制御する、
(3)異なる反応試薬を選択する。
【0113】
従来の医薬組成物の調製は、中国薬局方で見つけることができる。
【0114】
本開示の組成物において使用される「担体」という用語は、薬物が人体に入る方法及び分布を変化させ、薬物放出速度を制御し、薬物を標的器官に送達することができるシステムを指す。薬物担体の放出及び標的化システムは、薬物の分解及び喪失を低減させ、副作用を低減させ、バイオアベイラビリティを改善することができる。例えば、担体として使用することができるポリマー界面活性剤は、独特の両親媒性構造を有するため、自己組織化して様々な形態の凝集体を形成することができる。好ましい例には、ミセル、マイクロエマルジョン、ゲル、液晶、ベシクルなどが含まれる。これらの凝集体は、膜に対する良好な透過性を持ちながら、薬物分子をカプセル化することができ、優れた薬物担体として使用することができる。
【0115】
「賦形剤」という用語は、主薬以外の医薬製剤における補助剤であり、これはまた、接着剤、充填剤、崩壊剤、錠剤中の潤滑剤;半固形製剤軟膏及びクリーム中のマトリックス部分; 防腐剤、抗酸化剤、香味料、香料、共溶媒、乳化剤、可溶化剤、浸透圧調整剤、液状製剤中の着色剤などのアジュバントと呼ばれることもある。
【0116】
「希釈剤」という用語は、充填剤としても知られており、主に錠剤の重量及び体積を増やすことを目的とする。希釈剤を添加することにより、一定の量を確保し、主成分の用量偏差を減らし、薬物の圧縮プロファイルを改善する。錠剤に油性成分が含まれている場合、吸収剤を添加して油性物質を吸収し、それにより「乾燥」状態を維持して錠剤の形成を容易にする。例えば、希釈剤には、デンプン、ラクトース、カルシウムの無機塩、微結晶性セルロースなどが含まれる。
【0117】
医薬組成物は、滅菌した注射用水溶液の形態であってよい。使用可能な媒体又は溶媒は、水、リンゲル液又は生理食塩水である。滅菌した注射用製剤は、有効成分が油相に溶解している滅菌した注射用水中油型マイクロエマルジョンであってもよい。例えば、有効成分は大豆油及びレシチンの混合物に溶解される。次に、油溶液を水及びグリセリンの混合物に添加し、処理してマイクロエマルジョンを形成する。注射用溶液又はマイクロエマルジョンは、局所ボーラス注射によって患者の血流に導入することができる。あるいは、溶液及びマイクロエマルジョンは、好ましくは、本開示の化合物の一定の循環濃度を維持する方法で投与される。この一定の濃度を維持するために、連続静脈内送達装置を使用することができる。このような装置の例は、Deltec CADD-PLUS. TM. 5400静脈内注射ポンプである。
【0118】
医薬組成物は、筋肉内及び皮下投与用の、滅菌した注射用水性又は油性懸濁液の形態であってよい。そのような懸濁液は、既知の技術に従って、上記のような適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤と共に製剤化することができる。滅菌した注射用製剤はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒で調製した滅菌済みの注射用溶液又は懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオールで調製した溶液、であってよい。さらに、滅菌済みの固定油は、溶媒又は懸濁媒体として容易に使用することができる。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の混合固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も、注射剤の調製に使用することができる。
【0119】
本開示は、特定の構造を有する切断可能なリンカーアーム及び特定の構造を有する活性物質、並びにリンカーアーム、活性物質及び抗体から構成された抗体-薬物コンジュゲート(ADC)に関する。このADCは、スペーサを介して有毒物質を抗体に結合することによって形成される複合体である。抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は体内で分解されて活性分子を放出し、それによって抗腫瘍効果を示す。
【0120】
(II. 合成方法)
本開示の目的を達成するために、本開示は、以下の技術的解決策を適用する。
【0121】
式(Pc-L
a-Y-Dr)の化合物を調製するための方法は、以下のステップを含む:
【化19】
Pcを式(L
a-Y-Dr)の化合物と還元後に結合して、式(Pc-La-Y-Dr)の化合物を得る;還元剤は好ましくはTCEPであり、特に抗体上のジスルフィド結合を還元することが好ましい;
ここで:
Pc、W、L
2、L
3、R
1、R
2、R
5~R
7、m及びnは、式(Pc-L
a-Y-Dr)で定義されている通りである。
【実施例】
【0122】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、上記の明細書に記載されている。本明細書に記載されているものと類似又は同等の任意の方法及び物質を、本開示の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料を以下に説明する。本明細書及び特許請求の範囲を通じて、本開示の他の特徴、目的及び利点が明らかになるであろう。本明細書及び特許請求の範囲において、文脈が明確に別段示さない限り、単数形は複数形の指示対象を含む。別段の指定がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者の共通の理解と一致する。本明細書で引用される全ての特許及び刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態をより完全に例示するために提示される。これらの実施形態は、いかなる方法でも本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、本開示の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。
【0123】
特定の条件が示されていない本開示の例における実験方法は、従来の条件又は物質又は製品の製造業者によって推奨される条件に従って実施した。特定の供給元が示されていない試薬は、市場から購入した従来の試薬である。
【0124】
化合物の構造は、核磁気共鳴(NMR)又は質量分析(MS)によって同定される。NMRは、BrukerAVANCE-400装置によって測定する。測定するのに使用した溶媒は、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)、重水素化クロロホルム(CDCl3)及び重水素化メタノール(CD3OD)であり、内部標準の物質はテトラメチルシラン(TMS)である。化学シフトは10-6(ppm)で示す。
【0125】
MSは、FINNIGAN LCQAd(ESI)質量分析計(製造者:Thermo、型:Finnigan LCQ advent MAX)によって測定する。
【0126】
UPLCは、Waters Acquity UPLCSQD液体クロマトグラフ/質量分析計によって測定する。
【0127】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、Agilent 1200DAD高圧液体クロマトグラフ(Sunfire C18 150×4.6mmクロマトグラフカラム)及びWaters 2695-2996高圧液体クロマトグラフ(Gimini C18 150×4.6mmクロマトグラフカラム)で測定する。
【0128】
UV-HPLCは、Thermo nanodrop 2000UV分光光度計で測定する。
【0129】
増殖抑制率及びIC50値は、PHERA starFSマイクロプレートリーダー(BMG Co.,、ドイツ)によって測定する。
【0130】
薄層シリカゲルクロマトグラフィー(TLC)プレートとして、Yantai Huanghai HSGF254又はQingdao GF254シリカゲルプレートを使用する。TLCに用いられるシリカゲルプレートの寸法は0.15mm~0.2 mmであり、生成物精製に用いられるシリカゲルプレートの寸法は0.4 mm~0.5mmである。
【0131】
カラムクロマトグラフィーの担体としては、一般にYantai Huanghai 200~300メッシュのシリカゲルが用いられる。
【0132】
本開示の公知の出発物質は、当技術分野での公知の方法によって調製することができる、又はABCR GmbH&Co.KG、Acros Organics、Aldrich Chemical Company、Accela ChemBio Inc.、Dari chemical Companyなどから購入することができる。
【0133】
特に明記しない限り、反応はアルゴン雰囲気又は窒素雰囲気下で行われる。
【0134】
「アルゴン雰囲気」又は「窒素雰囲気」とは、反応フラスコにアルゴン又は窒素バルーン(約1L)が装備されていることを意味する。
【0135】
「水素雰囲気」とは、反応フラスコに水素バルーン(約1L)が装備されていることを意味する。
【0136】
加圧水素化反応は、Parr 3916EKX水素化装置及びQinglan QL-500水素発生器又はHC2-SS水素化装置で行う。
【0137】
水素化反応では、一般に反応システムを真空にして水素を充填し、上記の操作を3回繰り返す。
【0138】
CEM Discover-S908860型マイクロ波反応器は、マイクロ波反応に使用される。
【0139】
特に明記しない限り、反応液は水溶液を指す。
【0140】
特に明記しない限り、反応の反応温度は室温である。
【0141】
20°C~30°Cの室温が、最適な反応温度である。
【0142】
実施例におけるPBS緩衝液(pH = 6.5)の調製は、8.5gのKH2PO4、8.56gのK2HPO4.3H2O、5.85gのNaCl及び1.5gのEDTAをフラスコ内で2Lに設定し、混合物を超音波処理して完全に溶解し、よく振って緩衝液を得る。
【0143】
化合物精製のためのカラムクロマトグラフィーの溶離液システム及び薄層クロマトグラフィーの展開溶媒系には、A:ジクロロメタン及びイソプロパノール系、B:ジクロロメタン及びメタノール系、C:石油エーテル及び酢酸エチル系が含まれる。溶媒の体積の比率は、化合物の極性に応じて調整され、少量の酸性試薬又はトリエチルアミンなどのアルカリ性試薬もまた、調整のために添加することができる。
【0144】
本開示の化合物のいくつかは、Q-TOF LC/MSによって特徴を解析する。Q-TOF LC/MSに関しては、Agilent 6530 Accurate-Mass Quadrupole-Time of Flight Mass Spectrometer及びAgilent 1290-Infinity UHPLC (Agilent Poroshell 300SB-C8 5μm, 2.1×75mm column)を使用する。
【0145】
<実施例1>
N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ [デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-1-ヒドロキシシクロプロパン-1-カルボキサミド・・・1
【化20】
エキサテカンメタンスルホン酸1b(2.0mg、3.76μmol、特許出願「EP0737686A1」に開示された方法に従って調製)に1mLのN,N-ジメチルホルムアミドを添加し、その溶液を氷水浴下で0~5℃冷却した。トリエチルアミンを1滴滴下し、透明になるまで反応液を攪拌した。1-ヒドロキシシクロプロピルカルボン酸1a(1.4mg、3.7μmol、“Tetrahedron Letters, 25(12), 1269-72; 1984”に開示されている既知の方法に従って調製)及び4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(3.8mg、13.7μmol)を反応液に連続的に添加した。添加終了後、反応液を0~5℃で2時間撹拌した。反応液に5mLの水を加えて反応を停止させ、反応液を酢酸エチル(8mL×3)で抽出した。その有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液(5mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、得られた残渣を、展開溶媒系Bを用いた薄層クロマトグラフィーにより精製して、表題生成物1(1.6mg、収率:82.1%)を得た。
MS m/z (ESI): 520.2 [M+1]。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ 7.90-7.84 (m, 1H), 7.80-7.68(m,1H), 5.80-5.70 (m, 1H), 5.62-5.54(m, 2H), 5.44-5.32 (m, 2H), 5.28-5.10(m, 2H), 3.40-3.15 (m, 3H), 2.44 (s, 3H), 2.23(t, 1H), 2.06-1.75 (m, 2H), 1.68-1.56 (m, 1H), 1.22-1.18 (m, 2H), 1.04-0.98 (m, 2H), 0.89 (t, 3H)。
【0146】
<実施例2>
(S)-2-シクロプロピル-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-1,2,3,9,10,12,13,15-オクタヒドロベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-2-ヒドロキシアセトアミド・・・2-A
(R)-2-シクロプロピル-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-1,2,3,9,10,12,13,15-オクタヒドロベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-2-ヒドロキシアセトアミド・・・2-B
【化21】
2 mLのエタノール及び0.4mLのN,N-ジメチルホルムアミドを1b(4mg、7.53μmol)に添加した。その溶液をアルゴンで3回パージし、氷水浴下で0~5℃に冷却した。0.3mLのN-メチルモルホリンを滴下し、透明になるまで反応液を撹拌した。2-シクロプロピル-2-ヒドロキシ酢酸2a(2.3mg、19.8μmol、特許出願「WO2013106717号」に開示された方法に従って調製)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(3mg、22.4μmol)及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)- 3-エチルカルボジイミド塩酸塩(4.3mg、22.4μmol)を反応液に連続的に添加した。添加終了後、反応液を0~5℃で1時間撹拌した。氷水浴を除去し、反応液を30℃に加熱し、2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた粗化合物2を高速液体クロマトグラフィー(分離条件:カラム:XBridge Prep C18 OBD 5μm 19×250mm;移動相:A-水(10mmol NH
4OAc))、B-アセトニトリル、グラジエント溶離、流速:18 mL/分)で精製した。対応する画分を採取し、減圧下で濃縮して、表題生成物(1.5mg、1.5mg)を得た。
MS m/z (ESI): 534.0 [M+1]。
構成が単一である化合物2-B(保持時間がより短い)
UPLC分析:保持時間:1.06分、純度:88%(カラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7μm 2.1×50mm、移動相:A-水(5 mmol NH
4OAc)、B-アセトニトリル)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 8.37 (d, 1H), 7.76 (d, 1H), 7.30 (s, 1H), 6.51 (s, 1H), 5.58-5.56 (m, 1H), 5.48 (d, 1H), 5.41 (s, 2H), 5.32-5.29 (m, 1H), 3.60 (t, 1H), 3.19-3.13 (m, 2H), 2.38 (s, 3H), 2.20-2.14 (m, 1H), 1.98 (q, 2H), 1.87-1.83 (m, 1H), 1.50-1.40 (m, 1H), 1.34-1.28 (m, 1H), 0.86 (t, 3H), 0.50-0.39 (m, 4H)。
構成が単一である化合物2-A(保持時間がより長い)
UPLC分析:保持時間:1.10分、純度:86%(カラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7μm 2.1×50mm、移動相:A-水(5 mmol NH
4OAc)、B-アセトニトリル)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 8.35 (d, 1H), 7.78 (d, 1H), 7.31 (s, 1H), 6.52 (s, 1H), 5.58-5.53 (m, 1H), 5.42 (s, 2H), 5.37 (d, 1H), 5.32 (t, 1H), 3.62 (t, 1H), 3.20-3.15 (m, 2H), 2.40 (s, 3H), 2.25-2.16 (m, 1H), 1.98 (q, 2H), 1.87-1.82 (m, 1H), 1.50-1.40 (m, 1H), 1.21-1.14 (m, 1H), 0.87 (t, 3H), 0.47-0.35 (m, 4H)。
【0147】
<実施例3>
(S)-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-1,2,3,9,10,12,13,15 -オクタヒドロベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパンアミド・・・3-A
(R)-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-1,2,3,9,10,12,13,15 -オクタヒドロベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパンアミド・・・3-B
【化22】
2mLのエタノール及び0.4mLのN,N-ジメチルホルムアミドを1b(5.0 mg、9.41μmol)に添加し、その溶液を氷水浴下で0~5℃に冷却した。0.3mLのN-メチルモルホリンを滴下し、透明になるまで反応液を撹拌した。3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピオン酸3a(4.1mg、28.4μmol、供給者:Alfa)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(3.8mg、28.1μmol)及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(5.4mg、28.2μmol)を反応液に連続的に添加した。添加終了後、反応液を0~5℃で10分間撹拌した。氷水浴を除去し、反応液を30℃に加熱し、8時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた粗化合物3を高速液体クロマトグラフィー(分離条件:カラム:XBridge Prep C18 OBD 5μm 19×250 mm;移動相:A-水(10mmol NH
4OAc)、B-アセトニトリル、グラジエント溶離、流速:18 mL/分)で精製した。対応する画分を採取し、減圧下で濃縮して、表題生成物(1.5mg、1.5mg)を得た。
MS m/z(ESI):561.9 [M +1]
構成が単一である化合物(保持時間がより短い)
UPLC分析:保持時間:1.11分、純度:88%(カラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7μm 2.1×50mm、移動相:A-水(5mmol NH
4OAc)、B-アセトニトリル)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 8.94 (d, 1H), 7.80 (d, 1H), 7.32 (s, 1H), 7.20 (d, 1H), 6.53 (s, 1H), 5.61-5.55 (m, 1H), 5.45-5.23 (m, 3H), 5.15-5.06 (m, 1H), 4.66-4.57 (m, 1H), 3.18-3.12 (m, 1H), 2.40 (s, 3H), 2.26-2.20 (m, 1H), 2.16-2.08 (m, 1H), 2.02-1.94 (m, 1H), 1.89-1.82 (m, 1H), 1.50-1.40 (m, 1H), 0.87 (t, 3H)。
構成が単一である化合物(保持時間がより長い)
UPLC分析:保持時間:1.19分、純度:90%(カラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7μm 2.1×50mm、移動相:A-水(5mmol NH
4OAc)、B-アセトニトリル)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 8.97 (d, 1H), 7.80 (d, 1H), 7.31 (s, 1H), 7.16 (d, 1H), 6.53 (s, 1H), 5.63-5.55 (m, 1H), 5.45-5.20 (m, 3H), 5.16-5.07 (m, 1H), 4.66-4.57 (m, 1H), 3.18-3.12 (m, 1H), 2.40 (s, 3H), 2.22-2.14 (m, 1H), 2.04-1.95 (m, 2H), 1.89-1.82 (m, 1H), 1.50-1.40 (m, 1H), 0.87 (t, 3H)。
【0148】
<実施例4>
1-(((S)-7-ベンジル-20-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-3,6,9,12,15-ペンタオキソ-2,5,8,11,14-ペンタアザイコシル)オキシ)-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド・・・4
【化23】
【0149】
(ステップ1)
ベンジル1-((2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)メトキシ)シクロプロパン-1-カルボキシレート・・・4c
ベンジル1-ヒドロキシシクロプロパン-1-カルボキシレート4a(104mg、0.54mmol、特許出願「US2005/20645」に開示された方法に従って調製)及び(2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)メチルアセテート4b(100mg、0.27mmol、特許出願「CN105829346A」に開示された方法に従って調製)を反応フラスコに添加し、続いて5mLのテトラヒドロフランを添加した。その反応液をアルゴンで3回パージし、氷水浴下で0~5℃に冷却し、続いてカリウム tert-ブトキシド(61mg、0.54mmol)を添加した。氷水浴を除去し、反応液を室温まで温め、10分間撹拌した。反応液に氷水20mLを加え、酢酸エチル(5mL×2)及びクロロホルム(5mL×5)で抽出した。その有機相を合わせて濃縮した。得られた残渣を3mLの1,4-ジオキサンに溶解し、次いで0.6mLの水、重炭酸ナトリウム(27mg、0.32mmol)及び9-フルオレンメチルクロロホルメート(70mg、0.27mmol)を添加し、反応液を室温で1時間撹拌した。水20mLを加え、反応液を酢酸エチル(8mL×3)で抽出した。その有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮し、得られた残渣を、展開溶媒系Bを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題生成物4c(100mg、収率:73.6%)を得た。
MS m/z (ESI): 501.0 [M+1]。
【0150】
(ステップ2)
1-((2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)アセトアミド)メトキシ)シクロプロパン-1-カルボン酸・・・4d
4c(50mg、0.10mmol)をテトラヒドロフランと酢酸エチルの混合溶媒(V:V=2:1)3mLに溶解し、続いてパラジウム炭素(25mg、含有量:10%)を添加した。反応液を水素で3回パージし、室温で1時間撹拌した。セライトを通して反応液を濾過し、濾過ケークをテトラヒドロフランですすいだ。濾液を濃縮して、表題生成物4d(41mg、収率:100%)を得た。
MS m/z (ESI): 411.0 [M+1]。
【0151】
(ステップ3)
(9H-フルオレン-9-イル)メチル(2-(((1-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)カルバモイル)シクロプロポキシ)メチル)アミノ)-2-オキソエチル)カルバメート・・・4e
1b(7mg、0.013 mmol)を反応フラスコに添加し、続いて1 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを添加した。溶液をアルゴンで3回パージし、氷水浴下で0~5℃に冷却した。1滴のトリエチルアミン、0.5 mLのN,N-ジメチルホルムアミド中の4d(7mg、0.017 mmol)、及び4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(7mg、0.026mmol)を添加し、その反応液を氷水浴下で35分間撹拌した。水10mLを加え、反応液を酢酸エチル(5mL×3)で抽出した。その有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮し、得られた残渣を、展開溶媒系Bを用いた薄層クロマトグラフィーにより精製して、表題生成物4e(8.5mg、収率:78.0%)を得た。
MS m/z (ESI): 828.0 [M+1] 。
【0152】
(ステップ4)
1-((2-アミノアセトアミド)メトキシ)-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド・・・4f
4e(4mg、4.84μmol)を0.2 mLのジクロロメタンに溶解し、続いて0.1mLのジエチルアミンを添加した。その反応液を室温で2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した。2 mLのトルエンを添加し、溶液を減圧濃縮し、これを2回繰り返した。3mLのn-ヘキサンを加えてパルプ状にし、上層のヘキサンを注ぎ、これを3回繰り返した。混合物を減圧濃縮して、粗製の表題生成物4f(2.9mg)を得て、これを精製せずに次のステップで直接使用した。
MS m/z (ESI): 606.0 [M+1]。
【0153】
(ステップ5)
1-(((S)-7-ベンジル-20-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-3,6,9,12,15-ペンタオキソ-2,5,8,11,14-ペンタアザイコシル)オキシ)-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド・・・4
粗化合物4f(2.9mg、4.84μmol)を0.5 mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解した。その溶液をアルゴンで3回パージし、氷水浴下で0~5℃に冷却した。0.3mLのN,N-ジメチルホルムアミド中の(S)-2(-2-(-2-(6-(2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド)アセトアミド)アセトアミド)-3-フェニルプロピオン酸4g(2.7mg、5.80μmol、特許出願「EP2907824」に開示された方法に従って調製)、及び4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(2.7mg、9.67μmol)を添加し、反応液を氷水浴下で30分間撹拌した。氷水浴を除去し、反応液を室温まで温め、15分間撹拌した。反応液を高速液体クロマトグラフィー(分離条件:カラム:XBridge Prep C18 OBD 5μm 19×250 mm;移動相:A-水(10mmol NH4OAc)、B-アセトニトリル、グラジエント溶離、流速:18 mL/分)で精製した。対応する画分を採取し、減圧下で濃縮して、表題生成物4(2mg、収率:39.0%)を得た。
MS m/z (ESI): 1060.0 [M+1]。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 9.01 (d, 1H), 8.77 (t, 1H), 8.21 (t, 1H), 8.08-7.92 (m, 2H), 7.73 (d, 1H), 7.28 (s, 1H), 7.24-7.07 (m, 4H), 6.98 (s, 1H), 6.50 (s, 1H), 5.61 (q, 1H), 5.40 (s, 2H), 5.32 (t, 1H), 5.12 (q, 2H), 4.62 (t, 1H), 4.52 (t, 1H), 4.40-4.32 (m, 1H), 3.73-3.47 (m, 8H), 3.16-3.04 (m, 2H), 2.89 (dd, 1H), 2.69-2.55 (m, 2H), 2.37-2.23 (m, 4H), 2.12-1.93 (m, 4H), 1.90-1.74 (m, 2H), 1.52-1.38 (m, 4H), 1.33-1.11 (m, 5H), 0.91-0.81 (m, 4H)。
【0154】
<実施例5>
N-((2R,10S)-10-ベンジル-2-シクロプロピル-1-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-1,6,9,12,15-ペンタオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデカン-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール- 1-イル)ヘキサンアミド・・・5-A
N-((2S,10S)-10-ベンジル-2-シクロプロピル-1-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-1,6,9,12,15-ペンタオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデカン-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール- 1-イル)ヘキサンアミド・・・5-B
【化24】
【0155】
(ステップ1)
ベンジル2-シクロプロピル-2-ヒドロキシアセテート・・・5a
2a(1.3g、11.2mmol、特許出願「WO2013/106717」に開示された方法に従って調製)を50 mLのアセトニトリルに溶解し、次いで炭酸カリウム(6.18g、44.8mmol)、ベンジルブロミド(1.33mL、11.2mmol)及びヨウ化テトラブチルアンモニウム(413mg、1.1mmol)を連続的に添加した。その反応液を室温で48時間撹拌し、セライトを通して濾過した。濾過ケークを酢酸エチル(10ml)ですすぎ、濾液を合わせて減圧濃縮した。得られた残渣を展開溶媒系Cを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題生成物5a(2g、収率:86.9%)を得た。
【0156】
(ステップ2)
ベンジル10-シクロプロピル-1-(9H-フルオレン-9-イル)-3,6-ジオキソ-2,9-ジオキサ-4,7-ジアザウンデカン-11-オエート・・・5b
5a(120.9mg、0.586mmol)及び4b(180mg、0.489mmol)を反応フラスコに添加し、続いて4mLのテトラヒドロフランを添加した。その反応液をアルゴンで3回パージし、氷水浴下で0~5℃に冷却した。カリウムtert-ブトキシド(109mg、0.98mmol)を加え、氷水浴を除去した。反応液を室温まで温め、40分間撹拌した。反応液に氷水10mLを加え、酢酸エチル(20mL×2)及びクロロホルム(10mL×5)で抽出した。その有機相を合わせて濃縮した。得られた残渣を4mLのジオキサンに溶解し、次に2mLの水、重炭酸ナトリウム(49.2mg、0.586 mmol)及び9-フルオレンメチルクロロホルメート(126mg、0.49mmol)を添加し、反応液を室温で2時間撹拌した。水20mLを加え、反応液を酢酸エチル(10mL×3)で抽出した。その有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮した。得られた残渣を、展開溶媒系Cを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題生成物5b(48mg、収率:19%)を得た。
MS m/z (ESI): 515.0 [M+1]。
【0157】
(ステップ3)
10-シクロプロピル-1-(9H-フルオレン-9-イル)-3,6-ジオキソ-2,9-ジオキサ-4,7-ジアザウンデカン-11-オイック酸・・・5c
5b(20 mg、0.038 mmol)をテトラヒドロフランと酢酸エチルの混合溶媒(V:V=2:1)4.5 mLに溶解し、続いてパラジウム炭素(12 mg、含有量:10%、乾燥)を添加した。反応液を水素で3回パージし、室温で1時間撹拌した。セライトを通して反応液を濾過し、濾過ケークを酢酸エチルですすいだ。濾液を濃縮して、粗製の表題生成物5c(13mg)を得て、これを精製せずに次のステップで直接使用した。
MS m/z (ESI): 424.9 [M+1]。
【0158】
(ステップ4)
(9H-フルオレン-9-イル)メチル(2-(((1-シクロプロピル-2-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)メチル)アミノ)-2-オキソエチル)カルバメート・・・5d
1b(10mg、18.8μmol)を反応フラスコに添加し、続いて1mLのN,N-ジメチルホルムアミドを添加した。その溶液をアルゴンで3回パージし、氷水浴下で0~5℃に冷却した。1滴のトリエチルアミン、粗化合物5c(13mg、30.6μmol)及び4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(16.9mg、61.2μmol)を添加し、反応液を氷水浴下で40分間撹拌した。水10mLを加え、反応液を酢酸エチル(10mL×3)で抽出した。その有機相を合わせた。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(10mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮した。得られた残渣を、展開溶媒系Bを用いた薄層クロマトグラフィーにより精製して、表題生成物5d(19mg、収率:73.6%)を得た。
MS m/z (ESI): 842.1[M+1]。
【0159】
(ステップ5)
2-((2-アミノアセトアミド)メトキシ)-2-シクロプロピル-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アセトアミド・・・5e
5d(19mg、22.6μmol)を2 mLのジクロロメタンに溶解し、続いて1mLのジエチルアミンを添加した。反応液を室温で2時間撹拌した。その反応液を減圧濃縮した。1mLのトルエンを添加し、溶液を減圧濃縮し、これを2回繰り返した。3mLのn-ヘキサンを残渣に加えてパルプ状にし、静置した後に、上澄みを注ぎ出した。固形物は保持した。固形残渣をオイルポンプにより減圧下で乾固するまで濃縮して、粗製の表題生成物5e(17mg)を得て、これを精製せずに次のステップで直接使用した。
MS m/z (ESI): 638.0[M+18]。
【0160】
(ステップ6)
N-((2R,10S)-10-ベンジル-2-シクロプロピル-1-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-1,6,9,12,15-ペンタオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデカン-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール- 1-イル)ヘキサンアミド・・・5-A
N-((2S,10S)-10-ベンジル-2-シクロプロピル-1-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-1,6,9,12,15-ペンタオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデカン-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール- 1-イル)ヘキサンアミド・・・5-B
粗化合物5e(13.9mg、22.4μmol)を0.6 mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解した。 その溶液をアルゴンで3回パージし、氷水浴下で0~5℃に冷却した。0.3mLのN,N-ジメチルホルムアミド中の4g(21.2mg、44.8μmol)及び4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(18.5mg、67.3μmol)を添加し、反応液を氷水浴下で10分間撹拌した。氷水浴を除去し、反応液を室温まで温め、1時間撹拌して化合物5を得た。反応液を高速液体クロマトグラフィー(分離条件:カラム:XBridge Prep C18 OBD 5μm 19×250 mm;移動相:A-水(10mmol NH4OAc)、B-アセトニトリル、グラジエント溶離、流速:18 mL/分)で精製した。対応する画分を採取し、減圧濃縮して、表題生成物(2.4mg、1.7mg)を得た。
MS m/z (ESI): 1074.4 [M+1]。
構成が単一である化合物5-A(保持時間がより短い):
UPLC分析:保持時間:1.14分、純度:85%(カラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7μm 2.1×50mm、移動相:A-水(5mmol NH4OAc)、B-アセトニトリル)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.60 (t, 1H), 8.51-8.49 (d, 1H), 8.32-8.24 (m, 1H), 8.13-8.02 (m, 2H), 8.02-7.96 (m, 1H), 7.82-7.75 (m, 1H), 7.31 (s, 1H), 7.26-7.15 (m, 4H), 6.99 (s, 1H), 6.55-6.48 (m, 1H), 5.65-5.54 (m, 1H), 5.41 (s, 2H), 5.35-5.15 (m, 3H), 4.74-4.62 (m, 2H), 4.54-4.40 (m, 2H), 3.76-3.64 (m,4H), 3.62-3.48 (m, 2H), 3.20-3.07 (m, 2H), 3.04-2.94 (m, 2H), 2.80-2.62 (m, 2H), 2.45-2.30 (m, 3H), 2.25-2.15 (m, 2H), 2.15-2.04 (m, 2H), 1.93-1.78 (m, 2H), 1.52-1.39 (m, 3H), 1.34-1.12 (m, 5H), 0.87 (t, 3H), 0.64-0.38 (m, 4H)。
構成が単一である化合物5-B(保持時間がより長い):
UPLC分析:保持時間:1.16分、純度:89%(カラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7μm 2.1×50mm、移動相:A-水(5mmol NH4OAc)、B-アセトニトリル)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.68-8.60 (m, 1H), 8.58-8.50 (m, 1H), 8.32-8.24 (m, 1H), 8.13-8.02 (m, 2H), 8.02-7.94 (m, 1H), 7.82-7.75 (m, 1H), 7.31 (s, 1H), 7.26-7.13 (m, 4H), 6.99 (s, 1H), 6.55-6.48 (m, 1H), 5.60-5.50 (m, 1H), 5.41 (s, 2H), 5.35-5.15 (m, 3H), 4.78-4.68 (m, 1H), 4.60-4.40 (m, 2H), 3.76-3.58 (m, 4H), 3.58-3.48 (m, 1H), 3.20-3.10 (m, 2H), 3.08-2.97 (m, 2H), 2.80-2.72 (m, 2H), 2.45-2.30 (m, 3H), 2.25-2.13 (m, 2H), 2.13-2.04 (m, 2H), 2.03-1.94 (m, 2H), 1.91-1.78 (m, 2H), 1.52-1.39 (m, 3H), 1.34-1.12 (m, 5H), 0.91-0.79 (m, 3H), 0.53-0.34 (m, 4H)。
【0161】
<実施例6>
N-(((2S,10S)-10-ベンジル-2-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)カルバモイル)-1,1,1-トリフルオロ-6,9,12,15-テトラオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデカン-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H- ピロール-1-イル)ヘキサンアミド・・・6-A
N-(((2R,10S)-10-ベンジル-2-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)カルバモイル)-1,1,1-トリフルオロ-6,9,12,15-テトラオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデカン-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H- ピロール-1-イル)ヘキサンアミド・・・6-B
【化25】
【0162】
(ステップ1)
ベンジル3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロプロパノエート・・・6a
3a(1.80g、12.5mmol)を100mLのアセトニトリルに溶解し、次いで炭酸カリウム(5.17g、37.5 mmol)、ベンジルブロミド(4.48mL、37.5 mmol)及びヨウ化テトラブチルアンモニウム(231mg、0.63 mmol)を連続的に添加した。その反応液を60℃に加熱し、5時間撹拌した。 反応液を室温に冷却し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、得られた残渣を、展開溶媒系Cを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題生成物6a(980 mg、収率:33.5%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.43-7.36 (m, 5H), 5.34 (s, 2H), 4.53 (s, 1H), 3.44 (s, 1H)。
【0163】
(ステップ2)
ベンジル1-(9H-フルオレン-9-イル)-3,6-ジオキソ-10-(トリフルオロメチル)-2,9-ジオキサ-4,7-ジアザウンデカン-11-オエート・・・6b
4b(63mg、0.17mmol)及び6a(80mg、0.34mmol)を反応フラスコに添加し、続いて3mLのテトラヒドロフランを加えた。その反応液をアルゴンで3回パージし、氷水浴下で0~5℃に冷却した。カリウムtert-ブトキシド(38mg、0.34mmol)を添加し、氷水浴を除去した。反応液を室温まで温め、20分間撹拌した。反応液に氷水10mLを加え、酢酸エチル(20mL×2)及びクロロホルム(10mL×5)で抽出した。その有機相を合わせて濃縮し、得られた残渣を2mLのジオキサンに溶解した。0.4mLの水、重曹ナトリウム(19mg、0.23mmol)及び9-フルオレンメチルクロロホルメート(49mg、0.19mmol)を添加し、反応液を室温で1時間撹拌した。水20mLを加え、反応液を酢酸エチル(10mL×3)で抽出した。その有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮した。得られた残渣を、展開溶媒系Cを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題生成物6b(51mg、収率:55.3%)を得た。
MS m/z (ESI): 559.9 [M+18]。
【0164】
(ステップ3)
1-(9H-フルオレン-9-イル)-3,6-ジオキソ-10-(トリフルオロメチル)-2,9-ジオキサ-4,7-ジアザウンデカン-11-オイック酸・・・6c
6b(15mg、0.28mmol)をテトラヒドロフランと酢酸エチルの混合溶媒(V:V=2:1)3mLに溶解し、続いてパラジウム炭素(15mg、含有量:10%)を添加した。その反応液を水素で3回パージし、室温で1時間撹拌した。セライトを通して反応液を濾過し、濾過ケークをテトラヒドロフランですすいだ。濾液を濃縮して、粗製の表題生成物6c(13mg)を得た。
MS m/z (ESI): 452.9 [M+1]。
【0165】
(ステップ4)
(9H-フルオレン-9-イル)メチル(2-((((3-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3,4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-1,1,1-トリフルオロ-3-オキソプロパン-2-イル)オキシ)メチル)アミノ)-2-オキソエチル)カルバメート・・・6d
1b(10 mg、18.8μmol)を反応フラスコに添加し、続いて1 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを添加した。溶液をアルゴンで3回パージし、氷水浴下で0~5℃に冷却した。1滴のトリエチルアミン、0.5 mLのN、N-ジメチルホルムアミド中の6c(13 mg、28.7μmol)、及び4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(11mg、39.7μmol)を添加し、反応液を氷水浴下で30分間撹拌した。水10mLを加え、反応液を酢酸エチル(10mL×3)で抽出した。その有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液(10mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮し、得られた残渣を、展開溶媒系Bを用いた薄層クロマトグラフィーにより精製して、表題生成物6d(16mg、収率:97.8%)を得た。
MS m/z (ESI): 870.0[M+1]。
【0166】
(ステップ5)
2-((2-アミノアセトアミド)メトキシ)-N-((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)-3,3,3-トリフルオロプロパンアミド・・・6e
6d(16 mg、18.4μmol)を0.6 mLのジクロロメタンに溶解し、続いて0.3mLのジエチルアミンを添加した。反応液を室温で2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した。2 mLのトルエンを添加し、溶液を減圧濃縮し、これを2回繰り返した。3mLのn-ヘキサンを残渣に加えてパルプ状にし、しばらくの間静置して固形物を保持した後、上澄みを注ぎ出し、これを3回繰り返した。固形残渣をオイルポンプにより減圧下で乾固するまで濃縮して、粗製の表題生成物6e(12mg)を得て、これを精製せずに次のステップで直接使用した。
MS m/z (ESI): 647.9[M+1]。
【0167】
(ステップ6)
N-((2S,10S)-10-ベンジル-2-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)カルバモイル)-1,1,1-トリフルオロ-6,9,12,15-テトラオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデカン-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド・・・6-A
N-((2R,10S)-10-ベンジル-2-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)カルバモイル)-1,1,1-トリフルオロ-6,9,12,15-テトラオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデカン-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド・・・6-B
粗化合物6e(12mg、18.5μmol)を1.0 mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解した。 溶液をアルゴンで3回パージし、氷水浴下で0~5℃に冷却した。0.3 mLのN,N-ジメチルホルムアミド中の4g(14mg、29.6μmol)及び4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(15mg、54.2μmol)を添加し、反応液を氷水浴下で30分間撹拌した。氷水浴を除去し、反応液を室温まで温め、1時間撹拌して化合物6を得た。反応液を高速液体クロマトグラフィー(分離条件:カラム:XBridge Prep C18 OBD 5μm 19×250 mm;移動相:A-水(10mmol NH4OAc)、B-アセトニトリル、グラジエント溶離、流速:18 mL/分)で精製した。対応する画分を採取し、減圧濃縮して、表題生成物(2.7mg、2.6mg)を得た。
MS m/z (ESI): 1102.0[M+1]。
構成が単一である化合物(保持時間がより短い):
UPLC分析:保持時間:1.18分、純度:91%(カラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7μm 2.1×50mm、移動相:A-水(5mmol NH4OAc)、B-アセトニトリル)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.97 (d, 1H), 8.85-8.76 (m, 1H), 8.37-8.27 (m, 1H), 8.12-8.02 (m, 1H), 8.02-7.95 (m, 1H), 7.80 (d, 1H), 7.31 (s, 1H), 7.26-7.10 (m, 4H), 6.99 (s, 1H), 6.66 (s, 1H), 6.52 (s, 1H), 5.65-5.54 (m, 1H), 5.41 (s, 1H), 5.37-5.25 (m, 3H), 5.23-5.13 (m, 1H), 4.81-4.68 (m, 2H), 4.51-4.41 (m, 1H), 3.78-3.45 (m, 6H), 3.21-3.13 (m, 1H), 3.02-2.93 (m, 1H), 2.77-2.63 (m, 2H), 2.45-2.29 (m, 3H), 2.24-2.05 (m, 3H), 2.04-1.93 (m, 5H), 1.90-1.75 (m, 2H), 1.52-1.38 (m, 4H), 0.90-0.78 (m, 5H)。
構成が単一である化合物(保持時間がより長い):
UPLC分析:保持時間:1.23分、純度:90%(カラム:ACQUITY UPLC BEHC18 1.7μm 2.1×50mm、移動相:A-水(5mmol NH4OAc)、B-アセトニトリル)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 9.05 (d, 1H), 8.97-8.88 (m, 1H), 8.35-8.27 (m, 1H), 8.11-8.03 (m, 1H), 8.02-7.95 (m, 1H), 7.80 (d, 1H), 7.34 (s, 1H), 7.29-7.13 (m, 4H), 6.99 (s, 1H), 6.66 (s, 1H), 6.54 (s, 1H), 5.64-5.55 (m, 1H), 5.43 (s, 1H), 5.36-5.20 (m, 3H), 4.92-4.85 (m, 1H), 4.82-4.72 (m, 2H), 4.52-4.42 (m, 1H), 3.77-3.48 (m, 6H), 3.21-3.14 (m, 1H), 3.03-2.95 (m, 1H), 2.79-2.65 (m, 2H), 2.47-2.28 (m, 3H), 2.25-2.05 (m, 3H), 2.05-1.94 (m, 5H), 1.91-1.76 (m, 2H), 1.52-1.37 (m, 4H), 0.92-0.77 (m, 5H)。
【0168】
<実施例7> 関連する抗体及びその検出タンパク質の調製
(実施例7-1)B7H3抗原及び検出タンパク質
本開示のB7H3のテンプレートとして、配列番号(SEQ ID NO):1で表されるヒトB7H3配列を使用し、本開示に関与する抗原のアミノ酸配列及び検出タンパク質を設計した。特に明記しない限り、以下のB7H3抗原はヒトB7H3である。
【0169】
1.1 ヒトB7H3全長アミノ酸配列:B7H3(配列番号(SEQ ID NO): 1):
【化26】
注意:
二重下線部分はシグナルペプチド(シグナルペプチド:1-28)である;
下線部分はB7H3細胞外ドメイン(細胞外ドメイン:29-466)であり、ここで、29-139はIg様V型1ドメインであり、145-238はIg様C2型1ドメインであり、243-357はIg様V型2ドメインであり、363-456はIg様C2型2ドメインである;
点線の部分は膜貫通ドメイン部分(膜貫通ドメイン:467-487)である;
イタリック部分は細胞内ドメイン(細胞質ドメイン:488-534)である。
【0170】
1.2 マウスB7H3全長アミノ酸配列(配列番号(SEQ ID NO): 2)
【化27】
注意:
二重下線部分はシグナルペプチド(シグナルペプチド:1-28)である;
下線部分はB7H3細胞外ドメイン(細胞外ドメイン:29-248)であり、ここで、29-139はIg様V型ドメインであり、145-238はIg様C2型ドメインである;
点線の部分は膜貫通ドメイン部分(膜貫通ドメイン:249-269)である;
イタリック部分は細胞内ドメイン(細胞質ドメイン:270-316)である。
【0171】
1.3 スクリーニング及び検出用のヒトB7H3抗原(配列番号(SEQ ID NO): 3)
これは市販品(R&Dカタログ番号1949-B3-050/CF、略称2Ig-B7H3)であり、配列は以下の通りである。
【化28】
注意:
下線部分はB7H3細胞外領域である;
イタリック部分はHisタグマーカーである。
【0172】
1.4 検出用のヒトB7H3抗原(配列番号(SEQ ID NO): 4)
これは市販品(SinoBiologicalカタログ番号11188-H08H、略称4Ig-B7H3)であり、配列は以下の通りである。
【化29】
注意:下線部分はB7H3細胞外領域である;
イタリック部分はHisタグマーカーである。
【0173】
1.5 スクリーニング及び検出用のマウスB7H3抗原(配列番号(SEQ ID NO): 5)
これは市販品(R&Dカタログ番号1397-B3-050/CF)であり、配列は以下の通りである。
【化30】
注:下線部分はB7H3細胞外領域である;
イタリック部分はHisタグマーカーである。
【0174】
(実施例7-2)完全ヒト化抗体の調製
2.1 陽性配列のスクリーニング
ヒトPBMC、脾臓及びリンパ節組織からB細胞を単離し、RNAを抽出してナイーブ一本鎖ファージ抗体ライブラリ(容量3.2×1010)を構築した。構築したナイーブ一本鎖ファージライブラリをパッケージングしてファージ粒子を形成し、次いで液相法によるパニングに供した。ファージを液相中でビオチン化B7H3に結合させ、次いでストレプトアビジン磁気ビーズによって分離した。ヒトB7H3(R&Dカタログ番号1949-B3-050/CF)及びマウスB7H3(R&Dカタログ番号1397-B3-050/CF)にそれぞれ交差結合できる陽性配列を得るために、ビオチン化ヒトB7H3及びビオチン化マウスB7H3を別々に交互パニングに使用した。2μg/mlのビオチン化ヒトB7H3を初回のパニングで使用した。2 μg/mlのビオチン化マウスB7H3を2回目のパニングで使用した。0.5μg/mlのビオチン化ヒトB7H3を3回目のパニングで使用した。3回目のパニングの後、500個のモノクローンを採取し、ファージELISA試験のためにファージにパッケージングした。ヒトB7H3(R&Dカタログ番号1949-B3-050/CF)及びマウスB7H3(R&Dカタログ番号1397-B3-050/CF)に対するモノクローナルファージの結合活性を別々に試験した。ELISAプレートを1μg/mlのヒトB7H3又はマウスB7H3でコーティングし、ブロッキングバッファーで1:1に希釈したファージ上清を添加し、次いで抗M13 HRPで検出した。ELISA OD450値が0.5を超え、ヒトB7H3またはマウスB7H3に結合するためのELISA OD450値と1%BSAに結合するためのELISA OD450値との比率が2.0を超えるクローンの配列を決定して、特異的配列1702を得た(本開示ではh1702とも呼ばれ、本開示において言及される抗体h1702及びh1702DSは、特許出願PCT/CN2018/081249のh1702及びh1702-1と同一であり、特許出願PCT/CN2018/081249のすべての内容は本開示に組み込まれる)。
【0175】
2.2 インタクトなモノクローナル抗体の構築
特異的配列1702はファージ・ライブラリスクリーニングによって得られ、そのインタクトなモノクローナル抗体を構築するためのプロセスは、以下の通りであった。
シーケンシングによって得られた単鎖抗体配列に基づいて、プライマーを設計して、PCRによって各々の単鎖抗体配列のVH/VK/VL遺伝子フラグメントを構築した。1702の重鎖可変領域が得られた。
- 1702の重鎖可変配列
【化31】
配列番号(SEQ ID NO):6
- 1702の軽鎖可変配列
【化32】
配列番号(SEQ ID NO):7
注意:順序はFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4である。配列中のイタリック部分はFR配列であり、下線部分はCDR配列である。
【0176】
各抗体の軽鎖及び重鎖におけるCDR配列を表1に示す。
【表1】
【0177】
次に、抗体可変領域を定常領域遺伝子(CH1-FC/CL)フラグメントと相同的に組換えて、インタクトな抗体VH-CH1-FC/VK-CL/VL-CLを構築した。
構築されたインタクトな全長抗体1702配列は以下の通りである。
1702の重鎖(IgG1)アミノ酸配列:配列番号(SEQ ID NO):14
QVQLVQSGGGVVQPGTSLRLSCAASGFIFSSSAMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSNKYYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARSARLYASFDYWGQGALVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
1702の軽鎖アミノ酸配列:ラマダ 配列番号(SEQ ID NO):15
QTVVTQEPSFSVSPGGTVTLTCGLSSGSVSTSHYPSWYQQTPGQAPRMLIYNTNTRSSGVPDRFSGSILGNKAALTITGAQADDESDYYCAIHVDRDIWVFGGGTKLTVLGQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
【0178】
抗体の安定性をさらに改善するために、1702の軽鎖配列のアミノ酸を変異させた。特異的変異は、軽鎖のN末端の最初のアミノ酸残基Q(配列番号15)をDで置換し、C末端の最初のアミノ酸残基Sを欠失させて、より安定して均一なモノクローナル抗体1702DS(本開示ではh1702DSとも呼ばれる)を得たことを含む。
【0179】
変異修飾後の1702DSの重鎖配列は配列番号14であり、軽鎖アミノ酸配列は以下の通りである(配列番号(SEQ ID NO): 16)。
DTVVTQEPSFSVSPGGTVTLTCGLSSGSVSTSHYPSWYQQTPGQAPRMLIYNTNTRSSGVPDRFSGSILGNKAALTITGAQADDESDYYCAIHVDRDIWVFGGGTKLTVLGQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTEC
【0180】
2.3 完全ヒト化抗体の発現及び精製
抗体の軽鎖と重鎖をそれぞれ発現するプラスミドを、1.5:1の比率でHEK293E細胞にトランスフェクトした。6日後に上清を回収し、高速遠心分離により破片を除去し、プロテインAカラムによって精製を行った。A280の読み取り値がベースラインに低下するまで、カラムをPBSですすいだ。標的タンパク質をpH 3.0~pH 3.5の酸性溶離液で溶出し、1 M Tris-HCl(pH 8.0~9.0)で中和した。溶出したサンプルを適切に濃縮し、ゲルクロマトグラフィーSuperdex200(GE)でさらに精製し、これをPBSで平衡化して凝集体を除去した。モノマーピークを採取し、後で使用するためにパックした。
【0181】
B7H3抗体-薬物コンジュゲートの調製例
<実施例8> ADC-1
【化33】
トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンの処方水溶液(10mM、0.347mL、3.47μmol)を、37℃の抗体1702DSのPBS緩衝水溶液(pH = 6.5の0.05 M PBS緩衝水溶液; 7.3 ml、13.8mg/ml、0.681μmol)に添加した。反応液を水浴振とう機に入れ、37 ℃で3時間振とうした後、反応を停止させた。反応液を水浴中で25℃に冷却し、14.0mlに希釈した。3.3mlの溶液を、次の反応のために採取した。
【0182】
化合物4(3.0mg、2.75μmol)を0.15mLのDMSOに溶解し、次いで3.3mlの上記溶液に添加した。反応液を水浴振とう機に入れ、25℃で3時間振とうした後、反応を停止させた。反応液を脱塩し、Sephadex G25ゲルカラム(溶出相:pH = 6.5の0.05 M PBS緩衝水溶液、0.001 M EDTAを含む)で精製して、式FADC-1の例示的産生物ADC-1のPBS緩衝溶液(1.35mg/mL、13mL)を得て、これを4℃で保存した。
UV-HPLCにより計算された平均値:n = 7.50。
【0183】
<実施例9> ADC-2
【化34】
トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンの処方水溶液(10mM、0.050mL、0.50μmol)を、37 ℃の抗体1702DSのPBS緩衝水溶液(pH = 6.5の0.05 M PBS緩衝水溶液; 1.0 ml、13.8mg/ml、0.093μmol)に添加した。反応液を水浴振とう機に入れ、37 ℃で3時間振とうした後、反応を停止させた。反応液を水浴中で25℃に冷却し、2.0mlに希釈した。1.15mlの溶液を、次の反応のために採取した。
【0184】
保持時間がより短い化合物5である化合物5-A(1.29mg、1.02μmol)を0.10 mLのDMSOに溶解し、次いで上記の溶液1.15mlに添加した。反応液を水浴振とう機に入れ、25℃で3時間振とうした後、反応を停止させた。反応液を脱塩し、Sephadex G25ゲルカラム(溶出相:pH = 6.5の0.05 M PBS緩衝水溶液、0.001 M EDTAを含む)で精製して、式FADC-2の例示的産生物ADC-2のPBS緩衝溶液(2.63mg/mL、2.4mL)を得て、これを4°Cで保存した。
UV-HPLCにより計算された平均値:n = 7.24。
【0185】
<実施例10> ADC-3
【化35】
トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンの処方水溶液(10mM、0.347mL、3.47μmol)を、37℃の抗体1702DSのPBS緩衝水溶液(pH = 6.5の0.05 M PBS緩衝水溶液; 7.3 ml、13.8mg/ml、0.681μmol)に添加した。反応液を水浴振とう機に入れ、37℃で3時間振とうした後、反応を停止させた。反応液を水浴中で25℃に冷却し、14.0mlに希釈した。3.3mlの溶液を、次の反応のために採取した。
【0186】
保持時間がより長い化合物である化合物6(3.0mg、2.75μmol)を0.15 mLのDMSOに溶解し、次いで上記の溶液3.3mlに添加した。反応液を水浴振とう機に入れ、25℃で3時間振とうした後、反応を停止させた。反応液を脱塩し、Sephadex G25ゲルカラム(溶出相:pH = 6.5の0.05 M PBS緩衝水溶液、0.001 M EDTAを含む)で精製して、式FADC-3の例示的産生物ADC-3のPBS緩衝溶液(1.28 mg/mL、13mL)を得て、これを4°Cで保存した。
UV-HPLCにより計算された平均値:n = 7.58。
【0187】
<実施例11> ADC-4
【化36】
トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の処方水溶液(10mM、73.7μL、740nmol)を、37°Cの抗体1702DSのPBS緩衝水溶液(pH = 6.5の0.05 M PBS緩衝水溶液;10.0mg/ml、2.14mL、144.60 nmol)に添加した。反応液を水浴振とう機に入れ、37℃で3時間振とうした後、反応を停止させた。反応液を水浴中で25℃に冷却した。
【0188】
保持時間がより短い化合物5である化合物5-A(3.0mg、2793nmol)を150μlのDMSOに溶解し、次いで上記の溶液に添加した。反応液を水浴振とう機に入れ、25℃で3時間振とうした後、反応を停止させた。反応液を脱塩し、Sephadex G25ゲルカラム(溶出相:pH = 6.5の0.05 M PBS緩衝水溶液、0.001 M EDTAを含む)で精製して、式FADC-2の例示的産生物ADC-4のPBS緩衝溶液(1.28mg/mL、13.0mL)を得て、これを4°Cで保存した。
UV-Visにより計算された平均値:n = 6.87。
【0189】
<実施例12> ADC-5
【化37】
トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の処方水溶液(10mM、30.1μL、300nmol)を37°Cの抗体1702DSのPBS緩衝水溶液(pH = 6.5の0.05 M PBS緩衝水溶液;10.0mg/ml、0.89mL、60.14 nmol)に添加した。反応液を水浴振とう機に入れ、37℃で3時間振とうした後、反応を停止させた。反応液を水浴中で25℃に冷却した。
【0190】
保持時間がより短い化合物5である化合物5-A(1.02mg、950nmol)を100μlのDMSOに溶解し、次いで上記の溶液に添加した。反応液を水浴振とう機に入れ、25℃で3時間振とうした後、反応を停止させた。反応液を脱塩し、Sephadex G25ゲルカラム(溶出相:pH = 6.5の0.05 M PBS緩衝水溶液、0.001 M EDTAを含む)で精製して、式FADC-2の例示的産生物ADC-5のPBS緩衝溶液(1.94mg/mL、3.5mL)を得て、これを4°Cで保存した。
UV-Visにより計算された平均値:n = 6.11。
【0191】
上記の反応手順及び当該分野における従来の技術的手段に従って反応条件を調整して、それぞれ2.97及び4.8のn値を有する式FADC-2の例示的産生物ADC-6(n = 2.97)及びADC-7(n = 4.8)を得た。
【0192】
<実施例13> ADC-8
【化38】
トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の処方水溶液(10 mM、30.1μL、300nmol)を37°Cの抗体1702DSのPBS緩衝水溶液(pH = 6.5の0.05 M PBS緩衝水溶液; 10.0mg/ml、0.89mL、60.14nmol)に添加した。反応液を水浴振とう機に入れ、37℃で3時間振とうした後、反応を停止させた。反応液を水浴中で25℃に冷却した。
化合物4(1.0mg、943nmol)を100μlのDMSOに溶解し、次いで上記の溶液に加えた。反応液を水浴振とう機に入れ、25℃で3時間振とうした後、反応を停止させた。反応液を脱塩し、Sephadex G25ゲルカラム(溶出相:pH = 6.5の0.05 M PBS緩衝水溶液、0.001 M EDTAを含む)で精製して、式FADC-1の例示的産生物ADC-8のPBS緩衝溶液(1.47mg/mL、4.5mL)を得て、これを4°Cで保存した。
UV-Visにより計算された平均値:n = 6.33。
【0193】
<バイオアッセイ>
試験例1 抗体親和性のビアコア(Biacore)試験
ヒト2Ig-B7H3抗原及びヒト4Ig-B7H3抗原に対する抗-B7H3抗体及びB7H3-ADCの反応親和性を、ビアコア、GE機器を使用して測定した。
バイオセンサーチッププロテインA(カタログ番号29127556、GE)を使用して、検査される特定量の抗体/ADCをアフィニティーキャプチャした。段階希釈したヒト2Ig-B7H3抗原(カタログ番号1949-B3-050/CF、R&D)及びヒト4Ig-B7H3抗原(カタログ番号11188-H08H、Sino Biological)をチップの表面に流した。ビアコア装置(Biacore T200、GE)を使用してリアルタイムの反応シグナルを検出し、結合曲線及び解離曲線を得た。解離の各サイクルの終了後、バイオチップを洗浄し、グリシン-塩酸再生溶液(pH 1.5)(カタログ番号BR-1003-54、GE)で再生した。実験に使用した緩衝液は、HBS-EP緩衝液(pH 7.4)(カタログ番号BR-1001-88、GE)であった。
実験データを、(1:1)ラングミュア(Langmuir)モデルにおけるBIAevaluation 4.1版GEソフトウェアに適合させて、親和性値を得た。実験結果を表2に示す。
【表2】
結論:h1702抗体は抗原と強い親和性を有する。同時に、ヒト2Ig-B7H3及びヒト4Ig-B7H3を用いたビアコア親和性試験は、ADCの親和性が裸抗体の親和性と類似していることを示している。
【0194】
試験例2 in vitroエンドサイトーシス試験
本実験では、細胞内抗体の蛍光シグナルの強度に基づいて、抗体のエンドサイトーシス効果を評価した。B7-H3抗体及びAPC抗ヒトIgGFc(Biolegend、409306)を1:2のモル比で混合し、氷上で15分間培養した。抗体混合物を2×10
5個のU87MG細胞(ヒト脳内星状芽細胞腫、中国科学院セルバンク、カタログ番号TCHu138)と共に氷上で30分間培養し、余分な抗体を洗浄により除去した。細胞を37℃に予熱した培地に移し、37℃でそれぞれ0、15、30、60及び120分間培養した。細胞を遠心分離し、抗体溶離液(0.05M グリシン、0.1M NaCl、pH2.45)に再懸濁した。室温で7分間培養した後、抗体溶離液を洗浄して除去し、BD Verseを使用して細胞内蛍光シグナルを読み取った(結果を
図1に示す)。本結果は、h1702がU87MG細胞に結合した後、細胞に効率的にエンドサイトーシスされたことを示している。
【0195】
試験例3 SDラットにおけるT
1/2評価
4匹のSDラット(Shanghai JieSiJie Laboratory Animal Co.,Ltd.から購入、半分はオス、半分はメス)を、12/12時間に調整された明暗サイクルで、24±3℃の一定温度、湿度50~60%、並びに食料及び水への自由なアクセスで維持した。実験当日、SDラットに被験薬B7H3抗体/ADCを3mg/kgの用量及び5ml/kgの注入量で尾静脈にそれぞれ注射した。
採血時点:投与初日に、投与後5分、8時間、24時間(2日目)、3日目、5日目、8日目、11日目、15日目に眼底静脈から各200μL(100μLの血清に相当)を採血した。採取した血液サンプルは、凝固するまで室温で30分放置した後、4℃で10,000×gにて10分間遠心分離した。上清を採取し、直ちに-80℃で保存した。
血清中のB7H3抗体濃度をELISAで測定し、PK解析を行った。結果を表3に示す。
【表3】
本結果は、ラットにおける本開示のh1702の半減期が約185時間(7.7日)であることを示している。
【0196】
試験例4 B7H3抗体の化学的安定性
抗体調製後の化学修飾は、生成物の安定性の問題、特にCDR領域の一部のアミノ酸での高度な脱アミノ化、酸化又は異性化修飾につながる一般的な理由の1つである。これらの修飾は回避又は削減するべきである。500μgのテスト抗体を500μl のPBS(pH 7.4)に溶解し、40℃の水浴に供した。酵素加水分解実験のために、0日目、10日目及び20日目にそれぞれサンプルを採取した。異なる時点で100μgのサンプルを採取し、100μlの0.2 M His-HCl(ヒスチジン塩酸塩緩衝液)及び8 M Gua-HCl(pH 6.0、シトルリン塩酸塩緩衝液)に溶解した。0.1g / mLのDTT(ジチオスレイトール)3μlを添加し、50 ℃の水浴に1時間供した。サンプルを0.02M His-HCl溶液(pH 6.0)で2回限外ろ過し、0.25mg/mLトリプシン(invitrogen、カタログ番号25200-072)3μLを添加した。混合物を水浴中で37℃で一晩酵素分解に供した。LC-MSはAgilent6530 Q-TOFを使用して実施し、修飾の可能性がある部位を質量分析によって分析した(結果を表4に示す)。本結果は、本開示のB7H3抗体h1702は、脱アミド化、酸化又は不均一性が有意に増加する傾向を有さないことを示し、このことは抗体が優れた物理的及び化学的安定性を有することを示している。
【表4】
【0197】
試験例5 h1702DS抗体の安定性
h1702及びh1702DSの安定性を、SEC、非還元CE-SDS試験法(pH9.0)及びIEX試験法によって試験した。
SEC試験:Waters e2695クロマトグラフ及びXbridge BEH 200A SECカラムを使用した。50μgの抗体を負荷し、一定グラジエントのPBS移動相で溶出した。
CE-SDS NR法:
Beckman SDS-MW分析キットを使用してサンプルを処理した。100μgのタンパク質を緩衝液と共に加え、加熱して変性させた。PA800キャピラリー電気泳動装置を使用してデータを収集した。
IEX法:
Waters Acquity H-Classクロマトグラフ及びThermo MAbPac SCX-10カラムを使用した。50μgの抗体を負荷し、CX-1pHグラジエントバッファーキットを移動相として使用して線形グラジエントを適用した。波長280nmの紫外線信号を収集した。
【表5】
【0198】
試験例6 in vitro細胞増殖試験
本実験では、細胞増殖に対するB7H3-ADCの抑制効果を、細胞内ATP含有量を検出することによるIC
50に基づいて評価した。
U87MG細胞(ヒト脳内星状芽細胞腫、中国科学院セルバンク、カタログ番号TCHu138)、Calu-6細胞(肺がん細胞、ATCC、カタログ番号ATCC(登録商標)HTB-56(商標))、Detroit562細胞(ヒト咽頭がん細胞、ATCC、カタログ番号ATCC(登録商標)CCL-138(商標))及びA498細胞(腎臓がん細胞、ATCC、カタログ番号ATCC(登録商標)HTB-44(商標))を、10%FBSを含むEMEM培地中で培養し、1:3又は1:6の継代比率で週に2~3回継代した。EMEM培地の調製:MEM培地(GE、カタログ番号SH30024.01)、NEAA(sigma、カタログ番号M7145-100ML)及びピルビン酸ナトリウム溶液(sigma、カタログ番号S8636-100ML)。
A-375(メラノーマ細胞、ATCC、カタログ番号ATCC(登録商標)CRL-1619(商標))を、10%FBSを含むDMEM(GE、SH30243.01)培地中で培養し、1:3又は1:6の継代比率で週に2~3回継代した。
CHO-K1(ヒトB7H3を発現しない、ATCC、カタログ番号ATCC(登録商標)CCL-61(商標))を、10%FBSを含むF12(Gibco、11765-054)培地で培養し、1:4又は1:6の継代比率で週に2~3回継代した。
継代のために、培地を除去し、細胞層を5mLの0.25%トリプシンで洗浄し、次いでトリプシンを除去し、細胞を培養器内で3~5分間消化した。次に、新鮮な培地を添加することにより細胞を再懸濁した。細胞をカウントし、細胞懸濁液を対応する濃度に処方した(U87MG細胞:500細胞/ウェル; A-498細胞:500細胞/ウェル; A-375細胞:300細胞/ウェル; Calu-6細胞:800 細胞/ウェル; detroit562細胞:2000細胞/ウェル;及びCHO-K1細胞:500細胞/ウェル)。
180μLの細胞懸濁液を96ウェルプレートに加え、200μLの培地を96ウェルプレートの周辺に加えた。このプレートを培養器(37℃、5% CO
2)で24時間培養した。
試験サンプルを、3倍の比率でPBS又はDMSOで希釈して、9種の濃度にした(各ADCの初期濃度は500 nMであった)。サンプルをプレートに添加し、培養器(37℃、5% CO
2)で6日間培養した。96ウェルプレートの各ウェルに90μlのCellTiter-Glo試薬を添加し、プレートを暗所に室温で10分間放置した。化学発光シグナル値をVictor3で読み取り、データをGraphPadソフトウェアによって処理した。測定したIC
50値を、表6及び
図2A~2Fに示す。
【表6】
【0199】
試験例7:ヌードマウスにおけるヒト脳内星状芽細胞腫U87MG異種移植腫瘍に対する本開示のADCの有効性評価
(I. 試験の目的)
BALB/cヌードマウスを試験動物として使用して、ヌードマウスにおけるヒト脳内星状芽細胞腫U87MG異種移植腫瘍に対する本開示のADC化合物の有効性を評価した。
(II. 被験薬及び物質)
1. 被験薬
ADC-5(1mpk、3mpk)
ADC-8(1mpk、3mpk)
ブランク:PBS緩衝液(pH 7.4)
2. 製剤方法:PBS緩衝液(pH7.4)。
3. 試験動物
BALB/cヌードマウス(SPF、メス)、Shanghai JieSiJie Laboratory Animal Co., Ltd.から購入。
(III. 試験工程)
試験用のBALB/cヌードマウス(メス、6~7週齢)に、ヒト脳内星状芽細胞腫U87MG細胞(上記定義による)を皮下接種した。接種後10日目に、動物を1群あたり8匹の動物に無作為に群分けし(D0)、薬物を週1回で3回腹腔内注射により投与した。腫瘍の体積と体重を週に2~3回測定し、データを記録した。腫瘍体積(V)の計算式は以下の通りである。
V=1/2×a×b
2
ここで:
aは長さを表し、bは幅を表す。
相対的体積(RTV)= V
T/V
0
腫瘍抑制率(%)=(C
RTV-T
RTV)/C
RTV(%)
ここで、V
0及びV
Tは、それぞれ試験開始時及び試験終了時の腫瘍体積を表す。C
RTV及びT
RTVはそれぞれ、対照群(ブランク)及び試験群の、試験終了時における相対的腫瘍体積を表す。
(IV. 試験結果)
腹腔内注射(i.p.)の投与を週1回で3回行った。観察18日目に、1mpkのADC-8の腫瘍抑制率は39.22%に達した(P<0.01);3mpk のADC-8の腫瘍抑制率は80.24%に達した(P<0.0001);1mpk のADC-5の腫瘍抑制率は27.53%に達した(P<0.05);3mpkのADC-5の腫瘍抑制率は55.88%に達した(P<0.0001)。観察22日目(D22)には、各投与群の腫瘍抑制率はさらに改善され、1mpk のADC-8の腫瘍抑制率は47.7%に達した(P<0.0001);3mpk のADC-8の腫瘍抑制率は89.8%に達した(P<0.0001);1mpk のADC-5の腫瘍抑制率は40.6%に達した(P<0.0001);3mpkのADC-5の腫瘍抑制率は63.3%に達した(P<0.0001)。
投与中、各群の動物は正常な体重を示し、ADCに明らかな副作用がないことを示唆した。本試験結果を表7及び
図3に示す。試験した抗体は、担がんヌードマウスにおけるU87MG異種移植腫瘍の増殖を、用量依存的に効果的に抑制することができる。
【表7】
【0200】
試験例8:ヌードマウスにおけるヒト咽頭がん胸腺液転移細胞Detroit562異種移植腫瘍に対する本開示のADCの有効性評価
(I. 試験の目的)
BALB/cヌードマウスを試験動物として使用して、ヌードマウスにおけるヒト咽頭がん胸腺液転移細胞Detroit562異種移植腫瘍に対する本開示のADC化合物の有効性を評価した。
(II. 被験薬及び材料)
1. 被験薬
ADC-1(1mpk、3mpk)
ADC-2(1mpk、3mpk)
ネガティブコントロールADC(3mpk):非B7H3標的を参照化合物と結合させることにより形成されたリガンド-毒素コンジュゲート(特許出願「CN104755494A」の実施例58)。
2. 製剤方法:薬剤はすべてPBSで希釈及び製剤化した。
3. 試験動物
BALB/cヌードヌードマウス、Changzhou Cavens Laboratory Animal Co.,Ltd.から購入。
(III. 試験工程)
試験用のBALB/cヌードマウス(メス、6~7週齢)に、ヒト咽頭がん胸腺液転移細胞Detroit562細胞を皮下接種した。接種後10日目に、動物を1群あたり8匹の動物に無作為に群分けし(D0)、薬物を週に1回で3回腹腔内注射により投与した。腫瘍の体積と体重を週に2~3回測定し、データを記録した。腫瘍体積(V)の計算式は以下の通りである。
V=1/2×a×b
2
ここで:
aは長さを表し、bは幅を表す。
相対的体積(RTV)= V
T/V
0
腫瘍抑制率(%)=(C
RTV-T
RTV)/C
RTV(%)
ここで、V
0及びV
Tは、それぞれ試験開始時及び試験終了時の腫瘍体積を表す。C
RTVとT
RTVはそれぞれ、対照群(ネガティブコントロール)及び試験群の、試験終了時における相対的腫瘍体積を表す。
(IV. 試験結果)
腹腔内注射投与を週1回で3回行った。観察28日目に、1mg/kg(1mpk)のADC-1の腫瘍抑制率は40.85%に達した;3mg/kg(3mpk)のADC-1の腫瘍抑制率は62.55%に達した(P<0.05);1mg/kg(1mpk)のADC-2の腫瘍抑制率は44.26%に達した;3mg/kg(3mpk)のADC-2の腫瘍抑制率は72.27%に達した(P<0.01)。
投与中、各群の動物は正常な体重を示し、ADCに明らかな副作用がないことを示唆した。本試験結果を表8及び
図4に示す。試験した抗体は、担がんヌードマウスにおけるDetroit562異種移植腫瘍の増殖を効果的に抑制することができ、用量依存的な様式を示す。
【表8】
【0201】
試験例9 種々の薬物搭載数であるADCのin vitro細胞増殖
式FADC-2のADC化合物(ADC-4(n = 6.87)、ADC-6(n = 2.97)及びADC-7(n = 4.8))の有効性を、試験例6と同じ実験手順に従ってin vitro細胞増殖試験で測定した。
測定されたIC
50値及び最大抑制率を、表9並びに
図5A、5B及び5Cに示す。種々のDAR値を有するFADC-2は細胞増殖を抑制する効果を示し、抑制効果はDAR値と正の相関があるが、裸抗体は細胞増殖を抑制する効果を示していない。
【表9】
【0202】
試験例10:血漿安定性
ADC-4サンプルを、ヒト血漿、サル血漿(Shanghai Medicilon Inc.)及び1%BSA(Sigma)PBS溶液(Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.)と、それぞれ100μg/ mlの最終濃度で完全に混合し、滅菌のためにろ過した。混合物を37 ℃の水浴中でインキュベーションし、インキュベーション開始日を0日目として記録した。7日目、14日目及び21日目に、遊離毒素の検出のためにサンプルを採取した。
異なる時点で採取したサンプルを室温に冷却し、ボルテックスによって十分に混合した。25μlのサンプルを96ウェルプレートに添加した。50μLの内部標準作業溶液(アセトニトリル中のカンプトテシン100 ng/mL)及び150μlのアセトニトリルを添加した。溶液を5分間ボルテックスにかけて、10分間遠心分離した(4000rpm)。LC/MS/MS(Applied Biosystems, Inc., USA)分析のために、5μlの溶液を取り出した。
本結果を
図6に示す。ADC-4は、ヒト血漿、サル血漿及び1%BSA PBS溶液中で非常に安定である。遊離毒素の放出率は2%を超えず、14日目で安定である。
【配列表】
【国際調査報告】