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特表2022-512569二特異性抗体の凝集を減少させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】二特異性抗体の凝集を減少させるための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220131BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220131BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K9/08
A61K9/19
C07K16/46
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021517615
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(85)【翻訳文提出日】2021-05-31
(86)【国際出願番号】 US2019053462
(87)【国際公開番号】W WO2020072306
(87)【国際公開日】2020-04-09
(31)【優先権主張番号】62/739,542
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ジャガナサン,バーラドワージ
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】トロイハイト,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シャン,ターシエン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076BB11
4C076CC07
4C076FF63
4C076GG45
4C085AA14
4C085AA15
4C085CC23
4C085EE01
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書中で開示される発明は、二特異性抗体の凝集を減少させる、例えば、解凍後にある特定の温度で抗体を保持することにより、凍結状態下での保管の結果生じる二特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)抗体コンストラクトの凝集を減少させるための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二特異性抗体の凝集体を減少させるための方法であって、
解凍した二特異性抗体を少なくとも4時間、5℃~45℃の温度で保持することを含み、前記二特異性抗体が解凍前に-20℃~-40℃の温度で保管されていた、方法。
【請求項2】
前記二特異性抗体が製剤原料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二特異性抗体が、4時間~96時間、前記温度で保持される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記二特異性抗体が、8時間~48時間、10℃~30℃の温度で保持される、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記二特異性抗体が、5℃~45℃の温度で解凍される、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記二特異性抗体が、-20℃~-35℃の温度で保管されていた、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記二特異性抗体が、約-30℃で保管されていた、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記凝集体が、高分子量(HMW)凝集体を含む、請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記二特異性抗体が、前記保持期間後に前記HMW凝集体約1%未満を含む、請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記二特異性抗体が、前記HMW凝集体約0.5%未満を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記HMW凝集体が、前記二特異性抗体の二量体を含む、請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
二特異性抗体を含む組成物を調製するための方法であって、
-20℃~-40℃の温度で保管されていた二特異性抗体を含む製剤原料を解凍し、
前記二特異性抗体を含む前記解凍した製剤原料を、少なくとも4時間、5℃~45℃の温度で保持すること
を含む、方法。
【請求項13】
前記組成物が、前記二特異性抗体を含む医薬組成物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記製剤原料をろ過することをさらに含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物を製剤形態に分割することをさらに含む、請求項12~14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記製剤原料が、4時間~96時間、前記温度で保持される、請求項12~15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記製剤原料が、8時間~48時間、10℃~30℃の温度で保持される、請求項12~16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記製剤原料が、5℃~45℃の温度で解凍される、請求項12~17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記製剤原料が、-20℃~-35℃の温度で保管されていた、請求項12~18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記製剤原料が約-30℃で保管されていた、請求項12~19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
二特異性抗体を含む組成物を調製するための方法であって、二特異性抗体を含む解凍した製剤原料を5℃~45℃の温度で少なくとも4時間保持することを含み、前記製剤原料が解凍前に前記製剤原料のガラス転移温度(Tg’)以上で凍結されていた、方法。
【請求項22】
前記製剤原料が、解凍前に-10℃~前記製剤原料のTg’以上の温度で凍結されていた、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記製剤原料が、約-32℃で凍結されていた、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記製剤原料が、4時間~96時間、前記温度で保持される、請求項21~23の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記製剤原料が5℃~45℃の温度で解凍される、請求項21~24の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記製剤原料が解凍される温度と同じ温度で前記製剤原料が保持される、請求項21~25の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記製剤原料が、15℃~30℃の温度で30時間~50時間、解凍され、保持される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物を製剤形態に分割することをさらに含む、請求項21~27の何れか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記製剤原料が、保持期間後にHMW凝集体約1%未満を含む、請求項12~28の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記製剤原料が、前記HMW凝集体約0.5%未満を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記HMW凝集体が、前記二特異性抗体の二量体を含む、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記製剤原料が、約0.05mg/mL~約20mg/mLの濃度で前記二特異性抗体を含む、請求項1~31の何れか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物を凍結乾燥させることをさらに含む、請求項12~32の何れか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物を噴霧乾燥させることをさらに含む、請求項12~32の何れか1項に記載の方法。
【請求項35】
請求項1~34の何れか1項に記載の方法であって、前記二特異性抗体が、
標的細胞表面抗原に結合する第1の結合ドメインと、
ヒトCD3に結合する第2の結合ドメインと、を含み、前記二特異性抗体が(scFv)形式である、方法。
【請求項36】
前記標的細胞表面抗原が、CD19、CD33又はBCMAである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、前記第1の結合ドメインがVH領域及びVL領域を含み、
前記VHが配列番号77のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号78のアミノ酸配列を含むか;
前記VHが配列番号28のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号32若しくは33のアミノ酸配列を含むか;又は
前記VHが配列番号132のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号133のアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項38】
前記二特異性抗体が、配列番号17、40又は135のアミノ酸配列を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記二特異性抗体が、2つのポリペプチド単量体を含む第3のドメインをさらに含み、それぞれがヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含み、前記2つのポリペプチド単量体がペプチドリンカーを介して互いに連結される、請求項1~38の何れか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記第3のドメインが、アミノからカルボキシルの順にヒンジ-CH2-CH3-リンカー-ヒンジ-CH2-CH3を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記第3のドメインがHLEドメインである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の結合ドメインが、CD19、CD33、EGFRvIII、MSLN、CDH19、FLT3、DLL3、CDH3、CD70、BCMA又はPSMAから選択される少なくとも1つの標的細胞表面抗原に結合する、請求項39~41の何れか1項に記載の方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法であって、前記第1の結合ドメインがVH領域及びVL領域を含み、
前記VHが配列番号108のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号109のアミノ酸配列を含むか;
前記VHが、配列番号27のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号32のアミノ酸配列を含むか;
前記VHが配列番号48のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号49のアミノ酸配列を含むか;
前記VHが配列番号59のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号60のアミノ酸配列を含むか;
前記VHが配列番号77のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号78のアミノ酸配列を含むか;
前記VHが配列番号108のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号112のアミノ酸配列を含むか;
前記VHが配列番号89のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号90のアミノ酸配列を含むか;
前記VHが配列番号100のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号101のアミノ酸配列を含むか;
前記VHが配列番号121のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号122のアミノ酸配列を含むか;
前記VHが配列番号188のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号189のアミノ酸配列を含むか;
前記VHが配列番号132のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号133のアミノ酸配列を含むか;又は
前記VHが配列番号173のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号174のアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項44】
前記二特異性抗体が、配列番号63、114、41、82、136、104、93、177、125、190又は52のアミノ酸配列を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記二特異性抗体が、配列番号63、114、41、82、136、104、93、177、125、190又は52のアミノ酸配列からなる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記二特異性抗体が、マスクされた二特異性抗原結合タンパク質である、請求項1~34の何れか1項に記載の方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法であって、前記マスクされた二特異性抗原結合タンパク質が、
(a)第1の抗原に結合する第1の抗体又はその抗原結合断片(AB1)及びAB1にカップリングされるマスキングドメイン(MD1)であって、前記MD1が、
(1)その抗原へのAB1の結合を阻害するか又は減少させる第1のマスキングペプチド(MP1)及び
(2)タンパク質認識部位(PR1)を含み、
タンパク質又はプロテアーゼによるPR1への結合又はその切断が、その抗原に結合するAB1を増加させる、
第1の抗体又はその抗原結合断片(AB1)及びマスキングドメイン(MD1)と;
(b)第2の抗原に結合する第2の抗体又はその抗原結合断片(AB2)及びAB2にカップリングされる第2のマスキングドメイン(MD2)であって、前記MD2が、
(1)その抗原へのAB2の結合を阻害するか又は減少させる第2のマスキングペプチド(MP)及び
(2)第2のタンパク質認識部位(PR2)を含み、
タンパク質又はプロテアーゼによるPR2への結合又はその切断が、その抗原へ結合するAB2を増加させる、
第2の抗体又はその抗原結合断片(AB2)及び第2のマスキングドメイン(MD2)と、
を含む、方法。
【請求項48】
前記PR1及びPR2が、同じタンパク質認識配列を含む、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
前記AB1がヒトCD3に結合し、前記AB2がヒトEGFRに結合する、請求項46~48の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、参照により本明細書に組み込まれる2018年10月1日出願の米国仮特許出願第62/739,542号明細書の利益を主張する。
【0002】
本願は、二特異性抗体の凝集を減少させるための方法に関する。より具体的には、本願は、凍結状態下での保管の結果起こる、二特異性T細胞エンゲージャー抗体など、本明細書中で開示される二特異性抗体の凝集を減少させるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
抗体などの治療用タンパク質は、患者に役立つ重要な医薬品のクラスである。一般的には、治療用タンパク質は、大量に、真核細胞中で産生され、精製される。タンパク質は温度変化に敏感であるため、これらの治療用タンパク質の製剤原料は、-20℃~-80℃の範囲の温度で凍結状態下で保管され、運ばれる。凍結によって、治療用タンパク質の貯蔵寿命が延び、最終処方の段取り及び市販される製品包装へのタンパク質の充填について、融通が利くようになる。操作上の基盤及び保管のための物流管理及び出荷は、その範囲でより高い温度であることが好ましい。
【0004】
凍結/解凍工程は、タンパク質に対するストレスの原因となり得る。例えば、タンパク質製剤原料の凍結工程中に水が結晶化し、これにより、タンパク質分子が、最初のレベルの数倍の濃度レベルに達し得る。濃度変化の結果、タンパク質の熱力学的安定性が損なわれ得、これがアンフォールディング事象につながり、凝集を引き起こす。例えば、18 Lam Philippe et al.,Quality by Design for Biopharmaceutical Drug Product Development,pp.159-189(Jameel F.et al.ed.,2015)を参照。同様のストレスは解凍過程にも含まれ得、これらは、適時に氷を融解させるためにより高温が必要とされるので、深刻なものになり得る。同上。このように、タンパク質凝集体(例えば高分子量(HMW)凝集体)は、治療用タンパク質を含む製剤原料が凍結状態下で保管され、及び/又は出荷される場合の凍結/解凍工程の結果から生じ得る。しかし、凝集体はタンパク質の安定性、免疫原性及び効力に悪影響を与え得るので、製剤原料中に凝集体が存在することは望ましくない。凍結状態下での保管の結果生じるタンパク質凝集を減少させる方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
凍結状態下での保管の結果、二特異性抗体、特に二特異性T細胞エンゲージャー抗体(BiTE)の凝集を減少させるための方法が、本明細書中で提供される。本願は、解凍後にある時間にわたってある特定温度で二特異性抗体を保持することにより、凍結状態下での保管中に形成された凝集体が減少するという驚くべき知見を対象とする。
【0006】
一実施形態では、解凍された二特異性抗体を約5℃~約45℃の温度で少なくとも4時間保持することを含む、二特異性抗体の凝集体を減少させるための方法が本明細書中で開示され、この二特異性抗体は、解凍前に約-20℃~約-40℃の温度で保管されていた。一実施形態では、解凍された二特異性抗体は、約4時間~約96時間、その温度で保持される。一実施形態では、解凍された二特異性抗体は、約10時間~約48時間、約10℃~約30℃の温度で保持される。一実施形態では、解凍された二特異性抗体は、8時間~48時間、約10℃~約30℃の温度で保持される。
【0007】
一実施形態では、二特異性抗体は、約5℃~約45℃の温度で解凍される。一実施形態では、二特異性抗体は、解凍前に約-20℃~約-35℃の温度で保管され、別の実施形態では、二特異性抗体は、解凍前に約-30℃で保管されていた。一実施形態では、凝集体は、高分子量(HMW)凝集体を含む。一実施形態では、HMW凝集体は、二特異性抗体の二量体を含む。一実施形態では、二特異性抗体は、保持期間後、HMW凝集体約1%未満を含み、別の実施形態では、二特異性抗体は、保持期間後、HMW凝集体約0.5%未満を含む。
【0008】
一実施形態では、約-20℃~約-40℃の温度で保管された二特異性抗体を含む製剤原料を解凍し、二特異性抗体を含む解凍された製剤原料を少なくとも4時間、約5℃~約45℃の温度で保持することを含む、二特異性抗体を含む組成物を調製するための方法が、本明細書中で開示される。一実施形態では、製剤原料は、約4時間~約96時間、その温度で保持される。別の実施形態では、製剤原料は、約10時間~約48時間、約10℃~約30℃の温度で保持される。別の実施形態では、製剤原料は、8時間~48時間、約10℃~約30℃の温度で保持される。一実施形態では、製剤原料は、約5℃~約45℃の温度で解凍される。一実施形態では、製剤原料は、約-20℃~約-35℃の温度で保管され、別の実施形態では、製剤原料は約-30℃で保管されていた。一実施形態では、本組成物を調製するための方法は、製剤原料をろ過することをさらに含み、別の実施形態では、本組成物を調製するための方法は、本組成物を製剤形態に分割することをさらに含む。一実施形態では、本組成物は、二特異性抗体を含む医薬組成物である。
【0009】
一実施形態では、二特異性抗体を含む組成物を調製するための方法が本明細書中で開示され、この方法は、二特異性抗体を含む解凍された製剤原料を少なくとも4時間、約5℃~約45℃の温度で保持することを含み、この製剤原料は、解凍前に製剤原料のガラス転移温度(Tg’)以上で凍結されていた。一実施形態では、製剤原料は、約-10℃~製剤原料のガラス転移温度以上の温度で凍結され、別の実施形態では、製剤原料は約-32℃で凍結されていた。一実施形態では、製剤原料は、約4時間~約96時間、その温度で保持される。一実施形態では、製剤原料は、約5℃~約45℃の温度で解凍される。別の実施形態では、製剤原料は、製剤原料が解凍される温度と同じ温度で保持される。別の実施形態では、製剤原料は、30時間~50時間、約15℃~約30℃の同じ温度で、解凍され、保持される。別の実施形態では、本組成物を調製するための方法は、本組成物を製剤形態に分割することをさらに含む。別の実施形態では、本組成物を調製するための方法は、本組成物を乾燥凍結することをさらに含む。また別の実施形態では、本組成物を調製するための方法は、本組成物を噴霧乾燥することをさらに含む。
【0010】
一実施形態では、製剤原料は、保持期間後、HMW凝集体約1%未満を含み、別の実施形態では、製剤原料は、HMW凝集体約0.5%未満を含む。一実施形態では、HMW凝集体は、二特異性抗体の二量体を含む。
【0011】
一実施形態では、製剤原料は、約0.05mg/mL~約20mg/mLの濃度で二特異性抗体を含む。
【0012】
一実施形態では、二特異性抗体は、二特異性T細胞エンゲージャー抗体(BiTE)である。一実施形態では、二特異性抗体は、標的細胞表面抗原に結合する第1の結合ドメイン及びヒトCD3に結合する第2の結合ドメインを含み、二特異性抗体は(scFv)2形式である。一実施形態では、二特異性抗体は、CD19、CD33又はBCMAから選択される標的細胞表面抗原に結合する第1の結合ドメイン及びヒトCD3に結合する第2の結合ドメインを含み、二特異性抗体は(scFv)2形式である。
【0013】
一実施形態では、二特異性抗体は、第1の結合ドメイン及び第2の結合ドメインを含み、第1の結合ドメインはVH領域及びVL領域を含み、VHは、配列番号77のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号78のアミノ酸配列を含むか;又はVHが配列番号28のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号32若しくは33のアミノ酸配列を含むか;又はVHが配列番号132のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号133のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、二特異性抗体は、配列番号17、40又は135のアミノ酸配列を含む。
【0014】
一実施形態では、二特異性抗体はBiTEであり、BiTEは、2つのポリペプチド単量体を含む第3のドメインをさらに含み、それぞれがヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含み、2つのポリペプチド単量体はペプチドリンカーを介して互いに連結される。別の実施形態では、第3のドメインは、アミノからカルボキシルへの順でヒンジ-CH2-CH3-リンカー-ヒンジ-CH2-CH3を含む。一実施形態では、第3のドメインは半減期延長(HLE)ドメインである。
【0015】
一実施形態では、二特異性抗体は、第1の結合ドメイン、第2の結合ドメイン及び第3のドメインを含み、第1の結合ドメインは、CD19、CD33、EGFRvIII、MSLN、CDH19、FLT3、DLL3、CDH3、CD70、BCMA又はPSMAから選択される少なくとも1つの標的細胞表面抗原に結合し、第2の結合ドメインはヒトCD3に結合し、第3のドメインは2つのポリペプチド単量体を含み、それぞれがヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含み、この2つのポリペプチド単量体はペプチドリンカーを介して互いに連結される。
【0016】
一実施形態では、二特異性抗体は、第1の結合ドメイン、第2の結合ドメイン及び第3のドメインを含み、第1の結合ドメインは、VH領域及びVL領域を含み、CD19、CD33、EGFRvIII、MSLN、CDH19、FLT3、DLL3、CDH3、CD70、BCMA又はPSMAから選択される少なくとも1つの標的細胞表面抗原に結合し、第2の結合ドメインは、ヒトCD3に結合し、第3のドメインは、2つのポリペプチド単量体を含み、それぞれがヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含み、この2つのポリペプチド単量体はペプチドリンカーを介して互いに連結され:(a)VHが配列番号108のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号109のアミノ酸配列を含むか;又は(b)VHが配列番号27のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号32のアミノ酸配列を含むか;又は(c)VHが配列番号48のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号49のアミノ酸配列を含むか;又は(d)VHが配列番号59のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号60のアミノ酸配列を含むか;又は(e)VHが配列番号77のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号78のアミノ酸配列を含むか;又は(f)VHが配列番号108のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号112のアミノ酸配列を含むか;又は(g)VHが配列番号89のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号90のアミノ酸配列を含むか;又は(h)VHが配列番号100のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号101のアミノ酸配列を含むか;又は(i)VHが配列番号121のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号122のアミノ酸配列を含むか;又は(j)VHが配列番号188のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号189のアミノ酸配列を含むか;又は(k)VHが配列番号132のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号133のアミノ酸配列を含むか;又は(l)VHが配列番号173のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号174のアミノ酸配列を含む。
【0017】
一実施形態では、二特異性抗体は、第1の結合ドメイン、第2の結合ドメイン及び第3のドメインを含み、第1の結合ドメインは、CD19、CD33、EGFRvIII、MSLN、CDH19、FLT3、DLL3、CDH3、CD70、BCMA又はPSMAから選択される少なくとも1つの標的細胞表面抗原に結合し、第2の結合ドメインはヒトCD3に結合し、第3のドメインは、2つのポリペプチド単量体を含み、それぞれが、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含み、この2つのポリペプチド単量体がペプチドリンカーを介して互いに連結され、二特異性抗体は、配列番号63、114、41、82、136、104、93、177、125、190又は52から選択されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0018】
一実施形態では、二特異性抗体は、マスクされた二特異性抗原結合タンパク質である。一実施形態では、マスクされた二特異性抗原結合タンパク質は、(a)第1の抗原に結合する第1の抗体又はその抗原結合断片(AB1)及びAB1にカップリングされるマスキングドメイン(MD1)であって、MD1が、(1)その抗原へのAB1の結合を阻害するか又は減少させる第1のマスキングペプチド(MP1)及び(2)タンパク質認識部位(PR1)を含み、タンパク質又はプロテアーゼによるPR1への結合又はその切断が、その抗原に結合するAB1を増加させる、第1の抗体又はその抗原結合断片(AB1)及びマスキングドメイン(MD1)と;(b)第2の抗原に結合する第2の抗体又はその抗原結合断片(AB2)及びAB2にカップリングされる第2のマスキングドメイン(MD2)であって、MD2が、(1)その抗原へのAB2の結合を阻害するか又は減少させる第2のマスキングペプチド(MP)及び(2)第2のタンパク質認識部位(PR2)を含み、タンパク質又はプロテアーゼによるPR2への結合又はその切断が、その抗原へ結合するAB2を増加させる、第2の抗体又はその抗原結合断片(AB2)及び第2のマスキングドメイン(MD2)と、を含む。一実施形態では、PR1及びPR2は、同じタンパク質認識配列を含む。別の実施形態では、AB1はヒトCD3に結合し、AB2はヒトEGFRに結合する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、様々なHLE BiTE分子を-20℃で1カ月保管した後の、凝集体レベル(ΔHMW%)の上昇を示す。
図2A図2Aは、異なるpHを有する組成物中で-20℃で1カ月間保管した後の、DLL3xCD3 HLE BiTEの凝集体レベル(ΔHMW%)の上昇を示す。
図2B図2Bは、異なる温度で1カ月間保管した後の、DLL3xCD3 HLE BiTEの凝集体レベル(ΔHMW%)の上昇を示す。
図3A図3A、3B、3C及び3Dは、-20℃又は-30℃での保管後に様々なHLE BiTEにおいてHMW凝集体レベルが上昇したこと、及び解凍後の24時間にわたる室温での保持により凝集体レベルが低下したことを示す。
図3B図3A、3B、3C及び3Dは、-20℃又は-30℃での保管後に様々なHLE BiTEにおいてHMW凝集体レベルが上昇したこと、及び解凍後の24時間にわたる室温での保持により凝集体レベルが低下したことを示す。
図3C図3A、3B、3C及び3Dは、-20℃又は-30℃での保管後に様々なHLE BiTEにおいてHMW凝集体レベルが上昇したこと、及び解凍後の24時間にわたる室温での保持により凝集体レベルが低下したことを示す。
図3D図3A、3B、3C及び3Dは、-20℃又は-30℃での保管後に様々なHLE BiTEにおいてHMW凝集体レベルが上昇したこと、及び解凍後の24時間にわたる室温での保持により凝集体レベルが低下したことを示す。
図4図4は、BiTE分子のHMWレベル低下の、保持時間及び保持温度依存性を示す。
図5図5は、ベンジルアルコールの効果を安定化させることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
方法
二特異性抗体の凝集体、特に二特異性抗体が凍結状態下で保管されるときに形成された凝集体を減少させるための方法が、本明細書中に記載される。本明細書中で使用される場合、「凝集体」又は「凝集」という用語は、2個以上の分子の会合を指す。ある一定の実施形態では、凝集体は、非凝集分子よりも大きい分子量及び/又は寸法を有する高分子量(HMW)凝集体である。ある一定の実施形態では、凝集体は、2個以上の抗体分子の会合を含む。ある一定の実施形態では、凝集体は、二特異性抗体の二量体を含む2個以上の二特異性抗体分子の会合を含む。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、二特異性T細胞エンゲージャー抗体(BiTE)である。
【0021】
凝集体の存在及び/又はレベルは、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、X線回折、変調示差走査熱量測定(mDSC)及び非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)など、分子のサイズを決定する技術などの当技術分野で公知の技術により決定され得る。一実施形態では、タンパク質凝集体の存在及び/又はレベルは、サイズ排除HPLC(SE-HPLC)により決定される。別の実施形態では、タンパク質凝集体の存在及び/又はレベルは、サイズ排除高速HPLC(SE-UHPLC)により決定される。
【0022】
一態様では、二特異性抗体の凝集体を減少させるための方法が本明細書中で開示され、この方法は、解凍された二特異性抗体をある一定の温度で少なくとも4時間保持することを含み、この二特異性抗体は、解凍前に凍結状態下で保管されていた。本明細書中で使用される場合、「解凍された二特異性抗体」又は「二特異性抗体を含む解凍された製剤原料」という用語は、液体状態の二特異性抗体又は温熱への曝露の結果として凍結状態からもたらされる二特異性抗体を含む液体状態の製剤原料を指すことが理解される。ある一定の実施形態では、解凍された二特異性抗体又は二特異性抗体を含む解凍された製剤原料は、凍結物質不含又は実質的に不含の、液体状態の、二特異性抗体又は二特異性抗体を含む製剤原料である。
【0023】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体は製剤原料である。本明細書中で使用される場合、「製剤原料」という用語は、夾雑タンパク質、脂質及び核酸(例えば、液体培地中に存在するか又は宿主細胞由来(例えば哺乳動物、酵母又は細菌宿主細胞由来)の夾雑タンパク質、脂質及び核酸)及び生物学的夾雑物(例えばウイルス及び細菌夾雑物)から、十分に精製又は単離されており、さらなる実質的な精製及び/又は夾雑物除去段階なく、医薬組成物に処方され得る、組み換えタンパク質(例えば二特異性抗体)を指すと理解される。製剤原料という用語は、十分に精製された組み換えタンパク質(例えば二特異性抗体)及び1つ以上の薬学的に適切な賦形剤を含む組成物を包含する。
【0024】
ある一定の実施形態では、解凍された製剤原料は、組み換えタンパク質(例えば二特異性抗体)に加えて1つ以上の賦形剤を含む組成物である。医薬組成物に適切であるために適切な賦形剤が使用され得る。典型的な賦形剤としては、緩衝液(例えば酢酸緩衝液、グルタミン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、乳酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酒石酸緩衝液、フマル酸緩衝液、マレイン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液又はリン酸緩衝液)、糖類(例えばグルコース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール又はキシリトール)及び界面活性剤(例えばポリソルベート20又はポリソルベート80)が挙げられる。ある一定の実施形態では、解凍された製剤原料は、組み換えタンパク質(例えば二特異性抗体)、緩衝液(例えばグルタミン酸緩衝液又はクエン酸緩衝液)、糖類(例えばスクロース)及び任意選択により界面活性剤(例えばポリソルベート80)を含む組成物である。解凍された製剤原料のpHは約3.0~7.0又は約4.0~約6.0の範囲であり得る。
【0025】
ある一定の実施形態では、高温に曝露することによって、凍結二特異性抗体が解凍される。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、約0℃~約50℃、又は約0℃~約40℃、又は約0℃~約30℃、又は約5℃~約45℃、又は約5℃~約30℃、又は約10℃~約50℃、又は約10℃~約40℃、又は約10℃~約30℃、又は約15℃~約50℃、又は約15℃~約40℃、又は約15℃~約30℃、又は約20℃~約30℃、又は約25℃~約30℃の温度で解凍される。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、約0℃~約25℃、又は約5℃~約25℃、又は約10℃~約25℃、又は約15℃~約25℃、又は約20℃~約25℃の温度で解凍される。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、約0℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、又は約30℃、又は約40℃、又は約45℃、又は約50℃の温度で解凍される。当業者により認識され得るように、二特異性抗体は、均一な温度分布及び/又は解凍中に形成される濃度勾配の破壊を確実にするために、解凍中に穏やかに混合され得る。例えば傾斜振盪器を使用するか又は二特異性抗体の容器を穏やかに転倒撹拌することによって、穏やかな混合が達成され得る。或いは、二特異性抗体は、解凍後に穏やかに混合され得る。
【0026】
ある一定の実施形態では、本方法は、解凍された二特異性抗体をある一定の温度で少なくとも4時間保持することを含む。ある一定の実施形態では、保持温度は、約0℃~約50℃、又は約0℃~約40℃、又は約5℃~約50℃、又は約5℃~約45℃、又は約5℃~約40℃、又は約5℃~約30℃、又は約10℃~約50℃、又は約10℃~約45℃、又は約10℃~約40℃、又は約10℃~約30℃、又は約15℃~約40℃、又は約15℃~約30℃である。ある一定の実施形態では、保持温度は、約15℃~約25℃である。ある一定の実施形態では、保持温度は、約5℃、又は約10℃、又は約15℃、又は約17℃、又は約19℃、又は約20℃、又は約23℃、又は約25℃、又は約27℃、又は約30℃、又は約35℃、又は約40℃、又は約45℃である。ある一定の実施形態では、解凍された二特異性抗体は、約4時間~約120時間、又は約4時間~約96時間、又は約4時間~約72時間、又は約4時間~約48時間、又は約4時間~約24時間、又は約10時間~約120時間、又は約10時間~約96時間、又は約10時間~約72時間、又は約10時間~約48時間、又は約10時間~約24時間、又は約24時間~約120時間、又は約24時間~約100時間、又は約24時間~約96時間、又は約24時間~約72時間、又は約24時間~約48時間、又は約48時間~約100時間、又は約48時間~約96時間、又は約48時間~約72時間、又は約72時間~約100時間、又は約72時間~約96時間、上記の何れか1つの温度で保持される。
【0027】
ある一定の実施形態では、解凍された二特異性抗体は、約4時間~約120時間、又は約4時間~約100時間、又は約4時間~約96時間、又は約4時間~約72時間、又は約4時間~約48時間、又は約4時間~約24時間、約5℃~約45℃の温度で保持される。ある一定の実施形態では、解凍された二特異性抗体は、約4時間~約24時間、又は約10時間~約120時間、又は約10時間~約96時間、又は約10時間~約72時間、又は約10時間~約48時間、又は約10時間~約24時間、約10℃~約30℃の温度で保持される。ある一定の実施形態では、解凍された二特異性抗体は、約4時間~約24時間、又は約4時間~約10時間、約30℃~約45℃の温度で保持される。ある一定の実施形態では、解凍された二特異性抗体は、約4時間~約120時間、又は約4時間~約50時間、又は約4時間~約24時間、又は約8時間~約50時間、又は約15時間~約50時間、又は約4時間~約100時間、又は約8時間~約100時間、又は約15時間~約100時間、又は約24時間~約96時間、又は約24時間~約72時間、又は約24時間~約48時間、又は約48時間~約100時間、又は約48時間~約96時間、又は約48時間~約72時間、又は約72時間~約100時間、又は約72時間~約96時間、約15℃~約45℃の温度で保持される。ある一定の実施形態では、解凍された二特異性抗体は、約4時間~約24時間、又は約10時間~約120時間、又は約10時間~約96時間、又は約10時間~約72時間、又は約10時間~約48時間、又は約10時間~約24時間、約24時間~約96時間、又は約24時間~約72時間、又は約24時間~約48時間、又は約48時間~約100時間、又は約48時間~約96時間、又は約48時間~約72時間、又は約72時間~約100時間、又は約72時間~約96時間、約15℃~約30℃の温度で保持される。ある一定の実施形態では、解凍された二特異性抗体は、約4時間~約24時間、又は約10時間~約48時間、又は約15時間~約30時間、又は約15時間~約24時間、又は約24時間~約120時間、又は約24時間~約96時間、又は約24時間~約72時間、又は約24時間~約48時間、又は約48時間~約100時間、又は約48時間~約96時間、又は約48時間~約72時間、又は約72時間~約100時間、又は約72時間~約96時間、約15℃~約25℃の温度で保持される。別の実施形態では、解凍された二特異性抗体は、約10時間、又は約15時間、又は約20時間、又は約24時間、又は約36時間、又は約48時間、又は約60時間、又は約72時間、又は約84時間、又は約96時間、又は約120時間、約15℃~約30℃の温度で保持される。
【0028】
二特異性抗体は、解凍前に凍結状態下で保管されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、約-20℃~約-50℃の温度で保管されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、約-20℃~約-40℃の温度で保管されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、約-25℃~約-35℃の温度で保管されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、約-20℃、約-30℃、約-35℃、約-40℃、又は約-50℃の温度で保管されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、約-30℃の温度で保管されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、0℃~抗体のガラス転移温度(Tg’)又は抗体を含む組成物のTg’以上の温度で保管されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、約-10℃~抗体のTg’又は抗体を含む組成物のTg’以上の温度で保管されていた。
【0029】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、約1日~約5年間、約-20℃~約-40℃の温度で保管されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、約1週間~約5年間又は約1カ月~約5年間、約-20℃~約-40℃の温度で保管されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1カ月、約6カ月、約18カ月、約1年、約2年、約3年、約4年又は約5年間、約-20℃~約-40℃の温度で保管されていた。
【0030】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特定の値又は範囲を修飾するために使用されるとき、所与の値又は範囲において、記載される値又は範囲の上下、20パーセント、例えば10パーセント、5パーセント、4パーセント、3パーセント、2パーセント又は1パーセントを含め、変動があり得ることを意味すると理解される。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「保管する」又は「保管される」という用語は、二特異性抗体が、ある一定の条件下で、後の使用又はさらなる処理のために置かれるか又は置いておかれることを指す。ある一定の実施形態では、抗体は、上記の何れかの温度下に置かれ、これは、例えば、必要とされる温度を維持し得る、冷凍庫、冷蔵トラック又は出荷装置を使用することにより達成され得る。当業者により認識され得るように、上記の保管温度下で保管した場合、抗体は凍結される。
【0032】
二特異性抗体は、保管温度下でその完全性を維持し得る何れかの適切な容器中で保管され得る。典型的な容器としては、バイアル、瓶、バッグ及びカーボーイが挙げられる。このような容器は、当技術分野で周知であり、市販されている。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、例えば市販されているフレキシブル凍結解凍(flexible freeze thaw)容器など、例えばCelsius(登録商標)FFTシステムなどの使い捨て容器中で保管される。保管下の二特異性抗体の体積は、保管のために使用される容器の体積により決定される。ある一定の実施形態では、容器の体積は、5mL、10mL、100mL、500mL、1リットル(L)、2L、3L、4L、5L、6L、7L、8L、9L、10L又は12Lである。ある一定の実施形態では、保管下の二特異性抗体の容器は、約5mL、約10mL、約100mL、約500mL、約1リットル(L)、約2L、約3L、約4L、約5L、約6L、約7L、約8L、約9L、約10L又は約12Lである。
【0033】
ある一定の実施形態では、保管下の二特異性抗体の濃度は、約0.01mg/mL~約25mg/mL、又は約0.05mg/mL~約25mg/mL、又は約0.1mg/mL~約25mg/mL、又は約0.5mg/mL~約25mg/mL、又は約1mg/mL~約25mg/mLの範囲である。ある一定の実施形態では、保管下の二特異性抗体の濃度は、約1mg/mL~約20mg/mL、又は約1mg/mL~約15mg/mL、又は約1mg/mL~約10mg/mL、又は約1mg/mL~約5mg/mLの範囲である。ある一定の実施形態では、保管下での二特異性抗体の濃度は、約0.01mg/mL、約0.05mg/mL、約0.1mg/mL、約0.5mg/mL、約1mg/mL、約2mg/mL、約3mg/mL、約4mg/mL、約5mg/mL、約6mg/mL、約7mg/mL、約8mg/mL、約9mg/mL、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約13mg/mL、約14mg/mL、約15mg/mL、約16mg/mL、約17mg/mL、約18mg/mL、約19mg/mL、約20mg/mL、又は約25mg/mLである。
【0034】
二特異性抗体を含む組成物を調製するための方法も本明細書中で開示される。ある一定の実施形態では、本方法は、凍結状態で保管されていた二特異性抗体を含む製剤原料を解凍し、解凍した製剤原料をある一定の温度で少なくとも4時間保持することを含む。
【0035】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約-20℃~約-50℃の温度で保管されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約-20℃~約-35℃の温度で保管されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約-25℃~約-35℃の温度で保管されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約-20℃、約-30℃、約-35℃、約-40℃、又は約-50℃の温度で保管されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約-30℃の温度で保管されていた。
【0036】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約1日~約5年間、約-20℃~約-50℃の温度で保管されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約1週間~約5年間又は約1カ月~約5年間、約-20℃~約-40℃の温度で保管されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1カ月、約6カ月、約18カ月、約1年、約2年、約3年、約4年又は約5年間、約-20℃~約-40℃の温度で保管されていた。
【0037】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む組成物を調製するための方法は、二特異性抗体を含む解凍製剤原料をある一定の温度で少なくとも4時間保持することを含み、この製剤原料は、解凍前に製剤原料のガラス転移温度(Tg’)以上である温度で凍結されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約-10℃~製剤原料のTg’以上の温度である温度で凍結されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約-20℃~製剤原料のTg’以上の温度で凍結されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約1日~約5年又は約1週間~約5年間、製剤原料のTg’以上(例えば約-10℃~Tg’以上)である温度で凍結されていた。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約1カ月、約6カ月、約1年、約18カ月、約2年、約3年、約4年又は約5年間にわたり、製剤原料のTg’以上(例えば約-10℃~Tg’以上)である温度で凍結されていた。ある一定の実施形態では、製剤原料のTg’は約-30℃、又は約-32℃、又は約-35℃である。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約1カ月、約6カ月、約1年、約18カ月、約2年、約3年、約4年又は約5年間、約-32℃である温度で凍結されていた。
【0038】
当業者により認識され得るように、二特異性抗体又は二特異性抗体を含む製剤原料のガラス転移温度は、当技術分野で公知の方法、例えば、示差走査熱量測定(DSC)、熱機械的分析(TMA)、動的機械分析(DMA)及び膨張率測定により決定され得る。
【0039】
二特異性抗体を含む製剤原料は、保管/凍結温度下でその完全性を維持し得る何らかの適切な容器中で保管され得たか又は凍結され得た。典型的な容器としては、バイアル、瓶、バッグ及びカーボーイが挙げられる。このような容器は当技術分野で周知であり市販されている。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、例えば市販のフレキシブル凍結解凍(flexible freeze thaw)容器など、例えばCelsius(登録商標)FFTシステムなどの使い捨て容器中で保管される。保管下の二特異性抗体を含む製剤原料の体積は、保管のために使用される容器の体積により決定される。ある一定の実施形態では、容器の体積は、1L、2L、3L、4L、5L、6L、7L、8L、9L、10L又は12Lである。
【0040】
二特異性抗体を含む製剤原料は、高温に曝露することにより解凍され得る。ある一定の実施形態では、製剤原料は、約0℃~約50℃、又は約0℃~約40℃、又は約0℃~約30℃、又は約5℃~約45℃、又は約5℃~約30℃、又は約10℃~約30℃、又は約15℃~約30℃、又は約20℃~約30℃、又は約25℃~約30℃の温度で解凍される。ある一定の実施形態では、製剤原料は、約0℃~約25℃、又は約5℃~約25℃、又は約10℃~約25℃、又は約15℃~約25℃、又は約20℃~約25℃の温度で解凍される。ある一定の実施形態では、製剤原料は、約0℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、約27℃、又は約30℃、又は約40℃、又は約45℃、又は約50℃の温度で解凍される。
【0041】
ある一定の実施形態では、本方法は、約0℃~約50℃、又は約0℃~約40℃、又は約5℃~約50℃、又は約5℃~約45℃、又は約10℃~約50℃、又は約10℃~約45℃、又は約10℃~約30℃、又は約15℃~約40℃、又は約15℃~約30℃の温度で解凍製剤原料を保持することを含む。ある一定の実施形態では、解凍製剤原料は、約15℃~約25℃の温度で保持される。ある一定の実施形態では、解凍製剤原料は、約5℃、又は約10℃、又は約15℃、又は約17℃、又は約19℃、又は約21℃、又は約23℃、又は約25℃、又は約27℃、又は約29℃、又は約40℃、又は約45℃の温度で保持される。ある一定の実施形態では、解凍製剤原料は、上記温度の何れか1つで、約4時間~約150時間、又は約4時間~約100時間、又は約4時間~約72時間、又は約4時間~約48時間、又は約4時間~約24時間、又は約10時間~約150時間、又は約10時間~約100時間、又は約10時間~約72時間、又は約10時間~約48時間、又は約10時間~約24時間、又は約24時間~約150時間、又は約24時間~約120時間、又は約24時間~約100時間、又は約24時間~約96時間、又は約24時間~約72時間、又は約24時間~約48時間にわたり、約48時間~約100時間、又は約48時間~約96時間、又は約48時間~約72時間、又は約72時間~約100時間、又は約72時間~約96時間、保持される。
【0042】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む解凍製剤原料は、少なくとも約4時間、約5℃~約45℃の温度で保持される。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む解凍製剤原料は、約4時間~約120時間、又は約4時間~約96時間、又は約4時間~約72時間、又は約4時間~約48時間、又は約4時間~約24時間、約5℃~約45℃の温度で保持される。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む解凍製剤原料は、約4時間~約100時間、又は約4時間~約50時間、約10℃~約45℃の温度で保持される。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む解凍製剤原料は、約4時間~約150時間、又は約4時間~約120時間、又は約4時間~約96時間、又は約4時間~約72時間、又は約4時間~約48時間、又は約4時間~約24時間、又は約10時間~約120時間、又は約10時間~約96時間、又は約10時間~約72時間、又は約10時間~約48時間、又は約10時間~約24時間、約15℃~約40℃の温度で保持される。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む解凍製剤原料は、約10時間~約96時間、又は約10時間~約72時間、又は約10時間~約48時間、又は約10時間~約24時間、又は約24時間~約96時間、又は約24時間~約72時間、又は約24時間~約48時間、又は約48時間~約100時間、又は約48時間~約96時間、又は約48時間~約72時間、又は約72時間~約100時間、又は約72時間~約96時間、約15℃~約30℃の温度で保持される。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む解凍製剤原料は、約15時間~約96時間、又は約15時間~約72時間、又は約15時間~約48時間、又は約24時間~約96時間、又は約24時間~約72時間、又は約24時間~約48時間、又は約48時間~約100時間、又は約48時間~約96時間、又は約48時間~約72時間、又は約72時間~約100時間、又は約72時間~約96時間、約15℃~約25℃の温度で保持される。一実施形態では、二特異性抗体を含む解凍製剤原料は、約10時間~約96時間、又は約10時間~約72時間、又は約10時間~約48時間、又は約10時間~約24時間、又は約24時間~約96時間、又は約24時間~約72時間、又は約24時間~約48時間、又は約48時間~約96時間、又は約72時間~約96時間、約10℃~約30℃の温度で保持される。別の実施形態では、二特異性抗体を含む解凍製剤原料は、約4時間、又は約10時間、又は約24時間、又は約48時間、又は約60時間、又は約72時間、又は約96時間、又は約120時間、又は約150時間、約10℃~約30℃の温度で保持される。
【0043】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む解凍製剤原料は、二特異性抗体を含む製剤原料中の凝集対のレベルが、凍結状態下での保管前とほぼ同じレベルに低下するように、ある時間にわたり約5℃~約45℃の温度で保持される。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む解凍された製剤原料は、約4時間~二特異性抗体を含む製剤原料中の凝集体のレベルが凍結状態下での保管の前とほぼ同じレベルに低下する時間までの期間にわたり、約5℃~約45℃の温度で保持される。当業者により認識され得るように、解凍製剤原料中の凝集体のレベルを特定の温度での凍結状態下での保管の前とほぼ同じレベルに低下させるために必要な時間は、当技術分野で公知であり、使用される方法(例えばSE-UHPLC)を使用して、凍結状態下での保管前の製剤原料中で、及び融解後の様々な時点で凝集体のレベルを測定することにより決定され得、例えば実施例5を参照のこと。
【0044】
ある一定の実施形態では、製剤原料は、製剤原料が解凍される温度と同じ温度で保持される。例えば、二特異性抗体を含む製剤原料は、例えば約5℃~約45℃の温度などの上記で開示される解凍及び保持温度の何れかの温度で解凍され得、次に、解凍後少なくとも4時間(例えば、約4時間~約150時間、又は約4時間~約120時間、又は約4時間~約96時間、又は約4時間~約72時間、又は約4時間~約48時間、又は約4時間~約24時間、又は約8時間~約96時間、又は約8時間~約72時間、又は約8時間~約48時間、又は約24時間~約72時間、又は約24時間~約48時間)、同じ温度で保持され得る。製剤原料が解凍されるか否かは、当業者により容易に判断され得る。
【0045】
ある一定の実施形態では、製剤原料は、製剤原料が解凍される温度と同じ温度で保持され、製剤原料は、二特異性抗体を含む製剤原料中の凝集体のレベルが凍結状態下での保管前とほぼ同じレベルに低下するまで全時間(解凍及び保持のための時間)にわたり同じ温度下に置く。実施例で示されるように、当業者は、当技術分野で公知の方法、例えばSE-UHPLCを使用して、凍結前及び解凍後の様々な時点の製剤原料中の凝集体のレベルを決定し得る。一実施形態では、製剤原料は、約30時間~約100時間の全時間、又は約30時間~約90時間の全時間、又は約30時間~約80時間の全時間、又は約30時間~約70時間の全時間、又は約30時間~約60時間の全時間、又は約30時間~約50時間の全時間にわたり、約5℃~約45℃の同じ温度で、解凍され、保持される。一実施形態では、製剤原料は、約30時間~約100時間の全時間、又は約30時間~約90時間の全時間、又は約30時間~約80時間の全時間、又は約30時間~約70時間の全時間、又は約30時間~約60時間の全時間、又は約30時間~約50時間の全時間にわたり、約15℃~約30℃の同じ温度で、解凍され、保持される。
【0046】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料を解凍中に穏やかに混合する。穏やかな混合は、例えば傾斜振盪器を使用するか又は製剤原料の容器を穏やかに転倒撹拌することによって達成され得る。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料を解凍中に混合せず、代わりに解凍後に製剤原料を穏やかに混合する。
【0047】
ある一定の実施形態では、製剤原料は、約0.01mg/mL~約25mg/mL、又は約0.05mg/mL~約25mg/mL、約0.1mg/mL~約25mg/mL、約0.5mg/mL~約25mg/mL、又は約1mg/mL~約25mg/mLの濃度で二特異性抗体を含む。ある一定の実施形態では、製剤原料は、約1mg/mL~約20mg/mL、又は約1mg/mL~約15mg/mL、又は約1mg/mL~約10mg/mL、又は約1mg/mL~約5mg/mLの濃度で二特異性抗体を含む。ある一定の実施形態では、製剤原料は、約0.01mg/mL、約0.05mg/mL、約0.1mg/mL、約0.5mg/mL、約1mg/mL、約2mg/mL、約3mg/mL、約4mg/mL、約5mg/mL、約6mg/mL、約7mg/mL、約8mg/mL、約9mg/mL、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約13mg/mL、約14mg/mL、約15mg/mL、約16mg/mL、約17mg/mL、約18mg/mL、約19mg/mL、約20mg/mL、又は約25mg/mLの濃度で二特異性抗体を含む。
【0048】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約pH3.5~約pH7.5又は約pH4.0~約pH7.0の範囲のpHを有する。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約pH4.0~約pH6.5の範囲のpHを有する。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約pH4.0~約pH4.8の範囲のpHを有する。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、約3.5、約4.0、約4.2、約4.4、約4.6、約4.8、約5.0、約5.2、約5.4、約5.6、約5.8、約6、約6.2、約6.4、約6.6、約7.0又は約7.5のpHを有する。
【0049】
ある一定の実施形態では、本方法は、製剤原料をろ過することをさらに含む。ある一定の実施形態では、ろ過段階は、滅菌ろ過を含む。滅菌ろ過は、当技術分野で周知であり、一般的に使用される。例えば、滅菌ろ過は、液流の方向がろ過媒体(例えば膜)に対して垂直であり、精製液体がろ過媒体を通過する、Normal Flow Filtration(NFF)を使用して行われ得る。ある一定の実施形態では、二特異性抗体の凝集を減少させ得る薬剤、例えばアミノ酸、ポリオール、例えばベンジルアルコール、シクロデキストラン、デキストラン及びポリエチレングリコール(PEG)などを製剤原料に添加し得る。
【0050】
ある一定の実施形態では、本方法により調製される組成物は医薬組成物である。本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、それを必要とする患者(例えばヒト)への注射及び/又は投与に適した二特異性抗体を含む処方物を指すものと理解される。より詳しくは、医薬組成物は実質的に無菌であり、レシピエントに対して過度な毒性又は感染性を有する如何なる物質も含有しない。
【0051】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む組成物を調製するための方法は、本組成物を製剤形態に分割することをさらに含む。このような製剤形態は、単位剤形で、例えばアンプル、単回投与容器において、又は複数回投与容器において与えられ得る。製剤は、必要に応じて、二特異性抗体を含有する1つ以上の単位剤形を含有し得る、バイアル、パック又はディスペンサー装置中で与えられ得る。
【0052】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む組成物を調製するための方法は、本組成物を凍結乾燥させることをさらに含む。ある一定の実施形態では、凍結乾燥段階は、本組成物を製剤形態に分割した後に行われる。医薬組成物を凍結乾燥させるための方法は、当技術分野で周知であり、一般的に使用される。例えば、Cryopreservation and Freeze-Drying Protocols(J.G.Day and G.N.Stacey ed.,Springer 2017)を参照。凍結乾燥段階は、分割段階前又は後に行われ得る。
【0053】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む組成物を調製するための方法は、本組成物を噴霧乾燥することをさらに含む。医薬組成物を噴霧乾燥するための方法は、当技術分野で周知であり、一般的に使用される。例えば、Niven,R.,Prestrelski,S.J.,Treuheit,M.J.,Ip,A.Y.and Arakawa,T.Protein Nebulization II.Stabilization of G-CSF to air-jet nebulization and the role of protectants.(1996)Int.J.Pharm. 127:191-20を参照。噴霧乾燥段階は、分割段階の前又は後に行われ得る。
【0054】
本明細書中で開示される方法は、二特異性抗体の凝集体を減少させる。本方法は、解凍された抗体が、ある一定の温度、例えば約5℃~約45℃で、少なくとも4時間(例えば約4時間~約96時間の期間)保持される場合、凍結状態下(例えば約-20℃~約-40℃)での保管中に形成された凝集体を減少させるという驚くべき知見に基づく。何らかの理論により縛られることを望むものではないが、凝集体は、保持期間後に非凝集状態に戻ると考えられる。
【0055】
ある一定の実施形態では、凝集体はHMW凝集体を含む。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、保持期間後、HMW凝集体約5%未満又は約3%未満又は約2%未満又は約1%未満又は約0.5%未満を含む。ある一定の実施形態では、凍結状態下で形成されるHMW凝集体が凍結前と同じレベル又は実質的に同じレベルに減少する。ある一定の実施形態では、HMW凝集体は、二特異性抗体の二量体を含む。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、保持期間後、二特異性抗体の二量体約1%未満を含む。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、保持期間後、二特異性抗体の二量体約0.5%未満を含む。
【0056】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、保持期間後、HMW凝集体約5%未満又は約3%未満又は約2%未満又は約1%未満又は約0.5%未満を含む。ある一定の実施形態では、HMW凝集体は二特異性抗体の二量体を含む。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、保持期間後、二特異性抗体の二量体約1%未満を含む。ある一定の実施形態では、二特異性抗体を含む製剤原料は、保持期間後、二特異性抗体の二量体約0.5%未満を含む。
【0057】
本明細書中で開示される方法は、二特異性抗体又は二特異性抗体を含む製剤原料の安定性に影響がないか又は実質的に影響がない。ある一定の実施形態では、本方法は、凍結前の二特異性抗体又は製剤原料と比較して、同じ又は実質的に同じ色及び/又は透明性を有する、二特異性抗体又は二特異性抗体を含む製剤原料を作製する。ある一定の実施形態では、本方法は、凍結前に、二特異性抗体又は製剤原料と比較して、同じ又は実質的に同じチャージバリアントを有する、二特異性抗体又は二特異性抗体を含む製剤原料を作製する。ある一定の実施形態では、本方法は、凍結前の二特異性抗体又は二特異性抗体を含む製剤原料と比較して、同じ又は実質的に同じ効力を有する二特異性抗体又は二特異性抗体を含む製剤原料を作製する。ある一定の実施形態では、本方法は、凍結前の二特異性抗体又は二特異性抗体を含む製剤原料と比較して、同じ又は実質的に同じクリッピングレベルを有する二特異性抗体又は二特異性抗体を含む製剤原料を作製する。ある一定の実施形態では、本方法は、凍結前の二特異性抗体又は二特異性抗体を含む製剤原料と比較して、同じ又は実質的に同じ化学的修飾(例えばグリコシル化)を有する二特異性抗体又は二特異性抗体を含む製剤原料を作製する。ある一定の実施形態では、本方法は、凍結前の二特異性抗体又は二特異性抗体を含む製剤原料と比較して、同じ又は実質的に同じpHを有する二特異性抗体又は二特異性抗体を含む製剤原料を作製する。
【0058】
二特異性抗体
本明細書中で開示される方法で使用され得る二特異性抗体は、凍結状態下で、例えば-20℃~-50℃の範囲の温度で、例えば抗体の異なる領域間の疎水性相互作用ゆえに凝集する傾向があるものを含む。本明細書中で使用される場合、「二特異性抗体」という用語は、2つの異なる抗原又は標的又はエピトープに特異的に結合可能な抗体を指すものとして理解される。ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、ある抗原又は標的に特異的に結合する第1のドメインと、別の抗原又は標的に特異的に結合する第2のドメインと、を含む。ある一定の実施形態では、二特異性抗体の第1のドメインは、標的細胞表面抗原に特異的に結合し、二特異性抗体の第2の結合ドメインは、ヒトCD3、T細胞上のT細胞受容体複合体のサブユニットに特異的に結合する。ある一定の好ましい実施形態では、二特異性抗体は、二特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)抗体コンストラクトである。例えば国際公開第2008119567号パンフレット及び国際公開第2017134140号パンフレットを参照。
【0059】
本明細書中で下のように、「ドメインが特異的に結合する」又は「結合するドメイン」という用語は、ある種の標的又はエピトープに特異的に結合する/それと相互作用する/それを認識するドメインを指すものと理解される。抗体コンストラクトの結合ドメインは、標的結合を可能にする抗体の最小構造要件を含む。この最小要件は、少なくとも3つの軽鎖CDR(即ち軽鎖可変領域(VL)領域のCDR1、CDR2及びCDR3)及び/又は3つの重鎖CDR(即ち重鎖可変領域(VH)領域のCDR1、CDR2及びCDR3)、好ましくは6つ全てのCDRの存在によって定義され得る。好ましくは、これらのCDRは、抗体VL及び抗体VHのフレームワークに含まれる。この用語は、全長抗体及び抗体変異体の断片を含む。抗体断片、抗体変異体又は結合ドメインの例としては、次のもの:(1)Fab断片、VL、VH、CL及びCH1ドメインを有する一価断片;(2)F(ab’)断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結される2つのFab断片を有する二価断片;(3)2つのVH及びCH1ドメインを有するFd断片;(4)抗体のシングルアームのVL及びVHドメインを有するFv断片、(5)VHドメインを有する、dAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);(6)単離された相補性決定領域(CDR)及び(7)1本鎖Fv(scFv)が挙げられ、好ましいのは後者(例えばscFv-ライブラリ由来)である。さらなる抗体断片としては、VH、VHH、VL、(s)dAb、Fab’及び「r IgG」(「半抗体」)が挙げられる。
【0060】
「抗体コンストラクト」という用語は、その構造及び/又は機能が、抗体、例えば全長又は完全免疫グロブリン分子の構造及び/又は機能に基づいており、及び/又は抗体若しくはその断片の可変重鎖(VH)及び/又は可変軽鎖(VL)ドメインから引き出される分子を指すと理解される。従って、抗体コンストラクトは、その特異的な標的又は抗原に結合可能である。抗体コンストラクトとしては、抗体バリアントとも呼ばれる、抗体の修飾断片、例えばscFv、ジ-scFv又はバイ(s)-scFv、scFv-Fc、scFv-ジッパー、scFab、Fab、Fab、ダイアボディー、1本鎖ダイアボディー、タンデムダイアボディー(Tandab’s)、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFv、「マルチボディ」、例えばトリアボディー又はテトラボディー及び単一ドメイン抗体、例えばナノボディー又は、他のV領域若しくはドメインに非依存的に抗原若しくはエピトープに特異的に結合するVHH、VH若しくはVLであり得る1つのみの可変ドメインを含む単一可変ドメイン抗体も挙げられる。
【0061】
本明細書中で使用される場合、「1本鎖Fv」、「1本鎖抗体」又は「scFv」という用語は、重鎖及び軽鎖の両方由来の可変領域を含むが、定常領域を欠く単一ポリペプチド鎖抗体断片を指すと理解される。通常、一本鎖抗体は、抗原結合を可能にする所望の構造を形成可能にする、VHとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。1本鎖抗体は、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)においてPluckthunによって詳細に論じられる。1本鎖抗体を作製する様々な方法が知られており、米国特許第4,694,778号明細書及び同第5,260,203号明細書;国際公開第88/01649号パンフレット;Bird(1988)Science 242:423-442;Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;Ward et al.(1989)Nature 334:54454;Skerra et al.(1988)Science 242:1038-1041に記載されるものが挙げられる。具体的な実施形態では、1本鎖抗体は、二特異性ヒト及び/又はヒト化及び/又は合成抗体でもあり得る。
【0062】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体の第1及び第2のドメインは、「二特異性1本鎖抗体コンストラクト」、より好ましくは二特異性「1本鎖Fv」(scFv)である。Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHが、個別の遺伝子によってコードされるものの、それらは、組み換え法を用いて、VL及びVH領域が一価分子を形成するように対形成する単一のタンパク質鎖としてそれらの作製を可能にする、本明細書中に記載のような、合成リンカーによって連結され得る;例えば、Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci USA 85:5879-5883を参照。これらの抗体断片は、当業者にとって公知の従来技術を用いて得られ、その断片は、完全又は全長抗体と同じように機能について評価される。故に、scFvは通常、約10~約25アミノ酸、好ましくは約15~20アミノ酸の短いリンカーペプチドで連結される、免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。リンカーは通常、柔軟性のためにグリシン、並びに溶解性のためにセリン又はスレオニンに富み、VHのN末端をVLのC末端に連結するか又はその逆の何れかであり得る。このscFvは、定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。
【0063】
二特異性1本鎖可変断片(形式(scFv)を有するバイ-scFv又はジ-scFv)は、2個のscFv分子を(例えば本明細書中に記載のようなリンカーを用いて)連結することにより改変され得る。連結は、2個のVH領域及び2個のVL領域を有する単一のペプチド鎖を作製して、タンデムscFvを生成させることによってなされ得る(例えば、Kufer P.et al.,(2004)Trends in Biotechnology 22(5):238-244を参照)。別の可能性は、2つの可変領域を一緒に折り畳むには短すぎる(例えば約5アミノ酸の)リンカーペプチドを用いてscFv分子を作製し、scFvを二量体化させることである。このタイプは、ダイアボディーとして知られている(例えば、Hollinger,Philipp et al.,(July 1993)Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 90(14):6444-8を参照)。
【0064】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体の第1及び第2のドメインは、それぞれ、標的細胞表面抗原及びヒトCD3に特異的に結合する。ある一定の実施形態では、二特異性抗体の第1及び第2のドメインは、(scFv)、scFv-シングルドメインmAb、ダイアボディー及び何れかの形式のオリゴマーからなる群から選択される形式で二特異性抗体コンストラクトを形成する。
【0065】
ある一定の実施形態では、第1、第2又は第1及び第2のドメイン何れかが、単一ドメイン抗体、それぞれ、単一ドメイン抗体の可変ドメイン又は少なくともCDRを含み得る。単一ドメイン抗体は、他のV領域又はドメインに非依存的に、特異抗原に選択的に結合可能である1つのみの(単量体の)抗体可変ドメインを含む。最初の単一ドメイン抗体は、ラクダにおいて見出される重鎖抗体から作製され、これらは、VHH断片と呼ばれる。軟骨魚類も、それからVNAR断片と呼ばれる単一ドメイン抗体を得ることのできる重鎖抗体(IgNAR)を有する。代替的なアプローチは、例えば、ヒト又はげっ歯類由来の一般的な免疫グロブリン由来の二量体可変ドメインを単量体に分割し、それによって単一ドメインAbとしてVH又はVLを得ることである。単一ドメイン抗体に関する大部分の研究は、現時点で重鎖可変ドメインに基づいているが、軽鎖由来のナノボディーも標的エピトープに特異的に結合することが示されている。単一ドメイン抗体の例は、sdAb、ナノボディー又は単一可変ドメイン抗体と呼ばれる。
【0066】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体の第1の(結合)ドメインは標的細胞表面抗原に結合する。一部の実施形態では、標的細胞表面抗原はCD70である。CD70(CD27L又はTNFSF7としても知られる)は、正常な発現が活性化T及びB細胞、成熟樹状細胞及び胸腺髄質上皮細胞のサブセットに制限されるII型膜内在性タンパク質である。
【0067】
他の実施形態では、標的細胞表面抗原は腫瘍抗原である。本明細書中で使用される場合、「腫瘍抗原」という用語は、腫瘍細胞上に提示されるそれらの抗原を指すものと理解される。これらの抗原は、細胞外部分とともに細胞表面上に提示され得、多くの場合、分子の膜貫通部分及び細胞質部分を併せ持つ。これらの抗原は、腫瘍細胞によってのみ提示され得、正常細胞によって決して提示され得ない。腫瘍抗原は、腫瘍細胞上に限って発現され得るか、又は正常細胞と比較して腫瘍特異的突然変異を示し得る。この場合、それらは、腫瘍特異抗原と呼ばれる。より一般的な抗原は、腫瘍細胞及び正常細胞によって提示される抗原であり、それらは、腫瘍関連抗原と呼ばれる。これらの腫瘍関連抗原は、正常細胞と比較して過剰発現され得るか、又は正常組織と比較して、腫瘍組織のよりコンパクトさに欠ける構造ゆえに、腫瘍細胞において抗体結合のために接近可能である。一部の実施形態では、第2の(結合)ドメインは、CD19、CD33、上皮増殖因子受容体変異体iii(EGFRvIII)、メソテリン(MSLN)、カドヘリン19(CDH19)、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)、デルタ様リガンド3(DLL3)、胎盤カドヘリン(CDH3)、B細胞成熟抗原(BCMA)又は前立腺特異的膜抗原(PSMA)から選択される腫瘍抗原に結合する。一部の実施形態では、腫瘍抗原はヒト腫瘍抗原である。
【0068】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体の第2の(結合)ドメインは、T細胞の表面上のヒトCD3のイプシロンに結合する。ある一定の好ましい実施形態では、二特異性抗体の第2のドメインは、ヒトCD3ε鎖の細胞外エピトープに結合する。一部の好ましい実施形態では、ヒトCD3の細胞外エピトープに結合する二特異性抗体の第2のドメインは、次から選択されるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むVL領域を含む:
(a)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号27で示されるようなCDR-L1、国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号28で示されるようなCDR-L2及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号29で示されるようなCDR-L3;
(b)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号117で示されるようなCDR-L1、国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号118で示されるようなCDR-L2及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号119で示されるようなCDR-L3;及び
(c)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号153で示されるようなCDR-L1、国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号154で示されるようなCDR-L2及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号155で示されるようなCDR-L3。
【0069】
別の好ましい実施形態では、二特異性抗体の第2のドメインは、ヒトCD3イプシロン鎖の細胞外エピトープに結合し、次から選択されるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3を含むVH領域を含む:
(a)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号12で示されるようなCDR-H1、国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号13で示されるようなCDR-H2及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号14で示されるようなCDR-H3;
(b)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号30で示されるようなCDR-H1、国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号31で示されるようなCDR-H2及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号32で示されるようなCDR-H3;
(c)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号48で示されるようなCDR-H1、国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号49で示されるようなCDR-H2及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号50で示されるようなCDR-H3;
(d)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号66で示されるようなCDR-H1、国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号67で示されるようなCDR-H2及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号68で示されるようなCDR-H3;
(e)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号84で示されるようなCDR-H1、国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号85で示されるようなCDR-H2及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号86で示されるようなCDR-H3;
(f)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号102で示されるようなCDR-H1、国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号103で示されるようなCDR-H2及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号104で示されるようなCDR-H3;
(g)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号120で示されるようなCDR-H1、国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号121で示されるようなCDR-H2及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号122で示されるようなCDR-H3;
(h)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号138で示されるようなCDR-H1、国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号139で示されるようなCDR-H2及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号140で示されるようなCDR-H3;
(i)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号156で示されるようなCDR-H1、国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号157で示されるようなCDR-H2及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号158で示されるようなCDR-H3;及び
(j)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号174で示されるようなCDR-H1、国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号175で示されるようなCDR-H2及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号176で示されるようなCDR-H3。
【0070】
ある一定の好ましい実施形態では、上記の3群のVL CDRが、第2の結合ドメイン内でVH CDRの上記の10個の群と組み合わせられて、CDR1~3をそれぞれ含む(30)群を形成する。
【0071】
CD3に結合する第2のドメインが、国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号15、19、33、37、51、55、69、73、87、91、105、109、123、127、141、145、159、163、177又は181で示されるような、又は配列番号15又は24として今回の配列リストで示されるようなVH領域の群から選択されるVH領域を含むことも好ましい。
【0072】
CD3に結合する第2のドメインが、国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号17、21、35、39、53、57、71、75、89、93、107、111、125、129、143、147、161、165、179若しくは183で示されるような、又は配列番号16又は25として今回の配列リストで示されるようなVL領域の群から選択されるVL領域を含むことが好ましい。
【0073】
より好ましくは、二特異性抗体は、次から選択されるVL領域及びVH領域を含むCD3に結合する第2のドメインを特徴とする:
(a)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号17又は21で示されるようなVL領域及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号15又は19で示されるようなVH領域;
(b)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号35又は39で示されるようなVL領域及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号33又は37で示されるようなVH領域;
(c)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号53又は57で示されるようなVL領域及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号51又は55で示されるようなVH領域;
(d)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号71又は75で示されるようなVL領域及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号69又は73で示されるようなVH領域;
(e)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号89又は93で示されるようなVL領域及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号87又は91で示されるようなVH領域;
(f)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号107又は111で示されるようなVL領域及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号105又は109で示されるようなVH領域;
(g)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号125又は129で示されるようなVL領域及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号123又は127で示されるようなVH領域;
(h)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号143又は147で示されるようなVL領域及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号141又は145で示されるようなVH領域;
(i)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号161又は165で示されるようなVL領域及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号159又は163で示されるようなVH領域;又は
(j)国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号179又は183で示されるようなVL領域及び国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号177又は181で示されるようなVH領域。
【0074】
また好ましい実施形態では、二特異性抗体は、配列番号16又は25で示されるようなVL領域及び配列番号15又は24として今回の配列リストで示されるようなVH領域を含むCD3に結合する第2のドメインを含む。
【0075】
上記の二特異性抗体の好ましい実施形態は、国際公開第2008/119567号パンフレットの配列番号23、25、41、43、59、61、77、79、95、97、113、115、131、133、149、151、167、169、185又は187から選択されるか又は配列番号26として今回の配列リストで示されるアミノ酸配列を含むCD3に結合する第2のドメインを特徴とする。
【0076】
好ましい実施形態によれば、第1の及び/又は第2のドメインは次の方式を有する:VH領域とVL領域との対は、1本鎖抗体(scFv)の形式である。VH及びVL領域は、VH-VL又はVL-VHの順に配置される。VH領域がリンカー配列のN末端に配置され、VL領域がリンカー配列のC末端に配置されることが好ましい。ある一定の実施形態では、二特異性抗体の第1及び第2のドメインは、これらの形式の何れかの(scFv)、scFv-単一ドメインmAb、ダイアボディー又はオリゴマーから選択される形式の二特異性抗体を形成する。
【0077】
ある一定の好ましい実施形態では、二特異性抗体は第3のドメインをさらに含む。ある一定の実施形態では、第3のドメインは1本鎖Fc(scFc)ドメインである。ある一定の好ましい実施形態では、scFcドメインはscFc半減期延長(HLE)ドメインである。
【0078】
「Fc」部分又は「Fc」単量体は、免疫グロブリン分子のCH2ドメインの機能を有する少なくとも1つのドメイン及びCH3ドメインの機能を有する少なくとも1つのドメインを含むポリペプチドを指すと理解される。このCHドメインを含むポリペプチドは「ポリペプチド単量体」である。Fc単量体は、少なくとも重鎖の第1の定常領域免疫グロブリンドメイン(CH1)を除く免疫グロブリンの定常領域の断片を含むが、少なくとも、1つのCH2ドメインの機能的部分及び1つのCH3ドメインの機能的部分を維持しており、CH2ドメインがCH3ドメインに対してアミノ末端側にある、ポリペプチドであり得る。好ましい実施形態では、Fc単量体は、Ig-Fcヒンジ領域の一部、CH2領域及びCH3領域を含み、ヒンジ領域がCH2ドメインに対してアミノ末端側にあるポリペプチド定常領域であり得る。二特異性抗体のヒンジ領域は二量体化を促進すると考えられる。このようなFcポリペプチド分子は、例えば免疫グロブリン領域のパパイン消化により得られ得る(当然ではあるが2個のFcポリペプチドの二量体が得られる)。別の実施形態では、Fc単量体は、CH2領域及びCH3領域の一部を含むポリペプチド領域であり得る。このようなFcポリペプチド分子は、例えば免疫グロブリン分子のペプシン消化により得られ得る。一実施形態では、Fc単量体のポリペプチド配列は、実質的に次のFcポリペプチド配列と同様である:IgG1 Fc領域、IgG2 Fc領域、IgG3 Fc領域、IgG4 Fc領域、IgM Fc領域、IgA Fc領域、IgD Fc領域及びIgE Fc領域。(例えば、Padlan,Molecular Immunology,31(3),169-217(1993)を参照)。一実施形態では、Fc単量体は、国際公開第2014/153063号パンフレットで開示されるようなアミノ酸配列を有する。免疫グロブリン間にいくつかのバリエーションがあるため、及び単に明確にするために、Fc単量体は、IgA、IgD及びIgGの最後の2個の重鎖定常領域免疫グロブリンドメイン並びにIgE及びIgMの最後の3個の重鎖定常領域免疫グロブリンドメインを指すと理解される。言及されるとおり、Fc単量体は、これらのドメインに対してN末端側にフレキシブルなヒンジも含み得る。IgA及びIgMの場合、Fc単量体は、J鎖を含み得る。IgGの場合、Fc部分は、免疫グロブリンドメインCH2及びCH3並びに最初の2つのドメインとCH2との間のヒンジを含む。Fc部分の境界は変動し得るが、機能的ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含むヒトIgG重鎖Fc部分に対する例は、例えば、Kabatに従うナンバリングで、CH3ドメインのカルボキシル末端の残基D231(ヒンジドメインの-以下の表1のD234に相当)~P476、それぞれL476(IgG4の場合)を含むように定義され得る。ペプチドリンカーを介して互いに融合される2個のFc部分又はFc単量体は、本発明の抗体コンストラクトの第3のドメインを定め、これはscFcドメインとも定められ得る。
【0079】
IgGヒンジ領域は、表1で示されるようなKabatナンバリングを使用して類似性により同定され得る。第3のドメインのヒンジドメイン/領域は、KabatナンバリングによるD234~P243の一続きのIgG配列に対応するアミノ酸残基を含むことが想定される。第3のドメインのヒンジドメイン/領域がIgG1ヒンジ配列DKTHTCPPCP(配列番号191)を含むか又はそれからなることが同様に想定される(下記表1で示されるような一続きのD234~P243に対応-配列のバリエーションも想定されるが、ただしヒンジ領域は依然として二量体化を促進するものとする)。好ましい実施形態では、抗体コンストラクトの第3のドメイン中のCH2ドメインのKabat位置314のグリコシル化部位は、N314X置換によって除去され、ここで、Xは、Qを除く何れかのアミノ酸である。この置換は、好ましくはN314G置換である。より好ましい実施形態では、このCH2ドメインは、以下の置換(位置はKabatに従う)V321C及びR309C(これらの置換は、Kabat位置309及び321でドメイン内システインジスルフィド架橋を導入する)をさらに含む。
【0080】
【表1】
【0081】
一部の実施形態では、ヒンジドメイン/領域は、IgG2サブタイプヒンジ配列ERKCCVECPPCP(配列番号192)、IgG3サブタイプヒンジ配列ELKTPLDTTHTCPRCP(配列番号193)又はELKTPLGDTTHTCPRCP(配列番号194)及び/又はIgG4サブタイプヒンジ配列ESKYGPPCPSCP(配列番号195)を含むか又はそれからなる。IgG1サブタイプヒンジ配列は、次の配列EPKSCDKTHTCPPCPであり得る(表1及び配列番号196で示されるとおり)。従って、これらのコアヒンジ領域も二特異性抗体に関連して想定される。
【0082】
IgG CH2及びIgG CD3ドメインの位置及び配列は、表2に記述されるようなKabatナンバリングを用いて類似性によって同定され得る。
【0083】
【表2】
【0084】
一実施形態では、第1又は両方のFc単量体のCH3ドメイン中の太字で強調表示されたアミノ酸残基が欠失している。
【0085】
第1のドメインを第2のドメインと融合させるために、又は第1のドメイン若しくは第2のドメインを第3のドメインと融合させるためにリンカーが使用される場合、このリンカーは、好ましくは、第1及び第2のドメインの各々が互いから独立してそれらの異なる結合特異性を保持することを確実にするために十分な長さ及び配列のリンカーである。二特異性抗体コンストラクト中の少なくとも2つの結合ドメイン(又は2つの可変ドメイン)を接続するペプチドリンカーの場合、それらのペプチドリンカーは、数個のアミノ酸残基のみを含むこと、例えば12アミノ酸残基以下を含むことが好ましい。従って、12、11、10、9、8、7、6又は5アミノ酸残基のペプチドリンカーが好ましい。5アミノ酸未満の想定されるペプチドリンカーは、4、3、2又は1アミノ酸を含み、ここでは、Glyリッチリンカーが好ましい。
【0086】
特に好ましい「単一」アミノ酸「ペプチドリンカー」はGlyである。従って、ペプチドリンカーは、単一のアミノ酸Glyからなり得る。好ましい実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、即ちGly4Ser(配列番号197)又はそのポリマー、即ち(Gly4Ser)x(式中、xは1以上の整数(例えば2又は3)である)を特徴とする。別の好ましい実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、即ちGly4Ser(配列番号197)又はそのポリマー、即ち(Gly4Ser)x(式中、xは、5以上の整数(例えば5、6、7、8など又はそれを超える)を有する。ある一定の実施形態では、xが6であること好ましい((Gly4Ser)6)。二次構造の促進がないことを含むペプチドリンカーの特徴は、当技術分野で公知であり、例えばDall’Acqua et al.(Biochem.(1998)37,9266-9273),Cheadle et al.(Mol Immunol(1992)29,21-30)及びRaag and Whitlow(FASEB(1995)9(1),73-80)に記載されている。いかなる二次構造も促進しないペプチドリンカーが好ましい。融合され、操作可能に連結される二特異性1本鎖コンストラクトを調製し、それらを哺乳動物細胞又は細菌において発現させるための方法は、当技術分野で周知である(例えば国際公開第99/54440号パンフレット又はSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,2001)。
【0087】
第1及び第2のドメインの融合のためのペプチドリンカーの好ましい実施形態は、Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、即ちGly4Serのアミノ酸配列(配列番号197)を有する。第2及び第3のドメインの融合のためのペプチドリンカーの好ましいリンカー実施形態は、(Gly)4-リンカーであり、それぞれG4-リンカーである。
【0088】
第3のドメインのポリペプチド単量体(「Fc部分」又は「Fc単量体」)が互いに融合されるペプチドリンカーは、好ましくは、少なくとも25アミノ酸残基(25、26、27、28、29、30など)を含む。より好ましくは、このペプチドリンカーは、少なくとも30アミノ酸残基(30、31、32、33、34、35など)を含む。リンカーが最大40アミノ酸残基を含むことも好ましく、より好ましくは最大35アミノ酸残基、最も好ましくは正確に30アミノ酸残基である。このようなペプチドリンカーの別の実施形態は、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、即ちGly4Ser(配列番号197)又はそのポリマー、即ち(Gly4Ser)x(式中、xは、5以上の整数(例えば6、7又は8)である)を特徴とする。好ましくは、整数は6又は7であり、より好ましくは、整数は6である。
【0089】
一部の好ましい実施形態では、二特異性抗体の第3のドメインは、アミノからカルボキシルの順に:
ヒンジ-CH2-CH3-リンカー-ヒンジ-CH2-CH3があるHLEドメインである。
【0090】
ある一定の一実施形態では、第3のドメインの1つ又は好ましくは各々(両方)のポリペプチド単量体のCH2ドメインは、ドメイン内システインジスルフィド架橋を含む。当技術分野で公知のように、「システインジスルフィド架橋」という用語は、一般構造R-S-S-Rを有する官能基を指す。この連結は、SS結合又はジスルフィド架橋とも呼ばれ、システイン残基の2つのチオール基のカップリングによって得られる。二特異性抗体に対して、成熟抗体コンストラクト中でシステインジスルフィド架橋を形成するシステインは、309及び321(Kabatナンバリング)に対応するCH2ドメインのアミノ酸配列に導入されることが特に好ましい。
【0091】
一実施形態では、CH2ドメインのKabat位置314のグリコシル化部位が除去される。このグリコシル化部位の除去は、N314X置換によって達成されることが好ましく、式中、Xは、Qを除く何れかのアミノ酸である。置換は、好ましくはN314G置換である。より好ましい実施形態では、このCH2ドメインは、以下の置換(位置はKabatに従う)V321C及びR309C(これらの置換は、Kabat位置309及び321でドメイン内システインジスルフィド架橋を導入する)をさらに含む。
【0092】
例えば当技術分野で公知の二特異性ヘテロFc抗体コンストラクトと比較した二特異性抗体コンストラクトの好ましい特性は、とりわけ、CH2ドメインにおける上記の修飾の導入に関連し得ると考えられる。従って、二特異性抗体の第3のドメイン中のCH2ドメインがKabat位置309及び321にドメイン内システインジスルフィド架橋を含み、及び/又はKabat位置314のグリコシル化部位が上記のようにN314X置換により、好ましくはN314G置換により除去されることが好ましい。
【0093】
さらに好ましい実施形態では、二特異性抗体の第3のドメイン中のCH2ドメインは、Kabat位置309及び321にドメイン内システインジスルフィド架橋を含み、Kabat位置314のグリコシル化部位がN314G置換によって除去される。
【0094】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体の第3のドメインは、アミノからカルボキシルの順に、DKTHTCPPCP(配列番号191)(即ちヒンジ)-CH2-CH3-リンカー-DKTHTCPPCP(配列番号191)(即ちヒンジ)-CH2-CH3を含むか又はそれからなる。上述の二特異性抗体のペプチドリンカーは、好ましい実施形態では、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、即ちGly4Ser(配列番号197又はそのポリマー、即ち(Gly4Ser)x(式中、xは5以上の整数(例えば5、6、7、8など又はそれを超える))を特徴とし、6が好ましい((Gly4Ser)6)。抗体は、上記の置換N314X、好ましくはN314G及び/又はさらなる置換V321C及びR309Cをさらに含み得る。
【0095】
二特異性抗体は、例えば、その分子の単離に役立つか又はその分子の薬物動態プロファイルの適合に関連する、さらなるドメインも含み得る。抗体コンストラクトの単離に役立つドメインは、単離方法、例えば分離カラムで捕捉され得るペプチドモチーフ又は二次的に導入された部分から選択され得る。このようなさらなるドメインの非限定的な実施形態は、Mycタグ、HATタグ、HAタグ、TAPタグ、GSTタグ、キチン結合ドメイン(CBDタグ)、マルトース結合タンパク質(MBPタグ)、Flagタグ、Strepタグ及びその変異体(例えばStrepIIタグ)及びHisタグとして知られるペプチドモチーフを含む。本明細書中で開示される二特異性抗体の全ては、分子のアミノ酸配列中の連続するHis残基、好ましくは5個、より好ましくは6個のHis残基(ヘキサヒスチジン)のリピートとして一般に知られる、Hisタグドメインを含み得る。Hisタグは、例えば、抗体コンストラクトのN末端にもC末端にも配置され得るが、C末端に配置されることが好ましい。最も好ましくは、ペプチド結合を介して、ヘキサヒスチジンタグ(HHHHHH)(配列番号198)が二特異性抗体のC末端に連結される。加えて、持続放出用途及び薬物動態プロファイルの向上のために、PLGA-PEG-PLGAのコンジュゲート系をポリヒスチジンタグと組み合わせ得る。
【0096】
ある一定の実施形態では、二特異性抗体は、第1のドメイン及び第2のドメインを含み:
(i)第1のドメインが、2つの抗体可変ドメインを含み、第2のドメインが、2つの抗体可変ドメインを含むか;
(ii)第1のドメインが、1つの抗体可変ドメインを含み、第2のドメインが、2つの抗体可変ドメインを含むか;
(iii)第1のドメインが、2つの抗体可変ドメインを含み、第2のドメインが、1つの抗体可変ドメインを含むか;又は
(iv)第1のドメインが、1つの抗体可変ドメインを含み、第2のドメインが、1つの抗体可変ドメインを含む。
【0097】
従って、第1及び第2のドメインは、VH及びVLドメインなどのそれぞれ2つの抗体可変ドメインを含む結合ドメインであり得る。2つの抗体可変ドメインを含むこのような結合ドメインのための例は、上記で記載されており、例えば、本明細書中で上に記載のFv断片、scFv断片又はFab断片を含む。代わりに、それらの結合ドメインの何れか一方又は両方は、単一の可変ドメインのみを含み得る。このような単一ドメイン結合ドメインに対する例は本明細書中で上に記載され、例えば、他のV領域又はドメインに対して非依存的に抗原又はエピトープに特異的に結合するVHH、VH又はVLであり得る1つのみの可変ドメインを含むナノボディー又は単一可変ドメイン抗体を含む。
【0098】
一部の好ましい実施形態では、二特異性抗体は、第1のドメイン、第2のドメイン及び第3のドメインを含み、第1のドメインはCD70に結合し、第2のドメインはヒトCD3に結合し、第3のドメインは、アミノからカルボキシルの順に:ヒンジ-CH2-CH3-リンカー-ヒンジ-CH2-CH3を有するHLEドメインである。他の好ましい実施形態では、二特異性抗体は、第1のドメイン、第2のドメイン及び第3のドメインを含み、第1のドメインは、CD19、CD33、EGFRvIII、MSLN、CDH19、FLT3、DLL3、CDH3、BCMA又はPSMAから選択される腫瘍抗原に結合し、第2のドメインはヒトCD3に結合し、第3のドメインは、アミノからカルボキシルの順に:ヒンジ-CH2-CH3-リンカー-ヒンジ-CH2-CH3を有するHLEドメインである。好ましい実施形態では、第1及び第2のドメインは、ペプチドリンカーを介して第3のドメインに融合される。好ましいペプチドリンカーは、本明細書中で上に記載され、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、即ちGly4Ser又はそのポリマー、即ち(Gly4Ser)x(式中、xは、1以上の整数(例えば2、3、4、5、6又は7)である)を特徴とする。
【0099】
一部の実施形態では、二特異性抗体は、次から選択されるアミノ酸配列を有することを特徴とする。
【0100】
【表3】
【0101】
前述の二特異性抗体の何れも、第3のドメインとともに提供されてもよいし、又は提供されなくてもよく、これは、半減期延長(HLE)ドメインであり、好ましくはscFcドメイン又はヘテロFcドメイン又はアルブミン結合ドメインである。ヒトCD3に結合する二特異性抗体の第2のドメインは、(例えば上記のようなリンカーを介して)HLEドメインのN-末端又はC-末端と接続され得る。
【0102】
一部の実施形態では、二特異性抗体はCD70xCD3二特異性抗体であり、これは、CD70に結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む。一実施形態では、第1のドメインは、CD70に結合し、配列番号182~187で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に結合し、配列番号9~14で示されるようなCDRを有する。一部の実施形態では、二特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)をさらに含む。一実施形態では、二特異性抗体は、VH及びVLを含み、VHは、配列番号188のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなり、VLは、配列番号189のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。一実施形態では、CD70xCD3二特異性抗体は、配列番号190のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0103】
一部の実施形態では、二特異性抗体は、CD19xCD3二特異性抗体であり、これは、CD19に結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む。一実施形態では、第1のドメインは、CD19に結合し、配列番号1~6で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に結合し、配列番号9~14で示されるようなCDRを有する。別の実施形態では、第1のドメインは、CD19に結合し、配列番号105~107及び109~111で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に結合し、配列番号9~14で示されるようなCDRを有し、HLEドメイン(第3のドメイン)をさらに含む。一実施形態では、CD19xCD3二特異性抗体は、配列番号17のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。別の実施形態では、CD19xCD3二特異性抗体は、配列番号114のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0104】
一部の実施形態では、二特異性抗体は、BCMAxCD3二特異性抗体であり、これはBCMAに結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む。一部の実施形態では、二特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)をさらに含む。一実施形態では、第1のドメインは、BCMAに結合し、配列番号126~131で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に結合し、配列番号9~14で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、BCMAxCD3二特異性抗体は、VH及びVLを含み、VHは、配列番号132のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなり、VLは、配列番号133のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。一実施形態では、BCMAxCD3二特異性抗体は、配列番号135のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。別の実施形態では、BCMAxCD3二特異性抗体は、配列番号136のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0105】
一部の実施形態では、二特異性抗体は、CD33xCD3二特異性抗体であり、これは、CD33に結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む。一部の実施形態では、二特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)をさらに含む。一実施形態では、第1のドメインは、CD33に結合し、配列番号29~31及び34~36で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に結合し、配列番号9~14で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、CD33xCD3二特異性抗体は、VH及びVLを含み、VHは、配列番号27又は28のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなり、VLは、配列番号32若しくは33のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。一実施形態では、CD33xCD3二特異性抗体は、配列番号40のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。別の実施形態では、BCMAxCD3二特異性抗体は、配列番号41のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0106】
一部の実施形態では、二特異性抗体は、EGFRvIIIxCD3二特異性抗体であり、これは、EGFRvIIIに結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む。一部の実施形態では、二特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)をさらに含む。一実施形態では、第1のドメインは、EGFRvIIIに結合し、配列番号42~47で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に結合し、配列番号9~14で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、EGFRvIIIxCD3二特異性抗体は、VH及びVLを含み、VHは、配列番号48のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなり、VLは、配列番号49のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。一実施形態では、EGFRvIIIxCD3二特異性抗体は、配列番号52のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0107】
一部の実施形態では、二特異性抗体は、MSLNxCD3二特異性抗体であり、これは、MSLNに結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む。一部の実施形態では、二特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)をさらに含む。一実施形態では、第1のドメインは、MSLNに結合し、配列番号53~58で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に結合し、配列番号9~14で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、MSLNxCD3二特異性抗体は、VH及びVLを含み、VHは、配列番号59のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなり、VLは、配列番号60のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。一実施形態では、MSLNxCD3二特異性抗体は、配列番号63のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。一実施形態では、MSLNxCD3二特異性抗体は、配列番号64のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0108】
一部の実施形態では、二特異性抗体はCDH19xCD3二特異性抗体であり、CDH19に結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む。一部の実施形態では、二特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)をさらに含む。一実施形態では、第1のドメインは、CDH19に結合し、配列番号65~70で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に結合し、配列番号9~14で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、CDH19xCD3二特異性抗体は、VH及びVLを含み、VHは、配列番号71のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなり、VLは、配列番号72のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。一実施形態では、CDH19xCD3二特異性抗体は、配列番号74~82の何れかのアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。一実施形態では、CDH19xCD3二特異性抗体は、配列番号82のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0109】
一部の実施形態では、二特異性抗体はDLL3xCD3二特異性抗体であり、これは、DLL3に結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む。一部の実施形態では、二特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)をさらに含む。一実施形態では、第1のドメインは、DLL3に結合し、配列番号94~99で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に結合し、配列番号9~14で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、DLL3xCD3二特異性抗体は、VH及びVLを含み、VHは、配列番号100のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなり、VLは、配列番号101のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。一実施形態では、DLL3xCD3二特異性抗体は、配列番号104のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0110】
一部の実施形態では、二特異性抗体はFLT3xCD3二特異性抗体であり、これは、FLT3に結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む。一部の実施形態では、二特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)をさらに含む。一実施形態では、第1のドメインは、FLT3に結合し、配列番号83~88で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に結合し、配列番号9~14で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、FLT3xCD3二特異性抗体は、VH及びVLを含み、VHは、配列番号89のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなり、VLは、配列番号90のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。一実施形態では、FTL3xCD3二特異性抗体は、配列番号93のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0111】
一部の実施形態では、二特異性抗体は、CDH3xCD3二特異性抗体であり、これは、CDH3に結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む。一部の実施形態では、二特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)をさらに含む。一実施形態では、第1のドメインは、CDH3に結合し、配列番号115~120で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に結合し、配列番号9~14で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、CDH3xCD3二特異性抗体は、VH及びVLを含み、VHは、配列番号121のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなり、VLは、配列番号122のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。一実施形態では、CDH3xCD3二特異性抗体は、配列番号125のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0112】
一部の実施形態では、二特異性抗体は、PSMAxCD3二特異性抗体であり、これは、PSMAに結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む。一部の実施形態では、二特異性抗体は、HLEドメイン(第3のドメイン)をさらに含む。一実施形態では、第1のドメインは、PSMAに結合し、配列番号137~142で示されるようなCDRを有し、第2のドメインは、CD3に結合し、配列番号9~14で示されるようなCDRを有する。一実施形態では、PSMAxCD3二特異性抗体は、VH及びVLを含み、VHは、配列番号143のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなり、VLは、配列番号144のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。一実施形態では、PSMAxCD3二特異性抗体は、配列番号146~151、161~168及び176~181の何れか1つのアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。一実施形態では、PSMAxCD3二特異性抗体は、配列番号177のアミノ酸配列を含むか、基本的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0113】
本明細書中で開示される二特異性抗体は、当技術分野で公知の方法により調製され得る。例えば、二特異性抗体は、国際公開第2008/119657号パンフレット及び国際公開第2017/134140号パンフレットで開示される方法により調製され得る。
【0114】
一部の実施形態では、二特異性抗体はマスクされた二特異性抗原結合タンパク質である。マスクされた二特異性抗原結合タンパク質は以前に記述されている。例えば国際公開第2017/040344号パンフレット;米国特許出願公開第2015/0079088号を参照。「マスクされた二特異性抗原結合タンパク質」又は「マスクされた二特異性結合タンパク質」は、2つの異なる抗原又はエピトープに結合するマスクされた抗原結合タンパク質を指すものと理解される。「マスクされた抗原結合タンパク質」とは、マスキングドメイン(MD)のカップリングが、その抗原に対するABの結合を阻害又は低減するように、抗原結合ドメイン(AB)にカップリングされたマスキングドメイン(MD)(例えば共有結合又はリンカーを通じて)を含むタンパク質である。MDはさらに、タンパク質又はプロテアーゼがタンパク質認識部位に結合し、及び/又はタンパク質認識部位を切断する場合に、ABドメインが抗原に結合するか、又はABドメインによる抗原への結合が増加するか又は誘発されるような、タンパク質若しくはプロテアーゼに対する基質又は結合部位を含むタンパク質認識部位(PR)を含む。マスクされた抗原結合タンパク質は、以前に例えば、国際公開第2017/040344号パンフレット、米国特許第9540440号明細書、米国特許出願公開第20150118254号明細書、米国特許第9127053号明細書、米国特許第9517276号明細書及び米国特許第8563269号明細書に記載されている。一部の実施形態において、プロテアーゼによりPRが切断され、その結果、少なくともMDが放出されるためにマスクされた抗原結合タンパク質がMDを欠き得ることは、当業者にとって明らかである(例えば、MDが共有結合(例えばシステイン残基間のジスルフィド結合)によってマスクされた抗原結合タンパク質に連結されない場合)。
【0115】
一部の実施形態では、マスクされた抗原結合タンパク質はプロボディー(例えばPolu KR and Lowman HB.Expert Opin Biol Ther.2014 Aug;14(8):1049-53;又はDesnoyers LR et.al.,Sci Transl Med.2013 Oct 16;5(207)に記載のとおり)又はProTIAプロドラッグ(例えばSchellenberger V.Amunix unveils next-generation immuno-oncologic cancer therapy platform.https://biopharmadealmakers.nature.com.September 2016 edition,B20に記載のとおり;http://www.amunix.com/technology/pro-tia/も参照)である。一部の実施形態では、マスクされた抗原結合タンパク質は、次のようなN末端からC末端への構造配置を有する:MD-AB又はAB-MD。一部の実施形態では、マスクされた抗原結合タンパク質は、連結ペプチド(LP)を含み、マスクされた抗原結合タンパク質は、次のようなN末端からC末端への構造配置を有する:MD-LP-AB又はAB-LP-MD。
【0116】
マスクされた抗原結合タンパク質がナイーブ状態で抗原の存在下にあるとき、抗原へのABの結合は、マスクされた抗原結合タンパク質が活性状態にある場合(即ち、タンパク質若しくはプロテアーゼがPRに結合し、及び/又はMDを除去若しくは移行させる場合)の抗原へのABの結合と比較した場合、低減又は抑制される。MDと会合していないABの結合(即ちマスクされた抗原結合タンパク質が活性状態にある場合)と比較した場合、ナイーブ状態でのマスクされた抗原結合タンパク質の抗原結合能は、インビトロ及び/又はインビボ結合アッセイで測定したとき、例えば、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又はさらには約100%低下する。
【0117】
一部の実施形態では、タンパク質認識部位(PR)は、プロテアーゼ、好ましくは細胞外プロテアーゼに対する基質として機能する。PRは、抗原を発現する細胞付近の細胞(例えば腫瘍細胞を含む)によって産生され、及び/又はマスクされた抗原結合タンパク質のABの所望の抗原と組織において共存する細胞(例えば腫瘍細胞を含む)によって産生される、タンパク質又はプロテアーゼに基づいて選択され得る。一部の実施形態では、プロテアーゼはu型プラスミノゲン活性化因子(uPA、ウロキナーゼとも呼ばれる)、レグマイン及び/又はマトリプターゼ(MT-SP1又はMTSP1とも呼ばれる)である。一部の実施形態では、プロテアーゼはマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)である。一部の実施形態では、プロテアーゼは、Rawlings,N.and Salvesen,G.Handbook of Proteolytic Enzymes(Third Edition).Elsevier,2013.ISBN:978-0-12-382219-2)に記載のプロテアーゼの1つである。
【0118】
一部の実施形態では、二特異性抗原結合タンパク質の1つの抗体又はその抗原結合断片(AB1)ドメインは、ある標的抗原に対する特異性を有し、別の抗体又はその抗原結合性断片(AB2)ドメインは別の標的抗原に対する特異性を有する。一部の実施形態では、二特異性抗原結合タンパク質の1つの抗体又はその抗原結合性断片(AB1)ドメインは、標的抗原のあるエピトープに対する特異性を有し、別の抗体又はその抗原結合性断片(AB2)ドメインは、同じ標的抗原の別のエピトープに対する特異性を有する。
【0119】
「抗体断片」、「その抗体断片」又は「抗原結合抗体断片」という用語は、インタクトな抗体の一部を指すと理解される。「抗原結合性断片」又は「その抗原結合性断片」は、抗原に結合するインタクトな抗体の一部を指す。抗原結合性断片は、インタクトな抗体の抗原性決定可変領域を含有し得る。抗体断片の抗原結合性断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片、線形抗体、scFv及び1本鎖抗体が挙げられるが限定されない。
【0120】
マスクされた二特異性抗原結合タンパク質は、タンパク質認識部位(PR)を含む少なくとも1つのマスキングドメイン(MD)を含み、MDは抗原に対するABの結合を阻害するか又は減少させる。この少なくとも1つのMDは、タンパク質又はプロテアーゼに対する基質又は結合部位を含むタンパク質認識部位(PR)を含み、そのためタンパク質又はプロテアーゼがプロテアーゼ認識部位に結合し、及び/又はプロテアーゼ認識部位を切断する場合、ABドメインが抗原に結合するか、又は結合が増加する。二特異性マスクされた抗原結合タンパク質に関して、マスクされた抗原結合タンパク質は好ましくは、その個々の抗原若しくはエピトープに各抗原結合性ドメイン(AB1及びAB2)が結合する能力を低下させる、2つのMD(例えば、MD1及びMD2)を含む。
【0121】
本明細書中で提供されるマスクされた二特異性のマスクされた抗原結合タンパク質は、循環中で安定であり、治療及び/又は診断の意図する部位で活性化されるが、正常(即ち健常)組織では当てはまらない。活性状態にある場合、マスクされた抗原結合タンパク質及び/又はマスクされた二特異性若しくは多特異性抗原結合タンパク質は、対応する未修飾の抗体又は二特異性若しくは多特異性抗原結合タンパク質(即ちマスキングドメインを含まない抗体の相当物)と少なくとも同等である抗原への結合を示す。
【0122】
本明細書中に記載のマスクされた二特異性抗原結合タンパク質は、様々な実施形態において、ヒトCD3に結合する。例えば、様々な態様で、マスクされた二特異性抗原結合タンパク質は、T細胞上でのCD3εの会合を介してT細胞を活性化する。即ち、抗体は、CD3介在T細胞活性化をアゴナイズし、刺激し、活性化し、及び/又は増強する。CD3の生物活性としては、例えば、T細胞活性化及びCD3とT細胞受容体(TCR)の抗原結合性サブユニットとの相互作用を通じた他のシグナル伝達が挙げられる。
【0123】
本明細書中で開示されるマスクされた二特異性抗原結合タンパク質は任意選択により、結合定数(Kd)≦1μM、例えば、一部の実施形態では、≦100nM、≦10nM又は≦1nMでCD3εに結合する。
【0124】
様々な態様では、マスクされた二特異性抗原結合タンパク質は、上皮増殖因子受容体(EGFR)に結合する。本明細書中で開示されるマスクされた二特異性抗原結合タンパク質は任意選択により、結合定数(Kd)≦1μM、例えば、一部の実施形態では、≦100nM、≦10nM又は≦1nMでヒトEGFRに結合する。
【0125】
好ましい実施形態では、マスクされた二特異性又は多特異性抗原結合タンパク質は、CD3及びEGFRの両方に結合する。
【0126】
一部の実施形態では、マスクされた抗原結合タンパク質は、Fab(例えばIgG Fab)である抗原結合性ドメイン及びscFvである抗原結合性ドメインを含むようなヘテロ二量体である。例えば、典型的な実施形態では、マスクされた抗原結合タンパク質は、1つの標的(例えばEGFR)に結合する重鎖及び軽鎖(例えばIgG重鎖及び軽鎖)と、第2の標的(例えばCD3などのT細胞表面抗原)に結合するscFvドメインと、を含む。1本鎖抗体(scFv)は、VL及びVH領域がリンカー(例えば、通常約15~約20アミノ酸長のアミノ酸残基の合成配列)を介して連結されて、連続的なタンパク質鎖を形成する抗原結合タンパク質であり、リンカーは、タンパク質鎖がそれ自体で再び折り畳まれ、一価抗原結合部位を形成することを可能にするのに十分な長さである(例えば、Bird et al.,1988,Science 242:423-26及びHuston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-83を参照)。scFvにおいて使用するのに適したリンカーの一例はGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号199)である。他の典型的なリンカーは少なくとも4個~5個のアミノ酸を含有し、約4個の残基~約20個の残基の範囲である。
【0127】
マスクされた抗原結合タンパク質の典型的な形式は、(i)一方若しくは両方の重鎖のN末端付近で操作可能に連結されたscFvを含む2本の重鎖と、(ii)重鎖と会合して抗原結合性ドメインを形成する2本の軽鎖と、を含み、scFvがCD3に結合し、Fab部分がEGFRに結合する。この例において、抗原結合タンパク質は3つ(又は4つの)抗原結合性ドメインを含み、これらは通常、2つ以上の異なる抗原(又はエピトープ)に結合する。重鎖可変領域へのscFvの連鎖に適したリンカーの一例はGGGGS(配列番号197)である。典型的なリンカーは、4個~5個のアミノ酸を有する少なくとも1つの適切なリンカーを含有する。
【0128】
マスクされた抗原結合タンパク質は、(例えば共有結合又は他の形態の結合によって)抗体(AB)にカップリングされたマスキングドメイン(MD)を含む。マスキングドメイン(MD)は、マスキングペプチド(又はマスキングポリペプチド)(MP)及びタンパク質認識部位(PR)を含む。マスキングペプチド(又はマスキングポリペプチド)は、その抗原への抗原結合ドメインの結合を妨害する一続きのアミノ酸であり得る。一般に、マスキングペプチド、5~15アミノ酸長の短い配列が用いられるが、より短い及びより長い配列(即ちマスキングポリペプチド)も企図される。マスキングドメインはさらに、例えば国際公開第2017/040344号パンフレット;米国特許出願公開第2015/0079088号明細書(その全体が、特に、EGFRに結合する抗体との使用のためのマスキングドメインの開示に関して、参照により組み込まれる)及び米国特許出願公開第2016/0194399号明細書(その全体が、特に、CD3に結合する抗体との使用のためのマスキングドメインの開示に関して、参照により組み込まれる)に記載されている。
【0129】
一部の実施形態では、マスキングペプチド(又はマスキングポリペプチド)(MP)は、任意選択により、より大きなリンカー配列の一部(即ち抗原結合タンパク質にMPを連結する一続きのアミノ酸)である、タンパク質認識部位(PR)を介して抗原結合性ドメイン(AB)に結合される。PRは、タンパク質又はプロテアーゼ、好ましくは細胞外プロテアーゼに対する基質(又は結合部位)として機能する。PRは、標的を発現する細胞付近の細胞(例えば腫瘍細胞を含む)によって産生され、及び/又はマスクされた抗原結合タンパク質の少なくとも1つのABの所望の標的と組織において共存する細胞(例えば腫瘍細胞を含む)によって産生される、タンパク質又はプロテアーゼに基づいて選択され得る。一部の実施形態では、プロテアーゼはu型プラスミノゲン活性化因子(uPA、ウロキナーゼとも呼ばれる)、レグマイン、及び/又はマトリプターゼ(MT-SP1又はMTSP1とも呼ばれる)である。一部の実施形態では、プロテアーゼはマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)である。一部の実施形態では、プロテアーゼは、Rawlings,N.and Salvesen,G.Handbook of Proteolytic Enzymes(Third Edition).Elsevier,2013.ISBN:978-0-12-382219-2に記載のプロテアーゼの1つである。或いは、MPは、非切断型タンパク質結合ドメインを介して抗原結合タンパク質にカップリングされる。これに関して、PRは任意選択により、例えばタンパク質又はプロテアーゼと相互作用すると、MPの位置が調節され、ABが標的に自由に結合するようにコンフォメーション変化するアミノ酸配列である。
【0130】
本開示の様々な態様では、マスクされた二特異性抗原結合タンパク質は、コンストラクトの各抗原結合部分(例えばAB1、AB2、AB3など)に対するMDを含む。例えば、2つのFab部分及び2つのscFvを含む、マスクされた二特異性抗原結合タンパク質は、独立して同じであり得るか又は異なり得る、2セットのMDを含み得る。例えば、マスクされた二特異性抗原結合タンパク質は、(i)各scFvに連結されるCD3及びMD1に結合する2つのscFv(任意選択により各scFvに対して同じMD)及び(ii)各Fabに連結されるEGFR及びMD2に結合する2つのFab部分(任意選択により各Fabに対して同じMD)を含む。様々な態様において、MD1及びMD2のPRは、同じタンパク質認識配列を含み、プロテアーゼと会合した後に同じ環境においてそれぞれの結合領域に対してMDが放出されることが可能となる。MDが標的への抗原結合ドメインの結合を妨害することが可能であり、MDが放出された後にリンカーが結合を妨げない限り、MDは、抗原結合性ドメインのN末端又はC末端にて結合され得る。抗原結合ドメインがFabである場合、MDは、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域に操作可能に連結され得る。マスクされた二特異性抗原結合タンパク質が、Fab抗原結合ドメイン及び重鎖に融合されたscFvの両方(即ち「スタック」コンフォメーション)を有するインタクトな抗体を含む例では、Fab抗原結合ドメインと会合させられるMDは、好ましくは軽鎖可変領域に融合される。
【0131】
一部の実施形態では、マスクされた二特異性抗原結合タンパク質における1つのABドメイン(例えばAB1)は、CD3などのT細胞表面リガンドに会合し、任意選択によりscFvの形態をとる。CD3に結合する典型的なマスクされた抗原結合タンパク質としては、国際公開第2017/040344号パンフレット、米国特許出願公開第20160194399号明細書が挙げられるが限定されない。
【0132】
一部の実施形態では、抗原結合タンパク質における1つのABドメイン(例えばAB2)は、EGFRなどの腫瘍抗原に会合する。EGFRと会合する典型的なマスクされた抗原結合タンパク質としては、米国特許出願公開第20150079088号明細書で開示される抗体が挙げられるが限定されない。
【0133】
一部の実施形態では、マスクされた抗原結合タンパク質(例えばマスクされた二特異性抗原結合タンパク質を含む)は、抗体の等電点を変化させるために修飾される。例えば、一部の実施形態では、1つ又は両方のマスキングドメインにおける、1つ以上の負に荷電した、pH感受性アミノ酸(例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸)が、正に荷電したアミノ酸(例えばリジン又はアルギニン)で置換される。一部の実施形態では、抗体の1つ以上のマスキング部分におけるアスパラギン酸の置換によってpIが上昇し得る。一部の実施形態では、1つ又は両方のマスキングドメインにおける、その1つ以上の負に荷電した、pH感受性アミノ酸(例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸)は、除去されるか、又は天然アミノ酸で置換される。
【0134】
本開示のマスクされた抗原結合タンパク質(例えば二特異性又は多特異性マスクされた抗原結合タンパク質を含む)は、インタクトな抗体構造を含むと本明細書に記載される場合が多いが、一方で、本開示は、従来の2本の重鎖/2本の軽鎖の構造の少なくとも一部を欠く抗原結合抗体断片の使用も企図する。マスクされた抗原結合タンパク質として用いられる断片は、上述のような、マスキングドメイン(MD)に操作可能に連結される抗原結合性ドメイン(AB)を含む。例えば、一部の実施形態では、抗原結合タンパク質は、適切なリンカー(例えば、その標的にそれぞれのscFvが結合することを可能にするのに十分な長さの一続きのアミノ酸)によって連結された2つのscFvを含む。1つ又は両方のscFvがMDに結合され;両方のscFvがMDに結合される場合は、MDは同じであるか又は異なり得る(即ち様々な態様で、MP及び/又はPRは異なるが、PRは同じであることが好ましい)。
【0135】
本明細書中で開示されるマスクされた二特異性抗体は、当技術分野で公知の方法、例えば国際公開第2017/040344号パンフレット;米国特許出願公開第2015/0079088号明細書;及び米国特許出願公開第2016/0194399号明細書に記載のようなものにより作製され得る。
【0136】
表3は、本明細書中で開示される配列を列挙する。
【0137】
【表4】
【0138】
【表5】
【0139】
【表6】
【0140】
【表7】
【0141】
【表8】
【0142】
【表9】
【0143】
【表10】
【0144】
【表11】
【0145】
【表12】
【0146】
【表13】
【0147】
【表14】
【0148】
【表15】
【0149】
【表16】
【0150】
【表17】
【0151】
【表18】
【0152】
【表19】
【0153】
【表20】
【0154】
【表21】
【0155】
【表22】
【0156】
【表23】
【0157】
【表24】
【0158】
【表25】
【0159】
【表26】
【0160】
【表27】
【0161】
【表28】
【0162】
【表29】
【0163】
【表30】
【0164】
【表31】
【0165】
【表32】
【0166】
【表33】
【0167】
【表34】
【0168】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、より詳細に理解されるであろう。しかし、実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0169】
実施例1:凍結状態(-20℃)下で保管した場合のBiTE分子の凝集増加
HLE BiTE(MSLNxCD3、CD19xCD3、CD33xCD3、BCMAxCD3及びDLL3xCD3)各1mg/mLを含み、pHが4.2である組成物を5mLバイアルに満たし、-20℃で1カ月保管した。1カ月後、本組成物を室温で解凍し、本組成物中のHMW凝集体(例えば二特異性抗体二量体)のレベルを決定するためにSE-UHPLCによってすぐに分析した。SE-UHPLCは、サイズ排除超高速分析カラムを使用して、タンパク質の水力学的体積に基づいて、溶液中のタンパク質を分離する。高分子量(凝集体ピーク)は、単量体及びより低い分子量ピークよりも早く溶出する。構成成分は、均一濃度で溶出され、UV検出により検出され、積分され、この結果は、高分子量、主要ピーク及び低分子量ピークの相対ピーク面積%として報告する。図1で示されるように、HMW凝集体レベルが保管後に各組成物中で上昇した。
【0170】
実施例2:BiTE分子凝集のpH及び温度依存性
1mg/mLの濃度でDLL3xCD3 HLE BiTEを含み、pHが4.2、4.8又は6.3である組成物を5mLバイアルに満たし、-20℃で1カ月間保管した。1カ月後、本組成物を室温で解凍し、HMW凝集体のレベルを決定するためにSE-UHPLCによりすぐに分析し、結果を図2Aで示す。保管中に形成されるHMW凝集体はpH依存性であると思われる(図2A)。
【0171】
また、1mg/mLの濃度でDLL3xCD3 HLE BiTEを含む組成物を5mLバイアルに満たし、-10℃、-20℃、-30℃、-40℃及び-70℃で1カ月間保管した。1カ月後、本組成物を室温で解凍し、HMW凝集体のレベルを決定するためにSE-UHPLCによりすぐに分析し、結果を2B図で示す。BiTEを-10℃、-20℃、-30℃で保管したとき、HMW凝集体レベルが上昇し、BiTEを含む組成物のTg’(-32℃)よりも低い温度でBiTEを保管したとき、HMW凝集体レベルの僅かな上昇が観察された(図2B)。
【0172】
実施例3:15℃~30℃の温度で解凍BiTEを保持することにより凝集レベルが低下した
1mg/mL、5mg/mL及び13mg/mLの濃度でDLL3xCD3 HLE BiTEを含む組成物を5mLバイアルに満たし、-20℃で12カ月間保管した。12カ月後、本組成物を室温で解凍し、HMW凝集体のレベルを決定するためにSE-UHPLCによりすぐに分析した。解凍した組成物を室温でさらに24時間保持し、SE-UHPLCを用いてHMW凝集体レベルを再び分析した。保持期間後、HMW凝集体レベルが5%未満に低下した(図3A)。
【0173】
第2の一連の実験において、0.5mg/mL及び2mg/mLの濃度でEGFRvIIIxCD3 BiTEを含む組成物を5mLバイアルに満たし、-20℃で1カ月間保管した。1カ月後、本組成物を室温で解凍し、HMW凝集体のレベルを決定するためにSE-UHPLCによりすぐに分析した。解凍した組成物を室温でさらに24時間保持し、SE-UHPLCを使用してHMW凝集体レベルを再び分析した。HMW凝集体レベルは保持期間後、5%未満に低下した(図3B)。
【0174】
第3の一連の実験において、1mg/mLの濃度でHLE BiTE(MSLNxCD3、CD19xCD3、CD33xCD3、CDH19xCD3、BCMAxCD3、DLL3xCD3、FLT3xCD3、PSMAxCD3及びCD70xCD3)のそれぞれを含む組成物を5mLバイアルに満たし、-20℃で1カ月間保管した。1カ月後、本組成物を室温で解凍し、HMW凝集体のレベルを決定するためにSE-UHPLCによりすぐに分析した。解凍した組成物を室温でさらに24時間保持し、SE-UHPLCを使用して、HMW凝集体レベルを再び分析した。各組成物中のHMW凝集体レベルは、保持期間後に1%未満に低下した(図3C)。
【0175】
第4の一連の実験において、1mg/mLの濃度でHLE BiTE(CD33xCD3及びDLL3xCD3)のそれぞれを含む組成物を5mL中に満たし、-30℃で18カ月間保管した。18カ月後、本組成物を室温で解凍し、HMW凝集体のレベルを決定するためにSE-UHPLCによりすぐに分析した。解凍した組成物を室温でさらに24時間保持し、SE-UHPLCを使用してHMW凝集体レベルを再び分析した。各組成物中のHMW凝集体レベルは、保持期間後に0.4%未満に低下した(図3D)。
【0176】
実施例4:解凍したBiTEの15℃~30℃の温度での保持はBiTEの安定性に影響しない
13mg/mLの濃度でDLL3xCD3 HLE BiTEを含む組成物を5mLバイアルに満たし、-20℃で12カ月間保管した。12カ月後、本組成物を室温で解凍し、解凍した組成物を室温でさらに24時間保持した。いくつかの安定性を24時間保持期間後に分析し、結果を表4で示す。
【0177】
癌腫細胞株での発光喪失によって細胞死を測定する細胞に基づくバイオアッセイにより、HLE BiTE分子の効力を測定した。試験試料の応答を参照標準物質の応答と比較することにより、試験試料の生物学的活性を決定する(相対効力)。
【0178】
還元キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(rCE-SDS)を使用して、BiTE分子のクリッピングを測定した。rCE-SDSは、還元及び変性条件下でタンパク質の水力学的サイズに基づいてタンパク質を分離する。タンパク質を変性、還元し、ポリマーゲルマトリクスを満たした裸の(bare)フューズドシリカキャピラリーに注入した。キャピラリーを横断して電圧を印加し、SDSに被覆されたタンパク質がその水力学的サイズに基づき分離され;サイズがより小さいタンパク質は、サイズがより大きいタンパク質よりも早く移動する。光ダイオードアレイ(PDA)検出器を使用してタンパク質を検出し、積分し、結果を低分子量、主要ピーク及び高分子量ピークの相対ピーク面積%として報告する。
【0179】
陽イオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)を使用して、BiTE分子のチャージバリアントを測定した。適切なpH下でイオン強度上昇の移動相勾配を使用して、タンパク質のチャージバリアントを溶出させた。陽性表面電荷が小さいタンパク質ほど、陽性表面電荷が大きいタンパク質よりも早く溶出する。溶出されたチャージバリアントをUV検出により検出し、積分し、主要、酸性及び塩基性ピークに対する結果を総ピーク面積の%として報告した。
【0180】
表4で示されるように、解凍したBiTEの保持は、保持期間後のHMWレベル低下の一方で、安定性に負の影響を及ぼさなかった。
【0181】
【表35】
【0182】
実施例5:凍結状態下での保管後のBiTE分子のHMWレベルの低下の、保持時間及び保持温度依存性
HLE BiTE(CD33xCD3及びDLL3xCD3)各1mg/mL及びBiTE(EGFRvIIIxCD3)2mg/mLを含む組成物を5mLバイアルに満たし、-20℃で1カ月間保管した。1カ月後、本組成物を室温で解凍し、本組成物中のHMW凝集体(例えば二特異性抗体二量体)のレベルを決定するために、サイズ排除超高速液体クロマトグラフィー(SE-UHPLC)によりすぐに分析した。
【0183】
96時間の最長保持時間にわたり、解凍した組成物を様々な温度で保持し、HMW凝集体レベルをSE-UHPLCにより異なる時間点で分析した。様々な温度での、CD33xCD3及びDLL3xCD3 HLE BiTE及びEGFRvIIIxCD3 BiTEに対する最初の凍結前レベルにHMW凝集体レベルを低下させるために要する保持時間は、同一であり、図4で示す。
【0184】
実施例6:ベンジルアルコール(BA)の安定化効果
HLE BiTE(CD19xCD3、CD33xCD3、BCMAxCD3、DLL3xCD3及びEGFRvIIIxCD3)各1mg/mLを含む組成物を5mL中に満たし、BAの存在下及び非存在下で-20℃で4週間保管した。4週間後、本組成物を室温で解凍し、HMW凝集体のレベルを決定するために、SE-UHPLCによりすぐに分析した。保管中のBAの存在によりBiTEが安定化される(図5)。
【0185】
本願で引用される全ての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
【配列表】
2022512569000001.app
【国際調査報告】