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特表2022-512628CD137を標的とする抗体およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】CD137を標的とする抗体およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220131BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220131BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C07K16/46
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 Y
A61P35/00
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518965
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(85)【翻訳文提出日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2019077368
(87)【国際公開番号】W WO2020074584
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】18199334.6
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19166283.2
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】515310984
【氏名又は名称】ヌマブ セラピューティクス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】テア グンデ
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス ブロック
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヘス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル シモナン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン バルムート
【テーマコード(参考)】
4B064
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB41
4C085BB42
4C085DD62
4C085GG01
4H045AA11
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ヒトCD137に特異的に結合する単離抗体、ならびにその医薬組成物およびその使用方法に関する。本発明はさらに、前記抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸、前記核酸を含むベクター、前記核酸または前記ベクターを含む宿主細胞、および前記抗体を産生する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ配列番号:1、2、および3の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、それぞれ配列番号:16、および18の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するLCDR1、およびLCDR3配列、および配列番号:17の配列に対して少なくとも85%の同一性を有するLCDR2配列を含む、ヒトCD137に対する結合特異性を有する単離抗体。
【請求項2】
それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、およびそれぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体は、配列番号:13、14、および15、好ましくは配列番号:13および15、より好ましくは配列番号:13からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:25、26、および27、好ましくは配列番号:25および27、より好ましくは配列番号:25からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
(a)配列番号:13のVH配列および配列番号:25のVL配列;(b)配列番号:14のVH配列および配列番号:26のVL配列;または(c)配列番号:15のVH配列および配列番号:27のVL配列を含む、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
特に競合ELISAによって測定されるように、前記抗体はCD137とそのリガンドCD137Lとの間の相互作用を阻害しない、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体は、
(i)表面プラズモン共鳴によって測定されるように、50 nM未満、特に10 nM未満、より具体的には5 nM未満の解離定数(KD)でヒトCD137に結合する;
(ii)任意選択で、表面プラズモン共鳴によって測定されるように、50 nM未満、特に10 nM未満、より具体的には5 nM未満のKDでカニクイザルCD137に結合する;
(iii) 任意選択で、特にSPRによって測定されるように、ヒトCD40に結合せず、および/またはヒトOX40に結合しない;
(iv) scFvフォーマットの場合、示差走査蛍光測定によって決定される、少なくとも50℃、たとえば、少なくとも55℃、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも64℃の融解温度(Tm)を有し、特にここで前記抗体は、pH6.4の50 mMのリン酸-クエン酸緩衝液、150 mM NaCl中で製剤化される;
(v) scFvフォーマットの場合、本発明の抗体が10 mg/mlの開始濃度にあり、特にここで本発明の抗体はpH6.4の150 mM NaClを含む50 mMのリン酸-クエン酸緩衝液中で製剤化される場合、4℃で少なくとも2週間、特に少なくとも4週間保存した後、7%未満、たとえば6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、好ましくは2%未満のモノマー含有量の損失を有する;および/または
(vi) scFvフォーマットの場合、本発明の抗体が10 mg/mlの開始濃度にあり、特にここで本発明の抗体はpH6.4の150 mM NaClを含む50 mMのリン酸-クエン酸緩衝液中で製剤化される場合、5回の連続した凍結融解サイクル後、5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満のモノマー含有量の損失を有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
前記単離抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、Fab、Fv、scFv、dsFv、scAb、STAB、およびアンキリンベースのドメイン、フィノマー(fynomer)、アビマー(avimer)、アンチカリン(anticalin)、フィブロネクチン、および抗体の定常領域に組み込まれている結合部位(たとえば、F-starのModular Antibody Technology)を含むが、これらに限定されない代替スキャフォールドベースの結合ドメイン、好ましくはFv、またはscFvからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
前記scFvは、配列番号:29、配列番号:30、および配列番号:31、好ましくは配列番号:29および配列番号:31、より好ましくは配列番号:29からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体は、CD137のアミノ酸残基Asn42が結合について重要な残基でないという条件で、ヒトCD137細胞外ドメインに、CD137の細胞外ドメインの遠位部分、特にシステインリッチドメインCRD1および/またはCRD2内、より具体的には配列番号:32のアミノ酸残基24~86内に位置するエピトープでヒトCD137細胞外ドメインに結合する、単離抗体。
【請求項10】
前記抗体は、残基Arg41、Gln43、Cys45、Pro49、Ser52、およびSer80を含む、実施例13に従って決定される一組の重要な残基によって特徴付けられるエピトープでヒトCD137細胞外ドメインに結合する、請求項9に記載の単離抗体。
【請求項11】
前記抗体は、残基Ala33、Asn40、およびCys48をさらに含む、実施例13に従って決定される一組の重要な残基によって特徴付けられるエピトープでヒトCD137細胞外ドメインに結合する、請求項10に記載の単離抗体。
【請求項12】
前記抗体は、残基Pro32、Gly34、Thr35、Ser46、Pro47、Pro50、Cys78、およびSer79をさらに含む、実施例13に従って決定される一組の重要な残基によって特徴付けられるエピトープでヒトCD137細胞外ドメインに結合する、請求項11に記載の単離抗体。
【請求項13】
前記抗体は、多特異性分子、特に少なくとも第二の機能性分子を有する多特異性分子である、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項15】
医薬としての使用のための、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体、または請求項14の組成物。
【請求項16】
がんの治療に使用するための医薬の製造に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体、または請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体をコードする核酸。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体を産生する方法であって、請求項1~13のいずれかに記載の抗体をコードする核酸またはベクターを含む宿主細胞を培養する工程を含む方法。
【請求項19】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体、または請求項14に記載の組成物を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトCD137に特異的に結合する単離抗体、および医薬組成物、ならびにその使用方法に関する。本発明はさらに、上記抗体をコードする核酸、上記核酸を含むベクター、上記核酸または上記ベクターを含む宿主細胞、および上記抗体を産生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRSF)は、細胞外ドメインのシステインリッチな偽反復(pseudorepeat)を介して腫瘍壊死因子(TNF)に結合する能力を特徴とする受容体のタンパク質スーパーファミリーである(Locksley et al., 2001, Cell. 104: 487-501)。現在、27のTNFファミリーメンバーが特定されている。TNFRSFメンバーおよびそのリガンドは主に免疫細胞で発現し、T細胞性免疫応答において免疫調節物質の役割を果たしている。TNFRSFメンバーは、樹状細胞の生存およびT細胞のプライミング能力の強化、エフェクターT細胞の最適な生成、最適な抗体応答、および炎症反応の増幅において役割を果たす。
【0003】
CD137(4-1BB、TNF受容体スーパーファミリー9、TNFRSF9)は、TNFRスーパーファミリーの表面糖タンパク質である。これは、誘導性の共刺激T細胞受容体である。CD137の発現は活性化に依存し、活性化NK細胞およびNKT細胞、制御性T細胞、濾胞DCを含む樹状細胞(DC)、刺激されたマスト細胞、分化中の骨髄細胞、単球、好中球、好酸球(Wang et al, Immunol Rev. 229(1): 192-215(2009))、および活性化B細胞(Zhang et al, J Immunol. 184(2):787-795(2010))を含む免疫細胞の幅広いサブセットを網羅している。さらに、CD137の発現は、腫瘍血管系(Broil K et al., Am J Clin Pathol. 115(4):543-549 (2001); Seaman et al, Cancer Cell 11(6):539-554 (2007))およびアテローム性動脈硬化症の内皮(Olofsson et al, Circulation 117(10): 1292 1301 (2008))でも実証されている。
【0004】
TNFファミリーの分子であるCD137リガンド(CD137L、4-1BBL、またはtnfsf9)は、CD137について知られている細胞間天然リガンドである(Alderson, M. R., et al., Eur. J. Immunol. 24:2219-2227 (1994); Pollok K., et al., Eur. J. Immunol. 24:367-374 (1994); Goodwin, R. G., et al., Eur. J. Immunol. 23: 2631-2641 (1993))。CD137のリガンドはホモ三量体を形成し、CD137を介したシグナル伝達は、細胞表面の連結分子から進行し、三量体化されたリガンドによって架橋される(Won, E. Y., et al., J. Biol. Chem. 285: 9202-9210 (2010))。CD137の高次クラスタリングは、シグナル伝達を仲介するために必要であることが示唆された。CD137は、細胞質尾部でアダプターTRAF-2およびTRAF-1と結合し、共免疫沈降を引き起こす。これは、T細胞でのCD137の活性化により増強される(Saoulli, K., et al., J. Exp. Med. 187: 1849-1862 (1998); Sabbagh, L., et al., J. Immunol. 180: 8093-8101 (2008))。CD137によるTRAF-1およびTRAF-2の動員により、NF-kB、ならびにERK、JNK、およびp38 MAPキナーゼを含むマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼカスケードが下流で活性化される。NF-kBの活性化は、Bcl-2ファミリーの生存促進性のメンバー(pro-survival member)であるBfl-1およびBcl-XLの上方制御につながる。アポトーシス促進タンパク質Bimは、TRAF-1およびERK依存的に下方制御される(Sabbagh et al., J Immunol. 180(12):8093-8101 (2008))。CD137の主な作用は、2つ以上のTRAF-2分子を互いに分子的に近接させて配置することであることが示唆されている(Sanchez-Paulete, A. R., et al., Eur. J. Immunology 46(3): 513-522 (2016))。これに基づいて、CD137シグナル伝達を駆動する主な要因は、原形質膜のマイクロパッチ内のTRAF-2で組み立てられたCD137部分の相対密度であると仮定された(Sanchez-Paulete, A. R., et al., Eur. J. Immunology 46(3): 513-522 (2016))。全体として、CD137シグナル伝達は多量体化によって促進され、CD137分子の架橋がCD137共刺激活性の重要な要因であることが提示された。
【0005】
CD137はT細胞を共刺激して、確立された腫瘍の根絶、初代CD8T細胞(primary CD8 T cell)応答の拡大、抗原特異的CD8T細胞のメモリープールの強化、インターフェロンガンマ(IFN-γ)合成の誘導等のエフェクター機能を行う。CD8T細胞の機能および生存におけるCD137刺激の重要な役割は、CD137/CD137L相互作用の操作を通じて腫瘍の治療に利用できる可能性がある。実際、マウスにおけるin vivo有効性研究は、抗CD137抗体による治療が複数の腫瘍モデルにおいて腫瘍退縮をもたらしたことを示した。たとえば、アゴニスト抗マウスCD137抗体は、P815マスト細胞腫腫瘍、および低免疫原性腫瘍モデルAg104に対する免疫応答を誘導することが実証された(I. Melero et al., Nat. Med., 3(6):682-5 (1997))。単独療法および併用療法の両方の予防的および治療的設定におけるCD137アゴニストmAbの有効性、ならびに抗腫瘍保護T細胞メモリー応答がいくつかの研究で報告されている(Lynch et al., Immunol Rev. 222:277-286 (2008))。CD137アゴニストは、さまざまな自己免疫モデルにおける自己免疫反応も阻害する(Vinay et al, J Mol Med 84(9):726-736 (2006))。
【0006】
現在臨床段階にある2つの抗CD137抗体は、完全ヒト化IgG4 mAbであるウレルマブ(Bristol-Myers Squibb)、および完全ヒトIgG2 mAbであるウトミルマブ(PF-05082566、Pfizer)である(Chester C., et al., Cancer Immunol Immunother Oct;65(10):1243-8 (2016))。CD137に作用する治療用抗体の利用は非常に有望な治療戦略であるが、抗CD137アゴニスト抗体の有効性の低さ、毒性の高さ、有害事象などの困難と結びついている。CD137アゴニスト抗体は、免疫系および臓器機能の変化を引き起こし、毒性のリスクを高めることが示された。ナイーブマウスおよび担がんマウスにおける高用量のCD137アゴニスト抗体は、肝臓へのT細胞浸潤、および肝臓の炎症と一致するアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼの上昇を誘発することが報告されている(Niu L, et al. J Immunol 178(7):4194-4213 (2007); Dubrot J, et al., Int J Cancer 128(1):105-118 (2011))。CD137アゴニスト抗体のヒト治療的使用に関する最初の臨床研究でも、肝酵素の上昇および肝炎の発生率の増加が示された(Sznol M., et al., J Clin Oncol 26(115S):3007 (2008); Ascierto PA, et al., Semin Oncol 37(5):508-516 (2010); Chester C., et al., Cancer Immunol Immunother Oct;65(10):1243-8 (2016))。致命的となる可能性のある肝炎は、以前に治療されたステージIII/IVメラノーマのBristol-Myers Squibb(BMS)フェーズII抗CD137試験、全国臨床試験(NCT)00612664で観察された。この試験および他のいくつかの試験(NCT00803374, NCT00309023, NCT00461110, NCT00351325)は、有害事象のために終了した(Chester C., et al., Cancer Immunol Immunother Oct;65(10):1243-8 (2016))。このような有害事象は、おそらくT細胞の全身的な過剰刺激が原因である。
【0007】
したがって、当分野では、一般的な抗増殖薬の固有の副作用なしに、特に現在利用可能なCD137抗体に匹敵するより低い毒性を有する、より高い効力を有する改善された治療用抗ヒトCD137抗体を生成する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、ヒトCD137タンパク質に特異的に結合し、治療に使用するための有益な特性、たとえば改善された親和性、有効性、安全性、ならびに改善された溶解性、開発性(developability)、および安定性等の改善された生物物理学的特性を有する抗体を提供することである。特に、他の細胞表面分子から直接および独立していないCD137抗体は、結合時にCD137シグナル伝達を引き起こす。
【0009】
一つの実施形態では、本発明は、新規のCD137抗体に関する。
【0010】
一つの実施形態では、本発明は、本発明の単離抗体、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物に関する。
【0011】
別の態様では、本発明は、医薬としての使用のための、本発明の抗体、または本発明の組成物に関する。
【0012】
一つの態様では、本発明は、それを必要とする対象のがんの治療における使用のための本発明の抗体、または本発明の組成物に関する。
【0013】
一つの態様では、本発明はそれを必要とする対象のがんの治療における使用のための医薬の製造における、本発明の抗体、または本発明の組成物の使用に関する。
【0014】
別の態様では、本発明は、治療有効量の本発明の抗体、または本発明の組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象のがんを治療する方法に関する。
【0015】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の抗体をコードする核酸に関する。さらなる態様では、本発明は、上記核酸を含むベクターに関する。さらなる態様では、本発明は、上記核酸または上記ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0016】
別の態様では、本発明は、本発明の核酸またはベクターを含む宿主細胞を培養する工程を含む、本発明の抗体を産生する方法に関する。
【0017】
以下の項目に要約される、本発明の態様、有利な特徴、および好ましい実施形態は、それぞれ単独で、または組み合わせて、本発明の目的を解決することにさらに寄与する:
1. 1セットのCDR:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、ここで該1セットのCDRは、
HCDR1’は、配列番号:1、4、7、および10のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列であり;
HCDR2’は、配列番号:2、5、8、および11のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列であり;
HCDR3’は、配列番号:3、6、9、および12のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列であり;
LCDR1’は、配列番号:16、19、および22のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列であり;
LCDR2’は、配列番号:17、20、および23のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列であり;および
LCDR3’は、配列番号:18、21、および24のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列である、
1セットのCDRと比較して、10個以下のアミノ酸置換を有する、ヒトCD137に対する結合特異性を有する単離抗体。
2. 1セットのCDR:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、ここで該1セットのCDRは、
HDR’1は、配列番号:1に記載のとおりである;
HDR’2は、配列番号:2に記載のとおりである;
HDR’3は、配列番号:3に記載のとおりである;
LDR’1は、配列番号:16に記載のとおりである;
LDR’2は、配列番号:17に記載のとおりである;
LDR’3は、配列番号:18に記載のとおりである;
1セットのCDRと比較して、10個以下のアミノ酸置換を有する、項目1に記載の抗体。
3. 重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで:
(a) 上記VHは、順番に、3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む、および
(b) 上記VLは、順番に、3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、
項目1または項目2に記載の抗体。
4. (a) 上記HCDR1は、配列番号:1、4、7、および10のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号:1を含み、好ましくはそれからなり;(b) 上記HCDR2は、配列番号:2、5、8、および11のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号:2を含み、好ましくはそれからなり;(c) 上記HCDR3は、配列番号:3、6、9、および12のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号:3を含み、好ましくはそれからなり;(d) 上記LCDR1は、配列番号:16、19、および22のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号:16を含み、好ましくはそれからなり;(e) 上記LCDR2は、配列番号:17、20、および23のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号:17を含み、好ましくはそれからなり;(f) 上記LCDR3は、配列番号:18、21、および24のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号:18を含み、好ましくはそれからなる、
項目3に記載の抗体。
5. 上記抗体は、:(a) それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列;(b) それぞれ配列番号:4、5、および6のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号:19、20、および21のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列;(c) それぞれ配列番号:7、8、および9のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列;(a) それぞれ配列番号:10、11、および12のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号:22、23、および24のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列
を含む、項目3に記載の抗体。
6. (a) 配列番号:1のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなる、HCDR1;(b) 配列番号:2のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなる、HCDR2;(c) 配列番号:3のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなる、HCDR3;(d) 配列番号:16のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなる、LCDR1;(e) 配列番号:17のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなる、LCDR2;および(f) 配列番号:18のアミノ酸配列を含み、好ましくはそれからなる、LCDR3
を含む、項目3の抗体。
7. 上記VHは、VH3フレームワークFR1、FR2、FR3、およびFR4を含む、項目3~6のいずれか一つに記載の抗体。
8. 上記VLは、Vκフレームワーク FR1、FR2、FR3、具体的にはVκ1またはVΚ3 FR1~FR3、好ましくはVκ1 FR1~FR3、およびVκ FR4、具体的にはVκ1 FR4またはVκ3 FR4、およびVλ FR4から選択されるフレームワークFR4を含み;具体的にはVλ FR4は配列番号:33~配列番号:39のいずれかから選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列、好ましくは、配列番号:33~配列番号:39のいずれかに記載のVλ FR4、好ましくは、配列番号:33、または配列番号:34に記載のVλ FR4、より好ましくは配列番号:33に記載のVλ FR4を含む、項目3~7のいずれか一つに記載の抗体。
9. 上記VHは、配列番号:13、14、および15、好ましくは配列番号:13、または15、より好ましくは配列番号:13からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む;および/または上記VLは、配列番号:25、26、および27、好ましくは配列番号:25、または27、より好ましくは配列番号:25からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目3~8のいずれか一つに記載の抗体。
10. 上記VHは、配列番号:13、14、および15、好ましくは配列番号:13、または15、より好ましくは配列番号:13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;および/または上記VLは、配列番号:25、26、および27、好ましくは配列番号:25、または27、より好ましくは配列番号:25からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、項目3~9のいずれか一つに記載の抗体。
11. (a) 配列番号:13のVH配列および配列番号:25のVL配列;(b) 配列番号:14のVH配列および配列番号:26のVL配列;または(c) 配列番号:15のVH配列および配列番号:27のVL配列を含む、項目1~10のいずれか一つに記載の抗体。
12. 上記抗体は、
a) 表面プラズモン共鳴によって測定されるように、50 nM未満、具体的には10 nM未満、より具体的には5 nM未満の解離定数(KD)でヒトCD137に結合する;および
b) 任意選択で、表面プラズモン共鳴によって測定されるように、50 nM未満、具体的には10 nM未満、より具体的には5 nM未満のKDでカニクイザルCD137に結合する;および
c) 任意選択で、ウレルマブと交差競合する(cross-compete)、
項目1~11のいずれか一つに記載の抗体。
13. 上記抗体は、特に競合ELISAによって測定されるように、CD137とそのリガンドCD137Lとの間の相互作用を阻害しない、項目1~12のいずれか一つに記載の抗体。
14. 上記抗体は、特にSPRによって測定されるように、ヒトCD40に結合せず、および/またはヒトOX40に結合しない、項目1~13のいずれか一つに記載の抗体。
15. 上記抗体は、:
a) scFvフォーマットの場合、示差走査蛍光測定によって決定される、少なくとも50℃、たとえば、少なくとも55℃、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも64℃の融解温度(Tm)を有し、特にここで上記抗体は、pH6.4の50 mMのリン酸-クエン酸緩衝液、150 mM NaCl中で製剤化される;および/または
b) scFvフォーマットの場合、本発明の抗体が10 mg/mlの開始濃度にあり、特にここで本発明の抗体はpH6.4の150 mM NaClを含む50 mMのリン酸-クエン酸緩衝液中で製剤化される場合、4℃で少なくとも2週間、特に少なくとも4週間保存した後、7%未満、たとえば6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、好ましくは2%未満のモノマー含有量の損失を有する;および/または
d) scFvフォーマットの場合、本発明の抗体が10 mg/mlの開始濃度にあり、特にここで本発明の抗体はpH6.4の150 mM NaClを含む50 mMのリン酸-クエン酸緩衝液中で製剤化される場合、5回の連続した凍結融解サイクル後、5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満のモノマー含有量の損失を有する、
項目1~14のいずれか一つに記載の抗体。
16. 上記抗体は、CD137のアミノ酸残基Asn42が結合について重要な残基でないという条件で、ヒトCD137細胞外ドメインに、CD137の細胞外ドメインの遠位部分、特にシステインリッチドメインCRD1および/またはCRD2内、より具体的には配列番号:32のアミノ酸残基24~86内に位置するエピトープでヒトCD137細胞外ドメインに結合する、単離抗体。
17. 上記単離抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、Fab、Fv、scFv、dsFv、scAb、STAB、およびアンキリンベースのドメイン、フィノマー(fynomer)、アビマー(avimer)、アンチカリン(anticalin)、フィブロネクチン、および抗体の定常領域に組み込まれている結合部位(たとえば、F-starのModular Antibody Technology(商標))を含むが、これらに限定されない代替スキャフォールドベースの結合ドメイン、好ましくはFv、またはscFvからなる群から選択される、項目1~16のいずれか一つに記載の抗体。
18. 一本鎖抗体(single-chain variable fragment ;scFv)である、項目1~17のいずれか一つに記載の抗体。
19. 上記scFvは、配列番号:29、配列番号:30、および配列番号:31、好ましくは配列番号:29または配列番号:31、より好ましくは配列番号:29からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、項目18に記載の抗体。
20. 抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4、好ましくはIgG4からなる群から選択されるIgGである、項目17に記載の単離抗体。
21. 抗体はヒト化されている、項目1~20のいずれか一つに記載の単離抗体。
22. 上記抗体は、多特異性分子、特に少なくとも第二の機能性分子を有する多特異性分子である、項目1~21のいずれか一つに記載の抗体。
23. 上記抗体は、一本鎖ダイアボディ(scDb)、タンデムscDb(Tandab)、線状二量体scDb(LD-scDb)、環状二量体scDb(CD-scDb)、二重特異性T細胞誘導(BiTE; tandem di-scFv)、tandem tri-scFv、トリボディ(tribody;Fab-(scFv)2)またはバイボディ(bibody;Fab-(scFv)1)、Fab、Fab-Fv2、Morrison(IgG CH-scFv融合物(Morrison L)、またはIgG CL-scFv融合物(Morrison H))、トリアボディ、scDb-scFv、二重特異性Fab2、ジミニ抗体(di-miniantibody)、テトラボディ(tetrabody)、scFv-Fc-scFv融合物、scFv-HSA-scFv融合物、ジダイアボディ(di-diabody)、DVD-Ig、COVD、IgG-scFab、scFab-dsscFv、Fv2-Fc、IgG-scFv融合物、たとえばbsAb(軽鎖のC末端に結合したscFv)、Bs1Ab(軽鎖のN末端に結合したscFv)、Bs2Ab(重鎖のN末端に結合したscFv)、Bs3Ab(重鎖のC末端に結合したscFv)、Ts1Ab(重鎖および軽鎖の両方のN末端に結合したscFv)、Ts2Ab(重鎖のC末端に結合したdsscFv)、ヘテロ二量体Fcドメインに基づく二重特異性抗体、たとえばノブ・イントゥ・ホール(Knob-into-Hole)抗体(KiHs);ヘテロ二量体Fcドメインまたは他のヘテロ二量体化ドメインのいずれかの鎖のN末端および/またはC末端に融合したFv、scFv、scDb、タンデムジscFv(tandem-di-scFv)、タンデムトリscFv(tandem tri-scFv)、Fab-(scFv)2、Fab-(scFv)1、Fab、Fab-Fv2、COVD、MATCH、およびDuoBodiesからなる群から選択される、フォーマットにある、項目22の抗体。
24. 項目1~23のいずれか一つの抗体および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
25. 医薬品として使用するための、項目1~23のいずれか一つの抗体、または項目24の組成物。
26. がんの治療における使用のための医薬品の製造に使用するための、項目1~23のいずれか一つの抗体または項目24の組成物。
27. がんの治療における使用のための、項目1~23のいずれか一つの抗体または項目24の組成物。
28. それを必要とする対象におけるがんの治療のための、項目1~23のいずれか一つの抗体、または項目24の組成物の使用。
29. 対象に治療有効量の項目1~23のいずれか一つに記載の抗体または項目24の組成物を投与することを含む、それを必要とする対象におけるがんの治療方法。
30. 項目1~23のいずれか一つに記載の抗体をコードする核酸。
31. 項目30に記載の核酸を含むベクター。
32. 項目30に記載の核酸または項目31に記載のベクターを含む、宿主細胞。
33. 項目30に記載の核酸または項目31に記載のベクターを含む宿主細胞を培養する工程を含む、項目1~23のいずれか一つに記載の抗体を産生する方法。
34. 項目1~23のいずれか一つに記載の抗体または項目24の組成物を含む、キット。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ウサギIgGクローン38-27-A11とウレルマブおよびウトミルマブのエピトープ結合結果のヒートマップ。固定化された分子(行)に対する被験物質分子(列)のパーセント(%)で表した理論上のRmaxに正規化された結合レベル。結合なし(濃い灰色)は同じエピトープを意味し、明るい灰色は第二の分子(被験物質)が結合でき、固定化された分子とは別のエピトープを有することを意味する。
図2】競合ELISAではCD137LへのCD137結合の阻害はない。CD137LのCD137への結合を評価する競合ELISAで測定された吸光度は、それぞれPRO1359またはPRO1360の濃度の増加に応じて表される。阻害抗体ヤギ抗ヒトCD137は参照として機能した。
図3】フローサイトメトリー(FC)で評価した、PRO1359およびPRO1360の、ヒトCD137発現Jurkat細胞への結合。得られた蛍光シグナルの幾何平均を、分子濃度の関数としてng/mlで表す。ウレルマブを参照として使用した。
図4】(A) CD137の構造。CRD1~4は、システインリッチドメイン1~4を示す。(B) CD137 ECDの設計された構築物。
図5】三重特異性scDb-scFv分子PRO1480およびPRO1481は、IFNγ(10ng/ml)で6時間および24時間刺激されたHCC827細胞の存在下で、CD137活性化アッセイで試験した。この実験では、PRO885はCD137シグナル伝達の相対的な活性化を評価するための参照分子として機能した。三重特異性scDb-scFv分子PRO1186を各プレートに取り、その活性を他のscDb-scFv分子と比較した。Jurkatレポーター細胞を添加してから6時間または24時間後に発光を読み取り、sigmoidal 4PL fit(GraphPad Prism)を使用して、RLU値を増加させた試験分子の濃度のみをフィットさせた。
図6】ex vivo T細胞活性化アッセイ。PBMCを10ng/mlのSEAで刺激し、scDb-scFv構築物PRO1480の段階希釈液で96時間処理した。T細胞の活性化は、ELISAによる採取した上清中のIL-2の定量化によって評価した。PRO1480による処理は、参照分子の混合物と比較した場合、顕著なIL-2分泌をもたらした。データは、sigmoidal 4PL fit(GraphPad Prism)を使用してフィットさせた。
図7】ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)の有りまたは無しの刺激されたヒトPBMCのIL-2分泌(96時間、1mg/ml HSA)。PBMCを10ng/mlのSEAで刺激し、参照分子アベルマブおよびウレルマブおよびscDb-scFv PRO1480およびPRO1186の混合物の段階希釈液で96時間処理した。T細胞の活性化は、ELISAによる採取した上清中のIL-2の定量化によって評価した。PRO1480による処理は、PRO1486による処理と比較した場合、顕著なIL-2分泌をもたらした。データは、sigmoidal 4PL fit(GraphPad Prism)を使用してフィットさせた。
図8】異なる抗CD137抗体断片によるT細胞活性化の力価および最大値。抗体構築物scDb-scFv PRO1480およびPRO1186によるT細胞活性化の力価および最大値を、図7に示すように、それぞれIL-2分泌の曲線下面積(AUC)およびIL-2分泌の最大刺激によって表す。
図9】さまざまな抗CD137抗体断片のCD137結合の概略図。CD137の細胞外ドメイン(ECD)は、4つのシステインリッチドメイン(CRD1~4)で構成されている。(A) 抗CD137抗体PRO1480は、CRD1および/またはCRD2のECDの遠位部分に含まれるCD137上のエピトープに結合する。(B)対照的に、抗CD137抗体PRO1186は、CRD4の細胞に近接するECDの部分に含まれるCD137上のエピトープに結合する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、ヒトCD137タンパク質に特異的に結合する抗体、および医薬組成物、製造方法、ならびにそのような抗体および組成物の使用方法を提供する。
【0020】
別段の定義がない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が関連する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0021】
用語「含む(comprising)」および「含む(including)」は、特に断りのない限り、本明細書ではそれらの制限のない非限定的な意味で使用される。したがって、そのような後者の実施形態に関して、用語「含む(comprising)」は、より狭い用語「からなる(consisting of)」を含む。
【0022】
本発明を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)用語「a」および「an」および「the」および同様の言及は、本明細書に別段の記載がない限り、または文脈によって明らかに矛盾していない限り、単数形および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。たとえば、用語「細胞(a cell)」は、それらの混合物を含む複数の細胞(cells)を含む。複数形を化合物、塩等に使用する場合、これは、単一の化合物、塩等も意味すると解釈される。
【0023】
第一の態様では、本発明は、ヒトCD137に特異的に結合する抗体に関する。
【0024】
一つの態様では、本開示は、1セットのCDR:HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、ヒトCD137に対する結合特異性を有する単離抗体を提供し、ここで該1セットのCDRは、HCDR1’は、配列番号:1、4、7、および10のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号:1のアミノ酸配列であり;HCDR2’は、配列番号:2、5、8、および11のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号:2のアミノ酸配列であり;HCDR3’は、配列番号:3、6、9、および12のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号:3のアミノ酸配列であり;LCDR1’は、配列番号:16、19、および22のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号:16のアミノ酸配列であり;LCDR2’は、配列番号:17、20、および23のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号:17のアミノ酸配列であり;およびLCDR3’は、配列番号:18、21、および24のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号:18のアミノ酸配列である、1セットのCDRと比較して10個以下のアミノ酸置換、たとえば9個以下のアミノ酸置換、8個以下のアミノ酸置換、7個以下のアミノ酸置換、6個以下のアミノ酸置換、5個以下のアミノ酸置換、4個以下のアミノ酸置換、3個以下のアミノ酸置換、2個以下のアミノ酸置換、1個または0個のアミノ酸置換、好ましくは0個のアミノ酸置換を有する。
【0025】
特定の実施形態では、本発明は、それぞれ配列番号:1、2、および3の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、配列番号:16および18の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するLDCR1およびLDCR3配列、ならびに配列番号:17の配列に対して少なくとも85%の同一性を有するLDCR2配列を含む、ヒトCD137に対する結合特異性を有する単離抗体に関する。
【0026】
本明細書で使用する用語「抗体」等は、以下を含む:全抗体またはその一本鎖;および任意の抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)またはその一本鎖;および抗体CDR、VH領域、またはVL領域を含む分子(多重特異性抗体を含むがこれに限定されない)。天然に存在する「全抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも二つの重鎖(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)および重鎖定常領域から構成されている。重鎖定常領域は、CH1、CH2、CH3の三つのドメインで構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)および軽鎖定常領域から構成されている。軽鎖定常領域は、一つのドメインCLで構成されている。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化でき、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在する。各VHおよびVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDRおよび4つのFRで構成されている。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(たとえば、エフェクター細胞)および古典的な補体系の第一の成分(Clq)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0027】
本明細書で使用する用語「抗原結合断片」、「その抗原結合断片」、「抗原結合部分」等は、特異的に所与の抗原(たとえば、CD137)に結合する能力を保持する、インタクトな全抗体の一つまたは複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、インタクトな抗体の断片によって行うことができる。抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれる結合断片の例は、Fab断片、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片;F(ab)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;VHドメインおよびCH1ドメインで構成されるFd断片;抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFv断片;およびアンキリンベースのドメイン、フィノマー(fynomer)、アビマー(avimer)、アンチカリン(anticalin)、フィブロネクチン、および抗体の定常領域に組み込まれている結合部位(たとえば、F-starのModular Antibody Technology(商標))を含むが、これらに限定されない代替スキャフォールドベースの結合ドメイン。
用語「相補性決定領域(「CDR」)」は、Kabat et al. (1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,“ 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(「Kabat」ナンバリング方法)、Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273, 927-948(「Chothia」ナンバリング方法)、ImMunoGenTics(IMGT)ナンバリング(Lefranc, M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999); Lefranc, M.-P. et al., Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003) (「IMGT」ナンバリング方法)によって記載されたもの、およびHonegger & Pluckthun, J. Mol. Biol. 309 (2001) 657-670(「AHo」ナンバリング)に記載されたナンバリング方法を含む、いくつかの周知のスキームのいずれかを使用して決定された境界を有するアミノ酸配列である。たとえば、古典的な形式の場合、Kabatでは、重鎖可変ドメイン(VH)のCDRアミノ酸残基に31-35(HCDR1)、50-65(HCDR2)、および95-102(HCDR3)の番号をつける;および軽鎖可変ドメイン(VL)のCDRアミノ酸残基には、24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)、および89-97(LCDR3)の番号をつける。Chothiaでは、VHのCDRアミノ酸には26-32(HCDR1)、52-56(HCDR2)、および95-102(HCDR3)の番号をつける;およびVLのアミノ酸残基には、24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)、および89-97(LCDR3)の番号をつける。KabatおよびChothiaの両方のCDR定義を組み合わせることにより、CDRはヒトVHのアミノ酸残基26-35(HCDR1)、50-65(HCDR2)、および95-102(HCDR3)、およびヒトVLのアミノ酸残基24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)、および89-97(LCDR3)で構成される。TMGTでは、VHのCDRアミノ酸残基には約26-35(HCDR1)、51-57(HCDR2)、93-102(HCDR3)の番号をつけ、VLのCDRアミノ酸残基には約27-32(LCDR1)、50-52(LCDR2)、および89-97(LCDR3)の番号をつける(「Kabat」によるナンバリング)IMGTでは、抗体のCDRは、プログラムIMGT/DomainGapAlignを使用して決定することができる。
【0028】
本発明の文脈では、特に明記しない限り、Honegger & Pluckthunによって提案されたナンバリングシステム(「AHo」)が使用される(Honegger & Pluckthun, J. Mol. Biol. 309 (2001) 657-670)。さらに、以下の残基は、AHoナンバリングスキームに従ってCDRとして定義されている: LCDR1(CDR-L1とも呼ばれる):L24-L42;LCDR2(CDR-L2とも呼ばれる):L58-L72;LCDR3(CDR-L3とも呼ばれる):L107-L138;HCDR1(CDR-H1とも呼ばれる):H27-H42;HCDR2(CDR-H2とも呼ばれる):H57-H76;HCDR3(CDR-H3とも呼ばれる):H108-H138。明確にするために、Honegger & Pluckthunによるナンバリングシステムは、異なるVHおよびVLサブファミリーの両方、特にCDRで、天然に存在する抗体に見られる長さの多様性を考慮に入れており、配列のギャップを提供する。したがって、所与の抗体可変ドメインでは、通常、1~149のすべての位置がアミノ酸残基によって占められるわけではない。
【0029】
好ましくは、「抗原結合領域」は、可変軽(VL)鎖の少なくともアミノ酸残基4~138および可変重(VH)鎖の5~138(いずれの場合も、Honegger&Pluckthunによるナンバリング)、より好ましくは、VLの3~144およびVHの4~144のアミノ酸残基を含み、そして特に好ましくは、完全なVLおよびVH鎖(VLの1~149およびVHの1~149のアミノ酸位置)である。抗原結合部分はまた、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トライアボディ、テトラボディ、scDb-scFv、v-NAR及びbis-scFvに組み込むことができる(たとえば、Holliger and Hudson, 2005, Nature Biotechnology, 23, 1126, 36を参照のこと)。抗体の抗原結合部分は、フィブロネクチンタイプIII(Fn3)等のポリペプチドに基づくスキャフォールドに移植することができる(フィブロネクチンポリペプチドモノボディを記載している米国特許第6,703,199号を参照のこと)。抗原結合部分は、相補的な軽鎖ポリペプチドと一緒になって一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む一本鎖分子に組み込むことができる(Zapata et al., 1995 Protein Eng. 8(10):1057-1062;および米国特許第5,641,870号)。
【0030】
本明細書で使用される用語「結合特異性」は、異なる抗原決定基ではなく、一つの抗原決定基と反応する個々の抗体結合部位の能力を指す。本明細書で使用する場合、用語「特異的に結合する」または「特異的である」は、標的と抗体との間の結合等の測定可能かつ再現可能な相互作用を指し、これは、生体分子を含む不均一な分子集団の存在下での標的の存在を決定する。たとえば、標的(エピトープであってもよい)に特異的に結合する抗体は、他の標的に結合するよりも高い親和性、結合活性、より容易に、および/またはより長い持続時間でこの標的に結合する抗体である。その最も一般的な形態では(そして定義された参照が言及されていない場合)、「特異的結合」は、たとえば当分野で知られている特異性アッセイ法に従って決定されるように、所望の標的と無関係の分子とを区別する抗体の能力を指す。このような方法は、ウエスタンブロット、ELISA、RIA、ECL、IRMA、SPR(表面プラズモン共鳴)試験、およびペプチドスキャンを含むが、これらに限定されない。たとえば、標準的なELISAアッセイを行うことができる。スコアリングは、標準的な発色[color development](たとえば、西洋ワサビペルオキシドを用いた二次抗体および過酸化水素を用いたテトラメチルベンジジン)によって行うことができる。特定のウェルでの反応は、たとえば450nmでの吸光度によって記録される。典型的なバックグラウンド(=ネガティブ反応)は約0.1ODであってもよい;典型的な陽性反応は約1ODであってもよい。これは、正のスコアと負のスコアの比率が10倍以上になる可能性があることを意味する。さらなる例では、SPRアッセイを行うことができ、ここで、バックグラウンドとシグナルとの間の少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍の差は、特異的結合を示す。通常、結合特異性の決定は、単一の参照分子ではなく、粉乳、トランスフェリン等の約3~5個の無関係な分子のセットを使用して行われる。本発明の抗体は、ヒトCD137に対して結合特異性を有する。特定の実施形態では、本発明の抗体は、ヒトCD137に対して結合特異性を有し、そして、特にSPRによって決定されるように、ヒトCD40に結合せず、および/またはヒトOX40に結合しない。
【0031】
好適には、本発明の抗体は単離抗体である。本明細書で使用する用語「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(たとえば、CD137に特異的に結合する単離抗体は、CD137以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。ただし、CD137に特異的に結合する単離抗体は、他の種のCD137分子等、他の抗原と交差反応する可能性がある。したがって、一つの実施形態では、本発明の抗体は、ヒトCD137およびカニクイザル[Macaca fascicularis](カニクイザル[Cynomolgus monkey]または「カニクイザル[Cynomolgus]」としても知られている)CD137に対して結合特異性を有する。さらに、単離抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0032】
好適には、本発明の抗体は、モノクローナル抗体である。本明細書で使用する、用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、それらのアミノ酸配列が実質的に同一であるか、または同じ遺伝的供給源に由来する抗体を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープ(単数)に対する結合特異性および親和性、または特定のエピトープ(複数)に対する結合特異性および親和性を示す。
【0033】
本発明の抗体は、キメラ抗体、およびヒト化抗体を含むが、これらに限定されない。
【0034】
用語「キメラ抗体」は、(a)定常領域またはその一部が、抗原結合部位(可変領域)が、抗原結合部位(可変領域)が、異なるまたは変更されたクラス、エフェクター機能および/または種、または完全に異なる分子の定常領域に連結されるように、変更、置換、または交換され、これによりキメラ抗体に新しい特性、たとえば酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物等を与える;または(b)可変領域またはその一部は、異なる、または変更された抗原特異性を有する可変領域で変更、置換、または交換される。たとえば、マウス抗体は、その定常領域をヒト免疫グロブリン由来の定常領域で置換することによって改変することができる。ヒト定常領域での置換により、キメラ抗体は、元のマウス抗体と比較して、ヒトにおける抗原性を低下させながら、抗原を認識する際のその特異性を保持することができる。
【0035】
本明細書で使用する「ヒト化」抗体は、非ヒト抗体の反応性を保持しながら、ヒトにおいて免疫原性が低い抗体である。これは、たとえば、非ヒトCDR領域を保持し、抗体の残りの部分をそれらのヒト対応物(すなわち、定常領域および可変領域のフレームワーク部分)で置換することによって達成することができる。追加のフレームワーク領域の改変は、ヒトフレームワーク配列内、ならびに別の哺乳動物種の生殖系列由来のCDR配列内で行うことができる。本発明のヒト化抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基を含んでもよい(たとえば、in vitroでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発またはin vivoでの体細胞突然変異によって導入される突然変異、または安定性または産生を促進するための保存的置換)。たとえばMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855, 1984; Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65-92, 1988; Verhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536, 1988; Padlan, Molec. Immun., 28:489-498, 1991;およびPadlan, Molec. Immun., 31: 169-217, 1994を参照されたい。ヒト工学技術の他の例は、米国特許第5,766,886号に開示されているXoma技術を含むが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で使用する用語「組換えヒト化抗体」は、組換え手段によって調製、発現、作成または単離されるすべてのヒト抗体、たとえば、ヒト化抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体、例として、トランスフェクトーマ(transfectoma)、およびヒト免疫グロブリン遺伝子、配列の全部または一部を他のDNA配列にスプライシングすることを含む任意の他の手段によって調製、発現、作成、または単離された抗体を含む。
【0037】
好適には、本発明の抗体は、ヒト化されている。好適には、本発明の抗体は、ヒト化されており、ウサギ由来のCDRを含む。
【0038】
用語「CD137」は、特に本明細書で配列番号:32として複製されたUniProt ID番号Q07011のヒトCD137を指す。好適には、本発明の抗体は、CD137、具体的には本明細書で配列番号:32として複製された、UniProt ID番号Q07011で示されるヒトCD137を標的にする。好適には、本発明の抗体は、ヒトおよびカニクイザル[cynomolgus (Macaca fascicularis)]CD137を標的にする。本発明の抗体は、CD137に特異的に結合する。特定の実施形態では、本発明の抗体は、ヒトCD137に対する結合特異性を有し、特にSPRによって決定されるように、ヒトCD40に結合しない、および/またはヒトOC40に結合しない。好ましくは、本発明の抗体は、CD137/CD137L相互作用を遮断しない。
【0039】
好適には、本発明の抗体は、CD137アゴニストである。「アクティベーター」、または「活性化抗体[activating antibody]」、または「アゴニスト」、または「アゴニスト抗体」は、それが結合する抗原によるシグナル伝達を増強または開始するものである。本発明の文脈において、用語「CD137アゴニスト」は、そのCD137抗原結合フラグメントのクラスター化時にCD137シグナル伝達を活性化することができ、たとえば、上記CD137抗原結合フラグメントの少なくとも2つの結合は、結合したCD137分子の多量体化およびそれらの活性化を可能にする、本発明の抗体を包含する。一部の実施形態では、アゴニスト抗体は、天然のリガンドの存在なしにシグナル伝達を活性化する。
【0040】
本発明の抗体は、実施例を含む、本明細書に記載されるように単離されたヒト化モノクローナル抗体を含むが、これらに限定されない。そのような抗ヒトCD137抗体の例は、その配列が表1に記載されている抗体である。本明細書に記載の抗体の生成および特性解析(characterization)に関する追加の詳細は、実施例に提供されている。
【0041】
ヒトCD137に対する結合特異性を有する本開示の単離抗体は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を有し、ここで:(a)上記VHは、3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を順番に含み、(b)上記VLは、3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を順番に含む。明確にするために、CDR領域は互いに連結されていないが、フレームワーク領域FR1からFR4に隣接している。
【0042】
本発明は、CD137タンパク質に特異的に結合する抗体を提供し、上記抗体は、表1に列挙されたVH CDRのいずれか一つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む。具体的には、本発明は、CD137に特異的に結合する抗体を提供し、上記抗体は表1に列挙された対応するVH CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する、1つ、2つ、または3つのVH CDRを含む。
【0043】
本発明は、重鎖可変領域(VH)を含むヒトCD137に対する結合特異性を有する単離抗体を提供し、ここで上記VHは、3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を順番に含み、上記HCDR1は、配列番号:1、4、7、および10のいずれか一つから選択される、好ましくは配列番号:1のアミノ酸配列を有し、上記HCDR2は、配列番号:2、5、8、および11のいずれか一つから選択される、好ましくは配列番号:2のアミノ酸配列を有し、上記HCDR3は、配列番号:3、6、9、および12のいずれか一つから選択される、好ましくは配列番号:3のアミノ酸配列を有する。具体的には、本発明は、ヒトCD137に対して結合特異性を有し、それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列を含む抗体を提供する。
【0044】
本発明はまた、CD137タンパク質に特異的に結合する抗体を提供し、上記抗体は、表1に列挙されたVL CDRのいずれか一つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む。具体的には、本発明は、CD137に特異的に結合する抗体を提供し、上記抗体は表1に列挙された対応するVL CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する、1つ、2つ、または3つのVL CDRを含む。
【0045】
本発明は、軽鎖可変領域(VL)を含むヒトCD137に対する結合特異性を有する単離抗体を提供し、ここで上記VLは、3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を順番に含み、上記LCDR1は、配列番号:16、19、および22のいずれか一つから選択される、好ましくは配列番号:16のアミノ酸配列を有し、上記LCDR2は、配列番号:17、20、および23のいずれか一つから選択される、好ましくは配列番号:17のアミノ酸配列を有し、上記LCDR3は、配列番号:18、21、および24のいずれか一つから選択される、好ましくは配列番号:18のアミノ酸配列を有する。具体的には、本発明は、ヒトCD137に対して結合特異性を有し、それぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列を含む抗体を提供する。
【0046】
好適には、本発明は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む、ヒトCD137に対する結合特異性を有する単離抗体を提供し、ここで:
(a)上記VHは、3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を順番に含み、上記HCDR1は、配列番号:1、4、7、および10のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列を有し、上記HCDR2は、配列番号:2、5、8、および11のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列を有し、上記HCDR3は、配列番号:3、6、9、および12のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列を有する;および
(b)上記VLは、3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を順番に含み、上記LCDR1は、配列番号:16、19、および22のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列を有し、上記LCDR2は、配列番号:17、20、および23のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列を有し、上記LCDR3は、配列番号:18、21、および24のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列を有する。
【0047】
具体的には、本発明は、ヒトCD137に対する結合特異性を有し、(a)それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびに(b)それぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列を含む抗体を提供する。
【0048】
本発明の他の抗体は、変異しているが、表1に記載の配列に示されるCDR領域とのCDR領域において少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセントの同一性を有するアミノ酸を含む。一つの態様では、本発明の他の抗体は、表1に記載の配列に示される配列に示されるCDR領域と比較した場合、CDR領域において1、2、3、4または5個以下のアミノ酸が変異している変異アミノ酸配列を含む。
【0049】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における用語「同一」または「同一性」は、同じである2つ以上の配列または部分配列を指す。核酸、ペプチド、ポリペプチドまたは抗体配列に関する「パーセント(%)同一性」および「相同性」は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して、最大パーセントの配列同一性を達成した後、配列同一性の一部として保存的置換を考慮しない、特定の核酸、ペプチド、またはポリペプチド配列の核酸/アミノ酸残基と同一である候補配列の核酸/アミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的でのアラインメントは、たとえば、BLAST、BLAST-2、またはALIGNソフトウェア等の、公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者の範囲内である様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0050】
配列比較の場合、通常、一つの配列が参照配列として機能し、それに対してテスト配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、テスト配列と参照配列をコンピューターに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを使用しても、代替パラメータを指定してもよい。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対するテスト配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0051】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの2つの例は、それぞれAltschul et al., Nuc. Acids Res. 25:3389-3402, 1977;およびAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410, 1990に記載されているBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST解析を実行するためのソフトウェアは、米国国立バイオテクノロジー情報センターを通じて公開されている。
【0052】
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、PAM120の重み付け表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. Meyers and W. Miller (Comput. Appl. Biosci., 4: 11-17, 1988)のアルゴリズムを使用して決定することもできる。さらに、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Blossom 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、およびギャップの重み16、14、12、10、8、6、または4、および長さの重み1、2、3、4、5、または6を使用して、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman and Wunsch (J. Mol, Biol. 48:444-453, 1970)アルゴリズムを使用して決定することができる。
【0053】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および合成のアミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、ならびに後で修飾されるアミノ酸、たとえば、ヒドロキシプロリン、ガンマ-カルボキシグルタメート、およびO-ホスホセリンである。用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書では互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、一つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび非天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用される。特に明記しない限り、特定のポリペプチド配列はまた、その保存的に修飾されたバリアントを暗黙のうちに包含する。
【0054】
好適には、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の単離された抗体は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで:
(a)上記VHは、順番に、3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含み、
上記HCDR1は、配列番号:1、4、7、および10のいずれか一つ、好ましくは配列番号:1と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の同一性を有し;
上記HCDR2は、配列番号:2、5、8、および11のいずれか一つ、好ましくは配列番号:2と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の同一性を有し;
上記HCDR3は、配列番号:3、6、9、および11のいずれか一つ、好ましくは配列番号:3と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の同一性を有し;および/または
(b)上記VLは、順番に、3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、
上記HCDR1は、配列番号:16、19、および22のいずれか一つ、好ましくは配列番号:16と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の同一性を有し;
上記HCDR2は、配列番号:17、20、および23のいずれか一つ、好ましくは配列番号:17と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の同一性を有し;
上記HCDR3は、配列番号:18、21、および24のいずれか一つ、好ましくは配列番号:18と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の同一性を有する。
【0055】
一つの実施形態では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、以下を含む: (a)それぞれ配列番号:1、2、および3と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の同一性を有するHCDR1、HCDR2、およびHCDR3、および/またはそれぞれ配列番号:16、17、および18と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の同一性を有するLCDR1、LCDR2、およびLCDR3。一つの実施形態では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、以下を含む: (a)それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、および/またはそれぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列。
【0056】
さらなる実施形態では、本発明は、CD137(たとえば、ヒトCD137タンパク質)に特異的に結合する単離抗体を提供し、ここで、上記抗体は、VHドメインおよびVLドメインを含む。本発明の文脈において、用語「VH」(可変重鎖)、「VL」(可変軽鎖)、「Vκ」および「Vλ」は、配列同一性および相同性に従ってグループ化された抗体重鎖および軽鎖配列のファミリーを指す。たとえば、BLOSUM(Henikoff, S. & Henikoff, J. G., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992) 10915-10919)等の相同性検索マトリックスを使用することによる配列相同性の決定の方法、および相同性による配列のグループ化は、当業者に周知である。VH、VκおよびVλについては、たとえば、Knappik et al., J. Mol. Biol. 296 (2000) 57-86は、VHをVH1A、VH1B、VH2~VH6に、VκをVκ1~Vκ4に、VλをVλ1からVλ3にグループ化する。in vivoでは、抗体のVκ鎖、Vλ鎖、およびVH鎖は、それぞれ生殖系列κ鎖VおよびJセグメント、生殖系列λ鎖VおよびJセグメント、および重鎖V、D、およびJセグメントのランダムな再構成の結果である。特定の抗体可変鎖がどのサブファミリーに属するかは、対応するVセグメント、特にフレームワーク領域FR1~FR3によって決定される。したがって、本出願において、フレームワーク領域HFR1~HFR3のみの特定のセットによって特徴付けられる任意のVH配列は、任意のHFR4配列、たとえば、重鎖生殖系列Jセグメントの一つから取られたHFR4配列、または再構成されたVH配列から取られたHFR4配列と組み合わせることができる。
【0057】
好適には、本発明は、CD137に特異的に結合する単離された抗体(たとえば、ヒトCD137タンパク質)を提供し、ここで、上記抗体は、VH3ドメインを含む。VH3ファミリーに属するVHの特定の例は、配列番号:13または配列番号:14の下に示されている。特に、配列番号:13または配列番号:14から取られたフレームワーク領域FR1~FR3は、VH3ファミリーに属する(表1、太字ではない最初の3つの領域)。好適には、本明細書で使用されるVH3ファミリーに属するVHは、配列番号:13または配列番号:14のFR1~FR3に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するFR1~FR3を含むVHである。より具体的には、配列番号:13または配列番号:14から取られたフレームワーク領域FR1~FR4は、VH3ファミリーに属する(表1、太字ではない領域)。好適には、本明細書で使用されるVH3ファミリーに属するVHは、配列番号:13または配列番号:14のFR1~FR4に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するFR1~FR4を含むVHである。
【0058】
好適には、本発明は、CD137(たとえば、ヒトCD137タンパク質)に特異的に結合する単離抗体を提供する。ここで、上記抗体は、VκフレームワークFR1、FR2、およびFR3、具体的にはVκ1、またはVκ3フレームワーク、好ましくはVκ1フレームワーク FR1~3、およびVκ FR4から選択される、好ましくはVκ1 FR4またはVκ3 FR4フレームワーク、およびVλ FR4である、フレームワークFR4を含む。好適なVκ1フレームワーク FR1~FR3は、配列番号:25または配列番号:26に記載のとおりである(表1、FR領域は太字ではない)。好適なVκ1フレームワーク FR1~FR3は、FR1~FR3に対応し、配列番号:25または配列番号:26から取得したアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセント同一性を有するアミノ酸配列を含む(表1、FR領域は太字ではない)。
【0059】
好適なVλ FR4は、配列番号:33~配列番号:39に記載のとおりである。一つの実施形態では、本発明は、CD137(たとえば、ヒトCD137タンパク質)に特異的に結合する単離抗体を提供する。ここで、上記抗体は、配列番号:33~配列番号:39のいずれかから選択され、好ましくは配列番号:33または配列番号:34、より好ましくは配列番号:33であるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90パーセント同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4を含む。
【0060】
一つの実施形態では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、以下を含む:
(i) それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列;
(ii) VH3ドメインフレームワーク配列FR1~FR4;および
(iii) VκフレームワークFR1、FR2、およびFR3、具体的にはVκ1またはVκ3 FR1~FR3、好ましくはVκ1 FR1~FR3を含むVLフレームワーク、およびVκ FR4、具体的にはVκ1 FR4またはVκ3 FR4、およびVλ FR4、具体的には配列番号:33~配列番号:39のいずれかから選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列、好ましくは、配列番号:33または配列番号:34、より好ましくは配列番号:33のアミノ酸配列を含むVλ FR4、より具体的には配列番号:33~配列:39のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号:33または配列番号:34、より好ましくは配列番号:33のアミノ酸配列を含むVλ FR4から選択されるフレームワークFR4。
【0061】
一つの実施形態では、したがって、本発明は、ヒトCD137に対する結合特異性を有し、以下を含むVLを含む抗体を提供する:
(i) CDRドメイン CDR1、CDR2、およびCDR3;
(ii) ヒトVκフレームワーク領域FR1~FR3、具体的にはヒトVκ1フレームワーク領域FR1~FR3;
(iii) (a)FR4のヒトVλ生殖系列配列、特に配列番号:33~39、好ましくは配列番号:33または配列番号:34、より好ましくは配列番号:33の列挙から選択されるVλ生殖系列配列;および(b)配列番号:33~配列番号:39、好ましくは配列番号:33または配列番号:34、より好ましくは配列番号:33のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むFR4に対して最も近いヒトVλ生殖系列配列と比較して、一つまたは二つの変異、具体的には一つの変異を有する、Vλベースの配列。
【0062】
より好ましい実施形態では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、以下を含む:
(i) それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列;
(ii) VH3ドメインフレームワーク配列FR1~FR4;および
(iii) Vκ1フレームワークFR1、FR2、およびFR3、および配列番号:33~配列番号:39のいずれか一つから選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、具体的には配列番号:33~配列番号:39のいずれか一つ、好ましくは配列番号:33または配列番号:34、より好ましくは配列番号:33に記載のVλ FR4を含むVLフレームワークを含むVLドメイン。
【0063】
本発明は、CD137(たとえば、ヒトCD137タンパク質)に特異的に結合する単離抗体を提供し、ここで、上記抗体は、表1に列挙されたVHドメインを含む。
【0064】
本発明はまた、CD137に特異的に結合する単離抗体を提供し、ここで、上記抗体は、表1に列挙されたVHアミノ酸配列を含み[comprise](または、あるいは、それからなり[consisting of])、ここで、フレームワーク配列(たとえば、CDRではない配列)中の約10個以下のアミノ酸が変異している(ここで、変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換、または欠失である)。
【0065】
本発明はまた、CD137に特異的に結合する単離抗体を提供し、ここで、上記抗体は、表1に列挙されたVHアミノ酸配列を含み、ここで、フレームワーク配列(たとえば、CDRではない配列)中の約20個以下のアミノ酸が変異している(ここで、変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換、または欠失である)。
【0066】
本発明の他の抗体は、変異しているが、表1に記載の配列に示されているVH領域とのVH領域において少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセントの同一性を有するアミノ酸を含む。
【0067】
本発明は、CD137タンパク質に特異的に結合する単離抗体を提供し、該抗体は表1に列挙されているVLドメインを含む。
【0068】
本発明はまた、CD137に特異的に結合する単離抗体を提供し、ここで、上記抗体は、表1に列挙されたVLアミノ酸配列を含み、ここで、フレームワーク配列(たとえば、CDRではない配列)中の約10個以下のアミノ酸が変異している(ここで、変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換、または欠失である)。
【0069】
本発明はまた、CD137に特異的に結合する単離抗体を提供し、ここで、上記抗体は、表1に列挙されたVLアミノ酸配列を含み、ここで、フレームワーク配列(たとえば、CDRではない配列)中の約20個以下のアミノ酸が変異している(ここで、変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換、または欠失である)。
【0070】
本発明の他の抗体は、変異しているが、表1に記載の配列に示されているVL領域とのVL領域において少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセントの同一性を有するアミノ酸を含む。
【0071】
好適には、本発明は、CD137に特異的に結合する単離抗体を提供し、ここで、上記抗体は、配列番号:13または配列番号:14または配列番号:15、好ましくは配列番号:13のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、好ましくは少なくとも90%、同一であるアミノ酸を含む重鎖可変領域を含み、そして具体的にはここで、上記抗体は、それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列を含む。一つの実施形態では、本発明は、単離抗体またはヒトCD137に特異的に結合するそれを提供し、ここで上記抗体は、配列番号:13のアミノ酸配列と少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、ここで上記重鎖可変領域はG51C(AHoナンバリング)を含む。さらなる実施形態では、本発明は、ヒトCD137に特異的に結合する単離抗体を提供し、ここで上記抗体は、配列番号:14のアミノ酸配列と少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、ここで上記重鎖可変領域はV2S、Y105F、およびQ141P(AHoナンバリング)を含む。
【0072】
別の実施形態では、本発明は、CD137に特異的に結合する単離抗体を提供し、ここで、上記抗体は、ここで、上記抗体は、配列番号:25または配列番号:26または配列番号:27、好ましくは配列番号:25のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、好ましくは少なくとも90%、同一であるアミノ酸を含む軽鎖可変領域を含み、そして具体的にはここで、上記抗体は、それぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列を含む。一つの実施形態では、本発明は、ヒトCD137に特異的に結合する単離抗体を提供し、ここで上記抗体は、配列番号:25のアミノ酸配列と少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで上記軽鎖可変領域はT141C(AHoナンバリング)を含む。さらなる実施形態では、本発明は、ヒトCD137に特異的に結合する単離抗体を提供し、ここで上記抗体は、配列番号:26のアミノ酸配列と少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで上記軽鎖可変領域はI2F、M4L、およびA51P(AHoナンバリング)を含む。
【0073】
本発明はまた、CD137に特異的に結合する単離抗体を提供し、ここで、上記抗体は、配列番号:13、14、および配列番号:15からなる群から選択され、好ましくは配列番号:13であるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、好ましくは少なくとも90%、同一であるアミノ酸を含む重鎖可変領域;および配列番号:25、26、および27からなる群から選択され、好ましくは配列番号:25であるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、好ましくは少なくとも90%、同一であるアミノ酸を含む軽鎖可変領域を含む。
【0074】
一つの実施形態では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、以下を含む: 配列番号:13、14、および15のいずれかから選択され、好ましくは配列番号:13であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および配列番号:25、26、および27のいずれかから選択され、好ましくは配列番号:25であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
【0075】
したがって、本発明は、ヒトCD137に特異的に結合する単離抗体を提供し、上記抗体は、配列番号:13のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、好ましくは少なくとも90%、同一であるアミノ酸を含む重鎖可変領域;および配列番号:25のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、好ましくは少なくとも90%、同一であるアミノ酸を含む軽鎖可変領域を含み、そしてここで抗体は、それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、および/またはそれぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列を含み、好ましくはここで抗体は、配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびに配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列を含む。
【0076】
さらなる実施形態では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する、本発明の単離抗体は、以下を含む: (a)配列番号:13のVH配列および配列番号:25のVL配列; (b)配列番号:14のVH配列および配列番号:26のVL配列;または (c)配列番号:15のVH配列および配列番号:27のVL配列。好ましい実施形態では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する、本発明の単離抗体は、配列番号:13のVH配列および配列番号:25のVL配列を含む。
【0077】
一つの実施形態では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する、本発明の抗体は、以下を含む:
(a)それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、配列番号:13のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%同一である、VH配列、および配列番号:25のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%同一である、VL配列;
(b)それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、配列番号:14のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%同一である、VH配列、および配列番号:26のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%同一である、VL配列、好ましくはここで該VHはV2S、Y105F、およびQ141P(AHoナンバリング)を含む、および該VLはI2F、M4L、およびA51P(AHoナンバリング)を含む;または
(c)それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、配列番号:15のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%同一である、VH配列、および配列番号:27のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%同一である、VL配列、好ましくはここで該VHはG51C(AHoナンバリング)を含む、および該VLはT141C(AHoナンバリング)を含む。
【0078】
好ましい実施形態では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する、本発明の抗体は、それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、配列番号:15のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%同一である、VH配列、および配列番号:27のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%同一である、VL配列を含み、好ましくはここで該VHはG51C変異(AHoナンバリング)を含む、および該VLはT141C変異(AHoナンバリング)を含む。好適には、本発明の上記抗体は、特に、システインの対が上記VH上のGly51(AHoナンバリング)および上記VL上のThr141(AHoナンバリング)を置換する、フレームワーク領域内に人工ドメイン間ジスルフィド架橋を形成するように変異される。驚くべきことに、ドメイン間ジスルフィド架橋を含む本発明のそのような抗体は、顕著に増加した熱安定性を有することが見出された。
【0079】
ジスルフィド架橋(「SS架橋」または「diS」)に関する用語「人工」は、SS架橋が野生型抗体によって自然に形成されるのではなく、親分子の操作された変異体によって形成されることを意味し、ここで少なくとも一つの外来アミノ酸がジスルフィド結合に寄与している。人工ジスルフィド架橋の部位特異的工学は、天然免疫グロブリンまたは国際公開第2009/000006号に記載されているようなモジュラー抗体で自然に利用可能なものとは明らかに区別される。これは、人工二硫化物架橋の橋脚の部位の少なくとも一つが通常、野生型抗体のCys残基の位置とは別に配置されているため、フレームワーク領域内に代替または追加のジスルフィド架橋が提供されるためである。本発明の人工ジスルフィド架橋は、抗体ドメイン(「ドメイン内架橋」)内で操作することができ、これは、ベータシート構造を安定化するか、またはドメイン(「ドメイン間架橋」)またはドメインの鎖(「鎖間架橋」)を架橋して、本発明による多重特異性抗体の構造を制約し、潜在的な結合パートナーとのその相互作用をサポートする。
【0080】
一つの実施形態では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する本発明の抗体は、以下を含む:
(a)配列番号:13のVH配列および配列番号:25のVL配列;
(b)配列番号:14のVH配列および配列番号:26のVL配列;または
(c)配列番号:15のVH配列および配列番号:27のVL配列。
【0081】
好ましい実施形態では、ヒトCD137に対する結合特異性を有する、本発明の抗体は、配列番号:13のVH配列および配列番号:25のVLを含む。
【0082】
一つの実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体は、表1に記載の抗体である。一つの実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体は、配列番号:29、配列番号:30、または配列番号:31に記載されるとおりである。一つの実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体は、配列番号:30に記載されるとおりである。一つの実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体は、配列番号29:または配列番号:31に記載されるとおりである。好ましい実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体は、配列番号29に記載されているとおりである。
【0083】
本発明の他の抗体は、アミノ酸またはアミノ酸をコードする核酸が変異しているが、表1に記載の配列に対して少なくとも60、70、80、90、または95パーセントの同一性を有するものを含む。一つの実施形態では、表1に記載の配列に示される可変領域と比較した場合、実質的に同じ治療活性を保持しながら、可変領域において1、2、3、4または5個以下のアミノ酸が変異している変異アミノ酸配列を含む。本明細書で使用される用語「実質的に同じ活性」とは、親抗体、たとえば、本開示の抗体、特に表1に記載の本開示の抗体について決定される活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも100%、少なくとも110%、または少なくとも120%、または少なくとも130%、または少なくとも140%、または少なくとも150%、または少なくとも160%、または少なくとも170%、または少なくとも180%、または少なくとも190%、例として最大200%である、実質的に同じ活性によって示される活性を指す。
【0084】
これらの抗体のそれぞれがCD137に結合でき、抗原結合特異性が主にCDR1、2、および3領域によって提供されることを考えると、
VH CDR1、2、および3配列とVL CDR1、2、および3配列を「混合および一致させる[mixed and matched]」ことができる(すなわち、異なる抗体由来のCDRを混合および一致させることができる)が、ただし本発明の他のCD137結合結合分子を作成するために、各抗体はVH CDR1、2、および3およびVL CDR1、2、および3を含む必要がある。そのような「混合および一致させた」CD137結合抗体は、当技術分野で知られている結合アッセイおよび実施例に記載されているもの(たとえば、ELISA)を使用して試験することができる。VH CDR配列を混合および一致させる場合、特定のVH配列のCDR1、CDR2、および/またはCDR3配列を、構造的に類似したCDR配列に置換する必要がある。同様に、VL CDR配列を混合および一致させる場合、特定のVL配列のCDR1、CDR2、および/またはCDR3配列を、構造的に類似したCDR配列に置換する必要がある。新規のVHおよびVL配列は、一つまたは複数のVHおよび/またはVL CDR領域配列を、本発明のモノクローナル抗体について本明細書に示されるCDR配列由来の構造的に類似した配列で変異させることによって作成できることは、通常の当業者には容易に明らかである。
【0085】
さらに別の実施形態では、本発明は、表1に記載の配列に相同であるアミノ酸配列を含む抗体を提供し、上記抗体はCD137に結合し、表1に記載のそれらの抗体の所望の機能特性を保持する。
【0086】
たとえば、本発明は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体を提供し、ここで、重鎖可変領域は、配列番号:13、14、および15からなる群から選択され、好ましくは配列番号:13であるアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、または少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号:25、26、および27からなる群から選択され、好ましくは配列番号:25であるアミノ酸配列と少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、または少なくとも95パーセント同一であるアミノ酸配列を含み;ここで抗体はヒトCD137に特異的に結合する。
【0087】
一つの実施形態では、VHおよび/またはVLアミノ酸配列は、表1に記載の配列と50パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセント、90パーセント、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、または99パーセント同一であってもよい。一つの実施形態では、VHおよび/またはVLアミノ酸配列は、1、2、3、4または5個以下のアミノ酸位置でのアミノ酸置換を除いて同一であってもよい。
【0088】
一つの実施形態では、本発明の抗体は、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、およびCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を有し、ここでこれらのCDR配列の一つまたは複数は、本明細書に記載の抗体またはその保存的修飾に基づいて特定のアミノ酸配列を有し、ここで抗体は、本発明のCD137結合抗体の所望の機能特性を保持する。
【0089】
用語「保存的に修飾されたバリアント(conservatively modified variant)」または「保存的バリアント(conservative variant)」は、アミノ酸配列と核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾されたバリアントは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードするか、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列を指す。遺伝暗号の縮退のために、機能的に同一の多数の核酸が任意の所与のタンパク質をコードする。たとえば、コドンGCA、GCC、GCG、GCUはすべてアミノ酸アラニンをコードしている。したがって、アラニンがコドンによって指定されるすべての位置で、コードされたポリペプチドを変更することなく、コドンを記載された対応するコドンのいずれかに変更することができる。そのような核酸バリアントは「サイレントバリアント」であり、これは保存的に修飾されたバリアントの一種である。ポリペプチドをコードする本明細書のすべての核酸配列はまた、核酸のすべての可能なサイレントバリエーションを記載している。当業者は、核酸の各コドン(通常はメチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾して、機能的に同一の分子を生成できることを認識するだろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレントバリエーションは、記載された各配列に暗示されている。
【0090】
ポリペプチド配列の場合、「保存的に修飾されたバリアント」または「保存的バリアント」は、ポリペプチド配列への個々の置換、欠失または付加を含み、それがアミノ酸の化学的に類似したアミノ酸による置換をもたらす。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野で周知である。そのような保存的に修飾されたバリアントは、本発明の多型バリアント、種間同族体(interspecies homolog)、および対立遺伝子に追加され、そしてそれらを除外しない。次の8つの群は、相互に保存的に置換されたアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン、スレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(たとえば、Creighton, Proteins (1984)を参照のこと)。一つの実施形態では、用語「保存的配列修飾」は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に有意に影響を与えたり変更したりしないアミノ酸修飾を指すために使用される。
【0091】
したがって、本発明は、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域とからなる単離モノクローナル抗体を提供し、ここで: 重鎖可変領域CDR1は、好ましくは、配列番号:1、4、7、10のいずれかから選択される、好ましくは配列番号:1であるアミノ酸配列、またはその保存的バリアントからなる;重鎖可変領域CDR2は、配列番号:2、5、8、11のいずれかから選択される、好ましくは配列番号:2であるアミノ酸配列、またはその保存的バリアントからなる;重鎖可変領域CDR3は、配列番号:3、6、9、12のいずれかから選択される、好ましくは配列番号:3であるアミノ酸配列、またはその保存的バリアントからなる;軽鎖可変領域CDR1は、好ましくは、配列番号:16、19、22のいずれかから選択される、好ましくは配列番号:16であるアミノ酸配列、またはその保存的バリアントからなる;軽鎖可変領域CDR2は、好ましくは、配列番号:17、20、23のいずれかから選択される、好ましくは配列番号:17であるアミノ酸配列、またはその保存的バリアントからなる;軽鎖可変領域CDR3は、好ましくは、配列番号:18、21、24のいずれかから選択される、好ましくは配列番号:18であるアミノ酸配列、またはその保存的バリアントからなる; ここで、抗体はCD137に特異的に結合し、追加の架橋の有無にかかわらずCD137シグナル伝達を活性化することができる。
【0092】
一つの実施形態では、本発明の抗体は、哺乳動物細胞における発現に最適化されており、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を有し、ここでこれらの配列の一つまたは複数は、本明細書に記載の抗体またはその保存的修飾であり、ここで抗体は本発明のCD137結合抗体の所望の機能的特性を保持している。したがって、本発明は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、哺乳動物細胞における発現に最適化された単離モノクローナル抗体を提供し、ここで: 重鎖可変領域は、配列番号:13、14、および15のいずれかから選択される、好ましくは配列番号:13であるアミノ酸配列、またはその保存的修飾を含む;軽鎖可変領域は、配列番号:25、26、および27のいずれか一つから選択される、好ましくは配列番号:25であるアミノ酸配列、またはその保存的修飾を含む; ここで、抗体はCD137に特異的に結合し、追加の架橋の有無にかかわらずCD137シグナル伝達を活性化することができる。
【0093】
一つの実施形態では、本発明の抗体は、全長重鎖配列および全長軽鎖配列を有する哺乳動物細胞における発現のために最適化され、ここでこれらの配列の一つまたは複数は、本明細書に記載の抗体またはその保存的修飾に基づいて特定のアミノ酸配列を有し、ここで抗体は、本発明のCD137結合抗体の所望の機能特性を保持する。
【0094】
本明細書で使用する場合、用語「最適化された」は、産生細胞または生物、一般に真核細胞、たとえば、ピキア(Pichia)細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、またはヒト細胞において好ましいコドンを使用して、アミノ酸配列をコードするよう改変されたヌクレオチド配列を意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、「親」配列としても知られている開始ヌクレオチド配列によって最初にコードされたアミノ酸配列を完全にまたは可能な限り保持するように設計されている。本明細書の最適化された配列は、哺乳動物細胞において好ましいコドンを有するように設計されている。しかしながら、他の真核細胞または原核細胞におけるこれらの配列の最適化された発現もまた、本明細書において想定される。最適化されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列は、最適化されたとも呼ばれる。
【0095】
別のタイプの可変領域修飾は、VHおよび/またはVL CDR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させて、それによって「親和性成熟」として知られる目的の抗体の一つまたは複数の結合特性(たとえば、親和性)を改善することである。部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発を行って突然変異を導入することができ、抗体結合に対する効果、または目的の他の機能的特性は、本明細書に記載され、実施例に提供されるように、in vitroまたはin vivoアッセイで評価することができる。(上記で説明したように)保存的な修飾を導入することができる。突然変異は、アミノ酸の置換、付加、または欠失である可能性があってもよい。さらに、通常、CDR領域内の1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以下の残基が変更される。
【0096】
「親和性成熟」抗体は、それらの変化を有さない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす、その一つまたは複数の可変ドメインに一つまたは複数の変化を有するものである。一つの実施形態では、親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルまたはピコモルの親和性さえも有する。親和性成熟抗体は、当技術分野で知られている方法によって産生される。たとえば、Marks et al, Bio/Technology 10:779-783 (1992)は、VHおよびVLドメインシャッフリングによる親和性成熟を記載している。超可変領域(HVR)および/またはフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、たとえば、以下によって記載されている:Barbas et al. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 91:3809-3813 (1994); Schier et al. Gene 169:147-155 (1995); Jackson et al, J. Immunol. 154(7):3310-9(1995);およびHawkins et al, J. Mol. Biol. 226:889-896 (1992)。
【0097】
本発明の抗体はさらに、改変抗体を操作(engineer)するための出発物質として本明細書に示される一つまたは複数のVHおよび/またはVL配列を有する抗体を使用して調製することができ、その改変抗体は、出発抗体から変化した特性を有してもよい。抗体は、例えば一つまたは複数のCDR領域内および/または一つまたは複数のフレームワーク領域内の、一つまたは両方の可変領域(すなわち、VHおよび/またはVL)内の一つまたは複数の残基を修飾することによって操作することができる。追加的または代替的に、抗体は、たとえば、抗体のエフェクター機能を変更するために、定常領域内の残基を改変することによって操作することができる。
【0098】
実行できる可変領域エンジニアリングの一つのタイプは、CDRグラフトである。抗体は、主に6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)にあるアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDR外の配列よりも個々の抗体間でより多様である。CDR配列はほとんどの抗体-抗原相互作用に関与するため、異なる特性を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列に移植された、特定の天然に存在する抗体由来のCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現することが可能である(たとえば、Riechmann, L. et al., 1998 Nature 332:323-327; Jones, P. et al., 1986 Nature 321:522-525; Queen, C. et al., 1989 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86: 10029-10033;Winterに対する米国特許番号第5,225,539号、およびQueen et al.に対する米国特許番号第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号、および第6,180,370号を参照のこと)。
【0099】
このようなフレームワーク配列は、生殖系列抗体遺伝子配列または再構成された抗体配列を含む公開DNAデータベースまたは公開された参考文献から取得することができる。たとえば、ヒトの重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(インターネットのwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで入手可能)、ならびにKabat, E. A., et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242; Tomlinson, I. M., et al., 1992 J. Mol. Biol. 227:776-798;およびCox, J. P. L. et al., 1994 Eur. J Immunol. 24:827-836で見出すことができ、それぞれの内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。たとえば、ヒトの重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、「IMGT」データベース(インターネットのwww.imgt.orgで入手可能;Lefranc, M.P. et al., 1999 Nucleic Acids Res. 27:209-212を参照;それぞれの内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。)で見出すことができる。
【0100】
本発明の抗体で使用するためのフレームワーク配列の例は、本発明の選択された抗体によって使用されるフレームワーク配列、たとえば、本発明のモノクローナル抗体によって使用されるコンセンサス配列および/またはフレームワーク配列に構造的に類似するものである。VH CDR1、2および3配列、およびVL CDR1、2および3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖系列免疫グロブリン遺伝子に見られるものと同一の配列を有するフレームワーク領域に移植することができ、またはCDR配列は、生殖系列配列と比較して一つ以上の変異を含むフレームワーク領域に移植することができる。たとえば、特定の例において、抗体の抗原結合能力を維持または増強するためにフレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であることが見出された(Queen et alに対する米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号及び第6,180,370号を参照)。
【0101】
得られるポリペプチドがCD137に特異的に結合する少なくとも一つの結合領域を含む限り、多種多様な抗体/免疫グロブリンフレームワークまたはスキャフォールドを使用することができる。そのようなフレームワークまたはスキャフォールドは、ヒト免疫グロブリンの5つの主要なイディオタイプ、その抗原結合断片を含み、そして好ましくはヒト化された態様を有する他の動物種の免疫グロブリンを含む。
【0102】
一つの態様では、本発明は、本発明のCDRを移植することができる非免疫グロブリンスキャフォールドを使用して非免疫グロブリンベースの抗体を生成する方法に関する。既知または将来の非免疫グロブリンフレームワークおよびスキャフォールドは、それらが標的CD137タンパク質に対して特異的な結合領域を含む限り、使用することができる。既知の非免疫グロブリンフレームワークまたはスキャフォールドは、フィブロネクチン(Compound Therapeutics,Inc.、マサチューセッツ州ウォルサム)、アンキリン(Molecular Partners AG、チューリッヒ、スイス)、リポカリン(Pieris Proteolab AG、ドイツ、フライシング)、小型モジュール免疫医薬[small modular immuno-pharmaceutical](Trubion Pharmaceuticals Inc.、ワシントン州シアトル)、マキシボディ(Avidia, Inc.、カリフォルニア州マウンテンビュー)、プロテインA(Affibody AG、スウェーデン)、およびアフィリン(ガンマクリスタリンまたはユビキチン)(Scil Proteins GmbH、ハレ、ドイツ)を含むが、これらに限定されない。
【0103】
好適には、本発明の抗体は、CD137に特異的に結合し、以下のパラメータの一つまたは複数を特徴とする:
(i)表面プラズモン共鳴によって測定した場合、50nM未満、具体的には10nM未満、より具体的には5nM未満の解離定数(KD)でヒトCD137に結合する;
(ii)SPRによって測定した場合、5×10-3-1以下、または10-3-1以下または5×10-4-1以下、または10-4-1以下のKoff速度でヒトCD137に結合する;
(iii)SPRによって測定した場合、少なくとも10-1-1以上、少なくとも10-1-1以上、少なくとも5×10-1-1以上、少なくとも10-1-1のKon速度でヒトCD137に結合する;
(iv)任意選択で、ウレルマブと交差競合する;
(v)任意選択で、カニクイザル[Macaca fascicularis](カニクイザル[Cynomolgus])CD137と交差反応する;
(vi)任意選択で、特に競合ELISAで測定した場合、CD137とCD137Lの間の相互作用を阻害しない。
【0104】
本明細書で使用する場合、用語「親和性」は、単一の抗原部位での抗体と抗原との間の相互作用の強さを指す。各抗原部位内で、抗体「アーム」の可変領域は、弱い非共有結合力を介して多数の部位で抗原と相互作用する;相互作用が多いほど、親和性は強くなる。
【0105】
「結合親和性」は、一般に、分子(たとえば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(たとえば、抗原)との間の非共有相互作用の合計の強さを指す。特に明記しない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」、「結合する(bind to)」、「結合する(binds to)」または「結合する(binding to)」は、結合対のメンバー(たとえば、抗体断片と抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。パートナーYに対する分子Xの親和性は、一般に解離定数(K)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載されているものを含む、当技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は一般に抗原にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は一般に抗原に速く結合し、より長く結合したままになる傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当技術分野で知られており、それらのいずれも本発明の目的のために使用することができる。結合親和性、すなわち結合強度を測定するための特定の例示的かつ例示的な実施形態を以下に記載する。
【0106】
本明細書で使用される用語「Kassoc」、「Ka」、または「Kon」は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指すことを意図し、一方、本明細書で使用される用語「Kdis」、「Kd」、または「Koff」は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことを意図している。一つの実施形態では、本明細書で使用される用語「KD」は、Kd対Kaの比(すなわち、Kd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される解離定数を指すことを意図している。本発明による「KD」または「KD値」または「K」または「K値」は、一つの実施形態では、MASS-1 SPR機器(Sierra Sensors)を使用する表面プラズモン共鳴アッセイを使用することによって測定される。親和性を測定するために、ウサギIgGのFc領域に特異的な抗体(Bethyl Laboratories、カタログ番号A120-111A)を、標準的なアミンカップリング法を使用してセンサーチップ(SPR-2親和性センサー、高容量アミン、Sierra Sensors)に固定化する。B細胞上清中のウサギモノクローナル抗体は、固定化された抗ウサギIgG抗体によって捕捉される。十分な捕捉を可能にするには、B細胞上清中の最小IgG濃度が必要である。モノクローナル抗体を捕捉した後、ヒトCD137 ECD(Peprotech、カタログ番号310-15-1MG)を90nMの濃度で3分間フローセルに注入し、センサーチップに捕捉されたIgGからタンパク質の解離を5分間進行させる。各注入サイクルの後、10mMグリシン-HClを2回注入して表面を再生させる。見かけの解離(kd)と会合(ka)の速度定数、および見かけの解離平衡定数(KD)は、MASS-1分析ソフトウェア(Analyzer、Sierra Sensors)で1対1のラングミュア結合モデルを使用して計算され、曲線近似の品質は、曲線近似の品質の尺度である相対Chi(分析物の外挿された最大結合レベルに正規化されたChi)に基づいてモニターされる。Chiの値が小さくなるほど、1対1のラングミュア結合モデルへの適合がより正確になる。リガンド結合の応答単位(RU)が抗体捕捉のRUの少なくとも2%である場合、結果は有効であるとみなす。抗体捕捉のRUが2%未満のリガンド結合のRUを有するサンプルは、捕捉された抗体に対するCD137の特異結合を示さないとみなす。平衡解離定数(KD)は、koff/konの比率として計算する。たとえば、Chen et al, J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999)を参照されたい。
【0107】
好適には、CD137に対する本発明の抗体の親和性は、CD137に対するCD137Lの親和性に匹敵するか、またはそれより高くてもよい。好適には、CD137に対する本発明の抗体の親和性は、CD137に対するウレルマブの親和性に匹敵するか、またはそれより高くてもよい。CD137結合ドメインのより高い親和性は、抗体での使用に特に好適であってもよく、ここで、上記抗体は、CD137に対して一価であることが理解されるであろう。抗体の結合親和性は、たとえば、解離定数(KD)によって決定してもよい。より強い親和性はより低いKDによって表され、より弱い親和性はより高いKDによって表される。
【0108】
したがって、好適な実施形態では、本発明の抗体は、特にSPRによって測定した場合、5~50,000pM、5~40,000pM、5~30,000pM、5~20,000pM、5~10,000pM、5~9,000pM、5~8,000pM、5~7,000pM、5~6,000pM、5~5,000pMの間のKDを有してもよい。さらなる実施形態では、本発明の抗体は、特にSPRによって測定した場合、10nMと10pMの間、好ましくは10nMと0.1nMの間、より好ましくは5nMと1nMの間のKDでヒトCD137に結合する。
【0109】
好適な実施形態では、本発明の抗体は、特にSPRによって測定した場合、約50nM未満、約45nM未満、約40nM未満、約35nM未満、約30nM未満、約25nM未満、20nM未満、約15nM未満、約10nM未満、約9nM未満、約8nM未満、約7nM未満、約6nM未満、約5nM未満のKDを有してもよい。好適には、本発明の抗体は、特にSPRによって測定した場合、10nM未満のKDを有する。好ましくは、本発明の抗体は、特にSPRによって測定した場合、5nM未満のKDを有するヒトCD137に結合する。
【0110】
好適には、本発明の抗体は、表面プラズモン共鳴法(surface plasmon resonance)によって測定した場合、少なくとも10-1-1以上、少なくとも10-1-1以上、少なくとも5×10-1-1以上、少なくとも10-1-1以上、少なくとも5×10-1-1以上、少なくとも10-1-1以上のKon速度でヒトCD137に結合する。好適には、本発明の抗体は、SPRによって測定した場合、少なくとも10-1-1以上、具体的には少なくとも5×10-1-1以上のKon速度を有する。
【0111】
好適には、本発明の抗体は、表面プラズモン共鳴法(surface plasmon resonance)によって測定した場合、少なくとも10-3-1以下、3×10-3-1以下、5×10-3-1以下、10-4-1以下、5×10-4-1以下のKoff速度でヒトCD137に結合する。好適には、本発明の抗体は、SPRによって測定した場合、5×10-3-1以下のKoff速度を有する。
【0112】
好適には、本発明の抗体は、有益な生物物理学的特性を有する。
【0113】
好適には、本発明の抗体は、scFvフォーマットである場合、示差走査蛍光光度法(differential scanning fluorimetry)によって決定されるように、少なくとも50℃、たとえば、少なくとも55℃、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも65℃の融解温度(Tm)を有し、ここで上記抗体は、pH 6.4、150 mM NaClの50mMリン酸-クエン酸緩衝液で製剤化される。DSFは以前に記載されている(Egan, et al., MAbs, 9(1) (2017), 68-84; Niesen, et al., Nature Protocols, 2(9) (2007) 2212-2221)。scFvコンストラクトの熱変性の遷移の中点は、蛍光色素SYPRO(登録商標)Orangeを使用した示差走査蛍光光度法によって決定される(Wong & Raleigh, Protein Science 25 (2016) 1834-1840を参照のこと)。pH6.4のリン酸-クエン酸緩衝液中のサンプルは、50μg/mLの最終タンパク質濃度で製剤化され、総量100μlに5×SYPRO(登録商標)Orangeの最終濃度が含まれている。25μlの調製サンプルを白壁の(white-walled)AB gene PCRプレートに3回ずつ添加する。アッセイはサーマルサイクラーとして使用されるqPCRマシンで行い、蛍光発光はソフトウェアのカスタム色素キャリブレーションルーチンを使用して検出する。試験サンプルを含むPCRプレートは、25℃から96℃まで1℃刻みで温度ランプに供され、各温度上昇後に30秒休止する。 総アッセイ時間は約2時間である。Tmは、ソフトウェアGraphPad Prismによって、数学的な二次導関数法を使用して計算し、曲線の変曲点を計算する。報告されるTmは、3回の測定の平均である。
【0114】
本発明の抗体は、特にscFv(一本鎖抗体[single chain variable fragment])抗体フォーマットで表される場合、本発明の抗体が初濃度10mg/mlであり、特にここで本発明の抗体がpH 6.4の150 mM NaClを含む50mMリン酸-クエン酸緩衝液で製剤化される場合、少なくとも2週間、特に少なくとも4週間の保管後の7%未満の、たとえば6%未満、5%未満、3%未満、好ましくは2%未満のモノマー含有量の損失を特徴とする。モノマー含有量の損失は、SE-HPLCクロマトグラムの濃度曲線下面積の計算によって決定される。SE-HPLCは、米国薬局方の第621章で概説されているように、固体固定相と液体移動相に基づく分離技術である。この方法では、疎水性の固定相と水性の移動相を利用して、分子の大きさおよび形状に基づいて分子を分離する。分子の分離は、特定のカラムの空隙容量(V0)および総透過量(VT)の間で発生する。SE-HPLCによる測定は、自動サンプル注入および検出波長280nmに設定されたUV検出器を備えたChromasterHPLCシステム(Hitachi High-Technologies Corporation)で行う。機器は、ソフトウェアEZChrom Elite(Agilent Technologies、バージョン3.3.2 SP2)によって制御される。このソフトウェアは、結果のクロマトグラムの分析もサポートする。タンパク質サンプルは遠心分離によって除去され、注入前にオートサンプラーで4~6℃の温度に保持される。scFvサンプルの分析には、Shodex KW403-4Fカラム(昭和電工株式会社、#F6989202)を、推奨流量0.35mL/分の標準化された緩衝生理食塩水移動相(50mMリン酸ナトリウムpH6.5、300mM塩化ナトリウム)とともに使用した。注入あたりの目標サンプル負荷は5μgである。サンプルは波長280nmのUV検出器で検出し、データは好適なソフトウェア一式(software suite)で記録する。得られたクロマトグラムは、V0からVTの範囲で分析されるため、溶出時間が10分を超えるマトリックス関連ピークは除外される。
【0115】
さらに、本発明の抗体は、特にscFv(一本鎖抗体[single chain variable fragment])抗体フォーマットで表される場合、本発明の抗体が初濃度10mg/mlであり、特にここで本発明の抗体がpH 6.4の150 mM NaClを含む50mMリン酸-クエン酸緩衝液で製剤化される場合、5回の連続した凍結融解サイクル後の5%未満の、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満のモノマー含有量の損失を特徴とする。
【0116】
用語「エピトープ」は、抗体が特異的に結合することができる抗原の局所領域を指す。エピトープは、たとえば、ポリペプチドの隣接アミノ酸であってもよく、またはエピトープは、たとえば、ポリペプチド(単数)またはポリペプチド(複数)の2つ以上の非隣接領域から一緒になりうる。
【0117】
一つの実施形態では、本発明の抗体は、ウレルマブとのCD137への結合について交差競合する。BMS-663513とも呼ばれるウレルマブは、Bristol-Myers Squibbからの完全にヒト化されたIgG4 mAbであり、国際公開第2004/010947号、米国特許第6,887,673号、および米国特許第7,214,493号に記載されており、これらは参照により、その全体が本出願に組み込まれる。好適には、本発明の抗体は、非限定的な理論によれば、ウレルマブと同じまたは重複する(たとえば、構造的に類似した、または空間的に近位の)エピトープに結合しうる。
【0118】
一つの実施形態では、本発明の抗体は、ウトミルマブとの結合について交差競合しない。本発明は、ウトミルマブとは異なるエピトープに結合する抗体を提供する。PF-05082566とも呼ばれるウトミルマブは、Pfizerからの完全ヒトIgG2 mAbであり、国際公開第2012/032433号および米国特許第8,821,867号に記載されており、これらは、参照によりその全体が本出願に組み込まれる。好適には、本発明の抗体は、非限定的な理論によれば、ウトミルマブとは異なる(たとえば、構造的に異なる、または空間的に離れた)エピトープに結合しうる。本明細書で使用される用語「認識する」は、その立体配座エピトープを見つけて相互作用する(たとえば、結合する)抗体を指す。
【0119】
本発明の抗体は、CD137のアミノ酸残基Asn42が結合にとって重要な残基ではないという条件で、CD137の細胞外ドメインの遠位部分に位置するエピトープ、特にシステインリッチドメイン1~2(CRD1~2)内、特に配列番号:32のアミノ酸残基24~86内に位置するエピトープでヒトCD137細胞外ドメインに結合する。
【0120】
したがって、さらなる態様では、本開示はまた、本開示の例示的な抗体のいずれか、特に表1に列挙される例示的な抗体のいずれかと同じエピトープに結合する抗体を提供する。本開示は、上記抗体が、CD137のアミノ酸残基Asn42がCRD1および/またはCRD2の結合にとって重要な残基ではないという条件で、より具体的には、CD137のアミノ酸残基Asn42が結合にとって重要な残基ではないという条件で、配列番号:32のアミノ酸残基24~86内で、特にシステインリッチドメイン内の、CD137の細胞外ドメインの遠位部分に位置するエピトープでヒトCD137細胞外ドメインに結合する単離された抗体を提供する。
【0121】
特定の実施形態では、上記抗体は、残基Arg 41、Gln43、Cys45、Pro49、Ser52、およびSer80を含む、実施例13に従って決定される一組の重要残基を特徴とするエピトープでヒトCD137細胞外ドメインに結合する。
【0122】
本発明の文脈において、用語「重要残基」は、抗体ベースの分子が結合しているエピトープの一部であり、抗体ベースの分子とそのエピトープ間の相互作用にとって重要である抗原の残基に関する。特に、重要残基は、次の基準の一つまたは複数を満たすことを特徴とする:(i)抗体ベースの分子がエピトープに結合すると、50%以上埋没すること、(ii)特定の側鎖水素結合相互作用を有すること、(iii)水素結合ネットワークに関与していること、および/または(iv)抗体ベースの分子の重要な結合残基との重要な相互作用を示すこと。特定の実施形態では、これらの基準は、実施例13に開示された方法に従って決定される。
【0123】
特定の実施形態では、上記抗体は、残基Ala33、Asn40、およびCys48をさらに含む、実施例13に従って決定される一組の重要残基を特徴とするエピトープでヒトCD137細胞外ドメインに結合する。
【0124】
特定の実施形態では、上記抗体は、残基Pro32、Gly34、Thr35、Ser46、Pro47、Pro50、Cys78、およびSer79をさらに含む、実施例13に従って決定される一組の重要残基を特徴とするエピトープでヒトCD137細胞外ドメインに結合する。
【0125】
一部の実施形態では、単離抗体は、それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびに/またはそれぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列を含み、好ましくはここで該抗体は、それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列を含む。好適には、抗体は、上記の一つまたは複数の生物学的特性を有する。
【0126】
したがって、追加の抗体は、CD137結合アッセイにおいて本発明の他の抗体と交差競合する(たとえば、統計的に有意な方法での結合を競合的に阻害する)それらの能力に基づいて同定することができる。特定の実施形態では、本開示は、ヒトCD137上の同じエピトープへの結合について、本開示の例示的な抗体のいずれか、特に表1に列挙される例示的な抗体のいずれかと競合または交差競合する単離抗体を提供する。
【0127】
用語「競合する」または「交差競合する」および関連用語は、本明細書では互換的に使用され、標準的な競合結合アッセイにおいてCD137への他の抗体または結合剤の結合に干渉する抗体または他の結合剤の能力を意味する。
【0128】
抗体または他の結合剤がCD137への別の抗体または結合分子の結合に干渉することができる能力または程度、およびしたがってそれが本発明に従って交差競合すると言えるかどうかは、標準的な競合結合アッセイを使用して決定することができる。一つの特に好適な定量的交差競合アッセイは、FACSまたはAlphaScreenベースのアプローチを使用して、標的へのそれらの結合に関して、標識された(たとえば、Hisタグ付加、ビオチン化、または放射性標識された)抗体またはその断片と他の抗体またはその断片との間の競合を測定する。一般に、交差競合抗体またはその断片は、たとえば、交差競合アッセイにおいて標的に結合するものであり、その結果、アッセイ中、および二次抗体またはその断片の存在下で、本発明による免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドの記録された置換(recorded displacement)は、所与の量で存在する、試験される有望な(potentially)クロスブロッキング抗体またはその断片による最大理論的置換[maximum theoretical displacement](たとえば、クロスブロックする必要があるコールドの(たとえば、非標識)抗体またはその断片による置換)の最大100%(たとえば、FACSベースの競合アッセイにおいて)である。好ましくは、交差競合する抗体またはその断片は、10%から100%の間であり、より好ましくは50%から100%の間である記録された置換(recorded displacement)を有する。
【0129】
好適には、本発明の単離抗体は、以下からなる群から選択される: モノクローナル抗体、キメラ抗体、IgG抗体、Fab、Fv、scFv、dsFv、scAb、STAB、およびアンキリンベースのドメイン、フィノマー(fynomer)、アビマー(avimer)、アンチカリン(anticalin)、フィブロネクチン、および抗体の定常領域に組み込まれている結合部位(たとえば、F-starのModular Antibody Technology(商標))を含むが、これらに限定されない代替スキャフォールドベースの結合ドメイン。
【0130】
好適には、本発明の単離抗体はFv断片である。好適には、本発明の単離抗体はscFv断片である。「一本鎖Fv」または「scFv」または「sFv」抗体は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、ここでこれらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする、VHとVLドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含む(たとえば、Pluckthun, The pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York, 1994), pp. 269-315を参照のこと)。特定の実施形態では、上記機能的断片は、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを含むscFvフォーマットであり、ここで、上記リンカーは、4つのグリシンアミノ酸残基および1つのセリンアミノ酸残基の一つまたは複数のユニット(GGGGS)を含み、ここで、n=1、2、3、4、5、6、8または8、好ましくはn=4である。特定の実施形態では、上記機能的断片は、配列番号:28によるリンカーを含むscFvフォーマットである。一つの実施形態では、ヒトCD137に特異的に結合する本発明の単離抗体は、配列番号:29、配列番号:30、および配列番号:31からなる群から選択される、好ましくは配列番号:29であるアミノ酸配列と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセント同一であるアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、本発明の単離抗体は、配列番号:29、配列番号:30、または配列番号:31で示される、好ましくは配列番号:29である一本鎖抗体[single-chain variable fragment](scFv)である。一つの実施形態では、本発明の単離抗体は、配列番号:30で示される一本鎖抗体[single-chain variable fragment](scFv)である。一つの実施形態では、本発明の単離抗体は、配列番号:31で示される一本鎖抗体[single-chain variable fragment](scFv)である。好ましい実施形態では、本発明の単離抗体は、配列番号:35で示される一本鎖抗体[single-chain variable fragment](scFv)である。
【0131】
好適には、本発明の単離抗体は、IgG抗体アイソタイプである。用語「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によって提供される抗体クラス(たとえば、IgM、IgE、IgG、例としてIgG1またはIgG4)を指す。アイソタイプはまた、これらのクラスの一つの改変版も含み、ここでFc機能を変更するため、たとえばエフェクター機能またはFc受容体への結合を増強または低減するための改変がなされてきた。一つの実施形態では、本発明の単離抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群から選択され、好ましくはIgG4であるIgGである。好適には、本発明の単離抗体は、それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、それぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、配列番号:13と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセント、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むVH配列、および配列番号:25と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセント、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含むIgG4である。より具体的な実施形態では、本発明の単離抗体は、それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、それぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、配列番号:14と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセント、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖配列、および配列番号:26と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセント、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖配列を含むIgG4である。好適には、本発明の単離抗体は、それぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、それぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、配列番号:15と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセント、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むVH配列、および配列番号:27と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセント、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含むIgG4である。
【0132】
別の特定の実施形態では、本発明の単離抗体は、多重特異性分子、具体的には、少なくとも一つの第二の機能性分子、たとえば、二重特異性分子、三重特異性分子、四重特異性、五重特異性、または六重特異性分子を有する多重特異性分子である。
【0133】
本明細書で使用する用語「多重特異性分子」または「多重特異性抗体」は、少なくとも2つ以上の異なる標的(たとえば、CD137およびCD137とは異なる別の標的)上の2つ以上の異なるエピトープに結合するか、または同じ標的の2つ以上の異なるエピトープに結合する抗体を指す。用語「多重特異性分子」は、二重特異性、三重特異性、四重特異性、五重特異性、および六重特異性抗体を含む。本明細書で使用する用語「二重特異性抗体」は、2つの異なる標的上、または同一の標的上の2つの異なるエピトープに結合する抗体を指す。本明細書で使用する用語「三重特異性抗体」は、3つの異なる標的上、または同一の標的上の3つの異なるエピトープに結合する抗体を指す。
【0134】
本発明の抗体、またはその抗原結合領域は、誘導体化されるか、または別の機能性分子、たとえば、別のペプチドまたはタンパク質(たとえば、受容体に対する別の抗体またはリガンド)に連結されて、少なくとも二つの結合部位および/または異なる標的分子に結合する多重特異性分子を生成することができる。本発明の抗体は、実際には、誘導体化されるか、または2つ以上の他の機能性分子に連結されて、2つ以上の異なる結合部位および/または標的分子に結合する多重特異性分子を生成することができる。本発明の多重特異性分子を作成するために、本発明の抗体は、一つまたは複数の他の結合分子、たとえば別の抗体、抗体断片、ペプチド、または結合模倣物に対して(たとえば、化学的結合、遺伝子融合、非共有結合等によって)機能的に連結されてもよく、その結果、多重特異性分子が生じる。
【0135】
したがって、本発明は、少なくとも一つのCD137に対する第一の結合特異性、および第二の標的エピトープに対する第二の結合特異性を含む多重特異性分子を含む。たとえば、第二の標的エピトープは、CD137と異なる別の標的分子上に存在する。
【0136】
二価のCD137抗体は、外因性のクラスター化がない場合にシグナル伝達を誘導する能力が一般的に弱いことが示された。例示するために、抗CD137抗体ウトミルマブは、抗ヒトF(ab’)2二次抗体に架橋されているか、または組織培養プラスチックに固定化されている場合にのみ、CD137シグナル伝達を活性化することができる(Fisher at al., Cancer Immunol Immunother 61:1721-1733(2012))。TNFRSFの別のメンバーであるCD40(TNFRSF5)に対するげっ歯類のアゴニスト抗体の研究は、外因性のクラスター化がFcγ受容体との相互作用によって部分的に達成できることを示唆している(Li F, Ravetch JV, Science 333(6045):1030-10 (2011); White AL, et al., J Immunol 187(4):1754-1763 (2011))。しかし、Fcγ受容体との相互作用は、エフェクター機構を介してCD137発現細胞を枯渇させる可能性がある。したがって、CD137を標的とする現在の二価抗体は、効果のないアゴニストであるか、CD137陽性細胞の枯渇につながる。好適には、多重特異性分子の第二の結合特異性は、本発明のCD137結合抗体の追加の架橋を提供することができる。したがって、本発明は、少なくとも一つのCD137に対する第一の結合特異性、および第二の標的エピトープに対する第二の結合特異性を含む多重特異性分子を含む。たとえば、第二の標的エピトープは、第一の標的エピトープと異なるCD137の別のエピトープである。多重特異性分子は、第一および第二の標的エピトープに加え、第三の結合特異性をさらに含んでもよい。
【0137】
さらなる実施形態では、本発明は、CD137特異性に対し、一価、二価、または多価、好ましくは一価である多重特異性分子を含む。
【0138】
本発明の別の特定の実施形態では、本発明の単離抗体は、CD137特異性に対して一価、または多価、たとえば二価、三価、四価、五価、または六価である分子である。
【0139】
本明細書で使用する用語「一価分子」または「一価抗体」は、標的分子、たとえばCD137の単一のエピトープに結合する抗体を指す。
【0140】
用語「多価分子」または「多価抗体」は、複数の原子価を有する単一の結合分子を指し、ここで「原子価」は、同一の標的分子上のエピトープに結合する抗原結合部分の数として説明される。したがって、単一の結合分子は、複数の標的分子、またはエピトープの複数のコピーを含む標的分子上の複数の結合部位に結合することができる。多価抗体の例は、二価抗体、三価抗体、四価抗体、五価抗体等を含むが、これらに限定されない。本明細書で使用される用語「二価抗体」は、それぞれが同一のエピトープに結合する2つの抗原結合部分を有する抗体を指す。
【0141】
好適には、本発明の単離抗体は、多重特異性分子、たとえば二重特異性分子、および/または多価分子、たとえばCD137特異性分子に対して一価、CD137特異性分子に対して二価であり、これは非限定的な例として、一本鎖ダイアボディ(scDb)、タンデムscDb(Tandab)、線状二量体scDb(LD-scDb)、環状二量体scDb(CD-scDb)、二重特異性T細胞誘導(BiTE; tandem di-scFv)、tandem tri-scFv、トリボディ(tribody;Fab-(scFv)2)またはバイボディ(bibody;Fab-(scFv)1)、Fab、Fab-Fv2、Morrison(IgG CH-scFv融合物(Morrison L)、またはIgG CL-scFv融合物(Morrison H))、トリアボディ、scDb-scFv、二重特異性Fab2、ジミニ抗体(di-miniantibody)、テトラボディ(tetrabody)、scFv-Fc-scFv融合物、scFv-HSA-scFv融合物、ジダイアボディ(di-diabody)、DVD-Ig、COVD、IgG-scFab、scFab-dsscFv、Fv2-Fc、IgG-scFv融合物、たとえばbsAb(軽鎖のC末端に結合したscFv)、Bs1Ab(軽鎖のN末端に結合したscFv)、Bs2Ab(重鎖のN末端に結合したscFv)、Bs3Ab(重鎖のC末端に結合したscFv)、Ts1Ab(重鎖および軽鎖の両方のN末端に結合したscFv)、Ts2Ab(重鎖のC末端に結合したdsscFv)、ヘテロ二量体Fcドメインに基づく二重特異性抗体、たとえばノブ・イントゥ・ホール(Knob-into-Hole)抗体(KiHs);ヘテロ二量体Fcドメインまたは他のヘテロ二量体化ドメインのいずれかの鎖のN末端および/またはC末端に融合したFv、scFv、scDb、タンデムジscFv(tandem-di-scFv)、タンデムトリscFv(tandem tri-scFv)、Fab-(scFv)2、Fab-(scFv)1、Fab、Fab-Fv2、COVD、MATCH(国際公開第2016/0202457号;Egan T., et al., mAbs 9 (2017) 68-84に記載されている)、およびDuoBodies(Duobody技術によって調製された二重特異性IgG)(MAbs. 2017 Feb/Mar;9(2):182-212. doi: 10.1080/19420862.2016.1268307)に基づくフォーマットを含む、当技術分野で知られている任意の好適な多重特異性、たとえば二重特異性フォーマットから選択される。
【0142】
用語「ダイアボディ(diabody)」は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖(VH-VL)内のVL結合したVHを含む。同じ鎖上の2つのドメイン間のペアリングを可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは別の鎖の相補的ドメインとペアリングを強制され、2つの抗原結合部位を作成する。特定の実施形態では、上記ポリペプチドリンカーは、上記リンカーは、4つのグリシンアミノ酸残基および1つのセリンアミノ酸残基のユニット(GGGGS)を含み、ここで、n=1、または2、好ましくは1である。ダイアボディは二価または二重特異性であってもよい。ダイアボディは、たとえば、欧州特許第404097号、国際公開第93/01161号、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003)、およびHolliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448(1993)でより完全に説明されている。
【0143】
二重特異性scDb、特に二重特異性モノマーscDbは、リンカーL1、L2、およびL3によってVHA-L1-VLB-L2-VHB-L3-VLA、VHA-L1-VHB-L2-VLB-L3-VLA、VLA-L1-VLB-L2-VHB-L3-VHA、VLA-L1-VHB-L2-VLB-L3-VHA、VHB-L1-VLA-L2-VHA-L3-VLB、VHB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VLB、VLB-L1-VLA-L2-VHA-L3-VHB、またはVLB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VHBの順序で結合された2つの可変重鎖ドメイン(VH)またはその断片および2つの可変軽鎖ドメイン(VL)またはその断片を特に含み、ここでVLAドメインとVHAドメインは共同で第一の抗原の抗原結合部位を形成し、VLBとVHBは共同で第二の抗原の抗原結合部位を形成する。
【0144】
リンカーL1は、具体的には2~10アミノ酸、より具体的には3~7アミノ酸、最も具体的には5アミノ酸のペプチドであり、リンカーL3は、具体的には1~10アミノ酸、より具体的には2~7アミノ酸、最も具体的には5アミノ酸のペプチドである。特定の実施形態では、リンカーL1および/またはL3は、4つのグリシンアミノ酸残基および1つのセリンアミノ酸残基のユニット(GGGGS)を含み、ここで、n=1、または2、好ましくは1である。
【0145】
中間リンカーL2は、具体的には10~40アミノ酸、より具体的には15~30アミノ酸、そして最も具体的には20~25アミノ酸のペプチドである。特定の実施形態では、上記リンカーL2は、一つまたは複数の4つのグリシンアミノ酸残基および1つのセリンアミノ酸残基のユニット(GGGGS)を含み、ここで、n=1、2、3、4、5、6、7、または8、好ましくはn=4である。
【0146】
本発明の一つの実施形態では、単離抗体は、scDb-scFvフォーマットの多重特異性および/または多価の抗体である。用語「scDb-scFv」は抗体フォーマットを指し、ここで一本鎖Fv(scFv)断片はフレキシブルなGly-Serリンカーによって一本鎖ダイアボディ(scDb)に融合されている。一つの実施形態では、上記フレキシブルなGly-Serリンカーは、2~40アミノ酸、たとえば2~35、2~30、2~25、2~20、2~15、2~10アミノ酸、具体的には10アミノ酸のペプチドである。特定の実施形態では、上記リンカーは、一つまたは複数の4つのグリシンアミノ酸残基および1つのセリンアミノ酸残基のユニット(GGGGS)を含み、ここで、n=1、2、3、4、5、6、7、または8、好ましくはn=2である。
【0147】
本発明の一つの実施形態では、国際公開第2016/0202457号; Egan T., et al., mAbs 9 (2017) 68-84に記載されているMATCHフォーマットの単離抗体は多重特異性および/または多価である。
【0148】
本発明の多重特異性および/または多価分子は、当技術分野で知られている任意の簡便な抗体製造法を使用して産生することができる(たとえば、二重特異性構築物の生成に関してFischer, N. & Leger, O., Pathobiology 74 (2007) 3-14;二重特異性ダイアボディおよびタンデムscFvに関してHornig, N. & Farber-Schwarz, A., Methods Mol. Biol. 907 (2012)713-727、 および国際公開第99/57150号を参照のこと)。本発明の二重特異性構築物の調製の好適な方法の具体例は、とりわけ、Genmab(Labrijn et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 110 (2013) 5145-5150を参照のこと)およびMerus(de Kruif et al., Biotechnol. Bioeng. 106 (2010) 741-750を参照のこと)技術をさらに含む。機能性抗体Fc部分を含む二重特異性抗体の産生方法も当技術分野で知られている(たとえば、Zhu et al., Cancer Lett. 86 (1994) 127-134);およびSuresh et al., Methods Enzymol. 121 (1986) 210-228を参照のこと)。
【0149】
本発明の多重特異性および多価分子で使用することができる他の抗体は、マウス、キメラ、およびヒト化モノクローナル抗体である。
【0150】
本発明の多重特異性分子は、当技術分野で知られている方法を使用して、構成要素の結合特異性を結合することによって調製することができる。たとえば、二重特異性分子の各結合特異性は、別々に生成され、次に互いに結合されてもよい。結合特異性がタンパク質またはペプチドである場合、共有結合にはさまざまなカップリング剤または架橋剤を使用することができる。架橋剤の例は、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-5-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、およびスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(sulfo-SMCC)(たとえば、Karpovsky et al., 1984 J. Exp. Med. 160: 1686; Liu, M A et al., 1985 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648を参照のこと)を含む。他の方法は、Paulus, 1985 Behring Ins. Mitt. No. 78, 118-132; Brennan et al., 1985 Science 229:81-83)、およびGlennie et al., 1987 J. Immunol. 139: 2367-2375に記載されている方法を含む。結合剤(Conjugating agent)は、SATAおよびsulfo-SMCCであり、両方ともPierce Chemical Co. (Rockford, 111)から入手できる。
【0151】
結合特異性が抗体である場合、それらは、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合によって結合することができる。特定の実施形態では、ヒンジ領域は、結合の前に、奇数のスルフヒドリル残基、たとえば1つを含むように改変される。
【0152】
あるいは、2つ以上の結合特異性を同じベクターにコードし、同じ宿主細胞で発現および構築することができる。この方法は、二重特異性分子がmAb X mAb、mAb X Fab、Fab X F (ab’)2、またはリガンド X Fab融合タンパク質である場合に特に有用である。本発明の多重特異性分子は、1つの一本鎖抗体および結合決定基を含む一本鎖分子、または2つの結合決定基を含む一本鎖多重特異性分子であってもよい。多重特異性分子は、少なくとも2つの一本鎖分子を含んでもよい。多重特異性分子を調製するための方法は、たとえば、米国特許第5,260,203号;米国特許第5,455,030号;米国特許第4,881,175号;米国特許第5,132,405号;米国特許第5,091,513号;米国特許第5,476,786号;米国特許第5,013,653号;米国特許第5,258,498号;および米国特許第5,482,858号に記載されている。
【0153】
二重特異性分子のそれらの特異的標的への結合は、たとえば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS分析、バイオアッセイ(たとえば、増殖阻害)、またはウエスタンブロットアッセイによって確認することができる。これらのアッセイのそれぞれは、一般に、目的の複合体に特異的な標識試薬(たとえば、抗体)を使用することによって、特に目的のタンパク質―抗体複合体の存在を検出する。
【0154】
さらなる態様では、本発明は、本発明の抗体をコードする核酸を提供する。本発明はまた、CD137タンパク質に特異的に結合する抗体のCDR、VH、VL、全長重鎖、および全長軽鎖をコードする核酸配列を提供する。そのような核酸配列は、哺乳動物細胞における発現のために最適化することができる。
【0155】
用語「核酸」は、本明細書で用語「ポリヌクレオチド」と互換的に使用され、一本鎖型または二本鎖型のいずれかの、一つまたは複数のデオキシリボ核酸またはリボ核酸およびそのポリマーを指す。上記用語は、既知のヌクレオチドアナログまたは修飾された骨格残基または結合を含む核酸を包含し、これらは、合成、天然、および非天然に存在し、参照核酸と同様の結合特性を有し、および参照ヌクレオチドと同様の方法で代謝される。そのようなアナログの例は、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)を含むが、これらに限定されない。特に明記しない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に修飾されたバリアント(たとえば、縮重コドン置換)および相補的配列、ならびに明示的に示された配列も暗黙的に包含する。具体的には、以下に詳述するように、縮重コドン置換は、一つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの第三の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって達成することができる(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081, 1991; Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608, 1985;およびRossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98, 1994)。
【0156】
本発明は、上記のCD137結合抗体鎖のセグメントまたはドメインを含むポリペプチドをコードする実質的に精製された核酸分子を提供する。適切な発現ベクターから発現される場合、これらの核酸分子によってコードされるポリペプチドは、CD137抗原結合能力を示すことができる。
【0157】
表1に記載のCD137結合抗体の重鎖または軽鎖由来の少なくとも1つのCDR領域および通常は3つすべてのCDR領域をコードするポリヌクレオチドも本発明で提供される。他のいくつかのポリヌクレオチドは、表1に記載されているCD137結合抗体の重鎖および/または軽鎖の可変領域配列のすべてまたは実質的にすべてをコードする。コードの縮重のため、さまざまな核酸配列が各免疫グロブリンアミノ酸配列をコードする。
【0158】
ポリヌクレオチド配列は、デノボ固相DNA合成によって、またはCD137結合抗体をコードする既存配列(たとえば、以下の実施例に記載されるような配列)のPCR突然変異誘発によって生成することができる。核酸の直接化学合成は、当技術分野で知られている方法、たとえばNarang et al., 1979, Meth. Enzymol. 68:90のホスホトリエステル法;Brown et al., Meth. Enzymol. 68: 109, 1979のホスホジエステル法;Beaucage et al., Tetra. Lett., 22: 1859, 1981のジエチルホスホロアミダイト法;および米国特許第4,458,066号の固体支持体法[solid support method]によって達成することができる。PCRによるポリヌクレオチド配列への突然変異の導入は、たとえば、PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification, H. A. Erlich (Ed.), Freeman Press, NY, N.Y., 1992; PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al. (Ed.), Academic Press, San Diego, Calif, 1990; Mattila et al., Nucleic Acids Res. 19:967, 1991; およびEckert et al., PCR Methods and Applications 1:17, 1991に記載されているように行うことができる。
【0159】
上記のCD137結合抗体を産生するための発現ベクターおよび宿主細胞も本発明で提供される。
【0160】
用語「ベクター」は、それが連結されている別のポリヌクレオチドを輸送することができるポリヌクレオチド分子を指すことを意図している。ベクターの一つのタイプは「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントをライゲーションすることができる環状二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ここで追加のDNAセグメントをウイルスゲノムにライゲーションすることができる。特定のベクターは、それらが導入された宿主細胞で自律複製することができる(たとえば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(たとえば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれることができ、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。
【0161】
さらに、特定のベクターは、それらが作動可能に連結されている(operatively linked)遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターは、多くの場合、プラスミドの形をしている。本明細書では、プラスミドが最も一般的に使用されるベクターの形態であるため、「プラスミド」および「ベクター」を互換的に使用することができる。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たすウイルスベクター(たとえば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)等のそのような他の形態の発現ベクターを含むことを意図している。
【0162】
用語「作動可能に連結されている(operatively linked)」は、2つ以上のポリヌクレオチド(たとえばDNA)セグメント間の機能的関係を指す。典型的には、それは転写調節配列と転写された配列との機能的関係を指す。たとえば、プロモーターまたはエンハンサー配列は、それが適切な宿主細胞または他の発現系におけるコード配列の転写を刺激または調節する場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、転写された配列に作動可能に連結されているプロモーター転写調節配列は、転写された配列に物理的に隣接している、すなわち、それらはシス作動性である。しかし、エンハンサー等の一部の転写調節配列は、転写を増強するコード配列に物理的に隣接している必要はなく、近接して配置されている必要もない。
【0163】
CD137結合抗体鎖または結合断片をコードするポリヌクレオチドを発現させるために、様々な発現ベクターを使用することができる。ウイルスベースの発現ベクターと非ウイルス発現ベクターの両方を使用して、哺乳動物宿主細胞で抗体を産生することができる。非ウイルスベクターおよび系は、通常はタンパク質またはRNAを発現するための発現カセットを備えたプラスミド、エピソームベクター、およびヒト人工染色体を含む(たとえば、Harrington et al., NAT Genet. 15:345, 1997を参照のこと)。たとえば、哺乳動物(たとえばヒト)細胞中におけるCD137結合ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現に有用な非ウイルスベクターは、pThioHis A、B、およびC、pcDNA3.1/His、pEBVHis A、B、およびC(Invitrogen、カリフォルニア州サンディエゴ)、MPS Vベクター、および他のタンパク質を発現するための当技術分野で知られている多くの他のベクターを含む。有用なウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、SV40ベースのベクター、乳頭腫ウイルス、HBPエプスタインバーウイルス、ワクシニアウイルスベクター、およびセムリキフォレストウイルス(SFV)ベースのベクターを含む。上記のBrent et al.,; Smith, Annu. Rev. Microbiol. 49:807,1995;およびRosenfeld et al., Cell 68: 143, 1992を参照されたい。
【0164】
発現ベクターの選択は、ベクターが発現される対象の宿主細胞に依存する。典型的には、発現ベクターは、CD137結合抗体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーターおよび他の調節配列(たとえば、エンハンサー)を含む。一つの実施形態では、誘導性プロモーターは、誘導性条件下を除いて、挿入配列の発現を防止するために使用される。誘導性プロモーターは、たとえば、アラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモーター、または熱ショックプロモーターを含む。形質転換された生物の培養物は、その発現産物が宿主細胞によってよりよく許容されるコード配列について集団にバイアスをかけることなく、非誘導条件下で拡大することができる。プロモーターに加えて、CD137結合抗体の効率的な発現のために他の調節エレメントも必要または望ましい場合がある。これらのエレメントは、通常、ATG開始コドンおよび隣接するリボソーム結合部位または他の配列を含む。さらに、発現の効率は、使用中の細胞系に適切なエンハンサーを含めることによって増強することができる(たとえば、Scharf et al., Results Probl. Cell Differ. 20:125,1994;およびBittner et al., Meth. Enzymol., 153:516, 1987を参照のこと)。たとえば、SV40エンハンサーまたはCMVエンハンサーを使用して、哺乳動物宿主細胞における発現を増加させることができる。
【0165】
発現ベクターはまた、挿入されたCD137結合抗体配列によってコードされるポリペプチドとの融合タンパク質を形成するための分泌シグナル配列位置を提供してもよい。多くの場合、挿入されたCD137結合抗体配列は、ベクターに含まれる前にシグナル配列に連結される。CD137結合抗体の軽鎖および重鎖可変ドメインをコードする配列を受け取るために使用されるベクターは、定常領域またはその一部もコードする場合がある。そのようなベクターは、定常領域との融合タンパク質としての可変領域の発現を可能にし、それにより、インタクトな抗体およびその抗原結合断片の産生をもたらす。通常、このような定常領域はヒトである。
【0166】
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導入された細胞を指す。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫を指すことを意図していることを理解されたい。突然変異または環境の影響のいずれかにより、ある程度の改変が次の世代で発生する可能性があるため、そのような子孫は実際には親細胞と同一ではない可能性があるが、本明細書で使用される用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。
【0167】
CD137結合抗体鎖を保持および発現するための宿主細胞は、原核生物または真核生物のいずれかであってもよい。大腸菌(E.coli)は、本発明のポリヌクレオチドをクローニングおよび発現するのに有用な1つの原核生物宿主である。使用に好適な他の微生物宿主は、桿菌(bacilli)、たとえばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)および他の腸内細菌科、たとえばサルモネラ、セラチア、および様々なシュードモナス種を含む。これらの原核生物宿主では、通常、宿主細胞と互換性のある発現制御配列(たとえば、複製起点)を含む発現ベクターを作製することもできる。さらに、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ベータラクタマーゼプロモーター系、またはラムダファージ由来のプロモーター系等、様々な周知のプロモーターがいくつも存在する。プロモーターは、典型的には、任意選択でオペレーター配列を用いて発現を制御し、転写および翻訳を開始および完了するためのリボソーム結合部位配列等を有する。他の微生物、たとえば酵母もまた、本発明のCD137結合ポリペプチドを発現するために使用することができる。バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞も使用することができる。
【0168】
一つの実施形態では、哺乳動物宿主細胞を使用して、本発明のCD137結合ポリペプチドを発現および産生する。たとえば、それらは、内因性免疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞株、または外因性発現ベクターを保持する哺乳動物細胞株のいずれかであってもよい。これらは、正常な死ぬ運命の(mortal)または正常または異常な不死の動物またはヒト細胞を含む。たとえば、インタクトな免疫グロブリンを分泌することができる多くの好適な宿主細胞株が開発されており、これには、CHO細胞株、様々なCos細胞株、HeLa細胞、骨髄腫細胞株、形質転換B細胞およびハイブリドーマが含まれる。ポリペプチドを発現するための哺乳動物組織細胞培養の使用は、一般にたとえばWinnacker, FROM GENES TO CLONES, VCH Publishers, N.Y., N.Y., 1987で議論されている。哺乳動物宿主細胞の発現ベクターは、複製起点、プロモーター、およびエンハンサー等の発現制御配列(たとえば、Queen, et al., Immunol. Rev. 89:49-68, 1986を参照のこと)、ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列等の必要なプロセシング情報部位を含んでもよい。これらの発現ベクターは通常、哺乳動物の遺伝子または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーターを含む。好適なプロモーターは、構成的、細胞型特異的、時期特異的(stage-specific)、および/または調節可能(modulatable)または調節可能(regulatable)であってもよい。有用なプロモーターは、メタロチオネインプロモーター、構成的アデノウイルス主要後期プロモーター(major late promoter)、デキサメタゾン誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRP polIIIプロモーター、構成的MPS Vプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(たとえば、ヒト前初期CMVプロモーター)、構成的CMVプロモーター、および当技術分野で知られているプロモーター-エンハンサーの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0169】
目的のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入する方法は、細胞宿主のタイプに応じて異なる。たとえば、塩化カルシウムトランスフェクションは原核細胞に一般に利用されるが、リン酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションは他の細胞宿主に使用することができる(一般にSambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 4th edition, Cold Spring Harbor 2012を参照のこと)。他の方法は、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム処理、リポソームを介した形質転換、注入およびマイクロインジェクション、バリスティック法(ballistic method)、ビロソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン-核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22への融合(Elliot and O’Hare, Cell 88:223, 1997)、DNAの薬剤増強取り込み(agent-enhanced uptake of DNA)、およびex vivo形質導入を含む。組換えタンパク質の長期にわたる高収量の生産には、安定した発現がしばしば望まれる。たとえば、CD137結合抗体鎖または結合断片を安定して発現する細胞株は、ウイルス複製起点または内因性発現エレメントおよび選択可能なマーカー遺伝子を含む本発明の発現ベクターを使用して調製することができる。ベクターの導入後、細胞を選択培地に切り替える前に、強化培地(enriched media)で1~2日間増殖させることができる。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することであり、その存在により、選択培地で導入された配列を首尾よく発現する細胞の増殖が可能になる。耐性があり、安定的にトランスフェクトされた細胞は、細胞型に適した組織培養技術を使用して増殖させることができる。したがって、本発明は、本発明の抗体を産生する方法を提供し、ここで、上記方法は、本発明の抗体をコードする核酸またはベクターを含む宿主細胞を培養し、それによって上記本発明の抗体またはその断片を発現させる工程を含む。
【0170】
さらなる態様では、本発明は、本発明の抗体、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。薬学的に許容される担体は、組成物を増強または安定化するか、または組成物の調製を容易にする。薬学的に許容される担体は、生理学的に適合性のある溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含む。
【0171】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で知られている様々な方法によって投与することができる。投与経路および/または投与様式は、所望の結果に応じて異なる。投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下で行うか、または標的部位の近位に投与することができる。薬学的に許容される担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(たとえば、注射または注入による)に好適であるべきである。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち抗体、および多重特異性分子を材料でコーティングして、化合物を不活性化する可能性のある酸および他の自然条件の作用から化合物を保護することができる。
【0172】
本発明の医薬粗組成物は、当技術分野で周知であり、日常的に実施されている方法に従って調製することができる。たとえば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Co., 20th ed., 2000;およびSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。医薬組成物は、好ましくは、GMP条件下で製造される。典型的には、治療上有効量または有効用量のCD137結合抗体が、本発明の医薬組成物において使用される。CD137結合抗体は、当業者に知られている従来の方法によって、薬学的に許容される剤形に製剤化される。投与レジメンは、最適な所望の応答(たとえば、治療応答)を提供するように調整される。たとえば、単一のボーラスを投与することができ、いくつかの分割された用量を経時的に投与することができ、または治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例して減少または増加させることができる。投与の容易さおよび用量の均一性のために、単位剤形で非経口組成物を製剤化することは特に有利である。本明細書で使用される単位剤形は、治療される対象の単一用量として適した物理的に別個の単位を指す;各単位は、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性化合物を含む。
【0173】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者に対して有毒になることなく、特定の患者、組成物、および投与様式に対して所望の治療応答を達成するのに有効な有効成分の量を得るように変更することができる。選択される投与量レベルは、使用される本発明の特定の組成物、またはそのエステル、塩、またはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排泄速度、治療の期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、年齢、性別、体重、状態、一般的な健康および治療される患者の以前の病歴等の要因に依存する。
【0174】
抗体は通常、複数回投与される。単回投与の間隔は、毎週、毎月、または毎年であってもよい。患者のCD137結合抗体の血中濃度を測定することで示されるように、間隔も不規則になる可能性であってもよい。あるいは、抗体は徐放性製剤として投与することができ、その場合、より少ない頻度の投与が必要とされる。用量および頻度は、患者の抗体の半減期によって異なる。一般に、ヒト化抗体は、キメラ抗体および非ヒト抗体よりも長い半減期を示す。投与量および投与頻度は、治療が予防的であるか治療的であるかによって異なってもよい。予防的用途では、比較的低用量が長期間にわたって比較的まれな間隔で投与される。一部の患者は、一生治療を受け続ける。治療的用途では、疾患の進行が減少または終了するまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な寛解を示すまで、比較的短い間隔での比較的高投与量が必要とされる場合がある。その後、患者は予防レジメン(prophylactic regime)を施すことができる。
【0175】
一つの態様では、本発明は、本明細書で定義される本発明の抗CD137抗体、および一つまたは複数の追加の治療薬、たとえば一つまたは複数の抗がん剤、細胞毒性剤または細胞増殖抑制剤、ホルモン治療、ワクチン、および/または他の免疫療法を含む医薬の組み合わせを提供する。好適には、本発明の抗CD137抗体は、PD-1、PDL1、PDL2、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、CEACAM(たとえば、CEACAM-1、CEACAM-3、および/またはCEACAM-5)、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、TGFR beta、およびIDO(インドールアミン-2,3ジオキシゲナーゼ)から選択される抑制性(または免疫チェックポイント)分子の阻害剤と組み合わせて使用してもよい。抑制性分子の阻害は、DNA、RNA、またはタンパク質レベルで行われてもよい。
【0176】
驚くべきことに、本発明の抗CD137抗体は、PDL1阻害剤と組み合わせて使用する場合、強力で有益な相乗的相互作用、および改善された抗増殖活性を有することが見出された。したがって、本発明は、本明細書で定義される本発明の抗CD137抗体と、特に増殖性疾患の治療または予防に使用するためのPDL1阻害剤とを含む医薬の組み合わせを提供する。本発明はさらに、本明細書で定義される本発明の抗CD137抗体と、特に増殖性疾患の治療または予防における同時、別個、または連続使用のためのPDL1阻害剤とを含む医薬の組み合わせに関する。
【0177】
用語「組み合わせ」または「医薬品の組み合わせ」は、本明細書では、一つの剤形の固定された組み合わせ、非固定の組み合わせ、または併用投与用パーツキットを指すよう定義されており、治療薬、たとえば本発明の抗CD137抗体およびPCL1阻害剤は、組み合わせパートナーが協調的、例えば相乗効果を示すことを可能にする時間間隔内で、一緒に、独立して同時に、または別個に投与することができる。
【0178】
用語「固定された組み合わせ(fixed combination)」は、治療薬、たとえば、本発明の抗CD137抗体およびPDL1阻害剤を、単一の成分(entity)または剤形で同時に患者に投与することを意味する。
【0179】
用語「非固定の組み合わせ(non-fixed combination)」治療薬、たとえば、本発明の抗CD137抗体およびPDL1阻害剤の両方を、特定の時間制限なしに、別個の成分(entity)または剤形で同時に(simultaneously)、同時に(concurrently)、または連続して患者に投与することを意味し、ここでそのような投与は、対象、たとえばそれを必要とする哺乳動物またはヒトの体内に2つの治療薬の治療上有効なレベルを提供する。
【0180】
用語「PDL1」は、特にUniProt ID番号Q9NZQ7のヒトPDL1を指す。
【0181】
用語「遮断薬」または「阻害剤」または「アンタゴニスト」は、それが結合する標的分子の生物活性を阻害または低減する薬剤を指す。一部の実施形態では、阻害剤は、標的分子の生物活性を実質的または完全に阻害する。好適なPDL1阻害剤は、PDL1の結合パートナーに対する結合能力を標的とし、減少させ、および/または阻害し、それによってPDL1の機能に干渉する。特に、好適なPDL1阻害剤は、PDL1とPD-1の相互作用を遮断する。一部の実施形態では、好適なPDL1阻害剤は、PDL1とPD-1およびB7-1との相互作用を遮断する。好適には、本発明の医薬の組み合わせで利用されるPDL1阻害剤は、抗PDL1抗体である。
【0182】
本明細書で使用する用語「相乗効果」は、たとえば、(a)本発明の抗CD137抗体、および(b)PDL1阻害剤等の2つの治療薬の作用を指し、たとえば、増殖性疾患、特にがん、またはその症状の症候性進行を遅らせる効果を生み出し、これはそれら自体によって投与される各治療薬の効果の単純な加算よりも大きい。相乗効果は、好適な方法、たとえばSigmoid-Emax式(Holford, N.H.G. and Scheiner, L.B., Clin. Pharmacokinet. 6: 429-453 (1981))、Loewe additivity式(Loewe, S. and Muischnek, H., Arch. Exp. Pathol Pharmacol. 114:313-326(1926))、およびmedian-effect式(Chou, T.C. and Talalay, P., Adv. Enzyme Regul. 22:27-55(1984))を使用して計算することができる。上記の各方程式を実験データに適用して、対応するグラフを生成し、薬剤の組み合わせの効果を評価するのに役立てることができる。上記の式に関連する対応するグラフは、それぞれ濃度効果曲線、アイソボログラム曲線、および組み合わせ指数曲線(combination index curve)である。相乗効果は、当業者によって知られている方法に従って組み合わせの相乗効果スコアを計算することによってさらに示すことができる。
【0183】
本明細書で使用する用語「併用投与」は、単一の患者への選択された治療薬の投与を包含するように定義され、治療薬が必ずしも同じ投与経路によってまたは同時に投与されるとは限らない治療レジメンを含むことを意図する。
【0184】
用語「組み合わせ製剤」は、上記で定義された治療薬(a)および(b)を独立して、または区別された量の治療薬(a)および(b)の異なる固定された組み合わせの同時または異なる時点での使用によって投与できるという意味で、特に、「部品のキット(kit of parts)」を指すよう定義される。次に、部品のキットの部品は、部品キットの任意の部分について、たとえば、同時にまたは時系列的にずらして、すなわち、異なる時点で、等しいまたは異なる時間間隔で投与することができる。組み合わせ製剤中に投与される治療薬(a)対治療薬(b)の総量の比率は、たとえば、治療される患者亜母集団のニーズ、または 一人の患者のニーズに対応するために変更できる。
【0185】
本明細書で使用する用語「連合治療活性のある(jointly therapeutically active)」または「連合治療効果(joint therapeutic effect)」は、治療薬が、治療する温血動物、特にヒトにおいて、依然として有益な相互作用(好ましくは相乗効果)(連合治療効果)を示すことを好むような時間間隔で別々に(時系列的にずらされた方法で、特に配列特異的な方法で)与えらることができることを意味する。これが事実であるかどうかは、とりわけ、血中レベルを追跡することによって決定することができ、両方の治療薬が少なくとも特定の時間間隔の間に治療されるヒトの血中に存在することを示す。
【0186】
本発明の医薬的組み合わせは、特に増殖性疾患の治療または予防に使用するための、本明細書で定義される本発明の抗CD137抗体を含む。好ましい実施形態では、本発明の医薬の組み合わせは、本発明の抗体を含み、ここで上記抗体はそれぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、配列番号:13と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含むVH配列、および配列番号:25と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含むIgG4である。別の実施形態では、本発明の医薬的組み合わせは、本発明の抗体を含み、ここで上記抗体はそれぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、配列番号:14と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含むVH配列、および配列番号:26と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含むIgG4である。別の実施形態では、本発明の医薬的組み合わせは、本発明の抗体を含み、ここで上記抗体はそれぞれ配列番号:1、2、および3のHCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号:16、17、および18のLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、配列番号:15と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含むVH配列、および配列番号:27と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセント、好ましくは少なくとも90パーセント同一であるアミノ酸配列を含むVL配列を含むIgG4である。
【0187】
一つの態様では、本発明は、医薬としての使用のための、本発明の抗体、または本発明の組成物、または本発明の組み合わせに関する。
【0188】
別の態様では、本発明は、増殖性疾患、特にがんの治療における使用のための医薬の製造における使用のための、本発明の抗体、または本発明の組成物、または本発明の組み合わせに関する。
【0189】
一つの態様では、本発明は、増殖性疾患、特にがんの治療における使用のための、本発明の抗体、または本発明の組成物、または本発明の組み合わせに関する。
【0190】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における増殖性疾患、特にがんの治療のための、本発明の抗体、または本発明の組成物、または本発明の組み合わせの使用に関する。
【0191】
一つの態様では、本発明は、対象に治療上有効量の本発明の抗体、または本発明の組成物、または本発明の組み合わせを投与することを含む、それを必要とする対象における増殖性疾患、特にがんを治療する方法を提供する。
【0192】
用語「対象」はヒトおよび非ヒト動物を含む。非ヒト動物は、すべての脊椎動物、たとえば哺乳動物および非哺乳動物、たとえば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、および爬虫類を含む。特に断りのない限り、用語「患者」または「対象」は、本明細書では互換的に使用される。
【0193】
本明細書で使用する用語「治療」、「治療する(treating)」、「治療する(treat)」、「治療された(treated)」等は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患および/または疾患に起因する副作用の部分的または完全な治癒、または疾患の進行を遅らせるという点で治療的でありうる。本明細書で使用さする「治療」は、哺乳動物、たとえば、ヒトにおける疾患の任意の治療を包含し、以下を含む:(a)疾患を阻害する、すなわち、その発症を阻止する;(b)病気を和らげる、すなわち病気の退行を引き起こす。
【0194】
用語「治療上有効量」または「有効量(efficacious amount)」は、疾患の治療のために哺乳動物または他の対象に投与された場合に、疾患のそのような治療を行うのに十分である薬剤の量を指す。「治療上有効量」は、薬剤、疾患とその重症度、および治療対象の年齢、体重等によって異なる。
【0195】
一つの実施形態では、増殖性疾患はがんである。用語「がん」は、異常な細胞の急速で制御されていない成長を特徴とする疾患を指す。がん細胞は、局所的に、または血流およびリンパ系を介して身体の他の部分に広がる可能性がある。用語「腫瘍」および「がん」は、本明細書では互換的に使用され、たとえば、両方の用語は、固体および液体、たとえば、びまん性腫瘍または循環腫瘍を包含する。本明細書で使用する場合、用語「がん」または「腫瘍」は、前悪性、ならびに悪性のがんおよび腫瘍を含む。用語「がん」は、本明細書では、すべての固形および血液学的悪性腫瘍を含む広範囲の腫瘍を意味するために使用される。そのような腫瘍の例は、以下を含むが、これらに限定されない:良性または特に悪性の腫瘍、固形腫瘍、脳がん、腎臓がん、肝臓がん、副腎がん、膀胱がん、乳がん、胃がん(たとえば、胃腫瘍)、食道がん、卵巣がん、頸部がん、結腸がん、直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、肺がん(たとえば、非小細胞肺がんおよび小細胞肺がん)、膣がん、甲状腺がん、メラノーマ(たとえば、切除不能または転移性メラノーマ)、腎細胞がん、肉腫、神経膠芽腫、多発性骨髄腫または胃腸がん、特に結腸がんまたは結腸直腸腺腫、頭頚部腫瘍、子宮内膜がん、カウデン症候群、レルミット-デュクロ病、Bannayan-Zonana症候群、前立腺肥大、特に上皮性の新生物、好ましくは乳がんまたは扁平上皮がん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病(たとえば、フィラデルフィア染色体陽性の慢性骨髄性白血病)、急性リンパ芽球性白血病(たとえば、フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病)、非ホジキンリンパ腫、形質細胞性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、白血病、およびそれらの任意の組み合わせ。好ましい実施形態では、がんは肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)である。別の実施形態では、上記がんは結腸直腸がんである。
【0196】
本発明の抗体、または本発明の多重特異性分子、または本発明の組成物、または本発明の組み合わせは、固形腫瘍だけでなく、液体腫瘍の増殖も阻害する。さらなる実施形態では、増殖性腫瘍は固形腫瘍である。用語「固形腫瘍」は特に乳がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、前立腺がん、胃がん[stomach cancer](特に胃がん[gastric cancer])、子宮頸がん、肺がん(たとえば、非小細胞肺がんおよび小細胞肺がん)、および頭頚部腫瘍を意味する。さらに、腫瘍の種類および使用される特定の組み合わせに応じて、腫瘍体積の減少を得ることができる。本発明の抗体、または本発明の多重特異性分子、または本発明の組成物、または本発明の組み合わせはまた、がんに罹患している対象における腫瘍の転移拡散および微小転移巣の成長または発症を防止するのに好適である。
【0197】
用語「予防する」または「予防」は、疾患または疾患の任意の二次的影響の発症の完全な阻害を指す。本明細書で使用する用語「予防する」または「予防」は、疾患の素因がある可能性があるが、まだそれを有すると診断されていない個人において疾患または状態が発生するのを予防することを包含する。
【0198】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載される本発明の抗体を含むキットに関する。また、本開示の中には、本発明の多重特異性分子を含むキットがある。また、本開示の中には、本発明の医薬組成物を含むキットがある。キットは、次のような一つまたは複数の他の要素を含んでもよい:使用説明書;他の試薬、たとえば標識、治療薬、または標識または治療薬または放射線防護組成物に対し抗体をキレートかまたは他の方法で結合させるのに有用な薬剤;投与のための抗体分子を調製するためのデバイスまたは他の材料;薬学的に許容される担体;および対象に投与するためのデバイスまたは他の材料。特定の実施形態では、キットは、薬学的に有効な量で本発明の抗体を含む。さらなる実施形態では、キットは、凍結乾燥形態の本発明の抗体の薬学的に有効な量、および希釈剤、ならびに任意選択で、使用説明書を含む。上記キットは、再構成用のフィルター針および注射用の針をさらに含んでもよい。
【0199】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0200】
【表2】
【0201】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0202】
この出願の本文全体を通して、明細書の本文(たとえば、表1から3)と配列表の間に矛盾がある場合は、明細書の本文が優先するものとする。
【0203】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明される本発明の特定の特徴もまた、単一の実施形態で組み合わせて提供できることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される本発明の様々な特徴はまた、別個にまたは任意の好適な部分的組み合わせで提供することができる。本発明に関連する実施形態のすべての組み合わせは、本発明によって具体的に包含され、あたかもすべての組み合わせが個別に明示的に開示されたかのように、本明細書に開示される。さらに、様々な実施形態およびその要素のすべての部分的組み合わせもまた、本発明によって具体的に包含され、あたかもそのような部分的組み合わせのそれぞれが個別にかつ明示的に本明細書に開示されたかのように、本明細書に開示される。
【0204】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際、本明細書に記載されたものに追加して、本発明の様々な改変が、前述の記載から当業者に明らかになるであろう。このような改変は、添付の特許請求の範囲内に含まれることを意図している。
【0205】
それぞれの特許法の下で可能な範囲で、本明細書に引用されているすべての特許、出願、刊行物、試験方法、文献、および他の資料は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0206】
以下の実施例は、上記の発明を説明するが、しかしながら、いかなる方法でも本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者にそのようなものとして知られている他の試験モデルもまた、特許請求される発明の有益な効果を決定することができる。
【実施例
【0207】
ヒトCD137に対する新規抗体
実施例1:ヒトCD137に対するウサギ抗体の産生
ウサギを、組換えにより産生および精製されたヒトCD137細胞外ドメイン(Peprotech, カタログ番号310-15-1MG)で免疫化した。免疫化の間、抗原に対する体液性免疫応答の強さを、抗原へのポリクローナル血清抗体の検出可能な結合を依然として生成した各ウサギの血清の最大希釈(力価)を決定することによって定性的に評価した。固定化された抗原(組換えヒトCD137 ECD)に対する血清抗体価を、酵素免疫測定法(ELISA)を使用して評価した。
【0208】
実施例2: ヒットの同定および選択
ヒット同定法の中で、フローサイトメトリーベースのソーティング法が開発された。これは、高親和性のヒトCD137 ECD結合B細胞を特異的に検出して分離することを可能にする。CD137結合B細胞を同定するために、CD137 ECDを蛍光色素R-フィコエリトリン(RPE)で標識した。CD137L結合部位および標識CD137上の抗CD137抗体の結合部位は、かさばるRPE標識によって遮断される可能性があるため、エピトープの接触性はフローサイトメトリーによって確認した。ヒトIgG1、ウレルマブ、ウサギポリクローナル抗ヒトCD137またはヤギポリクローナル抗ヒトCD137のFc部分に融合したCD137L ECDをプロテインGビーズに捕捉し、R-PE標識CD137の結合をフローサイトメトリーで確認した。蛍光強度は、ビーズに固定化されたCD137Lに結合した標識CD137の量に比例する。CD137のCD137Lおよび抗CD137抗体への結合が見られたが、RPE標識CD137のインフリキシマブへの結合は検出されなかった。
【0209】
スクリーニング:
CD137特異的抗体(IgG)を発現するB細胞を、ソーティングキャンペーン(sorting campaign)で分離した。スクリーニング段階で得られた結果は、抗体分泌細胞(ASC)の培養上清由来の未精製の抗体を使用して行ったアッセイに基づいている。各細胞培養上清中のウサギモノクローナル抗体は、組換えヒトCD137 ECDに結合するためのハイスループットELISAで特徴づけられた。CD137結合上清は、ヒトおよびカニクイザルCD137に対する結合動態についてさらに特徴づけられた。さらに、CD137Lおよびウレルマブに対するCD137相互作用の中和能を競合ELISAによって決定した。安定した形質導入Jurkat細胞で発現した膜性CD137への結合も評価した。上清のマウスCD137結合能を直接ELISAで分析した。
【0210】
直接ELISA
ELISAプレートを、250ng/mlのヒトCD137(Peprotech、カタログ番号310-15-1MG)を含む50μlのPBSを4℃で一晩添加することによりコーティングした。翌日、プレートをオーバーフローモードでウェルあたり300μlの洗浄バッファー(PBS、0.005%のTween 20)で3回洗浄し、270μlのブロッキングバッファー(PBS、1%のBSA、0.2%のTween 20)を各ウェルに振とうせずにRTで1時間添加した。次に、プレートをオーバーフローモードで300μlの洗浄バッファーで3回洗浄し、各上清50μlを添加し、プレートを穏やかに撹拌しながら室温で1.5時間インキュベートした。300μlの洗浄バッファーでオーバーフローモードで3回洗浄した後、ブロッキングバッファーで1:5,000に希釈した50μlのHRP結合ヤギ抗ウサギIgG抗体を各ウェルに添加した。章動ミキサー(nutating mixer)でRTで1時間インキュベートした後、50μlのTMB(3,3’、5,5’-テトラメチルベンジジン)を添加する前に、プレートをオーバーフローモードでウェルあたり300μlの洗浄バッファーで3回洗浄した。5~10分の展開(development)後、ウェルあたり50μlの1M HClを添加して酵素反応を停止し、参照波長として690nmを使用して450nmでプレートを読み取った。
【0211】
SPRによるhCD137に対する親和性
ヒトCD137に対する抗体の結合親和性を、MASS-1 SPR装置(Sierra Sensors)を使用したSPRによって測定した。親和性スクリーニングでは、ウサギIgGのFc領域に特異的な抗体(Bethyl Laboratories、カタログ番号A120-111A)を、標準的なアミンカップリング法を使用してセンサーチップ(SPR-2親和性センサー、高容量アミン、Sierra Sensors)に固定化した。B細胞上清中のウサギモノクローナル抗体は、固定化された抗ウサギIgG抗体によって捕捉された。十分な捕捉を可能にするには、B細胞上清中の最小IgG濃度が必要である。モノクローナル抗体を捕捉した後、ヒトCD137 ECD(Peprotech、カタログ番号310-15-1MG)を90nMの濃度で3分間フローセルに注入し、センサーチップに捕捉されたIgGからタンパク質の解離を5分間進行させた。各注入サイクルの後、10mMグリシン-HClを2回注入して表面を再生させた。見かけの解離(k)と会合(k)の速度定数、および見かけの解離平衡定数(K)は、MASS-1分析ソフトウェア(Analyzer、Sierra Sensors)で1対1のラングミュア結合モデルを使用して計算され、曲線近似の品質は、曲線近似の品質の尺度である相対Chi(分析物の外挿された最大結合レベルに正規化されたChi)に基づいてモニターされた。Chiの値が小さくなるほど、1対1のラングミュア結合モデルへの適合がより正確になる。ほとんどのヒットで、相対的なChi値は15%未満であった。リガンド結合の応答単位(RU)が抗体捕捉のRUの少なくとも2%であった場合、結果は有効であるとみなした。抗体捕捉のRUが2%未満のリガンド結合のRUを有するサンプルは、捕捉された抗体に対するCD137の特異結合を示さないとみなした。
【0212】
CD137/CD137L 競合ELISA
ELISAプレートを50ng/mlのCD137 Fcキメラ(R&D Systems、カタログ番号838-4B-100)を含む50μlのPBSを4℃で一晩添加することによって、コーティングした。翌日、プレートをオーバーフローモードでウェルあたり450μlの洗浄バッファー(PBS、0.005%のTween 20)で3回洗浄し、300μlのブロッキングバッファー(1%のBSAおよび0.2%のTween 20を含むPBS)を各ウェルに章動ミキサー(nutating mixer)でRTで1時間添加した。次に、陽性対照(中和ヤギ抗CD137抗体)を100%ネガティブ上清で希釈し、50μlの中和抗体を結合プレートの対応するウェルに添加した。さらに、ポジティブヒットの上清50μlを結合プレートに移動し、振とうしながら室温で1時間インキュベートした。次に、ELISAプレートをオーバーフローモードでウェルあたり450μlの洗浄バッファーで3回洗浄し、ブロッキングバッファーで希釈した50μlの20ng/mlビオチン化組換えヒトCD137リガンド(Acro Biosystem、カタログ番号41L-H5257)をウェルに添加した。振とうしながら1時間インキュベートした後、ELISAプレートをオーバーフローモードでウェルあたり450μlの洗浄バッファーで3回洗浄した。次に、ブロッキングバッファーで希釈した50μlの10ng/mlストレプトアビジン―ポリ-HRPをELISAプレートの各ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、プレートを450μlの洗浄バッファーで3回洗浄し、50μlのTMBを添加した後、5~10分間展開(development)した。最終的に、50μlの1M HClを添加して酵素反応を停止し、参照波長として690nmを使用して450nmでプレートを読み取った。
【0213】
SPRによる種の特異性:カニクイザルCD137
カニクイザルCD137に対する結合動態は、ヒトCD137に対する結合について記載したのと同じSPRセットアップを使用して、最初のスクリーニングELISAで特定されたヒットについても決定したが、ヒトCD137 ECDをカニクイザルCD137 ECDに置換した(Acro Biosystem、カタログ番号41B-C52H4)。
【0214】
ウレルマブ競合ELISA
ELISAプレートを2μg/mlのウレルマブ(Evitria、シュリーレン、スイスによって製造された)を含む50μlのPBSを4℃で一晩添加することによって、コーティングした。翌日、プレートをオーバーフローモードでウェルあたり450μlの洗浄バッファー(PBS、0.005%のTween 20)で3回洗浄し、300μlのブロッキングバッファー(1%のBSAおよび0.2%のTween 20を含むPBS)を各ウェルに章動ミキサー(nutating mixer)でRTで1時間添加した。次に、ウレルマブを95%ネガティブ上清を添加して希釈し、7.5ng/mlの5%ビオチン化ヒトCD137ECD(Peprotech, カタログ番号310-15-1MG)と1時間プレインキュベートし、結合プレートの対応するウェルに添加した。さらに、ポジティブヒットの上清50μlも添加し、7.5ng/mlの5%ビオチン化ヒトCD137ECD(Peprotech, カタログ番号310-15-1MG)と1時間プレインキュベートし、結合プレートに移動し、振とうしながら室温で1時間インキュベートした。次に、ELISAプレートをオーバーフローモードでウェルあたり450μlの洗浄バッファーで3回洗浄した。次に、次に、ブロッキングバッファーで希釈した50μlの10ng/mlストレプトアビジン―ポリ-HRPをELISAプレートの各ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、プレートを450μlの洗浄バッファーで3回洗浄し、50μlのTMBを添加した後、5~10分間展開(development)した。最終的に、50μlの1M HClを添加して酵素反応を停止し、参照波長として690nmを使用して450nmでプレートを読み取った。
【0215】
FCによる細胞ベースの結合アッセイ:ヒトCD137
Jurkat野生型(CD137を発現しない対照細胞)およびJurkat CD137細胞(クローンC6,1)を回収し、細胞数を決定した。細胞懸濁液を5分間400×gで遠心分離し、PBS-EB(1×DPBS、2% BCS H.I.、2mM EDTA)で希釈した細胞懸濁液40μl(40,000細胞)を結合プレートの指定ウェルに添加した。ポジティブヒット由来の上清をプレートレイアウトに従って96ウェルプレートに直接移動した。陽性対照サンプル(ウレルマブ)をPBS-EBで希釈し、プレートに移動した。最終サンプルは95%陰性上清であった。4℃で1時間インキュベートした後、100μlのPBS-EBを使用してプレートを3回洗浄した。次に、細胞ペレットを2μg/mlの濃度の50μl二次抗体溶液で再懸濁し(B細胞クローン用:AF647で標識したヤギ抗ウサギIgG;ウレルマブ用:PEで標識したヤギ抗ヒトIgG)、4℃で1時間インキュベートした。次に、100μlのPBS-EBを使用して細胞を再度3回洗浄した。次に、細胞ペレットを50μlのPBS-EBで再懸濁し、NovoCyte2060フローサイトメーターデバイスで分析した。20,000イベントのPEおよびAF647の蛍光強度を各サンプルについて記録し、蛍光強度MFIの幾何平均を計算した。データを最初に非特異的抗体結合(ブランクおよびJurkat野生型細胞結合)について補正し、次にウレルマブについて得られた結合レベルに正規化した。
【0216】
直接ELISA マウスCD137
マウス交差反応性CD137結合剤を同定するための最初の工程として、マウスCD137に対する直接ELISAを実施した。この目的のために、B細胞クローンの細胞培養上清をマウスCD137に対する抗体の存在についてELISAによってスクリーニングした。ELISAプレートを250ng/mlのマウスCD137(Acro Biosystem、カタログ番号41B-M52H7)を含む50μlのPBSを4℃で一晩添加することによって、コーティングした。翌日、プレートをオーバーフローモードでウェルあたり300μlの洗浄バッファー(PBS、0.005%のTween 20)で3回洗浄し、270μlのブロッキングバッファー(PBS、1%のBSA、0.2%のTween 20)を各ウェルに振とうせずにRTで1時間添加した。次に、プレートをオーバーフローモードで300μlの洗浄バッファーで3回洗浄し、50μlの各上清を添加し、プレートをRTで穏やかな撹拌下で1.5時間インキュベートした。300μlの洗浄バッファーでオーバーフローモードで3回洗浄した後、ブロッキングバッファーで1:5,000に希釈した50μlのHRP結合ヤギ抗ウサギIgG抗体を各ウェルに添加した。章動ミキサー(nutating mixer)でRTで1時間インキュベートした後、50μlのTMBを添加する前に、プレートをオーバーフローモードでウェルあたり300μlの洗浄バッファーで3回洗浄した。5~10分の展開(development)後、ウェルあたり50μlの1M HClを添加して酵素反応を停止し、参照波長として690nmを使用して450nmでプレートを読み取った。
このアッセイでは、85個のB細胞クローンの上清がバックグラウンドを明らかに上回っている(> 0.1 OD)シグナルを生成した。
【0217】
SPRによる種の特異性:マウス
マウスCD137に対する結合動態も、ヒトCD137に対する結合について記載したのと同じSPRセットアップを使用して決定したが、該ケースではヒトCD137 ECDをマウスCD137 ECDに置換した(Acro Biosystem、カタログ番号41B-M52H7)。
【0218】
スクリーニングヒットの選択
B細胞上清中のモノクローナル抗体の薬理学的特性に基づいて、ヒット確認分析のためにクローン38-27-A11を選択した。B細胞上清中のクローン38-27-A11のモノクローナル抗体の薬理学的特性を表4に示す。次の工程では、選択したクローンをRNA単離およびRT-PCRに使用して、ウサギ抗体軽および重鎖可変領域(38-27-A11)の配列を増幅した。
【0219】
【表4】
【0220】
【表5】
【0221】
【表6】
【0222】
実施例4: モノクローナル抗体38-27-A11の薬理学的解析
4.1 ヒトおよびカニクイザルCD137に対する親和性
精製されたモノクローナルウサギ抗体38-27-A11のヒトおよびカニクイザルCD137への結合動態は、SPR測定によって測定した(表5および6)。ヒトCD137に対する抗体の結合親和性は、Biacore T200 SPR instrument (GE Healthcare)を使用して測定した。実験のセットアップに関しては、ウサギIgGのFc領域に特異的な抗体(Bethyl Laboratories、カタログ番号A120-111A)を、標準的なアミンカップリング法を使用してセンサーチップ(CM5チップ、GE Healthcare)に固定化した。ウサギモノクローナル抗体を固定化した抗ウサギIgG抗体で捕捉した。モノクローナル抗体の捕捉後、ヒトCD137(PeproTech、カタログ番号310-15)またはカニクイザルCD137(Acro Biosystem、カタログ番号41B-C52H4)をフローセルに90~0.35nMの範囲の濃度で3分間注入し、センサーチップに捕捉されたIgGからのタンパク質の解離を12分間進行させた。見かけの解離(kd)および会合(ka)速度定数、および見かけの解離平衡定数(KD)は、1対1のラングミュア結合モデルを使用してBiacore T200ソフトウェア評価ツール(GE Healthcare)で計算した。
【0223】
4.2 組換えウサギIgG 38-27-A11のエピトープビニング
組換えウサギIgG 38-27-A11の結合エピトープを解析するために、MASS-1機器(Sierra Sensors)を使用してSPRによってエピトープビニングを実行した。このアプローチを使用することにより、CD137上のウサギIgG 38-27-A11の結合エピトープをウレルマブおよびウトミルマブに対してマッピングした。サンドイッチセットアップを利用して、抗体がヒトCD137への相互の結合を遮断するかどうかを調べた。ウサギIgG 38-27-A11と競合IgGは、大容量アミンセンサーチップ(HCA、Sierra Sensors)に固定化した。次に、90nMの抗原CD137(PeproTech、カタログ番号310-15)を注入し、ウサギIgG 38-27-A11に捕捉した後、すぐに22.5nMの二次抗体(競合IgG)を注入した。各ウサギIgGでのヒトCD137の捕捉レベルと第二の結合剤の応答レベルを決定した(応答単位、RU)。関与するタンパク質の分子量および捕捉レベルに依存する理論的最大応答(Rmax)を計算することにより、捕捉された抗原上のタンパク質の相対的結合レベル(%)を決定した。分子がCD137上の同じエピトープまたは重複する(たとえば、構造的に類似または空間的に近位の)エピトープに結合する場合、捕捉されたCD137上に注入された抗体の結合は観察されるべきではない。その結果、抗体の結合が観察されると、2つの抗体ペアが重複しないエピトープに結合する。相対的結合レベル(%)は、各抗体ペアについて決定された。定義により、10%未満の結合レベルはCD137で同じまたは重複している(たとえば、構造的に類似または空間的に近位の)エピトープを示し、30%を超えると重複していないエピトープを示す。IgG 38-27-A11はCD137への結合についてウトミルマブと競合せず、重複しないエピトープを示唆したが、CD137への結合についてウレルマブと競合し、同じまたは重複するエピトープを示唆した(図1
【0224】
4.3 NF-kBレポーター遺伝子アッセイによるCD137シグナル伝達の活性化
CD137クラスタリング、およびそれに続くCD137シグナル伝達を活性化する力価は、NF-kBレポーター遺伝子アッセイで評価した。このアッセイでは、NF-kB Jurkatレポーター細胞におけるCD137シグナル伝達の活性化を評価した。CD137シグナル伝達の活性は、Jurkatレポーター細胞株でCD137が誘導するNF-kB活性化によって駆動されるルシフェラーゼ発現の測定によってレポートされる。さらに、シグナル伝達経路の活性化に必要なCD137のクラスター化は、二価の抗CD137ウサギIgGの結合を介して促進される。
【0225】
詳細には、CD137を発現するNF-kBレポーター遺伝子Jurkat細胞(Promega)の50,000個の細胞を96ウェル白色細胞培養プレートに播種した。9,000~1.37ng/mlの範囲のウサギIgGの3倍段階の段階希釈液をアッセイバッファーで調製した。各希釈液に、2.5倍を超える架橋抗体(ヤギ抗ウサギIgG Fc特異的抗体、Bethyl、カタログ番号A120-111A)を添加した。CD137シグナル伝達を誘導するのに、さらなるクラスター化なしの抗体結合で十分かどうかを判断するために、各ウサギIgGの最高濃度を架橋剤なしでも測定した。陽性対照としてのウレルマブを各プレートに含め、ウレルマブの架橋は、1.25過剰の架橋剤(ウサギ抗ヒトIgG Fc特異的抗体、Bethyl、カタログ番号A80-304A)を各希釈液に添加することによって行った。ウサギIgGで行ったように、ウレルマブの最高濃度も、架橋剤を添加せずに測定した。組換えIgGおよびウレルマブの調製した段階希釈液をレポーター遺伝子細胞に添加し、加湿細胞培養インキュベーター内で37℃で6時間インキュベートした。ルシフェラーゼの発現は、ルシフェラーゼ試薬の添加によって検出し、抗CD137 IgGの添加の6時間後に発光リーダーによって読み取った。データは、試験サンプルの相対発光単位(RLU)を、架橋剤を使用して最高濃度のウレルマブについて測定されたRLUに正規化することによって分析した。正規化されたデータは、ウサギIgG濃度の関数としてプロットし、sigmoidal 4PL fitを使用してフィットさせた。NF-kBシグナル伝達の最大活性化(ウレルマブと比較して)、EC50値、および相対EC50値(ウレルマブと比較して)をレポートした(表7)。
【0226】
【表7】
【0227】
実施例5: ウサギIgG 38-27-A11のヒト化
ヒットスクリーニング中に得られたデータに基づいて、CD137結合剤38-27-A11を、VH3ベースのフレームワークにCDRを移植することによってヒト化した(表8)。フルグラフトは、AHoヒト化プロトコルに従ったCDRの移植およびフレームワーク残基を示す(CDR移植と抗原と接触する可能性のあるすべてのウサギ残基の移植(AHoによる)は、変異(ウサギフレームワーク残基)の総数を減少させるために、界面形成時に溶媒のアクセス可能性が20%を超える変化を伴う残基に限定された)。
【0228】
【表8】
【0229】
コドン最適化ヌクレオチド配列を設計し、対応する遺伝子を合成そ、哺乳動物発現ベクターにクローン化した。表9は、scFv分子の製造の概要である。哺乳類コンストラクトの発現は、CHOgro一過性トランスフェクションキット(Mirus)を使用してCHO-S細胞で行った。培養物は、37℃での発現の5~7日(細胞生存率70%未満)後に遠心分離によって回収され、タンパク質は、プロテインLアフィニティークロマトグラフィーによって清澄化された培養上清から精製され、必要に応じて、サイズ排除クロマトグラフィーによる精製工程(polishing step)を続けた。製造された材料の品質管理には、SE-HPLC、UV280、SDS-PAGE等の標準的な分析方法を使用した。
【0230】
実施例6: ヒトscFvの薬理学的特性化
6.1 ヒトCD137に対する親和性
ヒト化scFv PRO1359(38-27-A11 sc02)およびPRO1360(38-27-A11 sc03)のヒトCD137に対する親和性をT200デバイス(Biacore、GE Healthcare)上でSPR分析により測定した。この実験では、Fcタグ付きヒトCD137(R&D Systems、カタログ番号838-4B-100)をGE HealthcareのHuman Antibody Capture kit(カタログ番号BR-1008-39)を使用して捕捉した。各分析物注入サイクルの後、抗ヒトFc特異的IgGが再生され、新しい抗原が捕捉された。scFvは、分析対象物の濃度が0.19~45nM(3倍希釈工程)の範囲で、ランニングバッファーで希釈された、捕捉されたCD137に対する用量反応multi-cycle kineticアッセイを使用して分析物として注入された。結合時間および解離時間は、それぞれ300秒および720秒に設定した。得られたセンサーグラムは、1:1結合モデルを使用して適合された。データを表10に示す。
【0231】
6.2 種の交差反応性(SPRによるカニクイザルCD137への結合)
カニクイザルCD137への交差反応性は、ヒトCD137への結合を測定するために使用したのと同様のアッセイで、カニクイザルFcタグ付きCD137(R&D Systems、カタログ番号9324-4B-100)を使用して測定した。表11は、scFv PRO1359(38-27-A11 sc02)およびPRO1360(38-27-A11 sc03)で得られた親和性の概要である。
【0232】
6.3 競合ELISAによるCD137/CD137Lの中和
抗ヒトCF137 scFv PRO1359(38-27-A11 sc02)およびPRO1360(38-27-A11 sc03)がCD137のCD137に対する結合に干渉しなかったことを示すため、競合ELISAを使用した。市販の抑制性ポリクローナル抗CD137ヤギ抗体(Antibodies online、カタログ番号ABIN636609)を参照として使用した。実験のセットアップに関しては、50ng/mlのヒトCD137(Fcタグ付き、R&D Systems、カタログ番号838-4B-100)をELISAプレートに一晩コーティングし、50μg/mlから始まるscFvの3倍段階の段階希釈をELISAプレートに添加した。その後、ビオチン化CD137L(CD137Lのin-houseビオチン化、Acro Biosystem、カタログ番号41L-H5257)を添加し、ストレプトアビジン-HRPの添加により結合リガンドを検出した。最後に、HRP基質TMBを追加した。5分の展開(development)後、1M HClで反応を停止した。吸光度は、450nmおよび参照波長として690nmで測定した。データを表12に示す。
【0233】
【表9】
【0234】
【表10】
【0235】
【表11】
【0236】
6.4 フローサイトメトリーによるヒトCD137発現細胞への結合
ヒトCD137発現細胞への結合能は、PRO1359(38-27-A11 sc02)およびPRO1360(38-27-A11 sc03)について測定した。50,000個のCD137発現Jurkat細胞(またはCD137の発現を欠く参照細胞株Jurkat細胞として)を丸底の非組織培養処理した96ウェルプレートに分配した。細胞を100μlのPBSで400×gで5分間遠心分離することによって2回洗浄した。細胞を試験したscFvおよび参照IgG ウレルマブの染色バッファー(PBS、2%熱不活化BCS、2mM EDTA)で調製した、10,000~0.64ng/mlの範囲の5倍段階の段階希釈液100μlに再懸濁した(scFvの場合:381.19~0.02nM)。章動ミキサー(nutating mixer)で4℃で1時間インキュベートした後、細胞を100μlの染色バッファーで3回洗浄し、400×gで5分間の遠心分離工程を行った。次に、scFvで処理した細胞を0.5μg/mlのAPC標識プロテインLを含む100μlの染色バッファーに再懸濁し、ウレルマブ(ヒトIgG4)で処理した細胞を2μg/mlのAPCで標識されたヤギ抗ヒトIgGを含む100μlの染色バッファーに再懸濁した。章動ミキサー(nutating mixer)でプレートを4℃で1時間インキュベートした後、100μlの染色バッファーで3回洗浄し、最終容量50μlの染色バッファーに再懸濁した。最後に、ウェルあたり20,000イベントのAPCシグナルを、Novocyteフローサイトメーターシステム(ACEA Bioscience)を使用したフローサイトメトリーによって分析した。各プレートの個々のEC50値は、各プレートに沿って採取された参照分子ウレルマブのEC50に対して較正した(相対EC50:EC50、ウレルマブ/EC50、テストscFv)。データは表13および図1に要約されている。
【0237】
6.5 SPRによるCD137対CD40およびOX40の選択性
カニクイザルCD137との交差反応性に加え、抗ヒトCD137 scFv PRO1359(38-27-A11 sc02)およびPRO1360(38-27-A11 sc03)のヒトCD137との結合の選択性が望まれ、CD40やOX40等のTNFRスーパーファミリーの他のメンバーには結合しないことが望まれる。したがって、PRO1359(38-27-A11 sc02)およびPRO1360(38-27-A11 sc03)のヒトCD40およびOC40への結合を試験した。scFvのヒトFcタグ付きCD40(AcroBiosystems、カタログ番号CD0-H5253)およびヒトFcタグ付きOX40(Acro-Biosystems、カタログ番号OX0-H5255)をT200デバイス(Biacore、GE Healthcare)上でSPR分析により測定した。この実験では、Fcタグ付きヒトCD40およびOX40をGE HealthcareのHuman Antibody Capture kit(カタログ番号BR-1008-39)を使用して捕捉した。各分析物注入サイクルの後、抗ヒトFc特異的IgGが再生され、新しい抗原が捕捉された。scFvは、ランニングバッファーで希釈した高濃度の180nMの分析物を使用して分析物として注入さした。結合時間および解離時間は、それぞれ300秒および720秒に設定した。得られたセンサーグラムは、1:1結合モデルを使用して適合された。データは表14に要約されている。
【0238】
【表12】
【0239】
【表13】
【0240】
【表14】
【0241】
実施例7: ヒト化scFvの生物物理学的特徴
scFv PRO1359(38-27-A11 sc02)およびPRO1360(38-27-A11 sc03)は、精製後、遠心濃縮管を使用して10mg/mL未満に濃縮した(表15)。
【0242】
scFvを、4週間の安定性試験等の安定性試験に供した。この試験では、scFvを10mg/mlの水性バッファー(pH6.4の150mM NaClを含む50mMクエン酸リン酸バッファー)に製剤化し、-80℃、4℃、および40℃で4週間保存した。少なくとも、製剤中のモノマーとオリゴマーの割合は、1週間後、2週間後、および各研究の終了時にSE-HPLCピーク面積を積分することによって評価された。表16は、調査のd28で得られたd7とエンドポイントの測定値を比較している。さらに、scFv分子の適合性は、凍結融解(F/T)サイクル(コロイド安定性)に関して評価された。F/T安定性評価では、保存安定性研究と同じ分析方法(SE-HPLC、UV-Vis)およびパラメータ(%モノマー含有量および%モノマー損失)を適用して、5回のF/Tサイクルを超える分子の品質をモニターした。表17は、5回の繰り返しF/Tサイクルにわたるモノマー含有量の経過を%で示している。F/Tサイクルを繰り返した後、2%を超えるモノマー含有量を失った分子はなかった。
【0243】
分子の熱変性は、蛍光色素SYPRO orangeを使用して評価した。関連する賦形剤条件のサンプルを調製し、qPCRマシンでアッセイを実施した。ソフトウェアのカスタム色素キャリブレーションルーチンを使用して、蛍光発光を検出した。試験サンプルを含むPCRプレートを25℃から96℃まで1℃刻みで温度上昇させた。展開遷移の中点(Tm)は、ソフトウェアGraphPad Prismによって、数学的な二次導関数法を使用して計算され、曲線の変曲点が計算された。報告されたTmは、3回の測定の平均である。表18は、一般的なバッファー(pH6.4の50mMリン酸-クエン酸バッファー、150mM NaCl)で製剤化された分子の融解温度を示している。
【0244】
scFv PRO1359(38-27-A11 sc02)およびPRO1360(38-27-A11 sc03)を、短期間のpHストレス安定性研究に供した。この研究では、scFv分子がpH3.5~7.5の一連の水性バッファー(リン酸-クエン酸)系中で1 mg/mlで製剤化された。それぞれのバッファー系で4℃および40℃で2週間保存した後、%モノマー含有量および%モノマー損失を分析した。研究期間中のモノマー含有量、モノマー損失、濃度、および濃度損失の表形式の要約を表19に示す。
【0245】
【表15】
【0246】
【表16】
【0247】
【表17】
【0248】
【表18】
【0249】
【表19】
【0250】
実施例8: 溶液中のCD137 ECDバリアントの複合体形成分析によるエピトープマッピング
この研究では、さまざまなCD137 ECDバリアントが、システインリッチドメイン(CRD)および膜の近位の柄(stalk)であるアノテートされた構造モチーフに基づいて設計された(UniProtKB、Q07011;図4A):
【0251】
【化1】
*アミノ酸24~186に及ぶCD137の細胞外ドメイン(UniProtアクセッション番号:Q07011;CD137の完全な配列は配列番号32を参照)は、4つのシステインリッチドメイン(CRD1~4)および膜の近位の柄(stalk)で構成されている。下線が引かれた残基は、ウトミルマブのエピトープが位置するアミノ酸配列を示す(国際公開第2012/032433号)。
【0252】
モチーフの組み合わせ(図4B)は、PreScissionプロテアーゼ部位(3C部位)およびヒトヒンジーFcドメインにN末端で結合していた。膜近位モチーフCRD4および柄(stalk)は常に排他的に一緒に組み込まれていた。合計8個のCD137 ECDバリアントおよびPRO1480が結合分析に含まれていた(図4、表20)。タンパク質の発現は、一過性のCHOgro発現システム(Mirus)を使用してFreeStyleCHO-S細胞で行った。目的の遺伝子は哺乳類の発現に最適化され、合成され、標準のpcDNA3.1ベクターにクローニングされた。シグナル配列は、マウス重鎖IgGに由来する。発現培養物は、37℃で6~7日間(細胞生存率<70%)、または37℃で1日間、バッチで培養した後、5~6日間32℃に温度を移行した。培養上清は、遠心分離とそれに続く0.45μmろ過によって分離された。標的タンパク質は、PRO1480のプロテインLアフィニティークロマトグラフィーまたはCD137 ECDバリアントのプロテインAアフィニティークロマトグラフィーとそれに続く研磨サイズ排除クロマトグラフィー(polishing size-exclusion chromatography)によって、清澄化された培養上清から捕捉された。結合実験中、PRO1480を各CD137 ECDバリアントとともに、KDの少なくとも500倍の濃度で等モル比でインキュベートした。結合の評価(yesまたはno)は、個々のタンパク質と比較した複合体のSE-HPLCによる保持時間シフト分析で行われた。結果は表21に要約される。
【0253】
【表20-1】
【表20-2】
【0254】
【表21】
【0255】
発明の抗体を含む多重特異性分子
本発明の抗体を含む例示的な多重特異性分子は、表3に含まれている。PRO1480およびPRO1481は、それぞれ、38-27-A11 sc02および38-27-A11 sc03に由来する。
【0256】
実施例9: PDL1、CD137、HSA、およびMSAに対する親和性
PDL1に対する親和性は、Biacore T200デバイス(GE Healthcare)を使用したSPR測定によって測定された。この実験では、GE HealthcareのHumanAntibody Captureキット(カタログ番号BR-1008-39)を使用して、さまざまな種のFcタグ付きPDL1を捕捉した。各分析物注入サイクルの後、抗ヒトFc特異的IgGが再生され、新しい抗原が捕捉された。すべてのフォーマットで、多重特異性分子は、分析対象物の濃度が0.18~45nM(2倍希釈工程)の範囲で、ランニングバッファーで希釈された、用量反応multi-cycle kineticアッセイを使用して分析物として注入された。結合時間および解離時間は、それぞれ300秒および720秒に設定した。見かけの解離(kd)と会合(ka)の速度定数、および見かけの解離平衡定数(KD)は、1対1のラングミュア結合モデルを使用して計算した。異なる種のCD137への親和性は、異なる種のCD137-Fcキメラタンパク質が固定化抗体によって捕捉されたことを除いて、PDL1と同じセットアップを使用して測定した。
【0257】
Fcを含むフォーマットは、ヒトIgGのFc領域に特異的な抗体によって直接捕捉された。バイオセンサーチップに捕捉されたIgGへの結合について、90~0.35nMの範囲のPDL1細胞外ドメインまたはCD137細胞外ドメインの2倍段階希釈を試験した。各注入サイクルの後、3M MgCl溶液を1回注入することで表面を再生した。
【0258】
異なる種の血清アルブミン(SA)に対する分子の親和性は、Biacore T200デバイス(GE Healthcare)を使用したSPR測定によって測定した。SAは、アミン結合化学を使用してCM5センサーチップ(GE Healthcare)に直接結合された。再生スカウティング(regeneration scouting)および表面性能試験を行って最適なアッセイ条件を見出した後、用量反応を測定し、得られた結合曲線を二重参照(空の参照チャネルおよびゼロ分析物注入)し、1:1のラングミュアモデルを使用して適合させて動態パラメータを取得した。アッセイは、pH5.5の1×PBS-Tweenバッファーで行った。
【0259】
得られたデータは表22に要約されている。クローン38-27-A11に由来するCD137特異的ヒト化構築物の結合動態の測定は、ほぼ同一の親和性を示している(表22のクローン38-27-A11、PRO1480、およびSTRグラフトPRO1481のCDRグラフトを比較されたい)。
【0260】
実施例10: CD137を発現する遺伝子導入NF-kB Jurkatレポーター細胞株の細胞ベースのアッセイを使用した、抗PDL1×CD137分子のCD137アゴニスト効果の評価
このアッセイでは、Jurkat細胞におけるCD137シグナル伝達の活性化を評価した。CD137シグナル伝達の活性は、Jurkatレポーター細胞株でCD137が誘導するNF-kB活性化によって駆動されるルシフェラーゼ発現の測定によってレポートされる。ルシフェラーゼの発現は、CD137の活性と直接相関している。さらに、シグナル経路の活性化に必要なCD137のクラスター化は、Jurkat細胞とPDL1発現細胞株の間の免疫シナプスの形成を介して促進される。したがって、レポーター細胞株でのCD137のクラスター化および活性化には、PDL1の発現が必要である。
【0261】
PDL1発現を増加させるために10ng/ml IFNyで24時間刺激したHCC827細胞を、96ウェル培養プレートにウェルあたり25,000細胞で播種した。次に、抗PDL1×CD137分子の段階希釈液および競合他社のウレルマブを調製し、細胞に添加した。次に、Jurkatレポーター細胞を25mg/mlのHSAを含むまたは含まないアッセイ培地で調製し、ウェルあたり40,000細胞の細胞密度で添加した。ルシフェラーゼの発現は、ルシフェラーゼ試薬の添加によって検出し、Jurkat細胞の添加の6時間後または24時間後に発光リーダーによって読み取った。試験サンプルの相対発光単位(RLU)をPRO885について測定したRLU(図5)に対して正規化することによってデータを分析し、CD137シグナル伝達の相対的活性化の値を得た。図5および表23に示すように、クローン38-27-A11に由来するscDb-scFv PRO1480およびPRO1481は、CD137シグナル伝達を刺激することができた。
【0262】
【表22】
【0263】
【表23】
【0264】
実施例11: スーパー抗原SEAで刺激されたヒトPBMCを使用した細胞ベースのアッセイにおける、PDL1遮断とCD137刺激の併用による刺激効果の評価
この実験では、PD-1/PDL1阻害とCD137アゴニズムの相乗効果を評価した。このアッセイでは、抗原提示細胞(APC)とT細胞でそれぞれPDL1、T細胞でCD137の発現を誘導するために、スーパー抗原であるブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)で刺激された末梢血単核細胞(PBMC)を使用した。抗PDL1×CD137分子を適用することにより、2つのT細胞制御性シグナル伝達経路が同時に標的にされた: 抑制性PD-1/PDL1経路の阻害、および三重特異性抗PDL1×CD137×HSA分子によって媒介される免疫シナプスの形成を介したCD137経路の活性化(PRO1480)。T細胞の活性化を、インターロイキン2(IL-2)の分泌によって評価され、参照分子アベルマブおよびウレルマブの混合物によって媒介されるPDL1阻害によって媒介される効果と比較した。
【0265】
末梢血単核細胞(PBMC)を、密度勾配遠心分離によって新鮮なヒト全血から分離した。次に、抗CD56抗体およびMACS細胞分離キット(Miltenyi Biotec)を使用して、PBMCのNK細胞を枯渇させた。次に、ウェルあたり100,000個のPBMCを96ウェルプレートに添加し、続いてPRO1480または10ng/mlの濃度のSEAを含むアッセイバッファー中のウレルマブとアベルマブの組み合わせの段階希釈液を添加した。37℃および5%COで96時間インキュベートした後、細胞上清を回収し、培養上清中のヒトインターロイキン-2(IL-2)レベルを、キットの説明書に従ってBioLegendのIL-2ヒトELISA MAXアッセイを使用して定量した。IL-2濃度を、IL-2標準曲線から補間し、逆算し、EC50値の計算のためにアベルマブ/ウレルマブの組み合わせおよびPRO1480濃度に対してプロットした。
【0266】
図6に示すように、IL-2は、PD1/PDL1相互作用の遮断、およびPRO1480の添加によるCD137の刺激に続いて、T細胞によって分泌された。アベルマブおよびウレルマブの組み合わせと比較した場合、PRO1480はより高いT細胞活性化およびより優れた作用強度を示した。この知見は、三重特異性抗PDL1×CD137×HSA scDb-scFv PRO1480が、参照分子であるアベルマブおよびウレルマブの混合物と比較した場合、より強いT細胞刺激を誘導できることを示している。
【0267】
実施例12: 同時のPDL1遮断およびCD137刺激の刺激効果のエピトープ依存性
実施例11は、異なる抗CD137抗体断片を有する2つの構築物の刺激効果を比較することによって繰り返された。一連の3~4回の個別実験からの単一の代表的な例からのデータを示す図7に示すように、IL-2は、PD-1/PDL1相互作用の同時遮断およびPRO1480およびPRO1186の添加によるCD137の刺激に続いて、T細胞によって分泌された(実施例10を参照されたい)。CD137 ECDのCRD4の膜近位エピトープを標的とするPRO1186(図9(B)を参照)と比較した場合、CD137 ECDのCRD1およびCRD2の膜遠位先端エピトープを標的とするPRO1480(図9(A)を参照)は、より高いIL-2分泌および優れた作用強度によって示されるように、より高い最大T細胞活性化を示した(図8は、前記一連の3~4回の個別実験のプールされた結果を示す)。この知見は、膜遠位端エピトープを標的とする三重特異性抗PDL1×CD137×HSA scDb-scFv PRO1480が、非遠位エピトープを標的とする分子と比較した場合、より強いT細胞共刺激を誘導できることを示している。
【0268】
実施例13: エピトープの決定
PRO1359単独および4-1BBのECDとの複合体の構造決定
scFv(PRO1359)は、CHO細胞で一過性に発現し、Capto-Lレジン(GE-Healthcare)を使用して回収物から精製した。Superdex 75サイズ排除クロマトグラフィーカラム(GE-Healthcare)を使用して、タンパク質を高モノマー含有量にポリッシュした。
【0269】
4-1BB(Uniprot:Q07011)の残基24~160は、N末端分泌配列およびIdeS切断部位を含むC末端ヒンジレスFcタグで発現された[Novarra, S., et al., A hingeless Fc fusion system for site-specific cleavage by IdeS. mAbs, 2016. 8(6): p.1118-1125]。融合タンパク質はCHO細胞で一過性に発現し、プロテインAレジン(GE Healthcare)を使用して細胞上清から捕捉された。Fcタグは37℃でIdeSによって切断され、プロテインAビーズを使用して除去された。
【0270】
抗4-1BB scFv PRO1359の結晶化
抗4-1BB scFvは、25mM Hepes、100mM NaCl、pH6.7で10mg/mlに濃縮される。結晶化条件は、母液とタンパク質の比率が1:1のシッティングドロップ蒸気拡散法によってスクリーニングされた。結晶を0.1M Tris pH8.5、2M NHPOで成長させ、100%エチレングリコールを母液に最終濃度20%になるように添加して凍結保護した。
【0271】
抗4-1BB scFv PRO1359と4-1BBのECDの複合体の結晶化
複合体は、等モル比の両方のタンパク質を混合した後、50mM Hepes、100mM NaCl、pH6.7中のSuperdex75サイズ排除クロマトグラフィーカラムで複合体を精製することにより形成された。
【0272】
複合体に対応する画分を10mg/mlに濃縮した。初期結晶は、0.1M酢酸ナトリウム、pH5.5、22%PEG2000 MME、0.17M~0.23M酢酸カルシウム、および等量の母液と複合体中で、20℃でシッティングドロップ蒸気拡散法を行うことによって成長させた。SeedBeads(Hampton Research)を使用して結晶を粉砕し、その後の結晶化スクリーニングで種晶(crystals seeds)として使用した。
【0273】
最終結晶は、0.1M酢酸トリスpH8.5、1Mギ酸ナトリウム、25%PEG2000 MME、母液対タンパク質対種晶(seed)の比率が1:1:0.125の状態で20℃で成長させた。結晶を80mM酢酸トリスpH8.5、0.8Mギ酸ナトリウム、22.4%PEG2000 MME、20%エチレングリコールで凍結保護し、液体窒素で凍結した。
【0274】
回折実験および構造解(structure solution)
スイスのフィリゲンにあるPaul-ScherrerInstituteのSwissLight Sourceで、scFvのみおよび4-1BBとの複合体のネイティブデータセットが収集された。scFvは空間群P65で結晶化し、XDSを使用して1.6Åの分解能で処理された。複合体は空間群I222で結晶化し、XDSを使用して2.2Åの分解能で処理された[Kabsch, W., XDS. Acta Crystallographica Section D, 2010. 66(2): p.125-132.]。
【0275】
scFvの構造は、in-houseのscFvモデルを使用したPhaserによる分子置換によって解決された[McCoy, A.J., et al., Phaser crystallographic software. Journal of Applied Crystallography, 2007. 40(4): p.658-674]。複雑な構造は、scFv apo構造および4-1BBの縮小モデル(pdbコード:6BWV、鎖D)を使用した分子置換によって解決された。
【0276】
改良(Refinement)
構造はRefmacを使用して改良された[Murshudov, G.N., A.A. Vagin, and E.J. Dodson, Refinement of Macromolecular Structures by the Maximum-Likelihood Method. Acta Crystallographica Section D, 1997. 53(3): p.240-255.]。
【0277】
アポ構造は1.6Åの分解能に改良され、残基1~110および128~251は電子密度と15.8%/18%の最終的なRwork/Rfree値によって明確に定義されている。複雑な構造も同様に2.2Åの分解能に改良された。CD137の場合、残基24~158は電子密度で表示され、残基139~149および156~158は弱く定義されている。scFvは、残基3~109および131~252に対して明確に定義されている。複合体は、19.2%/23.5%のRwork/Rfree値に改良した。
【0278】
インターフェース記述
CD137エピトープ
結合インターフェースは、European Bioinformatics InstituteのPISAサービスを使用して分析する[Krissinel, E. and K. Henrick, Inference of Macromolecular Assemblies from Crystalline State. Journal of Molecular Biology, 2007. 372(3): p.774-797.]。CD137のエピトープは、第一および第二のシステインリッチドメイン(CRD)内にある。scFvの結合時に埋もれるアクセス可能な表面積は770Åである(表26を参照されたい)。重要な残基を表24に示す。水素結合ネットワークを表25に要約する。
【0279】
【表24-1】
【表24-2】
【0280】
【表25】
* アラニンに変異した場合、親和性は1000分の1以下に減少した。
【0281】
【表26】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2022512628000001.app
【国際調査報告】