(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】電磁ばね式ブレーキにおける予防機能制御
(51)【国際特許分類】
H01F 7/18 20060101AFI20220131BHJP
F16D 66/00 20060101ALI20220131BHJP
F16D 65/16 20060101ALI20220131BHJP
F16D 121/22 20120101ALN20220131BHJP
【FI】
H01F7/18 Z
H01F7/18 B
F16D66/00 Z
F16D65/16
F16D121:22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518971
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(85)【翻訳文提出日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2019076224
(87)【国際公開番号】W WO2020070010
(87)【国際公開日】2020-04-09
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521138707
【氏名又は名称】シーエイチアール. マイヤー ゲーエムベーハー プラス コンパニー.カーゲー
【氏名又は名称原語表記】CHR. MAYR GMBH + CO. KG
【住所又は居所原語表記】Eichenstr. 1 87665 Mauerstetten (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ホイモース ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】クラムコウスキー マティアス
(72)【発明者】
【氏名】マーテン アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ティムラー フランク
(72)【発明者】
【氏名】ウンシン カール
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA38
3J058AA88
3J058BA62
3J058CC13
3J058CC72
3J058CC77
3J058DB18
3J058FA37
(57)【要約】
本発明は、臨界運転状態のより簡単でより正確な判定のための電磁ばね圧ブレーキにおける予防機能制御のための方法に関する。ばね圧ブレーキは、少なくとも1つのコイル、ならびに電機子ディスク、その上に圧縮ばねが配分されたコイルキャリア、制御モジュール、ならびに少なくとも1つの半導体部品、電流測定装置、および電圧測定装置を有する監視モジュールを備え、方法は以下のステップを含む。最初に、ばね圧ブレーキが電圧を用いて制御モジュールによって制御される。次に、電磁ばね圧ブレーキにおける状態変数の電流(I)および電圧(U)が監視モジュールによって測定される。その後、電磁ばね圧ブレーキの決定変数(T;F)が監視モジュールによって決定される。前記決定変数(T;F)は、作動の開始点から電機子ディスクが移動し始めるポイント(W)まで及ぶ範囲(a)にわたって合計される。電機子ディスクの移動が始まるポイント(W)において電流値が検出される。決定変数(T;F)は、電流(I)が再び上記で検出された値に達したときに、作動ポイントから定電流が達成されるポイントまで及ぶ範囲(b)にわたってさらに合計される。その後、領域(a)にわたる決定変数の合計から領域(a)および(b)にわたる決定変数の合計まで比率(X)が計算される。比率(X)の値が所定の値(Y)に達するかまたは超えると、ばね圧ブレーキに関する状態信号が出力される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル、ならびに
電機子ディスク、
その上に圧縮ばねが配分されたコイルキャリア、
制御モジュール、および
監視モジュールであって、少なくとも、
半導体部品、
電流測定装置、
電圧測定装置、を有するもの
を少なくとも備える、少なくとも1つの電磁ばね式ブレーキの予防機能制御のための方法であって、
以下のステップ:
(i)前記制御モジュールによる電圧を用いた前記ばね式ブレーキの作動、
(ii)前記監視モジュールによる前記電磁ばね式ブレーキにおける状態変数の電流(I)および電圧(U)の測定、
(iii)前記監視モジュールによる前記電磁ばね式ブレーキの作動中のパラメータ(T;F)の決定、
(iv)作動の開始点(12)から前記電機子ディスクが移動し始めるポイント(W)まで及ぶ範囲(a)にわたる前記パラメータ(T;F)の合計、
(v)前記電機子ディスクが移動し始める前記ポイント(W)における電流値の検出、
(vi)前記電流(I)が再びステップ(v)からの前記値に達したときの作動の前記ポイントから定電流が達成されるポイントまで及ぶ範囲(b)にわたる前記パラメータ(T;F)の合計、
(vii)前記範囲(a)にわたる前記パラメータの前記合計から前記範囲(a)および(b)にわたる前記パラメータの前記合計までの比率(X)の計算、
(viii)前記比率(X)の前記値が所定の値(Y)に到達または超過したときのステータス信号の出力
を特徴とする
方法。
【請求項2】
前記パラメータ(T)が時間であることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パラメータ(F)がリンクされた磁束であることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電機子ディスクが移動し始める前記ポイント(W)が、以下のステップ:
(i)前記監視モジュールによる前記電磁ばね式ブレーキにおける前記状態変数の電流(I)および電圧(U)の測定、
(ii)前記測定された状態変数の電流(I)および電圧(U)、ならびに前記コイルの抵抗値(Rs)、または前記測定された状態変数の電流(I)および電圧(U)、ならびに前記コイルの前記抵抗値(Rs)から導出された変数からのさらなる状態変数の計算、
(iii)前記ばね式ブレーキ内の前記電機子ディスクの前記移動について、前記監視モジュールに保存されたこのさらなる状態変数の事前定義された値/過程との前記さらなる状態変数の比較、
(iv)前記電機子ディスクの前記移動が始まる前記ポイント(W)における前記電流値の決定および出力
によって決定されることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記測定された状態変数から導出された前記変数が、前記測定された状態変数の電流(I)および電圧(U)の同期移動平均または同等の高次フィルタ関数であることを特徴とする、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記さらなる状態変数がインダクタンス(L)であることを特徴とする、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記さらなる状態変数がインダクタンスの変化(dL/dt)であることを特徴とする、
請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記さらなる状態変数が誘導電圧(U
ind)であることを特徴とする、
請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記電磁ばね式ブレーキが、DC電圧で前記制御モジュールによって制御されることを特徴とする、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記電磁ばね式ブレーキが、脈動DC電圧で前記制御モジュールによって制御されることを特徴とする、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電磁ばね式ブレーキが、減衰または非減衰の電磁ばね式ブレーキであることを特徴とする、
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記値(Y)が50%~80%であることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記値(Y)が80%~90%であることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記値(Y)が90%~99%であることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ばね式ブレーキにおける予防機能制御のための方法に関する。
そのような方法は、エレベータ、ステージ、およびつり上げ技術の分野で使用されることが好ましい。
【背景技術】
【0002】
DE10314390B4は、磁場を生成するコイル、および磁場によって移動可能に配置された電機子ディスクを有する電磁作動ブレーキを監視するための方法およびデバイスを開示し、磁場は、コイルにコイル電流を印加することによって生成され、電機子ディスクの移動は、コイル電流のタイミングを監視することによって決定され、スイッチオンポイントは、コイル電流のタイミングから決定され、電機子ディスクの移動の開始を表す。スイッチオンポイントにおいて、コイル電流は、ブレーキの所定の第1の摩耗状態を表す所定の第1のしきい値と比較され、この比較の結果に基づいて、ブレーキの現在の摩耗状態を表す信号が出力される。
【0003】
DE102011075935B4は、リンクされた目標の磁束を電流強度の関数として記述する少なくとも1つの磁気基準特性と、リンクされた実際の磁束を電流強度の関数として記述する磁気実際特性曲線の比較に基づいて、電磁アクチュエータのエラー状態、機能状態、および/またはエラー状態を決定するための方法を開示する。電流のリンクされた実際の磁束および磁場の生成回路内の電圧測定値は、電磁アクチュエータの動作中に特定される。加えて、電磁アクチュエータについての汎用またはバッチ固有の磁気特性曲線が決定され、それは、磁気基準特性曲線を決定するために、較正によって電磁アクチュエータの特定の個々の特性に適合される。個々の電磁アクチュエータのリンクされた目標の磁束を決定するために、機能的な汎用固有の電磁アクチュエータが最初に選択され、後のプロセスステップで、実際に使用された電磁アクチュエータで測定された測定値にバッチ固有の動作が平均化されて適合される。それにより、電磁アクチュエータの個々の電磁的または機械的な特性が磁気基準特性に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、契約により、ばね式ブレーキのより正確な予防機能制御のためのより単純な代替方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、少なくとも1つのコイル、ならびに電機子ディスク、その上に圧縮ばねが配分されたコイルキャリア、制御モジュール、ならびに少なくとも1つの半導体部品、電流測定装置、および電圧測定装置を有する監視モジュールを備える電磁ばね式ブレーキが以下の方法ステップを実行するという点で、本発明に従って達成される。最初に、ばね式ブレーキは、制御モジュールによって電圧で制御される。次いで、監視モジュールは、電磁ばね式ブレーキにおいて状態変数の電流(I)および電圧(U)を測定する。さらなる過程の間、電磁ばね応用ブレーキのパラメータ(T;F)が監視モジュールによって決定される。このパラメータ(T;F)は、制御の開始点(12)から電機子ディスクが移動し始めるポイント(W)まで及ぶ範囲(a)にわたって合計される。電機子ディスクが移動し始めるポイント(W)において電流値が記録される。さらに、パラメータ(T;F)は、電流(I)が再び上記の値に達したときに、作動ポイントから定電流が達成されるポイントまで及ぶ範囲(b)にわたって合計される。さらなる過程では、比率(X)は、領域(a)にわたるパラメータの合計から領域(a)および(b)にわたるパラメータの合計まで計算される。比率(X)の値が所定の値(Y)に達するかまたは超えると、ばね式ブレーキの臨界運転状態に関するステータス信号が出力される。
【0006】
好ましい実施形態では、パラメータ(T)は時間である。代替の実施形態では、パラメータ(F)はリンクされた磁束である。
【0007】
好ましい実施形態では、電機子ディスクが移動し始めるポイント(W)は、以下の方法ステップによって決定される。最初に、電磁ばね式ブレーキ上の状態変数の電流(I)および/または電圧(U)が監視モジュールによって測定される。これに続いて、さらなる状態変数は、測定された状態変数の電流(I)、電圧(U)、およびコイルの抵抗値(Rs)から決定されるか、または測定された状態変数の電流(I)、電圧(U)、およびコイルの抵抗値(Rs)から導出された変数から計算され、次いで、さらなる状態変数は、ばね式ブレーキ内の電機子ディスクの移動について監視モジュールに保存されたこのさらなる状態変数の事前定義された値/過程と比較される。次いで、電機子ディスクが移動し始めるポイント(W)での電流値が特定され、出力される。
【0008】
好ましい実施形態では、測定された状態変数から導出された変数は、測定された状態変数の電流(I)および電圧(U)の同期移動平均である。
【0009】
さらに、好ましい実施形態では、さらなる状態変数はインダクタンス(L)である。代替の実施形態では、さらなる状態変数はインダクタンスの変化(dL/dt)である。さらなる代替の実施形態では、さらなる状態変数は誘導電圧(Uind)である。
【0010】
好ましい実施形態では、電磁ばね式ブレーキは、DC電圧で制御モジュールによって作動される。代替の実施形態では、電磁ばね式ブレーキは、脈動DC電圧で制御モジュールによって作動される。
【0011】
一実施形態では、ばね式ブレーキの状態についての限界値を定義する値(Y)は、50%~80%である。代替の実施形態では、値(Y)は80%~90%である。さらなる代替の実施形態では、値(Y)は90%~99%である。
【0012】
従来技術と比較した本発明の利点は、2つの領域からの比率の形成に起因して、ブレーキの残りの予備の尺度を指定することができるので、ばね式ブレーキの摩耗の程度が、予防機能制御によって既知の方法よりも正確に指定できることである。
【0013】
磁束によって摩耗を特定するときの別の利点は、電流値が増加し続けている間、磁束が飽和状態になり、それ以上増加しないので、摩耗の程度をより正確に特定できることである。
【0014】
加えて、ばね式ブレーキの連続動作では、ばね式ブレーキの加熱、電圧変動、電圧降下または電圧低下の動作、ならびに状態変数の電流および電圧の過程での関連する変化などの、他の新たな重要な動作状態を認識することができる。
【0015】
さらなる利点は、ばね式ブレーキとばね式ブレーキの内部または外部の制御との間の情報の安定した流れが可能なことである。
【0016】
本発明のさらに有利な詳細は、従属請求項から、および以下に述べられる説明および図面から明らかになる。述べられた特徴は、個別にまたは任意の組合せで本発明に不可欠であり得ることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】電磁ばね式ブレーキの動作中に行われる物理変換プロセスをブロック構造として示す図である。
【
図2】DC電圧で電磁ばね式ブレーキをオンに(解放)したときに測定された状態変数の電流(I)および電圧(U)を示す図である。
【
図3】脈動DC電圧で電磁ばね式ブレーキをオンに(解放)したときに測定された状態変数の電流(I)および電圧(U)を示す図である。
【
図4】電磁ばね式ブレーキのスイッチオンプロセス中のばね式ブレーキにおけるリンクされた磁束対電流降下の曲線を示す図である。
【
図5】電磁ばね式ブレーキのスイッチオンプロセス中のばね式ブレーキ全体の電流降下対時間の曲線を示す図である。
【
図6】脈動DC電圧での電磁ばね圧ブレーキのスイッチオンプロセス中のインダクタンスの曲線を示す図である。
【
図7】脈動DC電圧での電磁ばね式ブレーキのスイッチオンプロセス中のインダクタンスの変化の進行を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1では、少なくとも1つの電磁ばね式ブレーキがブロック構造(1)として示され、ばね式ブレーキ内の電機子ディスクの移動は、エネルギープロセスの一連の様々な物理変換(2、3、4)として記述することができる。名前付きの物理変換プロセス(2、3、4)が以下に詳述され、ばね式ブレーキ内の電機子ディスクの移動のモデルベースの記述として監視モジュールに保存される。
【0019】
電気エネルギー源からDCまたは脈動DCの形で供給された電気エネルギー(5)は、ばね式ブレーキが作動しているときに、いくつかのエネルギー変換プロセスを受ける。最初に、電磁アクチュエータとしてのブレーキは、電磁エネルギー変換器(2)として記述することができる。電気エネルギーは、電気エネルギーから磁気エネルギーへの変換(3)、および同時に位置エネルギーから運動エネルギーへの変換(4)に遭遇する。位置エネルギーの運動エネルギーへの変換は、コイルキャリアに向かう電機子ディスクの移動(解放)を介して、電磁アクチュエータ内で実施される。電機子ディスクが解放されると同時に、さらなるエネルギー変換が行われる。電機子ディスクが移動すると、運動エネルギーが位置エネルギーに変換され、この変換は、電機子ディスクが開位置に到達したときに終了する。同時に、磁気機械エネルギー変換が行われ(3)、その結果、最後の変換ステップにおいて、元の電気エネルギーがばね式ブレーキの質量ばねシステムに保存される。ブレーキが閉じると、すなわち、電機子ディスクが開位置から閉位置に移動すると、記述された物理変換プロセスが行われる。これらは遡及効力から自由ではなく、電機子ディスクの移動のモデルベースの記述に反映される。モデルベースの記述は、ばね式ブレーキ内の電機子ディスクの移動に対応する事前定義された値を含む。
【0020】
モデルベースの記述は、電流(I)もしく電圧(U)などの状態変数、または特にインダクタンス、インダクタンスの変化、もしくは誘導電圧などの状態変数から導出された変数の値および進行を含む。ばね式ブレーキ内の電機子ディスクの移動のモデルベースの記述からの様々な事前定義値は、電磁ばね式ブレーキの様々な動作状態に関連する。
【0021】
ばね式ブレーキの様々な動作状態が以下に記載される。動作の開始時、または電磁ばね式ブレーキを開くために、これはオンにされる、すなわち、電圧(脈動DCまたはDC)が供給される。十分な電圧供給の結果として、電機子ディスクは閉じた(印加された)位置から開いた(解放された)位置に移動する。次いで、ばね式ブレーキは開動作状態に入る。動作の終了時または電磁ばね式ブレーキを閉じる(ブレーキをかける)と、電源が遮断される、すなわち、ばね式ブレーキは電圧(ACまたはDC)が供給されないか、または十分に供給されない。電源が不足しているかまたは不十分な結果として、電機子ディスクが開位置から閉位置に移動する。次いで、ばね式ブレーキは閉動作状態に入る。さらに、ばね式ブレーキは、特に減衰ばね式ブレーキの場合、部分印加の動作状態を含むことができる。ここで、電機子ディスクは、電機子ディスクがばね式ブレーキ内の開位置と閉位置との間をゆっくりと移動する程度の電圧が供給される。電圧供給に応じて、電機子ディスクはゆっくりと上方または下方に移動する。
【0022】
ばね式ブレーキの可能な動作状態に関する電機子ディスクの移動のモデルベースの記述は、監視モジュールに保存される。監視モジュールは、少なくとも1つの半導体部品、特にマイクロプロセッサ、ならびに少なくとも1つの電流測定装置および/または電圧測定装置を備える。
【0023】
少なくとも1つのばね式ブレーキおよび監視モジュールに接続された制御モジュールにより、ばね式ブレーキに動作状態を与え、動作状態に対応する電圧を供給することができる。
【0024】
図2は、電磁ばね式ブレーキがDC電圧でオンにされたときの例示的な電流(6)および電圧(7)の曲線を示す。この場合、ばね式ブレーキは制御モジュールを介して電圧で作動し、達成されるべき動作状態、この場合は開動作状態を指定することができる。少なくとも1つのばね式ブレーキに適切なDC電圧を印加した結果として、電流は指数関数に従って増加する。電機子ディスクがコイルキャリアに向かって移動するまで、電気エネルギーの上述された物理変換プロセスが進行するとすぐに、この移動は、特に状態変数の電流(6)にも反映される。
図2に示されたように、電機子ディスクの移動により、状態変数の電流(6)の曲線が特徴的に低下する。この特徴的な低下に続いて、開動作状態に到達した後に定電流値に到達するまで、誘導スイッチオンプロセスの指数関数に従って、電機子ディスクの移動中に電流が再び上昇する。
【0025】
図3は、電磁ばね圧ブレーキがブリッジ整流器を有する(主電源)ACでオンにされたときの例示的な電流(8)および電圧(9)の曲線を示す。ここで、電圧曲線(9)は脈動DC電圧を示し、電流曲線(8)は上昇曲線を示し、この曲線は波構造によってオーバーレイされている。加えて、測定された状態変数の電流(10)および電圧(11)についての同期移動平均値が、誘導変数として
図3に示されている。この文脈での同期移動平均は、測定された電流値および電圧値の移動平均の長さが設定され、現場で一般的な入力電圧の主電源周波数の半周期の整数倍に同期することを意味する。詳細には、移動平均値は、50Hzまたは60Hzの一般的な主電源周波数に同期する。加えて、同期移動平均の代わりに、同等の高次フィルタリング方法を代替として使用することができる。
【0026】
図4では、リンクされた磁束(13)の曲線が、ブレーキに印加された電流に対してプロットされ、具体的には、
図2に示されたように、DC電圧でのばね式ブレーキの制御(12)についてプロットされている。この場合、リンクされた磁束は、電流が増加するにつれて、作動の開始点から着実に増加する。電流(I)の増加に伴うリンクされた磁束のこの着実な増加は、ばね式ブレーキ内の電機子ディスクの移動が始まるポイント(W)まで維持される。このポイント(W)に、監視モジュールによって測定されたた電流値を割り当てることができる。電磁ばね式ブレーキ内の電機子ディスクの移動の開始に続いて、電流は大幅に低下し、リンクされた磁束は増加し続ける。電機子ディスクの移動のさらなる過程では、リンクされた磁束が増加し続けるにつれて電流が再び増加し、ポイント(W)で測定された電流値に再び到達する。これに続いて、リンクされた磁束は、電流の一定値まで、電流とともに着実に増加する。磁束は飽和状態になり、それは、電流がさらに増加しても、リンクされた磁束はほぼ一定のままであることを意味する。達成される定電流値は、コイルの印加電圧および抵抗(Rs)に起因する。ばね式ブレーキの機能を決定するために、パラメータのリンクされた磁束(F)が領域(a)および領域(b)において合計される。領域(a)の場合、合計は、作動の開始点から電機子ディスクが移動するポイント(W)までである。ポイント(W)において、電機子ディスクが移動し始めるときの関連する電流値が監視モジュールによって記録される。
【0027】
領域(b)の場合、パラメータのリンクされた磁束が合計される、すなわち、電機子ディスクの移動後に電流値がポイント(W)の電流値に再び到達する制御点から、定電流が達成されるポイントまでである。
【0028】
上記で定義された範囲にわたるパラメータのリンクされた磁束の合計に続いて、範囲(a)におけるパラメータのリンクされた磁束の合計から、範囲(a)および(b)にわたるパラメータのリンクされた磁束の合計まで、比率(X)が計算される。比率(X)は、リンクされた磁束の予備がブレーキを作動させるためにどれだけ大きいかについての情報を提供する。使用されるブレーキのタイプ、詳細には、減衰または非減衰のブレーキに応じて、またはブレーキサイズに応じて、値(Y)が監視モジュールに保存され、この値(Y)に比率(X)の値が到達または超過するとステータス信号が発行される。このステータス信号は、ブレーキの摩耗限界値に達したかもしくは超えたこと、かつ/または必要に応じて、ばね式ブレーキの保守もしくは交換が迅速に実行されるべきことを示す。したがって、本明細書に提示されたこの方法は、脈動DC電圧でばね式ブレーキを制御するためにも使用することができる。
【0029】
図5では、ばね式ブレーキがオンにされているとき、具体的には、
図2に示されたようにDC電圧でばね式ブレーキを制御する間の時間に対して電流の曲線(14)がプロットされる。電流(I)は、作動の開始点から時間の経過とともに着実に増加する。経時的な電流のこの着実な増加は、ばね式ブレーキ内の電機子ディスクが移動し始めるポイント(W)まで維持される。このポイント(W)に、監視モジュールによって測定されたた電流値を割り当てることができる。電磁ばね式ブレーキ内の電機子ディスクの移動の開始に続いて、電流は時間の経過とともに大幅に低下する。電機子ディスク移動が経時的に続くにつれて、電流は再び増加し、ポイント(W)で決定された電流値に再び到達する。さらなる時間の経過とともに、電流は一定の電流値まで着実に増加する。達成される定電流値は、コイルの印加電圧および抵抗(Rs)に起因する。
【0030】
ばね式ブレーキの機能を決定するために、パラメータの時間(T)が領域(a)および領域(b)においてそれに応じて合計される。領域(a)の場合、合計は、作動の開始点(12)から電機子ディスクが移動するポイント(W)までである。電機子ディスクが移動し始めるポイント(W)において関連する電流値が記録される。領域(b)の場合、パラメータの時間は、電機子ディスク後の電流値がポイント(W)の電流値に戻った制御点から、定電流が達成されるポイントまで合計される。
【0031】
上記で定義された領域(a)および(b)にわたるパラメータの時間の合計に続いて、領域(a)にわたるパラメータの時間の合計対領域(a)および(b)にわたるパラメータの時間の合計として比率(X)が計算される。比率(X)は、ばね式ブレーキを解放するための残りの予備に関する情報を提供する。使用されるブレーキのタイプ、詳細には、減衰または非減衰のブレーキに応じて、またはブレーキグループに応じて、値(Y)が監視モジュールに保存され、この値(Y)に比率(X)の値が到達または超過するとステータス信号が発行される。この状態信号は、ブレーキの臨界運転状態の限界値に到達もしくは超過したこと、および/または必要に応じてばね式ブレーキの保守もしくは交換が迅速に実行されるべきことを示す。したがって、本明細書に提示されたこの方法は、脈動DC電圧でばね応用ブレーキを制御するためにも使用することができる。
【0032】
図6では、インダクタンスの曲線(15)が、
図3による脈動DCでのスイッチオンプロセス中の電機子ディスクの移動中の例として示される。第1の実施形態では、電機子ディスクの移動の開始は、インダクタンスの曲線に基づいて決定することができる。インダクタンスは、電流および電圧の同期移動平均ならびにコイルの抵抗値(Rs)から計算された。
【0033】
電源を入れた直後、インダクタンス(L)は最初に急激に増加し、その後インダクタンスはほぼプラトーに達する。このプラトーの間に、電気エネルギーの上述された物理変換プロセスは、インダクタンスの過程における閉状態から開状態への電機子ディスクの移動が、インダクタンス(16)の新たな増加から認識され得るまで進行する。インダクタンスのこの新たな増加に続いて、インダクタンス(15)は、さらなる過程でほぼ一定の値に減少する。好ましくは、リンクされた磁束Ψ=ΣUINDは、インダクタンス(L)を計算するために決定することができる。ブレーキはインダクタンスおよびオーム抵抗の直列接続と見なされるべきであり、印加電圧Uによって誘導された電圧UINDは、コイルのオーム抵抗の両端で降下する電圧値URSによって減少するので、誘導電圧はUIND=U-URSである。ここで、立ち下がり電圧はURS=I・Rであり、RRSはコイルの抵抗値(Rs)である。インダクタンスLは、次いで、L=Ψ/Iの関係から生じる。したがって、ここに提示されたこの方法は、DCでばね式ブレーキを制御するためにも使用することができる。本発明のさらなる実施形態では、電機子ディスクの移動の開始は、インダクタンスの変化(dL/dt)に基づいて決定することができる。
【0034】
図7は、
図6からのインダクタンスの曲線からの時間(17)に対する導関数としてのインダクタンスの変化を示す。(主電源)AC電圧の印加の結果として、インダクタンスの変化(dL/dt)は、最大の正の値(グローバル最大値)まで急速に増加し、次いで再び減少する。この降下の間、電機子ディスクがコイルキャリアに向かって移動するまで、電気エネルギーの上述された物理変換プロセスが進行する。電機子ディスクの移動の開始は、インダクタンスの変化の曲線の転換点(19)に割り当てられる。この転換点は、
図4および
図5の曲線のポイント(W)に対応する。この転換点(19)に電流値を割り当てることができ、この転換点は、ブレーキの予防機能制御を実行できるようにするために、上述された方法で使用される。電機子ディスクの移動は、増加によるインダクタンスの変化(dL/dt)(17)のさらなる過程に反映される。この極大値(18)は、電機子ディスクの移動を反映する。その後、一定値に留まるために、電機子ディスクの移動中にインダクタンスの変化が低下する。電機子ディスクの移動の開始時の電流値を決定するために本明細書に提示されたこの方法は、DCでばね式ブレーキを制御するためにも使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ブロック構造としてのばね式ブレーキ
2 電磁エネルギー変換器
3 磁気機械エネルギー変換器
4 位置エネルギーおよび運動エネルギー
5 エネルギー源
6 電流曲線-DCスイッチオン
7 電圧曲線-DCスイッチオン
8 電流曲線-脈動DCスイッチオン
9 電圧曲線-脈動DCスイッチオン
10 同期移動平均電流
11 同期移動平均電圧
12 制御の開始点
13 リンクされた磁束
14 電流の曲線
15 インダクタンスの曲線
16 電機子ディスクが移動したときのインダクタンスの変化
17 経時的なインダクタンスの変化(dL/dt)の曲線
18 インダクタンスの変化の曲線の極大値
19 インダクタンスの変化の曲線の変曲点
I 電流
U 電圧
a 領域a
b 領域b
T パラメータの時間
F パラメータのリンクされた磁束
W 電機子ディスクの移動の開始
Rs コイルの抵抗
X 比率の値
Y 規定値
L インダクタンス
【国際調査報告】