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特表2022-512635TFPIアンタゴニストのための投薬レジメン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】TFPIアンタゴニストのための投薬レジメン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220131BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 38/37 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/195 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 16/36 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61P7/04
A61K39/395 N
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K38/37
A61K38/36
A61K31/195
C12N15/13 ZNA
C07K16/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519121
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(85)【翻訳文提出日】2021-05-25
(86)【国際出願番号】 IB2019058597
(87)【国際公開番号】W WO2020075083
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】62/744,481
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/802,401
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】トン チュー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン アーキン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー エイチ.カーディナル
(72)【発明者】
【氏名】チャイ ニー リム
(72)【発明者】
【氏名】サチャプラカシュ ナヤック
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084DC14
4C084DC15
4C084DC16
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA531
4C084ZA532
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG04
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA01
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA86
4C206NA05
4C206ZA54
4C206ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA24
4H045FA74
(57)【要約】
抗TFPI抗体を使用する、凝固障害の処置のための投与レジメンが提供される。本方法は、初回用量が約50mg~500mgの抗TFPI抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与することを含む。
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象における出血時間を短縮する方法であって、初回用量が約50mg~約500mgの、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記エピトープが、配列番号2の番号付けに従った残基Ile105、Arg107、およびLeu131を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
初回用量が、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、および約500mgからなる群から選択される、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
1つまたは複数の後続用量の抗体またはその抗原結合断片を対象に投与することをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
1つまたは複数の後続用量が、初回用量とほぼ同一の、初回用量よりも少ない、または初回用量よりも多い量で投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、および約500mgからなる群から選択される、請求項4から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が約150mgである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が約300mgである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が約450mgである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
初回用量が約300mgであり、後続用量が約150mgである、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
初回用量が約150mgであり、後続用量が、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、または約450mgまで増大される、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
初回用量が約300mgであり、後続用量が、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、または約450mgまで増大される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
後続用量が、初回用量の後、1日に1回、3日に1回、6日に1回、週に2回、週に1回(毎週)、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、または8週間に1回投与される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
後続用量が、初回用量の約1週間後に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
抗体またはその抗原結合断片が皮下投与される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記エピトープが、配列番号2の番号付けに従った残基Cys106、Gly108、Cys130、Leu131、およびGly132をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記エピトープが、配列番号2の番号付けに従ったAsp102、Arg112、Tyr127、Gly129、Met134、およびGlu138をさらに含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
抗体またはその抗原結合断片が、
(i)(a)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)相補性決定領域1(CDR-H1)、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域2(CDR-H2)、および
(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域3(CDR-H3)
を含むVH、ならびに
(ii)(a)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)相補性決定領域1(CDR-L1)、
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域2(CDR-L2)、および
(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域3(CDR-L3)
を含むVL
を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
抗体またはその抗原結合断片が、配列番号18のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
抗体またはその抗原結合断片が、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
血友病(例えば、血友病A、B、またはC)を処置するための方法であって、300mgの初回用量の、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与し、その後、150mgの後続用量の前記抗体またはその抗原結合断片を投与することを含み、後続用量が週に1回(毎週)投与され、抗体が、(i)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖、および(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、方法。
【請求項22】
血友病(例えば、血友病AまたはB)を処置するための方法であって、300mgの毎週(週に1回の)用量の、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与することを含み、抗体が、(i)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖、および(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、方法。
【請求項23】
抗体またはその抗原結合断片が、以下の特徴:(i)少なくとも25時間の半減期、(ii)約5×10-7M~約5×10-11Mの結合親和性(K)、および/または(iii)静脈内での生物学的利用能と比較して少なくとも10%の皮下(SC)での生物学的利用能、の1つまたは複数を有する、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
対象が、血液凝固の欠陥に罹患しているかまたはそれに罹患しやすい、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
対象が、血友病AまたはBに罹患しているかまたはそれに罹患しやすい、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
抗体またはその抗原結合断片の投与が、(i)血漿ベースの希釈プロトロンビン時間(dPT)アッセイにおいて測定される凝血時間を短縮させる、(ii)トロンボエラストグラフィーまたはローテーショナルトロンボエラストメトリーによって測定される、全血における凝血時間を低減させる、(iii)トロンビン生成を増大させる、(iv)TFPIの存在下でのFXa活性を増大させる、(v)TFPIの存在下での血小板集積を増強させる、(vi)D-ダイマーによって測定される、TFPIの存在下でのフィブリン生成を増大させる、(vii)プロトロンビン断片1+2のレベルを増大させる、または(viii)これらのあらゆる組み合わせである、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
抗体またはその抗原結合断片の投与が、正常な止血活性の少なくとも5%を達成するために十分である、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
抗体またはその抗原結合断片の投与が、凝固障害を有する対象で見られる年間出血回数(ABR)と比較して、ABRの少なくとも20%の低減をもたらす、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
凝血剤を対象に投与することをさらに含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
凝血剤が、因子VIIa、因子VIII、因子IX、トラネキサム酸、およびバイパス剤(例えばFEIBA)からなる群から選択される、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
それを必要とする血友病対象における年間出血回数(ABR)を低減させる方法であって、治療有効量のTFPIアンタゴニスト抗体を投与することを含み、投与後のABRが、投与前の前記対象におけるABRと比較して少なくとも80%低減する、方法。
【請求項32】
投与前の前記対象におけるABRと比較した、投与後のABRの低減パーセントが、
a)反復して300mgの量が投与される場合の、前記抗体を前記対象に投与する前のABRと比較して82%のABRの低減、
b)反復して300mg、次いで150mgの量が投与される場合の、前記抗体を前記対象に投与する前のABRと比較して90%のABRの低減、
c)反復して450mgの量が投与される場合の、前記抗体を前記対象に投与する前のABRと比較して80%のABRの低減、および
d)反復して300mgの量が投与される場合、さらに、対象が、血友病Aおよびヒト因子VIIIに対する阻害抗体を有する、または血友病Bおよびヒト因子IXに対する阻害抗体を有する場合の、前記抗体を前記対象に投与する前のABRと比較して96%のABRの低減
からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
反復原則が週に1回(QW)である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
抗体が皮下(SC)投与または静脈内(IV)投与される、請求項31から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
抗体がSC投与される、請求項31から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
投与前の平均ABRが、1年当たり少なくとも23回の出血であり、投与後のABRが、1年当たり4.2回以下の出血である、請求項32(a)に記載の方法。
【請求項37】
投与前の平均ABRが、1年当たり少なくとも14回の出血であり、投与後のABRが、1年当たり1.5回以下の出血である、請求項32(b)に記載の方法。
【請求項38】
投与前の平均ABRが、1年当たり少なくとも20回の出血であり、投与後のABRが、1年当たり4.2回以下の出血である、請求項32(c)に記載の方法。
【請求項39】
投与前の平均ABRが、1年当たり少なくとも17回の出血であり、投与後のABRが、1年当たり0.7回以下の出血である、請求項32(d)に記載の方法。
【請求項40】
投与後の年間出血回数(ABR)が、ABRの従来的標準と比較して少なくとも85%低減する、治療有効量のTFPIアンタゴニスト抗体を投与することを含む、それを必要とする血友病対象におけるABRを低減させる方法。
【請求項41】
従来的標準のABRと比較した、投与後のABRの低減パーセントが、
a)反復して300mgの量が投与される場合の、従来的標準のABRと比較して85%のABRの低減、
b)反復して300mg、次いで150mgの量が投与される場合の、従来的標準のABRと比較して95%のABRの低減、
c)反復して450mgの量が投与される場合の、従来的標準のABRと比較して85%のABRの低減、および
d)反復して300mgの量が投与される場合、さらに、対象が、血友病Aおよびヒト因子VIIIに対する阻害抗体を有する、または血友病Bおよびヒト因子IXに対する阻害抗体を有する場合の、従来的標準のABRと比較して98%のABRの低減
からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
従来的標準のABRが、1年当たり少なくとも27回の出血である、請求項40から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
反復原則が週に1回(QW)である、請求項41から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
抗体が皮下(SC)投与または静脈内(IV)投与される、請求項40から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
抗体がSC投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
抗体が、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む、請求項30から45のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年2月7日に出願された米国仮出願第62/802,401号、および2018年10月11日に出願された米国仮出願第62/744,481号の利益を請求するものであり、これらの出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
本願は、EFS-Webを介して電子出願されており、電子的に提出されたテキストフォーマットの配列表を含む。テキストファイルは、2019年8月12日に作成され、42589バイトのサイズを有する、「PC72450A_Sequence_Listing_ST25.txt」というタイトルの配列表を含む。このテキストファイルに含まれる配列表は、本明細書の一部であり、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
本発明は、TFPIアンタゴニスト抗体の投薬レジメンに関する。
【背景技術】
【0004】
血友病AおよびBは、それぞれ血漿タンパク質因子VIII(FVIII)または因子IX(FIX)の機能的欠陥の結果生じる、X連鎖遺伝病である。血友病の臨床的重症度は、残っている凝血因子活性レベルに関連する。<1%の因子活性は、重度の表現型に関連し、中程度の血友病は、2%~5%の因子活性と関連し、そして、軽度の血友病は、5%~40%の因子活性と関連する。本願は、2017年6月2日に出願された米国仮出願第62/514,242号、および2018年4月26日に出願された米国仮出願第62/663,082号の利益を請求するものであり、これらの出願は、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0005】
これらの障害のための標準治療は、失われた凝固因子を、静脈内注入を介して代替することである。代替因子は一般に、Xyntha(因子VIII)またはBeneFIX(FIX)などの組換えタンパク質であるが、様々な純度の血漿由来生成物が依然として使用されている。効果的な予防的処置には、各週3~4回の因子の静脈内注射が必要であり、これは、コンプライアンスにおける困難性をもたらし、クオリティーオブライフを低減させる。処置のコストもまた、凝固因子の製造が複雑であることに起因して、高価である。さらに、重度の血友病Aを有する患者の最大32%という非常に多くの患者が、投与された因子に対する中和抗体を発現し、これらの抗体は、これらの遺伝子に突然変異を有する患者によって異種タンパク質とみなされる。これらの患者には、代替手段である、バイパス因子である因子VIIa(NovoSeven)などの処置が必要である。
【0006】
治療法に代わるアプローチは、代替因子に対する要求を、無傷の外因性経路を強化することによって回避することである。血友病患者は、患者自身の無傷の外因性経路を介して出血を止める能力をある程度有する。しかし、これは、大量出血を止めるためまたは特発性出血を予防するためには十分ではない。外因性経路は、組織因子経路インヒビター(TFPI)によってすぐに閉ざされてしまうため、防御をもたらすには不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
WO2017/029583は、TFPIアンタゴニスト抗体およびその使用を開示しており、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。少ない投与頻度で効果的な予防的防御をもたらし、代替的な送達経路(例えば皮下)を可能にする、TFPIアンタゴニスト抗体のための投薬レジメンを同定するための、未だ満たされていない大きな要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において、組織因子経路インヒビター(TFPI)に結合する抗体(およびその抗原結合断片)のための投与レジメンが開示され、例示されている。当業者には、本明細書において記載される本発明の具体的な実施形態に対する多くの同等物が認識されるか、または、通常の試験を使用すれば明らかとなり得る。このような同等物は、以下の実施形態(E)に包含されるものである。
【0009】
E1.出血時間を短縮する方法であって、初回用量が約50mg~約500mgの、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与することを含み、前記エピトープが、配列番号2の番号付けに従った残基Ile105、Arg107、およびLeu131を含む、方法。
【0010】
E2.血液凝固の欠陥または出血障害を処置または予防する方法であって、初回用量が約50mg~約500mgの、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与することを含み、前記エピトープが、配列番号2の番号付けに従った残基Ile105、Arg107、およびLeu131を含む、方法。
【0011】
E3.血友病A、B、またはCを処置または予防する方法であって、初回用量が約50mg~約500mgの、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与することを含み、前記エピトープが、配列番号2の番号付けに従った残基Ile105、Arg107、およびLeu131を含む、方法。
【0012】
E4.フォン・ヴィレブランド病(vWD)を処置または予防する方法であって、初回用量が約50mg~約500mgの、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与することを含み、前記エピトープが、配列番号2の番号付けに従った残基Ile105、Arg107、およびLeu131を含む、方法。
【0013】
E5.TFPIの活性を低減させるための方法であって、初回用量が約50mg~約500mgの、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与することを含み、前記エピトープが、配列番号2の番号付けに従った残基Ile105、Arg107、およびLeu131を含む、方法。
【0014】
E6.初回用量が、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、および約500mgからなる群から選択される、E1~E5のいずれか一つに示される方法。
【0015】
E7.初回用量が、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、および500mgからなる群から選択される、E1~E6のいずれか一つに示される方法。
【0016】
E8.初回用量が、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、および約450mgからなる群から選択される、E1~E7のいずれか一つに示される方法。
【0017】
E9.初回用量が、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、および約450mgからなる群から選択される、E1~E8のいずれか一つに示される方法。
【0018】
E10.初回用量が約150mgである、E1~E9のいずれか一つに示される方法。
【0019】
E11.初回用量が約200mgである、E1~E9のいずれか一つに示される方法。
【0020】
E12.初回用量が約250mgである、E1~E9のいずれか一つに示される方法。
【0021】
E13.初回用量が約300mgである、E1~E9のいずれか一つに示される方法。
【0022】
E14.初回用量が300mgである、E1~E9のいずれか一つに示される方法。
【0023】
E15.初回用量が約350mgである、E1~E9のいずれか一つに示される方法。
【0024】
E16.初回用量が約400mgである、E1~E9のいずれか一つに示される方法。
【0025】
E17.初回用量が約450mgである、E1~E9のいずれか一つに示される方法。
【0026】
E18. 1つまたは複数の後続用量の抗体またはその抗原結合断片を対象に投与することをさらに含む、E1~E16のいずれか一つに示される方法。
【0027】
E19. 1つまたは複数の後続用量が、初回用量とほぼ同一の、初回用量よりも少ない、または初回用量よりも多い量で投与される、E18に示される方法。
【0028】
E20. 1つまたは複数の後続用量が、初回用量とほぼ同一の量で投与される、E19に示される方法。
【0029】
E21.初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、および約500mgからなる群から選択される、E18~E20のいずれか一つに示される方法。
【0030】
E22.初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、および500mgからなる群から選択される、E18~E20のいずれか一つに示される方法。
【0031】
E23.初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、および約450mgからなる群から選択される、E18~E22のいずれか一つに示される方法。
【0032】
E24.初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、および約450mgからなる群から選択される、E18~E23のいずれか一つに示される方法。
【0033】
E25.初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が約150mgである、E24に示される方法。
【0034】
E26.初回用量および後続用量の両方が約150mgである、E25に示される方法。
【0035】
E27.初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が約200mgである、E24に示される方法。
【0036】
E28.初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が約250mgである、E24に示される方法。
【0037】
E29.初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が約300mgである、E24に示される方法。
【0038】
E30.初回用量および後続用量の両方が約300mgである、E29に示される方法。
【0039】
E31.初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が約350mgである、E24に示される方法。
【0040】
E32.初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が約400mgである、E24に示される方法。
【0041】
E33.初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が約450mgである、E24に示される方法。
【0042】
E34.後続用量が、初回用量よりも少ない量で投与される、E19に示される方法。
【0043】
E35.後続用量が初回用量の約3分の2である、E34に示される方法。
【0044】
E36.初回用量が約450mgであり、後続用量が約300mgである、E35に示される方法。
【0045】
E37.初回用量が約300mgであり、後続用量が約200mgである、E35に示される方法。
【0046】
E38.初回用量が約150mgであり、後続用量が約100mgである、E35に示される方法。
【0047】
E39. 1つまたは複数の後続用量が、初回用量の約2分の1である、E34に示される方法。
【0048】
E40.初回用量が約400mgであり、後続用量が約200mgである、E39に示される方法。
【0049】
E41.初回用量が約300mgであり、後続用量が約150mgである、E39に示される方法。
【0050】
E42.初回用量が300mgであり、後続用量が150mgである、E39に示される方法。
【0051】
E43.初回用量が約200mgであり、後続用量が約100mgである、E39に示される方法。
【0052】
E44.初回用量が約150mgであり、後続用量が約75mgである、E30に示される方法。
【0053】
E45.後続用量が初回用量の約3分の1である、E34に示される方法。
【0054】
E46.初回用量が約450mgであり、後続用量が約150mgである、E45に示される方法。
【0055】
E47.初回用量が約300mgであり、後続用量が約100mgである、E45に示される方法。
【0056】
E48.初回用量が約150mgであり、後続用量が約50mgである、E45に示される方法。
【0057】
E49.初回用量が約300mgであり、後続用量が約75mgである、E34に示される方法。
【0058】
E50. 1つまたは複数の後続用量が、初回用量よりも多い量で投与される、E19に示される方法。
【0059】
E51. 1つまたは複数の後続用量が、初回用量の2倍である、E50に示される方法。
【0060】
E52.初回用量が約75mgであり、後続用量が約150mgである、E51に示される方法。
【0061】
E53.初回用量が約100mgであり、後続用量が約200mgである、E51に示される方法。
【0062】
E54.初回用量が約125mgであり、後続用量が約250mgである、E51に示される方法。
【0063】
E55.初回用量が約150mgであり、後続用量が約300mgである、E51に示される方法。
【0064】
E56.初回用量が約200mgであり、後続用量が約400mgである、E51に示される方法。
【0065】
E57.初回用量が約225mgであり、後続用量が約450mgである、E51に示される方法。
【0066】
E58.初回用量が約150mgであり、後続用量が、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、または約450mgまで増大される、E50に示される方法。
【0067】
E59.初回用量が約300mgであり、後続用量が、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、または約450mgまで増大される、E50に示される方法。
【0068】
E60. 1つまたは複数の後続用量が、初回用量の後、1日に1回、3日に1回、6日に1回、週に2回、週に1回(毎週)、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、または8週間に1回投与される、E18~E59のいずれか一つに示される方法。
【0069】
E61. 1つまたは複数の後続用量が、初回用量の約1週間、2週間、3週間、または4週間後に投与される、E18~E60のいずれか一つに示される方法。
【0070】
E62. 1つまたは複数の後続用量が、初回用量の1週間後に投与される、E61に示される方法。
【0071】
E63. 1つまたは複数の後続用量が、初回用量の後、週に1回(毎週)投与される、E61に示される方法。
【0072】
E64.初回用量および後続用量が約150mgである、E61、E62、またはE63のいずれか一つに示される方法。
【0073】
E65.初回用量および後続用量が約300mgである、E61、E62、またはE63のいずれか一つに示される方法。
【0074】
E66.初回用量が約300mgであり、1つまたは複数の後続用量が約150mgである、E61、E62、またはE63のいずれか一つに示される方法。
【0075】
E67.初回用量が300mgであり、1つまたは複数の後続用量が150mgである、E61、E62、またはE63のいずれか一つに示される方法。
【0076】
E68.初回用量および後続用量が約450mgである、E61、E62、またはE63のいずれか一つに示される方法。
【0077】
E69.初回用量が約150mgであり、後続用量が、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、または約450mgまで増大される、E61、E62、またはE63のいずれか一つに示される方法。
【0078】
E70.初回用量が約150mgであり、後続用量が約300mgまで増大される、E61、E62、またはE63のいずれか一つに示される方法。
【0079】
E71.初回用量が約300mgであり、後続用量が、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、または約450mgまで増大される、E61、E62、またはE63のいずれか一つに示される方法。
【0080】
E72.初回用量が約300mgであり、後続用量が約400mgまで増大される、E71に示される方法。
【0081】
E73.初回用量が約300mgであり、後続用量が約425mgまで増大される、E71に示される方法。
【0082】
E74.初回用量が約300mgであり、後続用量が約450mgまで増大される、E71に示される方法。
【0083】
E75.抗体またはその抗原結合断片が皮下投与される、E1~E74のいずれか一つに示される方法。
【0084】
E76.抗体またはその抗原結合断片が静脈内または筋肉内投与される、E1~E74のいずれか一つに示される方法。
【0085】
E77.抗体またはその抗原結合断片が、TFPIのKunitzドメイン1(K1)に結合しない、E1~E76のいずれか一つに示される方法。
【0086】
E78.前記エピトープが、配列番号2の番号付けに従った残基Cys106、Gly108、Cys130、Leu131、およびGly132をさらに含む、E1~E77のいずれか一つに示される方法。
【0087】
E79.前記エピトープが、配列番号2の番号付けに従ったAsp102、Arg112、Tyr127、Gly129、Met134、およびGlu138をさらに含む、E1~E78のいずれか一つに示される方法。
【0088】
E80.前記エピトープが、配列番号2の番号付けに従ったE100、E101、P103、Y109、T111、Y113、F114、N116、Q118、Q121、C122、E123、R124、F125、K126、およびL140を含まない、E1~E79のいずれか一つに示される方法。
【0089】
E81.前記エピトープが、配列番号2の番号付けに従ったD31、D32、P34、C35、K36、E100、E101、P103、Y109、K126、およびG128を含まない、E1~E80のいずれか一つに示される方法。
【0090】
E82.抗体またはその抗原結合断片が、
(a)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)相補性決定領域1(CDR-H1)、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域2(CDR-H2)、および
(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域3(CDR-H3)
を含むVHを含む、E1~E81のいずれか一つに示される方法。
【0091】
E83.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号16、18、および20からなる群から選択されるアミノ酸配列に少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含むVHを含む、E1~E82のいずれか一つに示される方法。
【0092】
E84.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号16、18、および20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVHを含む、E1~E83のいずれか一つに示される方法。
【0093】
E85.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号16のアミノ酸配列を含むVHを含む、E1~E84のいずれか一つに示される方法。
【0094】
E86.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号18のアミノ酸配列を含むVHを含む、E1~E84のいずれか一つに示される方法。
【0095】
E87.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号20のアミノ酸配列を含むVHを含む、E1~E84のいずれか一つに示される方法。
【0096】
E88.抗体またはその抗原結合断片が、
(a)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)相補性決定領域1(CDR-L1)、
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域2(CDR-L2)、および
(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域3(CDR-L3)
を含むVLを含む、E1~E87のいずれか一つに示される方法。
【0097】
E89.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号11に少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含むVLを含む、E1~E88のいずれか一つに示される方法。
【0098】
E90.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、E1~E89のいずれか一つに示される方法。
【0099】
E91.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、E1~E90のいずれか一つに示される方法。
【0100】
E92.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、E1~E90のいずれか一つに示される方法。
【0101】
E93.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、E1~E90のいずれか一つに示される方法。
【0102】
E94.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E1~E93のいずれか一つに示される方法。
【0103】
E95.抗体またはその抗原結合断片が、
(i)(a)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)相補性決定領域1(CDR-H1)、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域2(CDR-H2)、および
(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域3(CDR-H3)
を含むVH、ならびに
(ii)(a)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)相補性決定領域1(CDR-L1)、
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域2(CDR-L2)、および
(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域3(CDR-L3)
を含むVL
を含む、E1~E81のいずれか一つに示される方法。
【0104】
E96.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号18のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、E95に示される方法。
【0105】
E97.抗体またはその抗原結合断片が、ATCC受託番号PTA-122329で寄託されているプラスミド内に存在しているインサートによってコードされているVH配列を含む、E96に示される方法。
【0106】
E98.抗体またはその抗原結合断片が、ATCC受託番号PTA-122328で寄託されているプラスミド内に存在しているインサートによってコードされているVL配列を含む、E96またはE97に示される方法。
【0107】
E99.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E96に示される方法。
【0108】
E100.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号16のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、E95に示される方法。
【0109】
E101.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E100に示される方法。
【0110】
E102.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号20のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、E95に示される方法。
【0111】
E103.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E102に示される方法。
【0112】
E104.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E1~E76のいずれか一つに示される方法。
【0113】
E105.抗体またはその抗原結合断片が、配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E1~E76のいずれか一つに示される方法。
【0114】
E106.抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも25時間、少なくとも29時間、少なくとも30時間、少なくとも35時間、少なくとも40時間、少なくとも50時間、少なくとも55時間、少なくとも60時間、少なくとも65時間、少なくとも70時間、少なくとも75時間、少なくとも80時間、少なくとも85時間、少なくとも90時間、少なくとも95時間、少なくとも100時間、少なくとも105時間、少なくとも110時間、少なくとも115時間、少なくとも120時間、または少なくとも125時間の血清半減期を有する、E1~E103のいずれか一つに示される方法。
【0115】
E107.抗体またはその抗原結合断片が、約5×10-7M~約5×10-11Mの結合親和性(K)を有する、E1~E103のいずれか一つに示される方法。
【0116】
E108.抗体またはその抗原結合断片が、静脈内での生物学的利用能と比較して少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の皮下(SC)での生物学的利用能を有する、E1~E107のいずれか一つに示される方法。
【0117】
E109.対象が、血液凝固の欠陥または出血障害に罹患しているかまたはそれに罹患しやすい、E1~E108のいずれか一つに示される方法。
【0118】
E110.対象が、血友病A、B、またはCに罹患しているかまたはそれに罹患しやすい、E1~E109のいずれか一つに示される方法。
【0119】
E111.対象が、血友病AまたはBに罹患しているかまたはそれに罹患しやすい、E1~E110のいずれか一つに示される方法。
【0120】
E112.対象が、フォン・ヴィレブランド病(vWD)に罹患しているかまたはそれに罹患しやすい、E1~E109のいずれか一つに示される方法。
【0121】
E113.対象が、血小板障害に罹患しているかまたはそれに罹患しやすい、E1~E109のいずれか一つに示される方法。
【0122】
E114.対象が、因子VIIの欠陥に罹患しているかまたはそれに罹患しやすい、E1~E109のいずれか一つに示される方法。
【0123】
E115.対象が、因子XIの欠陥に罹患しているかまたはそれに罹患しやすい、E1~E109のいずれか一つに示される方法。
【0124】
E116.抗体またはその抗原結合断片の投与が、(i)血漿ベースの希釈プロトロンビン時間(dPT)アッセイにおいて測定される凝血時間を短縮させる、(ii)トロンボエラストグラフィーもしくはローテーショナルトロンボエラストメトリーによって測定される、全血における凝血時間を低減させる、(iii)トロンビン生成を増大させる、(iv)TFPIの存在下でのFXa活性を増大させる、(v)TFPIの存在下での血小板集積を増強させる、(vi)D-ダイマーによって測定される、TFPIの存在下でのフィブリン生成を増大させる、(vii)プロトロンビン断片1+2(PF1+2)のレベルを増大させる、または(viii)これらのあらゆる組み合わせである、E1~115のいずれか一つに示される方法。
【0125】
E117.全血における凝血時間の低減が、血友病AまたはBを有するヒト対象から得られた全血を使用して判定される、E116に示される方法。
【0126】
E118.全血における凝血時間の低減が、(i)血友病Aおよびヒト因子VIIIに対する阻害抗体、または(ii)血友病Bおよびヒト因子IXに対する阻害抗体を有するヒト対象から得られた全血を使用して判定される、E117に示される方法。
【0127】
E119. dPTアッセイで測定される凝血時間の低減が、血友病AまたはBを有するヒト対象から得られた血漿を使用して判定される、E116に示される方法。
【0128】
E120. dPTアッセイで測定される凝血時間の低減が、(i)血友病Aおよびヒト因子VIIIに対する阻害抗体、または(ii)血友病Bおよびヒト因子IXに対する阻害抗体を有するヒト対象から得られた血漿を使用して判定される、E119に示される方法。
【0129】
E121.トロンビン生成の増大が、血友病AまたはBを有するヒト対象から得られた血漿を使用して判定される、E116に示される方法。
【0130】
E122.トロンビン生成の増大が、(i)血友病Aおよびヒト因子VIIIに対する阻害抗体、または(ii)血友病Bおよびヒト因子IXに対する阻害抗体を有するヒト対象から得られた血漿を使用して判定される、E121に示される方法。
【0131】
E123.抗体またはその抗原結合断片の投与が、正常な止血活性の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%を達成するために十分である、実施形態1~122のいずれか一つに示される方法。
【0132】
E124.抗体またはその抗原結合断片の投与が、凝固障害を有するコントロール対象で見られる年間出血回数(ABR)と比較して、ABRの少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、または少なくとも99%の低減をもたらす、実施形態1~123のいずれか一つに示される方法。
【0133】
E125. ABRの低減が、血友病(例えば、血友病AまたはB)を有するコントロール対象と比較される、E124に示される方法。
【0134】
E126.コントロール対象が、オンデマンドで(すなわち、突然の出血を処置する必要に応じて)、凝固置換療法で処置されている、E125に示される方法。
【0135】
E127.抗体またはその抗原結合断片の投与が、投与前の前記対象における年間出血回数(ABR)と比較して、ABRの少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、または少なくとも99%の低減をもたらす、実施形態1~126のいずれか一つに示される方法。
【0136】
E128.凝血剤を対象に投与することをさらに含む、実施形態1~127のいずれか一つに示される方法。
【0137】
E129.凝血剤が、因子VIIa、因子VIII、因子IX、トラネキサム酸、およびバイパス剤(例えばFEIBA)からなる群から選択される、E128に示される方法。
【0138】
E130.出血時間を短縮する方法であって、300mgの初回用量の、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与し、その後、150mgの後続用量の前記抗体またはその抗原結合断片を投与することを含み、後続用量が週に1回(毎週)投与され、抗体が、(i)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖、および(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、方法。
【0139】
E131.血友病(例えば、血友病AまたはB)を処置するための方法であって、300mgの初回用量の、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与し、その後、150mgの後続用量の前記抗体またはその抗原結合断片を投与することを含み、後続用量が週に1回(毎週)投与され、抗体が、(i)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖、および(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、方法。
【0140】
E132.フォン・ヴィレブランド病(vWD)を処置するための方法であって、300mgの初回用量の、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与し、その後、150mgの後続用量の前記抗体またはその抗原結合断片を投与することを含み、後続用量が週に1回(毎週)投与され、抗体が、(i)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖、および(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、方法。
【0141】
E133.出血時間を短縮する方法であって、300mgの毎週(週に1回の)用量の、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与することを含み、抗体が、(i)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖、および(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、方法。
【0142】
E134.血友病(例えば、血友病AまたはB)を処置するための方法であって、300mgの毎週(週に1回の)用量の、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与することを含み、抗体が、(i)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖、および(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、方法。
【0143】
E135.フォン・ヴィレブランド病(vWD)を処置するための方法であって、300mgの毎週(週に1回の)用量の、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与することを含み、抗体が、(i)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖、および(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、方法。
【0144】
E136.それを必要とする血友病対象における年間出血回数(ABR)を低減させる方法であって、治療有効量のTFPIアンタゴニスト抗体を投与することを含み、投与後のABRが、投与前の前記対象におけるABRと比較して少なくとも75%低減する、方法。
【0145】
E137.それを必要とする血友病対象における年間出血回数(ABR)を低減させる方法であって、治療有効量のTFPIアンタゴニスト抗体を投与することを含み、投与後のABRが、投与前の前記対象におけるABRと比較して少なくとも80%低減する、方法。
【0146】
E138.それを必要とする血友病対象における年間出血回数(ABR)を低減させる方法であって、治療有効量のTFPIアンタゴニスト抗体を投与することを含み、投与後のABRが、投与前の前記対象におけるABRと比較して少なくとも90%低減する、方法。
【0147】
E139.それを必要とする血友病対象における年間出血回数(ABR)を低減させる方法であって、治療有効量のTFPIアンタゴニスト抗体を投与することを含み、投与後のABRが、投与前の前記対象におけるABRと比較して少なくとも95%低減する、方法。
【0148】
E140.投与前の前記対象におけるABRと比較した、投与後のABRの低減パーセントが、
a)反復して300mgの量が投与される場合の、前記抗体を前記対象に投与する前のABRと比較して82%のABRの低減、
b)反復して300mg、次いで150mgの量が投与される場合の、前記抗体を前記対象に投与する前のABRと比較して90%のABRの低減、
c)反復して450mgの量が投与される場合の、前記抗体を前記対象に投与する前のABRと比較して80%のABRの低減、および
d)反復して300mgの量が投与される場合、さらに、対象が、血友病Aおよびヒト因子VIIIに対する阻害抗体を有する、または血友病Bおよびヒト因子IXに対する阻害抗体を有する場合の、前記抗体を前記対象に投与する前のABRと比較して96%のABRの低減
からなる群から選択される、E136に示される方法。
【0149】
E141.反復原則が週に1回(QW)である、E140に示される方法。
【0150】
E142.反復原則が2週間ごとに1回である、E140に示される方法。
【0151】
E143.反復原則が1日に1回(すなわち毎日)である、E140に示される方法。
【0152】
E144.抗体が皮下(SC)投与または静脈内(IV)投与される、E136~E143のいずれか一つに示される方法。
【0153】
E145.抗体がSC投与される、E144に示される方法。
【0154】
E146.投与前の平均ABRが、1年当たり少なくとも23回の出血であり、投与後のABRが、1年当たり4.2回以下の出血である、E140(a)に示される方法。
【0155】
E147.投与前の平均ABRが、1年当たり少なくとも14回の出血であり、投与後のABRが、1年当たり1.5回以下の出血である、E140(b)に示される方法。
【0156】
E148.投与前の平均ABRが、1年当たり少なくとも20回の出血であり、投与後のABRが、1年当たり4.2回以下の出血である、E140(c)に示される方法。
【0157】
E149.投与前の平均ABRが、1年当たり少なくとも17回の出血であり、投与後のABRが、1年当たり0.72回以下の出血である、E140(d)に示される方法。
【0158】
E150.投与後の年間出血回数(ABR)が、ABRの従来的標準と比較して少なくとも75%低減する、治療有効量のTFPIアンタゴニスト抗体を投与することを含む、それを必要とする血友病対象におけるABRを低減させる方法。
【0159】
E151.投与後の年間出血回数(ABR)が、ABRの従来的標準と比較して少なくとも80%低減する、治療有効量のTFPIアンタゴニスト抗体を投与することを含む、それを必要とする血友病対象におけるABRを低減させる方法。
【0160】
E152.投与後の年間出血回数(ABR)が、ABRの従来的標準と比較して少なくとも90%低減する、治療有効量のTFPIアンタゴニスト抗体を投与することを含む、それを必要とする血友病対象におけるABRを低減させる方法。
【0161】
E153.従来的標準のABRと比較した、投与後のABRの低減パーセントが、
a)反復して300mgの量が投与される場合の、従来的標準のABRと比較して85%のABRの低減、
b)反復して300mg、次いで150mgの量が投与される場合の、従来的標準のABRと比較して95%のABRの低減、および
c)反復して450mgの量が投与される場合の、従来的標準のABRと比較して85%のABRの低減、および
d)反復して300mgの量が投与される場合、さらに、対象が、血友病Aおよびヒト因子VIIIに対する阻害抗体を有する、または血友病Bおよびヒト因子IXに対する阻害抗体を有する場合の、従来的標準のABRと比較して98%のABRの低減
からなる群から選択される、E150~E152のいずれか一つに示される方法。
【0162】
E154.従来的標準のABRが、1年当たり少なくとも27回の出血である、E150~E153のいずれか一つに示される方法。
【0163】
E155.反復原則が週に1回(QW)である、E153~E154のいずれか一つに示される方法。
【0164】
E156.反復原則が2週間ごとに1回である、E153~E154のいずれか一つに示される方法。
【0165】
E157.反復原則が毎日である、E153~E154のいずれか一つに示される方法。
【0166】
E158.抗体が皮下(SC)投与または静脈内(IV)投与される、E150~E157のいずれか一つに示される方法。
【0167】
E159.抗体がSC投与される、E158に示される方法。
【0168】
E160.抗体が、TFPI-23、TFPI-106、TFPI-107、コンシズマブ(すなわちhz4F36)、2A8、および2A8-200からなる群から選択される、E139~E157のいずれか一つに示される方法。
【0169】
E161.抗体が、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む、E139~E158のいずれか一つに示される方法。
【0170】
E162.実施形態1~161のいずれか一つに示される本発明の方法における、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の使用。
【0171】
E163.実施形態1~162のいずれか一つに示される方法の使用のための、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【0172】
E164.実施形態1~163のいずれか一つに示される方法において使用するための薬剤の製造における、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片。
【0173】
E165.出血または出血障害または血液凝固の欠陥の処置または予防において使用するための、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、抗体またはその抗原結合断片が、300mgの初回用量で投与され、その後、150mgの後続用量で投与され、後続用量が週に1回(毎週)投与され、抗体が、(i)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖、および(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、抗体またはその抗原結合断片。
【0174】
E166.出血時間を短縮させるための、E164に示される抗体またはその抗原結合断片。
【0175】
E167.凝血剤との共投与、または同時投与、個別投与、もしくは連続投与のための、E165~E166のいずれか一つに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【図面の簡単な説明】
【0176】
図1】本研究(B7841002)の研究設計、重度の血友病AまたはBを有する男性における複数の皮下(SC)用量のTFPI-106の安全性、忍容性、薬物動態学(PK)、薬力学(PD)、および有効性の非盲検調査を示す略図である。
図2A
図2B
図2C】300mgのSC QW(コホート1)(図2A)、150mgのSC QWと300mgの負荷用量(コホート2)(図2B)、および450mgのSC QW(コホート3)(図2C)についての中央値および90%予測区間(PI、灰色で示される)のモデル予測と重ね合わせた、観察された血漿中TFPI-106濃度を示すグラフ表示である。
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E】用量コホートによる、時間に対する、全TFPIの中央値(図3A)、TGAピークトロンビンの中央値(図3B)、または、PF1+2(図3C)、dPT(図3D)、およびD-ダイマー(図3E)についての、ベースラインからの中央値の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0177】
1.概説
本発明は、他のTFPIアンタゴニスト抗体(例えばコンシズマブ)と比較して低い結合親和性(K)を有するTFPIアンタゴニスト抗体(例えば、PF-06741086としても知られているTFPI 106)が、その内在化率が低いこと、および半減期が長いことから、より望ましい臨床的使用を有するという、予想外の発見に関する。特に、毎日または週に2回の投与が、TFPIへの結合親和性が高い(例えば、K>5×10-11M)TFPIアンタゴニスト抗体には必要とされることとは対照的に、結合親和性が低い(例えば、約5×10-7M~約5×10-11MのK)TFPIアンタゴニスト抗体の毎週の投与が、驚くほど高い応答率をもたらすために十分であることが判定された(本明細書において開示されている表3~表4、および図3に対し、例えば、Eichler Hら(2017)Concizumab (Anti-TFPI) exposure-response modeling in patients with Hemophilia A.Blood、130(補遺1)、3672、および、Hildenら(2012)Hemostatic effect of a monoclonal antibody mAb 2021 blocking the interaction between FXa and TFPI in a rabbit hemophilia model.Blood.119.5871~8を参照されたい)。150mg(300mgの負荷用量を伴う)(コホート2)または300mg(コホート1)の典型的な抗TFPI抗体であるTFPI-106の毎週の投与は、従来的オンデマンド群(すなわち、従来的標準としても知られている、突然の出血を処置するために凝固療法で必要に応じて処置された血友病対象)において観察された年間出血回数(ABR)と比較して、ABRの95%または85%の驚くべき低減をもたらし、また、処置前のABRと比較して、ABRの90%および82%の驚くべき低減をもたらした(表3~4)。さらに、TFPI-106は、これらの対象において安全であり、忍容性が良いと考えられる。したがって、一部の態様において、本開示は、治療用抗体の、より少ない有効投薬量の投与および/またはより頻度の低い投与を可能にする、TFPIアンタゴニスト抗体のための投与レジメンを提供する。
【0178】
2.定義
「抗体」は免疫グロブリン分子であり、この免疫グロブリン分子の可変領域内に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、糖質、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合し得る。本明細書において使用される場合、用語「抗体」は、無傷のポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけではなく、あらゆるその抗原結合断片(すなわち「抗原結合部分」)または一本鎖、抗体を含む融合タンパク質、およびあらゆる他の、抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の修飾されたコンフォメーションも包含し、これとしては、例えば、限定はしないが、scFv、単一ドメイン抗体(例えば、サメおよびラクダ抗体)、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、およびビス-scFvが含まれる(例えば、HollingerおよびHudson、2005、Nature Biotechnology 23(9):1126~1136を参照されたい)。抗体としては、あらゆるクラスの抗体、例えば、IgG、IgA、またはIgM(またはこれらのサブクラス)が含まれ、抗体は、任意の特定のクラスのものである必要はない。抗体の重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを、異なるクラスに割り当てることができる。5つの主要な免疫グロブリンクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元コンフォメーションは周知である。
【0179】
抗体の「抗原結合部分」または「抗原結合断片」という用語は、本明細書において使用される場合、所与の抗原(例えばTFPI)に特異的に結合する能力を保持する無傷抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、無傷抗体の断片によって行われ得る。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、単一ドメイン抗体(dAb)断片(Wardら、1989、Nature 341:544~546)、ならびに単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。
【0180】
用語「モノクローナル抗体」(Mab)は、例えば任意の真核生物クローン、原核生物クローン、またはファージクローンを含む単一のコピーまたはクローンに由来する抗体を指し、これを生産するための方法を指すものではない。好ましくは、本発明のモノクローナル抗体は、均質なまたはほぼ均質な集団に存在する。
【0181】
「ヒト化」抗体は、非ヒト(例えばマウス)免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはこれらの断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')、もしくは抗体の他の抗原結合部分配列など)である、非ヒト抗体の形態を指す。好ましくは、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種のCDR(ドナー抗体)の残基で置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。
【0182】
本明細書において使用される場合、「ヒト抗体」は、ヒトによって生産され得る抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する、および/または、ヒト抗体を作製するための当業者に知られているもしくは本明細書において開示されている技術のいずれかを使用して作製されている、抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義には、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体が含まれる。1つのこのような例は、マウス軽鎖ポリペプチドおよびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体である。ヒト抗体は、当技術分野において知られている様々な技術を使用して生産することができる。一実施形態において、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現するファージライブラリーから選択される(Vaughanら、1996、Nature Biotechnology、14:309~314;Sheetsら、1998、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:6157~6162;HoogenboomおよびWinter、1991、J.Mol.Biol.、227:381;Marksら、1991、J.Mol.Biol.、222:581)。ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリンの遺伝子座が内在遺伝子座の位置に遺伝子導入されている動物、例えば、内在免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活化されているマウスの免疫化によっても作製することができる。このアプローチは、米国特許第5,545,807号、米国特許第5,545,806号、米国特許第5,569,825号、米国特許第5,625,126号、米国特許第5,633,425号、および米国特許第5,661,016号において記載されている。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に向けられている抗体を生産するヒトBリンパ球を不死化することによって調製することができる(このようなBリンパ球は、個体から回収することができるか、またはインビトロで免疫化されていてよい)。例えば、Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、第77頁、1985;Boernerら、1991、J.Immunol.、147(1):86~95;および米国特許第5,750,373号を参照されたい。
【0183】
抗体の「可変領域」は、単独のまたは組み合わせた、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を指す。当技術分野において知られているように、重鎖および軽鎖の可変領域は、それぞれ、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する、超可変領域としても知られている3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された、4つのフレームワーク領域(FR)からなる。特に、CDR領域外(すなわち、フレームワーク領域内)のアミノ酸残基の置換を有する、対象可変領域のバリアントが望まれる場合、適切なアミノ酸置換、好ましくは、保存的なアミノ酸置換は、対象可変領域を、対象可変領域と同一の規準的なクラスのCDR1およびCDR2配列を有する他の抗体の可変領域と比較することによって、同定することができる(ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.196(4):901~917、1987)。FRを対象CDRに隣接するように選択する場合、例えば、抗体をヒト化または最適化する場合、同一の規準的なクラスのCDR1およびCDR2配列を有する抗体のFRが好ましい。
【0184】
可変ドメインの「相補性決定領域(CDR)」は、Kabatの定義、Chothiaの定義、KabatおよびChothia両方の集積、AbMの定義、接触の定義、ならびに/もしくは立体構造の定義、または当技術分野において周知の任意のCDR決定方法に従って同定される、可変領域内のアミノ酸残基である。抗体のCDRは、Kabatらによって元々定義された超可変領域として同定され得る。例えば、Kabatら、1992、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、NIH、Washington D.C.を参照されたい。CDRの位置はまた、Chothiaらによって元々記載された構造的ループ構造として同定され得る。例えば、Chothiaら、1989、Nature 342:877~883を参照されたい。CDR同定のための他のアプローチとしては、KabatとChothiaとの間の折衷であり、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェア(現在はACCELRYS(登録商標))を使用して誘導される、「AbMの定義」、または、MacCallumら、1996、J.Mol.Biol.、262:732~745で示される、観察される抗原接触に基づく、CDRの「接触の定義」が含まれる。本明細書においてCDRの「立体構造の定義」と言及される別のアプローチにおいて、CDRの位置は、抗原結合に対してエンタルピー上の寄与をする残基として同定され得る。例えば、Makabeら、2008、Journal of Biological Chemistry、283:1156~1166を参照されたい。さらに他のCDR境界の定義は、上記のアプローチの1つに厳密に従わなくてもよいが、それでもこれらはKabat CDRの少なくとも一部分とオーバーラップし、しかし、特定の残基もしくは残基群またはさらにはCDR全体が抗原結合に著しくは影響しないという予測または実験上の所見に照らして、短くされても長くされてもよい。本明細書において使用される場合、CDRは、アプローチの組み合わせを含む、当技術分野において知られている任意のアプローチによって定義されるCDRを指し得る。本明細書において使用される方法は、これらのアプローチのいずれかに従って定義されるCDRを利用し得る。2つ以上のCDRを含む任意の所与の実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、extended、AbM、接触、および/または立体構造の定義のいずれかに従って定義され得る。
【0185】
当技術分野において知られているように、抗体の「定常領域」は、単独のまたは組み合わせた、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を指す。
【0186】
「エピトープ」は、抗体が特異的に結合する抗原(Ag)の区域または領域、例えば、抗体(Ab)と相互作用する残基を含む区域または領域を指す。エピトープは、線状または立体構造であり得る。線状エピトープにおいて、タンパク質と相互作用分子(抗体など)との間の全ての相互作用点は、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って線状で生じる。「非線状エピトープ」または「立体構造エピトープ」は、エピトープに特異的な抗体が結合する抗原性タンパク質内に不連続なポリペプチド(またはアミノ酸)を含む。用語「エピトープ」は、本明細書において使用される場合、当技術分野において周知の任意の方法によって、例えば、従来のイムノアッセイによって決定される、抗体が特異的に結合し得る抗原の一部分として定義される。あるいは、発見プロセスの間に、抗体の生成および特徴付けによって、所望のエピトープについての情報が解明され得る。この情報から、同一のエピトープへの結合について抗体を競合的にスクリーニングすることが可能となる。これを行うためのアプローチは、TFPIへの結合について互いに競合または交差競合する抗体を見つけ出すための競合研究および交差競合研究を行うことである。すなわち、抗体は、本開示の抗TFPI抗体の抗原結合部位への結合について競合するように、抗原への結合について競合する。
【0187】
エピトープに「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書において区別せずに使用される)抗体は、当技術分野において良く理解されている用語であり、このような特異的または優先的な結合を判定するための方法もまた、当技術分野において周知である。分子は、代替的な細胞または物質との反応または会合よりも頻繁に、迅速に、長い期間、および/または大きな親和性で、特定の細胞または物質と反応または会合する場合、「特異的結合」または「優先的結合」を示すと言われる。抗体は、他の物質への結合よりも大きな親和性で、親和力で、迅速に、および/または長い期間結合する場合、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。例えば、TFPIエピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、他のTFPIエピトープまたは非TFPIエピトープへの結合よりも大きな親和性で、親和力で、迅速に、および/または長い期間、このエピトープを結合する抗体である。この定義を読むことで、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)が第2の標的に特異的または優先的に結合してもしなくてもよいことも理解される。したがって、「特異的結合」または「優先的結合」は、排他的結合を必ずしも必要としない(しかし、含むことはできる)。一般に、結合への言及は優先的結合を意味するが、必ずしもそうではない。「特異的結合」または「優先的結合」としては、特異的分子を認識し、これに結合するが、サンプル中の他の分子はほとんど認識または結合しない、化合物、例えば、タンパク質、核酸、抗体、およびそれに類するものが含まれる。例えば、サンプル中の同族リガンドまたは結合パートナー(例えば、TFPIを結合する抗TFPI抗体)を認識し、これに結合するが、サンプル中の他の分子はほとんど認識または結合しない、抗体またはペプチド受容体は、その同族リガンドまたは結合パートナーに特異的に結合する。したがって、指定のアッセイ条件の下では、特定された結合部分(例えば、抗体もしくはその抗原結合部分、または受容体もしくはそのリガンド結合部分)は、特定の標的分子に優先的に結合し、試験サンプル中に存在する他の成分には多くの量では結合しない。
【0188】
目的の分子を特異的に結合する抗体またはペプチドを選択するために、様々なアッセイフォーマットを使用することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイ、免疫沈降、Biacore(商標)(GE Healthcare、Piscataway、NJ)、KinExA、蛍光活性化細胞選別(FACS)、Octet(商標)(ForteBio,Inc.、Menlo Park、CA)、およびウェスタンブロット分析が、同族リガンドまたは結合パートナーと特異的に結合する抗原または受容体もしくはそのリガンド結合部分と特異的に反応する抗体を同定するために使用され得る多くのアッセイの中に含まれる。典型的には、特異的または選択的な反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍、さらに典型的には、バックグラウンドの10倍超、さらに典型的には、バックグラウンドの50倍超、さらに典型的には、バックグラウンドの100倍超、さらに典型的には、バックグラウンドの500倍超、さらに典型的には、バックグラウンドの1000倍超、そして、さらに典型的には、バックグラウンドの10000倍超となる。また、抗体は、平衡解離定数(K)が≦7nMである場合、抗原を「特異的に結合する」と言われる。
【0189】
用語「結合親和性」は、本明細書において、2つの分子の間、例えば抗体またはその断片と抗原との間の非共有結合相互作用の強度の尺度として使用される。用語「結合親和性」は、一価の相互作用(内在性の活性)を説明するために使用される。
【0190】
一価の相互作用を介する、2つの分子の間、例えば抗体またはその断片と抗原との間の結合親和性は、解離定数(K)の決定によって定量することができる。次に、Kは、複合体の形成および解離の動態を、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)方法(Biacore)を使用して測定することによって、判定することができる。一価複合体の会合および解離に対応する速度定数は、それぞれ会合速度定数k(またはkon)および解離速度定数k(またはkoff)として言及される。Kは、方程式K=k/kを介して、kおよびkに関連する。解離定数の値は、周知の方法によって直接決定することができ、また、Caceciら(1984、Byte 9:340~362)で例えば示されているものなどの方法によって、複雑な混合物についてでさえも計算することができる。例えば、Kは、ダブルフィルターニトロセルロースフィルター結合アッセイ、例えば、WongおよびLohman(1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5428~5432)によって開示されているものを使用して、確立することができる。標的抗原に向けられた抗体などのリガンドの結合能力を評価するための他の標準的なアッセイは、当技術分野において知られており、これとしては、例えば、ELISA、ウェスタンブロット、RIA、およびフローサイトメトリー分析、ならびに本明細書の他の箇所において例示されている他のアッセイが含まれる。抗体の結合動態および結合親和性はまた、Biacore(商標)システムを例えば使用することによる表面プラズモン共鳴(SPR)、またはKinExAなどの、当技術分野において知られている標準的なアッセイによって、評価することができる。
【0191】
その標的を特異的に結合する抗体は、その標的を高い親和性で、すなわち、上記で論じたような低いKを示して結合し得、より低い親和性で他の非標的分子に結合し得る。例えば、抗体は、1×10-6M以上、さらに好ましくは1×10-5M以上、さらに好ましくは1×10-4M以上、さらに好ましくは1×10-3M以上、さらに好ましくは1×10-2M以上のKで非標的分子に結合し得る。本発明の抗体は、好ましくは、別の非TFPI分子への結合についてのその親和性よりも少なくとも2倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、または10000倍、またはそれを超える親和性で、その標的に結合し得る。
【0192】
本明細書において使用される場合、用語「組織因子経路インヒビターまたはTFPI」は、あらゆる形態のTFPI、およびTFPIの活性の少なくとも一部を保持するそのバリアントを指す。TFPIは、多価のKunitzドメインを有するプロテアーゼインヒビターである。ヒト、マウス、カニクイザル、ウサギ、およびラットのTFPIの典型的な配列が、表5で示されている。ヒトTFPIは、2つの主要な形態であるTFPI-アルファおよびTFPI-ベータを有する細胞外糖タンパク質である。276個のアミノ酸からなるグリコシル化されたタンパク質(MWは43kD)であるTFPIアルファは、TFPIの最大の形態であり、3つのKunitz様ドメイン、および基礎となるカルボキシ末端領域からなる。選択的スプライシングによってTFPI-ベータが生じ、これは、Kunitzドメイン1(K1)およびKunitzドメイン2(K2)を含むが、Kunitzドメイン3(K3)を欠いている代替的なC末端部分および基礎となる領域を含んでいる。TFPI-ベータは、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーでの翻訳後修飾を介して、細胞膜に固定される。
【0193】
TFPIの一次標的は、凝固カスケードの開始段階における鍵となる因子である、プロテアーゼ因子Xa(FXa)および因子VIIa(FVIIa)である。生化学的分析によって、K2はFXaのインヒビターであり、一方、K1はFVIIa-組織因子複合体を阻害するということが明らかにされた。K3は直接的なプロテアーゼ阻害活性を有さないと考えられるため、K3の役割は不明であるが、K3は、補因子タンパク質Sについての認識部位として作用し得る。TFPI-アルファに固有のC末端ドメインは、血小板表面上でのプロトロンビナーゼの認識に関与し得る。
【0194】
Kunitzドメイン1(K1)は、配列番号2のアミノ酸残基26~76に対応し、Kunitzドメイン2(K2)は、配列番号2の残基91~147に対応する。他のTFPIホモログ、アイソフォーム、バリアント、または断片のK1およびK2ドメインは、配列番号2に対する配列アラインメントまたは構造的アラインメントによって同定することができる。
【0195】
本開示のTFPIとしては、任意の適切な生物に由来し得るあらゆる天然の形態のTFPIが含まれる。例えば、TFPIは、ヒト、マウス、ラット、非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、またはブタのTFPIなどの、哺乳動物TFPIであり得る。ある特定の実施形態において、TFPIは、ヒトTFPIである。TFPIは、成熟形態のTFPI(すなわち、適切な細胞内で翻訳後プロセシングを受けているTFPIタンパク質)であり得る。このような成熟TFPIタンパク質は、例えばグリコシル化されていてよい。
【0196】
本開示のTFPIとしては、天然のTFPIに由来するあらゆる機能的な断片またはバリアントが含まれる。TFPIの機能的断片は、因子Xa(FXa)を阻害する能力、FVIIa-組織因子複合体の活性を阻害する能力、および/または、凝固もしくは止血の負の調節因子として機能する能力などの、TFPIの活性を保持するTFPIのあらゆる一部または部分であり得る。例えば、機能的断片は、TFPIのKunitzドメイン、例えば、K1ドメイン、K2ドメイン、またはK1ドメインおよびK2ドメインの両方を含み得る。
【0197】
機能的バリアントは、天然のTFPIと比較して1つまたは複数の突然変異を含み得、因子Xa(FXa)を阻害する能力またはFVIIa-組織因子複合体の活性を阻害する能力などの、天然のTFPIの活性を依然として保持し得る。例えば、バリアントは、配列番号1、2、3、4、5、6、または7に対して、様々な程度の配列同一性を有し得、例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、または配列番号7で示される配列に少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である。
【0198】
本発明のTPFIの断片、バリアント、アイソフォーム、およびホモログは、本明細書において記載される重要なエピトープ残基(例えば、TFPI-23およびTFPI-106抗体が使用される場合、Ile105、Arg107、およびLeu131)を維持すると予想される。加えて、TFPIは、5つ以上、8つ以上、10個以上、12個以上、または15個以上の、TFPIのK2ドメインの表面アクセス可能残基を含み得る。表面アクセス可能残基は、40%を超える相対的アクセス可能性を有する残基である。
【0199】
例えば、TFPIのK2ドメインでは(例えば、配列番号2を参照されたい)、以下のアミノ酸残基が、40%を超える相対的アクセス可能性を有する:94~95、98、100~110、118~121、123~124、131、134、138~142、および144~145。TFPIは、これらの残基の5つ以上、8つ以上、10個以上、12個以上、または15個以上を、例えば、これらの残基の5つ以上、8つ以上、10個以上、12個以上、または15個以上を含むTFPIの断片を、含み得る。
【0200】
TFPIにおける具体的なアミノ酸残基の位置は、配列番号2(ヒトTFPIα K1K2K3)に従って番号付けされている。しかし、本発明は、配列番号2に限定されない。他のTFPIホモログ、アイソフォーム、バリアント、または断片の対応する残基を、当技術分野において知られている配列アラインメントまたは構造的アラインメントに従って同定することができる。例えば、アラインメントは、手動で、または、ClustalW2もしくはデフォルトパラメータを使用する「BLAST 2 Sequences」などの周知の配列アラインメントプログラムを使用することによって、行うことができる。例えば、配列番号2のArg107は、マウスTFPI K1K2(配列番号4)のArg104に対応する。
【0201】
本明細書において使用される場合、「TFPIアンタゴニスト抗体」(交換可能に「抗TFPI抗体」と呼ばれる)は、TFPIに結合し得、TFPIの生物学的活性および/またはTFPIシグナル伝達によって仲介される下流の経路を阻害し得る抗体を指す。TFPIアンタゴニスト抗体は、リガンド結合および/またはTFPIに対する細胞応答の誘出などの、TFPIシグナル伝達によって仲介される下流の経路を含むTFPIの生物学的活性を遮断する、弱める、抑制する、または低減させる(著しい場合を含む)抗体を包含する。本発明の目的では、用語「TFPIアンタゴニスト抗体」が、これまでに同定されている用語、タイトル、および機能的状態、ならびに、TFPI自体、TFPIの生物学的活性(限定はしないが、血液凝固の何らかの態様を仲介するその能力を含む)、または生物学的活性の結果を何らかの意義のある程度で実質的になくす、低下させる、または中和するための特徴の全てを包含することが明確に理解されよう。一部の実施形態において、TFPIアンタゴニスト抗体はTFPIを結合し、組織因子(TF)/因子VIIa複合体へのTFPIの結合および/または組織因子(TF)/因子VIIa複合体の阻害を予防する。他の実施形態において、TFPI抗体はTFPIに結合し、因子XaへのTFPIの結合および/または因子Xaの阻害を予防する。TFPIアンタゴニスト抗体の例は、本明細書において提供されている。
【0202】
用語「競合する」は、抗体に関して本明細書において使用される場合、抗原への第1の抗体またはその抗原結合部分の結合が、第2の抗体またはその抗原結合部分による同一の抗原のその後の結合を低減させることを意味する。通常、第1の抗体の結合によって立体障害、立体構造の変化、または共通エピトープ(もしくはその部分)への結合が生じ、その結果、同一の抗原への第2の抗体の結合が低減する。標準的な競合アッセイは、2つの抗体が互いに競合するかどうかを判定するために使用され得る。抗体の競合についての1つの適切なアッセイは、Biacore技術の使用を伴い、これは、表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用して、典型的にはバイオセンサーシステム(BIACORE(登録商標)システムなど)を使用して、相互作用の程度を測定することができる。例えば、SPRは、1つの抗体が第2の抗体の結合を阻害する能力を判定するためのインビトロでの競合結合阻害アッセイにおいて使用することができる。抗体の競合を測定するための別のアッセイは、ELISAベースのアプローチを使用する。さらに、その競合に基づく「結合」抗体についてのハイスループットプロセスは、国際特許出願第WO2003/48731号において記載されている。競合は、1つの抗体(または断片)がTFPIへの別の抗体(または断片)の結合を低減させる場合、存在する。例えば、異なる抗体を連続的に添加する連続的結合競合アッセイを使用することができる。第1の抗体が、飽和に近い結合に達するまで添加され得る。次いで、第2の抗体が添加される。TFPIへの第2の抗体の結合が検出されない場合、または、第1の抗体の不存在下での並行アッセイ(この値は100%と設定され得る)と比較して有意に低減している(例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%の低減)場合、2つの抗体は互いに競合していると見なされる。
【0203】
本開示の抗TFPI抗体は、本明細書において記載されるTFPIへの結合について、本開示の別の抗体と競合するまたは交差競合する能力を有し得る。例えば、本開示の抗体は、本明細書において開示されている抗体が結合しているTFPIへの、またはTFPIの適切な断片もしくはバリアントへの結合について、本明細書において記載される抗体と競合または交差競合し得る。
【0204】
すなわち、第1の抗TFPI抗体がTFPIへの結合について第2の抗体と競合するが、第2の抗体がTFPIに最初に結合しているときには競合しない場合、第1の抗TFPI抗体は、第2の抗体と「競合する」と見なされる(一方向性の競合とも呼ばれる)。抗体が、どの抗体がTFPIに最初に結合しているかに関わらず別の抗体と競合する場合、抗体は、TFPIへの結合について、他の抗体と「交差競合」している。このような競合抗体または交差競合抗体は、標準的な結合アッセイにおいて、本開示の既知の抗体と競合する/交差競合するそれらの能力に基づいて同定することができる。例えば、Biacore(商標)システムを例えば使用することによるSPR、ELISAアッセイ、またはフローサイトメトリーを使用して、競合/交差競合を実証することができる。このような競合/交差競合は、2つの抗体が、同一の、オーバーラップする、または類似のエピトープに結合することを示唆し得る。
【0205】
本開示の抗TFPI抗体は、したがって、試験抗体が標的分子上の結合部位について本開示の参照抗体(例えば、TFPI-23、TFPI-106)と競合/交差競合し得るか否かを評価する結合アッセイを含む方法によって同定することができる。
【0206】
用語「処置」には、予防的および/または治療的処置が含まれる。状態の臨床的兆候の前に投与されると、処置は、予防的であると見なされる。治療的処置には、例えば、疾患の重症度の改善もしくは低減、または疾患の長さの短縮が含まれる。
【0207】
「個体」または「対象」は、哺乳動物、さらに好ましくはヒトである。哺乳動物としてはまた、限定はしないが、家畜、スポーツ用動物、ペット、霊長類(例えばサル)、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、およびラットが含まれる。
【0208】
本明細書において使用される場合、「従来的標準年間出血回数(ABR)」は、「従来的標準」(すなわちコントロール)群(また、「従来的オンデマンド」群または「オンデマンド」群とも言われる)から得られるABRである。この群は、臨床的有効性の分析での比較対照(すなわちコントロール)として使用するように構築されている。一部の実施形態において、当該群は、突然の出血を処置するために必要に応じて(すなわちオンデマンドで)凝固置換療法で処置されている血友病対象からプロスペクティブに回収されたデータを含む。一部の実施形態において、以下の臨床研究:ReFacto AF 3082B2-4432(B1831004)、BeneFIX(B1821010)、およびBeneFIX 3090A1-400(B1821004)の1つまたは複数においてオンデマンドで処置された対象から得られたデータ(すなわちABR)を使用して、従来的標準群を構築することができる。
【0209】
本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体に向けられている実施形態を含む(および記載する)。例えば、「約X」に言及する記載には、「X」についての記載が含まれる。数値範囲は、その範囲を規定する数値を含む。一般的に、用語「約」は、変数の示された値と、示された値の実験誤差内(例えば、平均の95%信頼区間内)または示された値の10パーセント以内のどちらか大きい方である、変数の全ての値とを指す。用語「約」が期間(年数、月数、週数、日数など)の文脈内で使用される場合、用語「約」は、期間プラスもしくはマイナス次の下位の期間の1倍量(例えば、約1年は11~13ヶ月を意味し、約6ヶ月は6ヶ月プラスもしくはマイナス1週間を意味し、約1週間は6~8日間を意味するなど)または示された値の10パーセント以内のどちらか大きい方を意味する。
【0210】
本発明の態様または実施形態が、マーカッシュグループまたは代替的な他のグルーピングの形式で記載されている場合、本発明は、列挙されたグループ全体を丸ごと包含するだけではなく、グループの各メンバーを個別に、および主要グループの全ての考えられるサブグループ、また、グループメンバーの1つまたは複数が欠けた主要グループも包含する。本発明はまた、特許請求の範囲に記載の発明におけるグループメンバーのうちのいずれかの1つまたは複数を明確に排除することも想定している。
【0211】
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されているものと同一の意味を有する。典型的な方法および材料が本明細書において記載されているが、本明細書において記載されるものに類似のまたは同等の方法および材料もまた、本発明の実施または試験において使用することができる。本明細書において言及される全ての刊行物および他の参考文献は、参照によってその全体が組み込まれる。一致しない場合には、定義を含み、本明細書が優先される。多くの文献が本明細書において引用されているが、この引用は、これらの文献のいずれかが当技術分野における一般的な知識の一部を形成することを承認することを意味するものではない。本明細書および特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprise)」という語または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、言及された整数または整数群を含めることを意味し、あらゆる他の整数または整数群を排除することは意味しないものと理解される。文脈により別段の定めがない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。材料、方法、および実施例は例示的なものにすぎず、限定することを意図したものではない。
【0212】
実施形態が本明細書において「含む」という言葉を用いて記載される場合は常に、「からなる」および/または「から基本的になる」という用語で記載される別の類似の実施形態もまた提供されるものと理解される。
【0213】
3.TFPI抗体の投与
本発明は、結合親和性(K)が低いTFPIアンタゴニスト抗体(例えば、TFPI 106、nM範囲のK)が、結合親和性が高い他のTFPIアンタゴニスト抗体(例えばコンシズマブ、pM範囲のK)と比較して、特に、反復注射が必要な慢性的状態(例えば血友病)の処置について、より望ましい投与レジメンで驚くほど高い応答率をもたらすという、驚くべき発見に基づく。本発明は、治療用抗体の、より少ない有効投薬量の投与および/またはより頻度の低い投与を可能にする、投与レジメンを提供する。
【0214】
したがって、一部の態様において、本発明は、出血時間を短縮する方法、血液凝固の欠陥または出血障害を処置または予防する方法、血友病A、B、またはCを処置または予防する方法、フォン・ヴィレブランド病(vWD)を処置または予防する方法、およびTFPIの活性を低減させるための方法を提供する。これらの方法は、初回用量が約50mg~約500mgの、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与することを含み、ここで、前記エピトープは、配列番号2の番号付けに従った残基Ile105、Arg107、およびLeu131を含む。
【0215】
一部の実施形態において、初回用量は、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、および約500mgからなる群から選択される。一部の実施形態において、初回用量は、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、および約450mgからなる群から選択される。一部の実施形態において、初回用量は、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、および約450mgからなる群から選択される。一部の実施形態において、初回用量は、約150mgである。一部の実施形態において、初回用量は、約200mgである。一部の実施形態において、初回用量は、約250mgである。一部の実施形態において、初回用量は、約300mgである。一部の実施形態において、初回用量は、約350mgである。一部の実施形態において、初回用量は、約400mgである。一部の実施形態において、初回用量は、約450mgである。
【0216】
一部の実施形態において、初回用量は、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、および500mgからなる群から選択される。一部の実施形態において、初回用量は、300mgである。一部の実施形態において、初回用量は、150mgである。
【0217】
一部の実施形態において、1つまたは複数の後続用量の抗体またはその抗原結合断片が、対象に投与される。1つまたは複数の後続用量は、初回用量とほぼ同一であるか、初回用量より少ないか、または初回用量より多くてよい。
【0218】
一部の実施形態において、1つまたは複数の後続用量は、初回用量とほぼ同一の量で投与される。一部の実施形態において、初回用量もしくは後続用量のいずれか、または初回用量および後続用量の両方は、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、および約500mgからなる群から選択される。一部の実施形態において、初回用量もしくは後続用量のいずれか、または初回用量および後続用量の両方は、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、および約450mgからなる群から選択される。一部の実施形態において、初回用量もしくは後続用量のいずれか、または初回用量および後続用量の両方は、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、および約450mgからなる群から選択される。一部の実施形態において、初回用量または後続用量のいずれかまたは両方は、約150mgである。一部の実施形態において、初回用量または後続用量のいずれかまたは両方は、約200mgである。一部の実施形態において、初回用量または後続用量のいずれかまたは両方は、約250mgである。一部の実施形態において、初回用量または後続用量のいずれかまたは両方は、約300mgである。一部の実施形態において、初回用量または後続用量のいずれかまたは両方は、約350mgである。一部の実施形態において、初回用量または後続用量のいずれかまたは両方は、約400mgである。一部の実施形態において、初回用量または後続用量のいずれかまたは両方は、約450mgである。一部の実施形態において、初回用量および後続用量の両方は、300mgである。一部の実施形態において、初回用量および後続用量の両方は、150mgである。
【0219】
一部の実施形態において、1つまたは複数の後続用量は、初回用量よりも少ない量で投与される。一部の実施形態において、1つまたは複数の後続用量は、初回用量の約3分の2である。一部の実施形態において、1つまたは複数の後続用量は、初回用量の約2分の1である。一部の実施形態において、1つまたは複数の後続用量は、初回用量の約3分の1である。
【0220】
一部の実施形態において、初回用量は約450mgであり、後続用量は約300mgである。一部の実施形態において、初回用量は約300mgであり、後続用量は約200mgである。一部の実施形態において、初回用量は約150mgであり、後続用量は約100mgである。一部の実施形態において、初回用量は約400mgであり、後続用量は約200mgである。一部の実施形態において、初回用量は約300mgであり、後続用量は約150mgである。一部の実施形態において、初回用量は300mgであり、後続用量は150mgである。一部の実施形態において、初回用量は約200mgであり、後続用量は約100mgである。一部の実施形態において、初回用量は約150mgであり、後続用量は約75mgである。一部の実施形態において、後続用量は、初回用量の約3分の1である。一部の実施形態において、初回用量は約450mgであり、後続用量は約150mgである。一部の実施形態において、初回用量は約300mgであり、後続用量は約100mgである。一部の実施形態において、初回用量は約150mgであり、後続用量は約50mgである。
【0221】
一部の実施形態において、1つまたは複数の後続用量は、初回用量よりも多い量で投与される。一部の実施形態において、1つまたは複数の後続用量は、初回用量の2倍である。一部の実施形態において、初回用量は約75mgであり、後続用量は約150mgである。一部の実施形態において、初回用量は約100mgであり、後続用量は約200mgである。一部の実施形態において、初回用量は約125mgであり、後続用量は約250mgである。一部の実施形態において、初回用量は約150mgであり、後続用量は約300mgである。一部の実施形態において、初回用量は約200mgであり、後続用量は約400mgである。一部の実施形態において、初回用量は約225mgであり、後続用量は約450mgである。一部の実施形態において、初回用量は約150mgであり、後続用量は、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、または約450mgまで増大される。一部の実施形態において、初回用量は約300mgであり、後続用量は、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、または約450mgまで増大される。
【0222】
4.TFPI抗体の投与間隔
本発明は、TFPIアンタゴニスト抗体の1つまたは複数の後続用量が、初回用量の後、1日に1回、3日に1回、6日に1回、週に2回、週に1回(毎週)、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、または8週間に1回投与される、実施形態を包含する。一部の実施形態において、1つまたは複数の後続用量は、初回用量の約1週間後、2週間後、3週間後、または4週間後に投与される。一部の実施形態において、1つまたは複数の後続用量は、初回用量の後、週に2回投与される。一部の実施形態において、1つまたは複数の後続用量は、初回用量の約1週間後に(すなわち、週に1回、毎週)投与される。一部の実施形態において、1つまたは複数の後続用量は、初回用量の後、2週間に1回投与される。初回用量および1つまたは複数の後続用量は、本明細書において開示されている量のいずれかから選択することができる。
【0223】
一部の実施形態において、投与レジメンは、本明細書において記載されるTFPIアンタゴニスト抗体の毎週の投与を含み、ここで、初回用量もしくは後続用量のいずれか、または初回用量および後続用量の両方は、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、および約500mgからなる群から選択される。一部の実施形態において、初回用量もしくは後続用量のいずれか、または初回用量および後続用量の両方は、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、および約450mgからなる群から選択される。一部の実施形態において、初回用量もしくは後続用量のいずれか、または初回用量および後続用量の両方は、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、および約450mgからなる群から選択される。
【0224】
一部の実施形態において、投与レジメンは、本明細書において記載されるTFPIアンタゴニスト抗体の毎週の投与を含み、ここで、初回用量および後続用量は、約150mgである。一部の実施形態において、初回用量および後続用量は、約200mgである。一部の実施形態において、初回用量および後続用量は、約250mgである。一部の実施形態において、初回用量および後続用量は、約300mgである。一部の実施形態において、初回用量は約300mgであり、後続用量は約150mgである。一部の実施形態において、初回用量および後続用量は、300mgである。一部の実施形態において、初回用量は300mgであり、後続用量は150mgである。一部の実施形態において、初回用量および後続用量は、約450mgである。一部の実施形態において、初回用量は約150mgであり、後続用量は、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、または約450mgまで増大される。一部の実施形態において、初回用量は約150mgであり、後続用量は、約300mgまで増大される。一部の実施形態において、初回用量は約300mgであり、後続用量は、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、または約450mgまで増大される。一部の実施形態において、初回用量は約300mgであり、後続用量は、約400mgまで増大される。一部の実施形態において、初回用量は約300mgであり、後続用量は、約425mgまで増大される。一部の実施形態において、初回用量は約300mgであり、後続用量は、約450mgまで増大される。
【0225】
本明細書において記載されるTFPIアンタゴニスト抗体またはその抗原結合断片は、任意の適切な経路を介して対象に投与することができる。当業者には、本明細書において記載される実施例が限定することを意図したものではないが、利用可能な技術を例示するものであることが明らかである。したがって、一部の実施形態において、TFPIアンタゴニスト抗体またはその抗原結合断片は、静脈内投与、例えばボーラスなどの、既知の方法に従って、または、皮下経路、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、経皮経路、関節内経路、舌下経路、滑液嚢内経路、吹送、髄腔内経路、経口経路、吸入、もしくは局所経路による、一定期間にわたる連続注入によって、対象に投与される。投与は、全身的、例えば静脈内投与、または局所的であり得る。抗体は、1回、少なくとも2回、または、少なくとも、状態が処置される、緩和される、もしくは治癒するまでの期間にわたり、投与してよい。抗体は通常、状態が存在している限り投与される。
【0226】
5.TFPIアンタゴニスト抗体
本発明は、全体として、TFPIアンタゴニスト抗体(すなわち、抗TFPI抗体)に、およびその使用に関する。典型的なTFPIアンタゴニスト抗体としては、限定はしないが、WO2017/029583、WO2010/017196、WO2011/109452、WO2014/144577、WO2010/072687、WO2012/001087、WO2014/140240、およびWO2015/007880において記載されているものが含まれ、これらの文献のそれぞれは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0227】
一部の実施形態において、TFPIアンタゴニスト抗体は、TFPI 106(PF-06741086としても知られている)、TFPI-23、TFPI-107、コンシズマブ(mAb-2021、hz4F36としても知られている)、2A8(例えば、US20170073428を参照されたい)、および2A8-200からなる群から選択される。
【0228】
一部の態様において、抗体またはその抗原結合断片は、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合し、ここで、エピトープは、配列番号2の番号付けに従った残基Ile105、Arg107、およびLeu131を含む。一部の実施形態において、抗TFPI抗体は、TFPIのKunitzドメイン1(K1)に結合しない。一部の実施形態において、エピトープは、配列番号2の番号付けに従った残基Cys106、Gly108、Cys130、Leu131、およびGly132をさらに含む。一部の実施形態において、エピトープは、配列番号2の番号付けに従ったAsp102、Arg112、Tyr127、Gly129、Met134、およびGlu138をさらに含む。一部の実施形態において、エピトープは、配列番号2の番号付けに従ったE100、E101、P103、Y109、T111、Y113、F114、N116、Q118、Q121、C122、E123、R124、F125、K126、およびL140を含まない。一部の実施形態において、エピトープは、配列番号2の番号付けに従ったD31、D32、P34、C35、K36、E100、E101、P103、Y109、K126、およびG128を含まない。
【0229】
一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、
(a)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)相補性決定領域1(CDR-H1)、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域2(CDR-H2)、および
(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域3(CDR-H3)
を含むVHを含む。
【0230】
一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号16、18、および20からなる群から選択されるアミノ酸配列に少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含むVHを含む。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号16、18、および20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVHを含む。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号16のアミノ酸配列を含むVHを含む。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号18のアミノ酸配列を含むVHを含む。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号20のアミノ酸配列を含むVHを含む。
【0231】
一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、
(a)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)相補性決定領域1(CDR-L1)、
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域2(CDR-L2)、および
(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域3(CDR-L3)
を含むVLを含む。
【0232】
一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号11に少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を含むVLを含む。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0233】
一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0234】
一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、
(i)(a)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および
(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3
を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに
(ii)(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L1、
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および
(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0235】
一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号18のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0236】
本発明の典型的な抗体は、2015年7月22日に、American Type Culture Collection、10801 University Boulevard、Manassas、Va.20110-2209、USAに寄託された。ATCC受託番号PTA-122329を有するプラスミドベクターmAb-TFPI-106 VHは、抗体TFPI-106の重鎖可変領域をコードするDNAインサートを含み、ATCC受託番号PTA-122328を有するプラスミドベクターmAb-TFPI-106 VLは、抗体TFPI-106の軽鎖可変領域をコードするDNAインサートを含む。
【0237】
一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号16のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0238】
一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号20のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0239】
一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0240】
一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも25時間、少なくとも29時間、少なくとも30時間、少なくとも35時間、少なくとも40時間、少なくとも50時間、少なくとも55時間、少なくとも60時間、少なくとも65時間、少なくとも70時間、少なくとも75時間、少なくとも80時間、少なくとも85時間、少なくとも90時間、少なくとも95時間、少なくとも100時間、少なくとも105時間、少なくとも110時間、少なくとも115時間、少なくとも120時間、または少なくとも125時間の血清半減期を有する。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも25時間、少なくとも29時間、または少なくとも30時間の血清半減期を有する。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも29時間の血清半減期を有する。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも30時間の血清半減期を有する。一部の実施形態において、抗体は、少なくとも115時間、少なくとも120時間、または少なくとも125時間の血清半減期を有する。
【0241】
一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、約5×10-7M~約5×10-11Mの結合親和性(K)を有する。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、約1×10-8M~約1×10-10M(0.1~10nm)のKを有する。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、K≦1nM、≦500pM、≦250pM、≦200pM、≦100pM、≦50pM、≦20pM、または≦10pMを有する。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、低いpM範囲(すなわち、≦100pM)のKを有さない。一部の態様において、Kは、表面プラズモン共鳴によって測定される。一部の態様において、表面プラズモン共鳴は、Biacoreを使用して測定され得る。一部の態様において、SPRは、捕捉された抗体および溶液相のヒトTFPIを用いてBiacoreを使用して測定され得る。
【0242】
一部の態様において、抗体または抗原結合断片の皮下での生物学的利用能は、静脈内での生物学的利用能と比較して、少なくとも10%であり得る。一部の態様において、抗体または抗原結合断片の皮下での生物学的利用能は、静脈内での生物学的利用能と比較して、少なくとも15%であり得る。一部の態様において、抗体または抗原結合断片の皮下での生物学的利用能は、静脈内での生物学的利用能と比較して、少なくとも20%であり得る。一部の態様において、抗体または抗原結合断片の皮下での生物学的利用能は、静脈内での生物学的利用能と比較して、少なくとも25%であり得る。一部の態様において、抗体または抗原結合断片の皮下での生物学的利用能は、静脈内での生物学的利用能と比較して、少なくとも27%であり得る。一部の態様において、抗体または抗原結合断片の皮下での生物学的利用能は、静脈内での生物学的利用能と比較して、少なくとも30%であり得る。一部の態様において、抗体または抗原結合断片の皮下での生物学的利用能は、静脈内での生物学的利用能と比較して、少なくとも35%であり得る。一部の態様において、抗体または抗原結合断片の皮下での生物学的利用能は、静脈内での生物学的利用能と比較して、少なくとも40%であり得る。一部の態様において、抗体または抗原結合断片の皮下での生物学的利用能は、静脈内での生物学的利用能と比較して、少なくとも50%であり得る。一部の態様において、抗体または抗原結合断片の皮下での生物学的利用能は、静脈内での生物学的利用能と比較して、少なくとも60%であり得る。一部の態様において、抗体または抗原結合断片の皮下での生物学的利用能は、静脈内での生物学的利用能と比較して、少なくとも70%であり得る。一部の態様において、抗体または抗原結合断片の皮下での生物学的利用能は、静脈内での生物学的利用能と比較して、少なくとも80%であり得る。一部の態様において、抗体または抗原結合断片の皮下での生物学的利用能は、静脈内での生物学的利用能と比較して、少なくとも90%であり得る。一部の態様において、抗体または抗原結合断片の皮下での生物学的利用能は、静脈内での生物学的利用能と比較して、少なくとも99%であり得る。
【0243】
一部の態様において、本発明の方法は、著しく増強した臨床的有用性を提供する。臨床的有用性は、奏功率と疾患進行の評価とによって評価することができる。例えば、臨床的有用性は、血漿ベースの希釈プロトロンビン時間(dPT)アッセイで凝血時間を測定することによって、トロンボエラストグラフィーもしくはローテーショナルトロンボエラストメトリーによって全血における凝血時間を測定することによって、トロンビン生成を測定することによって、TFPIの存在下でのFXa活性を測定することによって、TFPIの存在下での血小板集積を測定することによって、D-ダイマーによって測定される、TFPIの存在下でのフィブリン生成を測定することによって、プロトロンビン断片1+2のレベルを測定することによって、またはこれらのあらゆる組み合わせによって、評価することができる。本発明の抗体または抗原結合断片は、以下の臨床的有用性の1つまたは複数を有し得る:(i)血漿ベースの希釈プロトロンビン時間(dPT)アッセイにおいて測定される凝血時間を短縮させる、(ii)トロンボエラストグラフィーもしくはローテーショナルトロンボエラストメトリーによって測定される、全血における凝血時間を低減させる、(iii)トロンビン生成を増大させる、(iv)TFPIの存在下でのFXa活性を増大させる、(v)TFPIの存在下での血小板集積を増強させる、(vi)D-ダイマーによって測定される、TFPIの存在下でのフィブリン生成を増大させる、(vii)プロトロンビン断片1+2のレベルを増大させる、または(viii)これらのあらゆる組み合わせ。
【0244】
一部の実施形態において、全血における凝血時間の低減は、血友病AまたはBを有するヒト対象から得られた全血を使用して決定される。一部の実施形態において、全血における凝血時間の低減は、(i)血友病Aおよびヒト因子VIIIに対する阻害抗体、または(ii)血友病Bおよびヒト因子IXに対する阻害抗体を有するヒト対象から得られた全血を使用して決定される。
【0245】
一部の実施形態において、dPTアッセイで測定される凝血時間の低減は、血友病AまたはBを有するヒト対象から得られた血漿を使用して決定される。一部の実施形態において、dPTアッセイで測定される凝血時間の低減は、(i)血友病Aおよびヒト因子VIIIに対する阻害抗体、または(ii)血友病Bおよびヒト因子IXに対する阻害抗体を有するヒト対象から得られた血漿を使用して決定される。一部の実施形態において、トロンビン生成の増大は、血友病AまたはBを有するヒト対象から得られた血漿を使用して決定される。一部の実施形態において、トロンビン生成の増大は、(i)血友病Aおよびヒト因子VIIIに対する阻害抗体、または(ii)血友病Bおよびヒト因子IXに対する阻害抗体を有するヒト対象から得られた血漿を使用して決定される。
【0246】
一部の実施形態において、本発明の方法は、凝固障害を有するコントロール対象で見られる年間出血回数(ABR)と比較して、ABRが少なくとも20%低減することによって測定される、臨床的有用性を提供する。一部の実施形態において、ABRの低減は、血友病(例えば、血友病AまたはB)を有するコントロール対象と比較される。一部の実施形態において、血友病のコントロール対象は、凝固置換療法で処置されていない。一部の実施形態において、血友病のコントロール対象は、突然の出血を処置するために必要に応じて(すなわちオンデマンドで)凝固置換療法で処置されている。一部の実施形態において、従来的標準(すなわちオンデマンド)群は、血友病の臨床研究の間にプロスペクティブに回収されたデータを使用して構築され得る。本発明の抗体または抗原結合断片は、従来的オンデマンド群と比較して平均ABRを少なくとも20%低減させ得る。従来的標準群は、限定はしないがReFacto AF 3082B2-4432(B1831004)、BeneFIX(B1821010)、およびBeneFIX 3090A1-400(B1821004)などの血友病の臨床研究からプロスペクティブに回収されたデータを含み得る。一部の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、従来的標準群と比較してABRを少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、または少なくとも99%低減させる。一部の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、従来的標準群と比較してABRを少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、または少なくとも99%低減させる。一部の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、従来的標準群と比較してABRを少なくとも80%低減させる。一部の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、従来的標準群と比較してABRを少なくとも82%低減させる。一部の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、従来的標準群と比較してABRを少なくとも85%低減させる。一部の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、従来的標準群と比較してABRを少なくとも87%低減させる。一部の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、従来的標準群と比較してABRを少なくとも90%低減させる。一部の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、従来的標準群と比較してABRを少なくとも94%低減させる。一部の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、従来的標準群と比較してABRを少なくとも95%低減させる。一部の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合断片は、従来的標準群と比較してABRを少なくとも98%低減させる。
【0247】
一部の実施形態において、ABRの低減は、抗TFPI抗体またはその抗原結合断片での処置の前の対象におけるものと比較される。本発明の抗体または抗原結合断片は、抗TFPI抗体またはその抗原結合断片での処置の前の対象におけるABRと比較して、ABRを少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、または少なくとも99%低減させ得る。
【0248】
一部の実施形態において、TFPIアンタゴニスト抗体またはその抗原結合断片の投与前の平均ABRは、1年当たり少なくとも28回の出血、1年当たり少なくとも27.6回の出血、1年当たり少なくとも27回の出血、1年当たり少なくとも26回の出血、1年当たり少なくとも25回の出血、1年当たり少なくとも24回の出血、1年当たり少なくとも23回の出血、1年当たり少なくとも22回の出血、1年当たり少なくとも22.6回の出血、1年当たり少なくとも21回の出血、1年当たり少なくとも20回の出血、1年当たり少なくとも19回の出血、1年当たり少なくとも18回の出血、1年当たり少なくとも17回の出血、1年当たり少なくとも16回の出血、1年当たり少なくとも15回の出血、1年当たり少なくとも14回の出血、1年当たり少なくとも13回の出血、1年当たり少なくとも12回の出血、1年当たり少なくとも11回の出血、または1年当たり少なくとも10回の出血である。一部の実施形態において、TFPIアンタゴニスト抗体またはその抗原結合断片の投与前の平均ABRは、1年当たり少なくとも27回の出血、または1年当たり少なくとも23回の出血である。
【0249】
一部の実施形態において、TFPIアンタゴニスト抗体またはその抗原結合断片の投与後の平均ABRは、1年当たり5回以下の出血、1年当たり4.2回以下の出血、1年当たり4回以下の出血、1年当たり3回以下の出血、1年当たり2回以下の出血、1年当たり1.5回以下の出血、1年当たり1回以下の出血、1年当たり0.7回以下の出血、または出血なし(すなわち0回)である。
【0250】
一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも1%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも2%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも3%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも4%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも5%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも10%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも15%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも20%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも25%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも30%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも40%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも50%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも55%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも60%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも65%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも70%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも75%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも80%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも85%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも90%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも95%を達成するために十分である。一部の実施形態において、抗体または抗原結合断片の投与は、正常な止血活性の少なくとも99%を達成するために十分である。
【0251】
止血活性を測定するためのアッセイは、当技術分野において周知である(例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるWO2017/029583を参照されたい)。典型的なアッセイとしては、限定はしないが、ローテーショナルトロンボエラストグラフィー(ROTEM)、トロンビン生成アッセイ(TGA)、および希釈プロトロンビン時間(dPT)アッセイが含まれる。正常な止血活性は、健康な(非血友病)対象から得た未処置の全血または血漿の止血活性量を指す。
【0252】
6.治療的使用
治療方法は、本発明によって提供される。治療方法は、本発明の化合物または組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0253】
本発明の抗体および抗体断片の典型的な治療的使用には、それを必要とする対象における出血時間の短縮、血液凝固の欠陥または血液障害(例えば、血友病A、血友病B、血友病C、フォン・ヴィレブランド病(vWD)、因子VIIの欠陥、または因子XIの欠陥)の処置または予防、血小板減少症の処置または予防、および血小板障害(血小板の機能または数の障害)の処置または予防が含まれる。抗体および抗体断片はまた、制御されていない出血(例えば、外傷および出血性脳卒中などの適応症における、制御されていない出血)を処置するためにも使用することができる。抗体および抗体断片はまた、予防的処置(例えば、外科手術前の出血を処置または予防するため)においても使用することができる。
【0254】
特に、本明細書において記載される抗体または抗原結合断片は、凝固の欠陥もしくは不良または凝固障害を処置するために使用することができる。例えば、本明細書において記載される抗体または抗原結合断片は、TFPIとFXaとの相互作用を低減させるもしくは阻害するため、またはTF/FVIIa/FXa活性のTFPI依存性の阻害を低減させるために使用することができる。
【0255】
したがって、一部の実施形態において、対象は、例えば以下の血液凝固の欠陥または血液障害に罹患しているかまたはそれに罹患しやすい:一部の実施形態において、対象は、血友病A、B、またはCに罹患しているかまたはそれに罹患しやすい。一部の実施形態において、対象は、血友病AまたはBに罹患しているかまたはそれに罹患しやすい。一部の実施形態において、対象は、血友病Aに罹患しているかまたはそれに罹患しやすく、凝固因子VIIIに対する中和抗体(すなわちインヒビター)を有する。一部の実施形態において、対象は、血友病Bに罹患しているかまたはそれに罹患しやすく、凝固因子IXに対する中和抗体(すなわちインヒビター)を有する。一部の実施形態において、対象は、フォン・ヴィレブランド病(vWD)に罹患しているかまたはそれに罹患しやすい。一部の実施形態において、対象は、血小板障害に罹患しているかまたはそれに罹患しやすい。一部の実施形態において、対象は、因子VIIの欠陥に罹患しているかまたはそれに罹患しやすい。一部の実施形態において、対象は、因子XIの欠陥に罹患しているかまたはそれに罹患しやすい。
【0256】
本明細書において記載されるTFPIアンタゴニスト抗体または抗原結合部分は、凝血剤と組み合わせて使用することができる。本発明は、本発明の抗体と凝血剤との別個の、同時の、または連続的な投与を提供する。凝血剤の例としては、限定はしないが、因子VIIa、因子VIII、因子IX、トラネキサム酸、およびバイパス剤(例えば、抗インヒビター血液凝固複合体またはFEIBA)が含まれる。
【実施例
【0257】
本発明は、以下の実験例を参照することによって詳細にさらに記載される。これらの実施例は、説明する目的でのみ提供されており、別段の特定がない限り、限定することを意図したものではない。したがって、本発明は、以下の実施例に限定されるものであると解釈されるべきでは全くなく、むしろ、本明細書において提供される教示の結果として明らかとなる任意のおよび全ての変形を包含すると解釈されるべきである。
【0258】
(実施例1)
研究設計
重度の血友病AまたはBを有する男性(B7841002)における、TFPI-106(すなわち、PF-06741086)の安全性、忍容性、PK、PD、および複数のSC用量の有効性の非盲検研究を設計した。
【0259】
さらに具体的には、複数の用量コホートが登録され、用量増量研究を、300mgの皮下(SC)用量で開始して行った。図1は、研究の設計を示す図である。対象を登録し、以下の通りの処置に割り当てた。
【0260】
コホート1:7人の対象を登録し、週に1回(QW)、300mgのTFPI-106 SCで処置した(n=7)。
【0261】
コホート2:6人の対象を登録し、負荷用量の300mgのSC TFPI-106で処置し、次いで、週に1回(QW)、150mgのSCで処置した。
【0262】
コホート3(n=6):6人の対象を登録し、週に1回(QW)、450mgのTFPI-106 SCで処置した。
【0263】
コホート4:因子VIIIまたは因子IXに対するインヒビターを有する7人の対象を登録し、週に1回(QW)、300mgのTFPI-106で処置した。
【0264】
上記のように、FVIIiまたはFIXに対するインヒビターを有する対象を、専用のコホート(300mgのSC QWで処置された、コホート4)に登録した。さらなる対象および/またはコホートを、投与コホートの数または投与コホートのサイズが増大するイベントに登録する。投与コホートの数および/または投与コホートのサイズの増大は、それぞれの用量レベルでの用量範囲および/または臨床的プロファイルをより良く規定し得る。
【0265】
従来的標準(従来的オンデマンドまたはオンデマンドとも呼ばれる)群を構築して、臨床的有効性の分析のための比較対照として使用した。オンデマンド群には、オンデマンドで凝固置換療法で(すなわち、突然の出血を処置するために必要に応じて)処置されている血友病対象からプロスペクティブに回収されたデータが含まれる。特に、以下の臨床研究:ReFacto AF 3082B2-4432(B1831004)、BeneFIX(B1821010)、およびBeneFIX 3090A1-400(B1821004)においてオンデマンドで処置された対象から得たデータを使用して、従来的オンデマンド群を構築した。得られたデータセットをさらにフィルタリングして、年齢および因子活性に基づいて本研究の選択基準/除外基準に適合させた(18≦年齢≦65、および因子活性≦1%)。これらの基準を満たす全ての対象を、従来的オンデマンドコントロール群に含めた。
【0266】
プロトコルの目的およびエンドポイント
この研究の第一の目的は、FVIIIまたはFIXに対するインヒビターを有するおよび有さない重度の血友病AおよびBの対象に投与された複数用量のTFPI-106の安全性および忍容性を判定することであった。
【0267】
プライマリーエンドポイントは以下の通りであった:
処置中に発生した有害事象(TEAE)の頻度、重症度、および因果関係、ならびにTEAEに起因する中止を、1日目から113日目まで評価した。
【0268】
異常な実験的所見の頻度および程度を、1日目から113日目に評価し、これとしては、限定はしないが、血液学、プロトロンビン時間/国際標準化比(PT/INR)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、尿検査、抗トロンビンIII活性、および心臓トロポニンIについてのアッセイが含まれる。
【0269】
対象をまた、1日目から113日目まで、バイタルサインのベースラインからの変化についても試験した(例えば、血圧、心拍数、体温、および呼吸数、心電図(ECG)、および身体検査)。
【0270】
注入部位および注射部位の反応の頻度、重症度、および因果関係もまた、1日目から113日目まで評価する。
【0271】
主要な第2の研究目的は、TFPI-106の反復投与の臨床的有効性を評価することである。鍵となるセカンダリーエンドポイントは、1日目から85日目までの出血エピソードの年間回数を評価することである。
【0272】
(実施例2)
研究結果
少なくとも1用量のTFPI-106を投与される全ての対象は、安全性の分析および列挙、すなわち安全性解析対象集団(SAS)に含まれる。
【0273】
プロトコル適合解析対象集団(PPAS)は、安全性解析対象集団の亜集団である。この対象集団は、プロトコルの大きな逸脱を有する対象を排除している。プロトコルの大きな逸脱としては、限定はしないが、研究薬剤の投与におけるコンプライアンスの欠如、および併用薬に対する悪影響が含まれる。
【0274】
研究対象の鍵となる人工統計学的特性およびベースライン特性
処置に割り当てられた集団の鍵となる人工統計学的特性およびベースライン特性を表1にまとめる。
【0275】
【表1】
【0276】
安全性
これまで、明らかなまたは新たに発生した安全性シグナルは、インヒビターを有さない血友病AおよびB対象において研究された3つの用量レベルのTFPI-106では、またはインヒビターを有する血友病AまたはB対象のデータの中では、同定されていない。
【0277】
結論:有害事象、実験、凝固アッセイ、バイタルサイン、およびECGのデータは、300mgのSC QWレジメンおよび150mgのSC QWレジメンが、全体的に安全であり、忍容性が良好であったことを示している。
【0278】
有効性
研究期間の間、すなわち1日目~85日目に生じた出血エピソードを以下に列挙する(表2)。コホート3の1人の対象は、注射部位での複数の重度の反応が理由で、30日目に、(450mgのSCから)300mgのSC QWに用量低下の変更をした。この対象は、用量変更後に2回の特発性出血のエピソードを有していた。
【0279】
【表2】
【0280】
研究の鍵となるセカンダリーエンドポイントは、1日目から85日目までの年間出血回数(ABR)である。PPASのコホート1~3のABRを、負の二項モデルを使用して、従来的オンデマンド群と比較した(表3)。モデルに基づくABRは、それぞれ、コホート1(300mgのSC QW)では4.2、コホート2(300mgのSCでの負荷用量と、その後の、150mgのSC QW)では1.5、コホート3(450mgのSC QW)では4.2、コホート4(300mgのSC QWインヒビター)では2.5、そして、従来的オンデマンド群では27.6であった。従来的オンデマンド群と比較したABRのパーセントの低減は、コホート1(300mgのSC QW)では85%(80%CI:71%、92%、p=0.0002)、コホート2(300mgのSCでの負荷用量と、その後の、150mgのSC QW)では95%(80%CI:86%、98%、p=0.0001)、コホート3(450mg SC QW)では85%(80%CI 71%、92%、p=0.0002)、そしてコホート4(300mgのSC QWインヒビター)では98%(80%CI 90%、99%、p=0.0005)であった(表3)。ABRの中央値は、それぞれ、コホート1(300mgのSC QW)では4.2、コホート2(300mgのSCでの負荷用量と、その後の、150mgのSC QW)では0、コホート3(450mg SC QW)では0、コホート4(300mgのSC QWインヒビター)では0、そして従来的オンデマンド群では22.6であった。
【0281】
処置前の期間と比較したABRのパーセントの低減は、コホート1(300mgのSC QW)では82%(80%CI:69%、89%、p<0.0001)、コホート2(300mgのSCでの負荷用量と、その後の、150mgのSC QW)では90%(80%CI:78%、96%;p=0.0002)、コホート3(450mgのSC QW)では80%(80%CI:53%、91%、p=0.0154)、そして、コホート4(300mgのSC QWインヒビター)では96%(80%CI 86%、99%、p=0.0005)であった(表4)。
【0282】
【表3】
【0283】
【表4】
【0284】
免疫原性
コホート1(300mgのSC QW)または2(150mgのSC QW)において、抗薬剤抗体(ADA)陽性の対象は確認されなかった。他のコホートは評価中である。
【0285】
薬物動態学(PK)
TFPI-106の集団PKモデルを、健康な対象における、以前のファースト・イン・ヒューマン(FIH)研究(B7841001)からのデータに基づいて確立した。
【0286】
本研究(B7841002)における対象の鍵となる人工統計学的情報の分布を使用して、TFPI-106の曝露をシミュレートした。本研究(B7841002)の観察された血漿濃度を、コホート1(300mgのSC QW)(図2A)、コホート2(300mgのSCでの負荷用量と、その後の、150mgのSC QW)(図2B)、およびコホート3(450mgのSC QW)(図2C)についてのモデル予測と重ねた。コホート1および2の観察されたTFPI-106の曝露は、モデル予測と一致する。これらのデータは、FIH研究の健康な対象と本研究の血友病患者との間でPKに明らかな差がなかったことを示している。
【0287】
薬力学(PD)
評価されたPDのエンドポイントは、TFPI-106による標的結合(全TFPIレベル)、またはTFPI阻害の下流の薬理学的影響(すなわち、トロンビン生成アッセイ(TGA)、プロトロンビン断片1+2(PF1+2)の形成、希釈プロトロンビン時間(dPT)、およびD-ダイマーの形成)を反映していた。
【0288】
用量コホートごとの、時間に対する、中央値(全TFPI、TGAピークトロンビンおよびDダイマー)、またはベースラインからの中央値の変化(dPTおよびPF1+2)を、図3に示す。処置に関連する変化が、全ての利用可能なPDエンドポイントで観察された。これらとしては、(i)TFPIとTFPI-106との結合に一致する、全TFPIの用量依存性の増大(図3A)、(ii)TGAピークトロンビンの正常化(すなわち、健康な対象における正常範囲を表す、FIH研究(B7841001)の全対象の投与前のピークトロンビン値のlog変換を使用して誘導された90%CI[44、176nM])(図3B)、(iii)PF1+2の用量依存性の増大(図3C)、(iv)希釈プロトロンビン時間(dPT)の短縮(図3D)、および(v)D-ダイマーの増大(図3E)が含まれた。これらの結果は、TFPI-106での処置が、凝固活性とトロンビン生成の正常化とを増大させたことを示している。
【0289】
FVIIIおよびFIXの欠陥(重度の血友病AおよびBにおいてそれぞれ≦1%の活性)は、因子X(FX)の活性化が不十分となり、トロンビン生成が低減し、そしてそれに次いで、凝血塊を形成するためのフィブリンを生成するために十分なレベルのフィブリノーゲンを切断することが不可能となる。コホート1(22.1nM、範囲16.2~60.0)およびコホート2(26.8nM、範囲14.3~57.2)の血友病対象についての処置前のピークトロンビンの中央値は、この低減したトロンビン生成の指標である。比較として、第1相FIH研究(B7841001)の健康なボランティア(正常なFVIIIおよびFIXレベルを有する)は、およそ4倍高い処置前のトロンビン生成を有していた(93.2nm、範囲71.4~132.7)。TFPI-106での処置の後、コホート1、コホート2、およびコホート3の全ての対象は、定常状態濃度で、FIH研究(B7841001)の健康なボランティアによって示された正常範囲に近いピークトロンビン生成を達成した。
【0290】
【表5-1】
【0291】
【表5-2】
【0292】
【表5-3】
【0293】
【表5-4】
【0294】
上記の個々の節において言及された本発明の様々な特徴および実施形態は、必要な変更を加えて、適切に、他の節に適用される。したがって、1つの節において特定されている特徴は、適切に、他の節において特定されている特徴と組み合わせることができる。特許、特許出願、論文、テキスト、および引用された配列の受託番号、ならびにこれらにおいて引用されている参考文献を含む、本明細書において引用される全ての参考文献は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。限定はしないが、定義される用語、用語の用法、記載されている技術、またはそれに類するものを含む、組み込まれる文献および類似の材料の1つまたは複数が、本願と異なるまたは矛盾する場合、本願が優先される。
【受託番号】
【0295】
ATCC PTA-122329
ATCC PTA-122328
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
【配列表】
2022512635000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-11-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象における出血時間を短縮するための、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を、初回用量として50mg~500mg含む医薬組成物。
【請求項2】
前記エピトープが、配列番号2の番号付けに従った残基Ile105、Arg107、およびLeu131を含む、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
初回用量が、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、および500mgからなる群から選択される、請求項1または2に記載の医薬組成物
【請求項4】
1つまたは複数の後続用量の抗体またはその抗原結合断片と組み合わせて用いることをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項5】
1つまたは複数の後続用量が、初回用量と同一の、初回用量よりも少ない、または初回用量よりも多い量で投与される、請求項4に記載の医薬組成物
【請求項6】
初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、および500mgからなる群から選択される、請求項4または5に記載の医薬組成物
【請求項7】
初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が150mgである、請求項6に記載の医薬組成物
【請求項8】
初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が300mgである、請求項6に記載の医薬組成物
【請求項9】
初回用量または後続用量のいずれかまたは両方が450mgである、請求項6に記載の医薬組成物
【請求項10】
初回用量が300mgであり、後続用量が150mgである、請求項6に記載の医薬組成物
【請求項11】
初回用量が150mgであり、後続用量が、175mg、200mg、225mg、250mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、または450mgまで増大される、請求項6に記載の医薬組成物
【請求項12】
初回用量が300mgであり、後続用量が、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、または450mgまで増大される、請求項6に記載の医薬組成物
【請求項13】
後続用量が、初回用量の後、1日に1回、3日に1回、6日に1回、週に2回、週に1回(毎週)、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、または8週間に1回投与される、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項14】
後続用量が、初回用量の約1週間後に投与される、請求項13に記載の医薬組成物
【請求項15】
抗体またはその抗原結合断片が皮下投与される、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項16】
前記エピトープが、配列番号2の番号付けに従った残基Cys106、Gly108、Cys130、Leu131、およびGly132をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項17】
前記エピトープが、配列番号2の番号付けに従ったAsp102、Arg112、Tyr127、Gly129、Met134、およびGlu138をさらに含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項18】
抗体またはその抗原結合断片が、
(i)(a)配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)相補性決定領域1(CDR-H1)、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域2(CDR-H2)、および
(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域3(CDR-H3)
を含むVH、ならびに
(ii)(a)配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)相補性決定領域1(CDR-L1)、
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域2(CDR-L2)、および
(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むVL相補性決定領域3(CDR-L3)
を含むVL
を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項19】
抗体またはその抗原結合断片が、配列番号18のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項20】
抗体またはその抗原結合断片が、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項21】
血友病(例えば、血友病A、B、またはC)を処置するための医薬組成物であって、300mgの初回用量の、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物であり、150mgの後続用量の前記抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物と組み合わせるためのものであり、後続用量が週に1回(毎週)投与され、抗体が、(i)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖、および(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、医薬組成物
【請求項22】
血友病(例えば、血友病AまたはB)を処置するための医薬組成物であって、300mgの毎週(週に1回の)用量の、組織因子経路インヒビター(TFPI)のKunitzドメイン2(K2)内のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含み、抗体が、(i)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖、および(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、医薬組成物
【請求項23】
抗体またはその抗原結合断片が、以下の特徴:(i)少なくとも25時間の半減期、(ii)約5×10-7M~約5×10-11Mの結合親和性(KD)、および/または(iii)静脈内での生物学的利用能と比較して少なくとも10%の皮下(SC)での生物学的利用能、の1つまたは複数を有する、請求項1から22のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項24】
血液凝固の欠陥に罹患しているかまたはそれに罹患しやすい対象を治療するための、請求項1から23のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項25】
血友病AまたはBに罹患しているかまたはそれに罹患しやすい対象を治療するための、請求項1から24のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項26】
(i)血漿ベースの希釈プロトロンビン時間(dPT)アッセイにおいて測定される凝血時間を短縮させるための、(ii)トロンボエラストグラフィーまたはローテーショナルトロンボエラストメトリーによって測定される、全血における凝血時間を低減させるための、(iii)トロンビン生成を増大させるための、(iv)TFPIの存在下でのFXa活性を増大させるための、(v)TFPIの存在下での血小板集積を増強させるための、(vi)D-ダイマーによって測定される、TFPIの存在下でのフィブリン生成を増大させるための、(vii)プロトロンビン断片1+2のレベルを増大させるための、または(viii)これらのあらゆる組み合わせである、請求項1から25のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項27】
正常な止血活性の少なくとも5%を達成するため、請求項1から26のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項28】
凝固障害を有する対象で見られる年間出血回数(ABR)と比較して、ABRの少なくとも20%の低減をもたらすための、請求項1から27のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項29】
凝血剤と組み合わせることをさらに含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項30】
凝血剤が、因子VIIa、因子VIII、因子IX、トラネキサム酸、およびバイパス剤(例えばFEIBA)からなる群から選択される、請求項29に記載の医薬組成物
【請求項31】
血友病対象における年間出血回数(ABR)を低減させるための医薬組成物であって、治療有効量のTFPIアンタゴニスト抗体と組み合わせることを含み、投与後のABRが、投与前の前記対象におけるABRと比較して少なくとも80%低減させるための、医薬組成物
【請求項32】
医薬組成物投与前の前記対象におけるABRと比較した、投与後のABRの低減パーセントが、
a)反復して300mgの量の抗体またはその抗原結合断片が投与される場合の、前記医薬組成物を前記対象に投与する前のABRと比較して82%のABRの低減、
b)反復して300mg、次いで150mgの量の抗体またはその抗原結合断片が投与される場合の、前記医薬組成物を前記対象に投与する前のABRと比較して90%のABRの低減、
c)反復して450mgの量の抗体またはその抗原結合断片が投与される場合の、前記医薬組成物を前記対象に投与する前のABRと比較して80%のABRの低減、および
d)反復して300mgの量の抗体またはその抗原結合断片が投与される場合、さらに、対象が、血友病Aおよびヒト因子VIIIに対する阻害抗体を有する、または血友病Bおよびヒト因子IXに対する阻害抗体を有する場合の、前記医薬組成物を前記対象に投与する前のABRと比較して96%のABRの低減
からなる群から選択される、請求項31に記載の医薬組成物
【請求項33】
反復原則が週に1回(QW)である、請求項32に記載の医薬組成物
【請求項34】
皮下(SC)投与または静脈内(IV)投与するための、請求項31から33のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項35】
SC投与するための、請求項31から34のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項36】
投与前の平均ABRが、1年当たり少なくとも23回の出血であり、投与後のABRが、1年当たり4.2回以下の出血である、請求項32(a)に記載の医薬組成物
【請求項37】
投与前の平均ABRが、1年当たり少なくとも14回の出血であり、投与後のABRが、1年当たり1.5回以下の出血である、請求項32(b)に記載の医薬組成物
【請求項38】
投与前の平均ABRが、1年当たり少なくとも20回の出血であり、投与後のABRが、1年当たり4.2回以下の出血である、請求項32(c)に記載の医薬組成物
【請求項39】
投与前の平均ABRが、1年当たり少なくとも17回の出血であり、投与後のABRが、1年当たり0.7回以下の出血である、請求項32(d)に記載の医薬組成物
【請求項40】
投与後の年間出血回数(ABR)、ABRの従来的標準と比較して少なくとも85%低減させるための、治療有効量のTFPIアンタゴニスト抗体と組み合わせることを含む、血友病対象におけるABRを低減させるための医薬組成物
【請求項41】
従来的標準のABRと比較した、投与後のABRの低減パーセントを、
a)反復して300mgの量の抗体またはその抗原結合断片が投与される場合の、従来的標準のABRと比較して85%のABRの低減をさせるため
b)反復して300mg、次いで150mgの量の抗体またはその抗原結合断片が投与される場合の、従来的標準のABRと比較して95%のABRの低減をさせるため
c)反復して450mgの量の抗体またはその抗原結合断片が投与される場合の、従来的標準のABRと比較して85%のABRの低減をさせるため、および
d)反復して300mgの量の抗体またはその抗原結合断片が投与される場合、さらに、対象が、血友病Aおよびヒト因子VIIIに対する阻害抗体を有する、または血友病Bおよびヒト因子IXに対する阻害抗体を有する場合の、従来的標準のABRと比較して98%のABRの低減をさせるため
からなる群から選択される、請求項39に記載の医薬組成物
【請求項42】
従来的標準のABRが、1年当たり少なくとも27回の出血である、請求項40から41のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項43】
反復原則が週に1回(QW)である、請求項41から42のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項44】
皮下(SC)投与または静脈内(IV)投与するための、請求項40から43のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項45】
SC投与される、請求項44に記載の医薬組成物
【請求項46】
抗体が、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む、請求項30から45のいずれか一項に記載の医薬組成物
【国際調査報告】