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特表2022-512646スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)ロイコトキシンに対して向けられた抗体
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  • 特表-スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus  aureus)ロイコトキシンに対して向けられた抗体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)ロイコトキシンに対して向けられた抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220131BHJP
   C07K 16/12 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220131BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220131BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/12
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/18
A61P31/04
A61K39/395 D
A61P17/02
A61K39/395 N
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519609
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(85)【翻訳文提出日】2021-06-02
(86)【国際出願番号】 US2019055144
(87)【国際公開番号】W WO2020076790
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】62/743,501
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504333972
【氏名又は名称】メディミューン,エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】516097907
【氏名又は名称】ヒューマブス バイオメド エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トカジク,クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】セルマン,ブレット
(72)【発明者】
【氏名】ド,クン
(72)【発明者】
【氏名】ダムシュローダー,メリッサ
(72)【発明者】
【氏名】コルティ,ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】ミノラ,アンドレア
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC01
4C085CC08
4C085CC23
4C085DD23
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ロイコトキシン結合抗体及びその抗原結合断片を対象とする。この抗体又は断片は、例えば、ロイコトキシンを検出するために、且つ/又はスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)感染症を処置及び予防する方法において使用され得る。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)1、VH CDR2、VH CDR3、可変軽鎖(VL)CDR1、VL CDR2及びVL CDR3を含み、前記VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3は、(a)それぞれ配列番号1、2、3、12、5及び6;(b)それぞれ配列番号1~6;(c)それぞれ配列番号1、2、17、4、5及び6;(d)それぞれ配列番号1、2、17、12、5及び6;並びに(e)それぞれ配列番号1、20、3、4、5及び6からなる群から選択される配列を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
少なくとも1種のS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、SAN481-SYT-YTEのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3を含む抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記CDRは、Kabat定義CDR、Chothia定義CDR又はAbM定義CDRである、請求項2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
VH及びVLを含み、前記VHは、配列番号7、15、18、21又は23のアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
VH及びVLを含み、前記VLは、配列番号8又は13のアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
VH及びVLを含み、前記VH及びVLは、(a)それぞれ配列番号15及び13;(b)それぞれ配列番号7及び8;(c)それぞれ配列番号7及び13;(d)それぞれ配列番号15及び8;(e)それぞれ配列番号18及び8;(f)それぞれ配列番号18及び13;(g)それぞれ配列番号21及び8;並びに(h)それぞれ配列番号23及び13からなる群から選択される配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
配列番号15の配列を含むVHと、配列番号13の配列を含むVLとを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
配列番号16、9、11、22又は24の配列を含む重鎖を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
配列番号14又は10の配列を含む軽鎖を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、前記重鎖及び軽鎖は、(a)それぞれ配列番号16及び14;(b)それぞれ配列番号9及び10;(c)それぞれ配列番号11及び10;(d)それぞれ配列番号11及び14;(e)それぞれ配列番号16及び10;(f)それぞれ配列番号19及び10;(g)それぞれ配列番号19及び14;(h)それぞれ配列番号22及び10;並びに(i)それぞれ配列番号24及び14からなる群から選択される配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
前記抗体は、配列番号16の配列を含む重鎖と、配列番号14の配列を含む軽鎖とを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
配列番号15のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号13のアミノ酸配列を含むVLとを含む抗体と同じS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンエピトープに結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
S.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンへの、配列番号15のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号13のアミノ酸配列を含むVLとを含む抗体の結合を競合的に阻害する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項14】
(a)LukF、LukD若しくはHlgBに結合し、且つ/又は(b)LukF、LukD若しくはHlgBを中和する、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項15】
(a)LukF、LukD及びHlgBに結合し、且つ/又は(b)LukF、LukD及びHlgBを中和する、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項16】
重鎖定常領域を更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項17】
前記重鎖定常領域は、ヒト免疫グロブリンIgG、IgG、IgG、IgG、IgA及びIgA重鎖定常領域からなる群から選択される、請求項16に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項18】
前記重鎖定常領域は、ヒトIgG定常領域である、請求項17に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項19】
軽鎖定常領域を更に含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項20】
前記軽鎖定常領域は、ヒト免疫グロブリンIgGκ及びIgGλ軽鎖定常領域からなる群から選択される、請求項19に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項21】
前記軽鎖定常領域は、ヒトIgGκ軽鎖定常領域である、請求項20に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項22】
IgG抗体又はその抗原結合断片である、請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項23】
半減期を改善するように操作されているFc領域を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項24】
YTE変異を有するFc領域を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項25】
モノクローナル抗体又は抗原結合断片である、請求項1~24のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項26】
完全長の抗体である、請求項1~25のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項27】
抗原結合断片である、請求項1~9又は12~26のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項28】
Fab、Fab’、F(ab’)、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド連結Fv、イントラボディ、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab’)、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、DVD-Ig、Fcab、mAb、(scFv)又はscFv-Fcを含む、請求項27に記載の抗原結合断片。
【請求項29】
S.アウレウス(S.aureus)のLukF、LukD及びHlgBに対する75pM未満の親和性を有する、請求項1~28のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項30】
LukF、LukD及びHIgBに対する類似した結合親和性を有する、請求項1~29のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項31】
検出可能な標識を更に含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項32】
請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と、任意選択的に、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項33】
対象においてスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(S.アウレウス(S.aureus))感染症を処置又は予防する方法であって、請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合断片又は請求項32に記載の組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項34】
前記S.アウレウス(S.aureus)感染症は、敗血症である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記S.アウレウス(S.aureus)感染症は、菌血症である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記S.アウレウス(S.aureus)感染症は、肺炎である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記S.アウレウス(S.aureus)感染症は、ICU肺炎である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記S.アウレウス(S.aureus)感染症は、皮膚又は軟組織感染症(SSTI)である、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記S.アウレウス(S.aureus)感染症は、下肢の糖尿病性感染症である、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記S.アウレウス(S.aureus)感染症は、糖尿病性足部潰瘍(DFU)である、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記DFUは、非感染である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記DFUは、感染である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記DFUは、グレード1、2又は3のDFUである、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記S.アウレウス(S.aureus)感染症は、骨又は関節の感染症である、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
前記S.アウレウス(S.aureus)感染症は、関節感染症、器具感染症、創傷感染症、手術部位感染症又は骨髄炎である、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
前記対象は、手術対象である、請求項33~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記S.アウレウス(S.aureus)感染症は、抗生物質耐性S.アウレウス(S.aureus)を含む、請求項33~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記対象は、糖尿病を有する、請求項33~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象は、ヒトである、請求項33~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
S.アウレウス(S.aureus)感染症を前記処置又は予防することは、毒素の中和、細胞溶解を阻害すること、多臓器不全を阻害すること、S.アウレウス(S.aureus)関連敗血症を阻害すること又は前述のものの任意の組み合わせを含む、請求項33~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
請求項1~30のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片の前記VH又は重鎖をコードする核酸分子を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項52】
請求項1~30のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片の前記VL又は軽鎖をコードする核酸分子を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項53】
請求項51及び/又は52に記載のポリヌクレオチドを含む、単離されたベクター。
【請求項54】
請求項51及び/若しくは52に記載のポリヌクレオチド、請求項53に記載のベクター又は請求項51に記載のポリヌクレオチドを含む第1のベクター及び請求項52に記載のポリヌクレオチドを含む第2のベクターを含む宿主細胞。
【請求項55】
CHO、NS0、PER-C6、HEK-293及びHeLa細胞からなる群から選択される、請求項54に記載の宿主細胞。
【請求項56】
単離されている、請求項54又は55に記載の宿主細胞。
【請求項57】
抗体又はその抗原結合断片を作製する方法であって、前記抗体又はその抗原結合断片が産生されるように、請求項54~56のいずれか一項に記載の宿主細胞を培養することを含む方法。
【請求項58】
サンプル中のS.アウレウス(S.aureus)又はS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンを検出する方法であって、前記サンプルを、請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と接触させることを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロイコトキシン結合抗体及びその抗原結合断片を対象とする。この抗体又は断片は、例えば、ロイコトキシンを検出するために、且つ/又はスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)感染症を処置及び予防する方法において使用され得る。
【背景技術】
【0002】
薬剤耐性(AMR)病原菌により引き起こされる感染症により、公衆衛生に対する脅威が高まっている。進行中のAMRの流行は、部分的には経験的広域スペクトル抗生物質療法により煽られている。これは、深刻な細菌感染を予防か又は処置するための、モノクローナル抗体(mAb)等の病原体特異的方法の探求につながっている。抗生物質耐性菌感染症の予防又は処置のために、現在、いくつかのモノクローナル抗体が開発されている(例えば、DiGiandomenico,A.,and B.R.Sellman,Curr.Opin.Microbiol.,27:78-85(2015)を参照されたい)。そのような受動免疫戦略は、標的病原体に対して即時の且つ強力な免疫グロブリン応答を提供する。
【0003】
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)は、皮膚及び軟組織の感染症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎及び菌血症等の広範な疾患を引き起こす細菌性病原体である(Lowy,F.D.,N.Engl.J.Med.,339(8):520-32(1998))。前臨床試験は、モノクローナル抗体ベースのアプローチがS.アウレウス(S.aureus)感染症の予防及び補助療法に有望であることを示している(例えば、Hazenbos et al.,PLoS Pathog.,9(10):e1003653.doi:10.1371/journal.ppat.10036532013(2013);Rouha,H.,MAbs,7(1):243-254(2015);Foletti et al.,J.Mol.Biol.,425(10):1641-1654(2013);Karauzum et al.,J Biol Chem.,287(30):25203-15(2012);及びHua et al.,Antimicrob Agents Chemother.,58(2):1108-17(2014)を参照されたい)。しかしながら、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)感染症(特に現在利用可能な抗生物質に対して耐性を示す感染症)の処置に有用な抗体の必要性が残っている。本開示は、そのような抗体を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で提供されるのは、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(S.アウレウス(S.aureus))ロイコトキシンに結合する抗体及びその抗原結合断片である。
【0005】
特定の例では、少なくとも1種のS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)1、VH CDR2、VH CDR3、可変軽鎖(VL)CDR1、VL CDR2及びVL CDR3を含み、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3は、(a)それぞれ配列番号1、2、3、12、5及び6;(b)それぞれ配列番号1~6;(c)それぞれ配列番号1、2、17、4、5及び6;(d)それぞれ配列番号1、2、17、12、5及び6;並びに(e)それぞれ配列番号1、20、3、4、5及び6からなる群から選択される配列を含む。
【0006】
特定の例では、少なくとも1種のS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片は、SAN481-SYT-YTEのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3を含む。特定の例では、CDRは、Kabat定義CDR、Chothia定義CDR又はAbM定義CDRである。
【0007】
特定の例では、抗体又はその抗原結合断片は、VH及びVLを含み、このVHは、配列番号7、15、18、21又は23のアミノ酸配列を含む。特定の例では、抗体又はその抗原結合断片は、VH及びVLを含み、このVLは、配列番号8又は13のアミノ酸配列を含む。特定の例では、抗体又はその抗原結合断片は、VH及びVLを含み、これらVH及びVLは、(a)それぞれ配列番号15及び13;(b)それぞれ配列番号7及び8;(c)それぞれ配列番号7及び13;(d)それぞれ配列番号15及び8;(e)それぞれ配列番号18及び8;(f)それぞれ配列番号18及び13;(g)それぞれ配列番号21及び8;並びに(h)それぞれ配列番号23及び13からなる群から選択される配列を含む。特定の例では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号15の配列を含むVHと、配列番号13の配列を含むVLとを含む。特定の例では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号16、9、11、22又は24の配列を含む重鎖を含む。特定の例では、抗体又は抗原結合断片は、配列番号14又は10の配列を含む軽鎖を含む。特定の例では、抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、この重鎖及び軽鎖は、(a)それぞれ配列番号16及び14;(b)それぞれ配列番号9及び10;(c)それぞれ配列番号11及び10;(d)それぞれ配列番号11及び14;(e)それぞれ配列番号16及び10;(f)それぞれ配列番号19及び10;(g)それぞれ配列番号19及び14;(h)それぞれ配列番号22及び10;並びに(i)それぞれ配列番号24及び14からなる群から選択される配列を含む。特定の例では、抗体は、配列番号16の配列を含む重鎖と、配列番号14の配列を含む軽鎖とを含む
【0008】
特定の例では、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片は、配列番号15のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号13のアミノ酸配列を含むVLとを含む抗体と同じS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンエピトープに結合する。
【0009】
特定の例では、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片は、S.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンへの、配列番号15のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号13のアミノ酸配列を含むVLとを含む抗体の結合を競合的に阻害する。
【0010】
特定の例では、抗体若しくは抗原結合断片は、LukF、LukD若しくはHlgBに結合し、且つ/又は抗体若しくは抗原結合断片は、LukF、LukD若しくはHlgBを中和する。特定の例では、抗体又は抗原結合断片は、(a)LukF、LukD及びHlgBに結合し、且つ/又は(b)LukF、LukD及びHlgBを中和する。
【0011】
特定の例では、抗体又は抗原結合断片は、重鎖定常領域を更に含む。特定の例では、重鎖定常領域は、ヒト免疫グロブリンIgG、IgG、IgG、IgG、IgA及びIgA重鎖定常領域からなる群から選択される。特定の例では、重鎖定常領域は、ヒトIgG定常領域である。
【0012】
特定の例では、抗体又は抗原結合断片は、軽鎖定常領域を更に含む。特定の例では、軽鎖定常領域は、ヒト免疫グロブリンIgGκ及びIgGλ軽鎖定常領域からなる群から選択される。特定の例では、軽鎖定常領域は、ヒトIgGκ軽鎖定常領域である。
【0013】
特定の例では、抗体又はその抗原結合断片は、IgG抗体又はその抗原結合断片である。
【0014】
特定の例では、抗体又は抗原結合断片は、半減期を改善するように操作されているFc領域を含む。特定の例では、抗体又はその抗原結合断片は、YTE変異を有するFc領域を含む。
【0015】
特定の例では、抗体又は抗原結合断片は、モノクローナル抗体又は抗原結合断片である。
【0016】
特定の例では、抗体又は抗原結合断片は、完全長の抗体である。特定の例では、抗体又は抗原結合断片は、抗原結合断片である。特定の例では、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド連結Fv、イントラボディ、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab’)、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、DVD-Ig、Fcab、mAb、(scFv)又はscFv-Fcを含む。
【0017】
特定の例では、抗体又はその抗原結合断片は、S.アウレウス(S.aureus)のLukF、LukD及びHlgBに対する75pM未満の親和性を有する。特定の例では、抗体又はその抗原結合断片は、LukF、LukD及びHIgBに対する類似した結合親和性を有する。
【0018】
特定の例では、抗体又はその抗原結合断片は、検出可能な標識を更に含む。
【0019】
同様に本明細書で提供されるのは、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片と、任意選択的に、薬学的に許容される担体とを含む組成物である。
【0020】
同様に本明細書で提供されるのは、本明細書で提供される抗体を使用する方法である。特定の例では、対象においてスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(S.アウレウス(S.aureus))感染症を処置又は予防する方法は、本明細書で提供される抗体若しくは抗原結合断片又は本明細書で提供される組成物をこの対象に投与することを含む。特定の例では、S.アウレウス(S.aureus)感染症は、敗血症である。特定の例では、S.アウレウス(S.aureus)感染症は、菌血症である。特定の例では、S.アウレウス(S.aureus)感染症は、肺炎である。特定の例では、S.アウレウス(S.aureus)感染症は、ICU肺炎である。特定の例では、S.アウレウス(S.aureus)感染症は、皮膚又は軟組織感染症(SSTI)である。特定の例では、S.アウレウス(S.aureus)感染症は、下肢の糖尿病性感染症である。特定の例では、S.アウレウス(S.aureus)感染症は、糖尿病性足部潰瘍(DFU)である。特定の例では、DFUは、非感染である。特定の例では、DFUは、感染である。特定の例では、DFUは、グレード1、2又は3のDFUである。特定の例では、S.アウレウス(S.aureus)感染症は、骨又は関節の感染症である。特定の例では、S.アウレウス(S.aureus)感染症は、関節感染症、器具感染症、創傷感染症、手術部位感染症又は骨髄炎である。
【0021】
特定の例では、対象は、手術対象である。
【0022】
特定の例では、S.アウレウス(S.aureus)感染症は、抗生物質耐性S.アウレウス(S.aureus)を含む。
【0023】
特定の例では、対象は、糖尿病を有する。
【0024】
特定の例では、対象は、ヒトである。
【0025】
特定の例では、S.アウレウス(S.aureus)感染症を処置又は予防することは、毒素の中和、細胞溶解を阻害すること、多臓器不全を阻害すること、S.アウレウス(S.aureus)関連敗血症を阻害すること又は前述のものの任意の組み合わせを含む。
【0026】
同様に本明細書で提供されるのは、ポリヌクレオチドである。特定の例では、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片のVH又は重鎖をコードする核酸分子を含む。特定の例では、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片のVL又は軽鎖をコードする核酸分子を含む。
【0027】
同様に本明細書で提供されるのは、ベクターである。特定の例では、本明細書で提供されるポリヌクレオチドである。
【0028】
同様に本明細書で提供されるのは、宿主細胞である。特定の例では、宿主細胞は、本明細書で提供されるポリヌクレオチド、本明細書で提供されるベクター又は本明細書で提供されるポリヌクレオチドを含む第1のベクター及び本明細書で提供されるポリヌクレオチドを含む第2のベクターを含む。特定の例では、宿主細胞は、CHO、NS0、PER-C6、HEK-293及びHeLa細胞からなる群から選択される。特定の例では、宿主細胞は、単離されている。
【0029】
同様に本明細書で提供されるのは、抗体又は抗原結合断片を作製する方法である。特定の例では、抗体又はその抗原結合断片を作製する方法は、この抗体又はその抗原結合断片が産生されるように、本明細書で提供される宿主細胞を培養することを含む。
【0030】
同様に本明細書で提供されるのは、S.アウレウス(S.aureus)又はS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンを検出する方法である。特定の例では、サンプル中のS.アウレウス(S.aureus)又はS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンを検出する方法は、前記サンプルを、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片と接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】SAN481と比較した複数のSAN481バリアントのインビトロでの活性を示すグラフを示す。QD1=SAN481-YTE;QD2=SAN481VL26S32Y-YTE;QD3=SAN481VH28T-YTE;QD4=SAN481-VH28T100F-YTE;QD5=SAN481-SY-T-YTE;QD6=SAN481-SY-TF-YTE;QD11=SAN481-EG-YTE;及びQD12=SAN481-SY-QFS-YTE。(実施例2を参照されたい。)
図2】SAN481-SYT-YTEがSAN481と同様のインビトロでのロイコトキシン中和活性を有することを示すグラフを示す。(実施例3を参照されたい。)
図3】HIgB(配列番号27)、LukF(配列番号25)及びLukD(配列番号26)の入れるアラインメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(S.アウレウス(S.aureus))ロイコトキシンに結合する抗体及びその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体及びその抗原結合断片)を提供する。本開示は、例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(S.アウレウス(S.aureus))ロイコトキシンの検出又はS.アウレウス(S.aureus)感染症の処置若しくは予防でそのような抗体及び抗原結合断片を使用する方法も提供する。
【0033】
I.定義
本明細書で使用される場合、「ロイコトキシン」という用語は、細菌のロイコトキシンポリペプチド(例えば、限定されないが、天然のロイコトキシンポリペプチド及びロイコトキシンポリペプチドのアイソフォーム)を指す。「ロイコトキシン」には、完全長の未処理ロイコトキシンポリペプチド及び細胞内での処理により生じるロイコトキシンポリペプチドの形態が包含される。ロイコトキシンとして、LukSF、ロイコトキシンED(LukED)、HlgAB、HlgCB)及びロイコトキシンAB(LukAB、LukGHとしても既知である)が挙げられる。本明細書で使用される場合、「S.アウレウス(S.aureus)LukF」という用語は、配列番号25のアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。本明細書で使用される場合、「S.アウレウス(S.aureus)LukD」という用語は、配列番号26のアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。本明細書で使用される場合、「S.アウレウス(S.aureus)HIgB」という用語は、配列番号27のアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。(図3を参照されたい)。「ロイコトキシンポリヌクレオチド」、「ロイコトキシンヌクレオチド」又は「ロイコトキシン核酸」は、ロイコトキシンをコードするポリヌクレオチドを指す。
【0034】
「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子であって、この免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位を介して標的(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質又は前述の組み合わせ)を認識して特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味する。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、インタクトなポリクローナル抗体、インタクトなモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体を含む融合タンパク質及び抗体が所望の生物学的活性を示す限り任意の他の改変免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、免疫グロブリンの下記の5つの主要なクラスのいずれかであり得る:それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ及びミューと呼ばれる、重鎖定常ドメインの同一性に基づくIgA、IgD、IgE、IgG及びIgM又はこれらのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)。免疫グロブリンの異なるクラスは、公知のサブユニット構造及び3次元配置が異なる。抗体は、裸であり得るか、又は毒素、放射性同位体等の他の分子と共役され得る。
【0035】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、B細胞の単独クローンにより産生されて、同じエピトープに結合する抗体を指す。対照的に、「ポリクローナル抗体」という用語は、異なるB細胞により産生され、同一の抗原の異なるエピトープに結合する抗体の集団を指す。
【0036】
「抗体断片」という用語は、インタクトな抗体の一部を指す。「抗原結合断片」、「抗原結合ドメイン」又は「抗原結合領域」は、インタクトな抗体の、抗原に結合する部分を指す。抗原結合断片は、インタクトな抗体の抗原決定領域(例えば、相補性決定領域(CDR))を含み得る。抗体の抗原結合断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片、線状抗体並びに一本鎖抗体が挙げられるが、これらに限定されない。抗体の抗原結合断片は、げっ歯類(例えば、マウス、ラット又はハムスター)及びヒト等の任意の動物種から得ることができるか、又は人工的に作製することができる。
【0037】
全抗体は、典型的には、下記の4つのポリペプチドからなる:重(H)鎖ポリペプチドの2つの同一コピー及び軽(L)鎖ポリペプチドの2つの同一コピー。重鎖の各々は、1つのN末端可変(VH)領域と、3つのC末端定常(CHI、CH2及びCH3)領域とを含み、各軽鎖は、1つのN末端可変(VL)領域と、1つのC末端定常(CL)領域とを含む。軽鎖及び重鎖の各ペアの可変領域は、抗体の抗原結合部位を形成する。VH領域及びVL領域は、同一の一般的構造を有し、各領域は、4つのフレームワーク領域を含み、この配列は、比較的保存されている。「フレームワーク領域」という用語は、本明細書で使用される場合、超可変領域又は相補性決定領域(CDR)間に位置する可変領域内の比較的保存されたアミノ酸配列を指す。各可変ドメインには、4つのフレームワーク領域が存在し、FR1、FR2、FR3及びFR4と指定されている。これらのフレームワーク領域は、可変領域の構造フレームワークを提供するβシートを形成する(例えば、C.A.Janeway et al.(eds.),Immunobiology,5th Ed.,Garland Publishing,New York,NY(2001)を参照されたい)。CDR1、CDR2及びCDR3として既知の3つのCDRは、抗体の「超可変領域」を形成し、この超可変領域は、抗原結合に関与する。
【0038】
「VL」及び「VLドメイン」という用語は、抗体の軽鎖可変領域を指すために互換的に使用される。
【0039】
「VH」及び「VHドメイン」という用語は、抗体の重鎖可変領域を指すために互換的に使用される。
【0040】
「Kabat付番」という用語及び同様の用語は、当技術分野で認識されており、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域又はこれらの抗原結合断片のアミノ酸残基の付番方式を指す。特定の態様では、CDRは、Kabat付番方式に従って決定され得る(例えば、Kabat EA&Wu TT(1971)Ann NY Acad Sci 190:382-391及びKabat EA et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照されたい)。Kabat付番方式を使用すると、抗体重鎖分子内のCDRは、典型的には、35に続く1つ又は2つの追加のアミノ酸(Kabat付番スキームでは35A及び35Bと呼ばれる)を任意選択的に含み得るアミノ酸位置31~35(CDR1)、アミノ酸位置50~65(CDR2)及びアミノ酸位置95~102(CDR3)に存在する。Kabat付番方式を使用すると、抗体軽鎖分子内のCDRは、典型的には、アミノ酸位置24~34(CDR1)、アミノ酸位置50~56(CDR2)及びアミノ酸位置89~97(CDR3)に存在する。具体的な実施形態では、本明細書で説明されている抗体のCDRは、Kabat付番スキームに従って決定されている。
【0041】
Chothiaは、代わりに、構造ループの位置に言及している(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。Kabat付番規則を使用して付番した場合のChothia CDR-H1ループの末端は、このループの長さに応じてH32~H34で変化する(これは、Kabat付番スキームがH35A及びH35Bに挿入を置くためであり、35Aも35Bも存在しない場合、このループは、32で終わり、35Aのみが存在する場合、このループは、33で終わり、35A及び35Bの両方が存在する場合、このループは、34で終わる)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループとの妥協案を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。
【0042】
【表1】
【0043】
本明細書で使用される場合、「定常領域」又は「定常ドメイン」という用語は、交換可能であり、且つ当技術分野で一般的な意味を有する。定常領域は、抗体の、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、Fc受容体との相互作用等の様々なエフェクター機能を発揮し得る部分(例えば、軽鎖及び/又は重鎖のカルボキシル末端部分)である。免疫グロブリン分子の定常領域は、一般的に、免疫グロブリン可変ドメインと比べて保存されたアミノ酸配列を有する。
【0044】
本明細書で使用される場合、「重鎖」とうい用語は、抗体に関連して使用される場合、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、IgGのサブクラス(例えば、IgG、IgG、IgG及びIgG)等の抗体のIgAクラス、IgDクラス、IgEクラス、IgGクラス及びIgMクラスをそれぞれ生じる任意の別個のタイプ(例えば、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)及びミュー(μ))を指し得る。重鎖アミノ酸配列は、当技術分野で公知である。具体的な実施形態では、重鎖は、ヒト重鎖である。
【0045】
本明細書で使用される場合、「軽鎖」という用語は、抗体に関連して使用される場合、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、任意の別個のタイプ(例えば、カッパ(κ)又はラムダ(λ))を指し得る。軽鎖アミノ酸配列は、当技術分野で公知である。具体的な実施形態では、軽鎖は、ヒト軽鎖である。
【0046】
「キメラ」抗体は、ヒト領域及び非ヒト領域の両方を含む抗体又はその断片を指す。「ヒト化」抗体は、ヒト抗体スキャホールドと、非ヒト抗体から得られるか又は誘導される少なくとも1つのCDRとを含む抗体である。非ヒト抗体として、例えばげっ歯類(例えば、マウス又はラット)等の任意の非ヒト動物から単離される抗体が挙げられる。ヒト化抗体は、非ヒト抗体から得られるか又は誘導される1つ、2つ又は3つのCDRを含み得る。完全ヒト抗体は、非ヒト動物から得られるか又は誘導されるいかなるアミノ酸残基も含まない。完全ヒト抗体及びヒト化抗体は、マウス抗体又はキメラ抗体と比べて、ヒトで免疫反応を誘発するリスクが低いと理解されるであろう(例えば、Harding et al.,mAbs,2(3):256-26(2010)を参照されたい)。
【0047】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」は、当技術分野の用語であり、抗体又はその抗原結合断片が特異的に結合し得る、抗原の局所的な領域を指す。エピトープは、例えば、ポリペプチドの連続アミノ酸であり得る(線状エピトープ若しくは連続エピトープ)か、又はエピトープは、例えば、ポリペプチドの2つ以上の非連続領域から一体となり得る(コンフォメーションエピトープ、非線状エピトープ、不連続エピトープ若しくは非連続エピトープ)。特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片が結合するエピトープを、例えばNMR分光法、X線回折結晶学的研究、ELISAアッセイ、質量分析を伴う水素/重水素交換(例えば、液体クロマトグラフィー液体スプレー質量分析)、アレイベースのオリゴペプチドスキャニングアレイ及び/又は変異誘発マッピング(例えば、部位特異的変異誘発マッピング)により決定し得る。X線結晶構造解析の場合、結晶化を、当技術分野で既知の方法のいずれかを使用して達成し得る(例えば、Giege R et al.,(1994)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 50(Pt 4):339-350;McPherson A(1990)Eur J Biochem 189:1-23;Chayen NE(1997)Structure 5:1269-1274;McPherson A(1976)J Biol Chem 251:6300-6303)。抗体/その抗原結合断片:抗原の結晶を、公知のX線回折技術を使用して研究し得、且つX-PLOR(Yale University,1992,distributed by Molecular Simulations,Inc.;例えば、Meth Enzymol(1985)volumes 114&115,eds Wyckoff HW et al.,;米国特許出願公開第2004/0014194号明細書)及びBUSTER(Bricogne G(1993)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 49(Pt 1):37-60;Bricogne G(1997)Meth Enzymol 276A:361-423,ed Carter CW;Roversi P et al.,(2000)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 56(Pt 10):1316-1323を参照されたい)等のコンピュータソフトウェアを使用して精製し得る。変異誘発マッピング研究を、当業者に既知の任意の方法を使用して達成し得る。例えば、アラニンスキャニング変異誘発技術等の変異誘発技術の説明に関して、Champe M et al.,(1995)J Biol Chem 270:1388-1394及びCunningham BC&Wells JA(1989)Science 244:1081-1085を参照されたい。
【0048】
参照抗体と「同じエピトープに結合する」抗体は、参照抗体と同じアミノ酸残基に結合する抗体を指す。抗体の、参照抗体と同じエピトープに結合する能力は、水素/重水素交換アッセイ(Coales et al.Rapid Commun.Mass Spectrom.2009;23:639-647を参照されたい)又はX線結晶構造解析により決定し得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、「免疫特異的に結合する」、「免疫特異的に認識する」、「特異的に結合する」及び「特異的に認識する」という用語は、抗体又はその抗原結合断片に関連して類似の用語である。これらの用語は、抗体又はその抗原結合断片がその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、及びこの結合が抗原結合ドメインとエピトープとの間に多少の相補性を伴うことを示す。従って、例えば、第1のS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンに「特異的に結合する」抗体は、他のS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンにも結合し得るが、関連しない非ロイコトキシンタンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、BiaCore又はオクテット結合アッセイにより測定した場合、この抗体の第1のS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンへの結合の約10%未満である。
【0050】
抗体は、この抗体が、所与のエピトープへの参照抗体の結合をある程度まで遮断する限り、このエピトープ又は重複するエピトープに優先的に結合する場合、このエピトープへの参照抗体の結合を「競合的に阻害する」と言われる。競合的阻害を、当技術分野で既知の任意の方法(例えば、競合ELISAアッセイ)により決定し得る。抗体は、所与のエピトープへの参照抗体の結合を少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%又は少なくとも50%競合的に阻害すると言われ得る。
【0051】
「核酸配列」という用語は、DNA又はRNAのポリマー(即ちポリヌクレオチド)を包含することが意図されており、このポリマーは、一本鎖又は二本鎖であり得、且つ非天然の又は改変されたヌクレオチドを含み得る。「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合、リボヌクレオチド(RNA)又はデオキシリボヌクレオチド(DNA)のいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。これらの用語は、分子の一次構造を指し、そのため、二本鎖DNA及び一本鎖DNA並びに二本鎖RNA及び一本鎖RNAが含まれる。この用語は、均等物として、ヌクレオチド類似体及び改変されたポリヌクレオチド(例えば、限定されないが、メチル化及び/又はキャップされたポリヌクレオチド)から作製された、RNA又はDNAのいずれかの類似体を含む。核酸は、典型的には、リン酸結合を介して連結されて核酸配列又はポリヌクレオチドを形成するが、他の多くの連結が当技術分野で知られている(例えば、ホスホロチオエート、ボラノホスフェート及び同様のもの)。
【0052】
S.アウレウス(S.aureus)感染症は、例えば、皮膚若しくは軟組織感染症(SSTI)又は菌血症として発症し得る。S.アウレウス(S.aureus)細菌は、血流を通して身体の部位に移動して感染し得、肺炎、ICU肺炎、下肢の糖尿病性感染症、糖尿病性足部潰瘍(DFU)、骨又は関節の感染症、器具感染症、創傷感染症、手術部位感染症又は骨髄炎を引き起こす。
【0053】
「トランスフェクション」、「形質転換」又は「形質導入」は、本明細書で使用される場合、物理的又は化学的な方法を使用することによる、宿主細胞への1種又は複数の外因性ポリヌクレオチドの導入を指す。多くのトランスフェクション技術が当技術分野で既知であり、例えばリン酸カルシウムDNA共沈が挙げられる(例えば、Murray E.J.(ed.),Methods in Molecular Biology,Vol.7,Gene Transfer and Expression Protocols,Humana Press(1991));DEAE-デキストラン;エレクトロポレーション;カチオン性リポソーム媒介トランスフェクション;タングステン粒子により促進される微粒子衝撃(Johnston,Nature,346:776-777(1990));及びリン酸ストロンチウムDNA共沈(Brash et al,Mol.Cell Biol.,7:2031-2034(1987)を参照されたい)。ファージ又はウイルスベクターを、多くが市販されている好適なパッケージング細胞中での感染性粒子の増殖後に宿主細胞に導入し得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、「処置」、「処置する」という用語及び同様のものは、所望の薬理学的及び/又は生理学的な効果を得ることを指す。一実施形態では、この効果は、治療的であり、即ち、この効果は、疾患及び/又は疾患に起因する有害な症状を部分的又は完全に治癒する。
【0055】
「治療上有効な量」は、所望の治療結果(例えば、S.アウレウス(S.aureus)感染症の処置)を達成するのに必要な投与量における且つ期間にわたる有効な量を指す。治療上有効な量は、個体の病状、年齢、性別及び体重並びにこの個体で所望の応答を誘発する抗体又は抗原結合断片の能力等の要因により異なり得る。
【0056】
「予防上有効な量」は、所望の予防結果(例えば、S.アウレウス(S.aureus)感染症又は発病の予防)を達成するのに必要な投与量における且つ期間にわたる有効な量を指す。
【0057】
「投与する」、「投与すること」、「投与」という用語及び同様のものは、本明細書で使用される場合、薬物(例えば、ロイコトキシン結合抗体又はその抗原結合断片)の所望の生物学的作用部位への送達を可能にするために使用され得る方法(例えば、静脈内投与)を指す。本明細書で説明されている薬剤及び方法と共に用いられ得る投与技術は、例えば、下記に見出される:Goodman and Gilman,The Pharmacological Basis of Therapeutics,current edition,Pergamon;及びRemington’s,Pharmaceutical Sciences,current edition,Mack Publishing Co.,Easton,Pa。
【0058】
本開示及び本特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数形を含む。
【0059】
特に明記されない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「又は」という用語は、包括的であると理解される。「及び/又は」という用語は、本明細書において「A及び/又はB」等の語句で使用される場合、「A及びB」、「A又はB」、「A」及び「B」の両方を含むことが意図されている。同様に、「及び/又は」という用語は、「A、B及び/又はC」等の語句で使用される場合、下記の実施形態の各々を包含することが意図されている:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)。
【0060】
II.抗ロイコトキシン抗体
本明細書で提供されるのは、少なくとも1種のS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンに結合する抗体及びその抗原結合断片である。
【0061】
ロイコトキシンは、S.アウレウス(S.aureus)の毒性因子である。ロイコトキシンは、破壊のために広範囲の免疫細胞を標的とする。ロイコトキシンとして、下記が挙げられる:Panton-Valentineロイコトキシン(LukSFとしても既知のLukSF-PV)、ロイコトキシンED(LukED)、ガンマ溶血素(2種の毒素:HlgAB及びHlgCBとして存在する)並びにロイコトキシンAB(LukAB、LukGHとしても既知)。特定の例では、少なくとも1種のロイコトキシンに結合する抗体又はその抗原結合断片は、LukF、LukD及び/又はHIgBに結合する。特定の例では、少なくとも1種のロイコトキシンに結合する抗体又はその抗原結合断片は、LukF、LukD及びHIgBに結合する。
【0062】
一例では、少なくとも1種のS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンに特異的に結合する抗体又は抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体又は断片)は、(i)配列番号1のCDR1アミノ酸配列、配列番号2のCDR2アミノ酸配列及び配列番号3のCDR3アミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチドと、(ii)配列番号12のCDR1アミノ酸配列、配列番号5のCDR2アミノ酸配列及び配列番号6のCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドとを含むか、それらから本質的になるか又はそれらからなる。別の例では、少なくとも1種のS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンに特異的に結合する抗体又は抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体又は断片)の重鎖ポリペプチドは、配列番号15の可変領域アミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか又はそれからなる。別の例では、少なくとも1種のS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンに特異的に結合する抗体又は抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体又は断片)の軽鎖ポリペプチドは、配列番号13の可変領域アミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか又はそれからなる。別の例では、少なくとも1種のS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンに特異的に結合する抗体又は抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体又は断片)は、配列番号15のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか又はそれからなる可変重鎖と、配列番号13のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか又はそれからなる可変軽鎖とを含むか、それらから本質的になるか又はそれらからなる。別の例では、少なくとも1種のS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンに特異的に結合する抗体又は抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体又は断片)は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか若しくはそれからなる可変重鎖及び/又は配列番号14のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか若しくはそれからなる可変軽鎖を含むか、それらから本質的になるか又はそれらからなる。
【0063】
例示的な抗ロイコトキシン抗体の配列を下記に記載する。特定の例では、本明細書で説明されている抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1種のロイコトキシンに結合し、且つ下記の表1及び表2からの6つのCDR(即ちVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3)を含む。
【0064】
SAN481-SYT-YTE抗体は、配列番号1~3のVH CDRと、配列番号12、5及び6のVL CDRとを含む。
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
特定の例では、本明細書で説明されている抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1種のロイコトキシンに結合し、且つ例えばVLとの組み合わせにおいて、下記の表で列挙されている抗体のVHを含む。
【0068】
【表4】
【0069】
特定の例では、本明細書で説明されている抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1種のロイコトキシンに結合し、且つ例えばVH(任意選択的に、前述の表で列挙されているVH)との組み合わせにおいて、下記の表で列挙されている抗体のVLを含む。
【0070】
【表5】
【0071】
特定の例では、本明細書で説明されている抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1種のロイコトキシンに結合し、且つ例えば軽鎖との組み合わせにおいて、下記の表で列挙されている抗体の重鎖を含む。
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
特定の例では、本明細書で説明されている抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1種のロイコトキシンに結合し、且つ例えば重鎖(任意選択的に、前述の表で列挙されている重鎖)との組み合わせにおいて、下記の表で列挙されている抗体の軽鎖を含む。
【0076】
【表9】
【0077】
下記の実施例で使用する抗体の配列を表7にまとめる。
【0078】
【表10】
【0079】
特定の態様では、抗体又はその抗原結合断片のCDRを、免疫グロブリン構造ループの位置を指すChothia付番スキームに従って決定し得る(例えば、Chothia C&Lesk AM,(1987),J Mol Biol 196:901-917;Al-Lazikani B et al.,(1997)J Mol Biol 273:927-948;Chothia C et al.,(1992)J Mol Biol 227:799-817;Tramontano A et al.,(1990)J Mol Biol 215(1):175-82;及び米国特許第7,709,226号明細書を参照されたい)。典型的には、Kabat付番規則を使用する場合、Chothia CDR-H1ループは、重鎖アミノ酸26~32、33又は34に存在し、Chothia CDR-H2ループは、重鎖アミノ酸52~56に存在し、Chothia CDR-H3ループは、重鎖アミノ酸95~102に存在し、同時にChothia CDR-L1ループは、軽鎖アミノ酸24~34に存在し、Chothia CDR-L2ループは、軽鎖アミノ酸50~56に存在し、Chothia CDR-L3ループは、軽鎖アミノ酸89~97に存在する。Kabat付番規則を使用して付番した場合のChothia CDR-H1ループの末端は、このループの長さに応じてH32~H34で変化する(これは、Kabat付番スキームがH35A及びH35Bに挿入を置くためであり、35Aも35Bも存在しない場合、このループは、32で終わり、35Aのみが存在する場合、このループは、33で終わり、35A及び35Bの両方が存在する場合、このループは、34で終わる)。
【0080】
特定の態様では、本明細書で提供されるのは、SAN481抗体又はSAN481-SYT抗体のChothia VH及びVLのCDRを含む抗体及びその抗原結合断片である。特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、1つ又は複数のCDRを含み、このCDRでは、Chothia及びKabat CDRが同一のアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、Kabat CDR及びChothia CDRの組み合わせを含む抗体及びその抗原結合断片である。
【0081】
特定の態様では、抗体又はその抗原結合断片のCDRを、Lefranc M-P,(1999)The Immunologist 7:132-136及びLefranc M-P et al.,(1999)Nucleic Acids Res 27:209-212で説明されているように、IMGT付番方式に従って決定し得る。IMGT付番スキームよれば、VH-CDR1は、26~35位であり、VH-CDR2は、51~57位であり、VH-CDR3は、93~102位であり、VL-CDR1は、27~32位であり、VL-CDR2は、50~52位であり、VL-CDR3は、89~97位である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、例えば、Lefranc M-P(1999)(上記を参照されたい)及びLefranc M-P et al.,(1999)(上記を参照されたい)で説明されているような、SAN481抗体又はSAN481-SYT-YTE抗体のIMGT VH及びVL CDRを含む抗体及びその抗原結合断片である。
【0082】
特定の態様では、抗体又はその抗原結合断片のCDRをMacCallum RM et al.,(1996)J Mol Biol 262:732-745に従って決定し得る。例えば、Martin A.“Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains,”in Antibody Engineering、Kontermann and Duebel,eds.,Chapter 31,pp.422-439,Springer-Verlag,Berlin(2001)も参照されたい。特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、MacCallum RM et alにおける方法により決定されたSAN481抗体又はSAN481-SYT-YTE抗体のVH及びVL CDRを含む抗体又はその抗原結合断片である。
【0083】
特定の態様では、抗体又はその抗原結合断片のCDRを、Kabat CDRとChothia構造ループとの妥協案を示し、且つOxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(Oxford Molecular Group,Inc.)により使用されるAbM超可変領域を指すAbM付番スキームに従って決定し得る。特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、AbM付番スキームにより決定された、SAN481抗体又はSAN481-SYT-YTE抗体のVH及びVL CDRを含む抗体又は抗原結合断片である。
【0084】
別の態様では、本明細書で説明されている抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体又は断片)は、この抗体又は抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体又は断片)の半減期を改善するために改変されている任意の好適なクラス(例えば、IgG、IgA、IgD、IgM及びIgE)の定常領域(Fc)を含み得る。例えば、本明細書で説明されている抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体又は断片)は、変異していない同一の抗体と比べて半減期を延長する変異を含むFcを含み得る。
【0085】
Fc領域の操作は、治療用抗体の半減期を延長し、且つインビボでの分解から防御するために当技術分野で広く使用されている。いくつかの実施形態では、IgG抗体又は抗原結合断片のFc領域を改変して、IgG異化作用を媒介し、且つIgG分子を分解から防御する胎児性Fc受容体(FcRn)に対するIgG分子の親和性を高め得る。好適なFc領域アミノ酸置換又は改変は、当技術分野において既知であり、例えば三重置換M252Y/S254T/T256E(「YTE」と呼ばれる)が挙げられる(例えば、米国特許第7,658,921号明細書;米国特許出願公開第2014/0302058号明細書;及びYu et al.,Antimicrob.Agents Chemother.,61(1):e01020-16(2017)を参照されたい)。特定の態様では、少なくとも1種のS.アウレウス(S.aureus)ロイコトキシンに結合する抗体又は抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体又は断片)は、YTE変異を含むFc領域を含む。
【0086】
本明細書で説明されている抗体又は抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体又は断片)は、ヒト抗体、ヒト化抗体、非ヒト抗体又はキメラ抗体であり得るか又はそれらから得られ得る。一態様では、本明細書で説明されている抗体又はその抗原結合断片は、完全ヒト抗体である。
【0087】
ヒト抗体、非ヒト抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体を、インビトロでの供給源(例えば、ハイブリドーマ又は組換えにより抗体を産生する細胞株)及びインビボでの供給源(例えば、げっ歯類、ヒト扁桃腺)等の任意の手段で得ることができる。抗体を生成する方法は、当技術分野において既知であり、例えばKoehler and Milstein,Eur.J.Immunol.,5:511-519(1976);Harlow and Lane(eds.),Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press(1988);及びJaneway et al.(eds.),Immunobiology,5th Ed.,Garland Publishing,New York,N.Y.(2001))で説明されている。特定の実施形態では、ヒト抗体又はキメラ抗体を、1つ又は複数の内因性免疫グロブリン遺伝子が1つ又は複数のヒト免疫グロブリン遺伝子に置き換えられているトランスジェニック動物(例えば、マウス)を使用して生成し得る。内因性抗体遺伝子が効果的にヒト抗体遺伝子に置き換えられているトランスジェニックマウスの例として、下記が挙げられるが、これらに限定されない:Medarex HUMAB-MOUSE(商標)、Kirin TC MOUSE(商標)及びKyowa Kirin KM-MOUSE(商標)(例えば、Lonberg,Nat.Biotechnol.,23(9):1117-25(2005)及びLonberg,Handb.Exp.Pharmacol.,181:69-97(2008)を参照されたい)。ヒト化抗体を、当技術分野で既知の任意の好適な方法を使用して生成し得(例えば、An,Z.(ed.),Therapeutic Monoclonal Antibodies:From Bench to Clinic,John Wiley&Sons,Inc.,Hoboken,N.J.(2009)を参照されたい)、例えば非ヒトCDRのヒト抗体スキャホールドへの移植(例えば、Kashmiri et al.,Methods,36(1):25-34(2005);及びHou et al.,J.Biochem.,144(1):115-120(2008)を参照されたい)が挙げられる。一実施形態では、ヒト化抗体を、例えば米国特許出願公開第2011/0287485A1号明細書で説明されいてる方法を使用して作製し得る。
【0088】
特定の態様では、本明細書で提供される抗体又は抗原断片は、LukF、LukD及びHIgBに対する類似した結合親和性を有する。
【0089】
III.核酸、ベクター及び宿主細胞
同様に本明細書で提供されるのは、少なくとも1種のロイコトキシンに結合する抗体又はその抗原結合断片(任意選択的に、この抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗体又は断片である)をコードする1種又は複数の単離された核酸配列である。
【0090】
本開示は、少なくとも1種のロイコトキシンに結合する抗体又はその抗原結合断片(任意選択的に、この抗体又はその抗原結合断片の1つ又は複数は、モノクローナル抗体又は断片である)をコードする1種又は複数の核酸配列を含む1種又は複数のベクターを更に提供する。このベクターは、例えば、プラスミド、エピソーム、コスミド、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルス若しくはアデノウイルス)又はファージであり得る。好適なベクター及びベクターの調製方法は、当技術分野で公知である(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,3rd edition,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001)及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley&Sons,New York,N.Y.(1994)を参照されたい)。
【0091】
少なくとも1種のロイコトキシンに結合する抗体又はその抗原結合断片(任意選択的に、この抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗体又は断片である)をコードする核酸配列に加えて、このベクターは、望ましくは、宿主細胞中でのこのコード配列の発現をもたらす発現制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、転写ターミネーター、内部リボソーム侵入部位(IRES)及び同様のもの)を含む。例示的な発現制御配列は、当技術分野で既知であり、例えばGoeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology,Vol.185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)で説明されている。
【0092】
少なくとも1種のロイコトキシンに結合する抗体又はその抗原結合断片(任意選択的に、この抗体又はその抗原結合断片の1つ又は複数は、モノクローナル抗体又は断片である)をコードする核酸配列を含むベクターを、コードされるポリペプチドを発現し得る宿主細胞(例えば、任意の好適な原核細胞又は真核細胞)に導入し得る。従って、本開示は、このベクターを含む単離された細胞を提供する。使用し得る宿主細胞として、容易且つ確実に増殖し得、適度に速い増殖速度を有し、十分に特徴付けられた発現系を有し、容易に且つ効率的に形質転換され得るか又はトランスフェクトされ得るものが挙げられる。好適な原核細胞の例として、下記が挙げられるが、これらに限定されない:バチルス(Bacillus)属(例えば、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)及びバチルス・ブレビス(Bacillus brevis))、エスケリキア(Escherichia)属(例えば、大腸菌(E.coli))、シュードモナス(Pseudomonas)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属、サルモネラ(Salmonella)属並びにエルウィニア(Erwinia)属の細胞。特に有用な原核細胞として、大腸菌(Escherichia coli)の様々な菌株(例えば、K12、HB101(ATCC No.33694)、DH5a、DH10、MC1061(ATCC No.53338)及びCC102)が挙げられる。好適な真核細胞は、当技術分野で既知であり、例えば酵母細胞、昆虫細胞及び哺乳類細胞が挙げられる。一実施形態では、ベクターは、哺乳類細胞中で発現される。多数の好適な哺乳類宿主細胞が当技術分野で既知であり、多くは、米国培養細胞系統保存機関(ATCC,Manassas,VA)から入手可能である。好適な哺乳類細胞の例として、下記が挙げられるが、これらに限定されない:チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)(ATCC No.CCL61)、CHO DHFR-細胞(Urlaub et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97:4216-4220(1980))、ヒト胎児腎臓(HEK)293又は293T細胞(ATCC No.CRL1573)及び3T3細胞(ATCC No.CCL92)。他の好適な哺乳類細胞株は、サルCOS-1(ATCC No.CRL1650)及びCOS-7細胞株(ATCC No.CRL1651)並びにCV-1細胞株(ATCC No.CCL70)である。哺乳類細胞は、望ましくは、ヒト細胞である。例えば、哺乳類細胞は、ヒトリンパ球又はリンパ球誘導細胞株であり得、例えばプレBリンパ球系統(pre-B lymphocyte origin)の細胞株、PER.C6(登録商標)細胞株(Crucell Holland B.V.,The Netherlands)又はヒト胎児腎臓(HEK)293若しくは293T細胞(ATCC No.CRL1573)であり得る。
【0093】
本明細書で説明されている抗体又は抗原結合断片(任意選択的にモノクローナル抗体又は断片)のいずれかのアミノ酸をコードする核酸配列をトランスフェクション、形質転換又は形質導入により細胞に導入し得る。
【0094】
IV.医薬組成物及び抗スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)ロイコトキシン抗体を使用する方法
本開示は、本明細書で説明されている抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む組成物を提供する。
【0095】
本開示は、本明細書で提供される抗体若しくはその抗原結合断片をコードする1種若しくは複数の核酸配列を含むか、又はそのような核酸配列を含む1種若しくは複数のベクターを含む組成物も提供する。
【0096】
本明細書で提供される組成物(例えば、抗体若しくはその抗原結合断片、1種若しくは複数の核酸配列又は1種若しくは複数のベクターを含む)は、薬学的に許容される(例えば、生理学的に許容される)組成物であり得、この組成物は、担体(例えば、薬学的に許容される(例えば、生理学的に許容される)担体と、本抗体若しくは抗原結合断片、核酸配列又はベクターとを含む。
【0097】
任意の好適な担体を本開示に関連して使用し得、そのような担体は、当技術分野で公知である。担体の選択は、部分的には、本組成物を投与し得る特定の部位及びこの組成物を投与するために使用される特定の方法により決定されるであろう。この組成物は、任意選択的に、無菌であり得る。この組成物を保存のために冷凍するか又は凍結乾燥し、使用前に好適な無菌担体で再構成し得る。この組成物を、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,PA(2001)で説明されている従来の技術に従って生成し得る。
【0098】
本組成物は、望ましくは、S.アウレウス(S.aureus)感染症の処置及び/又は予防に有効な量で本抗体又は抗原結合断片を含む。この目的のために、本開示の方法は、ロイコトキシン結合抗体若しくはその抗原結合断片又は前述の抗体若しくはその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体若しくは断片)を含む組成物の治療上有効な量又は予防上有効な量を投与することを含む。
【0099】
本開示は、対象(例えば、ヒト)においてスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(S.アウレウス(S.aureus))感染症を処置又は予防する方法であって、それを必要とする対象に、本明細書で説明されているロイコトキシン結合抗体又は抗原結合断片を投与することを含み、この投与時、この対象においてS.アウレウス(S.aureus)感染症が処置又は予防される、方法を提供する。本開示は、S.アウレウス(S.aureus)感染症を処置又は予防するための医薬品の製造における、本明細書で説明されているロイコトキシン結合抗体若しくは抗原結合断片又は本明細書で説明されている抗体若しくはその断片を含む組成物の使用も提供する。
【0100】
本明細書で議論されるように、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)は、広範囲の臨床感染症を引き起こす主要なヒト病原体である。S.アウレウス(S.aureus)は、菌血症及び感染性心内膜炎並びに骨関節、皮膚及び軟組織、胸膜肺及び器具に関連する感染症の主な原因である。ヒト個体群の約30%では、S.アウレウス(S.aureus)がコロニー形成している(Wertheim et al.,Lancet Infect.Dis.,5:751-762(2005))。S.アウレウス(S.aureus)皮膚感染症の症状として、例えば腫脹、蜂窩織炎(cellulits)及び膿痂疹が挙げられる。S.アウレウス(S.aureus)は、食中毒、菌血症(バクテリア血症としても既知である)、毒素性ショック症候群及び敗血症性関節炎も引き起こす場合がある。S.アウレウス(S.aureus)感染症の疫学、病態生理学及び臨床症状は、例えば、Tong et al.,Clin.Microbiol.Rev.,28(3):603-661(2015)で詳細に説明されており、いくつかの異なるS.アウレウス(S.aureus)株のゲノムが配列決定されている(例えば、GenBank/EMBL受け入れ番号BX571856、BX571857、BX571858、FN433596、FN433597、FN433598、HE681097、FR821777、FR821778、FR821779及びFR821780を参照されたい)。本明細書で議論されるように、対象(例えば、ヒト対象)は、糖尿病を有し得る。
【0101】
特定の例では、本ロイコトキシン結合抗体又は抗原結合断片の治療上有効な量は、例えば、ヒトにおいて、S.アウレウス(S.aureus)関連の敗血症を阻害するか、毒素を中和するか、細胞溶解を阻害するか、多臓器不全を阻害するか、又は前述の任意の組み合わせである量である。
【0102】
代わりに、薬理学的な及び/又は生理学的な効果は、予防的であり得、即ち、この効果は、疾患又はその症状を完全又は部分的に予防する。これに関して、本開示の方法は、本ロイコトキシン結合抗体又は抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体又は断片)の「予防上有効な量」を投与することを含む。
【0103】
治療的又は予防的な有効性を、処置された患者の定期的な評価によりモニタリングし得る。病態に応じた数日以上の反復投与の場合、疾患症状の所望の抑制が起こるまで処置を繰り返し得る。しかし、他の投与レジメンが有用である可能性があり、且つ本開示の範囲内である。所望の投与量を、本組成物の単回ボーラス投与によるか、本組成物の複数回ボーラス投与によるか、又は本組成物の持続注入投与により送達し得る。
【0104】
本明細書で説明されている抗体若しくはその抗原結合断片、前述のもののいずれかをコードする核酸配列又はこの核酸配列を含むベクターの有効な量を含む組成物を、標準的な投与技術(例えば、静脈内投与経路、腹腔内投与経路、皮下投与経路及び筋肉内投与経路)を使用して対象(例えば、ヒト)に投与し得る。この組成物は、非経口的投与に好適であり得る。「非経口」という用語は、本明細書で使用される場合、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与及び腹腔内投与を含む。いくつかの実施形態では、この組成物を、静脈内注射、腹腔内注射又は皮下注射による末梢全身送達を使用して対象に投与する。
【0105】
本ロイコトキシン結合抗体若しくは抗原結合断片又はこれを含む組成物を単独で投与し得るか、又はS.アウレウス(S.aureus)感染症の処置に従来使用されている他の薬物(例えば、アジュバント)と組み合わせて投与し得る。このロイコトキシン結合抗体又は抗原結合断片を含む組成物を例えば1種又は複数の抗生物質(例えば、ペニシリナーゼ耐性β-ラクタム抗生物質(例えば、オキサシリン又はフルクロキサシリン))と組み合わせ使用し得る。ゲンタマイシンを使用して、心内膜炎等の深刻な感染症を治療し得る。しかしながら、S.アウレウス(S.aureus)のほとんどの菌株は、現在、ペニシリンに対して耐性を示し、100人中の2人がS.アウレウス(S.aureus)のメチシリン耐性菌(MRSA)を保有している。MRSA感染症は、典型的には、バンコマイシンで処置され、軽度の皮膚感染症は、3剤の抗生物質軟膏で治療され得る。
【0106】
治療的使用及び予防的使用に加えて、本明細書で説明されている任意の抗体又はその抗原結合断片を診断用途又は研究用途で使用し得る。これに関して、本ロイコトキシン結合抗体又は抗原結合断片を、対象におけるS.アウレウス(S.aureus)感染症をモニタリングするためのアッセイで使用し得る。研究用途として、例えばサンプル(例えば、ヒトの体液又は細胞若しくは組織の抽出物)中のS.アウレウス(S.aureus)を検出するために、本ロイコトキシン結合抗体又は抗原結合断片と標識とを利用する方法が挙げられる。このロイコトキシン結合抗体又は抗原結合断片を改変(例えば、検出可能な部分による共有結合的又は非共有結合的な標識)して使用し得るか、又は改変することなく使用し得る。例えば、この検出可能な成分は、放射性同位体(例えば、H、14C、32P、35S若しくは125I)、蛍光化合物又は化学発光化合物(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン若しくはルシフェリン)、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ若しくはセイヨウワサビペルオキシダーゼ)又は補欠分子族であり得る。抗体又はその抗原結合断片を検出可能な部分に別々にコンジュゲートさせるための当技術分野で既知の任意の方法を本開示に関連して用い得る(例えば、Hunter et al.,Nature,194:495-496(1962);David et al.,Biochemistry,13:1014-1021(1974);Pain et al.,J.Immunol.Meth.,40:219-230(1981);及びNygren,J.,Histochem.And Cytochem.,30:407-412(1982)を参照されたい)。
【0107】
本明細書で説明されている任意の抗体若しくはその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体若しくは断片)、前述のもののいずれかをコードする核酸配列、この核酸配列を含むベクター又は前述のもののいずれかを含む組成物をキットで提供し得、即ち診断アッセイを実施するための説明書を含む所定量の試薬のパッケージ化された組み合わせで提供し得る。本ロイコトキシン結合抗体又は抗原結合断片が酵素で標識されている場合、このキットは、望ましくは、この酵素に必要な基質及び補助因子(例えば、検出可能な発色団又は蛍光団を生じる基質前駆体)を含む。加えて、このキットには、他の添加剤(例えば、安定剤、緩衝液(例えば、ブロッキング緩衝液又は細胞溶解緩衝液)及び同様のもの)が含まれ得る。様々な試薬の相対量を変化させて、アッセイの感度を実質的に最適化する試薬の溶液中の濃度を生じ得る。この試薬は、乾燥粉末(典型的には凍結乾燥粉末)として提供され得、溶解すると適切な濃度の試薬溶液を生じる賦形剤を含む。
【0108】
下記の実施例は、本発明を更に説明するが、当然のことながら、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【実施例
【0109】
実施例1
抗ロイコトキシン抗体SAN481は、配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む。これらの配列では、いくつかの配列障害を特定した。例えば、重鎖W100a(VH-CDR3中)及びM256(Fcドメイン中)の酸化を観察した。加えて、可変重鎖中のグリコシル化部位(NFS)は、70%グリコシル化されていた。VL-CDR1中に2箇所のNS脱アミド化部位を特定し、VH-CDR2中にDG/DS異性化部位を特定した。更に、光感受性により、1週間CWL-2kLuxでSAN481の凝集が3.5%増加した。
【0110】
改善されたSAN481抗体バリアントを達成するために、一連の配列バリアントを設計して試験した。これらのバリアントを、この障害を取り除き、且つこの抗体のロイコトキシン中和活性に影響を及ぼすことなく半減期を増加させるように設計した。(配列障害を取り除こうとする最初の試みにより、LukSFに対する結合及び中和活性が失われた。この最初の試みは、N28T変異を含む定常でのW102のF、Y、A、L、I、G及びVへの変異を含む)。半減期の延長のためにYTE変異を使用し、この同一の変異により、Fc領域中のメチオニン酸化部位(残基M256)も取り除かれる。
【0111】
次いで、これのバリアントをLuKSFに対する結合及び中和能力、光安定性及び開発性に関して試験した。結果を下記の表8にまとめ、追加の情報は、下記の実施例で見出される。
【0112】
【表11】
【0113】
SAN481-SYT-YTEは、LukSF、LukED及びHIgABに対するIC50がSAN481と類似し、光曝露下での凝集の増加が最小限であり、有意なCDRの脱アミド化及び異性化(1.1%)が検出されず、安全性の問題がなく、自己会合がなく、且つ非特異的結合がないという事実を考慮して、特に有利なバリアントとしてSAN481-SYT-YTEを選択した。
【0114】
実施例2
この実施例では、他のSAN481バリアントと異なり、SAN481-SYT-YTE抗体は、SAN481のインビトロでの活性を維持することが実証される。
【0115】
SAN481バリアントの活性を評価するために、インビトロでのアッセイを実行した。このアッセイでは、分化したHL60ヒト単球細胞(2.5e4ウェル/25μl)を、図1に示すように、LukSF(それぞれ100ng/ml)又はHIgAB(それぞれ400ng/ml)と各mAb変異体の連続希釈液(25μl)との混合物50μlと共に、37℃で2時間にわたりインキュベートした。細胞生存率を、Cell Gloアッセイを使用して測定し、下記のように算出した:100*[(OD450細胞+毒素+mAb)/(OD450細胞のみ)]。生存率の50%阻害を達成するために必要なmAbの濃度(IC50)を算出し、表9に報告した。
【0116】
【表12】
【0117】
SAN481-TF-YTE抗体及びSAN481-SYTF-YTE抗体は、SAN481と比較して、LukSFに対する効力をそれぞれ5.07倍及び8.56倍失った。しかしながら、SAN481-SYT-YTE抗体は、失わなかった。
【0118】
実施例3
この実施例では、SAN481-SYT-YTE抗体は、SAN481抗体と同様のインビトロでのロイコトキシン中和を有することが実証される。
【0119】
このインビトロでのロイコトキシン中和活性を、細胞生存率を測定するアッセイにより試験した。より具体的には、分化したHL60ヒト単球細胞(2.5e4ウェル/25μl)を、図2に示すように、LukSF(それぞれ100ng/ml)、LukED(それぞれ2000ng/ml)、HlgCB(それぞれ200ng/ml)又はHIgAB(それぞれ400ng/ml)と、SAN481又はSAN481_SYT-YTEの連続希釈液(25μl)との混合物50μlと共に、37℃で2時間にわたりインキュベートした。細胞生存率を、Cell Gloアッセイを使用して測定して下記のように算出し:100*[(OD450細胞+毒素+mAb)/(OD450細胞のみ)]、図2でグラフ化した。
【0120】
図2に示す結果から、SAN481-SYT-YTE及びSAN481は、LukSF、HIgAB、HIgBC及びLukEDの全てに対して同様のインビトロでの中和活性を有することが実証される。
【0121】
実施例4
この実施例では、SAN481-SYT-YTEは、優れた光安定性を示すことが実証される。
【0122】
SAN481バリアントの光安定性を試験した。このアッセイでは、組換え抗体に対するmAbバリアントの結合親和性をOctet384機器(ForteBio,Menlo Park,CA)によるBio-layer Interferometryにより測定した。固有の結合親和性の決定のために、PBS pH 7.2、3mg/mL BSA、0.05%(v/v)tween 20(1×Kinetics Buffer,ForteBio)中の2μg/mLの抗体を抗ヒトIgG Fcバイオセンサ(ForteBio)で捕捉した。洗浄後、抗原タンパク質の連続希釈液を使用して、会合及び解離の測定を実行した。解離定数(KD)を、Octet384ソフトウェアv.7.2.を使用するデータの非線形フィットから、2つの速度定数の比(koff/kon)として推定した。
【0123】
結果を下記の表10及び11に示す。
【0124】
【表13】
【0125】
【表14】
【0126】
結果から、SAN481-SYT-YTEの優れた光安定性及びSAN481-SYT-YTEの光ストレスサンプルの場合に結合が失われていないことが実証される。
【0127】
本明細書で引用される全ての参考文献(例えば、刊行物、特許出願及び特許)は、各参考文献が参照により組み込まれることが個別に及び具体的に示され、且つ全体が本明細書に記載されていた場合と同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0128】
「1つの(a)」、及び「1つの(an)」、及び「その」並びに「少なくとも1つ」という用語、並びに本発明の説明に関連して(特に下記の特許請求の範囲に関連して)同様の指示対象の使用は、別途本明細書で指示されない限り又は文脈により明確に矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈しなければならない。1つ又は複数の項目のリストに続く「少なくとも1つ」という用語の使用(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)は、別途本明細書で指示されない限り又は文脈により明確に矛盾しない限り、列挙された項目から選択された1つの項目(A若しくはB)又は列挙された項目の2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味すると解釈しなければならない。「含む」、「有する」、「包含する」及び「含有する」という用語は、別途注記しない限り、非限定的用語(即ち「含むが、限定されない」を意味する)と解釈しなければならない。本明細書の値の範囲の列挙は、別途本明細書で指示されない限り、範囲内にある各個別の値を個別に参照する簡略化された方法として役立つことが単に意図されており、それぞれの個別の値は、本明細書に個別に列挙されていたかのように本明細書に組み込まれる。本明細書で説明されている全ての方法は、別途本明細書で指示されない限り又は別途文脈により明確に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書で提供されるあらゆる例又は例示的な言語(例えば、「等」)の使用は、本発明を単により明らかにするためのものであり、別途特許請求されない限り、本発明の範囲に対する限定を与えない。本明細書中の言語は、本発明の実施に不可欠であるものとして、いずれかの特許請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0129】
本発明を実行するための、本発明者らに既知の最良の態様等の本発明の好ましい実施形態は、本明細書で記載されている。この好ましい実施形態の変形形態は、前述の説明を読むことで当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者がそのような変形形態を適切に用いることを期待し、本発明者らは、本明細書で具体的に説明されている以外の方法で本発明を実施することを意図している。従って、本発明は、適用可能な法律により許可されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲で列挙された主題の全ての改変形態及び均等物を含む。更に、その全ての可能な変形形態における上記の要素の任意の組み合わせは、別途本明細書で指示されない限り又は別途文脈により明確に矛盾しない限り、本発明に包含される。
図1
図2
図3
【配列表】
2022512646000001.app
【国際調査報告】