(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】抗体ライブラリー及び方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/00 20060101AFI20220131BHJP
C40B 40/10 20060101ALI20220131BHJP
C40B 40/08 20060101ALI20220131BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C07K16/00 ZNA
C40B40/10
C40B40/08
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519644
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(85)【翻訳文提出日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 GB2019053010
(87)【国際公開番号】W WO2020084298
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506180073
【氏名又は名称】フュージョン アンティボディーズ ピーエルシー
【氏名又は名称原語表記】FUSION ANTIBODIES PLC
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ビュイック, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】スコット, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】マッキャン, ダラッグ
(72)【発明者】
【氏名】マクギアー, レオナ
(72)【発明者】
【氏名】モーガン, ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル, ナターシャ
(72)【発明者】
【氏名】マクローリー, ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】オケイン, アンソニー
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、抗体ライブラリーを生成する方法、そのような方法を使用して生産された抗体ライブラリー、及びバリアント抗体に関する。現在、抗体結合を改善する方法(親和性成熟アッセイ)は、改善された特性を有するごく一部のバリアントを同定するために、抗体バリアントの膨大なライブラリー(しばしば>1010)をスクリーニングすることを要求する。本発明は、標的抗体のフレームワーク及び相補性決定領域のヌクレオチド配列を取得し、脱アミノ化体細胞超変異酵素によって認識されるモチーフを同定することを含む。次に、これらの変異のうちの1つ又は複数を組み込んだバリアントの小さなライブラリーが作出される。バリアントの比較的高い割合が、増加した親和性を有することが見出された。本発明の技術は、トラスツズマブ及びカテプシンS抗体で実証され、そして生産されたバリアントもまた特許請求される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)参照抗体の軽鎖アミノ酸配列と比較した場合、軽鎖配列に少なくとも2つのアミノ酸変更を有するか、
(ii)参照抗体の重鎖アミノ酸配列と比較した場合、重鎖配列に少なくとも2つのアミノ酸変更を有するか、又は
(iii)参照抗体の軽鎖アミノ酸配列と比較した場合、軽鎖配列に少なくとも1つのアミノ酸変更を有し、且つ参照抗体の重鎖アミノ酸配列と比較した場合、重鎖配列に少なくとも1つのアミノ酸変更を有する、参照抗体のバリアントであって;
前記アミノ酸変更のそれぞれが、バリアントDNA配列のDNAセグメントから独立的にコードされるアミノ酸残基にあり、
バリアントの前記DNAセグメントが、体細胞超変異誘導酵素による脱アミノ化に対して感受性のDNAモチーフにおける点変異によって、参照抗体をコードする対応するDNA配列のセグメントとは異なっている、参照抗体のバリアント。
【請求項2】
前記体細胞超変異誘導酵素が、活性化誘導デアミナーゼ(AID)であり、前記DNAモチーフが、DGYW又はWRCH、例えばRGYW又はWRCYであり、ここで、Dはアデニン、グアニン又はチミンであり、Rはアデニン又はグアニンであり、Gはグアニンであり、Cはシトシンであり、Hはアデニン又はシトシン又はチミンであり、Wはアデニン又はチミンであり、Yはシトシン又はチミンである、請求項1に記載のバリアント抗体。
【請求項3】
前記参照抗体がトラスツズマブである、請求項1又は請求項2に記載のバリアント抗体。
【請求項4】
前記アミノ酸変更がlc9N、lc9T、lc9I、lc9R、lc9K、lc25G、lc25V、lc25D、lc31N、lc31S、lc31I、lc32D、lc32G、lc32V、lc32T、lc32N、lc32S、lc32I、lc32P、lc32L、lc32F、lc33L、lc33I、lc34G、lc34V、lc34D、lc38E、lc38K、lc40A、lc40S、lc40T、lc43G、lc43V、lc43T、lc43N、lc43S、lc43I、lc43P、lc43L、lc43F、lc46V、lc46I、lc47V、lc51S、lc51P、lc51T、lc76R、lc76N、lc76T、lc76K、lc76I、lc79K、lc79E、lc80T、lc80S、lc80A、lc85S、lc85N、lc85I、lc89H、lc90E、lc90A、lc91N、lc91D、lc91Y、lc93S、lc93N、lc93I、lc94S、lc94N、lc94I、lc101D、lc102S、lc102N、hc2L、hc2I、hc3H、hc4M、hc4V、hc13K、hc13E、hc14A、hc14T、hc14S、hc16A、hc16V、hc16D、hc23E、hc23G、hc23V、hc23T、hc23K、hc23R、hc23I、hc23P、hc23L、hc23S、hc24D、hc24G、hc24V、hc24T、hc24N、hc24S、hc24I、hc24P、hc24L、hc24F、hc26A、hc26V、hc26D、hc28K、hc35N、hc35D、hc35Y、hc48L、hc48I、hc49G、hc49S、hc56A、hc56V、hc56D、hc58S、hc58N、hc58I、hc61G、hc61V、hc61D、hc79G、hc79V、hc79D、hc82E、hc82K、hc85R、hc88D、hc88T、hc88S、hc88P、hc88G、hc92G、hc92V、hc92D、hc103A、hc103V、hc103D、hc106D、hc106G、hc106V、hc106T、hc106N、hc106S、hc106I、hc106P、hc106L、hc106F、hc114S、hc114N、及びhc114Iからなる群から選択される、請求項3に記載のバリアント抗体。
【請求項5】
前記アミノ酸変更がlc9T、lc9I、lc9R、lc9K、lc43F、lc47V、lc51P、lc51T、lc101D、hc2L、hc3H、hc14S、hc16V、hc24P、hc26A、hc26V、hc48I、hc58S、hc61V、hc79V、hc85R、hc88G、hc92V、hc92D、hc103A、hc103V、hc106V、hc114S、hc114N、及びhc114Iからなる群から選択される、請求項4に記載のバリアント抗体。
【請求項6】
バリアントの軽鎖及び重鎖配列が、請求項4に記載のアミノ酸変更以外のどの残基においても参照抗体の配列と異ならない、請求項3~5のいずれか一項に記載のバリアント抗体。
【請求項7】
前記バリアント抗体分子が、表8のバリアント番号19又は表8に列挙された他の抗体のいずれかについて示されるアミノ酸変異の組み合わせを有する、請求項3~6のいずれか一項に記載のバリアント抗体。
【請求項8】
前記バリアント抗体分子が、表2~7に列挙された抗体のいずれかについて示されるアミノ酸変異の組み合わせを有する、請求項3~6のいずれか一項に記載のバリアント抗体。
【請求項9】
トラスツズマブと比較して、lc9K、lc43F、及びhcl06Vのアミノ酸変更を含むトラスツズマブ抗体のバリアントである、請求項3~8のいずれか一項に記載のバリアント抗体。
【請求項10】
前記バリアントが、カテプシンS抗体のバリアントであり、前記参照抗体がFsn503hである、請求項1又は請求項2に記載のバリアント抗体。
【請求項11】
前記アミノ酸変更がlc12A、lc12S、lc12T、lc19V、lc28R、lc32T、lc32I、lc45A、lc45S、lc45T、lc50H、lc51V、lc51F、lc51I、lc56L、lc56F、lc56I、lc58K、lc66S、lc69A、lc69V、lc81T、lc81I、lc81N、lc85P、lc85S、lc85T、lc90L、lc90F、lc96I、lc96S、lc96I、lc96N、lc108N、hc3H、hc4V、hc4M、hc10A、hc10V、hc14A、hc14S、hc24G、hc24V、hc30T、hc30I、hc31R、hc31T、hc37L、hc37F、hc40P、hc40S、hc52S、hc52I、hc53S、hc53I、hc84T、hc84I、hc92G、及びhc92Vからなる群から選択される、請求項10に記載のバリアント抗体。
【請求項12】
前記アミノ酸変更がlc12A、lc12S、lc12T、lc19V、lc45S、lc45T、lc50H、lc51V、lc56I、lc81I、lc96I、lc96S、lc96I、lc96N、lc108N、hc10A、hc10V、hc14S、hc30I、hc31R、hc37L、hc37F、hc40P、hc40S、hc52I、及びhc92Gからなる群から選択される、請求項11に記載のバリアント抗体。
【請求項13】
バリアントの軽鎖及び重鎖配列が、請求項11に記載のアミノ酸変更以外のどの残基においても参照抗体の配列と異ならない、請求項10~12のいずれか一項に記載のバリアント抗体。
【請求項14】
前記バリアント抗体分子が、表1に列挙された抗体のいずれかについて示されるアミノ酸変異の組み合わせを有する、請求項10~13のいずれか一項に記載のバリアント抗体。
【請求項15】
前記バリアントの軽鎖及び重鎖配列が、参照抗体のアミノ酸配列と比較して、合計で少なくとも3つ、例えば、少なくとも4つ、少なくとも5つ、又は少なくとも6つのアミノ酸変更を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のバリアント抗体。
【請求項16】
前記アミノ酸変更のうちの1つ又は複数が、前記バリアント抗体のフレームワーク領域にある、請求項1~15のいずれか一項に記載のバリアント抗体。
【請求項17】
前記アミノ酸変更のうちの1つ又は複数が、前記バリアント抗体のCDRにある、請求項1~16のいずれか一項に記載のバリアント抗体。
【請求項18】
前記アミノ酸変更の全てが、前記バリアント抗体のフレームワーク領域にある、請求項16に記載のバリアント抗体。
【請求項19】
参照抗体と比較した前記バリアント抗体分子の親和性の変化が-2より大きく、参照抗体と比較した前記バリアント抗体分子の安定性の変化が-2より大きい、請求項1~18のいずれか一項に記載のバリアント抗体。
【請求項20】
各抗体分子が、参照抗体のバリアントであり、各抗体分子のアミノ酸配列が、1つ又は複数のアミノ酸残基において参照抗体のアミノ酸配列と異なっており、前記アミノ酸残基のそれぞれが、バリアントDNA配列のDNAセグメントから独立的にコードされ、バリアントの前記DNAセグメントが、体細胞超変異誘導酵素による脱アミノ化に対して感受性のDNAモチーフにおける点変異によって、参照抗体をコードする対応するDNA配列のセグメントとは異なっている、抗体分子のライブラリー。
【請求項21】
前記体細胞超変異誘導酵素が、活性化誘導デアミナーゼ(AID)である、請求項20に記載のライブラリー。
【請求項22】
前記DNAモチーフが、DGYW又はWRCH、例えばRGYW又はWRCYであり、ここで、Dはアデニン、グアニン又はチミンであり、Rはアデニン又はグアニンであり、Gはグアニンであり、Cはシトシンであり、Hはアデニン又はシトシン又はチミンであり、Wはアデニン又はチミンであり、Yはシトシン又はチミンである、請求項21に記載のライブラリー。
【請求項23】
前記抗体分子のそれぞれをコードするヌクレオチド配列が、前記DNAモチーフの残基以外のどの残基においても参照抗体のヌクレオチド配列と異ならない、請求項20~22のいずれか一項に記載のライブラリー。
【請求項24】
前記DNAモチーフのうちの1つ又は複数が、前記抗体分子のフレームワーク領域をコードするDNA配列にある、請求項20~23のいずれか一項に記載のライブラリー。
【請求項25】
前記DNAモチーフのうちの1つ又は複数が、前記抗体分子のCDRをコードするDNA配列にある、請求項20~24のいずれか一項に記載のライブラリー。
【請求項26】
前記DNAモチーフの全てが、前記抗体分子のフレームワーク領域をコードするDNA配列にある、請求項24に記載のライブラリー。
【請求項27】
各バリアントのDNA配列が、前記DNAモチーフの前記点変異を起源とする脱アミノ化部位、異性化部位、N結合型グリコシル化部位又は酸化部位を含まない(又はコードしない)、請求項20~26のいずれか一項に記載のライブラリー。
【請求項28】
ライブラリーの各メンバーが、請求項20~27のいずれか一項に記載の抗体分子のライブラリーの抗体分子をコードする、ヌクレオチド配列のライブラリー。
【請求項29】
バリアント抗体分子のライブラリーを生成/生産する方法であって、前記バリアント抗体分子が、参照抗体のバリアントであり、前記方法が、前記参照抗体の複数のバリアントを含むライブラリーが生成されるように、
a)参照抗体をコードするヌクレオチド配列を提供するステップ、
b)前記ヌクレオチド配列において、体細胞超変異誘導酵素による脱アミノ化に対して感受性の1つ又は複数のDNAモチーフを同定するステップ;
c)前記DNAモチーフのうちの1つ又は複数について、前記DNAモチーフの残基を置換するための少なくとも1つのバリアントヌクレオチド残基を選択するステップであり、前記置換が、参照抗体と比較して、前記DNAモチーフによってコードされるアミノ酸配列に変更を有するバリアント抗体分子をコードするバリアントヌクレオチド配列をもたらす、ステップ;及び
d)ステップ(b)と(c)を繰り返すステップ
を含む、方法。
【請求項30】
バリアントの前記ライブラリーをスクリーニングして、参照抗体が結合するエピトープへの結合を決定するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
参照抗体に対して所定の値よりも大きい親和性及び/又は安定性で前記エピトープに結合することが決定されたそれらのバリアントを使用して、バリアント抗体分子の最適化されたライブラリーを生成する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
コンピュータ実装方法である、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
バリアント抗体分子を合成するステップをさらに含む、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ライブラリーが、請求項21~27のいずれか一項に記載の抗体分子のライブラリーである、請求項29~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
参照抗体が、トラスツズマブ又は抗カテプシンS抗体Fsn0503hである、請求項20~27のいずれか一項に記載のライブラリー又は請求項29~34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体ライブラリーを生成する方法、そのような方法を使用して生産された抗体ライブラリー、及びバリアント抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体親和性は、会合速度と解離速度の比率としての、抗体とそれが特異的に結合するタンパク質との間の相互作用の強さの尺度である。この比率の最適化が望ましい多くの理由がある。親和性の増加は、抗体治療が特定の用量でより効果的であることを意味してもよく、又はそれは、用量ごとに必要な薬剤がより少なくなり、そして診断試験が感度を向上させ得ることを意味してもよい。また、親和性を低下させることも、組織への浸透を必要とし、したがって、より速い解離を必要とする一部の薬剤にとっては有益となることがある。また、二重特異性抗体は、有効性を最大化するために、各結合部位の親和性の複雑な調整を必要とすることも示されている。
【0003】
既存の親和性成熟プラットフォームは一般的には、抗体相補性決定領域(CDR)内に焦点を合わせたランダム変異誘発を通じてバリアントの大規模なライブラリーを作出することを含む。このプロセスは、改善された特性を有するごく一部のバリアントを同定するために、非常に多数のバリアント(しばしば>1010)をスクリーニングするという欠点を有する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、先行技術の問題の多くに対処する。実施例に記載されているように、本発明者らは、驚くべきことに、所与の抗体配列をコードするヌクレオチド配列への変異を、体細胞超変異に関与する酵素により標的化されるDNAモチーフに対応する部位に制限することによって、所与の抗体配列の変異体のライブラリーを作出することができ、このライブラリーは、多くの既存の技術によって調製されたものと比較すると、比較的小さいが、比較的高い割合の増加した親和性、又は凝集性、又は融点、又はCHO細胞における発現レベル又はそれらの組み合わせを有するバリアントを含むことを示した。本発明者らは、2つの無関係な抗体、抗カテプシンS抗体、Fsn0503h(Fusion Antibodies Ltd)、及び抗HER2抗体トラスツズマブ(ハーセプチン(Herceptin)(登録商標)、Roche)を利用して本発明を例証した。
【0005】
したがって、本発明の第1の態様は、抗体分子のライブラリーを提供し、各抗体分子は、参照抗体のバリアントであり、各抗体分子のアミノ酸配列は、1つ又は複数のアミノ酸残基において参照抗体のアミノ酸配列と異なっており、前記アミノ酸残基のそれぞれは、バリアントをコードするDNA配列のDNAセグメントから独立的にコードされ、バリアントの前記DNAセグメントは、体細胞超変異誘導酵素による脱アミノ化に対して感受性のDNAモチーフにおける点変異によって、参照抗体をコードする対応するDNA配列のセグメントとは異なっている。
【0006】
本発明の第2の態様は、バリアント抗体分子のライブラリーを生成/生産する方法であって、前記バリアント抗体分子が、参照抗体のバリアントであり、前記方法が、前記参照抗体の複数のバリアントを含むライブラリーが生成されるように、以下のステップを含む、方法を提供する:
a)参照抗体をコードするヌクレオチド配列を提供するステップ、
b)前記ヌクレオチド配列において、体細胞超変異誘導酵素による脱アミノ化に対して感受性の1つ又は複数のDNAモチーフを同定するステップ;
c)前記DNAモチーフのうちの1つ又は複数について、前記DNAモチーフの残基を置換するための少なくとも1つのバリアントヌクレオチド残基を選択するステップであり、前記置換が、参照抗体と比較して、前記DNAモチーフによってコードされるアミノ酸配列に変更を有するバリアント抗体分子をコードするバリアントヌクレオチド配列をもたらす、ステップ;及び
d)ステップ(b)と(c)を繰り返すステップ。
【0007】
参照抗体は、バリアントが望まれるか又は必要とされる任意の抗体分子であり得る。一実施形態では、前記参照抗体は、ヒト化抗体分子である。
【0008】
本発明の第3の態様は、バリアント抗体分子を生成する方法であって、前記バリアント抗体分子が、参照抗体のバリアントであり、前記方法が、以下のステップを含む、方法を提供する:
a)参照抗体をコードするヌクレオチド配列を提供するステップ、
b)前記ヌクレオチド配列において、体細胞超変異誘導酵素による脱アミノ化に対して感受性の1つ又は複数のDNAモチーフを同定するステップ;
c)前記DNAモチーフのうちの1つ又は複数について、前記DNAモチーフの残基を置換するための少なくとも1つのバリアントヌクレオチド残基を選択するステップであり、前記置換が、参照抗体と比較して、前記DNAモチーフによってコードされるアミノ酸配列に変更を有するバリアント抗体分子をコードするバリアントヌクレオチド配列をもたらす、ステップ。
【0009】
本発明の一実施形態では、前記体細胞超変異誘導酵素は、活性化誘導デアミナーゼ(AID)である。
【0010】
本発明の実施形態では、前記DNAモチーフは、DGYW又はWRCH、例えばRGYW又はWRCYであり、ここで、Dはアデニン、グアニン又はチミンであり、Rはアデニン又はグアニンであり、Gはグアニンであり、Cはシトシンであり、Hはアデニン又はシトシン又はチミンであり、Wはアデニン又はチミンであり、Yはシトシン又はチミンである。
【0011】
前記DNAモチーフは、DNAのいずれかの鎖上にあってもよい。前記DNAモチーフが複数ある場合、モチーフは重複していてもよい。
【0012】
本発明者らは、本発明の抗体ライブラリー又は本発明の方法に従って生産される抗体ライブラリーが、ライブラリーのメンバーを、終止コドン又は実際のところ参照抗体と比較して、例えば安定性又は結合の観点から、潜在的に望ましくないと考えられる他のモチーフのいずれをもバリアント抗体分子内にもたらさない、体細胞超変異誘導酵素により標的化されるDNAモチーフの変異に起因するそれらのバリアントにさらに限定することによって、洗練され得ることを示した。
【0013】
したがって、本発明の特定の実施形態では、各バリアントのDNA配列は、前記DNAモチーフの前記点変異を起源とする脱アミノ化部位、異性化部位、N結合型グリコシル化部位又は酸化部位を含まない(又はコードしない)。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記DNAモチーフのうちの1つ又は複数は、前記抗体分子のCDRをコードするDNA配列にある。しかしながら、実施例に記載されるように、本発明者らは、いくつかの参照抗体と共に本方法を使用して、生成されたバリアントが、参照抗体の対応するCDRと比較して、一部のCDRには変異を有さないことがあることを示している。
【0015】
一実施形態では、バリアントは、参照配列の対応するCDRと比較して、1つ又は複数のそのCDRに変更を有さない。
【0016】
そのような一実施形態では、バリアントは、参照配列の対応するCDRと比較して、軽鎖CDR1に変更を有さない。
【0017】
別のそのような実施形態では、バリアントは、参照配列の対応するCDRと比較して、軽鎖CDR2に変更を有さない。
【0018】
別のそのような実施形態では、バリアントは、参照配列の対応するCDRと比較して、軽鎖CDR3に変更を有さない。
【0019】
別のそのような実施形態では、バリアントは、参照配列の対応するCDRと比較して、重鎖CDR1に変更を有さない。
【0020】
別のそのような実施形態では、バリアントは、参照配列の対応するCDRと比較して、重鎖CDR2に変更を有さない。
【0021】
別のそのような実施形態では、バリアントは、親配列の対応するCDRと比較して、重鎖CDR3に変更を有さない。
【0022】
さらに、実施例に示されるように、参照抗体のいくつかのバリアントでは、バリアントを特徴付ける変異の多くが、バリアント抗体分子のフレームワーク領域にあり得る。
【0023】
したがって、本発明のライブラリー又は方法の特定の実施形態では、前記DNAモチーフのうちの1つ又は複数が、前記抗体分子のフレームワーク領域をコードするDNA配列にある。いくつかのそのような実施形態では、前記DNAモチーフの全てが、前記抗体分子のフレームワーク領域をコードするDNA配列にある。
【0024】
本発明の一実施形態では、20%を超える、例えば、40%を超える、50%を超える、60%を超える、70%を超える、80%を超える、又は90%を超える、参照抗体の対応する位置におけるヌクレオチド残基とは異なる各バリアント抗体のヌクレオチド残基が、体細胞超変異誘発酵素による脱アミノ化に対して感受性のDNAモチーフの残基である。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、前記抗体分子のそれぞれをコードするヌクレオチド配列は、前記DNAモチーフの残基以外のどの残基においても参照抗体のヌクレオチド配列と異ならない。
【0026】
本発明の抗体ライブラリー及び/又は本発明の方法を使用して生産される抗体ライブラリーは、高親和性及び/又は安定性のバリアントの割合を高めるために、さらに洗練されてもよい。
【0027】
本発明の抗体ライブラリー及び/又は本発明の方法を使用して生産される抗体ライブラリーは、異なる凝集性を有する、すなわち互いに凝集する能力がより低いバリアントの割合を高めるために、さらに洗練されてもよい。本発明の抗体ライブラリー及び/又は本発明の方法を使用して生産される抗体ライブラリーは、特定の融点特性を有するバリアントの割合を高めるために、さらに洗練されてもよい。本発明の抗体ライブラリー及び/又は本発明の方法を使用して生産される抗体ライブラリーは、CHO細胞において好ましい又は所望の発現レベルを示すバリアントの割合を高めるために、さらに洗練されてもよい。本発明の抗体ライブラリー及び/又は本発明の方法を使用して生産される抗体ライブラリーは、高い親和性、安定性、所望の凝集特性、所望の融点特性、所望の発現レベル特性又はそれらの組み合わせを有するバリアントの割合を高めるために、さらに洗練されてもよい。
【0028】
したがって、本発明において、本方法は、参照抗体の結合標的への前記バリアント抗体分子の結合の親和性及び/又は安定性、参照抗体と比べた融点、参照抗体と比べた凝集性、参照抗体と比べた発現レベル又はそれらの組み合わせを決定するステップをさらに含んでいてもよい。したがって、本発明の方法の一実施形態では、前記方法は、バリアントの前記ライブラリーをスクリーニングして、参照抗体が結合するエピトープへの結合を決定するステップをさらに含む。適当には、本発明の方法は、バリアントの前記ライブラリーをスクリーニングして、参照抗体と比較したバリアントの融点、発現レベル、凝集レベル又は安定性を決定するステップをさらに含んでいてもよい。参照抗体と比べて所定の値よりも小さい又は大きい親和性及び/又は安定性で前記エピトープに結合するか、又は融解特性若しくは凝集特性若しくは発現特性を有すると決定されたそれらのバリアントを使用して、バリアント抗体分子の最適化されたライブラリーを生成することができる。前記スクリーニング方法は、従来のインビトロ技術によるものであってもよい。そのような技術は、親和性ELISAアッセイ、BIAcoreアッセイ、速度論的方法又は平衡/溶液法を含むことができる。別の方法では、前記スクリーニングは、例えば、コンピュータに実装された分子ドッキングソフトウェアを使用して、参照抗体のエピトープへのバリアントの結合をモデル化するインシリコ技術によるものであってもよい。
【0029】
実施例に示されているように、分子ドッキングソフトウェアを使用すると、予測される親和性と安定性によってバリアントをランキングすることができ、DNA合成と発現のためのバリアントの小さなライブラリーの選択が可能となる。本発明者らは、そのような小さなライブラリー内で、エラープローンPCRやファージディスプレイなどの既存の技術によって生成されるライブラリーにおいて同定されると予想される数と比較して、非常に多くのバリアントが、増加した親和性を有することを実証した。
【0030】
分子ドッキングソフトウェア製品は市販されている。エピトープへの抗体結合をモデル化するのに適した任意の適当なソフトウェア又はツールが、本発明において使用され得る。例えば、適当なソフトウェアは、SchrodingerのBioluminateソフトウェアを含むが、他のソフトウェアも利用できる。
【0031】
したがって、本発明の実施形態では、抗体ライブラリーは、参照抗体によって結合されるエピトープに対する参照抗体の親和性と比較して、前記エピトープへの増加した親和性を有するバリアントを1%より多く、例えば、5%、10%、20%、30%、40%、又は50%より多く含む。
【0032】
本発明の方法の一実施形態では、本方法は、コンピュータ実装方法である。
【0033】
本発明の第4の態様は、本発明の第2の態様による、バリアント抗体分子のライブラリーを生成する方法を実行するための命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0034】
本発明の方法では、コンピュータにより実装されているかどうかにかかわらず、本方法は、バリアント抗体分子を合成するステップをさらに含んでいてもよい。
【0035】
本発明の方法の実施形態では、方法が、例えば、ドッキングモデリングソフトウェアによるコンピュータ実装スクリーニング方法を含む場合、本発明の方法は、参照抗体が結合するエピトープへの結合を決定するためのバリアントの前記ライブラリーのインビトロスクリーニングをさらに含んでいてもよい。
【0036】
本発明の第5の態様は、トラスツズマブ抗体のバリアントであり、前記バリアントは、(i)参照抗体の軽鎖アミノ酸配列と比較した場合(ここで、前記参照抗体はトラスツズマブである)、軽鎖配列に少なくとも2つのアミノ酸変更を有するか、(ii)トラスツズマブの重鎖アミノ酸配列と比較した場合、重鎖配列に少なくとも2つのアミノ酸変更を有するか、又は(iii)トラスツズマブの軽鎖アミノ酸配列と比較した場合、軽鎖配列に少なくとも1つのアミノ酸変更を有し、そしてトラスツズマブの重鎖アミノ酸配列と比較した場合、重鎖配列に少なくとも1つのアミノ酸変更を有し;前記アミノ酸変更のそれぞれは、バリアントDNA配列のDNAセグメントから独立的にコードされるアミノ酸残基にあり、バリアントの前記DNAセグメントは、体細胞超変異誘導酵素による脱アミノ化に対して感受性のDNAモチーフにおける点変異によって、参照抗体をコードする対応するDNA配列のセグメントとは異なっている。
【0037】
本発明の第5の態様の一実施形態では、前記アミノ酸変更はlc9N、lc9T、lc9I、lc9R、lc9K、lc25G、lc25V、lc25D、lc31N、lc31S、lc31I、lc32D、lc32G、lc32V、lc32T、lc32N、lc32S、lc32I、lc32P、lc32L、lc32F、lc33L、lc33I、lc34G、lc34V、lc34D、lc38E、lc38K、lc40A、lc40S、lc40T、lc43G、lc43V、lc43T、lc43N、lc43S、lc43I、lc43P、lc43L、lc43F、lc46V、lc46I、lc47V、lc51S、lc51P、lc51T、lc76R、lc76N、lc76T、lc76K、lc76I、lc79K、lc79E、lc80T、lc80S、lc80A、lc85S、lc85N、lc85I、lc89H、lc90E、lc90A、lc91N、lc91D、lc91Y、lc93S、lc93N、lc93I、lc94S、lc94N、lc94I、lc101D、lc102S、lc102N、hc2L、hc2I、hc3H、hc4M、hc4V、hc13K、hc13E、hc14A、hc14T、hc14S、hc16A、hc16V、hc16D、hc23E、hc23G、hc23V、hc23T、hc23K、hc23R、hc23I、hc23P、hc23L、hc23S、hc24D、hc24G、hc24V、hc24T、hc24N、hc24S、hc24I、hc24P、hc24L、hc24F、hc26A、hc26V、hc26D、hc28K、hc35N、hc35D、hc35Y、hc48L、hc48I、hc49G、hc49S、hc56A、hc56V、hc56D、hc58S、hc58N、hc58I、hc61G、hc61V、hc61D、hc79G、hc79V、hc79D、hc82E、hc82K、hc85R、hc88D、hc88T、hc88S、hc88P、hc88G、hc92G、hc92V、hc92D、hc103A、hc103V、hc103D、hc106D、hc106G、hc106V、hc106T、hc106N、hc106S、hc106I、hc106P、hc106L、hc106F、hc114S、hc114N、及びhc114Iからなる群から選択される。
【0038】
本発明の文脈において、変異は、上記の命名法を使用して識別され、ここで、lc=軽鎖、hc=重鎖、番号は鎖のアミノ酸残基を指し、大文字はその部位のアミノ酸変異を表す1文字のアミノ酸コードである。したがって、例えば、第4の態様について上に列挙したアミノ酸変更において、lc9Nは、バリアントトラスツズマブ軽鎖の9位にあるアスパラギンを指す。
【0039】
本発明の第5の態様の実施形態では、前記アミノ酸変更はlc9T、lc9I、lc9R、lc9K、lc43F、lc47V、lc51P、lc51T、lc101D、hc2L、hc3H、hc14S、hc16V、hc24P、hc26A、hc26V、hc48I、hc58S、hc61V、hc79V、hc85R、hc88G、hc92V、hc92D、hc103A、hc103V、hc106V、hc114S、hc114N、及びhc114Iからなる群から選択される。
【0040】
第5の態様の一実施形態では、バリアントの軽鎖及び重鎖配列は、第5の態様に関連して上に記載されているアミノ酸変更以外のどの残基においても参照抗体の配列と異ならない。
【0041】
本発明の第6の態様は、カテプシンS抗体のバリアントを提供し、前記バリアントは、(i)参照抗体の軽鎖アミノ酸配列と比較した場合(ここで、前記参照抗体はFsn503hである)、軽鎖配列に少なくとも2つのアミノ酸変更を有するか、(ii)Fsn503hの重鎖アミノ酸配列と比較した場合、重鎖配列に少なくとも2つのアミノ酸変更を有するか、又は(iii)Fsn503hの軽鎖アミノ酸配列と比較した場合、軽鎖配列に少なくとも1つのアミノ酸変更を有し、そしてFsn503hの重鎖アミノ酸配列と比較した場合、重鎖配列に少なくとも1つのアミノ酸変更を有し;前記アミノ酸変更のそれぞれは、バリアントDNA配列のDNAセグメントから独立的にコードされるアミノ酸残基にあり、バリアントの前記DNAセグメントは、体細胞超変異誘導酵素による脱アミノ化に対して感受性のDNAモチーフにおける点変異によって、参照抗体をコードする対応するDNA配列のセグメントとは異なっている。
【0042】
本発明の第6の態様の一実施形態では、前記アミノ酸変更はlc12A、lc12S、lc12T、lc19V、lc28R、lc32T、lc32I、lc45A、lc45S、lc45T、lc50H、lc51V、lc51F、lc51I、lc56L、lc56F、lc56I、lc58K、lc66S、lc69A、lc69V、lc81T、lc81I、lc81N、lc85P、lc85S、lc85T、lc90L、lc90F、lc96I、lc96S、lc96I、lc96N、lc108N、hc3H、hc4V、hc4M、hc10A、hc10V、hc14A、hc14S、hc24G、hc24V、hc30T、hc30I、hc31R、hc31T、hc37L、hc37F、hc40P、hc40S、hc52S、hc52I、hc53S、hc53I、hc84T、hc84I、hc92G、及びhc92Vからなる群から選択される。
【0043】
本発明の第6の態様の一実施形態では、前記アミノ酸変更はlc12A、lc12S、lc12T、lc19V、lc45S、lc45T、lc50H、lc51V、lc56I、lc81I、lc96I、lc96S、lc96I、lc96N、lc108N、hc10A、hc10V、hc14S、hc30I、hc31R、hc37L、hc37F、hc40P、hc40S、hc52I、及びhc92Gからなる群から選択される。
【0044】
本発明の第6の態様の一実施形態では、バリアントの軽鎖及び重鎖配列は、第6の態様に関連して上に記載されているアミノ酸変更以外のどの残基においても参照抗体の配列と異ならない。
【0045】
本発明の第5の態様の一実施形態では、前記バリアント抗体分子は、表2~7に列挙された抗体のいずれかについて示されるアミノ酸変異の組み合わせを有する。第4の態様の別の実施形態では、前記バリアント抗体分子は、表8に列挙された抗体のいずれかについて示されるアミノ酸変異の組み合わせを有する。そのような一実施形態では、前記バリアント抗体は、表8に列挙された抗体のいずれか1つについて示されるアミノ酸変異の組み合わせを有し、トラスツズマブ軽鎖及び重鎖配列と比較して、表8に列挙された前記抗体について示されているもの以外のアミノ酸変異を有さない。
【0046】
本発明の第5の態様の一実施形態では、前記バリアント抗体は、変異lc43Fを有する。
【0047】
本発明の第5の態様の一実施形態では、前記バリアント抗体は、表8のバリアント抗体19、5又は6のいずれかについて示されるアミノ酸変異の組み合わせを有する。そのような一実施形態では、前記バリアントは、トラスツズマブ軽鎖及び重鎖配列と比較して、表8の前記バリアント抗体について示されるもの以外のいかなるアミノ酸変異も有さない。
【0048】
本発明の第5の態様の一実施形態では、バリアント抗体は、トラスツズマブと比較して、lc9K、lc43F、及びhc106Vのアミノ酸変更を含むトラスツズマブ抗体のバリアントである。一実施形態では、バリアント抗体は、表8に列挙されているバリアント抗体19である。
【0049】
本発明の第5の態様の別の実施形態では、バリアント抗体は、トラスツズマブと比較して、lc9R、lc43F、及びhc114Sのアミノ酸変更を含むトラスツズマブ抗体のバリアントである。一実施形態では、バリアント抗体は、表8に列挙されているバリアント抗体5である。
【0050】
本発明の第5の態様の別の実施形態では、バリアント抗体は、トラスツズマブと比較して、lc9I、lc43F、lc101D及びhc79Vのアミノ酸変更を含むトラスツズマブ抗体のバリアントである。一実施形態では、バリアント抗体は、表8に列挙されているバリアント抗体6である。
【0051】
本発明の第6の態様の一実施形態では、前記バリアント抗体分子は、表1に列挙された抗体のいずれかについて示されるアミノ酸変異の組み合わせを有する。
【0052】
本発明の第5又は第6の態様の特定の実施形態では、前記バリアントの軽鎖及び重鎖配列は、参照抗体のアミノ酸配列と比較して、合計で少なくとも3つ、例えば、少なくとも4つ、少なくとも5つ、又は少なくとも6つのアミノ酸変更を含む。
【0053】
本発明の第5又は第6の態様の特定の実施形態では、前記アミノ酸変更のうちの1つ又は複数は、前記バリアント抗体のフレームワーク領域にある。本発明の第5又は第6の態様の特定の実施形態では、前記アミノ酸変更の全てが、前記バリアント抗体のフレームワーク領域にある。
【0054】
本発明の第5又は第6の態様の特定の実施形態では、前記アミノ酸変更のうちの1つ又は複数は、前記バリアント抗体のCDRにある。
【0055】
本発明の第5又は第6の態様の特定の実施形態では、参照抗体と比較した前記バリアント抗体分子の親和性の変化は-2より大きく、参照抗体と比較した前記バリアント抗体分子の安定性の変化は-2より大きい。本発明の第5又は第6の態様の特定の実施形態では、参照抗体と比較した前記バリアント抗体分子の親和性の変化は-10より大きく、例えば-15より大きく、例えば-20より大きく、例えば-25よりも大きい。
【0056】
本発明の第5又は第6の態様の特定の実施形態では、参照抗体と比較した前記バリアント抗体分子の安定性の変化は-10より大きく、例えば-30より大きく、例えば-50より大きく、例えば-60よりも大きい。適当には、凝集特性、融点特性又は発現レベルは、参照抗体と少なくとも2倍、3倍、10倍異なっていてもよい。
【0057】
疑義を避けるために、負の親和性値が大きいほど、親和性は大きくなる。したがって、親和性値が-10である抗体は、親和性値が-5である抗体よりも大きな親和性値を有すると考えられる。同様に、負の安定性値が大きいほど、安定性は高くなる。したがって、安定性値が-10である抗体は、安定性値が-5である抗体よりも大きな安定性値を有すると考えられる。
【0058】
親和性と安定性は、任意の適当な方法で評価され得る。実施例において、本発明者らは、Schrodingerの生物製剤ツールMaestroの一部として、残基スキャニング親和性成熟ツールを使用した。値は、親抗体に相対的であり、親和性の改善の最小値は、親和性と安定性の両方で-2kcal/molとした。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1A】
図1は、Fsn0503h抗体の軽鎖と重鎖のアミノ酸配列を、各鎖上の潜在的な変異を表示しつつ、示している(配列番号1及び2)。二重に囲まれたアミノ酸は、その位置での使用がまれであるため、ライブラリーにおいては許容されなかった。二重に囲まれたアスタリスク(
*)は、同様に許容されなかった終止コドンを表す。単に囲まれたアミノ酸領域はCDRである。
【
図1B】
図1は、Fsn0503h抗体の軽鎖と重鎖のアミノ酸配列を、各鎖上の潜在的な変異を表示しつつ、示している(配列番号1及び2)。二重に囲まれたアミノ酸は、その位置での使用がまれであるため、ライブラリーにおいては許容されなかった。二重に囲まれたアスタリスク(
*)は、同様に許容されなかった終止コドンを表す。単に囲まれたアミノ酸領域はCDRである。
【
図2】
図2は、Fsn0503hとカテプシンSの間の予測されるタンパク質-タンパク質相互作用を示す模式的モデルである。
【
図3-1】
図3は、1~6個の変異について、コンビナトリアルな様式でアミノ酸変異の親和性と安定性の予測を列挙した表1を示している。青で強調表示されている変異のグループは、変化が-2よりも大きい、安定性と親和性の両方が改善されたバリアントを表している。
【
図3-2】
図3は、1~6個の変異について、コンビナトリアルな様式でアミノ酸変異の親和性と安定性の予測を列挙した表1を示している。青で強調表示されている変異のグループは、変化が-2よりも大きい、安定性と親和性の両方が改善されたバリアントを表している。
【
図3-3】
図3は、1~6個の変異について、コンビナトリアルな様式でアミノ酸変異の親和性と安定性の予測を列挙した表1を示している。青で強調表示されている変異のグループは、変化が-2よりも大きい、安定性と親和性の両方が改善されたバリアントを表している。
【
図3-4】
図3は、1~6個の変異について、コンビナトリアルな様式でアミノ酸変異の親和性と安定性の予測を列挙した表1を示している。青で強調表示されている変異のグループは、変化が-2よりも大きい、安定性と親和性の両方が改善されたバリアントを表している。
【
図3-5】
図3は、1~6個の変異について、コンビナトリアルな様式でアミノ酸変異の親和性と安定性の予測を列挙した表1を示している。青で強調表示されている変異のグループは、変化が-2よりも大きい、安定性と親和性の両方が改善されたバリアントを表している。
【
図3-6】
図3は、1~6個の変異について、コンビナトリアルな様式でアミノ酸変異の親和性と安定性の予測を列挙した表1を示している。青で強調表示されている変異のグループは、変化が-2よりも大きい、安定性と親和性の両方が改善されたバリアントを表している。
【
図3-7】
図3は、1~6個の変異について、コンビナトリアルな様式でアミノ酸変異の親和性と安定性の予測を列挙した表1を示している。青で強調表示されている変異のグループは、変化が-2よりも大きい、安定性と親和性の両方が改善されたバリアントを表している。
【
図3-8】
図3は、1~6個の変異について、コンビナトリアルな様式でアミノ酸変異の親和性と安定性の予測を列挙した表1を示している。青で強調表示されている変異のグループは、変化が-2よりも大きい、安定性と親和性の両方が改善されたバリアントを表している。
【
図3-9】
図3は、1~6個の変異について、コンビナトリアルな様式でアミノ酸変異の親和性と安定性の予測を列挙した表1を示している。青で強調表示されている変異のグループは、変化が-2よりも大きい、安定性と親和性の両方が改善されたバリアントを表している。
【
図3-10】
図3は、1~6個の変異について、コンビナトリアルな様式でアミノ酸変異の親和性と安定性の予測を列挙した表1を示している。青で強調表示されている変異のグループは、変化が-2よりも大きい、安定性と親和性の両方が改善されたバリアントを表している。
【
図3-11】
図3は、1~6個の変異について、コンビナトリアルな様式でアミノ酸変異の親和性と安定性の予測を列挙した表1を示している。青で強調表示されている変異のグループは、変化が-2よりも大きい、安定性と親和性の両方が改善されたバリアントを表している。
【
図3-12】
図3は、1~6個の変異について、コンビナトリアルな様式でアミノ酸変異の親和性と安定性の予測を列挙した表1を示している。青で強調表示されている変異のグループは、変化が-2よりも大きい、安定性と親和性の両方が改善されたバリアントを表している。
【
図4】
図4は、発現させた各バリアントと親のFsn0503h抗体とのELISAでの比較を示している。
【
図5】
図5は、Octet装置(Pall)を使用してBLIで測定した各バリアントの親和性(KD)測定値を親Fsn0503h抗体のものと並べて示している。
【
図6】
図6は、Fsn0503hのバリアントの親和性on-offレートマップを示している。親抗体は、白抜きの点で示されている。4.45nMの線は、親抗体と同等の親和性を表し、親和性が増加した(<4.45nM)任意のバリアントは、4.45nMの線の左側の領域内にある。
【
図7-1】
図7は、トラスツズマブ抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号3)を示しており、野生型抗体軽鎖の各位置のアミノ酸残基が太字で表示され、該当する場合には、各残基の右側の四角に潜在的な変異が示されている。二重の線で示されているアミノ酸は、その位置での使用がまれであるため、ライブラリーにおいては許容されていない。二重の線のアスタリスク(
*)は、同様に許可されなかった終止コドンを表している。相補性決定領域CDRとフレームワーク領域(FR)が示されている。
【
図7-2】
図7は、トラスツズマブ抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号3)を示しており、野生型抗体軽鎖の各位置のアミノ酸残基が太字で表示され、該当する場合には、各残基の右側の四角に潜在的な変異が示されている。二重の線で示されているアミノ酸は、その位置での使用がまれであるため、ライブラリーにおいては許容されていない。二重の線のアスタリスク(
*)は、同様に許可されなかった終止コドンを表している。相補性決定領域CDRとフレームワーク領域(FR)が示されている。
【
図7-3】
図7は、トラスツズマブ抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号3)を示しており、野生型抗体軽鎖の各位置のアミノ酸残基が太字で表示され、該当する場合には、各残基の右側の四角に潜在的な変異が示されている。二重の線で示されているアミノ酸は、その位置での使用がまれであるため、ライブラリーにおいては許容されていない。二重の線のアスタリスク(
*)は、同様に許可されなかった終止コドンを表している。相補性決定領域CDRとフレームワーク領域(FR)が示されている。
【
図8-1】
図8は、トラスツズマブ抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号4)を示しており、野生型抗体抗体鎖の各位置のアミノ酸残基が太字で表示され、該当する場合には、各残基の右側の四角に潜在的な変異が示されている。二重の線で示されているアミノ酸は、その位置での使用がまれであるため、ライブラリーにおいては許容されていない。二重の線のアスタリスク(
*)は、同様に許可されなかった終止コドンを表している。相補性決定領域CDRとフレームワーク領域(FR)が示されている。
【
図8-2】
図8は、トラスツズマブ抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号4)を示しており、野生型抗体抗体鎖の各位置のアミノ酸残基が太字で表示され、該当する場合には、各残基の右側の四角に潜在的な変異が示されている。二重の線で示されているアミノ酸は、その位置での使用がまれであるため、ライブラリーにおいては許容されていない。二重の線のアスタリスク(
*)は、同様に許可されなかった終止コドンを表している。相補性決定領域CDRとフレームワーク領域(FR)が示されている。
【
図8-3】
図8は、トラスツズマブ抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号4)を示しており、野生型抗体抗体鎖の各位置のアミノ酸残基が太字で表示され、該当する場合には、各残基の右側の四角に潜在的な変異が示されている。二重の線で示されているアミノ酸は、その位置での使用がまれであるため、ライブラリーにおいては許容されていない。二重の線のアスタリスク(
*)は、同様に許可されなかった終止コドンを表している。相補性決定領域CDRとフレームワーク領域(FR)が示されている。
【
図9】
図9は、抗体のタンパク質構造にアミノ酸の変化をもたらし、親和性の増加を導く変化を抗体のDNA配列に引き起こすために、どのように体細胞超変異が使用され得るかを模式的に示している。
【
図10】
図10は、残基スキャニングの実行に使用された、ヒトHER2と複合体を形成したトラスツズマブの完全に解明された結晶構造を示している。HER2の細胞外ドメインのドメインIVがトラスツズマブに結合することが見出された。
【
図11A-1】
図11aは、参照トラスツズマブ抗体と比較して1つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表2を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。Δ親和性は、トラスツズマブの親和性との比較で予測されるkcal/molの自由エネルギー変化(ΔΔG)である。Δ安定性は、トラスツズマブの安定性との比較で予測される自由エネルギー変化(ΔΔG)である。負のΔ親和性及び負のΔ安定性の値は、トラスツズマブと比較して改善された親和性と改善された安定性を表すと考えられる。
【
図11A-2】
図11aは、参照トラスツズマブ抗体と比較して1つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表2を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。Δ親和性は、トラスツズマブの親和性との比較で予測されるkcal/molの自由エネルギー変化(ΔΔG)である。Δ安定性は、トラスツズマブの安定性との比較で予測される自由エネルギー変化(ΔΔG)である。負のΔ親和性及び負のΔ安定性の値は、トラスツズマブと比較して改善された親和性と改善された安定性を表すと考えられる。
【
図11B-1】
図11bは、参照トラスツズマブ抗体と比較して2つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表3を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11B-2】
図11bは、参照トラスツズマブ抗体と比較して2つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表3を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11B-3】
図11bは、参照トラスツズマブ抗体と比較して2つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表3を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11B-4】
図11bは、参照トラスツズマブ抗体と比較して2つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表3を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11B-5】
図11bは、参照トラスツズマブ抗体と比較して2つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表3を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11C-1】
図11cは、参照トラスツズマブ抗体と比較して3つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表4を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11C-2】
図11cは、参照トラスツズマブ抗体と比較して3つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表4を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11C-3】
図11cは、参照トラスツズマブ抗体と比較して3つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表4を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11C-4】
図11cは、参照トラスツズマブ抗体と比較して3つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表4を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11C-5】
図11cは、参照トラスツズマブ抗体と比較して3つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表4を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11C-6】
図11cは、参照トラスツズマブ抗体と比較して3つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表4を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11C-7】
図11cは、参照トラスツズマブ抗体と比較して3つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表4を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11C-8】
図11cは、参照トラスツズマブ抗体と比較して3つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表4を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11C-9】
図11cは、参照トラスツズマブ抗体と比較して3つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表4を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11D-1】
図11dは、参照トラスツズマブ抗体と比較して4つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表5を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11D-2】
図11dは、参照トラスツズマブ抗体と比較して4つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表5を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11D-3】
図11dは、参照トラスツズマブ抗体と比較して4つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表5を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11D-4】
図11dは、参照トラスツズマブ抗体と比較して4つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表5を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11D-5】
図11dは、参照トラスツズマブ抗体と比較して4つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表5を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11D-6】
図11dは、参照トラスツズマブ抗体と比較して4つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表5を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11D-7】
図11dは、参照トラスツズマブ抗体と比較して4つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表5を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11D-8】
図11dは、参照トラスツズマブ抗体と比較して4つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表5を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11D-9】
図11dは、参照トラスツズマブ抗体と比較して4つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表5を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11D-10】
図11dは、参照トラスツズマブ抗体と比較して4つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表5を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11D-11】
図11dは、参照トラスツズマブ抗体と比較して4つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表5を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11D-12】
図11dは、参照トラスツズマブ抗体と比較して4つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表5を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11D-13】
図11dは、参照トラスツズマブ抗体と比較して4つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表5を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11E-1】
図11eは、参照トラスツズマブ抗体と比較して5つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表6を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11E-2】
図11eは、参照トラスツズマブ抗体と比較して5つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表6を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11E-3】
図11eは、参照トラスツズマブ抗体と比較して5つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表6を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11E-4】
図11eは、参照トラスツズマブ抗体と比較して5つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表6を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11E-5】
図11eは、参照トラスツズマブ抗体と比較して5つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表6を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11E-6】
図11eは、参照トラスツズマブ抗体と比較して5つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表6を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11E-7】
図11eは、参照トラスツズマブ抗体と比較して5つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表6を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11E-8】
図11eは、参照トラスツズマブ抗体と比較して5つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表6を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11E-9】
図11eは、参照トラスツズマブ抗体と比較して5つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表6を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11E-10】
図11eは、参照トラスツズマブ抗体と比較して5つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表6を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11E-11】
図11eは、参照トラスツズマブ抗体と比較して5つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表6を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11E-12】
図11eは、参照トラスツズマブ抗体と比較して5つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表6を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11E-13】
図11eは、参照トラスツズマブ抗体と比較して5つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表6を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11E-14】
図11eは、参照トラスツズマブ抗体と比較して5つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表6を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11E-15】
図11eは、参照トラスツズマブ抗体と比較して5つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表6を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11E-16】
図11eは、参照トラスツズマブ抗体と比較して5つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表6を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-1】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-2】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-3】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-4】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-5】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-6】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-7】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-8】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-9】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-10】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-11】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-12】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-13】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-14】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-15】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-16】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-17】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-18】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図11F-19】
図11fは、参照トラスツズマブ抗体と比較して6つの変異を持つトラスツズマブバリアントを列挙した表7を示している。2列目において、Lは軽鎖を示し、Hは重鎖を示している。
【
図12-1】
図12は、改善された親和性に従ってランキングされた、改善された親和性と改善された安定性の両方を有する表1~7までの100個のトラスツズマブバリアントを列挙した表8を示している。
【
図12-2】
図12は、改善された親和性に従ってランキングされた、改善された親和性と改善された安定性の両方を有する表1~7までの100個のトラスツズマブバリアントを列挙した表8を示している。
【
図12-3】
図12は、改善された親和性に従ってランキングされた、改善された親和性と改善された安定性の両方を有する表1~7までの100個のトラスツズマブバリアントを列挙した表8を示している。
【
図12-4】
図12は、改善された親和性に従ってランキングされた、改善された親和性と改善された安定性の両方を有する表1~7までの100個のトラスツズマブバリアントを列挙した表8を示している。
【
図12-5】
図12は、改善された親和性に従ってランキングされた、改善された親和性と改善された安定性の両方を有する表1~7までの100個のトラスツズマブバリアントを列挙した表8を示している。
【
図12-6】
図12は、改善された親和性に従ってランキングされた、改善された親和性と改善された安定性の両方を有する表1~7までの100個のトラスツズマブバリアントを列挙した表8を示している。
【
図12-7】
図12は、改善された親和性に従ってランキングされた、改善された親和性と改善された安定性の両方を有する表1~7までの100個のトラスツズマブバリアントを列挙した表8を示している。
【
図12-8】
図12は、改善された親和性に従ってランキングされた、改善された親和性と改善された安定性の両方を有する表1~7までの100個のトラスツズマブバリアントを列挙した表8を示している。
【
図12-9】
図12は、改善された親和性に従ってランキングされた、改善された親和性と改善された安定性の両方を有する表1~7までの100個のトラスツズマブバリアントを列挙した表8を示している。
【
図13A】
図13は、kcal/molの予測自由エネルギー変化(ΔΔG)を使用して、親和性に基づきスコア付けした、上位5つのトラスツズマブバリアントを模式的に示している。1番目と3番目にランキングされたバリアントには、合計5つの変異があり、ランク2と4は4つの変異を有し、最後にランク5は3つのアミノ酸変異を含んでいる。トラスツズマブが結合するHER2のドメインIVはシアンで着色されている一方、scFvは緑、CDRは赤で着色されている。変異は、黄色でハイライトされている。
【
図13B】
図13は、kcal/molの予測自由エネルギー変化(ΔΔG)を使用して、親和性に基づきスコア付けした、上位5つのトラスツズマブバリアントを模式的に示している。1番目と3番目にランキングされたバリアントには、合計5つの変異があり、ランク2と4は4つの変異を有し、最後にランク5は3つのアミノ酸変異を含んでいる。トラスツズマブが結合するHER2のドメインIVはシアンで着色されている一方、scFvは緑、CDRは赤で着色されている。変異は、黄色でハイライトされている。
【
図13C】
図13は、kcal/molの予測自由エネルギー変化(ΔΔG)を使用して、親和性に基づきスコア付けした、上位5つのトラスツズマブバリアントを模式的に示している。1番目と3番目にランキングされたバリアントには、合計5つの変異があり、ランク2と4は4つの変異を有し、最後にランク5は3つのアミノ酸変異を含んでいる。トラスツズマブが結合するHER2のドメインIVはシアンで着色されている一方、scFvは緑、CDRは赤で着色されている。変異は、黄色でハイライトされている。
【
図14】
図14は、ランキングに使用されたレポートポイントを表示した20サンプルのセンサーグラムを示している。アッセイは25℃で実施。
【
図15】
図15は、HER2に結合するトラスツズマブバリアントのoffレートランキングを示すグラフを示しており、安定な結合体(最良の結合体を青で囲ってある)を同定するための安定性_初期と安定性_後期を示している。合計89のサンプルが結合安定性に関して分析され、ランキングされたが、わかりやすくするために29のみが示されている。トラスツズマブは市販の抗体物質である。野生型は、トラスツズマブの配列を持ち、全てのトラスツズマブバリアント/変異体と同時に一過的に発現された抗体である。変異体はトラスツズマブバリアントである。変異体5、6、及び19は、表8に番号5、6、及び19として列挙されているトラスツズマブバリアントである。アッセイは25℃で実施。
【
図16】
図16は、HER2に結合するトラスツズマブバリアントのoffレートランキングを示すグラフを示し、
図15に示される上位の結合体の小さなサブセットから安定な結合体を同定するための安定性_初期と安定性_後期を示している(これらの結合体は100%残留線に最も近い)。合計で、14のトラスツズマブバリアントが結合安定性に関して分析され、ランキングされた。トラスツズマブは市販の抗体である。野生型は、全てのトラスツズマブバリアント/変異体と同時に一過的に発現された物質である。変異体はトラスツズマブバリアントである。変異体5、6、及び19は、表8に番号5、6、及び19として列挙されているトラスツズマブバリアントである。アッセイは37℃で実施。
【
図17-1】
図17は、37℃のランニングバッファーにおける様々なHER2濃度(2倍段階希釈;最高濃度が曲線上に示されている)についての、非共有結合で固定されたトラスツズマブ(a)、野生型(b)、変異体5(c)及び(d)変異体19抗体の表面でモニターされた参照補正BLI結合曲線(黒)を示している。見かけの解離速度定数(k
d)及び会合速度(k
a)定数は、装置に付属のソフトウェアを使用して、単純な1:1相互作用モデルA+B=ABをセンサーグラムにグローバルフィッティング(赤)させることによって決定された。グローバルフィッティングの結果は、表9にまとめられている。
【
図17-2】
図17は、37℃のランニングバッファーにおける様々なHER2濃度(2倍段階希釈;最高濃度が曲線上に示されている)についての、非共有結合で固定されたトラスツズマブ(a)、野生型(b)、変異体5(c)及び(d)変異体19抗体の表面でモニターされた参照補正BLI結合曲線(黒)を示している。見かけの解離速度定数(k
d)及び会合速度(k
a)定数は、装置に付属のソフトウェアを使用して、単純な1:1相互作用モデルA+B=ABをセンサーグラムにグローバルフィッティング(赤)させることによって決定された。グローバルフィッティングの結果は、表9にまとめられている。
【
図18】
図18は、トラスツズマブバリアントの親和性の予測と測定の間の相関関係を模式的に示している。
【
図19-1】
図19は、37℃のランニングバッファー中、一定範囲の濃度の野生型(a)、変異体5(b)及び(c)変異体19抗体において、非共有結合で固定されたHER2の表面でモニターされたブランク補正BLI結合曲線(黒)を示している。見かけの解離速度定数(k
d)及び会合速度(k
a)定数は、装置に付属のソフトウェアを使用して、単純な1:1相互作用モデルA+B=ABをセンサーグラムにグローバルフィッティング(赤)させることによって決定された。グローバルフィッティングの結果は、表10にまとめられている。
【
図19-2】
図19は、37℃のランニングバッファー中、一定範囲の濃度の野生型(a)、変異体5(b)及び(c)変異体19抗体において、非共有結合で固定されたHER2の表面でモニターされたブランク補正BLI結合曲線(黒)を示している。見かけの解離速度定数(k
d)及び会合速度(k
a)定数は、装置に付属のソフトウェアを使用して、単純な1:1相互作用モデルA+B=ABをセンサーグラムにグローバルフィッティング(赤)させることによって決定された。グローバルフィッティングの結果は、表10にまとめられている。
【
図20-1】
図20は、37℃のランニングバッファー中、一定範囲の濃度の野生型(a)、変異体5(b)、及び(c)変異体19抗体に提示された、一定範囲の濃度でコーティングされた非共有結合で固定されたHER2の表面でモニターされた、二重参照補正BLI結合曲線(黒)を示している。見かけの解離速度定数(k
d)及び会合速度(k
a)定数は、装置に付属のソフトウェアを使用して、単純な1:1相互作用モデルA+B=ABをセンサーグラムにグローバルフィッティング(赤)させることによって決定された。グローバルフィッティングの結果が、表11、12及び13にまとめられている。
【
図20-2】
図20は、37℃のランニングバッファー中、一定範囲の濃度の野生型(a)、変異体5(b)、及び(c)変異体19抗体に提示された、一定範囲の濃度でコーティングされた非共有結合で固定されたHER2の表面でモニターされた、二重参照補正BLI結合曲線(黒)を示している。見かけの解離速度定数(k
d)及び会合速度(k
a)定数は、装置に付属のソフトウェアを使用して、単純な1:1相互作用モデルA+B=ABをセンサーグラムにグローバルフィッティング(赤)させることによって決定された。グローバルフィッティングの結果が、表11、12及び13にまとめられている。
【
図21】
図21は、トランスフェクトされたCHOの上清1mlあたりに得られた精製IgGのmgとして発現されたOctetイムノアッセイによるFsn0503バリアントの発現収量を示している。野生型はオレンジ色で示されている。
【
図22】
図22は、Fsn0503バリアントの融点測定値(TM1及びTM2)を摂氏で示している。野生型は1位にある。
【
図23】
図23は、サイズ排除クロマトグラフィーによるFsn0503バリアントの単分散(非凝集)分子の割合の測定値を示している。野生型はオレンジ色で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0060】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明の分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0061】
明細書を通して、文脈上別段の要求がない限り、「含む(comprise)」若しくは「含む(include)」という用語、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」、「含む(includes)」若しくは「含む(including)」などの変形は、記載された整数又は整数の群を含むことを意味すると理解されるが、任意の他の整数又は整数の群を除外するものではない。
【0062】
本明細書で使用される場合、「a(一つ)」、「an(一つ)」及び「the(その)」などの用語は、明らかに文脈上別段の要求がない限り、単数形及び複数形の指示対象を含む。したがって、例えば、「活性剤」又は「薬理学的活性剤」への言及は、単一の活性剤及び2つ以上の異なる活性剤の組み合わせを含む一方、「担体」への言及は、単一の担体と同様に2つ以上の担体の混合物などを含む。
【0063】
「DNAセグメント」という用語は、DNA配列の一部分を指す。本発明の文脈において、DNAセグメントは、抗体分子をコードするより長いDNA配列の一部であるDNA残基の一部分であり得る。DNAセグメントは、体細胞超変異誘導酵素の配列特異的結合部位であるDNAモチーフを形成するDNA残基からなっていてもよい。
【0064】
本明細書で使用される「から本質的に成る」という用語は、本発明が必ず列挙された項目を含み、本発明の基本的で新規な特性に実質的に影響を及ぼさない列挙されていない項目も含む余地があることを意味する。
【0065】
本明細書で定義される「エピトープ」は、抗体分子によって認識され、結合され得る複数のアミノ酸残基を指す。エピトープは一般に、化学的に活性な表面基から構成され、特異的な三次元構造特性と共に、エピトープの三次元構造に寄与する特異的な電荷特性を有する。
【0066】
本発明の抗体分子又は本発明において使用するための抗体分子は、非隣接エピトープに結合してもよい。「非隣接エピトープ」は、残基がポリペプチド配列の長さに沿って非連続的に間隔をあけられるか又はグループ化されるように、配列において直線的でない一連のアミノ酸残基から構成されるエピトープである。
【0067】
「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書では、ペプチド結合又はアイソスターなどの修飾ペプチド結合によって共有結合された一連の少なくとも2つのアミノ酸を記述するために交換可能に使用される。ペプチド又はタンパク質を構成し得るアミノ酸の最大数に制限は課されない。さらに、ポリペプチドという用語は、ペプチドのフラグメント、類似体、及び誘導体にまで及び、ここで、前記フラグメント、類似体、又は誘導体は、フラグメント、誘導体、又は類似体が由来するペプチドと同じ生物学的機能活性を保持している。
【0068】
本明細書においてポリペプチド構成要素を記述するために使用される命名法は、アミノ基(N)が各アミノ酸残基の左側に提示され、カルボキシル基が右側に提示される従来の慣行に従う。
【0069】
抗体及び抗体分子
「抗体」は、天然のものであるか部分的又は全体的に合成的に生産されたものであるかにかかわらず、免疫グロブリンである。この用語はまた、抗体結合ドメインであるか、又は抗体結合ドメインと相同である結合ドメインを有する任意のポリペプチド、タンパク質又はペプチドも包含する。これらは天然源に由来してもよく、又は部分的若しくは全体的に合成的に生産されてもよい。抗体の例は、免疫グロブリンアイソタイプ及びそれらのアイソタイプサブクラス、及びFab、scFv、Fv、dAb若しくはFdなどの抗原結合ドメインを含むフラグメント、及び二重特異性抗体である。
【0070】
抗体は多くの方法で改変することができ、「抗体」及び「抗体分子」という用語は、必要な特異性を有する結合ドメインを有する任意の結合メンバー又は物質を包含すると解釈されるべきである。本発明の抗体分子又は抗体分子において使用するための抗体分子は、モノクローナル抗体、又はフラグメント、誘導体、機能的同等物又は相同体であり得る。この用語は、天然のものであるか完全に又は部分的に合成されたものであるかにかかわらず、免疫グロブリン結合ドメインを含む任意のポリペプチドを含む。したがって、別のポリペプチドに融合した免疫グロブリン結合ドメイン又は同等物を含むキメラ分子が含まれる。
【0071】
抗体の定常領域は、任意の適当な免疫グロブリンサブタイプのものであり得る。特定の実施形態では、ヒト免疫グロブリン分子が使用される場合、抗体のサブタイプはIgA、IgM、IgD及びIgEクラスのものであり得る。そのような抗体はさらに、任意のサブクラス、例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3及びIgG4に属し得る。
【0072】
抗体全体のフラグメントは、抗原結合の機能を果たすことができる。そのような結合フラグメントの例は、VL、VH、CL及びCH1抗体ドメインを含むか、又はそれらからなるFabフラグメント;単一抗体のVL及びVHドメインからなるFvフラグメント;F(ab’)2フラグメント;2つの連結されたFabフラグメントを含む二価フラグメント;2つのドメインが結合して抗原結合部位を形成することを可能とするペプチドリンカーによってVHドメインとVLドメインが連結されている一本鎖Fv分子(scFv);並びに、遺伝子融合によって構築された多価又は多重特異性フラグメントであり得る二重特異性抗体である。
【0073】
特定の実施形態では、ヒト化抗体が使用され得る。ヒト化抗体は、非ヒト抗体の超可変領域とヒト抗体の定常領域を有する改変抗体であってもよい。したがって、結合メンバーは、ヒト定常領域を含み得る。超可変領域以外の可変領域もまた、ヒト抗体の可変領域に由来してもよく、及び/又は非ヒト抗体に由来してもよい。他の場合には、可変領域全体が非ヒト抗体に由来してもよく、抗体はキメラ化されていると言われる。
【0074】
モノクローナル抗体や他の抗体を取得し、組換えDNA技術の技法を使用して、元の抗体の特異性を保持する他の抗体又はキメラ分子を生産することが可能である。そのような技法は、異なる免疫グロブリンの定常領域、又は定常領域とフレームワーク領域に対する抗体の免疫グロブリン可変領域、又は相補性決定領域(CDR)をコードするDNAを導入することを含み得る。ハイブリドーマ又は抗体を産生する他の細胞は、遺伝子変異又は他の変化を受けてもよく、これは、産生される抗体の結合特異性を変えることも、変えないこともある。
【0075】
抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、ラクダ抗体、サメ抗体及びインビトロ抗体からなる群から選択され得る。特定の実施形態では、抗原結合フラグメントが使用され得る。抗原結合フラグメントは、前述の抗体のいずれかに由来し得る。特定の実施形態では、抗原結合フラグメントは、Fabフラグメント、scFvフラグメント、Fvフラグメント及びdAbフラグメントからなる群から選択される。特定の実施形態では、抗体は、2つの完全な重鎖及び2つの完全な軽鎖、又はそれらの抗原結合フラグメントを含む。特定の実施形態では、抗体は、アイソタイプIgG、IgA、IgE若しくはIgM、又はそれらの抗原結合フラグメントのものである。抗体がアイソタイプIgGのものである特定の実施形態では、抗体は、サブタイプIgG1、IgG2若しくはIgG3、又はそれらの抗原結合フラグメントのものであり得る。特定の実施形態では、抗体は、サブタイプIgG4、又はその抗原結合フラグメントのものである。
【0076】
抗体の生産
抗体は、多くの技術によって提供され得る。例えば、抗原への結合特異性を有するアミノ酸配列を同定するために、ファージディスプレイベースのバイオパニングアッセイなどのコンビナトリアルなスクリーニング技術が使用され得る。このようなファージディスプレイバイオパニング技術は、糸状菌の表面に抗体結合フラグメントを提示することによって、免疫選択を模倣した手順で適当なエピトープ結合リガンドを同定する方法に利用される、ファージディスプレイライブラリーの使用を伴う。特異的な結合活性を有するファージが選択される。その後、選択されたファージは、キメラ、CDRグラフト化、ヒト化、又はヒト抗体の生産に使用され得る。抗体は、当技術分野で知られている方法を使用して、抗原に結合するそれらの能力について試験され得る。
【0077】
本発明で使用するための抗体又は抗原フラグメントはまた、化学合成によって全体的又は部分的に生成されてもよい。抗体は、十分に確立された標準的な液相又は好ましくは固相ペプチド合成法に従って容易に調製することができ、その一般的な説明は広く入手可能であり、当業者にはよく知られている。さらに、それらは溶液中で、液相法によって、又は固相、液相、及び溶液化学の任意の組み合わせによって、調製されてもよい。
【0078】
本発明における使用に適した抗体又は抗体フラグメントを生産する別の便利な方法は、発現系における核酸の使用によって、それらをコードする核酸を発現させることである。
【0079】
抗体は、抗体の人工レパートリーを生産するための抗体遺伝子の突然変異誘発によって生成されてもよい。この技術は、抗体ライブラリーの調製を可能とする。特定のエピトープに対して特異性を有する結合分子を同定するために、人工scFvレパートリーなどの免疫グロブリンの人工レパートリーが、免疫グロブリン源として使用されてもよい。
【0080】
レパートリーを生成する方法は、当該技術分野おいて十分に特徴付けられている。
【0081】
抗体ライブラリーを生成する任意の適当な手段が、本発明と併せて使用され得る。ファージディスプレイ技術に代表されるような、大きなライブラリーの所望のメンバーを単離するための選択プロトコールが当技術分野において知られている。繊維状バクテリオファージの表面に多様なペプチド配列が提示されるこのような系は、標的抗原に結合する特異的な抗体フラグメントのインビトロ選択及び増幅のための抗体フラグメント(及びそれらをコードするヌクレオチド配列)のライブラリーを作出するために有用であることが証明されている。VH及びVL領域をコードするヌクレオチド配列が、大腸菌(E.coli)のペリプラズム空間に誘導するリーダーシグナルをコードする遺伝子フラグメントに連結され、結果として得られる抗体フラグメントが、バクテリオファージの表面に、典型的にはバクテリオファージコートタンパク質(例えば、pIII又はpVIII)への融合物として提示される。或いは、抗体フラグメントは、ラムダファージキャプシド(ファージ本体)の外部に提示される。ファージベースのディスプレイ系の利点は、それらが生物学的系であるため、単に選択されたライブラリーメンバーを含むファージを細菌細胞で増殖させることにより、選択されたライブラリーメンバーを増幅できることである。さらに、ポリペプチドライブラリーメンバーをコードするヌクレオチド配列が、ファージ又はファージミドベクターに含まれているため、配列決定、発現及びその後の遺伝子操作が、比較的簡単である。
【0082】
バクテリオファージ抗体ディスプレイライブラリー及びラムダファージ発現ライブラリーの構築方法は、当技術分野においてよく知られている。
【0083】
ポリペプチドを生産するための方法は、ポリペプチドの発現を促進する条件下で、ポリペプチドをコードする組換え発現ベクターにより形質転換された宿主細胞を培養し、次いで、培養物から発現されたポリペプチドを回収することを含み得る。当業者は、発現されたポリペプチドを精製するための手順が、使用される宿主細胞の種類や、ポリペプチドが細胞内型、膜結合型、又は宿主細胞から分泌される可溶型であるかどうかなどといった要因に応じて変化することを認識するであろう。
【0084】
任意の適当な発現系が使用され得る。ベクターは、哺乳動物、鳥類、微生物、ウイルス、細菌、又は昆虫の遺伝子に由来するものなど、適当な転写又は翻訳調節ヌクレオチド配列に作動可能に連結された、本発明のポリペプチド又はフラグメントをコードするDNAを含んでいてもよい。調節配列がDNA配列に機能的に関係している場合、ヌクレオチド配列は作動可能に連結されている。したがって、プロモーターヌクレオチド配列がDNA配列の転写を制御する場合、プロモーターヌクレオチド配列は、DNA配列に作動可能に連結されている。所望の宿主細胞での複製する能力を与える複製起点、及び形質転換体を同定するための選択遺伝子が一般に、発現ベクターに組み込まれる。
【0085】
さらに、適当なシグナルペプチド(天然又は異種)をコードする配列を発現ベクターに組み込むことができる。シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNA配列は、DNAがまず転写され、そしてmRNAがシグナルペプチドを含む融合タンパク質に翻訳されるように、インフレームで本発明の核酸配列に融合することができる。目的の宿主細胞において機能するシグナルペプチドは、ポリペプチドの細胞外分泌を促進する。シグナルペプチドは、翻訳中にポリペプチドから切断されるが、細胞からのポリペプチドの分泌を可能にする。
【0086】
ポリペプチドの発現に適した宿主細胞は、高等真核細胞及び酵母を含む。また、原核生物の系も適している。
【0087】
哺乳動物細胞、特にCHO細胞は、宿主細胞としての使用に特に好ましい。CHO細胞は、その培養とトランスフェクションの容易さから、タンパク質の生産に広く用いられている。ExpiCHO-S細胞は、非常に高密度にまで増殖させることができ、タンパク質の高発現を可能にする浮遊細胞株である。目的のプラスミドDNAは、ExpiFectamine(カチオン性脂質ベースのトランスフェクション試薬)と複合体を形成させてDNAを凝縮させることによって、ExpiCHO細胞にトランスフェクトされ得る。この凝縮したDNAは、エンドサイトーシスによってExpiCHO細胞に入り、核で発現される。発現されたタンパク質は、細胞培養上清に存在し、適切な日数が経過した後に回収される。
【0088】
核酸
本発明に従った使用のための核酸は、DNA又はRNAを含むことができ、そして全体的又は部分的に合成されたものであり得る。好ましい態様において、本発明で使用するための核酸は、上記で定義された本発明の抗体又は抗体フラグメントをコードする。当業者は、本発明の抗体分子又は本発明において使用するための抗体分子をなおも提供する核酸への置換、欠失、及び/又は付加を決定することができるであろう。
【0089】
本発明において使用するための抗体又は抗体フラグメントをコードする核酸配列は、当業者によって容易に調製され得る。これらの技術は、(i)例えばゲノム源からそのような核酸のサンプルを増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用、(ii)化学合成、又は(iii)cDNA配列の調製を含む。抗体フラグメントをコードするDNAは、コード化DNAを取得すること、発現される部分のいずれかの側の適当な制限酵素認識部位を同定すること、そしてDNAから前記部分を切り出すことを含む、当業者に知られている任意の適当な方法で生成及び使用され得る。次に、その部分は、標準的な市販の発現系において適当なプロモーターに作動可能に連結されてもよい。別の組換えアプローチは、適当なPCRプライマーによりDNAの関連部分を増幅することである。改変ペプチドの発現を導くため、又は核酸を発現するために使用される宿主細胞におけるコドン選好を考慮に入れるために、例えば部位特異的変異誘発を使用して、配列の改変を行うことができる。
【0090】
核酸は、上記のように少なくとも1つの核酸を含むプラスミド、ベクター、転写又は発現カセットの形態の構築物として含まれていてもよい。構築物は、上記のような1つ又は複数の構築物を含む組換え宿主細胞内に含まれ得る。発現は、核酸を含む組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することによって、うまい具合に達成され得る。発現による生産に続いて、抗体又は抗体フラグメントは、任意の適当な技術を使用して単離及び/又は精製され、次いで適切に使用されてもよい。
【0091】
様々な異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニング及び発現のための系が、よく知られている。適当な宿主細胞は、細菌、哺乳動物細胞、酵母、昆虫及びバキュロウイルスの系を含む。異種ポリペプチドの発現のために当技術分野において利用可能な哺乳動物細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NS0マウス骨髄腫細胞を含む。一般的な好ましい細菌宿主は大腸菌である。大腸菌などの原核細胞における抗体及び抗体フラグメントの発現は、当技術分野で十分に確立されている。培養中の真核細胞における発現もまた、結合メンバーの生産のための選択肢として当業者に利用可能である。抗体を生産するための一般的な技術は、この分野の当業者によく知られている。
【0092】
本発明の特定の実施形態では、抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードするインサートを含む組換え核酸が提供される。定義により、そのような核酸は、コーディング一本鎖核酸、前記コーディング核酸及びそれに対する相補的核酸からなる二本鎖核酸、又はこれらの相補的(一本鎖)核酸自体を含む。
【0093】
さらに、抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードする核酸は、天然に存在する重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメイン、又はその変異体をコードする本物の配列を有する、酵素的又は化学的に合成された核酸であり得る。
本発明の実施形態を添付の図を参照して、例示としてのみ、ここに説明する:
【実施例】
【0094】
材料及び方法
ライブラリーの設計
ヒトの体内で抗体内に変異を生じさせる役割を果たすAID酵素によって認識される3’から5’の鎖における特定のDNA配列モチーフRGYWと5’から3’の鎖におけるWRCYを検索して、ヒトにおける天然の体細胞超変異を模倣することにより、抗体ライブラリーを(i)ヒト化抗カテプシンS抗体、Fsn0503h(Fusion Antibodies、ベルファスト)(Kwokら、Molecular Cancer 2011年、10:147)及び(ii)トラスツズマブ(Roche)のそれぞれについて生成した。
【0095】
DNA配列は、DNA配列モチーフRGYWの2位のグアニン又はDNA配列モチーフWRCYの3位のシトシンに導入された点変異を有しており、ヌクレオチドが任意の他のヌクレオチドに変異している。ヒトのAID酵素は、これらの位置に自然突然変異を導入する。これは、単一の位置のアミノ酸に可能な変化を引き起こすことができる。抗体配列全体にわたって天然に可能な全てのアミノ酸を生成して、初期ライブラリーを形成するために、これらの可能な全ての変異が、抗体DNA配列全体にわたって3’から5’及び5’から3’の鎖の両方向で同定された。
【0096】
次に、新たに生成されたアミノ酸配列から、脱アミド化部位、異性化部位、n-結合型グリコシル化部位、及び酸化部位など、任意の認識されている配列の負担を取り除くことにより、各ライブラリーの大きさを管理した。
【0097】
分子ドッキング
各ライブラリーについて、Maestro 11.7(Schrodinger)の抗体予測ツールを使用して、ホモロジーモデリングを実行し、重鎖及び軽鎖可変鎖領域のアミノ酸配列に基づいて抗体モデルを生成した。抗原はPDBからインポートした。Fsn0503hの場合、発明者らは、結合した薬物(PDBコード:3MPE)を伴うC25S変異を有するヒトカテプシンS(CatS)の結晶構造をインポートした。トラスツズマブバリアントのライブラリーの場合、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)(PDBコード:1N8Z)の細胞外ドメインを使用した。
【0098】
抗体モデルと抗原モデルの両方について、タンパク質調製ウィザード(Bioluminate、Schrodinger)を使用して、結合次数を割り当て(Chemical Component Dictionary(CCD)データベースを使用)、水素を追加し、金属へのゼロ次結合を作出し、ジスルフィド結合を作出し、セレノメチオニンをメチオニンに変換し、Primeを使用して欠落している側鎖とループを埋め、Epikを使用してhet状態を生成した。ProtAssign(Bioluminate、Schrodinger)を使用して、構造をさらに洗練し、ヒドロキシル、アスパラギン、グルタミン、及びヒスチジンの状態を定義した。水以外との結合が3つ未満の水は除去した。最後に、OPLS3e力場を使用して構造を最小化した。(Bioluminate、Schrodinger)。
【0099】
タンパク質-タンパク質ドッキングツールのPrimeを使用して、カテプシンSを抗体モデルの表面にドッキングさせた。抗体のCDR領域のみを分子ドッキングのために考慮した。非CDR領域はマスクした。Cat Sのエピトープに関するインビトロ情報を使用して、ランクに基づき、(タンパク質相互作用分析ツールを使用した)形状の相補性と表面相互作用の洞察から、適当なドッキングした配置を選択した。
【0100】
同様に、トラスツズマブバリアントについて、タンパク質-タンパク質ドッキングツールのPrimeを使用して、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)(PDBコード:1N8Z)の細胞外ドメインを抗体モデルの表面にドッキングさせた。抗体のCDR領域のみを分子ドッキングのために考慮した。非CDR領域はマスクした。ランクに基づき、(タンパク質相互作用分析ツールを使用した)形状の相補性と表面相互作用の我々の洞察から、適当なドッキングした配置を選択した。
【0101】
コンビナトリアルな変異の分析
抗体-抗原複合体のドッキングした配置に対して、残基スキャニングを実施した。抗原に対する抗体の親和性を高め、安定性を高めるために、高度に保存された残基を避けて、情報に基づいた変異を抗体に対して行った。
【0102】
残基スキャニングはまず、元の構造から単一のアミノ酸が変異したモデルを生成することによって行い、野生型Abから最大6つの同時変異まで(同じ変異で)繰り返した。残基変異ツールは、元の野生型抗体-抗原複合体と比較した変異体の安定性と親和性を計算した。
【0103】
次に、バリアントを野生型と比較した親和性の違いと安定性の違いによって分類した。安定性の違いと親和性の違いについて-2の閾値より低いスコアを選択し、2つのスコアの組み合わせに基づいてランキングした(親和性の違いを優先)。
【0104】
Fsn503h抗体及びトラスツズマブ抗体の最良のバリアントを合成し、インビトロで分析した。
【0105】
抗体合成
一過性トランスフェクション:
500mlの通気した三角フラスコ中のExpiCHO発現培地において130rpm、37℃、8%CO2で、懸濁液適合ExpiCHO細胞を4~6×106細胞/mlでルーチン的に培養した。Fsn0503hのバリアントのそれぞれについて、1μg/mlのDNAを遠心分離管内で4%(v/v)OptiPRO SFMで希釈した。別のチューブで、0.32%(v/v)ExpiFectamineを3.7%OptiPRO SFMで希釈した。次に、ExpiFectamine/OptiPROミックスをDNA/OptiPROミックスに加え、室温で3分間インキュベートした後、125mlの通気した三角フラスコ中、最終密度6×106細胞/mlのExpiCHO細胞25mlに加えた。トランスフェクトされた各培養物を37℃、8%CO2、130rpmで一晩培養した。トランスフェクションの20時間後、細胞に0.6%(v/v)ExpiCHOエンハンサーと24%(v/v)ExpiCHOフィードを補充した。次に、培養物を32℃、5%CO2、130rpmのインキュベーターに移した。培養物は4000rpmで40分間、18℃で遠心分離することにより回収した。
【0106】
精製:
1mlのMabSelect(商標)PrismA(GE)を充填したTricorn 5/50カラム(GE)、続いて10ml(2×5ml)のHitrap Desalting(Desalt)カラム(GE)を使用して、2段階のFsn0503h WT及びバリアント抗体の精製を行った。MabSelect(商標)PrismA親和性媒体は、その高いmAb結合と特異性の特性と、効率的な定置洗浄(CIP)のためのアルカリ耐性のために選択された。別段明記しない限り、全てのステップを4ml/分の流速を使用して室温で実施した。ローディング後(AKTAサンプルポンプを使用して実施)、プロテインAカラムを10カラム量(CV)のPBSで洗浄し(逆流モード)、続いて100mMグリシン、pH3.0によるワンステップ溶出を行った(逆流モード)。280nmで吸光度が120mAUを超えたときにプロテインA溶出液を2mlループに回収し(10mmフローセルを備えたAKTA)、事前に平衡化したDesaltカラムに直ちに注入した。Desaltピーク溶出は、溶出液の吸光度が100mAUを超えたときに、2~8℃で96ウェル2mlブロック中に回収した。また、相互汚染を回避するために、自動化プロセスに親和性カラムと脱塩カラムの両方のCIPを含めた。CIPは、0.2MのNaOHを使用して、全ての接触経路について各サンプル間で実施した(カラムの洗浄には逆流モードを使用した)。
【0107】
発現のレベルは、培養培地1mlあたりの精製後の物質の総収量として決定した。
【0108】
トラスツズマブバリアントを同様な技術を使用して合成した。
【0109】
親和性ランキング
酵素結合免疫吸着アッセイ:
MaxiSorp 96ウェルプレートを4℃で24時間、PBS中1g/mlの66種の0503バリアントでコーティングした。EC50の結果を得るために、バリアントをPBSで1000ng/ml~1ng/mlで段階的に希釈し、同じものを2つコーティングした。標準曲線は4℃で24時間、PBS中1μg/mlでコーティングした親0503抗体を使用して調製した。24時間後、MaxiSorpプレートをPBS-Tで3回洗浄した。SuperBlock200μlを各ウェルに加え、除去して、3回交換した。200ng/mlのCat S抗原100μlを各ウェルに加え、RT、150rpmで1時間30分間振盪させた。プレートをPBS-Tで3回洗浄し、乾燥させた。5μg/mlの抗his-HRPを100μl各ウェルに加え、150rpm、RTで1時間30分間振盪させた。プレートをPBS-Tで3回、PBSで1回洗浄し、乾燥させた。TMB100μlを各ウェルに加え、37℃で10分間インキュベートした後、1MのHCLを50μl加え、プレートの吸光度を450nmで測定した。
【0110】
Octet RED96システムを使用した親和性ランキング(Fsn503hバリアント):
親和性ランキングアッセイは、まず抗ヒトOctetバイオセンサー(ForteBio部品番号18-5060)を使用してIgGを捕捉し、続いてHBS-EBTバッファー(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、1mg/mlのBSA、及び0.05%のTween-20、pH7.4)中で2分間のベースラインステップにより行った。次に、mAb捕捉バイオセンサーを200ng/mlの組換えカテプシンS抗原を含むウェルに10分間沈め(会合ステップ)、続いてランニングバッファー中で10分間の解離ステップを行った。二重参照補正を可能にするために、IgG捕捉センサーをバッファーのみを含むウェルに浸し、ブランクセンサーも抗原を含むウェルに浸した。この参照は、捕捉IgGの自然な解離とセンサー表面への抗原の非特異的結合の両方を補償する手段を提供した。全てのステップは、HBS-EBTバッファー中25℃で、1000rpmの一定流速で実施した。各サンプルに対して新しいセンサーを使用した。解離速度定数(koff)は、ForteBio Data Analysisソフトウェアを使用して計算した。使用した消耗品は全て、ForteBioの推奨品であった。
【0111】
バイオレイヤー干渉法(Octet RED96システム)を用いた抗体の定量化:
IgG含有量を測定するために、200μL量(0.06~512μg/mlの範囲)の抗体標準とIgG含有細胞上清(検量線の測定範囲内で希釈)を1×HBS-EBTバッファー(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、1mg/mlのBSA、及び0.05%のTween-20、pH7.4)を用いて2つ調製し、96ウェルブラックマイクロタイタープレート(Greiner Bio-One部品番号655209)のウェル中に配置した。プロテインAバイオセンサー(Fortebio PN 18-5010)を使用して、全てのサンプル及び標準を2回測定した。プレートをOctetに設置し、サーモスタット付きチャンバー内で25℃に平衡化させた。実行は、センサーをウェル中に配置することによって開始し、全てコンピュータ制御下で、層の厚さ(ナノメートル、nm)の経時変化を測定した。データは、一度に8つのサンプル(1つのプレートカラムを同時に測定)の各セットについて400~1000rpmの流速(軌道流)で180~600秒間取得した。Octet User Softwareバージョン3.1を使用して、データを自動的に処理した。測定時間と流速は、必要な感度に応じて変更した。
【0112】
バイオレイヤー干渉法(Octet RED96システム)を使用した親和性ランキング(トラスツズマブバリアント):
親和性ランキングアッセイは、まず抗ヒトOctetバイオセンサー(ForteBio部品番号18-5060)を使用して*IgGを捕捉し、続いてHBS-P+バッファー(10mMのHEPES、150mMのNaCl、1mg/mlのBSA、及び0.05%のTween-20、pH7.4)中で2分間のベースラインステップにより行った。次に、mAb捕捉バイオセンサーを5nMの組換えHER2(Acro Biosystems;P/N.H5225)抗原を含むウェルに15分間沈め(会合ステップ)、続いてランニングバッファー中で20分間の解離ステップを行った。二重参照補正を可能にするために、IgG捕捉センサーをバッファーのみを含むウェルに浸し、ブランクセンサーも抗原を含むウェルに浸した。この参照は、捕捉IgGの自然な解離とセンサー表面への抗原の非特異的結合の両方を補償する手段を提供した。ステップは、HBS-EBTバッファー中25℃又は37℃のいずれかで、1000rpmの一定流速で実施した。各サンプルに対して新しいセンサーを使用した。解離速度定数(koff)は、ForteBio Data Analysisソフトウェアを使用して計算した。使用した消耗品は全て、ForteBioの推奨品であった。
【0113】
*同様なローディングレベルを可能とするために、(上記のようにして)定量化したIgG含有細胞上清を同一の濃度に希釈した。
【0114】
バイオレイヤー干渉法(Octet RED96システム)を用いたKD測定:
速度論的アッセイは、まず抗ヒトFc Octetバイオセンサーを使用してIgGを捕捉し、続いてHBS-P+バッファーのランニングバッファーでそれぞれ2分間の、2つのベースラインステップを行うことによって実施した。次に、mAb捕捉バイオセンサーを、様々な濃度のHER2を含むウェルに15分間沈め、続いてランニングバッファー中で20分間解離させた。二重参照補正を可能にするために、IgG捕捉センサーをバッファーのみを含むウェルに浸し、ブランクセンサーも一連の濃度の抗原を含むウェルに浸した。この参照は、捕捉IgGの自然な解離とセンサー表面への抗原の非特異的結合の両方を補償する手段を提供した。全てのステップは、37℃の動態バッファー中、1000rpmの一定流速で実施した。
【0115】
融点の決定
抗体は通常、集合した分子の異なる部分の熱変性の結果として、TM1及びTM2と呼ばれる2つの測定可能な融点を分析において示す。これらの値をサーマルシフトアッセイによって決定した。5μlのSypro Orangeを含む溶液([PBS、pH7.4で1/200に希釈);Molecular Probes)及び45μlの0.3mg/mlの抗体をロープロファイルPCRチューブ(Bio-Rad;TLS0851)に添加した。チューブを光学式超透明シーリングキャップ(Bio-Rad;TCS0803)で密封し、i-Cycler iQ5リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad)で20℃~90℃まで1℃刻みで加熱した。プレートのウェルの蛍光変化を電荷結合(CCD)カメラで同時にモニターした。励起波長と発光波長は、それぞれ485nmと575nmであった。タンパク質のアンフォールディング遷移温度の中点Tmは、Bio-Rad iQ5ソフトウェアを使用して計算した。
【0116】
単分散性の決定
抗体調製物内の免疫グロブリンの個々の遊離分子として定義される、各バリアントの単分散性のレベルもまた、野生型分子とは異なることが示された。この測定値は、抗体分子の凝集傾向の指標として一般的に使用される。凝集は、タンパク質分子が多量体複合体へと会合し、時間の経過とともに抗体調製物の溶解性と活性を低下させる傾向であり、溶液中の抗体分子の安定性に寄与する重要な属性である。
【0117】
これを、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して精製した抗体溶液において決定した。リン酸緩衝生理食塩水を使用して全てのサンプルを最終濃度0.1mg/mlに希釈した。抗体の高度に精製されたサンプルをSuperdex 200増加10/300GLゲル濾過カラムに個別にローディングした。50μlのサンプルを注入し、カラム流速を0.75μl/分に維持した。分離と平衡化のステップを22℃のリン酸緩衝生理食塩水中で行った。タンパク質のピークを280及び214nmの吸光度を使用してモニターし、スペクトルをUnicornエミュレーションソフトウェアパッケージ(GE healthcare)を用いて分析した。結果は、各ピークのVr(ml)及び相対ピーク面積(%)として報告されている。
【0118】
実施例1_カテプシンS抗体のバリアント
ライブラリーの設計
図1に示すように、Fsn0503h抗体の軽鎖及び重鎖可変ドメインのDNA配列を分析して、体細胞超変異中に変異を受けやすいモチーフを調べ、これらの変異の結果に対応する潜在的なアミノ酸を親配列の上にプロットした。DNA変異の結果として生成される望ましくないアミノ酸又は終止コドンを同定した。
【0119】
フレームワーク領域内にCDRよりも多くの変異があり、特にCDR-H3が機能的な変異を持たないことは驚くべき発見であった。
【0120】
分子ドッキング
親のFsn0503h抗体可変ドメイン(Kwokら、Molecular Cancer 2011年、10:147)を、方法に記載されているようにして、Schrodinger分子ドッキングソフトウェアを使用してカテプシンSタンパク質とドッキングさせた。ドッキング手順の結果を
図2に示す。
【0121】
コンビナトリアルな変異誘発
ドッキングされた構造内にアミノ酸残基の変異を導入し、親和性と安定性の両方の相対的な違いを予測した。安定性又は親和性のさらなる利益が予測されなくなるまで、導入する変異の数を増やした。コンビナトリアルな変異誘発の結果を
図3に示す。本発明者らは、親和性及び安定性の両方に予測される改善を有する66のバリアントを同定した。次に、方法に記載されているようにして、これらのバリアントをコードするDNAを合成し、抗体を発現させ、精製した。
【0122】
ELISA
精製したバリアントのそれぞれを、組換えカテプシンSタンパク質への結合についてELISAにより分析した。結果(
図4)は、12のバリアントが親のFsn0503hよりも高い相対ODを有することを示しており、カテプシンS標的に対する親和性がより高いことを潜在的に示している。
【0123】
親和性ランキング
親Fsn0503h抗体との各バリアントの正確な親和性の比較を決定するために、カテプシンSとの相互作用を、方法に記載されているようにして、Octet装置を用いてBLIにより測定した。
【0124】
結果は、Fsn0503h抗体の平均読み取り値に対して測定した場合、バリアントの約50%が改善した親和性を有することを示している(
図6)。会合(Kon)と解離(Kdis)速度を
図5に示す。
【0125】
発現への影響
上記のようにCHOにおいて発現された66のバリアントはまた、野生型と比較して一定範囲の発現レベルを示した。IgGレベルは、精製後にBLI Octet装置上での定量的ヒトIgGイムノアッセイによって決定され、精製上清量に対する総量を表している。
【0126】
融点の変化
66のバリアントは、抗体分子に関連する安定性の特性に一定範囲の変動も示した。これは、免疫グロブリン分子で一般的に観察される2つの融点における融解温度プロファイルの変化を含む。融点測定の結果を
図22に示す。Mut 6やMut 49などの一部のバリアントは、単一の融解温度のみが観察可能であり、明確な2相融解パターンを失っているように見えることは注目に値する。
【0127】
単分散性の変化
この特性は、66のバリアントの分析的サイズ排除クロマトグラフィーによって分析され、
図23に示されるように、分析されたバリアント間に一定範囲の値を示している。
実施例2-トラスツズマブバリアント
【0128】
ライブラリーの設計
ヒトで自然に生じる体細胞超変異に基づき、トラスツズマブの抗体バリアントのライブラリーを生成した。
図9に示すように、上記の方法を使用して、体細胞超変異を再現し、トラスツズマブのDNA配列に自然に生じる変異を生成し、その後、それぞれのアミノ酸変異へと翻訳した。これらの変異を、相補性決定領域(CDR)とフレームワーク領域の両方の特異的な部位における潜在的な変異のライブラリーにまとめ(
図7及び8)、この方法の潜在的なアミノ酸の結果を親配列の横に詳細に示した。DNA変異の結果として生成される任意の望ましくないアミノ酸又は終止コドンを同定した。
【0129】
ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)(PDBコード:1N8Z)の細胞外ドメインと複合体を形成したトラスツズマブの完全に解明された結晶構造を
図10に示す。
図7及び8に示したトラスツズマブ変異のライブラリーを変異体スキャニングに使用した。まず単一のアミノ酸変異を分析し、続いて2つの変異から合計6つの変異まで重鎖と軽鎖を分析することにより変異体を連続的にスキャンし、その後、親和性と安定性に基づいてバリアントをランキングした。Fsn503hライブラリーと同様に、方法に記載したようにして、Schrodinger分子ドッキングソフトウェアを使用した。
【0130】
ドッキングされた構造内にアミノ酸残基の変異を導入し、親和性と安定性の両方の相対的な違いを予測した。安定性又は親和性のさらなる利益が予測されなくなるまで、導入する変異の数を増やした。コンビナトリアルな変異誘発の結果を、
図11及び12の表に詳細に示す。トラスツズマブの合計558の潜在的なバリアントが、改善された親和性と改善された安定性の両方を有することが判明した。上位にランキングされた5つのバリアントの親和性を
図13に示す。これらのバリアントの中で、重鎖と軽鎖にわたる合計5つの変異が、最も一般的であることが判明した。予測された自由エネルギー変化(ΔΔG)を使用して、バリアントを親抗体の親和性と比較してスコアリングした。
【0131】
Offレートランキング
89のトラスツズマブバリアントのパネルを、バイオレイヤー干渉法を使用してHER2抗原への結合についてスクリーニングした(詳細については、材料及び方法を参照)。レポートポイントをカラーバーとして示した20サンプルのセンサーグラムを
図14に示す。
図15は、安定性_後期に対してプロットした安定性_初期のレポートポイントの散布図を示している。結合安定性が高く、解離が遅い最高の結合体(合計14)が、青い円で強調表示されている。より生物学的に関連性のあるデータを提供するために、37℃でこれらの変異体に対してoffレートランキング実験を繰り返した(
図16)。変異体19は、WTトラスツズマブと比較して安定性が向上しているようであり、速度論的分析に使用された。
【0132】
KDの決定
サンプルは全て、新たに調製したランニングバッファーで希釈した。トラスツズマブ又はバリアント(変異体)のいずれかを、記載の捕捉方法(材料及び方法を参照)を使用して、一連のバイオセンサーの表面に固定化した。結合応答を生成するために、HER2を表面に通した。HER2相互作用の結合データをバイオセンサーにより37℃で回収した。結果を全体的にフィッティングし、k
a、k
d、及びK
Dの最良の値を取得するために、HER2抗原の希釈系列(5nM~0.078nM)を会合ステップで使用した。表面に固定したIgGへの抗原の結合に関する応答データを1:1結合モデルに適合させ、データトレースを生成した(赤-
図17を参照)。実験は重複して2回行い、平均速度論的パラメーターを表9にまとめた。例えば、データは、変異体19が、野生型の対照及び市販のトラスツズマブと比較して、見かけ上、約2倍の親和性の増加を示すことを示している。親和性の増加は主に、野生型抗体の1.20E-04と比較して、より遅いKd、6.04E-05によるものである。
図18は、改善された親和性と安定性のインシリコ予測によって選択されたトラツズマブバリアントの実際の親和性と予測された親和性の比較を概略的に示している。実際のOctet親和性ランキングは、上位20の予測とかなり良く相関している。
【0133】
【0134】
R2値は、適合と実験データがどのくらい良く相関するかを示し、0.95を超えると適合が良いと考えられる;X2は、偏差の2乗の合計であり、一般には3未満となるべきである;X2は、実験データと近似曲線との間の誤差の尺度である。X2が小さいほど、適合性が良いことを示す。
【0135】
モノマーのKDの決定
上位のバリアントの親和性をさらに検証し、上位2つのバリアント(MUT 5及びMUT 19)内の親和性の測定値に対する結合力の寄与を理解するために、これらの分子を酵素的切断によって、重鎖及び軽鎖の可変ドメイン及びCH1定常ドメインからなり、1分子ごとに単一の抗原結合ドメインを有する単量体型のフラグメント抗原結合(Fab)フラグメントとして調製した。
【0136】
最初の測定は、プローブを2.5μg/mlのビオチン化Her2組換えFc融合タンパク質でコーティングした後に行った。Her2表面への結合について、一定範囲の濃度の3つの単量体抗体のそれぞれを評価した。この場合には、二重参照は適用しなかった。センサーグラムデータを
図19に、結果の速度論的計算(1:1モデル)を表10に列挙する。
【0137】
【0138】
次に、0.625、1.25、又は2.5μg/mlのビオチン化Her2組換えFc融合タンパク質でコーティングすることにより、センサーを調製した。次に、精製されたFabフラグメントを、これらのプローブへの結合について試験した。これらの測定のセンサーグラムトレースを
図20に示し、詳細を表11、12、及び13に示す。このデータについては、前の実験とは異なり、プローブ表面での非特異的相互作用による任意のドリフトを除外するために、二重参照とした。
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
親和性の値がコーティング濃度の結果として変化するように見えるため、これらのモノマー分析から、WTトラスツズマブ分子と比較したMUT 5及びMUT 19の親和性の増加に明確な値を割り当てるのは困難である。理論に拘束されることは望まないが、これは、ForteBio Octet Biosensor装置の感度限界での動作の問題によるものと考えられる。
【0143】
結論
本発明の方法を使用して、本発明者らは、抗体バリアントの非常に大きな物理的ライブラリーを生成して、その後に選択/スクリーニングプロセスを行う必要無く、その標的に対する抗体の親和性を改善できることを首尾よく実証した。さらに、発現により、抗体分子の潜在的な開発可能性に関して、いずれも関心の対象となる親和性、発現レベル、及び物理化学的特性を含む、関心の持たれる様々な属性を提示するバリアントのプールが生成される。
【0144】
本発明は、特定の例を参照して特に示され、説明されているが、本発明の範囲から逸脱することなく、その中で形態及び詳細の様々な変更を行い得ることが、当業者により理解されるであろう。
【配列表】
【国際調査報告】