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特表2022-512666プロピレンの生成のための金属酸化物助触媒を含む触媒
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  • 特表-プロピレンの生成のための金属酸化物助触媒を含む触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】プロピレンの生成のための金属酸化物助触媒を含む触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/888 20060101AFI20220131BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20220131BHJP
   C07C 6/04 20060101ALI20220131BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20220131BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20220131BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20220131BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
B01J23/888 Z
C07C11/06
C07C6/04
B01J37/02 101D
B01J35/10 301G
B01J23/30 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519802
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(85)【翻訳文提出日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 US2019054377
(87)【国際公開番号】W WO2020076589
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】16/156,634
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホッハル、ムニール ディー
(72)【発明者】
【氏名】アルアローニ、ムハンマド アール
(72)【発明者】
【氏名】スライス、ヌール エー
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】シェイク、ソヘル ケー
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BB04A
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC17A
4G169BC17B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CB44
4G169DA06
4G169EA04Y
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC04X
4G169EC07X
4G169EC07Y
4G169EC08X
4G169EC08Y
4G169EC14X
4G169EC14Y
4G169EC15X
4G169EC15Y
4G169EC25
4G169EC26
4G169FA02
4G169FB19
4G169FB30
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC29
4H006BA05
4H006BA08
4H006BA09
4H006BA14
4H006BA20
4H006BA21
4H006BA55
4H006BA81
4H006BA85
4H006BC10
4H006BC32
4H006BC40
4H039CA29
4H039CJ90
(57)【要約】
メタセシス触媒系を合成する方法の実施形態であって、前駆体の存在下でシリカ担体上に酸化タングステンを含浸させて、塩基触媒を生成することと、塩基触媒をか焼することと、金属酸化物を含む金属酸化物助触媒を塩基触媒の表面に含浸させて、ドープされた触媒を生成することと、ドープされた触媒をか焼して、メタセシス触媒系を生成することと、を含む。プロピレンの生成のためのプロセスのさらなる実施形態であって、1-ブテンおよび2-ブテンの混合物を含む炭化水素原料をメタセシス触媒系の実施形態と接触させて、メタセシス変換を介して、プロピレンを含む生成物流を生成することを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタセシス触媒系を合成する方法であって、
前駆体の存在下で大細孔シリカ担体に金属酸化物を含浸させて、塩基触媒を生成することと、
前記塩基触媒をか焼することと、
金属酸化物助触媒を前記塩基触媒の表面に含浸させて、ドープされた触媒を生成することと、
前記ドープされた触媒をか焼して、メタセシス触媒系を生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記大細孔シリカ担体が、アモルファスシリカを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属酸化物助触媒が、Cu、Co、Ce、Ni、Ga、Al、およびMoから選択される1つ以上の金属を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記メタセシス触媒系が、約0.5重量%~約2.5重量%の金属酸化物助触媒を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記塩基触媒が、約8重量%~約12重量%の酸化タングステンを含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記メタセシス触媒系が、約400m2/g~約800m2/gの表面積、約3nm~約40nmの細孔径分布、および少なくとも0.700cm3/g~約2.5cm3/gの全細孔容積のうちの1つ以上を有する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
プロピレンの生成のためのプロセスであって、
炭化水素原料をメタセシス触媒系と接触させてプロピレンを生成することを含み、
ここで、前記メタセシス触媒系は、
金属酸化物と、
大細孔シリカ担体と、
を含む塩基触媒と、
前記塩基触媒の表面に分散した金属酸化物助触媒と、を含み、
ここで、前記炭化水素原料は、1-ブテンおよび2-ブテンの混合物を含む、プロセス。
【請求項8】
前記大細孔シリカ担体が、アモルファスシリカを含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記金属酸化物助触媒が、Cu、Co、Ce、Ni、Ga、Al、およびMoから選択される1つ以上の金属を含む、請求項7または8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記プロピレン収率が、約10%~約60%である、請求項7~9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
前記炭化水素原料が、1-ブテンよりも多くの2-ブテンを含む、請求項7~10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
前記炭化水素原料を約400℃~約600℃の温度で前記触媒系と接触させることをさらに含む、請求項7~11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
前記金属酸化物助触媒が、液体分散法を介して分散される、請求項7~12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
前記メタセシス触媒系が、約0.5重量%~約2.5重量%の前記金属酸化物助触媒を含む、請求項7~13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
前記メタセシス触媒系が、約400m2/g~約800m2/gの表面積、約3nm~約40nmの細孔径分布、および少なくとも0.700cm3/g~約2.5cm3/gの全細孔容積のうちの1つ以上を有する、請求項7~14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月10日に出願された米国出願第16/156,634号の優先権を主張し、その開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、概して、プロピレン生成に関し、より具体的には、メタセシス触媒系を使用してメタセシスを介してブテンをプロピレンに変換させることに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、ポリプロピレン、プロピレンオキシド、およびアクリル酸の成長市場に供給するためのプロピレンの需要が劇的に増加している。現在、世界中で生成されているプロピレンの大部分は、主にエチレンを生成する水蒸気分解装置からの副生成物、または主にガソリンを生成する流動接触分解(FCC)装置からの副生成物である。これらのプロセスは、プロピレン需要の急激な増加に対して十分に対応することができない。ただし、これらのプロセスによって共同生成された低コストのブテンの処理は、精製業者または石油化学生産者に、下流の統合と相対的な経済性に応じて付加価値を与える機会を与える。しかしながら、プロピレンの需要の伸びはエチレン、ガソリン、および留出物の需要の伸びを上回っており、プロピレンの供給はこの需要の増加に追いついていない。
【0004】
オレフィンメタセシスは、プロピレンの市場需要を満たすために、貯留された価値の低いブテンの組成をシフトするための有用な反応と見なされている。中東およびアジアで操業を始めた新たな生産力により、メタセシスによるプロピレンの生成が増加すると予想される。
【発明の概要】
【0005】
触媒的オレフィンメタセシスは、単純で安価な有機分子を複雑で価値のある分子に変換できる有用な化学反応である。オレフィンメタセシスでは、2つのオレフィン分子が触媒の存在下で二重結合の周りの基を交換する。オレフィンは、構造および組成が異なる分子、または2つの同一の分子であり得る。一般に、オレフィンメタセシス反応の反応温度は、出発物質の種類、使用する触媒、および反応が実施される媒体に応じて、室温と同じくらい低くても、約550℃以上の温度でもよい。
【0006】
ただし、メタセシス触媒は、プロピレンおよび他の生成物を生成するために必要な選択性がないことがよくある。さらに、メタセシス触媒は、芳香族生成物からのコークス化のために失活しやすい。
【0007】
したがって、ブテンメタセシスを使用してプロピレンを選択的に生成することを可能にするメタセシス触媒系に対する継続的なニーズが存在する。本開示の実施形態は、タングステンを含浸させ、金属酸化物を含む助触媒でドープされたシリカ担体を含むメタセシス触媒系を使用するメタセシスによるプロピレンの生成を対象とする。
【0008】
さらに、従来のメタセシス触媒系は、塩基触媒に添加される助触媒を含み得る。しかしながら、これらの従来の触媒系では、助触媒を塩基触媒に単に加えるだけでは、所望の結果が得られない場合がある。例えば、いくつかの従来の触媒系では、酸化タングステンなどの別の金属酸化物を含む塩基触媒にアルミニウムなどの助触媒を添加すると、塩基触媒の金属酸化物がアルミニウム助触媒を覆い、それによってクリスタライトが生じることがある。次に、クリスタライトは、触媒系を迅速に失活させることがあり、これは、プロピレン生成用途において費用がかかり、非効率的である。
【0009】
したがって、改善されたプロピレン収率およびより高い選択性および2-ブテンの変換を可能にするが、迅速に失活する触媒系を生成しないメタセシス触媒系を合成する方法に対する継続的な必要性が存在する。これらの必要性に対処するために、メタセシス触媒系を合成する方法が開示され、これは、前駆体の存在下でシリカ担体上に酸化タングステンを含浸させて、塩基触媒を生成することと、塩基触媒をか焼することと、金属酸化物助触媒を塩基触媒の表面に含浸させて、ドープされた触媒を生成することと、ドープされた触媒をか焼して、メタセシス触媒系を生成することと、を含み得る。この方法の連続的なか焼および含浸工程を実行することにより、生成された開示されたメタセシス触媒系は、迅速に失活せず、改善されたプロピレン収率およびより高い選択性および2-ブテンの変換を可能にする。
【0010】
別の実施形態によれば、プロピレンの生成のためのプロセスが開示され、これは、1-ブテンおよび2-ブテンの混合物を含む炭化水素原料をメタセシス触媒系の実施形態と接触させて、メタセシス変換を介して、プロピレンを含む生成物流を生成することを含む。
【0011】
本実施形態の追加の特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態に記載され、一部はその説明から当業者に容易に明らかになるか、または以下の発明を実施するための形態、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含む記載された実施形態を実践することによって認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、大細孔シリカ担体の一実施形態について実施したX線回折(XRD)分析を示すグラフである。
図2図2は、酸化タングステン対10重量%WO3/SiO2塩基触媒のXRD分析を示し、それぞれ点線と実線で表したグラフである。
図3図3は、450℃での、メタセシス触媒系の実施形態における共金属の重量パーセントがプロピレン収率に及ぼす影響を示すグラフである。
図4図4は、500℃での、共金属の重量パーセントがプロピレン収率に及ぼす影響を示すグラフである。
図5図5は、550℃での、共金属の重量パーセントがプロピレン収率に及ぼす影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態は、触媒メタセシスを介してブテン流をプロピレンに変換するためのシステムおよび方法を対象とする。本出願で使用される場合、「メタセシス」は概して2段階プロセス:2-ブテン異性化と、以下で式1および式2に示すようにメタセシス触媒を使用したクロスメタセシスである。
式1:2-ブテン異性化
【化1】
式2:クロスメタセシス
【化2】
【0014】
式1および式2に示すように、「メタセシス」反応はこれらの反応物および生成物に限定されない;しかしながら、これは反応方法の基本的な例示である。示されているように、メタセシス反応は2つのアルケン分子間で起こる。二重結合の炭素原子に結合した基は分子間で交換され、その交換された基を有する2つの新しいアルケンを生成する。メタセシス反応のために選択される特定のメタセシス触媒系は、新しく形成される分子の二重結合に、置換基の立体的な影響が重要な役割を果たすように、オレフィン分子とメタセシス触媒系との配位が重要な役割を果たすため、シス-異性体またはトランス-異性体が形成されたかどうかを決定するのに役立つ。
【0015】
ここで、メタセシス触媒系を合成する方法は、前駆体の存在下でシリカ担体に酸化タングステンを含浸させて塩基触媒を生成することと、塩基触媒をか焼することと、金属酸化物助触媒を塩基触媒の表面に含浸させてドープされた触媒を生成することと、ドープされた触媒をか焼してメタセシス触媒系を生成することと、を含み得る。本開示において先に述べたように、この方法の連続的なか焼および含浸工程は、迅速に失活せず、改善されたプロピレン収率およびより高い選択性および2-ブテンの変換を可能にするメタセシス触媒系の実施形態を生成する。
【0016】
メタセシス触媒系は、塩基触媒を含む。いくつかの実施形態では、塩基触媒は、前駆体の存在下で大細孔シリカ担体に含浸された酸化タングステンを含む。本出願で使用される場合、「シリカ担体」は、か焼された大細孔シリカ触媒を意味する。本出願で使用される場合、「大細孔」とは、少なくとも0.700cm3/gの細孔容積を意味する。他の実施形態では、シリカ担体は、少なくとも0.700cm3/g~約2.5cm3/g、約0.800cm3/g~約2.5cm3/g、約0.800cm3/g~約1.5cm3/g、約0.800cm3/g~約1.25cm3/g、約0.800cm3/g~約1.0cm3/g、または約0.850cm3/g~約1.0cm3/gの細孔容積を有し得る。いくつかの実施形態では、例えば、大細孔シリカ触媒は、Fuji Silysia Chemical, Ltd.が提供するQ-10などの市販の球状触媒であり得、これは、約10nmの平均細孔径、約1.00mL/gの平均細孔容積、および約300m2/gの表面積を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、大細孔シリカ担体は、アモルファスシリカであり得る。本出願で使用される場合、「アモルファス」とは、秩序のない構造および狭い細孔径分布を有するアモルファスシリカ担体を意味する。この無秩序な構造はランダムであり得、したがって、従来のシリカ担体の開示された六角形または立方体の構造とは異なり得る。具体的には、アモルファスシリカは、少なくとも3nm~約40nmの狭い細孔径分布および少なくとも0.700cm3/gの全細孔容積を有する。他の実施形態では、細孔径分布は、少なくとも3nm~約40nm、約3nm~約20nm、約4nm~約10nm、約4nm~約8nm、または約4nmから約6nmの範囲であり得る。さらなる実施形態では、全細孔容積は、少なくとも約0.700cm3/g~約2.5cm3/g、約0.800cm3/g~約2.5cm3/g、約0.800cm3/g~約1.5cm3/g、約0.800cm3/g~約1.25cm3/g、約0.800cm3/g~約1.0cm3/g、または約0.850cm3/g~約1.0cm3/gであり得る。
【0018】
前に述べたように、より大きな細孔のシリカ担体は、所望の量の大細孔シリカ触媒をセラミックプレート上に置き、大細孔シリカ触媒をか焼することによって調製され得る。いくつかの実施形態では、大細孔シリカ触媒は、少なくとも100℃の温度でか焼され得る。他の実施形態では、大細孔シリカ触媒は、約100℃~約700℃、約100℃~約600℃、約100℃~約500℃、約100℃~約400℃、約100℃~約300℃、約100℃~約200℃、約200℃~約700℃、約200℃~約600℃、約200℃~約500℃、約200℃~約400℃、約200℃~約300℃、約300℃~約700℃、約300℃~約600℃、約300℃~約500℃、約300℃~約400℃、約400℃~約700℃、約400℃~約600℃、約400℃~約500℃、約500℃~約700℃、約500℃~約600℃、または約600℃~約700℃でか焼され得る。
【0019】
さらに、いくつかの実施形態では、大細孔シリカ触媒は、ある温度で少なくとも1時間か焼され得る。他の実施形態では、大細孔シリカ触媒は、ある温度で約1時間~約7時間、約1時間~約6時間、約1時間~約5時間、約1時間~約4時間、約1時間~約3時間、約1時間~約2時間、約2時間~約7時間、約2時間~約6時間、約2時間~約5時間、約2時間~約4時間、約2時間~約3時間、約3時間~約7時間、約3時間~約6時間、約3時間~約5時間、約3時間~約4時間、約4時間~約7時間、約4時間~約6時間、約4時間~約5時間、約5時間~約7時間、または約5時間~約6時間、約6時間~約7時間か焼され得る。
【0020】
また、大細孔シリカ触媒は、少なくとも1℃/分のランピングレートでか焼され得る。他の実施形態では、ランピングレートは、約1℃/分~約5℃/分、約1℃/分~約4℃/分、約1℃/分~約3℃/分、約1℃/分~約2℃/分、約2℃/分~約5℃/分、約2℃/分~約4℃/分、約2℃/分~約3℃/分、約3℃/分~約5℃/分、約3℃/分~約4℃/分、または約4℃/分~約5℃/分であり得る。
【0021】
さらなる実施形態では、大細孔シリカ触媒は、複数のランピングレートおよび温度で様々な時間にわたってか焼されて、大細孔シリカ担体を生成し得る。例えば、シリカ担体を生成するいくつかの実施形態では、大細孔シリカ触媒は、200℃で3時間、再び575℃で5時間、3℃/分のランピングレートでか焼され得、その結果、大細孔シリカ担体が得られる。
【0022】
理論に拘束されることなく、シリカ担体の細孔径分布および細孔容積は、より良好な触媒活性および金属酸化物による細孔の閉塞の減少を達成するようにサイズ決めされるが、より小さい細孔容積および細孔径のシリカ担体は、細孔が閉塞し易く、それによって、触媒活性が低下する。閉塞が減少すると、シリカ担体上に酸化タングステンなどの金属酸化物種がより多く分散する。酸化タングステンが分散するほど、メタセシスが活性し、したがってプロピレン収率が高くなる。
【0023】
塩基触媒の金属酸化物は、周期表IUPAC6~10族からの金属の1つ以上の酸化物を含み得る。1つ以上の実施形態では、金属酸化物は、モリブデン、レニウム、タングステン、またはそれらの組み合わせの酸化物であり得る。いくつかの実施形態では、金属酸化物は、酸化タングステン(WO3)である。シリカ担体には、様々な量の金属酸化物を含浸させ得ると考えられる。例えば、限定ではないが、シリカ対金属酸化物、例えば、WO3のモル比は、約1~約50、約1~約40、約5~約30、約5~約15である。いくつかの実施形態では、塩基触媒は、塩基触媒の総重量に基づいて、約5重量%~約15重量%、約5重量%~約12重量%、約5重量%~約8重量%、約8重量%~約15重量%、約8重量%~約12重量%、または約8重量%~約10重量%の金属酸化物を含み得る。また、メタセシス触媒系は、メタセシス触媒系の総重量に基づいて、約1~約50重量%、または約2~約25重量%、または約5~約15%重量%の金属酸化物、例えば、WO3を含み得る。
【0024】
前に述べたように、いくつかの実施形態では、塩基触媒は、前駆体の存在下でシリカ担体に含浸された酸化タングステンを含む。前駆体は、シリカ担体の化学反応に関与して、シリカ担体上に含浸される金属酸化物を生成する任意の非多孔質材料であり得る。いくつかの実施形態では、金属前駆体は、メタタングステン酸アンモニウム六水和物であり得る。他の実施形態では、金属前駆体は、塩化タングステンを含み得る。他の実施形態では、金属前駆体は、タングステンヘキサカルボニルを含み得る。
【0025】
塩基触媒を調製するために、大細孔シリカ担体に、前駆体の存在下で金属酸化物を含浸させ得る。大細孔シリカ担体に含浸させるいくつかの方法では、大細孔シリカ担体および水をフラスコに入れて、大細孔シリカ担体および水溶液を生成し得る。いくつかの実施形態では、ある量の前駆体が秤量され、大細孔シリカ担体および水溶液と混合され得る。次に、大細孔シリカ担体および前駆体を含む水溶液が撹拌されて、前駆体が大細孔シリカ担体内に分散している均一な混合物を生成し得る。次に、混合物を回転させて、加熱させ得る。いくつかの実施形態では、真空が混合物に適用されて、過剰な水を除去し得る。混合物から水を吸引した後、スラリー材料が生成され得る。いくつかの実施形態では、スラリー材料は、室温まで冷却され得る。さらなる実施形態では、スラリー材料は、例えば、オーブン内で乾燥され得、乾燥された材料を生成する。さらなる実施形態では、乾燥された材料は粉砕されて粉末にされ、例えば、炉内でか焼され得る。
【0026】
塩基触媒を調製するいくつかの実施形態では、塩基触媒は、金属酸化物を含浸された後にか焼され得る。いくつかの実施形態では、塩基触媒は、少なくとも100℃の温度でか焼され得る。他の実施形態では、塩基触媒は、約100℃~約700℃、約100℃~約600℃、約100℃~約500℃、約100℃~約400℃、約100℃~約300℃、約100℃~約200℃、約200℃~約700℃、約200℃~約600℃、約200℃~約500℃、約200℃~約400℃、約200℃~約300℃、約300℃~約700℃、約300℃~約600℃、約300℃~約500℃、約300℃~約400℃、約400℃~約700℃、約400℃~約600℃、約400℃~約500℃、約500℃~約700℃、約500℃~約600℃、または約600℃~約700℃でか焼され得る。
【0027】
さらに、いくつかの実施形態では、塩基触媒は、ある温度で少なくとも1時間か焼され得る。他の実施形態では、塩基触媒は、ある温度で約1時間~約7時間、約1時間~約6時間、約1時間~約5時間、約1時間~約4時間、約1時間~約3時間、約1時間~約2時間、約2時間~約7時間、約2時間~約6時間、約2時間~約5時間、約2時間~約4時間、約2時間~約3時間、約3時間~約7時間、約3時間~約6時間、約3時間~約5時間、約3時間~約4時間、約4時間~約7時間、約4時間~約6時間、約4時間~約5時間、約5時間~約7時間、または約5時間~約6時間、約6時間~約7時間か焼され得る。
【0028】
また、塩基触媒は、少なくとも1℃/分のランピングレートでか焼され得る。他の実施形態では、ランピングレートは、約1℃/分~約5℃/分、約1℃/分~約4℃/分、約1℃/分~約3℃/分、約1℃/分~約2℃/分、約2℃/分~約5℃/分、約2℃/分~約4℃/分、約2℃/分~約3℃/分、約3℃/分~約5℃/分、約3℃/分~約4℃/分、または約4℃/分~約5℃/分であり得る。
【0029】
さらなる実施形態では、塩基触媒は、様々な時間の間、複数のランピングレートおよび温度でか焼され得る。例えば、塩基触媒を生成するいくつかの実施形態では、塩基触媒は、250℃で2時間および550℃で8時間、250℃の温度に達するまで1℃/分、550℃の温度に達するまで3℃/分のランピングレートでか焼され得、その結果、塩基触媒を生成する。
【0030】
メタセシス触媒系の実施形態はまた、金属酸化物助触媒を含むドープされた触媒を含む。いくつかの実施形態では、金属酸化物助触媒は、遷移金属を含み得る。さらなる実施形態では、金属酸化物助触媒は、銅(Cu)、コバルト(Co)、セリウム(Ce)、ニッケル(Ni)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、およびモリブデン(Mo)から選択される1つ以上の金属を含む。様々な量の金属酸化物助触媒を大細孔シリカ担体に含浸させ得ると考えられる。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒系は、メタセシス触媒系の総重量に基づいて、少なくとも0.5重量パーセント(重量%)の金属酸化物助触媒を含み得る。さらなる実施形態では、メタセシス触媒系は、メタセシス触媒系の総重量に基づいて、約0.5重量%~約5重量%の助触媒、約0.5重量%~約4重量%の助触媒、約0.5重量%~約3重量%の助触媒、約0.5重量%~約2重量%の助触媒、約0.5重量%~約1重量%の助触媒、約1重量%~約5重量%の助触媒、約1重量%~約4重量%の助触媒、約1重量%~約3重量%の助触媒、約1重量%~約2重量%の助触媒、約2重量%~約5重量%の助触媒、約2重量%~約4重量%の助触媒、約2重量%~約3重量%の助触媒、約3重量%~約5重量%の助触媒、約3重量%~約4重量%の助触媒、または約4重量%~約5重量%の助触媒を含み得る。
【0031】
ドープされた触媒を調製するために、塩基触媒は前述のように調製され得、金属酸化物助触媒は塩基触媒上に分散され得る。いくつかの実施形態では、固体金属ベースの助触媒は、液体含浸法によって分散され得る。液体含浸法の実施形態では、金属酸化物助触媒は、1つ以上の前駆体の存在下で液体を介してシリカ担体に含浸される。前に述べたように、前駆体は、化学反応に関与して金属酸化物助触媒をシリカ担体に含浸させる任意の非多孔質材料であり得る。いくつかの実施形態では、金属前駆体は、塩化タングステン(V)、塩化銅(II)、塩化コバルト(II)、硝酸セリウム(III)六水和物、塩化ニッケル(II)、三塩化ガリウム、塩化アルミニウム、塩化モリブデン(V)、硝酸銅(II)水和物、硝酸コバルト(II)六水和物、アセチルアセトナートセリウム水和物、硝酸ニッケル、硝酸ガリウム(III)水和物、硝酸アルミニウム非水和物、およびモリブデン酸アンモニウムのうちの1つ以上であり得る。いくつかの湿式含浸法では、塩基触媒および水がフラスコに入れられて、塩基触媒および水溶液を生成し得る。いくつかの実施形態では、ある量の前駆体が秤量され、塩基触媒および水溶液と混合され得る。次に、塩基触媒および前駆体を含む水溶液が撹拌され、前駆体が塩基触媒内に分散している均一な混合物を生成し得る。次に、混合物を回転させて、加熱させ得る。いくつかの実施形態では、真空が混合物に適用されて、過剰な水を除去し得る。混合物から水を吸引した後、スラリー材料が生成され得る。いくつかの実施形態では、スラリー材料は、室温まで冷却され得る。さらなる実施形態では、スラリー材料は、例えば、オーブン内で乾燥され、乾燥された材料を生成し得る。さらなる実施形態では、乾燥された材料が粉砕されて粉末にされ、例えば、炉内でか焼され得る。
【0032】
大細孔シリカ担体に酸化タングステンと金属酸化物助触媒を含浸させると、ドープされた触媒が生成される。いくつかの実施形態では、ドープされた触媒はさらにか焼されて、メタセシス触媒系を生成する。ドープされた触媒は、ある温度で少なくとも1時間か焼され得る。他の実施形態では、塩基触媒は、約1時間~約7時間、約1時間~約6時間、約1時間~約5時間、約1時間~約4時間、約1時間~約3時間、約1時間~約2時間、約2時間~約7時間、約2時間~約6時間、約2時間~約5時間、約2時間~約4時間、約2時間~約3時間、約3時間~約7時間、約3時間~約6時間、約3時間~約5時間、約3時間~約4時間、約4時間~約7時間、約4時間~約6時間、約4時間~約5時間、約5時間~約7時間、または約5時間~約6時間、約6時間~約7時間か焼され得る。
【0033】
また、ドープされた触媒は、少なくとも1℃/分のランピングレートでか焼され得る。他の実施形態では、ランピングレートは、約1℃/分~約5℃/分、約1℃/分~約4℃/分、約1℃/分~約3℃/分、約1℃/分~約2℃/分、約2℃/分~約5℃/分、約2℃/分~約4℃/分、約2℃/分~約3℃/分、約3℃/分~約5℃/分、約3℃/分~約4℃/分、または約4℃/分~約5℃/分であり得る。
【0034】
さらなる実施形態では、ドープされた触媒は、様々な時間の間、複数のランピングレートおよび温度でか焼され得る。例えば、メタセシス触媒系を生成するいくつかの実施形態では、ドープされた触媒は、250℃で2時間および550℃で8時間、250℃の温度に達するまで1℃/分、550℃の温度に達するまで3℃/分のランピングレートでか焼され、その結果、塩基触媒を生成し得る。
【0035】
さらなる実施形態では、ドープされた触媒は、様々な時間の間、複数のランピングレートおよび温度でか焼され得る。例えば、メタセシス触媒系を生成するいくつかの実施形態では、ドープされた触媒は、250℃で2時間および550℃で8時間、250℃の温度に達するまで1℃/分、550℃の温度に達するまで3℃/分のランピングレートでか焼され、その結果、メタセシス触媒系を生成し得る。
【0036】
メタセシス触媒系は、メタセシス触媒系の総重量に基づいて、少なくとも0.5重量パーセント(重量%)の助触媒を含み得る。さらなる実施形態では、メタセシス触媒系は、メタセシス触媒系の総重量に基づいて、約0.5重量%~約5重量%の助触媒、約0.5重量%~約4重量%の助触媒、約0.5重量%~約3重量%の助触媒、約0.5重量%~約2重量%の助触媒、約0.5重量%~約1重量%nの助触媒、約1重量%~約5重量%の助触媒、約1重量%~約4重量%の助触媒、約1重量%~約3重量%の助触媒、約1重量%~約2重量%の助触媒、約2重量%~約5重量%の助触媒、約2重量%~約4重量%の助触媒、約2重量%~約3重量%の助触媒、約3重量%~約5重量%の助触媒、約3重量%~約4重量%の助触媒、または約4重量%~約5重量%の助触媒を含み得る。
【0037】
さらに、他の任意の成分がメタセシス触媒系に含まれ得る。理論に拘束されることなく、他の任意の成分は、合成プロセス中にシリカの表面に金属を均一に分散させるのに役立つ場合がある。例えば、メタセシス触媒は、構造化剤を含み得る。一実施形態では、構造化剤は、トリブロックコポリマー構造化剤である。さらなる実施形態では、トリブロックコポリマー構造化剤は、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)構造であり、これは、ポロキサマー構造とも呼ばれ得る。界面活性剤トリブロックコポリマー構造化剤の1つの適切な商業的実施形態は、BASF CorporationによるPluronic(登録商標)P123である。
【0038】
メタセシス触媒系は、約0.125ミリモル/グラム(mmol/g)~約0.500mmol/gの総酸度を有する。理論に拘束されることなく、材料が0.500mmol/gを超えると、分解および水素移動反応など、他の有害な副反応が発生し得る。さらなる実施形態では、メタセシス触媒系は、約0.125mmol/g~約0.250mmol/g、または約0.125mmol/g~約0.150mmol/gの総酸度を有し得る。
【0039】
様々な表面積が企図されているが、メタセシス触媒系は、1つ以上の実施形態では、少なくとも約400メートル2/グラム(m2/g)、または約400m2/g~約800m2/g、または約400m2/g~約500m2/g、または約400m2/g~約450m2/g、または約425m2/g~約450m2/gの表面積を有し得る。
【0040】
メタセシス触媒系は、少なくとも3nm~約40nmの細孔径分布の細孔径分布を有する。他の実施形態では、細孔径分布は、少なくとも3nm~約40nm、約3nm~約20nm、約4nm~約10nm、約4nm~約8nm、または約4nm~約6nmの範囲であり得る。
【0041】
メタセシス触媒系は、少なくとも0.700cm3/gの全細孔容積の全細孔容積を有する。さらなる実施形態では、全細孔容積は、少なくとも約0.700cm3/g~約2.5cm3/g、約0.800cm3/g~約2.5cm3/g、約0.800cm3/g~約1.5cm3/g、約0.800cm3/g~約1.25cm3/g、約0.800cm3/g~約1.0cm3/g、または約0.850cm3/g~約1.0cm3/gであり得る。
【0042】
操作中、1-ブテンと2-ブテンの混合物を含む炭化水素原料をメタセシス触媒系の実施形態と接触させて、メタセシス変換を介して、プロピレンを含む生成物流を生成する。炭化水素原料は、1-ブテンと2-ブテンの混合物を含み、任意選択的に、トランス-2-ブテンおよびシス-2-ブテンなどの1つ以上の異性体を含む。いくつかの実施形態では、炭化水素原料は、1-ブテンよりも多くの2-ブテンを含む。現在の議論は、特にブテンベースの炭化水素原料流に注意が向けられている;しかしながら、他のC1~C6成分も、炭化水素原料流中に存在し得ることが知られている。前に示したように、メタセシスは、2-ブテンから1-ブテンへの異性化と、それに続く2-ブテンと1-ブテンの、プロピレン、および他のアルケンとペンテンなどのアルカンを含むメタセシス生成物流へのクロスメタセシスを伴う。
【0043】
炭化水素原料とメタセシス触媒系との接触については、様々な操作条件が考えられる。例えば、炭化水素原料は、約10~約10,000/時間-1または約300~約1200/時間-1の空間時間速度でメタセシス触媒系と接触し得る。また、炭化水素原料は、約200℃~約600℃、または約300℃~約600℃、または約400℃~約600℃、または約400℃~約550℃、または約450℃~約600℃、または約450℃~約550℃の温度でメタセシス触媒系と接触し得る。さらにまた、炭化水素原料は、約1~約30バール、または約1~約10バールの圧力でメタセシス触媒系と接触し得る。
【0044】
任意選択的に、メタセシス触媒系は、いくつかの実施形態では、メタセシスの前に前処理され得る。例えば、メタセシス触媒は、少なくとも約400℃、または少なくとも約500℃の温度で、メタセシスの前に約1時間~約5時間、N2で前処理され得る。
【0045】
理論に拘束されることなく、芳香族化合物はコークス形成を引き起こし、それが触媒の失活につながる可能性があるため、芳香族化合物の収率が低いことが望ましい。理論に拘束されることなく、プロピレン収率の向上と副反応の減少は、2-ブテンから1-ブテンへの異性化の高い選択性に一部起因している。また、異性化によって1-ブテンの収率を上げることにより、その後の2-ブテンと1-ブテンのクロスメタセシスにより、生成物流でより多くのプロピレンを生成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、メタセシス触媒系を利用するプロセスのプロピレン収率は、少なくとも10%であり得る。他の実施形態では、プロピレン収率は、メタセシス触媒系を利用するプロセスの場合、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%、約10%~約20%、約20%~約60%、約20%~約50%、約20%~約40%、約20%~約30%、約30%~約60%、約30%~約50%、約30%~約40%、約40%~約60%、約40%~約50%、または約50%~約60%であり得る。
【0046】
次の例で示されるように、メタセシス触媒系を使用する方法は、従来のメタセシス触媒と比較して、より高い2-ブテン変換率およびより良好なプロピレン収率を示す。前に述べたことを繰り返すが、2-ブテンから1-ブテンへの選択的異性化と水素移動反応の減少(芳香族化合物の形成の減少)は、従来のメタセシス触媒と比較したメタセシス触媒系の追加の利点である。望ましくないイソブチレンの形成もまた、従来のメタセシス触媒と比較して、メタセシス触媒系において低減される。
【0047】
試験方法
「変換率」の決定は、式1に従って算出された。式中、niは、反応器に出入りする成分「i」(2-ブテン)のモル数である。
【数1】
【0048】
同様に、「変換率C4」の決定は、式2に従って算出された。
【数2】
【0049】
「選択性」の決定は、式3に従って算出された。
【数3】
【0050】
試料の表面積は、AUTOSORB-1(Quanta Chrome)を使用して77ケルビン(K)で窒素吸着によって測定された。吸着測定の前に、試料(約0.1g)は、窒素流下、220℃で2時間加熱された。触媒の窒素吸着等温線は、液体窒素温度(77K)で測定された。表面積は、ブルナウアー-エメット-テラー(BET)法によって算出された。全相対細孔容積は、P/P0=0.99で吸着されたN2の量から推定された。Barret EP, Joyner Lj, Halenda PH, J. AM. Chem. Soc. 73 (1951) 373-380。表7に示されている変化率などの改善率は、改善された値と初期値の差を初期値で割ったものに等しくなる。次に、商に100を掛けて、改善を改善率に変換する。初期値は、参照値にすることもできる。
【実施例
【0051】
次の実施例は、本開示の1つ以上の追加の特徴を示す。これらの実施例は、決して本開示の範囲または添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0052】
プロピレン生成に対するメタセシス触媒系の効果を比較するために、メタセシス触媒系の試料を調製し、様々なプロセス条件下で試験した。
【0053】
大細孔シリカ担体の調製
大細孔シリカ担体は、50グラムの大細孔シリカ触媒をセラミックプレート上に置くことによって調製された。ここで、大細孔シリカ触媒は、Fuji Silysia Chemical, Ltd.から提供された市販の球状触媒、Q-10であった。市販の球状触媒は、平均細孔径が約10nm、平均細孔容積が約1.00mL/g、表面積が約300m2/gであった。次に、球状触媒は、200℃で3時間、そして再び575℃で5時間、3℃/分のランピングレートでか焼され、大細孔シリカ担体を得た。
【0054】
(本発明実施例の)塩基触媒の調製:比較例
塩基触媒の典型的な合成では、大細孔シリカ担体の試料に、前駆体の存在下で金属酸化物を含浸させた。ここで、金属酸化物は、酸化タングステンであった。塩基触媒を調製するために、50グラムの大細孔シリカ担体を500mLの丸底フラスコに入れ、200mLの脱イオン水を大細孔シリカ担体に加えて、大細孔シリカ担体および水溶液を生成した。次に、メタタングステン酸アンモニウム水和物99.99%微量金属ベースである約5.896グラムの前駆体が秤量され、大細孔シリカ担体および水溶液と混合された。次に、大細孔シリカ担体および前駆体を含む水溶液は、毎分400回転(RPM)で約30分間撹拌されて、前駆体が大細孔シリカ担体内に分散された均一な混合物を生成した。次にフラスコを、真空ロータリーエバポレーターに入れて、混合物を回転させ、水浴を使用して80℃で加熱された。次に、混合物に真空が適用され過剰の水を除去し、スラリー材料を生成した。溶液から水を吸引した後、スラリー材料をフラスコに残し、これを室温に冷却し、続いてオーブン内で80℃で一晩乾燥させた。翌日、乾燥された材料は、粉砕されて粉末にされ、炉内でか焼された。材料は、250℃で2時間および550℃で8時間、第1の温度に達するまで1℃/分、第2の温度に達するまで3℃/分のランピングレートでか焼され、その結果、塩基触媒を生成した。金属添加量は、10重量%WO3/SiO2であると算出された。
【0055】
Quantachrome InstrumentsのAutosorb iQ2を使用して、シリカ担体および塩基触媒の表面積および細孔容積が分析された。測定されたBET表面積と細孔容積を表1に提示する。
【0056】
【表1】
【0057】
シリカ担体のX線回折(XRD)は、200℃で3時間、次に3℃/分のランピングレートで、575℃で5時間か焼した後、実施された。図1に示されるように、XRDは、2θで18°~30°の範囲のピークを特徴とする単純なアモルファス構造を示している。
【0058】
図2は、比較例のXRDと比較したブランク酸化タングステンのXRDを示す。赤い回折グラフは、単斜晶構造を有するJoint Committee on Powder Diffraction StandardsカードNo.00-005-0364に則した結晶性WO3の特徴的なピークを示す。青い回折グラフは、10重量%タングステンを含むブランクシリカ担体のXRDパターンを示す。シリカ担体の表面に酸化タングステンを添加した後、シリカ形態の構造が保持される。これは、酸化タングステンがシリカ担体の表面に細かく分散しているためである。
【0059】
メタセシス触媒系の調製:本発明実施例A~G
本発明実施例を調製するために、塩基触媒に金属酸化物助触媒がドープされてドープされた触媒を生成し、次にドープされた触媒がか焼されてメタセシス触媒系の最終的な本発明実施例が生成された。ドープされた触媒を生成するために、銅、コバルト、セリウム、ニッケル、ガリウム、アルミニウム、およびモリブデンの金属が、湿式含浸法を使用して塩基触媒にドープされた。塩基触媒に含浸させるために使用された金属前駆体は、全て可溶性の形態であった。BET表面積データ(表1)から算出された塩基触媒の細孔容積に基づいて、金属硝酸塩(前駆体)を水に溶解して、1重量%または2重量%の助触媒を有する試料を得た。計算は、塩基触媒の総重量パーセントに基づいていた。湿式含浸法では、5滴の金属硝酸塩前駆体溶液が塩基触媒に滴下された。ガラス棒を使用して、溶液と塩基触媒を完全に混合した。前駆体および水に溶解した量を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
その後、混合物を80℃で一晩乾燥オーブンに入れた。最後に、メタセシス触媒系の最終試料を調製するために、ドープされた各触媒試料を80℃で一晩乾燥オーブンに入れた。乾燥されたドープされた触媒は、250℃で2時間および550℃で8時間、第1の温度(250℃)に達するまで1℃/分、第2の温度(550℃)に達するまで3℃/分のランピングレートでか焼され、結果としてメタセシス触媒系の試料が得られた。
【0062】
メタセシス触媒系の評価
調製された触媒は、ブテンメタセシス反応に対するそれらの活性および選択性について、固定床連続流通反応器(ID 0.25 インチ、Autoclave Engineers,Ltd.)において、大気圧下で試験された。一定量の触媒試料、1mLの各比較例または発明実施例は、反応器の底部に1mLのグレード20炭化ケイ素と共に反応器管に合計2mL充填された。
【0063】
触媒は、N2下、550℃で150分間前処理された。全ての反応は、450℃、500℃、および550℃の3つの温度、ならびに大気圧で実施された。各温度点で、反応を3.5時間保持した。希釈剤として窒素(25mL/分)を供給し、2-ブテン(5mL/分)を使用して、900/時間-1の気体時空間速度(GHSV)を維持した。反応生成物の定量分析は、HP-Al/KCL(50m×0.53mm×15ミクロン)カラムを備えたFIDを有するAgilent GC-7890Bを使用してオンラインで実施された。
【0064】
表3、表4、および表5は、それぞれ450℃、500℃、および550℃での比較例および本発明実施例のそれぞれについて、プロピレン収率、選択性、および2-ブテン変換率を提示する。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
比較例および本発明実施例のそれぞれをスクリーニングした後、いくつかの共金属が、様々な温度での変換率、プロピレン収率、および選択性においてより高い活性を可能にすることが観察された。図4図5、および図6は、これらの結果を示しており、後続の段落では結果から観察された傾向につい論じる。
【0069】
金属酸化物助触媒に銅を含む本発明実施例、発明A-1および発明A-2では、450℃で、発明A-2は、変換率(60%と比較して63.39%)、収率(19.9%と比較して21.76%)、および選択性(33.17%と比較して34.04%)の改善を示した。(表3を参照)。500℃でも、発明A-2は、変換率(72.34%と比較して79.92%)、収率(24.4%と比較して29.23%)、および選択性(33.72%と比較して36.57%)の改善を示した。(表4を参照)。最後に、550℃で、発明A-1は、収率(27.9%と比較して25.71%)と選択性(35.54%と比較して33.75%)の改善を示し、発明A-2は、変換率(78.56%と比較して83.72%)、収率(27.9%と比較して30.98%)、および選択性(35.54%と比較して37.00%)の改善を示した。(表5を参照)。
【0070】
金属酸化物助触媒にコバルトを含む本発明実施例、発明B-1および発明B-2では、450℃で観察された(表3を参照)。発明B-1は、変換率(60%と比較して67.71%)、収率(19.9%と比較して22.63%)、および選択性(33.17%と比較して33.42%)の改善を示し、発明B-2は選択性の改善を示した(33.17%と比較して35.14%)。(表3を参照)。500℃でも、発明B-1は、変換率(72.34%と比較して72.76%)、収率(24.4%と比較して24.54%)、および選択性(33.72%と比較して33.73%)の改善を示し、発明B-2は選択性の改善を示した(33.72%と比較して35.30%)。(表4を参照)。最後に、550℃で、発明B-2は、変換率(78.56%と比較して78.75%)、収率(27.9%と比較して28.23%)、および選択性(35.54%と比較して35.85%)の改善を示した。(表5を参照)。
【0071】
金属酸化物助触媒にセリウムを含む本発明実施例、発明C-1および発明C-2では、450℃で、発明C-1および発明C-2の両方の実施例が、変換率(60%と比較してそれぞれ82.17%および60.51%)、収率(19.9%と比較してそれぞれ31.83%および22.36%)、および選択性(33.17%と比較してそれぞれ38.74%および36.95%)の改善を示した。(表3を参照)。500℃では、発明C-1およびC-2の両方が、変換率(72.34%と比較してそれぞれ82.13%および75.29%)、収率(24.4%と比較してそれぞれ28.87%および26.72%)、および選択性(33.72%と比較してそれぞれ35.15%および35.49%)の改善を示した。(表4を参照)。最後に、550℃で、発明C-1およびC-2の両方が、変換率(78.56%と比較してそれぞれ81.25%および81.23%)、収率(27.9%と比較してそれぞれ29.79%および29.92%)、および選択性(35.54%と比較してそれぞれ36.66%および36.83%)の改善を示した。(表5を参照)。
【0072】
金属酸化物助触媒にニッケルを含む本発明実施例、発明D-1および発明D-2では、450℃で、発明D-1および発明D-2の両方の実施例が、変換率(60%と比較してそれぞれ60.84%および62.28%)、収率(19.9%と比較してそれぞれ24.91%および25.36%)、および選択性(33.17%と比較してそれぞれ40.94%および40.72%)の改善を示した。(表3を参照)。500℃では、発明D-1およびD-2の両方が、収率(24.4%と比較してそれぞれ26.35%および26.4%)および選択性(33.72%と比較してそれぞれ36.59%および36.59%)の改善を示した。(表4を参照)。最後に、550℃で、発明D-1およびD-2の両方が、変換率(78.56%と比較してそれぞれ81.12%および81.23%)、収率(27.9%と比較してそれぞれ29.84%および29.84%)、および選択性(35.54%と比較してそれぞれ36.79%および36.69%)の改善を示した。(表5を参照)。
【0073】
金属酸化物助触媒にガリウムを含む本発明実施例、発明E-1および発明E-2では、450℃で、発明E-2は、変換率(60%と比較して62.51%)および収率(19.9%と比較して20.15%)の改善を示した。(表3を参照)。500℃で、発明E-2は、変換率(72.34%と比較して81.68%)、収率(24.4%と比較して28%)、および選択性(33.72%と比較して34.28%)の改善を示した。(表4を参照)。最後に、550℃で、発明E-1は、選択性(35.54%と比較して39.60%)の改善を示し、E-2は、変換率(78.56%と比較して87.15%)および収率(27.9%と比較して30.77%)の改善を示した。(表5を参照)。
【0074】
金属酸化物助触媒にアルミニウムを含む本発明実施例、発明F-1および発明F-2では、450℃で、発明F-1および発明F-2の両方の実施例が、変換率(60%と比較してそれぞれ79.1%および81.65%)、収率(19.9%と比較してそれぞれ27.21%および27.33%)、および選択性(33.17%と比較してそれぞれ34.40%および33.47%)の改善を示した。(表3を参照)。500℃では、発明F-1およびF-2の両方が、変換率(72.34%と比較してそれぞれ85.94%および86.1%)および収率(24.4%と比較してそれぞれ27.7%および27.06%)の改善を示した。(表4を参照)。最後に、550℃で、発明F-1およびF-2の両方が、変換率(78.56%と比較してそれぞれ86.34%および86.64%)および収率(27.9%と比較してそれぞれ28.75%および28.54%)の改善を示した。(表5を参照)。
【0075】
金属酸化物助触媒にモリブデンを含む本発明実施例、発明G-1および発明G-2では、450℃で、発明G-1は、選択性(33.17%と比較して36.31%)の改善を示し、発明G-2は、変換率(60%と比較して65.5%)、収率(19.9%と比較して23.35%)、および選択性(33.17%と比較して35.65%)の改善を示した。(表3を参照)。また、550℃では、発明G-1は、選択性の改善を示した(35.54%と比較して35.77%)。(表5を参照)。
【0076】
これらの結果から明らかな1つの利点は、塩基触媒上で金属酸化物助触媒を使用することにより、様々な温度での実施形態のそれぞれの少なくとも1つの変換率、プロピレン収率、または選択性が向上することである。全体として、プロピレン収率は、より低い反応温度で本発明実施例について概して高かったことが明らかであり得る。(例えば、表3と表5の結果を参照)。温度が上昇すると、プロピレン収率の低下が観察され、これは、反応が電子遷移の平衡状態に達した結果である可能性がある。また、高温では、不要な副生成物の形成により、プロピレン収率も低下する可能性がある。
【0077】
これらの結果から、塩基触媒(開示されたメタセシス触媒系)に金属酸化物助触媒を使用すると、従来の触媒系(共金属を含まない塩基触媒)と比較して、変換率、プロピレン収率、または選択性が向上することは明らかであり得る。したがって、開示されたメタセシス触媒系は、酸化タングステンシリカ触媒(塩基触媒、または「比較例」)のみを使用するものなど、プロピレン生成のための既存または既知のメタセシスプロセスと比較して商業的に有利である。
【0078】
ある特性に割り当てられた任意の2つの定量値は、その特性の範囲を構成することができ、所与の特性の全ての述べられた定量値から形成される範囲の全ての組み合わせが、本開示において企図されることを理解されたい。組成物または配合物中の化学成分の組成範囲は、いくつかの実施形態では、その成分の異性体の混合物を含むと理解されるべきである。実施例は、様々な組成物の組成範囲を提供し、特定の化学組成物の異性体の総量が範囲を構成し得ることが理解されるべきである。
【0079】
以下の特許請求の範囲のうちの1つ以上は、用語「where」を移行句として利用することに留意されたい。本技術を定義する目的のために、この用語は、構造の一連の特性の列挙を導入するために使用される非限定的な移行句として、特許請求の範囲に導入され、より一般的に使用される非限定的な前置き用語「含む(comprising)」と同様に解釈されるべきであることに留意されたい。
【0080】
本開示の主題を詳細に、かつ特定の実施形態を参照して説明してきたが、本開示に記載された様々な詳細は、本説明に付随する図面の各々に特定の要素が示されている場合であっても、これらの詳細が本開示に記載された様々な実施形態の必須構成要素である要素に関するものであることを暗示すると解釈されるべきではないことに留意されたい。むしろ、本明細書に添付された特許請求の範囲は、本開示の広がりおよび本開示に記載の様々な実施形態の対応する範囲の1つの表現として解釈されるべきである。さらに、特許請求される主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、記載の実施形態に様々な変更および変形がなされ得ることは、当業者に明らかであるはずである。したがって、本明細書は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に入るそのような変更および変形が提供される様々な記載された実施形態の変更および変形を網羅することを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】