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特表2022-512667KIR7.1遺伝子療法ベクターおよびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】KIR7.1遺伝子療法ベクターおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/86 20060101AFI20220131BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220131BHJP
   A61K 38/17 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12N15/86 Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
A61K48/00
A61P27/02
A61K35/76
A61K38/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519805
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(85)【翻訳文提出日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 US2019055635
(87)【国際公開番号】W WO2020077091
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】62/743,623
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013274
【氏名又は名称】ウィスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【弁理士】
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】パトナイク ビカシュ
(72)【発明者】
【氏名】シャーヒー パワン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084DC50
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA33
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA33
(57)【要約】
本発明は、Kir7.1の発現のための遺伝子療法コンストラクトおよび医薬組成物に関する。遺伝子療法コンストラクトは、Kir7.1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されたプロモーターを含むベクターを含む。不十分な発現または機能のKir7.1ポリペプチドと関連する状態を有する対象を治療する方法もまた、提供される。
【選択図】図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Kir7.1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されたプロモーターを含む、遺伝子療法ベクター。
【請求項2】
前記Kir7.1ポリペプチドが、配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、請求項1に記載の遺伝子療法ベクター。
【請求項3】
前記プロモーターが、異種性プロモーターである、請求項1または2のいずれか1項に記載の遺伝子療法ベクター。
【請求項4】
前記プロモーターが、対象の目における網膜色素上皮(RPE)において活性である、請求項1~3のいずれか1項に記載の遺伝子療法ベクター。
【請求項5】
前記プロモーターが、EF1aプロモーターまたはVMD2プロモーターである、請求項1~4のいずれか1項に記載の遺伝子療法ベクター。
【請求項6】
前記プロモーターが、配列番号3に対して少なくとも90%の配列同一性を含むEF1aプロモーターである、請求項5に記載の遺伝子療法ベクター。
【請求項7】
前記プロモーターが、配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性を含むVMD2プロモーターである、請求項5に記載の遺伝子療法ベクター。
【請求項8】
前記プロモーターおよびポリヌクレオチドが、2本鎖DNA、1本鎖DNA、またはRNAでコードされる、請求項1~7のいずれか1項に記載の遺伝子療法ベクター。
【請求項9】
前記遺伝子療法ベクターが、ウイルスベクターである、請求項1~8のいずれか1項に記載の遺伝子療法ベクター。
【請求項10】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、およびアデノウイルスベクターからなる群から選択される、請求項9に記載の遺伝子療法ベクター。
【請求項11】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項10に記載の遺伝子療法ベクター。
【請求項12】
前記レンチウイルスベクターが、表5または表6において挙げられる構成成分の少なくとも1つをさらに含む、請求項11に記載の遺伝子療法ベクター。
【請求項13】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)である、請求項10に記載の遺伝子療法ベクター。
【請求項14】
前記AAVベクターが、表2または表3に挙げられる構成成分の少なくとも1つをさらに含む、請求項13に記載の遺伝子療法ベクター。
【請求項15】
前記AAVベクターが、AAV2ベクターである、請求項13~14のいずれか1項に記載の遺伝子療法ベクター。
【請求項16】
前記ウイルスベクターが、ウイルス粒子である、請求項9~15のいずれか1項に記載の遺伝子療法ベクター。
【請求項17】
前記ウイルス粒子が、VSV-Gエンベロープタンパク質を含む、請求項16に記載の遺伝子療法ベクター。
【請求項18】
配列番号5(EF1a-Kir7.1)または配列番号6(VMD2-Kir7.1)に対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む、レンチウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
【請求項19】
請求項1~18に記載の遺伝子療法ベクターのいずれか一つおよび医薬的に許容される担体を含む、治療組成物。
【請求項20】
Kir7.1ポリペプチドの不十分な発現または機能と関連する状態を有する対象を治療する方法であって、治療上有効量の、請求項1~18に記載の遺伝子療法ベクターのいずれか1つまたは請求項19に記載の治療組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記状態が、KCNJ13遺伝子における少なくとも1つの機能が喪失した変異と関連する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの機能が喪失した変異が、W53Ter、Q116R、I120T、T153I、R162Q、R166Ter、L241P、E276A、S105I、およびG219Terからなる群から選択される配列番号1に対する置換を生じる、請求項20~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記状態が、レーバー先天黒内障16(LCA16)、網膜色素変性症、およびスノーフレーク硝子体網膜変性(SVD)からなる群から選択される、請求項20~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記遺伝子療法ベクターまたは治療組成物が、眼内投与される、請求項20~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記遺伝子療法ベクターまたは治療組成物が、前記対象の少なくとも1方の目に網膜下投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記遺伝子療法ベクターの109~1012コピーが、前記対象に投与される、請求項20~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記対象がヒトである、請求項20~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
網膜色素上皮(RPE)細胞における異種性ポリペプチドを発現させる方法であって、前記RPE細胞を、前記異種性ポリペプチドに作動可能に結合されたプロモーターを含むアデノ随伴ウイルス2(AAV2)ウイルス粒子と接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月10日に出願した米国仮出願第62/743,623号の優先権を主張し、その内容は、参照により全体が取り込まれる。
【0002】
連邦政府資金による研究の記載
本発明は、米国国立衛生研究所により認められたEY024995の下、政府の支持で完成された。政府は、本発明においてある種の権利を有する。
【0003】
配列表
サイズ34.2kbであり、2019年10月9日に作成され、本出願と一緒にEFS-Webを介して電子的に提出された、「960296_03962_ST25.txt」と命名された配列表のASCIIテキストファイルの内容は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0004】
導入
レーバー先天黒内障(LCA)は、出生時の重篤な視野喪失により特徴付けられる、遺伝性小児形態の盲目である。LCAを有する小児はまた、眼球彷徨(眼振)、奥目、明るい光への過敏症、および中枢神経系異常を含む、様々な他の異常を示し得る。典型的には、乳児の最初の数ヶ月以内に、両親は、視覚の応答性および眼振の欠如に気付く。LCAを有する乳児の網膜は、正常に思われるが、(たとえあるとしても)活性は、網膜電図検査(ERG)により網膜においてほとんど検出されない。しかしながら、前期思春期までに、網膜色素上皮(RPE)における色素性変化および狭窄血管の存在を含む、網膜の見た目における様々な変化が検出され得る。
【0005】
LCAは、典型的には、常染色体劣性遺伝で家系を通じて継承される。外網膜視細胞および網膜色素上皮(RPE)において発現する少なくとも21遺伝子における変異が、LCAと関連する。ここ十年以内に、ヒトKCNJ13遺伝子における常染色体劣性の変異(染色体遺伝子座2q37.1の603203)は、LCA16として知られるLCAの特定の形態を有する患者において同定された。これまでに、LCA16病原性対立遺伝子バリアントは、c.158G>A(p.Trp53Ter)、c.359T>C(p.Iso120Thr)、c.458C>T(p.Thr153Iso)、c.496C>T(p.Arg166Ter)、およびc.722T>C(p.Leu241Pro)を含む。加えて、化合物異種性KCNJ13変異c.314G>T(p.Ser105Iso)およびc.655C>T(p.G219Ter)は、LCA患者5における早期発症網膜ジストロフィーを引き起こすことが知られている。常染色体優性KCNJ13変異であるc.484C>T(p.Arg162Trp)は、スノーフレーク硝子体網膜変性(SVD OMIM-193230)と呼ばれる早期発症盲目を引き起こす。
【0006】
ヒトKCNJ13遺伝子は、内向き整流のカリウムチャンネル-Kir7.1をコードする。Kir7.1タンパク質は、網膜の機能および健康を調節する、RPEの細胞先端プロセスを含むいくつかのヒト組織において発現する。他の器官におけるKir7.1チャンネルの役割は、まだ解明されていない。
【0007】
Kir7.1の役割は、LCA16のような状態において理解され始めているが、Kir7.1タンパク質の不十分な発現または機能と関連するチャネル病または状態を治療するための承認された療法はない。したがって、かかる状態を治療する新規療法のニーズが、当該技術分野においてある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様では、遺伝子療法ベクターが提供される。遺伝子療法ベクターは、Kir7.1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されたプロモーターを含んでもよい。
【0009】
別の態様では、本発明は、治療組成物に関する。治療組成物は、本明細書において記載される遺伝子療法ベクターのいずれかおよび医薬的に許容される担体を含んでもよい。
【0010】
本発明のさらなる態様では、Kir7.1ポリペプチドの不十分な発現または機能と関連する状態を有する対象を治療する方法が提供される。本方法は、治療上有効量の、本明細書において記載される遺伝子療法ベクターのいずれかまたは本明細書において記載される治療組成物を対象に投与することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1-1】図1A~1Nは、LCA16表現型を有する患者由来のiPSC-RPEを示す。(図1A)正常なTGG配列(配列番号19)を有する成熟RPE細胞(明視野画像)の説明。家系図は、試料の起源を示している。(図1B)TAG配列(配列番号20)を有するLCA16発端者からもたらされる成熟RPE細胞の明視野画像。(図1C)均一な異常を有さない患者試料における正常な核型。(図1D)対照、LCA16、ならびに野生型iPSC-RPE株およびヒト胎児RPE細胞由来のNhe1切断産物の解析。全長Kir7.1配列は、長さ1083bpであり、切断産物は、長さ925および158bpである。(図1E)iPSC-RPE細胞におけるRPE細胞特異的遺伝子発現。(図1F)代表的なLCA16 iPSC-RPE細胞の電子顕微鏡写真。(図1G)10μmの細胞内の平均ミトコンドリア(Mit)数の比較。(図1H)RPE頂端(AP)プロセスの平均長さの評価。(図1I)対照iPSC-RPE 細胞におけるKir7.1(赤色)、ZO-1(緑色)およびDAPI(青色)の免疫蛍光局在化。より下のパネルとサイドのパネルの両方により、ZO-1およびDAPI(zスタック画像)を参照して、Kir7.1の極性化した分布を明らかにした。(図1J)LCA16 iPSC-RPEにおけるKir7.1(赤色)、ZO-1(緑色)およびDAPI(青色)の局在化。(図1K)両方の組織試料におけるRPE細胞特異的タンパク質の発現を示す、ウエスタンブロット。Kir7.1に対するC末端特異的抗体を使用し、本発明者らは、対照iPSC-RPE由来の細胞全体の溶解物においてKir7.1タンパク質を検出したが、LCA16 iPSC-RPE由来のものでは検出しなかった。対照iPSC-RPE(図1L)およびLCA16 iPSC-RPE(図1M)試料内でのファゴソーム(赤色)局在化。(図1N)栄養を与えた4時間後、およびその後の48時間の消化期間、または栄養を与えた1日後、続いて消化の6日間での、対照および疾患のiPSC-RPE細胞における固定した200μm2範囲内の平均ファゴソーム数のプロット。
図1-2】同上。
図1-3】同上。
図1-4】同上。
図1-5】同上。
図1-6】同上。
図2-1】図2A~2Nは、ナンセンス変異抑制または遺伝子増大を通じた、推定Kir7.1機能喪失を示す。(図2A)対照iPSC-RPE細胞における正常外部K+(黒色)または高い外部Rb+(淡青色)を使用したKir7.1電流についての平均電流-電位(I/V)曲線のプロット。(図2B)LCA16 iPSC-RPE細胞における正常K+(赤色)および高Rb+(淡青色)を使用した平均I/V曲線。(図2C)-150mVで測定した内向きの電流振幅の平均プロット。aおよびbで示す、色表示。(図2D)LCA16(赤色)RPE細胞を脱分極するための対照(黒色)細胞の平均膜電位の比較。(図2E)NB84での処置前(赤色)および後(ダークブルー)の平均I/V関係。Rb+で測定した電流を、淡青色のトレースとして示す。-150mVで測定した平均内向き電流(図2F)およびNB84の効果を示すための膜電位(図2G)の評価。(図2H)GFPが融合したタンパク質を、抗GFP抗体をトラップとして使用して沈殿させ、銀染色により、全長Kir7.1およびW53Xタンパク質についての精製成分バンドを示す。GFP対照試料は、より小さなタンパク質産物を示す。(図2I)細胞溶解物のウエスタンブロット解析により、GFP特異的抗体でプローブ結合させたとき、それぞれのバンドを示す。全長タンパク質産物の部分的修復を、NB84処理後に観察する。(図2J)ヒトKir7.1クローンの正常コピーを発現するGFP陽性細胞において測定したKir7.1電流についての平均I/V曲線のプロット。K+(緑色)とRb+(淡青色)トレースの両方を示す。遺伝子増大後の救出を示すための、-150mVで測定した電流振幅(図2K)および膜電位(図2L)の平均プロット。(図2M)野生型Kir7.1(緑色)、ZO-1(赤色)およびDAPI(青色)タンパク質を示す、培養したLCA16 iPSC-RPE。Zスタック面を、下側のパネルおよびサイドパネルで示す。(図2N)抗GFP抗体を使用することによる、遺伝子増大後に検出したLCA16 iPSC-RPE細胞におけるKir7.1タンパク質発現のウエスタンブロット解析。
図2-2】同上。
図2-3】同上。
図2-4】同上。
図2-5】同上。
図2-6】同上。
図3図3A~3Dは、患者由来のiPSC-RPE細胞の表現型を示す。基底の陥入を有する正常円柱形態、巨大な核、ミトコンドリア(m)、メラノソームおよび伸長プロセス(ap)を有する未変化の頂端膜を示す、対照hiPSC-RPE細胞(図3A)およびLCA16 hiPSC-RPE細胞(図3B)の電子顕微鏡写真の比較。蛍光標識したウシPOSと共に1日間、細胞に栄養を与えた6日間後に画像化したPOS(赤色)および核(青色)を示す、x-y-z面の生きた対照hiPSC-RPE(図3C)および患者由来のhiPSC-RPE(図3D)細胞の画像。さらなる未消化の赤色蛍光POS粒子は、LCA16 hiPSC-RPE細胞において視認できる。
図4図4A~4Dは、hiPSC-RPEのサブ集団が、膜電位における救出を示したが、電流振幅については示さなかったことを示す。(図4A)100μM NB84での細胞の処置後の正常K+リンガーおよび高Rb+リンガー溶液におけるLCA16 hiPSC-RPE細胞のサブグループにおける平均電流応答のI/Vプロット。(図4B)500μM NB84での処置後のLCA16 hiPSC-RPEにおけるK+およびRb+電流応答を示す、I/Vプロット。(図4C)100または500μM NB84でのLCA16 hiPSC-RPEの処理後の対照レベルに対する膜電位の救出を示す、膜電位の平均プロット。(図4D)100または500μM NB84のいずれかでの処理後の電流振幅における救出を明確に示さない、電流振幅プロット。
図5図5A~5Dは、CHO細胞において異所性に発現したTrp53Terのリードスルーを示す。LCA16 hiPSC-RPE細胞においてと同様に、形質導入したCHO細胞は、NB84での処理後のみRb+により活性化された内部整流Kir7.1電流を示した。(図5A)電流振幅と膜電位の両方の回復を示す、NB84での処理後のK+(黒色)およびRb+(赤色)電流を示す、細胞のI/Vプロット。(図5B)電流振幅ではなく、膜電位のみの回復を説明する、K+(黒色)およびRb+(赤色)についての多少の直線性I/Vプロットを示す、NB84処理細胞の群。Trp53Ter発現CHO細胞の処理後の電流振幅(図5C)と膜電位(図5D)の両方の平均回収の比較。
図6-1】図6A~6Dは、機能的救出に必要な野生型タンパク質発現の程度の決定を示す。本発明者らは、どのくらいの遺伝子増大/修正が、チャンネル機能を回復させるのに必要とされるかを定量することに特に興味を持った。本発明者らは、CHO細胞におけるTrp53Terもしくは野生型Kir7.1タンパク質単独のいずれか、または様々な組み合わせで発現させた。(図6A)電流記録を、I/Vプロットとして示す。(図6B)x軸についての拡大スケールにおいて、静止膜電位は、タンパク質発現の20%のみを成す野生型タンパク質での負のシフトを示す。(図6C)野生型タンパク質発現を増加させる機能としての標準化した電流振幅(塗りつぶした円)または膜電位(灰色の棒)のいずれかの平均プロット。実ラインは、図6Dに示す方程式を使用した分布について最も適している。最大半量電流を、野生型タンパク質発現の約26%で得た。(図6D)最大半量応答および傾斜を示す、最善の適合曲線の値。
図6-2】同上。
図7図7A~7Dは、処理モダリティーにわたる膜電位の救出の比較を示す。(図7A)x軸の拡大スケールにおいて、対照(黒色)およびLCA16 iPSC-RPE(赤色)の静止膜電位は、I/Vプロットにおける正のシフトを示した。(図7B)LCA16 iPSC-RPE細胞(赤色のトレース)について、NB84での処理は、I/V-プロットを負にシフトした(青色)。(図7C)平均I/Vのプロットはまた、遺伝子増大(緑色)の静止電位の負のシフトを示した。(図7D)静止膜電位の棒グラフ比較により、NB84での処理後、または遺伝子増大の際に対照レベルへのLCA16 iPSC-RPEの回復を示した。
図8】野生型(左パネル)とW53X変異(右パネル)安定細胞由来の細胞全体の電流と電位の関係を示す。野生型の安定な細胞における内部に整流するK+電流(黒色のトレース)は、Rb+(赤色のトレース)により優位に増加した。右側のW53X変異の安定な細胞において、K+電流もRb+電流も記録しなかった(p=1.05E-0.5)。
図9図9A~9Eは、W53X変異発現CHO細胞の遺伝子増大が、以前の電流なし(図9A、黒色のトレースにおけるプロット)と比較して、平均内部整流K+電流(図9A、赤色のトレースにおけるIVプロット)の回復を有することを示す。(図9B)遺伝子増大後のW53X変異発現細胞における平均のより高いRb+電流(赤色のトレース)。(図9C)Rb+透過性における正味の増加は、遺伝子増大後にKir7.1 チャンネルを介して増加した(青色)。(図9D)W53X発現細胞のAAV-Kir7.1形質導入後の静止膜電位(RMP)の完全な回復は、青色の四角として表した。(図9E)列W53X+AAV(赤色のバンド)における遺伝子増大後の全長タンパク質産物の発現を示す、ウエスタンブロット結果。
図10図10A~10Bは、AAV-Kir7.1を通じて遺伝子増大後のW53X変異列におけるKir7.1発現(緑色)を示す(図10A)。(図10B)より高い拡大率の画像は、膜マーカーWGA-Alexa 594に並んだKir7.1タンパク質の膜局在化を示す。より下のパネルにおいて、赤色および緑色についてのラインスキャンは、膜マーカーおよびKir7.1共局在化を示す。
図11-1】インビボでのKir7.1遺伝子療法を示す。左は、網膜電図の正常な波形を示すが、遺伝子増大後の変化を示さない、対照マウスである。中程は、右の黒色のトレースにおけるc波を示さない、条件ノックアウトマウスである。Kir7.1発現に直接依存する、この波は、遺伝子療法の4週間後に完全に回復する。平均結果を、ボックスプロットにおいて示し、これは、実験的遺伝子療法におけるc波の有意な回復を伴う。
図11-2】同上。
図12】Kir7.1タンパク質の送達のための典型的なAAVウイルスベクターについてのベクターマップを示す。
図13】Kir7.1タンパク質の送達のための典型的なレンチウイルスベクターについてのベクターマップを示す。
図14-1】図14A~Fは、遺伝子療法後のKir7.1タンパク質を欠く網膜色素上皮(RPE)細胞の機能回復を示す。(図14A)PBS注射の8週間後のRPE応答機能を示す、WTマウスおよびcKO対照マウスに対する注射対照。(図14B)スクリーニング中のa波、b波およびc波を示さなかった、Kir7.1cKOマウスのERG応答。RPEと視細胞の両方が変性したので、恒常的EF1aプロモーターまたはRPE特異的VMD2プロモーターのいずれかを有するレンチウイルスでのKir7.1の送達は、重大な表現型に起因して、RPE機能を救出するのに失敗した。(図14C)RPEのc波を、EF1aおよびVMD2プロモーターによりもたらされるkcnj13遺伝子を有するレンチウイルスの網膜下送達により、cKOマウスにおいて回復し、ここで、視細胞は、変性しなかったが、スクリーニング中にRPE細胞からの応答を有さなかった。(図14D)、(図14E)、(図14F)それぞれ、スクリーニング中およびレンチウイルス遺伝子送達の8週間後の、対照マウス、回復を伴わないcKOマウス(a波、b波、c波なし)、およびc波が回復したマウス(a波、b波だが、c波なし)の網膜構造を示す、代表的な光干渉断層撮影(OCT)画像。
図14-2】同上。
図14-3】同上。
図15図15A~15Eは、c波回復を示さなかったマウスのサブセットの結果を示す。(図15A)EF1aおよびVMD2プロモーターによりもたらされる、kcnj13遺伝子を有するレンチウイルスの注射後のc波回復を示さなかったマウスのサブセットを表す、グラフ。(図15B)、(図15C)スクリーニング中のc波を有さないcKOマウスの光干渉断層撮影(OCT)画像は、未変化の網膜を示すが、8週間後に衰退し、これにより、RPE細胞におけるKir7.1タンパク質の欠如に起因して経時的に網膜変性の進行性性質を明らかにする。(図15D)、(図15E)視細胞(a波およびb波)由来の応答を有するが、RPEからのc波応答を欠く、cKOマウスのもの由来の網膜構造を示す、OCT画像。kcnj13遺伝子を有するレンチウイルスの注射は、c波を回復させるのに失敗し、注射に起因してRPE形質導入または横断の無効率性に起因し得た。
図16-1】特異的な構成成分を含有する本発明の典型的なAAVベクター、およびRPE特異的プロモーターおよびKir7.1遺伝子を含むAAVベクターについての適当な典型的な配列を示す、表2および表3を示す。
図16-2】同上。
図16-3】同上。
図16-4】同上。
図17-1】レンチウイルスベクターについての特異的な成分および適当な典型的な配列を含む、本発明の典型的なレンチウイルスベクターを示す、表5および表6を示す。
図17-2】同上。
図17-3】同上。
図17-4】同上。
図17-5】同上。
図17-6】同上。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本発明者らは、レーバー先天黒内障16(LCA16)またはKir7.1タンパク質の不十分な発現もしくは機能と関連する他の状態を治療するために使用され得る新規遺伝子療法ベクターおよび治療組成物を開示する。非限定的な例では、本発明者らは、驚くべきことに、遺伝子療法アプローチを使用して、低減した電気生理学的表現型を有するRPE細胞をもたらす、インビトロまたはインビボのいずれかで網膜色素上皮(RPE)細胞におけるKir7.1ポリペプチド機能を有効に回復させ得ることを示す。したがって、本発明者らは、遺伝子療法アプローチを使用して、膜タンパク質Kir7.1を有効に送達し得ることを見出した。本発明者らは、Kir7.1タンパク質オープンリーディングフレーム単独の発現が、適切な細胞内コンパートメントに輸送されるKir7.1タンパク質を得るのに十分であることを、一部示す。これらの結果は、レーバー先天黒内障16(LCA16)またはKir7.1タンパク質の不十分な発現もしくは機能と関連する他の状態を治療するための可能性のある根治療法の希望をもたらす。
【0013】
遺伝子療法ベクター
本発明の一態様では、遺伝子療法ベクターが提供される。遺伝子療法ベクターは、Kir7.1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されたプロモーターを含んでもよい。一般的なアプローチは、本発明のある特定の態様では、Kir7.1ポリペプチドをコードする発現コンストラクトを有する細胞を提供し、これにより、細胞におけるKir7.1ポリペプチドの発現を可能にする。発現コンストラクトの送達後、発現コンストラクトによりコードされるKir7.1ポリペプチドは、細胞の転写および翻訳機構により合成される。
【0014】
本明細書において使用される場合、「Kir7.1ポリペプチドをコードする発現コンストラクト」は、Kir7.1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されたプロモーターを指す。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「核酸」および「核酸配列」は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド(それらの用語は、互換的に使用されてもよい)、または任意のそのフラグメントを指す。これらの語句はまた、天然または合成起源のDNAまたはRNA(1本鎖または2本鎖であってもよく、センスまたはアンチセンス鎖を表してもよい)を指す。一部の実施形態では、本明細書において記載される、プロモーターおよびKir7.1ポリヌクレオチドまたはKir7.1ポリペプチドをコードする発現コンストラクトは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、またはRNAでコードされる。
【0016】
本明細書において使用される場合、「遺伝子療法ベクター」は、Kir7.1ポリペプチドをコードする発現コンストラクトを細胞(すなわち、真核生物細胞)に送達するために使用され得るウイルスまたは非ウイルスベクターシステムを指す。両方の広範なタイプのベクターシステムは、セクションに従い記載される。遺伝子療法の目的のための発現コンストラクトの送達において利用される2つの主要なアプローチ;間接的なエクスビボ方法または直接的なインビボ方法のいずれかが存在する。エクスビボ遺伝子導入は、培養中の(宿主)細胞のベクター修飾および遺伝子レシピエントにベクター修飾された細胞の投与または移植を含む。インビボ遺伝子導入は、標的源または治療レシピエントへのベクターの直接的導入(例えば、注射、注入)を含む。
【0017】
本発明のある特定の実施形態では、Kir7.1ポリペプチドをコードする発現コンストラクトは、細胞のゲノムに安定に統合されてもよい。なおさらなる実施形態では、Kir7.1ポリペプチドをコードする発現コンストラクトは、DNAの別々のエピソームセグメントとして細胞において安定的または一過性に維持されてもよい。このような核酸セグメントまたは「エピソーム」は、宿主細胞サイクルと独立したまたは同調した維持および複製を可能にするのに十分な配列をコードする。発現コンストラクトが、どのように細胞に送達されるか、および/または細胞におけるどの場所に核酸がとどまるかは、利用されるベクターのタイプに依存する。次の遺伝子送達方法は、好ましい適用に最も適当な遺伝子送達システムを選択し、開発するためのフレームワークをもたらす。
【0018】
非ウイルス遺伝子療法ベクター
一部の実施形態では、遺伝子療法ベクターは、送達粒子であってもよい。ポリヌクレオチドの送達に適した送達粒子は、当該技術分野において公知であり、ポリマー粒子、リポソーム粒子、ならびに脂質および少なくとも1つのタイプのポリマーを含む粒子を含み得るが、これらに限定されない。一部の実施形態では、送達粒子は、共通のリポフェクタミン試薬を使用して形成されてもよい。
【0019】
送達粒子は、ナノスケール粒子および/またはマイクロスケール粒子を、例えば、ゲノム編集のため細胞への成分の送達ビークルとして含んでもよい。粒子は、約500μm、100μm、50μm、20μm、10μm、5μm、2μm、1μm、0.5μm、0.2μm、0.1μm、0.05μm、0.02μm、0.01μm未満の有効平均直径を有し得るか、または500μm、100μm、50μm、20μm、10μm、5μm、2μm、1μm、0.5μm、0.2μm、0.1μm、0.05μm、0.02μm、0.01μm(例えば、0.01~5μm)のいずれかにより結び付けられる範囲内の有効平均直径を有し得る。ナノスケール粒子およびマイクロスケール粒子は、それぞれ、「ナノ粒子」および「マイクロ粒子」として言及されてもよい。
【0020】
ポリマー粒子は、当該技術分野において記載されている。(米国特許公開第20140066388号)。ポリマー粒子は、生分解性ポリマー分子を含んでもよいか、または形成されてもよく、一部の実施形態では、デンドリマーを含んでもよい。適当なデンドリマーは、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーを含み得るが、これに限定されない。ポリアミドアミンデンドリマーは、治療剤の細胞内送達のためのビークルとして当該技術分野において使用されている。現在開示されるナノ粒子の調製に適したポリアミドアミンデンドリマーは、第3、第4、第5、または好ましくは、少なくとも第6世代のデンドリマーを含んでもよい。
【0021】
ポリマー粒子はまた、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(polygycolic acid)(PGA)、PLAとPGAのコポリマー(例えば、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA))、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(3-ヒドロキシブチラート)、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリプロピレンフマラート、ポリ(オルソエステル)、ポリオール/ジケテンアセタール付加ポリマー、ポリ-アルキル-シアノ-アクリレート(PAC)、ポリ(セバシン酸無水物)(PSA)、ポリ(カルボキシビスカルボキシフェノキシフェノキシヘキソン(PCPP)ポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)メタン](PCPM)、PSA、PCPPとPCPMのコポリマー、ポリ(アミノ酸)、ポリ(偽アミノ酸)、ポリホスファゼン、ポリ[(ジクロロ)ホスファゼン]およびポリ[(オルガノ)ホスファゼン]の誘導体、ポリ-ヒドロキシ酪酸、またはS-カプロン酸、エラスチン、ゼラチン、およびキトサンを含み得るが、これらに限定されない、他の生分解性ポリマー分子を含んでもよいか、または形成されてもよい。(例えば、Kumariら、Colloids and Surfaces B:Biointerfaces 75(2010年)1-18;ならびに米国特許第6,913,767号;第6,884,435号;第6,565,777号;第6,534,092号;第6,528,087号;第6,379,704号;第6,309,569号;第6,264,987号;第6,210,707号;第6,090,925号;第6,022,564号;第5,981,719号;第5,871,747号;第5,723,269号;第5,603,960号;および第5,578,709号;ならびに米国公開第2007/0081972号;ならびに国際公開第2012/115806号;ならびに国際公開第2012/054425号を参照のこと)。一部の実施形態では、粒子は、PLGAとPAMAMの混合物を含んでもよい。
【0022】
ポリマー粒子は、当該技術分野において公知の方法により調製されてもよい。(国際出願公開第2012/115806号;および第2012/054425号)。ナノ粒子を調製する適当な方法は、溶媒蒸発、ナノ沈殿、乳化/溶媒分散、塩析、透析、および超臨界流体技術を含み得るが、限定されない、予め形成されたポリマーの分散液を利用する方法を含んでもよい。一部の実施形態では、ナノ粒子は、二重の乳化(例えば、水中油中水)を形成すること、続いて、溶媒蒸発を行うことにより、調製されてもよい。開示される方法により得られるナノ粒子は、所望に応じて、洗浄および凍結乾燥などのさらなる処理工程に供されてもよい。場合により、ナノ粒子は、保存剤(例えば、トレハロース)と合わせられてもよい。
【0023】
ミセルおよびリポソームベースの粒子はまた、適当な送達粒子として働いてもよい。例えば、米国特許第8,252,324号を参照。ミセルは、両親媒性分子により形成される自己集合球形コロイド状ナノ粒子である。ミセルはまた、液体コロイドにおいて分散された凝集界面活性剤分子として記載される。水性環境において分離される、ミセルの中心は、それらの薬物動態および体内分布を改善しながら、ポリヌクレオチドおよび/またはタンパク質を被包し、それらを分解および生物学的周辺物から保護する能力がある。ミセルは、一般に、直径5~50nmのオーダーであり、故に、透過性および滞留効果に起因した、梗塞領域および腫瘍などの漏出性脈管構造を有する病理学的範囲において蓄積する能力がある。ミセルはまた、粒子システムによる薬物標的において主要な障壁:網内系による非特異的取り込みおよび腎分泌を逃れる能力がある。ミセルと対照的に、リポソームは、直径およそ50~1,000nmの二層化リン脂質小胞である。リポソームは、生物学的に不活性であり、完全に生体適合性であり、それらは、無毒性反応または抗原反応を実際に引き起こす。リポソームに含まれるポリヌクレオチドは、リポソームにより、外部培地の破壊的作用から保護される。したがって、リポソームは、それらの内容物を細胞内に、異なる細胞成分内でさえ送達することができる。一般に、リポソームは、多数の研究室検査および臨床試験において示された通り、有意な治療可能性を有する将来有望なキャリアとみなされる。
【0024】
送達粒子はまた、脂質およびポリマー成分を含む粒子を含んでもよい。例えば、リン脂質二層およびポリ(ベータ-アミノエステル)(PBAE)を含む粒子は、ポリヌクレオチドのインビボ送達のため開発された。
【0025】
送達粒子は、好ましくは、標的化細胞による取り込みを促進する物理的特性を有する。例えば、好ましくは、粒子は、標的化細胞による取り込みを促進するサイズおよび電荷を有する。典型的には、粒子は、1ミクロン未満の平均有効直径を有し、好ましくは、粒子は、約25nm~約500nm、より好ましくは、約50nm~約250nm、最も好ましくは、約100nm~約150nmの平均有効直径を有する。粒子のサイズ(例えば、平均有効直径)は、当該技術分野において公知の方法により評価されてもよく、それは、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、光子相関スペクトロスコピー(PCS)、ナノ粒子表面積モニター(NSAM)、凝縮粒子カウンター(CPC)、微分型電気移動度測定装置(DMA)、走査型移動度粒径測定器(SMPS)、ナノ粒子トラッキング解析(NTA)、X線回折(XRD)、エアロゾル飛行時間質量分析(ATFMS)、およびエアロゾル粒子質量分析(APM)を含み得るが、これらに限定されない。
【0026】
送達粒子は、たとえ粒子が、それらの表面に特異的なリガンドを含まなくとも、細胞により非特異的に取り込まれる。しかしながら、開示される送達粒子は、特定の細胞タイプを特異的に標的にするリガンドも含むよう設計されてもよい。送達粒子のより特異的な標的化を達成するために、かかる粒子は、高度な結合法を使用して様々なリガンドで修飾されてもよい。例えば、抗体および小ペプチドは、ポリエチレングリコール鎖の水にさらされたチップに結合されている。抗体および小ペプチドはまた、反応性p-ニトロフェニルカルボニル、N-ベンゾトリアゾールカルボニルまたはマレイミド末端PEG-ホスファチジルエタノールアミンを介して結合されている。
【0027】
ウイルス遺伝子療法ベクター
遺伝子療法ベクターはまた、ウイルスベクターであってもよい。ウイルスベクターは、ウイルス粒子であってもよいか、またはDNAプラスミドにコードされてもよい。ウイルスベクターが、ウイルス粒子、例えば、レンチウイルスのウイルス粒子である一部の実施形態では、ウイルス粒子は、VSV-Gエンベロープタンパク質を含んでもよい。ある特定のウイルスベクターが、細胞に効率的に感染するかまたは侵入する能力、宿主細胞ゲノムに統合する能力、およびウイルス遺伝子を安定的に発現する能力は、多数の異なるウイルスベクターシステムの開発および適用に繋がった(Robbinsら、1998)。ウイルスシステムは、現在、エクスビボおよびインビボ遺伝子導入用ベクターとしての使用のため、開発されている。例えば、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、レトロウイルスおよびアデノ随伴ウイルスベクターは、ヒト疾患の治療について現在評価されている。以下に記載される様々なウイルスベクターは、特定の遺伝子療法適用に依存し、特定の長所と短所を示す。
【0028】
本発明に従い使用され得る適当なウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、または単純ヘルペスベクターを含み得るが、これらに限定されない。レトロウイルスベクターは、例えば、レンチウイルスベクターを含んでもよい。
【0029】
ここで、非限定的な例では、本発明者らは、Kir7.1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、レンチウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターのいずれかを使用して、インビトロまたはインビボのいずれかで、網膜色素上皮(RPE)細胞において、首尾よく導入し、発現させて、KCNJ13遺伝子における機能的欠損を低減し得ることを示す。したがって、一部の実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターまたはAAV、適当には、AAV2ベクターであってもよい。本明細書において記載されるAAVベクターは、表2または表3において挙げられる成分の少なくとも1、2、3、4、5、6、7または8種をさらに含んでもよい。本明細書において記載されるレンチウイルスベクターは、表5または表6において挙げられる成分の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15種をさらに含んでもよい。
【0030】
レトロウイルスベクター
本発明のある特定の実施形態では、Kir7.1発現コンストラクトの遺伝子送達のためのレトロウイルスの使用が考慮される。レトロウイルスまたはレトロウイルスベクターは、RNAゲノムを含むRNAウイルスである。宿主細胞にレトロウイルスが感染するとき、ゲノムRNAは、DNA中間体に逆転写され、感染した細胞の染色体DNAに導入される。この統合されたDNA中間体は、プロウイルスとして言及される。レトロウイルスの特定の利点は、それらが、免疫原性ウイルスタンパク質を発現することなく、宿主DNAに統合させることにより、対象の遺伝子(例えば、治療遺伝子)を分裂細胞に安定的に感染させることができることである。理論的に、統合されたレトロウイルスベクターは、対象の遺伝子を発現している、感染した宿主細胞の生存の間、維持される。
【0031】
レンチウイルスベクターは、分裂している細胞と分裂していない細胞の両方に感染することができる、レトロウイルスの種類である。レンチウイルスは、最大6ヶ月間、それらの標的細胞の遺伝子の発現を変化させることができるので、レンチウイルスを使用して、高度に有効な遺伝子療法をもたらすことができる。それらは、従前の遺伝子療法が使用することができなかった細胞タイプである、ニューロン、マクロファージ、造血幹細胞、網膜視細胞、ならびに筋および肝細胞などの、分裂していない細胞または最後まで分化した細胞のため使用することができる。
【0032】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター
パルボウイルスファミリーのメンバーである、アデノ随伴ウイルス(AAV)は、遺伝子送達治療剤のためますます使用されているヒトウイルスである。AAVは、他のウイルスシステムにおいて見られない特性のいくつかの利点を有する。第一に、AAVは、分裂していない細胞を含む、広範な宿主細胞に感染することができる。第二に、AAVは、異なる種由来の細胞に感染することができる。第三に、AAVは、ヒトまたは動物の疾患と関連せず、統合の際に宿主細胞の生物学的特性を変化させないようである。例えば、ヒト集団の80~85%が、AAVに暴露されていると推定される。最後に、AAVは、それ自体が、製造、保存および輸送要件に適している、広範な物理的および化学的条件で安定である。
【0033】
AAVゲノムは、4681ヌクレオチドを含有する、直線の1本鎖DNA分子である。AAVゲノムは、一般に、およそ145bp長の末端逆位配列(ITR)により、各末端に隣接する内部非繰り返しゲノムを含む。ITRは、ウイルスゲノムのパッケージングシグナルとしての、DNA複製起源を含む複数の機能を有する。AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、トリAAV、ウシAAVなどを含む、いくつかのAAV血清型のいずれかからもたらされ得る。本明細書において開示されるAAVウイルスベクターの5’および3’ITRは、これらのAAV血清型のいずれかからもたらされてもよい。本明細書において開示されるAAVウイルスベクターに隣接する5’および3’ITRは、全く、同一であるか、または同じAAV血清型からもたらされるわけではない。したがって、rAAVベクター設計および産生により、異なるAAV血清型間のカプシドタンパク質を交換するのを可能にする。例えば、AAV2-ITRが隣接し、AAV2カプシドにパッケージングされる、発現カセットを含む相同なベクター、同様に、導入遺伝子発現カセットに、例えば、AAV2 ITRが隣接するが、カプシドが、AAV5などのような別のAAV血清型から生じる、異種性ハイブリッドベクターが産生され得る。適当には、一部の実施形態では、本発明者らは、AAV2ウイルスベクターを使用して、Kir7.1発現コンストラクトを細胞に有効に送達し得ることを見出した。
【0034】
AAVゲノムの内部の非繰り返し部分は、AAV複製(rep)およびカプシド(キャップ)遺伝子としても知られる、2つの巨大なオープンリーディングフレームを含む。repおよびキャップ遺伝子は、ウイルスが複製し、ウイルスゲノムをビリオンにパッケージングするのを可能にするウイルスタンパク質をコードする。少なくとも4種のウイルスタンパク質のファミリーは、それらの見かけの分子量に従い命名された、AAV rep領域、Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40から発現する。AAVキャップ領域は、少なくとも3種のタンパク質VP1、VP2、およびVP3をコードする。
【0035】
AAVは、AAVビリオンを形成するために、ヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワクシニア)との同時観戦を必要とするヘルパー依存性ウイルスである。ヘルパーウイルスとの同時感染の不存在下で、AAVは、ウイルスゲノムは、宿主細胞染色体に侵入するが、感染性ビリオンは、産生されない、潜伏状態を確立する。ヘルパーウイルスによるその後の感染は、統合されたゲノムを「救出し」、これにより、それが、そのゲノムを複製し、感染性AAVビリオンにパッケージングすることを可能にする。AAVは、異なる種由来の細胞に感染することができるが、ヘルパーウイルスは、宿主細胞と同じ種のものでなければならない(例えば、ヒトAAVは、イヌアデノウイルスが同時感染したイヌ細胞において複製する)。
【0036】
AAVは、AAVゲノムの内部非複製部分を欠損させること、およびITR間に異種性遺伝子を挿入することにより、対象の遺伝子を送達するように操作されている。異種性遺伝子は、標的細胞における遺伝子発現をもたらす能力がある異種性プロモーター(恒常的、細胞特異的、または誘導可能)に作動可能に結合されてもよい。異種性遺伝子を含有する感染性組み換えAAV(rAAV)を産生するために、適当な産生細胞株は、異種性遺伝子を含有するrAAVベクターで遺伝子導入される。産生細胞に、AAV repおよびcap遺伝子をそれらのそれぞれの内在性プロモーターまたは異種性プロモーターの制御下で有する第2のプラスミドが同時に感染する。最後に、産生細胞に、ヘルパーウイルスが感染する。これらの因子が同時にもたらされると、異種性遺伝子は、それが野生型AAVゲノムであったように、複製され、パッケージングされる。標的細胞に、生じたrAAVビリオンが感染するとき、異種性遺伝子が、侵入し、標的細胞において発現する。標的細胞は、repおよびcap遺伝子、ならびにアデノウイルスヘルパー遺伝子を欠くので、rAAVは、野生型AAVをさらに複製するか、パッケージングするか、または形成することができない。
【0037】
適当なAAVベクターは、当該技術分野において公知である。例えば、適当なAAVベクターは、その全体が参照により取り込まれる、「全脈絡膜萎縮患者のiPSC由来網膜色素上皮におけるAAV2/5介在性遺伝子療法」において示される、AAV2/5を含む。例えば、Ceresoら、Mol Ther Methods Clin Dev.2014を参照。本遺伝子送達に適当に適合され得るAAVベクターのさらなる例は、「ヒト多能性幹細胞、RPE、ならびにヒトおよびラット皮質ニューロンにおけるベクター血清型1~9、7m8、および8bを使用した比較AAV-eGFP導入遺伝子発現」において見ることができる。Duongら、Stem Cells Int.2019を参照。
【0038】
アデノウイルスベクター
特定の実施形態では、アデノウイルスベクターが、Kir7.1発現コンストラクトの送達のため、考慮される。「アデノウイルスベクター」は、(a)コンストラクトのパッケージングを支持するのに、および(b)そこにクローニングされたコンストラクトを最終的に発現するのに十分なアデノウイルス配列を含有するそれらのコンストラクトを含むことを意味する。
【0039】
アデノウイルスは、サイズ30~35kbの範囲にあるゲノムを含む、直鎖2本鎖DNAを含む。本発明によるアデノウイルスベクターは、遺伝子操作された形態のアデノウイルスを含む。アデノウイルス遺伝子導入の利点は、分裂していない細胞、中間サイズのゲノム、操作の容易さ、高い感染性を含む、広範な細胞タイプに感染する能力を含み、それらは、高いタイターまで成長することができる。さらに、アデノウイルスDNAは、他のウイルスベクターと関連する可能性のある遺伝毒性なく、エピソーム方法で複製することができるので、宿主細胞のアデノウイルス感染は、染色体統合を生じない。アデノウイルスはまた、構造上安定であり、広範な増幅後に、ゲノム再編成は検出されなかった。本発明による典型的なアデノウイルスベクターは、アデノウイルスE1領域を有さない複製欠損ベクターである。アデノウイルス成長および操作は、当業者に知られており、広範な宿主範囲をインビトロおよびインビボで示す。例えば、米国特許第5,670,488号;米国特許第5,932,210号;米国特許第5,824,544号を参照。
【0040】
単純ヘルペスウイルスベクター
I型およびII型単純ヘルペスウイルス(HSV)は、70~80種の遺伝子をコードする、およそ150kbの2本鎖の直鎖DNAゲノムを含有する。野生型HSVは、溶菌性に細胞に感染し、ある特定の細胞(例えば、ニューロン)における潜伏性を確立することができる。アデノウイルスと同様に、HSVはまた、様々な細胞タイプに感染することができる。治療用遺伝子送達における使用のため、HSVは、低減した複製欠損でなければならない。複製欠損HSVヘルパーウイルスを含まない細胞株を生成するためのプロトコールが、記載されている(米国特許第5,879,934号;米国特許第5,851,826号、各々が、その全体が参照により具体的に本明細書に取り込まれる)。
【0041】
他のウイルスベクター
遺伝子送達のためのウイルスベクターの開発および有用性は、一定に改善し、確信している。ポックスウイルス;例えば、ワクシニアウイルス、アルファウイルス;例えば、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、レオウイルスおよびインフルエンザAウイルスなどの他のウイルスベクターが、本発明における使用のため考慮され、標的システムの必要な特性に従い、選択されてもよい。
【0042】
プロモーター
本明細書において使用される場合、用語「プロモーター」。「プロモーター領域」または「プロモーター配列」は、一般に、遺伝子の転写制御領域を指し、それは、本明細書において記載されるポリヌクレオチドの5’もしくは3’側において、またはポリヌクレオチドのコード領域内で、またはポリヌクレオチドにおけるイントロン内で見られ得る。典型的には、プロモーターは、細胞におけるRNAポリメラーゼに結合し、下流(3’方向)コード配列の転写を開始する能力のあるDNA制御領域である。典型的な5’プロモーター配列は、転写開始部位によりその3’末端で結合し、上流(5’方向)に拡大して、バックグラウンドより上の検出可能なレベルで転写を開始するのに必須の最小数の塩基またはエレメントを含む。転写開始部位(ヌクレアーゼS1とともにマッピングすることにより便宜的に定義される)、ならびにRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が、プロモーター配列内にある。
【0043】
一部の実施形態では、プロモーターは、Kir7.1が発現されるべき、細胞タイプに特異的である。例えば、適当な細胞タイプは、とりわけ、網膜色素上皮、小腸細胞、子宮細胞、腎臓細胞を含む。プロモーターは、極性化した細胞、例えば、方向性を有する細胞に特異的であってもよく、Kir7.1カリウムポンプは、細胞の極性化を維持するのに役割を果たす。組織特異的な方法で使用され得る適当なプロモーターは、記載されるRPEプロモーター(例えば、EF1aまたはVMD2)および以下の表7において見られるプロモーターを含む。一部の実施形態では、プロモーターは、対象の目における網膜色素上皮(RPE)において活性である。
【0044】
「プロモーター」は、例えば、対象において見られるKCNJ13遺伝子の内在性プロモーターであってもよい。あるいは、プロモーターは、異種性プロモーター(すなわち、非KCNJ13遺伝子のプロモーター)であってもよい。本発明の実施に有用な異種性プロモーターは、恒常的、誘導可能、一過性制御、発生に応じて制御、化学的に制御、組織優先的および組織特異的プロモーターを含むが、これらに限定されない。
【0045】
適当な異種性プロモーターは、EF1aプロモーターまたはVMD2プロモーターを含み得るが、これらに限定されない。典型的なEF1aプロモーターは、配列番号3として提供される。典型的なVMD2プロモーターは、配列番号4として提供される。適当なEF1aプロモーターはまた、配列番号3に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一性を有する、配列番号3として提供されるEF1aプロモーターのバリアントを含んでもよい。適当なVMD2プロモーターはまた、配列番号4に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一性を有する、配列番号4として提供されるVMD2プロモーターのバリアントを含んでもよい。
【0046】
本明細書において記載されるプロモーターおよびKir7.1ポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドに関して、語句「%配列同一性」、「パーセント同一性」、または「%同一性」は、標準的なアルゴリズムを使用して整列された少なくとも2種のポリヌクレオチド配列間の塩基一致のパーセンテージを指す。ポリヌクレオチド配列のアライメント法は、周知である。
【0047】
一部の実施形態では、Kir7.1ポリペプチドをコードする開示されるポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に結合される。本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチドは、それが、第2のポリヌクレオチド配列と機能的に関連して位置するとき、「作動可能に結び付けられる」か、または「作動可能に結合される」。例えば、プロモーターは、それが、ポリヌクレオチドの転写に影響し得るように、ポリヌクレオチドに結び付けられるなら、プロモーターは、ポリヌクレオチドに作動可能に結合される。様々な実施形態では、ポリヌクレオチドは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、または少なくとも10種のプロモーターに作動可能に結合されてもよい。
【0048】
本明細書において使用される場合、「Kir7.1ポリペプチド」は、カリウムが、細胞から出るよりむしろ細胞に入ることを可能にするより大きな傾向により特徴付けられる内向き整流のカリウムチャンネルを指す。ヒトKir7.1ポリペプチドは、配列番号1として提供される。Kir7.1ポリペプチドはまた、配列番号1に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一性を有する、配列番号1として提供されるヒトKir7.1ポリペプチドのバリアントまたは相同体であってもよい。
【0049】
本明細書において使用される場合、用語「タンパク質」または「ポリペプチド」または「ペプチド」を互換的に使用して、アミノ酸のポリマーを指す。本明細書において考慮されるポリペプチドは、典型的には、天然に存在するアミノ酸(例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン)のポリマーを含む。
【0050】
Kir7.1ポリペプチドに関して、語句「%配列同一性」、「パーセント同一性」、または「%同一性」は、標準的なアルゴリズムを使用して整列された少なくとも2種のアミノ酸配列間の塩基一致のパーセンテージを指す。アミノ酸配列のアライメント法は、周知である。いくつかのアライメント法は、保存的アミノ酸置換を考慮する。以下でより詳細に説明される、かかる保存的置換は、一般に、置換の部位にて電荷および疎水性を保存し、これにより、ポリペプチドの構造(そしてそれ故、機能)を保存する。アミノ酸配列についてのパーセント同一性は、当該技術分野において理解される通り、決定されてもよい。(例えば、米国特許第7,396,664号を参照、その全体が参照により本明細書に取り込まれる)。一般的に使用され、無料で入手可能な配列比較アルゴリズム一式が、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)により提供され、それは、そのウェブサイトでNCBI、Bethesda、Md.を含むいくつかのソースから入手可能である。BLASTソフトウエア一式は、公知のアミノ酸配列を様々なデータベース由来の他のアミノ酸配列と整列させるために使用される「blastp」を含む様々な配列解析プログラムを含む。
【0051】
ポリペプチド配列同一性は、例えば、特定の配列番号により定義される、定義されるポリペプチド配列全体の長さにわたり測定され得るか、またはより短い長さ、例えば、より長い定義されるポリペプチド配列、例えば、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも70または少なくとも150の連続する残基のフラグメントから取り出されるフラグメントの長さにわたり測定されてもよい。かかる長さは、単に例示であり、本明細書、表、図または配列表において示される配列により支持される任意のフラグメント長が、パーセント同一性が測定され得る長さを記載するために使用され得ることは、理解される。
【0052】
本明細書において開示されるKir7.1ポリペプチドは、「バリアント」ポリペプチド、「変異体」および「その誘導体」を含んでもよい。本明細書において使用される場合、用語「野生型」は、当業者により理解される業界用語であり、それは、バリアントまたは変異形態から区別される通り、天然で生じるので、ポリペプチドの典型的な形態を意味する。本明細書において使用される場合、「バリアント」、「変異体」または「誘導体」は、参照タンパク質またはポリペプチド分子と異なるアミノ酸配列を有するポリペプチド分子を指す。バリアントまたは変異体は、参照分子と比較して、アミノ酸残基の1つまたは複数の挿入、欠損、または置換を有してもよい。例えば、Kir7.1ポリペプチド変異またはバリアントは、本明細書において開示されるKir7.1「野生型」ポリペプチドと比較して少なくとも1つのアミノ酸残基の1つまたは複数の挿入、欠損、または置換を有してもよい。「野生型」Kir7.1ポリペプチドのポリペプチド配列は、配列番号1として提供される。この配列は、参照配列として使用されてもよい。
【0053】
本明細書において提供されるKir7.1ポリペプチドは、全長ポリペプチドであってもよいか、または全長ポリペプチドのフラグメントであってもよい。本明細書において使用される場合、「フラグメント」は、配列が同一であるが、参照配列より長さが短い、アミノ酸配列の部分である。フラグメントは、最大、参照配列の全体の長さマイナス少なくとも1つのアミノ酸残基を含んでもよい。例えば、フラグメントは、それぞれ、参照ポリペプチドの5~350の連続するアミノ酸残基を含んでもよい。一部の実施形態では、フラグメントは、参照ポリペプチドの少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、または250の連続するアミノ酸残基を含んでもよい。フラグメントは、分子のある特定の領域から好ましくは選択され得る。用語「少なくともフラグメント」は、全長ポリペプチドを包含する。Kir7.1ポリペプチドのフラグメントは、全長Kir7.1ポリペプチドのアミノ酸配列の連続する部分を含むか、または本質的にからなってもよい(配列番号1を参照)。フラグメントは、全長Kir7.1ポリペプチドと比較して、N末端切断物、C末端切断物、または両方の切断物を含んでもよい。
【0054】
Kir7.1ポリペプチドにおける「欠損」は、1つまたは複数のアミノ酸残基の不存在下で生じるアミノ酸配列における変化を指す。欠損は、少なくとも1、2、3、4、5、10、20、50、100、200以上のアミノ酸残基を取り除いてもよい。欠損は、内部欠損および/または末端欠損(例えば、N末端切断物、C末端切断物もしくは参照ポリペプチドの両方)を含んでもよい。
【0055】
Kir7.1ポリペプチドにおける「挿入」および「付加」は、1つまたは複数のアミノ酸残基の付加を生じる、アミノ酸配列における変化を指す。挿入または付加は、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200以上のアミノ酸残基を指してもよい。Kir7.1ポリペプチドのバリアントは、N末端挿入、C末端挿入、内部挿入、またはN末端挿入、C末端挿入、および内部挿入の任意の組み合わせを有してもよい。
【0056】
本明細書において考慮されるKir7.1ポリペプチドバリアント、変異体、誘導体、またはフラグメントのアミノ酸配列は、参照アミノ酸配列と比較して保存的アミノ酸置換を含んでもよい。例えば、バリアント、変異体、誘導体、またはフラグメントポリペプチドは、参照分子と比較して保存的アミノ酸置換を含んでもよい。「保存的アミノ酸置換」は、置換が参照ポリペプチドの特性と最小で干渉すると推定される場所の異なるアミノ酸についてのアミノ酸の置換である、これらの置換である。言い換えると、保存的アミノ酸置換は、参照ポリペプチドの構造および機能を実質的に保存する。保存的アミノ酸置換は、一般に、(a)例えば、ベータシートもしくはアルファらせん形構造としての、置換の範囲におけるポリペプチド骨格の構造、(b)置換の部位での分子の電荷もしくは疎水性、および/または(c)側鎖の大きさを維持する。
【0057】
本明細書において記載される、開示されるバリアントおよびフラグメントKir7.1ポリペプチドは、参照ポリペプチドにより示される1種または複数の機能的または生物学的活性(例えば、野生型Kir7.1ポリペプチド(すなわち、配列番号1)により示される1種または複数の機能的または生物学的活性)を有してもよい。適当には、開示されるバリアントまたはフラグメントKir7.1ポリペプチドは、参照ポリペプチドのカリウムコンダクタンス特性の少なくとも20%、40%、60%、80%、または100%を保持する。本明細書において使用される場合、Kir7.1ポリペプチドの「機能的フラグメント」は、例えば、全長ADHポリペプチドのカリウムコンダクタンス特性の少なくとも20%、40%、60%、80%、または100%を保持する配列番号1のポリペプチドのフラグメントである。
【0058】
さらに、追加のKir7.1ポリペプチドバリアントは、2種以上の種由来のKir7.1ポリペプチド配列を整列させることにより生成され得ることは、当業者に容易に明らかであろう。これらのアライメントに基づき、当業者は、ポリペプチドのカリウムコンダクタンス特性の特性に実質的に影響することなく、変更され(すなわち、置換され、欠損されるなど)得る様々なアミノ酸残基を同定してもよい。例えば、当業者は、参照Kir7.1ポリペプチドにおける置換は、他の種由来の他のKir7.1ポリペプチドにおける対応する位置で生じる代替のアミノ酸残基に基づき得ることは、理解するだろう。
【0059】
一部の実施形態では、遺伝子療法ベクターは、配列番号5(EF1a-Kir7.1)または配列番号6(VMD2-Kir7.1)に対する少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一性を有するポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであってもよい。
【0060】
治療組成物
別の態様では、本発明は、治療組成物に関する。治療組成物は、本明細書において記載される遺伝子療法ベクターのいずれかおよび医薬的に許容される担体を含んでもよい。治療組成物は、利用される投薬量および濃度でそれらに暴露されている細胞または対象にとって無毒性である、医薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含んでもよい。大抵、医薬希釈剤は、pH緩衝水溶液中である。医薬的に許容される担体または賦形剤の例は、水、リン酸塩、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10未満の残基)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンなどの単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;および/またはTWEEN(登録商標)ブランドの界面活性剤、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(商標)界面活性剤などの非イオン性界面活性剤を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0061】
治療方法
本発明のさらなる態様では、Kir7.1ポリペプチドの不十分な発現または機能と関連する状態を有する対象を治療する方法が提供される。本方法は、治療上有効量の、本明細書において記載される遺伝子療法ベクターのいずれかまたは本明細書において記載される治療組成物を対象に投与することを含んでもよい。本明細書において使用される、用語「対象」および「患者」を互換的に使用して、ヒトと非ヒトの両方を指す。本開示の用語「非ヒト動物」は、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、マウス、ラットなどのような哺乳類および非哺乳類を含んでもよい。一部の実施形態では、対象は、ヒト患者である。対象は、不十分な発現または機能のKir7.1ポリペプチドを示す細胞(すなわち、RPE細胞)を有するヒト患者であってもよい。
【0062】
不十分な発現または機能のKir7.1ポリペプチドと関連する条件は、対象が、対照と比較して、低減または除去されるKir7.1発現または機能を細胞の内側または外側において有する条件を含んでもよい。本明細書において使用される場合、「対照」は、野生型Kir7.1機能を有する対象を含んでもよい。例えば、一部の実施形態では、対照は、KCNJ13遺伝子の発現を制御する非制御配列(すなわち、プロモーター、エンハンサーなど)またはKCNJ13遺伝子(すなわち、配列番号1および2)のコード領域のいずれかにおいて機能を喪失した変異を含まない、野生型KCNJ13遺伝子を有する対象であってもよい。
【0063】
対象は、不十分な発現または機能のKir7.1ポリペプチドを示し得る、いくつかの「細胞」を有してもよい。本明細書において使用される場合、「細胞」は、野生型対象におけるKir7.1ポリペプチドを正常に発現する細胞を差してもよい。適当な細胞は、網膜細胞または網膜色素上皮(RPE)細胞などの目の細胞を含んでもよいが、これらに限定されない。Kir7.1はまた、腎臓、甲状腺、CNSニューロン、上衣細胞、脈絡叢上皮、脊髄、子宮筋層平滑筋、小腸、胃粘膜ならびに胃壁細胞の神経細胞を含む様々な器官の上皮細胞、および肺、前立腺、肝臓、膵臓、蝸牛神経核、精巣および卵巣における上皮細胞である。
【0064】
一部の実施形態では、不十分な発現または機能のKir7.1ポリペプチドと関連する状態は、KCNJ13遺伝子における少なくとも1つの機能喪失した変異と関連してもよい。ヒトKCNJ13遺伝子は、UniProt060928として提供される。他の非ヒト対象におけるKCNJ13遺伝子は、当該技術分野において周知の相同性検索方法を使用することにより同定されてもよい。KCNJ13遺伝子における適当な機能が喪失した変異は、W53Ter、Q116R、I120T、T153I、R162Q、R166Ter、L241P、E276A、S105I、およびG219Terからなる群から選択される配列番号1として提供されるKir7.1タンパク質に対して少なくとも1個の置換を含み得る。一部の実施形態では、不十分な発現または機能のKir7.1ポリペプチドと関連する状態は、レーバー先天黒内障16(LCA16)、網膜色素変性症、またはスノーフレーク硝子体網膜変性(SVD)であってもよいが、これらに限定されない。
【0065】
一部の実施形態では、不十分な発現または機能のKir7.1ポリペプチドを示す細胞は、対象の小腸内にある。適当なベクターを、例えば、HIFABP、HMUC2、またはHLY(表7において見られる)を含むが、これらに限定されない、小腸特異的プロモーターを使用して構築して、Kir7.1を小腸に標的化してもよい。小腸における不十分な発現または機能のKir7.1を有する対象を治療する方法は、提供される。方法は、対象の小腸においてKir7.1の発現をもたらすために、Kir7.1ポリヌクレオチドに作動可能に結合された小腸特異的プロモーター、例えば、HIFABP、HMUC2、もしくはHLYを含む、治療上有効量の遺伝子療法ベクター、またはベクターを含む治療上有効量の治療組成物を、対象に投与することを含んでもよい。
【0066】
一部の実施形態では、細胞は、対象の子宮における不十分な発現または機能のKir7.1ポリペプチドを示す。適当なベクターを、平滑筋特異的プロモーター、例えば、SM22a(表7において見られる)を使用して構築して、Kir7.1を子宮に標的化してもよい。子宮における不十分な発現または機能のKir7.1を有する対象を治療する方法は、提供される。方法は、子宮においてKir7.1の発現をもたらすために、Kir7.1ポリヌクレオチドに作動可能に結合された平滑筋もしくは子宮特異的プロモーター、例えば、SM22aを含む、治療上有効量の遺伝子療法ベクター、またはベクターを含む、治療上有効量の治療組成物を対象に投与することを含んでもよい。この方法は、子宮の平滑筋内でKir7.1発現を制御すること、および/またはカリウムバランスを制御することにより、子宮収縮を制御することを可能にし得る。
【0067】
一部の実施形態では、不十分な発現または機能のKir7.1ポリペプチドを示す細胞は、対象の腎臓内にある。腎特異的発現を生じる適当なプロモーターは、例えば、KAP(腎アンドロゲンにより制御されるタンパク質)またはNPHS2(ポドシン)プロモーターを含むが、これらに限定されない(表7を参照)。腎臓内で不十分な発現または機能のKir7.1ポリペプチドと関連する状態を有する対象を治療する方法が、提供される。方法は、対象の腎臓においてKir7.1を発現させるために、Kir7.1ポリヌクレオチド配列に作動可能に結合された腎特異的プロモーター(例えば、KAPもしくはNPHS2)を含む治療上有効量の遺伝子療法ベクター、またはかかるベクターを含む、治療上有効量の治療組成物を対象に投与することを含んでもよい。
【0068】
【表1】
【0069】
不十分な発現または機能のKir7.1ポリペプチドと関連する状態を「治療すること」は、対象における細胞内または細胞外での機能的Kir7.1ポリペプチドのレベルの増加を含むが、これらに限定されない。機能的Kir7.1の量における増加は、それが発現される細胞内でのカリウムチャンネルの適切な機能を生じ、これにより、疾患の1つまたは複数の症状の軽減を導き得る、少なくとも約10%、好ましくは、少なくとも約20%、あるいは、約30%の増加であることを必要とするのみであってもよいことは、当業者により理解されるだろう。例えば、細胞内での非機能的Kir7.1に対する機能的Kir7.1の比は、カリウムチャンネルが適切に機能するのを可能にするのに十分である必要があり、細胞タイプおよび位置に依存して、変動してもよい。
【0070】
本明細書において使用される場合、「治療上有効量」または「有効量」は、状況、障害または状態を治療するため対象に投与されるとき、治療(上で定義された)に作用するのに十分である組成物の量を意味する。治療上有効量は、化合物、製剤または組成物、治療されるべき対象の疾患ならびにその重症度および年齢、体重、物理的状態および応答性に依存して変動する。
【0071】
本明細書において記載される組成物(すなわち、遺伝子療法ベクターおよび/または治療組成物)は、例えば、眼内、局所、鼻腔内、筋肉内、もしくは皮下を含む、局所または全身を含むが、これらに限定されない、当業者に公知の任意の方法により投与されてもよい。眼内投与されるとき、一部の実施形態では、組成物(すなわち、遺伝子療法ベクターおよび/または治療組成物)は、例えば、対象の少なくとも1方の網膜への注射により網膜下投与されてもよい。網膜において、組成物(すなわち、遺伝子療法ベクターおよび/または治療組成物)の送達のための標的化領域は、中心上網膜または斑を含んでもよい。
【0072】
任意の所定の場合で投与される特定の投薬量は、当業者に周知である通り、投与される組成物または複数の組成物、治療または阻害されるべき疾患、対象の状態、および組成物の活性または対象の応答を改変し得る他の関連する医学的要因に従い調節されることは、理解されるだろう。例えば、特定の対象に特異的な用量は、年齢、体重、一般的状態の健康、食事、投与のタイミングおよび様式、組み合わせて使用される医薬ならびに療法が適用される特定の障害の重症度に依存する。所定の患者のための投薬量は、例えば、本明細書において記載される組成物の差次的活性の慣習的比較、および適当な従来の薬理学的または予防的プロトコールの手段によるなどの、公知の剤の差次的活性の慣習的比較を使用して決定することができる。対象のための最大投薬量は、所望されないか、または許容されない副作用を引き起こさない最大投薬量である。個々の治療計画に関して変動する数は多く、相当な範囲の用量が予想される。投与経路はまた、投薬要件に影響する。
【0073】
本明細書において記載される有効な投薬料は、投与される総量を指し、すなわち、1つより多くの組成物が投与されるなら、有効な投薬量は、投与される総量に対応する。組成物は、1回用量として、または分割用量として投与することができる。例えば、組成物は、4時間、6時間、8時間、12時間、1日、2日、3日、4日、1週間、2週間、または3週間以上隔てて、2回以上で投与されてもよい。
【0074】
本明細書において記載される、組成物(すなわち、遺伝子療法ベクターおよび/または治療組成物)を、対象に1回または複数回投与して、対象における細胞内または細胞外での機能的Kir7.1ポリペプチドのレベルを有効に増加させてもよい。組成物(遺伝子療法ベクターまたは治療組成物)は、対象に送達されるKir7.1ポリペプチドをコードする発現コンストラクトのコピー数に基づき、投与されてもよい。対象は、106~1014、もしくは108~1012、もしくは109~1011、またはそれらの任意の範囲のコピーで投与されてもよい。遺伝子療法ベクターがウイルスベクターである実施形態では、対象は、106~1014、もしくは108~1012、もしくは109~1011、またはそれらの任意のウイルスゲノムで投与されてもよい。
【0075】
本開示は、本明細書において記載される構成の特定の詳細、成分の配置、または方法の工程に限定されない。本明細書において開示される組成物および方法は、以下の開示に照らして、当業者に明らかであろう様々な方法で作製され、実施され、使用され、実行されおよび/または形成される能力がある。本明細書において使用される用語および専門用語は、説明のみの目的であり、請求の範囲を制限するとみなされるべきではない。本明細書および請求の範囲において使用される第1、第2、および第3のような序数標識は、様々な構造または方法の工程を指し、任意の特定の構造もしくは工程、またはかかる構造もしくは工程についての任意の特定の順序もしくは配置を示すために構成されないことを意味する。本明細書において記載される全ての方法は、本明細書において別段示されないか、または文脈により明確に否定されない限り、任意の適当な順序で行うことができる。本明細書において提供される任意および全ての例、または典型的な語句(例えば、「例えば」)の使用は、開示を促すことを単に意図し、別段主張されない限り、本開示の範囲に対する制限を暗示しない。明細書における語句、および図面において示される構成はいずれも、主張されない要素が、開示される主題の実施に必須でないことを示すと解されるべきではない。用語「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する」およびそのバリエーションの本明細書における使用は、その後に挙げられる要素およびその均等物、ならびに追加の要素を包含することを意味する。ある特定の要素を「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する」として挙げられる実施形態はまた、それらのある種の要素「から本質的になる」および「からなる」としてみなされる。
【0076】
本明細書における値の範囲の列挙は、別段本明細書において示されない限り、範囲内にある各々の別個の値を個別に反映する手短な方法として働くことが単に意図され、各々の別個の値は、それが、本明細書において個別に列挙されたように、明細書に取り込まれる。例えば、濃度範囲が、1%~50%として示されるなら、2%~40%、10%~30%、または1%~3%などの値が、本明細書において明確に挙げられることが意図される。具体的に意図されるものの単なる例示であり、列挙される最小値と最大値の間ならびにそれらを示す数値の全ての可能性のある組み合わせは、本開示において明確に示されるべきであるとみなされるべきである。特定の列挙される量または量の範囲を記載するための語「約」の使用は、列挙される量に非常に近い値が、製造許容差、測定を行う際の装置およびヒューマンエラーなどに起因して説明され得るか、または当然そうである値などのその量で含まれることを示すことを意味する。量に言及する全てのパーセンテージは、別段示されない限り、重量である。
【0077】
本明細書において引用される任意の非特許文献または特許文献を含む、任意の参考文献が、先行技術を構成することは、認められない。特に、別段示されない限り、本明細書における任意の文献の参照は、これらの文献のいずれかが、当該技術分野および米国または任意の他の国における共通する一般的な知識の一部を形成するという承認を構成しない。参考文献の任意の考察は、それらの著者が主張し、本出願人が、本明細書において引用される文献のいずれかの正確性および適切さに異議を唱える権利を留保するものを述べている。本明細書において引用される全ての参考文献は、別段明確に示されない限り、その全体が参照により完全に取り込まれる。本開示は、引用される参考文献において見出される任意の定義および/または記載の間にいずれかの不均衡が存在する場合には、支配するだろう。
【0078】
別段文脈により特定されないか、または示されない限り、用語「a」、「an」および「the」は、「1つまたは複数」を意味する。例えば、「タンパク質」または「RNA」は、それぞれ、「1つまたは複数のタンパク質」または「1つまたは複数のRNA」を意味すると解釈されるべきである。
【0079】
以下の実施例は、単に説明であることを意味し、本発明の範囲または添付の請求の範囲の範囲への制限として意味しない。
【実施例
【0080】
実施例1-変異特異的な盲目のための精密医療
レーバー先天黒内障(LCA)は、少なくとも21種の異なる遺伝子と関連する遺伝性小児盲目である。本発明者らは、患者由来のiPSC-RPE細胞を使用して、非機能的Kir7.1イオンチャンネルを生じるKCNJ13遺伝子におけるナンセンス変異に起因する、LCA16の根底にある分子機序を明らかにした。リードスルーまたは遺伝子増大のいずれかを使用して、本発明者らは、精密医療アプローチを介して患者由来のiPSC-RPE細胞におけるKir7.1チャンネル機能を救出した。
【0081】
外網膜視細胞および網膜色素上皮(RPE)において発現する少なくとも21種の遺伝子における変異は、出生および幼児期から、レーバー先天黒内障(LCA)として知られる遺伝性盲目の形態を引き起こす。過去10年以内で、KCNJ13遺伝子における常染色体劣性の変異(染色体遺伝子座2q37.1上の603203)が、LCA表現型を有する患者において同定された(LCA16 OMIM-614186、LCAを引き起こすことが示された第16番目の遺伝子)1~3。LCA16病原性対立遺伝子バリアントは、c.158G>A(p.Trp53Ter)、c.359T>C(p.Iso120Thr)、c.458C>T(p.Thr153Iso)、c.496C>T(p.Arg166Ter)、およびc.722T>C(p.Leu241Pro)を含む1、2、4。加えて、化合物異種性KCNJ13変異c.314G>T(p.Ser105Iso)およびc.655C>T(p.G219Ter)は、LCA患者5における早期発症網膜ジストロフィーを引き起こすことが知られている5。常染色体優性KCNJ13変異であるc.484C>T(p.Arg162Trp)は、スノーフレーク硝子体網膜変性(SVD OMIM-193230)と呼ばれる早期発症盲目を引き起こす6
【0082】
遺伝子スクリーニングにおける進歩は、チャネル病により引き起こされる障害のアレイの本発明者らの理解を間違いなく改善し、KCNJ13が、健常および疾患において果たす役割の本発明者らの理解を拡張する。カリウムチャンネルを内部へ整流する、Kir7.1は、KCNJ13によりコードされ、いくつかの組織において発現する7、8。網膜において、Kir7.1は、RPEの細胞先端プロセスにおいてもっぱら発現し、ここで、それは、網膜の機能および健常さを調節する。他の器官におけるKir7.1チャンネルの役割は、まだ解明されていない9、10
【0083】
他のチャネル病と同様に、KCNJ13における機能の喪失は、好適な治療標的である。本発明者らは、精密医療アプローチを適応し、ここで、本発明者らは、患者由来のiPSC-RPE細胞を使用して、LCA16をモデルにし、変異特異的かつ遺伝子増大アプローチに基づき、新規の療法を探索した。
【0084】
結果
本発明者らは、マウス網膜におけるKir7.1の標的化阻害(siRNAまたは薬理学的ブロッカーのいずれかを使用して誘導した)が、LCA16患者において観察されたものと一致する、変化した網膜電図表現型を引き起こすことを、既に報告した11。ここで、本発明者らは、KCNJ13遺伝子のエクソン2におけるナンセンス変異(Trp53Ter)を有し、罹患していない健常なファミリーメンバーである、一人のLCA16患者からの皮膚生検由来の患者由来のiPSC-RPE細胞の本発明者らの開発の概要を述べる。本発明者らは、転写因子の混合物を使用して、インビトロ分化を介して得たRPE細胞における特徴的なLCA16病理特性をモデル化することができた12。これらの細胞は、敷石の様子および色素沈着を含む、正常なRPE形態を有していた(図1Aおよび1B)。DNA配列決定により、対照細胞が異種性であり、一方、LCA16細胞が、変異158G>Aについてホモ接合性であることを確認した。加えて、LCA16細胞は、正常な核型を有していた(図1C)。LCA16変異は、Nhe1の制限酵素を導入し、これにより、Kir7.1変異配列を患者由来のiPSC-RPEにおいて同定し、ホモ接合性変異の存在をさらに検証することを可能にした(図1D)。対照iPSC-RPEを試験し、ドナーの遺伝子型と一致する、異種性キャリアであると見出した(図1D)。2つの細胞タイプの間でRPE特異的遺伝子の発現の差はなかった(図1E)。したがって、患者由来のiPSC-RPEは、遺伝性網膜ジストロフィーの遺伝子型を有し、それゆえ、疾患特異的な細胞モデルをもたらすと確認した1
【0085】
Kir7.1チャンネルは、RPEの高度に専門化した頂端膜プロセス内に局在化する11、13。未変化の頂端膜構造の電子顕微鏡画像解析により、細胞が、未変化の基底膜陥入を含む、極性化した構造を有し、対照において長さ1.49±0.05μm、および変異において長さ1.5±0.14μm(P=0.96、n=7)を引き延ばしたことを示した(図1F、Hおよび図3A~3D)。2種の細胞株におけるミトコンドリアの分布および数は、正常であると明らかになり、それぞれ、対照および変異細胞において平均8.4±1および6.22±0.8であった(P=0.12、n=6)(図1Fおよび1G)。Kir7.1タンパク質発現を、正常な対照iPSC-RPE細胞の頂端膜で検出したが、LCA16 iPSC-RPE細胞において検出しなかった(図1Iおよび1J)。本発明者らは、Kir7.1を除き、2種の細胞株間でのタンパク質発現の差を見出さなかった(図1K)。Trp53Ter遺伝子座は、3-エクソンKCNJ13配列の第2のエクソン内に位置する。本発明者らは、アミノ酸53でのナンセンス置換が、LCA16患者由来のiPSC-RPEが、全長Kir7.1タンパク質の発現に失敗したかを説明する、切断したタンパク質産物を生じることを既に示した。
【0086】
PE細胞の鍵となる生理学的機能の1つは、再生プロセスに関与する、視細胞外節の日常的な食作用である。正常なKir7.1タンパク質の不存在が、食作用を変化させるかどうかを試験するために、本発明者らは、蛍光標識した視細胞外節(POS)とともに対照とLCA16 iPSC-RPE 細胞培養物の両方に栄養を与えた。細胞に、POSを4時間与え、次に、RPE細胞によるファゴソーム消化を、さらに48時間した。次に、本発明者らは、対照iPSC-RPEが、LCA16患者由来のiPSC-RPEより高い割合のファゴソーム取り込みを示すことを決定した(169±40対66.5±7.4、P=0.04、n=4)(図1L、1Mおよび1N)。対照的に、細胞にPOSを1日与え、ファゴソーム消化を6日間させたとき、LCA16 iPSC-RPE細胞は、POS消化に失敗した(200μm2の視野内で80.2±11.1対244.2±27.6数、P=0.001、n=4)(図3A~3D)。この発見は、LCA16において観察した色素沈着が、POSを正常に貪食できないことに起因するようであり、それ故、罹患した個体の網膜において経時的に蓄積することを示唆する。
【0087】
本発明者らは、非機能的チャンネルが、LCA16表現型に関与すると仮定し、iPSC-RPE細胞を用いて細胞全体の電気生理学を行うことにより、この仮定を試験した。iPSC細胞におけるイオンチャンネルの研究における課題の1つは、それらの低レベルの発現であるか、または発現を欠くことである。本発明者らは、専門化した頂端プロセスの発生を示し、Kir7.1が、頂端膜に局在化することを示したので、本発明者らは、対照iPSC-RPE細胞において少ないが、測定可能なKir7.1電流(-120.2±37pA)を検出することができた。正常な機能を、Kir7.1チャンネルの特異的な特性である、Rb+透過性(-439.5±155.7pA、n=5)における倍加増加により確認した(図2Aおよび2C)14。しかしながら、LCA16 iPSC-RPE細胞において、本発明者らは、Rb+コンダクタンスにより仲介される電流振幅における倍加変化を検出しなかった(-98.1±15.7pAおよび-100.7±15.9pA、n=9)(図2Bおよび2C)。電流振幅(RbでP=0.0006)と細胞膜電位(-50±5.1対-30.6±3.7mV、P=0.0005;図2Dにおいて示す)の両方の直接比較は、盲目の原因が、切断した非機能的Kir7.1チャンネルであるという本発明者らの仮説を支持する。本発明者らは、マウスおよびKir7.1チャンネルの外来性発現を使用して、非機能的チャンネルが、RPE細胞を脱分極させることを以前に示した1、11
【0088】
本発明者らが研究しているLCA16変異は、アンバー停止コドン(UAG)バリアントに対するトリプトファン(UGG)である。真核生物におけるこのナンセンス変異は、小分子リードスルーデザイナーアミノグリコシドNB84の存在における近縁の同族アミノ酸tRNAの取り込みにより抑制することができる(米国特許公開第20140357590A1号)15~17。本発明者らは、LCA16 iPSC-RPE細胞におけるKir7.1電流のNB84介在性リードスルーの機能的結果をさらに評価した。500μM NB84での処理後、本発明者らは、浸透性イオンである、Rb+の導入の際に10倍増強された(-1562.7±546.7pA、P=0.005、n=8)であった-94.3±24pAであるLCA16 iPSC-RPEにおける測定可能な電流を得た(図2Eおよび2F)。未処理の細胞における-30.6±3.7から処理した細胞における-56.3±3.6mV(P=0.0001、n=10)(図2G)への膜電位の有意な回復は、リードスルー薬物療法の使用をさらに正当化した。本発明者らは、細胞のサブグループが、電流振幅における有意な変化を伴わず、膜電位において救出したことを示すことができた(図4A~4D)。この結果は、近縁の同族アミノ酸(UAC-チロシン、UCG-セリン、GAG-グルタミン酸、またはCAG-グルタミンに対してUAG)が、Kir7.1タンパク質翻訳中に取り込まれるということにおそらく基づく。Kir7.1タンパク質の検出を最適化するために、本発明者らは、低発現レベルのKir7.1-GFP融合クローンを含む安定な細胞株を使用した。NB84試験細胞において、整流した膜電位および電流と併せて、全長産物に均等なタンパク質バンドを、切断したタンパク質バンドに加えて検出した(図2H、2Iおよび図5A~5D)。NB84は、劣性Trp53Terコドン変異の特定のリードスルーを増し、本発明者らは、機能的チャンネルの25%と同等に低い救出が、膜電位とカリウム電流の両方を回避するのに十分であり、これにより、疾患表現型を救出することを見出した(図6A~6D)。
【0089】
本明細書において研究した特定の変異および盲目を引き起こす他の変異は、盲目のための最近のFDA承認処置を与える、遺伝子療法の可能性のある標的である18、19。本発明者らは、EF1aプロモーターの制御下でヒトKir7.1オープンリーディングフレームに融合したN末端GFPを含むレンチウイルスベクターを設計した20。興味深いことに、レンチウイルス粒子での形質導入後、Kir7.1発現細胞は、正常なKir7.1電流または対照細胞において観察したものよりわずかにだが高い振幅を提示した(-920.5±223pA、P=0.001、n=8)。この電流を、正常に機能するKir7.1チャンネルについて予測した通り、Rb+の導入によりさらに増した(-5452.8±929pA)(図2Jおよび2K)。K+電流に加えて、LCA16 iPSC-RPE細胞の膜電位を正常化した(-57.5±5.4mV、P=0.0008)(図2l)。さらに、新たに発現したKir7.1は、疾患のiPSC-RPE細胞の頂端膜に局在化することを示した(図2Mおよび2N)。したがって、RPE細胞におけるKir7.1機能の反転は、KCNJ13変異に起因する先天性盲目を有する患者における視力を改善する可能性のある介入である。
【0090】
要約すると、常染色体劣性LCA16において、本発明者らは、初期化したiPSC-RPE細胞を使用して、ナンセンス変異と関連する固有の特性を同定した。膜電位は、疾患の細胞において脱分極し、POSの貪食を不可能にするという知見は、網膜電図異常および網膜色素沈着などのそれらの他の臨床症状に加えて、LCA16患者において観察した盲目へのゆっくりとした進行と一致する。iPSC-RPEモデルにおける内在性発現Kir7.1を使用し、本発明者らは、デザイナーアミノグリコシドを介したナンセンス変異抑制を使用した両方の変異特異的な療法、および/またはレンチウイルス遺伝子増大を介したチャネル病の救出が、カリウム電流および正常な膜電位を生じることを示した(図7A~7D)。したがって、本発明者らは、本明細書において、遺伝子疾患を治癒するための小児の盲目のための前臨床療法および精密医療アプローチを示す。
【0091】
方法
hiPSC-RPEの分化。2人の対象由来の線維芽細胞を初期化して、多能性幹細胞を誘導し、確立した方法を使用して培養した1~3。対象の一方は、KCNJ13遺伝子において2コピーのTrp53Ter常染色体劣性変異を有するLCA16患者であり、第二の対象は、この変異について異種性であった。hiPSC株を、従前に記載されたプロトコールを使用してRPEに分化させた2~5。簡単に言うと、hiPSCを、マウス胚線維芽細胞(MEF)上、iPS細胞培地(ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM):F12(1:1)、20%ノックアウト血清、1%基礎培地(MEM)非必須アミノ酸、1%GlutaMAX、β-メルカプトエタノール、20ng/ml FGF-2)、またはmTeSR1培地を含むMatrigel(登録商標)のいずれかにおいて培養した。細胞を、酵素で持ち上げ、FGF-2を含まないiPS培地において胚様体(EB)として成長させ、4日目に、中性誘導培地(NIM;DMEM:F12;1% N2補充、1%MEM非必須アミノ酸、1%L-グルタミン、2μg/mlヘパリン)に変えるか、またはmTeSR1において、4日目までに徐々に移行した。これらの2つのアプローチ間でのRPE分化における差を観察しなかった。7日目に、自由に浮遊するEbを、ラミニンコート培養プレートに播種して、接着培養として分化を継続させた。16日目に、3D神経構造を取り出し、培地を、網膜分化培地(DMEM/F12(3:1)、2%B27補充(レチノイン酸を含まない)、1%抗生物質-抗真菌剤)に変えた。残る付着細胞を、さらに45日間分化を継続し、続いて、マイクロダイセクションおよび従前に記載5された通り、精製した単層のRPEを得るための色素RPEパッチを継代させた。MEF、Matrigel(登録商標)およびFGF-2を、WiCell(Madison、WI)から購入し、全ての他の組織培養試薬を、ThermoFisherから購入した。
【0092】
RT-PCRおよび制限断片長多型(RFLP)。トータルRNAを、製造元(Qiagen)の指示に従い、Rneasy(登録商標)キットを使用して、患者とキャリアの両方から成熟hiPSC-RPE細胞から単離した。単離したRNAの質および濃度を、Nanodrop(ThermoFisher)を使用して測定し、RNA200ngを、製造元(ThermoFisher)の指示に従い、Superscript IIIファーストストランドcDNA合成キットを使用して、cDNA合成のため使用した。PCRを、MyTaqHSマスターミックス(Bioline)を用いて、最終体積25μlにおいて、次の条件:95℃で5分間、続いて、95℃で15秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、および72℃で30秒間の伸長の35サイクルで行った。最終の伸長工程を、72℃で10分間行い、増幅産物を、ミドリグリーンアドバンス株(Nippon Genetics Europe)を含有する2%アガロースゲルでの電気泳動により視覚化した。RFLPアッセイのため、PCRを、全長KCNJ13 mRNAに特異的なプライマー(フォワード5`-GCTTCGAATTCCGACAGCAGTAATTG-3`(配列番号7)およびリバース5`-ATCCGGTGGATCCTTATTCTGTCAGT-3`(配列番号8)を用いて、記載した通り行った。次に、PCR産物を、NheI制限酵素(ThermoFisher)により消化し、ミドリグリーンアドバンス株(Nippon Genetics Europe)を含有する2%アガロースゲルでの電気泳動により視覚化した。
【0093】
透過型電子顕微鏡。トランスウエルインサート(Corning、カタログ番号3470)上の単層のhiPSC-RPEを、0.1Mナトリウムリン酸緩衝液(PB)中の2.5%グルタルアルデヒド、2.0%パラホルムアルデヒドの溶液において、pH7.4で約1時間、室温(RT)で固定した。試料を、0.1M PBにおいて5×5分間洗浄した。次に、洗浄した培養物を、PB中の1%四酸化オスミウム(OsO4)、1%フェロシアン化カリウムで、1時間、RTで後固定した。後固定後、試料を、前の通り、PBにおいて洗浄し、続いて、蒸留水において3×5分間洗浄して、リン酸塩を透明化した。次に、試料を、酢酸ウラニルにおいて、2時間、RTで一括して染色し、エタノール連続物を使用して脱水した。膜を、トランスウエル支持体から切り出し、アルミニウム秤量ディッシュに入れ、プロピレンオキシド(PO)に移行し、フレッシュPilyBed 812(Polysciences Inc.Warrington、PA)において重合させた。超薄切片を、これらの重合化試料から調製し、処理し、その後、AMT BioSprint12(Advanced Microscopy Techniques,Corp.Woburn、MA)デジタルカメラを備えたFEI CM120透過型電子顕微鏡で画像を取得し、記載した。
【0094】
免疫細胞化学(ICC)。患者または対照のいずれか由来の単層のhiPSC-RPE細胞を含むトランスウエルインサートを、次の通り固定した:トランスウエル膜を、切り出し、それを、リン酸緩衝生理食塩水中の4%パラホルムアルデヒドにおいて、10分間、暗所で浸漬することにより固定した。次に、細胞を含む膜を、冷却したPBSで2回洗浄し、1×PBS中の5%ヤギ血清および0.25%Tween-20を含有するブロッキング溶液において2時間ブロッキングした。共焦点顕微鏡について、次に、細胞を、インキュベーション溶液(1×PBSで1:3に希釈したブロッキング溶液)において調製した、Kir7.1(マウスモノクローナルIgG、1:250- Santa Cruz)、およびZO-1(ウサギポリクローナル、2.5μg/ml-ThermoFisher)に対して産生した1次抗体と共に、24~48時間インキュベーションした。1次抗体とのインキュベーション後、膜を、冷却1×PBSで3回洗浄し、インキュベーション中の結合した2次抗体(ロバ抗ヤギAlexa Fluor(登録商標)488、ロバ抗ウサギAlexa Fluor(登録商標)594およびDAPI、1:500)と共に、1時間、暗所でインキュベーションした。1次抗体対照を、全ての実験について含めなかった。免疫染色した試料を、Nikon C2共焦点顕微鏡(Nikon Instruments Inc.、Mellville、NY)で画像化した。
【0095】
ウエスタンブロット。タンパク質を、超音波処理と共に、放射性免疫沈降(RIPA)溶解バッファー(ThermoFisher)を使用して、トランスウエル上での>60日齢のhiPSC-RPE細胞から単離した6。溶解物のタンパク質含有量を、市販のビシンコニン酸(BCA)アッセイキット(ThermoFisher)を使用して測定した。試料を、均等量のタンパク質を含有するように希釈し、2×Laemmli試料緩衝液(Bio-Rad)と混合し、NuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)4-12%成形後のポリアクリルアミドゲル(ThermoFisher)で電気泳動し、続いて、iBlot(登録商標)乾燥ブロットシステム(ThermoFisher)を使用して、二フッ化ポリビニリデン(PVDF)膜に移行した。膜を、0.1%Tween-20を含有するオデッセイブロッキング緩衝液(LI-COR Biosciences)で、少なくとも2時間、4℃でブロッキングした。ブロッキング後、膜を、0.1%Tween-20を含有するオデッセイブロッキング緩衝液において調製した適当な1次抗体においてインキュベーションした。この目的のため使用した1次抗体は、抗Kir7.1(マウスモノクローナル、1:1000-Santa Cruz Biotech)、抗Bestrophin1(マウスモノクローナル、1:1000-Novus biologicals)、抗RPE65(マウスモノクローナル、1:1000-ThermoFisher)、抗GFP(マウスモノクローナル、1:1000-NeuroMab)、抗GAPDH(ウサギモノクローナル、1:1000-Cell Signaling)、および負荷対照としての抗β-アクチン(ウサギモノクローナル、1:1000-Cell Signaling Technology)であった。膜を、対照と併用して、これらの1次抗体と、一晩、4℃でインキュベーションし、次に、0.1%Tween-20を含有するトリス緩衝化生理食塩水で4回洗浄し、その後、それらをさらに1時間、ブロッキングバッファー中1:20000希釈での適当なIRDye(商標)2次抗体(LI-COR Biosciences)と共にインキュベーションした。膜を、4回洗浄し、Odyssey(登録商標)画像システムで画像化した。
【0096】
視細胞外節(POS)単離。新鮮なウシの目を、ほの暗い赤色の光の下で解体し、網膜を、眼杯から注意深く取り出した。単離した網膜を、冷却した均質化溶液(20%w/vスクロース、20mMトリス/酢酸塩、pH7.2、2mM MgCl2、10mMグルコース、5mMタウリン)に入れ、優しく混合した。次に、懸濁液をガーゼに通して、凝集塊を取り除いた。この濾液を、25~60%スクロース勾配を通して、25000rpmで1時間、4℃で遠心分離した。POSを含有するピンク色がかった層を取り出し、それぞれ、3000gで10分間遠心分離することにより、洗浄溶液1(20mMトリス酢酸塩、pH7.2および5mMタウリン)、洗浄溶液2(10%スクロース、20mMトリス酢酸塩、pH7.2および5mMタウリン)ならびに洗浄溶液3(10%スクロース、20mMリン酸ナトリウム、pH7.2および5mMタウリン)で洗浄し、その後、2.5%スクロースを含有するDMEMに再懸濁し、使用まで-80℃で保存した。POSを蛍光標識するために、未標識のアリコートを融解し、2400gで5分間遠心分離した。次に、ペレットを、DMEM200μlに再懸濁した。この溶液に、Alexa Fluor 594(登録商標)(1mg/ml、ThermoFisher)と結合したWGA(Wheat Germ Agglutinin)溶液1μlを混合し、10分間、37℃でインキュベーションした。WGAとのインキュベーションの完了後、試験管を、2400gで5分間、再度遠心分離し、POSペレットを、DMEMで2回洗浄し、その後、食作用アッセイのため使用した。
【0097】
食作用アッセイ。標識したPOSを、培養培地に加え、トランスウエルにおいて成長しているhiPSC-RPE細胞に栄養を与え、これは、経上皮電気抵抗(TEER)>150Ωcm2を有していた1。細胞に、POSを4時間または24時間与え、その後、貪食されなかったPOSを、細胞をDMEM培地で3回洗浄することにより、取り除いた。次に、細胞を、それぞれ、24時間または6日間インキュベーションし、その後、画像化した。画像を取得し、Nikon C2共焦点顕微鏡(Nikon Instruments Inc.、Mellville、NY)を使用して、NIS-Elementで解析した。
【0098】
GFP融合タンパク質の免疫沈殿および銀染色:CHO-K1細胞を、一過性に遺伝子導入して、Kir7.1 WTタンパク質またはKir7.1 Trp53Terタンパク質のいずれをGFPとのN末端融合物として外来性に発現させた。次に、Trp53Terタンパク質発現細胞を、NB84で処理した8。免疫沈殿を、製造元のプロトコールに従い、GFP-Trapアガロースビーズ(ChromoTek、ドイツ)を使用して行った6。簡単に言うと、細胞を収集し、ウエスタンブロットのため、上記の通り、タンパク質を単離した。GFP-トラップアガロースビーズを、細胞溶解物に加え、一定に混合しながら、4℃で2時間インキュベーションした。次に、混合物を、2500gで2分間遠心分離して、ビーズを、2回洗浄した。SDS試料緩衝液を、ビーズに加え、95℃で10分間インキュベーションし、続いて、2500×gで遠心分離した。上清を4-12%アクリルアミドゲル上で分離し、タンパク質バンドを、製造元の指示に従い、Pierce銀染色キット(ThermoFisher)を使用して、銀染色により視覚化した。
【0099】
hiPSC-RPE形質導入。病原体エレメントを回避するよう顧客操作し、EF1aプロモーターの制御下に緑色蛍光タンパク質(GFP)とN末端で融合したKCNJ13遺伝子を有する、レンチウイルスを、Cyagen Biosciences(Santa Clara、CA、米国)により生成し、形質導入のため使用した9。LCA-16 hiPSC-RPE単層に、200のMOIでpLV-EF1α Kir7.1- GFPを感染させた。感染後、細胞を、4~5日間培養し、次に、免疫細胞化学およびウエスタンブロットのため使用した。
【0100】
電気生理学。単一の細胞において標準的な細胞全体のパッチクランプを、記載6される通り、行った。簡単に言うと、6.5mmのトランスウエルで成長させた、堅固な単層のhiPSC-RPEを、次の通り、単一細胞の懸濁液に分離した:細胞を維持した培地を、完全に除去し、細胞を、0NaCMF溶液(135mM NMDG-Cl、5mM KCl、10mM HEPES、10mMグルコース、2mM EDTA-KOH、NMDG遊離塩基でpH7.4に調整した)で2回洗浄した。次に、細胞を、パパイン(2.5μl/ml)、システイン(0.3mg/ml)、グルタチオン(0.25mg/ml)およびタウリン(0.05mg/ml)を含有する0NaCMFと共に、45分間、37℃でインキュベーションした。細胞を、0NaCMF溶液で洗浄して、酵素を取り除き、HEPES-リンガー(HR)溶液[NaCl(135mM)、KCl(5mM)、CaCl2(1.8mM)、MgCl2(1mM)、HEPES(10mM)、D-グルコース(10mM)、NaOHでpH7.4±0.1、ddH2O中に調製]に再懸濁し、電気生理学的記録のため使用するまで、氷上で最大8時間維持した。
【0101】
別個の頂端プロセスを有する単一のhiPSC-RPE細胞を、従来のパッチクランプのため選択した。抵抗性3-5mΩを有するパッチピペットを、ピペットプラー(P-1000(登録商標)、サッター装置)を使用して、ホウケイ酸キャピラリーから作り上げた。次に、ガラス電極を、小さな炉(MF-830(登録商標)、Narshige)を使用して、熱で磨いた。データ取得および保持電位パラメーターを、Clampex(登録商標)ソフトウエア(Axon instruments)を使用して制御した。成功したパッチから記録した電流を、Axopatch 200-B(登録商標)(Axon Instruments)を使用して増幅し、2KHzでフィルターをかけた。シグナルを、digidata 1400A(登録商標)(Axon instruments)を使用してデジタル化し、Clampfit(登録商標)(Axon Instruments)を使用して解析した。パッチクランプ中に、HR溶液を、外部溶液として継続的に灌流した。パッチピペットに、30mM KCl、83mM K-グルコ酸塩、5.5mM EGTA-KOH、0.05mM CaCl2、4mM MgCl2、10mM HEPESを含有し、KOHで7.2調整したpHの溶液を充填し、0.2μmのフィルターを使用して濾過した。
【0102】
統計的分析。統計的分析を、Origin(バージョン9.1)を使用して、両側スチューデントt検定で行い、有意差を評価した。P<0.05を、統計学的に有意であるとみなした。ANOVAおよび事後テューキー検定も、複数の比較のため使用した。データを平均±SEMとして現す。
【0103】
方法についての参考文献
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【0104】
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【0105】
実施例2-細胞培養モデルおよびインビボでのKir7.1遺伝子療法
LCA16の細胞培養モデルにおいて遺伝子療法の有効性を試験するために、本発明者らは、Kcnj13遺伝子におけるW53X変異を有するCHO細胞におけるAAV-Kir7.1の生理学的欠損を救出する能力を試験した。図8は、野生型(左パネル)とW53X変異(右パネル)安定細胞由来の細胞全体の電流と電位の関係を示す。野生型の安定な細胞における内部に整流するK+電流(黒色のトレース)は、Rb+(赤色のトレース)により優位に増加した。右側のW53X変異の安定な細胞において、K+電流もRb+電流も記録しなかった(p=1.05E-0.5)。
【0106】
図9は、W53X変異発現CHO細胞の遺伝子増大が、従前の電流なし(図9A、黒色のトレースでのプロット)と比較して、平均内部整流K+電流(図9A、赤色のトレースにおけるIVプロット)の回復を有することを示す。(図9B)遺伝子増大後のW53X変異発現細胞における平均のより高いRb+電流(赤色のトレース)。(図9C)Rb+透過性における正味の増加は、遺伝子増大後にKir7.1 チャンネルを介して増加した(青色)。(図9D)W53X発現細胞のAAV-Kir7.1形質導入後の静止膜電位(RMP)の完全な回復は、青色の四角として表した。(図9E)列W53X+AAV(赤色のバンド)における遺伝子増大後の全長タンパク質産物の発現を示す、ウエスタンブロット結果。
【0107】
図10は、AAV-Kir7.1を通じて遺伝子増大後のW53X変異列におけるKir7.1発現(緑色)を示す(図10A)。(図10B)より高い拡大率の画像は、膜マーカーWGA-Alexa 594に並んだKir7.1タンパク質の膜局在化を示す。より下のパネルにおいて、赤色および緑色についてのラインスキャンは、膜マーカーおよびKir7.1共局在化を示す。
【0108】
インビボで遺伝子療法の有効性を試験するために、野生型とKcnj13遺伝子を欠くマウスの両方を試験した。図11において、左の四角は、網膜下注射により、レンチ-EF1a-eGFPKir7.1 2μlを受け取った野生型マウスの例である。電気生理学的結果を、注射前(黒色のトレース)ならびに注射の1週間後(青色のトレース)、2週間後(赤色のトレース)、および4週間後(緑色のトレース)で得た。図11の左の四角において、正常なa波およびb波として記録した網膜応答を、左側に示し、RPE細胞応答c波を、右側に示す。注射の1週間後においてのみ、網膜応答が低減し、それ以外は、電気生理学的結果に対する遺伝子療法の効果は極めて少なかった。図11の右の四角において、本発明者らは、レンチ-EF1a-eGFPKir7.1 2μlを受け取った、Kcnj13遺伝子を欠くマウスの結果を示す。右パネル上は、c波のRPE応答であり、これらのマウスにおいて完全に消失し、これは、左パネルにおいて示すa波およびb波におけるわずかの低減を伴った。遺伝子療法直後、本発明者らは、c波応答における増加に気づき、これは、注射の1週間後に始まった(右パネルの青色のトレース)。トレースは、遺伝子療法後の2週間(赤色のトレース)および4週間(緑色)の間のc波においける継続的増加を示す。4匹の野生型およびKcnj13遺伝子を欠く4匹のマウスにおける平均測定値を、四角のプロットとして示し、これは、c波における有意な回復を伴い、野生型マウスの視力に対する作用を伴わなかった。図の下の数字は、野生型およびKcnj13を欠くマウスにおけるa波、b波およびc波の実際の振幅を示す。
【0109】
さらに、図14A~Fは、cKOマウスモデルにおける遺伝子療法後のKir7.1タンパク質を欠く網膜色素上皮(RPE)細胞の機能回復を示す。図14Aは、WTマウスおよびcKO対照マウスにおける注射対照を示し、これは、PBS注射の8週間後のRPE応答機能を示している。Kir7.1cKOマウスのERG応答は、スクリーニング中のa波、b波およびc波を示さなかった(図14B)。視細胞は、変性していなかったが、スクリーニング中に、RPE細胞からの応答を有さなかった、EF1aおよびVMD2プロモーターによりもたらされるkcnj13遺伝子を有するレンチウイルスの網膜下送達による、恒常的EF1aプロモーターまたはRPE特異的VMD2プロモーターのいずれかを有するレンチウイルスでのKir7.1の送達は、RPEと視細胞の両方が、cKOマウスにおいて記録したRPEの変性したc波であったので、重大な表現型に起因してRPE機能の救出に失敗した(図14C)。図14D~Fは、代表的な光干渉断層撮影(OCT)画像を示し、これは、それぞれ、スクリーニング中およびレンチウイルス遺伝子送達の8週間後の、対照マウス、回復を伴わないcKOマウス(a波、b波、c波なし)、およびc波が回復したマウス(a波、b波だが、c波なし)の網膜構造を示している。したがって、インビボデータは、RPEにおける発現しているKir7.1が、これらの欠損マウスにおいて視力を回復させることができることを示す。
【0110】
材料および方法
動物
インビボでRPE細胞におけるKCNJ13遺伝子の生理学的役割を明らかにするために、本発明者らは、この遺伝子を欠いている株を使用した。これらのマウスにおける視力を、膜電図検査(ERG)を使用して測定した。マウスを収容し、Wisconsin Biotron大学(Madison、WI)で繁殖させた。
【0111】
網膜電図検査
マウスを、ERGを行う前に、一晩、暗所に適応させた。腹膜内に注射したケタミン/キシラジン(80:16mg/kg)混合物で、マウスを麻酔した。ヒーティングパッドを用いて、体温を37℃に維持しながら、マウスの瞳孔を、刺激性アミド(Bausch+Lomb、Rochester、NY)の点眼で散大させた。角膜コンタクトレンズ(Ocusciences Inc.、MO)を、Gonak、2.5% ヒプロメロース目粘滑薬溶液(GONIOVISC、HUB Pharmaceuticals、LLC、CA)に沿って散大した目に入れることにより、ERGを、Espion記録システム(Diagnosys)を使用して行った。基準電極および外側電極を、ぞれぞれ、口と背中に入れた。ERGのプロトコールは、0.1~30cd.s.m-2のフラッシュ強度および60Hzの線雑音からなる。c波の測定のため、本発明者らは、25cd.s.m-2強度の5ミリ秒のフラッシュを使用して、5秒間の間隔でデータを取得した。ERG解析を、網膜下注射の前および後にマウスで行った。
【0112】
網膜下注射
c波形成を有さないKCNJ13ノックアウトマウスを、この目的のため使用した。マウスを、強固に制御した温度(23±5℃)、湿度(40-50%)および明/暗(12/12時間)サイクル条件下、200luxの光環境で維持した。注射に先立ち、マウスを麻酔し、瞳孔を、上記の通り、散大させた。eGFPに融合し、EF1aまたはVMD2プロモーターによりもたらされる、機能的全長KCNJ13遺伝子を有するレンチウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)2μlを、10mmの34ゲージ針を使用した網膜下注射を介して、RPE細胞に送達させた。本発明者らは、10 μlのNanofilシリンジおよびUMP3、NanoFil RPEキットならびにMicro4コントローラー(World precision Instruments,Inc.、Sarasota、FL)を使用した。ERGを、これらのマウスにおいて、注射の1週間後、2週間後、4週間後および8週間後に行い、データを解析した。
【0113】
導入遺伝子発現検出
単離したRPEのフラットマウントを調製した後、eGFP蛍光を、共焦点顕微鏡を使用して検出した。eGFP-KCNJ13遺伝子を有するレンチウイルス/AAVを注射したマウスの目を、注射の1週間後に回収した。屠殺したマウスの眼球除去した目を、PBSで2回洗浄し、28ゲージ針で鋸状縁にて穿刺を行い、角膜切開に沿って目を開いた。次に、レンズを注意深く取り出した。眼杯を平にし、これにより、中心を容易に切開し、「ヒトデ」の様子を得た。次に、網膜を、RPE層から穏やかに分離した。分離したRPEおよび網膜を、カバーガラス上にフラットマウント化し、Nikon C2共焦点顕微鏡(Nikon Instruments Inc.、Mellville、NY)を使用し、NIS-Elementで画像化した。本発明者らは、緑色の励起のため488nmダイオードレーザーを使用し、画像を、Plan Apo VC 20X/0.75、1mm WDにおいてLow Noise PMT C2検出器により取得した。
【0114】
実施例3-Kir7.1タンパク質の送達のためのAAVウイルスベクターの調製
AAVウイルスベクター構築
Kir7.1タンパク質の送達のためのAAVベクターを、Cyagen BiosciencesのVectorBuilderソフトウエアおよびCyagen Biosciencesのパッケージングサービスを使用して生成した。次の表1~3および図12は、Kcnj13遺伝子における生理学的欠損を首尾よく救出したAAVベクターの構築を要約する。
【表2】
【0115】
図16における表2および表3は、色をつけたセグメントおよびKir7.1(配列番号9)をコードするAAVベクターの配列を有する。
【0116】
AAVウイルスベクターパッケージング
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターシステムは、インビトロおよびインビボ遺伝子送達の一般的かつ万能なツールである。AAVは、多くの哺乳類細胞タイプを形質導入する際に有効であり、アデノウイルス同様、インビボでほぼ完全に非病原性である、非常に低い免疫原性を有する。これにより、AAVを、多くの動物研究のための理想的なウイルスベクターシステムにする。
【0117】
AAVベクターを、大腸菌におけるプラスミドとしてまず構築する。次に、それを、ヘルパープラスミドと共に、パッケージング細胞に遺伝子導入し、ここで、2つの末端逆位配列(ITR)間のベクターの領域を、生きたウイルスにパッケージングする。ウイルスを標的細胞に加えるとき、2本鎖直線DNAゲノムが、細胞に送達され、ここで、それは、核に進入し、宿主ゲノムに統合することなく、エピソームDNAとして止まる。2つのITR間に位置する任意の遺伝子(複数可)を、ウイルスゲノムの残りと共に標的細胞に導入する。
【0118】
AAVの主要な実際の利点は、大抵の場合で、AAVを、バイオセイフティーレベル1(BSL1)施設において扱うことができることである。これは、固有の複製欠損であるAAVに起因し、これにより、炎症をほとんど生じないか、または全く生じず、公知のヒト疾患を引き起こさない。
【0119】
AAVの多くの株が、天然で同定されている。それらを、ウイルス表面上のカプシドタンパク質の異なる抗原性に基づき、異なる血清型に分ける。異なる血清型は、ウイルスに組織指向性(すなわち、感染の組織特異性)を与えることができる。異なるAAV血清型は、異なる細胞タイプについての指向性を有し、ある種の細胞タイプは、任意の血清型により形質導入するのが困難であってもよい。例えば、Curr Opin Pharmacol.24:59~67(2015)を参照。本発明者らは、AAV2血清型を使用して、インビトロまたはインビボのいずれかで網膜色素上皮(RPE)細胞を有効に形質導入し得ることを見出した。例えば、実施例1および2を参照。
【0120】
実施例4-Kir7.1タンパク質の送達のためのレンチウイルスベクターの調製
レンチウイルスベクター構築
Kir7.1タンパク質の送達のためのレンチウイルスベクターを、Cyagen BiosciencesのVectorBuilderソフトウエアおよびCyagen Biosciencesのパッケージングサービスを使用して生成した。次の表4~6および図13は、KCNJ13遺伝子における生理学的欠損を首尾よく救出したレンチウイルスベクターの構築を要約する。
【表3】
【0121】
図17において見られる表5および6は、レンチウイルスベクターについての色素指標および配列表(配列番号10)を提供する。
【0122】
レンチウイルスベクターパッケージング
レンチウイルスベクターシステムは、遺伝子を哺乳類細胞に永久的に導入するための高度に効率的なビークルである。レンチウイルスベクターを、レトロウイルスファミリーのメンバーである、HIVからもたらす。野生型レンチウイルスは、プラス鎖直線RNAゲノムを有する。
【0123】
レンチウイルスベクターを、大腸菌におけるプラスミドとしてまず構築する。次に、それを、いくつかのヘルパープラスミドと共に、パッケージング細胞に遺伝子導入する。パッケージング細胞内部で、2つの末端反復配列(LTR)間に位置するベクターDNAを、RNAに転写し、ヘルパープラスミドにより発現したウイルスタンパク質は、RNAをウイルスにさらにパッケージングする。次に、生きたウイルスを、上清に放出し、それを使用して、直接または濃縮後に標的細胞に感染することができる。
【0124】
設計により、レンチウイルスベクターは、ウイルスパッケージングおよび形質導入に必要な遺伝子を欠く(これらの遺伝子を、ウイルスパッケージング中に使用したヘルパープラスミドにより代わりに運ぶ)。結果として、レンチウイルスベクターから生成したウイルスは、複製能力がないという重要な安全特性を有する(それらは、標的細胞を形質導入するが、それらにおいて複製できないことを意味する)。
【0125】
本明細書において記載されるレンチウイルスウイルスベクターは、第3世代のレンチウイルスベクターシステムからもたらされ得る。例えば、J Virol.72:8463(1998)を参照。それは、大腸菌における多いコピー数の複製、生きたウイルスの高タイターのパッケージング、広範な細胞の効率的なウイルス形質導入、宿主ゲノムへの効率的なベクター統合、および高レベルの導入遺伝子発現のため最適化される。
【0126】
本明細書において記載されるレンチウイルスウイルスベクターのパッケージングシステムにより、VSV-Gエンベロープタンパク質をウイルス表面に加え得る。このタンパク質は、広範な指向性を有し、本発明者らは、それが、インビトロまたはインビボのいずれかで網膜色素上皮(RPE)細胞を形質導入するのを助け得ることを見出した。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図14-3】
図15
図16-1】
図16-2】
図16-3】
図16-4】
図17-1】
図17-2】
図17-3】
図17-4】
図17-5】
図17-6】
【配列表】
2022512667000001.app
【国際調査報告】