(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(54)【発明の名称】粉砕機においてアルカノールアミンを使用する方法
(51)【国際特許分類】
C04B 24/12 20060101AFI20220131BHJP
C04B 7/52 20060101ALI20220131BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20220131BHJP
C04B 103/52 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C04B24/12 Z
C04B7/52
C04B28/02
C04B103:52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520101
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(85)【翻訳文提出日】2021-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2019077456
(87)【国際公開番号】W WO2020074633
(87)【国際公開日】2020-04-16
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506044649
【氏名又は名称】クリソ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ・ペルラン
(72)【発明者】
【氏名】マルチーニョ・デュアルテ・アマーロ・コレイア
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB20
(57)【要約】
本発明は、セメントを粉砕するために、第二級又は第三級アルカノールアミンを使用する方法であって、アルカノールアミンの無機酸塩を形成する工程と、塩形態のアルカノールアミンを粉砕機に加える工程とを含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の水硬性結合材を粉砕するために、第二級又は第三級アルカノールアミンを使用する方法であって、
- アルカノールアミンの無機酸塩を形成する工程と、
- 前記の塩形態のアルカノールアミンを粉砕ミル中に加える工程と
を含む、方法。
【請求項2】
水硬性結合材組成物の機械的強度を向上させる方法であって、水硬性結合材の粉砕における第二級又は第三級アルカノールアミンの無機酸塩の使用を含む、方法。
【請求項3】
粉砕の性能要素に影響を及ぼすことなく、水硬性結合材組成物の機械的強度を向上させることができることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アルカノールアミン塩が、ハロゲン酸塩、又は硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、若しくは硫酸水素塩である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アルカノールアミン塩が、ハロゲン酸塩又は硫酸塩である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
アルカノールアミン塩が塩酸塩である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アルカノールアミンが、式(I) N(R
1OH)(R
2)(R
3) (I)
[式中、R
1基は、同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を表し、R
2はH又はR
1-OH基を表し、R
3は、H、1~10個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基、R
4-OH基(式中、R
4は、1~10個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子を含む、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基を表す)、又はアルキルが直鎖状若しくは分枝鎖状でありかつ1~5個の炭素原子を含む(アルキル)-N(アルキル-OH)
2基、好ましくは(CH
2-CH
2)-N(CH
2-CH
2-OH)
2を表し、R
2及びR
3の少なくとも一方はHとは異なる]
を有するアルカノールアミンである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
アルカノールアミンが、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)、エタノールジイソプロパノールアミン(EDIPA)、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(THEED)、及びメチルジエタノールアミン(MDEA)の中から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アルカノールアミンが、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)、及びエタノールジイソプロパノールアミン(EDIPA)から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
アルカノールアミンが、トリイソプロパノールアミン(TIPA)である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に規定するアルカノールアミン以外のアルカノールアミン、塩(例えば塩化ナトリウム、塩化カルシウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カルシウム、硝酸ナトリウム、及び硝酸カルシウム、並びにその混合物等);グリコール、グリセロール、減水助剤/減水混和剤及び高減水助剤/高減水混和剤、特に、ポリナフタレンスルホネート又は更にナフタレン系高流動化剤として一般に知られているナフタレン-ホルムアルデヒド重縮合物のスルホン化塩から選択されるもの;メラミン系高流動化剤として一般に知られているメラミン-ホルムアルデヒド重縮合物のスルホン化塩;リグノスルホネート;グルコン酸ナトリウム及びグルコヘプトン酸ナトリウム;ポリアクリレート;ポリアリールエーテル(PAE);ポリカルボン酸、特に、主鎖がカルボキシル基を有し、側鎖がポリエーテル型のブロック、特にポリエチレンオキシドからなる分枝ポリマーである、ポリカルボキシレート櫛形コポリマー、例えば、ポリ[(メタ)アクリル酸-グラフト-ポリエチレンオキシド];ポリアルコキシル化ポリホスホネートをベースとした製品、の中から選択されるもの;界面活性剤、カルボン酸、例えば、酢酸、アジピン酸、グルコン酸、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、凝結遅延剤、特に、糖、糖蜜シロップ、又はビナスをベースとしたもの、並びにそれらの混合物の中から選択される添加剤が、アルカノールアミン塩に加えて使用される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1種又は複数の消泡(脱泡剤)化合物が、アルカノールアミン塩と組み合わせて使用される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
- 少なくとも1種の水硬性結合材、
- 請求項1から10のいずれか一項に規定するアルカノールアミン塩
を含む組成物。
【請求項14】
1種又は複数の消泡化合物を更に含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
- 水、
- 少なくとも1種の水硬性結合材、
- 請求項1から10のいずれか一項に規定するアルカノールアミン塩、
- 骨材
を含む水硬性組成物。
【請求項16】
1種又は複数の消泡化合物を更に含む、請求項15に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕法において、特に水硬性結合材、特にクリンカー(clinker)を粉砕するための粉砕法において使用されるアルカノールアミンの安定化に関する。
【背景技術】
【0002】
クリンカーを粉砕するときにアルカノールアミンを使用することは既知の手法である。アルカノールアミンは、セメント系水硬性組成物の機械的強度を向上させることも知られている。
【0003】
したがって、アルカノールアミンの粉砕特性から利点を得るために、これらの効果を組み合わせ、水硬性結合材、特にセメントを粉砕するときにアルカノールアミンを使用する一方で、水硬性結合材組成物の調製中に、機械的強度を改善する目的に役立つ水硬性結合材活性成分中に導入することが提案されてきた。
【0004】
しかし、粉砕中に用いられるある種のアルカノールアミン、特にトリイソプロパノールアミン(TIPA)は、温度によって分解し、そのため水硬性結合材組成物の調製中に良好な機械的強度をもたらす助けとなることがもはやできなくなる。この問題を克服するため、分解を補うためにより多くの量のアルカノールアミンを加えることを想定してきた。しかし、ある種の粉砕ミル(又は粉砕機)においてアルカノールアミンの濃度を増加させると、粉砕効率が過度に高くなり、セメント粉末の高流動化により粉砕ミルからの流出又は排出がもたらされ、これは望ましくない。
【0005】
仏国特許第3002162号より、クリンカーの粉砕中に、特に有機塩の形態のAMP (2-アミノ-2-メチル-プロパノール) を使用することも既知の手法である。しかし、これによりセメントの流動性が増し、それ故にクリンカーの粉砕が不十分になる。
【0006】
したがって、特に、ミルを空にさせないことによって(又は流出させないことによって)、粉砕条件を低下させないと同時に、水硬性結合材、特にセメントの粉砕中に、アルカノールアミンを使用することを可能にする方法を提供することに関心が持たれている。
【0007】
良好な機械的強度を得ることも可能にしながら、より細かい粉末を得るために、水硬性結合材の流動性を減らし、その結果、粉砕ミルを通過する時間を延ばすことを可能とするような方法を提供することにも関心が持たれている。
【0008】
特に、粉砕ミルを空にさせないことによって、粉砕条件を低下させないと同時に、水硬性結合材を粉砕する粉砕する工程中に、水硬性結合材組成物の機械的強度、特に28日目の機械的強度に関する性質を改善するために必要な化合物を提供することを可能にする方法を提供することにも関心が持たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】仏国特許第3002162号
【特許文献2】欧州特許第0663892号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】欧州規格EN197-1(2001)
【非特許文献2】フランス/欧州規格NF EN197-1(2012)
【非特許文献3】規格NF EN197-1(2012)セメント項5.2.2
【非特許文献4】規格NF EN197-1(2012)セメント項5.2.3
【非特許文献5】規格NF EN197-1(2012)セメント項5.2.4
【非特許文献6】規格NF EN197-1(2012)セメント項5.2.5
【非特許文献7】規格NF EN197-1(2012)セメント項5.2.6
【非特許文献8】規格NF EN197-1(2012)セメント項5.2.7
【非特許文献9】フランス規格NF P18-513(2012年8月)
【非特許文献10】規格NF P18-509(2012年9月)
【非特許文献11】規格XP P18-545
【非特許文献12】規格13-242
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の1つの目的は、粉砕ミル中で使用されるアルカノールアミンを安定化させることを可能にする方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、水硬性結合材組成物の、特に28日目での機械的強度を改善することへの効果を維持することを同時に可能にするような方法を提供することである。
【0013】
本発明の更に別の目的は、水硬性結合材組成物の調製中に機械的強度、特に、28日目における機械的強度を改善することに関する性質を保持しながら、アルカノールアミンを粉砕するための粉砕剤の性能要素を制御可能にするのに役立つ手段を提供することである。本発明の目的は、粉砕性能に関する要求が低い全ての状況(クリンカーの特質、柔らかい材料(例えば、石灰岩フィラー、天然ポゾラン)を含むクリンカーの同時粉砕、低性能粉砕ミル、分離(分級)装置を含まない開回路粉砕機、閉回路粉砕装置、例えば、定気流分離機を備えた閉回路粉砕装置、傾斜コンベアベルトによるセメント移動を備えた方法、オープンバケットエレベーター、非効率な又は飽和状態に近い(高差圧、使い古したバッグフィルター)ダストフィルター)において特に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、CEM II/A又はCEM II/B LLを製造するための、クリンカー及び石灰岩の同時粉砕中に特に有利であり、それは、28日目での機械的強度を改善するために、高レベルのアミン添加量(例えば、セメント1トン当たりトリイソプロパノールアミン(TIPA)120g)を必要とする。こうした添加量レベルがある種の工場で使用される場合、粉砕ミルからの急速な排出又は粉砕ミルが空になること、及び粉砕ミルの出口で、且つエレベーターのレベルで、ダスティング形成の臨界現象が観測される。
【0015】
意外なことに、塩の形態でのアミンの使用によって、28日目における機械的強度を改善することに関する性能要素の全てを保持しながら、アミンの粉砕性能要素を制御することが可能となることが認められた。
【0016】
これらの目的の全てを達成する本発明は、少なくとも1種の水硬性結合材、好ましくはセメントを粉砕するために、アルカノールアミン、好ましくは第二級又は第三級のアルカノールアミンを使用する方法であって、
- アルカノールアミンの塩、好ましくはアルカノールアミンの無機酸塩を形成する工程と、
- 塩形態のアルカノールアミンを粉砕ミル中に加える工程と
を含む、方法に関する。
【0017】
この方法は、好ましくは、上記水硬性結合材を粉砕する工程を更に含む。
【0018】
好ましくは、本発明は、少なくとも1種の水硬性結合材を粉砕するために、第二級又は第三級のアルカノールアミンを使用する方法であって、
- アルカノールアミンの無機酸塩を形成する工程と、
- 塩形態のアルカノールアミンを粉砕ミル中に加える工程と
を含む、方法に関する。
【0019】
この方法は、好ましくは、上記水硬性結合材を粉砕する工程を更に含む。
【0020】
好ましくは、アルカノールアミンは、式(I) N(R1OH)(R2)(R3) (I)[式中、R1は、同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を表し、R2はH又はR1-OH基を表し、R3は、H、1~10個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基、R4-OH基(式中、R4は、1~10個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子を含む、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基を表す)、又はアルキルが直鎖状若しくは分枝鎖状であり1~5個の炭素原子を含む(アルキル)-N(アルキル-OH)2基、好ましくは(CH2-CH2)-N(CH2-CH2-OH)2を表し、R2及びR3の少なくとも一方はHとは異なる]を有するアルカノールアミンである。
【0021】
好ましくは、アルカノールアミンは、式(I) N(R1OH)(R1OH)(R3) (I)[式中、R1基は、同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を表し、R3は、H、1~10個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基、R4-OH基(式中、R4は、1~10個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を表す)を表す]を有するアルカノールアミンである。
【0022】
本発明の方法は、酢酸の塩の使用を対象としない。本発明の方法は、AMP(2-アミノ-2-メチル-プロパノール)の使用を対象としない。
【0023】
本発明はまた、水硬性結合材組成物の機械的強度を改善する方法であって、水硬性結合材の粉砕中における、アルカノールアミン塩、好ましくは無機アルカノールアミン塩の使用、好ましくは、式(I)を有するアルカノールアミンの使用を含む、方法にも関する。特に有利なことにこの方法は、水硬性結合材、特にクリンカーの粉砕の性能要素に影響を及ぼすことなく、水硬性結合材組成物の機械的強度を向上させることができる。
【0024】
好ましくは、本発明との関係において機械的強度に関して述べる場合、それは好ましくは28日目における機械的強度である。
【0025】
式(I)を有する無機アルカノールアミン塩は、ハロゲン酸塩(d’halogenure d’acide)、硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、又は硫酸水素塩の中から選択される。
【0026】
好適には、アルカノールアミン塩は、硫酸塩、リン酸塩、又はホスホン酸塩であり、好ましくは硫酸塩である。
【0027】
好適には、アルカノールアミン塩は、ハロゲン酸塩である。特に塩酸塩である。
【0028】
本発明の方法は、アルカノールアミンの任意の種類に、好ましくは、式(I)を有する第二級又は第三級のアルカノールアミンに、特に粉砕ミルにおいて、とりわけ、クリンカー及び水硬性結合材を粉砕するための粉砕ミルにおいて使用される、式(I)を有する第二級又は第三級のアルカノールアミンの任意の種類に適用することができる。より詳細には、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)、エタノールジイソプロパノールアミン(EDIPA)、N,N,N',N'-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(THEED)、及びメチルジエタノールアミン(MDEA)を挙げることができる。好ましくは、アルカノールアミンは、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)、及びエタノールジイソプロパノールアミン(EDIPA)の中から選択される。好ましくは、アルカノールアミンはトリイソプロパノールアミン(TIPA)である。
【0029】
アルカノールアミン塩の調製は、好ましくは、アルカノールアミンと酸との化学量論的混合によって実施される。反応は発熱であり得るので、反応中に、媒体を冷却する必要があり得る。この理由により、アルカノールアミン塩の合成は、好ましくは、冷たい水浴に浸漬させたガラス容器内で実施され、温度及びpHが継続的に測定される。
【0030】
本発明は、水硬性結合材の粉砕中の、好ましくは式(I)を有する第二級又は第三級のアルカノールアミンの無機塩の使用を含む、粉砕ミル中での水硬性結合材の流動性を減らす方法にも関する。
【0031】
本発明との関連において、任意の種類の粉砕ミルを使用することができる。特に、本発明は、竪型ミル、ボールミル、ローラミル、分離(分級)装置をもたない開回路粉砕機、定気流分離機を含むかどうかに関わりなく閉回路粉砕装置、傾斜コンベアベルトによるセメント移動を含む方法、オープンバケットエレベーター、非効率な、又は飽和状態に近い(高差圧の、使い古したバッグフィルター)ダストフィルターにおける実施に関する。好ましくは、粉砕ミルは、ボールミル又は竪型ミルである。
【0032】
本発明の目的は、CEM II/A又はCEM II/B又はCEM IIIを製造するための、クリンカー及び鉱物添加剤の同時粉砕時に特に有利であり、28日目における機械的強度を改善するために、高レベルのアミン添加量(例えば、セメント1トン当たりトリイソプロパノールアミン(TIPA)120g)を必要とする。こうした添加量レベルが、ある種の工場で使用される場合、粉砕ミルからの急速な流出又は粉砕ミルが空になること、並びに粉砕ミルの出口で、且つエレベーターのレベルで、ダスティング形成の臨界現象が観測される。
【0033】
本発明は、任意の種類の水硬性結合材、特にクリンカー及び/又は鉱物添加剤の粉砕に関係する。
【0034】
本発明との関連で、用語「水硬性結合材」は、水の存在下で水和する性質を有する任意の化合物を示すものと理解され、その水和により、機械特性を有する固体、特に、ポルトランドセメント、アルミナセメント、ポゾランセメント、又は無水物若しくは準水和物の硫酸カルシウム等のセメントを得ることを可能にする。水硬性結合材は、規格EN197-1 (2001) に準拠するセメントであってもよく、特に、ポルトランドセメント、鉱物添加剤、特にスラグ、又は鉱物添加剤を含むセメントであってもよい。
【0035】
用語「セメント」は、欧州規格EN197-1 (2001) に準拠するセメント、特に以下の種類のセメント: フランス/欧州規格NF EN197-1 (2012) セメントに準拠するCEM I、CEM II、CEM III、CEM IV、又はCEM Vを示すものと理解される。セメントは鉱物添加剤を含めることができる。
【0036】
用語「鉱物添加剤」は、スラグ (規格NF EN197-1 (2012) セメント項5.2.2において定義される)、鋼鉄製品スラグ、ポゾラン材 (規格NF EN197-1 (2012 )セメント項5.2.3において定義される)、フライアッシュ (規格NF EN197-1 (2012) セメント項5.2.4において定義される)、か焼頁岩 (規格NF EN197-1 (2012) セメント項5.2.5において定義される)、石灰岩 (規格NF EN197-1 (2012) セメント項5.2.6において定義される)、若しくはシリカフューム (規格NF EN197-1 (2012) セメント項5.2.7において定義される)、又はその混合物を示すものと理解される。規格NF EN197-1 (2012) セメントによって現在認識されていない他の添加剤も使用することができる。これらには、メタカオリン、例えば、フランス規格NF P18-513 (2012年8月) によるA型のメタカオリン;ケイ質添加剤、例えば、規格NF P18-509 (2012年9月) による石英鉱物を含むケイ質添加剤;特に、無機ジオポリマー型のアルミノケイ酸塩が挙げられる。
【0037】
特に有利なことに、本発明者によれば、本発明のアルカノールアミン塩の形成によってその蒸気圧を低下させ、結果として粉砕ミル中で、特に温度による分解からアルカノールアミン塩を保護することを可能にすることを示した。本発明者によれば、このアルカノールアミン塩の形成にもかかわらず、全ての予測に対して、アルカノールアミンは、水硬性結合材組成物の機械的性質を改善するためのその性質、特に機械的強度、特に28日目における機械的強度を改善するためのその性質を保持することを示した。更に、且つ意外なことに、本発明者は、文献により公知の有機酸塩を含む例とは異なり、無機酸塩の形成により、より良好な粉砕を可能にし、水硬性結合材の流動性の低下をもたらすことを示した。
【0038】
したがって、本発明は、特に有利なことに、アルカノールアミンが分解することなく、粉砕の時点でアルカノールアミンを添加することを可能にし、その一方で粉砕も改善され、且つ水硬性結合材組成物の機械的性質を改善するための、その性質が保持されることを確実にする。
【0039】
好ましくは、アルカノールアミン塩は粉砕時に、水硬性結合材の0.003~0.025質量%の含有量で、好ましくは0.005~0.015質量%の含有量で使用される。
【0040】
特に有利には、粉砕時に使用されるアルカノールアミン塩は、水硬性組成物中に一般に用いられる他の添加剤と組み合わせて、あるいは水硬性結合材の粉砕時に使用することができ;特に、式(I)を有するアルカノールアミン以外のアルカノールアミン;塩、例えば塩化ナトリウム、塩化カルシウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カルシウム、硝酸ナトリウム、及び硝酸カルシウム、並びにその混合物;グリコール、グリセロール、減水助剤/減水混和剤及び高減水助剤/高減水混和剤、界面活性剤、カルボン酸、例えば、酢酸、アジピン酸、グルコン酸、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、及びその混合物を挙げることができる。
【0041】
アルカノールアミン塩は、凝結遅延剤と組み合わせて使用してもよい。
【0042】
本発明との関連で、凝結遅延剤の中でも、特に、糖、糖蜜シロップ(molasses)、又はビナス(vinasse)をベースとする凝結遅延剤を挙げることができる。
【0043】
好ましくは、減水助剤/減水混和剤及び高減水助剤/高減水混和剤は、以下のものから選択される:
- ポリナフタレンスルホネート又は更にナフタレン系高流動化剤として公知の、ナフタレン-ホルムアルデヒド重縮合物のスルホン化塩;
- メラミン系高流動化剤として公知の、メラミン-ホルムアルデヒド重縮合物のスルホン化塩;
- リグノスルホネート;
- グルコン酸ナトリウム及びグルコヘプトン酸ナトリウム;
- ポリアクリレート;
- ポリアリールエーテル(PAE);
- ポリカルボン酸をベースとした生成物、特に、主鎖がカルボキシル基を有し、側鎖がポリエーテル型のブロック、特にポリエチレンオキシドからなる分枝ポリマーである、ポリカルボキシレート櫛形コポリマー、例えば、ポリ[(メタ)アクリル酸-グラフト-ポリエチレンオキシド]。CHRYSO社によって市販されているCHRYSO(登録商標)Fluid Optima、CHRYSO(登録商標)Fluid Premia、及びCHRYSO(登録商標)Plast Omegaの範囲の高流動化剤を特に使用することができる;
- 特に、特許欧州特許第0663892号に記載されたポリアルコキシル化ポリホスホネートをベースとした製品(例えば、CHRYSO(登録商標)Fluid Optima100)。
【0044】
特に有利なことには、粉砕時に使用されるアルカノールアミン塩は、1種又は複数の消泡剤、特に、エトキシル化脂肪アミンの中から選択される消泡剤と組み合わせて使用することができる。本発明者は、特に、アルカノールアミン塩の形成が、エトキシル化脂肪アミンの可溶化を可能にするpH領域を得ることを可能にし、その一方で、とりわけ具体的には、それらが活性となるpH領域にある用途、特にコンクリートにおいて、その有効性を保持することを示している。
【0045】
本発明はまた、
- 少なくとも1種の水硬性結合材;
- 上述したアルカノールアミン塩
を含む組成物にも関する。
【0046】
この組成物は追加で、上述した少なくとも1種の添加剤も含むことができる。
【0047】
本発明はまた、
- 水;
- 少なくとも1種の水硬性結合材;
- アルカノールアミン塩;
- 骨材
を含む水硬性組成物にも関する。
【0048】
この水硬性組成物は、上述したように少なくとも1種の添加剤を更に含むことができる。
【0049】
用語「骨材」は、平均直径0~125mmを有する鉱物粒子の集合体又は集塊を示すものと理解される。その直径に応じて、骨材は、以下の6つの系列;フィラー、砂、細砂、砂利、砂粒、及びバラスト(規格XP P18-545)のうちの1つに分級される。最も使用される骨材は、以下のものである。
- 2mm未満の直径を有するフィラーであって、これについて、骨材の少なくとも85%が1.25mm未満の直径を有し、骨材の少なくとも70%が0.063mm未満の直径を有する;
- 0~4mmの直径を有する砂(規格13-242において、直径は最大で6mmまでなることができる);
- 6.3mmより大きな直径を有する砂利;
- 2~63mmの直径を有する砂粒;
- したがって、砂は本発明の骨材の定義に含まれる;
- フィラーは、特に、石灰岩又はドロマイトに由来するものでもよい。
【0050】
水硬性組成物は、当分野の技術者に公知の他の添加剤、例えば1種及び/又は複数の鉱物添加剤、例えば、耐空気混入添加剤、消泡剤、凝結促進剤又は凝結遅延剤、レオロジー改質剤、別の流動化させる薬剤(流動化剤又は高流動化剤)、特に、高流動化剤、例えば、CHRYSO(登録商標) Fluid Premia180又はCHRYSO(登録商標) Fluid Premia196等の高流動化剤も含むことができる。
【0051】
ここで本発明を非限定的な例を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】実施例2のローリングボトル試験の傾斜板の平面図である。
【
図2】実施例2のローリングボトル試験の傾斜板の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
これらの例において、トリイソプロパノールアミン塩酸塩(TIPA)が使用される。この塩は、以下の方法に従って得られる:水中質量濃度63%のトリイソプロパノールアミン(TIPA)質量113 gを、磁気撹拌子(又は撹拌器)を用いて撹拌し続け、質量濃度37%の塩酸35 gを30分かけて添加して、溶液約150 gを得た。TIPAとHClとの化学量論比は1:1である。配合中、温度は40℃を超えなかった。得られた溶液は透明である。滴定されたHClの容量の関数としての導電率及びpHの測定は、TIPAとHClとの反応の終わりの時点で、大きな値の変化を示し、2種の反応物の間の化学反応が確認される。実際に、逆酸-塩基アッセイによってプロトン化TIPAの形成を実証することが可能である。水酸化ナトリウム(0.1 mol/L)をTIPA+HClの溶液に添加すると、当量体積の水酸化ナトリウムでpHの急上昇が確認され、これはこの化合物(TIPA/TIPA+HCl)の酸性度定数に特徴的である。当量体積の半分では、pHはこの化合物(TIPA/TIPA+HCl)のpKaと等しく、8に近い。他方、TIPAは、アミンが既に塩基形態であるのでpHの急上昇を示さない。
【0054】
同じ種類の化学反応に基づいて、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)の塩酸塩を調製することが可能である。この塩は、以下の方法に従って得られる:水中質量濃度87%のジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)質量80 gを、磁気撹拌子を用いて撹拌し続け、質量濃度37%の塩酸42 gを30分かけて添加して、溶液約150 gを得た。DEIPAとHClとの化学量論比は1:1である。配合中、温度は40℃を超えなかった。得られた溶液は透明である。プロトン化アミンDEIPA+HClの形成は、逆酸-塩基滴定によって確かめることができる。DEIPA+HCL化合物は、水酸化ナトリウムの添加中に、酸-塩基化合物DEIPA/DEIPA+HClに特徴的である、8に近いpKaを示すpH急上昇を十分に呈する。確かに、TIPA及びDEIPAは、pKaおよそ8の、ほぼ同じ酸性度定数を有するアミンである。他方、非プロトン化DEIPAは、水酸化ナトリウムの添加中にpHの急上昇を示さない。
【0055】
同じ種類の化学反応に基づいて、トリイソプロパノールアミン(TIPA)の硫酸塩を調製することが可能である。この塩は以下の方法に従って得られる:水中質量濃度61%のトリイソプロパノールアミン(TIPA)質量129gを、磁気撹拌子を用いて撹拌し続け、質量濃度95%の硫酸21gを30分かけて添加して、溶液約150gを得た。TIPAとH2SO4との化学量論比は2:1である。配合中、温度は40℃を超えなかった。得られた溶液は透明である。プロトン化TIPA+H2SO4アミンの形成は、逆酸-塩基滴定によって確かめることができる。TIPA+H2SO4化合物は、8に近い、TIPAに特徴的である、pHの急上昇を十分に呈する。
【実施例1】
【0056】
実施例1:
ブレーン比表面積ターゲット4000cm2/gを有するフライアッシュ(質量濃度15%)を含有するセメントCEM ll/AV42.5Nに対して、添加量90 ppmのTIPAにより、セメントミルのスループットを11%増やすことが可能になる。その一方で、添加量120 ppmのTIPAは、極めて揮発性となるセメント粉末を高流動化させることによって有害な作用を生じる。TIPA+HCLは、セメントの粉砕(高流動化なし)に負の影響を与えず、改善された機械的強度をもたらす。
【0057】
【0058】
本実施例は明らかに、粉砕ミル中で、過度に高いTIPA含有量が粉砕効率に影響を与え、機械的性能の低下をもたらすこと、TIPAの塩の形成が、これらの欠点を克服することを可能にすることを実証している。
【実施例2】
【0059】
実施例2:
研究室試験は、様々な異なるアミンの存在下で、クリンカー5 kgで、ボールミルを用いて実施された。こうして得られた粉末の流動性は、「ローリングボトル試験(RBT)」を用いることによって分析され、その基本原理は、
図1に示すように、傾斜面を転がる、粉砕されたクリンカー40 gを含有した、長さ9.3 cm、直径2.74 cm、蓋付きの空質量119.14 gの円筒形ボトルによって進んだ距離を測定することである。進む距離がより大きくなるほど、より多くの試料が、工業規模に好適な流動性に資する。
【0060】
以下の表は、TIPAの存在下で粉砕されたクリンカーが、クリンカー粉末の流動性を促進しないことを示す。この効果は、ボトルに含有されたクリンカー粉末の流れに負の影響を与える粒径の分布によって説明され、TIPAに関して、粉砕に不都合な過剰効率(over-efficiency)を示す。その一方で、クリンカーがTIPA+HCLと共に粉砕される場合、ボトルによって進む距離はより大きく、その一方で、TIPA+HCLがTIPAの既知の高流動化効果を抑制し、クリンカー試料を工業規模の粉末の流れに好都合な挙動に戻すことを示す。
【0061】
【実施例3】
【0062】
実施例3:
単一のチャンバーを備えるボールミル(ローラープレスと、第3世代分離機に連結されたボールミルとの間の複合閉回路)において、スラグ77トン毎時及び粉砕剤(組成物1)150g/tを導入する。
【0063】
ミルの出口でのブレーン比表面積ターゲットは5100 cm2/gである。TIPA 41 g/tをもたらす添加量150 g/tの粉砕剤(組成物1)は、極めて揮発性となるセメント粉末を高流動化させることによって、有害な作用を生じる。ダストフィルターが飽和状態になるので、ボールミルは止めなければならない。この飽和状態は、TIPAを含む組成物1によって有意に増大するフィルター入口-ミル出口での圧力を測定することによって追跡される。粉砕剤(組成物2)においてTIPA 36g/tに近い添加量が用いられる場合、TIPA+HCLは、セメントの粉砕に負の影響をもたらさない(高流動化なし)。プロトン化されたアミンは、分離機からの排出、及び参照と同等のフィルターのダスト形成率を維持することを可能にする。このアミン塩を含有する組成物2の添加量を増やすことによって(TIPA 36g/tから84g/tまで)、スラグのブレーン表面は、粉砕剤の作用のおかげで増大する。しかし、スラグの粒径の低下にもかかわらず、微粒子は、フィルターを飽和させず、参照と同等の、分離機からの排出及びフィルターダスティング率を維持する。したがって、TIPA塩は、凝集状態にある粒子を維持し、それ故にダスティング及び高流動化の危険性なしに、スラグの粉砕を促進することを可能にする。
【0064】
【0065】
本実施例は、粉砕ミル中で、TIPAの使用が、急速に飽和するダストフィルターとともに、スラグの高流動化をもたらし得るという事実を明らかに実証している。TIPAの塩の形成は、これらの欠点を克服することを可能にする。粉砕ミルの入口スループット流量は、やはりスラグの粉砕を促進しながら、高流動化の危険性なしに、一定に保つことができる。
【実施例4】
【0066】
実施例4:
10%の質量濃度の石灰岩を含有するセメントCEM II/A LL42.5Nを、2チャンバー式ボールミル(いわゆる、分離機への連結がない開回路構成)で粉砕して、ブレーン比表面積ターゲット3300 cm2/gを得る。TIPA.HClを含有した助剤(組成物4)の使用は、TIPAを含有した助剤(組成物3)を用いたものよりも、参照と比較して、ボールミルの出口での45 μm及び25 μmの排出を更により減らすことを可能にする。それ故、TIPAの塩の形成は、セメントの粒子の大きさをより有効に低下させることを可能にし、したがって、対照と比較して、2日目においてより高い圧縮強度の上昇を得ることを可能にする。更に、TIPAをTIPA塩によって置き換えることは、参照のものよりも明らかにより大きな28日目での圧縮強度を伴い、長期間の際立った活性化効果を保っている。
【0067】
【0068】
本実施例は、粉砕ミル中で、TIPAに代えて塩形態のTIPAを使用することが、粉砕効率を向上させて、25μm排出及び32μm排出の低下をもたらすことを可能にするという事実を明らかに実証している。このことは、セメントCEM II/A LL 42.5Nの粉砕ミル中での滞留時間が延ばされていると結論づけることを可能にする。
【実施例5】
【0069】
実施例5:
並行に設置された2つの第1世代分離機と組み合わせた2チャンバー式ボールミルにおいて、CEM I型セメント108トン毎時を、TIPAを含む活性化剤(組成物5)の存在下で導入して、ブレーン比表面積およそ360 m2/kgを得る。CEM I 42.5N型セメントは、90.5%の質量濃度のクリンカー、4.5質量%の石灰岩、及び5.0質量%の石膏からなる。アミンの等用量を有するTIPA(組成物5)の代わりにTIPA+HClを含有する活性化剤(組成物6)の使用することが、粉砕効率を向上させることを可能にする。ミルの同じ入口スループット流量に対して、セメントの比表面積はより大きくなり、45μm排出は、TIPAの存在下よりも、TIPAの塩化塩の存在下でより低くなる。ミルの入口スループット流量が108 tphから111 tphまで増えるとしても、TIPA+HCLをベースとした助剤/混和剤は、高いブレーン表面積を維持するので、依然として極めて有効な粉砕剤である。その部分について粉砕剤(組成物6)において用いられているTIPA酢酸塩は、TIPAのものと同等の、粉砕されたセメントの比表面積を得ることを可能にする。しかし、TIPA酢酸塩は、粉砕機のフィルターの目詰まりをもたらし、このことは、フィルターの洗浄時間の増加及び1時間当たりのパージ数の増加によって検出され得る。それに対して、TIPA+HCLは、粉砕中にあまりダストを形成せず、したがって、フィルターをパージする時間を低下させるための手段をもたらす。2日目において、圧縮強度が、TIPA+HCLの存在下でより大きくなっているが、これは、セメントが、TIPA又はTIPA酢酸塩の存在下におけるよりも、より細かく粉砕されているからである。最後に、28日目における圧縮強度は、全ての助剤/混和剤について同等である。
【0070】
【0071】
本実施例は、粉砕ミル中で、TIPA+HCLの使用が、フィルターの目詰まりを抑制し、それ故、後で洗浄に要する時間を短くすることによって、TIPA及びTIPA酢酸塩と比較して、CEM Iセメントの粉砕効率を改善することを可能にするという事実を明らかに実証している。TIPAに代えてTIPA+HCLを使用することは、2日目において圧縮強度のわずかな増加を得ること、及び28日目において圧縮強度を維持することを可能にする。
【実施例6】
【0072】
実施例6:消泡配合物+空気%の安定性
トリイソプロパノールアミンは、モルタル及びコンクリートにおいて空気を連行することが知られており、これが圧縮強度の低下をもたらしうる。ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)は、空気連行について、TIPAと同様の効果を有する。同様に、プロトン化されたアミンTIPA+HCL又はDEIPA+HCLを含有する助剤/混和剤は、セメント中への空気の連行を促進する。したがって、TIPA+HCL及びDEIPA+HCLを消泡剤と組み合わせることに興味がもたれる。しかし、消泡剤は、元来、水にあまり溶解しない化学種であり、このことが、粉砕剤又は活性剤の配合における消泡剤の使用を面倒なものにしている。消泡剤は、主に水から構成される溶液中に溶けない傾向がある。
【0073】
配合物は、TIPA+HCL及びDEIPA+HCLを、エトキシル化脂肪アミン型の消泡剤又は脱泡剤(ALBEMARLE社製のADMA(登録商標) 10AMINE及びADMA(登録商標) 12AMINE)と、様々な用量で組み合わせることによって製造した。得られた配合物は安定であり、エトキシル化脂肪アミンは、pH7.5未満を有する本発明のプロトン化されたアミン溶液中に溶解する。
【0074】
次いで、プロトン化されたアミン混和剤120 ppmを含むCEM I型セメント中に連行された空気を、消泡剤6 ppm又は7 ppmの添加量について測定した。消泡剤の添加は、アミンの存在によって生じる空気の連行を減らして、セメント中6~7ppmの濃度について、参照のものと同等の値に戻すことを可能にする。
【0075】
【0076】
したがって、プロトン化されたアミン及びエトキシル化脂肪アミン型の消泡剤をベースとした溶液において安定である助剤/混和剤を配合することが可能である。アミン塩酸塩とともに消泡剤を添加することは、セメントを用いる場合、モルタル又はコンクリートにおける空気連行を有意に減らす手段を提供する。
【実施例7】
【0077】
実施例7:
3つのサーボ制御ローラーを備える竪型ローラミルにおいて、24%のフライアッシュを含有するCEM ll/BV42.5R型のセメント200トン毎時(ミル出口で添加される)を導入して、12.5のパラメーターd50(μmで表される、50%中位径)及び31.0のパラメーターd90(μmで表される、90%中位径)によってそれぞれ定義される粒径分布を有する、目標とした最終の粉末度を有するセメントを得る。TIPAを含む活性化剤(組成物8)の存在下で、ミルの性能(トン毎時の生産スループット率)を、以下の方法パラメーターを設定することによって確立する。
- セメントの粉末度を制御するための分離機の速度(rpm/1分当たりの回転数)
- 粉砕ミル中に存在する材料の量、したがって、粉砕の有効性を反映する、粉砕ミル内の差圧(mbar)、
- 粉砕ミルの安定性及び振動を制御するために、粉砕ミル中に注入される水(m3/時間)
【0078】
TIPA.HClを含有する助剤/混和剤(組成物9)の使用は、方法パラメーターに影響を与えることなく、粉末度を高めた(パラメーターd50及びパラメーターd90の低下)セメントを生成することにより、粉砕の効率に直接影響を与えることを可能にする。したがって、TIPA塩の形成は、セメントの粒径をより効率的に低下させることを可能にする。
【0079】
【0080】
本実施例は、竪型ミルにおいて、TIPAに代えて塩酸塩形態のTIPAを使用することが、粉砕効率を改善し、その結果、パラメーターd50及びパラメーターd90の低下をもたらすことを可能にするという事実を明らかに実証している。
【0081】
この粉砕効率は、セメントの目標となる粉末度を確実にするように方法パラメーターも調節し、かつ、竪型ミルを最適化された操作領域に維持しながらの、粉砕ミルの生産性向上(トン毎時)と解釈することもできる。
【国際調査報告】